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特開2022-91064酸化ストレス低減剤及び当該酸化ストレス低減剤を配合した皮膚外用剤
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  • 特開-酸化ストレス低減剤及び当該酸化ストレス低減剤を配合した皮膚外用剤 図1
  • 特開-酸化ストレス低減剤及び当該酸化ストレス低減剤を配合した皮膚外用剤 図2
  • 特開-酸化ストレス低減剤及び当該酸化ストレス低減剤を配合した皮膚外用剤 図3
  • 特開-酸化ストレス低減剤及び当該酸化ストレス低減剤を配合した皮膚外用剤 図4
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  • 特開-酸化ストレス低減剤及び当該酸化ストレス低減剤を配合した皮膚外用剤 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091064
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】酸化ストレス低減剤及び当該酸化ストレス低減剤を配合した皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/06 20060101AFI20220613BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220613BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220613BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20220613BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20220613BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20220613BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20220613BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20220613BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALN20220613BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20220613BHJP
【FI】
A61K33/06
A61P17/00
A61P43/00 105
A61P39/06
A61K8/24
A61Q17/00
A61Q19/08
A61Q1/12
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203775
(22)【出願日】2020-12-08
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】397030400
【氏名又は名称】株式会社アンズコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】笹井 晋作
(72)【発明者】
【氏名】清水 暁
【テーマコード(参考)】
4B063
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS36
4B063QX02
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB232
4C083AB291
4C083AB292
4C083AB432
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC712
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD512
4C083BB51
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC12
4C083DD17
4C083DD23
4C083DD31
4C083EE07
4C083EE12
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA04
4C086HA19
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB21
4C086ZC37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒドロキシアパタイトを有効成分とする酸化ストレス低減剤、及び当該酸化ストレス低減剤を配合した皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】ヒドロキシアパタイトを有効成分とする、酸化ストレス低減剤であって、前記酸化ストレス低減剤が、ROSにより引き起こされる酸化ストレスを低減するものであり、前記酸化ストレス低減剤が、HSPA1A、IL-8、及びPTGS2のうち少なくともいずれかの遺伝子の発現量を低減するものである。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシアパタイトを有効成分とする、酸化ストレス低減剤。
【請求項2】
前記酸化ストレス低減剤が低減する酸化ストレスは、ROSにより引き起こされるものである、請求項1に記載の酸化ストレス低減剤。
【請求項3】
前記酸化ストレス低減剤が、HSPA1A、IL-8、及びPTGS2のうち少なくともいずれかの遺伝子の発現量を低減するものである、請求項1又は2に記載の酸化ストレス低減剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の酸化ストレス低減剤を配合する、皮膚外用剤。
【請求項5】
前記酸化ストレス低減剤の配合量が、0.1~10.0量%である、請求項4に記載の皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシアパタイトを有効成分とする酸化ストレス低減剤に関するものであり、当該酸化ストレス低減剤を配合した皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体には、エネルギー産生のために必要な酸化システムと、その酸化システムによる過剰酸化に伴う悪影響を防ぐための抗酸化システムとが備わっており、その恒常性によって生体の健康が維持されている。酸化と抗酸化のバランスが崩れて、酸化が過剰になった状態を酸化ストレスという。
【0003】
皮膚は、最外部に位置する臓器であり、紫外線や大気汚染物質などの様々な刺激に常に曝されている。その刺激の一つである紫外線暴露は皮膚の形態的変化を引き起こすことが知られており、形態的変化は酸化ストレスが重要な役割を果たしていることが明らかにされている。そして、酸化ストレスは活性酸素種(ROS)によって惹起されることが知られており、ROSは、細胞に対してDNA損傷や細胞死を引き起こすと共に、メラニン生成の亢進や真皮マトリックスの変性を誘導し、皮膚老化を促進することが報告されている(非特許文献1)。
【0004】
皮膚保護及び老化抑制を目的とする皮膚外用剤の開発を行うにあたり、角層表面で生じた刺激がシグナルとして表皮生細胞に伝わった結果、表皮生細胞内で生じる変化については重要な事柄であるが、知見は少なく、明らかになっていない部分が多い。そこで、本発明者らは、表皮生細胞内で生じる変化について明らかにすべく、皮脂の構成成分の一つであるスクアレンに着目した。
【0005】
スクアレンは、ラジカルスカベンジャーとして機能し、酸化ストレスから皮膚を保護する働きをすると考えられている物質である(非特許文献2)。一方で、スクアレンは、紫外線の暴露等により容易に酸化され、過酸化物であるスクアレンペルオキシドを生成することが知られている。スクアレンペルオキシドは、細胞膜にラジカル連鎖反応を引き起こして、結果的にシミやシワの形成を引き起こす原因となることが示唆されている(非特許文献3~5)。しかしながら、スクアレンペルオキシドが角層に接触し、シグナルが表皮生細胞内に伝わった結果、表皮生細胞内で生じる変化については明らかにされていない。
【0006】
上記のように、スクアレンペルオキシドが皮膚に悪影響を与えると考えられることから、本発明者らは、更に、化粧料用原料として使用されるヒドロキシアパタイトに着目した。ヒドロキシアパタイトは遊離脂肪酸や過酸化脂質に対し選択的な吸着性を有することが知られており、皮膚用外用剤の成分として用いることも提案されている(非特許文献6、特許文献1)。しかしながら、角層上のスクアレンペルオキシドをヒドロキシアパタイトに吸着させ、スクアレンペルオキシドに関するシグナルが表皮生細胞内に伝わった結果、表皮生細胞内でどのような変化が生じるのかについても明らかにされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.Kruk, E.Duchnik, Asian Pac. J. Cancer Prev., 15, 561-568(2014)
【非特許文献2】G.Kelly, Altern. Med.Rev.4,1,29-36(1999)
【非特許文献3】T.Uchino, H.Tokunaga, H.Onodera, M.Ando, Biol.Pharm.Bull., 25,605-610(2002)
【非特許文献4】K.Chiba, K.Kawakami, T.Sone, M.Onoue, Skin Pharmacol.Appl.Skin Physiol.,16.242-251(2003)
【非特許文献5】A.Ryu, K.Arakane, C.Koide, H.Arai, T.Nagano, Biol.Pharm.Bull.,32,1504-1509(2009)
【非特許文献6】F.Kaji, S.Nakagawa, T.Yamagami, T.Yoshioka, K.Satonaka, M.Watanabe, Phosphorus Research Bulletin.,12,7-10(2001)
【特許文献1】特開2003-126687
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような状況に鑑み、本発明者らは鋭意研究を行い、スクアレンペルオキシドを角層に塗布した結果、表皮生細胞内において、特定遺伝子の発現量が即時的に増加していることを明らかにした。続いて、スクアレンペルオキシドをヒドロキシアパタイトに吸着させたものを角層に塗布し、シグナルが表皮生細胞に伝わった結果、表皮生細胞内で起こる変化について明らかにした。
【0009】
本発明は、上記表皮生細胞内で生じる変化について明らかにする過程で見出した、ヒドロキシアパタイトを有効成分とする酸化ストレス低減剤、及び当該酸化ストレス低減剤を配合した皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
具体的には、スクアレンに紫外線を照射しスクアレンペルオキシドを発生させることで作製した試料を、3次元培養表皮モデル(以下、RHE)の角層側に塗布したとき、特定遺伝子の発現量が表皮生細胞内で即時的に増加していることを明らかにした。続いて、スクアレンに紫外線を照射しスクアレンペルオキシドを発生させたものに、ヒドロキシアパタイトを添加混合した後の上清(反応物)を試料として、RHEの角層側に塗布したとき、表皮生細胞内で特定遺伝子の発現量が低減していることを明らかにした。本発明者らは、ヒドロキシアパタイトが酸化ストレスを低減する効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)
ヒドロキシアパタイトを有効成分とする、酸化ストレス低減剤。
(2)
前記酸化ストレス低減剤が低減する酸化ストレスは、ROSにより引き起こされるものである、(1)に記載の酸化ストレス低減剤。
(3)
前記酸化ストレス低減剤が、HSPA1A、IL-8、及びPTGS2のうち少なくともいずれかの遺伝子の発現量を低減するものである、(1)又は(2)に記載の酸化ストレス低減剤。
(4)
(1)~(3)のいずれか1項に記載の酸化ストレス低減剤を配合する、皮膚外用剤。
(5)
前記酸化ストレス低減剤の配合量が、0.1~10.0量%である、(4)に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、ヒドロキシアパタイトを有効成分とする酸化ストレス低減剤、及び当該酸化ストレス低減剤を配合した皮膚外用剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】スクアレン及びUV照射スクアレン(1h、3h、6h)のPOV(meq/kg)測定結果を示す図である。Sq:スクアレン、UV-Sq(1h、3h、6h):所定時間(1時間、3時間、6時間)UVを照射したスクアレン。
図2】スクアレン及びUV照射スクアレン(1h,3h,6h)をRHEに塗布して4時間経過後の表皮生細胞における各mRNAの発現量を測定した図である。
図3】スクアレン及びUV照射スクアレン(1h,3h,6h)をRHEに塗布して4時間経過後の表皮生細胞の生存率を測定した図である。
図4】UV照射スクアレン(3h)をRHEに塗布した後における、酸化ストレス及び炎症に関する各mRNAの発現量の経時変化を測定した図である。
図5】UV照射スクアレン(3h)をRHEに塗布した後における、角化に関する各mRNAの発現量の経時変化を測定した図である。
図6】スクアレン及びUV照射スクアレン(3h)に、ヒドロキシアパタイトを混合した後のPOV(meq/kg)測定結果を示す図である。Sq+(1%、5%)HAP:スクアレンに、所定濃度(1%、5%)のヒドロキシアパタイトを処理した試料。UV-Sq(3h)+(1%、5%)HAP:3時間UVを照射したスクアレンに、所定濃度(1%、5%)のヒドロキシアパタイトを処理した試料。
図7】スクアレン及びUV照射スクアレン(3h)に、ヒドロキシアパタイトを混合した後の上清(反応物)をRHEに塗布して4時間経過後の表皮生細胞における各mRNAの発現量を測定した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
「酸化ストレスに対し即時的に応答する遺伝子の解明」
【0016】
本発明における酸化ストレスとは、酸化と抗酸化のバランスが崩れて酸化が過剰になった状態(以下、酸化過剰状態)のことをいう。酸化過剰状態は、細胞内の活性酸素種(以下、ROS)量の増加により引き起こされ、ROS量が増加すると、酸化と抗酸化のバランスが崩れ、酸化が過剰になり、例えば、膜脂質の酸化等の細胞損傷が生じる。ここでROSとしては、例えば、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシラジカル、過酸化物が挙げられる。
【0017】
ROS等により酸化過剰状態となった細胞は、ラジカル連鎖反応を引き起こして、例えば、DNA損傷、酵素の不活性化、及び膜脂質の酸化等の細胞損傷を生じる。細胞損傷が生じると、細胞内では、損傷を受けたたんぱく質を修復したり、炎症を促進したりするために、様々なたんぱく質が産生される。
【0018】
これまでの報告で、スクアレンの過酸化物であるスクアレンペルオキシドは、膜脂質の酸化を起こし、シミやシワの形成の原因となることが示唆されている。しかしながら、スクアレンペルオキシドが皮膚に接触することで、どの遺伝子が発現されるかは解明されていなかった。
【0019】
そこで本発明者らは、スクアレンペルオキシドをRHEに塗布し、酸化ストレスを発生させ、表皮生細胞内で発現している遺伝子発現量を測定した結果、ヒートショックプロテイン70、インターロイキン8、シクロオキシゲナーゼ-2、ヘムオキシゲナーゼ1、及びγ-グルタミルシステイン合成酵素をコードするそれぞれの遺伝子の発現量が即時的に増加することを明らかにした。
【0020】
ヒートショックプロテイン70は、分子シャペロンとして他のたんぱく質を正しく折りたたむことで機能を獲得させる働きをし、損傷を受けた細胞の修復に関与するたんぱく質である。ヒートショックプロテイン70をコードする遺伝子名はheat shock protein family A (Hsp70) member 1Aであり、遺伝子シンボルはHSPA1Aである。ここで「ヒートショックプロテイン70をコードする遺伝子の発現量が即時的に増加する」とは、ヒートショックプロテイン70をコードするDNAから転写されるmRNAの細胞中での存在量が、スクアレンペルオキシド非存在下における存在量と比較して、即時的に有意に増加することを意味する。
【0021】
インターロイキン8は、炎症を引き起こすシグナルを伝達する低分子のたんぱく質である。インターロイキン8の分泌は、酸化ストレスによって増加することが知られており、炎症細胞の動員とさらなる炎症の促進を引き起こす働きをする。インターロイキン8をコードする遺伝子名はinterleukin 8であり、遺伝子シンボルはIL-8である。ここで「インターロイキン8をコードする遺伝子の発現量が即時的に増加する」とは、インターロイキン8をコードするDNAから転写されるmRNAの細胞中での存在量が、スクアレンペルオキシド非存在下における存在量と比較して、即時的に有意に増加することを意味する。
【0022】
シクロオキシゲナーゼ-2は、アラキドン酸を、プロスタノイドと呼ばれる生理活性物質の一群に代謝する過程に関与する酵素である。シクロオキシゲナーゼ-2は炎症時に発現が誘導され、シクロオキシゲナーゼ-2を介してPGE2やPGI2の産生が亢進する。PGE2は血管透過性の亢進、血管拡張及び発痛に関与し、PGI2は血管拡張及び発痛に関与し、炎症反応をそれぞれ進行させる。シクロオキシゲナーゼ-2をコードする遺伝子名はprostaglandin‐endoperoxide synthase
2であり、遺伝子シンボルはPTGS2である。ここで「シクロオキシゲナーゼ-2をコードする遺伝子の発現量が即時的に増加する」とは、シクロオキシゲナーゼ-2をコードするDNAから転写されるmRNAの細胞中での存在量が、スクアレンペルオキシド非存在下における存在量と比較して、即時的に有意に増加することを意味する。
【0023】
ヘムオキシゲナーゼ1は、ヘムを、ビルベルジンと一酸化炭素と遊離鉄に分解する酵素である。ビルベルジンは更にビリルビンに分解される。ヘム分解により産生されるビルベルジンとビリルビンには強力な抗酸化作用があり、酸化ストレスなどによる細胞障害を抑制する。また、一酸化炭素は、抹消循環の還流圧を調節する。ヘムオキシゲナーゼ1をコードする遺伝子名はheme oxygenase 1であり、遺伝子シンボルはHMOX1である。ここで「ヘムオキシゲナーゼ1をコードする遺伝子の発現量が即時的に増加する」とは、ヘムオキシゲナーゼ1をコードするDNAから転写されるmRNAの細胞中での存在量が、スクアレンペルオキシド非存在下における存在量と比較して、即時的に有意に増加することを意味する。
【0024】
γ-グルタミルシステイン合成酵素は、グルタチオン合成の律速反応を触媒する酵素である。グルタチオンは、細胞内に高濃度に存在する抗酸化物質で、活性酸素やフリーラジカルから細胞を守る役割を担う。γ-グルタミルシステイン合成酵素をコードする遺伝子名はglutamate-cysteine ligase catalytic subunitであり、遺伝子シンボルはGCLCである。ここで「γ-グルタミルシステイン合成酵素をコードする遺伝子の発現量が即時的に増加する」とは、γ-グルタミルシステイン合成酵素をコードするDNAから転写されるmRNAの細胞中での存在量が、スクアレンペルオキシド非存在下における存在量と比較して、即時的に有意に増加することを意味する。
【0025】
「ヒドロキシアパタイト」
本発明におけるヒドロキシアパタイトとは、Ca10(PO(OH)で表される化合物のことをいう。ヒドロキシアパタイトは、生体との親和性が良好であるので、人工骨や人工歯等の素材として広く利用されている。一方で、工業的には、陽イオン、陰イオン、たんぱく質、アミノ酸などに対して優れた吸着性を有する材料として知られている。さらに、ヒドロキシアパタイトは、脂質の中でも過酸化脂質の吸着に優れ、皮膚から分泌される皮脂の中でも、酸化した皮脂を選択的に吸着することも知られている。
【0026】
本発明者らは、ヒドロキシアパタイトをROSと共に培養表皮モデルに塗布したとき、即時的に発現する遺伝子(HSPA1A、IL-8、PTGS2、HMOX1及びGCLCのうち少なくともいずれかの遺伝子)の発現量が、ROSを培養表皮モデルに塗布したとき即時的に発現する遺伝子(HSPA1A、IL-8、PTGS2、HMOX1及びGCLCのうち少なくともいずれかの遺伝子)の発現量と比較して、低減されていることを明らかにした。これは、ROSがヒドロキシアパタイトに吸着されたことにより、ROSにより即時的に引き起こされる酸化ストレスが低減されたことを示すものである。これまで、スクアレンペルオキシド等の過酸化物をヒドロキシアパタイトが吸着することは知られていたが、過酸化物をヒドロキシアパタイトが吸着することで表皮生細胞中の特定の遺伝子発現を低減することは知られていなかった。
【0027】
上記の事実から、本発明におけるヒドロキシアパタイトは、皮膚(特に表皮生細胞)に作用して、酸化ストレス低減剤として用いることができる。
【0028】
本発明において、表皮生細胞に酸化ストレスを引き起こすものであれば特に限定されず、そのようなものとして、例えば、ROSを用いることができ、好ましくは過酸化物であり、より好ましくは過酸化脂質であり、更に好ましくはスクアレンの過酸化物であるスクアレンペルオキシドである。
【0029】
ここで培養表皮モデルとしては、同様の効果を奏するものであれば特に限定されない。そのようなものとして、例えば、ヒト正常表皮細胞を重層培養したRHEを用いればよく、LabCyte EPI-MODEL(ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)、EPI-200(クラボウ)、EPISKIN(SkinEthic)等を使用することができる。細胞培養等の条件に関しても、通常の培養条件のほか、表皮生細胞の培養を妨げない条件であれば、特段の限定なく適用することができる。
【0030】
本発明における遺伝子の発現量の評価方法としては、遺伝子の発現量が変動していることを判定できれば特に限定されず、例えば、mRNAの発現量を測定する方法だけでなく、遺伝子発現産物であるたんぱく質量を指標として評価することとしてもよい。
【0031】
培養表皮モデルから遺伝子やたんぱく質を抽出する方法は、公知の方法を用いればよい。例えば、遺伝子の抽出であればRNeasy Mini Kit(Qiagen)などが使用でき、抽出された全RNAは必要に応じて更にmRNAのみに精製しても良い。
【0032】
本発明における遺伝子発現量の確認方法は、公知の方法を用いればよい。例えば、遺伝子の発現量を転写産物としてのmRNAの量として測定する場合には、公知の遺伝子工学及び分子生物学的技術に従い、当該分野で特定遺伝子の発現を検知測定するために知られた手法、例えばin situハイブリダイゼーション、ノーザンブロッティング、ドットブロット、RNaseプロテクションアッセイ、RT-PCR、qRT-PCR等、当該分野で知られた任意の解析方法を用いることができる。
【0033】
また、遺伝子の発現変動を判定するための別の方法として、遺伝子の発現産物であるたんぱく質量を定量する場合には、公知の遺伝子工学及び分子生物学的技術に従い、当該分野で特定のたんぱく質量を検知するために知られた手法、例えばウェスタンブロッティング、各種の免疫組織学的方法等、当該技術分野で知られた任意の解析方法を用いることができる。
【0034】
ここで、「ヒドロキシアパタイトをROSと共に培養表皮モデルに塗布」とは、「ヒドロキシアパタイトとROSとを共に培養表皮モデルに塗布」することだけを意図しておらず、「ヒドロキシアパタイトとROSとを混合したものを培養表皮モデルに塗布」するものを含み、「ヒドロキシアパタイトとROSとの反応物を培養表皮モデルに塗布」するものを含み、「ヒドロキシアパタイトを培養表皮モデルに塗布した後にROSを更に塗布する」ものを含み、「ROSを培養表皮モデルに塗布した後にヒドロキシアパタイトを更に塗布する」ものを含む。また、これらの方法に限定されず、任意の方法を用いることができる。
【0035】
ここで、「即時的」とは、過酸化物への接触後6時間以内に起こることを意味する。「即時的に発現する遺伝子」とは、ROSが培養表皮モデルに塗布された後6時間以内に発現する遺伝子を意味する。「即時的に発現する遺伝子」は、即時的に発現する遺伝子であれば、特に限定するものではないが、HSPA1A、IL-8、PTGS2、HMOX1及びGCLCのうち少なくともいずれかの遺伝子であることが好ましく、更に好ましくはHSPA1A、IL-8、及びPTGS2のうち少なくともいずれかの遺伝子であることが好ましい。
【0036】
更に、「遺伝子の発現量が低減される」とは、ヒドロキシアパタイトをROSと共に培養表皮モデルに塗布したときと、ROSを培養表皮モデルに塗布したときと、を比較した際にその遺伝子発現量が低減されていればよい。低減の程度は求める効果の度合いによって適宜設定することができる。また、「遺伝子の発現量が低減される」とは、測定値として低減されていれば特に限定するものではないが、試験の一般的なバラツキを考慮して統計的に有意に低減されていることが好ましい。「たんぱく質の発現量」を測定する場合も、同様に考えることができる。
【0037】
本発明におけるヒドロキシアパタイトは、酸化過剰状態となることを防止し、又は酸化過剰状態を低減する効果を奏する。より具体的には、例えばDNA損傷、酵素の不活性化及び膜脂質の酸化等の細胞損傷を防止し、低減し、又は減少する効果を奏する。細胞損傷の防止等ができると、損傷を受けたたんぱく質を修復したり、炎症を促進したりする様々なたんぱく質の発現量を低減し、又は減少するという効果を奏する。更には、HSPA1A、IL-8、PTGS2、HMOX1及びGCLCのうち少なくともいずれかの遺伝子発現量を抑制するこという効果を奏する。
【0038】
要するに、本発明におけるヒドロキシアパタイトを肌に塗布することで、被投与部位において、酸化過剰状態を防止し、低減し、又は減少させることができ、それに伴う細胞損傷を防止等することができ、ひいては、たんぱく質の修復及び炎症促進等を行うたんぱく質の発現量を抑制することができ、更にはHSPA1A、IL-8、PTGS2、HMOX1及びGCLCのうち少なくともいずれかの遺伝子発現量を抑制することができる。
【0039】
また、本発明におけるヒドロキシアパタイトは、酸化過剰状態を改善して通常の状態に戻す効果のみならず、通常の状態から更に優れた状態にする効果をも有する。またさらに、本発明に係るヒドロキシアパタイトは、酸化過剰状態を予防する効果も奏するため、酸化過剰状態とはなっていないものの、酸化過剰状態となる可能性がある場合にあらかじめ塗布しておくことで酸化過剰状態となることを防ぐことができる。
【0040】
また、本発明におけるヒドロキシアパタイトは、本発明の効果を損なわない範囲で皮膚に適用できるように製剤化したものでもよい。
【0041】
「皮膚外用剤」
本発明における皮膚外用剤とは、医薬品類、医薬部外品類、化粧品類等に、ヒドロキシアパタイトを配合し、製剤化したもののことをいう。
【0042】
皮膚外用剤の剤形としては、本発明におけるヒドロキシアパタイトの効果を損なわない範囲内であれば特に限定されず、任意の剤形とすることができる。剤形の種類としては、特に限定されないが、例えば、軟膏剤、ジェル剤、ゲル剤、クリーム、パック剤、シップ剤、乳液、ローション剤、化粧水、パウダーなどの半固形物や液体あるいは固形物等があげられる。
【0043】
本発明の皮膚外用剤には、ヒドロキシアパタイトの効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、医薬品類、医薬部外品類、化粧品類等の分野において通常用いられる添加成分を適宜配合することができる。添加成分としては特に限定されず、例えば、精製水、油性成分、界面活性剤、乳化剤、低級アルコール、高級アルコール、多価アルコール、水溶性高分子、粘度調整剤、ゲル化剤、保湿剤、殺菌剤、抗炎症剤、鎮痛剤、抗真菌剤、角質軟化剥離剤、皮膚着色剤、ホルモン剤、紫外線吸収剤、汗防臭剤、ビタミン剤、血流促進剤(血管拡張剤、血行促進剤)、生薬、pH調整剤、金属イオン封鎖剤、パール化剤、天然香料、合成香料、色素、顔料、酸化防止剤、防腐剤、及び香油等が挙げられる。
【0044】
本発明の皮膚外用剤に配合されるヒドロキシアパタイトの量は特に限定されないが、ヒドロキシアパタイトの配合量が、皮膚外用剤の全質量に対して、0.1~10.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5~5.0質量%であり、更により好ましくは0.5~2.0質量%である。
【実施例0045】
以下、実施例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
「ヒドロキシアパタイトによる酸化ストレス低減評価」
ヒドロキシアパタイトによる酸化ストレス低減評価は、以下の方法で行った。
【0047】
1.方法
1-1.試験試料
ヒドロキシアパタイトは太平化学産業株式会社の「板状HAP」を用いた。
スクアレンは富士フイルム和光純薬株式会社製の「スクアレン」を用いた。
UV照射スクアレンは、UV(285-400nm、60W/m)をスクアレンに、所定の時間照射することにより得た。
ヒドロキシアパタイト処理UV照射スクアレンは、ヒドロキシアパタイトとUV照射スクアレンとを混合し、所定時間反応させた後、遠心分離機で分離させ、上清(反応物)を分取することで得た。
【0048】
1-2.過酸化物価(POV)の測定
「食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)における第1食品、即席めん類、4.過酸化物の測定法」に従い試験を行った。すなわち、酢酸-クロロホルム混液に試料を溶解させ、飽和ヨウ化カリウムを加えた。その後、デンプン溶液を加えて、チオ硫酸ナトリウム液で滴定してPOVを測定した。
【0049】
1-3.ヒト3次元培養表皮モデル(RHE)の培養と細胞生存率
RHEは、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング社製のLabCyte EPI-MODEL 24を用いた。試験は当該メーカーの説明書に従い行った。当該メーカーから入手したRHEを培養培地に移し、37℃、5%CO下で24時間培養した。次に、RHEの角層側に試料を塗布し、37℃、5%CO下で1時間培養した。その後、角層上の試料を除去し、更に3時間培養して続く解析に用いた。細胞生存率はMTTアッセイによって求めた。
【0050】
1-4.定量的RT-PCR
RHE組織を、セルカルチャーインサートから、メルカプトエタノールを添加したBuffer RLT Plus(Qiagen)に移した。当該RHE組織を粉砕し、上清をフェノール-クロロホルム混液で精製した。さらにRNeasy Plus Mini Kit(Qiagen)を用いてTotal RNAを精製した。cDNAは、High-Capaccity cDNA Reverse Transcription Kit with RNase Inhibitor(Thermo Fisher Scientific)を用いて合成した。定量的PCRは、TB Green Premix EX Taq II(Tli RNaseH Plus)(Takara Bio)を用いて行った。相対発現量は、△△Ct法によって求め、GAPDHにより補正した。
【0051】
2.結果
2-1.UV照射スクアレンによる酸化ストレスの誘導
スクアレンにUVを照射することでスクアレンペルオキシドが生成されたことを確認するために、UVをスクアレンに1時間、3時間、6時間とそれぞれ照射し、POVの測定を行った(図1)。その結果、UV照射時間が長いほどPOVは増加していた。このことは、スクアレンペルオキシドはUV照射時間に依存して増加することを示している。
【0052】
また、UVを1時間、3時間、6時間とそれぞれ照射した試料を、RHEに塗布して4時間後のmRNA発現量について測定した(図2)。その結果、HSPA1A、IL-8、及びPTGS2のmRNA発現量が、UV照射時間が長いほど、増加されていることが明らかとなった。その他に、HMOX1及びGCLCのmRNAの発現量もまた、UV照射時間が長いほど、増加していた。
【0053】
続いて、UVを1時間、3時間、6時間とそれぞれ照射した試料を、RHEに塗布して4時間後の細胞生存率について算出した(図3)。UVをスクアレンに1時間、3時間、6時間とそれぞれ照射した試料を、RHEの角層側に塗布し、1時間経過後、角層上の試料を除去し、更に3時間培養したものをMTTアッセイにより細胞生存率を測定したとき、細胞生存率はほぼ違いがなかった。
【0054】
2-2.UV照射スクアレンを塗布した後のmRNA発現量の経時変化
UV照射スクアレン(3時間照射)をRHEに塗布した後における、酸化ストレス及び炎症に関するmRNA発現量について調べた(図4)。その結果、HSPA1A、IL-8、及びPTGS2のmRNA発現量が著しく増加していた。特にHSPA1A及びIL-8のmRNAでは、UV照射スクアレン(3時間照射)を塗布してから2時間後に最も高く発現していた。また、PTGS2のmRNAの発現量は、時間が経過しても増え続けていた。さらに、HMOX1及びGCLCのmRNA発現量についても、添加後4時間経過しても増加していた。
【0055】
UV照射スクアレン(3時間照射)をRHEに塗布した後における、角化に関するmRNA発現量について調べた(図5)。角化に関する遺伝子(遺伝子シンボル:ABCA12、GBA、OCLN、SPINK5、KRT5及びKRT14)発現量については、スクアレンペルオキシドを角層に塗布後、減少していく傾向があった。
【0056】
2-3.ヒドロキシアパタイトによるUV照射スクアレンを原因とする酸化ストレスの低減
続いて、これまでの試験で、酸化ストレスにより変動が著しいことが判明した遺伝子群(HSPA1A、IL-8、及びPTGS2)を酸化ストレスの指標(以下、指標遺伝子群という。)として用い、スクアレンペルオキシドによる酸化ストレスをヒドロキシアパタイトが低減させるかどうかを調べた。まずPOVについて調査したところ、ヒドロキシアパタイト処理UV照射スクアレンは、UV照射スクアレンと比較して、POVが著しく低下していた(図6)。また、HSPA1A、IL-8、及びPTGS2のmRNA発現量においても、ヒドロキシアパタイト処理UV照射スクアレンは、UV照射スクアレンと比較して、発現量が減少していた(図7)。
【0057】
3.考察
はじめに、UV(285-400nm,60W/m)をスクアレンに照射したところ、スクアレンペルオキシドが生成されていることを確認した。スクアレン中のスクアレンペルオキシドの生成量は、UV照射時間が長いほど、多くなることが確認できた。
【0058】
次に、UV照射スクアレン(3時間照射)をRHEの角層側に塗布したものを分析したところ、HSPA1A、IL-8、PTGS2、HMOX1及びGCLCのmRNA発現量が増加することが判明した。
【0059】
HSPA1A、HMOX1、及びGCLCは、酸化ストレスにより発現が誘導されることが知られている遺伝子である。今回の試験で、これらの遺伝子の誘導が確認できたということは、スクアレンペルオキシドが角層に接触することで角層を通じてシグナルが伝達され、表皮生細胞内で酸化ストレスにより細胞障害が生じたので、細胞障害を修復するために増加したものと考えられる。
【0060】
次にIL-8及びPTGS2は、炎症に関与する遺伝子である。今回の試験で、これらの遺伝子の誘導が確認できたということは、スクアレンペルオキシドが角層に接触することで角層を通じてシグナルが伝達され、表皮生細胞内の代謝物により皮膚に対して炎症が生じる可能性を示している。
【0061】
ここで、PGE2は、メラノサイトの樹状突起を形成させ、メラニンの合成を促進させることが知られている。また、インターロイキン8は、真皮のエラスターゼ活性を促進して、エラスチン繊維を変性させ、シワの形成に関与することが示唆されている。これまで、スクアレンペルオキシドを皮膚に塗布することによって、色素沈着やシワの形成などの変化を示すことが知られているが、これはスクアレンペルオキシドによって誘導される表皮細胞由来の因子が皮膚の形態的な変化に関与していることが推測される。
【0062】
更に、角化に関する遺伝子(ABCA12、GBA、OCLN、SPINK5、KRT5及びKRT14)発現については、スクアレンペルオキシドを角層に塗布後、減少していく傾向があった。この傾向は、スクアレンペルオキシドは、皮膚の代謝バランスを狂わせ、角化異常を起こしたりバリア機能を低下させたりすることを示している。この発見は、とりわけ、スキンケアにおいて、スクアレンペルオキシドにより誘発される酸化ストレスを減らすことが重要であることを示している。
【0063】
上記のことから、発明者らは引き続き、皮膚上で発生したスクアレンペルオキシドを選択的に吸着することで、酸化ストレスを低減させることができるかどうかについて、追加試験を行った。指標遺伝子群を用いて、過酸化物を選択的に吸着する基質であるヒドロキシアパタイトが、UV照射スクアレンにより誘発される酸化ストレスを減らすことができるかどうか調査した。その結果、ヒドロキシアパタイト処理UV照射スクアレンでは、POVが減少していた。このことは、UV照射スクアレン中のスクアレンペルオキシドが、ヒドロキシアパタイトに選択的に吸着されたことを示す。ヒドロキシアパタイトは、化粧料で広く使われ、これまでも過酸化脂質に対して選択的な吸着を示すことが知られている。発明者らが行った実験も先の報告に類似する結果が得られた。さらに、このヒドロキシアパタイト処理UV照射スクアレンをRHEに塗布したときの指標遺伝子群のmRNA発現量は、UV照射スクアレンをRHEに塗布したときの指標遺伝子群のmRNA発現量と比較したとき、抑えられていた。これらの発見は、ヒドロキシアパタイトによるスクアレンペルオキシドの選択的な吸着により、スクアレンペルオキシドが誘発する酸化ストレスを効果的に低減させることができることを示す。
【0064】
本研究では、皮脂の構成成分の一つであるスクアレンに着目し、角層にスクアレンペルオキシドを塗布することにより、表皮生細胞で発現されるmRNA量の変動について調べた。その結果、酸化ストレスや炎症に関する遺伝子に変動がみられた。このことは、スクアレンペルオキシドが、皮膚における酸化ストレスの要因となっている可能性を示した。さらに、これらの結果は、酸化ストレスを低減する素材のスクリーニングといった、角層からシグナルが伝わった結果、表皮生細胞に伝わる酸化ストレスのモデル試験系として応用することができると考えられる。
【0065】
以下に本発明のヒドロキシアパタイトを皮膚外用剤に適用した場合の処方例を挙げる。なお、各処方例の製法は常法による。
<処方例1>化粧水
(成分名) (質量%)
ヒドロキシアパタイト 0.1
グリセリン 5.0
1,3ブチレングリコール 5.0
トリメチルグリシン 3.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.0) 0.5
エタノール 2.0
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.1
防腐剤 適量
【0066】
<処方例2>化粧用クリーム
(成分名) (質量%)
ヒドロキシアパタイト 1.0
シア脂 2.0
ホホバ油 1.0
ステアリルアルコール 5.0
スクワラン 10.0
自己乳化型グリセリルモノステアレート 3.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.0) 1.0
1,3ブチレングリコール 5.0
グリセリン 5.0
水酸化ナトリウム 0.3
香料 0.1
防腐剤・酸化防止剤 適量
精製水 残部
【0067】
<処方例3>乳液
(成分名) (質量%)
ヒドロキシアパタイト 5.0
スクワラン 5.0
ホホバ油 0.3
自己乳化型グリセリルモノステアレート 1.0
ステアリン酸 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.1
グリセリン 1.5
水酸化ナトリウム 適量
エタノール 7.0
香料 0.1
防腐剤・酸化防止剤 適量
精製水 残部
【0068】
<処方例4>ファンデーション
(成分名) (質量%)
ヒドロキシアパタイト 10.0
ステアリン酸グリセリル 1.0
ステアリン酸 4.0
ベヘニルアルコール 1.0
セタノール 0.5
液状ラノリン 2.0
スクワラン 4.0
水添ポリデセン 4.0
10.0ン 8.0
タルク 4.0
ベンガラ 1.0
黄酸化鉄 0.5
黒酸化鉄 0.2
香料 0.1
防腐剤・酸化防止剤 適量
精製水 残部
【0069】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7