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特開2022-91079アクセルの踏み間違えを防止する自動車の原動機制御方法
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  • 特開-アクセルの踏み間違えを防止する自動車の原動機制御方法 図1
  • 特開-アクセルの踏み間違えを防止する自動車の原動機制御方法 図2
  • 特開-アクセルの踏み間違えを防止する自動車の原動機制御方法 図3
  • 特開-アクセルの踏み間違えを防止する自動車の原動機制御方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091079
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】アクセルの踏み間違えを防止する自動車の原動機制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 28/00 20060101AFI20220613BHJP
   B60K 26/04 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
B60K28/00
B60K26/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020215798
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】511229341
【氏名又は名称】佐藤 良明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良明
【テーマコード(参考)】
3D037
【Fターム(参考)】
3D037EA08
3D037EB07
3D037EB16
3D037EB25
3D037EC01
3D037EC02
3D037FA10
3D037FA23
3D037FB01
3D037FB05
(57)【要約】
【課題】アクセルとブレーキの2つのペダルを用いて走行する自動車において、ブレーキと間違えてアクセルを踏むことによる暴走事故を防止する。
【解決手段】本発明では、フットレストに、左足が乗っていることを検出するセンサーを具備し、そのセンサが左足を検出できない場合、アクセル操作による原動機の出力制御を停止または制限する。センサーとしては、ボタンスイッチのように左足で動作するものや、光学的に左足の有無を検出するものなどが利用できる。本発明では、運転者が後方確認などにより、体を旋回させ、左足がフットレストから離れたことを検出した場合、右足がアクセルをブレーキと過って踏んでしまっても、原動機に制限がかかっているため、急発進・急加速することはなく、事故に至らない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルとブレーキの2つのペダルで走行を操作する自動車において、
フットレストに左足が乗っていることを検出する手段を有し、当該の検出手段が左足を検出している場合には、アクセル開度に連動したエンジン等の原動機出力の制御を行い、当該の検出手段が左足を検出できない場合には、アクセル開度に関わらず、エンジン等の原動機出力を低減もしくは停止させる制御を行うことを特徴とする自動車の原動機制御装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルとブレーキの2つのペダルを用いて走行する自動車において、ブレーキと間違えてアクセルを踏むことによる暴走を防止する自動車の原動機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなど内燃機関を原動機とする自動車は、アクセルとブレーキの2ペダル型が一般化してきている。これは、多段自動変速機や無段変速機が一般化して来たことにより、クラッチペダルが不要になったためである。また、モーターを原動機とする電気自動車やモーターと内燃機関のハイブリッド自動車も増加しつつあるが、内燃機関を原動機とする自動車の操作系を踏襲しているため、アクセルとブレーキの2ペダルが一般的である。
【0003】
一方、日本は高齢化が進み、お年寄りのドライバーの絶対数が増加している。お年寄りドライバーの増加と、2ペダル型の自動車が一般化してきたことにより、アクセルをブレーキと間違えることによる暴走事故が多発し、社会問題となっている。交通事故総合分析センター(ITARDA)の調査結果によると、高齢者のアクセルをブレーキと踏み間違える事故は、駐車場で多く発生している(非特許文献1)。例えば、コンビニの駐車場で停止枠に自動車を停めようとしてゆっくり後退し、停車しようとして、ブレーキを踏むつもりでアクセルを踏み込んだため、自動車を暴走させて事故に至るケースが多くある。これは、後退する際に、体を右に捻って、窓から後方を確認した際、無意識のうちに右足の位置が通常の運転操作時より右側方向へシフトし、ブレーキを踏むつもりでアクセルを踏んでしまうためであると、非特許文献1に記述されている。
【0004】
通常の発進や加速を行うためには、運転者はアクセルをゆっくり踏み込んでいく。しかし、ブレーキは一気に奥まで踏む。アクセルをブレーキとまちがえて踏む場合、アクセルを一気に奥まで踏むことにより、アクセルを全開にしてしまい、事故に至る。アクセルを踏む状況において、ブレーキを強く踏む運転者の操作特徴を見出した場合、誤操作と判断してエンジン等の原動機を減速または停止させる特許が存在する。
【0005】
特許文献1には、あるしきい値以上にアクセルを強く踏んだ時は、エンジン等の原動機出力を減少させる特許(特開2007-170232トヨタ自動車株式会社)が出願されている。特許文献2には、アクセルに踏力センサーを設け、アクセル全開時に通常以上の踏力を検出した場合は、エンジン等の原動機出力を減少させる特許(特開平11-278092いすゞ自動車株式会社)が出願されている。アクセルを強く踏んだことは、アクセル開度の検出、アクセル全開の検出、アクセル踏み込み速度の検出、アクセル踏み込み力などの検出が利用できる。これらにより、アクセルを踏む際にブレーキを強く踏む運転者の操作特徴を見出し、エンジン等の原動機出力を制限または停止する「アクセル踏み間違えを防止する安全装置」を実現できる。
【0006】
自動車を駐車場で停止枠に停めようとしてゆっくり後退し、停車しようとして、ブレーキを踏むつもりでアクセルを踏み込んだ場合、当該自動車が「アクセル踏み間違えを防止する安全装置」を搭載していれば、アクセルを踏む際にブレーキを強く踏む運転者の操作特徴を見出し、エンジン等の原動機出力を制限または停止するため、大きな事故に至らない。一方、その自動車が高速道路に侵入し、法定で定めた最低速度まで速やかに到達するためには、加速車線においてアクセルを強く踏む必要がある。排気量の小さな自動車では、アクセルを全開にするケースもあり得る。このように、必要に応じてアクセルを強く踏まなければならない時、「アクセル踏み間違えを防止する安全装置」は、運転者の正常なペダル操作を誤操作と判断して、エンジン等の原動機出力を減少させてしまう誤動作の可能性がある。高速道路への侵入加速時に安全装置としての誤動作を起こすと、高速道路の最低速度に到達できないばかりか、後続の自動車が追突する可能性もある。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アクセルをブレーキと間違えて踏むことにより、事故に至ることを防止することが課題である。参考文献1および2により、アクセルを踏む際にブレーキを強く踏む運転者の操作特徴を見出し、エンジン等の原動機出力を制限または停止する「アクセル踏み間違えを防止する安全装置」は、効果的であるが高速道路への侵入時などアクセルを強く踏まなければならない状況において、誤動作する可能性がある。
【先行技術文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-170232 トヨタ自動車株式会社
【特許文献2】特開平11-278092 いすゞ自動車株式会社
【非特許文献1】ITARDA 交通事故分析レポート No.124 https://www.itarda.or.jp/itardainfomation
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、アクセルをブレーキと誤って踏む運転者の左足の位置に注目する。図1(a)は、2ペダルのアクセルとブレーキを正しく操作している運転者の右足と左足の操作を示している。一般に、左足は操作せず、フットレストの上に乗せており、右足でブレーキかアクセルを操作する。アクセルとブレーキのペダルの位置は異なるので、右足はそれぞれの操作の度に位置を変えて踏み換えることになるが、右足の踵をマットに固定し、右足を左右にわずかに捻ることによって、アクセルとブレーキを簡単に踏み換えることができる。ここで注目すべき点は、右足と左足の間隔である。通常に運転している間、この間隔は変化しない。
【0010】
図1(b)は、運転者が後方を直接目視で確認するため、体を右側にひねり、右足と左足の位置が体と連動して、右回転してしまった様子を示している。左足は、フットレストから外れ、右側に移動している。運転者は、この左足を基軸に、図1(a)で説明した右足と左足の間隔によって右足の位置を把握するため、ブレーキを踏むつもりでアクセルを踏んでしまう。これが、ブレーキと間違えてアクセルを踏む状況である。運転者が後方目視をする場合以外でも、運転席の窓から駐車場の料金を払うなどにより、体の右回転と合わせて、下半身も右回転すれば、左右の足の位置が右側に移動してしまい、ブレーキを踏むつもりでアクセルを踏んでしまうことになる。
【0011】
近年では、2ペダルの自動車が急速に普及したが、それまでに主流であった3ペダルの自動車では、アクセルをブレーキと間違えて踏む事故は大きな問題となっていなかった。以下、この理由を説明する。図2は、クラッチのある3ペダルの自動車を運転する運転者の足の操作を示している。右足は、2ペダルの自動車と同様、アクセルとブレーキを行う。クラッチ操作を必要とする3ペダルの自動車で運転者が後方確認を行う時は、上半身のみを右に旋回し、左足は常にクラッチの位置に固定されている。クラッチのある自動車では、運転速度を変化させる場合に運転者自身が変速ギヤを変える必要があり、左足は常にクラッチ操作を行う必要があるためである。つまり、図1(b)のように、左右の足が右側にシフトすることはなく、運転者はクラッチを操作する左足を基準にしているため、右足はアクセルとブレーキを踏み間違えることはない。
【0012】
以上、2ペダル自動車においてアクセルをブレーキと誤って踏む理由と、3ペダル自動車においてアクセルをブレーキと誤って踏まない踏み理由を説明した。本発明では、3ペダルの自動車と同じ操作環境を2ペダルの自動車に実現することにより、アクセルの踏み間違えを防止する原動機制御方法を提供する。
【0013】
本発明では、フットレストに、左足が乗っていることを検出するセンサーを具備し、そのセンサが左足を検出できない場合、アクセル操作による原動機の出力制御を停止または制限する。センサーとしては、ボタンスイッチのように左足の重みで動作するものや、光学的に左足の有無を検出するものなどが利用できる。本発明では、運転者が後方確認などにより、体を旋回させ、左足がフットレストから離れたことを検出した場合、アクセルをブレーキと過って踏んでしまっても、原動機に出力制限がかかっているため、急発進・急加速することはなく、事故に至らない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一般道においても、急加速を必要とする有料道路・高速道路においても、必要時には十分にアクセルを踏んで加速することが可能でありながら、アクセルをブレーキと過って踏む状況を左足の状態によって検出し、原動機の出力を低減または停止させることにより、事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】2ペダルの自動車を操作している運転者の右足と左足
図2】3ペダルの自動車を操作している運転者の右足と左足
図3】本発明の構成
図4】本発明によるフローチャート
【符号の説明】
【0016】
1 右足
2 左足
3 左右の足間隔
4 ブレーキ
5 アクセル
6 フットレスト
7 クラッチ
8 ECU(engine control unit)
9 信号線
10 エンジン等の原動機
11 スロットル
12 インジェクタ
13 アクセルペダルセンサ
14 アクセルペダル
15 フットレストセンサ
【実施例0017】
本発明の構成を図3に示す。近年の自動車は電子化が進んでおり、エンジン等の原動機とアクセルが電気信号の線(電気の線、ワイヤー)で繋がっていることから、ドライブバイワイヤーと呼ばれる。ドライブバイワイヤーの自動車では、アクセルペダルはアクセルペダルセンサーの可変抵抗を動かしている。アクセルの踏み込み量に相当する抵抗値は、ECUユニットに送られる。ECUユニットは、電気的にスロットルバルブを動かすモーターに指示を与え、エンジンの吸気量を制御している。エンジンに入る吸気量に合わせて、インジェクタから燃料が噴射され、アクセル開度に応じてエンジンの出力を制御できる。
【0018】
本実施例のフローチャートを図4に示す。フットレストセンサーにより、左足を検出できていれば、通常通り、アクセルの開度に合わせて原動機を駆動し、その出力を駆動輪に伝達する。もし、左足がフットレストから離れると、フットレストセンサーが左足を検出できないことをECUユニットに伝え、原動機出力を制限する。左足をフットレストに戻せば、通常通り、アクセルの開度に合わせて原動機を駆動する制御に復帰する。フットレストセンサーが左足を検出しなくなった時、すぐさま原動機出力を制限してしまうと、運転者は何が起きているのかわからない可能性がある。この場合は、運転席前面にあるメータ類を表示するパネルに警告表示したり、警告音を出すことにより運転者に注意を喚起し、その後に原動機出力を制限すればよい。
【0019】
以上、本実施例によるアクセルの踏み間違えを防止する原動機制御方法の動作を説明した。
図1
図2
図3
図4