(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091081
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】飲料用演出グラス及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
A47G 19/22 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
A47G19/22 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020215804
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】510286433
【氏名又は名称】株式会社ネットアプリ
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】西田 誠
【テーマコード(参考)】
3B001
【Fターム(参考)】
3B001AA02
3B001CC40
3B001DB20
(57)【要約】
【課題】 本発明はグラス本体内で反射する反射像とグラス本体を透過する透過像が互いに上下反転する事なくその反射像と透過像を同時にユーザーが視認出来る飲料用演出グラスを提供することを課題とする。前記飲料用演出グラスで用いるコンピュータプログラムを保存した記憶媒体も提供することも課題とする。
【解決手段】 本発明の飲料用演出グラスは 前記グラス本体の側面に映像表示装置を固定するための固定機構と、映像表示面を外部から視認するための透明部と、透過用画像を表示する第一表示エリアと、上下反転画像を表示する第二表示エリアと、前記第一表示エリアと前記第二表示エリアの位置を制御する画像表示エリア制御部と、前記グラス本体の内部に配置される反射鏡とを備えることを特徴とする飲料用演出グラス。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口を有する有底の筒状体であるグラス本体と、
前記グラス本体の側面に映像表示装置を固定するための固定機構と、
前記映像表示装置の映像表示面を前記グラス本体の外部から視認するための透明部と、
透過用画像を表示する第一表示エリアと、
上下反転画像を表示する第二表示エリアと、
前記第一表示エリアと前記第二表示エリアの位置を制御する画像表示エリア制御部と、
前記グラス本体の内部に配置される反射鏡と
を備え、
前記反射鏡は金属から成る層を少なくとも一つは備え、
前記映像表示面は前記第一表示エリアと前記第二表示エリアを備え、
前記画像表示エリア制御部は前記第一表示エリアと前記第二表示エリアの境界線の位置を変更する境界線位置制御部を備え、
前記上下反転画像が前記反射鏡で反射され前記上部開口の方向に反射し、
前記透過用画像が前記グラス本体内の飲料と前記透明部を透過して前記グラス本体の外部に至ることを特徴とする飲料用演出グラス。
【請求項2】
前記境界線位置制御部が前記境界線の位置を制御又は変更するコンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムであることを特徴とする請求項1に記載の飲料用演出グラス。
【請求項3】
前記画像表示エリア制御部がコンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムとして前記映像表示装置の筐体の内部又は外部のコンピュータに実装されていることを特徴とする請求項1~2のいずれか一項に記載の飲料用演出グラス。
【請求項4】
前記透明部が前記グラス本体の外側に向けて凸形状に湾曲しており、
前記透過用画像を水平方向に圧縮したスクィーズ画像を前記第一表示エリアに出力するための画像縦横比制御部を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料用演出グラス。
【請求項5】
前記画像縦横比制御部が前記透明部の表面にフレネルレンズのパターンをエンボス加工したフレネルレンズであることを特徴とする請求項4に記載の飲料用演出グラス。
【請求項6】
前記境界線の位置に長方形の形状の帯画像を表示し、
前記帯画像は一定の高さ又は幅を備え、
前記帯画像が単色の色又は特定の模様の繰り返しパターンから成る画像であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の飲料用演出グラス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の飲料用演出グラスで用いるコンピュータプログラムを保存した記憶媒体であり、
前記コンピュータプログラムが前記映像表示面における前記第一表示エリアの位置及び/又は大きさをコンピュータメモリから取得し、
前記コンピュータプログラムが前記映像表示面における前記第二表示エリアの位置及び/又は大きさをコンピュータメモリから取得し、
前記コンピュータプログラムが前記透過用画像を前記第一表示エリアに表示し、
前記コンピュータプログラムが前記上下反転画像を前記第二表示エリアに表示することを特徴とする記憶媒体。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の飲料用演出グラスで用いるコンピュータプログラムを保存した記憶媒体であり、
前記コンピュータプログラムが前記映像表示面における前記第一表示エリアの位置及び/又は大きさをコンピュータメモリから取得し、
前記コンピュータプログラムが前記映像表示面における前記第二表示エリアの位置及び/又は大きさをコンピュータメモリから取得し、
前記コンピュータプログラムが前記透過用画像を前記第一表示エリアに表示し、
前記コンピュータプログラムが前記上下反転画像を前記第二表示エリアに表示し、
前記コンピュータプログラムが前記境界線の位置を変更することを特徴とする記憶媒体。
【請求項9】
請求項4に記載の飲料用演出グラスで用いるコンピュータプログラムを保存した記憶媒体であり、
前記コンピュータプログラムが前記スクィーズ画像を前記第一表示エリアに表示することを特徴とする記憶媒体。
【請求項10】
請求項6に記載の飲料用演出グラスで用いるコンピュータプログラムを保存した記憶媒体であり、
前記コンピュータプログラムが前記帯画像を前記境界線の位置に表示することを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用グラスを透過した画像と飲料グラス内の反射鏡で反射した画像を同時に且つ正確に映し出す飲料用演出グラス及びその飲料用演出グラスに使用する記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料を入れる機能以外に様々な機能を持ったグラスが開発されており、反射鏡をグラス内に配置した飲料用演出グラスと飲料のレンズ効果による画像の歪みをキャンセルする飲料用演出グラスが開発されている。
例えば特許文献1には本願発明者が発明した飲料用演出グラスが開示されている。この飲料用演出グラスは、グラス側面に固定された映像表示装置と、グラス本体内部に配置された反射鏡とを備えてりおり、映像表示装置の映像を疑似的にグラス内部に投影する演出が可能なグラスである。
特許文献2には本願発明者が発明した飲料用演出グラスが開示されている。この飲料用演出グラスは、画像の縦横比を制御する映像縦横比制御部を用いて横方向に圧縮されたスクィーズ画像を出力しグラス本体内部の飲料のレンズ効果による画像の歪みを相殺又はキャンセルすることが可能なグラスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6488049号
【特許文献2】特許第6749668号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の飲料用演出グラスはグラス内で反射した反射像とグラス内を透過した透過像を同時に視認する場合に問題が発生する。それはユーザーがそれら透過像と反射像を同時に視認出来る位置(例えばグラスの側面の上方側)からグラス本体を見る場合はそれら画像の内どちらか一方の画像が上下反転してしまうためユーザーからは正常な視聴が出来ないという問題である。特に映像表示装置の画像が文字画像の場合は透過像と反射像のいずれか一方の文字が反転して読めなくなるという非常に大きな問題を引き起こす。
特許文献2の飲料用演出グラスはグラス本体を透過した透過像の歪みを相殺するための横方向に圧縮されたスクィーズ画像を映像表示装置から出力するため、仮にそのグラスの内部に特許文献1のように反射鏡を配置するとその反射鏡の反射像がスクィーズ画像により横方向に潰れてしまいユーザーは反射像を正確に視認出来ないという問題を有する。
【0005】
本発明は上記問題を鑑み、グラス本体内で反射する反射像とグラス本体を透過する透過像が互いに上下反転する事なくその反射像と透過像を同時にユーザーが視認出来る飲料用演出グラスを提供することを課題とする。
また、その飲料用演出グラスに使用するプログラムを収録した記憶媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の飲料用演出グラスは、上部開口を有する有底の筒状体であるグラス本体と、前記グラス本体の側面に映像表示装置を固定するための固定機構と、前記映像表示装置の映像表示面を前記グラス本体の外部から視認するための透明部と、透過用画像を表示する第一表示エリアと、上下反転画像を表示する第二表示エリアと、前記第一表示エリアと前記第二表示エリアの位置を制御する画像表示エリア制御部と、前記グラス本体の内部に配置される反射鏡とを備え、前記反射鏡は金属から成る層を少なくとも一つは備え、前記映像表示面は前記第一表示エリアと前記第二表示エリアを備え、前記画像表示エリア制御部は前記第一表示エリアと前記第二表示エリアの境界線の位置を変更する境界線位置制御部を備え、前記上下反転画像が前記反射鏡で反射され前記上部開口の方向に反射し、前記透過用画像が前記グラス本体内の飲料と前記透明部を透過して前記グラス本体の外部に至ることを特徴とする。
また、前記境界線位置制御部が前記境界線の位置を制御又は変更するコンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムであることを特徴とする。
また、前記画像表示エリア制御部がコンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムとして前記映像表示装置の筐体の内部又は外部のコンピュータに実装されていることを特徴とする。
また、前記透明部が前記グラス本体の外側に向けて凸形状に湾曲しており、
前記透過用画像を水平方向に圧縮したスクィーズ画像を前記第一表示エリアに出力するための画像縦横比制御部を備えることを特徴とする。
また、前記画像縦横比制御部が前記透明部の表面にフレネルレンズのパターンをエンボス加工したフレネルレンズであることを特徴とする。
また、前記境界線の位置に長方形の形状の帯画像を表示し、前記帯画像は一定の高さ又は幅を備え、前記帯画像が単色の色又は特定の模様の繰り返しパターンから成る画像であることを特徴とする。
本発明の記録媒体は、上記飲料用演出グラスで用いるコンピュータプログラムを保存した記憶媒体であり、前記コンピュータプログラムが前記映像表示面における前記第一表示エリアの位置及び/又は大きさをコンピュータメモリから取得し、前記コンピュータプログラムが前記映像表示面における前記第二表示エリアの位置及び/又は大きさをコンピュータメモリから取得し、前記コンピュータプログラムが前記透過用画像を前記第一表示エリアに表示し、前記コンピュータプログラムが前記上下反転画像を前記第二表示エリアに表示することを特徴とする。
また、前記コンピュータプログラムが前記映像表示面における前記第一表示エリアの位置及び/又は大きさをコンピュータメモリから取得し、前記コンピュータプログラムが前記映像表示面における前記第二表示エリアの位置及び/又は大きさをコンピュータメモリから取得し、前記コンピュータプログラムが前記透過用画像を前記第一表示エリアに表示し、前記コンピュータプログラムが前記上下反転画像を前記第二表示エリアに表示し、前記コンピュータプログラムが前記境界線の位置を変更することを特徴とする。
また、前記コンピュータプログラムが前記スクィーズ画像を前記第一表示エリアに表示することを特徴とする。
また、前記コンピュータプログラムが前記帯画像を前記境界線の位置に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の飲料用演出グラスは、グラス本体の側面の映像表示装置の画像をグラス本体の透明部に透過する透過像とグラス本体内部の反射鏡によって反射する反射像に分ける事が可能である。また、映像表示面は(透過用画像を表示する)第一表示エリアと(上下反転画像を表示する)第二表示エリアが独立して存在するため、ユーザーは透過像と反射像を同時又は交互にシームレスに切り替えて視認することが可能である。また、それら反射像と透過像は互いに上下反転して視認される事は決して無い。
本発明の飲料用演出グラスは(透過用画像を表示する)第一表示エリアと(上下反転画像を表示する)第二表示エリアの境界線の位置がコンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムによって変更又は制御可能にしているため、様々なサイズの映像表示装置や反射鏡に映像表示装置の固定位置を変更無しに対応できる。また、グラス本体内の反射鏡とグラス本体底面のなす角(又は反射鏡と映像表示面のなす角)を変更した場合も即座に対応可能である。
本発明の飲料用演出グラスは映像表示面は(透過用画像を表示するための)第一表示エリアと(上下反転画像を表示するための)第二表示エリアが独立して存在するため、第一表示エリアに表示する画像(透過用画像)に飲料のレンズ効果による歪みを相殺するスクィーズ画像(水平方向圧縮画像)を採用しても、第二表示エリアに表示する上下反転画像に影響がない為、ユーザーは正確な縦横比(英:aspect ratio)の反射像と透過像を同時視認出来る。
本発明の飲料用演出グラスは(透過用画像を表示する)第一表示エリアと(上下反転画像を表示する)第二表示エリアの境界線の位置に一定の幅(又は高さ)を備えた長方形の形状の単色の帯画像を表示するようにすれば、グラス本体の内部の反射鏡の上端部の高さと第二表示エリアの上端部の高さを完全に一致させなくても、ユーザーがグラス本体上部開口から視認する反射像(上下反転画像)に透過用画像の一部が映り混む事態を回避出来るため、ユーザーは反射像のみを快適に視認する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態の飲料用演出グラスを示す斜視図(a)と上方断面図(b)
【
図2】反射鏡に上下反転画像の他に透過用画像の一部が写り込む例を示す斜視図(a)及び上方断面図(b)
【
図3】様々な大きさの反射鏡や映像表示装置を用いた飲料用演出グラスの例を示す斜視図(a)及び(b)
【
図4】境界線の位置に帯画像を表示した飲料用演出グラスを示す正面図(a)及び上方断面図(b)
【
図5】様々な形状の飲料用演出グラスの例を示す斜視図(a)及び(b)
【
図6】スクィーズ画像OFFの飲料用演出グラスを示す斜視図(a)とスクィーズ画像ONの飲料用演出グラスを示す斜視図(b)
【
図7】曲率半径による映像の拡大の縦横比の関係を示した図
【
図8】画像縦横比制御部として透明部表面のフレネルレンズを用いた例を示す図
【
図9】飲料用演出グラスで用いるコンピュータプログラムのフローチャート図
【
図10】表示エリアの境界線の位置を変更する場合のコンピュータプログラムのフローチャート図
【
図11】スクィーズ画像を表示する場合のコンピュータプログラムのフローチャート図
【
図12】帯画像を境界線の位置に表示する場合のコンピュータプログラムのフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0009】
[飲料用演出グラスの第1の実施の形態]
以下、本発明の飲料用演出グラスの第1の実施の形態を図面を用いて示す。
図1に示すように、飲料用演出グラス1は上部開口11を有する有底の筒状体であるグラス本体10と、映像表示装置80をグラス本体10に固定する固定機構15と、映像表示装置80の映像表示面81を外部から視認するための透明部12と、透過用画像90を表示する第一表示エリア82と上下反転画像91を表示する第二表示エリア83と、第一表示エリア82と前記第二表示エリア83の位置を制御する画像表示エリア制御部85と、グラス本体10の内部に配置される反射鏡30から概略構成される。
グラス本体10は上部開口11を有する有底の筒状体であり、グラス本体10の形状の例としては、
図1(a)のように通常のコップ型の形状、
図5(a)のように取っ手13を備えたビールジョッキ型(又はマグカップ型)の形状、
図5(b)のように上部開口11を塞ぐ蓋を備えたボトル型の形状等が挙げられる。グラス本体10の材質としてはガラスや樹脂等が挙げられる。グラス本体10の内部には飲料Lが充填される。
固定機構15は映像表示装置80をグラス本体10に固定するための固定機構であり、
図1(a)の例では固定機構15としてグラス本体10に設けられた格納部を用いている。固定機構15は映像表示装置80をグラス本体10に固定さえ出来ればどのような種類の固定機構を用いても良く、固定機構15はネジ機構や吸盤機構等を組み合わせた物を用いても良い。固定機構15の材料は特に制限は無いが映像表示装置80の映像表示面81を遮らないために透明の材料が望ましい。
透明部12は映像表示装置80の映像表示面81を外部から視認するためにグラス本体10の側面に設けられた透明なエリアである。透明部12の素材としては透明なガラスやアクリル等の透明な樹脂が挙げられる。ユーザーUは透明部12を介してグラス本体10の内部の飲料L越しに映像表示装置80の映像表示面81に映った画像(厳密には透過用画像90)をグラス本体10の外部から視認する。なお、
図1(a)内の破線P1は透過用画像90から投射された光の光路P1のイメージを説明のために図示した物であり、光路P1のように透過用画像90は飲料Lと透明部12を透過(又は通過)してグラス本体10の外部に至る。
反射鏡30は映像表示装置80の映像表示面81に映った画像(正確には上下反転画像91)をグラス本体10の上部開口11の方向に向けて反射するための部材であり、反射鏡30はグラス本体10の内部に配置される。なお、
図1(a)内の破線P2は上下反転画像91から投射された光の光路P2イメージを説明のために図示した物である。ユーザーUは反射鏡30により反射された上下反転画像91を上部開口11より視認する事が出来る。反射鏡30は金属から成る層を少なくとも一つは備えるアルミやステンレス等を用いた通常の鏡であれば何でも良い。但し反射鏡30としてハーフミラーやビームスプリッター等の入射像の一部を背後に透過させてしまう鏡(つまり半透明の誘電体から成る鏡)を用いることは禁止である。何故ならそれら半透明の鏡は本来反射すべき上下反転画像91をその背後に透過させてしまうため、グラス本体10側面には透過用画像90だけでなく上下反転画像91も(半透明のゴーストイメージのような状態で)写ってしまい、結果としてユーザーUは透過用画像90のみを快適に視認する事が不可能になるからである。そのため反射鏡30は(背後に透過用画像90を透過させないために)必ず金属から成る層を少なくとも一つは備える鏡でなければならない。
図1(a)のように映像表示装置80の映像表示面81は透過用画像90を表示する第一表示エリア82と上下反転画像91を表示する第二表示エリア83から構成されている。映像表示面81内の第二表示エリア83つまり上下反転画像91(
図1(a)の例では上下反転したAの文字画像を用いている)を表示しているエリアはグラス本体10内の反射鏡30により上部開口11方向に上下反転しながら反射されるため、
図1(b)のようにユーザーUが上部開口11側(より厳密にはグラス本体10越しに映像表示装置80が見える側で且つ上部開口11側)から視認する上下反転画像91の反射像93は上下反転していない通常の状態の画像(つまり
図1(b)のように上下反転していない通常のAの文字画像)になる。従ってグラス本体10外部のユーザーUの視点では透明部12を透過した透過像92(透過用画像90)と反射鏡30で反射した反射像93(上下反転画像91)は互いに上下反転する事は無くなる(つまり透過像92と反射像93共に上下反転しない正確な画像としてユーザーUは視認出来る)。
画像表示エリア制御部85は第一表示エリア82と第二表示エリア83の位置を制御するために用いられる。画像表示エリア制御部85は第一表示エリア82と第二表示エリア83の境界線84の位置を制御又は変更する境界線位置制御部86を備える。
画像表示エリア制御部85と境界線位置制御部86は専用ICやASIC等の形態でグラス本体10の底面や映像表示装置80の筐体内部に埋め込まれていても良い。また、コンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムとして映像表示装置80の筐体の内部又は外部のコンピュータに実装されていても良い。極端な話、画像表示エリア制御部85と境界線位置制御部86は遠隔地のサーバーコンピュータ内にクラウドソフトウェアやASPとして実装されていても構わない。前記画像表示エリア制御部85はその内部に上下反転画像91と透過用画像90を保存するコンピュータメモリを備えても良い。
【0010】
第一表示エリア82と第二表示エリア83について補足説明をする。
本発明の飲料用演出グラス1ではユーザーUが上下反転画像91を視認した際の快適性を高めるためにグラス本体10の底面から第二表示エリア83の上端部迄の高さh1とグラス本体10の底面から反射鏡30の上端部迄の高さh2は
図1(a)のように等しく(又はほぼ等しく)しておく方が望ましい。何故ならば仮に
図2(a)のようにh1<h2の場合、反射鏡30が上下反転画像91だけでなく透過用画像90の一部も反射してしまうため、ユーザーUが上部開口10から反射鏡30を見ると
図2(b)のように上下反転画像91の他に(本来透過像92)である透過用画像90の一部がはみ出て視認されてしまい上下反転画像91が非常に見難くなるからである。しかしながら、高さh2は(
図3(a)のように)反射鏡30とグラス本体10底面とのなす角a1を変更或いは他のサイズの反射鏡30に付け替えるだけで容易に変わってしまう。同様に高さh1は(
図3(b)のように)他の映像表示装置80に付け替えだけで容易に変わってしまう。そのため本発明の飲料用演出グラス1では反射鏡30のサイズやなす角a1を変更した場合に対応できるように(つまり映像表示装置80の固定位置を変更すること無しにh1=h2に出来るように)、第一表示エリア82と第二表示エリア83の境界線84の位置を制御又は変更する境界線位置制御部86を備える。
境界線位置制御部86は第一表示エリア82と第二表示エリア83の境界線84の位置を変更するコンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムとして実装しても良い。この方式のメリットは反射鏡30のサイズと市販の様々な映像表示装置のサイズを予めこのコンピュータソフトウェア内のデータベースに登録しておくことにより、映像表示装置80として使用する映像表示装置をそのデータベース内から選択するだけで境界線84の位置がh1=h2になるように自動で(しかも映像表示装置80の既定の固定位置を変更すること無しに)変更出来ることが挙げられる。
なお、高さh2の値を画像解析により自動取得出来るカメラセンサーと組み合わせることにより、反射鏡30の角度やサイズ、或いは映像表示装置80のサイズを変更した場合でもh1=h2にする値を自動計算できるようにしても良い。
【0011】
反射鏡30のなす角a1を調整する際に、目視や手作業で完全にh1とh2を等しくする事が困難な場合が有る。その場合の解決策としては
図4(a)のように境界線84の位置に一定の高さ(又は幅)を備えた長方形の形状の帯画像87を表示することにより
図4(b)のように反射鏡30に写り込む透明用画像90の一部を隠して(覆って)しまう方法が考えられる。なお帯画像87は画像を区切るレターボックスの役割を果たす単色の画像である。なお
図4(a)のように帯画像87の高さh3、グラス本体10の底面から第二表示エリア83の上端部迄の高さh1、グラス本体10の底面から反射鏡30の上端部迄の高さh2とすると、高さh2の値がh1≦h2≦h1+h3の範囲に有る限り
図4(b)のように反射鏡30上の透明用画像90が写り込む位置には帯画像87が写るため(別の言い方をすれば帯画像87により透過用画像90を完全に覆い隠せるため)ユーザーUは反射像93(上下反転画像91)のみを上部開口11から視認出来るようになる。そのため反射鏡30のなす角a1の角度調整が多少ズレてもユーザーUは反射像93(上下反転画像91)のみを上部開口11から視認出来るようになる。
なお帯画像87は上下反転してもユーザーUが煩わしく感じない画像、例えば単色の色又は特定の模様の繰り返しパターンから成る画像が望ましい。
【0012】
グラス本体10は通常のグラスやビールジョッキと同じく有底の筒状体であるためグラス本体10の内部の飲料Lの形状は必然的に
図1(a)や
図6(a)のように円筒形又はほぼ円筒形になる。円筒形は垂直方向には湾曲していないため飲料Lの垂直方向の曲率半径は無限大と見做せる。一方、飲料Lは水平方向に円形に湾曲しているため
図7のように水平方向の曲率半径RHは必ず有限の値になる(通常の大きさのグラスの場合、飲料Lの水平方向の曲率半径RHは数[cm]~10[cm]程度)。水の光の屈折率は約1.333であり空気の光の屈折率に比して大きい為、円筒径の水又は飲料Lを透過した画像は
図7の透過像92のように水平方向に引き伸ばされて拡大される。これは円筒形の形状の飲料Lが光屈折媒体となり凸レンズ(厳密には両凸レンズ)と同じ働きをするためである(なお、両凸レンズの詳細は光学或いはレンズの専門書を参照されたい)。そのため
図6(a)のように飲料Lを透過した透過像92の横幅W2は透過用画像90のW1よりも大きくなる(つまり透過像92は透過用画像90を水平方向に何割か拡大した画像になる)。
ユーザーUが反射像93と同じオリジナルの縦横比(英:aspect ratio)を維持した透過像92を視認可能にする方としては、
図6(b)のように透過用画像90を予め水平方向に圧縮したスクィーズ画像94を第一表示エリア82に出力する画像縦横比制御部100を用いる方法が考えられる。画像縦横比制御部100により透過用画像90として予め水平方向に圧縮したスクィーズ画像94を第一表示エリア82に出力するため、ユーザーUは透過像92も反射像93もオリジナルの縦横比(英:aspect ratio)を維持した状態で視認可能になる。
なお、水平方向に圧縮したスクィーズ画像94を生成するアルゴリズムはLD再生装置やDVD再生装置又はフォトレタッチソフトに内蔵の既知のアルゴリズムを用いれば良い。
なお、一つ注意事項が有りそれは第二表示エリア83には絶対にスクィーズ画像を表示してはならないという事である。第二表示エリア83は反射鏡30により飲料Lの水面方向に向けて投影されるエリアであり、水面は平坦であり湾曲していないため飲料Lのレンズ効果はほぼ起こらない。そのため仮に第二表示エリア83に(第一表示エリア82と同じく)スクィーズ画像を表示するとユーザーUから見える反射像93は水平方向に圧縮された歪んだ画像になってしまう。
本発明の飲料用演出グラス1では第一表示エリア82と第二表示エリア83は独立しているためユーザーUは透過像92も反射像93もオリジナルの縦横比(英:aspect ratio)を維持した歪みの無い状態で視認可能になる。
なお、
図8のように画像縦横比制御部100として透明部12の表面にフレネルレンズのパターンをエンボス加工したフレネルレンズ20を用いる方法が有る。
フレネルレンズ20はフレネルレンズのパターンを変更する事により垂直方向の画像の拡大率と水平方向の画像の拡大率を各々制御できるため透過像92を水平方向に圧縮出来る(つまり透過像92その物をスクィーズ画像化出来る)。本方式のメリットは画像縦横比制御部100用ICやコンピュータをグラス本体や映像表示装置80に搭載しなくて良いため飲料用演出グラス1の重量を削減できる事とソフトウェアやコンピュータプログラムでスクィーズ画像を生成する方式でないためコンピュータのリソース消費する事が無くなる事が挙げられる。また、他のメリットとしては、フレネルレンズ20は通常の凸レンズと違い厚さと重量が無いため透明部12に画像縦横比制御部100として凸レンズを搭載した場合に比して透明部12部分の重量との厚さを減らせることが挙げられる。なお、フレネルレンズについて補足説明をしておくと、フレネルレンズとは透明な物体表面に同心円状等のフレネルレンズのパターンを彫刻又はエンボス加工する事によりその透明な物体表面をレンズ化した物である(フレネルレンズの更なる詳細については光学やフレネルレンズの専門書を参照されたい)。なお、フレネルレンズ20は
図8のように映像表示装置80と反対側(つまりユーザーU側)の透明部12に配置する方法と映像表示装置80と飲料Lの間の透明部12に配置する方法が考えられる(どちらの配置方法もフレネルレンズ20は画像縦横比制御部100として完全に動作する)。
【0013】
図9に本発明の飲料用演出グラス1で用いるコンピュータプログラムのフローチャートを示す。
STEP1において透過用画像90をコンピュータメモリより取得し、上下反転画像91をコンピュータメモリより取得し、映像表示面81における第一表示エリア82と第二表示エリア83の位置又は大きさをコンピュータメモリより取得する。
STEP2において透過用画像90を第一表示エリア82に表示し、上下反転画像91を第二表示エリア83に表示した後にプログラムを終了する。
【0014】
図10に表示エリアの境界線84の位置を変更する場合のコンピュータプログラムのフローチャート図を示す。
STEP1において透過用画像90をコンピュータメモリより取得し、上下反転画像91をコンピュータメモリより取得し、映像表示面81における第一表示エリア82と第二表示エリア83の位置又は大きさをコンピュータメモリより取得する。
STEP2においてコンピュータメモリより取得した第一表示エリア82と第二表示エリア83の位置又は大きさのデータを元に現在の境界線84を計算する。
STEP3において境界線84を変更する。
STEP4において変更された境界線84を元に新たな第一表示エリア82と第二表示エリア83の位置又は大きさを計算する。
STEP5において透過用画像90を第一表示エリア82に表示し、上下反転画像91を第二表示エリア83に表示した後にプログラムを終了する。
【0015】
図11にスクィーズ画像を表示する場合のコンピュータプログラムのフローチャート図を示す。
STEP1において透過用画像90をコンピュータメモリより取得し、上下反転画像91をコンピュータメモリより取得し、映像表示面81における第一表示エリア82と第二表示エリア83の位置又は大きさをコンピュータメモリより取得する。
STEP2において透過用画像90のデータからスクィーズ画像94を生成。
STEP3においてスクィーズ画像94を第一表示エリア82に表示し、上下反転画像91を第二表示エリア83に表示した後にプログラムを終了する。
【0016】
図12に帯画像を境界線の位置に表示する場合のコンピュータプログラムのフローチャート図を示す。
STEP1において透過用画像90をコンピュータメモリより取得し、上下反転画像91をコンピュータメモリより取得し、映像表示面81における第一表示エリア82と第二表示エリア83の位置又は大きさをコンピュータメモリより取得し、帯画像87をコンピュータメモリより取得する。
STEP2においてスクィーズ画像94を第一表示エリア82に表示し、上下反転画像91を第二表示エリア83に表示し、帯画像87を第一表示エリア82と第二表示エリア83の境界線84の位置に表示した後にプログラムを終了する。
なお、
図9、
図10、
図11、
図12に示したフローチャートのコンピュータプログラムはフラッシュメモリ、DRAM、磁気記憶媒体、光記憶媒体等の既知の記憶媒体に保存しても良い。また、携帯型通信装置300内のメモリにアプリケーションソフトウェアの形態でインストール(保存)しても良い。
また、
図9、
図10、
図11、
図12に示したフローチャートのコンピュータプログラムのアルゴリズムは一例に過ぎず他のアルゴリズムを用いても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、グラス本体の側面の映像表示装置の反射像と透過像を互いに上下反転させること無しに視認出来る飲料用演出グラスであり、反射鏡の角度又はサイズ、或いは映像表示装置のサイズを変更した場合も映像表示装置の固定位置を変更する事無しにユーザーはグラス本体の上部開口から歪みの無い画像を快適に視認出来る。以上より本発明は産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0018】
U ユーザー
L 飲料(液体)
P1 光路
P2 光路
h1 グラス本体の底面から第二表示エリアの上端部迄の高さ
h2 グラス本体の底面から反射鏡の上端部迄の高さ
h3 帯画像の高さ
a1 なす角(反射鏡とグラス底面のなす角)
R 曲率半径
RH 曲率半径(水平方向)
W1 横幅
W2 横幅
W3 横幅
W4 横幅
1 飲料用演出グラス
10 グラス本体
11 上部開口
12 透明部
13 取っ手
14 蓋
15 固定機構
20 フレネルレンズ
30 反射鏡
50 凸レンズ
80 映像表示装置
81 映像表示面
82 第一表示エリア
83 第二表示エリア
84 境界線
85 画像表示エリア制御部
86 境界線位置制御部
87 帯画像
90 透過用画像
91 上下反転画像
92 透過像
93 反射像
94 スクィーズ画像
100 画像縦横比制御部