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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091093
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】アクティブ除振システム
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20220613BHJP
   F16F 15/067 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
F16F15/02 A
F16F15/067
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030019
(22)【出願日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2020203570
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000201869
【氏名又は名称】倉敷化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 寛人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 伸悟
(72)【発明者】
【氏名】山本 修司
(72)【発明者】
【氏名】藤原 靖也
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048AB08
3J048AB11
3J048AD01
3J048BC02
3J048CB30
3J048DA01
3J048EA13
(57)【要約】
【課題】アクティブ除振システムに関して、簡単な構成でもって、除振性能を向上する。
【解決手段】アクティブ除振システム1は、被支持体3を基礎2に対して弾性支持するコイルばね24と、被支持体及び基礎の振動状態を検出する振動センサ26,27と、被支持体に制御力を付加するアクチュエータ25と、センサの検出した振動状態に基づいて、被支持体の振動及び基礎から被支持体に伝達される振動を減殺するための制御力を被支持体に付加するようにアクチュエータを制御するコントローラ28と、を有するアクティブ除振装置20を複数台備える。各除振装置は、被支持体を支持するように基礎の互いに異なる箇所に配置される。各除振装置のコントローラは、センサの検出した、被支持体及び基礎の当該配置箇所に対応する部分の振動状態に基づいて、他の除振装置のコントローラとは独立して別個に、被支持体の当該配置箇所に対応する部分に制御力を付加する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被支持体を基礎に対して弾性支持するための弾性体と、
前記被支持体及び前記基礎の少なくとも一方における鉛直方向及び水平方向を含む少なくとも並進3方向の振動状態を検出する振動検出手段と、
前記被支持体に対して制御力を付加するアクチュエータと、
前記振動検出手段の検出した前記振動状態に基づいて、前記被支持体の振動及び前記基礎から前記被支持体に伝達される振動の少なくとも一方を減殺するための制御力を前記被支持体に対して付加するように前記アクチュエータを制御する制御手段と、
を有するアクティブ除振装置を複数台備えてなり、
各前記アクティブ除振装置は、前記被支持体を支持するように前記基礎における互いに異なる箇所に配置されており、前記制御手段が、前記振動検出手段の検出した、前記被支持体及び前記基礎の少なくとも一方における当該配置箇所に対応する部分の前記振動状態に基づいて、他の前記アクティブ除振装置の前記制御手段とは独立して別個に、前記被支持体における前記配置箇所に対応する部分に対して前記制御力を付加するように構成されている、アクティブ除振システム。
【請求項2】
請求項1に記載のアクティブ除振システムにおいて、
前記アクチュエータは、前記基礎に対して傾斜した状態で配置されている、アクティブ除振システム。
【請求項3】
請求項2に記載のアクティブ除振システムにおいて、
前記振動検出手段は、前記基礎に対して傾斜した状態で配置されており、
前記アクチュエータの傾斜角度と前記振動検出手段の傾斜角度とは、互いに等しい、アクティブ除振システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載のアクティブ除振システムにおいて、
前記各アクティブ除振装置は、互いに接触しない状態で配置されている、アクティブ除振システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクティブ除振システムに関する。
【背景技術】
【0002】
基礎に対して弾性支持した被支持体に所定方向の振動を減殺するような制御力を付加するアクティブ除振装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示のアクティブ除振装置は、アクチュエータ及び振動センサを含む振動制御ユニットを、鉛直軸に対して斜めに配置することにより、アクチュエータの駆動力が、被支持体に対して鉛直軸に対して斜めに作用するように、構成されている。
【0004】
かかる構成によれば、1つの振動制御ユニットにより、鉛直方向及び水平方向の成分を含む振動の抑制が可能となり、アクチュエータの配置自由度を高めることができる。これにより、従来の直交配置では配置バランスが悪く8点制御としているところ、6点制御が可能となる。したがって、アクティブ除振装置の構成を簡単にして、装置の肥大化、組み立て工数の増大又は製造コストの増大を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-47308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のアクティブ除振装置では、一般に、被支持体を剛体とみなす剛体モデルが採用されており、被支持体全体として1つの振動状態が検出され、検出された被支持体全体の振動状態に基づいて除振制御が行われる。
【0007】
しかしながら、被支持体は完全な剛体ではないため、被支持体の振動状態は、部位毎に異なることがある。被支持体全体の振動状態に基づいた上記制御方法では、被支持体の振動状態が部位毎に異なるにもかかわらず、一律に被支持体全体として1つの振動状態としているため、十分な除振性能を発揮するとは言い難い。基礎の振動状態についても同様である。
【0008】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的とするところは、アクティブ除振システムに関して、簡単な構成でもって、除振性能の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るアクティブ除振システムは、被支持体を基礎に対して弾性支持するための弾性体と、上記被支持体及び上記基礎の少なくとも一方における鉛直方向及び水平方向を含む少なくとも並進3方向の振動状態を検出する振動検出手段と、上記被支持体に対して制御力を付加するアクチュエータと、上記振動検出手段の検出した上記振動状態に基づいて、上記被支持体の振動及び上記基礎から上記被支持体に伝達される振動の少なくとも一方を減殺するための制御力を上記被支持体に対して付加するように上記アクチュエータを制御する制御手段と、を有するアクティブ除振装置を複数台備えてなり、各上記アクティブ除振装置は、上記被支持体を支持するように上記基礎における互いに異なる箇所に配置されており、上記制御手段が、上記振動検出手段の検出した、上記被支持体及び上記基礎の少なくとも一方における当該配置箇所に対応する部分の上記振動状態に基づいて、他の上記アクティブ除振装置の上記制御手段とは独立して別個に、上記被支持体における上記配置箇所に対応する部分に対して上記制御力を付加するように構成されている。
【0010】
かかる構成によれば、アクティブ除振装置の配置箇所毎に異なる振動状態に応じて、個別に除振制御を行うことができる。したがって、被支持体全体又は基礎全体の振動状態に基づいた制御方法に比較して、十分に除振性能を発揮することができる。
【0011】
また、複数台のアクティブ除振装置によって被支持体を支持するだけでよいので、構成が簡単である。
【0012】
以上、アクティブ除振システムに関して、簡単な構成でもって、除振性能の向上を図ることができる。
【0013】
一実施形態では、上記アクチュエータは、上記基礎に対して傾斜した状態で配置されている。
【0014】
かかる構成によれば、アクチュエータが基礎に対して傾斜しているので、1つのアクチュエータによって、被支持体に対して鉛直方向及び水平方向の両方に制御力を付加することができる。これにより、アクチュエータのレイアウトの自由度を高めることができる。したがって、各アクチュエータが、基礎に対して傾斜せずに、鉛直方向及び水平方向のみに配置される場合に比較して、アクチュエータの個数を削減することができる。
【0015】
一実施形態では、上記振動検出手段は、上記基礎に対して傾斜した状態で配置されており、上記アクチュエータの傾斜角度と上記振動検出手段の傾斜角度とは、互いに等しい。
【0016】
かかる構成によれば、振動検出手段が基礎に対して傾斜しているので、1つの振動検出手段によって、被支持体又は基礎の鉛直方向及び水平方向の両方における振動状態を検出することができる。これにより、振動検出手段のレイアウトの自由度を高めることができる。したがって、各振動検出手段が、基礎に対して傾斜せずに、鉛直方向及び水平方向のみに配置される場合に比較して、振動検出手段の個数を削減することができる。
【0017】
さらに、振動検出手段による振動状態の検出方向と、アクチュエータによる制御力の付加方向とが、互いに一致するので、両者の間で角度変換を行う必要がなく、制御手段の構成が簡単になる。
【0018】
一実施形態では、上記各アクティブ除振装置は、互いに接触しない状態で配置されている。
【0019】
かかる構成によれば、各アクティブ除振装置の相互間における制御力の干渉を、抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、アクティブ除振システムに関して、簡単な構成でもって、除振性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本開示に係るアクティブ除振システムの概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、各アクティブ除振装置の内部構造を示す平面図である。
図3図3は、アクチュエータ及び被支持体側振動センサの概略構成を示す正面図である。
図4図4は、基礎側振動センサの概略構成を示す正面図である。
図5図5は、アクティブ除振システム全体の制御態様を示すブロック図である。
図6図6は、実施例及び比較例に係るアクティブ除振システムの除振性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。本実施形態では、図1に示すように、基礎に沿って延び且つ互いに直交する水平2方向をX方向及びY方向、基礎に直交する鉛直方向をZ方向とする。X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向という場合がある。
【0023】
(アクティブ除振システムの全体構成)
図1に示すように、アクティブ除振システム1は、同種のアクティブ除振装置20を4台備えてなる。各アクティブ除振装置20は、互いに同型(同寸法、同性能)である。アクティブ除振システム1は、基礎2に対して被支持体3を弾性支持しており、被支持体3に所定方向の振動を減殺するような制御力を付加することにより、被支持体3の振動を制御するものである。基礎2は、例えば、アクティブ除振装置20が配置される床面である。
【0024】
被支持体3は、半導体製造装置や電子顕微鏡等のように振動の影響を受けやすい精密機器4と、精密機器4が載せられるテーブル5と、で構成されている。
【0025】
テーブル5は、四脚構造であり、略正方形状の水平板5aと、水平板の四隅から下方に延びる4つの脚部5bと、隣り合う脚部5b同士を連結する梁部5cと、各脚部5bの下端に設けられた高さ調整用レベラー5eと、を有する。
【0026】
各アクティブ除振装置20は、被支持体3を支持するように、基礎2における互いに異なる箇所に配置されており、テーブル5の4つの脚部5bに対応するように、前後左右に整列している。各アクティブ除振装置20は、互いに接触しない状態で、配置されており、隣り合うアクティブ除振装置20同士の間には、隙間が設けられている。
【0027】
各アクティブ除振装置20は、テーブル5の脚部5b(レベラー5e)を1つずつ支持するように、配置されている。各脚部5bは、各アクティブ除振装置20において荷重が均等に加わるように、各アクティブ除振装置20の上面の中央に載置されている。
【0028】
詳細には、4つのアクティブ除振装置20は、第1アクティブ除振装置201、第2アクティブ除振装置202、第3アクティブ除振装置203及び第4アクティブ除振装置204で構成されている。4つの脚部5bは、第1脚部5b1、第2脚部5b2、第3脚部5b3及び第4脚部5b4で構成されている。第1アクティブ除振装置201には、第1脚部5b1が載置されている。第2アクティブ除振装置202には、第2脚部5b2が載置されている。第3アクティブ除振装置203には、第3脚部5b3が載置されている。第4アクティブ除振装置204には、第4脚部5b4が載置されている。なお、図1には、脚部5bについて、代表として、第1脚部5b1にのみ符号を付しており、第2脚部5b2、第3脚部5b3及び第4脚部5b4の符号を省略している(図5参照)。
【0029】
図1において、符号P1は、被支持体3における第1アクティブ除振装置201の配置箇所に対応する部分を示しており、第1脚部5b1と同等である。符号Q1は、基礎2における第1アクティブ除振装置201の配置箇所に対応する部分を示しており、基礎2における第1アクティブ除振装置201の直下部分と同等である。
【0030】
図1において図示省略するが(図5参照)、符号P2は、被支持体3における第2アクティブ除振装置202の配置箇所に対応する部分を示しており、第2脚部5b2と同等である。符号Q2は、基礎2における第2アクティブ除振装置202の配置箇所に対応する部分を示しており、基礎2における第2アクティブ除振装置202の直下部分と同等である。同様に、符号P3は、被支持体3における第3アクティブ除振装置203の配置箇所に対応する部分を示しており、第3脚部5b3と同等である。符号Q3は、基礎2における第3アクティブ除振装置203の配置箇所に対応する部分を示しており、基礎2における第3アクティブ除振装置203の直下部分と同等である。符号P4は、被支持体3における第4アクティブ除振装置204の配置箇所に対応する部分を示しており、第4脚部5b4と同等である。符号Q4は、基礎2における第4アクティブ除振装置204の配置箇所に対応する部分を示しており、基礎2における第4アクティブ除振装置204の直下部分と同等である。
【0031】
(各アクティブ除振装置の構成)
図1に示すように、各アクティブ除振装置20は、上から見て略正方形状の直方体状であり、幅寸法よりも高さ寸法が小さい。各アクティブ除振装置20は、上面を構成するアッパープレート21と、側面を構成するサイドプレート22と、下面を構成するロアプレート23と、を有する。
【0032】
図2に示すように、サイドプレート22及びロアプレート23は、互いに一体化して、上側に開口した略箱形状を構成しており、当該開口にアッパープレート21(図2において図示せず)が嵌まり込んでいる。
【0033】
各アクティブ除振装置20は、内部構造として、弾性体としての4つのコイルばね24と、6つアクチュエータ25と、振動検出手段の一部としての3つの基礎側振動センサ(FFセンサ)26と、振動検出手段の一部としての6つの被支持体側振動センサ(FBセンサ)27と、制御手段としてのコントローラ28と、を有する。
【0034】
4つのコイルばね24は、ロアプレート23の上面の4隅に、ボールねじからなるレベラー29を介して、それぞれ配置されている。各コイルばね24は、アッパープレート21及びロアプレート23を介して、被支持体3を基礎2に対して弾性支持するためのものである。コイルばね24は、所謂不等ピッチスプリングである。
【0035】
6つのアクチュエータ25は、アクティブ除振装置20の中心に対して周方向に沿って、配置されている。6つのアクチュエータ25は、制御力の作用線が互いに平行に延びる2つのアクチュエータ25,25からなるアクチュエータ対を、3対構成する。各アクチュエータ25は、アッパープレート21を介して、被支持体3に対して制御力を付加する。アクチュエータ25は、リニアモータである。
【0036】
図3に示すように、各アクチュエータ25は、その制御力の作用方向が基礎2に対して傾斜した状態で、ロアプレート23上に配置されている。各アクチュエータ25の作用方向の基礎2に対する傾斜角度を、θで示す。
【0037】
ロアプレート23には、アクチュエータ25を支持する支持部材30が6つ取り付けられている。各支持部材30は、各アクチュエータ25の作用方向を基礎2に対して傾斜させている。各支持部材30には、アクチュエータ25の制御力の作用方向に直交する支持面30aが形成されている。
【0038】
各アクチュエータ25は、ブラケット31を介してアッパープレート21に固定された筒壁部25aと、筒壁部25a内を往復動する摺動部材25bと、を有する。
【0039】
摺動部材25bは、支持部材30の支持面30aに当接する。筒壁部25aの内部には、コントローラ28からの制御信号に応じた電流が流れるコイル(図示せず)と、磁石(図示せず)とが設けられている。コイルと磁石により発生する電磁力によって、摺動部材25bが往復動する。このように摺動部材25bが往復動することによって、支持面30aに直交する方向への制御力が、アッパープレート21を介して被支持体3に付加される。
【0040】
6つのアクチュエータ25は、各々が被支持体3に対してその作用方向に制御力を付加することによって、結果的に、鉛直方向及び水平方向を含む並進3方向(X,Y,Z方向)及び各並進軸回りの回転3方向(θx,θy、θz方向)において、被支持体3に対して制御力を付加する。
【0041】
各アクチュエータ25には、ブラケット31を介して被支持体側振動センサ27が一体的に設けられている。各被支持体側振動センサ27は、各アクチュエータ25の作用方向と同様に、その検出方向が基礎2に対して傾斜した状態で配置されている。アクチュエータ25の作用方向の傾斜角度と被支持体側振動センサ27の検出方向の傾斜角度とは、ともにθで互いに等しい。
【0042】
被支持体側振動センサ27は、加速度センサであり、被支持体3の振動状態としての振動加速度を検出する。6つの被支持体側振動センサ27は、各々がその検出方向における被支持体3の振動加速度を検出することによって、結果的に、被支持体3における鉛直方向及び水平方向を含む並進3方向(X,Y,Z方向)及び各並進軸回りの回転3方向(θx,θy、θz方向)において、振動加速度を検出する。
【0043】
図2に示すように、3つの基礎側振動センサ26は、アクティブ除振装置20の中心よりもY方向一方側(図2における下側)において、中心に対して周方向に沿って配置されている。
【0044】
図4に示すように、各基礎側振動センサ26は、その検出方向が基礎2に対して傾斜した状態で、ロアプレート23上に配置されている。各アクチュエータ25の作用方向の傾斜角度と各基礎側振動センサ26の検出方向の傾斜角度とは、ともにθで互いに等しい。
【0045】
すなわち、各被支持体側振動センサ27の検出方向の傾斜角度と各基礎側振動センサ26の検出方向の傾斜角度とは、ともにθで互いに等しい。
【0046】
ロアプレート23には、基礎側振動センサ26を支持する3つの支持部材32が取り付けられている。各支持部材32は、各基礎側振動センサ26の検出方向を基礎2に対して傾斜させている。各支持部材32には、基礎側振動センサ26の検出方向に直交する支持面32aが形成されている。基礎側振動センサ26は、略円柱状の本体部26aと、本体部26aの周縁部に設けられたフランジ部26bと、を有する。本体部26aは、支持面32aに空けられた孔(図示せず)に挿入されている。フランジ部26bは、支持面32aに当接した状態で、固定板33とともに、ボルトで共締めされている。これにより、基礎側振動センサ26は、支持部材32に固定されている。
【0047】
基礎側振動センサ26は、加速度センサであり、基礎2の振動状態としての振動加速度を検出する。3つの基礎側振動センサ26は、各々がその検出方向における基礎2の振動加速度を検出することによって、結果的に、基礎2における鉛直方向及び水平方向を含む並進3方向(X,Y,Z方向)及び各並進軸回りの回転3方向(θx,θy、θz方向)において、振動加速度を検出する。
【0048】
各被支持体側振動センサ27及び各基礎側振動センサ26は、双方とも、鉛直方向(Z方向)において、基礎2と被支持体3との間に配置されている。詳しくは、図3,4に示すように、各被支持体側振動センサ27及び各基礎側振動センサ26は、双方とも、鉛直方向(Z方向)において、アッパープレート21とロアプレート23との間に配置されている。また、図2に示すように、各被支持体側振動センサ27及び各基礎側振動センサ26は、双方とも、水平方向(X方向、Y方向)において、サイドプレート22の内側に配置されている。さらに詳しくは、図2に示すように、各被支持体側振動センサ27及び各基礎側振動センサ26は、水平方向(X方向、Y方向)において、後述のコントローラ28の中央部(図2の黒点を参照)よりもサイドプレート22に近接するように配置されている。
【0049】
アッパープレート21の下面中央には、各アクチュエータ25を制御するためのコントローラ28が、取り付けられている(図2において二点鎖線で図示)。各被支持体側振動センサ27及び各基礎側振動センサ26は、このコントローラ28を取り囲むように配置されている。
【0050】
コントローラ28は、各被支持体側振動センサ27から入力された信号、すなわち、各被支持体側振動センサ27の検出した被支持体3の振動加速度に基づいて、各アクチュエータ25に制御信号を出力し、被支持体3の振動を減殺するための制御力を被支持体3に対して付加するように、各アクチュエータ25をフィードバック制御する。
【0051】
例えば、コントローラ28は、振動加速度の積分値にフィルタ処理を施し、フィードバックゲインを乗算し、それを足し合せた後に反転して、アクチュエータ25への制御入力とする。
【0052】
コントローラ28は、各基礎側振動センサ26から入力された信号、すなわち、各基礎側振動センサ26の検出した基礎2の振動加速度に基づいて、各アクチュエータ25に制御信号を出力し、基礎2から被支持体3に伝達される振動を減殺するための制御力を被支持体3に対して付加するように、各アクチュエータ25をフィードフォワード制御する。
【0053】
例えば、コントローラ28は、基礎2からの振動に対してフィルタ処理を施し、フィードフォワードゲインを乗算して、アクチュエータ25への制御入力に足し合わせる。
【0054】
(アクティブ除振システム全体の制御態様)
図5に示すように、各アクティブ除振装置20は、被支持体3を支持するように基礎2における互いに異なる箇所に配置されている。各アクティブ除振装置20は、アクティブ除振ユニットとしてそれ自体で完結しており、互いに独立している。各アクティブ除振装置20のコントローラ28は、被支持体側振動センサ27及び基礎側振動センサ26の検出した、被支持体3及び基礎2における当該配置箇所に対応する部分の振動加速度に基づいて、他のアクティブ除振装置20のコントローラ28とは独立して別個に、被支持体3における当該配置箇所に対応する部分としての脚部5bに対して制御力を付加するように構成されている。
【0055】
詳細には、各アクティブ除振装置20は、除振制御中、種々の電気信号を互いに送受しないように構成されている。より詳細には、一のアクティブ除振装置20は、他のアクティブ除振装置20における被支持体側振動センサ27及び基礎側振動センサ26とは無関係に、上記制御力に対応した制御信号を生成する。同時に、一のアクティブ除振装置20は、このようにして生成された制御信号を、他のアクティブ除振装置20に入力しないように構成されている。
【0056】
具体的には、各アクティブ除振装置20のコントローラ28は、被支持体側振動センサ27の検出した、被支持体3における当該配置箇所に対応する部分(脚部5b)の振動加速度に基づいて、被支持体3の振動を減殺するように、アクチュエータ25をフィードバック制御する。
【0057】
また、各アクティブ除振装置20のコントローラ28は、基礎側振動センサ26の検出した、基礎2における当該配置箇所に対応する部分の振動加速度に基づいて、基礎2から被支持体3に伝達される振動を減殺するように、アクチュエータ25をフィードフォワード制御する。
【0058】
例えば、第1アクティブ除振装置201のコントローラ28は、被支持体側振動センサ27の検出した、被支持体3における当該配置箇所に対応する部分P1(第1脚部5b1)の振動加速度に基づいて、被支持体3における当該配置箇所に対応する部分P1(第1脚部5b1)に対して制御力を付加するように、アクチュエータ25をフィードバック制御する。
【0059】
第1アクティブ除振装置201のコントローラ28は、基礎側振動センサ26の検出した、基礎2における当該配置箇所に対応する部分Q1(第1アクティブ除振装置201の直下)の振動加速度に基づいて、被支持体3における当該配置箇所に対応する部分P1(第1脚部5b1)に対して制御力を付加するように、アクチュエータ25をフィードフォワード制御する。
【0060】
その他のアクティブ除振装置202,203,204についても同様である。第2アクティブ除振装置202は、被支持体3の部分P2(第2脚部5b2)及び基礎2の部分Q2(第2アクティブ除振装置202の直下)の振動加速度に基づいて、被支持体3の部分P2(第2脚部5b2)に対して制御力を付加する。第3アクティブ除振装置203は、被支持体3の部分P3(第3脚部5b3)及び基礎2の部分Q3(第3アクティブ除振装置203の直下)の振動加速度に基づいて、被支持体3の部分P3(第3脚部5b3)に対して制御力を付加する。第4アクティブ除振装置204は、被支持体3の部分P4(第4脚部5b4)及び基礎2の部分Q4(第4アクティブ除振装置204の直下)の振動加速度に基づいて、被支持体3の部分P4(第4脚部5b4)に対して制御力を付加する。
【0061】
(作用効果)
以上の通り、本実施形態によれば、アクティブ除振装置20の配置箇所毎に異なる振動状態に応じて、個別に除振制御を行うことができる。したがって、被支持体3全体又は基礎2全体の振動状態に基づいた制御方法に比較して、十分に除振性能を発揮することができる。
【0062】
また、4台のアクティブ除振装置20によって被支持体3を支持するだけでよいので、構成が簡単である。
【0063】
以上、アクティブ除振システム1に関して、簡単な構成でもって、除振性能の向上を図ることができる。
【0064】
アクティブ除振装置20の配置箇所毎に異なる被支持体3の振動状態に応じて、すなわち、被支持体3の部位毎に異なる振動状態に応じて、フィードバック制御を行うことによって、除振性能を向上させることができる。
【0065】
アクティブ除振装置20の配置箇所毎に異なる基礎2の振動状態に応じて、すなわち、基礎2の部位毎に異なる振動状態に応じて、フィードフォワード制御を行うことによって、除振性能を向上させることができる。特に、基礎2の状態が良好でなく、振動状態が部位毎にばらつきやすい場合に、有効である。
【0066】
アクチュエータ25が基礎2に対して傾斜しているので、1つのアクチュエータ25によって、被支持体3に対して鉛直方向及び水平方向の両方に制御力を付加することができる。これにより、アクチュエータ25のレイアウトの自由度を高めることができる。したがって、各アクチュエータ25が、基礎2に対して傾斜せずに、鉛直方向及び水平方向のみに配置される場合に比較して、アクチュエータ25の個数を削減することができる。
【0067】
さらに、アクチュエータ25を基礎2に対して傾斜させることで、アッパープレート21とロアプレート23との間の距離を小さくすることができるので、アクティブ除振装置20の高さを低くすることができる。
【0068】
被支持体側振動センサ27が基礎2に対して傾斜しているので、1つの被支持体側振動センサ27によって、被支持体3の鉛直方向及び水平方向の両方における振動状態を検出することができる。これにより、被支持体側振動センサ27のレイアウトの自由度を高めることができる。したがって、各被支持体側振動センサ27が、基礎2に対して傾斜せずに、鉛直方向及び水平方向のみに配置される場合に比較して、被支持体側振動センサ27の個数を削減することができる。
【0069】
さらに、被支持体側振動センサ27による被支持体3の振動状態の検出方向と、アクチュエータ25による制御力の付加方向とが、互いに一致するので、両者の間で角度変換を行う必要がなく、コントローラ28の構成が簡単になる。
【0070】
基礎側振動センサ26も基礎2に対して傾斜しており、その傾斜角度がアクチュエータ25の傾斜角度と一致するので、上述の被支持体側振動センサ27の場合と同様の効果が得られる。
【0071】
各アクティブ除振装置20が互いに接触しない状態で配置されるので、各アクティブ除振装置20の相互間における制御力の干渉を、抑制することができる。
【0072】
被支持体3を、各アクティブ除振装置20によって、4つの脚部5bにおいて、安定的に支持することができる。
【0073】
たとえ各アクティブ除振装置20自体が小型であったとしても、アクティブ除振装置20を複数台用いることによって、大型の被支持体3を支持することが可能になる。
【0074】
複数台のアクティブ除振装置によって被支持体を支持するとともに、各アクティブ除振装置を互いに協働させて、システム全体としてアクティブ除振制御を行う、アクティブ除振システムと比較して、複雑な制御システムを構築する必要がない、据付時に特別な調整が必要なく据付作業が容易である、等の利点がある。
【0075】
各被支持体側振動センサ27及び各基礎側振動センサ26が、双方とも、アッパープレート21とロアプレート23との間に配置されているので、各センサ26,27のいずれかがアッパープレート21の上側又はロアプレート23の下側に配置された場合に比較して、各アクティブ除振装置20の鉛直方向(Z方向)における寸法を、小さくすることができる。また、各被支持体側振動センサ27及び各基礎側振動センサ26が、双方とも、サイドプレート22の内側に配置されているので、各センサ26,27のいずれかがサイドプレート22の外側に配置された場合に比較して、各アクティブ除振装置20の水平方向(X方向、Y方向)における寸法を、小さくすることができる。
【0076】
(その他の実施形態)
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0077】
アクティブ除振装置20を、必ずしも4台備える必要はなく、複数台、すなわち、少なくとも2台以上備えればよい。
【0078】
基礎側振動センサ26及び被支持体側振動センサ27は、加速度センサに限定されず、例えば、振動状態として、基礎2に対する被支持体3の変位を検出する変位センサでもよい。
【0079】
各アクティブ除振装置20は、振動検出手段として、被支持体3の振動状態を検出する被支持体側振動センサ27及び基礎2の振動状態を検出する基礎側振動センサ26のうちの、少なくとも一方を、備えればよい。
【0080】
アクチュエータ25は、必ずしも、回転3方向(θx,θy、θz方向)に制御力を付加する必要はなく、少なくとも鉛直方向及び水平方向を含む並進3方向(X,Y,Z方向)において、被支持体3に対して制御力を結果的に付加すればよい。
【0081】
被支持体側振動センサ27は、必ずしも、回転3方向(θx,θy、θz方向)における振動状態を検出する必要はなく、少なくとも鉛直方向及び水平方向を含む並進3方向(X,Y,Z方向)において、被支持体3の振動状態を結果的に検出すればよい。
【0082】
基礎側振動センサ26は、必ずしも、回転3方向(θx,θy、θz方向)における振動状態を検出する必要はなく、少なくとも鉛直方向及び水平方向を含む並進3方向(X,Y,Z方向)において、基礎2の振動状態を結果的に検出すればよい。
【0083】
各アクティブ除振装置20と基礎2との間に、定盤が介在してもよい。また、各アクティブ除振装置20と被支持体3との間に、定盤が介在してもよい。当該定盤は、被支持体や基礎に含まれてもよい。
【0084】
アクチュエータ25は、リニアモータに限定されず、例えば空気ばね等でもよい。
【0085】
上述のフィードバック制御及びフィードフォワード制御の具体的方法は、あくまで例示であり、他の方法を採用してもよい。例えば、上述のように変位センサを用いる場合、コントローラ28は、変位センサによって検出される変位を小さくするように構成された変位フィードバック制御を行うことができる。
【0086】
各アクティブ除振装置20は、必ずしも、互いに同型でなくてもよく、寸法や性能が異なってもよい。例えば、被支持体3の重心が水平方向において当該被支持体3の中心からずれて位置する場合や、被支持体3の荷重分布にばらつきがある場合等に、各アクティブ除振装置20の寸法や性能に敢えて差異を持たせることで、重心の偏心や荷重分布のばらつきに起因するアンバランスを相殺すること等が考えられる。また、各アクティブ除振装置20は、必ずしも、前後左右に整列される必要はなく、例えば3台のアクティブ除振装置20を三角形状に並べもよい。
【実施例0087】
(実施例)
本実施形態に係るアクティブ除振システム1を用いた。約300kgの被支持体3を4台のアクティブ除振装置20によって支持した。
【0088】
(比較例)
約600kgの被支持体を従来型のアクティブ除振装置1台によって支持した。
【0089】
実施例及び比較例に係る除振性能のグラフを、図6に示す。横軸は周波数[Hz]、縦軸は振動伝達率[dB]を示す。振動伝達率は、基礎2の加速度振幅に対する被支持体3の加速度振幅の比を、デシベル表示したものである。振動伝達率が0dB以下であれば、その周波数領域において、適切に除振が行われたといえる。本実施例は、計測されたほぼ全ての周波数領域、すなわち、周波数50Hz以下の領域のほとんどにおいて、振動伝達率が0dB以下であり、適切に除振が行われたといえる。また、被支持体の重量が異なるので単純な比較はできないが、本実施例は、特に周波数15~30Hzの領域において、比較例に対して、高い除振性能を示している。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本開示は、アクティブ除振装置に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0091】
θ 傾斜角度
1 アクティブ除振システム
2 基礎
3 被支持体
4 精密機器
5 テーブル
5b 脚部
20 アクティブ除振装置
21 アッパープレート
23 ロアプレート
24 コイルばね(弾性体)
25 アクチュエータ
26 基礎側振動センサ(振動検出手段)
27 被支持体側振動センサ(振動検出手段)
28 コントローラ(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6