IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛知電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ボイラ装置 図1
  • 特開-ボイラ装置 図2
  • 特開-ボイラ装置 図3
  • 特開-ボイラ装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091171
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ボイラ装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/355 20220101AFI20220614BHJP
   F22B 35/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
F24H1/10 301F
F22B35/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203814
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】有川 清二
【テーマコード(参考)】
3L021
【Fターム(参考)】
3L021AA03
3L021CA10
3L021FA21
(57)【要約】
【課題】 複数のボイラの長寿命化と、同時期に故障するリスクの回避の双方を実現可能なボイラ装置を提供する。
【解決手段】複数台のボイラAのうちマスターボイラA1を一台、その他をスレーブボイラA2~A4として、選択的に設定する。出湯温度を設定温度に加熱する場合は、まず、マスターボイラA1を運転し、マスターボイラA1の火力指令が上限に達してもなお設定温度に達しない場合は、スレーブボイラA2~A4のうち、稼働時間が長い順に運転を開始する。ボイラAの運転台数を減じる場合は、スレーブボイラA2~A4のうち、稼働時間が短い順に運転を停止する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶水を貯水する缶体と、前記缶水を加熱するバーナーと、缶水を前記缶体と缶体外部に連結される熱媒流通管との間で循環させるポンプと、前記熱媒流通管内を流れる缶水温度を測定する缶水温度測定用温度センサと、前記熱媒流通管の途中に取り付けられる熱交換器と、該熱交換器を介して接続される入水管および出湯管と、該出湯管内の水温を測定する出湯配管用温度測定用温度センサと、前記缶水温度測定用温度センサおよび出湯配管用温度測定用温度センサから測定温度情報を検出して、前記バーナーへの火力指令および前記ポンプの駆動/停止を制御するコントローラを備えて構成されるボイラを複数備え、前記出湯管内を流れる出湯を当該複数のボイラによって温度制御する構成であり、当該複数のボイラの1つが選択的にマスタボイラとして機能し、その他のボイラが選択的にスレーブボイラとして機能し、前記出湯管内を流れる出湯温度が設定温度になるよう、前記マスタボイラは自機と前記スレーブボイラの運転を制御する場合、該スレーブボイラの累積稼働時間を監視して、当該スレーブボイラの稼働時間の多いものから優先して運転することを特徴とするボイラ装置。
【請求項2】
缶水を貯水する缶体と、前記缶水を加熱するバーナーと、缶水を前記缶体と缶体外部に連結される熱媒流通管との間で循環させるポンプと、前記熱媒流通管内を流れる缶水温度を測定する缶水温度測定用温度センサと、前記熱媒流通管の途中に取り付けられる熱交換器と、該熱交換器を介して接続される入水管および出湯管と、該出湯管内の水温を測定する出湯配管用温度測定用温度センサと、前記缶水温度測定用温度センサおよび出湯配管用温度測定用温度センサから測定温度情報を検出して、前記バーナーへの火力指令および前記ポンプの駆動/停止を制御するコントローラを備えて構成されるボイラを複数備え、前記出湯管内を流れる出湯を当該複数のボイラによって温度制御する構成であり、当該複数のボイラの1つが選択的にマスタボイラとして機能し、その他のボイラが選択的にスレーブボイラとして機能し、前記出湯管内を流れる出湯温度が設定温度になるよう、前記マスタボイラは自機と前記スレーブボイラの運転を制御する場合、該スレーブボイラの累積稼働時間を監視して、当該スレーブボイラの稼働時間の少ないものから優先して運転を停止することを特徴とするボイラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のボイラによって出湯温度を設定温度に制御するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数台のボイラを利用して、温水を設定温度に加熱制御する技術は知られている。このように複数台のボイラを利用することで、1つ1つのボイラの容量を小さくすることができるため、例えば、1台のボイラで全範囲の出湯量が賄える構成とした場合における、低出湯量時の効率低下を防止できるメリットがある。
【0003】
複数台のボイラに関する技術としては、下記特許文献1記載の多缶設置ボイラの台数制御技術が例示できる。以下に、当該台数制御技術について図4を用いて簡単に説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-337004号
【0005】
前記台数制御技術は、複数台のボイラを設置しておき、必要とされる蒸気量に応じて燃焼を行うボイラの台数を決定し、必要台数のボイラを稼働優先順位にしたがって順次燃焼させるものである。
【0006】
図4に示すように、1台のボイラが燃焼を行っている状態で、必要蒸気量の増加が生じた場合は、予め設定した稼働優先順位にしたがってボイラの燃焼台数を増加する。その後、必要蒸気量の減少によってボイラの運転台数を減少させる場合は、ボイラの稼働優先順位の変更を行い、直前に燃焼を開始したボイラ以外のボイラの1台を停止させるものである。
【0007】
このように制御することで、燃焼を開始したばかりのボイラが短時間のうちに停止し、特定のボイラが頻繁に発停を繰り返すことを防止できる。換言すれば、ボイラの稼働時間が長いものから停止させる構成であるといえる。
【0008】
以上の如くボイラの稼働優先順位を定期的に変更することにより、ボイラの燃焼時間を平均化できるので、システム全体の長寿命化が図れるメリットがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
然るに、前述したボイラの台数制御方法によると、システム全体の寿命を長期化できる一方で、複数のボイラの燃焼時間が平均化するので、複数のボイラが同時期に一斉に故障するリスクが増大する。そのため、システムの修繕費用が一時期に嵩み、経営上のリスクが生じることになる。
【0010】
そこで、本発明は、システム全体の長寿命化を図るとともに、複数のボイラが同時期に故障するリスクを極力避けることのできるボイラの台数制御技術を備えたボイラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、缶水を貯水する缶体と、前記缶水を加熱するバーナーと、缶水を前記缶体と缶体外部に連結される熱媒流通管との間で循環させるポンプと、前記熱媒流通管内を流れる缶水温度を測定する缶水温度測定用温度センサと、前記熱媒流通管の途中に取り付けられる熱交換器と、該熱交換器を介して接続される入水管および出湯管と、該出湯管内の水温を測定する出湯配管用温度測定用温度センサと、前記缶水温度測定用温度センサおよび出湯配管用温度測定用温度センサから測定温度情報を検出して、前記バーナーへの火力指令および前記ポンプの駆動/停止を制御するコントローラを備えて構成されるボイラを複数備え、前記出湯管内を流れる出湯を当該複数のボイラによって温度制御する構成であり、当該複数のボイラの1つが選択的にマスタボイラとして機能し、その他のボイラが選択的にスレーブボイラとして機能し、前記出湯管内を流れる出湯温度が設定温度になるよう、前記マスタボイラは自機と前記スレーブボイラの運転を制御する場合、該スレーブボイラの累積稼働時間を監視して、当該スレーブボイラの稼働時間の多いものから優先して運転することに特徴を有する。
【0012】
請求項2記載の発明は、缶水を貯水する缶体と、前記缶水を加熱するバーナーと、缶水を前記缶体と缶体外部に連結される熱媒流通管との間で循環させるポンプと、前記熱媒流通管内を流れる缶水温度を測定する缶水温度測定用温度センサと、前記熱媒流通管の途中に取り付けられる熱交換器と、該熱交換器を介して接続される入水管および出湯管と、該出湯管内の水温を測定する出湯配管用温度測定用温度センサと、前記缶水温度測定用温度センサおよび出湯配管用温度測定用温度センサから測定温度情報を検出して、前記バーナーへの火力指令および前記ポンプの駆動/停止を制御するコントローラを備えて構成されるボイラを複数備え、前記出湯管内を流れる出湯を当該複数のボイラによって温度制御する構成であり、当該複数のボイラの1つが選択的にマスタボイラとして機能し、その他のボイラが選択的にスレーブボイラとして機能し、前記出湯管内を流れる出湯温度が設定温度になるよう、前記マスタボイラは自機と前記スレーブボイラの運転を制御する場合、該スレーブボイラの累積稼働時間を監視して、当該スレーブボイラの稼働時間の少ないものから優先して運転を停止することに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1,2記載の発明によれば、複数のボイラの起動および停止順序をあらかじめ設定せず、運転の都度、各ボイラに、マスタボイラおよびスレーブボイラの機能を選択的に設定する構成であるので、複数のボイラからなるシステム全体の長寿命化を図ることができる。
【0014】
また、スレーブボイラは稼働時間の多いものを優先して運転し、稼働時間の少ないものを優先して停止するようマスタボイラによって制御するので、各ボイラの燃焼時間を不均等にすることが可能となり、ボイラが同時期に故障するリスクを極力低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のボイラ装置を構成するマスタボイラまたは各スレーブボイラの構成図である。
図2】前記マスタボイラまたは各スレーブボイラの電気系統構成図である。
図3】前記マスタボイラまたは各スレーブボイラの連結構成図である。
図4】従来の各ボイラの燃焼状態を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図3により説明する。図1は本発明のボイラ装置を構成する各ボイラ(マスタボイラまたはスレーブボイラ)Aの構成を示している。
【0017】
図1において、1は熱媒として利用するための水(缶水)を留めておく貯水缶であり、2は貯水缶1内に缶水を補給する補給管である。3は補給管2に設けられ、給水・止水を切り替える補給用電磁弁であり、後述する給水機能によって自動的に開閉制御され、貯水缶1内に一定量の水が常に貯められるよう制御される。
【0018】
4は貯水缶1内部と連通し、貯水缶1内の缶水を、貯水缶1の外部で循環させる熱媒流通管であり、5は貯水缶1内と熱媒流通管4間で缶水を循環させるための循環用ポンプである。
【0019】
6は熱媒流通管4に取り付けられた缶水温度測定用の温度センサであり、7は熱媒流通管4上に設けられる熱交換器である。
【0020】
8は貯水缶1の外部から、貯水缶1内の缶水を加熱するためのバーナーであり、9はバーナー8に燃料を供給するための燃料供給管を示している。10は燃料供給管9に取り付けられ、バーナー8への燃料の供給と停止を切り換える燃料制御用電磁弁を示している。
【0021】
11はバーナー8に、燃焼に必要とされる空気を供給するための給気管であり、12はバーナー8への空気の供給と停止を切り換えるための給気用電磁弁を示している。
【0022】
13は中途位置に前記熱交換器7を配置した入水配管であり、14は入水配管13に熱交換器7を介して接続される出湯配管を示している。15は出湯配管14に取り付けられ、出湯温度を測定する出湯配管温度測定用の温度センサを示している。
【0023】
16は後述する操作パネルからの指令信号や、温度センサ6,15からの温度情報などを基に、ボイラAを構成する電磁弁3,10,12や、貯水缶1内の水位を検出する図示しない水位センサ、バーナー8、循環用ポンプ5など、ボイラAを構成する各種制御機器を制御するためのコントローラを示している。
【0024】
なお、17はコントローラ16に指令信号を出力するリモコンであり、前記操作パネルと同様、ボイラAを構成する各種制御機器を制御する目的で操作される。
【0025】
図2図1に示すコントローラ16とその周辺機器の電気的な接続状態を説明する電気系統構成図である。図2に示すように、コントローラ16は外部電源18に接続される制御電源部19と、該制御電源部19から制御用電源の供給を受けて動作する制御部20、および、制御部20に指令信号を出力する操作パネル21から概略構成されている。
【0026】
操作パネル21には、操作者が制御部20に出力する指示情報を入力するための操作部をはじめ、各種表示部や設定部などが備えられている。
【0027】
制御部20は前記操作パネル21以外にリモコン17によっても制御指示されるものである。リモコン17には別途、外部電源22が供給されている。なお、リモコン17の機能は、前述した操作パネル21に具備される機能と概ね同様であるが、リモコン17には、図2に示すように、複数台(図2では2台のみ表示)のボイラAが接続されるため、1つのリモコンによって複数台のボイラAの操作が可能となるスイッチ類などが別途具備されている。
【0028】
操作パネル21あるいはリモコン17から指令信号や各種設定信号、あるいは、センサ接点23に接続される温度センサ6,15等の各種センサ情報が制御部20に入力されると、制御部20は、入力された設定情報に基づき各種設定を実行するとともに、入力された指令信号に従い制御機器24および他のボイラAを制御する。制御機器24としては、図1に示す電磁弁3,10,12や、貯水缶1内の水位を検出する図示しない水位センサ、バーナー8、循環用ポンプ5などが挙げられる。
【0029】
つづいて、本発明のボイラ装置にかかる各ボイラ(マスタボイラ、スレーブボイラ)Aの物理的な接続状態を図3に示す。図3に示すように、本発明のボイラ装置は、図1に示す構成のボイラAが複数台(図3では4台)直列に接続されている。
【0030】
つまり、図3に示すように、図1に示す出湯管14に入水管13を接続する図1に示すボイラAと同構成のボイラ装置Aが配置され、また、このように接続されたボイラ装置Aの出湯管14に入水管13を接続した同構成のボイラ装置Aがさらに接続されている。
【0031】
このように、複数台のボイラAを直列に接続することによって、複数台のボイラAによって出湯温度が設定温度となるように制御されるのである。また、本発明では、複数台のボイラAのうち一台をマスタボイラとし、その他をスレーブボイラとして機能させる。
【0032】
どのボイラをマスタボイラまたはスレーブボイラとするかは様々な決定方法を取り得るが、例えば、最初に電源を入れたボイラをマスタボイラとして機能させる。つまり、本発明では、マスタボイラとスレーブボイラは固定されるものではなく、選択的に設定される構成となっている。選択的に一台のボイラがマスタボイラとして設定された場合、その他のボイラは自動的にスレーブボイラとして設定され機能する。
【0033】
つづいて、本発明のボイラ装置の動作について説明する。まず、図3に示す各ボイラAは、給湯需要に備えて、電源が入れられた段階で貯水缶1内に一定量の缶水を貯める。このとき、前述したとおり、例えば、最初に電源が入れられたボイラAがマスタボイラA1として機能し、その他がスレーブボイラA2~A4として機能する。
【0034】
各ボイラA1~A4の貯水缶1内の水位は、図示しない水位センサによって監視され、補給用電磁弁3の開閉を自動的に切り替える。缶水の水位レベルが基準水位より高水位となったときは補給用電磁弁3を閉じて止水し、低位置になったときに補給用電磁弁3を開いて貯水缶1内へ給水する(給水機能)。なお、当該給水機能に、水位の低位置を一定時間以上連続で検出した場合、給水弁異常と判定する機能を備えても良い。
【0035】
また、各ボイラA1~A4の貯水缶1内の缶水は、給湯需要に備えて、あらかじめ所定温度に温められる。具体的には、燃料制御用電磁弁10を開放することにより、燃料供給管9を通して燃料をバーナー8へ送るとともに、給気用電磁弁12を開くことにより燃焼用の空気をバーナー8へ送る。
【0036】
その後、バーナー8を点火制御することによって、バーナー8の燃焼によって貯水缶1内の缶水を所定の温度まで温めておく。缶水温度が所定温度に達したか否かは、循環用ポンプ5を駆動させて、缶水を熱媒流通管4を通して循環させ、循環している缶水温度を、熱媒流通管4に取り付けた缶水温度測定用温度センサ6にて検出し、検出結果をコントローラ16の制御部20へ送信することによって、制御部20によって把握される。
【0037】
以上の事前準備を給湯需要が生じる前段階で実施しておき、いざ給湯需要が生じた場合は、まず、マスタボイラA1一台で出湯温度を設定温度まで加熱する。出湯温度の制御としては、出湯温度制御機能と缶水温度制御機能の2つが存在する。
【0038】
出湯温度制御機能は、循環ポンプ5の流量を制御し、出湯温度が設定温度になるように調整するものである。出湯温度は、出湯配管温度測定用温度センサ15によって検出された測定温度情報をコントローラ16の制御部20に出力する。当該情報を受信した制御部20は、さらに循環ポンプ5の流量を制御して出湯温度が設定温度に近づくよう制御する。以上の動作を繰り返すことによって、出湯温度を設定温度に調整する。
【0039】
缶水温度制御機能は、バーナー8の火力を制御し、熱媒流通管4内を循環する缶水温度が設定温度より一定温度高い温度となるように調整するものである。熱媒流通管4内を循環する缶水温度は缶水温度測定用温度センサ6によって検出された測定温度情報をコントローラ16の制御部20に出力する。当該情報を受信した制御部20は、さらにバーナー8の火力を制御して出湯温度が設定温度に近づくよう制御する。以上の動作を繰り返すことによって、缶水温度を設定温度に調整する。
【0040】
以上の出湯温度制御を実行することによって、図1に示す入水管13内の入水は熱交換器7によって設定温度まで加熱され出湯管14から出湯される。このようにして設定温度に加熱された出湯は利用者の給湯需要に応える。
【0041】
次に、以上の動作を実行している状況において給湯需要が増大した場合の動作について説明する。給湯需要が増大した場合、本発明のボイラ装置は、まず、マスタボイラA1単独で給湯需要に応える設定温度まで出湯温度を加熱する。
【0042】
マスタボイラA1単独で設定温度まで出湯温度を加熱できた場合は、スレーブボイラA2~A4は運転しない。これにより、マスタボイラA1の稼働時間のみ嵩むが、前述したとおり、本発明では、マスタボイラは運転の都度、複数のボイラから選択的に選定されるものであるので、運転を繰り返すほど、マスタボイラA1としての稼働時間は各ボイラ間で平均化され、特定のボイラのみが早期に故障してしまうことを回避できる。
【0043】
また、マスタボイラA1の火力指令が上限に達してもなお出湯温度が設定温度に満たない場合、停止状態にあったスレーブボイラA2~A4の運転を開始する。
【0044】
マスタボイラA1は、スレーブボイラA2~A4の累積稼働時間を監視する機能を制御部20に備えており、マスタボイラA1はスレーブボイラA2~A4のうち累積稼働時間の多いものから順に運転する。
【0045】
つまり、マスタボイラA1の火力指令が上限に達しても出湯温度が設定温度に満たない場合、マスタボイラA1はスレーブボイラA2~A4のうち、累積稼働時間の最も多い、例えば、スレーブボイラA3を起動しこれを運転する。
【0046】
そして、マスタボイラA1とスレーブボイラA3のみによって、出湯温度を設定温度に加熱できた場合は、他のスレーブボイラA2,A4は停止状態を維持する。
【0047】
一方、マスタボイラA1とスレーブボイラA3双方の火力指令が上限に達してもなお出湯温度が設定温度に満たない場合、停止状態にあったスレーブボイラA2,A4のうち、累積稼働時間の多い、例えば、スレーブボイラA4の運転を開始する。
【0048】
マスタボイラA1,A3,A4によって、出湯温度を設定温度に加熱できた場合は、スレーブボイラA2は停止状態を維持する。
【0049】
一方、マスタボイラA1とスレーブボイラA3,A4の火力指令が上限に達しても出湯温度が設定温度に満たない場合は、停止状態のスレーブボイラA2の運転を開始して、出湯温度を設定温度まで加熱する。
【0050】
このように、本発明のボイラ装置は、複数備えてなるボイラAのうち、マスタボイラと稼働時間の多いスレーブボイラから順番に運転を開始するので、各ボイラーの稼働時間を不均等にすることができ、複数のボイラが同時期に一斉に故障するリスクを極力減少することができる。
【0051】
つぎに、出湯温度が設定温度に達した後や、設定温度が下げられた場合の、各ボイラの運転制御方法について説明する。
【0052】
出湯温度が設定温度に達した後や、設定温度が下げられた場合、マスタボイラA1は運転状態にあるスレーブボイラA2~A4のうち、累積稼働時間の最も少ない、例えば、スレーブボイラA2の運転を停止する。
【0053】
これにより、運転状態にあるボイラは、マスタボイラA1とスレーブボイラA3,A4となるが、この状態によって出湯温度を設定温度に維持できる場合は、この運転状態を継続する。
【0054】
他方、マスタボイラA1とスレーブボイラA3,A4の運転によっても出湯温度が設定温度を超えてしまう場合は、マスタボイラA1は運転状態にあるスレーブボイラA3,A4のうち、累積稼働時間の少ない、例えば、スレーブボイラA4の運転を停止する。
【0055】
これにより、運転状態にあるボイラは、マスタボイラA1とスレーブボイラA3となるが、この状態によって出湯温度を設定温度に維持できる場合は、この運転状態を継続する。
【0056】
他方、マスタボイラA1とスレーブボイラA3の運転によっても出湯温度が設定温度を超えてしまう場合は、マスタボイラA1は運転状態にあるスレーブボイラA3の運転を停止し、マスタボイラA1のみによって出湯温度を設定温度に維持する。
【0057】
このように、スレーブボイラA2~A4の停止制御は、稼働時間の短いものから順番に停止していくので、各ボイラーの稼働時間を不均等にすることができ、複数のボイラが同時期に一斉に故障するリスクを極力減少させることができる。
【0058】
なお、各ボイラの停止制御は、前述した各ボイラを稼働時間の長いものから順番に運転を開始していった後に行う場合に限られない。例えば、マスタボイラA1の火力指令が上限に達してもなお出湯温度が設定温度に満たない場合において、停止状態のスレーブボイラA2~A4を同時に運転することで、出湯温度を設定温度まで一気に加熱した後に、スレーブボイラA2~A4の運転台数を減じる必要がある場合においても同様に適用できる。
【0059】
また、本実施例では、スレーブボイラの台数が3台の場合を例示して説明したが、本発明の範囲はこの台数に限定するものでないことは当然である。
【0060】
なお、各ボイラの設定方法としては、(1)常にマスタボイラとなるボイラを固定し、かつ、スレーブボイラの運転時間に偏りがないよう平均化する方法と、(2)常にマスタボイラとなるボイラを固定し、かつ、スレーブボイラの運転を、稼働時間の長いものを優先して運転(傾斜運転)する方法、(3)マスタボイラを選択的に設定し、かつ、スレーブボイラとなったその他のボイラの運転を平均化する方法、(4)本発明の如く、マスタボイラを選択的に設定し、かつ、スレーブボイラとなったその他のボイラの運転を傾斜運転する方法が考えられる。
【0061】
上記(1)~(4)の運転方法を比較してみると、(1)の方法は、スレーブボイラを長寿命化できる一方、マスタボイラの早期に故障してしまうとともに、スレーブボイラの故障時期が同時期となってしまい本発明の目的を達成できない。
【0062】
(2)の方法は、マスタボイラとスレーブボイラが早期に故障するとともに、その時期が重なるため、本発明の目的を達成できない。
【0063】
(3)の方法は、各ボイラの寿命を最も長期化できる一方、各ボイラの故障時期が同時期となるので、本発明の目的を達成できない。
【0064】
これに対し、本発明に係る(4)の方法によれば、(2)の方法に係るマスタボイラの寿命より(4)の各ボイラのうち、最初に故障するボイラの寿命を長くできるとともに、その他のボイラの故障時期が重ならないので、本発明の目的を達成することができる。
【0065】
以上説明したように、本発明のボイラ装置によれば、複数のボイラのうち、マスタボイラおよびスレーブボイラを選択的に設定するとともに、マスタボイラのみでは出湯温度を設定温度まで加熱できない場合など、ボイラの運転台数を増加させる必要がある場合は、稼働時間の多いボイラから順番に運転を開始し、また、出湯温度が設定温度に達した、あるいは、設定温度が下がった場合など、スレーブボイラの運転台数を減じる必要がある場合、稼働時間の短いボイラから順番に運転を停止するよう制御するので、複数のボイラの長寿命化と、同時期に故障してしまうリスクの回避の両方を実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
複数台のボイラから構成されるボイラ装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 貯水缶
2 補給管
3 補給用電磁弁
4 熱媒流通管
5 循環用ポンプ
6 管水温度測定用温度センサ
7 熱交換器
8 バーナー
9 燃料供給管
10 燃料制御用電磁弁
11 給気管
12 給気用電磁弁
13 入水管
14 出湯管
15 出湯配管温度測定用の温度センサ
16 コントローラ
17 リモコン
18,22 外部電源
19 制御電源部
20 制御部
21 操作パネル
23 センサ接点
24 制御機器
A ボイラ(マスタボイラA1,スレーブボイラA2~A4)
図1
図2
図3
図4