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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091185
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】積層鉄心の加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
H02K15/02 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203835
(22)【出願日】2020-12-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390023032
【氏名又は名称】田中精密工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592228712
【氏名又は名称】北陸電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 英一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 侑馬
(72)【発明者】
【氏名】上田 修一
(72)【発明者】
【氏名】川見 典央
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615PP01
5H615PP06
5H615SS05
5H615SS18
5H615SS24
(57)【要約】
【課題】センターガイドに、熱膨張対策を講じた積層鉄心の加熱装置を提供する。
【解決手段】積層された鉄心18を処理対象とし、前記鉄心18に塗布されている接着剤を加熱処理する積層鉄心の加熱装置10であって、この装置10は、センターガイド24を備えており、このセンターガイド24は、外径が変更できる外径可変チャック機構である。センターガイドに鉄心をセットするとき、外径を小さくする。センターガイドの温度が上がっても、鉄心のセットに支障がでない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された鉄心を処理対象とし、前記鉄心に塗布されている接着剤を加熱処理する積層鉄心の加熱装置であって、
前記鉄心に設けられている中央穴へ挿入されるセンターガイドを備えており、
このセンターガイドは、外径が変更できる外径可変チャック機構であることを特徴とする積層鉄心の加熱装置。
【請求項2】
請求項1記載の積層鉄心の加熱装置であって、
ベースプレートと、このベースプレートに載せる下部プレートと、この下部プレートに載っている前記鉄心に載せる上部プレートと、この上部プレートに載せるトッププレートとを備え、前記ベースプレートと前記トッププレートとは、磁束を通しにくいステンレス鋼製とされ、
前記下部プレートと前記上部プレートとは、磁束を通す炭素鋼製とされ、
前記鉄心を囲う誘導加熱コイルと、この誘導加熱コイルを囲う筒型フェライトと、筒型フェライトの下端から前記下部プレートへ延びる下部フェライトと、前記筒型フェライトの上端から前記上部プレートへ延びる上部フェライトとを備えていることを特徴とする積層鉄心の加熱装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の積層鉄心の加熱装置であって、
前記外径可変チャック機構は、平面視で120°ピッチで配置される3個の爪を有し、
前記爪の2個は固定爪であり、残りの1個はエアシリンダで駆動される可動爪であることを特徴とする積層鉄心の加熱装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の積層鉄心の加熱装置であって、
前記外径可変チャック機構は、平面視で180°ピッチで配置される2個の爪を有し、
前記爪の1個は固定爪であり、残りの1個はエアシリンダで駆動される可動爪であることを特徴とする積層鉄心の加熱装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の積層鉄心の加熱装置であって、
前記固定爪と前記可動爪の少なくとも一方は、冷却用の冷媒通路を有していることを特徴とする積層鉄心の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心の加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層鉄心は、モータ等に使用される。積層鉄心は、鉄心と鉄心を接着することで得られる。この接着は、接着剤を加熱処理することでなされる。そのための加熱装置として、各種のものが知られている(例えば、特許文献1(図3)参照)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図8は従来の加熱装置の基本構成を説明する図であり、加熱装置100は、ベース101と、このベース101から起立するセンターガイド102と、このセンターガイド102を囲うようにしてベース101に載せられるベースプレート103及び下部プレート104と、ベースプレート103、下部プレート104及びセンターガイド102を囲うようにして配置される誘導加熱コイル105と、シリンダ106で吊るされるトッププレート107及び上部プレート108とを備えている。
【0004】
下部プレート104に、所定枚数の鉄心109を載せる。このときにセンターガイド102は、鉄心109を案内する役割を果たす。また、センターガイド102は、鉄心109がセンターガイド102の軸直角方向(図面では左右方向)へ移動することを防止する役割を果たす。
【0005】
シリンダ106を伸動してトッププレート107及び上部プレート108を下げ、上部プレート108で鉄心109を押さえる。
【0006】
この状態で誘導加熱コイル105に通電する。誘導加熱コイル105から磁束が発生する。この磁束が鉄心109内部に渦電流を発生する。渦電流は鉄心109の電気抵抗によりジュール熱を発生する。接着剤が熱可塑性樹脂の場合は、加熱により流動化し、その後に硬化する。通電を停止すると、鉄心109は自然冷却される。その後、センターガイド102から鉄心109が取り外される。
【0007】
図9図8の要部拡大断面図であり、従来のセンターガイドと鉄心の関係を示す図である。
鉄心109は、一般に薄い電磁鋼板(珪素鋼板)を打ち抜いて製造する。そのため、中央穴111の穴径は不可避的にばらつく。このばらつきと作業性とを考慮して、センターガイド102と鉄心109との間に隙間δが設定される。この隙間δは10μm程度である。
【0008】
ところで、図8にて、鉄心109セット→加熱→冷却→鉄心109取り外しを、1生産サイクルとすると、この生産サイクルが繰り返えされる。
センターガイド102も加熱と冷却とが繰り返されるが、十分に温度が下がらないうちに次の加熱が始まることがある。すなわち、生産サイクルが10回以上繰り返えされると、センターガイド102の膨張が累積し、鉄心109のセット及び取り外しが困難になる。
【0009】
対策として、隙間δを30μm程度に増大する。センターガイド102の膨張が累積しても鉄心109のセットや取り外しは可能となる。しかし隙間δが大きくなると、接着剤が流動化された時点で一部の鉄心109が横にずれ、積層鉄心の仕上がり精度が低下する。
【0010】
別の対策として、1生産サイクル中の冷却時間を延ばす、又は10回生産サイクルを繰り返したら十分に長い時間冷却する。これで膨張の累積が解消される。しかし、冷却時間が長くなるほど、生産性が低下する。
【0011】
積層鉄心の仕上がり精度が低下することや、生産性が低下することは、好ましくない。
そこで、センターガイド102に、熱膨張対策を講じた加熱装置が、切望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7-298567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、センターガイドに、熱膨張対策を講じた積層鉄心の加熱装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係る発明は、積層された鉄心を処理対象とし、前記鉄心に塗布されている接着剤を加熱処理する積層鉄心の加熱装置であって、
前記鉄心に設けられている中央穴へ挿入されるセンターガイドを備えており、
このセンターガイドは、外径が変更できる外径可変チャック機構であることを特徴とする。
【0015】
なお、加熱手段は、誘導加熱コイルを基本とするが、電熱ヒータであってもよく、加熱形式は任意である。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の積層鉄心の加熱装置であって、
ベースプレートと、このベースプレートに載せる下部プレートと、この下部プレートに載っている前記鉄心に載せる上部プレートと、この上部プレートに載せるトッププレートとを備え、前記ベースプレートと前記トッププレートとは、磁束を通しにくいステンレス鋼製とされ、
前記下部プレートと前記上部プレートとは、磁束を通す炭素鋼製とされ、
前記鉄心を囲う誘導加熱コイルと、この誘導加熱コイルを囲う筒型フェライトと、筒型フェライトの下端から前記下部プレートへ延びる下部フェライトと、前記筒型フェライトの上端から前記上部プレートへ延びる上部フェライトとを備えていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の積層鉄心の加熱装置であって、
前記外径可変チャック機構は、平面視で120°ピッチで配置される3個の爪を有し、
前記爪の2個は固定爪であり、残りの1個はエアシリンダで駆動される可動爪であることを特徴とする。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の積層鉄心の加熱装置であって、
前記外径可変チャック機構は、平面視で180°ピッチで配置される2個の爪を有し、
前記爪の1個は固定爪であり、残りの1個はエアシリンダで駆動される可動爪であることを特徴とする。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4記載の積層鉄心の加熱装置であって、
前記固定爪と前記可動爪の少なくとも一方は、冷却用の冷媒通路を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明では、センターガイドは、外径が変更できる。外径を小さくしてセンターガイドに鉄心をセットする。センターガイドの温度が上がっても、鉄心のセットに支障がでない。
セット後に、センターガイドの外径を鉄心の中央穴の穴径に合わせる。加熱処理中に鉄心が移動することはない。
センターガイドから鉄心を外すときも、外径を小さくする。センターガイドの温度が上がっても、鉄心の取り外しに支障がでない。
よって、本発明によれば、センターガイドに、熱膨張対策を講じた積層鉄心の加熱装置が提供される。
【0021】
請求項2に係る発明では、鉄心を囲う誘導加熱コイルを、筒型フェライトで囲った。誘導加熱コイルが発生する磁束の一部は筒型フェライトにより活用が促進される。
ただし、筒型フェライトから延びる磁束は一部がベースプレートやトッププレートで遮断される。この遮断には磁束が通りにくくなることを含む。以下同様。
対策として、本発明では、下部フェライトと上部フェライトを筒型フェライトに付設した。
筒型フェライトから延びる磁束は下部フェライトと上部フェライトとで誘導され、鉄心の加熱に供される。
【0022】
この発明では、鉄心がより短時間で所定温度まで加熱される。反面、加熱効率がよいため、センターガイドの温度上昇が高まり、熱膨張が大きくなる。しかし、センターガイドが外径可変チャック機構であれば、熱膨張は問題とならない。
よって、本発明によれば、鉄心の加熱効率を高めつつ、センターガイドに、熱膨張対策を講じた積層鉄心の加熱装置が提供される。
【0023】
請求項3に係る発明では、外径可変チャック機構の要部は、2個の固定爪と1個の可動爪で構成した。3個の爪の全てを、可変爪にする構造に比較して、1個のみを可動爪にすれば、装置が簡単になり、設備コストを圧縮することができる。
【0024】
請求項4に係る発明では、外径可変チャック機構の要部は、1個の固定爪と1個の可動爪で構成した。固定爪を2個にする構造に比較して、固定爪を1個にすれば、装置がさらに簡単になり、設備コストをさらに圧縮することができる。
【0025】
請求項5に係る発明では、爪に冷媒通路を設けた。爪を水などで冷却することで爪の温度上昇が抑制できる。爪を大気で自然冷却させる構造に比較して、冷媒で強制冷却するようにすれば、爪を冷却する時間の短縮が図れ、加熱装置の稼働率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る積層鉄心の加熱装置の断面図である。
図2】磁束を説明する図であり、(a)は比較例を示す図、(b)は実施例を示す図である。
図3図1の3-3線断面図である。
図4図1の4-4線断面図である。
図5】外径可変チャック機構の作動を説明する図である。
図6】外径可変チャック機構の変更例を説明する図である。
図7】冷媒通路を説明する図である。
図8】従来の加熱装置の基本構成を説明する図である。
図9図8の要部拡大断面図であり、従来のセンターガイドと鉄心の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例0028】
図1に示すように、積層鉄心の加熱装置10は、架台ベース11と、この架台ベース11に載せられる門型ベース12と、この門型ベース12に載せられるベースプレート13と、このベースプレート13に載せられる下部プレート14と、この下部プレート14の上方に配置される上部プレート15と、この上部プレート15に載せられるトッププレート16と、このトッププレート16に下向きの力を加える押圧手段17と、鉄心18を囲うように配置される誘導加熱コイル19と、この誘導加熱コイル19の側面を囲うように配置される筒型フェライト21と、この筒型フェライト21の下端から下部プレート14へ延びるように配置される下部フェライト22と、筒型フェライト21の上端から上部プレート15へ延びるように配置される上部フェライト23と、下部プレート14及び上部プレート15で挟まれる鉄心18の位置決めをするセンターガイド24とを備えている。
【0029】
なお、筒型フェライト21の下端から延びる下部フェライト22とは、この下部フェライト22が筒型フェライト21の下端から所定の距離を置いて配置される構造と、下部フェライト22が筒型フェライト21の下端に接触して配置される構造の両方を指す。上部フェライト23についても同様である。
【0030】
センターガイド24は、外径可変チャック機構30である。
外径可変チャック機構30は、例えば、架台ベース11に載せられるレール31と、このレール31に移動可能に嵌められるスライダ32と、このスライダ32を駆動するエアシリンダ33と、スライダ32から上へ延びて門型ベース12、ベースプレート13、下部プレート14、鉄心18及び上部プレート15を貫通する柱状の可動爪34と、この可動爪34に平行に配置されベースプレート13から上へ延びて下部プレート14、鉄心18及び上部プレート15を貫通する柱状の固定爪35とからなる。
【0031】
鉄心18は、0.2~0.5mm厚さの珪素鋼板(電磁鋼板)であり、内径が50~150mmで外径が200~250mmの穴空き板である。
珪素鋼板のコイルからプレスで打ち抜き形成された鉄心18の上下面に、局部的(又は全面的)に数μm厚さの接着剤が塗布され、塗布された穴空き板が所定枚数パイリング(積層)されて、例えば50~150mm高さの積層鉄心が得られる。
【0032】
接着剤は、加熱により流動化し、180℃程度で硬化する熱硬化性樹脂、例えばエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーンゴム系樹脂でもよく、任意に選択可能である。
【0033】
下部プレート14と上部プレート15は、炭素鋼板である。
好ましくは、固定爪35や可動爪34と、数mm程度の隙間δ1を確保する。この隙間δ1により、下部プレート14と上部プレート15から固定爪35や可動爪34への伝熱を遮断もしくは抑制する。
【0034】
次に、下部フェライト22及び上部フェライト23の有無と、ベースプレート13とトッププレート16の材質について、検討する。
【0035】
〇ケース1:ベースプレート13とトッププレート16とが、炭素鋼製で、下部フェライト22及び上部フェライト23が無い場合:
誘導加熱コイル19で発生した磁束は、筒型フェライト21と、下部プレート14及び上部プレート15と、ベースプレート13とトッププレート16とを通過する。
筒型フェライト21で磁束の活用が促される。
下部プレート14及び上部プレート15は磁束で加熱され、鉄心18へ伝熱される。
【0036】
ベースプレート13及びトッププレート16も磁束で加熱される。この熱は一部が下部プレート14と上部プレート15へ向かうものの、多くが大気へ放熱される。この放熱は鉄心18の加熱効率の低下を招く。
【0037】
〇ケース2:ベースプレート13とトッププレート16とが、ステンレス鋼製で、下部フェライト22及び上部フェライト23が無い場合:
ベースプレート13とトッププレート16とは磁束を通さないため、誘導加熱コイル19で発生した磁束は、筒型フェライト21と、下部プレート14及び上部プレート15とを通過する。
筒型フェライト21で磁束の活用が促される。
下部プレート14及び上部プレート15は磁束で加熱され、鉄心18へ伝熱される。
【0038】
ベースプレート13及びトッププレート16から大気への放熱がなくなる若しくは抑制されため、前記ケース2は、前記ケース1よりも、好ましい。
【0039】
そこで、ベースプレート13とトッププレート16は、磁束を通しにくいステンレス鋼とした。
ステンレスには、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系がある。フェライト系とマルテンサイト系は磁性体であり、磁束をよく通すので適当でない。
一方、オーステナイト系(例えば、SUS304)は非磁性体であり、磁束を通しにくいので好適である。
【0040】
以上に説明したケース2の構造を、図2(a)でさらに説明し、ケース2を改良した構造を、図2(b)で説明する。すなわち、図2(a)、(b)に基づいて、筒型フェライト21、下部フェライト22及び上部フェライト23の作用を説明する。
【0041】
図2(a)は比較例を示す図であり、筒型フェライト21は、誘導加熱コイル19が発生する磁束の有効利用を促す役割を果たす。
一部の磁束26は上部プレート15や下部プレート14を介して鉄心18を通過する。また、別の磁束27はベースプレート13やトッププレート16に向かう。ベースプレート13やトッププレート16は、磁束27を遮断する。そのため、磁束27の有効活用が図れない。
【0042】
図2(b)は実施例を示す図であり、磁束27は下部フェライト22及び上部フェライト23で誘導される。上部プレート15及び下部プレート14は炭素鋼板であるため、磁束27を通す。
すなわち、磁束27は、上部プレート15を通り、鉄心18を通過し、下部プレート14を通って、筒型フェライト21に戻る。結果、磁束27の有効活用が図れる。
よって、筒型フェライト21に、下部フェライト22及び上部フェライト23を付設することが有効となる。
【0043】
図3に示すように、外径可変チャック機構30は、平面視で120°ピッチで配置される3個の爪34、35、35を有し、爪の2個は固定爪35、35であり、残りの1個はエアシリンダ33で駆動される可動爪34である。
【0044】
図4に示すように、架台ベース11にレール31が載せられ、このレール31に図面表裏方向へ移動可能にスライダ32が嵌められ、このスライダ32に可動爪34がボルト等により固定されている。好ましくは、レール31とスライダ32との間に鋼球(スチールボール)36を介在させる。鋼球36を介在させると、レール31とスライダ32の間の摩擦係数が大幅に減少し、揺れることなく滑らかにスライダ32及び可動爪34が移動する。
【0045】
なお、1本のレール31を左ガイドバーと右ガイドバーに代え、これらの左ガイドバーと右ガイドバーで、スライダ32をガイドするようにしてもよい。よって、図4の構造は適宜変更して差し支えなく、要は可動爪34が、振れたり、ガタつくことなく、滑らかに移動する構造であればよい。
【0046】
以上の構成からなる外径可変チャック機構30の作用を、図5に基づいて説明する。
鉄心をセットする前に、図5(a)に示すように、固定爪35の外接円37から可動爪34を後退させる。
【0047】
図5(b)に示すように、鉄心18をセットする。このときに、鉄心18の中央穴38は、外接円37からずれるようにする。中央穴38は、3個の爪34、35、35に当たらないようにして、セットすることができる。
【0048】
図5(c)に示すように、可動爪34を前進させる。この可動爪34にはエアシリンダ(図1、符号33)の前進力を常に付与する。結果、2個の固定爪35と、1個の可動爪34が鉄心18に蜜に当たる。この状態で、加熱し、接着剤を流動化し、硬化させる。
加熱の過程で、鉄心18が、図面左右方向へずれることはない。寸法精度の良好な積層鉄心が得られる。
【0049】
加熱が終わったら、図5(d)に示すように、可動爪34を後退させ。可動爪34が鉄心18から離れ、固定爪35から鉄心18が離れる。結果、鉄心18は容易に取り外すことができ、作業能率が高まる。
【0050】
次に、本発明に係る変更例を説明する。
図6(a)に示すように、外径可変チャック機構30は、平面視で180°ピッチで配置される2個の爪34、35を有し、爪の1個は固定爪35とし、残りの1個はエアシリンダ33で駆動される可動爪34としてもよい。
固定爪35が1個であるため、外径可変チャック機構30が簡単になる。
【0051】
また、図6(b)に示すように、外径可変チャック機構30は、平面視で120°ピッチで配置される3個の可動爪34を有し、可動爪34の各々をエアシリンダ33で駆動するようにしてもよい。
また、図6(c)に示すように、外径可変チャック機構30は、平面視で180°ピッチで配置される2個の可動爪34を有し、可動爪34の各々をエアシリンダ33で駆動するようにしてもよい。
【0052】
また、図7に示すように、固定爪35に冷却用の冷媒通路35aを設け、可動爪34に冷却用の冷媒通路34aを設けてもよい。冷媒通路34a、35aに、水又は空気を通すことで、固定爪35や可動爪34の温度変化を抑制することができる。
【0053】
冷媒通路34a、35aは必須ではないが、図1に示す積層鉄心の加熱装置10で、生産サイクルを10回連続すると、固定爪35や可動爪34が徐々に温度上昇する。
対策として、例えば10回の生産サイクルが終わったら、「しばらく冷却時間」を置き、その後に次の10回の生産サイクルを再開することが考えられる。しかし、この対策を講じると、生産性がやや低下する。
図7に示す構造であれば、「しばらくの冷却時間」を置く必要はなくなり、生産性が高まる。
【0054】
なお、図7において、冷媒通路34aと冷媒通路35aの両方を設けるほか、一方のみを設けることもできる。可動爪34に設ける冷媒通路34aには、フレキシブルホースを接続する必要があり、設備コストが嵩む。冷媒通路34aを設けずに、冷媒通路35aだけを設けるようにすれば、フレキシブルホースが不要となり、設備コストを下げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、接着剤付きの鉄心を加熱して積層鉄心にする加熱装置に好適である。
【符号の説明】
【0056】
10…積層鉄心の加熱装置、13…ベースプレート、14…下部プレート、15…上部プレート、16…トッププレート、18…鉄心、19…誘導加熱コイル、21…筒型フェライト、22…下部フェライト、23…上部フェライト、24…センターガイド、26、27…磁束、30…外径可変チャック機構、34…可動爪、34a、35a…冷媒通路、35…固定爪、38…中央穴。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された鉄心を処理対象とし、前記鉄心に塗布されている接着剤を加熱処理する積層鉄心の加熱装置であって、
ベースプレートと、このベースプレートに載せる下部プレートと、この下部プレートに載っている前記鉄心に載せる上部プレートと、この上部プレートに載せるトッププレートとを備え、前記ベースプレートと前記トッププレートとは、磁束を通しにくいステンレス鋼製とされ、
前記下部プレートと前記上部プレートとは、磁束を通す炭素鋼製とされ、
前記鉄心を囲う誘導加熱コイルと、この誘導加熱コイルを囲う筒型フェライトと、筒型フェライトの下端から前記下部プレートへ延びる下部フェライトと、前記筒型フェライトの上端から前記上部プレートへ延びる上部フェライトとを備え、
前記鉄心に設けられている中央穴へ挿入されるセンターガイドを備えており、
このセンターガイドは、外径が変更できる外径可変チャック機構であり、
この外径可変チャック機構は、エアシリンダと、このエアシリンダで移動されるスライダと、このスライダを案内するレールと、前記スライダに取付けられる可動爪とを備え、
前記エアシリンダ、前記スライダ及び前記レールは、前記ベースプレートと前記トッププレートで挟まれる領域の外側に配置されていることを特徴とする積層鉄心の加熱装置。
【請求項2】
請求項1記載の積層鉄心の加熱装置であって、
前記外径可変チャック機構は、平面視で120°ピッチで配置される3個の爪を有し、
前記爪の2個は固定爪であり、残りの1個は前記エアシリンダで駆動される前記可動爪であることを特徴とする積層鉄心の加熱装置。
【請求項3】
請求項1記載の積層鉄心の加熱装置であって、
前記外径可変チャック機構は、平面視で180°ピッチで配置される2個の爪を有し、
前記爪の1個は固定爪であり、残りの1個は前記エアシリンダで駆動される前記可動爪であることを特徴とする積層鉄心の加熱装置。
【請求項4】
請求項又は請求項記載の積層鉄心の加熱装置であって、
前記固定爪と前記可動爪は、前記誘導加熱コイルで加熱される前記鉄心の前記中央穴に、挿入されており、
前記固定爪と前記可動爪の少なくとも一方の温度変化を抑制するために、前記固定爪と前記可動爪の少なくとも一方は、冷却用の冷媒通路を有していることを特徴とする積層鉄心の加熱装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
請求項1に係る発明は、積層された鉄心を処理対象とし、前記鉄心に塗布されている接着剤を加熱処理する積層鉄心の加熱装置であって、
ベースプレートと、このベースプレートに載せる下部プレートと、この下部プレートに載っている前記鉄心に載せる上部プレートと、この上部プレートに載せるトッププレートとを備え、前記ベースプレートと前記トッププレートとは、磁束を通しにくいステンレス鋼製とされ、
前記下部プレートと前記上部プレートとは、磁束を通す炭素鋼製とされ、
前記鉄心を囲う誘導加熱コイルと、この誘導加熱コイルを囲う筒型フェライトと、筒型フェライトの下端から前記下部プレートへ延びる下部フェライトと、前記筒型フェライトの上端から前記上部プレートへ延びる上部フェライトとを備え、
前記鉄心に設けられている中央穴へ挿入されるセンターガイドを備えており、
このセンターガイドは、外径が変更できる外径可変チャック機構であり、
この外径可変チャック機構は、エアシリンダと、このエアシリンダで移動されるスライダと、このスライダを案内するレールと、前記スライダに取付けられる可動爪とを備え、
前記エアシリンダ、前記スライダ及び前記レールは、前記ベースプレートと前記トッププレートで挟まれる領域の外側に配置されていることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
請求項に係る発明は、請求項1記載の積層鉄心の加熱装置であって、
前記外径可変チャック機構は、平面視で120°ピッチで配置される3個の爪を有し、
前記爪の2個は固定爪であり、残りの1個は前記エアシリンダで駆動される前記可動爪であることを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
請求項に係る発明は、請求項1記載の積層鉄心の加熱装置であって、
前記外径可変チャック機構は、平面視で180°ピッチで配置される2個の爪を有し、
前記爪の1個は固定爪であり、残りの1個は前記エアシリンダで駆動される前記可動爪であることを特徴とする。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
請求項に係る発明は、請求項又は請求項記載の積層鉄心の加熱装置であって、
前記固定爪と前記可動爪は、前記誘導加熱コイルで加熱される前記鉄心の前記中央穴に、挿入されており、
前記固定爪と前記可動爪の少なくとも一方の温度変化を抑制するために、前記固定爪と前記可動爪の少なくとも一方は、冷却用の冷媒通路を有していることを特徴とする。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
加えて、請求項に係る発明では、鉄心を囲う誘導加熱コイルを、筒型フェライトで囲った。誘導加熱コイルが発生する磁束の一部は筒型フェライトにより活用が促進される。
ただし、筒型フェライトから延びる磁束は一部がベースプレートやトッププレートで遮断される。この遮断には磁束が通りにくくなることを含む。以下同様。
対策として、本発明では、下部フェライトと上部フェライトを筒型フェライトに付設した。
筒型フェライトから延びる磁束は下部フェライトと上部フェライトとで誘導され、鉄心の加熱に供される。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
この発明では、鉄心がより短時間で所定温度まで加熱される。反面、加熱効率がよいため、センターガイドの温度上昇が高まり、熱膨張が大きくなる。しかし、センターガイドが外径可変チャック機構であれば、熱膨張は問題とならない。
よって、本発明によれば、鉄心の加熱効率を高めつつ、センターガイドに、熱膨張対策を講じた積層鉄心の加熱装置が提供される。
さらに加えて、請求項1に係る発明では、外径可変チャック機構は、エアシリンダと、このエアシリンダで移動されるスライダと、このスライダを案内するレールと、スライダに取付けられる可動爪とを備え、前記エアシリンダ、前記スライダ及び前記レールは、前記ベースプレートと前記トッププレートで挟まれる領域の外側に配置されている
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
請求項に係る発明では、外径可変チャック機構の要部は、2個の固定爪と1個の可動爪で構成した。3個の爪の全てを、可変爪にする構造に比較して、1個のみを可動爪にすれば、装置が簡単になり、設備コストを圧縮することができる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
請求項に係る発明では、外径可変チャック機構の要部は、1個の固定爪と1個の可動爪で構成した。固定爪を2個にする構造に比較して、固定爪を1個にすれば、装置がさらに簡単になり、設備コストをさらに圧縮することができる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
請求項に係る発明では、爪に冷媒通路を設けた。爪を水などで冷却することで爪の温度上昇が抑制できる。爪を大気で自然冷却させる構造に比較して、冷媒で強制冷却するようにすれば、爪を冷却する時間の短縮が図れ、加熱装置の稼働率を高めることができる。