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特開2022-91190導電性フィルムの製造方法、及び、導電性フィルム
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  • 特開-導電性フィルムの製造方法、及び、導電性フィルム 図1
  • 特開-導電性フィルムの製造方法、及び、導電性フィルム 図2
  • 特開-導電性フィルムの製造方法、及び、導電性フィルム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091190
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】導電性フィルムの製造方法、及び、導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/88 20190101AFI20220614BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20220614BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20220614BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20220614BHJP
   B29C 48/36 20190101ALI20220614BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20220614BHJP
【FI】
B29C48/88
B29C48/92
B29C48/08
B29C48/305
B29C48/36
B29L7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203844
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】西岡 亮
(72)【発明者】
【氏名】内丸 正宏
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AA11
4F207AB11
4F207AB16
4F207AG01
4F207AH81
4F207AR02
4F207AR20
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK64
4F207KK67
4F207KL84
4F207KM16
(57)【要約】
【課題】導電性フィルムの電気抵抗値の上昇を抑制可能な導電性フィルムの製造方法等を提供する。
【解決手段】導電性フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂に金属フィラーが配合された導電性組成物をダイから押し出すステップと、キャストロールによって導電性組成物を冷却するステップとを含む。導電性組成物においてキャストロールの反対側からキャストロール側に向けて加えられる線圧は、10N/mm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性フィルムの製造方法であって、
熱可塑性樹脂に金属フィラーが配合された導電性組成物をダイから押し出すステップと、
キャストロールによって前記導電性組成物を冷却するステップとを含み、
前記導電性組成物において前記キャストロールの反対側から前記キャストロール側に向けて加えられる線圧は、10N/mm以下である、導電性フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記キャストロールによって前記導電性組成物を冷却するステップにおいて、前記導電性組成物は、前記キャストロールとタッチロールとによって挟まれ、
前記タッチロールが前記キャストロールに圧力を加える、請求項1に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記導電性組成物において前記キャストロールの反対側から前記キャストロール側に向けて加えられる線圧は、4N/mm以下である、請求項1又は請求項2に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項4】
導電性フィルムであって、
熱可塑性樹脂と、
金属フィラーとを含み、
SEM-EDX(Scanning Electron Microscope / Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いた分析において、前記導電性フィルムの試験片が配置された観察試料台の傾斜角度が0°である場合に検出される前記金属フィラーの含有率に対する、前記傾斜角度が40°である場合に検出される前記金属フィラーの含有率の割合は0.7以上である、導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性フィルムの製造方法、及び、導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-91248号公報(特許文献1)は、導電性フィルムの製造方法を開示する。この製造方法においては、Tダイから押し出された導電性組成物が冷却ロールとゴムロールとによって挟まれる。導電性組成物が冷却ロール及びゴムロールによって後方に送られることによって、導電性フィルムが製造される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-91248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1において、ゴムロールが冷却ロールに加える圧力が大きい場合に、導電性フィルムの電気的抵抗値が上昇することを本発明者(ら)は見出した。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、導電性フィルムの電気抵抗値の上昇を抑制可能な導電性フィルムの製造方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従う導電性フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂に金属フィラーが配合された導電性組成物をダイから押し出すステップと、キャストロールによって導電性組成物を冷却するステップとを含む。導電性組成物においてキャストロールの反対側からキャストロール側に向けて加えられる線圧は、10N/mm以下である。
【0007】
この導電性フィルムの製造方法においては、キャストロールで冷却される導電性組成物に加えられる線圧が10N/mm以下である。したがって、この導電性フィルムの製造方法によれば、導電性組成物に加えられる線圧が低く、導電性組成物の表面付近に存在する金属フィラーが導電性組成物の深い部分に入り込みにくいため、導電性フィルムの電気抵抗値の上昇を抑制することができる。
【0008】
上記導電性フィルムの製造方法において、キャストロールによって導電性組成物を冷却するステップにおいて、導電性組成物は、キャストロールとタッチロールとによって挟まれ、タッチロールがキャストロールに圧力を加えてもよい。
【0009】
上記導電性フィルムの製造方法において、導電性組成物においてキャストロールの反対側からキャストロール側に向けて加えられる線圧は、4N/mm以下であってもよい。
【0010】
本発明の他の局面に従う導電性フィルムは、熱可塑性樹脂と、金属フィラーとを含む。SEM-EDX(Scanning Electron Microscope / Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いた分析において、導電性フィルムの試験片が配置された観察試料台の傾斜角度が0°である場合に検出される金属フィラーの含有率に対する、傾斜角度が40°である場合に検出される金属フィラーの含有率の割合は0.7以上である。
【0011】
SEM-EDXを用いた分析において、観察試料台の傾斜角度が0°の場合には、試験片の比較的深い位置までが検出範囲になる。一方、観察試料台の傾斜角度が40°の場合には、試験片の比較的浅い位置までが検出範囲になる。したがって、傾斜角度が0°である場合に検出される金属フィラーの含有率に対する、傾斜角度が40°である場合に検出される金属フィラーの含有率の割合が大きい程、試験片の表面付近に位置する金属フィラーの量が多いといえる。この導電性フィルムにおいては、観察試料台の傾斜角度が0°である場合に検出される金属フィラーの含有率に対する、観察試料台の傾斜角度が40°である場合に検出される金属フィラーの含有率の割合は0.7以上である。したがって、この導電性フィルムによれば、表面付近に位置する金属フィラーの量が比較的多いため、比較的低い電気抵抗値を実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導電性フィルムの電気抵抗値の上昇を抑制可能な導電性フィルムの製造方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】導電性フィルムの製造装置を模式的に示す図である。
図2】観察試料台の傾斜角度が0°の場合のSEM-EDXを模式的に示す図である。
図3】観察試料台の傾斜角度が40°の場合のSEM-EDXを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
[1.製造装置の構成]
図1は、本実施の形態に従う導電性フィルムC2の製造装置10を模式的に示す図である。図1に示されるように、製造装置10は、Tダイ100と、キャストロール200と、タッチロール300と、制御装置350と、巻取りロール390とを含んでいる。
【0016】
Tダイ100は、導電性組成物C1を溶融押し出しするように構成されている。導電性組成物C1は、熱可塑性樹脂素材と、金属フィラーとを含んでいる。製造装置10においては、導電性組成物C1に基づいて、導電性フィルムC2が製造される。導電性フィルムC2は、例えば、複写機やプリンタ等の帯電フィルムや除電フィルム、その他電気・電子機器や部品用の各種機能性フィルムとして用いられる。なお、導電性フィルムC2には、コロナ、プラズマ、コーティング又はスパッタリング等の表面加工が施されていてもよいし、施されていなくてもよい。熱可塑性樹脂素材としては、熱可塑性を有する樹脂素材であればどのような素材が用いられてもよい。
【0017】
熱可塑性樹脂素材としては、例えば、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂(ホモポリマー及び共重合体)が用いられてもよい。また、熱可塑性樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)若しくはテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)等のフッ素系共重合体、ポリエーテルエステル等のポリエステル系共重合体、又は、ポリエーテルアミド若しくはポリエーテルエステルアミド等のポリアミド系共重合体等が用いられてもよい。また、熱可塑性樹脂素材としては、例えば、上記したもののポリマーアロイやポリマーブレンドが用いられてもよい。
【0018】
金属フィラーとしては、白金、金、銀、銅、ニッケル、チタン及びこれらの混合物が挙げられる。すなわち、導電性組成物C1に含まれる金属フィラーは、白金、金、銀、銅、ニッケル及びチタンが含まれる群から選択される少なくとも1種類の金属を含む。なお、これらの中では、ニッケル粒子が金属フィラーとしてより好ましい。
【0019】
キャストロール200は、Tダイ100によって押し出された導電性組成物C1を冷却すると共に、下流に送るように構成されている。タッチロール300は、Tダイ100によって押し出された導電性組成物C1をキャストロール200側に押圧すると共に、下流に送るように構成されている。すなわち、導電性組成物C1は、キャストロール200とタッチロール300とによって挟まれている。巻取りロール390は、キャストロール200によって冷却されて製造された導電性フィルムC2を巻き取るように構成されている。
【0020】
制御装置350は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて製造装置10の各構成要素の制御を行なうように構成されている。制御装置350は、例えば、タッチロール300がキャストロール200に対して加える圧力を制御する。タッチロール300は、例えば、不図示のエアシリンダに接続されている。制御装置350は、このエアシリンダの圧力を制御することによって、タッチロール300がキャストロール200に対して加える圧力を制御する。
【0021】
製造装置10においては、導電性フィルムC2の平面度を高めるために、タッチロール300によって導電性組成物C1がキャストロール200側に押圧されている。導電性組成物C1をキャストロール200側に付勢する方法としては、例えば、エアーナイフ又は静電ピニングという方法も考えられる。しかしながら、導電性組成物C1は、金属フィラーを多く含むため、溶融粘度が高くなりやすく、かつ、帯電しにくい。したがって、エアーナイフ又は静電ピニングによっては、導電性組成物C1をキャストロール200に対して十分に付勢することができない。そこで、製造装置10においては、タッチロール300によって導電性組成物C1がキャストロール200側に押圧されている。
【0022】
このような製造装置10において、タッチロール300がキャストロール200に向けて加える圧力が大きくなると、製造される導電性フィルムC2の電気抵抗値が上昇することを本発明者(ら)は見出した。タッチロール300がキャストロール200に向けて加える圧力が大きくなると、導電性フィルムC2の表面付近に位置する金属フィラーの量が減り、導電性フィルムC2の深い部分に位置する金属フィラーの量が増えるためであると考えられる。
【0023】
そのため、製造装置10においては、タッチロール300がキャストロール200側に加える線圧は、10N/mm以下となっている。好ましくは、タッチロール300がキャストロール200側に加える線圧は、4N/mm以下である。
【0024】
したがって、製造装置10によれば、導電性組成物C1に加えられる線圧が低く、導電性組成物C1の表面付近に存在する金属フィラーが導電性組成物C1の深い部分に入り込みにくいため、導電性フィルムC2の電気抵抗値の上昇を抑制することができる。
【0025】
[2.導電性フィルムの厚み方向における金属フィラーの分布]
上述のように、製造装置10によって製造された導電性フィルムC2においては、導電性フィルムC2の表面付近に十分な量の金属フィラーが位置している。導電性フィルムC2において、どの程度の金属フィラーが表面に位置しているのかは、SEM-EDX(Scanning Electron Microscope / Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて算出される指標で示される。該指標について次に説明する。
【0026】
図2は、観察試料台400の傾斜角度が0°の場合のSEM-EDX20を模式的に示す図である。図3は、観察試料台400の傾斜角度が40°の場合のSEM-EDX20を模式的に示す図である。
【0027】
図2及び図3を参照して、導電性フィルムC2の試験片が観察試料台400上に配置される。観察試料台400上の試験片に電子線が照射され、試験片から放出された特性X線を検出器500が検出する。検出器500の検出結果に基づいて、試験片における金属フィラーの含有率が算出される。
【0028】
試験片に照射された電子線は、例えば、試験片の表面からX1μmの深さまで潜り込む。観察試料台400の傾斜角度が0°の場合には、試験片の表面から垂直方向にX1μmの深さまでの範囲から放出された特性X線を検出器500が検出する。一方、観察試料台400の傾斜角度が40°の場合には、電子線が試験片に対して斜めの方向から進入するため、電子線の潜り込み量が同じであったとしても、試験片の表面から垂直方向への潜り量は短くなる。例えば、観察試料台400の傾斜角度が40°の場合には、試験片の表面から垂直方向にX2μm(<X1μm)の深さまでの範囲から放出された特性X線を検出器500が検出する。
【0029】
このように、観察試料台400の傾斜角度が0°の場合には、観察試料台400の傾斜角度が40°の場合よりも、試験片におけるより深い位置に存在する金属フィラーが検出される。したがって、試験片において金属フィラーが深い位置に多く存在する場合には、観察試料台400の傾斜角度が0°の場合に、観察試料台400の傾斜角度が40°の場合と比較して、金属フィラーの含有率がより高くなる。
【0030】
例えば、観察試料台400の傾斜角度が0°の場合に検出される金属フィラーの含有率(A1%)に対する、観察試料台400の傾斜角度が40°の場合に検出される金属フィラーの含有率(B1%)の割合(B1/A1)が高い程、導電性フィルムC2においてより多くの金属フィラーが導電性フィルムC2の表面付近に存在するといえる。観察試料台400の傾斜角度が0度の場合に試験片表面の凹凸によって検出できない部分(例えば起伏の側面)が、観察試料台400に傾斜をつけることで検出できるようになるということも、このような傾向が生じる一因である。
【0031】
製造装置10によって製造される導電性フィルムC2においては、この割合(B1/A1)が0.7以上である。したがって、導電性フィルムC2によれば、表面付近に位置する金属フィラーの量が比較的多いため、比較的低い電気抵抗値を実現することができる。
【0032】
[3.特徴]
以上のように、本実施の形態に従う導電性フィルムC2の製造方法においては、キャストロール200で冷却される導電性組成物C1に加えられる線圧が10N/mm以下である。したがって、この製造方法によれば、導電性組成物C1に加えられる線圧が低く、導電性組成物C1の表面付近に存在する金属フィラーが導電性組成物C1の深い部分に入り込みにくいため、導電性フィルムC2の電気抵抗値の上昇を抑制することができる。
【0033】
また、本実施の形態に従う導電性フィルムC2においては、SEM-EDXを用いた分析において、観察試料台400の傾斜角度が0°である場合に検出される金属フィラーの含有率(A1%)に対する、観察試料台400の傾斜角度が40°である場合に検出される金属フィラーの含有率(B1%)の割合(B1/A1)が0.7以上である。したがって、導電性フィルムC2によれば、表面付近に位置する金属フィラーの量が比較的多いため、比較的低い電気抵抗値を実現することができる。
【0034】
[4.変形例]
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。
【0035】
上記実施形態においては、導電性組成物C1がタッチロール300によってキャストロール200側に付勢された。しかしながら、導電性組成物C1は、必ずしもタッチロール300によってキャストロール200側に付勢されなくてもよい。例えば、導電性組成物C1は、何らキャストロール200側に付勢されなくてもよい。導電性組成物C1がキャストロール200の反対側からキャストロール200側に向けて加えられる線圧が10N/mm以下であればよい。
【0036】
[5.実施例]
<5-1.実施例及び比較例>
図1に示される製造装置10を用いることによって、実施例1-3及び比較例の各導電性フィルムを製造した。以下、実施例1-3及び比較例の各導電性フィルムについて説明する。
【0037】
実施例1の導電性フィルムの製造に用いられた導電性組成物は、ポリプロピレン(PP)を30wt%含み、ニッケル(Ni)を70wt%含んでいた。実施例1の導電性フィルムの製造時におけるタッチロールのキャストロールに対する線圧は、2.7N/mmであった。実施例1の導電性フィルムの厚みは、50μmであった。実施例1の導電性フィルムの製造時における巻取りロールの引き速は、2.5m/minであった。
【0038】
実施例2の導電性フィルムの製造に用いられた導電性組成物は、ポリプロピレン(PP)を30wt%含み、ニッケル(Ni)を70wt%含んでいた。実施例2の導電性フィルムの製造時におけるタッチロールのキャストロールに対する線圧は、0.0N/mmであった。すなわち、実施例2の導電性フィルムの製造時には、タッチロールがキャストロールに押し当てられていなかった。実施例2の導電性フィルムの厚みは、120μmであった。実施例2の導電性フィルムの製造時における巻取りロールの引き速は、5.8m/minであった。
【0039】
実施例3の導電性フィルムの製造に用いられた導電性組成物は、ポリプロピレン(PP)を30wt%含み、ニッケル(Ni)を70wt%含んでいた。実施例3の導電性フィルムの製造時におけるタッチロールのキャストロールに対する線圧は、3.4N/mmであった。実施例3の導電性フィルムの厚みは、85μmであった。実施例3の導電性フィルムの製造時における巻取りロールの引き速は、1.9m/minであった。
【0040】
比較例の導電性フィルムの製造に用いられた導電性組成物は、ポリプロピレン(PP)を30wt%含み、ニッケル(Ni)を70wt%含んでいた。比較例の導電性フィルムの製造時におけるタッチロールのキャストロールに対する線圧は、130.1N/mmであった。比較例の導電性フィルムの厚みは、100μmであった。比較例の導電性フィルムの製造時における巻取りロールの引き速は、5.8m/minであった。
【0041】
実施例1-3及び比較例について以下の表1にまとめる。
【0042】
【表1】
<5-2.各種測定方法>
(5-2-1.体積抵抗の測定方法)
実施例1-3及び比較例の各導電性フィルムについて、体積抵抗の測定を行なった。具体的には、以下の方法で各導電性フィルムの体積抵抗を測定した。30mm角に切り出した導電性フィルムの試験片を直径20mmの電極で挟み込み、試験片の厚み方向に電圧を印加して、日置電機社製抵抗計RM3544-01を用いて各導電性フィルムの抵抗値を測定した。抵抗計で測定した抵抗値(Ω)に、試験片と電極の接触面積(3.14cm2)を掛けた数値を体積抵抗(Ω・cm2)とした。
【0043】
(5-2-2.重ね合わせた状態における体積抵抗の測定方法)
実施例1-3及び比較例の各導電性フィルムについて、成形時にタッチロールに触れる面同士を重ね合わせた状態で体積抵抗の測定を行なった。具体的には、以下の方法で各導電性フィルムの体積抵抗を測定した。30mm角の試験片を2枚切り出し、成形時タッチロールに触れる側の面同士を重ね合わせて、直径20mmの電極で挟み込み、試験片の厚み方向に電圧を印加して、日置電機社製抵抗計RM3544-01を用いて各導電性フィルムの抵抗値を測定した。抵抗計で測定した抵抗値(Ω)に、試験片と電極の接触面積(3.14cm2)を掛けた数値を体積抵抗(Ω・cm2)とした。
【0044】
(5-2-3.表面抵抗の測定方法)
実施例1-3及び比較例の各導電性フィルムについて、表面抵抗の測定を行なった。具体的には、以下の方法で各導電性フィルムの表面抵抗を測定した。30mm角に試験片を切り出し、日東精工アナリテック社製簡易型低抵抗計ロレスタAX MCP-T370を用いて表面抵抗を測定した。プローブとしては、PSPプローブMCP-TP06P RMH112を用いた。低抵抗計で測定した抵抗値(Ω)に補正係数(4.532)を掛けた数値を表面抵抗(Ω/□)とした。
【0045】
(5-2-4.SEM-EDXを用いた測定方法)
実施例1-3及び比較例の各導電性フィルムについて、SEM-EDXを用いた測定を行なった。具体的には、以下の方法でSEM-EDXを用いた測定を行なった。
【0046】
成形時にタッチロールに触れる面を測定面とし、SEM(日立ハイテク社製S-4800TypeII)の観察試料台に試験片をセットして加速電圧15kV、倍率1000倍で観察し、その観察画像を取得すると共に、SEM装置付随のEDX(堀場製作所社製EMAX ENERGY EX-250)で元素定量分析を行なった。検出された全元素中の金属フィラー含有量を、体積割合で算出した。測定は観察試料台の傾斜角度が0°の場合と40°の場合との2条件で行なった。傾斜角度が0°というのは試験片に対し電子線が垂直に照射されている状態を指し、傾斜が40°というのはそこから観察試料台を検出器側に40°傾けた状態を指す。
【0047】
<5-3.各種測定結果>
各種測定の結果を以下の表2にまとめる。
【0048】
【表2】
表2に示されるように、実施例1-3の各々においては、比較例よりも各種電気抵抗値が低かった。また、実施例1-3の各々においては、SEM-EDXを用いた分析において、導電性フィルムの試験片が配置された観察試料台の傾斜角度が0°である場合に検出されるニッケル(Ni)の含有率に対する、観察試料台の傾斜角度が40°である場合に検出されるニッケル(Ni)の含有率の割合が0.7以上であった。
【符号の説明】
【0049】
10 製造装置、20 SEM-EDX、100 Tダイ、200 キャストロール、300 タッチロール、350 制御装置、390 巻取りロール、400 観察試料台、500 検出器、C1 導電性組成物、C2 導電性フィルム。
図1
図2
図3