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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091207
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】船を制御するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/42 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
B63H25/42 B
B63H25/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203882
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】森本 祐生
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 祐次
(72)【発明者】
【氏名】中安 良和
(57)【要約】
【課題】操作装置の横方向への操作に従って、船を安定して横方向に移動させる。
【解決手段】コントローラは、所望の動作が真横への移動であるときには、第1デフォルト角を第1目標舵角として、第2デフォルト角を第2目標舵角として、デフォルトスラスト比を目標スラスト比として設定して、第1船舶推進器と第2船舶推進器とを制御して船の移動を開始する。コントローラは、船の実際の動作と真横への移動との誤差を減少させるように第1補正角と、第2補正角と、補正スラスト比との少なくとも1つを決定する。コントローラは、第1補正角で第1目標舵角を補正し、第2補正角で第2目標舵角を補正し、補正スラスト比で目標スラスト比を補正する。コントローラは、誤差の検出と、誤差に応じた第1補正角と第2補正角と補正スラスト比との更新とを繰り返す。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船を制御するためのシステムであって、
第1ステアリング軸回りに回転可能な第1船舶推進器と、
第2ステアリング軸回りに回転可能な第2船舶推進器と、
手動操作可能であり、前記船の所望の動作を示す操作信号を出力する操作装置と、
前記操作信号に応じて、前記第1船舶推進器の第1目標舵角と、前記第2船舶推進器の第2目標舵角と、目標スラスト比とを決定し、前記目標スラスト比は、前記第1船舶推進器の第1スラストと前記第2船舶推進器の第2スラストとの大きさの比であり、前記船が前記所望の動作で動作するように、前記第1目標舵角と、前記第2目標舵角と、前記目標スラスト比に従って、前記第1船舶推進器と前記第2船舶推進器とを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記第1スラストと前記第2スラストとの合力が前記船の重心を通り、且つ、前記合力の方向が真横となるように予め設定された、前記第1目標舵角の第1デフォルト角と、前記第2目標舵角の第2デフォルト角と、前記目標スラスト比のデフォルトスラスト比とを記憶しており、
前記所望の動作が真横への移動であるときには、前記第1デフォルト角を前記第1目標舵角として、前記第2デフォルト角を前記第2目標舵角として、前記デフォルトスラスト比を前記目標スラスト比として設定して、前記第1船舶推進器と前記第2船舶推進器とを制御して前記船の移動を開始し、
前記船の実際の動作と前記真横への移動との誤差を検出し、
前記誤差を減少させるように第1補正角と、第2補正角と、補正スラスト比との少なくとも1つを決定し、
前記第1補正角で前記第1目標舵角を補正し、前記第2補正角で前記第2目標舵角を補正し、前記補正スラスト比で前記目標スラスト比を補正し、
前記誤差の検出と、前記誤差に応じた前記第1補正角と前記第2補正角と前記補正スラスト比との更新とを繰り返す、
システム。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記操作装置による操作モードが有効であるかを判定し、
前記操作モードが有効であるときには、前記誤差の検出と前記第1補正角と前記第2補正角と前記補正スラスト比との更新を継続し、
前記操作モードが無効となったときには、前記第1補正角と前記第2補正角と前記補正スラスト比とをゼロにリセットする、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記操作モードが無効となっても、前記第1デフォルト角と、前記第2デフォルト角と、前記デフォルトスラスト比とを維持する、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、揮発性メモリと不揮発性メモリとを含み、
前記コントローラは、
前記第1デフォルト角と、前記第2デフォルト角と、前記デフォルトスラスト比とを、前記不揮発性メモリに格納しており、
前記第1補正角と、前記第2補正角と、前記補正スラスト比とを、前記揮発性メモリに保存する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記船の実際の動作が、前記船の回頭を含むときには、
前記船の回頭を減少させるように、前記第1補正角と前記第2補正角とを決定し、
前記第1補正角で前記第1目標舵角を補正し、前記第2補正角で前記第2目標舵角を補正し、
前記誤差の検出を繰り返しながら、前記第1補正角と前記第2補正角との更新を繰り返す、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記船の実際の動作が、前記船の前後の移動を含むときには、
前記船の前後の移動を減少させるように、補正スラスト比を決定し、
前記補正スラスト比で前記目標スラスト比を補正し、
前記誤差の検出を繰り返しながら、前記補正スラスト比の更新を繰り返す、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
第1ステアリング軸回りに回転可能な第1船舶推進器と、第2ステアリング軸回りに回転可能な第2船舶推進器とを含む船を制御するための方法であって、
手動操作可能な操作装置から、前記船の所望の動作を示す操作信号を受信することと、
前記操作信号に応じて、前記第1船舶推進器の第1目標舵角と、前記第2船舶推進器の第2目標舵角と、目標スラスト比とを決定し、前記目標スラスト比は、前記第1船舶推進器の第1スラストと前記第2船舶推進器の第2スラストとの大きさの比であり、前記船が前記所望の動作で動作するように、前記第1目標舵角と、前記第2目標舵角と、前記目標スラスト比に従って、前記第1船舶推進器と前記第2船舶推進器とを制御することと、
前記第1スラストと前記第2スラストとの合力が前記船の重心を通り、且つ、前記合力の方向が真横となるように予め設定された、前記第1目標舵角の第1デフォルト角と、前記第2目標舵角の第2デフォルト角と、前記目標スラスト比のデフォルトスラスト比とを読み出すことと、
前記所望の動作が真横への移動であるときには、前記第1デフォルト角を前記第1目標舵角として、前記第2デフォルト角を前記第2目標舵角として、前記デフォルトスラスト比を前記目標スラスト比として設定して、前記第1船舶推進器と前記第2船舶推進器とを制御して前記船の移動を開始することと、
前記船の実際の動作と前記真横への移動との誤差を検出することと、
前記誤差を減少させるように第1補正角と、第2補正角と、補正スラスト比との少なくとも1つを決定することと、
前記第1補正角で前記第1目標舵角を補正し、前記第2補正角で前記第2目標舵角を補正し、前記補正スラスト比で前記目標スラスト比を補正することと、
前記誤差の検出を繰り返しながら、前記第1補正角と前記第2補正角と前記補正スラスト比との更新を繰り返すこと、
を備える方法。
【請求項8】
前記操作装置による操作モードが有効であるかを判定することと、
前記操作モードが有効であるときには、前記誤差の検出と前記第1補正角と前記第2補正角と前記補正スラスト比との更新を継続することと、
前記操作モードが無効となったときには、前記第1補正角と前記第2補正角と前記補正スラスト比とをゼロにリセットすること
をさらに備える、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記操作モードが無効となっても、前記第1デフォルト角と、前記第2デフォルト角と、前記デフォルトスラスト比とを維持すること、
をさらに備える請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1デフォルト角と、前記第2デフォルト角と、前記デフォルトスラスト比とは、不揮発性メモリに格納されており、
前記第1補正角と、前記第2補正角と、前記補正スラスト比とを、揮発性メモリに保存すること、
をさらに備える、
請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記船の実際の動作が、前記船の回頭を含むときには、前記船の回頭を減少させるように、前記第1補正角と前記第2補正角とを決定することと、
前記第1補正角で前記第1目標舵角を補正し、前記第2補正角で前記第2目標舵角を補正することと、
前記誤差の検出を繰り返しながら、前記第1補正角と前記第2補正角との更新を繰り返すこと、
をさらに備える請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記船の実際の動作が、前記船の前後の移動を含むときには、前記船の前後の移動を減少させるように、補正スラスト比を決定することと、
前記補正スラスト比で前記目標スラスト比を補正することと、
前記誤差の検出を繰り返しながら、前記補正スラスト比の更新を繰り返すこと、
をさらに備える請求項7に記載の方法。
【請求項13】
船を制御するためのシステムであって、
第1ステアリング軸回りに回転可能な第1船舶推進器と、
第2ステアリング軸回りに回転可能な第2船舶推進器と、
手動操作可能であり、前記船の所望の動作を示す操作信号を出力する操作装置と、
前記操作信号に応じて、前記第1船舶推進器の第1目標舵角と、前記第2船舶推進器の第2目標舵角と、前記第1船舶推進器の第1スラストの目標大きさを示す第1目標スラストと、前記第2船舶推進器の第2スラストの目標大きさを示す第2目標スラストとを決定し、前記船が前記所望の動作で動作するように、前記第1目標舵角と、前記第2目標舵角と、前記第1目標スラストと、前記第2目標スラストとに従って、前記第1船舶推進器と前記第2船舶推進器とを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記第1スラストと前記第2スラストとの合力が前記船の重心を通り、且つ、前記合力の方向が真横となるように予め設定された、前記第1目標舵角の第1デフォルト角と、前記第2目標舵角の第2デフォルト角とを記憶しており、
前記所望の動作が真横への移動であるときには、前記第1デフォルト角を前記第1目標舵角として、前記第2デフォルト角を前記第2目標舵角として設定し、前記第1船舶推進器と前記第2船舶推進器とを制御して前記船の移動を開始し、
前記船の実際の動作と前記真横への移動との誤差を検出し、
前記誤差を減少させるように第1補正角と、第2補正角と、第1補正スラストと、第2補正スラストとの少なくとも1つを決定し、
前記第1補正角で前記第1目標舵角を補正し、前記第2補正角で前記第2目標舵角を補正し、前記第1補正スラストで前記第1目標スラストを補正し、前記第2補正スラストで前記第2目標スラストを補正し、
前記誤差の検出と、前記誤差に応じた前記第1補正角と、前記第2補正角と、前記第1補正スラストと、前記第2補正スラストとの更新とを繰り返す、
システム。
【請求項14】
前記コントローラは、
前記操作装置による操作モードが有効であるかを判定し、
前記操作モードが有効であるときには、前記誤差の検出と、前記第1補正角と、前記第2補正角と、前記第1補正スラストと、前記第2補正スラストとの更新を継続し、
前記操作モードが無効となったときには、前記第1補正角と、前記第2補正角と、前記第1補正スラストと、前記第2補正スラストとをゼロにリセットする、
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記コントローラは、前記操作モードが無効となっても、前記第1デフォルト角と、前記第2デフォルト角とを維持する、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラは、揮発性メモリと不揮発性メモリとを含み、
前記コントローラは、
前記第1デフォルト角と、前記第2デフォルト角とを、前記不揮発性メモリに格納しており、
前記第1補正角と、前記第2補正角と、前記第1補正スラストと、前記第2補正スラストとを、前記揮発性メモリに保存する、
請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記コントローラは、前記船の実際の動作が、前記船の回頭を含むときには、
前記船の回頭を減少させるように、前記第1補正角と前記第2補正角とを決定し、
前記第1補正角で前記第1目標舵角を補正し、前記第2補正角で前記第2目標舵角を補正し、
前記誤差の検出を繰り返しながら、前記第1補正角と前記第2補正角との更新を繰り返す、
請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラは、前記船の実際の動作が、前記船の前後の移動を含むときには、
前記船の前後の移動を減少させるように、前記第1補正スラストと前記第2補正スラストとを決定し、
前記第1補正スラストで前記第1目標スラストを補正し、
前記第2補正スラストで前記第2目標スラストを補正し、
前記誤差の検出を繰り返しながら、前記第1補正スラストと前記第2補正スラストとの更新を繰り返す、
請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船を制御するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船を横方向に移動させるように船推進器を制御するシステムが知られている。例えば、特許文献1に開示されているシステムでは、操作レバーの操作に応じて、船を横方向に移動させるように第1船外機と第2船外機とを制御する。当該システムは、操作レバーが横方向に倒されたときには、第1船外機のスラストと第2船外機のスラストとの合力が横方向を向くように、第1、第2船外機の舵角とスラストの大きさとを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-168921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように船の横移動を行うシステムでは、操船レバーによって指示した船の進行方向に対して実際の進行方向を合わせるためのキャリブレーション作業が行われる。キャリブレーション作業では、システムは、操作レバーが横方向に倒されたときに、実際の船の進行方向と横方向とのズレを認識する。システムは、ズレを解消するための補正量を算出する。
【0005】
上記のようなシステムは、キャリブレーションによって算出した補正量を保存しておき、操作レバーが横方向に倒されたときの第1、第2船外機の舵角とスラストの大きさとを補正量によって補正する。システムがシャットダウンされた後も、システムは補正量を保持する。そして、システムが起動されたときには、保存された補正量を用いて、第1、第2船外機の舵角とスラストの大きさとを補正する。
【0006】
しかし、船には、潮流や風などの外的要因による外力が作用する。外的要因による外力は、一定ではなく、船の位置、或いは時間に応じて変化する。そのため、上記のようにキャリブレーション作業によって、舵角とスラストの大きさとを補正しても、外的要因による外力が変化すれば、実際の船の進行方向は、横方向からズレてしまう。そのため、船を安定して横方向に移動させることは容易ではない。本開示の目的は、操作装置の横方向への操作に従って、船を安定して横方向に移動させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様に係るシステムは、船を制御するためのシステムである。当該システムは、第1船舶推進器と、第2船舶推進器と、操作装置と、コントローラとを備える。第1船舶推進器は、第1ステアリング軸回りに回転可能である。第2船舶推進器は、第2ステアリング軸回りに回転可能である。操作装置は、手動操作可能であり、船の所望の動作を示す操作信号を出力する。コントローラは、操作信号に応じて、第1船舶推進器の第1目標舵角と、第2船舶推進器の第2目標舵角と、目標スラスト比とを決定する。目標スラスト比は、第1船舶推進器の第1スラストと第2船舶推進器の第2スラストとの大きさの比である。コントローラは、船が所望の動作で動作するように、第1目標舵角と、第2目標舵角と、目標スラスト比に従って、第1船舶推進器と第2船舶推進器とを制御する。コントローラは、第1目標舵角の第1デフォルト角と、第2目標舵角の第2デフォルト角と、目標スラスト比のデフォルトスラスト比とを記憶している。第1デフォルト角と第2デフォルト角とデフォルトスラスト比とは、第1スラストと第2スラストとの合力が船の重心を通り、且つ、合力の方向が真横となるように予め設定されている。コントローラは、所望の動作が真横への移動であるときには、第1デフォルト角を第1目標舵角として、第2デフォルト角を第2目標舵角として、デフォルトスラスト比を目標スラスト比として設定して、第1船舶推進器と第2船舶推進器とを制御して船の移動を開始する。コントローラは、船の実際の動作と真横への移動との誤差を検出する。コントローラは、誤差を減少させるように第1補正角と、第2補正角と、補正スラスト比との少なくとも1つを決定する。コントローラは、第1補正角で第1目標舵角を補正し、第2補正角で第2目標舵角を補正し、補正スラスト比で目標スラスト比を補正する。コントローラは、誤差の検出と、誤差に応じた第1補正角と第2補正角と補正スラスト比との更新とを繰り返す。
【0008】
本開示の第2の態様に係る方法は、第1船舶推進器と第2船舶推進器とを含む船を制御するための方法である。第1船舶推進器は、第1ステアリング軸回りに回転可能である。第2船舶推進器は、第2ステアリング軸回りに回転可能である。当該方法は、以下の処理を備える、手動操作可能な操作装置から、船の所望の動作を示す操作信号を受信することと、操作信号に応じて、第1船舶推進器の第1目標舵角と、第2船舶推進器の第2目標舵角と、目標スラスト比とを決定し、目標スラスト比は、第1船舶推進器の第1スラストと第2船舶推進器の第2スラストとの大きさの比であり、船が所望の動作で動作するように、第1目標舵角と、第2目標舵角と、目標スラスト比に従って、第1船舶推進器と第2船舶推進器とを制御することと、第1スラストと第2スラストとの合力が船の重心を通り、且つ、合力の方向が真横となるように予め設定された、第1目標舵角の第1デフォルト角と、第2目標舵角の第2デフォルト角と、目標スラスト比のデフォルトスラスト比とを読み出すことと、所望の動作が真横への移動であるときには、第1デフォルト角を第1目標舵角として、第2デフォルト角を第2目標舵角として、デフォルトスラスト比を目標スラスト比として設定して、第1船舶推進器と第2船舶推進器とを制御して船の移動を開始することと、船の実際の動作と真横への移動との誤差を検出することと、誤差を減少させるように第1補正角と、第2補正角と、補正スラスト比との少なくとも1つを決定することと、第1補正角で第1目標舵角を補正し、第2補正角で第2目標舵角を補正し、補正スラスト比で目標スラスト比を補正することと、誤差の検出を繰り返しながら、第1補正角と第2補正角と補正スラスト比との更新を繰り返すこと。
【0009】
本開示の第3の態様に係るシステムは、船を制御するためのシステムである。当該システムは、第1船舶推進器と、第2船舶推進器と、操作装置と、コントローラとを備える。第1船舶推進器は、第1ステアリング軸回りに回転可能である。第2船舶推進器は、第2ステアリング軸回りに回転可能である。操作装置は、手動操作可能であり、船の所望の動作を示す操作信号を出力する。コントローラは、操作信号に応じて、第1船舶推進器の第1目標舵角と、第2船舶推進器の第2目標舵角と、第1目標スラストと、第2目標スラストとを決定する。第1目標スラストは、第1船舶推進器の第1スラストの目標大きさを示す。第2目標スラストは、第2船舶推進器の第2スラストの目標大きさを示す。コントローラは、船が所望の動作で動作するように、第1目標舵角と、第2目標舵角と、第1目標スラストと、第2目標スラストとに従って、第1船舶推進器と第2船舶推進器とを制御する。コントローラは、第1目標舵角の第1デフォルト角と、第2目標舵角の第2デフォルト角とを記憶している。第1デフォルト角と第2デフォルト角とデフォルトスラスト比とは、第1スラストと第2スラストとの合力が船の重心を通り、且つ、合力の方向が真横となるように予め設定されている。コントローラは、所望の動作が真横への移動であるときには、第1デフォルト角を第1目標舵角として、第2デフォルト角を第2目標舵角として設定して、第1船舶推進器と第2船舶推進器とを制御して船の移動を開始する。コントローラは、船の実際の動作と真横への移動との誤差を検出する。コントローラは、誤差を減少させるように第1補正角と、第2補正角と、第1補正スラストと、第2補正スラストとの少なくとも1つを決定する。コントローラは、第1補正角で第1目標舵角を補正し、第2補正角で第2目標舵角を補正し、第1補正スラストで第1目標スラストを補正し、第2補正スラストで第2目標スラストを補正する。コントローラは、誤差の検出と、誤差に応じた第1補正角と、第2補正角と、第1補正スラストと、第2補正スラストとの更新とを繰り返す。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、船の実際の動作と真横への移動との誤差を減少させるように第1補正角と、第2補正角と、補正スラスト比との少なくとも1つが決定される。そして、誤差の検出と、誤差に応じた第1補正角と第2補正角と補正スラスト比との更新とが繰り返される。それにより、外的要因による外力が変化しても、それに応じて第1補正角と第2補正角と補正スラスト比がリアルタイムに決定され、更新される。それにより、船を安定して横方向に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る船舶推進器が搭載された船を示す斜視図である。
図2】船舶推進器の側面図である。
図3】船の操船システムの構成を示す模式図である。
図4】操作装置が真横に倒されたときの船舶推進器の制御を示す模式図である。
図5】操作装置が斜め方向に倒されたときの船舶推進器の制御を示す模式図である。
図6】操作装置が捻られたときの船舶推進器の制御を示す模式図である。
図7】操作装置が捻られ、且つ、真横に倒されたときの船舶推進器の制御を示す模式図である。
図8A】横アシスト制御が無いときの船の動作を示す図である。
図8B】横アシスト制御があるときの船の動作を示す図である。
図9A】横アシスト制御が無いときの船の動作を示す図である。
図9B】横アシスト制御があるときの船の動作を示す図である。
図10】横アシスト制御の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る船舶推進器が搭載された船100を示す斜視図である。船100は、複数の船舶推進器1a,1bを備えている。本実施形態において、船舶推進器1a,1bは、船外機である。
【0013】
船舶推進器1a,1bは、船100の船尾に取り付けられる。船舶推進器1a,1bは、船100の幅方向に並んで配置されている。具体的には、第1船舶推進器1aは、船100の左舷に配置される。船舶推進器1bは、船100の右舷に配置される。船舶推進器1a,1bは、それぞれ船100を推進させるスラストを発生させる。
【0014】
図2は、第1船舶推進器1aの側面図である。第1船舶推進器1aは、ブラケット11aを介して船100に取り付けられる。ブラケット11aは、第1ステアリング軸12a回りに回転可能に第1船舶推進器1aを支持する。第1ステアリング軸12aは、第1船舶推進器1aの上下方向に延びている。
【0015】
第1船舶推進器1aは、第1駆動ユニット2aと、ドライブ軸3aと、プロペラ軸4aと、第1シフト機構5aと、ハウジング10aとを含む。第1駆動ユニット2aは、船100を推進させるスラストを発生させる。第1駆動ユニット2aは、内燃エンジンである。第1駆動ユニット2aは、クランク軸13aを含む。クランク軸13aは、第1船舶推進器1aの上下方向に延びている。ドライブ軸3aは、クランク軸13aに接続されている。ドライブ軸3aは、第1船舶推進器1aの上下方向に延びている。プロペラ軸4aは、第1船舶推進器1aの前後方向に延びている。プロペラ軸4aは、第1シフト機構5aを介して、ドライブ軸3aに接続されている。プロペラ軸4aにはプロペラ6aが取り付けられる。
【0016】
第1シフト機構5aは、前進ギア14aと、後進ギア15aと、ドッグクラッチ16aとを含む。ドッグクラッチ16aによってギア14a,15aの接続が切り換えられることで、ドライブ軸3aからプロペラ軸4aへの回転の伝達方向が切り換えられる。それにより、船100の前進と後進とが切り換えられる。ハウジング10aは、第1駆動ユニット2aと、ドライブ軸3aと、プロペラ軸4aと、第1シフト機構5aとを収容している。
【0017】
図3は、船100の操船システムの構成を示す模式図である。図3に示すように、第1船舶推進器1aは、第1シフトアクチュエータ7aと第1ステアリングアクチュエータ8aとを含む。第1シフトアクチュエータ7aは、第1シフト機構5aのドッグクラッチ16aに接続されている。第1シフトアクチュエータ7aは、ドッグクラッチ16aを動作させることで、ギア14a,15aの接続を切り換える。それにより、船100の前進と後進とが切り換えられる。第1シフトアクチュエータ7aは、例えば電動モータである。ただし、第1シフトアクチュエータ7aは、電動シリンダ、油圧モータ、或いは油圧シリンダなどの他のアクチュエータであってもよい。
【0018】
第1ステアリングアクチュエータ8aは、第1船舶推進器1aに接続されている。第1ステアリングアクチュエータ8aは、第1船舶推進器1aを第1ステアリング軸12a回りに回転させる。それにより、第1船舶推進器1aの第1舵角θaが変更される。第1舵角θaは、船100の前後方向に対する第1船舶推進器1aの操舵方向の角度である。第1船舶推進器1aの操舵方向は、第1船舶推進器1aの前後方向であり、プロペラ軸4aが延びる方向である。第1ステアリングアクチュエータ8aは、例えば電動モータである。ただし、第1シフトアクチュエータ7aは、電動シリンダ、油圧モータ、或いは油圧シリンダなどの他のアクチュエータであってもよい。
【0019】
第1船舶推進器1aは、第1駆動コントローラ9aを含む。第1駆動コントローラ9aは、CPUなどのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリとを含む。第1駆動コントローラ9aは、第1船舶推進器1aを制御するためのプログラム及びデータを記憶している。第1駆動コントローラ9aは、第1駆動ユニット2aを制御する。
【0020】
第2船舶推進器1bは、第1船舶推進器1aと同様の構造を有している。第2船舶推進器1bは、第2駆動ユニット2bと、第2シフトアクチュエータ7bと、第2ステアリングアクチュエータ8bと、第2駆動コントローラ9bとを含む。第2船舶推進器1bの第2駆動ユニット2b、第2シフトアクチュエータ7b、第2ステアリングアクチュエータ8b、及び第2駆動コントローラ9bは、第1船舶推進器1aの第1駆動ユニット2a、第1シフトアクチュエータ7a、第1ステアリングアクチュエータ8a、及び第1駆動コントローラ9aと、それぞれ同様の構成である。図4は、船100と船舶推進器1a,1bとを模式的に示す図である。図4に示すように、第2船舶推進器1bは、第2ステアリング軸12b回りに回転可能である。
【0021】
操船システムは、ステアリングホイール24と、リモートコントローラ25と、操作装置26と、第1入力装置27と、第2入力装置28と、を含む。図1に示すように、ステアリングホイール24と、リモートコントローラ25と、操作装置26と、第1入力装置27と、第2入力装置28とは、船100の操船席に配置されている。ステアリングホイール24と、リモートコントローラ25と、操作装置26と、第1入力装置27と、第2入力装置28とは、手動操作可能である。
【0022】
ステアリングホイール24は、オペレータが船100の旋回方向を操作するための装置である。ステアリングホイール24は、センサ240を含む。センサ240は、ステアリングホイール24の操作方向及び操作量を示すステアリング信号を出力する。
【0023】
リモートコントローラ25は、第1スロットルレバー25aと第2スロットルレバー25bとを含む。第1スロットルレバー25aは、オペレータが第1船舶推進器1aの第1スラストの大きさを調整するための装置である。また、第1スロットルレバー25aは、オペレータが第1船舶推進器1aの第1スラストの方向を前進と後進とに切り替えるための装置である。第1スロットルレバー25aは、中立位置から前進方向と後進方向とに操作可能である。中立位置は、前進方向と後進方向との間の位置である。第1スロットルレバー25aはセンサ251を含む。センサ251は、第1スロットルレバー25aの操作方向及び操作量を示すスロットル信号を出力する。
【0024】
第2スロットルレバー25bは、オペレータが第2船舶推進器1bの第2スラストの大きさを調整するための装置である。また、第2スロットルレバー25bは、オペレータが第2船舶推進器1bの第2スラストの方向を前進と後進とに切り替えるための装置である。第2スロットルレバー25bの構成は、第1スロットルレバー25aと同様である。第2スロットルレバー25bはセンサ252を含む。センサ252は、第2スロットルレバー25bの操作方向及び操作量を示すスロットル信号を出力する。
【0025】
操作装置26は、オペレータが船100の移動方向を前後左右の各方向に操作するための装置である。また、操作装置26は、オペレータが船100の回頭動作を操作するための装置である。操作装置26は、例えばジョイスティックである。操作装置26は、中立位置から、少なくとも前後左右の4方向に傾倒可能である。操作装置26は、4方向以上の方向への指示が可能であってもよく、全方位への指示が可能であってもよい。操作装置26は、回転軸Ax1を中心に回転可能である。すなわち、操作装置26は、回転軸Ax1を中心に、中央位置から時計回り及び反時計回りに捻り操作可能である。
【0026】
操作装置26は、センサ260を含む。センサ260は、操作装置26の操作を示す操作信号を出力する。操作信号は、操作装置26の傾倒方向及び傾倒量を含む。操作信号は、操作装置26の捻り方向及び捻り量を含む。
【0027】
操船システムは、操船コントローラ30を含む。操船コントローラ30は、CPUなどのプロセッサ31と、メモリ32とを含む。メモリ32は、揮発性メモリ33と、不揮発性メモリ34とを含む。揮発性メモリ33は、例えば、SRAM(Static RAM)、或いは、DRAM(Dynamic RAM)などのRAMである。揮発性メモリ33は、電源の供給が無くなると記憶したデータを失う。不揮発性メモリ34は、例えばROM、或いはフラッシュメモリである。不揮発性メモリ34は、電源の供給が無くても、記憶したデータを保持する。
【0028】
操船コントローラ30は、第1船舶推進器1a及び第2船舶推進器1bを制御するためのプログラム及びデータを記憶している。操船コントローラ30は、第1、第2駆動コントローラ9a,9bと有線、或いは無線を介して接続されている。操船コントローラ30は、ステアリングホイール24、リモートコントローラ25、操作装置26、第1入力装置27、及び第2入力装置28と、有線、或いは無線を介して接続されている。
【0029】
操船コントローラ30は、センサ240からステアリング信号を受信する。操船コントローラ30は、センサ251,252からスロットル信号を受信する。操船コントローラ30は、センサ260から操作信号を受信する。操船コントローラ30は、センサ240,251,252,260からのこれらの信号に基づいて、第1、第2駆動コントローラ9a,9bへ指令信号を出力する。指令信号は、第1駆動コントローラ9aを介して、第1シフトアクチュエータ7a、第1ステアリングアクチュエータ8aに送信される。指令信号は、第2駆動コントローラ9bを介して、第2シフトアクチュエータ7b、第2ステアリングアクチュエータ8bに送信される。
【0030】
例えば、操船コントローラ30は、第1スロットルレバー25aの操作方向に応じて、第1シフトアクチュエータ7aへの指令信号を出力する。それにより、第1船舶推進器1aの前進と後進とが切り替えられる。操船コントローラ30は、第1スロットルレバー25aの操作量に応じて、第1駆動ユニット2aへのスロットル指令を出力する。第1駆動コントローラ9aは、スロットル指令に応じて、第1船舶推進器1aの出力回転速度を制御する。
【0031】
操船コントローラ30は、第2スロットルレバー25bの操作方向に応じて、第2シフトアクチュエータ7bへの指令信号を出力する。それにより、第2船舶推進器1bの前進と後進とが切り替えられる。操船コントローラ30は、第2スロットルレバー25bの操作量に応じて、第2駆動ユニット2bへのスロットル指令を出力する。第2駆動コントローラ9bは、スロットル指令に応じて、第2船舶推進器1bの出力回転速度を制御する。
【0032】
操船コントローラ30は、ステアリングホイール24の操作方向及び操作量に応じて、第1、第2ステアリングアクチュエータ8a,8bへの指令信号を出力する。ステアリングホイール24が中立位置から左方に操作されると、操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aと第2船舶推進器1bとが右方に回転するように、第1、第2ステアリングアクチュエータ8a,8bを制御する。それにより、船100は左方に旋回する。
【0033】
ステアリングホイール24が中立位置から右方に操作されると、操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aと第2船舶推進器1bとが左方に回転するように、第1、第2ステアリングアクチュエータ8a,8bを制御する。それにより、船100は右方に旋回する。また、操船コントローラ30は、ステアリングホイール24の操作量に応じて、第1船舶推進器1aと第2船舶推進器1bとの舵角θa,θbを制御する。なお、操船コントローラ30とは別のコントローラが、ステアリングホイール24の操作量に応じて、第1船舶推進器1aと第2船舶推進器1bとの舵角θa,θbを制御してもよい。或いは、第1駆動ユニット2aと第2駆動ユニット2bとが、ステアリングホイール24の操作量に応じて、直接的に、第1船舶推進器1aと第2船舶推進器1bとの舵角θa,θbを制御してもよい。
【0034】
操船システムは、位置センサ35を含む。位置センサ35は、船100の位置を検出する。位置センサ35は、例えばGPS(Global Positioning System)などのGNSS(Global Navigation Satellite System)の受信機である。ただし、位置センサ35は、GNSSの受信機以外センサであってもよい。位置センサ35は、船100の位置を示す信号を出力する。操船コントローラ30は、位置センサ35と通信可能に接続されている。操船コントローラ30は、位置センサ35からの信号により、船100の位置を取得する。また、操船コントローラ30は、位置センサ35からの信号により、船100の速度を取得する。操船システムは、船100の速度を検出するための別途のセンサを含んでもよい。
【0035】
操船システムは、方位センサ36を含む。方位センサ36は、船100の針路を検出する。方位センサ36は、例えば、IMU(inertial measurement unit)である。ただし、方位センサ36は、IMU以外のセンサであってもよい。操船コントローラ30は、方位センサ36と通信可能に接続されている。操船コントローラ30は、方位センサ36からの信号により、船100の針路を取得する。
【0036】
第1入力装置27は、船舶推進器1a,1bの制御モードを選択するためにオペレータによって操作可能である。第1入力装置27は、操作装置26に配置されてもよい。或いは、第1入力装置27は、操作装置26とは別に配置されてもよい。第1入力装置27は、例えばスイッチである。第1入力装置27は、スイッチに限らず、タッチスクリーンなどの他の装置であってもよい。第1入力装置27は、オペレータによって選択された制御モードを示す指令信号を出力する。操船コントローラ30は、第1入力装置27から指令信号を受信する。操船コントローラ30は、選択された制御モードに応じて船100が移動するように、船舶推進器1a,1bを制御する。制御モードは、操作装置26による操作モード(以下、単に「操作モード」と呼ぶ)を含む。操船コントローラ30は、第1入力装置27の操作に応じて、操作モードの有効と無効とを判定する。
【0037】
第2入力装置28は、制御モードの設定を行うためにオペレータによって操作可能である。第2入力装置28は、操作装置26とは別に配置されてもよい。或いは、第2入力装置28は、操作装置26に配置されてもよい。第1入力装置27は、例えばタッチスクリーンである。第2入力装置28は、タッチスクリーンに限らず、スイッチなどの他の装置であってもよい。第2入力装置28は、オペレータによって選択された制御モードの設定を示す指令信号を出力する。操船コントローラ30は、第2入力装置28から指令信号を受信する。
【0038】
操作モードが有効であるときには、操船コントローラ30は、操作装置26の操作に応じた所望の動作で船100が動作するように、第1船舶推進器1aと第2船舶推進器1bとを制御する。操船コントローラ30は、操作装置26の傾倒方向に対応した方向に、傾倒量に対応した速度で、船100が平行移動するように、第1船舶推進器1aの第1FR方向、第1目標スラスト、及び第1目標舵角と、第2船舶推進器1bの第2FR方向、第2目標スラスト、及び第2目標舵角とを決定する。操船コントローラ30は、操作装置26の捻り方向に対応した方向に、捻り量に対応した速度で、船100が回頭するように、第1船舶推進器1aの第1FR方向、第1目標スラスト、及び第1目標舵角と、第2船舶推進器1bの第2FR方向、第2目標スラスト、及び第2目標舵角とを決定する。
【0039】
第1FR方向は、第1船舶推進器1aの第1スラストの前方又は後方への方向である。第1目標スラストは、第1船舶推進器1aの第1スラストの目標大きさである。第1目標舵角は、第1船舶推進器1aのθaの目標角度である。第2FR方向は、第2船舶推進器1bの第2スラストの前方又は後方への方向である。第2目標スラストは、第2船舶推進器1bの第2スラストの目標大きさである。第2目標舵角は、第2船舶推進器1bの第2舵角θbの目標角度である。
【0040】
操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aの第1FR方向、第1目標スラスト、及び第1目標舵角に応じて、第1駆動ユニット2a、第1シフトアクチュエータ7a、及び第1ステアリングアクチュエータ8aを制御する。操船コントローラ30は、第2船舶推進器1bの第2FR方向、第2目標スラスト、及び第2目標舵角に応じて、第2駆動ユニット2b、第2シフトアクチュエータ7b、及び第2ステアリングアクチュエータ8bを制御する。
【0041】
詳細には、操作装置26が、捻られずに真横に倒されているときには、操船コントローラ30は、船100を真横に平行移動させる(横移動モード)。例えば、操作装置26が捻られずに真右に倒されているときには、操船コントローラ30は、図4に示すように、第1船舶推進器1aの第1FR方向を前進方向に、第2船舶推進器1bの第2FR方向を後進方向に決定する。また、操船コントローラは、第1スラストF1と第2スラストF2とのスラスト合力F3が、船100の重心G1を通り、且つ、真右を向くように、第1目標スラスト、第1目標舵角、第2目標スラスト、及び第2目標舵角を決定する。それにより、船100は、真右に平行移動する。
【0042】
図示を省略するが、操作装置26が捻られずに真左に倒されているときには、操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aの第1FR方向を後進方向に、第2船舶推進器1bの第2FR方向を前進方向に決定する。また、操船コントローラ30は、スラスト合力F3が、船100の重心G1を通り、且つ真左を向くように、第1目標スラスト、第1目標舵角、第2目標スラスト、及び第2目標舵角を決定する。それにより、船100は、真左に平行移動する。
【0043】
なお、図4において、“N”は、操作装置26の中立位置を示している。“F”は、操作装置26の操作方向が前進方向であることを示している。“R”は、操作装置26の操作方向が後進方向であることを示している。“L”は、操作装置26の操作方向が左方向であることを示している。“R”は、操作装置26の操作方向が右方向であることを示している。
【0044】
操作装置26が、捻られずに斜め方向に倒されているときには、操船コントローラ30は、船100を斜め方向に移動させる。例えば、操作装置26が捻られずに右斜め前方に倒されているときには、操船コントローラ30は、図5に示すように、第1船舶推進器1aの第1FR方向を前進方向に、第2船舶推進器1bの第2FR方向を後進方向に決定する。また、操船コントローラ30は、スラスト合力F3が、船100の重心G1を通り、且つ、右斜め前方を向くように、第1目標スラスト、第1目標舵角、第2目標スラスト、及び第2目標舵角を決定する。それにより、船100は、右斜め前方へ平行移動する。
【0045】
図示を省略するが、操作装置26が捻られずに左斜め前方に倒されているときには、操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aの第1FR方向を後進方向に、第2船舶推進器1bの第2FR方向を前進方向に決定する。また、操船コントローラ30は、スラスト合力F3が、船100の重心G1を通り、且つ、左斜め前方を向くように、第1目標スラスト、第1目標舵角、第2目標スラスト、及び第2目標舵角を決定する。それにより、船100は、左斜め前方へ平行移動する。操作装置26が捻られずに右斜め後方、又は左斜め後方に倒されているときには、操船コントローラ30は、後進方向のスラストが、前進方向のスラストより大きくなるように、第1目標スラストと第2目標スラストとを決定する。
【0046】
なお、操船コントローラ30は、目標スラスト比に基づいて、第1目標スラストと第2目標スラストとを決定する。目標スラスト比は、第1船舶推進器1aの第1スラストと第2船舶推進器1bの第2スラストとの大きさの比である。第1船舶推進器1aと第2船舶推進器1bとは、同じ機種であっても、個体差などの要因によって、出力に差がある場合がある。目標スラスト比は、第1船舶推進器1aと第2船舶推進器1bとの出力のバランスをとるために用いられる。目標スラスト比については、後に詳細に説明する。操船コントローラ30は、操作装置26の傾倒量に応じて、目標スラスト合力を決定する。目標スラスト合力は、スラスト合力F3の目標値である。操船コントローラ30は、目標スラスト比に基づいて、目標スラスト合力を分配することで、第1目標スラストと第2目標スラストとを決定する。
【0047】
操作装置26が倒されずに捻られているときには、操船コントローラ30は、船100をその場で回頭させる(その場回頭モード)。例えば、図6に示すように、操作装置26が倒されずに時計回りに捻られているときには、操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aの第1FR方向を前進方向に、第2船舶推進器1bの第2FR方向を後進方向に決定する。また、操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aの操舵方向と、第2船舶推進器1bの操舵方向とが、船100の前後方向に平行になるように、第1目標舵角と第2目標舵角とを決定する。それにより、船100は、時計回りにその場で回頭する。
【0048】
図示を省略するが、操作装置26が倒されず反時計回りに捻られているときには、操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aの第1FR方向を後進方向に、第2船舶推進器1bの第2FR方向を前進方向に決定する。また、操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aの操舵方向と、第2船舶推進器1bの操舵方向とが、船100の前後方向に平行になるように、第1目標舵角と第2目標舵角とを決定する。それにより、船100は、反時計回りにその場で回頭する。
【0049】
操作装置26が、捻られながら真横に倒されているときには、操船コントローラ30は、船100を回頭させながら真横に移動させる。例えば、操作装置26が時計回りに捻られ、且つ、真右へ倒されているときには、操船コントローラ30は、図7に示すように、第1船舶推進器1aの第1FR方向を前進方向に、第2船舶推進器1bの第2FR方向を後進方向に決定する。また、操船コントローラ30は、スラスト合力F3が、船100の重心G1の前方の所定位置を通り、且つ、真右を向くように、第1目標スラスト、第1目標舵角、第2目標スラスト、及び第2目標舵角を決定する。それにより、船100は、時計回りに回頭しながら真右へ移動する。
【0050】
図示を省略するが、操作装置26が反時計回りに捻られながら真右へ倒されているときには、操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aの第1FR方向を前進方向に、第2船舶推進器1bの第2FR方向を後進方向に決定する。また、操船コントローラ30は、スラスト合力F3が、船100の重心G1の後方の所定位置を通り、且つ真右を向くように、第1目標スラスト、第1目標舵角、第2目標スラスト、及び第2目標舵角を決定する。それにより、船100は、反時計回りに回頭しながら真右へ移動する。
【0051】
操船コントローラ30の不揮発性メモリ34は、横移動モードでの第1デフォルト角と、第2デフォルト角と、デフォルトスラスト比とを記憶している。第1デフォルト角は、横移動モードでの第1目標舵角のデフォルト値である。第2デフォルト角は、横移動モードでの第2目標舵角のデフォルト値である。デフォルトスラスト比は、横移動モードでの目標スラスト比のデフォルト値である。
【0052】
操作モードの起動時には、操船コントローラ30は、不揮発性メモリ34から、第1デフォルト角と、第2デフォルト角と、デフォルトスラスト比とを読み出す。そして、操船コントローラ30は、第1目標舵角と、第2目標舵角と、目標スラスト比として、第1デフォルト角と、第2デフォルト角と、デフォルトスラスト比とをそれぞれ決定する。従って、操船コントローラ30は、横移動モードの開始時には、第1デフォルト角と、第2デフォルト角と、デフォルトスラスト比と用いて、第1船舶推進器1aと第2船舶推進器1bとを制御する。第1デフォルト角と、第2デフォルト角と、デフォルトスラスト比とは、横移動モードにおいて、操作装置26の操作に応じて真横に平行移動するように、予め較正されて、不揮発性メモリ34に保存されている。
【0053】
しかし、操作装置26が真横に倒されていても、図8Aに示すように、潮流や風などの外力により、船100が斜め方向に移動することがある。或いは、潮流や風などの外力により、操作装置26が捻られずに真横に倒されていても、図9Aに示すように、船100が回頭することがある。そこで、本実施形態に係る操船システムでは、操船コントローラ30は、横移動モードにおいて、横アシスト制御を実行する。横アシスト制御では、操船コントローラ30は、船100が回頭せずに真横に移動するように、第1目標舵角と、第2目標舵角と、目標スラスト比とを補正する。以下、横アシスト制御の処理について説明する。
【0054】
図10は、横アシスト制御の処理を示すフローチャートである。なお、横アシスト制御は、操作モードが有効であるときに実行される。また、第2入力装置28によって、横アシスト制御の有効と無効とが設定可能であってもよい。その場合、操作モードが有効であり、且つ、横アシスト制御が有効であるときに、図10に示す横アシスト制御の処理が実行されてもよい。
【0055】
図10に示すように、ステップS101では、操船コントローラ30は、船100のヨーレートA1を検出する。操船コントローラ30は、方位センサ36からの信号により、船100のヨーレートA1を検出する。ステップS102では、船100のヨーレートA1が閾値Th1以上であるかを判定する。閾値Th1は、例えば、船100の実際の動作が回頭を含むとみなせる程度のヨーレートの大きさである。船100のヨーレートA1が閾値Th1以上であるときには、処理は、ステップS103に進む。
【0056】
ステップS103では、操船コントローラ30は、第1目標舵角と第2目標舵角とを補正する。操船コントローラ30は、船100の回頭を減少させるように、第1補正角と第2補正角とを決定する。すなわち、操船コントローラ30は、ヨーレートA1が0に近づくように、第1補正角と第2補正角とを決定する。例えば、図9Aのように、船100が時計回りに回頭しているときには、操船コントローラ30は、図9Bに示すように、第1船舶推進器1aの操舵方向と第2船舶推進器1bの操舵方向との間の角度が大きくなるように、第1補正角と第2補正角とを決定する。
【0057】
操船コントローラ30は、第1補正角で第1目標舵角を補正し、第2補正角で第2目標舵角を補正する。例えば、操船コントローラ30は、第1デフォルト角に第1補正角を加えることがで、第1目標舵角を補正する。操船コントローラ30は、第2デフォルト角に第2補正角を加えることで、第2目標舵角を補正する。或いは、操船コントローラ30は、第1デフォルト角に第1補正角を乗じることがで、第1目標舵角を補正してもよい。操船コントローラ30は、第2デフォルト角に第2補正角を乗じることで、第2目標舵角を補正してもよい。
【0058】
操船コントローラ30は、第1補正角と第2補正角とを揮発性メモリ33に保存する。操船コントローラ30は、補正された第1目標舵角と第2目標舵角とで、第1船舶推進器1aと第2船舶推進器1bとを制御する。それにより、第1スラストと第2スラストとの合力の位置が、船100の重心G1に近くなる。その結果、図9Bに示すように、船100の回頭が抑えられる。
【0059】
ステップS104では、操船コントローラ30は、船100の前後方向の速度B1を検出する。操船コントローラ30は、位置センサからの信号により、船100の前後方向の速度B1を検出する。ステップS105では、操船コントローラ30は、船100の前後方向の速度B1が閾値Th2以上であるかを判定する。閾値Th2は、船100の実際の動作が、船100の前後の移動を含むとみなせる程度の速度の大きさである。船100の前後方向の速度B1が閾値Th2以上であるときには、処理はステップS106へ進む。
【0060】
ステップS106では、操船コントローラ30は、目標スラスト比を補正する。操船コントローラ30は、船100の前後の移動を減少させるように、補正スラスト比を決定する。すなわち、操船コントローラ30は、船100の前後方向の速度B1が0に近づくように、補正スラスト比を決定する。船100が斜め後方へ移動するときには、操船コントローラ30は、前進のスラストが大きくなるように、補正スラスト比を決定する。例えば、図8Aに示すように、船100が右斜め後方へ移動するときには、図8Bに示すように、操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aの第1スラストが、第2船舶推進器1bの第2スラストよりも大きくなるように、補正スラスト比を決定する。
【0061】
操船コントローラ30は、補正スラスト比で目標スラスト比を補正する。例えば、操船コントローラ30は、デフォルトスラスト比に補正スラスト比を加えることで、目標スラスト比を補正する。或いは、操船コントローラ30は、デフォルトスラスト比に補正スラスト比を乗じることで、目標スラスト比を補正してもよい。
【0062】
操船コントローラ30は、補正スラスト比を揮発性メモリ33に保存する。操船コントローラ30は、補正された目標スラスト比に基づいて、第1目標スラストと第2目標スラストとを決定する。それにより、第1スラストF1と第2スラストF2とのスラスト合力F3の方向が、真横に近くなる。その結果、図8Bに示すように、船100の斜め後方への移動が抑えられる。
【0063】
ステップS107では、操船コントローラ30は、操作モードが無効であるかを判定する。操船コントローラ30は、第1入力装置27からの信号により、操作モードが無効であるかを判定する。操作モードが無効ではないとき、すなわち操作モードが有効であるときは、操船コントローラ30は、上述したステップS101-S106の処理を繰り返す。すなわち、操船コントローラ30は、船100のヨーレートA1の検出を繰り返しながら、第1補正角と第2補正角との更新を繰り返す。また、操船コントローラ30は、船100の前後方向の速度B1の検出を繰り返しながら、補正スラスト比の更新を繰り返す。
【0064】
一方、操作モードが無効となったときには、処理はステップS108に進む。ステップS108では、操船コントローラ30は、補正パラメータをリセットする。補正パラメータは、上述した第1補正角と、第2補正角と、補正スラスト比である。すなわち、操作モードが無効になると、操船コントローラ30は、第1補正角と、第2補正角と、補正スラスト比を0にリセットすると共に、操作モードを終了する。ただし、操船コントローラ30は、操作モードが無効となっても、揮発性メモリ33に記憶されている第1デフォルト角と、第2デフォルト角と、デフォルトスラスト比とを維持する。
【0065】
以上説明した本実施形態に係る操船100システムでは、横移動モード中の船100のヨーレートA1と船100の前後方向への速度とが、船100の実際の動作と真横への移動との誤差として検出される。そして、誤差を減少させるように、第1補正角と、第2補正角と、補正スラスト比とが決定される。そして、誤差の検出と、誤差に応じた第1補正角と第2補正角と補正スラスト比との更新とが繰り返される。それにより、外的要因による外力が変化しても、それに応じて第1補正角と第2補正角と補正スラスト比がリアルタイムに決定され、更新される。それにより、船100を安定して横方向に移動させることができる。
【0066】
また、操作モードが無効となった時には、第1補正角と、第2補正角と、補正スラスト比とはリセットされる。そのため、次に操作モードが有効になったときには、操作モードの開始初期には、第1デフォルト角と第2デフォルト角とデフォルトスラスト比とによって、第1目標舵角と第2目標舵角と第1目標スラストと第2目標スラストとが決定される。そのため、前回の操作モードの使用時と異なる環境で、新たに操作モードが使用されるときには、前回の環境で決定された第1補正角と、第2補正角と、補正スラスト比とを用いずに、新たな環境に合わせて第1補正角と、第2補正角と、補正スラスト比が決定される。それにより、迅速、且つ、精度よく、船100を真横に移動させることができる。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0068】
船舶推進器は、船外機に限らず、船内外機、或いはジェット推進器などの他の推進器であってもよい。船舶推進器の構造は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、第1駆動ユニット2aは、内燃エンジンに限らず、電動モータであってもよい。或いは、第1駆動ユニット2aは、内燃エンジンと電動モータとのハイブリッドシステムであってもよい。船舶推進器の数は、2つに限らない。船舶推進器の数は、2つより多くてもよい。例えば、船舶推進器の数が3つの場合、中央の船舶推進器は、左右の船舶推進器のいずれか1つと同様に制御されてもよい。その場合、出力方向の同じ2つの船舶推進器のスラストの合計を用いて、上記と同様の制御が行われてもよい。操作装置26は、ジョイスティックに限らず、タッチスクリーンなどの他の操作装置26であってもよい。
【0069】
横アシスト制御の処理は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、処理の実行の順番は、上記のものに限らず、変更されてもよい。上記の実施形態の処理の一部が省略されてもよい。上記の実施形態の処理と異なる処理が追加されてもよい。
【0070】
目標スラスト比に代えて、第1目標スラストと第2目標スラストとが補正されてもよい。操船コントローラ30は、横移動モードにおいて、船100の前後方向の速度B1が減少するように、第1補正スラストと第2補正スラストとを決定してもよい。操船コントローラ30は、第1補正スラストで第1目標スラストを補正してもよい。操船コントローラ30は、第2補正スラストで第2目標スラストを補正してもよい。第1補正スラストと第2補正スラストとは、揮発性メモリ33に記憶されてもよい。第1補正スラストと第2補正スラストとは、補正スラスト比と同様に、操作モードが無効となったときにリセットされてもよい。
【0071】
横アシスト制御は、船100が真横に移動している場合に限らず、斜め方向に移動している場合に適用されてもよい。例えば、操作装置26が、捻られずに斜め方向に倒されたときに、操船コントローラ30は、船100の前後方向の速度が閾値Th3以上であるかを判定してもよい。閾値Th3は、操作装置26の傾倒量の前後方向の大きさに応じた速度であってもよい。船100の前後方向の速度が閾値Th3より小さいときに、操船コントローラ30は、目標スラスト比を補正してもよい。操船コントローラ30は、船100の前後方向の速度が閾値Th3に近づくように、補正スラスト比を決定してもよい。
【0072】
横アシスト制御は、操作装置26が捻られながら真横に倒された場合に適用されてもよい。例えば、操作装置26が捻られながら真横に倒されたときに、操船コントローラ30は、船100の実際のヨーレートA1が閾値Th4以上であるかを判定してもよい。船100のヨーレートA1が閾値Th4より小さいときに、操船コントローラ30は、第1目標舵角と第2目標舵角とを補正してもよい。操船コントローラ30は、船100の実際のヨーレートA1が閾値Th4に近づくように、第1目標舵角と第2目標舵角とを補正してもよい。
【0073】
横アシスト制御で取得された第1補正角と第2補正角と補正スラスト比とは、横移動モード以外の操作モードで利用されてもよい。例えば、操船コントローラ30は、その場回頭モードにおいて、補正スラスト比を用いて補正された目標スラスト比によって、第1目標スラストと第2目標スラストを決定してもよい。
【0074】
横アシスト制御において、第1補正角と第2補正角とによる第1目標舵角と第2目標舵角の補正のみが行われてもよい。或いは、横アシスト制御において、補正スラスト比による目標スラスト比の補正のみが行われてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、操作装置の横方向への操作に従って、船を安定して横方向に移動させることができる。
【符号の説明】
【0076】
1a 第1船舶推進器
2a 第2船舶推進器
12a 第1ステアリング軸
12a 第2ステアリング軸
26 操作装置
30 操船コントローラ
33 揮発性メモリ
34 不揮発性メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10