(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091213
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ロボット一体型移動システム
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
B25J5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203888
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】320012152
【氏名又は名称】株式会社レステックス
(74)【代理人】
【識別番号】100146927
【弁理士】
【氏名又は名称】船越 巧子
(74)【代理人】
【識別番号】100188640
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 圭次
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 圭司
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CS10
3C707DS01
(57)【要約】
【課題】
協働ロボットを即時利用可能な状態かつ標準化された状態のロボット一体型移動システムとして提供すること。
【解決手段】
ロボット本体と、架台と、マニピュレータ、及びロボット用コントローラとを備えたロボット一体型移動システムにおいて、ロボット本体は軽量機とする。架台は、ジャッキを搭載、手動可能な昇降調整機構を備え、脚部を分離可能な構造とする。架台の上部はベースを三角形とし、脚部にはキャスタを備えた伸縮可能なアジャスタアームを有する。架台にはロボット用コントローラを搭載する。マニピュレータは、電動で低把持力のものであり、二つ爪平行グリッパを有し、先端は樹脂成型品とし、先端腹部を凹型形状とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット本体と、架台と、マニピュレータ、及びロボット用コントローラとを備えたロボット一体型移動システムにおいて、
ロボット本体は軽量機とし、
架台は、ジャッキを搭載し、手動可能な昇降調整機構を備え、脚部を分離可能な構造とし、
架台の上部はベースを三角形とし、
架台の脚部にはキャスタを備えた伸縮可能なアジャスタアームを有し、
架台にロボット用コントローラを搭載し、
マニピュレータは、電動で低把持力のものであり、
二つ爪平行グリッパを有し、先端は樹脂成型品とし、先端腹部を凹型形状とする
ことを特徴とするロボット一体型移動システム。
【請求項2】
上記ロボット用コントローラは台ごと回転可能であることを特徴とする請求項1記載のロボット一体型移動システム。
【請求項3】
上記架台上部のロボット取り付け面と同一となる場所へ、追加パーツを格納したツールホルダを取り付けることを特徴とする請求項1又は2に記載のロボット一体型移動システム。
【請求項4】
上記架台の支柱上部に安全レーザスキャナを取り付けることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のロボット一体型移動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボット、特に協働ロボットを使用するロボット一体型移動システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動化において産業用ロボットの採用が活発である。産業用ロボットの中でも、多種多様な動きに対応でき、人と協調して働くことができる「協働ロボット」が注目されている。
【0003】
2013年までモーター出力80W以上のロボットは、人に危害を加えないよう柵に囲み取り扱うことが規則により定められていた。そのため、ロボットや柵を設置するスペースを確保する必要があったり、ロボットを操作する際に必要以上に手間や負担がかかったりと扱いづらいものであった。
【0004】
しかし、ロボットの技術革新によって安全性にも磨きがかかり、2013年12月に規制が緩和され、柵を必要とせずに協働ロボットを利用できるようになった。柵のスペースを確保する必要がなくなったため、小型で軽量の協働ロボットが台頭、その使い勝手のよさから、様々な場面で使用されるようになってきた。従来、人がしていた作業を協働ロボットに担わすことにより、人件費を抑えつつ生産効率・製品品質をさらに向上することが期待できる。
【0005】
協働ロボットを導入した場合、どのような作業を担わすかによって、設置環境の整備、架台やマニピュレータのような周辺機器の選択・取付けが必要となる。
【0006】
協働ロボットの使用に関する先行する技術には、箱材の組立てを行うロボットシステム(特許文献1)、カートを搬送する搬送ロボット(特許文献2)、ロボット用架台を工夫した搬送システム(特許文献3)などがある。
【0007】
特許文献1記載のロボットシステムは、箱材を吸着するハンドと、ハンドが取り付けられ、ハンドに吸着された箱材を所定の方向に移動させながら箱材の組立を行うロボット本体とを含むロボットと、固定的に設置され、ロボット本体により移動される箱材の底面または上面となる内側フラップ部が当接されることにより、内側フラップ部が底面または上面を構成するように折り曲げられる第1折曲部材と、固定的に設置されロボット本体により移動される箱材の内側フラップ部の外側に配置されて底面または上面となる外側フラップ部が当接されることにより外側フラップ部が底面または上面を構成するように折り曲げられる第2折曲部材とを備えている。
【0008】
特許文献2には、カートが環境と接触したときのその接触力を緩和できる搬送ロボット及びその制御方法が記載されている。ロボット本体と、移動手段と、移動可能なアームと、並進力検出手段と、旋回力検出手段と、それらの検出量をもとに倣い制御を実行する制御手段とを備えたものである。
【0009】
特許文献3には、作業時におけるロボットの位置を精度良く保つためのものであって、無人搬送車により可搬可能な搬送システムが記載されている。そのロボット用架台は、ロボットが載置される架台本体部を備え、無人搬送車と架台本体部とを物理的に結合可能及び分離可能が連結部と、分離されている場合に所定の位置に架台本体部を位置決めする位置決め機構とを備えている。
【0010】
従来のものは、いずれも個別の用途に合わせて設置環境を整備し、架台やマニピュレータなどをそれぞれ設計開発する必要があるため、高価格であり、市場投入までに一定の期間を要するものであった。
低価格で運用難易度の低い協働ロボットをより利便性の高いシステムとすることが望まれるが、最適な架台やマニピュレータを搭載し、即時利用な状態とすることを、個別の用件毎に設計開発するのではなく、標準化することにより可能とすることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2014-124798号公報
【特許文献2】特開2016-120561号公報
【特許文献3】特開2020-82233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、協働ロボットを使用し、即時利用可能な状態かつ標準化された状態のロボット一体型移動システムを低価格に提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ロボット本体と、移動可能な架台と、電動のマニピュレータとを備えたロボット一体型移動システムにおいて、ロボット本体は軽量機(23~40kg)とし、架台の本体と脚部とは分解可能であり、コントローラ、ツールホルダの取り付けが可能であるシステムとすることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低価格の協働ロボットを備えたロボット一体型移動システムを即時利用可能な状態かつ標準化された状態で提供でき、より利便性の高いシステムとすることができるという利点を有する。また、標準化されているため、市場投入期間の短縮や製造コストの低減を狙うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係るシステムの標準状態の実施例を示す全体図である。
【
図3】
図3は、アジャスタの分解状態を示す図である。
【
図4】
図4は、アジャスタの伸縮状態を示す図である。
【
図5】
図5は、アジャスタの固定状態を示す図である。
【
図6】
図6は、架台上部のベースとアジャスタアームの位置関係を示す図である。
【
図7】
図7は、スライドガイドのストッパを示す図である。
【
図8】
図8は、コントローラの回転を示す図である。
【
図9】
図9は、マニピュレータ(ロボットハンド)の把持状態を示す図である。
【
図10】
図10は、ツールホルダを取付けた本発明のシステムを示す図である(実施例2)。
【
図11】
図11は、安全レーザスキャナを取付けた本発明のシステムを示す図である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者は、低価格で運用難易度の低い協働ロボットをより利便性の高いシステムとして利用するために縷々検討した。
まず、ロボットは軽量機(23~40kg)を選定し、架台をキャスタ移動・アジャスタ固定可能とする。架台は昇降可能とし、脚部をキャスト移動・伸縮固定可能なものとする。さらに架台には高さ変更へ対応するためにジャッキを搭載し、脚部はアジャスタにより伸縮自在とし、転倒や稼働時の揺れに配慮し脚部を伸ばして固定することで安定を図り、縮めることにより床面積を小さくし、また、X字配置とすることで移動時の障害物回避を容易とする。
【0017】
また、マニピュレータ(ロボットハンド)は、吸着パッド式、磁力式、挟み式(エア・電動)など種類が多いが、動力にエアを選択した場合、エアコンプレッサなどの接続が必要となり移動が困難となること、また協働ロボットは安全に配慮すべきで、高把持力となる機器は不向きである。よって、種類を二つ爪平行グリッパと限定、動力は電動とし、把持力15Nのような把持力の低いものとする。そしてハンドの先端を樹脂成型品とし、交換には工具を使用せず、作業に合わせ先端形状を容易に変更できるようにする。先端形状の腹部は凹型形状とし、各種異形状の道具を安定把持可能とするのが好ましい。中央に凹みを作ることにより包み込むように挟むことで引っかかりができ、落としにくくなる。ただし、完全な[ ]形状の凹みでは、誤って挟んだ部品を引っ張っても抜ききれない恐れがあるため、〔 〕に近い形状とする。ハンドの先端は用途により種々の形状が考えられるが、その用途に対応したものは3Dプリンタを用いれば容易に作製することができる。
【0018】
本発明は、協働ロボットを即時利用可能な状態かつ標準化された状態のロボット一体型移動システムに係るものであって、以下の技術を基礎とするものである。
【0019】
(1)ロボット本体と、架台と、マニピュレータ、及びロボット用コントローラとを備えたロボット一体型移動システムにおいて、ロボット本体は軽量機とし、架台は、ジャッキを搭載し、手動可能な昇降調整機構を備え、脚部を分離可能な構造とし、架台の上部はベースを三角形とし、架台の脚部にはキャスタを備えた伸縮可能なアジャスタアームを有し、架台にロボット用コントローラを搭載し、マニピュレータは、電動で低把持力のものであり、二つ爪平行グリッパを有し、先端は樹脂成型品とし、先端腹部を凹型形状とすることを特徴とするロボット一体型移動システム。
【0020】
(2)上記ロボット用コントローラは台ごと回転可能であることを特徴とする上記(1)のロボット一体型移動システム。
(3)上記架台上部のロボット取り付け面と同一となる場所へ、追加パーツを格納したツールホルダを取り付けることを特徴とする上記(1)又は(2)のロボット一体型移動システム。
(4)上記架台の支柱上部に安全レーザスキャナを取り付けることを特徴とする(1)~(3)のいずれかのロボット一体型移動システム。
【実施例0021】
以下、図面をもとに、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
図1は、本発明に係るシステムの標準状態の実施例を示す図である。
ロボット一体型移動システム1は、ロボット本体2と移動可能な架台3とからなり、マニピュレータ4を備える。
ロボット本体2は、軽量機(23~40kg)を選定する。
【0022】
架台3は、
図2のように昇降調整を可能とする。手動での調整が可能であり、ジャッキ5に台形ねじ式を採用しセルフロック効果で固定せずに高さ保持を可能とする。
【0023】
架台脚部には、キャスタ6を有するアジャスタ7を備える。本体と脚部は分解可能とし(
図3)、梱包・運搬性を向上させる。
アジャスタアーム8の伸縮は固定ねじ9を4点で固定、脚部を伸ばして固定する(
図4)。アジャスタフット10にはロックナット11を付け締める(
図5a、b)。それらによりシステムを安定化し、揺れの低減を図る。
【0024】
また、架台上部のベース12は三角形とする(
図6)。そのことにより脚の向きと合わせてロボット本体の設置自由度を担保することができる。
【0025】
3本の支柱13に取付けたスライドガイド14の上下へストッパ15を追加取付け可能とし(
図7)、揺れを低減し、ロボットの姿勢を安定化させる。
【0026】
架台3にはロボット用コントローラ16を搭載し(
図8)、台ごと回転可能な構造とし、防水の観点から底面に設けられている配線やスイッチに関連する作業を容易にする。
【0027】
マニピュレータ(ロボットハンド)4は、電動で低把持力(15N程度)のものを用いる。二つ爪平行グリッパ17を有し、グリッパ17の先端は3Dプリンタ等により製造された樹脂成型品とし、工具を用いずに容易に交換できる構造とする。それにより、衝突時の破損による周囲の破損を回避でき、作業に合わせ先端形状の変更が容易となる(
図9)。
また、グリッパ17の先端形状は腹部を凹形状とする。第9図はロボットハンドにより部品を把持する状態を示している。グリッパ17の先端の腹部は
図9に図示されるような凹形状とする。[ ]状の形状では誤って挟んだ部品を引っ張っても抜き取れない恐れがあるため、〔 〕に近い形状とする。
【0028】
〔実施例2〕
標準状態のシステム1に、ロボット取付面と同一となる場所に作業工具を備えるツールホルダ18を取り付ける(
図10)。ロボットは単一のアームとなるため工具や資材を持ち替える必要があるが、架台上部はベース12を三角形とし、ロボット取付面と同一となる場所へ追加パーツを取り付けることでロボットとの相対位置が変化しないですむ。
【0029】
〔実施例3〕
さらに、標準状態のシステム1に、3本の支柱13のうち一本へ安全レーザスキャナ19を取り付け(
図11)、ロボットに人が近づくと減速・停止させる。センサは同一高さで270°を検知できるものなどが採用される。
本発明のシステムを採用することにより、低価格で運用難易度の低い協働ロボットをより利便性の高いシステムとすることができ、標準化されていることにより、市場投入期間の短縮や製造コスト低減が可能となり、多様な分野への用途展開が可能となる。