(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009123
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】基材導波光学装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20220106BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021168461
(22)【出願日】2021-10-14
(62)【分割の表示】P 2020030352の分割
【原出願日】2015-12-16
(31)【優先権主張番号】236490
(32)【優先日】2014-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(71)【出願人】
【識別番号】504354265
【氏名又は名称】ラマス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】アミタイ,ヤーコヴ
(72)【発明者】
【氏名】オフィル,ユヴァル
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA02
2H199CA12
2H199CA23
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA53
2H199CA64
2H199CA65
2H199CA66
2H199CA67
(57)【要約】
【課題】先行技術の小型光学表示装置の欠点を軽減すること、並びに、特定の要求に従って、改善された性能を有する光学システムを提供する。
【解決手段】光学システムは、少なくとも二つの外部の主要面26、28及び端を有する光伝達基材20、並びに、全内部反射によって基材の中に光波を結合させるための光学素子16、を含む。少なくとも一つの部分反射面22は、基材の外に光波を結合させるために基材内に位置し、光伝達基材の屈折率よりも実質的に低い屈折率を有する少なくとも一つの透明層は、基材の主要面のうちの少なくとも一つに光学的に取り付けられており、インターフェイス平面を規定する。基材の内側に結合された光波は、インターフェイス平面から、基材の主要面と透明層との間で、実質的に全反射される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学システムであって、
少なくとも二つの外部の主要面及び端を有する光伝達基材と、
全内部反射によって前記基材の中に光波を結合させるための光学素子と、
前記基材の外に光波を結合させるための、前記基材内に位置する少なくとも一つの部分反射面のアレイと、
前記光伝達基材の前記外部の主要面の一つに取り付けられた光学素子であって、前記光学素子は、低屈折率光学接着剤によって直接取り付けられた、光学素子と、を含み、
前記基材の内側に結合された光波は、前記基材の前記主要面と前記光学素子との間のインターフェイスから実質的に全反射される、光学システム。
【請求項2】
前記光学接着剤は、1.3の屈折率を有する、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記光伝達基材は、1.52~1.8の範囲の屈折率を有する材料から作製されている、請求項1に記載の光学システム。
【請求項4】
前記光伝達基材の材料は、BK7である、請求項3に記載の光学システム。
【請求項5】
前記光学素子は、補正レンズを含む、請求項1に記載の光学システム。
【請求項6】
前記光学素子は、平凹および/または平凸レンズを含む、請求項1に記載の光学システム。
【請求項7】
前記光学素子は、フレネルレンズを含む、請求項1に記載の光学システム。
【請求項8】
前記光学素子は、電子的に制御される動的なレンズを含む、請求項1に記載の光学システム。
【請求項9】
前記電子的に制御される動的なレンズは、空間光変調器を含む、請求項8に記載の光学システム。
【請求項10】
前記補正レンズは、成形プラスチックレンズである、請求項5に記載の光学システム。
【請求項11】
前記光伝達基材の第2の外部の主要面に取り付けられた第2の光学素子をさらに含む、請求項1に記載の光学システム。
【請求項12】
前記複数の光学素子は、少なくとも部分的に重なり合っている、請求項11に記載の光学システム。
【請求項13】
前記光学素子は、視る者の目の収差を補正するように構成されている、請求項1に記載の光学システム。
【請求項14】
前記複数の光学素子は、視る者の目の収差を補正するように構成されている、請求項11に記載の光学システム。
【請求項15】
前記基材及び前記透明層は、眼鏡フレームの内側に組み立てられている、請求項1に記載の光学システム。
【請求項16】
前記基材の外に光波を結合させるための前記部分反射面は、平坦な面である、請求項1に記載の光学システム。
【請求項17】
前記基材の外に光波を結合させるための前記部分反射面は、部分反射誘電被覆によって被覆されている、請求項16に記載の光学システム。
【請求項18】
前記基材の外に光波を結合させるための前記部分反射面は、前記基材の前記主要面に対して平行でない、請求項16に記載の光学システム。
【請求項19】
前記基材の外に光波を結合させるための前記部分反射面は、曲面である、請求項1に記載の光学システム。
【請求項20】
前記光学素子は、タッチスクリーンである、請求項1に記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に導波される(substrate-guided)光学装置に関し、具体的には、光導素子(light-guide element)とも呼ばれる、一つの共通の光伝達基材が持つ複数の反射面を含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型光学素子のための一つの重要な用途は、光学モジュールが結像レンズ及びコンバイナ(combiner)の両方として機能し、二次元画像源が無限遠に結像され観察者の目の中に反射される、ヘッドマウント式ディスプレイ(HMDs)に関係する。表示源は、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードアレイ(OLED)、走査源若しくは同様の装置のような空間光変調器(SLM)から直接的に得られるか、又は、リレーレンズ若しくは光ファイバー束を用いて間接的に得られるかのいずれであってもよい。表示源は、コリメートレンズによって無限遠に結像され、かつ、非シースルー及びシースルー(see-through)の用途のためのコンバイナとしてそれぞれ作用する反射面又は部分反射面を用いて、視る者の目の中に伝達される、素子(ピクセル)のアレイを含む。典型的には、これらの目的のために、従来の自由空間光学モジュールが使用される。しかしながら、システムの所望の視野(FOV)が増大するにつれて、そのような従来の光学モジュールは、より大きく、より重く、より嵩張る(bulkier)ものとなり、従って、中程度の性能の装置用であっても、実用的ではない。これは、全ての種類のディスプレイのために、特にヘッドマウント式の用途において重大な欠点であり、システムは必然的に可能な限り軽く小型であるべきである。
【0003】
小型であることのための努力は、いくつかの異なる複雑な光学的な解決策をもたらしているが、それらの全ては、一方では、依然として大半の実用的な用途のために十分に小型でなく、他方では、製造可能性の点で重大な欠点を有する。さらに、これらの設計の結果として生じる光学的視野角のアイ‐モーション‐ボックス(EMB)は通常非常に小さい‐典型的には8mm未満である。ゆえに、光学システムの性能は、視る者の目に対する光学システムの小さな動きに対してさえ、非常に敏感であり、そのようなディスプレイからの文の快適な読み取りのために十分な瞳孔運動を許容しない。
【0004】
国際公開第01/95027号,国際公開第03/081320号,国際公開第2005/024485号,国際公開第2005/024491号,国際公開第2005/024969号,国際公開第2005/124427号,国際公開第2006/013565号,国際公開第2006/085309号,国際公開第2006/085310号,国際公開第2006/087709号,国際公開第2007/054928号,国際公開第2007/093983号,国際公開第2008/023367号,国際公開第2008/129539号,国際公開第2008/149339号,国際公開第2013/175465号,イスラエル国特許出願公開第232197号明細書及びイスラエル国特許出願公開第235642号明細書に含まれる教示は、全て出願人の名称で、参照により本明細書に取り込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第01/95027号
【特許文献2】国際公開第03/081320号
【特許文献3】国際公開第2005/024485号
【特許文献4】国際公開第2005/024491号
【特許文献5】国際公開第2005/024969号
【特許文献6】国際公開第2005/124427号
【特許文献7】国際公開第2006/013565号
【特許文献8】国際公開第2006/085309号
【特許文献9】国際公開第2006/085310号
【特許文献10】国際公開第2006/087709号
【特許文献11】国際公開第2007/054928号
【特許文献12】国際公開第2007/093983号
【特許文献13】国際公開第2008/023367号
【特許文献14】国際公開第2008/129539号
【特許文献15】国際公開第2008/149339号
【特許文献16】国際公開第2013/175465号
【特許文献17】イスラエル国特許出願公開第232197号明細書
【特許文献18】イスラエル国特許出願公開第235642号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、他の用途の中でもHMDsのための、非常に小型な光導光学素子(LOE)の開発を促進する。本発明は、比較的大きなEMB値と一緒に、比較的広いFOVsを可能にする。結果として生じる光学システムは大きな、高品質画像を提供し、それはまた目の大きな動きを適応させる。本発明によって提供される光学システムは、最先端の実施よりも実質的に小型でありながら特殊な構成を有する光学システムにさえも容易に組み込まれることができるので、特に有利である。
【0007】
したがって、本発明の広い目的は、先行技術の小型光学表示装置の欠点を軽減すること、並びに、特定の要求に従って、改善された性能を有する他の光学コンポーネント及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポータブルDVD、携帯電話、モバイルTV受信機、ビデオゲーム、ポータブルメディアプレーヤー又は任意の他のモバイル表示装置のような、多数の画像用途において有利に実施され得る。
【0009】
LOEの働きの主要な物理的原理は、光波が、LOEの外表面(external surfaces)から、全内部反射によって基材の内側に捕捉されることである。しかしながら、外表面の少なくとも一つに他の光学素子を取り付けることが要求される状況が存在する。そのような場合において、一方では、外表面からの光波の反射がこの取り付けによって低下させられることがないこと、並びに、他方では、LOEの外表面から及びLOEの外表面への光波の、光学配置(optical arrangement)の外への結合(coupling-out)及び中への結合(coupling-in)が妨げられることがないことを確かにすることが、不可欠である。一つの結果として、一方では、LOEの内側に結合され、斜めの角度で表面に突き当たる(impinge)全光波を実質的に反射することができ、かつ、他方では、法線入射(normal incidence)に近接して表面に突き当たる光波を実質的に伝達する(transmit)、角度に敏感な(angular sensitive)反射光学配置を外表面に追加することが要求される。
【0010】
先の発明(例えば、国際公開第2005/024491号)において、LOE の表面に角度に敏感な薄膜誘電被覆が塗布された反射光学配置が、説明されている。本発明において、一つの代替的な反射光学配置は、極めて低い屈折率を有する誘電透明材料を利用する。
【0011】
したがって、本発明は、少なくとも二つの外部の主要面及び端を有する光伝達基材(light-transmitting substrate)、全内部反射によって基材の中に光波を結合させるための光学素子、基材の外に光波を結合させるための、基材内に位置する少なくとも一つの部分反射面、並びに、光伝達基材の屈折率よりも実質的に低い屈折率を有し、基材の主要面のうちの少なくとも一つに光学的に取り付けられており、インターフェイス平面(interface plane)を規定する、少なくとも一つの透明層(transparent layer)、を含み、基材の内側に結合された光波は、インターフェイス平面から、基材の主要面と透明層との間で、実質的に全反射される、光学システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、より完全に理解され得るように、以下の例示的な図面を参照して、いくつかの好ましい実施形態に関連して記述される。
【0013】
図を詳細に参照すると、示される詳細な事項は、例としてのものであり、本発明の好ましい実施形態の例示的な説明のみのためのものであり、また本発明の原理及び概念的側面の最も有用で容易に理解される記述であると考えられるものを提供するために提示されることが強調される。これに関して、本発明の構造的詳細を、本発明の基本的な理解のために必要であるよりも詳細に示す試みはなされていない。図面に伴われる記述は、本発明のいくつかの形態がどのように実際に具体化され得るかについての当業者への指示としての役割を果たすものである。
【
図1】一つの例示的な先行技術のLOEの側面図である。
【
図2】表示光源からの入力光波をコリメートするための先行技術の光学装置を示す模式図である。
【
図3】本発明による、表示光源からの入力光波をコリメートし、nLOEの中に結合(coupling-in)させるためのシステムを示す模式図である。
【
図4】本発明による、表示光源からの入力光波をコリメートし、基材の中に結合させるための他の実施形態を示す模式図であり、コリメートモジュール(collimating module)は基材に取り付けられている。
【
図5】本発明による、負のレンズ(negative lens)が光導光学素子の外表面に取り付けられている、一つの例示的な実施形態を示す。
【
図6】本発明による、負のレンズ及び正のレンズ(negative and positive lenses)が光導光学素子の外表面に取り付けられている、一つの例示的な実施形態を示す。
【
図7】本発明による、低屈折率接着剤を利用して負のレンズが光導光学素子の外表面に接合されている(cemented)、一つの例示的な実施形態を示す。
【
図8】本発明による、低屈折率材料で作製された(fabricated)基材が光導光学素子の外表面に光学的に取り付けられている、一つの例示的な実施形態を示す。
【
図9】本発明による、二つの透明層を利用して負のレンズ及び正のレンズが光導光学素子の外表面に接合されている、一つの例示的な実施形態を示す。
【
図10】(a)接合されていないLOE、(b)低率材料基材に接合され、反射防止(anti-reflection)被覆を用いて被覆されたLOE、及び(c)本発明により低率材料基材に接合され、角度に敏感な反射被覆を用いて被覆されたLOEについての反射率曲線を示すグラフである。
【
図11】中に結合させる素子及び外に結合させる素子が回折光学素子である、本発明の一つの例示的な実施形態を示す。
【
図12】光学モジュールが手持ち式表示システムに埋め込まれている、本発明の一つの例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明において利用可能な、先行技術の基材20及び関連する構成要素(本明細書において以下“LOE”とも呼ばれる)の断面図を示す。光学的手段、例えば反射面16は、光源(図示なし)から発せられ、コリメートされた表示光波18によって照らされる。反射面16は光源からの入射光を反射し、そのため、光波は、全内部反射によってLOEの平面的な基材20の内側に捕捉される。基材20の主要な上面及び下面26,28からの数回の反射の後、捕捉された光波は選択的反射面22のアレイに到達し、選択的反射面22は、光波を、基材の外に、観察者の瞳孔25を有する目24の中に結合させる。ここで、LOEの入力面は、入力光波が通過してLOEに入る面と見なされることができ、LOEの入力面は、捕捉された光波が通過してLOEを出る面と見なされることができる。
図1に示されるLOEの場合において、入力面及び入力面の両方は、下面26上である。しかしながら、入力光波及び画像光波が基材20の反対側の両面に位置し得る他の構成、又は光波が基材の傾斜した端を通ってLOEの中に結合される場合が、想定される。
【0015】
図2に示されるように、表示光源4からのS偏光された入力光波2は、通常は光波伝達材料で構成されるコリメートモジュール6の中に、その下面30を通して結合される。偏光ビームスプリッター31からの反射に続いて、光波は、コリメートモジュール6の面32を通して基材の外に結合される。その後に光波は、四分の一波長位相差板34を通過し、反射光学素子36、例えば平坦な鏡によって反射され、戻って再び位相差板34を通過し、面32を通ってコリメートモジュール6に再び入る。いまP偏光された光波は、偏光ビームスプリッター31を通過し、コリメートモジュール6の面38を通って光導波路の外に結合される。その後に光波は、第2の四分の一波長位相差板40を通過し、コンポーネント42、例えばレンズによって、その反射面44においてコリメートされ、戻って再び位相差板20を通過し、面38を通ってコリメートモジュール6に再び入る。いまS偏光された光波は、偏光ビームスプリッター31から反射し、上面46を通ってコリメートモジュールを出る。反射面36及び44は、金属コーティング又は誘電コーティングのいずれかによって実現されてもよい。
【0016】
図3は、
図2に関連して詳述された構成要素によって構成されているコリメートモジュール6が、光学システムを形成するために、どのようにしてLOEと組み合わせられることができるかを示す。コリメートモジュール6からの出力光波48は、基材20に、その下面26を通って入る。(基材20に対して)
[外1]
入射してくる光波は、
図2に示されるように、光学素子16から反射され、基材内に捕捉される。ところで、コリメートモジュール6は、表示光源4、折り返しプリズム52及び54、偏光ビームスプリッター31、位相差板34及び40、並びに反射光学素子36及び42を含めて、単一の機械的モジュールに統合されてもよく、それは、基材から独立して、かなり緩やかな機械的公差で組み立てられてもよい。加えて、位相差板34及び40、並びに反射光学素子36及び42は、それぞれ、一緒に接合されて、単一の素子を形成してもよい。
【0017】
はるかに単純な機械的モジュールを備えた単一の小型素子を形成するために、コリメートモジュール6の全ての様々な構成要素を基材20に取り付けることが、有利であろう。
図4は、コリメートモジュール6の上面46が、インターフェイス面58において、LOEの下面26に取り付けられている、そのようなモジュールを示す。この構成の主要な課題は、取り付け手順が、(
図3に示される)LOEとコリメートモジュール6との間に先に存在していたエアギャップ50を解消することである。このエアギャップは、入力光波48をLOE20の内側に捕捉するために不可欠である。
図4に示されるように、捕捉された光波48は、インターフェイス平面58上の点62及び64において反射されるべきである。したがって、反射光学配置は、LOEの主要面26において又はコリメートモジュール6の上面46において、この平面で適用されるべきである。しかしながら、これらの面は例示的な複数の点66においてLOEを出入りする光波に対して透明(transparent)でもあるべきなので、単純な反射被覆は容易に塗布されることができない。光波は、小さな入射角度(incident angle)において平面64を通過し、より高い入射角度において反射するべきである。通常、通過する入射角度は、0°と15°との間であり、反射する入射角度は38°と80°との間である。
【0018】
上で記述された本発明の複数の実施形態の全てにおいて、LOEの中に結合される画像は、無限遠にコリメートされる。しかしながら、例えば、近視を患い、遠距離に位置する画像を適切に見ることができない人々のために、伝達される画像はより近い距離に焦点を合わせられるべき、用途が存在する。
【0019】
図5は、本発明に基づいて、レンズを実装するための方法を示す。無限遠からの画像80は、反射面16によって基材20の中に結合され、その後に部分反射面(partially reflecting surfaces)22のアレイによって視る者の目24の中に反射される。眼の(ophthalmic)レンズ82は、画像を都合の良い距離に焦点を合わせ、任意的に、非点収差(astigmatism)を含む視る者の目の他の収差を補正する。平凹レンズ(plano-concave lens)82は、基材の表面に、その平坦な面84において取り付けられてもよい。上で
図4に関して説明されたように、全内部反射による基材の内側での画像光線の捕捉を確かにするために、薄いエアギャップがレンズ82と基材20との間に保存されなければならない。
【0020】
加えて、本発明に関する用途の大半において、外部の光景(scene)は無限遠に位置するものと仮定されている。しかしながら、例えば専門的又は医療上の目的のような、外部の光景がより近い距離に位置する用途が存在する。
【0021】
図6は、本発明に基づいて、デュアルレンズ構成を実装するための方法を示す。無限遠からの画像80は、反射面16によって基材20の中に結合され、その後に部分反射面22のアレイによって視る者の目24の中に反射される。近距離からの他の光景の画像86は、レンズ88によって無限遠にコリメートされ、その後に目の中に向かって基材20を通過する。レンズ82は、画像80及び86を都合の良い距離、通常は外部の光景86の本来の距離に焦点を合わせ、もし必要であれば、視る者の目の他の収差を補正する。
【0022】
図5及び
図6に示されるレンズ82及び88は、それぞれ、単純な平凹レンズ及び平凸レンズである。しかしながら、LOEの平面的な形状を保つために、代わりにフレネルレンズを利用することが可能であり、そのフレネルレンズは、微細な段差を有する薄い成形プラスチック板で作られてもよい。そのうえに、レンズ82又は88を実現するための一つの代替的な方法は、上で記述されたような固定されたレンズとしてではなく、電子的に制御される動的な(dynamic)レンズを活用することである。使用者がコリメートされていない画像を見ることができるだけでなく、画像の焦点を動的に制御することができることが要求される用途が存在する。動的な素子を形成するために高解像度の空間光変調器(SLM)が使用され得ることが、示されている。その目的のための最も一般的な供給源はLCDデバイスであるが、他の動的なSLMデバイスも同様に使用されることができる。数百ライン/mmを有する高解像度の動的なレンズが知られている。この種類の電気工学的に(electro-optically)制御されるレンズは、
図5及び
図6と併せて上で記述された固定されたレンズの代わりに、本発明における望ましい動的な素子として使用されることができる。したがって、操作者は、LOEによって投影される虚像(virtual image)及び外部視野の実像(real image)の両方の正確な焦平面(focal plane)を、実時間で決定及び設定することができる。本来的に、
図5及び
図6に示されるレンズは、
図5に示されるように、眼鏡フレーム83の内側に容易に組み込まれることができる。
【0023】
図6において上で示されたように、はるかに単純な機械的モジュールを備えた単一の小型素子を形成するために、全てのレンズ82及び88をLOEに取り付けることが、有利であろう。主要な課題は、前のとおり、取り付け手順が、LOEとレンズ82及び88との間に先に存在していたエアギャップを解消することであり、そのエアギャップは、入力光波80をLOEの内側に捕捉するために不可欠である。
図6に更に示されるように、捕捉された光線(light ray)80は、インターフェイス平面84上の点90において反射され、点92においては同じ平面を通って伝達されるべきである。したがって、同様の反射光学配置は、上で
図4に関して記述されたように、この平面で適用されるべきである。
【0024】
要求される反射光学配置を達成するための一つの可能なアプローチは、LOEの主要面に、LOEの屈折率よりも実質的に低い屈折率を有する透明層を光学的に取り付ける(optically attach)ことである。このアプローチを実現するための一つの方法は、低屈折率接着剤を利用して、要求される光学素子にLOEを接合することである。市場で入手可能な、~1.3の屈折率を有する光学接着剤が存在する。
【0025】
図7に示されるように、低屈折率100は、補正レンズ82をLOEに接合するために利用される。LOEの内側に捕捉された光線は、今や接着剤100とLOEとの間のインターフェイス面101から完全に全反射される(totally reflected)。この接合手順は、要求されるエアギャップを単純に置き換えることはできない。例えば、1.52の屈折率を有する、BK7で作製されたLOEにおいて、臨界角は41.8°である。エアギャップを低屈折率接着剤で置き換えることは、臨界角を58.8°に増大させるであろう。そのような高い臨界角では、非常に限定されたFOVのみが全内部反射によってLOEの中に捕捉され得る。しかしながら、LOEを作製するために高屈折率材料を利用することによって、達成可能なFOVは、増大されることができる。LOEを作製するために1.8の屈折率を有する光学材料を利用することは、例えば、臨界角を46.2°に減少させるであろう。それは、より合理的なFOVを今や可能にすることができる。
【0026】
FOVを増大させるための一つの代替的な実施形態は、低屈折率を有する固体誘電材料(solid dielectric material)の中間薄層を、LOEと取り付けられる光学素子との間に挿入することである。非常に低い屈折率(1.1‐1.2の範囲内)、及び安定化された機械的特性を有するエアロゲル材料のファミリーが、開発されている。この目的のための他の可能な代替は、斜め蒸着(glancing angle deposition)によって作製された多孔質固体誘電材料である。
【0027】
図8は、LOEと補正レンズ82との間に挿入された低率材料(LIM)の薄い板104を示す。このLIMの板104は、LOEの外表面26上に直接的に堆積されるか、又は薄い接着剤層106を利用してこの表面に接合されるかのいずれであってもよい。異なる表面からの多重反射を避けるために、この場合において、LOEの屈折率と類似の(similar)屈折率を有する接着剤を利用することが好ましい。LOEの内側の補足された光線の内部反射は、板104の上面107からであろう。したがって、多重画像を避けるために、この表面は、LOEの外表面26と平行であるべきである。一つの結果として、また画像中の黒い帯を避けるために、接着剤層106の厚さは最小化されるべきであり、いずれの場合でも、数ミクロン以下でなければならない。加えて、表面107の光学的品質及び平坦度(flatness)は非常に高くあるべきである。要求される角度に敏感な光学配置を達成するために基材の主要面にLIMの板を取り付けることは、LOEの二つの外表面の一つに対してだけでなく、同様に、他の表面にも適用されてもよい。
【0028】
図9は、LIMの第二の薄い板108を示す。LIMの第二の板108は、LOE20と正のレンズ88との間に挿入されており、板の下面110は、LOEの上面28に光学的に取り付けられている。
【0029】
上述の両方の実施形態の性能を向上させることができる他の手順は、インターフェイス反射面の臨界角よりも低い角度についてさえも、全FOVを基材の内側に捕捉する、角度に敏感な反射被覆(ASR)を追加することである。基材表面の一つが不透明であってもよく、それ故に従来の反射面で被覆されてもよい非シースルーの用途であっても、視る者の目の隣にある外表面は、少なくとも要求される外部FOVの角度について、透明であるべきである。したがって、要求される反射被覆は、臨界角よりも低い角度の領域について非常に高い反射率を有するべきであり、また画像のFOV全体について非常に高い反射率を有するべきである。
【0030】
図10は、1.6の屈折率を有する光学材料でLOEが作製された一つの例示的な実施形態及び波長λ=550nmについての、反射率曲線を示す。三つの異なるグラフが示されている:
a) 実線は、非接合、すなわち、外部の物質が空気であり、その外表面が共通の反射防止(AR)被覆を用いて被覆されているLOEの反射率曲線を表す。図示されているように、臨界角は38.7°であり、その値よりも下では、反射率は急速に低下する。
b) 点線は、1.1の屈折率を有するLIMの基材に接合されており、インターフェイス面は共通のAR被覆を用いて被覆されているLOEの反射率曲線を表示する。ここで、臨界角は43.4°に増大される。LOEの中に結合され得る潜在的なFOVは減少するが、それは、依然として合理的であり、臨界角が41.8°であるBK7で作製された非接合LOEと類似している。
c) 破線は、1.1の屈折率を有するLIMの基材に接合されたLOEの反射率曲線を表す。しかしながら、インターフェイス面は、ここで、特別なASR被覆を用いて被覆されている。43.4°よりも低い入射角度における、インターフェイス面からのLOEの内側の捕捉された光線の反射の光学配置は、もはや全内部反射ではなく、むしろASRからの被覆である。34.7°よりも高い入射角度でインターフェイス面に突き当たる光線の反射率は、99%よりも高く、光線は、インターフェイス面からほとんど全反射される。一つの結果として、このLOEの内側に捕捉され得る潜在的なFOVは、グラフ(a)に示される非接合LOEのそれよりもかなり高い。
【0031】
このグラフには、二つの重要な領域が存在する:反射率が非常に高い、34°と90°との間、及び、反射率が非常に低い、0°と29°との間(基材の外側の0°‐46°に相当する)。それ故に、非常に高い反射が望まれる、捕捉された光波の角度スペクトル全体が第一の領域の内側に位置付けられ、一方で、本質的にゼロ反射が要求される、外部のFOV(exterior FOV)の角度スペクトル全体が第二の領域の内側に位置付けられることを確かにすることができる限り、所与のFOVについて、FOV全体が、全内部反射によって基材の内側に捕捉されることができ、視る者は全画像を見ることができる。
【0032】
LIM基材がLOEの上面に接合される場合、ASR被覆は、上で説明されたようにLOEに隣接して位置付けられるLIM板の外表面107(
図9)に塗布されてもよい。しかしながら、もしLIM層がLOE上に直接的に堆積されるならば、要求されるASR被覆を塗布するための唯一の方法は、LOEの外表面26上である。LOEの作製過程は光学素子の接合を通常伴うので、また要求されるASR被覆は、LOE本体が完成した後にのみ基材表面に塗布されるので、接合された領域を損傷し得る従来の熱間被覆手順(hot-coating procedures)を利用することは可能でない。新規な薄膜技術、例えばイオンアシスト被覆法もまた、冷間加工のために使用されて、部品を加熱する必要がなくすことができ、それは、LOE等の接合された部品が安全に被覆されることを可能にする。
【0033】
これまで説明された全ての実施形態において、光波を基材の外に結合するための素子は、その基材内に位置する少なくとも一つの平坦な部分反射面であり、それは、通常は部分反射誘電被覆を用いて被覆され、その基材の主要面に対して平行でない。しかしながら、本発明による特別な反射光学配置はまた、他の外に結合させる技術のために活用され得る。
【0034】
図11は、中に結合させる素子102又は外に結合させる素子104が回折素子であり、薄いLIM基材が基材の上面28に光学的に接合されている、基材20を示す。加えて、湾曲した部分反射面等の他の外に結合させる素子、及び他の手段が、使用されてもよい。
【0035】
図5‐
図9の素子は、眼鏡フレームの内側での本発明の単純な実装を示す例に過ぎない。システムのコアを構成する基材導波光学素子は非常に小型且つ軽量であるため、それは、膨大な多様さの配置(arrangements)に導入され得る。バイザー、折り畳み式ディスプレイ、単眼鏡及び他の多くのものを含む、多くの他の実施形態もまた可能である。この実施形態は、ディスプレイが目の隣にあるべき;ヘッドマウント式、頭部着用式又は頭部持ち運び式の用途に指定されている。しかしながら、ディスプレイの位置が異なる用途が存在する。そのような用途の一例は、例えば、スマートフォン又はスマートウォッチのようなモバイル用途のための手持ち式デバイスである。これらのスマートデバイスの主要な課題は、要求される小さなサイズ及び容積と望まれる高品質画像との間の矛盾である。
【0036】
図12は、モバイルデバイスの小さなサイズと、フルフォーマットのディスプレイ上でデジタルコンテンツを視る欲求との間の妥協の必要性なくす、本発明に基づく一つの代替的な実施形態を示す。この用途は、使用者の目の中に直接的に高品質画像を投影すること(projecting)によって、小さなモバイルデバイスの達成及びフルフォーマットのディスプレイ上でデジタルコンテンツを視る欲求の、先の対立する複数の要求を解決する、ハンドヘルドディスプレイ(HHD)である。表示源4、折り返し及びコリメート光学系108並びに基材20を含む光学モジュールは、スマートデバイス110の本体の中に統合され、基材20は、電話機の既存の保護カバー窓に置き換わる。具体的には、光源4及び光学系108を含む支持部品の容積は、現在のスマートデバイスのための許容可能なサイズの内側に収まるために十分に小さい。デバイスによって伝達される全画面を視るために、デバイスの窓は、高いFOV、大きなアイ‐モーションボックス及び快適なアイレリーフ(eye-relief)で画像を観察する、使用者の目24の前に配置される。画像の異なる部分を表示するために、デバイスを傾けることによって、より大きなアイレリーフでFOV全体を視ることも可能である。さらに、その光学モジュールはシースルー構成で動作することができるため、デバイスのデュアル動作が可能である、すなわち、従来のディスプレイ112を、損なわずに(intact)維持する選択肢が存在する。このようにして、表示源4が停止された(shut off)ときに、標準ディスプレイは、基材20を通して視られることができる。大量のインターネットサーフィン又は高品質のビデオ動作のために指定される、第二の、仮想モードにおいて、従来のディスプレイ112は停止され、一方で表示源4は、基材20を通して、要求される広いFOV画像を視る者の目の中に投影する。通常、手持ち式スマートデバイスの大半において、使用者は、デバイスのフロントウィンドウに埋め込まれたタッチスクリーンを使用することによってスマートデバイスを操作することができる。
図12に示されるように、タッチスクリーン114は、基材20上に位置するLIM層120の外表面上にそれを直接的に接合することによって、スマートデバイスに取り付けられてもよい。
【外国語明細書】