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特開2022-91282ポリエステル樹脂製多重ボトル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091282
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂製多重ボトル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20220614BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20220614BHJP
   B29C 49/42 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B65D1/02 111
B65D1/02 220
B29C49/22
B29C49/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204021
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】505440295
【氏名又は名称】北海製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃広
【テーマコード(参考)】
3E033
4F208
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA18
3E033BB08
3E033CA16
3E033CA18
3E033CA20
3E033DA03
3E033DB01
3E033DC03
3E033DD03
3E033DE05
3E033FA03
3E033GA02
4F208AA24
4F208AF16
4F208AG03
4F208AG07
4F208AH55
4F208AR12
4F208LA04
4F208LA09
4F208LB01
4F208LB22
4F208LG03
4F208LG06
4F208LG28
4F208LN23
(57)【要約】
【課題】内容器体本体が外殻ボトルから剥離し易く、減容変形し易いポリエステル樹脂脂製多重ボトルを提供する。
【解決手段】外口部4と外殻ボトル本体21とを有する外殻ボトル2と、外殻ボトル2の外口部4内に配設される円筒状の内口部13と、内口部13に連接し外殻ボトル2の内面形状に沿う形状の内容器体本体14と、を有し、外圧により変形する内容器体3と、外口部4と内口部13との間に形成されて外殻ボトル2と内容器体3との間に外気を導入する通気路19と、を備え、外殻ボトル本体21は肩部5と円筒状胴部6と底部7とを備えるポリエステル樹脂製多重ボトル1であって、内容器体本体14は、外殻ボトル本体よりも薄肉に形成され、肩部5及び肩部5に対応する内容器体本体14の部分には、複数の多角形(例えば、四角形27)が稜線25,26を介して連設された多角形模様28が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の外口部と、該外口部に連接する外殻ボトル本体と、を有し、外圧に対して原形復帰可能なポリエステル樹脂製の外殻ボトルと、
前記外殻ボトルの前記外口部内に配設される円筒状の内口部と、該内口部に連接し前記外殻ボトルの内面形状に沿う形状の内容器体本体と、を有し、外圧により変形するポリエステル樹脂製の内容器体と、
前記外口部と前記内口部との間に形成されて前記外殻ボトルと前記内容器体との間に外気を導入する通気路と、を備え、
前記外殻ボトル本体は、前記外口部に連接する肩部と、該肩部に連接する胴部と、該胴部に連接する底部と、を備え、
前記外殻ボトルと前記内容器体とはブロー成形にて同時に成形されるポリエステル樹脂製多重ボトルであって、
前記内容器体本体は、前記外殻ボトル本体よりも薄肉に形成され、
前記肩部及び前記肩部に対応する内容器体本体の部分には、複数の多角形が稜線を介して連設された多角形模様が設けられていることを特徴とするポリエステル樹脂製多重ボトル。
【請求項2】
請求項1記載のポリエステル樹脂製多重ボトルであって、
前記多角形模様は、上下方向に延びる縦稜線と前記縦稜線に交差する横稜線とで囲われた複数の四角形であることを特徴とするポリエステル樹脂製多重ボトル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のポリエステル樹脂製多重ボトルであって、
前記外殻ボトル及び前記内容器体は、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなることを特徴とするポリエステル樹脂製多重ボトル。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のポリエステル樹脂製多重ボトルであって、
前記外殻ボトルと前記内容器体本体の間に離型剤が介在されていることを特徴とするポリエステル樹脂製多重ボトル。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のポリエステル樹脂製多重ボトルであって、
前記内容器体内に内容物が充填され、前記外殻ボトルにキャップが装着されており、前記外殻ボトルの外面の少なくとも前記肩部にシュリンクラベルが装着されていることを特徴とするポリエステル樹脂製多重ボトル。
【請求項6】
円筒状の外口部と、該外口部に連接する肩部と、該肩部に連接する胴部と、該胴部に連接する底部と、を有し、外圧に対して原形復帰可能なポリエステル樹脂製の外殻ボトルと、
前記外殻ボトルの前記外口部内に配設される円筒状の内口部と、該内口部に連接し前記外殻ボトルの内面形状に沿う形状の内容器体本体と、を有し、外圧により変形するポリエステル樹脂製の内容器体と、
前記外口部と前記内口部との間に形成されて前記外殻ボトルと前記内容器体との間に外気を導入する通気路と、
を備えるポリエステル樹脂製多重ボトルの製造方法であって、
ブロー成形する際に、前記外殻ボトルの元となる有底筒状の外プリフォーム内に、前記外プリフォームよりも薄肉であり前記内容器体の元となる有底筒状の内プリフォームを挿入した状態で、ロッドで前記内プリフォームの底部を押圧しながら、前記外殻ボトル用の型であって、前記肩部に対応する部分に複数の多角形が稜線を介して連設された多角形模様が付された型の中で、ブロー成形により前記外殻ボトルと前記内容器体本体とが同時に形成され、前記肩部と前記内容器体の前記肩部に対応する部分に前記多角形模様が同時に形成されることを特徴とするポリエステル樹脂製多重ボトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外殻ボトル内に配置された内容器体を備えるポリエステル樹脂製多重ボトル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外圧に対して原形復帰可能な外殻ボトルの内部に、外圧による減容により変形する(以下、「減容変形」ということがある)内容器体を配置し、該外殻ボトルと該内容器体との間に外気が導入されるようにした合成樹脂製多重ボトルが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
合成樹脂製多重ボトルは、外殻ボトルの胴部を押圧することにより、内容器体を減容変形させて内容器体に収容されている内容物を注出する一方、押圧が解除されると別途設けられた逆止弁等の作用により外殻ボトルと内容器体との間に外気が導入される。この結果、外気圧により外殻ボトルが原形復帰する一方、内容器体は減容変形された状態が維持される。このようにするときには、内容器体内に外気が侵入することが無いので、内容器体内に収容されている内容物が酸化等により変質することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-245010号公報
【特許文献2】特開2010-082916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多重ボトルとしては従来減容変形が容易な軟質のポリエチレン樹脂製多重ボトルが実用化されているが、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂)は、ポリエチレン樹脂と比較して容器の透明感又は内容物の香味の保持性などが優れているため、多重ボトルもポリエチレン樹脂に変えてポリエステル樹脂で成形することが考えられる。
【0006】
しかしながら、多重ボトルをポリエステル樹脂で成形する場合には、内容器体本体が外殻ボトルの内面に張り付いて外殻ボトルと内容器体本体との間に空気が入り難いという問題がある。また、ポリエステル樹脂では、ポリエチレン樹脂と比較して柔軟性が劣るため、内容器体本体が減容変形し難いという問題がある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、内容器体本体が外殻ボトルから剥離し易く、減容変形し易いポリエステル樹脂製多重ボトル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]上記目的を達成するため、本発明のポリエステル樹脂製多重ボトルは、
円筒状の外口部と、該外口部に連接する外殻ボトル本体と、を有し、外圧に対して原形復帰可能なポリエステル樹脂製の外殻ボトルと、
前記外殻ボトルの前記外口部内に配設される円筒状の内口部と、該内口部に連接し前記外殻ボトルの内面形状に沿う形状の内容器体本体と、を有し、外圧により変形するポリエステル樹脂製の内容器体と、
前記外口部と前記内口部との間に形成されて前記外殻ボトルと前記内容器体との間に外気を導入する通気路と、を備え、
前記外殻ボトル本体は、前記外口部に連接する肩部と、該肩部に連接する胴部と、該胴部に連接する底部と、を備え、
前記外殻ボトルと前記内容器体とがブロー成形にて同時に成形されたポリエステル樹脂製多重ボトルであって、
前記内容器体本体は、前記外殻ボトル本体よりも薄肉であり、
前記肩部及び前記肩部に対応する前記内容器体の部分には、複数の多角形が稜線(例えば、実施形態の縦稜線25、横稜線26。以下同一。)を介して連設された多角形模様が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、内容器体本体を外殻ボトル本体の肉厚よりも薄く、外殻ボトルの肩部及び対応する内容器体の部分には多角形模様が形成されるため、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂など)で外殻ボトルと内容器体を製造しても、通気路から吸い込まれた空気が外殻ボトルの肩部と内容器体本体との間に入り込み易くなり、外殻ボトルから内容器体本体を離れ易くすることができて、内容器体の減容変形が容易となる。
【0010】
[2]また、本発明においては、前記多角形模様は、上下方向に延びる縦稜線と前記縦稜線に交差する横稜線とで囲われた複数の四角形で構成することができる。他にも、多角形模様としては、複数の三角形、五角形、六角形、及びこれらの組み合わせなどの様々な模様とすることができる。
【0011】
[3]また、本発明においては、前記外殻ボトル及び前記内容器体は、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなることが好ましい。かかる構成によれば、ポリエチレンテレフタレート樹脂のような比較的硬い材料で外殻ボトル及び内容器体を製造しても、内容器体本体を外殻ボトルから容易に剥すことができる。
【0012】
[4]また、本発明においては、外殻ボトルと内容器体本体との間に離型剤を介在させることが好ましい。かかる構成によれば、より一層外殻ボトルから内容器体本体を剥離させ易くすることができる。離型剤としては、例えば、流動パラフィンやシリコン系化合物を用いることができる。
【0013】
[5]また、本発明においては、
前記内容器体内に内容物が充填され、前記外殻ボトルにキャップが装着されており、前記外殻ボトルの外面の少なくとも前記肩部にシュリンクラベルが装着されているものにも本発明を適用することができる。
【0014】
シュリンクラベルが加熱により最も大きく収縮変形する肩部において、加熱しても外殻ボトルと内容器体とが再び密着し難く、肩部における通気性の低下および剥離性の低下を防止し、内容器体の減容変形が良好なシュリンクラベル付きのポリエステル樹脂製多重ボトルを得ることができる。
【0015】
[6]本発明のポリエステル樹脂製多重ボトルの製造方法は、
円筒状の外口部と、該外口部に連接する外殻ボトル本体と、を有し、外圧に対して原形復帰可能なポリエステル樹脂製の外殻ボトルと、
前記外殻ボトルの前記外口部内に配設される円筒状の内口部と、該内口部に連接し前記外殻ボトルの内面形状に沿う形状であり前記外殻ボトル本体よりも薄肉の内容器体本体と、を有し、外圧により変形するポリエステル樹脂製の内容器体と、
前記外口部と前記内口部との間に形成されて前記外殻ボトルと前記内容器体との間に外気を導入する通気路と、を備え、
前記外殻ボトル本体は、前記外口部に連接する肩部と、該肩部に連接する胴部と、該胴部に連接する底部と、を備え、
前記外殻ボトルと前記内容器体とはブロー成形にて同時に成形されるポリエステル樹脂製多重ボトルの製造方法であって、
ブロー成形する際に、前記外殻ボトルの元となる有底筒状の外プリフォーム内に、前記外プリフォームよりも薄肉であり前記内容器体の元となる有底筒状の内プリフォームを挿入した状態で、ロッドで前記内プリフォームの底部を押圧しながら、前記外殻ボトル用の型であって、前記肩部に対応する部分に複数の多角形が稜線を介して連設された多角形模様が付された型の中で、ブロー成形により前記外殻ボトルと前記内容器体本体とが同時に形成され、前記肩部と前記内容器体の前記肩部に対応する部分に前記多角形模様が同時に形成されることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、外殻ボトルと内容器体本体とを同時にブロー成形することで、外殻ボトルの肩部の多角形模様と、肩部に対応する内容器体本体の部分の多角形模様とを同時に形成することができ、ポリエステル樹脂製多重ボトルの製造が容易となる。また、内プリフォームの胴部の肉厚を外プリフォームの胴部の肉厚よりも薄肉とすることで、ブロー成形で成形される内容器体本体も外殻ボトル本体よりも薄くなる。また、外殻ボトルの肩部と内容器体本体とに多角形模様を設けることで、肩部から内容器体本体を容易に剥離させることができる。
【0017】
これは、一つの理由としては、ブロー成形後のポリエステル樹脂製多重ボトルの外殻ボトル本体と内容器体本体とで肉厚や延伸倍率の違いにより内部応力に差が生じて、内容器体本体は外殻ボトルの肩部から剥離し易くなるためと考えられる。また、特に、稜線で区切られた多角形で構成される多角形模様が形成された外殻ボトルの肩部と当該肩部に対応する内容器体本体の部分とは、それぞれの多角形模様における外殻ボトルと内容器体との肉厚や延伸倍率の違いによる内部応力の差に加えて、多角形模様の多角形の部分と隣接する多角形同士の境界部分である稜線の部分との間においても内部応力の差が生じ、これらが影響を及ぼし合い、多角形模様とが形成された外殻ボトルの肩部と肩部に対応する内容器体の部分において一層剥離し易くなったと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のポリエステル樹脂製多重ボトルの実施形態を示す斜視図。
図2】本実施形態のポリエステル樹脂製多重ボトルの縦断面を示す説明図。
図3】本実施形態のポリエステル樹脂製多重ボトルに円筒形状のシュリンクラベルを被せた状態を模式的に示す説明図。
図4】本実施形態のポリエステル樹脂製多重ボトルにシュリンクラベルを熱収縮させて密着させた状態を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態のポリエステル樹脂製多重ボトル1は、外圧に対して原形復帰可能な外殻ボトル2と、外殻ボトル2の内側に収容され外圧により変形する内容器体3とからなる。
【0020】
外殻ボトル2は、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂製であり、円筒状の外口部4と、外口部4に連接する外殻ボトル本体21とを備えている。外殻ボトル本体21は、肩部5と、肩部5に連接する円筒状胴部6(本発明の胴部に相当する)と、円筒状胴部6に連接する底部7とを備えている。底部7は、下端に接地する接地部7bを備えると共に、接地部7bの内周側に外殻ボトル2の内側に膨出してポリエステル樹脂製多重ボトル1に自立性を付与する凹部8を備えている。
【0021】
外口部4は外周面に雄ねじ部10と、サポートリング11とを備える。肩部5は十二角錐状に形成されている。この十二角錐状の肩部5は、外口部4側から円筒状胴部6に向かって次第に拡径するとともに十二角錐の角が滑らかになりながら円筒状胴部6に連なっている。
【0022】
肩部5の十二角錐の稜線(縦稜線25)で区切られた肩部5は、周方向に延びる2本の横稜線26によって区切られ、肩部5の十二角錐の縦稜線25と横稜線26とで複数の四角形27が肩部5に形成されている。この複数の四角形27で本実施形態の多角形模様28が構成されている。縦稜線25及び横稜線26が本発明の稜線に相当する。
【0023】
底部7は、接地部7bに接する部分が四角錐状部となっており、四角錐状部の上方に四角錐状部から円筒状胴部6に向かって次第に拡径するとともに四角錐の角が滑らかになり円筒状胴部6に連なっている。また、凹部8は、3段に積層された四角錐台状凹部8a,8b,8cを備えている。
【0024】
また、肩部5及び底部7の四角錐状部は、それぞれ上下方向軸に直交する水平断面が四角形状であってその頂点にはRが付されており、該頂点に稜線を備えている。ここで、底部7の稜線は肩部5の縦稜線25の延長上に連なっている。
【0025】
一方、内容器体3は、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂製であり、外口部4の内周側に配設される円筒状の内口部13と、内口部13に連接し、外殻ボトル2の肩部5、円筒状胴部6、底部7、接地部7b、凹部8の内面形状に沿う形状の内容器体本体14とを備えている。内容器体本体14は、外殻ボトル本体21よりも薄肉に形成されている。内口部13は、上部に外口部4の上端よりも上方に延出された延出部15と、延出部15から径方向外方に張り出す鍔部16とを備えており、鍔部16により外口部4の上端縁に係止されている。
【0026】
なお、外殻ボトル2と内容器体3に用いるポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好適であるが、それに限定されず、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂、又はポリエチレンナフタレート樹脂などであってもよく、または公知のポリエステル樹脂を単独で、あるいは混合して使用してもよい。
【0027】
また、内口部13は、外周面に周方向に間隔を存して複数の縦溝17を備えている。縦溝17は鍔部16の下面に形成された横溝18に連設されており、横溝18は鍔部16の外周縁で外部に開放されている。この結果、縦溝17及び横溝18により、外殻ボトル2と内容器体3との間に外気を導入する通気路19が形成されている。各縦溝17は、内口部13の下端まで延びている。
【0028】
肩部5は、外口部4の下端から下方に向かって拡径しながら次第に薄肉となるように形成されている。
【0029】
なお、本発明の縦稜線と横稜線においては、図に示した本数に限られず、1.5リットル以下のボトルでは、縦稜線25を5本~20本、好ましくは6本~16本、横稜線26を2本~4本の範囲内で適宜選択することができる。また、多角形模様28の各四角形27の面は平面或いは僅かに凹んだ凹面とすることにより、加熱処理を受けたときに外殻ボトル2の肩部5と内容器体3とが再度密着し難くなって好ましい。また、多角形模様28は複数の四角形27に限らず、複数の三角形、五角形、六角形、及びこれらの組み合わせであってもよい。また、縦稜線25及び横稜線26は、直線に限らず、例えば少なくとも一方を曲線としてもよい。
【0030】
図2の断面図に示すように、肩部5に対応する内容器体本体14の部分にも肩部5と同様の多角形模様28が設けられている。
【0031】
本実施形態のポリエステル樹脂製多重ボトル1は、ブロー成形工程の後に、一旦、内容器体3を外殻ボトル2から剥離させた後に再度復元させる剥離復元工程を経て、内容物が充填される内容物充填工程に進む。なお、剥離復元工程を省略して内容物を充填してもよい。
【0032】
内容物充填工程の後は、外口部4に逆止弁付きキャップ29を装着するキャップ装着工程を経て、キャップ29上面中央部とポリエステル樹脂製多重ボトル1の接地部7b、凹部8を除き、図3に示すように筒状の印刷フィルムからなるシュリンクラベル30が被せられ、シュリンクラベル30の外面側から加熱蒸気や熱風などを吹き付けてシュリンクラベル30を加熱収縮させて、図4に示すようにポリエステル樹脂製多重ボトル1に密着させるシュリンクラベル工程に進む。
【0033】
このシュリンクラベル工程で外殻ボトル2と内容器体3とは再度加熱され、外殻ボトル2と内容器体3とが再度密着し易くなる。特に、シュリンクラベル工程では、肩部5に沿うように筒状のシュリンクラベル30の肩部5に対応する部分を大きく収縮させる必要があり、肩部5では、加熱温度を高く設定し、或いは加熱時間を長く設定する必要がある。
【0034】
したがって、特に肩部5では、外殻ボトル2と内容器体3とが再度密着し易く、その結果、肩部5における内容器体3の外殻ボトル2からの剥離性が低下し易く、肩部5における通気性が低下して、キャップ29の逆止弁(図示省略)を介して外口部4と内口部13との間から引き込まれる空気が肩部5と内容器体3との間を通り難くなる虞がある。
【0035】
しかしながら、本実施形態のポリエステル樹脂製多重ボトル1は、肩部5及び肩部5に対応する内容器体3の部分に多角形模様28を形成することで、特に縦稜線25及び横稜線26において内容器体3が肩部5に再度密着し難くなり、肩部5における適切な通気性を確保することができる。
【0036】
本実施形態のポリエステル樹脂製多重ボトル1は、内容器体3に図示しない内容物が収容されており、該内容物を注出するときには、外口部4及び内口部13を下方に向けて傾ける。そして、外殻ボトル2の円筒状胴部6を把持して押圧すると、内容器体本体14が減容変形することにより、内容物が注出される。ポリエステル樹脂製多重ボトル1では、円筒状胴部6は軸に直交する断面が円形であるので軸に対して任意の方向から押圧することができるので、円筒状胴部6の中央を容易に把持して内容器体本体14を減容変形させることができ、優れたスクイズ性を得ることができる。
【0037】
次に、外殻ボトル2の円筒状胴部6の押圧を解除すると、外殻ボトル2と内容器体本体14との間に通気路19の縦溝17から多角形模様28が形成された肩部5と内容器体本体14との間に外気が導入され、自己の復元力により外殻ボトル2は原形に復帰するが、内容器体本体14の中には外気が入り込まず、内容器体本体14は減容変形したままの状態が維持される。
【0038】
このとき、内容物は重力により内口部13方向に集中しているので、内容器体本体14は外殻ボトル2の底部7の四角錐状部に対応する部分において、底部7の稜線に挟まれる部分に対応する側面部分に内容器体本体14の内側への谷折れ部が形成されて内側に没入することにより、谷折れ変形が始まる。
【0039】
ポリエステル樹脂製多重ボトル1では、外殻ボトル2の円筒状胴部6の押圧と該押圧の解除とを繰り返すことにより次第に前記内容物が減少する。前記内容物が減少すると、内容器体本体14の谷折れ変形が、外殻ボトル2の底部7の四角錐状部に対応する部分を起点として、幅方向では内容器体本体14の外側から内方に向けて進行し折り畳まれる。
【0040】
本実施形態においては、肩部5及びこの肩部5に対応する内容器体本体14の部分には、多角形模様28が存在することにより、内容物充填後の使用時には、多角形模様28が形成された肩部5と肩部5に対応する内容器体本体14の部分の間に外気が導入され易くなり、外圧がかかったとき、肩部5に対応する内容器体本体14の部分は、より早く外殻ボトル2から剥離し、折り畳まれた部位が谷部となり折り畳み減容変形が行われる。この結果、内容器体本体14に収容されている内容物を余すことなく注出することができ、残液量を減少させることができる。
【0041】
また、本実施形態のポリエステル樹脂製多重ボトル1は、四角錐台状凹部8a,8b,8cからなる形状の凹部8を備えているので、ブロー成形時の加熱圧着により、凹部8では内容器体本体14が外殻ボトル2に密着している。また、凹部8は四角錐台状凹部8a,8b,8cからなり、多数の段差部と屈曲部とを備えていることにより、凹部8においては外殻ボトル2と内容器体本体14との間に外気が侵入することがない。
【0042】
従って、外殻ボトル2の長さ方向に沿って谷折れ部が形成される間に、凹部8において外殻ボトル2から内容器体本体14が剥離することがなく、内容器体本体14に収容されている内容物をさらに確実に注出することができ、残液量を減少させることができる。
【0043】
本実施形態の肩部5に多角形模様28が形成されたポリエステル樹脂製多重ボトル1は、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる外殻ボトル2用の有底筒状外プリフォームと外プリフォームよりも胴部が薄肉の内容器体3用の有底筒状内プリフォームとを用いて、外プリフォームに内プリフォームを挿入し、両プリフォームの胴部の間に離型剤(好ましくは、流動パラフィン)を介在させ、外殻ボトル2の肩部5及び肩部5に対応する内容器体本体14の部分に多角形模様28が形成されるように設計されたブロー成形金型を用いて、金型の内部に両プリフォームを配置して、ロッドで内プリフォームの底部を押圧しながら、両方同時にブロー成形することにより製造することができる。ブロー成形後の内容器体本体14は外殻ボトル2よりも薄肉となる。
【0044】
ブロー成形金型の多角形模様は機械加工等で形成される。外プリフォームと内プリフォームとを積層して同時に延伸ブロー成形して得られたポリエステル樹脂製多重ボトル1には、肩部5の多角形模様28のみならず、肩部5に対応する内容器体本体14の部分にも多角形模様が同時に形成される。ブロー成形金型の肩部の多角形模様は、肩部5の多角形模様28と内容器体本体14の多角形模様とが同時に形成されるように設定されている。
【0045】
このようにして製造されるポリエステル樹脂製多重ボトル1の外口部4と内口部13の間には通気路19が設けられており、肩部5には、多角形模様28が形成され、肩部5に対応する内容器体本体14の部分にも同様の多角形模様が形成される。外殻ボトル2と内容器体本体14とはブロー成形後、ブロー成形金型から取り出されて冷却される。肩部5の多角形模様28と内容器体本体14の多角形模様とでは、内側と外側との冷却温度の差、肉厚の差、延伸配率の差などの理由から内部応力などにも差が生じて、肩部5の多角形模様28と内容器体本体14の多角形模様との間において外気を導入するなどして僅かな外力で容易に剥離させることができる。特に多角形模様28が形成された肩部5と内容器体本体14との間では、縦稜線25及び横稜線26で細分化された多角形模様の夫々の四角形の部分(平面部又は凹面部)と縦稜線25及び横稜線26の部分との内部応力の差も影響して、多角形模様28によって、剥離性がより一層向上する。
【0046】
本実施形態のポリエステル樹脂製多重ボトル1によれば、外殻ボトル2の肩部5と、肩部5に対応する肩部5の内面側の内容器体本体14の部分に多角形模様28が設けられているため、比較的硬い材料であるポリエチレンテレフタレート樹脂などで外殻ボトルと内容器体を製造しても、通気路19から取り込まれる空気が、多角形模様28が形成された肩部5と内容器体本体14との間に容易に入り込むことによって、外殻ボトル2から内容器体本体14を離れ易くすることができる。
【0047】
また、ポリエステル樹脂で外殻ボトルと内容器体とを形成したポリエステル樹脂製多重ボトルは、外殻ボトルと内容器体とが共にポリエステル樹脂製であり、内容物の充填後に、外殻ボトルの外面にシュリンクラベルを取り付けるためにラベルを加熱収縮させる場合において、外殻ボトルと内容器体とが近接した状態でポリエステル樹脂製多重ボトルが加熱される場合、シュリンクラベルを大きく収縮させる必要がある部分である外殻ボトルの肩部と内容器体本体とが再度密着してしまい剥離し難くなる虞がある。外殻ボトルの肩部と当該肩部に対応する内容器体本体の部分が再度密着してしまうと、当該部分は外気が導入される通気路に近いため、内容器体本体の減容変形に悪影響を与える虞がある。
【0048】
しかしながら、本実施形態のポリエステル樹脂製多重ボトル1においては、シュリンクラベル30を取り付けるために加熱されても、肩部5の多角形模様28及び内容器体本体14の多角形模様との間で剥離性が向上されているため、通気路19から外気を導入して容易に肩部5から内容器体本体14を剥離させ、外殻ボトル2と内容器体本体14との間の下方にまで容易に外気を送ることができる。
【0049】
また、ポリエステル樹脂製多重ボトル1の内容器体本体14にピンホールなどがないかどうか品質確認のためにポリエステル樹脂製多重ボトル1の製造後、一度、凹部8を除く外殻ボトル2の部分から内容器体本体14を剥離させてピンホールの有無などの品質確認を行ってもよい。そして、品質確認をした後、内容器体本体14を膨らませて元に戻したポリエステル樹脂製多重ボトル1においても、シュリンクラベル30の取り付けのための加熱処理工程などの後の工程においても、本実施形態のポリエステル樹脂製多重ボトル1によれば、多角形模様28によって内容器体本体14が外殻ボトル2の肩部5に張り付いて剥離し難くなることを防止することができる。
【0050】
また、本実施形態においては、外殻ボトル2と内容器体本体14とを同時にブロー成形することで、肩部5の多角形模様28と、内容器体本体14の多角形模様とを同時に形成することができ、ポリエステル樹脂製多重ボトル1の製造が容易となる。
【0051】
また、本実施形態では、外殻ボトル2と内容器体本体14との間に離型剤を介在させている。これにより、外殻ボトル2から内容器体本体14を更に剥離させ易くすることができる。離型剤としては、例えば、流動パラフィンやシリコン系化合物を用いることができる。
【0052】
尚、本実施形態では、多角形模様28として複数の四角形27を用いたものを説明したが、本発明の多角形模様は四角形に限らず、例えば、稜線で区切られた複数の三角形、五角形、六角形、及びこれらの組み合わせであってもよい。また、本発明の多角形模様を構成する複数の多角形は、それぞれ平面又は僅かに窪んだ凹面で構成することが好ましい。これにより、シュリンクラベル工程で加熱処理を受けたときに多角形の面の部分で、外殻ボトル2と内容器体本体14とが再度密着することを抑制させることができる。また、本実施形態では、外殻ボトル2における底部7の接地部7bに連接する部分を四角錐状部としているが、底部7全体を四角錐状部としてもよい。または、底部を円錐状に形成してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、外口部4の外周面に雄ねじ部10を備える構成としているが、外口部4は雄ねじ部10を備えない単なる円筒状であってもよく、このようにすることにより例えば醤油ボトル等の打栓式口部等に適用することができる。
【0054】
また、本実施形態では、円筒状胴部6のスクイズ性等への影響を考慮して、多角形模様28を肩部5にのみ設けているものを説明した。しかしながら、本発明の肩部の多角形模様は、これに限らず、肩部の上半分にのみ多角形模様を設けてもよい。また、胴部や底部にも多角形模様を付してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 ポリエステル樹脂製多重ボトル
2 外殻ボトル
3 内容器体
4 外口部
5 肩部
6 円筒状胴部(本発明の胴部に相当する)
7 底部
7b 接地部
8 凹部
8a,8b,8c 四角錐台状凹部
10 雄ねじ部
11 サポートリング
13 内口部
14 内容器体本体
15 延出部
16 鍔部
17 縦溝
18 横溝
19 通気路
21 外殻ボトル本体
25 縦稜線
26 横稜線
27 四角形
28 多角形模様
29 キャップ
30 シュリンクラベル
図1
図2
図3
図4