(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091304
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ワイヤ放電加工機の加工プログラム生成装置、加工プログラム生成方法およびワイヤ放電加工システム
(51)【国際特許分類】
B23H 7/02 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
B23H7/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204071
(22)【出願日】2020-12-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】倉ケ谷 翼
(72)【発明者】
【氏名】坂口 昌志
【テーマコード(参考)】
3C059
【Fターム(参考)】
3C059AB05
3C059CL01
3C059FD01
3C059JA13
(57)【要約】
【課題】 中子を分割処理した場合であっても、中子を適切に回収することができるワイヤ放電加工機の加工プログラム生成装置、加工プログラム生成方法およびワイヤ放電加工システムを提供すること。
【解決手段】
本発明のワイヤ放電加工機の加工プログラム生成装置は、ワークの加工溝の形状および加工溝の内側部分をなす中子の形状を示す加工形状データを入力する入力部と、中子を加工溝に固定するための爪部の形状パターン、当該爪部の寸法データおよび当該爪部を付加する位置を示す付加データを取得する爪部選択部と、形状パターンを加工して爪部の形状データを生成するとともに加工形状データに爪部の形状データを付加した修正形状データを生成する修正形状データ生成部と、修正形状データに基づいて放電加工を行うための加工プログラムを生成する加工プログラム生成部と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの加工溝の形状および前記加工溝の内側部分をなす中子の形状を示す加工形状データを入力する入力部と、前記中子を前記加工溝に固定するための爪部の形状パターン、当該爪部の寸法データおよび当該爪部を付加する位置を示す付加データを取得する爪部選択部と、前記形状パターンを加工して前記爪部の形状データを生成するとともに前記加工形状データに前記爪部の形状データを付加した修正形状データを生成する修正形状データ生成部と、前記修正形状データに基づいて放電加工を行うための加工プログラムを生成する加工プログラム生成部と、を備えたことを特徴とするワイヤ放電加工機の加工プログラム生成装置。
【請求項2】
前記修正形状データ生成部は、前記加工形状データに基づいて前記中子を分割して前記修正形状データを生成することを特徴とする請求項1記載のワイヤ放電加工機の加工プログラム生成装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の加工プログラム生成装置と、ワイヤ放電加工機からなるワイヤ放電加工システムであって、
前記ワイヤ放電加工機は、前記加工プログラム生成装置から送信された前記加工プログラムを読み込み、荒加工時に前記加工プログラムに従って前記爪部を形成しながら前記中子を前記ワークから切離するくり抜き加工を行うように制御する制御装置を備えたことを特徴とするワイヤ放電加工システム。
【請求項4】
前記制御装置は、仕上げ加工時に前記爪部を除去しながら前記加工溝に加工を行うように制御することを特徴とする請求項3記載のワイヤ放電加工システム。
【請求項5】
前記形状パターンは、断面三角形状、フック状または台形形状の3Dモデルであることを特徴とする請求項1または2記載のワイヤ放電加工機の加工プログラム生成装置。
【請求項6】
前記爪部の形状データを付加する位置は、前記中子同士が接する位置であることを特徴とする請求項2記載のワイヤ放電加工機の加工プログラム生成装置。
【請求項7】
ワークの加工溝の形状および前記加工溝の内側部分をなす中子の形状を示す加工形状データを入力する入力工程と、前記中子を前記加工溝に固定するための爪部の形状パターン、当該爪部の寸法データおよび当該爪部を付加する位置を示す付加データを取得する爪部選択工程と、前記形状パターンを加工して前記爪部の形状データを生成する爪部形状データ生成工程と、前記加工形状データに前記爪部の形状データを付加した修正形状データを生成する修正形状データ生成工程と、前記修正形状データに基づいて放電加工を行うための加工プログラムを生成する加工プログラム生成工程と、を有するワイヤ放電加工機の加工プログラム生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割した中子の落下を防止することができるワイヤ放電加工機の加工プログラム生成装置、加工プログラム生成方法およびワイヤ放電加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
加工電極とワークとの間に形成される極間に放電を発生させて行う放電加工を、板状等のワークに対するワイヤ電極による糸鋸状の切断加工に適用したワイヤ放電加工は広く知られている。このようなワイヤ放電加工では、加工中において、加工溝により切り離されたワークの内側部分である中子を回収する必要があるため、中子を吸着して上方に持ち上げて取り出す方法(特許文献1)や上方から中子を押圧して回収する方法(特許文献2)または最後まで切り残しておいた箇所や落下防止のために中子とワークとを接着している箇所を切断して中子を取り出す方法(特許文献3、特許文献6)等が用いられている。
【0003】
上述の回収方法において、ワークから切り出す中子の重量が大きい場合や体積が大きい場合、除去装置等により中子をうまく持ち上げることや押圧することが難しく、ワークから中子を適切に回収できないという問題が生じていた。よって、重量や体積が大きい中子はあらかじめ複数に分割し、分割後の中子を順に除去する方法が用いられている(特許文献4、特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6599532号公報
【特許文献2】特開2019-181637号公報
【特許文献3】特開平08-025145号公報
【特許文献4】実開平05-002823号公報
【特許文献5】特開平02-167621号公報
【特許文献6】特許第5813517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら分割後の中子を順に除去する際に、加工液の噴流等により未除去の中子が加工溝の内側で移動し、別の中子をワークから除去することによりできた空間に入り込んでしまう。未除去の中子が加工溝の内側で自由に移動してしまうと、中子同士や中子とワークとの間でワイヤ電極を挟んでしまい断線させてしまう問題が発生していた。さらには未除去の中子の位置がずれるため回収装置等によって中子を適切に除去できない問題も有していた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、中子を分割処理した場合であっても、中子を適切に回収することができるワイヤ放電加工機の加工プログラム生成装置、加工プログラム生成方法およびワイヤ放電加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のワイヤ放電加工機の加工プログラム生成装置は、ワークの加工溝の形状および前記加工溝の内側部分をなす中子の形状を示す加工形状データを入力する入力部と、前記中子を前記加工溝に固定するための爪部の形状パターン、当該爪部の寸法データおよび当該爪部を付加する位置を示す付加データを取得する爪部選択部と、前記形状パターンを加工して前記爪部の形状データを生成するとともに前記加工形状データに前記爪部の形状データを付加した修正形状データを生成する修正形状データ生成部と、前記修正形状データに基づいて放電加工を行うための加工プログラムを生成する加工プログラム生成部と、を備えたことを特徴とする。
また本発明のワイヤ放電加工機の加工プログラム生成方法は、ワークの加工溝の形状および前記加工溝の内側部分をなす中子の形状を示す加工形状データを入力する入力工程と、前記中子を前記加工溝に固定するための爪部の形状パターン、当該爪部の寸法データおよび当該爪部を付加する位置を示す付加データを取得する爪部選択工程と、前記形状パターンを加工して前記爪部の形状データを生成する爪部形状データ生成工程と、前記加工形状データに前記爪部の形状データを付加した修正形状データを生成する修正形状データ生成工程と、前記修正形状データに基づいて放電加工を行うための加工プログラムを生成する加工プログラム生成工程と、を有することを特徴とする。
さらに本発明のワイヤ放電加工機の加工プログラム生成装置は、前記修正形状データ生成部が前記加工形状データに基づいて前記中子を分割して前記修正形状データを生成することを特徴とする。
【0008】
ここで加工形状データとは、ワークに対して行う加工の目標形状である加工溝の形状(中子の形状)を表すデータであり、例えば、CADデータである。
また爪部の形状データとは、爪部の基本形状を示す3Dモデル等の形状パターンを寸法データにより拡大、縮小、回転等の加工を行った3Dモデルまたは位置座標の集合等のデータである。
さらに加工プログラムとは、ワークをワイヤ放電加工する際に用いられるデータであり、具体的にはNCデータである。
本発明によれば、加工プログラム生成装置および生成方法によりワークもしくは中子に自動的に爪部を設けることが可能であるため、中子を分割処理した場合であっても中子の移動を防止することができ、簡単な方法でワイヤ電極の断線を防止するとともに中子を適切に除去することが可能となる。
【0009】
本発明は、加工プログラム生成装置と、ワイヤ放電加工機からなるワイヤ放電加工システムであって、前記ワイヤ放電加工機は、前記加工プログラム生成装置から送信された前記加工プログラムを読み込み、荒加工時に前記加工プログラムに従って前記爪部を形成しながら前記中子を前記ワークから切離するくり抜き加工を行うように制御する制御装置を備えたことを特徴とする。
また本発明のワイヤ放電加工システムは、前記制御装置が仕上げ加工時に前記爪部を除去しながら前記加工溝に加工を行うように制御することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ワイヤ放電加工において荒加工時に爪部を形成するとともに仕上げ加工時に爪部を除去することができるため、自動的に爪部の付加および除去を行うことが可能で、さらに最終製品の形状に影響を与えることがない。
【0011】
本発明のワイヤ放電加工機の加工プログラム生成装置において、前記爪部の形状データを付加する位置は前記中子同士が接する位置であることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、爪部が中子同士の接する位置に設けられているため、ワイヤ放電加工の仕上げ加工時に爪部を除去する工程を省くことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加工中において分割した中子の除去を自動的かつ確実に行うことができ、未回収の中子の移動によりワイヤ電極の断線や適切に中子を回収できない等の問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のワイヤ放電加工システム100を示す全体構成図である。
【
図2】上記実施形態の加工プログラム生成装置20の構成を示すブロック図である。
【
図3】従来の中子Nおよび加工溝G2の形状を示す模式図である。
【
図4】本発明のワイヤ放電加工システム100により形成される中子Nおよび加工溝G1の形状を示す模式図である。
【
図5】本発明のワイヤ放電加工システム100の全体動作の概要を示すフローチヤートである。
【
図6】加工プログラム生成装置による加工プログラムの生成方法を説明するためのフローチャートである。
【
図7】本発明のワイヤ放電加工システム100により形成される爪部Tのその他の形状を示す説明図である。
【
図8】本発明のワイヤ放電加工システム100により形成される爪部Tのその他の形状を示す説明
図2である。
【
図9】本発明のワイヤ放電加工システム100により形成される爪部Tのその他の形状を示す説明
図3である。
【
図10】本発明のワイヤ放電加工機10により行われる荒加工工程と中子Nの回収工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1.1 ワイヤ放電加工システム100の全体構成)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明のワイヤ放電加工システム100の全体構成図である。同図を参照して概要を説明すると、ワイヤ放電加工システム100は、ワイヤ放電加工機10と、加工プログラム生成装置20から構成される。
ワイヤ放電加工機10は、加工機本体1と、加工機本体1を駆動するための各軸モータ6と、電源装置7と、制御装置9から構成され、制御装置9には加工プログラム生成装置20が接続されている。
【0016】
加工機本体1は、上側ガイド組体2と下側ガイド組体3との間に工具電極としてのワイヤ電極Eを連続的に供給し、ワークWを加工槽4内のワークスタンド5に載置した状態で加工液に浸漬し、各軸モータ6によりワイヤ電極EとワークWとの極間の距離を所定に設定しつつ電源装置7により極間に所定の電圧を印加して放電を発生させワークWの放電加工を行う構成となっている。
また加工機本体1には、中子Nを回収するための中子移動装置8が設けられている。例えば、中子移動装置8は、永久磁石等を有する中子吸着保持部を備え、切り抜かれた中子Nを中子吸着保持部に吸着させることにより、ワークWから取り出した後、中子Nを加工機本体1の図示しない中子回収バケットに回収する。
【0017】
制御装置9は、加工プログラム生成装置20から加工プログラム90を受信し、解読して制御信号を送信する装置である。すなわち、ワイヤ放電加工機10は、制御装置9が生成した制御信号に基づいて各軸モータ6および電源装置7を加工プログラム90に沿って動作させ、放電加工を行う。
【0018】
図2は、上記実施形態の加工プログラム生成装置20の構成を示すブロック図である。
加工プログラム生成装置20は、ワイヤ放電加工機10で実行するための加工プログラムを生成して、制御装置9に送信する装置である。加工プログラム生成装置20は、実際の製品の加工形状である加工形状データ70から中子Nの重量を算出し、適切な分割数に中子Nを分割するデータ処理を施した後、さらに爪部Tの形状データ73を結合した修正形状データ80を形成して加工プログラムを生成する。
加工プログラム生成装置20は、入力部30、表示部40、記憶部50、処理部60から構成される。
【0019】
入力部30は、例えば、キーボード、マウス、或いはタッチパネル等で構成されており、入力部30から処理部60に対して各種処理に必要な情報である加工形状データ70が入力される。なお、入力部30は、USBおよびLANを介して他の装置から各種情報を入力する構成も含む。
【0020】
表示部40は、CRTディスプレーや液晶ディスプレー等で構成されており、入力部30から入力された情報や処理部60により処理された情報を表示する。表示部40は、例えば作業者が入力部30を介して入力したワークWの加工形状データ70に基づいて描画情報が表示される。
【0021】
図7~
図9は、本発明のワイヤ放電加工システム100により形成される爪部Tのその他の形状を示す説明図である。
記憶部50は、ハードディスク、CD-ROM等で構成されており各種データが記憶される。
記憶部50には、中子Nの重量と分割数の相関関係を示すデータ51、ワークWの密度データ52、爪部Tの形状パターン53、爪部Tの寸法データ54、爪部Tを付加する位置を表す付加データ55が格納される。
中子Nの重量と分割数の相関関係を示すデータ51は、中子Nの全体の重量の大きさに対して最適な中子Nの分割数を示す情報である。中子移動装置8が中子Nを吸着して回収可能な機械性能等から事前に算出し、記憶部50に格納する。
ワークWの密度データ52は、加工を行うワークWの単位体積当たりの質量であり、ワークWの材質により決定されるため、材質と密度を紐づけたデータテーブルとして格納されている。ここで、ワークWの材質が鉄等であって、取り扱うワークWの材質がひとつしか存在しない場合は、ワークWの密度データ52をデータテーブルとして格納する必要はない。密度データ52を使用する代わりに単位体積重量を使用することも可能である。
爪部Tの形状パターン53は、爪部Tの基本形状を示す3Dモデルや位置座標の集合等のデータであり、例えば、断面三角形状、断面フック状(
図7)または断面台形形状(
図8)等の形状のデータである。また、爪部Tの寸法データ54は、爪部Tの形状パターンの拡大率、縮小率および回転度等を示す爪部Tの寸法情報である。
爪部Tの形状パターン53と寸法データ54は紐づけられて記憶部50に格納されている。寸法データ54を作業者が手動で入力する場合は、寸法データ54は記憶部50に格納されていなくてもよい。
爪部Tの付加データ55は、加工形状データ70に対して爪部Tの形状データ73を付加する位置を示すデータであり、例えば付加する位置が加工溝G1と後述する分割線72が交わる位置であることや、付加する位置が分割線72上の位置である等の情報が記憶部50に格納されている。付加する位置を作業者が手動で入力する場合は、付加データ55は記憶部50に格納されていなくてもよい。
【0022】
処理部60は、入力部30から入力された加工形状データ70と記憶部50に記憶された各種データに基づいて加工プログラム90を生成するものであり、記憶データ取得部61、重量演算部62、分割演算部63、爪部選択部64、修正形状データ生成部65、加工プログラム生成部66から構成される。
【0023】
記憶データ取得部61は、記憶部50に格納された各種データを取得する。
【0024】
重量演算部62は、加工形状データ70から中子Nの形状データを算出し、中子Nの体積を演算するとともに、記憶データ取得部61が取得したワークWの密度データ52に基づいて中子Nの重量を演算する。
【0025】
分割演算部63は、重量演算部62で求めた中子Nの重量と、中子Nの重量と分割数の相関関係を示すデータ51から中子Nの分割数を演算する。
【0026】
爪部選択部64は、作業者の入力またはあらかじめ設定された設定値を参照することで使用する爪部Tの形状パターン53および爪部Tの寸法データ54を記憶データ取得部61により記憶部50から選択する。また、爪部選択部64は、爪部Tの付加データ55を記憶データ取得部61により記憶部50から取得する。
【0027】
修正形状データ生成部65は、加工形状データ70および分割演算部63により演算された中子Nの分割数の情報から中子Nを分割して、爪部選択部64により選択された爪部Tの形状パターン53、寸法データ54および付加データ55から爪部Tの形状データ73を生成し、爪部Tの形状データ73を付加した修正形状データ80を生成する。
具体的には、修正形状データ生成部65は分割処理、爪部形状データ生成処理、修正形状データ生成処理を順に行う。
分割処理においては、加工形状データ70から加工溝G1の形状を抽出し、加工溝G1の重心71を求める。その後、重心71を中心として等分線を引くことで、分割演算部63により演算された中子Nの分割数に中子Nを分割する。この等分線を分割線72とする。
爪部形状データ生成処理においては、爪部選択部64から取得した爪部Tの寸法データ54に沿って形状パターン53に対して拡大、縮小および回転等の加工を行い、爪部Tの形状データ73を生成する。そして修正形状データ生成処理においては、生成された爪部Tの形状データ73を爪部Tの付加データ55に従って加工形状データ70に付加して、修正形状データ80を作成する。
【0028】
加工プログラム生成部66は、修正形状データ生成部65により生成された修正形状データ80に基づいて加工プログラム(NCプログラム)を生成する。
【0029】
(1.2 ワイヤ放電加工システム100の全体動作)
図5は、本発明のワイヤ放電加工システム100の全体動作の概要を示すフローチヤートであり、
図10は、本発明のワイヤ放電加工機10により行われる荒加工工程と中子Nの回収工程を示す説明図である。同図を参照してワイヤ放電加工システム100の全体動作の概要について説明を行う。
加工プログラム生成装置20は、実際の製品の加工形状である加工形状データ70を入力部30を介して取得する(S1:入力工程)。加工プログラム生成装置20は、加工形状データ70に対して分割処理および爪部Tの形状データ73の結合処理を行い、修正形状データ80を生成する(S2:修正形状データ生成工程)。そして修正形状データ80に対応する加工プログラム90の生成を行う(S3:加工プログラム生成工程)。
その後、加工プログラム生成装置20は、加工プログラム90をワイヤ放電加工機10に送信する。
制御装置9は、加工プログラム生成装置20から送信された加工プログラム90を読み込み(S4)、解読して制御信号を生成する。
制御装置9は、生成した制御信号により各軸モータ6および電源装置7を動作させ、ワークWに荒加工を行う(S5)。荒加工工程においては、爪部Tを形成しながら中子Nを分割してワークWから切離するくり抜き加工が繰り返し行われる(S6、
図10)。
ワークWから分割した中子Nを切離するたびに、中子移動装置8を駆動し、分割した中子NをワークWから取り出し、中子Nを中子回収バケットに回収する(S7、
図10)。
荒加工工程の途中の状態にあっては、ワークW側に形成された爪部Tと分割した中子Nが係合するため、中子NをワークWから除去することによりできた空間Cに未回収の中子Nが移動することや落下することがなく、加工溝G1内部にとどまっている状態となる。そして、荒加工工程と中子回収工程を繰り返すことによって、荒加工工程が終了する。
荒加工工程が終了したか否かが判別され(S8)、荒加工工程が終了し、分割した中子Nが全て回収された後、仕上げ加工が実行される(S9)。仕上げ加工工程においては、加工溝G1に仕上げ加工を行い、実際の製品の形状に仕上げる。必要があればワークW側に設けられた爪部Tの除去を行う(S10)。
そして、仕上げ加工が終了か否かの判別を行ない(S11)、加工プログラム90の実行が終了する。
【0030】
(1.3 加工プログラム生成装置20の加工プログラムの生成方法)
図6は、加工プログラム生成装置20による加工プログラムの生成方法を説明するためのフローチャートである。
加工プログラム生成装置20は、入力部30を介して加工形状データ70を取得する(S1)。加工形状データ70は作業者の操作により入力されてもよいし、図示しないCAD装置に接続されて入力されてもよい。
そして重量演算部62において、加工形状データ70から中子Nの形状データを算出し、中子Nの体積を演算するとともに、記憶データ取得部61が取得したワークWの密度データ52に基づいて中子Nの重量を演算する。さらに分割演算部63は重量演算部62で求めた中子Nの重量と、中子Nの重量と分割数の相関関係を示すデータ51から中子Nの分割数を演算する(S201)。
その後、爪部選択部64は、作業者の選択または予め設定した設定情報から爪部Tの形状パターン53、寸法データ54を記憶データ取得部61により記憶部50から選択する。また、爪部Tの付加データ55を取得する(S202:爪部選択工程)。
そして、修正形状データ生成部65は、加工形状データ70から加工溝G1の形状を抽出して加工溝G1の重心71を求め、等分線を演算することで分割線72を算出し、中子Nを分割する(S203)。その後、爪部選択部64から取得した爪部Tの寸法データ54に沿って形状パターン53に対して拡大、縮小および回転等の加工を行い、爪部Tの形状データ73を生成する(S204:爪部形状データ生成工程)。そして、生成された爪部Tの形状データ73を爪部Tの付加データ55の情報に従って加工形状データ70に付加して、修正形状データ80を生成する(S205)。
最後に加工プログラム生成部66は、修正形状データ生成部65により生成された修正形状データ80に基づいて加工プログラム90を生成する(S3)。
【0031】
図3は、従来の中子Nおよび加工溝G2の形状を示す模式図であり、
図4は、本発明のワイヤ放電加工システム100により形成される中子Nおよび加工溝G1の形状を示す模式図である。
上述の方法で生成された加工プログラム90によりワークWを実際に加工した加工形状の一例は
図4の通りである。本発明のワイヤ放電加工システム100においては、荒加工を行う際に、加工溝G1の形成と同時に分割した中子Nを固定するための爪部TをワークWもしくは中子Nに形成する(S6)。複数の爪部Tを設けることで、分割後の中子Nと爪部Tが係合し、分割後の中子Nが一部回収されていたとしても未回収の中子Nが加工溝G1の内側を移動することがない。よって、未回収の中子Nの移動によりワイヤ電極Eの断線や適切に中子Nを回収できない等の問題(
図3)を解消することが可能となる。また、仕上げ加工等にて爪部Tを除去(S10)して実際の製品の形状に加工するため、爪部Tを除去するための追加の工程を必要としない。
【0032】
上述の通り、分割した中子Nの除去が自動的に確実に行なわれるので、所望の加工を作業者の手を必要とせずに行なうことができ、完全な無人化を実現することが可能となる。
なお、上記実施例ではワークWを、荒加工、仕上げ加工の2段階で加工する場合について説明したが、さらに多くの加工段階で又は荒加工のみで加工を終了する加工であってもよく、ワークW側に設けられた爪部Tを除去する作業はどのタイミングで行ってもよい。
また、本実施形態において中子Nの分割数は重量演算部62で求めた中子Nの重量を用いて分割演算部63により演算して求めていたが、中子Nの分割数は作業者により入力部30を介して設定されてもよい。その場合、重量演算部62および分割演算部63は省略することができる。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の応用実施または変形実施が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のワイヤ放電加工機は、加工中に分割した中子の移動を防止することができ、加工効率の飛躍的な向上に貢献する。
【符号の説明】
【0035】
E:ワイヤ電極
G1,G2:加工溝
N:中子
T:爪部
W:ワーク
C:空間
1:加工機本体
2:上側ガイド組体
3:下側ガイド組体
4:加工槽
5:ワークスタンド
6:各軸モータ
7:電源装置
9:制御装置
10:ワイヤ放電加工機
20:加工プログラム生成装置
30:入力部
40:表示部
50:記憶部
60:処理部
61:記憶データ取得部
62:重量演算部
63:分割演算部
64:爪部選択部
65:修正形状データ生成部
66:加工プログラム生成部
70:加工形状データ