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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091342
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】レンズ構造
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20220614BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G02B3/00
G02B7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204130
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(72)【発明者】
【氏名】水谷 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正和
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AA02
2H044AB10
2H044AB19
(57)【要約】
【課題】目隠し材を必要としない、レンズホルダーに溶着されるレンズの構造を提供する。
【解決手段】透光性を有する樹脂部材によって形成され、不透光性を有する樹脂部材によって形成されたレンズホルダーに、レーザー溶着によって接合されるレンズであって、対向する入射面(15)および出射面(19)と、前記レンズホルダー(20)への溶着部としてフランジ部(11)を備え、前記フランジ部(11)は、少なくとも一部の領域に、前記入射面(15)の光入射側へのレンズ突出量よりも、前記光入射側への突出量が大きい段差部(12)を備え、前記段差部の光出射面側の面を前記レンズホルダー(20)との溶着面(16)として、前記レンズホルダーに溶着されて接合される。カバー部材が不要となる。また押圧機構によりレンズ押圧して溶着するとき、レンズは押圧機構で傷つけられることなく、レンズホルダーに溶着される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する樹脂部材によって形成され、不透光性を有する樹脂部材によって形成されたレンズホルダーに、レーザー溶着で接合されるレンズであって、
対向する入射面および出射面と、前記レンズホルダーへの溶着部としてフランジ部を備え、
前記フランジ部は、少なくとも一部の領域に、前記入射面の光入射側へのレンズ突出量よりも、前記光入射側への突出量が大きい段差部を有し、
前記段差部の光出射面側の面を前記レンズホルダーとの溶着面として、前記レンズホルダーに溶着されて接合される、
ことを特徴とするレンズ構造。
【請求項2】
前記フランジ部は、前記入射面の外周の全周に亘って設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ構造。
【請求項3】
前記溶着面となる前記段差部の出射面側の面は、全て同一平面上に設けられている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレンズ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、レンズの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は灯室内に、光源と、該光源からの出射光を所定の配光に形成するレンズとを備える。レンズは、配光を邪魔しないように設けられたフランジ部を溶着部として、該フランジ部でレンズホルダーに溶着されて保持される。
【0003】
レンズをレンズホルダーに溶着する際は、レンズホルダーの光出射側の一領域とフランジ部の光入射側の一部領域で溶着される。これを、図16を用いて詳しく説明する。
【0004】
図16は従来のレンズとレンズホルダーの溶着と構成を説明するための概略構成図である。図16(A)に示すように、透明部材で構成されるレンズ1010には、保持部として、外縁部にフランジ部1011が周設されている。レンズホルダー1020は、不透光部材で構成されており、レンズ1010が取付けされる開口部には、内フランジ部1022が設けられている。
【0005】
レンズ1010とレンズホルダー1020を溶着の際は、まずレンズホルダー1020が内フランジ部1022を上面として配置され、レンズ1010のフランジ部1011が、レンズホルダー1020の内フランジ部1022に位置決めして上載される。周設されているフランジ部1011の一部領域が、溶着押圧機構Pにより、内フランジ部1022側へ押圧され、これによりフランジ部1011の内面1016と内フランジ部1022の外面1026とが密接した状態となる。
【0006】
レーザー光源(レーザー発振器)Mからレーザー光Lが投影されると、投影されたレーザー光Lは、まずフランジ部1011に入射し、レンズ厚方向に透過されて、内フランジ部1022に投影されて外面1026を溶融させ、内面1016との溶着が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-260545号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、レンズホルダーの外面とレンズの内面が溶着されると、透明なレンズを介して、溶着部が正面から見えてしまうため、見栄えが悪い。このため、溶着部を目隠しするための目隠し材が必要となる(図16(B)の目隠し材1090参照)。目隠し材を用いると、灯具の大型化せざるを得なくなる。その分だけ部品点数が増加し、コスト増加、重量増加につながる。
【0009】
本発明は、これに鑑みてなされたものであり、目隠し材が不要で、灯具の小型化に寄与するレンズ構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するために、本開示のレンズは、透光性を有する樹脂部材によって形成され、不透光性を有する樹脂部材によって形成されたレンズホルダーに、レーザー溶着で接合されるレンズであって、対向する入射面および出射面と、前記レンズホルダーへの溶着部としてフランジ部を備え、前記フランジ部は、少なくとも一部の領域に、前記入射面の光入射側へのレンズ突出量よりも、前記光入射側への突出量が大きい段差部を有し、前記段差部の光出射面側の面を前記レンズホルダーとの溶着面として、前記レンズホルダーに溶着されて接合されるように構成した。この態様によれば、レンズは、溶着部をレンズホルダーに目隠しされた状態で溶着され、溶着部を目隠しする目隠し材が不要となる。
【0011】
また、ある態様では、前記フランジ部は、前記入射面の外周の全周に亘って設けられているように構成した。この態様により、溶着の際、溶着押圧機構で均一な力でレンズを押圧しやすく、またズレや偏りなく溶着しやすくなり、溶着に好適な形態となる。
【0012】
また、ある態様では、前記溶着面となる前記段差部の出射面側の面は、全て同一平面上に設けられているように構成した。この態様により、レンズは溶着時に溶着押圧機構で押圧されやすい形態となる。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、目隠し材が不要で、灯具の小型化に寄与するレンズ構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係るレンズとレンズホルダーを備える車両用灯具の概略断面図である。
図2】第1の実施形態に係るレンズとレンズホルダーの斜視図である。両者が溶着された状態を示す。
図3】同レンズとレンズホルダーの分解斜視図である。
図4図2の水平端面図である。
図5】同レンズを示す。図5(A)は同レンズの正面斜視図であり、主として出射面を示す。図5(B)は同レンズの背面斜視図であり、主として入射面を示す。図5(C)は同レンズの側面図である。鉛直断面を点線で併せて示す。
図6】同レンズの溶着を説明するための概略構成図である。
図7図6と比較するための従来例である。
図8】変形例である。
図9図8と比較するための従来例である。
図10】変形例である。
図11図10と比較するための従来例である。
図12】第2の実施形態に係るレンズとレンズホルダーの斜視図である。両者が溶着された状態を示す。
図13】同レンズとレンズホルダーの分解斜視図である。
図14】同レンズの端面図である。図14(A)が図12の水平断面図である。図14(B)が図12の鉛直断面図である。
図15】同レンズを示す。図15(A)は同レンズの正面斜視図であり、主として出射面を示す。図15(B)は同レンズの背面斜視図であり、主として入射面を示す。図15(C)は同レンズの平面図である。図15(D)は同レンズの正面図である。図15(E)は同レンズの背面図である。図15(F)は同レンズの側面図である。鉛直断面を点線で併せて示す。
図16】従来例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
(第1の実施形態)
図1に示す車両用灯具1は、車体の前端部における左右両端部に装着される前照灯であり、第1の実施形態の係るレンズ10および該レンズ10を保持するレンズホルダー20を含んで構成される。
【0017】
図1に示すように、車両用灯具1は、ランプボディ2とランプカバー4を備える。ランプボディ2は前方に開口部を有し、ランプボディ2の開口部に、透光性を有する樹脂やガラスで形成されたランプカバー4か取付けられ、灯室Sを形成している。
【0018】
灯室Sには、支持部材6に取付けられた灯具ユニットLUが配置されている。支持部材6は、エイミングスクリューEにより、ランプボディ2に取付けられる。車両用灯具1の光軸は、各エイミングスクリューEを回転させることにより、水平方向及び鉛直方向に調整される。
【0019】
灯具ユニットLUは、車両前方に所定の配光を照射するように構成されており、発光素子である光源7、リフレクター8、レンズ10、およびレンズホルダー20を備える。
【0020】
光源7及びレンズホルダー20は、支持部材6に固定された金属製のブラケット9に取付けられる。リフレクター8は、光源7から出射した光をレンズ10に導くように構成されており、図示しない固定部材を介して支持部材6に取付けられる。
【0021】
レンズ10は、対向する入射面15と出射面19とを有し、両者ともに自由曲面形状である自由曲面レンズである。本実施形態においては、入射面15および出射面19は、共に外側へ膨らむ凸曲面となっている。以下、レンズ10およびレンズホルダー20の説明の方向に関し、光源7の光が出射していく光出射側を前方、入射してくる光入射側を後方、前方配置された面を前面、後方配置された面を背面と称して説明する。
【0022】
光源7の出射光は、リフレクター13によって前方に反射され、レンズ10及びランプカバー4を通過して前方に出射し、車両前方に所定の配光を形成する。
【0023】
(レンズとレンズホルダー)
図2はレンズ10およびレンズホルダー20の概略構成図である。レンズホルダー20のブラケット9への固定部は省略されている。図3は、図2の分解斜視図である。図4は、図2の水平断面図である。図5はレンズ10を示す。
【0024】
レンズ10は、略半球状に形成された光透過部18と、該光透過部18の外周縁から該方へ張り出されたフランジ部11とが、射出成形により一体的に形成されて成る。光透過部18はレンズ本体であり、フランジ部11は、レンズホルダー20に溶着されて保持されるための保持部である。
【0025】
レンズホルダー20は、略円筒状に形成された保持部28と、該保持部28の前端から内側に向かって張り出した内フランジ部22とが一体に形成されて成る。レンズホルダー20は、例えばカーボンなどの光吸収性のある材料を含み、不透光性であり、レーザー光などによって加熱溶融される樹脂で構成されている。
【0026】
レンズ10は、光を透過させる透明な樹脂材料、例えばアクリル樹脂(ポリメタアクリル酸メチル樹脂)やポリカーボネート樹脂などで構成され、ランプボディ2が溶融されたときに、その熱によって溶融される。
【0027】
フランジ部11は、後方へ突出する段差部12を備えている。段差部12は、フランジ部11の少なくとも一部の領域に形成されておれば良く、周方向に離隔して複数個所に設けられていることが好ましい。本実施形態においては、段差部12はフランジ部11の全領域の全周に亘って、円環状に設けられている。
【0028】
段差部12の後方への突出量は、入射面15の後方への突出量より大きくなるように構成されている。即ち、入射面15の最大突出量を基準とした、段差部12の突出量との差分である離間距離H(図4参照)が0以上となるように構成されている。
【0029】
段差部12の前面は、段差のない平面に構成されおり、この平面部がレンズホルダー20に溶着されるレンズ溶着面16となる。レンズホルダー20は、内フランジ部22の背面側に、レンズ10に溶着されるホルダー溶着面26を有し、両溶着面が溶着されることで、レンズホルダー20とレンズ10は接合される。
【0030】
(溶着方法)
レンズ10とレンズホルダー20との溶着について説明する。図6はレンズ10とレンズホルダー20との形状と溶着を説明するための概念構成図である。
【0031】
まず、レンズホルダー20は、内フランジ部22を底面として配置され、レンズホルダー20の開口部を光透過部18で覆うようにレンズ10が配置され、内フランジ部22にフランジ部11が上載される。レンズ10およびレンズホルダー20には、図示を省略する凹凸部や係合溝などの係合機構が形成されており、この係合機構に位置決めされて、レンズ溶着面16とホルダー溶着面26とが向かい合って接触するように配置される。
【0032】
次に、コンタクトプローブなどの、弾性部材によって付勢された押圧面を備えた溶着押圧機構Pによって、フランジ部11は内フランジ部22に向かって押圧され、レンズ溶着面16とホルダー溶着面26とが密着する。
【0033】
レーザー光源(レーザー発振器)Mから、ホルダー溶着面26に向かってレーザー光Lが、フランジ部11側から投影される。レーザー光Lは、フランジ部11を通過して、ホルダー溶着面26を発熱させて溶融させる。ホルダー溶着面26に接したレンズ溶着面16も、熱伝導によって発熱し、溶融してレンズ溶着面16とホルダー溶着面26が融合する。レンズホルダー20は、レーザー光Lを吸収する材料を含んで構成されているが、レンズ10はこれが含まれておらず、光を透過するため、レンズホルダー20に達する前においてレンズ10でのレーザー光Lの吸収が防止されて、接合面として形成されたホルダー溶着面26におけるレーザー光Lの高い吸収率を確保することができる。なお、レンズホルダー20には、酸化チタンなどの光を拡散する材料が含まれていると、レーザー光Lが拡散され、レーザー光Lによるホルダー溶着面26の部分的な過度の溶融を防止することができ、好ましい。
【0034】
溶着押圧機構Pによりレンズ溶着面16とホルダー溶着面26とが密接した状態で、レーザー光Lが出射して両溶着面を溶融させるため、両者が隙なく溶着される。
【0035】
レンズ10はレンズホルダー20の後方から、光透過部18をレンズホルダー20の開口部から挿通させて前方に露出させて、フランジ部11で内フランジ部22に溶着されている。レンズホルダー20の背面であるホルダー溶着面26と、レンズ10の前方側であるレンズ溶着面16とが溶着されており、両者の溶着部は、内フランジ部22自身により目隠しされるために、見栄えが良い。溶着部を目隠しする目隠し部材が不要であり、省コスト、重量削減となる。さらに、目隠し部材を配置する必要がないため、灯具の小型化に寄与する。省スペースとなり、意匠や設計の自由度も向上する。
【0036】
(作用効果)
上記構成のレンズ10の作用効果を従来例と比較して説明する。図7は比較のための従来例である。
【0037】
まず、従来は、図16に示すように、レンズ1010はレンズホルダー1020の前方に配置されてフランジ部1011で内フランジ部1022に溶着される。この場合、透明なレンズ10を介して溶着部が視認可能となってしまうため、溶着部を隠す目隠し材1090が必要となってしまう。
【0038】
また、図7に示すように、この構成のままに、今度は、レンズ1010をレンズホルダー1020の後方から配置して、レンズホルダー1020の背面に溶着させるようとすると、溶着押圧機構Pでレンズ1010を押圧できないという問題が生じる。
【0039】
即ち、レンズ1010とレンズホルダー1020を隙なく溶着させるために、接合部であるフランジ部1011と内フランジ部1022とを密着させる必要があるが、フランジ部1011側に溶着押圧機構Pを配置しようとしても、溶着押圧機構Pとレンズ1010とが干渉(図7のA部参照)、もしくは溶着押圧機構Pとレンズホルダー1020とレンズホルダー1020が干渉してしまう(図7のB部参照)。
【0040】
溶着押圧機構Pの径W(図6参照)は、必要押圧力から要求される弾性部材の強度(例えば、弾性部材がバネの場合には線材太さやバネ径)を確保するために、ある程度の大きさが必要となる。さらに、溶着押圧機構Pの配置による光透過部1018の傷つけを回避するためにも、光透過部1018からは所定のマージンをとり溶着押圧機構Pを配置する必要がある。一般的に、レンズとレンズホルダーを完全に接合させるために必要な最小溶着幅よりも、必要最小の径Wの方が大きい。
【0041】
図16に示すように、レンズ1010をレンズホルダー1020の前方に配置する場合には、溶着押圧機構Pの一部をフランジ部1011の縁端部から外側にはみ出して配置させることも可能であるが(図16のC部参照)、図7に示すように、レンズ1010をレンズホルダー1020の後方に配置する場合には、保持部1028が立壁となり、溶着押圧機構Pをフランジ部1011の縁端部から外側へはみ出して配置させることができない。干渉を避けるためにフランジ部1011の幅を大きくすると、レンズホルダー1020を大型化せざるを得なくなり、灯具全体の大型化や重量化という問題が生じてくる。
【0042】
本実施形態においては、レンズ10のフランジ部11に、入射面15よりも突出する段差部12が設けられており、段差部12の前面をレンズ溶着面16とし、段差部12の背面を溶着押圧機構Pで内フランジ部22へ押圧することで、溶着押圧機構Pが他部位と干渉することを回避した。この態様によれば、溶着押圧機構Pを段差部12の内端部から内側にはみ出して配置することができ(図6のD部参照)、フランジ部11の幅を大きくすることなく、レンズ10をレンズホルダー20に溶着させることができる。
【0043】
(変形例)
本実施形態は、上記実施形態に限られない。図8にレンズ10の変形例を示す。図8に示すレンズ10Aは、入射面15Aがフラット面で構成される以外は、レンズ10と同等の構成を持つ。同等の構成をもつ要素については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0044】
入射面15Aがフラット面であっても、離間距離H>0として段差部12を設けることで、レンズ10と同様に、レンズ10Aにおいても、溶着押圧機構Pを段差部12に配置して、レンズ溶着面16をホルダー溶着面26に密着させることができる。
【0045】
図9図8に示すレンズ10Aの作用効果を説明するための従来例である。図9に示すレンズ1010Aは、入射面1015Aがフラット面で構成される以外は、図7に示す従来のレンズ1010と同等の構成および配置となっている。入射面1015Aは、フランジ部1011の背面と面一であり、両者は同一の平面として構成される。
【0046】
レンズ1010Aをレンズホルダー1020の後方に配置し、フランジ部1011に溶着押圧機構Pを配置する場合、溶着押圧機構Pはフランジ部1011から内側にはみ出して、入射面1015Aに掛かかることとなる(図9のE部参照)。このため、溶着押圧機構Pの押圧動作により入射面1015Aに傷がつき、配光に悪影響を与えてしまうという問題が生じる。
【0047】
このように、レンズ入射面がフラット面の場合も、本開示の構成を適用して、段差部12を設けることで、この問題を回避することができる。
【0048】
図10にレンズ10の別の変形例を示す。図10に示すレンズ10Bは、入射面15Bが前方に突出する凹曲面に構成される以外は、レンズ10と同等の構成を備える。同等の構成をもつ要素については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0049】
レンズ10Bは、凹曲面である入射面15Bとフランジ部11とを接続する鍔部14を備える。鍔部14により、凹曲面による端部の局所的な肉薄部を作ることなく入射面15Bとフランジ部11が連続して一体的に構成される。前方から視認することができる鍔部14は、光が入射する光学面かつ意匠面であり、入射面15Bの一部として構成される。
【0050】
入射面15Bが凹曲面の場合も、離間距離H>0として段差部12を設けることで、レンズ10と同様に、溶着押圧機構Pを段差部12に配置してレンズ溶着面16をホルダー溶着面26に密着させることができる。鍔部14に溶着押圧機構Pが接触せず、溶着押圧機構Pが鍔部14を押圧して傷つけることがない。溶着押圧機構Pによる、光学的、意匠的な悪影響が回避される。
【0051】
図11図10に示すレンズ10Bの作用効果を説明するための従来例である。図11に示すレンズ1010Bは、入射面1015Bが凹曲面に構成される以外は、従来のレンズ1010と同等の構成を持つ。
【0052】
レンズ1010Bも、レンズ10Bと同様に、フランジ部1011と入射面1015を接続する鍔部1014を有する。鍔部1014の背面はフランジ部1011の背面と面一であり、両者は同一平面として構成される。
【0053】
レンズ1010Bをレンズホルダー1020の後方に配置して、フランジ部1011に溶着押圧機構Pを配置する必要があるが、溶着押圧機構Pはフランジ部1011から内側にはみ出して、鍔部1014に掛かかることとなる(図11のF部参照)。入射面および意匠面である鍔部1014に傷がつき、配光に悪影響を与えてしまうという問題が生じる。
【0054】
レンズ入射面が凹曲面の場合も、本開示の構成を適用して、段差部12を設けることで、この問題を回避することができる。
【0055】
(第2実施形態)
図12は第2の実施形態にかかるレンズ110およびレンズホルダー120の概略構成図である。ブラケット9への固定部は省略されている。図13は、図12の分解斜視図である。図14図12の端面図である。図14(A)が水平端面図、図14(B)が鉛直端面図である。図15はレンズ10を示す。
【0056】
レンズ110は、多角形レンズであり、正面視して上下幅よりも左右幅の長い扁平八角形となっている。
【0057】
レンズ110はレンズ本体である光透過部118と、該光透過部18の外周縁から外側へ張り出されたフランジ部111とが一体化して成り、両者の正面視した外形は、扁平八角形となっている。
【0058】
レンズ110を保持するレンズホルダー120は、八角形筒であり、開口部に内側に張り出す内フランジ部122を備える。内フランジ部122はレンズ110の溶着部であり、その幅は一定であり、正面視した外形と内形は、同等の扁平八角形となっている。
【0059】
本開示の構成は、円形レンズだけでなく、レンズ110のような多角形レンズや、楕円形レンズ、外形が自由形状のレンズにも適用できる。
【0060】
フランジ部111は、後方に突出する段差部112を備える。段差部112は周方向の全周でなく、一部領域にのみ形成されている。即ち、段差部112は、レンズ110の外形の八角形の縁部に設けられているが、下方斜辺には設けられておらず、同箇所は、切り欠かれた切り欠き部113となっている。
【0061】
段差部112は、段差部112a~112fより構成される。図15(B)に示すように、段差部112a~112fは入射面119の八角形の外縁から突出して設けられており、上方の5辺にそれぞれ、段差部112a,112b,112c,112d,112eが、下辺に段差部112fが設けられている(以下、特定しない場合には、段差部112a~112fをまとめて段差部112と称する)。段差部112の前面はレンズ溶着面116であり、全て同一の鉛直平面で構成されるが、後方への突出量、幅、傾斜角度は、全領域で一定ではなく、段差部112a~112fで異なる。
【0062】
図15(F)に示すように、下方に設けられた段差部112fよりも上方に設けられた段差部112cの方が、後方への突出量が多い。また、図15(C)に示すように、溶着押圧機構Pに押圧される段差部112d,112bの背面は、鉛直面ではなく、所定の角度で傾斜している。さらに、図15(E)に示すように、上方斜辺に設けられた段差部112d,112bの幅は、側方に向かう程に細くなる構成となっている。
【0063】
溶着押圧機構Pの押圧面が安定して面押しすることや、その押圧力を均一とすることから、レンズ10のように、段差部は、入射面の外周の全周に亘って設けられ、かつ被押圧面である背面は全て同一平面上に設けられていることが好ましい。さらに、圧着方向に垂直な同一平面、かつ一定幅であることが好ましい。本開示の構成は、これに限られず、レンズ110のように、段差部の最小突出量が入射面の最大突出量よりも多く、その離間距離Hが0以上であれば、車両用灯具の形状や空間配置に合わせて、突出量や幅や傾斜角度が領域によって変化するように構成しても良い。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態や変形例について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
10 :レンズ
11 :フランジ部
12 :段差部
15 :入射面
16 :レンズ溶着面
19 :出射面
20 :レンズホルダー
22 :内フランジ部
26 :ホルダー溶着面
H :離間距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16