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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091346
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】電動機及びそれを備えた電気機器
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/16 20060101AFI20220614BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
H02K5/16 A
F16C19/06
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204135
(22)【出願日】2020-12-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】514036900
【氏名又は名称】WOLONGモーター制御技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】前谷 達男
(72)【発明者】
【氏名】礒村 宣典
(72)【発明者】
【氏名】フ フェン
【テーマコード(参考)】
3J701
5H605
【Fターム(参考)】
3J701AA03
3J701BA77
3J701FA11
3J701GA24
5H605AA12
5H605BB05
5H605CC04
5H605EB10
5H605EB30
(57)【要約】
【課題】本開示は、電動機における軸受の電食の発生を抑制することを図る。
【解決手段】固定子巻線を巻装した固定子鉄心を含む固定子と、前記固定子に対向して周方向に複数のマグネットを保持する、又は、中央からスポーク状に複数のマグネットを保持する回転体と、前記回転体と、前記回転体の中央を貫通するように前記回転体を締結したシャフトとを含む回転子と、前記回転体を支持する2つの軸受と、前記2つの軸受の一方の軸受を固定する第1の金属ブラケットと、前記2つの軸受の他方の前記軸受を固定する第2の金属ブラケットとを備え、前記第1の金属ブラケットと前記第2の金属ブラケットとの間に容量性部材を設ける電動機。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子巻線を巻装した固定子鉄心を含む固定子と、
前記固定子に対向して周方向に複数のマグネットを保持する、又は、中央からスポーク状に複数のマグネットを保持する回転体と、
前記回転体と、前記回転体の中央を貫通するように前記回転体を締結したシャフトとを含む回転子と、
前記回転体を支持する2つの軸受と、
前記2つの軸受の一方の軸受を固定する第1の金属ブラケットと、前記2つの軸受の他方の前記軸受を固定する第2の金属ブラケットとを備え、
前記第1の金属ブラケットと前記第2の金属ブラケットとの間に容量性部材を設ける電動機。
【請求項2】
前記容量性部材の静電容量Csb1sb2と、前記固定子巻線と前記第1の金属ブラケットとの間の静電容量Csb1と、前記固定子巻線と前記第2の金属ブラケットとの間の静電容量Csb2を含む固定子側の合成静電容量の値を大きくして、前記固定子側の合成静電容量と前記駆動回路のゼロ基準電位と前記シャフトとの間の静電容量の比と、前記固定子巻線と前記固定子鉄心との間の静電容量Cと、前記固定子鉄心と前記マグネットとの間の静電容量Cと、前記固定子巻線と前記マグネットとの間の静電容量Csmと、前記マグネットの静電容量Cを含む回転子側の合成静電容量と前記駆動回路のゼロ基準電位と前記シャフト間との間の静電容量Cnsの比を近似又は一致させる請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記第1の金属ブラケット及び前記第2の金属ブラケットは、前記固定子の固定子鉄心と、絶縁樹脂又は空間により絶縁されている請求項1又は2に記載の電動機。
【請求項4】
前記容量性部材が、外部に設けられた請求項1乃至3のいずれかに記載の電動機。
【請求項5】
前記容量性部材が、内部に設けられた請求項1乃至3のいずれかに記載の電動機。
【請求項6】
前記容量性部材の静電容量Csb1sb2によって、前記固定子巻線と前記第1の金属ブラケットとの間の静電容量Csb1と、前記固定子巻線と前記第2の金属ブラケットとの間の静電容量Csb2と、前記静電容量Csb1sb2との合成静電容量を大きくして、前記軸受の内輪と前記軸受の外輪との間に発生する電位差を小さくする請求項1乃至5に記載の電動機。
【請求項7】
前記駆動回路を備えたプリント基板が、内部に設けられた請求項1乃至6のいずれかに記載の電動機。
【請求項8】
前記第1の金属ブラケットの外径は、前記第2の金属ブラケットの外径と同じか、又は大きい請求項1乃至7のいずれかに記載の電動機。
【請求項9】
さらに前記固定子巻線に電圧を加える駆動回路を備えた請求項1乃至8のいずれかに記載の電動機。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずかに記載の電動機と前記電動機により駆動される送風ファンとを搭載した電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動機及びその電動機を備えた電気機器に関し、軸受の電食の発生を抑制するように改良された電動機及びその電動機を備えた電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラシレス電動機は、パルス幅変調(Pulse Width Modulation)方式(以下、適宜、PWM方式という)のインバータにより駆動する方式を採用するケースが多くなってきている。こうしたPWM方式のインバータ駆動の場合、固定子巻線の中性点電位がパワー素子のスイッチングによって変動する。この中性点電位の変動が、電動機の静電容量分布により、軸受の外輪側と軸受の内輪側に分圧される。
【0003】
固定子巻線と軸受の外輪側の固定子側の静電容量分布と固定子巻線と軸受の内輪側の静電容量の回転子側の静電容量分布とが異なるため、軸受の外輪と軸受の内輪との間に電位差(以下、軸電圧という)が発生する。軸電圧は、スイッチングによる高周波成分を含んでおり、この軸電圧が軸受内部のグリースの油膜の絶縁破壊電圧に達すると、軸受内部において、グリースの油膜の絶縁破壊による微小電流が流れ、軸受内部の金属表面に荒れを生じて、電食が発生することが知られている(例えば、非特許文献1及び特許文献1-4参照)。
又、電食が進行した場合、軸受の内輪、軸受の外輪又は軸受のボールに波状摩耗現象が発生して異常音に至ることがあり、電動機における不具合の主要因の1つとなっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「インバータ駆動ブラシレスDCモータの非接地コモンモード等価回路に基づく軸電圧抑制」電気学会論文誌D,2012年,Vol.132,No6,pp.666-672
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-158152号公報
【特許文献2】特許第4935934号公報
【特許文献3】特開2007-159302号公報
【特許文献4】WO2015/001782
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、電動機及びその電動機を備えた電気機器における軸受の電食の発生を抑制することを図る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る電動機は、
固定子巻線を巻装した固定子鉄心を含む固定子と、
前記固定子に対向して周方向に複数のマグネットを保持する、又は、中央からスポーク状に複数のマグネットを保持する回転体と、
前記回転体と、前記回転体の中央を貫通するように前記回転体を締結したシャフトとを含む回転子と、
前記回転体を支持する2つの軸受と、
前記2つの軸受の一方の軸受を固定する第1の金属ブラケットと、前記2つの軸受の他方の前記軸受を固定する第2の金属ブラケットとを備え、
前記第1の金属ブラケットと前記第2の金属ブラケットとの間に容量性部材を設ける。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、電動機及びその電動機を備えた電気機器における軸受の電食の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一態様である実施形態1における電動機の断面の概略構成図である。
図2】実施形態1の電動機の静電容量分布モデルの図である。
図3】実施形態1の電動機の金属ブラケット間の静電容量と、軸電圧と、分圧比との関係を示すグラフである。
図4】実施形態1の電動機を用いた電気機器の一態様の斜視図である。
図5】実施形態1の電動機を用いた別の電気機器の一態様の斜視図である。
図6】実施形態1の電動機を用いた別の電気機器の一態様の斜視図である。
図7】本開示の別の一態様である実施形態1における電動機の断面の概略構成図である。
図8】従来の電動機の断面の概略構成図である。
図9図8の電動機の静電容量分布モデルの図である。
図10】従来の別の電動機の断面の概略構成図である。
図11図10の電動機の静電容量分布モデルの図である。
図12】従来の別の電動機の断面の概略構成図である。
図13】従来の別の電動機の静電容量分布モデルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
本開示の実施形態を説明する前に、本開示の基礎となった知見を説明する。
従来、以下に示す文献に、軸受の電食を抑制するために、軸電圧を低減することで、軸受内部のグリースの油膜を絶縁破壊電圧以下にして、軸受のグリースの油膜の絶縁破壊を起こさない対策が、考案されている。又、軸電圧を低減することで軸受内部のグリースの油膜の絶縁破壊による放電エネルギーを小さくして、軸受内部の金属表面の損傷を小さくする対策が、以下の文献に考案されている。
【0011】

以下、上記文献について、詳細に説明する。
図8は、特許文献1のインナーロータ型でブラシレスラジアル型の電動機50の断面の概略構成図である。特許文献1と非特許文献1とは、同じ構成である。
図8に示すように、電動機50は、電動機50の両端に配置された第1の金属ブラケット1及び第2の金属ブラケット2と、一対の軸受(第1及び第2の軸受)5a、5b、シャフト4、回転子10と、固定子18とを有する。
回転体9は、回転子鉄心8と永久磁石であるマグネット11とを有する。回転子10は、回転体9とシャフト4とを有する。固定子18は、固定子鉄心6と固定子巻線3とを有する。
【0012】
図8に示すように、第1の軸受5aの外輪は第1金属ブラケット1に接続され、第2の軸受5bの外輪は第2の金属ブラケット2に接続されている。第1の軸受5aの内輪と第2の軸受5bの内輪とは、シャフト4によって接続され、電気的に導通している。導通部材13で、第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2とを電気的に短絡している。
【0013】
特許文献1は、導通部材13で、第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2とを電気的に短絡させ、第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2との静電容量を一致させている。さらに、特許文献1は、回転体9に誘電体層20を設け、回転体9の静電容量を変化させて軸電圧を低減する方法である。
【0014】
図9は、特許文献1の電動機50の静電容量分布のモデル図である。特許文献1の電動機50においては、固定子鉄心6を基準に静電容量の分布を考察するに当たり、電動機50の電圧分布は、インピーダンスにおいて逆数となる容量性リアクタンスの影響が支配的であるため、非特許文献1の図5に記載されているように、静電容量分布モデルにて説明を行う。
固定子巻線3と第1の金属ブラケット1との間の静電容量Csb1は、第1の軸受の電荷が貯まり、第1の軸電圧Vsh1が上がることを模式的に表現している。第1の軸電圧Vsh1が上がり、軸受内部のグリース油膜の絶縁破壊電圧に達すると、絶縁破壊が発生する。固定子巻線3と第2の金属ブラケット2との間の静電容量Csb2も静電容量Csb1同様、第2の軸受の電荷が貯まり、第2の軸電圧Vsh2が上がることを模式的に表現している。第2の軸電圧Vsh2が上がると、絶縁破壊が発生する。
【0015】
第1の軸受5aの外輪側と駆動回路のゼロ電位基準Nとに生じる電圧は、駆動回路のゼロ基準電位Nと固定子巻線3の中性点電位Sとの間に発生する電圧Vcomに対して、固定子側の静電容量分布により分圧された値となる。
又、第2の軸受5bの外輪側と駆動回路のゼロ電位基準N(12)とに生じる電圧は、駆動回路のゼロ基準電位N(12)と固定子巻線3の中性点電位Sとの間に発生する電圧Vcomに対して、固定子側の静電容量分布により分圧された値となる。
第1及び第2の軸受5a、5bの内輪側(図9の4の箇所)と駆動回路のゼロ電位基準Nとに生じる電圧は、駆動回路のゼロ電位基準Nと固定子巻線3の中性点電位Sとの間に発生する電圧Vcomに対して、回転子側の静電容量分布により分圧された値となる。
【0016】
本発明者らは、図9の静電容量分布を考察することで、以下の知見を見出した。第1及び第2の軸電圧(Vsh1、Vsh2)は、第1及び第2の軸受5a、5bの外輪側に発生する電圧と内輪側に発生する電圧の差となる。従って、第1及び第2の軸電圧(Vsh1、Vsh2)を低減するには、固定子側の静電容量の分布と回転子側の静電容量の分布を一致もしくは近似させる必要があることを見出した。
【0017】
第1及び第2の軸受(5a、5b)の外輪側と駆動回路のゼロ電位基準Nとに生じる電圧は、駆動回路のゼロ基準電位Nと第1の金属ブラケット1間の静電容量Cnb1と、固定子巻線3と第1の金属ブラケット1との間の静電容量Csb1及び固定子巻線3と第2の金属ブラケット2との間の静電容量Csb2の合成静電容量A2との分圧比A2(Cnb1/合成静電容量A2)となる。
又、第1及び第2の軸受(5a、5b)の内輪側と駆動回路のゼロ電位基準Nとに生じる電圧は、駆動回路のゼロ基準電位Nとシャフト4間の静電容量Cnsと、固定子巻線3と固定子鉄心6との間の静電容量C、固定子鉄心6とマグネット11との間の静電容量C、固定子巻線3とマグネット11との間の静電容量Csm及びマグネット11の静電容量Cの合成静電容量B2との分圧比B2(Cns/合成静電容量B2)となる。
【0018】
本発明者らは、鋭意考察した結果、第1及び第2の軸電圧(Vsh1、Vsh2)を低減するには、この分圧比A2(Cnb1/合成静電容量A2)と分圧比B2(Cns/合成静電容量B2)とを一致もしくは近似させることを見出した。この分圧比A2と分圧比B2とを一致もしくは近似させることを、以下、単に整合と呼ぶ。
特許文献1では、静電容量Cnb1、Csb2、Cnsは、合成静電容量B2より小さいため、静電容量を整合させるために、合成静電容量B2の静電容量を小さくする方法を取っていることが分かった。
【0019】
特許文献1では、回転子10側の静電容量分布を回転体9に誘電体層20を設け、静電容量Cを形成している。この誘電体の静電容量Cは、静電容量分布モデルにおいて、マグネットの静電容量Cに、直列に静電容量Cが挿入されたことになり、合成静電容量B2を小さくすることで、固定子側の静電容量分布と整合をとり、第1及び第2の軸電圧(Vsh1、Vsh2)を低減する方法であることが分かった。
【0020】
誘電体層20の静電容量Cは、誘電体層20の厚み方向の距離(図8における誘電体層20の短い方向の距離)に反比例し、長さ(図8における誘電体層20の長手方向の距離)に比例する。従って、静電容量Cを下げるには、誘電体層20の幅を広げる必要がある。
【0021】
しかしながら、特許文献1では、図8に示す様に、誘電体層20には回転トルクとして応力がかかるため、その強度の確保のために誘電体層20の幅の制約を受ける場合が生じる。その場合、必要とされる静電容量が得られず、軸電圧が下がらないということが考察された。又、特許文献1では、径方向で中央からスポーク状に複数の永久磁石(マグネット)を保持する回転体9を用いた電動機50においては、誘電体層20の幅を取ることによって永久磁石(マグネット)11の長さを短くする必要が生じ、電動機50の性能が悪化するという課題があった。
【0022】
次に、特許文献2について、説明する。
図10は、特許文献2の電動機50の断面の概略構成図である。図11、は図10に示す電動機50の静電容量分布モデルの図である。
図10に示す様に、第1の金属ブラケット1及び第2の金属ブラケット2が、接続部材13にて短絡している。固定子鉄心6と、第1の金属ブラケット1及び第2の金属ブラケット2のいずれか一方との間にインピーダンス調整部材14を挿入した構成である。
【0023】
インピーダンス調整部材14として、静電容量を持ったキャパシタを用いた場合、静電容量C、Csb1及びCsb2の合成静電容量に対して、インピーダンス調整用キャパシタンスであるインピーダンス調整部材14は、並列に接続される。そして、静電容量C、Csb1及びCsb2の合成静電容量を大きくすることで、回転子側の静電容量と整合性を取っている。そのことにより、特許文献2では、第1及び第2の軸電圧(Vsh1、Vsh2)を低減することができる。
【0024】
しかしながら、固定子鉄心6にインピーダンス調整部材14を接続する工法の確立が難しい。又、上記接続後にモールドされるため、生産工程過程で、上記の接続箇所が外れるという課題が考察された。
次に、特許文献3について、説明する。
図12は、特許文献3の電動機50の断面の概略構成図である。
特許文献3では、固定子鉄心6と第1の金属ブラケット1及び第2の金属ブラケット2のいずれか一方とを短絡部材25で短絡させている。特許文献3の図12では、固定子鉄心6と第1の金属ブラケット1とを短絡させて、第1の軸電圧の低減を図っている。
【0025】
特許文献3の構成は、特許文献2の図10に、同様の構成が記載されている。そして、特許文献3の構成は、特許文献2の比較例3で、軸電圧に波形崩れが発生している問題があることが開示されている。
このことは、固定子鉄心6と短絡された第1の金属ブラケット1との静電容量は大きくなるが、固定子鉄心6と短絡されていない第2の金属ブラケット2との間の静電容量は変わらないためと推察される。よって、第2の軸受の軸電圧は下がらず、電食抑制効果は少ないことが考察された。
【0026】
最後に、特許文献4について、説明する。
図13に示す電動機50の静電容量分布モデルの図である。
図13に示す様に、第1金属ブラケット1及び第2の金属ブラケット2を電気的に絶縁し、固定子鉄心6と第1の金属ブラケット1との間の静電容量Csb1と、固定子鉄心6と第2の金属ブラケット2との間の静電容量Csb2とを近似あるいは一致するように設定し、軸電圧を低減する方法が開示されている。
【0027】
しかしながら、以上のように、従来の実施形態においては、静電容量Csb1と静電容量Csb2との比の調整に当たって、部材の寸法調整および部材間の距離等の調整を必要とするため電動機の外形寸法・形状が大きくなるというという懸念が考察された。
又、回転子側の静電容量分布に対して、静電容量の整合調整機能が不十分であり、第1及び第2の軸電圧が下がりきることができない。そのため、第1及び第2の軸受のグリースの絶縁破壊現象である第1及び第2の軸電圧の波形崩れが発生し、長期の運転において電食寿命に課題があることが考察された。
【0028】
本発明者らは、上記した課題を見出し、その課題解決について、鋭意研究を図り、以下の開示に至った。
図1は、本開示の電動機50の断面の概略構成図である。
図1に示すように、電動機50の両端に配置された第1の金属ブラケット1及び第2の金属ブラケット2と、第1及び第2の軸受5a、5b、シャフト4、回転子10と、固定子18とを有する。回転体9は、回転子鉄心8と永久磁石であるマグネット11とを有する。回転子10は、回転体9とシャフト4とを有する。固定子18は、固定子鉄心6と固定子巻線3とを有する。第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2との間に、静電容量Csb1sb2の容量性部材15を配置している。
【0029】
図2は、本開示の電動機50の静電容量分布モデルを示した図である。
第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2との間に、静電容量Csb1sb2の容量性部材15を挿入することで、固定子巻線3と第2の金属ブラケット2との間の静電容量Csb2と容量性部材15の静電容量Csb1sb2との直列回路が形成される。さらに、この直列回路と、固定子巻線3と第1金属ブラケット1との間の静電容量Csb1との並列回路が形成される。この容量性部材15の静電容量Csb1sb2を調整することで、合成静電容量A1を調整することができる。ここで、合成静電容量A1は、静電容量Csb1と、静電容量Csb2と、静電容量Csb1sb2との合成静電容量のことである。合成静電容量B1は、固定子巻線3と固定子鉄心間6との間の静電容量Cと、固定子鉄心6とマグネット11との間の静電容量Cと、固定子巻線3とマグネット11との間の静電容量Csmと、マグネット11の静電容量Cとの合成静電容量のことである。
具体的には、静電容量Csb1sb2を大きくすることで、合成静電容量A1を大きくし、分圧比A1(Cnb1/合成静電容量A1)と分圧比B1(Cns/合成静電容量B1)とを一致もしくは近似させることを見出した。その結果、固定子側の静電容量分布と、固定子側の容量電容量分布との整合をとり、軸電圧を低減する方法に想到した。
以上の考察に基づき、本発明者らは、以下に説明する本開示の態様に想到した。
【0030】
本開示の一態様に係る電動機は、
固定子巻線を巻装した固定子鉄心を含む固定子と、
前記固定子に対向して周方向に複数のマグネットを保持する、又は、中央からスポーク状に複数のマグネットを保持する回転体と、
前記回転体と、前記回転体の中央を貫通するように前記回転体を締結したシャフトとを含む回転子と、
前記回転体を支持する2つの軸受と、
前記2つの軸受の一方の軸受を固定する第1の金属ブラケットと、前記2つの軸受の他方の前記軸受を固定する第2の金属ブラケットとを備え、
前記第1の金属ブラケットと前記第2の金属ブラケットとの間に容量性部材を設ける。
上記態様によれば、静電容量Csb1sb2を大きくすることで、合成静電容量A1を大きくし、分圧比A1(Cnb1/合成静電容量A1)と分圧比B1(Cns/合成静電容量B1)とを近づけることにより、電動機における軸受の電食の発生を抑制することができる。
【0031】
以下、本開示のより具体的な実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似する構成要素については、同じ参照符号を付している。
【0032】
(実施形態1)
以下、本開示の一態様を示す電動機について図面を用いて説明する。
【0033】
図1は、本開示の一態様を示すインナーロータ型でブラシレスラジアル型の電動機50の断面の概略構成図である。
図1に示すように、電動機50の両端には、導電性を有する第1の金属ブラケット1と導電性を有する第2の金属ブラケット2とが配置されている。第1の金属ブラケット1の外径は、第2の金属ブラケット2の外径と同じか、又は大きい。そのことにより、安定に軸受が支承されシャフト4を回転できる。
第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2の中央部には、第1の金属ブラケット1に固定された第1の軸受5aと、第2の金属ブラケット2に固定された第2の軸受5bが配置されている。シャフト4は、第1の軸受5aと第2の軸受5bとにより、支持され回転する。シャフト4は、第1の金属ブラケット1から突出している。
固定子18は、回転磁界を発生させ、回転磁界により回転子10を回転させるものである。固定子18の内側には、固定子18と空隙を介して回転子10が挿入されている。
固定子18は、固定子鉄心6と巻線である固定子巻線3とを有する。固定子鉄心6には、固定子鉄心6を絶縁するための樹脂7が介在して、固定子巻線3が巻装されている。そして、このような固定子鉄心6は、第1及び第2の金属ブラケット等の他の固定部材ともに樹脂でモールド材にて成型されている。実施形態1では、これらの部材をこのようにモールド一体成型することにより、外形が概略円筒形状をなす固定子が構成されている。モールド一体成型したものは、電動機50の筐体としての機能としても働く。又、第1の金属ブラケット1及び第2の金属ブラケット2は、固定子鉄心6と、空間により絶縁されていてもよい。
回転子10は、電動機50において回転するもので、シャフト4と回転体9とを有する。回転体9は、回転子鉄心8とフェライト磁石である永久磁石のマグネット11とを有する。回転子10は、回転子鉄心8の外周に複数のマグネット11を保持し、回転子鉄心8の中央を貫通するようにシャフト4を有する。又、回転子10は、固定子18に対向して中央からスポーク状に複数のマグネット11を保持していてもよい。
【0034】
シャフト4には、シャフト4を支持する第1及び第2の軸受5a、5bが取り付けられている。第1及び第2の軸受5a、5bは、複数の鉄ボールを有した円筒形状のベアリングであり、第1及び第2の軸受5a、5bの内輪側が、シャフト4に固定されている。
【0035】
そして、これらの軸受5a、5bは、それぞれ導電性を有した第1及び第2の金属ブラケット1、2により、第1及び第2の軸受5a、5bの外輪側が固定されている。図1では、第1の金属ブラケット1に第1の軸受5aが固定され、第2の金属ブラケット2に第2の軸受5bが固定され、シャフト4は2つの軸受に支持され、回転子10が回転自在に回転する。
【0036】
さらに、この電動機50の内部に、回転磁界を発生させる駆動回路を実装したプリント基板12が、回転子10と第1の金属ブラケット1との間に配置されている。例えば、駆動回路には、固定子巻線3に電圧を印加するためにインバータ回路等が実装されている。
【0037】
以上のように構成された電動機50に対して、駆動回路より電圧を固定子巻線3に印加することにより、固定子巻線3に電流が流れ、固定子鉄心6から磁界が発生する。そして、固定子鉄心6からの回転磁界とマグネット11から磁界とにより、それらの磁界の極性に応じて吸引力および反発力が生じ、これらの力によってシャフト4を中心に回転子10が回転する。
【0038】
そして、図1に示すように、短絡線である導通部材13の一方の端部が、第2の金属ブラケット2と電気的に接続され、導通部材13の他方の端部が、容量性部材15と電気的に接続されている。短絡線である導通部材13の一方の端部が、容量性部材15と電気的に接続され、導通部材13の他方の端部が、第1の金属ブラケット1と電気的に接続されている。例えば、導通部材13は、第1の金属ブラケット1側の空間に配置されている。例えば、導通部材13は、固定子鉄心6と第1の金属ブラケット1との間の空間に配置されている。
【0039】
容量性部材15は、例えば、セラミックコンデンサである。又、容量性部材15は、例えば、PBT等の樹脂の両側に電極を設けた成型品である。容量性部材15は、電荷を蓄えるものであればよく、特に形態は限定されない。容量性部材15は、電動機50の内部であればどこに配置されていてもよく、例えば、電動機50の筐体の内壁に配置されている。
この構成により、電動機50の内部において、第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2との間に位置し、第1の金属ブラケット1及び第2の金属ブラケット2と容量性部材15とを電気的に接続することができる。
【0040】
図2は、実施形態1の静電容量分布モデル図である。第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2との間に挿入された容量性部材15の静電容量をCsb1sb2とする。静電容量Csb1sb2は、固定子巻線3と第2の金属ブラケット2との間の静電容量Csb2と直列回路を構成する。さらに、この直列回路は、固定子巻線3と第1金属ブラケット1との間の静電容量Csb1と並列回路を構成し、直並列合成静電容量A1(以下、合成静電容量A1と言う)となる。又、固定子巻線3と固定子鉄心間6との間の静電容量Cと、固定子鉄心6とマグネット11との間の静電容量Cと、固定子巻線3とマグネット11間の静電容量Csmと、マグネット11の静電容量Cとは、直列及び/又は並列に回路構成され、直並列合成静電容量B1(以下、合成静電容量B1と言う)となる。
【0041】
固定子18側の静電容量分布と回転子10側の静電容量の分布を近似させるためには、軸受5a、5bの内輪及び外輪を基準とし、駆動回路のゼロ基準電位Nと第1の金属ブラケット1との間の静電容量Cnb1と合成静電容量A1の比(Cnb1/合成静電容量A1)と、駆動回路のゼロ基準電位Nとシャフト4との間の静電容量Cnsと合成静電容量B1の比(Cns/合成容量B1)とを近似させる。
【0042】
図3は、容量性部材15の静電容量Csb1sb2の値を変えて、第1の軸受5aの軸電圧Vsh1(以下、第1の軸電圧Vsh1と言う)及び第2の軸受5bの第2の軸電圧Vsh2(以下、第2の軸電圧Vsh1と言う)を測定した実験結果である。
実験において、マグネット11の静電容量Cが21pF、回転子10の直径が51mm、第1及び第2の軸受5a、5bには、ミネベア製608を使用した。第1及び第2の軸受5a、5bのグリースは、ちょう度が239のものを使用した。固定子巻線3の電源電圧を391Vとし、回転数1000r/minにて、回転子10を回転させた。
【0043】
図3において、横軸は、容量性部材15の静電容量Csb1sb2の値、左側の縦軸は、第1の軸電圧Vsh1及び第2の軸電圧Vsh2である。図3の右側の縦軸は、(合成静電容量A1/Cnb1)と(合成静電容量B1/Cns)との比(分圧比)を計算し、その分圧比の値である。
第1の軸電圧Vsh1及び第2の軸電圧Vsh2の測定は、第1及び第2の軸受5a、5bの外輪を基準に内輪の電圧を測定し、外輪に対し内輪の電圧が高い場合をプラス、外輪に対し内輪の電圧が低い場合をマイナスとした。
【0044】
図3から明らかなように、静電容量Csb1sb2の値が小さい場合は、第1の軸電圧Vsh1はブラスの大きな電圧となり、第2の軸電圧Vsh2はマイナスの大きな電圧となる。静電容量Csb1sb2の値を大きくしていくと、第1の軸電圧Vsh1は徐々に小さな値となり、第1の軸電圧Vsh1は、徐々に第2の軸電圧Vsh2に近づいて行くことが分かる。又、静電容量Csb1sb2の値を大きくしていくと、第2の軸電圧Vsh2も徐々にマイナスの小さな値となることが分かる。
第1の軸電圧Vsh1及び第2の軸電圧Vsh2は、第1の軸受5a及び第2の軸受5bの外輪と内輪との電圧の電圧差であり、これらの電位差は徐々に低減されている。
図3に示す様に、静電容量Csb1sb2を調整することで、第1の軸電圧Vsh1及び第2の軸電圧Vsh2は、一般的な軸受のグリースの絶縁破壊の目安とされる5V以下まで減少させることができることが分かった。又、第1及び第2の軸受5a、5bのグリース油膜の絶縁破壊の現象である軸電圧波形の波形崩れが、生じないことも確認した。
【0045】
図3において、(合成静電容量B1/Cns)は0.48である。図3に示す様に、(合成静電容量A1/Cnb1)と(合成静電容量B1/Cns)との比が0.7から1.1の範囲で、第1の軸電圧Vsh1及び第2の軸電圧Vsh2の絶対値が5V以下に低減することが可能であることが分かった。
つまり、(合成静電容量A1/Cnb1)と(合成静電容量B1/Cns)とを近似、又は一致させることで、第1の軸電圧Vsh1及び第2の軸電圧Vsh2を低減させることが可能である。
【0046】
上記のメカニズムについて、図2を用いて詳細に説明する。
固定子巻線3と第2の金属ブラケット2との間の静電容量Csb2と容量性部材15の静電容量Csb1sb2とは直列回路であるため、第2の金属ブラケット2の第2の電圧Vsh2は、固定子巻線3と第1の金属ブラケット1との間の第1の軸電圧Vsh1に対し、容量性部材15の静電容量Csb1sb2の両端に分圧された電圧が加わる。
容量性部材15の静電容量Csb1sb2が大きくなると、その両端に分圧される電圧が小さくなり、第2の軸受5bの外輪に生じる第2の軸電圧Vsh2は、第1の軸電圧Vsh1の値に近づくため、第2の軸電圧Vsh2も低減することができる。
つまり、固定子巻線3と第1の金属ブラケット1との間の静電容量Csb1、固定子巻線3と第2の金属ブラケット2との間の静電容量Csb2、容量性部材15の静電容量Csb1sb2との合成静電容量A1を大きくし、固定子18側の合成性静電容量分布と回転子10側の合成性静電容量分布との整合性を取ることで、第1の軸電圧Vsh1及び第2の軸電圧Vsh2を低減することができる。
【0047】
このように、実施形態1において、第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット間2に容量性部材15を挿入し、固定子18側の静電容量分布及び回転子10側の静電容量分布の整合性を取ることで、第1の軸電圧及び第2の軸電圧を低減し電食を抑制する効果が得られる。
【0048】
以上説明したように、固定子巻線3と第1の金属ブラケット1との間の静電容量、固定子巻線3と第2の金属ブラケット2との間の静電容量、容量性部材15の静電容量を調整し、固定子側の静電容量分布と回転子側の静電容量分布と整合性を取ることで、第1の軸受5aの軸電圧を低減することができる。さらに固定子巻線3と第2の金属ブラケット2との間の静電容量と容量性部材15は直列回路であるため、第2の金属ブラケット2の電圧は、固定子巻線3と第1の金属ブラケット1との間の電圧に対し、容量性部材15の静電容量成分の両端に分圧された電圧が加わる。容量性部材15の静電容量が大きくなると、その両端に分圧される電圧が小さくなり、第2の軸受5bの外輪に生じる電圧は、第1の軸受5aの軸電圧の値に近づくため、第2の軸受5bの軸電圧も低減することができる。よって、実施形態1に係る電動機50は、軸受電食の発生抑制に極めて優れた効果を有する。
又、実施形態1に係る電動機50は、電動機50の内部の空いた箇所に、容量性部材15を容易に取り付けることができるので、製造性に優れている。
又、実施形態1に係る電動機50は、容量性部材15がコンパクトであるため、電動機50の外径寸法、形状が大きくなることもない。

(実施形態2)
本開示にかかる電気機器の例として、エアコン室内機の構成を実施形態2として、詳細に説明する。本開示にかかる電気機器は、必ずしもこれらの一例に限定されるものではない。
【0049】
図4において、エアコン室内機110の筐体111内には、ブラシレスモータ101が備えられている。そのブラシレスモータ101の回転軸には、送風ファンであるクロスフローファン112が取り付けられている。ブラシレスモータ101は、モータ駆動装置113によって駆動される。モータ駆動装置113からの通電により、ブラシレスモータ101が回転し、それに伴いクロスフローファン112が回転する。そのクロスフローファン112の回転により、室内機用熱交換器(図示せず)によって、空気調和された空気を室内に送風する。ここで、ブラシレスモータ101は、例えば、上記した実施形態1の電動機が適用できる。
【0050】
本開示の電気機器は、ブラシレスモータと、そのブラシレスモータが搭載された筐体とを備え、ブラシレスモータとして、上記した実施形態1の電動機を採用したものである。

(実施形態3)
本開示にかかる電気機器の例として、エアコン室外機の構成を実施形態3として、詳細に説明する。
【0051】
図5において、エアコン室外機201は、筐体211の内部にブラシレスモータ208を備えている。そのブラシレスモータ208は、回転軸に送風ファン212を取り付けている。
【0052】
エアコン室外機201は、筐体211の底板202に立設した仕切り板204により、圧縮機室206と熱交換器室209とに区画されている。圧縮機室206には、圧縮機205が設けられている。熱交換器室209には、熱交換器207及び送風ファンモータが配設されている。仕切り板204の上部には電装品箱210が設けられている。
【0053】
その送風用ファンモータは、電装品箱210内に収容されたモータ駆動装置により、駆動されるブラシレスモータ208の回転に伴い、送風ファン212が回転し、熱交換器207を通して熱交換器室209に送風する。ここで、ブラシレスモータ208は、例えば、上記した実施形態1の電動機が適用できる。
【0054】
本開示の電気機器は、ブラシレスモータと、そのブラシレスモータが搭載された筐体とを備え、ブラシレスモータとして、上記した実施形態1の電動機を採用したものである。

(実施形態4)
本開示にかかる電気機器の例として、給湯器の構成を実施形態4として、詳細に説明する。
【0055】
図6において、給湯器330の筐体331内には、ブラシレスモータ333を備えている。そのブラシレスモータ333の回転軸には、送風ファン332が取り付けられている。
【0056】
ブラシレスモータ333は、モータ駆動装置334によって駆動される。モータ駆動装置334からの通電により、ブラシレスモータ333が回転し、それに伴い送風ファン332が、回転する。その送風ファン332の回転により、燃料気化室(図示せず)に対して燃焼に必要な空気を送風する。ここで、ブラシレスモータ333は、例えば、上記した実施形態1の電動機が適用できる。
【0057】
本開示の電気機器は、ブラシレスモータと、そのブラシレスモータが搭載された筐体とを備え、ブラシレスモータとして、上記した実施形態1の電動機を採用したものである。
【0058】
尚、実施形態1の図1において、容量性部材15を電動機50の内部に配置したが、図7に示すように、容量性部材15は、電動機50の外部に配置してもよい。容量性部材15は、電動機50の外部であればどこに配置されていてもよく、例えば、電動機50の筐体の外壁に配置されている。又、容量性部材15は、例えば、電動機50から離れた位置に設けてもよい。このことにより、さらに電動機をコンパクトにできる。図7の態様は、実施形態1に限られることなく、実施形態2~4にも適用可能である。
尚、実施形態1の図1において、駆動回路を備えたプリント基板12を電動機50の内部に設けたが、駆動回路を備えたプリント基板12を電動機50の外部に設けてもよい。その場合、電動機50をコンパクトにできる。
尚、実施形態2~4に、電動機が回転するものとして、送風ファンを使用したが、回転されるものは、特に限定されない。
【0059】
以上のように、本開示は、以下の項目に記載の電動機及びその電動機を備えた電気機器を含む。
〔項目1〕
固定子巻線を巻装した固定子鉄心を含む固定子と、
前記固定子に対向して周方向に複数のマグネットを保持する、又は、中央からスポーク状に複数のマグネットを保持する回転体と、
前記回転体と、前記回転体の中央を貫通するように前記回転体を締結したシャフトとを含む回転子と、
前記回転体を支持する2つの軸受と、
前記2つの軸受の一方の軸受を固定する第1の金属ブラケットと、前記2つの軸受の他方の前記軸受を固定する第2の金属ブラケットとを備え、
前記第1の金属ブラケットと前記第2の金属ブラケットとの間に容量性部材を設ける電動機。
上記態様によれば、静電容量Csb1sb2を大きくすることで、合成静電容量A1を大きくし、分圧比A1(Cnb1/合成静電容量A1)と分圧比B1(Cns/合成静電容量B1)とを調整して、電動機における軸受の電食の発生を抑制することができる。
〔項目2〕
前記容量性部材の静電容量Csb1sb2と、前記固定子巻線と前記第1の金属ブラケットとの間の静電容量Csb1と、前記固定子巻線と前記第2の金属ブラケットとの間の静電容量Csb2を含む固定子側の合成静電容量の値を大きくして、前記固定子側の合成静電容量と前記駆動回路のゼロ基準電位と前記シャフトとの間の静電容量の比と、前記固定子巻線と前記固定子鉄心との間の静電容量Cと、前記固定子鉄心と前記マグネットとの間の静電容量Cと、前記固定子巻線と前記マグネットとの間の静電容量Csmと、前記マグネットの静電容量Cを含む回転子側の合成静電容量と前記駆動回路のゼロ基準電位と前記シャフト間との間の静電容量Cnsの比を近似又は一致させる項目1に記載の電動機。
上記態様によれば、静電容量Csb1sb2を大きくすることで、合成静電容量A1を大きくし、分圧比A1(Cnb1/合成静電容量A1)と分圧比B1(Cns/合成静電容量B1)との比を近似又は一致させて、電動機における軸受の電食の発生を抑制することができる。
〔項目3〕
前記第1の金属ブラケット及び前記第2の金属ブラケットは、前記固定子の固定子鉄心と、絶縁樹脂又は空間により絶縁されている項目1又は2に記載の電動機。
上記態様によれば、絶縁されていることより、回転子磁界を生成し易い。
〔項目4〕
前記容量性部材が、外部に設けられた項目1乃至3のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、容量性部材のスペースの制約を受けず、電動機をコンパクトにできる。
〔項目5〕
前記容量性部材が、内部に設けられた項目1乃至3のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、電動機外部のスペースに影響を与えない。
〔項目6〕
前記容量性部材の静電容量Csb1sb2によって、前記固定子巻線と前記第1の金属ブラケットとの間の静電容量Csb1と、前記固定子巻線と前記第2の金属ブラケットとの間の静電容量Csb2と、前記静電容量Csb1sb2との合成静電容量を大きくして、前記軸受の内輪と前記軸受の外輪との間に発生する電位差を小さくする項目1乃至5に記載の電動機。
上記態様によれば、静電容量Csb1sb2によって、前記固定子巻線と前記第1の金属ブラケットとの間の静電容量Csb1と、前記固定子巻線と前記第2の金属ブラケットとの間の静電容量Csb2と、前記容量性部材Csb1sb2との合成静電容量A1を大きくして、分圧比A1(Cnb1/合成静電容量A1)と分圧比B1(Cns/合成静電容量B1)との比を近似又は一致させて、電動機における軸受の電食の発生を抑制することができる。
〔項目7〕
前記駆動回路を備えたプリント基板が、内部に設けられた項目1乃至6のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、電動機外部のスペースに影響を与えない。
〔項目8〕
前記第1の金属ブラケットの外径は、前記第2の金属ブラケットの外径と同じか、又は大きい項目1乃至7のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、第2の金属ブラケットの外径と等しいか、又は大きい外形を有する第1の金属ブラケットとすることで、安定にシャフトを回転できる。
〔項目9〕
さらに前記固定子巻線に電圧を加える駆動回路を備えた項目1乃至8のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、駆動回路から回転磁界を起こす波形を生成できる。
〔項目10〕
項目1乃至9のいずかに記載の電動機と前記電動機により駆動される送風ファンとを搭載した電気機器。
上記態様によれば、送風ファンを備えた電気機器の電動機の軸受の電食の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 第1の金属ブラケット
2 第2の金属ブラケット
3 固定子巻線
4 シャフト
5a 第1の軸受
5b 第2の軸受
6 固定子鉄心
7 樹脂
8 回転子鉄心
9 回転体
10 回転子
11 マグネット
12 プリント基板
13 導通部材
14 インピーダンス調整部材
15 容量性部材
18 固定子
20 誘電体層
50 電動機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2021-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子巻線を巻装した固定子鉄心を含む固定子と、
前記固定子に対向して周方向に複数のマグネットを保持する、又は、中央からスポーク状に複数のマグネットを保持する回転体と、
前記回転体と、前記回転体の中央を貫通するように前記回転体を締結したシャフトとを含む回転子と、
前記回転体を支持する2つの軸受と、
前記2つの軸受の一方の軸受を固定する第1の金属ブラケットと、前記2つの軸受の他方の前記軸受を固定する第2の金属ブラケットとを備えた電動機であって
前記第1の金属ブラケットと前記第2の金属ブラケットとの間に容量性部材を設け
前記容量性部材の静電容量C sb1sb2 と、前記固定子巻線と前記第1の金属ブラケットとの間の静電容量C sb1 と、前記固定子巻線と前記第2の金属ブラケットとの間の静電容量C sb2 を含む固定子側の合成静電容量の値A1を大きくして、前記固定子側の合成静電容量A1と、前記固定子巻線に電圧を加える駆動回路のゼロ基準電位と前記第1の金属ブラケットとの間の静電容量C nb1 の比と、前記固定子巻線と前記固定子鉄心との間の静電容量C と、前記固定子鉄心と前記マグネットとの間の静電容量C と、前記固定子巻線と前記マグネットとの間の静電容量C sm と、前記マグネットの静電容量C を含む回転子側の合成静電容量B1と、前記駆動回路のゼロ基準電位と前記シャフト間との間の静電容量C ns の比を近似又は一致させる電動機。
【請求項2】
前記第1の金属ブラケット及び前記第2の金属ブラケットは、前記固定子の固定子鉄心と、絶縁樹脂又は空間により絶縁されている請求項に記載の電動機。
【請求項3】
前記容量性部材が、前記電動機の外部に設けられた請求項1又は2に記載の電動機。
【請求項4】
前記容量性部材が、前記電動機の内部に設けられた請求項1又は2に記載の電動機。
【請求項5】
前記容量性部材の静電容量Csb1sb2によって、前記固定子巻線と前記第1の金属ブラケットとの間の静電容量Csb1と、前記固定子巻線と前記第2の金属ブラケットとの間の静電容量Csb2と、前記静電容量Csb1sb2との合成静電容量A1を大きくして、前記軸受の内輪と前記軸受の外輪との間に発生する電位差を小さくする請求項1乃至のいずれかに記載の電動機。
【請求項6】
前記駆動回路を備えたプリント基板が、前記電動機の内部に設けられた請求項1乃至のいずれかに記載の電動機。
【請求項7】
前記駆動回路を備えたプリント基板が、前記電動機の外部に設けられた請求項1乃至5のいずれかに記載の電動機。
【請求項8】
前記第1の金属ブラケットの外径は、前記第2の金属ブラケットの外径と同じか、又は大きい請求項1乃至7のいずれかに記載の電動機。
【請求項9】
請求項1乃至のいずかに記載の電動機と前記電動機により駆動される送風ファンとを搭載した電気機器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
図2は、本開示の電動機50の静電容量分布モデルを示した図である。
第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2との間に、静電容量Csb1sb2の容量性部材15を挿入することで、固定子巻線3と第2の金属ブラケット2との間の静電容量Csb2と容量性部材15の静電容量Csb1sb2との直列回路が形成される。さらに、この直列回路と、固定子巻線3と第1金属ブラケット1との間の静電容量Csb1との並列回路が形成される。この容量性部材15の静電容量Csb1sb2を調整することで、合成静電容量A1を調整することができる。ここで、合成静電容量A1は、静電容量Csb1と、静電容量Csb2と、静電容量Csb1sb2との合成静電容量のことである。合成静電容量B1は、固定子巻線3と固定子鉄心間6との間の静電容量Cと、固定子鉄心6とマグネット11との間の静電容量Cと、固定子巻線3とマグネット11との間の静電容量Csmと、マグネット11の静電容量Cとの合成静電容量のことである。
具体的には、静電容量Csb1sb2を大きくすることで、合成静電容量A1を大きくし、分圧比A1(Cnb1/合成静電容量A1)と分圧比B1(Cns/合成静電容量B1)とを一致もしくは近似させることを見出した。その結果、固定子側の静電容量分布と、回転子側の静電容量分布との整合をとり、軸電圧を低減する方法に想到した。
以上の考察に基づき、本発明者らは、以下に説明する本開示の態様に想到した。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
以上のように、本開示は、以下の項目に記載の電動機及びその電動機を備えた電気機器を含む。
〔項目1〕
固定子巻線を巻装した固定子鉄心を含む固定子と、
前記固定子に対向して周方向に複数のマグネットを保持する、又は、中央からスポーク状に複数のマグネットを保持する回転体と、
前記回転体と、前記回転体の中央を貫通するように前記回転体を締結したシャフトとを含む回転子と、
前記回転体を支持する2つの軸受と、
前記2つの軸受の一方の軸受を固定する第1の金属ブラケットと、前記2つの軸受の他方の前記軸受を固定する第2の金属ブラケットとを備えた電動機。
上記態様によれば、静電容量Csb1sb2を大きくすることで、合成静電容量A1を大きくし、分圧比A1(Cnb1/合成静電容量A1)と分圧比B1(Cns/合成静電容量B1)とを調整して、電動機における軸受の電食の発生を抑制することができる。
〔項目2〕
前記容量性部材の静電容量Csb1sb2と、前記固定子巻線と前記第1の金属ブラケットとの間の静電容量Csb1と、前記固定子巻線と前記第2の金属ブラケットとの間の静電容量Csb2を含む固定子側の合成静電容量の値を大きくして、前記固定子側の合成静電容量A1、前記固定子巻線に電圧を加える駆動回路のゼロ基準電位と前記第1の金属ブラケットとの間の静電容量 nb1 の比と、前記固定子巻線と前記固定子鉄心との間の静電容量Cと、前記固定子鉄心と前記マグネットとの間の静電容量Cと、前記固定子巻線と前記マグネットとの間の静電容量Csmと、前記マグネットの静電容量Cを含む回転子側の合成静電容量B1前記駆動回路のゼロ基準電位と前記シャフト間との間の静電容量Cnsの比を近似又は一致させる項目1に記載の電動機。
上記態様によれば、静電容量Csb1sb2を大きくすることで、合成静電容量A1を大きくし、分圧比A1(Cnb1/合成静電容量A1)と分圧比B1(Cns/合成静電容量B1)との比を近似又は一致させて、電動機における軸受の電食の発生を抑制することができる。
〔項目3〕
前記第1の金属ブラケット及び前記第2の金属ブラケットは、前記固定子の固定子鉄心と、絶縁樹脂又は空間により絶縁されている項目1又は2に記載の電動機。
上記態様によれば、絶縁されていることより、回転子磁界を生成し易い。
〔項目4〕
前記容量性部材が、前記電動機の外部に設けられた項目1乃至3のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、容量性部材のスペースの制約を受けず、電動機をコンパクトにできる。
〔項目5〕
前記容量性部材が、前記電動機の内部に設けられた項目1乃至3のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、電動機外部のスペースに影響を与えない。
〔項目6〕
前記容量性部材の静電容量Csb1sb2によって、前記固定子巻線と前記第1の金属ブラケットとの間の静電容量Csb1と、前記固定子巻線と前記第2の金属ブラケットとの間の静電容量Csb2と、前記静電容量Csb1sb2との合成静電容量A1を大きくして、前記軸受の内輪と前記軸受の外輪との間に発生する電位差を小さくする項目1乃至5に記載の電動機。
上記態様によれば、静電容量Csb1sb2によって、前記固定子巻線と前記第1の金属ブラケットとの間の静電容量Csb1と、前記固定子巻線と前記第2の金属ブラケットとの間の静電容量Csb2と、前記容量性部材Csb1sb2との合成静電容量A1を大きくして、分圧比A1(Cnb1/合成静電容量A1)と分圧比B1(Cns/合成静電容量B1)との比を近似又は一致させて、電動機における軸受の電食の発生を抑制することができる。
〔項目7〕
前記駆動回路を備えたプリント基板が、前記電動機の内部に設けられた項目1乃至6のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、電動機外部のスペースに影響を与えない。
〔項目8〕
前記第1の金属ブラケットの外径は、前記第2の金属ブラケットの外径と同じか、又は大きい項目1乃至7のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、第2の金属ブラケットの外径と等しいか、又は大きい外形を有する第1の金属ブラケットとすることで、安定にシャフトを回転できる。
〔項目9〕
前記駆動回路を備えたプリント基板が、前記電動機の外部に設けられた項目1乃至6、又は8に記載の電動機。
〔項目10〕
項目1乃至9のいずかに記載の電動機と前記電動機により駆動される送風ファンとを搭載した電気機器。
上記態様によれば、送風ファンを備えた電気機器の電動機の軸受の電食の発生を抑制することができる。