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特開2022-91348RFID付き床材、その敷設構造物、及び床材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091348
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】RFID付き床材、その敷設構造物、及び床材
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
E04F15/02 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204138
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶村 康平
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA59
2E220AC01
2E220BA04
2E220BC02
2E220DA02
2E220EA11
2E220GA07X
2E220GA22X
2E220GA25X
2E220GB28X
2E220GB35
(57)【要約】
【課題】 RFIDの位置を視認でき、また、様々な敷設場所に適用できる比較的安価なRFID付き床材を提供する。
【解決手段】
本発明のRFID付き床材1は、床材2と、前記床材2に具備されたRFID3と、を有し、前記床材2には、その裏面に開放された凹み部5が形成されており、前記RFID3が、前記床材2の裏面2aから突出しないように、前記凹み部5に収容保持されている。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側樹脂層と前記上側樹脂層の裏面側に配置された下側樹脂層を有する床材と、
前記床材に具備されたRFIDと、を有し、
前記床材には、その裏面に開放された凹み部が形成されており、
前記RFIDが、前記床材の裏面から突出しないように、前記凹み部に収容保持されている、RFID付き床材。
【請求項2】
前記上側樹脂層が前記下側樹脂層よりも高強度である、請求項1に記載のRFID付き床材。
【請求項3】
前記上側樹脂層と前記下側樹脂層の間に、又は、前記下側樹脂層の内部に、ガラス繊維を含む補強層が介在されており、
前記凹み部が、前記補強層よりも裏面側に形成されている、請求項1または2に記載のRFID付き床材。
【請求項4】
前記RFIDが、粘着テープを介して前記凹み部の底面に貼り付けられている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のRFID付き床材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のRFID付き床材が、取付け部によって床下地上に取付けられている、RFID付き床材の敷設構造物。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のRFID付き床材に用いられる床材であって、
裏面において開放され且つ前記RFIDがその裏面から突出しないように形成された凹み部を有する、床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDが具備されているRFID付き床材などに関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDは、ICチップと、無線通信部と、を有し、無線通信によって情報を遣り取りできる機器である。
このようなRFIDを床材に具備させることにより、視覚障害者を誘導するなどのシステム床構造を構築できる。
例えば、特許文献1には、パイル布帛層とパイル布帛層の下面に積層された樹脂層とを有するタイルカーペットであって、前記樹脂層が、ガラス基布層と、ガラス基布層の上面側に積層された上側樹脂層と、ガラス基布層の下面側に積層された下側樹脂層と、を有し、上側樹脂層とガラス基布層との間、又は、ガラス基布層と下側樹脂層との間にRFIDタグを含む繊維層又はシート状物が介在されているタイルカーペットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3216222号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように樹脂層の内部にRFIDが介在されていると、床材の表面及び裏面から見ても、RFIDの存在位置を視認できない。このため、床材を施工する際に、RFID付き床材を設計とは異なる場所に誤って敷設するおそれがある。
また、RFIDは通信距離などに応じて様々な種類のものが存在し、敷設場所に応じて適切な種類のRFIDを用いることが望ましい。この点、特許文献1のようにRFIDが樹脂層内に埋設されていると、敷設場所に対応する望ましいRFIDが埋設されたタイルカーペットを予め数種類製造し且つ保管しておく必要がある。しかしながら、前述のようにRFIDが異なるタイルカーペットの種類(アイテム数)や在庫数が増え過ぎると、製品単価も上昇する。このため、従来では、タイルカーペットのアイテム数を限定せざるを得ず、その結果、敷設場所が限定されるという問題点もある。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、RFIDの位置を視認でき、また、様々な敷設場所に適用できる比較的安価なRFID付き床材などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のRFID付き床材は、上側樹脂層と前記上側樹脂層の裏面側に配置された下側樹脂層を有する床材と、前記床材に具備されたRFIDと、を有し、前記床材には、その裏面に開放された凹み部が形成されており、前記RFIDが、前記床材の裏面から突出しないように、前記凹み部に収容保持されている。
【0007】
本発明の好ましいRFID付き床材は、前記上側樹脂層が前記下側樹脂層よりも高強度である。
本発明の好ましいRFID付き床材は、前記上側樹脂層と前記下側樹脂層の間に、又は、前記下側樹脂層の内部に、ガラス繊維を含む補強層が介在されており、前記凹み部が、前記補強層よりも裏面側に形成されている。
本発明の好ましいRFID付き床材は、前記RFIDが、粘着テープを介して、前記凹み部の底面に貼り付けられている。
また、本発明の敷設構造物は、上記いずれかのRFID付き床材が、取付け部によって床下地上に取付けられている。
【0008】
また、上記いずれかに記載のRFID付き床材に用いられる床材は、次のような床材が好ましい。すなわち、本発明のRFID付き床材には、裏面において開放され且つRFIDがその裏面から突出しないように形成された凹み部を有する床材を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のRFID付き床材は、裏側からRFIDの位置を視認できるので、施工ミスを防止できる。さらに、本発明のRFID付き床材は、敷設場所に応じたRFIDを床材の裏面側から容易に取り付けることができるので、アイテム数も過大にならず且つ安価であり、様々な敷設場所に簡易に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の1つのRFID付き床材を表面側から見た平面図。
図2】同RFID付き床材を裏面側から見た背面図。
図3】本発明のもう1つのRFID付き床材を表面側から見た平面図。
図4】RFID付き床材の概略拡大断面図(図1のIV-IV線で切断した概略拡大断面図)。
図5】RFIDの平面図。
図6図5のVI-VI線で切断した断面図。
図7】RFIDの幾つかの構成例を示す断面図。
図8】第1例の層構成からなる床材の拡大断面図。
図9】第2例の層構成からなる床材の拡大断面図。
図10】第3例の層構成からなる床材の拡大断面図。
図11】第4例の層構成からなる床材の拡大断面図。
図12】1つの好ましい層構成のRFID付き床材(RFID付き樹脂床材)の拡大断面図。
図13】別の好ましい層構成のRFID付き床材(RFID付きタイルカーペット)の拡大断面図。
図14】凹み部が形成された床材の拡大断面図。
図15】第1例のRFID収容構造を有するRFID付き床材の拡大断面図。
図16】第2例のRFID収容構造を有するRFID付き床材の拡大断面図。
図17】第3例のRFID収容構造を有するRFID付き床材の拡大断面図。
図18】第4例のRFID収容構造を有するRFID付き床材の拡大断面図。
図19】第5例のRFID収容構造を有するRFID付き床材の拡大断面図。
図20】第6例のRFID収容構造を有するRFID付き床材の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、床材の「表面」は、RFID付き床材を敷設する床下地から遠い側の面を指し、「裏面」は、その反対側(RFID付き床材を敷設する床下地に近い側)の面を指す。平面視は、RFID付き床材の表面又は裏面に対して鉛直な方向からRFID付き床材を見ることをいう。
本明細書において、「下限値X~上限値Y」で表される数値範囲は、下限値X以上上限値Y以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。
また、各図における、厚み及び大きさなどの寸法は、実際のものとは異なっていることに留意されたい。
【0012】
[RFID付き床材の概要]
図1は、1つのRFID付き床材1の平面図であり、図2は、同RFID付き床材1の背面図である。図3は、もう1つのRFID付き床材1の平面図である。平面図は、RFID付き床材1の表面側から見たものであり、背面図は、その裏面側から見たものである。図4は、RFID付き床材1を厚み方向に切断した概略拡大断面図である。なお、図4において、床材の層構成は不図示である。
本発明のRFID付き床材1は、床材2に形成された凹み部5に、RFID3が設けられている。RFID3が設けられる本発明の床材2の種類としては、樹脂タイル及び樹脂シートなどの樹脂床材;タイルカーペット;などが含まれる。以下、樹脂床材とタイルカーペットを区別する必要があるときにはそのように記し、それらを含む床材を総称して説明するときには「床材」という。
前記樹脂床材(樹脂タイル、樹脂シートなど)は、樹脂層の表面が床材2の表面を成すものであり、タイルカーペットは、パイル層の表面が床材2の表面を成すものである。
前記樹脂タイル及びタイルカーペットは、図1に示すように、平面視で枚葉状に形成される。前記樹脂シートは、図3に示すように、平面視で長尺帯状に形成される。
【0013】
詳しくは、図1に示すように、枚葉状のRFID付き床材1(RFID3を具備する樹脂タイル又はタイルカーペット)は、例えば、平面視略正方形状に形成されている。もっとも、枚葉状のRFID付き床材1は、平面視略長方形状、平面視略六角形状などに形成されていてもよい(図示せず)。前記平面視略正方形状又は略長方形状のRFID付き床材1の具体的な寸法としては、例えば、第1方向の長さ×第2方向の長さ=300mm~1000mm×300mm~1000mm、好ましくは、第1方向の長さ×第2方向の長さ=500mm~950mm×500mm~950mm、より好ましくは、第1方向の長さ×第2方向の長さ=700mm~900mm×700mm~900mmなどが例示される。本明細書において、「第1方向」は、RFID付き床材1の面内で第2方向と直交する方向である。好ましくは、枚葉状のRFID付き床材1は、平面視略正方形状、すなわち第1方向の長さと第2方向の長さが等しい。RFID付き床材1を平面視略正方形状に形成することにより、複数のRFID付き床材1を隙間なく連続的に並べて敷設できる。
図3に示すように、長尺帯状のRFID付き床材1(RFID3を具備する樹脂シート)は、1つの方向の長さが他の方向よりも十分に長い平面視略長方形状に形成されている。長尺帯状のRFID付き床材1は、例えば、第1方向の長さが1000mm~4000mmで、第2方向の長さが5m以上であり、好ましくは、第2方向の長さが10m以上である。
本明細書において「略」は、本発明の属する技術分野において許容される範囲を意味する。略長方形状、略正方形状、略矩形状などの「略」は、例えば、角部が面取りされている形状、辺の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、辺が若干湾曲している形状などが含まれる。
【0014】
本発明のRFID付き床材1は、柔軟性を有していてもよく、或いは、柔軟性を有さないものでもよい。柔軟性を有するRFID付き床材1は、例えば、RFID付き床材1の裏面側を巻き芯に向けて、直径10cmの巻き芯の周囲にロール状に巻き付け可能である。柔軟性を有さないRFID付き床材1は、前記直径10cmの巻き芯に巻き付けることが困難なほどに剛性の高いものである。
施工しやすいことから、柔軟性を有するRFID付き床材1が好ましい。特に、長尺帯状のRFID付き床材1は、ロール状に巻いて保管・運搬できることから、柔軟性を有することが好ましい。
なお、床材2の層構成、各層の材質及び厚みを適宜設定することにより、柔軟性を有するRFID付き床材又は柔軟性を有さないRFID付き床材を作製できる。
【0015】
樹脂床材全体の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.5mm~10mmであり、好ましくは、1.5mm~5mmである。タイルカーペット全体の厚みは、特に限定されないが、例えば、5mm~20mmであり、好ましくは、6mm~16mmである。
【0016】
本発明のRFID付き床材1は、床材2と、床材2の裏面側に保持されたRFID3と、を有する。
なお、図4は、図1のIV-IV線で切断した断面図であるが、図3に示すRFID付き床材1の断面図も図4と同様である。
図4に示すように、床材2の裏面2aには、凹み部5が形成されている。凹み部5は、床材2の裏面2aにおいて開放されている。この凹み部5は、RFID3が床材2の裏面2aから突出しないような形状に形成されている。この開放された凹み部5に、RFID3が収容保持されている。RFID3は、床材2の裏面2aから突出しないように、凹み部5内に収容されている。
「RFID3が床材2の裏面2aから突出しないように凹み部5内に収容されている」とは、RFID3の裏面と床材2の裏面2aが略同一平面上に位置するようにRFID3が凹み部5に収容されている場合、又は、RFID3の裏面が床材2の裏面2aよりも少し内側に入った状態でRFID3が凹み部5に収容されている場合をいう。好ましくは、RFID3は、その裏面が床材2の裏面2aから少し内側に位置するように凹み部5に収容される。前記RFID3の裏面が床材2の裏面2aから少し内側に位置するとは、例えば、RFID3の裏面が床材2の裏面2aから0.1mm~2.0mm離れた位置、好ましくは、0.2mm~1.0mm離れた位置である。このように収容することによって、製造時の誤差に拘わらず、RFID3を床材2の裏面2aから突出しないようにすることができる。また、RFID付き床材1を床下地に敷設後には、RFID3の裏面と床下地との間に僅かな空間が形成されるので、踏み圧に対してRFID3を適切に保護することができる。
【0017】
開放された凹み部5に収容保持されているRFID3は、図2に示すように、床材2の裏面側から視認できる。このため、床材2に具備されたRFID3の位置を、視覚により、簡単に認識することができる。
なお、図1乃至図3において、床材2の中央部付近にRFID3が収容保持されているが(床材2の中央部付近に凹み部5が形成されているが)、RFID3を具備させる位置は、これに限定されず、適宜な位置に凹み部5を形成し且つその凹み部5にRFID3を収容保持してもよい。
また、凹み部5は、床材2の側端面2bを含んで形成しないことが好ましい。特に、凹み部5は、床材2の側端面2bから10mm以上離れた位置に形成することが好ましい。このように10mm以上離して凹み部5を形成することにより、凹み部5の強度が低下することを抑制でき、RFID付き床材1を床下地に敷設後に生じる目地部(隣接する床材2の側端面同士が接する継ぎ目)及びその近傍の沈み込みを防止できる。
【0018】
[RFID]
図5は、RFID3の一例を示し、図6は、そのRFID3の断面図を示す。
図5及び図6において、RFID3は、ICチップ31と、無線通信部としてアンテナ32と、ICチップ31及びアンテナ32を保持する支持基材33と、を有する。図示例のRFID3は、平面視略長方形状であるが、RFID3の平面視形状はこれに限定されず、平面視略正方形状、略円形状などであってもよい。
ICチップ31は、ID情報などの各種情報を保存するメモリを備えている。メモリは、読込みのみができるタイプでもよく、書込み及び読込みができるタイプでもよい。
支持基材33としては、柔軟性を有する樹脂フィルム、柔軟性を有さない樹脂フィルム、セラミックなどが挙げられる。
また、支持基材33とは反対側において、ICチップ31及びアンテナ32を被覆する被覆材34が設けられていてもよい。
被覆材34としては、柔軟性を有する樹脂フィルム、柔軟性を有さない樹脂フィルム、セラミック、封止樹脂などが挙げられる。
【0019】
例えば、図6のRFID3は、樹脂フィルム331(支持基材33)と、その樹脂フィルムの表面に固定されたICチップ31及びアンテナ32と、ICチップ31及びアンテナ32を覆うように、粘着剤層35を介して貼り付けられた樹脂フィルム341(被覆材34)と、を有する。
RFID3は、図6に限られず、従来公知の様々な構造のものを用いることができる。
例えば、図7(a)に示すRFID3は、樹脂フィルム331(支持基材33)と、その樹脂フィルム331の表面に固定されたICチップ31及びアンテナ32と、ICチップ31及びアンテナ32を覆うように、樹脂フィルム331を封止した封止樹脂層342(被覆材34)と、を有する。
同図(b)に示すRFID3は、セラミック板332(支持基材33)と、セラミック板332の表面に固定されたICチップ31及びアンテナ32と、ICチップ31及びアンテナ32を覆うように、接着剤層36を介して固着された樹脂フィルム341又はセラミック板(被覆材34)と、を有する。
図6図7(a)及び(b)に示すRFID3は、略均一な厚みを有する平板状である。
なお、図7(c)に示すように、被覆材34を有さないRFID3を用いてもよい。
【0020】
[床材の層構成]
次に、RFID3を具備させる床材2の幾つかの層構成を説明する。ただし、本発明において、床材2の層構成は、次の例示に限定されるわけではない。
床材2は、上側樹脂層と、前記上側樹脂層の裏面側に積層されている下側樹脂層と、を有する。樹脂床材においては、前記上側樹脂層の表面が床材2の表面を成す。タイルカーペットにおいては、前記上側樹脂層上にパイル層が設けられ、そのパイル層の表面が床材2の表面を成す。また、樹脂床材及びタイルカーペットのいずれにおいても、下側樹脂層の裏面が床材2の裏面2aを成す場合が多いが、例えば、補強層の裏面が床材2の裏面2aを成す場合もある。
床材2の裏面2aが下側樹脂層の裏面から構成される床材2においては、下側樹脂層を削るなどの加工を行なうことによって、下側樹脂層に凹み部5が形成される。
前記上側樹脂層と下側樹脂層は直接接して積層されていてもよいが、通常、上側樹脂層と下側樹脂層の間には、1層又は2つ以上の層からなる中間層が介在されている。
前記中間層は、少なくとも補強層を含むことが好ましい。補強層としては、下記に詳述するように、例えば、ガラス繊維を含む不織布又は織布などが挙げられる。前記補強層は、前記上側樹脂層と下側樹脂層の間に、又は、前記下側樹脂層の内部に介在されることが好ましい。この場合、下側樹脂層に形成される凹み部5は、補強層よりも裏面側に位置し、その凹み部5に収容されるRFID3は、補強層よりも裏面側に配置される。RFID3を補強層の裏面側に配置することにより、踏み圧からRFID3を保護することができる。さらに、下側樹脂層に凹み部5を形成する際に、凹み部5と補強層の間に下側樹脂層の一部分を層状に残すことにより、凹み部5の底面から補強層が露出することを防止できる。
【0021】
強度の観点から、床材2の上側樹脂層と下側樹脂層は、同程度又は何れか一方が他方に比して高強度でもよいが、好ましくは、上側樹脂層は、前記下側樹脂層よりも高強度である。高強度は、機械的強度が高いという意味である。例えば、上側樹脂層が下側樹脂層よりも高強度であるとは、上側樹脂層と下側樹脂層を同じ条件で切削工具を用いてそれぞれ削ったときに、上側樹脂層が下側樹脂層よりも削り難い場合などを含む。前記削り難いの一例としては、上側樹脂層と下側樹脂層をそれぞれ同じ深さに削るまでに、上側樹脂層の方が時間を要することが挙げられる。上側樹脂層が下側樹脂層よりも高強度であることにより、その裏面側に配置されるRFID3を床材2の表面側からの衝撃から保護することができる。さらに、上側樹脂層が高強度であることにより、敷設後に摩耗し難く、RFID3の保護効果の低下を防止できる。
【0022】
また、床材2を構成する各層は、いずれも、RFID3の無線通信を阻害する金属を実質的に含まないことが好ましい。前記金属を実質的に含まないとは、不可避的に含まれる程度の微量の金属の混入は許容され、有意な量の混入は除外されるという意味である。
図8乃至図11は、様々な層構成の床材2の拡大断面図である。ただし、図8乃至図11においては、凹み部5が形成されておらず且つRFID3を具備させる前の状態の床材を示していることに留意されたい。また、図8乃至図11においては、いずれも樹脂床材である場合を図示している。タイルカーペットについては、これらの図示例の上側樹脂層の上にパイル層が設けられる。
【0023】
図8における第1例の床材2は、裏面側から表面側へ順に、下側樹脂層21と、補強層22と、化粧層23と、表層24と、表面保護層25と、を有する。これら各層は、接合されて一体化されている。図8に示す例において、必要に応じて、表層24又は表面保護層25のいずれかを省略してもよい。
図8において、概念上、表面保護層25が床材2の上側樹脂層に相当し、補強層22、化粧層23及び表層24が床材2の中間層に相当する。ただし、表面保護層25が省略された場合には、表層24が床材2の上側樹脂層に相当する。
【0024】
図9における第2例の床材2は、裏面側から表面側へ順に、第1の下側樹脂層211と、第2の下側樹脂層212と、補強層22と、化粧層23と、表層24と、表面保護層25と、を有する。これら各層は、接合されて一体化されている。図9に示す例において、必要に応じて、表層24又は表面保護層25のいずれかを省略してもよい。第1の下側樹脂層211と第2の下側樹脂層212は、RFID3の保護を強化する目的で、材質が異なることが好ましい。
図9において、表面保護層25(これが省略された場合には表層24)が床材2の上側樹脂層に相当し、補強層22、化粧層23及び表層24が床材2の中間層に相当する。
【0025】
図10における第3例の床材2は、裏面側から表面側へ順に、第1の下側樹脂層211と、第1の補強層221と、第2の下側樹脂層212と、第2の補強層222と、化粧層23と、表層24と、表面保護層25と、を有する。これら各層は、接合されて一体化されている。図10に示す例において、必要に応じて、表層24又は表面保護層25のいずれかを省略してもよい。
図10において、表面保護層25(これが省略された場合には表層24)が床材2の上側樹脂層に相当し、第1の補強層221、第2の補強層222、化粧層23及び表層24が床材2の中間層に相当する。
【0026】
図11における第4例の床材2は、裏面側から表面側へ順に、第1の補強層221と、下側樹脂層21と、第2の補強層222と、化粧層23と、表層24と、表面保護層25と、を有する。これら各層は、接合されて一体化されている。図11に示す例において、必要に応じて、表層24又は表面保護層25のいずれかを省略してもよい。
図11において、第1の補強層221の裏面が床材2の裏面2aを構成し、表面保護層25(これが省略された場合には表層24)が床材2の上側樹脂層に相当し、第2の補強層222、化粧層23及び表層24が床材2の中間層に相当する。
【0027】
なお、図8乃至図11に示す層構成において、補強層22が下側樹脂層21の内部(例えば、下側樹脂層21の中間部)に介在されていてもよい。
また、図8乃至図11に示す層構成をタイルカーペットに適用する場合おいては、化粧層23及び表面保護層25は省略され、表層24が上側樹脂層となる。
【0028】
<好ましい層構成のRFID付き床材>
図12は、好ましい層構成の樹脂床材にRFID3が具備されたRFID付き床材1(RFID付き樹脂床材)を示す。
図12を参照して、RFID付き床材1(RFID付き樹脂床材)は、樹脂床材2A(床材2)と、前記樹脂床材2Aの裏面に開口された凹み部5と、前記凹み部5に収容されたRFID3と、を有する。樹脂床材2Aは、裏面側から表面側へ順に、下側樹脂層21と、補強層22と、化粧層23と、表層24と、上側樹脂層である表面保護層25と、を有する。
【0029】
図13は、好ましい層構成のタイルカーペットにRFID3が具備されたRFID付き床材1(RFID付きタイルカーペット)を示す。
図13を参照して、RFID付き床材1(RFID付きタイルカーペット)は、タイルカーペット2B(床材2)と、前記タイルカーペット2Bの裏面に開口された凹み部5と、前記凹み部5に収容されたRFID3と、を有する。タイルカーペット2Bは、裏面側から表面側へ順に、下側樹脂層21と、補強層22と、上側樹脂層である表層24と、基布261にパイル糸262が植設されているパイル層26と、を有する。
【0030】
図12及び図13を参照して、凹み部5は、下側樹脂層21中に形成されている。従って、凹み部5は、補強層22よりも裏面側に形成されている。凹み部5の底面と補強層22の間には、下側樹脂層21が残存して層状を成したもの(下側樹脂層21の一部分である樹脂層219)が介在されている。
RFID3は、凹み部5の底面に取付けられている。
前記樹脂層219の厚みは、例えば、0.3mm以上であり、好ましくは0.6mm以上であり、より好ましくは1.0mm以上である。樹脂層219の厚みが前記下限値以上であれば、凹み部5の強度を維持でき、RFID3を適切に保護することができる。前記樹脂層219の厚みの上限値は、下側樹脂層21の厚みよりも小さい範囲で適宜に設定できる。
【0031】
上記のような凹み部5は、例えば、床材2の裏面2aから下側樹脂層21の一部を削り取る(削り取るとは、かき取ることも含む)、床材2の裏面2aに硬い凸状治具を押圧することによって下側樹脂層21の一部を凹ませる、などの加工方法によって形成できる。凹み部の戻りがなく、且つ、所望の位置に所望の大きさの凹み部5を容易に形成できることから、下側樹脂層21の一部を削り取ることによって凹み部5を形成することが好ましい。
前記加工方法の具体例として、ミーリング加工による削り取りが挙げられる。前記ミーリング加工を実施する装置としては、フライスカッター、エンドミル、サイドカッターなどが挙げられる。
【0032】
<下側樹脂層>
下側樹脂層21(第1の下側樹脂層211及び第2の下側樹脂層212を含む)は、床材2を構成する主たる樹脂層である。
下側樹脂層21は、発泡されている発泡層でもよく、或いは、発泡されていない非発泡層でもよい。床材2の下側樹脂層21が発泡層である場合、RFID付き床材1にクッション性を付与でき且つ凹み部5が形成し易くなる。例えば、第1の下側樹脂層211及び第2の下側樹脂層212を有する床材2にあっては、第1の下側樹脂層211が発泡され、第2の下側樹脂層212が非発泡とされていることが好ましい。発泡された第1の下側樹脂層211と発泡されていない第2の下側樹脂層212とを有する床材2は、第1の下側樹脂層211によってクッション性を有しつつ第2の下側樹脂層212によって剛性を有し、さらに、第1の下側樹脂層211の所望箇所に凹み部5を容易に形成できる。
前記下側樹脂層21が発泡層である場合、その発泡倍率は特に限定されないが、例えば、1.1倍~4倍であり、好ましくは、1.1倍~2倍である。発泡倍率が余りに低いと、RFID付き床材1に実質的にクッション性を付与できず、一方、発泡倍率が余りに高いと、RFID付き床材1が厚み方向に変形し過ぎるようになる。
なお、発泡倍率は、発泡前の材料の密度を発泡後の見掛密度で除した値をいう。
また、下側樹脂層21の密度は、0.5kg/m~2.5kg/mが好ましく、0.65kg/m~2.0kg/mがより好ましい。下側樹脂層21の密度が前記下限値以上であれば、凹み部5の強度を維持でき、RFID3を適切に保護することができる。下側樹脂層21の密度が前記上限値以下であれば、RFID3の通信を妨げるおそれを低減でき、また、その密度が高いと摩耗し難くなり、RFID3の保護を長期に亘って維持することができる。
【0033】
下側樹脂層21の樹脂成分としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、一般的には、熱可塑性樹脂が用いられ、さらに、軟質の熱可塑性樹脂が用いられる。
前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニルや塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;ウレタン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;エステル系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマー;ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を併用できる。安価で且つ優れた可撓性及び耐久性を有する点から、下側樹脂層21は、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする樹脂層であることが好ましい。
前記塩化ビニル系樹脂としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造されたものを用いることができる。加工し易く且つ取り扱い易いことから、乳化重合法、又は、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂が好ましい。これらの塩化ビニル系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
下側樹脂層21の厚みは、特に限定されず、適宜設定でき、例えば、0.5mm~5mmであり、好ましくは0.7mm~2mmである。なお、前記下側樹脂層21の厚みは、下側樹脂層が複数の樹脂層から構成される場合には、その複数の樹脂層の合計厚みに相当する。
【0034】
<補強層>
補強層22としては、特に限定されないが、例えば、不織布、織布、紙、フェルトなどの繊維含有層が挙げられる。不織布や織布を構成する繊維の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス繊維、カーボン繊維などの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。フェルトを構成する繊維の材質としては、特に限定されず、羊などの動物の毛;ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;などが挙げられる。補強層22は、例えば、スパンボンド不織布、フェルト、ガラスマット、ガラスネットなどの市販品を好適に用いることができる。また、補強層22は、合成樹脂が予め含浸されたものでもよい。前記補強層22の厚みは、それを構成する材料の種類などに応じて適宜設定することができるが、通常、0.1mm~1mm程度とすればよい。
床材2の中間層を構成する補強層22は、ガラス繊維を含む不織布又は織布を用いることが好ましい。床材2の中間層を構成する補強層22としてガラス繊維を含む不織布又は織布を用いることにより、RFID付き床材1の反りなどを効果的に防止できる。
補強層22の目付量は、特に限定されず、例えば、30g/m~200g/mである。
なお、図10及び図11に示すような第1の補強層221及び第2の補強層222を有する場合、第1の補強層221は、ポリオレフィンなどの不織布又は織布、フェルトなどが用いられ、第2の補強層222は、ガラス繊維などを含む不織布(又は合成樹脂が含浸されたガラス繊維などの不織布)などが用いられる。合成樹脂が含浸されたガラス繊維などの不織布としては、塩化ビニル樹脂を予め含浸させたガラス繊維不織布が挙げられる。樹脂が含浸された補強層は、その補強層と上下で接する層に対する接合性に優れ、層間剥離強度を高めることができる。
【0035】
<化粧層>
化粧層23は、RFID付き床材1に色彩を付与する層である。
前記化粧層23は、着色された合成樹脂層、印刷シート、転写シートなどが挙げられる。
着色された合成樹脂層は、その層そのものが色彩を呈する層である。前記合成樹脂層は、(1)樹脂そのものの色彩からなる樹脂層、(2)着色剤が混合され、その着色剤によって着色された樹脂層、(3)着色された樹脂チップが混合されてシート状に成形された樹脂層、などが挙げられる。印刷シートは、塩化ビニル製樹脂シートなどの合成樹脂シートに単一の色彩が印刷されたものである。転写シートは、印刷インキを剥離紙などの基材上に印刷して固化させた後に、固化した印刷インキを剥離することによって得られる。
前記化粧層23の厚みは特に限定されないが、例えば、0.5μm~1mmであり、好ましくは0.01mm~0.8mmである。化粧層23が着色された合成樹脂層からなる場合、その厚みは、例えば、0.3mm~1mmであり、化粧層23が印刷シート又は転写シートからなる場合、その厚みは、0.5μm~0.5mmである。
【0036】
<表層>
表層24は、RFID付き床材1に付着した汚れを容易に除去できるようにするために設けられた層である。表層24は、表層24の下側に設けられた化粧層23の色彩を視認できるようにするため、透明であり、好ましくは無色透明である。また、表層24は、非発泡であり、さらに、炭酸カルシウムなどの充填剤を含まないことが好ましい。
表層24は、樹脂材料で形成される。特に、表層24は、非発泡層で且つ比較的密度が高いものが好ましい。具体的には、表層24の密度は、0.5kg/m~2.5kg/mが好ましく、0.65kg/m~2.0kg/mがより好ましい。表層24の樹脂材料としては、上述の<下側樹脂層>の欄で例示したようなものが挙げられ、強固に接合することから、塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂が好ましい。
表層24の厚みは、特に限定されず、例えば、0.03mm~1mmである。
【0037】
<表面保護層>
表面保護層25は、RFID付き床材1の表面に耐摩耗性、耐傷付き性及び防汚性を付与するために設けられる層である。表面保護層25は、表層と同様の理由から、透明(好ましくは無色透明)である。また、表面保護層25は、非発泡である。
表面保護層25を形成する樹脂材料は、特に限定されないが、比較的硬い樹脂層から形成されていることが好ましい。このような表面保護層25は、主成分樹脂として硬質合成樹脂を含むものが挙げられる。前記硬質合成樹脂としては、特に限定されないが、加工性の良さから硬化性樹脂を用いることが好ましく、さらに、表面保護層25の積層される層(表層24など)に熱損傷を与え難いことから、電離放射線硬化性樹脂を用いることがより好ましく、汎用的であることから、紫外線硬化性樹脂を用いることがさらに好ましい。前記硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂以外に、熱硬化性樹脂、非電離放射線により硬化する樹脂などが挙げられる。このような樹脂材料を用いることによって、下側樹脂層21よりも高強度な表面保護層25を形成できる。
表面保護層25の厚みは、特に限定されないが、例えば、1μm~100μmであり、好ましくは5μm~70μmであり、より好ましくは10μm~50μmである。
【0038】
[RFID付き床材の詳細]
図14は、下側樹脂層21に凹み部5が形成された床材2の一部拡大断面図を示す。図14乃至図20では、床材2の層構成として樹脂床材2Aの好ましい層構成を表しているが、これに限定されるわけではない。
凹み部5は、底面5aと周壁面5bとで画成された空間であり、底面5aと反対側が開放されている。
凹み部5の平面視形状は、RFID3の平面視形状と略同形同大又はそれよりも大面積の略同形若しくは異形に形成されている。
凹み部5の深さは、RFID3の厚みと保持部(保持部は、RFID3と凹み部5の底面5aの間に介在してRFID3を凹み部5に保持する手段)の厚みの合計と略同じ又はそれよりも大きく形成されている。
凹み部5は、下側樹脂層21の範囲内に形成されている。つまり、凹み部5の底面5aは、床材2の中間層にまで至らず、下側樹脂層21内に存在する。なお、凹み部5は、下側樹脂層21の範囲内にのみ形成される場合に限られず、下側樹脂層21から補強層22などの中間層の一部に跨がって形成されていてもよい。
凹み部5の入隅角部5cは、図示のように、断面視で直角状でもよく、或いは、断面視で弧状を成していてもよい。直角状の入隅角部5cは、形成容易である。弧状の入隅角部5cは、耐圧の観点から好ましい。弧状の入隅角部5cの凹み部5は、上から加わる圧力が角部に集中し難いので、かかる凹み部5を有する床材は、踏み圧に対してRFID3を適切に保護することができる。
【0039】
図15は、凹み部5にRFID3が収容保持されている第1の収容構造例を示す。
図15を参照して、RFID3は、保持部6を介して凹み部5の底面5aに固定されている。RFID3は、床材2の裏面2aから突出しないように、前記凹み部5に収容されている。床材2の裏面2aから突出しないとは、RFID3の裏面が、床材2の裏面2aと略同一平面上に位置している又は床材2の裏面2aよりも上側(床材2の表面側)に位置していることをいう。図示例では、RFID3の裏面が床材2の裏面2aと略同一平面上に位置するように、RFID3が凹み部5内に収容保持されている。ただし、床材2は精密機器ではないので、RFID3の裏面と床材2の裏面2aとが厳密に同一平面上に位置しているわけではないことに留意されたい(そのような理由から略同一平面上に位置していると記載している)。
図示例では、保持部6として、粘着テープ61が用いられ、前記粘着テープにてRFID3が凹み部5の底面5aに接着されている。粘着テープ61(両面粘着テープ)は、シート611と、シート611の両面に設けられた粘着剤層612,612と、を有する。粘着テープ61のシート611は、非発泡でもよいが、RFID3を保護する観点から、発泡層を有することが好ましく、さらに、発泡層からなるシート(発泡シート)がより好ましい。
また、RFID3の周側面3bが凹み部5の周壁面5bに近接された状態で、RFID3が凹み部5に収容保持されている。
【0040】
図16は、凹み部5にRFID3が収容保持されている第2の収容構造例を示す。
図15では、RFID3が凹み部5の周壁面5bに近接され、RFID3の周側面3bと凹み部5の周壁面5bの間にほとんど隙間を有さないが、図16では、RFID3の周側面3bと凹み部5の周壁面5bの間に隙間を有する。この隙間に、充填用材料71が充填されている。充填用材料71としては、コーキング材、接着剤などが挙げられる。このように隙間を有する場合、凹み部5の平面視形状はRFID3の平面視形状よりも大面積である。そのため、RFID3を凹み部5内に収容する作業が容易になる。一方、凹み部5の周壁面5bとRFID3の間に隙間が存在すると、RFID付き床材1を保管・運搬時に、RFID3が凹み部5の底面5aから部分的に剥離するおそれがある。前記隙間に充填用材料71を入れて封止することにより、RFID3の不用意な剥離を防止できる。
【0041】
図17は、凹み部5にRFID3が収容保持されている第3の収容構造例を示す。
図17において、RFID3の周側面3bと凹み部5の周壁面5bの間の隙間に、スペーサー72が挿入されている。スペーサー72は、例えば、凹み部5の周壁面5b及び/又は底面に接着剤などを介して固定されている。例えば、スペーサー72は、接着剤を介して凹み部5の周壁面5bに固定されている。スペーサー72の平面視形状は、RFID3の周側面3bを取り囲む額縁状(枠状)である。また、スペーサー72の高さは、凹み部5の深さの略等しい。スペーサー72は、圧縮強度に優れた材質、例えば、硬質の合成樹脂、セラミック、ゴムなどから形成されていることが好ましい。
隙間にスペーサー72を入れることにより、RFID3の不用意な剥離を防止できる。また、スペーサー72を圧縮強度に優れた材質から形成した場合には、踏み圧によってRFID3が破損することを防止できる。
【0042】
図18は、凹み部5にRFID3が収容保持されている第4の収容構造例を示す。
図18において、RFID3の周側面3bと凹み部5の周壁面5bの間の隙間に、額縁状のスペーサー72が挿入されていると共に、RFID3と凹み部5の底面5aの間に、保護板73が介在されている。RFID3は、接着剤層62を介して保護板73に取り付けられている。スペーサー72と保護板73は、別体でもよく、或いは、図示のように一体的に形成されていてもよい。スペーサー72及び保護板73は、圧縮強度に優れた材質、例えば、硬質の合成樹脂、セラミック、ゴムなどから形成されていることが好ましい。
RFID3と凹み部5の底面5aの間に、圧縮強度に優れた材質からなる保護板73を介装することにより、スペーサー72と協働して、踏み圧によってRFID3が破損することを効果的に防止できる。
【0043】
図19は、凹み部5にRFID3が収容保持されている第5の収容構造例を示す。
図19を参照して、RFID3の裏面が床材2の裏面2aよりも上側(床材2の表面側)に位置して、RFID3が凹み部5に収容保持されている。また、図示例では、保持部6として接着剤が用いられ、RFID3は、接着剤層62を介して凹み部5の底面5aに接着されている。
RFID3の裏面と床材2の裏面2aの間の空隙を埋めるために、被覆部材74が設けられている。被覆部材74を設けることにより、RFID3の裏面側が露出せず、RFID3を保護できる。被覆部材74としては、上述のような充填用材料71、保護板73のような板状部材などが挙げられる。図示例では、被覆部材74として充填用材料71が用いられ、RFID3の裏面及びRFID3の周側面3bと凹み部5の周壁面5bの間に、充填用材料が充填されている。
この被覆部材74は、無色透明である、或いは、床材2の裏面2aの色彩と異なる色彩を有することが好ましい。被覆部材74が無色透明であることにより、RFID付き床材1の裏側から見て、RFID3の存在位置を直接的に視認できる。或いは、被覆部材74が異なる色彩であることにより、RFID付き床材1の裏側から見て、被覆部材74を視覚的に識別でき、RFID3の存在位置を認識できる。
【0044】
図20は、凹み部5にRFID3が収容保持されている第6の収容構造例を示す。
図20において、凹み部5の周壁面5bがテーパ状(傾斜面状)に形成されている。このように凹み部5の周壁面5bが裏面側に向かうに従って外側に傾斜するテーパ状に形成されていることにより、RFID3を凹み部5内に収容する作業が容易になる。
この場合、RFID3の周側面3bと凹み部5の周壁面5bの間に比較的大きな隙間が生じるため、その隙間に、上述の充填用材料71及び/又はスペーサー72を入れることが好ましい。
【0045】
本発明の床材2は、上側樹脂層及び下側樹脂層21を有する。一般に、床材は、樹脂製床材、木質床材、セラミック製床材に大別できるが、樹脂材料は、木やセラミックに比べて電波の透過がよいため、本発明のような樹脂製床材(上側樹脂層及び下側樹脂層を有する床材)は、RFIDの通信を妨げるおそれが小さいので好ましい。一方、樹脂材料の種類にもよるが、例えば、可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂などは、木やセラミックに比べて柔軟な材質であるので、これを用いた下側樹脂層の裏面に凹み部を形成すると、表写りの可能性がある。前記表写りとは、床材の敷設後、凹み部に対応する表面位置が僅かに沈み込むことによって、その凹みが床材の表面から視認されることをいう。
上記のように上側樹脂層を下側樹脂層21よりも高強度とすることにより、前記表写りを効果的に防止でき、さらに、上側樹脂層と下側樹脂層21の間に又は下側樹脂層21の内部にガラス繊維を含む補強層22を介在させることにより、前記表写りをより効果的に防止できる。また、凹み部5の底面と補強層22の間に下側樹脂層21の一部分である樹脂層21を介在させること、及び、凹み部5の入隅角部5cを弧状に形成することも、表写り防止に寄与する。
【0046】
[RFID付き床材の使用]
本発明のRFID付き床材1は、各種の床下地に敷設して使用される。RFID付き床材1を床下地に敷設することにより、RFID付き床材1の敷設構造物を構築できる。
床下地は、特に限定されず、木材、モルタル(コンクリートを含む)、合成樹脂、鉄板などの金属などが挙げられる。RFID3の通信を妨げないことから、木材、モルタル、合成樹脂などの非金属系の床下地にRFID付き床材1を敷設することが好ましい。
RFID付き床材1は、その裏面を床下地に接して敷設される。RFID付き床材1は床下地の上に載せるだけでもよいが、通常、不用意に位置ずれしないように、取付け部(取付け部は、RFID3の裏面を含む床材2の裏面2aと床下地の間に介在してRFID付き床材1を床下地に取付ける手段)によって床下地に取り付けられる。
取付け部としては、例えば、接着剤、粘着剤、粘着テープ(両面粘着テープ)などが挙げられる。接着剤、粘着剤、粘着テープなどを用いることにより、RFID付き床材1の裏面を床下地に容易に接着固定できる。接着強度の観点から、取付け部は、上述の保持部6(RFID3と凹み部5の底面5aの間に介在してRFID3を凹み部5に保持する手段)よりも強いことが好ましい。取付け部が保持部6よりも接着強度が強いとは、例えば、保持部6を介して凹み部5に接着されたRFID3の裏面のみに取付け部を設け、その状態で床材2を引き剥がしたときに、凹み部5とRFID3の間で剥離することをいう。このような取付け部により、RFID付き床材1を床下地から引き剥がした際、RFID3が床下地に残存することになる。このため、RFID3と床材2とを分離する手間が省け、また、両者を分離し忘れることもないので、リサイクルが容易になる。
なお、保持部6よりも接着強度が強い取付け部としては、床下地の材質や保持部6として用いる粘着テープなどを考慮して、接着力の大きい接着剤などを選択すればよい。
【0047】
本発明のRFID付き床材1は、裏側からRFID3の位置を視認できるので、施工ミスを防止できる。さらに、本発明のRFID付き床材1は、裏面に開放された凹み部5にRFID3が具備されている。裏面において凹み部5が開放されていると、RFID3を凹み部5に容易に収容することができる。このため、例えば、凹み部5が形成された床材2を準備しておき、その床材2に、敷設場所に応じたRFID3を収容してRFID付き床材1を作製することができる。このように本発明のRFID付き床材1によれば、敷設場所に適した生産を受注後すぐに行なうことができる。このため、従来のように、様々な種類のRFID3のそれぞれを具備するRFID付き床材1を予め準備する必要がない。本発明によれば、アイテム数や在庫数が少なくなり、その結果、様々な敷設場所に適用できるRFID付き床材1であって、製品単価の低いRFID付き床材1を提供できる。特に、床材2の下側樹脂層21を削り取る方式によって凹み部5を形成する場合には、在庫として保管している床材2に、受注(敷設場所)を応じて適切な位置に凹み部5を形成し且つその凹み部5にRFID3を収容保持することにより、より安価で且つ様々な敷設場所に適用できるRFID付き床材1を提供できる。
このような効果は、裏面に開放された凹み部5にRFID3を収容保持するという新規な着想によってもたらされたものである。
本発明の別の局面では、敷設場所に応じたRFID付き床材1の提供方法を提供する。すなわち、上述のように、幾つかの種類の床材2(樹脂床材又はタイルカーペット)を製造し且つ保管する工程、施工場所に応じて前記床材2の下側樹脂層21に凹み部5を形成する工程、その凹み部5に保持部6を介してRFID3を収容保持させる工程、により、様々な施工場所に応じたRFID付き床材1を簡易に生産できる。この方法において、通信距離などが異なる幾つかの種類のRFID3を予め保管していてもよく、或いは、受注時にその敷設場所に応じたRFID3をRFID3メーカーから入手してもよい。
【0048】
また、本発明のRFID付き床材1は、樹脂床材又はタイルカーペットのいずれでもよいが、樹脂床材を用いた場合には、次のようなメリットを有する。
タイルカーペットは、パイル層が表面を構成するので、多少の不陸(凹凸)が表面に生じていても問題はない。一方、樹脂床材は、樹脂層が表面を構成するので、例えば、特許文献1のように、樹脂層の内部にRFID3を介在させると、そのRFID3の厚みに応じて、床材2の表面が微小に膨らむようになる。この膨らみは、外見上ほぼ目立たないが、床材2を敷設した後にその上を歩行している間に、その膨らみの周囲に汚れが付着し且つ滞留し易いという問題点がある。この点、本発明のように、RFID3を凹み部5に収容することにより、樹脂床材の表面にRFID3に起因した膨らみが生じず、汚れが付着し且つ滞留し難くなる。また、樹脂床材の表面にRFID3に起因した膨らみが生じないことから、仮に汚れが付着しても清掃容易である。
【0049】
裏面において開放され且つRFIDがその裏面から突出しないように形成された凹み部を有する床材については、次のような手順でRFID付き床材の敷設構造を構築することもできる。
すなわち、(床材の)裏面において開放された凹み部であってRFIDがその裏面から突出しないような形状に形成された凹み部を有する床材と、前記凹み部を有さない床材(通常の床材)とをそれぞれ準備した後、それらを施工場所の床下地に敷設する。前記凹み部を有する床材を敷設する際に、施工場所に合わせて適宜選択した床材の凹み部に、その施工場所でRFIDを収容しつつその床材を取付け部によって床下地に取り付ける。また、施工場所に合わせて適宜選択した凹み部を有さない床材も同様に取付け部によって床下地に取り付ける。このような敷設方法でRFID付き床材の敷設構造を構築してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 RFID付き床材
2 床材
2a 床材の裏面
2A 樹脂床材
2B タイルカーペット
21 下側樹脂層
22 補強層
25 表面保護層(上側樹脂層)
3 RFID
5 凹み部
61 粘着テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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