IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本メナード化粧品株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091382
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】クリーム状弱酸性皮膚洗浄料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20220614BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220614BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/73
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204193
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤田 みづ帆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 怜
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 仁志
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB052
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC392
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC782
4C083AC792
4C083AD131
4C083AD132
4C083CC23
4C083DD31
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】
泡立ち、泡の弾力感に優れ、しっとりとした洗い上がりとなるクリーム状弱酸性皮膚洗浄料を提供すること。
【解決手段】
本発明は、(A)ココイルグリシンカリウム、(B)ヤシ脂肪酸アルギニン、(C)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドを含有し、成分(A)の含有量が20~40重量%であり、成分(B)の含有量が1~7重量%であり、成分(C)の含有量が0.01~0.5重量%であり、且つ、pHが5.0~7.0であることを特徴とするクリーム状弱酸性皮膚洗浄料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C)
(A)ココイルグリシンカリウム
(B)ヤシ脂肪酸アルギニン
(C)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド
を含有し、成分(A)の含有量が20~40重量%であり、成分(B)の含有量が1~7重量%であり、成分(C)の含有量が0.01~0.5重量%であり、且つ、pHが5.0~7.0であることを特徴とするクリーム状弱酸性皮膚洗浄料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡立ち、泡の弾力感に優れ、しっとりとした洗い上がりとなるクリーム状弱酸性皮膚洗浄料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚洗浄料は余分な皮脂や老廃物、汚れを除去し、皮膚を健やかに保つために使用されており、近年では使用性の良さからクリーム状の皮膚洗浄料が多用されている。中でも泡立ちや泡の弾力感に優れるという観点から、前記クリーム状皮膚洗浄料は、高級脂肪酸のカリウム塩等の脂肪酸石鹸を主成分とするものが一般的である。
【0003】
しかし、脂肪酸石鹸を主成分としたクリーム状皮膚洗浄料は、洗浄力が高く、皮脂を余分に洗い落してしまうため、洗い上がり後のきしみやつっぱりを感じやすく、消費者の中には皮膚への刺激を感じる人もいる。
【0004】
また、人の肌は本来、弱酸性であることから、アルカリ性である脂肪酸石鹸での洗浄は肌に負担がかかるという知見もある。そのため、肌が敏感な消費者の中には肌に優しい洗い上がりを求めて、脂肪酸石鹸を主成分としない皮膚洗浄料を好む人もいる。
【0005】
一方、脂肪酸石鹸を主成分としない皮膚洗浄料は泡立ちが悪く、泡の弾力を感じにくいため、洗浄時において手と肌の間に泡のクッションができず、摩擦による刺激を与えてしまうといった問題があった。
【0006】
このような問題を解決するために、N-アシルグリシン塩(特許文献1)やアシルグルタミン酸型、アミドプロピルベタイン型の両性界面活性剤(特許文献2)を主成分としたクリーム状弱酸性皮膚洗浄料が開発されてきたが、洗い上がり後のしっとり感や泡の弾力感において満足する結果が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2018-25552
【特許文献2】特願2010-35181
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、泡立ち、泡の弾力感に優れ、しっとりとした洗い上がりとなるクリーム状弱酸性皮膚洗浄料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、
(A)ココイルグリシンカリウム
(B)ヤシ脂肪酸アルギニン
(C)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド
を含有し、成分(A)の含有量が20~40重量%であり、成分(B)の含有量が1~7重量%であり、成分(C)の含有量が0.01~0.5重量%であり、且つ、pHが5.0~7.0であることを特徴とするクリーム状弱酸性皮膚洗浄料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクリーム状弱酸性皮膚洗浄料は、泡立ち、泡の弾力感に優れ、しっとりとした洗い上がりとなるクリーム状弱酸性皮膚洗浄料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の成分(A)ココイルグリシンカリウムの含有量は、20~40重量%が好ましい。成分(A)の含有量が20重量%未満であると本洗浄料が固まらず、また含有量が40重量%を超えると硬くなりすぎてしまい、クリーム状の皮膚洗浄料とならない場合がある。
【0012】
成分(A)ココイルグリシンカリウムは、市販品としては、例えば、「アミライト GCK-11(F)」(味の素社製)等が挙げられる。
【0013】
本発明の成分(B)ヤシ脂肪酸アルギニンの含有量は、1~7重量%が好ましく、2~4重量%がより好ましい。成分(B)の含有量が1重量%未満であると、泡立ちの良さが不十分となる場合がある。一方、含有量が7重量%を超えると、洗い上がりの肌のしっとり感が不十分となる場合がある。
【0014】
成分(B)ヤシ脂肪酸アルギニンは、市販品としては、例えば、「アミノソープ AR-12」(味の素社製)等が挙げられる。
【0015】
本発明の成分(C)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドの含有量は、0.01~0.5重量%が好ましく、0.1~0.3重量%がより好ましい。成分(C)の含有量が0.01重量%未満であると、泡の弾力感が不十分となる場合がある。一方、含有量が0.5重量%を超えると、泡立ちの良さが不十分となる場合がある。
【0016】
成分(C)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドは、市販品としては、例えば、「ラボールガム CG-M」(DSP五協フード&ケミカル社製)等が挙げられる。
【0017】
尚、本発明におけるpHは、クリーム状皮膚洗浄料の1重量%水溶液の20℃におけるpHを示す。また、クリーム状とは20℃における硬度が3~90gであるものとする。硬度の測定は、レオメーターRT-3002D(レオテック社製)にて行うものとする。皮膚洗浄料を日栄樹脂工業社製の50mlテスト用クリーム容器(NFF-50)に50g入れて、そのクリーム容器に10mm径の円形アダプターを20mm/分の速さで幅1cm進入させ、その間の最大値を本発明の硬度とする。硬度が3~90gであると、容器から皮膚洗浄料が漏れ出すこともなく、消費者が使用するとき硬すぎることもなく、使用性の良いものとなる。
【0018】
さらに本発明のクリーム状弱酸性皮膚洗浄料は、発明の効果を損なわない範囲で、その使用目的に応じて界面活性剤、多価アルコールなどの保湿剤、グリチルリチン酸ジカリウムなどの消炎剤、香料、キレート剤、防腐剤、着色剤、水溶性高分子、美容成分、その他目的に応じた水溶性、油溶性の様々な成分を適宜含有することが可能である。
【実施例0019】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。例中の含有量はすべて重量%である。
【0020】
下記表1、2に挙げた組成を有するクリーム状弱酸性皮膚洗浄料を調製した。表中の実施例、比較例の1重量%水溶液の20℃におけるpHをpHメータF-51(堀場製作所社製)で測定したところ、どの例もpHが5.0~7.0の範囲にあることが確認された。また、20℃に保温した表中の実施例、比較例の硬度を上記の方法で測定すると、どの例も3~90gであることが確認された。
【0021】
15名の専門パネルにより、各クリーム状弱酸性皮膚洗浄料を使用した時の「泡立ちの良さ」、「泡の弾力感」、「洗い上がりの肌のしっとり感」の評価を行った。
(調製方法)
すべての成分を70~75℃で加温し、均一に溶解したことを確認した後、30℃まで冷却した。
(評価方法)
「泡立ちの良さ」については、専門パネルが評価し、以下の基準にて示した。
◎:泡立ちが良いと評価した人が13名以上。
○:泡立ちが良いと評価した人が10~12名。
△:泡立ちが良いと評価した人が6~9名。
×:泡立ちが良いと評価した人が5名以下。
「泡の弾力感」については、専門パネルが評価し、以下の基準にて示した。
◎:泡に弾力があると評価した人が13名以上。
○:泡に弾力があると評価した人が10~12名。
△:泡に弾力があると評価した人が6~9名。
×:泡に弾力があると評価した人が5名以下。
「洗い上がりの肌のしっとり感」については、専門パネルが評価し、以下の基準にて示した。
◎:洗い上がりの肌がしっとりしていると評価した人が13名以上。
○:洗い上がりの肌がしっとりしていると評価した人が10~12名。
△:洗い上がりの肌がしっとりしていると評価した人が6~9名。
×:洗い上がりの肌がしっとりしていると評価した人が5名以下。
【0022】
【表1】
※1:アミライト GCK-11(F)(味の素社製)
※2:SP シスロール EGDS MBAL-PA-(SG)(クローダジャパン社製)
※3:ベヘニルアルコール 65(高級アルコール工業社製)
※4:グリセリン RG・コ・P(日油社製)
※5:1,3-ブチレングリコール(ダイセル化学工業社製)
※6:くえん酸一水和物(米山薬品工業社製)
※7:ラボールガム CG-M(DSP五協フード&ケミカル社製)
※8:アミノソープ AR-12(味の素社製)
※9:アルホーム K-100(新日本理化社製)
※10:ダイヤポン K-SF(日油社製)
※11:アミノサーファクト ACDS-L(旭化成ファインケム社製)
※12:シノリンSP(新日本理化社製)
【0023】
表1の結果より、本発明の実施品である実施例1~5では、評価した全ての項目において優れていた。一方、比較例1に示したように、ヤシ脂肪酸アルギニンの含有量が1重量%未満である場合、泡立ちの良さにおいて満足する結果が得らえず、比較例2に示したように、ヤシ脂肪酸アルギニンの含有量が7重量%を超える場合、洗い上がりのしっとり感において満足する結果が得られなかった。また、比較例3に示したように、ヤシ脂肪酸アルギニンの代わりにヤシ脂肪酸カリウムを含有した場合、洗い上がりの肌のしっとり感において満足する結果が得られず、比較例4に示したように、ヤシ脂肪酸アルギニンの代わりにココイルメチルタウリンナトリウムを含有した場合、泡立ちの良さにおいて満足する結果が得られなかった。また、比較例5に示したように、ヤシ脂肪酸アルギニンの代わりにココイルグルタミン酸ナトリウムを含有した場合、泡の弾力感において満足する結果が得られず、比較例6に示したように、ヤシ脂肪酸アルギニンの代わりにラウリル硫酸ナトリウムを含有した場合、洗い上がりの肌のしっとり感において満足する結果が得られなかった。
【0024】
【表2】

※13:カチナール CLB-100(東邦化学工業社製)
※14:レオガードGP(ライオン社製)
※15:エコーガム(DSP五協フード&ケミカル社製)
【0025】
表2の結果より、本発明の実施品である実施例6~9では、評価した全ての項目において優れていた。一方、比較例7に示したように、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドの含有量が0.01重量%未満である場合、泡の弾力感において満足する結果が得られず、比較例8に示したように、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドの含有量が0.5重量%を超える場合、泡立ちの良さにおいて満足する結果が得られなかった。また、比較例9に示したように、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドの代わりにローカストビーンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドを含有した場合、泡立ちの良さにおいて満足する結果が得られず、比較例10に示したように、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドの代わりにポリクオタニウム-10を含有した場合、泡立ちの良さ、泡の弾力において満足する結果が得られなかった。また、比較例11に示したように、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドの代わりにキサンタンガムを含有した場合、泡の弾力において満足する結果が得られなかった。
【0026】
以下に泡立ち、泡の弾力感に優れ、しっとりとした洗い上がりとなるクリーム状弱酸性皮膚洗浄料の実施例を挙げる。これら皮膚洗浄料の1重量%水溶液の20℃におけるpHは5.0~7.0の範囲にあり、硬度は3~90gの範囲にあった。またいずれも、上記と同様の「泡立ちの良さ」、「泡の弾力感」、「洗い上がりの肌のしっとり感」の評価において満足できる結果が得られた。
【0027】
(実施例10;クリーム状弱酸性洗顔料)
(成分) (重量%)
1.ココイルグリシンカリウム※1 25.0
2.ステアリン酸グリコール※16 1.5
3.ベヘニルアルコール※3 4.0
4.グリセリン※4 25.0
5.精製水 残 余
6.クエン酸※6 2.5
7.グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド※7 0.1
8.ヤシ脂肪酸アルギニン水溶液※8 8.0
9.ジグリセリン※17 5.0
10.グリチルリチン酸ジカリウム※18 0.1
11.トコフェリルリン酸ナトリウム※19 0.3
12.ラウリン酸ポリグリセリル-10※20 1.0
13.植物抽出エキス 適 量
14.香料 適 量
(調製方法)
すべての成分を70~75℃で加温し、均一に溶解したことを確認した後、30℃まで冷却した。
※16:アヤコール EGS-MV(成和化成社製)
※17:ジグリセリン801(阪本薬品工業社製)
※18:グリチルリチン酸ジカリウム(日本製紙社製)
※19:トコフェリルリン酸ナトリウム(TPNa)(昭和電工社製)
※20:NIKKOL DECAGLYN 1-L(日光ケミカルズ社製)
【0028】
(実施例11;クリーム状弱酸性洗顔料)
(成分) (重量%)
1.ココイルグリシンカリウム※1 30.0
2.ジステアリン酸グリコール※2 1.5
3.ベヘニルアルコール※3 3.0
4.グリセリン※4 35.0
5.精製水 残 余
6.クエン酸※6 2.5
7.グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド※7 0.15
8.ヤシ脂肪酸アルギニン水溶液※8 12.0
9.ポリオキシエチレン(20)メチルグルコシド※21 3.0
10.グリコシルトレハロース・加水分解水添デンプン混合物※22 1.0
11.リン酸アスコルビルMg※23 0.3
12.ラウリン酸スクロース※24 1.0
13.セラミドNG※25 0.02
14.植物抽出エキス 適 量
15.香料 適 量
(調製方法)
すべての成分を70~75℃で加温し、均一に溶解したことを確認した後、30℃まで冷却した。
※21:GLUCAM(TM)E-20 HUMECTANT(日本ルーブリゾール社製)
※22:Tornare(林原社製)
※23:アスコルビン酸PM(昭和電工社製)
※24:サーフホープ SE COSME C-1216(三菱化学フーズ社製)
※25:CERAMIDE TIC-001(高砂香料工業社製)
【0029】
(実施例12;クリーム状ボディ用弱酸性洗浄料)
(成分) (重量%)
1.ココイルグリシンカリウム※1 35.0
2.ジステアリン酸グリコール※2 1.0
3.ベヘニルアルコール※3 2.5
4.グリセリン※4 30.0
5.PEG-6、PEG-32※26 2.0
6.精製水 残 余
7.クエン酸※6 2.5
8.グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド※7 0.2
9.ヤシ脂肪酸アルギニン水溶液※8 10.0
10.オリザノール※27 0.3
11.ポリクオタニウム-61BGグリセリン溶液※28 1.0
12.サーファクチンNa※29 0.1
13.ラウロイルメチルアラニンNa水溶液※30 4.0
14.植物抽出エキス 適 量
15.香料 適 量
(調製方法)
すべての成分を70~75℃で加温し、均一に溶解したことを確認した後、30℃まで冷却した。
※26:PEG#1500(日油社製)
※27:オリザガンマ-V(オリザ油化社製)
※28:Lipidure-NR(日油社製)
※29:カネカ・サーファクチン(カネカ社製)
※30:アラノン ALE(川研ファインケミカル社製)
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、泡立ち、泡の弾力感に優れ、しっとりとした洗い上がりとなるクリーム状皮膚洗浄料を提供できる。