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  • 特開-化粧持ち改善用粉末化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091422
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】化粧持ち改善用粉末化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20220614BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20220614BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220614BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20220614BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/19
A61K8/73
A61Q1/00
A61Q1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204249
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591275665
【氏名又は名称】三信鉱工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】豊田 直晃
(72)【発明者】
【氏名】木全 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡寺 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】浅野 浩志
(72)【発明者】
【氏名】浅井 巌
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB431
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC482
4C083AD152
4C083AD211
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD262
4C083AD272
4C083AD662
4C083BB26
4C083CC12
4C083DD17
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行を受け、飛沫感染による感染拡大防止の一環として、季節を問わず公共の場でのマスク着用が求められている。マスク着用機会の増加に伴い、化粧崩れやマスクへの色移り(二次付着)に悩む化粧品ユーザーが増えている。
【解決手段】特定のメディアン径を有する天然鉱物、あるいは合成鉱物と、水溶性多糖類を構成成分とした環境適合性の化粧料用球状複合粉体を含有する化粧持ち改善用粉末化粧料を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成成分として、下記成分(A)を含有する化粧持ち改善用粉末化粧料。
(A)構成成分として下記成分(a)、及び(b)を含有する化粧料用球状複合粉体
(a)メディアン径が0.5~2.1μmで、かつSi、Al、Mg、及びKのうち2種類以上を構成元素とする天然鉱物、及び/又は合成鉱物
(b)水溶性多糖類
【請求項2】
成分(A)の構成成分(a)が、下記物理特性を有することを特徴とする請求項1記載の化粧持ち改善用粉末化粧料。
構成成分(a)の40重量%水分散体をE型粘度計で測定したときのせん断粘度(せん断速度10/sec)が100mPa・s以上
【請求項3】
構成成分(b)が、澱粉であることを特徴とする請求項1又は2記載の化粧持ち改善用粉末化粧料。
【請求項4】
成分(A)の構成成分(b)が、種実澱粉であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の化粧持ち改善用粉末化粧料。
【請求項5】
成分(A)の構成成分(a)と構成成分(b)の重量比が、98:2~80:20であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の化粧持ち改善用粉末化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、球形性が高く、柔らかい感触特性を有する環境適合性の化粧料用球状複合粉体を含有する粉末化粧料に関する。メイクアップした肌上に、当該化粧料用球状複合粉体を含有する粉末化粧料を用いて二次的に化粧を施すことで、マスク着用による化粧崩れやマスクへの色移り(二次付着)を防止するとともに柔らかい感触特性を付与することができる。また、マスク着脱時の急激な湿度変化においても、乾燥感を抑え、肌に潤いを保つことができる。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行を受け、飛沫感染による感染拡大防止の一環として、季節を問わず公共の場でのマスク着用が求められている。マスク着用機会の増加に伴い、化粧崩れやマスクへの色移り(二次付着)に悩む化粧品ユーザーが増えている。
【0003】
マスク着用による化粧崩れの主な原因としては、マスクと肌との物理的接触による摩擦や、呼吸によるマスク内部の温度、湿度上昇に伴うムレ、皮脂の分泌等が挙げられる。
【0004】
化粧崩れや二次付着を防止することを目的とした従来技術として、二次的な化粧を施すことで化粧崩れを防止する製剤が開示されている。例えば、特許文献1に化粧崩れ防止用オーバーコート剤が開示されている。当該オーバーコート剤は、アイメイクなどを施した上から塗布することにより、化粧面に耐水性皮膜を形成することで、化粧持続性と二次付着防止特性を向上したものである。しかしながら当該発明は、アイメイクなどの比較的皮脂分泌量が少ない部位における化粧持続性と二次付着防止特性の向上を目的としている。
【0005】
また、特許文献2には、特定の化学構造を有するシリコーン樹脂を配合したことを特徴とする噴霧形態のオーバーコート化粧料が開示されている。しかしながら当該発明は、マスク着用時における物理的接触による摩擦を伴うような化粧崩れを想定したものではない。
【0006】
上述のような、化粧面に耐水性皮膜を形成する方法以外に、多孔質球状シリカを含有した粉末化粧料を、メイクアップを施した上から二次的に塗布する方法が考えられる。これは、球状粒子特有の転がりによる摩擦低減、及び多孔質球状シリカの優れた吸油特性から皮脂吸着による化粧崩れ防止を期待するものであるが、同時に肌上の水分も過剰に奪ってしまうことから、一般に乾燥感を引き起こすことが知られている。
【0007】
これに対して、過剰に分泌された皮脂をシリコーンエラストマー球状粉体で吸収させる方法が開示されている(特許文献3)。当該シリコーンエラストマー等の合成ポリマーは、多孔質球状シリカと比較して吸油吸湿特性が緩和であることから、塗布後の乾燥感を防ぐことができるとともに、その弾性的な変形特性により、柔らかい感触特性にも優れる。
【0008】
しかしながら、近年、プラスチックごみの海洋流出に伴う環境、及び生態系への悪影響が表面化し、世界的に関心が寄せられており(非特許文献1)、特に粒子径5mm以下の合成ポリマー粒子は、通称プラスチックマイクロビーズ(以下PMB)と呼称され、各国で規制対象となりつつある。
【0009】
このような背景のもと、環境適合性で、かつ感触の柔らかい従来のPMBに代替しうる化粧料用球状粉体の開発が潜在的に望まれており、ひいてはPMBを実質的に排除した上で、マスク着用による化粧崩れやマスクへの二次付着を防止する粉末化粧料の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007-320905号公報
【特許文献2】特開2011-213669号公報
【特許文献3】特開2001-114623号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】甲子園大学紀要 No.45、p37-44(2018) プラスチックによる海洋汚染の現状と課題、とくにマイクロプラスチックについて
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本願発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、球形性が高く、感触の柔らかい環境適合性の化粧料用球状複合粉体を含有することで、マスク着用による化粧崩れやマスクへの色移り(二次付着)防止特性を有する粉末化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる実情において、本願発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の鉱物、及び水溶性多糖類から構成される凝集粒子が、球形性が高く、感触の柔らかい化粧料用球状複合粉体として利用でき、当該球状複合粉体を含有する粉末化粧料が、メイクアップした肌上に二次的に化粧を施すことで、マスク着用による化粧崩れやマスクへの色移り(二次付着)を防止するとともに柔らかい感触特性を付与できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0014】
本願発明は、特定のメディアン径を有する鉱物と、水溶性多糖類とを含有する化粧料用球状複合粉体を含有することを特徴とする化粧持ち改善用粉末化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本願発明は、球形性が高く、感触の柔らかい環境適合性の化粧料用球状複合粉体を含有する化粧持ち改善用粉末化粧料を提供するものである。メイクアップした肌上に、当該粉末化粧料を用いて二次的に化粧を施すことで、マスク着用による化粧崩れやマスクへの色移り(二次付着)を防止するとともに柔らかい感触特性を付与することができる。また、マスク着脱時の急激な湿度変化においても、乾燥感を抑え、肌に潤いを保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】粒子製造実施例1で得られた化粧料用球状複合粉体の電子顕微鏡像
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本願発明の、球形性が高く、感触の柔らかい環境適合性の化粧料用球状複合粉体を含有する化粧持ち改善用粉末化粧料を、その好ましい実施形態に基づいて説明する。本願発明によれば、マスク着用による化粧崩れやマスクへの色移り(二次付着)防止特性を有する粉末化粧料を得ることができる。
【0018】
本願発明の化粧持ち改善効果とは、マスク着用による化粧崩れやマスクへの色移り(二次付着)防止特性をいう。
【0019】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)の構成成分(a)は、Si、Al、Mg、及びKのうち2種類以上を構成元素とする天然鉱物、あるいは合成鉱物であり、通常、化粧料に用いられる鉱物であれば特に限定されない。例えば、構成元素としてSi、Mgを含有するタルク、構成元素としてSi、Al、Kを含有するセリサイト、構成元素としてSi、Alを含有するカオリン等が挙げられる。
【0020】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)の構成成分(a)のメディアン径は、0.5~2.1μmである。より好ましくは0.6~1.5μmである。2.1μmよりも大きいと、得られる化粧料用球状複合粉体の球形性が低下する。0.5μm以上であれば、良好な球形性を有する化粧料用球状複合粉体を得ることができる。
【0021】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)の構成成分(a)のメディアン径は、汎用の粒度分布測定装置によって特定することができる。例えば、レーザー回折方式、光散乱方式、画像解析方式のいずれを用いても良い。これらの中で、本願発明の粒子径範囲を測定することを考慮すると、レーザー回折方式が好ましく、具体的には、Partica LA-950V2(HORIBA社製)等を用いてメディアン径を測定することができる。
【0022】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)の構成成分(a)としては、市販品を用いることができる。例えば、ナノエース D-600(成分:タルク、メディアン径:0.6μm、日本タルク社製)や、ナノエース D-1000F(成分:タルク、メディアン径1.0μm:日本タルク社製)等を用いることができる。また、目的とするメディアン径を有する鉱物を得るために、2.1μmよりも大きいメディアン径の鉱物に機械的粉砕処理を加えて別途調製しても良い。
【0023】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)の構成成分(a)の物理特性として、さらに重要なのは、構成成分(a)の分散状態の指標となるせん断粘度である。分散状態により球状複合粉体の球形性が変化する。本願発明では、構成成分(a)の40重量%水分散体をE型粘度計で測定したときに得られるせん断粘度(せん断速度10/sec)は、100mPa・s以上である。より好ましくは1,000mPa・s以上、最も好ましくは10,000mPa・s以上である。40重量%水分散体のせん断粘度が100mPa・sよりも小さい天然鉱物、あるいは合成鉱物では、得られる化粧料用球状複合粉体の球形性が低下する恐れがある。40重量%水分散体のせん断粘度が100mPa・s以上の天然鉱物、あるいは合成鉱物であれば、球形性の良好な化粧料用球状複合粉体を得ることができる。
【0024】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)を構成する天然鉱物、あるいは合成鉱物の40重量%水分散体のせん断粘度は、汎用のE型粘度計を用いて一定せん断速度下でのせん断粘度として特定することができる。具体的には、Physica MCR 301(アントンパール社製)を用いてせん断粘度を測定することができる。
【0025】
上記物理的特性を考慮すると、本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)の構成成分(a)として、より好ましくはタルク、カオリンであり、最も好ましくはタルクである。
【0026】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)の構成成分(b)水溶性多糖類は、通常、化粧料に用いられる水溶性多糖類であれば特に限定されない。具体的には、例えば、澱粉、水溶性セルロース誘導体、及びその塩等が挙げられる。澱粉としては、例えば、米澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ等の種実澱粉や、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉等の根茎澱粉が挙げられる。水溶性セルロース誘導体、及びその塩としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。
【0027】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)の構成成分(b)として、好ましくは澱粉である。より好ましくは種実澱粉であり、最も好ましくは米澱粉である。種実澱粉は、根茎澱粉と比較して水膨潤性が低いため、水溶液粘度が比較的低く、ハンドリング性が良い。澱粉は、水溶性多糖類の中でも、吸湿、及び保水機能に優れることから、構成成分(b)を澱粉とした成分(A)を含有した当該粉末化粧料は、急激な湿度変化を生じる環境においても、乾燥感を抑え、潤いを保つことができる。
【0028】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)の複合化工程における、構成成分の水分散体濃度(構成成分(a)と構成成分(b)の含有量を合計した水中濃度)は2~40重量%である。より好ましくは5~20重量%である。40重量%よりも大きいと、構成成分(a)と構成成分(b)を含有する水分散体の粘度が高くなり、ハンドリング性が低下する。2重量%よりも小さいと、固形分濃度が少なくなることで、化粧料用球状複合粉体の収率が低下する。
【0029】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)のメディアン径は、3~30μmである。より好ましくは5~20μmである。30μmよりも大きいと粒感を生じ、柔らかい感触特性に劣る。
【0030】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)の固形分重量比(鉱物の含有量:水溶性多糖類の含有量)は、98:2~80:20である。より好ましくは95:5~85:15である。水溶性多糖類の構成割合が20重量%よりも大きいと、複合化工程における水分散体の粘度が高くなり、ハンドリング性が低下する。一方、2重量%よりも小さいと、鉱物間のつなぎ成分が少なくなることで、化粧料用球状複合粉体の収率が低下する。
【0031】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)は、未処理で使用することもできるが、適宜、表面処理を施して使用しても良い。表面処理剤としては、通常、化粧料用粉体に用いられる表面処理剤であれば特に限定されない。具体的な表面処理剤として、例えば、フッ素化合物、シリコーン化合物、エステル化合物、金属石鹸、ロウ、油脂、炭化水素等が挙げられる。
【0032】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)は、以下に示す水分散体調製工程(1)、(2)、及び複合化工程(3)を経て調製される。
(1)機械式撹拌機を用いて、水溶性多糖類の水溶液を得る。この際、水溶性多糖類を水中へ溶解させるために、適宜加熱して溶解させることができる。
(2)工程(1)で得られた水溶性多糖類の水溶液に鉱物を添加し、機械式撹拌機を用いて、水分散体を得る。
(3)工程(2)で得られた分散体を噴霧乾燥機に供し、高温場における微細液滴の急速固化により、鉱物と水溶性多糖類からなる化粧料用球状複合粉体を得る。
【0033】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)の製造工程(1)、及び(2)において使用される機械式撹拌機は、通常、液中分散操作に用いられる撹拌機であれば特に限定されない。例えば、ディスパーミキサー、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー等が挙げられる。
【0034】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)の製造工程(2)において、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)やポリ塩化アルミニウム(PAC)等の凝集剤や、その他、無機塩等を用いて水分散体の粘度を適宜調整しても良い。
【0035】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)の製造工程(3)において使用される噴霧乾燥機は、通常、造粒体製造に用いられる噴霧乾燥機であれば特に限定されない。噴霧乾燥機は、噴霧機構の違いにより、大きくノズル方式と回転ディスク方式に分類できるが、いずれの噴霧機構を備える噴霧乾燥機も用いることができる。
【0036】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)の製造において、好ましいメディアン径を有する化粧料用球状複合粉体を得るためには、上記噴霧乾燥機のなかでも、特に2流体以上のノズル方式、又は回転ディスク方式噴霧機構を備える噴霧乾燥機を用いることが好ましい。
【0037】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)化粧料用球状複合粉体の含有量は、1~50重量%である。より好ましくは5~40重量%であり、最も好ましくは10~30重量%である。1重量%より少ないと、化粧持ち改善の効果が劣る傾向にあり、50重量%含有すれば十分な化粧持ち改善効果を得ることができる。
【0038】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する上記以外の粉末としては、例えば、タルク、セリサイト、マイカ、合成マイカ、シリカ、硫酸バリウム、アルミナ、窒化ホウ素、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等の無機粉末、シルクパウダー、結晶セルロースパウダー等の有機粉末等が挙げられ、これらより1種又は2種以上を用いることができる。また、これら粉末はフッ素化合物、シリコーン化合物、界面活性剤、脂肪酸、ワックス等の通常公知の処理剤により表面処理を施して用いてもよい。
【0039】
本願発明の粉末化粧料に含有する上記以外の構成成分として、化粧料において一般的に用いられる油剤を含有することができる。油剤としては、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、セチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2-ヘキシルデカノール、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリル酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル類、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オリーブ油、マカデミアナッツ油、ヒマワリ油、ラノリン、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ビーズワックス、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、鎖状又は環状のジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0040】
また、本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する上記成分に加えて、化粧料において一般的に用いられるその他の成分を含有してもよく、例えば、界面活性剤、香料、薬効成分、清涼剤、紫外線吸収剤、安定化剤、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、粘度調整剤、防腐剤、美容成分等が挙げられる。
【0041】
本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料基材は、通常の粉末化粧料を製造する装置を使用し、構成成分を撹拌混合して調製される。具体的には、成分(A)を含む粉末を均一に混合する。この粉末に油剤を加えて均一に分散させ、粉砕することにより、粉末化粧料を得る。
【実施例0042】
以下、本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)の粒子製造実施例、及び成分(A)を含有する粉末化粧料の実施例により本願発明をさらに詳細に説明するが、本願発明はこれにより何ら制限されるものではない。尚、表中の数値は含有量(重量%)を意味する。まず、本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料に含有する成分(A)化粧料用球状複合粉体の粒子製造実施例を挙げる。
【0043】
(製造方法)粒子製造実施例1~8、粒子製造比較例1
工程(1):下記表1の成分8~10(水溶性多糖類)を成分11(蒸留水)中に添加し、ホモミキサー(T.K.ロボミックス;プライミクス社製)を用いて水溶液を調製した。成分8、及び9の溶解には、予め90℃に加温した蒸留水を用いた。
工程(2):下記表1の成分1~7(鉱物)を、工程(1)で得た水溶性多糖類の水溶液中に添加し、ホモミキサーを用いて、下記条件により鉱物と水溶性多糖類の水分散体を調製した。この際、水分散体濃度が9.2重量%、及び鉱物と水溶性多糖類の固形分重量比が87:13となるようにそれぞれ調整した。
ホモミキサー回転速度:5000rpm
分散処理時間:30分
工程(3):工程(2)で得られた水分散体を、下記条件のもと噴霧乾燥機(L-12型;大川原化工機社製)に供し、成分1~10からなる化粧料用球状複合粉体を得た。
噴霧方式:回転ディスク
ディスク回転速度:25,000rpm
水分散体流量:160mL/分
給気温度:220℃
排気温度:105℃
【0044】
(球形性評価方法)
上記粒子製造例、及び粒子製造比較例の化粧料用球状複合粉体の球形性について、走査型電子顕微鏡を用いて拡大倍率500倍で観察するときに、その観察視野に当該複合粉体が100個以上存在する条件で、円形度が0.95以上の複合粉体を球形とみなし、その球状と認められる複合粉体の個数割合を、以下に示す判定基準に従って判定した。(円形度の計算は、画像解析から複合粉体の投影面積と周長を求め算出した。)
<判定基準>
〔球形と認められる複合粉体の個数割合〕 〔判定〕
75%以上 ◎
50%以上 ○
50%未満 △
25%未満 ×
【0045】
(柔らかさ評価方法)
20~40代の化粧品専門パネル5名に、上記粒子製造実施例、及び粒子製造比較例の化粧料用球状複合粉体を指先、あるいは手の甲に伸ばして柔らかさについて、以下の評価基準により評点を付し、化粧料用球状複合粉体ごとに評点の平均点を算出して、以下に示す判定基準に従って判定した。
<評価基準>
〔使用性〕 〔評点〕
非常に良好 :5
良好 :4
普通 :3
やや不良 :2
不良 :1
<判定基準>
〔評点の平均点〕 〔判定〕
4.5以上 ◎
3.5以上4.5未満 ○
2以上3.5未満 △
2未満 ×
【0046】
【表1】
※1 ナノエース D-1000F(日本タルク社製)
※2 ナノエース D-600(日本タルク社製)
※3 FG-15F(日本タルク社製)
※4 SG-95(日本タルク社製)
※5 P-3(日本タルク社製)
※6 セリサイト FSE(三信鉱工社製)を、機械的粉砕工程により微粒化
※7 ASP-170(BASF社製)を、機械的粉砕工程により微粒化
【0047】
表1の粒子製造実施例1~3で用いた各鉱物(タルク、セリサイト、カオリン)の、40重量%水分散体におけるせん断粘度(せん断速度10/sec)は、それぞれ、81,650、340、2,920mPa・sである。
【0048】
図1に、粒子製造実施例1で得られた化粧料用球状複合粉体の電子顕微鏡像を示す。非常に球形性の高い球状複合粉体が得られた。
【0049】
同等のメディアン径を有する鉱物の種類を変えて化粧料用球状複合粉体の製造を実施した結果、いずれも良好な球状複合粉体が得られ、特に鉱物としてタルクを用いた系で最も良好な球形性を有する球状複合粉体が得られた(粒子製造実施例1~3)。
【0050】
メディアン径の異なるタルクを用いて化粧料用球状複合粉体の製造を実施した結果、メディアン径2.1μm以下のタルクを用いた系では、良好な球形性を有する球状複合粉体が得られたが、メディアン径5μmのタルクを用いた系では球形性が低下した(粒子製造実施例1、6~8、粒子製造比較例1)。
【0051】
水溶性多糖類の種類を変えて化粧料用球状複合粉体の製造を実施した結果、いずれも良好な球状複合粉体が得られ、特に水溶性多糖類として米澱粉、カルボキシメチルセルロースNaを用いた系で最も良好な球形性を有する球状複合粉体が得られた(粒子製造実施例1、4、5)。
【0052】
(製造方法)粒子製造実施例9~14
工程(1):下記表2の成分2を予め90℃に加温した成分3中に添加し、ホモミキサー(T.K.ロボミックス;プライミクス社製)を用いて水溶液を調製した。
工程(2):下記表2の成分1を、工程(1)で得た成分2の水溶液中に添加し、ホモミキサーを用いて、下記条件により鉱物と水溶性多糖類の水分散体を調製した。この際、水分散体濃度が1~45重量%となるように、それぞれ調整した。また、鉱物と水溶性多糖類の固形分重量比が87:13となるように調整した。
ホモミキサー回転速度:5000rpm
分散処理時間:30分
工程(3):工程(2)で得られた水分散体を噴霧乾燥機(MDL-050B型;藤崎電機社製)に供し、成分1、及び2からなる化粧料用球状複合粉体を得た。
噴霧方式:3流体ノズルPN3005
水分散体流量:45mL/分
給気温度:250℃
排気温度:105℃
【0053】
【表2】
【0054】
表2の粒子製造実施例9~14では、タルクと米澱粉の固形分重量比を87:13に固定し、水分散体濃度を変えて化粧料用球状複合粉体の製造を実施した。構成成分の水分散体濃度が2~40重量%の系では、良好な球形性、及び柔らかさを有する球状複合粉体が得られ、特に構成成分の水分散体濃度が5重量%、及び20重量%の系で、最も良好な球形性、及び柔らかさを有する球状複合粉体が得られた(粒子製造実施例9~12)。構成成分の水分散体濃度が1重量%の系では、粒子製造実施例9~12と比較して球状複合粉体の収率が低く、球形性、及び柔らかさも劣る結果であった(粒子製造実施例13)。また構成成分の水分散体濃度が45重量%の系では、球状複合粉体の収率は高かったが、粒子製造実施例9~12と比較して球形性、及び柔らかさで劣る結果であった(粒子製造実施例14)。
【0055】
(製造方法)粒子製造実施例15~20
工程(1):下記表3の成分2を予め90℃に加温した成分3中に添加し、ホモミキサー(T.K.ロボミックス;プライミクス社製)を用いて水溶液を調製した。
工程(2):下記表3の成分1を、工程(1)で得た成分2の水溶液中に添加し、ホモミキサーを用いて、下記条件により鉱物と水溶性多糖類の水分散体を調製した。この際、鉱物と水溶性多糖類の固形分重量比が99:1~75:25となるように、それぞれ調整した。また、水分散体濃度が9.2重量%となるように調整した。
ホモミキサー回転速度:5000rpm
分散処理時間:30分
工程(3):工程(2)で得られた水分散体を噴霧乾燥機(MDL-050B型;藤崎電機社製)に供し、成分1、及び2からなる化粧料用球状複合粉体を得た。
噴霧方式:4流体ノズルSE4003
水分散体流量:45mL/分
給気温度:250℃
排気温度:105℃
【0056】
【表3】
【0057】
表3の粒子製造実施例15~20では、タルクと米澱粉の水分散体濃度を9.2重量%に固定し、固形分重量比を変えて化粧料用球状複合粉体の製造を実施した。構成成分の固形分重量比が98:2~80:20の系では、良好な球形性、及び柔らかさを有する球状複合粉体が得られ、特に構成成分の固形分重量比が95:5、及び85:15の系で、最も良好な球形性、及び柔らかさを有する球状複合粉体が得られた(粒子製造実施例15~18)。構成成分の固形分重量比が99:1、及び75:25の系では、粒子製造実施例15~18と比較して、いずれも球状複合粉体の球形性、及び柔らかさで劣る結果であった(粒子製造実施例19、20)。
【0058】
続いて以下に、本願発明の化粧持ち改善用粉末化粧料の実施例を挙げる。尚、表中の数値は含有量(重量%)を意味する。
【0059】
【表4】
【0060】
(製造方法)実施例1~8、比較例1、2
成分1~6(粉体部)をヘンシェルミキサーにて均一に混合し、アトマイザーにて粉砕を行った。さらに、粉体部の混合粉砕物と、予め混合した成分7、及び8(油剤部)をヘンシェルミキサーに加えて均一に混合し、アトマイザー粉砕後、ふるいを通して粉末化粧料を得た。
【0061】
(評価方法1:化粧持ち)
20~40代の化粧品専門パネル5名に、下記に示す化粧持ち評価用パウダーファンデーションを塗布した上から本願発明の実施例、及び比較例の粉末化粧料を使用してもらい、マスクを着用して3時間後の頬部の化粧崩れ(特にテカリ、化粧膜のはがれに着目して評価)、及びマスクへの二次付着の無さについて総合的に判断して、以下の評価基準により評点を付し、粉末化粧料ごとに評点の平均点を算出して、以下に示す判定基準に従って判定した。
<評価基準>
〔化粧持ち〕 〔評点〕
非常に良好 :5
良好 :4
普通 :3
やや不良 :2
不良 :1
<判定基準>
〔評点の平均点〕 〔判定〕
4.5以上 ◎
3.5以上4.5未満 ○
2以上3.5未満 △
2未満 ×
【0062】
(評価方法2:使用感)
20~40代の化粧品専門パネル5名に、下記に示す化粧持ち評価用パウダーファンデーションを塗布した上から本願発明の実施例、及び比較例の粉末化粧料を使用してもらい、肌に塗布する際の柔らかさについて、以下の評価基準により評点を付し、粉末化粧料ごとに評点の平均点を算出して、以下に示す判定基準に従って判定した。
<評価基準>
〔使用感〕 〔評点〕
非常に良好 :5
良好 :4
普通 :3
やや不良 :2
不良 :1
<判定基準>
〔評点の平均点〕 〔判定〕
4.5以上 ◎
3.5以上4.5未満 ○
2以上3.5未満 △
2未満 ×
【0063】
〔化粧持ち評価用パウダーファンデーション〕
成分名 含有量(重量%)
1.シリコーン処理合成マイカ 残量
2.シリコーン処理セリサイト 10.00
3.シリコーン処理タルク 15.00
4.シリコーン処理顔料級酸化チタン 10.00
5.シリコーン処理黄酸化鉄 3.30
6.シリコーン処理弁柄 0.40
7.シリコーン処理黒酸化鉄 0.19
8.無水ケイ酸 5.00
9.酢酸セルロース 5.00
10.メチルパラベン 0.20
11.エチルパラベン 0.10
12.塩化ナトリウム 0.10
13.ジメチコン 2.00
14.ジイソノナン酸ネオペンチルグリコール 5.00
15.メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 4.00
16.(イソステアリン酸/ベヘン酸)
(グリセリル/ポリグリセリル-6)エステルズ 0.80
17.トコフェロール 0.05
18.香料 0.05
合計100.00
【0064】
(製造方法)化粧持ち評価用パウダーファンデーション
成分1~12(粉体部)をヘンシェルミキサーにて均一に混合し、アトマイザーにて粉砕を行った。さらに、粉体部の混合粉砕物と、予め加熱混合しておいた成分13~18(油剤部)をヘンシェルミキサーに加えて均一に混合し、アトマイザー粉砕後、ふるいを通して化粧持ち評価用パウダーファンデーション基材を得た。当該基材を中皿に充填し、圧縮成型することで化粧持ち評価用パウダーファンデーションを得た。
【0065】
本願発明の実施例1~8は、マスク着用による化粧崩れやマスクへの二次付着を防止するとともに柔らかい感触特性に優れた粉末化粧料であった。
【0066】
成分(A)化粧料用球状複合粉体を含有しない系(比較例1)では化粧持ちが不十分であった。成分(A)化粧料用球状複合粉体の含有量が1重量%未満の系(実施例2)では、化粧持ちがやや劣る傾向にあり、10重量%以上配合した系(実施例1、5~8)では、化粧持ち、及び使用感に優れる傾向であった。また、実施例のうち、成分(A)の含有量が10~30重量%の系(実施例1、5、6)では、特にマスク着脱時の乾燥感がなく、潤いを感じる傾向であった。これは、成分(A)の構成成分である水溶性多糖類、ここでは米澱粉であるが、その優れた吸湿、保水機能によるものと考えられる。本結果から、成分(A)の含有量が10重量%以上である粉末化粧料において、本願発明の効果が十分に発揮されることを確認できた。また、成分(A)の含有量が10~30重量%である粉末化粧料においては、さらに優れた効果を示した。成分(A)の代わりに無水ケイ酸を含有した系では、使用感が不十分であるとともに、マスクの着脱時に明らかな乾燥感を感じるという付帯意見があった(比較例2)。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本願発明は、球形性が高く、感触の柔らかい環境適合性の化粧料用球状複合粉体を含有する化粧持ち改善用粉末化粧料を提供するものである。メイクアップした肌上に、当該化粧料用球状複合粉体を含有する粉末化粧料を用いて二次的に化粧を施すことで、マスク着用による化粧崩れやマスクへの色移り(二次付着)を防止するとともに柔らかい感触特性を付与することができる。また、マスク着脱時の急激な湿度変化においても、乾燥感を抑え、肌に潤いを保つことができる。
図1