(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091433
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料の製造方法、及び濾過システム
(51)【国際特許分類】
C12H 1/075 20060101AFI20220614BHJP
C12H 1/04 20060101ALI20220614BHJP
A23L 2/70 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C12H1/075
C12H1/04
A23L2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204269
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】濱口 哲
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 龍之介
【テーマコード(参考)】
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B117LC09
4B117LP01
4B117LP20
4B128AC12
4B128AG09
4B128AP18
4B128AS04
4B128AT07
(57)【要約】
【課題】ビールテイスト飲料の混濁安定性を向上させることができるビールテイスト飲料の製造方法、及び濾過システムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、ビールテイスト飲料Bを濾過するビールテイスト飲料Bの製造方法であって、タンク20の内部にビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液を流入する工程と、タンク20の内部においてビールテイスト飲料B及び安定化処理剤Rを互いに接触させる工程と、ビールテイスト飲料B及び安定化処理剤Rをクロスフロー濾過装置に導入してビールテイスト飲料Bを濾過する工程と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビールテイスト飲料を濾過するビールテイスト飲料の製造方法であって、
タンクの内部にビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する工程と、
前記タンクの内部において前記ビールテイスト飲料及び前記安定化処理剤を互いに接触させる工程と、
前記ビールテイスト飲料及び前記安定化処理剤をクロスフロー濾過装置に導入して前記ビールテイスト飲料を濾過する工程と、
を備えるビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項2】
前記ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する工程では、前記ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を前記タンクの側面から流入する、
請求項1に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項3】
前記ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する工程では、前記側面の鉛直方向の中央部、又は前記中央部よりも高い位置から前記ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する、
請求項2に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項4】
前記ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する工程では、前記タンクの平面視における前記ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液の流入部を接点として接線を引いたときに、前記ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する方向と前記接線との成す角度θが鋭角となるように前記ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項5】
前記ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する工程では、前記ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を、0.30m/s以上且つ2.00m/s以下の流入速度で前記タンクの内部に流入する、
請求項1~4のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項6】
ビールテイスト飲料を濾過する濾過システムであって、
ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液が流入し、内部において前記ビールテイスト飲料及び前記安定化処理剤を互いに接触させるタンクと、
前記ビールテイスト飲料及び前記安定化処理剤が導入されるクロスフロー濾過装置と、
を備える濾過システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ビールテイスト飲料の製造方法、及び濾過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビールテイスト飲料を製造する製造方法、及びビールテイスト飲料を濾過する濾過システムとしては従来から種々のものが知られている。特開2010-17177号公報には、ビールテイスト飲料の製造方法の一種としてビール安定化処理方法が記載されている。ビール安定化処理方法では、ビールの混濁安定性を改善するため、シリカゲルを利用してビールに含まれるタンパク質を除去する。
【0003】
シリカゲルがビールと接触することにより、ビールに含まれるタンパク質がシリカゲルに吸着する。そして、ビールとシリカゲルを含む混合物が濾過機に導入されてビールからシリカゲルが除去される。ビールに含まれるタンパク質が除去されると、ビールに含まれるポリフェノールがタンパク質を結合しなくなるため、混濁原因物質の生成が抑制されてビールの混濁安定性が改善する。上記の公報には、ビール安定化処理用シリカゲルとビールを接触させた後、シリカゲルをクロスフローメンブレン濾過にて分離することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、シリカゲルがビールと接触することによってビールの混濁安定性が改善する。しかしながら、シリカゲル等の安定化処理剤とビールテイスト飲料との接触時間が短い場合、混濁原因物質の生成が十分に抑制されないことがあり、ビールテイスト飲料の混濁安定性の点で改善の余地がある。すなわち、ビールテイスト飲料の混濁安定性の点において改善の余地がある。
【0006】
本開示は、ビールテイスト飲料の混濁安定性を向上させることができるビールテイスト飲料の製造方法、及び濾過システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るビールテイスト飲料の製造方法は、ビールテイスト飲料を濾過するビールテイスト飲料の製造方法であって、タンクの内部にビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する工程と、タンクの内部においてビールテイスト飲料及び安定化処理剤を互いに接触させる工程と、ビールテイスト飲料及び安定化処理剤をクロスフロー濾過装置に導入してビールテイスト飲料を濾過する工程と、を備える。
【0008】
このビールテイスト飲料の製造方法では、タンクの内部にビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入し、タンクの内部においてビールテイスト飲料及び安定化処理剤を互いに接触させる。このように、タンクを用いてタンクの内部において安定化処理剤をビールテイスト飲料に接触させることにより、十分に時間をかけて安定化処理剤をビールテイスト飲料に接触させることが可能となる。従って、安定化処理剤とビールテイスト飲料との接触時間を十分に確保することができるので、ビールテイスト飲料の混濁安定性を高めることができる。その結果、ビールテイスト飲料の混濁安定性を高めることができる。
【0009】
ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する工程では、ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液をタンクの側面から流入してもよい。この場合、タンクの側面からビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液がタンクの内部に流入するので、タンクの内部におけるビールテイスト飲料と安定化処理剤との接触時間を長く確保することができる。従って、ビールテイスト飲料の混濁安定性をより高めることができる。
【0010】
ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する工程では、側面の鉛直方向の中央部、又は中央部よりも高い位置からビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入してもよい。この場合、タンクの側面における鉛直方向の中央部以上の高さ位置からビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入することにより、タンクの内部における安定化処理剤の滞留時間をより長くすることができる。従って、安定化処理剤とビールテイスト飲料との接触時間を長く確保してビールテイスト飲料の混濁安定性をより高めることができる。
【0011】
ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する工程では、タンクの平面視におけるビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液の流入部を接点として接線を引いたときに、ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する方向と接線との成す角度θが鋭角となるようにビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入してもよい。この場合、タンクの内面においてタンクの周方向に沿うようにビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液が流入するので、安定化処理剤が短時間で下方に移動することを抑制することができる。従って、タンクの内部における安定化処理剤の滞留時間を長くすることができるので、ビールテイスト飲料及び安定化処理剤の接触時間を長く確保してビールテイスト飲料の混濁安定性を一層高めることができる。
【0012】
ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する工程では、ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を、0.30m/s以上且つ2.00m/s以下の流入速度でタンクの内部に流入してもよい。ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液(以下では、当該混合液と称することもある)を0.30m/s以上でタンクの内部に流入することにより、タンクの内部への当該混合液の流入を効率よく行うことができる。また、当該混合液を2.00m/s以下でタンクの内部に流入することにより、タンクの内部にゆっくりと当該混合液を流入できるので、安定化処理剤を短時間で排出されにくくすることができると共に安定化処理剤の使用量を抑えることができる。
【0013】
本開示に係る濾過システムは、ビールテイスト飲料を濾過する濾過システムであって、ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液が流入し、内部においてビールテイスト飲料及び安定化処理剤を互いに接触させるタンクと、ビールテイスト飲料及び安定化処理剤が導入されるクロスフロー濾過装置と、を備える。
【0014】
この濾過システムは、タンクを備え、タンクの内部にビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液が流入する。そして、タンクの内部において、流入した安定化処理剤とビールテイスト飲料とが互いに接触する。従って、タンクを用いてタンクの内部において安定化処理剤をビールテイスト飲料に接触させることにより、十分に時間をかけて安定化処理剤をビールテイスト飲料に接触させることが可能となる。よって、安定化処理剤とビールテイスト飲料との接触時間を十分に確保することができるので、ビールテイスト飲料の混濁安定性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、ビールテイスト飲料の混濁安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る濾過システムを模式的に示す図である。
【
図2】実施形態に係るクロスフロー濾過装置の濾過に関する構成を模式的に示す図である。
【
図3】実施形態に係る濾過システムのタンクを模式的に示す斜視図である。
【
図4】実施形態に係るタンクの模式的な平面図である。
【
図5】実施形態に係るタンクの模式的な平面図である。
【
図6】変形例に係るタンクの模式的な斜視図である。
【
図7】実施例に係るタンクにおける排出粒子割合の時系列データを示すグラフである。
【
図8】実施例に係るタンクにおける排出粒子割合の時系列データを示すグラフである。
【
図9】実施例に係るタンクにおける排出粒子割合の時系列データを示すグラフである。
【
図10】実施例に係るタンクにおける排出粒子割合の時系列データを示すグラフである。
【
図11】実施例に係るタンクにおける排出粒子割合の時系列データを示すグラフである。
【
図12】実施例に係るタンクにおける排出粒子割合の時系列データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら本開示に係るビールテイスト飲料の製造方法及び濾過システムについて説明する。図面の説明について、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0018】
本開示において、「ビールテイスト飲料」とは、ビールの味わいを奏する飲料、及び、ビールを飲用した感覚を飲用者に与える飲料を含む。アルコール度数が1%以上であるビールテイスト飲料は、ビールテイストアルコール飲料とも称される。ビールテイスト飲料は、原料として麦芽を使用するビール、発泡酒、ノンアルコールビール、リキュール(例えば、酒税法上「リキュール(発泡性)(1)」に分類される飲料)等の麦芽発酵飲料、及び、原料として麦又は麦芽を使用しないビールテイスト飲料(例えば、酒税法上「その他の醸造酒(発泡性)(1)」に分類される飲料)を含んでいる。
【0019】
「濾過」とは、液体を濾過装置に通して当該液体に含まれている粒子(固形分)を捕捉(物理的濾過)することを示している。「濾過」は、ビールテイスト飲料の原液から酵母を濾過して酵母を除去することであってもよい。「原液」は、濾過前又は濾過中の液体を示している。例えば、「濾過」を行うことによってビールテイスト飲料から酵母が除去されてビールテイスト飲料の透明度が向上する。
【0020】
「タンク」とは、液体を含む流体を貯留する容器であって、柱状、筒状又は箱状の収容容器を示している。実施形態では、タンクの内部にビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入し、タンクの内部において安定化処理剤及びビールテイスト飲料の接触時間が確保される。「安定化処理剤」は、濾過のための助剤であって、例えば、原液に入れられる粉体を示している。
【0021】
「安定化処理剤」は、混濁安定性を改善するために用いられる処理剤である。「安定化処理材」は、例えば、二酸化ケイ素(シリカ、若しくは無水ケイ酸)又はシリカゲルであるが、特に限定されない。本実施形態では、安定化処理剤は、ビールテイスト飲料と接触することにより、ビールテイスト飲料の酵母に含まれるタンパク質が安定化処理剤に吸着し、ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合物が濾過装置に導入されてビールテイスト飲料から除去される。ビールテイスト飲料に含まれるタンパク質が除去されると、ビールテイスト飲料に含まれるポリフェノールがタンパク質を結合しなくなるので、混濁原因物質の生成が抑制されてビールテイスト飲料の混合安定性が改善する。
【0022】
図1は、実施形態に係る濾過システム1を模式的に示している。
図1に示されるように、本実施形態に係る濾過システム1は、クロスフロー濾過装置10と、ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液が流入すると共に安定化処理剤とビールテイスト飲料との接触時間を確保するタンク20と、を備える。例えば、濾過システム1は、ビールテイスト飲料の醸造工程において用いられる。
【0023】
タンク20は、ビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rとが互いに接触する接触時間を確保する接触時間確保用のタンクであって、タンク20でビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rが一定時間以上接触することによって、ビールテイスト飲料Bの混濁安定性を向上させることができる。「混濁安定性」は、例えば、混濁耐久性を示している。「混濁安定性」は、一例として、ビールテイスト飲料Bの混濁に対する耐久性を示している。
【0024】
濾過システム1では、例えば、タンク20の内部においてビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rは一定時間以上接触し、一定時間以上接触したビールテイスト飲料B及び安定化処理剤Rはクロスフロー濾過装置10に導入される。
図2はクロスフロー濾過装置10の濾過の様子を模式的に示す図である。
【0025】
図1及び
図2に示されるように、クロスフロー濾過装置10は、ビールテイスト飲料Bが循環する循環流路11と、シート状の濾材13が設けられた濾過部12とを備える。循環流路11において循環するビールテイスト飲料Bの原液は濾過部12において濾材13に平行に流れ込む。
【0026】
濾材13に平行に流れ込むビールテイスト飲料Bのうちの一部は、除去対象の粒子B2が除去されて濾材13に交差する方向Cに濾過される(クロスフロー)。濾材13に平行に流れ込むビールテイスト飲料Bのうちの残部は、循環流路11において循環して再度濾過部12に流れ込む。
【0027】
粒子B2は、例えば、ビールテイスト飲料の酵母である。このように、クロスフロー濾過装置10では、濾材13に平行にビールテイスト飲料Bが流れるため、濾材13の膜面に対して平行な流れを形成することによって当該膜面に懸濁物質等が溜まる現象を抑制することができる。
【0028】
タンク20は、例えば、ビールテイスト飲料Bが流れる経路におけるクロスフロー濾過装置10の上流側に設けられる。
図3は、タンク20を模式的に示す斜視図である。
図3に示されるように、タンク20は、ビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液がタンク20の内部に流入する流入部21と、安定化処理剤Rとビールテイスト飲料Bとが一定時間以上接触する容器状の本体部22と、タンク20から安定化処理剤R及びビールテイスト飲料Bが排出する排出部23とを備える。
【0029】
例えば、安定化処理剤Rは、ビールテイスト飲料Bの混濁原因物質の生成を抑制してビールテイスト飲料Bの混合安定性を改善する助剤である。安定化処理剤Rは、例えば、ビールテイスト飲料Bに含まれるポリフェノールとタンパク質との結合を抑制する。この場合、安定化処理剤Rには、ビールテイスト飲料Bの酵母に含まれるタンパク質が吸着する。安定化処理剤Rは、一例として、SiO2によって構成される。安定化処理剤Rは、混濁耐久性向上剤とも称される。
【0030】
流入部21からタンク20の内部へのビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液の流入速度は、例えば、0.30m/s以上且つ2.00m/s以下である。また、タンク20の内部へのビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液の流入速度は、0.71m/s以上且つ1.39m/s以下、又は0.37m/s以上且つ1.67m/s以下であってもよい。タンク20の内部への当該混合液の流入速度の下限は、0.75m/s、0.80m/s、0.85m/s、0.90m/s、0.95m/s、又は1.00m/sであってもよい。タンク20の内部へ当該混合液の流入速度の上限は、1.35m/s、1.30m/s、1.25m/s、1.20m/s、1.15m/s、又は1.10m/s、であってもよい。更に、タンク20の内部への当該混合液の流入速度は、上記の値以外であってもよく、適宜変更可能である。
【0031】
また、流入部21からタンク20の内部へのビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液の流入流量は、例えば、10.0kL/h以上且つ45.0kL/h以下である。タンク20の内部への当該混合液の流入流量の下限は、15.0kL/h以上、20.0kL/h又は25.0kL/hであってもよい。タンク20の内部への当該混合液の流入流量の上限は、40.0kL/h、35.0kL/h又は30.0kL/hであってもよい。更に、タンク20の内部への当該混合液の流入流量は、上記の値以外であってもよく、適宜変更可能である。
【0032】
流入部21は、一例として、水平方向に延びる筒状とされている。流入部21の内部空間は本体部22の内部空間に連通している。本体部22には予めビールテイスト飲料Bが収容されていてもよい。本体部22は、例えば、底面22bが円形状とされた円筒状を呈する。しかしながら、本体部22の底面は、楕円形状、長円形状、又は多角形状等であってもよく、本体部22の形状は特に限定されない。
【0033】
排出部23は、例えば、本体部22の底面22bから下方に延びる筒状を呈する。本体部22において一定時間以上接触したビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rは、例えば、排出部23から下方に抜け出ることにより、タンク20から排出される。以上、タンク20の形状の例について説明したが、タンク20の形状は上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0034】
タンク20(本体部22)は、例えば、側面22cを有し、流入部21は側面22cに接続されている。一例として、流入部21は、側面22cの鉛直方向D1の中央部M、又は中央部Mよりも高い位置に設けられる。
図3の例では、流入部21は、中央部Mよりも高い位置に設けられている。
【0035】
流入部21は、例えば、本体部22に収容されているビールテイスト飲料Bの液面B1に接する位置に設けられる。このように、側面22cの上側にビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液が流入する流入部21を備えることにより、安定化処理剤Rが直ぐに排出部23から排出させることを抑制し、タンク20の内部において安定化処理剤Rを長時間滞留させることが可能となる。
【0036】
流入部21は、一例として、タンク20(本体部22)の天面22dに設けられていてもよい。しかしながら、ビールテイスト飲料Bがはねることを抑制する観点では、流入部21は側面22cに設けられることが好ましい。流入部21からは、例えば、ビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液が液面B1に沿って流入する。この場合、安定化処理剤Rを短時間で排出部23から排出されないようにすることができ、タンク20の内部に長時間安定化処理剤Rを滞留させることができる。
【0037】
図4は、タンク20の模式的な平面図である。
図4に示されるように、タンク20の平面視におけるビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液の流入部21を接点Pとして仮想の接線Lを引いたときに、当該混合液を流入する方向D2と接線Lとの成す角度θが鋭角となるように当該混合液がタンク20の内部に流入する。
【0038】
角度θは、例えば、0°より大きく且つ90°未満である。一方、
図5に例示されるように、角度θは90°であってもよい。また、
図4及び
図5に示されるように、角度θは、5°以上、10°以上、20°以上、30°以上又は45°以上であってもよい。また、角度θは、80°以下、70°以下、60°以下又は45°以下であってもよい。安定化処理剤Rを長時間タンク20の内部に滞留させるためには、角度θは、小さい方が好ましく、例えば、45°以下であることが好ましい。しかしながら、角度θの値は、上記の各例に限られず、適宜変更可能である。
【0039】
図6は、変形例に係るタンク30を模式的に示す斜視図である。前述したタンク20は、水平方向に延びる筒状とされた流入部21を備えていたが、タンク30は、本体部22の側面22cに向かって斜め上方に延びる流入部31を備える。水平方向に対する流入部31の角度Xは、例えば、0°より大きく且つ90°未満である。なお、角度Xは、5°以上、10°以上、20°以上、30°以上又は45°以上であってもよい。また、角度Xは、80°以下、70°以下、60°以下又は45°以下であってもよい。
【0040】
以上のように、タンク30の側面22cに向かって斜め上方(排出部23の反対側)に延びる流入部31を備える場合、タンク30の内部に流入した安定化処理剤Rが短時間で排出部23から排出されにくくなる。その結果、安定化処理剤Rとビールテイスト飲料Bとの接触時間を長く確保することができる。
【0041】
また、タンク30においても、
図4に例示されるように、タンク30の平面視におけるビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液の流入部31を接点Pとして接線Lを引いたときに、当該混合液を流入する方向D2と接線Lとの成す角度θが鋭角となるように当該混合液がタンク30の内部に流入してもよい。角度θの値は、前述したタンク20の場合と同様とすることができる。
【0042】
次に、本実施形態に係るビールテイスト飲料Bの製造方法の例について説明する。
図1に模式的に示されるように、ビールテイスト飲料Bの製造方法では、クロスフロー濾過装置10によってビールテイスト飲料Bが濾過されてビールテイスト飲料Bが製造される。例えば、ビールテイスト飲料Bの流通経路におけるクロスフロー濾過装置10の上流側に設けられたタンク20に流入部21を介してビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液が流入する(ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する工程)。
【0043】
図3及び
図4に示されるように、例えば、ビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液を、タンク20の側面22cの中央部Mより上側の部分から角度θが鋭角を成すようにタンク20の内部に流入する。そして、タンク20の内部において、安定化処理剤Rをビールテイスト飲料Bに一定時間以上接触させる(ビールテイスト飲料と安定化処理剤を互いに接触させる工程)。「一定時間」は、例えば、10分以上且つ60分以下であり、一例として30分である。
【0044】
安定化処理剤Rをビールテイスト飲料Bに一定時間以上接触させた後には、例えば
図1及び
図2に示されるように、ビールテイスト飲料Bを安定化処理剤Rと共にクロスフロー濾過装置10に導入する。そして、クロスフロー濾過装置10においてビールテイスト飲料Bを濾過する(ビールテイスト飲料を濾過する工程)。
【0045】
具体例として、クロスフロー濾過装置10において、ビールテイスト飲料B及び安定化処理剤Rは循環流路11を循環し、ビールテイスト飲料B及び安定化処理剤Rが濾過部12を通って、ビールテイスト飲料Bから酵母等を含む粒子B2が除去される。このように粒子B2が除去されたビールテイスト飲料Bの製造は、クロスフロー濾過装置10から流出した後に後工程を経て完了する。
【0046】
続いて、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法及び濾過システム1から得られる作用効果について説明する。
図3及び
図4に例示されるように、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法及び濾過システム1では、タンク20の内部にビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液を流入し、タンク20の内部においてビールテイスト飲料B及び安定化処理剤Rを互いに接触させる。
【0047】
このように、タンク20を用いてタンク20の内部において安定化処理剤Rをビールテイスト飲料Bに接触させることにより、十分に時間をかけて安定化処理剤Rをビールテイスト飲料Bに接触させることが可能となる。従って、安定化処理剤Rとビールテイスト飲料Bとの接触時間を十分に確保することができるので、ビールテイスト飲料Bの混濁安定性を高めることができる。その結果、ビールテイスト飲料Bの混濁安定性を高めることができる。
【0048】
前述したように、ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する工程では、ビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液をタンク20の側面22cから流入してもよい。この場合、タンク20の側面22cから当該混合液がタンク20の内部に流入するので、タンク20の内部におけるビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rとの接触時間を長く確保することができる。従って、ビールテイスト飲料Bの混濁安定性をより高めることができる。
【0049】
ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する工程では、側面22cの鉛直方向D1の中央部M、又は中央部Mよりも高い位置からビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液を流入してもよい。この場合、タンク20の側面22cにおける鉛直方向D1の中央部M以上の高さ位置から当該混合液を流入することにより、タンク20の内部における安定化処理剤Rの滞留時間をより長くすることができる。従って、安定化処理剤Rとビールテイスト飲料Bとの接触時間を長く確保してビールテイスト飲料Bの混濁安定性をより高めることができる。
【0050】
ビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入する工程では、タンク20の平面視におけるビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液の流入部21を接点Pとして接線Lを引いたときに、ビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液を流入する方向D2と接線Lとの成す角度θが鋭角となるようにビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液を流入してもよい。この場合、タンク20の内面においてタンク20の周方向に沿うように当該混合液が流入するので、安定化処理剤Rが短時間で下方に移動することを抑制できる。従って、タンク20の内部における安定化処理剤Rの滞留時間を長くすることができるので、ビールテイスト飲料B及び安定化処理剤Rの接触時間を長く確保してビールテイスト飲料Bの混濁安定性を一層高めることができる。
【0051】
以上、本開示に係るビールテイスト飲料の製造方法、及び濾過システムの実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態に限定されるものではない。本開示は、特許請求の範囲に記載した要旨を変更しない範囲において種々の変形が可能である。すなわち、ビールテイスト飲料の製造方法の工程の内容及び順序、並びに、濾過システムの各部の構成、形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、上記の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0052】
(実施例)
次に、ビールテイスト飲料の製造方法、及び濾過システムの実施例について説明する。なお、本開示は、後述の各実施例に限定されない。後述の各実施例に対しては、タンクにビールテイスト飲料と安定化処理剤の混合液を流入させるシミュレーションを行った。本シミュレーションでは、CFD(Computed Fluid Dynamics:数値流体力学)解析により、タンク20(又はタンク30)に相当する各タンクに液体を収容し、当該タンクの内部に安定化処理剤Rとしての不溶性粒子を流入させた液体内の固体挙動を確認した。
【0053】
各タンクは円筒状を呈し、各タンクの直径(内径)及び鉛直方向の高さは2400mmとした。また、タンクの排出部(排出部23に相当)は円筒状を呈し、当該排出部の直径(内径)を50mmとした。不溶性粒子の粒径は10μm~20μm、不溶性粒子の比重は0.1g/cm3~0.3g/cm3とした。不溶性粒子のタンクの内部への流入速度は1.39m/sとした。まず、実施例1~実施例5のそれぞれの仕様を以下に示す。
【0054】
(実施例1)
図3及び
図4に示されるように、側面22cの鉛直方向D1の中央部Mよりも上側にビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液の流入部21が設けられたタンク20を用意し、流入部21から接線Lに沿うように(角度θが0に近くなるように)当該混合液をタンク20の内部に流入させた。
(実施例2)
図5及び
図6に示されるように、側面22cの鉛直方向D1の中央部Mにビールテイスト飲料と安定化処理剤Rの混合液の流入部31が設けられたタンク30を用意し、流入部31から接線Lに直交し(角度θが90°)、且つ水平方向に対する流入部31の角度Xが45°となるように当該混合液をタンク30の内部に流入させた。
(実施例3)
図3及び
図5に示されるように、側面22cの鉛直方向D1の中央部Mよりも上側にビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液の流入部21が設けられたタンク20を用意し、流入部21から接線Lに直交するように当該混合液をタンク20の内部に流入させた。
(実施例4)
側面22cの鉛直方向D1の中央部Mにビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液の流入部21が設けられたタンク20を用意し、流入部21から接線Lに直交するように当該混合液をタンク20の内部に流入させた。
(実施例5)
流入部21を有しないタンク20を用意し、排出部23から上向きにビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液をタンク20の内部に流入させた。
【0055】
以上の実施例1~実施例5のそれぞれに対し、前述したシミュレーションを行った結果を
図7~
図11に示している。
図7~
図11は、タンクの排出部23から排出される安定化処理剤Rの割合と、ビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液の流入開始からの経過時間との関係を示すグラフであり、0s~2000sまで50s毎にカウントして得られた値を示している。
図7~
図11に示されるように、排出部23から当該混合液を流入させる実施例5では、実施例1~4と比較して、流入開始から400sまでの間に多くの(70%程度の)安定化処理剤Rが排出されることが分かった。
【0056】
中央部Mから接線Lの直交方向にビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液を流入させる実施例4では、流入開始から400sまでの間に45%程度の安定化処理剤Rが排出されたが、流入開始直後から2000s以上経過しても20%以上の安定化処理剤Rがタンク20の内部に滞留することが分かった。
【0057】
中央部Mより上側から接線Lの直交方向にビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液を流入させる実施例3では、流入開始から400sまでの間に45%以上の安定化処理剤Rが排出されたが、極端に長い時間滞留する安定化処理剤Rは少ないことが分かった。
【0058】
中央部Mから斜め上方に角度Xが45°となるようにビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液を流入させる実施例2では、流入開始から400sまでの間に30%弱の安定化処理剤Rが排出されたが、滞留時間がある程度長い(400s以上の)安定化処理剤Rも多いことが分かった。
【0059】
中央部Mより上側から接線Lに沿ってビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液を流入させる実施例1では、流入開始から400sまでの間に排出される粒子の割合を25%程度に抑えることができ、実施例2~実施例5と比較してタンク20の内部における安定化処理剤Rの滞留時間を更に長くできることが分かった。また、実施例1では、実施例2~実施例5よりも、タンク20の内部における安定化処理剤Rの分布を均一にできることが分かった。
【0060】
更に、前述した実施例3と実施例6について説明する。実施例6では、実施例3から、タンク20の内部へのビールテイスト飲料Bと安定化処理剤Rの混合液の流入速度を0.71m/sに変更したシミュレーションを行った。
図12は実施例6のシミュレーションの結果を示すグラフである。
図9及び
図12に示されるように、流入速度を0.71m/sとした実施例6では、排出部23からの安定化処理剤Rの短時間の排出を抑制でき、流入開始から400sまでの間の安定化処理剤Rの排出割合を20%程度に抑えられることが分かった。但し、流入速度が1.39m/sである実施例3では、実施例6と比較して単位時間あたりの液体処理量を増やせることが分かった。
【符号の説明】
【0061】
1…濾過システム、10…クロスフロー濾過装置、11…循環流路、12…濾過部、13…濾材、20,30…タンク、21,31…流入部、22…本体部、22b…底面、22c…側面、22d…天面、23…排出部、B…ビールテイスト飲料、B1…液面、B2…粒子、C…方向、D1…鉛直方向、D2…方向、L…接線、M…中央部、P…接点、R…安定化処理剤、X,θ…角度。