(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091450
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】樹脂板
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20220614BHJP
B29C 48/07 20190101ALI20220614BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20220614BHJP
B29C 67/20 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B32B5/18 101
B29C48/07
B29C44/00 E
B29C67/20 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204294
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 康行
(72)【発明者】
【氏名】秋山 光宏
【テーマコード(参考)】
4F100
4F207
4F214
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100BA03
4F100BA06
4F100CA01B
4F100DJ01B
4F100DJ04B
4F100EH20
4F100EJ02
4F100EJ42
4F100GB07
4F100GB41
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JA13C
4F100JD06
4F100JN01
4F100JN01B
4F207AB02
4F207AB16
4F207AG02
4F207AG03
4F207AH48
4F207AH73
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA11
4F207KA15
4F207KB26
4F207KK04
4F207KL84
4F207KW50
4F214AB02
4F214AB16
4F214AG02
4F214AG03
4F214AH48
4F214AH73
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4F214UA11
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4F214UB01
4F214UC03
4F214UC04
4F214UC07
4F214UC24
4F214UN04
4F214UW02
4F214UW06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた意匠性を発揮可能であり、湾曲した物品も提供可能な、熱加工用の樹脂板を提供する。
【解決手段】樹脂板100は、透明熱可塑性樹脂を基材とし、発泡剤と大気泡30とを含む気泡含有層10と、その両面に積層された樹脂層20とを有し、加熱により気泡含有層に大気泡よりも微細な気泡40を発生させることが可能で、樹脂層の片面あたりの坪量がそれぞれ500g/m
2以上であり、板面方向における大気泡の平均気泡径が1mm以上であり、板面側から観測される100cm
2あたりの大気泡の気泡数の平均値が5個以上500個以下であり、板面の面積に対する、板面側から観測される大気泡が占める面積の割合が0.2%以上30%以下であり、樹脂板に含有される発泡剤の量が0.2重量%以上1重量%以下であり、気泡含有層の平均厚み(mm)に対する、厚み方向の大気泡の平均気泡径(mm)の比が1.1以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明熱可塑性樹脂を基材樹脂とし、発泡剤と気泡とを含む気泡含有層と、
透明熱可塑性樹脂を基材樹脂とし、前記気泡含有層の両面に積層された樹脂層とを有し、
加熱することにより前記気泡含有層に前記気泡よりも微細な微細気泡が発生する、熱加工用の樹脂板であって、
前記樹脂層の片面あたりの坪量がそれぞれ500g/m2以上であり、
前記樹脂板の板面方向における前記気泡の平均気泡径が1mm以上であり、
前記樹脂板の板面側から観測される100cm2あたりの気泡数の平均値が5個以上500個以下であり、
前記樹脂板の板面の面積に対する、板面側から観測される前記気泡が占める面積の割合が0.2%以上30%以下であり、
前記樹脂板に含有される前記発泡剤の量が0.2重量%以上1重量%以下であり、
前記気泡含有層の平均厚み(mm)に対する、厚み方向の前記気泡の平均気泡径(mm)の比が1.1以上であることを特徴とする樹脂板。
【請求項2】
前記樹脂板に含有される前記発泡剤の量が0.5重量%以上0.8重量%以下である請求項1に記載の樹脂板。
【請求項3】
前記樹脂板の総坪量が3000g/m2以上20000g/m2以下である請求項1または2に記載の樹脂板。
【請求項4】
板面方向における前記気泡の平均気泡径が2.5mm以上であり、
板面側から観測される100cm2あたりの気泡数の平均値が10個以上100個以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱加工に用いられる樹脂板に関し、詳しくは、熱加工することにより意匠性に優れた二次加工品を提供可能な熱加工用の原反である樹脂板に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスプレイ装置あるいは建築用パーテーションなどに用いられる透明な樹脂からなる透明樹脂部材である装飾板が、特許文献1に提案されている。かかる装飾板は、透明熱可塑性樹脂を基材樹脂とし、気泡を含む気泡含有層を中間層に有する積層樹脂板である。
【0003】
上記装飾板は、気泡含有層に含有される気泡の平均気泡径が1mm以上であり、板面側から観測される気泡の数のバラつきが小さくなるよう構成されており、これによって光を導入する端面に対する逆端面まで充分に光をいきわたらせることが可能である。かかる装飾板は、従来の気泡を有しない透明樹脂板に比べ意匠性が高く、光ディスプレイ装置や建築用パーテーションに好適に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
透明樹脂部材は、光ディスプレイ装置や建築用パーテーションだけでなく種々の加工品に用いられることが期待されるとともに、さらに優れた意匠性が望まれている。
【0006】
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされた熱加工用の原反である。すなわち、本発明は、従来の装飾板よりもさらに優れた意匠性を発揮可能な、熱加工用の樹脂板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の樹脂板は、透明熱可塑性樹脂を基材樹脂とし、発泡剤と気泡とを含む気泡含有層と、透明熱可塑性樹脂を基材樹脂とし、上記気泡含有層の両面に積層された樹脂層とを有し、加熱することにより上記気泡含有層に上記気泡よりも微細な微細気泡が発生する、熱加工用の樹脂板であって、上記樹脂層の片面あたりの坪量がそれぞれ500g/m2以上であり、上記樹脂板の板面方向における上記気泡の平均気泡径が1mm以上であり、上記樹脂板の板面側から観測される100cm2あたりの気泡数の平均値が5個以上500個以下であり、上記樹脂板の板面の面積に対する、板面側から観測される上記気泡が占める面積の割合が0.2%以上30%以下であり、上記樹脂板に含有される上記発泡剤の量が0.2重量%以上1重量%以下であり、上記気泡含有層の平均厚み(mm)に対する、厚み方向の上記気泡の平均気泡径(mm)の比が1.1以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂板は、発泡剤と気泡とを含む気泡含有層を中間層に有する透明樹脂板であり、二次加工で加熱されることによって当該気泡含有層に上記気泡よりも微細な微細気泡が発生する。これにより本発明の樹脂板は、意匠性に非常に優れた二次加工品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(1A)は、本発明の一実施形態である樹脂板を厚み方向に切断して形成した切断面を模式的に示す断面図であり、(1B)は、本発明の樹脂板を用いて加熱成形した二次加工品を厚み方向に切断して形成した切断面を模式的に示す断面図である。
【
図2】(2B)は、比較対象樹脂板を厚み方向に切断して形成した切断面を模式的に示す断面図であり、(2B)は、比較対象樹脂板を用いて加熱成形した二次加工品を厚み方向に切断して形成した切断面を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の樹脂板を用いて加熱成形したパネル状の二次加工品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂板について
図1~
図3を用いて説明する。
図1Aは、本発明の一実施形態である樹脂板100を厚み方向に切断して形成した切断面を模式的に示す断面図であり、
図1Bは、樹脂板100を用いて加熱成形した二次加工品110を厚み方向に切断して形成した切断面を模式的に示す断面図である。
図2Bは、比較対象樹脂板300を厚み方向に切断して形成した切断面を模式的に示す断面図であり、
図2Bは、比較対象樹脂板300を用いて加熱成形した二次加工品350を厚み方向に切断して形成した切断面を模式的に示す断面図である。
図3は、樹脂板100を用いて加熱成形したパネル状の二次加工品112の斜視図である。
尚、以下の説明において、樹脂板100の気泡含有層10に含まれる気泡を、二次加工品の製造において発生する微細な気泡(微細気泡40)と区別するために、大気泡(大気泡30)と呼ぶ場合がある。
【0011】
尚、本発明および本発明の説明に関し、いくつかの用語を以下の通り定義する。樹脂板の板面方向とは、樹脂板の厚み方向に沿った方向を法線とする平面の広がる方向を示す。
樹脂板の板面側から観測するまたは観察するとは、樹脂板の厚み方向を視線方向として樹脂板を観測するまたは観察することをいう。一方、樹脂板の断面側から観測するまたは観察するとは、樹脂板を厚み方向に切断してなる切断面の法線方向から樹脂板を観測するまたは観察することをいう。樹脂板の板面の面積とは、板面側から観測した際の樹脂板の面積を指す。本明細書において、単に厚み方向という場合には、樹脂板の厚み方向を指し、断面方向とは樹脂板を厚み方向に切断してなる切断面の広がる方向を指す。樹脂板に関する上下方向とは、特段の断りがない場合には、樹脂板のいずれか一方の樹脂層を水平面に設置した際の天地方向を指す。尚、上述する樹脂板に関する定義は、当該樹脂板を用いて形成された二次加工品においても適用される。
【0012】
本発明の一実施形態である樹脂板100は、気泡含有層10と、気泡含有層10の両面に積層された樹脂層20とを有する。気泡含有層10および樹脂層20は、いずれも透明熱可塑性樹脂を基材樹脂として構成されており、樹脂板100は、透明性である。気泡含有層10は、大気泡30とともに発泡剤(図示省略)を含む。そのため樹脂板100を加熱することにより、気泡含有層10に大気泡30よりも微細な微細気泡40(
図1B参照)を発生させることが可能である。つまり樹脂板100は、熱加工により二次加工品を提供するための原反である。
尚、樹脂板100が透明性であるとは、厳密に樹脂板100の光透過度合いが特定されるものではなく、照射された光が樹脂板100を透過可能であって、板面側から観測した際、大気泡30が目視で確認できる程度の透明性を広く含む。また本発明において透明とは、無色透明だけでなく、有色透明も含む。
【0013】
樹脂板100は、前記樹脂層の片面あたりの坪量がそれぞれ500g/m2以上である。樹脂板100の板面方向における大気泡30の平均気泡径は1mm以上であり、存在感のある寸法となっており、かつ樹脂板100の板面側から観測される100cm2あたりの気泡数の平均値は5個以上500個以下である。
樹脂板100の板面の面積に対する、板面側から観測される大気泡30が占める面積の割合は、0.2%以上30%以下であり、樹脂板100に含有される発泡剤の量は0.2重量%以上1重量%以下となるよう調整されている。さらに樹脂板100は、気泡含有層10の平均厚み(mm)に対する、厚み方向における大気泡30の平均気泡径(mm)の比が1.1以上である。
【0014】
上記構成を備える樹脂板100(
図1A参照)は、加熱されることにより、気泡含有層10に含有されている発泡剤が発泡し、大気泡30に対し相対的に微細な微細気泡40が気泡含有層10に形成されうる。このように加熱(熱加工)を経て得られた二次加工品110は、
図1Bに示すとおり、気泡含有層10に、大気泡30と微細気泡40とを含んでおり、意匠性に優れる。即ち、樹脂板100は、外観上のアクセントとなる相対的に大径の大気泡30と、その周囲に存在する雪のような微細気泡40とにより、非常に優れた意匠性を呈する二次加工品110(
図1B参照)を提供可能である。二次加工品110は、光が照射された場合、微細気泡40によって透過光を拡散しまぶしさを低減させ柔らかな光を演出するとともに、明るく輝く大気泡30により星のような意匠を呈しうる。
また樹脂板100は、熱可塑性樹脂を基材として構成されているため、二次加工において加熱されることで軟化し得る。そのため、樹脂板100は、二次加工における加熱によって微細気泡40が発生するという効果に加え、曲げ加工の様な形状成形加工も可能であるという有利な点を備える。したがって樹脂板100は、意匠性に優れるとともに、各種形状の二次加工品を容易に提供可能である。
さらに、樹脂板100は、気泡含有層10および樹脂層20がいずれも透明熱可塑性樹脂から構成されているため、リサイクル性にも優れる。つまり、樹脂板100は、リサイクル原料として回収された場合、透明原料として広い使途で有益に再生利用可能であり環境特性が良い。以下に、樹脂板100を例に、本発明をより詳細に説明する。
【0015】
[樹脂板]
樹脂板100は、気泡含有層10および樹脂層20から構成される。樹脂板100は、二次加工品用の原反であり、その形状および寸法について制限を受けるものではない。二次加工において形成が予定される二次加工品の寸法や形状を勘案して、樹脂板100の形状および寸法を適宜に決定することができる。
【0016】
(樹脂板の総坪量)
樹脂板100の総坪量は、3000g/m2以上20000g/m2以下であることが好ましく、より好ましくは、3500g/m2以上15000g/m2以下であり、さらに好ましくは、4000g/m2以上10000g/m2以下である。総坪量が上記下限値を満足する樹脂板100を用いて二次加工を行うことで、気泡含有層10において、大気泡30との寸法差が顕著である微細気泡40を発生させやすく、これによって雪のような意匠を呈する二次加工品が得られ易い。かかる理由は明らかではないが、樹脂板100の総坪量を上記範囲とすることで樹脂板100の厚みを十分に大きくすることができ、二次加工において気泡含有層10に気泡が発生した際、当該気泡の成長が両面に積層された樹脂板100によって適度に抑えられ、微細気泡40が形成されるものと推察される。
一方、樹脂板100の総坪量が上記上限値を満足することで、軽量性に優れる二次加工品110が得られる。
【0017】
(樹脂板の総坪量の特定方法)
樹脂板100の総坪量[g/m2]は、次のように特定される。坪量測定用の長方形の樹脂板100を準備し、樹脂板100の長辺方向に沿って延びる一辺の側端縁から、短辺方向に沿って等間隔に、所定寸法の試験片を切り出し、それぞれの試験片について、試験片の表裏面に対応する一表面の面積を算出し、また、試験片の重さを特定して、重さを面積で除することで試験片ごとの坪量を算出する。算出された試験片ごとの坪量の平均値を求め、当該平均値から、樹脂板100の総坪量[g/m2]を換算して求めることができる。
【0018】
(樹脂板のヘーズ(Haze;Hz))
樹脂板100は、ヘーズ(Hz)が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。樹脂板100のヘーズが低いことで、大気泡30が目視で確認されやすく、熱加工により二次加工品110とした際、微細気泡40も目視で確認されやすいため好ましい。なお、ヘーズは、樹脂板100から試験片を切出し、熱プレスなどにより気泡を除去してプレート状とし、該プレート状の試験片についてヘーズの測定をすることにより求められる。上記ヘーズは、JIS K7136:2000に基づき測定することができる。
【0019】
(樹脂板の全光線透過率(TT))
樹脂板100は、樹脂板100の厚み方向に沿った方向を視線方向とした場合の樹脂板100の全光線透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。樹脂板100の全光線透過率が上記範囲を満足する場合、かかる樹脂板100を用いて二次加工されてなる二次加工品110の光の透過性を十分に高くしうる。なお、全光線透過率は、測定箇所における樹脂板100の気泡の有無を考慮せずに無作為に選択した箇所を測定された値を採用する。そのため、樹脂板100は、気泡を含む箇所及び気泡を含まない箇所のいずれであっても全光線透過率が上記範囲を満足することが好ましい。また、全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に従って、濁度計(例えば、日本電色工業株式会社社製、製品名Haze Meter NDH7000SP)を用いて測定することができる。
【0020】
[気泡含有層]
気泡含有層10は、透明熱可塑性樹脂を基材樹脂とし、発泡剤と大気泡30とを含む。気泡含有層10は、樹脂板100の板面方向に沿って樹脂板100全面に広がった状態で形成されている。気泡含有層10の厚みは特に限定されないが、0.5mm以上10mm以下の範囲であることが好ましく、0.7mm以上5mm以下がより好ましく、1mm以上3mm以下がさらに好ましい。
【0021】
(気泡含有層の平均厚みの特定)
気泡含有層10の平均厚みは、樹脂板100を厚み方向に切断して切断面を形成し、当該切断面をマイクロスコープにて拡大撮影し、得られた写真から実測して求めることができる。具体的には、たとえば以下のとおり特定される。
樹脂板100をバンドソーで厚み方向に切断し、切削後、紙やすり等にて切削面を研磨して切断面を形成する。上記切断面を、マイクロスコープ(たとえば株式会社キーエンス製デジタルマイクロコープVHX-900)にて拡大撮影する。得られた写真に基づいて、厚み方向における樹脂板100の気泡含有層10の厚みをそれぞれ無作為に10箇所測定し、それらの算術平均値を求め、気泡含有層10の平均厚みとする。
なお、気泡含有層10と樹脂層20との界面が不明確な場合、気泡含有層10の厚みは、以下の方法により求めるものとする。樹脂板100の総厚みAを測定する。両面の樹脂層20の坪量を樹脂層10の吐出量X[kg/時]と、樹脂板100の幅W[m]、樹脂板100の単位時間あたりの押出される樹脂板100の長さL[m/時]から算出(樹脂層20の坪量=1000X/(L×W))する。樹脂層20の坪量を、樹脂層20を構成する樹脂の密度で割ることで樹脂層20の厚みBを算出する。樹脂板100の総厚みAから、樹脂層20の厚みBを引くことにより気泡含有層10の厚みを求める。
【0022】
(板面方向の大気泡の平均気泡径)
気泡含有層10に含まれる大気泡30は、樹脂板100を二次加工して得られる二次加工品においてアクセントとなる相対的に大径の気泡となる。そのため、樹脂板100の板面方向の大気泡30の平均気泡径は、少なくとも1mm以上であり、好ましくは2mm以上であり、より好ましくは2.5mm以上であり、さらに好ましくは3mm以上である。樹脂板100の板面方向における大気泡30の平均気泡径の上限は特に規定されないが、たとえば5mm以下とすることができる。かかる範囲の大きさであれば、大気泡30は、肉眼で1つ1つが認識されやすく存在感を発揮することができる。大気泡30は、概ね、球状または楕円球状をなす。
【0023】
(板面方向の大気泡の平均気泡径の特定方法)
板面方向における大気泡30の平均気泡径は、次のように特定することができる。暗室環境下にて、樹脂板100を平面視した写真を撮影する。撮影された樹脂板100の領域内で、所定の大きさの領域を複数箇所無作為に選択し指定領域とする。各々の指定領域において、例えばナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K-proを用いることにより個々の大気泡30の面積を測定し、その面積に基づいて、写真に写る大気泡30を円とした場合における直径を求め、各々の指定領域において求められる各々の直径の値を算術平均して得られる値を、平均気泡径(mm)とする。
【0024】
(厚み方向の大気泡の平均気泡径)
厚み方向の大気泡30の平均気泡径は特に限定されず、以下に述べる気泡含有層10の平均厚みに対する比を勘案して適宜決定されるが、1mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましい。
尚、厚み方向の大気泡30の平均気泡径は、以下のように特定される。樹脂板100の厚み方向における大気泡30の平均気泡径は、樹脂板100を厚み方向に切断し、切削後、紙やすり等にて切削面を研磨して切断面を作製し、その切断面をマイクロスコープにて拡大投影し、得られた投影画像から実測して求めることができる。具体的には、たとえば以下のとおり測定される。
樹脂板100を用い厚み方向にバンドソーで切断し、10mm幅の短冊状の試験片を作製する。試験片の切断面のいずれか一方側面を紙やすり等で研磨して観察用切断面を形成する。上記観察用切断面を、マイクロスコープ(たとえば株式会社キーエンス製デジタルマイクロコープVHX-900)にて拡大投影する。得られた投影画像に基づいて、観察用切断面において形状全体が確認された大気泡30を無作為に10個選択し、それぞれの厚み方向の最大長部分(樹脂板100の板面方向に対して垂直方向のフェレ径)を測定し、算術平均値を算出して平均気泡径とする。なお、形状全体が確認された気泡とは、形状の一部が欠落し若しくは切断されているもの、又は隣の気泡等と一体化して外形が不明確な気泡を除き、気泡の外郭全体が観察された気泡である。
このように測定された大気泡30の平均気泡径と、上述する気泡含有層10の平均厚みとの比率を求めることで、以下に述べる気泡含有層10の平均厚みに対する、厚み方向における気泡(大気泡30)の平均気泡径の比を求めることができる。
【0025】
(気泡含有層の平均厚みに対する、厚み方向の大気泡の平均気泡径の比)
樹脂板100において、厚み方向における大気泡30の大きさは、気泡含有層10の平均厚み(mm)に対する比率で特定される。具体的には、本発明において、気泡含有層10の平均厚み(mm)(
図1Aにおいて厚みxの算術平均値)に対する、厚み方向の大気泡30の平均気泡径(mm)(
図1Aにおいて気泡径yの算術平均値)の比は、1.1以上であり、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.5以上であり、さらに好ましくは1.7以上である。上記比の上限は、特に限定されないが、二次加工品110の強度を著しく損なわず、また微細気泡40の形成領域が狭くなりすぎないという観点からは上記比が3以下であることが好ましい。
厚み方向における大気泡30の平均気泡径が上記比の範囲で特定される場合、
図1Aに示すように、気泡含有層10に含まれる大気泡30の上端および下端が気泡含有層10から樹脂層20にまたがって存在しやすい。この結果、
図1Bに示すとおり、樹脂板100を用いて二次加工により製造された二次加工品110は、厚み方向において大気泡30と微細気泡40とが重なりにくいものとなる。かかる二次加工品110を板面側から観測した場合、大気泡30は、輝度が高く保たれてアクセントとして存在感を発揮し、二次加工品110の優れた意匠性に貢献する。
【0026】
樹脂板100において、上記比が1.1以上となるよう調整する方法としては、気泡含有層を形成する際に用いられる核剤または発泡剤の量を調整する手段が挙げられる。あるいは、樹脂板100を製造するため、樹脂層20/気泡含有層10/樹脂層20の構成の積層体を共押出によりダイから吐出し、板状にする際、当該積層体の温度をコントロールすることで大気泡30の発泡度合いを調整して上述する範囲の比にすることも可能である。
【0027】
(比較対象例について)
図2Aに示す樹脂板300は、本発明の比較対象例である。樹脂板300は、気泡330および発泡剤を含む気泡含有層310および、その両面に積層された樹脂層320を備える。樹脂板300は、気泡含有層310の平均厚み(mm)に対する、厚み方向における気泡330の平均気泡径(mm)の比が、1.1未満である。そのため、樹脂板300では、上端および下端が気泡含有層310に入り込んだ気泡330がない、または少ない。かかる樹脂板300を用いて二次加工されてなる二次加工品350は、
図2Bに示すとおり、厚み方向において気泡330と微細気泡340とが重なってしまう。かかる二次加工品350に対し光を照射した場合、微細気泡340が障壁となって気泡330の輝度が低下し、優れた意匠性が発揮されない。
【0028】
(板面側から観測される100cm2あたりの大気泡数の平均値)
本発明において、樹脂板100の板面側から観測される100cm2あたりの大気泡30の気泡数の平均値は、5個以上500個以下であり、好ましくは10個以上300個以下であり、より好ましくは30個以上100個以下である。単位面積当たりの大気泡数の平均値が上述の範囲であれば、大気泡30が好ましいアクセントとなり良好な意匠性を呈する二次加工品110を提供することが可能である。大気泡30の単位面積当たりの気泡数の平均値が、5個未満であると、二次加工品110において大気泡30が好ましいアクセントとして認識されにくく、また500個を超えると、二次加工において微細気泡40が形成される領域が少なくなり、二次加工品110において十分な意匠性が示され難い。
【0029】
(板面側から観測される100cm2あたりの大気泡数の平均値の特定方法)
樹脂板100の板面側から観測される100cm2あたりの大気泡30の平均気泡数は、次のように特定される。暗室環境下にて、樹脂板100を平面視した写真を撮影する。撮影された樹脂板100の領域内で、例えば10cm×10cmなどの面積が100cm2となる領域を複数箇所無作為に選択し指定領域とする。各々の指定領域において、例えばナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K-proを用いることにより個々の範囲内に存在する外郭の鮮明な気泡個数を求め、それらの値の各々を算術平均して上述する大気泡30の気泡数の平均値が求められる。なお、上記指定領域は、複数箇所を無作為に選択されるものであるが、指定領域どうしが一部重複していても良く、重複していなくても良い。
【0030】
(樹脂板の板面の面積に対する、板面側から観測される大気泡が占める面積の割合)
本発明において、樹脂板100の板面の面積に対する、板面側から観測される大気泡30が占める面積(以下、気泡占有面積と呼ぶ)の割合は、0.2%以上30%以下であり、好ましくは1%以上10%以下である。気泡占有面積が上記範囲であれば、大気泡30は適度なアクセントとなり、また二次加工品110において大気泡30の周囲に形成された微細気泡40とのバランスもよく、全体として優れた意匠を呈しうる。
【0031】
(気泡占有面積の特定方法)
気泡占有面積の割合は、次のように特定することができる。まず指定領域内の個々の大気泡30の合計面積を求める。そして、指定領域の面積に対する指定領域内の個々の大気泡30の合計面積の比率(%)[(指定領域内の個々の大気泡30の合計面積)/(指定領域の面積)]×100を算出する。この比率(%)が気泡占有面積の割合となる。
【0032】
(大気泡の気泡数の変動係数)
気泡含有層10は、大気泡30の気泡数の変動係数が30%以下であることが好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。気泡数の変動係数が上記範囲内であることで、樹脂板100全体に大気泡30の気泡数の粗密がなく意匠性に優れる。なお、大気泡30の気泡数の変動係数の下限値については、概ね3%程度である。
【0033】
(大気泡の気泡数の変動係数の特定方法)
大気泡30の気泡数の変動係数の特定方法は、以下のとおりである。
上述する板面側から観測される100cm2あたりの大気泡数の平均値の特定方法において、測定される各指定領域における気泡数の変動係数を求める。
気泡数の変動係数(Cv)は、個々の指定領域における気泡数の[(気泡数の標準偏差(V))/(気泡数の平均値)]×100で求められる値であり、気泡数のバラツキ度合いを表す指標である。なお、気泡数の標準偏差(V)は次の式(1)により求められる。
【0034】
【0035】
上記式(1)において、DTavは気泡数の平均値を、nは測定数をそれぞれ表す。また、iは、1からnの整数を示し、DTiは平均気泡数の測定の際に測定した個々の気泡数の測定値(DT1、DT2・・・、DTn)を示す。Σは、級数((DT1-DTav)2+(DT2-DTav)2+(DT3-DTav)2・・・+(DTn-DTav)2)を示す。
【0036】
気泡数の変動係数(Cv)は上記式(1)により求めた標準偏差(V)を用いて、次の式(2)によって求められる。
【0037】
【0038】
たとえば、上述する樹脂板100に関し、板面方向における大気泡30の平均気泡径が2.5mm以上であり、板面側から観測される100cm2あたりの気泡数の平均値が10個以上100個以下である態様は、本発明の優れた態様の1つといえる。かかる態様によれば、大気泡30の平均気泡径が充分に大きく好ましいアクセントとなり、かつその個数が、適度な範囲に調整されるため、二次加工品110において大気泡30の周囲に形成される微細気泡40とのバランスもよく、優れた意匠性が示される。
【0039】
(発泡剤)
次に、気泡含有層10に含有される発泡剤について説明する。樹脂板100は、気泡含有層10に発泡剤が含有されていることによって、加熱を伴う二次加工により気泡含有層10に大気泡30よりも微細な微細気泡40を発生させることが可能である。
樹脂板100を製造する際に気泡含有層10を構成する基材樹脂に発泡剤が添加され、その一部は大気泡30の形成に用いられ、残りは気泡含有層10の樹脂中に存在する。樹脂板100において、気泡含有層10に含有される発泡剤とは、この気泡含有層10の樹脂中に存在させた発泡剤である。
【0040】
気泡含有層10に含有される発泡剤は、発泡樹脂体を形成する際に用いられる物理発泡剤または化学発泡剤から適宜に選択され得る。
物理発泡剤としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素の物理発泡剤が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で又は2種以上の混合物で用いることができる。上記発泡剤の中でも、取り扱い易く、発泡時に残渣が生じないという観点からは、上記脂肪族炭化水素および脂環族炭化水素から選択される1種又は2種以上を用いることが好ましく、ノルマルブタン、イソブタン、シクロヘキサンから選択される1種以上を用いることが特に好ましい。
化学発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、ヒドラゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、炭酸水素ナトリウム(重曹)や、炭酸水素ナトリウムとクエン酸又はクエン酸一ナトリウム等のクエン酸モノアルカリ金属塩との混合物である重曹-クエン酸系化学発泡剤などが挙げられる。
樹脂板100を製造する際に、気泡含有層10に充分な大きさの大気泡30を形成し易く、気泡含有層10の平均厚み(mm)に対する、厚み方向における大気泡30の平均気泡径(mm)の比を1.1以上に調整し易いという観点からは、上記発泡剤は物理発泡剤であることが好ましい。
【0041】
(発泡剤の含有量)
気泡含有層10に含有される発泡剤の量は、樹脂板100を100重量%としたとき、0.2重量%以上1重量%以下に調整され、好ましくは0.5重量%以上0.8重量%以下である。樹脂板100において発泡剤の含有量が0.2重量%以上であることで、二次加工の際、複数の微細気泡40が良好に形成され易い。また樹脂板100において発泡剤の含有量が1重量%以下であることで、二次加工の際、微細気泡40が過度に大きな気泡となることを抑制することができる。
【0042】
(樹脂板に含有される発泡剤の含有量の測定方法)
本明細書における樹脂板中の発泡剤の含有量は、ガスクロマトグラフを用いて内部標準法により測定される値である。具体的には、樹脂板から適量のサンプルを切り出し、このサンプルを適量のトルエンと内部標準物質の入った蓋付き試料ビン中に入れ蓋を閉めた後、充分に撹拌し樹脂板中の発泡剤をトルエン中に溶解させた溶液を測定用試料としてガスクロマトグラフ分析を行って樹脂板中の発泡剤の含有量を求める。
【0043】
(透明熱可塑性樹脂)
気泡含有層10の基材樹脂である透明熱可塑性樹脂としては、JIS K 7361(1997年)で知られた「透明プラスチック」に該当する樹脂が好適に用いられる。
熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、環状オレフィン樹脂等が挙げられる。透明熱可塑性樹脂は、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、ヘーズが5%以下であることが好ましい。
【0044】
上記ポリスチレン樹脂としては、例えばポリスチレン、スチレン-αメチルスチレン共重合体、スチレン-pメチルスチレン共重合体ポリスチレンやスチレンを主成分とするスチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレンアクリレート共重合体、スチレン-メチルスチレン共重合体、スチレン-ジメチルスチレン共重合体、スチレン-エチルスチレン共重合体、スチレン-ジエチルスチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン樹脂)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して使用される。なお、上記ポリスチレン樹脂は、スチレンに基づく単位又はスチレン成分含有量が50モル%を超え、好ましくは、70モル%以上であり、特に好ましくは80モル%以上である。
【0045】
上記アクリル樹脂は、アクリル酸アルキルエステルおよび/もしくはメタクリル酸アルキルエステル(これらを総称して以下、(メタ)アクリル酸エステルということもある。)の単独重合体もしくは(メタ)アクリル酸エステル同士の共重合体、または(メタ)アクリル酸エステルに基づく単位が50モル%以上であり他のコモノマーに基づく単位が50モル%以下である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、およびこれらの2以上の混合物等である。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタアクリル酸とを含む概念であり、これら一方又は双方を意味する。
【0046】
上記(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体又は共重合体としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、メタクリル酸メチル-メタクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ブチル共重合体、またはメタクリル酸メチル-アクリル酸エチル共重合体等が例示される。これらのうち、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル-メタクリル酸エチル共重合体、またはメタクリル酸メチル-アクリル酸エチル共重合体が好ましく、ポリメタクリル酸メチルがより好ましい。
【0047】
上記ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ビスフェノールA(4,4’-ジヒドロキシジフェニル-2,2-プロパン)ポリカーボネート、ビスフェノールF(4,4’-ジヒドロキシジフェニル-2,2-メタン)ポリカーボネート、ビスフェノールS(4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン)ポリカーボネート、または2,2-ビス(4-ジヒドロキシヘキシル)プロパン)ポリカーボネートなどが例示される。これらのうち特に光学グレードのポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0048】
気泡含有層10の基材樹脂である透明熱可塑性樹脂は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。熱可塑性樹脂を2種以上混合して使用する場合、又は上記熱可塑性樹脂に本発明の目的を阻害しない範囲内で他の樹脂等を混合して使用する場合は、使用する各熱可塑性樹脂の屈折率が近似しているか等しいものがよい。各熱可塑性樹脂の屈折率差、又は熱可塑性樹脂と他の樹脂の屈折率差が小さいか屈折率が等しいと、混合樹脂が白濁して透明性が低下することを抑制することができる。そのため、屈折率差は小さいまたは屈折率が等しいことが望ましい。具体的には、その屈折率差は、0.05以下が好ましく、0.04以下がより好ましく、0.03以下がさらに好ましく、屈折率差は0(ゼロ)であることが最適である。
【0049】
気泡含有層10を形成する基材樹脂に用いられる透明熱可塑性樹脂としては、上記熱可塑性樹脂の中でも優れた加工性等の観点から、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂のいずれかであることが好ましく、特にポリスチレン樹脂が好ましい。さらにポリスチレン樹脂の中でもスチレン-メタクリル酸共重合体または分岐ポリスチレン樹脂が好ましい。
【0050】
気泡含有層10を形成する基材樹脂は、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲で、上述する透明熱可塑性樹脂以外の樹脂、エラストマー、気泡調整剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤、収縮防止剤、着色剤等の機能性添加剤、または無機充填剤等の添加剤を1種以上含有することができる。上記添加剤の合計量は、気泡含有層10を構成する透明熱可塑性樹脂100重量部に対して10重量部以下であることが好ましい。
【0051】
(気泡核剤)
気泡含有層10は、一般的に、上述する透明熱可塑性樹脂と気泡核剤とを溶融混練させてなる気泡含有層形成用溶融樹脂に発泡剤を加えて形成される。
気泡核剤としては、ポリエチレンワックス、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、エチレンビスステアリルアミド、メタクリル酸メチル系共重合体、シリコーンなどが例示される。上記気泡核剤の中でも気泡核剤として低添加量で効率的に機能し、気泡含有層中の気泡数を適切な範囲に調整し易いことから、タルクが好ましい。特に、タルクが用いられると平均気泡径を大きく変動させることなく大気泡30の個数を調整することができる点で優れている。また、気泡含有層10においては、気泡調整剤としてタルクを用いた場合、気泡含有層10中のタルクの含有量が0.01重量%以上であることが好ましく、0.02重量%以上であることがより好ましく、0.03重量%以上であることがさらに好ましい。一方、タルクの含有量が1.0重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましく、0.3重量%以下であることがさらに好ましい。タルクの含有量が上記範囲であると気泡含有層10の透明性の低下を抑制することができる。
【0052】
[樹脂層]
次に樹脂層20について説明する。樹脂層20は、気泡含有層10の両面側に形成される層であって、透明熱可塑性樹脂を基材樹脂として構成される。そのため、樹脂板10およびこれを用いて形成された二次加工品110を板面側から観察した場合、樹脂層20をとおして気泡含有層10に含まれる気泡が模様のように視認される。
また気泡含有層10が発泡層であるのに対し樹脂層20は非発泡層であるため、樹脂板100およびこれを用いて形成された二次加工品110は、光沢のある外観を呈する。
【0053】
(透明熱可塑性樹脂)
樹脂層20の基材樹脂である透明熱可塑性樹脂は、上述する気泡含有層10の基材樹脂として用いられる樹脂と同様の樹脂であるため、適宜、気泡含有層10の基材樹脂に関する説明が参照される。樹脂層20の基材樹脂と、気泡含有層10の基材樹脂は、同一の樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。樹脂層20を形成する基材樹脂に用いられる透明熱可塑性樹脂としては、気泡含有層10と同様に、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂のいずれかであることが好ましく、特にポリスチレン樹脂が好ましい。さらにポリスチレン樹脂の中でも直鎖ポリスチレン樹脂が好ましい。
【0054】
樹脂層20を形成するための基材樹脂は、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲で、透明熱可塑性樹脂以外の樹脂、エラストマー、気泡調整剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤、収縮防止剤等の機能性添加剤、または無機充填剤等の添加剤を1種以上含有することができる。上記添加剤の合計量は、透明熱可塑性樹脂100重量部に対して10重量部以下であることが好ましい。
【0055】
(樹脂層の坪量)
樹脂板100において、樹脂層20の片面あたりの坪量は、それぞれ500g/m2以上であり、それぞれ1000g/m2以上であることが好ましく、それぞれ1500g/m2以上であることがより好ましい。
樹脂層20の片面当たりの坪量を500g/m2以上とすることで、二次加工の際に気泡含有層10に発生した気泡が膨張しすぎることを良好に防止することができる。この結果、二次加工品110の気泡含有層10において、微細な気泡(微細気泡40)が形成され、雪のような細かく美麗な意匠が実現されうる。
一方、樹脂層20の片面あたりの坪量は、それぞれ10000g/m2以下であることが好ましく、それぞれ5000g/m2以下であることがより好ましく、それぞれ4000g/m2以下であることがさらに好ましい。樹脂層20の片面あたりの坪量の上限を上記の値以下とすることで、微細気泡40の気泡数が充分に確保されやすくなる。そのため、二次加工品110において多数の微細気泡40により、降りしきる粉雪や夜空に輝く無数の星のような意匠が示されやすくなる。
【0056】
(樹脂層の坪量の測定方法)
樹脂層20の坪量[g/m2]は、共押出によって製造される樹脂板100の場合、押出発泡条件の内、樹脂層20の吐出量X[kg/時]と、得られる樹脂板100の幅W[m]、樹脂板100の単位時間あたりの押出される樹脂板100の長さL[m/時]から、下記式(3)にて求められる。
【0057】
【0058】
(樹脂層の平均厚み)
樹脂層20の平均厚みは、特に限定されるものではなく、上述する坪量を満たす範囲で適宜に決定されることが好ましい。たとえば上記平均厚みは、1mm以上5mm以下とすることができる。気泡含有層10の両面側に設けられたそれぞれの樹脂層20は、同一の厚みであってもよいし、異なった厚みであってもよい。
樹脂層の平均厚みは、上述する気泡含有層10の厚みの測定方法と同様の方法により求めることができる。
【0059】
(樹脂板の製造方法)
樹脂板100の製造方法は、特に限定されないが、たとえば共押出方法が好ましい。
共押出方法で樹脂板100を製造する場合、気泡含有層10を構成するための基材樹脂、および気泡核剤を含む気泡含有層形成用溶融樹脂および樹脂層20を構成するための基材樹脂を含む樹脂層形成用溶融樹脂が、それぞれ押出機内で調製される。尚、上記気泡含有層形成用溶融樹脂には、適宜、分散剤などの添加剤がされる。また樹脂層形成用溶融樹脂にも、任意の添加剤が添加されてよい。
【0060】
気泡含有層形成用溶融樹脂において、透明熱可塑性樹脂と気泡核剤との合計100重量%に対する気泡核剤の添加量は、0.01重量%以上1.0重量%以下であることが好ましい。気泡核剤の添加量が上記範囲であると、気泡含有層10において、大気泡30の個数を望ましい範囲に調整しやすい。気泡核剤としてはたとえばタルクが好ましい。
また気泡含有層形成用溶融樹脂に含まれる分散剤の量は、0.001重量%以上0.01重量%以下であることが好ましい。上記分散剤としては、たとえばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
上記気泡含有層形成用溶融樹脂には、さらに発泡剤が添加される。当該発泡剤の量は、0.6重量%以上2.0重量%以下であることが好ましく、0.7重量%以上1.5重量%以下であることがより好ましい。発泡剤の添加量をこの範囲とすることで、樹脂板100における気泡含有層10に好ましい大気泡30を形成するとともに、0.2重量%以上1重量%以下の範囲で発泡剤を樹脂板中に含有させやすい。
【0061】
共押出機において、樹脂層形成用溶融樹脂からなる一方の層と、樹脂層形成用溶融樹脂からなる他方の層との間に、気泡含有層形成用溶融樹脂からなる層が合流するよう共押出し、その状態で、Tダイ等のダイから吐出させ、三層構造の積層体を形成する。ダイからの吐出時の樹脂温度は、190℃~240℃であることが好ましい。
吐出された積層体の中間層において発泡剤が発泡し、大気泡30が形成される。積層体は、対向するロール間を通過して適切な厚みと幅にのばされて形状が整えられ、適宜、補助ロールに巻き取られる。
尚、ダイから吐出された積層体を徐冷するよう温度コントロールをすることで、気泡含有層10の平均厚み(mm)に対する、厚み方向における大気泡30の平均気泡径(mm)の比が1.1以上となるよう調整しやすい。ダイから吐出された積層体を緩やかに冷ますことで、樹脂層20の硬化完了時間を遅らせつつ、気泡含有層10に含まれる発泡剤を発泡させることができる。かかる態様によれば、大気泡30が充分に膨張し気泡含有層10の厚みを超えて樹脂層20に入り込むことを許容する。
【0062】
上述のとおり共押出方法により製造された樹脂板100は、温度23℃、相対湿度50%の条件で、7日以上、養生させることが好ましい。高温多湿条件を避け、前記を満足する条件で養生させることにより気泡含有層中に存在する発泡剤が空気中に散逸することを効果的に抑制することができる。
【0063】
[二次加工品]
次に二次加工品110について説明する。二次加工品110は、樹脂板100を用い加熱を伴う二次加工を行うことによって形成される。
二次加工の具体的な加工方法は特に限定されないが、樹脂板100を、120℃以上160℃以下の温度範囲で、5分以上20分以下、加熱するとよい。これによって、大気泡30とともに微細気泡40を有する気泡含有層10を備える二次加工品110を製造することができる。加熱方法および加熱装置は特に限定されないが、たとえばオーブン、熱プレス、熱成型機等の従来公知の装置により加熱することができる。
また、二次加工における加熱によって軟化した樹脂板100を湾曲等させることで、所望の形状の二次加工品110が形成される。
【0064】
本発明に関する二次加工品の具体例として、
図3にパネル状の二次加工品112の斜視図を示す。
図3に示すとおり、二次加工品112は、板面側から観察した際、全体に多数の微細気泡40が散在しており、その中に大気泡30が点在する。尚、
図3では平面状の二次加工品110を示したが、樹脂板100は、図示省略する湾曲等させてなる非平面形状の二次加工品を提供することも可能である。
二次加工品112は、微細気泡40が雪のような意匠を呈するとともに、その多数の微細気泡40の中に点在する大気泡30がアクセントとなるため、非常に意匠性が高い。また、二次加工品112に対し光を照射すると、微細気泡40が透過光を拡散することによって、まぶしさが低減されやわらかな印象を与えるとともに、点在する輝度の高い大気泡30が星のように輝くため、外観が美麗である。しかも、二次加工品112は樹脂製であるため軽量であり、またリサイクル性にも優れる。
そのため、二次加工品112は、非常に幅広い分野で種々の用途に好ましく使用されうる。具体的には、二次加工品112は、商品展示ディスプレイ、導光照明、サイン、看板、建具採光窓、照明カバーなどとして用いられることが可能であり、またこれに限定されない。
【0065】
(微細気泡)
樹脂板100の気泡含有層10に含まれる発泡剤は、加熱されることで発泡し微細気泡40を形成する。即ち、樹脂板100を用い、加熱を伴う二次加工を実施することによって、
図1Bに示されるような複数の微細気泡40を含む二次加工品110が形成される。
【0066】
(断面側から観測される10cmあたりの微細気泡数の平均値)
二次加工品110の断面側から観測される10cmあたりの微細気泡数の平均値は、特に限定されないが、たとえば1000個以上10000個以下であることが好ましく、2000個以上5000個以下であることがより好ましい。上記範囲の個数であれば、微細気泡40が雪のような意匠を呈しつつも、二次加工品110のヘーズや全光線透過率を適度な範囲に維持しやすい。微細気泡40の平均気泡径および気泡数は、気泡含有層10に含有される発泡剤の量や二次加工における加熱条件などにより調整することが可能である。
断面側から観測される10cmあたりの微細気泡数の平均値は、以下の方法で求めることができる。
二次加工品110を用い、バンドソーにて厚み方向に切削し、板面側からみて縦横10cmの寸法のサンプルを作製する。上記サンプルの4つの断面それぞれを紙やすり等で磨き加工し4つの切断面を形成する。これら4つの切断面をマイクロスコープ(例えば、KEYENCE社製:デジタルマイクロスコープ VHX-900(落射モード))にて拡大撮影する。得られた写真に基づき、長径が1mm未満である気泡の数を4つの切断面全てにおいて測定する。得られた微細気泡の数の総数を4で除して1つの切断面あたりにおける平均気泡数を求め、断面側から観測される10cmあたりの微細気泡数の平均値とする。
つまり、本段落において断面側から観測される10cmあたりとは、二次加工品110を厚み方向に切断して得られた断面において、厚み方向に対し垂直方向の長さ領域を指す。観察される断面の厚みの寸法は、二次加工品110の厚みに依存する。
【0067】
(断面側から観測される微細気泡の厚み方向の平均気泡径)
微細気泡40は、相対的に大気泡30の平均気泡径よりも小さい気泡径を示す気泡である。大気泡30と微細気泡40の寸法差を十分に大きくして優れた意匠性を発揮させるという観点からは、二次加工品110の断面側から観測される微細気泡40の平均気泡径は、0.8mm以下であることが好ましく、0.7mm以下であることがより好ましく、0.6mm以下であることがさらに好ましい。
断面側から観測される微細気泡40の平均気泡径は、以下の方法で求めることができる。二次加工品110を用い、バンドソーにて厚み方向に切断し、板面側からみて縦横10cmの寸法のサンプルを作製する。上記サンプルの4つの断面それぞれを、紙やすり等にて磨き加工し、それぞれの切断面をマイクロスコープ(例えば、KEYENCE社製:デジタルマイクロスコープ VHX-900 (落射モード))にて拡大撮影する。得られた写真に基づき、各切断面において確認された微細気泡の厚み方向の最大長部分(樹脂板100の板面方向に対して垂直方向のフェレ径)を測定し、算術平均値を算出して平均気泡径とする。
【0068】
(600μm以下の微細気泡の割合)
二次加工品110における600μm以下の微細気泡の割合は以下のとおり求めることができる。上述する断面側から観測される微細気泡の厚み方向の平均気泡径の測定においてカウントされた全気泡の数に対する、上記全気泡のうち厚み方向の最大長部分が600μm以下の微細気泡の数の割合を算出することにより求めることができる。
【0069】
(板面側から観測される100cm2あたりの微細気泡と重なっている大気泡の数)
板面側から観測される、100cm2あたりの微細気泡40と重なっている大気泡30の数は、50個以下であることが好ましく、30個以下であることがより好ましく、10個以下であることがさらに好ましい。厚み方向において微細気泡40と重ならない大気泡30は、高い輝度を示し、二次加工品110において美麗なアクセントとなり意匠性の向上に寄与する。そのため板面側から確認される100cm2あたりの微細気泡40と重なっている大気泡30の数は、少ないことが好ましい。
板面側から確認される100cm2あたりの微細気泡と重なっている大気泡の数は以下のとおり特定することができる。二次加工品110において、例えば10cm×10cmなどの面積が100cm2となる領域を複数箇所無作為に選択し指定領域とする。各々の指定領域を肉眼で観測することにより、大気泡30が、厚み方向において微細気泡40と重なっているか否かを判断して各指定領域における微細気泡40と重なっている大気泡30の数をカウントする。そして、それらの値の各々を算術平均することで、単位面積あたりの微細気泡と重なっている大気泡の数(平均値)が特定される。
【0070】
(板面側から観測される微細気泡と重なっている大気泡の数の割合)
板面側から観測される、微細気泡40と重なっている大気泡30の数の割合は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。上記割合が低いほど、輝度が高い大気泡30の割合が多く、二次加工品110の意匠性が高い。
板面側から観測される微細気泡40と重なっている大気泡30の数の割合は以下のとおり求められる。
まず、単位面積あたりの大気泡の数の平均個数を以下のとおり求める。暗室環境下にて、樹脂板100を平面視した写真を撮影する。撮影された二次加工品110の領域内で、例えば10cm×10cmなどの面積が100cm2となる領域を複数箇所無作為に選択し指定領域とする。各々の指定領域において、例えばナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K-proを用いることにより個々の範囲内に存在する気泡径が1mm以上であって外郭の鮮明な気泡個数を求め、それらの値の各々を算術平均して求められる。なお、上記指定領域は、複数箇所を無作為に選択されるものであるが、指定領域どうしが一部重複していても良く、重複していなくても良い。
つぎに、各所定領域において、上述する板面側から確認される100cm2あたりの微細気泡と重なっている大気泡の数の特定方法と同様に、微細気泡40と重なっている大気泡30の数を求め、その算術平均し、単位面積当たりの微細気泡40と重なっている大気泡30の平均個数を算出する。
そして[単位面積あたりの大気泡の数の平均個数]に対する[単位面積当たりの微細気泡40と重なっている大気泡30の平均個数]の割合を求めることによって、板面側から観測される微細気泡40と重なっている大気泡30の数の割合を特定することができる。
【0071】
(大気泡の気泡輝度の平均値)
二次加工品110において観測される大気泡30の輝度(cd/m2)は、5000cd/m2以上であることが好ましく、8000cd/m2以上であることがより好ましく、10000cd/m2以上であることがさらに好ましい。かかる範囲の輝度が示されることにより、二次加工品110に対し光を照射した際、大気泡30が明るく輝く外観上のアクセントとなりやすい。上述する輝度(cd/m2)の上限は、概ね20000cd/m2である。
大気泡30の気泡輝度の平均値は以下のとおり求められる。二次加工品110の厚み方向において、一方側の樹脂層20から250mm離れた位置に第一光源(白色LED)を設置し、他方側の樹脂層20から300mm離れた位置に第二光源(輝度計)を設置する。このとき、第一光源と第二光源とを二次加工品110の厚み方向において互いに対向させるとともに、これらを結ぶ直線上に無作為に選択した1つの大気泡30が位置するよう、二次加工品110を配置する。そして、この状態で大気泡30の輝度を測定する。この測定を無作為に選択された10個の大気泡30について実施し、各大気泡30で測定された輝度を算術平均し、大気泡30の気泡輝度の平均値とする。上記輝度計としては、たとえば、株式会社東北電子いわき製作所製、商品名;Color Live CLIVE-150P3-BKなどが挙げられる。
【0072】
(二次加工品のヘーズ(Haze;Hz))
二次加工品110は、ヘーズ(Hz)は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。二次加工品110のヘーズは、原反として用いられた樹脂板100のヘーズに比べ顕著に高いことが特徴であり、これは、二次加工品110の気泡含有層10において微細気泡40が多数形成されたことを示す。上記ヘーズ(Hz)の上限は、概ね99%である。
二次加工品110のヘーズは、上述する樹脂板100のヘーズの測定方法と同様の方法により測定することができる。
【0073】
(二次加工品の全光線透過率(TT))
二次加工品110は、二次加工品110の厚み方向に沿った方向を視線方向とした場合の二次加工品110の全光線透過率が20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。全光線透過率が上記範囲を満足する二次加工品110は、原反である樹脂板100よりもヘーズが顕著に高いにもかかわらず、望ましい光透過性を有する。
二次加工品110の全光線透過率は、上述する樹脂板100の全光線透過率の測定方法と同様の方法により測定することができる。
【実施例0074】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0075】
実施例1~3、比較例1~3;
第1の押出機(軸径45mm、単軸)と第2の押出機(軸径120mm/40mm、単軸)を連結した共押出装置を準備し、第1の押出機には、表1に示す気泡含有層形成用溶融樹脂に用いられる透明熱可塑性樹脂(分岐ポリスチレン、DIC株式会社製「HP-600」)、気泡核剤(タルク、松村産業株式会社製「ハイフィラー#12」)および分散剤(ステアリン酸亜鉛)、物理発泡剤(ノルマルブタン)を表1に示す配合量で投入し、さらに表1に示す物理発泡剤を表1に示す配合量となるように圧入し、これらを溶融し且つ混練した。これにより気泡含有層形成用溶融樹脂を得た。
第2の押出機には、表1に示す樹脂層形成用溶融樹脂に用いられる透明熱可塑性樹脂(直鎖ポリスチレン、PSジャパン株式会社製「679」)を投入し、溶融し且つ混練した。これにより樹脂層形成用溶融樹脂を得た。
【0076】
上述で得た気泡含有層形成用溶融樹脂を、第1の押出機からTダイ内に押し出した。また上述で得た樹脂層形成用溶融樹脂を、第2の押出機からTダイ内に押し出した。このとき、樹脂層形成用溶融樹脂の層と樹脂層形成用溶融樹脂の層との間に、気泡含有層形成用溶融樹脂を押し出した。そして、気泡含有層形成用溶融樹脂の層の両表面に樹脂層形成用溶融樹脂が積層された積層体をTダイから共押出した。尚、共押出時における樹脂層の吐出量X[kg/時]、樹脂板の単位時間あたりの押出される樹脂板の長さL[m/時]および樹脂板の幅は、表1に示す。共押出した積層体を押圧ロールに通過させて形状を整えた後、転写ロールを通過させて積層体を徐冷した。なお、共押出の際における、樹脂層形成用溶融樹脂と気泡含有層形成用溶融樹脂のTダイからの吐出温度(Tダイから押出直後の樹脂の表面温度)は、表1に示す温度であった。共押出の際に気泡含有層形成用溶融樹脂の層では発泡現象が生じ、気泡含有層形成用溶融樹脂の層の内部に気泡が形成された。転写ロールを通過した直後における樹脂の表面温度は、表1に示す温度であった。こうして、気泡含有層の両表面に樹脂層が積層された樹脂板を得た。
【0077】
いずれの実施例およびいずれの比較例についても、樹脂板の寸法は、縦1100mm×横1035mm×厚さ8mm(樹脂板の板面の面積が1.14m2)とした。いずれの樹脂板も、縦に沿った方向が長辺方向となり、横に沿った方向が短辺方向となるよう作製した。
【0078】
[樹脂板の測定]
上述のとおり得た樹脂板を用い、以下の方法で、樹脂板の総坪量、樹脂層の坪量(片面)、気泡含有層の平均厚み、樹脂板中の発泡剤の含有量、板面側から観測される100cm2あたりの大気泡数の平均値、板面方向の大気泡の平均気泡径、厚み方向の大気泡の平均気泡径、厚み方向の大気泡の平均気泡径/気泡含有層の平均厚み、大気泡の気泡数の変動係数、樹脂板の板面の面積に対する、板面側から観測される大気泡が占める面積の割合、樹脂板のヘーズ(Hz)、樹脂板の全光線透過率(TT)を特定した。結果を表2に示す。
【0079】
(樹脂板の総坪量)
樹脂板の長辺方向に沿って延びる一辺の側端縁から短辺方向に沿って10cmの等間隔で、10cm×10cmの試験片を切り出した。各試験片について、試験片の表裏面に対応する一表面の面積を算出し、また、試験片の重さを特定して、この重さを上記面積で除して試験片ごとの坪量を算出し、それらを算術平均して求めた。
【0080】
(樹脂層の坪量(片面))
表1に示す共押出時の片面あたりの樹脂層の吐出量X[kg/時]、樹脂板の単位時間あたりの押出される樹脂板の長さL[m/時]および樹脂板の幅[m]を用い、上述する式(3)にて、樹脂層の坪量(片面)を求めた。
【0081】
(気泡含有層の平均厚み)
樹脂板をバンドソーで厚み方向に切断し、切削後、紙やすり等にて切削面を研磨して切断面を形成した。上記切断面を、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製デジタルマイクロコープVHX-900)にて30倍に拡大撮影した。得られた写真に基づいて、厚み方向における樹脂板の気泡含有層の厚みをそれぞれ無作為に10箇所測定し、それらの算術平均値を求め、気泡含有層の平均厚みとした。
【0082】
(樹脂板中の発泡剤の含有量)
樹脂板から重量1gのサンプルを切り出し、このサンプルをトルエンと内部標準物質として用いたシクロペンタンが入った蓋付き試料ビン中に入れ蓋を閉めた。その後、充分に撹拌し樹脂板中の発泡剤をトルエン中に溶解させた溶液を得た。当該溶液を測定用試料としてガスクロマトグラフ分析装置((株)島津製作所社製、製品名GC-14B)供し、樹脂板中の発泡剤の含有量を測定した。以下にガスクロマトグラフ分析の測定条件を示す。(ガスクロマトグラフ分析の測定条件)
カラム:信和加工株式会社製
担体:chromosorb W、60~80メッシュ、AW-DMCS処理品
液相:Silicone DC550(液相量20%)
カラム寸法:カラム長さ4.1m、カラム内径3.2mm
カラム素材:ガラス
カラム温度:40℃
注入口温度:200℃
キャリヤーガス:窒素
キャリヤーガス速度:50ml/min
検出器:FID
検出器温度:200℃
定量:内部標準法
【0083】
(板面側から観測される100cm2あたりの大気泡数の平均値)
暗室環境下にて、樹脂板を板面側から撮影した。これにより得られた写真において、撮影された樹脂板の領域内で、10cm×10cm(面積100cm2)なる領域を54箇所無作為に選択し指定領域とした。各々の指定領域において、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K-proを用いることにより個々の範囲内に存在する外郭の鮮明な気泡個数を求め、それらの値の各々を算術平均した。これにより得られた値を、板面側から観測される100cm2あたりの大気泡数の平均値とした。
【0084】
(板面方向の大気泡の平均気泡径)
暗室環境下にて、樹脂板を板面側から撮影した。これにより得られた写真において、撮影された樹脂板の領域内で、30cm×30cmの大きさの領域を9箇所無作為に選択し指定領域とした。各々の指定領域において、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K-proを用いることにより個々の大気泡の面積を測定し、その面積に基づいて、写真に写る大気泡を円とした場合における直径を求め、各々の指定領域において求められた大気泡の直径の値を算術平均した。これにより得た値を、板面方向の大気泡の平均気泡径(mm)とした。
【0085】
(厚み方向の大気泡の平均気泡径)
樹脂板を用い厚み方向にバンドソーで切断し、長さ100mm×幅10mm幅×樹脂板の厚みの寸法の短冊状の試験片を10個作製した。試験片の切断面のいずれか一方側面を紙やすり等で研磨して観察用切断面を形成した。上記観察用切断面を、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製、デジタルマイクロコープVHX-900)にて拡大投影した。これにより得られた投影画像に基づいて、観察用切断面において形状全体が確認された大気泡を無作為に10個選択し、それぞれの厚み方向の最大長部分(樹脂板の板面方向に対して垂直方向のフェレ径)を測定した。測定された全試験片における大気泡の気泡径を算出平均し、これによって得られた値を厚み方向の大気泡の平均気泡径とした。
【0086】
(厚み方向の大気泡の平均気泡径/気泡含有層の平均厚み)
上述のとおり得た気泡含有層の平均厚みと、上述のとおり得た厚み方向の大気泡の平均気泡径の値を用い、気泡含有層の平均厚みに対する、厚み方向の大気泡の平均気泡径の比を求めた。
【0087】
(大気泡の気泡数の変動係数)
大気泡の気泡数の変動係数(Cv)(%)は、上述した式(2)、即ち[気泡数の標準偏差(V)/気泡数の平均値(DTav)]×100で示される式を用いて特定された。なお、式(2)における気泡数の標準偏差(V)は、上述した式(1)を用いて特定した標準偏差Cv(%)を用いた。
【0088】
(樹脂板の板面の面積に対する、板面側から観測される大気泡が占める面積の割合)
上述する板面方向における大気泡の平均気泡径の際に測定した各指定領域内の個々の気泡の直径を用い、各気泡(円)の面積を求め、当該面積の総和を求めた。また各指定領域の面積の総和を求めた。そして、(各指定領域内の個々の気泡の合計面積)/(各指定領域の面積の総和)×100を算出した。得られた値を、樹脂板の板面に対する大気泡が占める面積の割合とした。
【0089】
(樹脂板のヘーズ(Hz) )
樹脂板から無作為に試験片(縦20mm、横20mm、厚さは樹脂板の厚さ)を3つ切出し、熱プレスにより目視で気泡が確認されない程度に気泡を充分に除去した後、200℃に加熱した加熱プレス盤で厚さ2mmのプレート片とし、各プレート片について、JIS K7136:2000に基づき、濁度計(日本電色工業株式会社製、製品名Haze Meter NDH7000SP)を用いて測定した。得られた各プレート片のヘーズの値を算術平均した値を樹脂板のヘーズとした。
【0090】
(樹脂板の全光線透過率(TT) )
樹脂板の厚み方向に沿った方向における全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に従って、濁度計(日本電色工業株式会社製、製品名Haze Meter NDH7000SP)を用いて測定した。尚、上記全光線透過率は、測定箇所における樹脂板の気泡の有無を考慮せずに無作為に選択された15か所の測定値を算術平均した値を採用した。
【0091】
[二次加工品の作製]
上述の通り得られた各実施例および各比較例である樹脂板を用い、以下のとおり二次加工品を作製した。
加熱オーブンを用い、表1における二次加工条件に示される温度および時間で、樹脂板を加熱し、平板状の二次加工品を得た。
そして、得られた二次加工品について、二次加工品のヘーズ(Hz)、二次加工品の全光線透過率(TT)、断面側から観測される10cmあたりの微細気泡数の平均値、断面側から観測される微細気泡の平均気泡径、600μm以下の微細気泡の割合、板面側から観測される100cm2あたりの微細気泡と重なっている大気泡数、板面側から観測される微細気泡と重なっている大気泡の数の割合、大気泡の気泡輝度の平均値を特定した。また、二次加工品における大気泡の意匠性評価試験、および微細気泡の意匠性評価試験をそれぞれ行った。結果は表3に示す。
【0092】
(二次加工品のヘーズ(Hz))
二次加工品を用い、上述する樹脂板のヘーズHzの測定方法と同様の方法で二次加工品のヘーズを求めた。
【0093】
(二次加工品の全光線透過率(TT))
二次加工品を用い、上述する樹脂板の全光線透過率TTの測定方法と同様の方法で二次加工品の輝全光線透過率を求めた。
【0094】
(断面側から観測される10cmあたりの微細気泡数の平均値)
二次加工品を用いて、バンドソーにて厚み方向に切断して切削し、縦10cm×横10cm×二次加工品の厚みの寸法である試験片を作製した。上記試験片の4つの切削面全てを紙やすりにて磨き加工して切断面を形成した。かかる切断面をマイクロスコープ(KEYENCE社製:デジタルマイクロスコープ VHX-900(落射モード))にて30倍に拡大撮影した。得られた写真に基づき、切断面ごとに微細気泡の数を確認し、平均値(一切断面における微細気泡の平均値)を算出した。得られた値を、断面側から観測される10cmあたりの微細気泡数の平均値とした。
【0095】
(断面側から観測される微細気泡の平均気泡径)
二次加工品を用い、バンドソーにて厚み方向に切断して切削し、板面側からみて縦10cm×横10cm×二次加工品の厚みの寸法の試験片を作製した。上記試験片の4つの切削面それぞれを、紙やすりにて磨き加工し切断面を形成した。それぞれの切断面をマイクロスコープ(KEYENCE社製:デジタルマイクロスコープ VHX-900(落射モード))にて30倍に拡大撮影した。得られた写真に基づき、各切断面において確認された微細気泡の厚み方向の最大長部分(樹脂板100の板面方向に対して垂直方向のフェレ径)を測定し、算術平均した。これにより得られた値を断面側から観測される微細気泡の厚み方向の平均気泡径とした。
【0096】
(600μm以下の微細気泡の割合)
上述する断面側から観察される微細気泡の厚み方向の平均気泡径の測定においてカウントされた全気泡の数に対する、上記全気泡のうち厚み方向の最大長部分が600μm以下の微細気泡の数の割合を算出することにより求めた。
【0097】
(板面側から観測される100cm2あたりの微細気泡と重なっている大気泡数)
二次加工品を用い、10cm×10cm(100cm2)となる領域を3箇所無作為に選択し指定領域とした。各々の指定領域を肉眼で観測することにより、大気泡が、厚み方向において微細気泡と重なっているか否かを判断し、各指定領域における微細気泡と重なっている大気泡の数を測定した。そして、それらの値の各々を算術平均し、100cm2あたりの微細気泡と重なっている大気泡の数(平均値)を求めた。
【0098】
(板面側から観測される、微細気泡と重なっている大気泡の数の割合)
まず、単位面積あたりの大気泡の数の平均個数を以下のとおり求めた。暗室環境下にて、樹脂板を平面視した写真を撮影した。撮影された写真における二次加工品の領域内で、10cm×10cm(面積100cm2)となる領域を3箇所無作為に選択し指定領域とした。各々の指定領域において、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K-proを用い個々の指定領域内に存在する気泡径が1mm以上であって外郭の鮮明な気泡個数を求め、それらの値の各々を算術平均し、単位面積あたりの大気泡の数の平均個数を求めた。
つぎに、各所定領域において、上述する板面側から確認される100cm2あたりの微細気泡と重なっている大気泡の数の特定方法と同様に、微細気泡と重なっている大気泡の数を求め、得られた値を算術平均し、単位面積当たりの微細気泡と重なっている大気泡の平均個数を算出した。
そして[単位面積あたりの大気泡の数の平均個数]に対する[単位面積当たりの微細気泡と重なっている大気泡の平均個数]の割合を求めることによって、板面側から観測される微細気泡と重なっている大気泡の数の割合を特定した。
【0099】
(大気泡の気泡輝度)
二次加工品において観測される大気泡の輝度(cd/m2)を、以下のとおり求めた。二次加工品の厚み方向において、一方側の樹脂層から250mm離れた位置に第一光源(白色LED、商品名TOSHIBA製 LDA4N-G(40W))を設置し、他方側の樹脂層から300mm離れた位置に第二光源(輝度計;株式会社東北電子いわき製作所製、商品名;Color Live CLIVE-150P3-BK)を設置した。このとき、第一光源と第二光源とを二次加工品の厚み方向において互いに対向させるとともに、これらを結ぶ直線上に無作為に選択された1つの大気泡が位置するよう、二次加工品を配置した。そして、この状態で大気泡の輝度を測定した。この測定を無作為に選択された10個の大気泡について実施し、各大気泡で測定された輝度を算術平均し、大気泡の気泡輝度の平均値とした。
【0100】
(大気泡の意匠性評価試験)
二次加工品における大気泡の意匠性について以下のとおり評価した。
〇(良好);大気泡の気泡輝度が5000cd/m2以上であった。
△(普通);大気泡の気泡輝度が5000cd/m2未満であった。
×(不良);大気泡が確認できず測定ができなかった。
【0101】
(微細気泡の意匠性評価試験)
二次加工品における微細気泡の意匠性について以下のとおり評価した。
〇(良好);600μm以下の微細気泡の割合が70%以上であった。
×(不良);600μm以下の微細気泡の割合が70%未満であった。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)透明熱可塑性樹脂を基材樹脂とし、発泡剤と気泡とを含む気泡含有層と、
透明熱可塑性樹脂を基材樹脂とし、前記気泡含有層の両面に積層された樹脂層とを有し、
加熱することにより前記気泡含有層に前記気泡よりも微細な微細気泡が発生する、熱加工用の樹脂板であって、
前記樹脂層の片面あたりの坪量がそれぞれ500g/m2以上であり、
前記樹脂板の板面方向における前記気泡の平均気泡径が1mm以上であり、
前記樹脂板の板面側から観測される100cm2あたりの気泡数の平均値が5個以上500個以下であり、
前記樹脂板の板面の面積に対する、板面側から観測される前記気泡が占める面積の割合が0.2%以上30%以下であり、
前記樹脂板に含有される前記発泡剤の量が0.2重量%以上1重量%以下であり、
前記気泡含有層の平均厚み(mm)に対する、厚み方向の前記気泡の平均気泡径(mm)の比が1.1以上であることを特徴とする樹脂板。
(2)前記樹脂板に含有される前記発泡剤の量が0.5重量%以上0.8重量%以下である上記(1)に記載の樹脂板。
(3)前記樹脂板の総坪量が3000g/m2以上20000g/m2以下である上記(1)または(2)に記載の樹脂板。
(4)板面方向における前記気泡の平均気泡径が2.5mm以上であり、
板面側から観測される100cm2あたりの気泡数の平均値が10個以上100個以下である上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の樹脂板。