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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091459
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】装着型ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20220614BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B25J9/06 A
B25J11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204304
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 安直
(72)【発明者】
【氏名】岩田 浩康
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS21
3C707BS09
3C707KS03
3C707KS20
3C707KS23
3C707KT01
3C707LT11
3C707XK06
(57)【要約】
【課題】人とロボットとの協働を容易に行うことができる装着型ロボットを提供すること。
【解決手段】装着型ロボットは、多関節アームと、多関節アームの基端が取り付けられ、人体に着脱可能に構成された装着部と、支持面に接することで多関節アームを支える支持脚と、を備えている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多関節アームと、
前記多関節アームの基端が取り付けられ、人体に着脱可能に構成された装着部と、
支持面に接することで前記多関節アームを支える支持脚と、を備えている、
装着型ロボット。
【請求項2】
前記支持脚の姿勢を計測する姿勢計測部と、
前記多関節アームの動作を制御するとともに、前記姿勢計測部の計測結果を用いて算出される前記多関節アームの移動量に基づいて、前記多関節アームの動作を補正する制御装置と、をさらに備えている、
請求項1に記載の装着型ロボット。
【請求項3】
前記制御装置は、前記姿勢計測部の計測結果に基づいて算出される前記多関節アームの基端の移動量を用いて、前記多関節アームの動作を補正する、
請求項2に記載の装着型ロボット。
【請求項4】
前記姿勢計測部は、前記支持脚の角度を検出するためのジャイロセンサを備えている、
請求項2または3に記載の装着型ロボット。
【請求項5】
前記姿勢計測部は、前記支持脚の鉛直方向に対する角度を検出するための重力センサをさらに備えている、
請求項2から4の何れか1項に記載の装着型ロボット。
【請求項6】
前記姿勢計測部は、前記支持面に対する前記支持脚の角度を計測する角度センサを備えている、
請求項2から4の何れか1項に記載の装着型ロボット。
【請求項7】
前記支持面に対する前記支持脚の先端の移動量を計測する移動量計測部をさらに備え、
前記制御装置は、前記姿勢計測部の計測結果および前記移動量計測部の計測結果を用いて算出される前記多関節アームの移動量に基づいて、前記多関節アームの動作を補正する、
請求項2から6の何れか1項に記載の装着型ロボット。
【請求項8】
前記移動量計測部は、
前記支持面の画像を取得する画像センサを備え、
前記画像センサによって取得された前記支持面の画像に基づいて、前記支持脚の先端の移動量を計測する、
請求項7に記載の装着型ロボット。
【請求項9】
前記移動量計測部は、
前記支持面を転がる転動部と、
前記転動部の転がり量を計測する転がり量計測部と、を備え、
前記転がり量計測部によって計測された前記転がり量に基づいて、前記支持脚の先端の移動量を計測する、
請求項7に記載の装着型ロボット。
【請求項10】
前記制御装置は、前記姿勢計測部の計測結果を用いて算出される前記多関節アームの移動量に基づいて前記多関節アームの動作を補正する動作補正モード、および、前記姿勢計測部の計測結果に基づいて前記多関節アームの先端の目標位置を変更する目標位置変更モードの一方を選択して、前記多関節アームの動作を制御する、
請求項2から9の何れか1項に記載の装着型ロボット。
【請求項11】
前記支持脚を1つまたは2つ備えている、
請求項1から10の何れか1項に記載の装着型ロボット。
【請求項12】
前記支持脚は、
脚部と、
前記脚部の先端に回転可能に配置され、前記支持面に接する脚先部を備えている、
請求項1から11の何れか1項に記載の装着型ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着型ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、少子高齢化の進展に伴い、建築現場でもロボットを導入し、人間の負荷を軽減しようという取り組みが進められている。例えば、特許文献1には、天井パネルの施工を行うビス打ちロボットおよび天井パネル搬送ロボットが開示されている。また、特許文献2には、台車型の移動ロボットに多関節アームを取り付けることで構成され、天井パネルのビス打ちなど内装作業を行うロボット装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-11653号公報
【特許文献2】特開平5-321454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、建築現場には様々な環境が存在するため、特許文献1および特許文献2に開示されている従来のロボット装置には困難な作業がある。また、建築現場においては、人とロボットが共存し、共同作業や分担作業など、協働できるようにすることがロボット装置を活用する上で有効である。人とロボットとを協働させるには、人にロボットを装着させることも有効である。しかしながら、ロボットは比較的重たいため、作業することが困難な場合がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するもので、人とロボットとの協働を容易に行うことができる装着型ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の装着型ロボットは、多関節アームと、多関節アームの基端が取り付けられ、人体に着脱可能に構成された装着部と、支持面に接することで多関節アームを支える支持脚と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の装着型ロボットによれば、人とロボットとの協働を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明の第1実施形態に係る装着型ロボットの概要図
図1B図1Aに示す装着型ロボットの背面図
図2】支持脚が縮まった状態を示す図
図3】支持脚が傾斜した状態を示す図
図4】装着型ロボットのブロック図
図5】制御装置が実行するプログラムのフローチャート
図6】制御装置が実行するプログラムのフローチャート
図7A】装着型ロボットの動作を示す図
図7B】装着型ロボットの動作を示す図
図7C】装着型ロボットの動作を示す図
図8】本発明の第2実施形態に係る装着型ロボットの概要図
図9図8に示す支持脚の部分断面拡大図
図10】本発明の第2実施形態の変形例に係る支持脚の部分断面拡大図
図11】本発明の第3実施形態に係る装着型ロボットのブロック図
図12】本発明の第3実施形態に係る装着型ロボットの動作を示す図
図13】本発明の第1実施形態の変形例に係る装着型ロボットの概要図
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態における装着型ロボットについて、図面を参照しながら説明する。以下では、図1Aにおける上側および下側をそれぞれ装着型ロボット1の上方および下方として説明する。
【0010】
装着型ロボット1は、人と協働して作業を行うロボットであり、例えば建築現場で天井パネルのビス打ちなどの作業を行う。装着型ロボット1は、図1Aおよび図1Bに示すように、装着部10、支持脚20、多関節アーム30、姿勢計測部40、カメラ50、および、制御装置60を備えている。
【0011】
装着部10は、多関節アーム30を人体Hに固定するためのものである。装着部10は、人体Hに着脱可能に構成されている。装着部10は、フレーム11および複数のベルト12,13,14を備えている。フレーム11は、枠状に形成されている。フレーム11は、腕が通されて肩に掛けられることで、人体Hに装着される。複数のベルト12,13,14は、フレーム11を人体Hに固定するものである。本実施形態においてベルトの本数は3つであるが、これに限定されないことは言うまでもない。装着部10の下側には、支持脚20の基端(上端)が取り付けられている。装着部10の上側には、多関節アーム30が取り付けられている。
【0012】
支持脚20は、支持面Fに接することで、装着部10および多関節アーム30を支えるものである。支持面Fは、装着型ロボット1を装着した作業者がいる場所の表面である。支持面Fは、例えば、床面や地面である。支持脚20は、棒状に形成され、伸縮自在に構成されている。
【0013】
装着型ロボット1が目的の作業を行う場合、支持脚20の先端(下端)が支持面Fに接触するように長さが調整される(図1A図1B)。支持脚20の先端が支持面Fに接触している場合、支持脚20は多関節アーム30および装着部10の重量を支える。よって、支持脚20は、人体Hの負荷を軽減することができる。
【0014】
一方、作業者が作業を終了して移動をする場合、支持脚20を縮めることで、多関節アーム30を容易に運搬することができる(図2)。
【0015】
多関節アーム30は、マニピュレータである。本実施形態の多関節アーム30は、自由度を5つ有するが、これに限定されないことは言うまでもない。多関節アーム30は、土台31、肩ブロック32、複数の上腕リンク33、肘ブロック34、前腕リンク35、および、ハンド36を備えている。
【0016】
土台31は、装着部10の上面に取り付けられている。土台31には、肩ブロック32の第1端部が第1関節軸J1回りに回転可能に接続されている。第1関節軸J1は、支持脚20の軸線20aと同軸である。肩ブロック32の第2端部には、複数の上腕リンク33を介して、肘ブロック34が接続されている。
【0017】
肩ブロック32、複数の上腕リンク33および肘ブロック34は、平行リンク機構を構成する。肩ブロック32と複数の上腕リンク33との回転中心となる回転軸、および、複数の上腕リンク33と肘ブロック34との回転中心となる回転軸をまとめて第2関節軸J2という。第2関節軸J2と第1関節軸J1とのなす角は、直角である。本実施形態の上腕リンク33の個数および第2関節軸J2の個数は、4つであるが、これに限定されないことは言うまでもない。
【0018】
肘ブロック34には、前腕リンク35の第1端部が第3関節軸J3回りに回転可能に接続されている。第3関節軸J3は、第1関節軸J1と互いに平行である。上述したように、肩ブロック32、複数の上腕リンク33および肘ブロック34は、平行リンク機構を構成するため、肘ブロック34は、第3関節軸J3と第1関節軸J1とが平行となるように、肩ブロック32に対して移動する。
【0019】
前腕リンク35の第2端部には、ハンド36が第4関節軸J4および第5関節軸J5の回りに回転可能に接続されている。第4関節軸J4と第5関節軸J5とは、互いに直交する。第4関節軸J4および第5関節軸J5それぞれと、第1関節軸J1とのなす角は、直角である。
【0020】
ハンド36は、例えば電動ドライバなどの工具Dを把持するものである。
【0021】
また、多関節アーム30は、複数の駆動部Mおよび複数の角度検出部Eを備えている。駆動部Mは、例えばモータである。駆動部Mは、肩ブロック32、肘ブロック34、前腕リンク35、および、ハンド36をそれぞれ対応する関節軸回りに回転させるものである。第1の駆動部M1は、土台31に対して第1関節軸J1回りに肩ブロック32を回転させる。第2の駆動部M2は、肩ブロック32に対して第2関節軸J2回りに肘ブロック34を回転させる。第3の駆動部M3は、肘ブロック34に対して第3関節軸J3回りに前腕リンク35を回転させる。第4の駆動部M4は、前腕リンク35に対して第4関節軸J4回りにハンド36を回転させる。第5の駆動部M5は、前腕リンク35に対して第5関節軸J5回りにハンド36を回転させる。複数の駆動部Mは、制御装置60によって制御される。
【0022】
複数の角度検出部Eは、駆動部Mの回転角度を検出するものである。複数の角度検出部Eは、例えばエンコーダである。第1乃至E5の角度検出部E1~E5は、第1乃至第5の駆動部M1~M5にそれぞれ対応するように配置されている。角度検出部Eの検出結果は、制御装置60に送信される。
【0023】
また、多関節アーム30には、基準座標系Σおよび手先座標系Σが定義されている。
【0024】
基準座標系Σは、土台31に配置された座標系である。基準座標系Σの原点は、土台31の底面と支持脚20の軸線20aとの交点に配置され、支持脚20の軸線20aおよび第1関節軸J1と同軸の基準Z軸Z、基準Z軸Zに直交する基準X軸X、および、基準Z軸Zおよび基準X軸Xに直交する基準Y軸Yを備えている。なお、基準座標系Σの原点が配置された土台31の底面と支持脚20の軸線20aとの交点は、多関節アーム30の基端に相当する。
【0025】
手先座標系Σは、ハンド36に配置された座標系である。第4関節軸J4と同軸の手先X軸X、および、第5関節軸J5と同軸の手先Y軸Y、および、手先X軸Xおよび手先Y軸Yに直交する手先Z軸Zを備えている。
【0026】
基準座標系Σにおける手先座標系Σの原点位置の座標(x,y,z)をハンド36の位置とする。xは、基準X軸Xの値である。yは、基準Y軸Yの値である。zは、基準Z軸Zの値である。また、基準座標系Σに対する手先座標系Σの回転角度(θ1,ψ1)を、ハンド36の姿勢とする。θ1は、基準Y軸Y回りの回転角度である。ψ1は、基準X軸X回りの回転角度である。
【0027】
ここで、基準座標系Σにおいて、ハンド36の位置および姿勢を表す手先ベクトルrをr=[x,y,z,θ1,ψ1]と定義する。厳密には、手先ベクトルrは時系列情報(すなわち時間関数)であり、r(t)=[x(t),y(t),z(t),θ1(t),ψ1(t)]と表すことができる。手先ベクトルrを一階微分すればハンド36の速度、二階微分すればハンド36の加速度を得ることができる。
【0028】
姿勢計測部40は、装着部10に配置され、支持脚20の姿勢を計測するものである。支持脚20の姿勢は、具体的には、支持脚20の鉛直方向に対する傾きおよび支持脚20の軸線20a回りの回転角度である。図3に示すように、支持脚20の鉛直方向に対する傾きは、脚ピッチ角θ2および脚ヨー角ψ2にて表される。脚ピッチ角θ2および脚ヨー角ψ2は、支持脚20の先端が位置する水平面上において互いに直交する2つの軸線回りの回転角度を表す。また、支持脚20の軸線20a回りの回転角度は、脚ロール角φ2にて表される。脚ピッチ角θ2、脚ヨー角ψ2および脚ロール角φ2は、人体Hが揺動することによって変化する。人体Hの揺動とは、人体Hが揺れたり、傾いたりする動きである。
【0029】
姿勢計測部40は、重力センサ41およびジャイロセンサ42を備えている。重力センサ41は、支持脚20の鉛直方向に対する角度を検出する加速度センサであり、脚ピッチ角θ2および脚ヨー角ψ2を計測する。ジャイロセンサ42は、支持脚20の角度を検出するためセンサである。ジャイロセンサ42は、具体的には、支持脚20の軸線20a回りの回転角度である脚ロール角φ2を計測する。姿勢計測部40の計測結果は、制御装置60に送信される。姿勢計測部40は、重力センサ41およびジャイロセンサ42によって、支持脚20の姿勢を容易に計測することができる。
【0030】
カメラ50は、目的の作業を行う作業箇所の画像を取得する。カメラ50が取得した画像は、制御装置60に送信される。
【0031】
制御装置60は、装着型ロボット1を統括制御するコンピュータである。制御装置60は、図4に示すように、入力部61、アーム軌道制御部62、作業処理部63、および、出力部64を備えている。入力部61、アーム軌道制御部62、作業処理部63、および、出力部64は、専用のハードウエアまたはソフトウェアを実行するプロセッサによって構成されている。本実施形態では、アーム軌道制御部62および作業処理部63は、ソフトウェアを実行するプロセッサによって構成されている。つまり、制御装置60は、後述するプログラムを実行することにより、入力部61、アーム軌道制御部62、作業処理部63、および、出力部64として機能する。
【0032】
また、制御装置60は、装着型ロボット1とは別体であってもよい。この場合、制御装置60は、姿勢計測部40、角度検出部Eおよび駆動部Mと、有線または無線にて通信可能に接続される。すなわち、多関節アーム30は、制御装置60によって遠隔操作される。この場合の制御装置60は、例えばスマートフォンであってもよい。
【0033】
入力部61は、姿勢計測部40の計測結果、複数の角度検出部Eの検出結果、および、カメラ50が撮影した画像を取得する。
【0034】
姿勢計測部40の計測結果は、脚ピッチ角θ2、脚ヨー角ψ2および脚ロール角φ2の変化量(以下、姿勢変化量ΔΦ(={θ2,ψ2,φ2})と記載する。)である。入力部61は、姿勢変化量ΔΦをアーム軌道制御部62に送信する。
【0035】
複数の角度検出部Eの検出結果は、q、q、q、q、および、qにて表される。qは、第1の駆動部M1の回転角度である。qは、第2の駆動部M2の回転角度である。qは、第3の駆動部M3の回転角度である。qは、第4の駆動部M4の回転角度である。qは、第5の駆動部M5の回転角度である。以下、駆動部Mの回転角度を関節角度と記載する。入力部61は、各駆動部M1~M5の現在の関節角度である現在関節角度q(={q,q,q,q,q})をアーム軌道制御部62に送信する。
【0036】
入力部61は、カメラ50が撮影した画像を、作業処理部63に送信する。
【0037】
アーム軌道制御部62は、制御装置60の記憶領域(不図示)に予め格納されている後述するプログラムを実行することで、多関節アーム30の動作を制御する。アーム軌道制御部62は、具体的には、目標位置および移動時間を取得して、ハンド36の位置を取得した移動時間で取得した目標位置に移動させるように、多関節アーム30の動作を制御する。アーム軌道制御部62は、具体的には、各駆動部M1~M5の操作量(具体的には角速度)を算出する。アーム軌道制御部62は、目標位置および移動時間を作業処理部63から取得する(詳細は後述する)。
【0038】
アーム軌道制御部62は、軌道生成部62a、揺動補正部62b、逆運動学計算部62c、角度誤差計算部62d、および、角度誤差補償部62eを備えている。アーム軌道制御部62は、プロセッサが後述するプログラムを実行することで、軌道生成部62a、揺動補正部62b、逆運動学計算部62c、角度誤差計算部62d、および、角度誤差補償部62eとして機能する。
【0039】
軌道生成部62aは、ハンド36が現在の位置から目標位置まで移動時間で移動するハンド36の位置の軌道に相当する手先ベクトルrの時系列データを生成する。現在のハンド36の位置は、アーム軌道制御部62が取得した前回の目標位置に相当する。なお、前回の目標位置は、記憶領域に記憶されている。
【0040】
軌道生成部62aは、前回の目標位置を示す手先ベクトルrから、取得した目標位置(すなわち今回の目標位置)を示す手先ベクトルrまで、生成した時系列データに沿って順に手先ベクトルrを出力する。軌道生成部62aが出力する手先ベクトルrを軌道手先ベクトルrと記載する。
【0041】
揺動補正部62bは、軌道生成部62aから出力された軌道手先ベクトルrを人体Hの揺動に応じて補正する。人体Hの揺動は、姿勢変化量ΔΦとして入力部61を介して姿勢計測部40から送信される。揺動補正部62bは、式(1)に基づいて、軌道手先ベクトルrを補正した補正手先ベクトルrdmを算出する。
【0042】
(式1)
dm=Rψθφ{r+[0,0,L]}・・・(1)
【0043】
ψ、Rθ、Rφはそれぞれ、脚ロール角φ2、脚ヨー角ψ2、脚ピッチ角θ2の回転行列である。Lは、支持脚20の先端から基準座標系Σの原点までの距離である。式(1)は、人体Hが揺動したことによって生じる支持脚20の姿勢変化量ΔΦを、多関節アーム30の移動量に変換して、軌道手先ベクトルrを補正する。多関節アーム30の移動量は、具体的には、多関節アーム30の基端に相当する基準座標系Σの原点の支持脚20の先端から見た変位量および支持脚20の軸線20a回りの回転量である。
【0044】
なお、式(1)は、支持脚20の先端が支持面Fに接触し、かつ、支持脚20の先端が支持面Fに対して移動していない状態において、支持脚20が水平面に対して傾く場合、および、支持脚20が軸線20a回りに回転する場合を前提としたものである。また、式(1)は、基準座標系Σの原点が支持脚20の軸線20a上に配置され、かつ、支持脚20の軸線20aと基準Z軸Zとが同軸である場合を前提としたものである。このように式(1)が構成されているため、人体Hの揺動によって生じる支持脚20の水平面に対する傾きおよび支持脚20の軸線20a回りの回転角度を用いて算出される多関節アーム30の移動量に基づいて、多関節アーム30の動作ひいてはハンド36の位置を簡便に補正することができる。
【0045】
逆運動学計算部62cは、逆運動学に基づき、算出された補正手先ベクトルrdmを用いて、各駆動部M1~M5について目標関節角度qdmを算出する。目標関節角度qdmは、各駆動部M1~M5について目標とする関節角度を示すものである。
【0046】
角度誤差計算部62dは、各駆動部M1~M5について、算出された目標関節角度qdmと、入力部61から送信された現在関節角度qとの差分qを算出する。
【0047】
角度誤差補償部62eは、算出された差分qに基づいて、各駆動部M1~M5について、目標とする角速度である目標角速度ωを算出して、出力部64に送信する。角度誤差補償部62eは、例えば、PID補償器である。角度誤差補償部62eでは、具体的には、定数の対角行列である比例、微分、積分の3つのゲインを適切に調整することにより、差分qをゼロに収束させるように目標角速度ωを算出する。角度誤差補償部62eは、算出された目標角速度ωを出力部64に送信する。
【0048】
作業処理部63は、後述するプログラムが実行された場合に、多関節アーム30に所定の動作をさせるように、目標位置および移動時間を設定する。所定の動作とは、ホームポジション動作、および、作業動作である。
【0049】
ホームポジション動作は、ハンド36の位置を現在の位置から予め定められた基準位置P1(図7A)に移動させる多関節アーム30の動作である。作業動作は、ハンド36の位置を待機位置P2(図7B)から作業位置P3(図7C)に移動させ、ハンド36を作業位置P3に所定の作業時間継続して位置させた後、待機位置P2に戻る多関節アーム30の動作である。目的の作業がビス打ちである場合、作業位置P3は、ビス打ちを行う位置である。待機位置P2は、作業位置P3より下方に所定距離離れた位置である。所定の作業時間は、ビス打ちを行うために必要な時間である。
【0050】
また、作業処理部63は、カメラ50を制御して、カメラ50から画像を取得する。さらに、作業処理部63は、取得した画像について後述する画像処理を実行することで、目標位置を設定する。また、作業処理部63は、前回の目標位置から今回の目標位置への移動距離に基づいて、移動時間を設定する。移動距離が大きくなるにしたがって、移動時間が長くなるように設定されている。作業処理部63は、設定した目標位置および移動時間をアーム軌道制御部62に送信する。
【0051】
出力部64は、アーム軌道制御部62から送信された目標角速度ω、および、作業処理部63から送信された制御量を制御指令値に変換し、各駆動部M1~M5に出力する。
【0052】
次に、上述した装着型ロボット1を装着した作業者が、装着型ロボット1に目的の作業を実行させた場合の装着型ロボット1の動作、および、制御装置60が実行するプログラムについて、図5および図6のフローチャートを用いて説明する。本実施形態において、目的の作業は、天井パネルのビス打ち作業である。
【0053】
図5のフローチャートによって表されるプログラムは、作業処理部63によって実行される。図6のフローチャートによって表されるプログラムは、アーム軌道制御部62によって実行される。また、アーム軌道制御部62は、装着型ロボット1の電源がオンされている場合に、プログラムを常時実行する。
【0054】
また、作業者は、装着型ロボット1に目的の作業をさせる前に、支持脚20の先端を支持面Fに接触させるとともに、支持脚20の軸線20aがおおよそ鉛直方向に沿うように作業者自身の姿勢を調整する。作業者が所定の操作(例えば装着部10に設けられたスタートスイッチ(不図示)をオンする)を行うことにより、作業処理部63がプログラムを開始することで、目的の作業が開始される。
【0055】
作業処理部63は、S10にて、ホームポジション動作を多関節アーム30に実行させる。作業処理部63は、具体的には、目標位置を基準位置P1に設定し、かつ、ハンド36の現在の位置(すなわち前回の目標位置)と設定した目標位置(すなわち今回の目標位置である基準位置P1)との距離に基づいて移動時間を設定する。作業処理部63は、設定した目標位置および移動時間をアーム軌道制御部62に送信する。
【0056】
アーム軌道制御部62は、目標位置および移動時間を取得したことに応じて、図6に示されるS30を実行する。軌道生成部62aは、S30にて、記憶領域に記憶されている前回の目標位置、取得した今回の目標位置、および、取得した移動時間に基づいて手先ベクトルrの時系列データを生成する。さらに、アーム軌道制御部62は、生成された手先ベクトルrの時系列データから、軌道手先ベクトルrを出力する。
【0057】
続けて、揺動補正部62bは、S32にて姿勢変化量ΔΦを取得し、S34にて出力された軌道手先ベクトルrから補正手先ベクトルrdmを算出する。
【0058】
逆運動学計算部62cは、S36にて、算出された補正手先ベクトルrdmから目標関節角度qdmを算出する。続けて、角度誤差計算部62dは、S38にて現在関節角度qを取得し、S40にて、算出された目標関節角度qdmと現在関節角度qとの差分qを算出する。
【0059】
さらに、角度誤差補償部62eは、S42にて、算出された差分qに基づいて目標角速度ωを算出する。そして、出力部64は、S44にて、算出された目標角速度ωを制御指令値として出力する。
【0060】
各駆動部M1~M5に制御指令値が送信されたことに応じて、各駆動部M1~M5ひいては多関節アーム30が動作して、ハンド36が現在の位置から目標位置に設定された基準位置P1に向けて移動する。
【0061】
ハンド36が移動している間に人体Hが揺動いたり傾いたりした場合においても、人体Hの揺動や傾くことによって生じる支持脚20の姿勢変化に基づいて軌道手先ベクトルrが補正されるため、ハンド36が到達する位置が目標位置に対してずれることが抑制される。
【0062】
多関節アーム30が設定された移動時間をかけて動作することで、ハンド36は、前回の目標位置から移動して基準位置P1に位置する(図7A)。設定された移動時間が経過した時点で、S10のホームポジション動作が終了する。続けて、作業処理部63は、S12にて、姿勢計測部40のキャリブレーションを行う。
【0063】
キャリブレーションは、支持脚20の軸線20aが支持面Fに対しておおよそ鉛直方向であることが所定時間継続したことが重力センサ41によって検出されると、所定時間が終了した時点の脚ピッチ角θ2、脚ヨー角ψ2および脚ロール角φ2を基準値(ゼロ)とする処理である。作業者は、キャリブレーションが終了するまで、支持脚20の軸線20aがおおよそ鉛直方向に沿うように自身の姿勢を保つ。キャリブレーションが終了した時点で例えば制御装置60が発生するブザー音によって、作業者はキャリブレーションが終了したことを認識する。
【0064】
さらに、作業処理部63は、S14にて、待機位置P2および作業位置P3を検出する。作業処理部63は、具体的には、カメラ50を制御して、例えば、天井に配置されている天井パネルの画像を取得し、取得した画像から天井パネルの輪郭を画像処理(具体的にはエッジ検出)にて検出する。
【0065】
続けて、作業処理部63は、検出された天井パネルの輪郭に基づいて、ビス打ちをする作業位置P3を検出する。さらに、作業処理部63は、作業位置P3から所定距離下方の待機位置P2を検出する。本実施形態においては、作業位置P3および待機位置P2はそれぞれ複数(例えば3つ)検出される。
【0066】
続けて、作業処理部63は、S16にて、多関節アーム30に作業動作を実行させる。作業処理部63は、具体的には、検出した待機位置P2のうち、ハンド36に最も近い待機位置P2をハンド36の目標位置に新たに設定する。さらに、作業処理部63は、ハンド36の現在の位置(基準位置P1)と新たに設定した目標位置(待機位置P2)との距離に基づいて移動時間を新たに設定する。作業処理部63は、新たに設定した目標位置および移動時間をアーム軌道制御部62に送信する。
【0067】
アーム軌道制御部62は、新たに設定された目標位置(待機位置P2)および移動時間を取得したことに応じて、図6のフローチャートによって表されるプログラムを上述したように実行する。これにより、多関節アーム30が新たに設定された移動時間をかけて動作することで、ハンド36は、基準位置P1から移動して待機位置P2に位置する(図7B)。
【0068】
ハンド36が移動している間に人体Hが揺動いたり傾いたりした場合においても、人体Hの揺動や傾くことによって生じる支持脚20の姿勢変化に基づいて軌道手先ベクトルrが補正されるため、ハンド36が到達する位置が目標位置に対してずれることが抑制される。
【0069】
続けて、作業処理部63は、設定した移動時間が経過したことに応じて、現在の待機位置P2に対応する作業位置P3をハンド36の目標位置に新たに設定する。さらに、作業処理部63は、ハンド36の現在の位置(待機位置P2)と新たに設定した目標位置(作業位置P3)との距離に基づいて移動時間を新たに設定する。作業処理部63は、新たに設定した目標位置および移動時間をアーム軌道制御部62に送信する。
【0070】
アーム軌道制御部62は、新たに設定された目標位置(作業位置P3)および移動時間を取得したことに応じて、図6のフローチャートによって表されるプログラムを上述したように実行する。これにより、多関節アーム30が新たに設定された移動時間をかけて動作することで、ハンド36は、待機位置P2から移動して作業位置P3に位置する(図7C)。
【0071】
ハンド36が作業位置P3に位置すると、ハンド36に保持された工具Dである電動ドライバは、例えば電動ドライバの先端が天井パネルに接触して押し込まれることにより作動を開始して、ビス打ちを行う。所定の動作時間が経過した時点でビス打ちは完了する。
【0072】
続けて、作業処理部63は、所定の動作時間が経過したことに応じて、現在の作業位置P3に対応する待機位置P2をハンド36の目標位置に新たに設定する。さらに、作業処理部63は、ハンド36の現在の位置(作業位置P3)と新たに設定した目標位置(待機位置P2)との距離に基づいて移動時間を新たに設定する。作業処理部63は、新たに設定した目標位置および移動時間をアーム軌道制御部62に送信する。
【0073】
アーム軌道制御部62は、新たに設定された目標位置(待機位置P2)および移動時間を取得したことに応じて、図6のフローチャートによって表されるプログラムを上述したように実行する。これにより、多関節アーム30が新たに設定された移動時間をかけて動作することで、ハンド36は、作業位置P3から移動して待機位置P2に位置する(図7B)。ハンド36を作業位置P3から待機位置P2に移動させるときに、新たに設定された移動時間が経過した時点で、S16の作業動作が終了する。このとき、複数の作業位置P3のうち1つの作業位置P3に対して目的の作業が終了する。
【0074】
さらに、作業処理部63は、S18にて、全ての作業が完了したか否かを判定する。複数の作業位置P3の全てに対して作業が終了していない場合、全ての作業が完了していない。この場合(S18にてNO)、作業処理部63は、プログラムをS16に戻して、多関節アーム30に作業動作を再度実行させる。作業処理部63は、具体的には、作業が完了していない作業位置P3のうちハンド36に最も近い作業位置P3に対応する待機位置P2を目標位置に設定して、多関節アーム30に作業動作を開始させる。
【0075】
一方、複数の作業位置P3の全てに対して作業が終了した場合(S18にてYES)、作業処理部63は、S20にて、多関節アーム30にホームポジション動作を実行させて、ハンド36を基準位置P1に移動させる。これにより、多関節アーム30が動作して、ハンド36は、基準位置P1に位置する(図7A)。
【0076】
このように、装着型ロボット1は、人体Hが揺動しても目的の作業を精度よく行うことができる。また、支持脚20によって装着型ロボット1の人体Hへの負荷が軽減されている。そして、装着型ロボット1が目的の作業を行っている間、作業者は、装着型ロボット1とは別の作業を行うことができる。よって、人とロボットとの協働を容易に行うことができる。
【0077】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態における装着型ロボット1について、主として上述した第1実施形態とは異なる部分について、図8および図9を用いて説明する。第2実施形態の装着型ロボット1は、支持脚120が脚部121、脚先部122、脚部121と脚先部122とを回転可能に接続する関節部123、および、移動量計測部124を備えている。
【0078】
脚部121は、上述した第1実施形態の支持脚20と同様に伸縮可能に構成されている。
【0079】
脚先部122は、脚部121の先端(下端)に関節部123を介して接続されている。脚先部122の底面は、第1実施形態の支持脚20の先端と比べて、支持面Fに接触する面積が大きい。よって、脚先部122は、第1実施形態の支持脚20の先端と比べて支持面Fに対する摩擦力が大きくなるため、装着型ロボット1が目的の作業を行っている場合に支持面Fに対して移動することが抑制される。
【0080】
また、脚先部122の底面が支持面Fに接触している場合、脚部121は、脚先部122に対して回転する。具体的には、脚部121は、脚先部122に対して、関節部123が有する第6関節軸J6および7関節軸の回りに回転する。第6関節軸J6および第7関節軸J7は、互いに直交し、かつ、脚先部122の底面と平行な軸線である。第6関節軸J6と第7関節軸J7との交点には、脚部121の軸線20aが通る。また、脚部121は、脚先部122に対して脚部121の軸線121a回りに回転する。
【0081】
移動量計測部124は、支持面Fに対する支持脚120の先端の移動量を計測するものである。支持面Fに対する支持脚120の先端の移動量は、具体的には、支持面Fに対する脚先部122の水平方向に沿った移動量である。移動量計測部124は、レーザ光源124aおよび画像センサ124bを備えている。
【0082】
レーザ光源124aは、レーザ光を支持面Fに照射するものである。画像センサ124bは、レーザ光が照射された支持面Fの画像を取得して、脚先部122の水平方向に沿った移動量を検出するセンサである。脚先部122の水平方向に沿った移動量ΔSは、水平面と平行かつ互いに直交する2つの軸線それぞれにおける移動量(ΔSxおよびΔSy)によって表される。画像センサ124bによって検出された移動量ΔS(={ΔSx,ΔSy})は、制御装置60に送信される。
【0083】
また、第2実施形態において、揺動補正部62bは、式(2)に基づいて、軌道手先ベクトルrを補正した補正手先ベクトルrdmを算出する。
【0084】
(式2)
dm=Rψθφ{r+[0,0,L]}+ΔS・・・(2)
【0085】
ここで、ΔS=[ΔSx,ΔSy,0]である。このように、軌道手先ベクトルrの補正は、支持脚120の姿勢変化量ΔΦだけでなく、脚先部122の水平方向に沿った移動量ΔSも含めて行われる。よって、ハンド36の位置を精度よく補正することができる。また、移動量計測部124は、支持面Fと非接触の状態で移動量ΔSを計測するため、支持面Fが汚れている場合においても安定して移動量ΔSを計測することができる。
【0086】
<第2実施形態の変形例>
次に、上述した第2実施形態の変形例における装着型ロボット1について、図10を用いて説明する。本変形例における装着型ロボット1は、上述した第1実施形態における姿勢計測部40の重力センサ41に代えて、第1,2の角度センサA26,A27を備えてもよい。
【0087】
第1,2の角度センサA26,A27は、支持脚220の支持面Fに対する角度を計測する。第1,2の角度センサA26,A27は、エンコーダによって構成されている。第1の角度センサA26は、具体的には、脚先部222に対する脚部221の第6関節軸J6回りの回転角度(θ3)を検出する。第2の角度センサA27は、脚先部222に対する脚部221の第7関節軸J7の回りの回転角度(ψ3)を検出する。この場合、上述した第1実施形態における重力センサ41から出力される脚ピッチ角θ2および脚ヨー角ψ2に代えて、第1,2の角度センサA26,A27によって検出された回転角度は、姿勢変化量ΔΦの要素として用いられる。
【0088】
また、本変形例における装着型ロボット1は、上述した第1実施形態における姿勢計測部40のジャイロセンサ42に代えて、脚先部222に対する脚部221の、脚部221の軸線221a回りの回転角度を検出する第3の角度センサA28を備えてもよい。第3の角度センサA28は、例えばエンコーダである。この場合、上述した第1実施形態におけるジャイロセンサ42から出力される脚ロール角φ2に代えて、第3の角度センサA28によって検出された回転角度(φ3)は、姿勢変化量ΔΦの要素として用いられる。
【0089】
また、上述した移動量計測部124は、レーザ光源124aおよび画像センサ124bによって構成されているが、本変形例の移動量計測部224は、転動部224aおよび転がり量計測部224bを備えている。転動部224aは、球状に形成され、支持面Fに接触して支持面Fを転がるものである。転がり量計測部224bは、転動部224aの転がり量を計測するものであり、例えば転動部224aに接触して転動部224aの転がりに応じて回転する軸部材(不図示)の回転量を検出するエンコーダ(不図示)を用いて構成されている。移動量計測部224は、転がり量計測部224bの計測結果に基づいて、移動量ΔSを算出する。移動量計測部224に転動部224aおよび転がり量計測部224bが用いられる場合、支持面Fの模様が上述した画像センサ124bでは判別しにくい場合においても精度よく移動量ΔSを継続することができる。
【0090】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態における装着型ロボット1について、主として上述した第1実施形態とは異なる部分について、図11および図12を用いて説明する。本第3実施形態の制御装置60は、動作補正モードと目標位置変更モードの一方を選択して、多関節アーム30の動作を制御する。
【0091】
動作補正モードは、上述した第1実施形態のように、制御装置60が姿勢計測部40の計測結果を用いて算出する多関節アーム30の移動量に基づいて多関節アーム30の動作を補正する制御モードである。
【0092】
目標位置変更モードは、制御装置60が姿勢計測部40の計測結果を用いて目標位置を変更するモードである。目標位置変更モードにおいては、作業者が支持脚20の姿勢を変化させることで、多関節アーム30ひいてはハンド36について作業者が所望する距離を移動させることができる(詳細は後述する)。
【0093】
第3実施形態の装着型ロボット1は、揺動操作部362f、軌道切替部362g、および、切替スイッチ370をさらに備えている。揺動操作部362fおよび軌道切替部362gは、制御装置60が備えている。
【0094】
揺動操作部362fは、軌道生成部62aから軌道手先ベクトルrを取得し、入力部61を介して姿勢計測部40から姿勢変化量ΔΦを取得する。揺動操作部362fは、式(3)に基づいて、取得した軌道手先ベクトルrから変更手先ベクトルrdcを算出する。
【0095】
(式3)
dc=r+KcΔΦ・・・(3)
【0096】
ここで、Kcは、定数ゲイン行列である。また、ΔΦ=[θ2,ψ2,φ2]である。式(3)において、変更手先ベクトルrdcは、軌道手先ベクトルrに対して、姿勢変化量ΔΦに定数ゲイン行列を乗じたものを加えることで算出されている。
【0097】
軌道切替部362gは、揺動補正部62bから補正手先ベクトルrdmを取得し、かつ、揺動操作部362fから変更手先ベクトルrdcを取得する。軌道切替部362gは、制御モードに対応する手先ベクトルrを出力する。具体的には、軌道切替部362gは、動作補正モードにおいて、上述した第1実施形態と同様に、補正手先ベクトルrdmを出力する。また、軌道切替部362gは、目標位置変更モードにおいて、変更手先ベクトルrdcを出力する。軌道切替部362gは、後述する操作信号を取得すると、出力する手先ベクトルrを切り替える。
【0098】
切替スイッチ370は、制御モードを切り替えるためのスイッチである。切替スイッチ370は、例えば装着部10に配置される。作業者が切替スイッチ370を操作すると、操作信号が制御装置60に出力される。操作信号は、入力部61を介して、軌道切替部362gに取得される。
【0099】
次に、制御モードが目標位置変更モードである場合における装着型ロボット1の動作について説明する。装着型ロボット1は、上述した図6のフローチャートに示すプログラムを実行しており、制御モードが動作補正モードである状態から説明する。動作補正モードにおいて、制御装置60は、人体Hの揺動に応じて多関節アーム30の動作を補正しながら、ハンド36の位置を、図5のS16にて設定した目標位置に位置させるように多関節アーム30の動作を制御している状態である。上述したように、軌道切替部362gは、動作補正モードにおいて補正手先ベクトルrdmを出力する。
【0100】
この状態において、作業者が切替スイッチ370を操作すると、操作信号が送信されて、制御モードが動作補正モードから目標位置変更モードに切り替わる。軌道切替部362gは、操作信号を取得したことに応じて、出力する手先ベクトルrを、補正手先ベクトルrdmから変更手先ベクトルrdcに切り替える。さらに、作業者は、支持脚20の姿勢を変化させる。
【0101】
上述したように、変更手先ベクトルrdcは、軌道手先ベクトルrに対して、姿勢変化量ΔΦに定数ゲイン行列を乗じたものを加えることで算出されている。よって、支持脚20の姿勢が変化するとその変化量に比例した距離を多関節アーム30ひいてはハンド36が移動する。例えば、脚ピッチ角θ2がΔθ変化した場合(図12)、ハンド36の位置は、基準X軸Xの方向においてはΔx移動する。
【0102】
作業者が所望する距離をハンド36が移動した場合、作業者は、切替スイッチ370を操作して、制御モードを目標位置変更モードから動作補正モードに戻す。これに応じて、軌道切替部362gは、出力する手先ベクトルrを変更手先ベクトルrdcから補正手先ベクトルrdmに切り替える。これにより、アーム軌道制御部62は、図5のS16にて設定した目標位置から作業者が所望する距離だけ移動した位置に、ハンド36を位置させるように制御する。
【0103】
このように、目標位置変更モードによって、作業者は、支持脚20の姿勢を変化させることで、ハンド36の目標位置を調整することができる。よって、作業者は、装着型ロボット1の作業効率を向上させることができる。また、ハンド36の目標位置を変更するインターフェースとして支持脚20を利用することができる。
【0104】
<変形例>
本発明は、これまでに説明した実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない限り、各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0105】
例えば、支持脚20の基端は、装着部10に取り付けられているが、これに代えて、多関節アーム30の例えば土台31に取り付けられてもよい。
【0106】
また、姿勢計測部40のジャイロセンサ42は、脚ロール角φ2の計測に用いられるが、これに加えて、脚ピッチ角θ2および脚ヨー角ψ2の少なくとも一方の計測に用いられてもよい。ジャイロセンサ42が脚ピッチ角θ2および脚ヨー角ψ2の両方の計測に用いられる場合、姿勢計測部40は、脚ピッチ角θ2および脚ヨー角ψ2を測定するための重力センサ41を備えない。このように、ジャイロセンサ42は、重力センサ41に代えて、支持脚20の鉛直方向に対する角度を計測してもよい。
【0107】
また、基準座標系Σの原点は、支持脚20の軸線20a上に位置しているが、支持脚20の軸線20a上とは異なる位置に位置してもよい。また、基準座標系Σは、土台31に配置されているが、多関節アーム30の土台31とは異なる構成部材に配置してもよい。なお、基準座標系Σの原点の位置が多関節アーム30の基端以外の位置に変更された場合、基準座標系Σの原点の支持脚20の先端に対する位置が変わるため、上述した式(1)は変更される。
【0108】
また、移動量計測部124,224は、第2実施形態において脚先部122,222に配置されているが、第1実施形態の支持脚20の下端部に配置されてもよい。
【0109】
また、第2実施形態において脚先部122は、移動量計測部124を備えているが、これに代えて、移動量計測部124を備えなくてもよい。
【0110】
また、装着型ロボット1は、支持脚20を1本備えているが、図13に示すように、人体Hへの負荷をさらに軽減させるために、支持脚20を2本備えてもよい。
【0111】
上述のとおり、制御装置60は、装着型ロボット1とは別体であっても良い。また、装着型ロボット1とは別体で、装着型ロボット1の姿勢を計測することが可能な、作業現場等に設置されたカメラ等が姿勢計測部40を代替してもよい。また、装着型ロボット1とは別体で、支持面Fに対する支持脚20の先端の移動量を計測することが可能な、作業現場等に設置されたカメラ等が移動量計測部124を代替してもよい。
【0112】
また、駆動部Mは、モータであるが、これに代えて、ニューマチックアクチュエータ、ソレノイド又はリニアモータとしてもよいし、これらの組み合わせで構成してもよい。
【0113】
また、駆動部Mは、多関節アーム30に複数配置されているが、少なくとも1つの駆動部Mが複数の関節を駆動するように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、装着型のロボットに広く利用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 装着型ロボット
10 装着部
20 支持脚
20a 軸線
30 多関節アーム
40 姿勢計測部
41 重力センサ
42 ジャイロセンサ
60 制御装置
121 脚部
122 脚先部
124 移動量計測部
124b 画像センサ
224 移動量計測部
224a 転動部
224b 転がり量計測部
A26 第1の角度センサ
A27 第2の角度センサ
A28 第3の角度センサ
F 支持面
H 人体
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13