(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091465
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】タフティング機のルーパモジュラブロック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D05C 15/22 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
D05C15/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204313
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】392024172
【氏名又は名称】有限会社奈良
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉野 惣太
(57)【要約】
【課題】タフティング機のルーパバーに取り付けるルーパのモジュラブロックを溝やスロットのような内部切削加工を必要とせずに製作しようとすることである。
【解決手段】パイル糸を係止するアーム11の先端にフック12を有し、後端はアーム11とほぼ直角方向に延伸して取付けベース13を形成した板状ルーパ部材10、10aと、スペーサ20とを交互に当接させて配置し、それらの貫通孔15a、15b、15cと貫通孔25a、25b、25cに連結ピン30、31、32を挿通し、ルーパ部材10、10aとスペーサ20との当接面及び貫通孔15a、15b、15c及び貫通孔25a、25b、25cとピン30、31、32を金属用接着剤で接合して、ベース13とスペーサ20の重なり合って接合された部分をルーパバーに対する取付けブロックとしたのである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タフティング機のルーパバーに取り付けるルーパのモジュラブロックにおいて、タフトパイル糸を係止するルーパアームの先端にフックを有し、後端には前記アームから延伸してルーパバーに取り付けるブロック用ベースが形成された板状ルーパ部材と、前記ベースと平面的に同形同サイズの板状スペーサとが、前記ベースにおいて当接して交互に配置され、かつ前記ベース及びスペーサを貫通する連結ピンが挿通され、前記ベースとスペーサの当接面が接着剤で圧着接合されて、ルーパバーに対する取付けブロックを形成したタフティング機のルーパモジュラブロック。
【請求項2】
前記連結ピンが複数本である請求項1に記載のタフティング機のルーパモジュラブロック。
【請求項3】
タフティング機のルーパバーに取り付けるルーパのモジュラブロックにおいて、タフトパイル糸を係止するルーパアームの先端にフックを有し、後端には前記アームから延伸して、ルーパバーに取り付ける別体の取付けブロックとの接合用ベースが形成された板状ルーパ部材と、前記ベースと平面的にほぼ同形同サイズの板状スペーサとが、前記接合用ベースにおいて当接するように交互に配置され、かつ前記接合用ベース及びスペーサを貫通する連結ピンが挿通され、前記接合用ベースとスペーサの当接面が接着剤で圧着接合されて、接合された部分に、前記取付けブロックが結合されたタフティング機のルーパモジュラブロック。
【請求項4】
前記ルーパ部材の接合用ベースを延伸してフランジを形成し、このフランジと前記ルーパバー取付けブロックとを結合した請求項3に記載のタフティング機のルーパモジュラブロック。
【請求項5】
前記連結ピンが複数本である請求項3または4に記載のタフティング機のルーパモジュラブロック。
【請求項6】
タフティング機のルーパバーに取り付けるルーパのモジュラブロックを製造する方法において、
タフトパイル糸を係止するルーパアームの先端にフックを有し、後端に前記アームから延伸してルーパバーに取り付けるブロック用ベースが形成された板状ルーパ部材と、前記ベースとほぼ同形同サイズのスペーサとを作製する第1の工程と、
前記ルーパ部材のベースとスペーサを交互に間隙をあけてピンに挿通したアセンブリを作製する第2の工程と、
前記アセンブリ全体を接着剤液中に投入する第3の工程と、
前記アセンブリを接着剤液中から取り出し、アセンブリの前記ルーパ部材のベースとスペーサの当接面を押圧して圧着し、接着剤を硬化する第4の工程と、
を含むタフティング機のルーパモジュラブロックの製造方法。
【請求項7】
タフティング機のルーパバーに取り付けるルーパのモジュラブロックを製造する方法において、
タフトパイル糸を係止するルーパアームの先端にフックを有し、後端に前記アームから延伸して、ルーパバーに取り付ける別体の取付けブロックとの接合用ベースが形成された板状ルーパ部材と、前記接合用ベースと平面的にほぼ同形同サイズの板状スペーサと、ルーパバーに取り付ける取付けブロックを作製する第1の工程と、
前記ルーパ部材のベースとスペーサを交互に間隙をあけてピンに挿入し、かつ前記取付けブロックを前記ベースにピンを挿通して連結したアセンブリを作製する第2の工程と、
前記アセンブリ全体を接着剤液中に投入する第3の工程と、
前記アセンブリを接着剤液中から取り出し、アセンブリの前記ルーパ部材のベースとスペーサの当接面を押圧して圧着し、接着剤を硬化する第4の工程と、
を含むタフティング機のルーパモジュラブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カーペット等に用いるタフト基布にパイルを形成するためのルーパをモジュール化したブロックと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タフティング機において、パイル糸をタフト基布に刺し通すニードルと共動して、パイルを形成するルーパは、基布の横方向に全長に延びて基布の長さ方向に進退運動を行なうルーパバーに多数整列して取り付けられている。
【0003】
例えば特許文献1に示されているように、ルーパを1ピースずつルーパバーに直接又は中間部材を介して取り付けていたが、この方法はルーパの取り付け部をルーパバーの全長にわたって精度よく加工する必要があり、ルーパの取り付け作業も極めて効率が悪い。
【0004】
そこで、特許文献2及び3には、適宜大きさのブロック体を用意し、これに10ピース前後のルーパを装着できる溝、切欠き、スロット等を設けてモジュール化する技術が開示されている(特許文献3、段落0019)。モジュール化することによって、ブロック体に取り付けるルーパの数がルーパバー全体に取り付けるよりも少なくなったとしても、ブロック体に正確にルーパを取り付けなければならないことは同じであり、ブロック体に形成する溝やスロットを精度よく加工しなければならない。
【0005】
さらに、特許文献4には、ルーパをブロック体内に埋め込む技術が開示されている(段落0023、0027)。これは、鋳造によって製作されるため(段落0023)、ルーパを保持する溝やスロットの形状、サイズばかりでなく、鋳造金属の収縮率も考慮に入れた精密な鋳型を用意する必要があって、非常に高度な技術を要し作製が極めて困難であり、さらにモジュールの歩留り率も悪く経済的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭61-35303号公報
【特許文献2】特表2008-527199号公報
【特許文献3】特許第4528794号公報
【特許文献4】特開平5-321126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明の課題は、溝やスロットなどのブロック体の内部切削加工を必要とせずに、精密なモジュラブロックを経済的に製作しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明は、タフティング機のルーパバーに取り付けるルーパのモジュラブロックにおいて、タフトパイル糸を係止するルーパアームの先端にフックを有し、後端には前記アームから延伸してルーパバーに取り付けるブロック用ベースが形成された板状ルーパ部材と、前記ベースと平面的に同形同サイズの板状スペーサが、前記ベースにおいて当接して交互に配置され、かつ前記ベース及びスペーサを貫通する1本以上の連結ピンが挿通され、前記ベースとスペーサの当接面が接着剤で圧着されて、ルーパバーに対する取付けブロックを形成した構成を採用したのである。
【0009】
また、タフトパイル糸を係止するルーパアームの先端にフックを有し、後端には前記アームから延伸して、ルーパバーに取り付ける別体のブロックとの接合用ベースが形成された板状ルーパ部材と、前記ベースと平面的にほぼ同形同サイズの板状スペーサとが、前記接合用ベースにおいて当接するように交互に配置され、かつ前記接合用ベース及びスペーサを貫通する1本以上の連結ピンが挿通され、前記接合用ベースとスペーサの当接面が接着剤で圧着されて、この圧着された部分に、ルーパバーに取り付ける別体のブロックが結合された構成を採用したのである。別体のブロックとの結合は、連結ピンやボルトを用いることができる。勿論接着剤を用いてもよい。
【0010】
この発明のモジュラブロックは、次のような工程で製造される。まず、前記のルーパ部材とスペーサを間隙をあけて連結ピンに交互に挿し通し、アセンブリを形成する。このアセンブリを接着剤液に投入した後に取り出して、前記ルーパ部材のベースとスペーサをクランプして押圧し、当接面を圧着し同時に接着剤を硬化させてモジュラブロックを得る。
【0011】
また、他の製造方法においては、前記ルーパ部材とスペーサに加えて、ルーパバーに取り付けるための別体のブロックを作製する。そして、前記ルーパ部材とスペーサを間隙をあけて連結ピンに交互に挿し通すとともに、別体のブロックを前記ルーパバーのベースと連結したアセンブリを形成する。このアセンブリを接着剤液中に投入した後に取り出して、前記ルーパ部材のベースとスペーサを押圧し、同時に接着剤を硬化させてモジュラブロックを得る。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、以上のように、板状スペーサを用いてルーパ部材の間隔を維持するように構成したので、ルーパバーに取り付けるブロック材に、溝やスロットを形成するような精密加工を必要とせず、しかも板状スペーサとルーパ部材の接合に接着剤を用いたのでモジュラブロックの製作が経済的にできる。また、スペーサに軽金属を用いるとモジュラブロックを軽量化することもできる。
【0013】
その他、モジュラブロックの形状、構造の変更や複雑化に対しても、板状材料の切り抜き形状を変更すれば対応することができ、製造工程の柔軟性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A)はルーパ部材の側面図、(B)は他のルーパ部材の側面図、
【
図3】ルーパ部材とスペーサの整列状態を示す斜視図、
【
図6】(A)はモジュラブロックの基部を示す後面図、(B)は基部の側面図、
【
図7】(A)はルーパバーの一部正面図、(B)はルーパバーにモジュラブロックを取り付ける状態を示す側面図、
【
図8】(A)(B)(C)(D)は種々のルーパ部材を示す側面図、
【
図10】取付けブロックを示す(A)は後面視斜視図、(B)は前面視斜視図、
【
図11】ルーパ部材とスペーサの整列順序を示す斜視図、
【
図12】取付けブロックと中間のルーパ部材との係合状態を示す側面図、
【
図14】(A)(B)(C)はルーパ部材の種々な例を示す側面図、
【
図15】(A)(B)(C)はモジュラブロックの製造工程を示す模式図、
【
図16】(A)(B)(C)はモジュラブロックの他の製造工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すルーパ部材10、10a及びスペーサ20は、平坦な金属板を切り抜いたり打ち抜いて加工したものであって、いずれもほぼ平坦な一体の板状である。
【0016】
前記ルーパ部材10、10aは、タフトパイル糸を係止するルーパアーム11の先端にフック12を有し、アーム11の後端は、アーム11とほぼ直角方向に延伸する取付けブロック用ベース13を形成している。このベース13はほぼ長方形の一方の長辺に斜辺14を形成した形状(
図2、符号24参照)になっており、円形の貫通孔15a、15b、15cが設けられている。ベース13の形状及び貫通孔15a、15b、15cの直径と配置は、後述するように選択可能であり、個数も同様である。図示の場合、仮想3角形の頂点に大径の貫通孔15a、底辺の頂点に小径の貫通孔15b、15cを形成した配置である。なお、
図1(A)のルーパ部材10と
図1(B)のルーパ部材10aは、アーム11の長さだけが異なり、他は全て同一である。
【0017】
図2に示すスペーサ20は、長方形の鎖線で示す部分を切り欠いて斜辺24を形成した形状であり、前記ルーパ部材10のベース13と平面的にほぼ同形同サイズであって、貫通孔25a、25b、25cがベース13の貫通孔15a、15b、15cに対応して形成されている。このスペーサ20もルーパ部材10と同様に形状、貫通孔25a、25b、25cの径などを多様に変更可能である。
【0018】
タフティング機のルーパバーに装着するモジュラブロックは、
図3に示すように、ルーパ部材10、スペーサ20、ルーパ部材10aの順に重ね合せて形成される。勿論ルーパ部材10、10a及びスペーサ20の個数は任意であるが、モジュラブロックの通常のサイズを考慮すれば、ルーパ部材10、10a、スペーサ20の合計で11枚~27枚程度である。勿論この枚数は限定されない。なお、ルーパ部材10と10aを千鳥状に混在させると、基布のよこ糸の損傷を少なくし基布の破れを防止したり、ステップオーバ柄を現出することが可能となる。一方のルーパ部材だけでもよいのは勿論である。
【0019】
スペーサ20を間に挟んで重ね合せたルーパ部材10、10aは、貫通孔15a、15b、15c及び貫通孔25a、25b、25cが連通している。これらの連通孔に、
図3に示す円形の連結ピン30、31、32を挿し通す。やや大径のピン30は、貫通孔15aとほぼ同径、小径のピン31、32は、貫通孔15b、15cとほぼ同径にしてある。そして金属用接着剤を用いて重ね合せたルーパ部材10、10aとスペーサ20を圧着して連結ピン30、31、32と共に接合する。なお、連結ピン30の両端にホール30aを設けておくと、端部を拡径加工してかしめ止めすることができる。連結ピン31、32も同様である。
【0020】
接合されたルーパモジュラブロックを
図4、
図5に示す。図示のように、モジュラブロック1の基部2は、後面が平坦になっており、このままではタフティング機のルーパバーに取り付けることはできない。一例として、
図7に示すように、ルーパバーLBが肩部Sを有し、取付け用ボルト孔B
1及び位置決め用窪みL
1、L
2を設けたものである場合、
図6(A)(B)に示すように、モジュラブロック1の基部2を切削して、前記ルーパバーの肩部Sに隙間なく係合する段部3と、同時に窪みL
1、L
2にも丁度嵌り込む突起4a、4bを形成する。これによってモジュラブロック1はルーパバーLBに位置決めされる。この位置でボルト孔B
1にボルトB
2(
図7)を挿通孔5を介してねじ込み、モジュラブロック1をルーパバーに固定する。
【0021】
モジュラブロック1をルーパバーLBに取り付けるためには、様々な構造が採用されている。例えばルーパバーLBの横断方向(長さ方向と直角方向)に等間隔で溝を設け、この溝に、モジュラブロック1の基部2外面に形成した突条を嵌め合せるようにしたものがある。従って、これらの取付け構造に適合するようモジュラブロック1の基部2を上述以外の形状、構造に加工する必要がある。
【0022】
図8~
図13に基づいて他の実施形態を説明する。まず、
図8(A)(B)(C)(D)に示すような4種類のルーパ部材40、40a、40b、40cを用意する。ルーパ部材40と40aはパイル係止アーム41の長さのみが異なり、ルーパ部材40bと40cはパイル係止アーム41の長さが異なると共に、前記ルーパ部材40とはパイル係止アーム41後端のベース43、43aの形状が異なる。パイル係止アーム41の長短は、前述の通りの理由による。
【0023】
図8(A)に示すように、板状ルーパ部材40はパイルを係止するアーム41を有し、このアーム41の先端にはフック42が設けられ、アーム41の後端には4角形状の接合用ベース43が形成されている。このベース43に4個の貫通孔44a、44b、45a、45bが設けられ、ベース43の下端部外側は、コ字形に切欠かかれて肩部46が形成され、肩部46よりも下方部分はベース43よりも横方向の長さの短いフランジ47が設けられている。なお、肩部46は、後述するルーパバーにモジュラブロックを取り付ける構造上必要となる。
図8(D)に示すルーパ部材40aは、上記とアーム41の長さが短いこと以外は同一である。
【0024】
図8(B)に示すルーパ部材40bは、接合用ベース43aの高さ(上下方向の幅)が、前記ルーパ部材40のベース43よりもフランジ47分だけ狭くしてあり、ベース43a下部にほぼ全長にわたる山形リセス(recess)48が設けられ、また前記ベース43の貫通孔44a、44bに対応する貫通孔44c、44dが設けられている。このルーパ部材40bと
図8(C)に示すルーパ部材40cは、アーム41の長さが異なるだけで他は同一である。
【0025】
図9にスペーサ50を示す。スペーサ50は、
図8(B)(C)に示すルーパ部材40b、40cのベース43aと平面的に同形同サイズであって、対応する貫通孔54a、54bを有し、リセス58が設けられている。
【0026】
上記ルーパ部材40、40a、40b、40c及びスペーサ50は集合して接合され、
図10に示す取付けブロック60に支持される。図示のように、取付けブロック60は、金属等で一体に形成され、その基部61の両端にほぼ直角3角形状の端板61a、61aが設けられ、基部61の頂部には前記ルーパ部材40b、40cのリセス48と対称の山形状ヘッド63が設けられており、このヘッド63に貫通孔65a、65bが形成されている。また、ヘッド63の端面と端板61a、61aとの間に段部62が設けられている。この段部62の長さと幅(深さ)は、前記ルーパ部材40のベース43下部のフランジ47と長さ及び幅(厚さ)が同じであり、フランジ47の貫通孔45a、45bはヘッド63の貫通孔65a、65bに対応している。
【0027】
前記取付けブロック60の後面64には、ルーパバーに取り付ける際の一対の位置決め用突起66と、ボルト挿入孔67が設けられている。このように、ブロック60の端板61aの形状、突起66、ボルト挿入孔67等は、
図6及び
図7のモジュラブロック1の基部2の構造とほとんど同じである。この基部2と同様に、ブロック60の形状、構造は、ルーパバーに対するモジュラブロックの取付け構造に適合するように変更される。
【0028】
前記ルーパ部材40、40a、40b、40c、スペーサ50、ブロック60及びピン33は、金属用接着剤で接合されてモジュラブロックを形成する。
図11に示すように、ルーパ部材とスペーサの整列順序は、貫通孔44a、44b、45a、45bとフランジ47を有するルーパ部材40または40aを両端に配置し、その中間にリセス48を有するルーパ部材40bまたは40cをそれぞれスペーサ50を介して配置する。ルーパ部材の数は任意に選択することができ、アーム41の長短も混在させなくてもよく、同一長さのアーム41を有するルーパ部材を使用することができる。
【0029】
並列したルーパ部材及びスペーサは、貫通孔44a、44b、貫通孔44c、44d、貫通孔54a、54bが連通しており、これに連結ピン33、33を挿通してルーパ部材とスペーサの当接面を金属用接着剤によって圧着する。また、両端のルーパ部材40と40aを除く中間部分(ルーパ部材40b、40c及びスペーサ50)は、
図12に示すように、重なり合って山形凹状になったリセス48、58にブロック60の山形ヘッド63が嵌り込みこれも接着剤によって接合される。さらに、両端のルーパ部材40、40aには、ブロック60の段部62に突き当るフランジ47と、ヘッド63の貫通孔65a、65bに対応する貫通孔45a、45bが形成されているので、連結ピン33、33を貫通孔45a、45bに挿入して、ブロック60とルーパ部材40、40aを結合し、かつヘッド63の端面とベース43及びフランジ47との当接面を接着剤で接合すると
図13に示すようなモジュラブロック1aが得られる。なお、連結ピン33の両端には、ホール33aが設けられ拡径加工してかしめ止めされている。また、
図12において、ルーパ部材40b、40cのベース43aが、ブロック60のヘッド63から横方向に突出する下端縁46aは、
図13のルーパ部材40の肩部46に一致している。
【0030】
上記モジュラブロック1aを例えば
図7に示すルーパバーLBに取り付けるには、ルーパバーLBの肩部Sに肩部46を載せ、突起66、66と窪みL
1、L
2を嵌め合せ、ボルトB
2をボルト挿入孔67に通して、ボルト孔B
1をねじ込み締め付ける。前述の
図7(B)によって説明したのと同じ操作である。
【0031】
別体の取付けブロック60を有するモジュラブロック1aには、
図8に示すルーパ部材40b、40c以外に、
図14(A)に示すように、リセス48が台形、
図14(B)のようにリセス48が横L字形などのルーパ部材40d、40eを用いることができる。勿論、これらを用いる場合には、ブロック60のヘッド63を台形状、横L字状に形成しなければならない。さらに、
図14(C)に示すように、リセス48に換えて突起49を形成したルーパ部材40fを用いてもよい。この場合には、ブロック60のヘッド63に窪み部を形成する。この突起49の形状も種々変更可能である。このように、取付けブロック60を用いる場合には、ルーパ部材及びスペーサとの結合形状は多様に変更可能である。
【0032】
次に、モジュラブロック1の製造方法について説明する。まず、
図1~3について説明したルーパ部材10、スペーサ20、連続ピン30、31、32を用意する。ここでは、説明の簡略化のために、ルーパ部材10aは省略する。これらの部材を通常の前処理、例えば錆落としや油脂等の付着物を有機溶剤やアルカリ洗浄剤によって除去しておく。そして、ルーパ部材10とスペーサ20を交互に貫通孔15a、15b、15c及び貫通孔25a、25b、25c(
図1、
図2)に通して連結ピン30、31、32に挿し込む。
図15(A)の平面視模式図に示すように、このとき、隣接するルーパ部材10とスペーサ20との間にわずかの間隙Dを設ける。この間隙Dは、後述する接着剤が浸潤すれば足りるから、故意にルーパ部材10とスペーサ20を密着させることなく、通常の操作で連結ピン30、31、32と嵌合してアセンブリA
1を形成し、自然に形成される隙間で充分である。なお、アセンブリA
1の間隙Dを確実に形成するため、アセンブリA
1を形成後に連結ピン30、31、32を中心に揺動させたり、アセンブリA
1に振動を加えたり、風圧を当てるなどの方法を採ることができる。
【0033】
図15(B)に示すように、上記アセンブリA
1を接着剤Hの液槽Tに没入するよう浸漬する。アセンブリA
1はそのまま投入してもよいが、ケージCに入れてもよく、或はワイヤ等で吊るしてもよい。接着剤Hとしては、ジアクリレートと過酸化物を主成分とするアクリル樹脂系嫌気性接着剤(例えばスリーボンド社製1300Nシリーズ、ヘンケルジャパン社製ロックタイトシリーズ)が好ましいが、エポキシ樹脂系接着剤等の金属用接着剤を用いることができる。
【0034】
アセンブリA
1を液槽Tに約10秒~60秒保持し、間隙D及び連結ピン30、31、32と貫通孔15a、15b、15c、25a、25b、25c(
図3)に接着剤Hが浸潤すれば、アセンブリA
1を液槽Tから取り出し、
図15(C)に示すように、クランプKに装着して加圧する。クランプKは、基台K
1と加圧板K
2がボルトK
3によって接近、離反可能になっており、この基台K
1と加圧板K
2との間にアセンブリA
1を配置し、ボルトK
3を回転して、ルーパ部材10とスペーサ20とを圧接する。この状態で硬化させることによって、ルーパ部材10とスペーサ20の当接面が圧着され、かつピン30、31、32もそれらが挿通する貫通孔に接合される。なお、硬化は大気中常温で10分程度保持すればよいが、接着剤によっては加熱硬化することができる。
【0035】
硬化後のアセンブリA
1は、クランプKから取り出されるが、ルーパ部材10とスペーサ20の当接面以外に付着した接着剤Hは、嫌気性接着剤が用いられていると大気中で自然に剥離し、剥離残滓を拭き取る程度で特に除去作業は必要としない。そして、連結ピン30、31、32が側面から突出している部分を処理すると、前記
図4及び
図5で説明したと同様のモジュラブロック1が得られる。
【0036】
次に、
図16に示すようなモジュラブロック1aの製造方法について説明する。まず、ルーパ部材40、40c、スペーサ50を金属板で形成し、取付けブロック60、連結ピン33を用意し、通常の前処理によって油脂等の付着物を除去する。なお、説明の簡略化のため、ルーパ部材40a、40bは用いない。次いで、
図16(A)の後面視模式図に示すように、フランジ47(
図8(A))を有するルーパ部材40を両側に配置し、これらのルーパ部材40、40の中間部分に、リセス48を有するルーパ部材40c(
図8(C))とスペーサ50(
図9)を交互に配置しながら、連結ピン33、33を貫通孔44a、44b、貫通孔54a、54b、貫通孔44c、44dに通し、ルーパ部材とスペーサを間隙Dをあけて取り付けて行く。この間隙Dは、接着剤の浸潤に必要であって、
図15において説明した通りである。そして、取付けブロック60のヘッド63をルーパ部材40とスペーサ50のリセス48、58に当接させ、両端のルーパ部材40の貫通孔45a、45bとブロック60の貫通孔65a、65bは連結ピン33、33を挿し通す。これによってアセンブリA
2が出来上る。
【0037】
図16(B)に示すように、上記アセンブリA
2を接着剤Hの液槽T内に投入する。アセンブリA
2をそのまま投入してもよいし、ケージCに入れてもよい。接着剤Hは前述のようにアクリル樹脂系嫌気性接着剤が好ましい。
【0038】
所定の浸漬時間後、液槽TからアセンブリA
2を取り出し、
図16(C)に示すように、クランプKの基台K
1と加圧板K
2との間に装着し、ボルトK
3を回転してルーパ部材40とスペーサ50の当接面及びルーパ部材40のフランジ47とブロック60のヘッド63の端面を圧接する。この状態で硬化させることによって、ルーパ部材40とスペーサ50の当接面及びルーパ部材40とブロック60の当接面が圧着され、同時にルーパ部材40cのリセス48及びスペーサ50のリセス58とブロック60の山形ヘッド63とが接合され、連結ピン33、33もそれらが挿通する貫通孔に接合される。なお、硬化は大気中常温で10分程度保持すればよい。
【0039】
硬化後にクランプKから取り出し、例えば接着剤Hの剥離残滓の拭き取りや、連結ピン33の突出部の処理を行うと、
図13に示すのと同様のモジュラブロック1aが得られる。
【0040】
この発明の実施形態は、以上の通りであるが、勿論種々の変更を加えることは可能である。前述したように、ルーパ部材10のベース13(
図1、
図2)の形状、モジュラブロック1の基部2の形状、構造等は、ルーパバーに対する取付け構造に依存しているため、それに応じて変更される。ルーパ部材40のベース43(
図8(A))の形状、取付けブロック60の形状、構造等も同様にルーパバーに対応するように変更される。
【0041】
また、ルーパ部材とスペーサは、連結ピンの断面形状や径によっては、1本の連結ピンでも連結可能である。さらに、モジュラブロック1a(
図13)の場合、両端のルーパ部材40、40aを取付けブロック60にねじ止めすることができる。
【0042】
その他、モジュラブロックの一端または両端にルーパ部材を配置する必要はなく、スペーサを配置してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1、1a モジュラブロック
2 基部
3 段部
4a、4b 突起
5 挿通孔
10、10a ルーパ部材
11 アーム
12 フック
13 取付けブロック用ベース
14 斜辺
15a、15b、15c 貫通孔
20 スペーサ
24 斜辺
25a、25b、25c 貫通孔
30、31、32,33 連結ピン
30a、33a ホール
40、40a、40b、40c、40d、40e、40f ルーパ部材
41 アーム
42 フック
43、43a 接合用ベース
44a、44b、44c、44d 貫通孔
45a、45b 貫通孔
46 肩部
46a 下端縁
47 フランジ
48 リセス
49 突起
50 スペーサ
54a、54b 貫通孔
58 リセス
60 取付けブロック
61 基部
61a 端板
62 段部
63 ヘッド
64 後面
65a、65b 貫通孔
66 突起
67 ボルト挿入孔
B1 ボルト孔
B2 ボルト
LB ルーパバー
L1、L2 窪み
A1、A2 アセンブリ
D 間隙
H 接着剤
T 液槽
C ケージ
K クランプ
K1 基台
K2 加圧板
K3 ボルト