(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091500
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】チオ化剤
(51)【国際特許分類】
C07B 61/00 20060101AFI20220614BHJP
C07C 327/42 20060101ALI20220614BHJP
C07C 327/48 20060101ALI20220614BHJP
C07C 327/40 20060101ALI20220614BHJP
C07C 321/10 20060101ALI20220614BHJP
C07C 319/08 20060101ALI20220614BHJP
C07C 325/02 20060101ALI20220614BHJP
C01B 17/20 20060101ALI20220614BHJP
C07D 211/60 20060101ALI20220614BHJP
C07D 213/78 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C07B61/00 B
C07C327/42
C07C327/48
C07C327/40
C07C321/10
C07C319/08
C07C325/02
C01B17/20
C07D211/60
C07D213/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204374
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】591028577
【氏名又は名称】純正化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】利根川 典夫
【テーマコード(参考)】
4C055
4H006
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA01
4C055CA01
4C055DA58
4C055FA13
4C055FA34
4H006AA02
4H006AC60
4H006AC63
4H006BB17
4H006BC10
(57)【要約】
【課題】安全性が高く、工業的にも利用できるチオ化剤、及び当該チオ化剤を用いたイオウ含有化合物の製造法の提供。
【解決手段】有機溶媒中での硫化リンとアルカリ金属塩との反応液からなるチオ化剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中での硫化リンとアルカリ金属塩との反応液からなるチオ化剤。
【請求項2】
アルカリ金属塩が、水酸化アルカリ金属、無機酸アルカリ金属塩及び有機酸アルカリ金属塩から選ばれるものである請求項1記載のチオ化剤。
【請求項3】
有機溶媒が、極性有機溶媒である請求項1又は2記載のチオ化剤。
【請求項4】
有機溶媒が、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒及びエーテル系溶媒から選ばれる溶媒である請求項1又は2記載のチオ化剤。
【請求項5】
酸素含有化合物に請求項1~4のいずれか1項記載のチオ化剤を反応させることを特徴とする、当該酸素含有化合物中の酸素原子がイオウ原子に置換されたイオウ含有化合物の製造法。
【請求項6】
酸素含有化合物が、ヒドロキシ基、ケトン基及びアミド基から選ばれる1種又は2種以上の酸素含有基を有する化合物であり、イオウ含有化合物が、チオール基、チオケトン基及びチオアミド基から選ばれる1種又は2種以上のイオウ含有基を有する化合物である請求項5記載の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素含有化合物の酸素原子をイオウ原子に置換するためのチオ化剤、及び当該チオ化剤を用いるイオウ含有化合物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシ基をチオール基に、ケトン基をチオケトン基に、アミド基をチオアミド基、エステル基をチオエステル基に、酸素含有化合物中の酸素原子をイオウ原子に置換するための試薬としては、五硫化二リンなどの硫化リン、ローソン試薬類が知られている。
【0003】
しかし、硫化リンは、ベンゼン、二硫化炭素以外には溶解しないため、他の有機溶剤で行うには硫化リンを固体のまま反応させなくてはならず、液体の酸素含有化合物のチオ化反応以外は工業的には向いていない。
例えば、アミドからチオアミドの合成には、五硫化二リンをベンゼン又は二硫化炭素に溶かしアミドと反応させる方法がある。しかしベンゼンや二硫化炭素は有害で引火性が高く、危険で大量の使用は困難である。そこで特許文献1にはベンゼンや二硫化炭素以外の溶剤によるチオホルムアミドの製造法が記載されているが、酸素含有化合物が液体であるホルムアミドに限定されている。実際、五硫化二リンが溶けない溶剤で使用してみると、反応に伴って粘性のあるオイル状リン化合物が固形物と絡み、撹拌困難になり反応が停止してしまう。
【0004】
ローソン試薬は、少量の合成には適しているが、反応後の後処理において残ったローソン試薬やアニソール由来の副生成物処理に問題があり、また高価であるため工業的には向いていない。
すなわち、ローソン試薬については、総説が非特許文献1に詳しく記載されている。ローソン試薬はメトキシフェニル基を持つため分子量が大きく、また4個のイオウ原子のうち1原子しか利用できないため、大量のローソン試薬を使用しなくてはならない。また反応後のメトキシフェニル化合物(有機リン化合物)の廃処理が必要になるため、工業的に好ましくない。またローソン試薬に類似のフェニルチオ基を有するジャパニーズ試薬、フェノキシフェニル基を有するベレオー試薬も同様の欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】有機合成化学協会誌 第53巻12号1138-1140(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように、従来のチオ化剤は、一部の酸素含有化合物にしか適用できないか、あるいは反応後の後処理や高価であるなどの問題があり、いずれも工業的な製造に利用できるものではなかった。また、イオウ含有化合物の中でもチオアミド化合物は医薬、農薬および原料、中間体として重要であり、工業的に使用出来るチオ化剤が望まれている。
従って、本発明の課題は、安全性が高く、工業的にも利用できるチオ化剤、及び当該チオ化剤を用いたイオウ含有化合物の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、硫化リンの応用について種々検討してきた。硫化リンは前記のようにベンゼン、二硫化炭素以外には溶解せず、一方アルカリ金属塩は酢酸エチルなどの有機溶媒にはほとんど溶解しない。従って、これらの両者を用いて、酢酸エチルなどの有機溶媒溶液中で反応させることはできないと考えられてきた。
ところが、本発明者が、アルカリ金属塩と硫化リンとを、反応溶媒として汎用性のある酢酸エチルなどのエステル系溶媒、ニトリル系溶媒などの極性有機溶媒に添加して一定時間撹拌すると、全く意外にも、両者はこれらの有機溶媒中で反応し、溶解することを見出した。そして、この反応液中に酸素含有化合物を添加して反応を行うと、高収率で酸素原子がイオウ原子に置換したイオウ含有化合物が得られ、後処理も簡便であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[6]を提供するものである。
[1]有機溶媒中での硫化リンとアルカリ金属塩との反応液からなるチオ化剤。
[2]アルカリ金属塩が、水酸化アルカリ金属、無機酸アルカリ金属塩及び有機酸アルカリ金属塩から選ばれるアルカリ金属塩である[1]記載のチオ化剤。
[3]有機溶媒が、極性有機溶媒である[1]又は[2]記載のチオ化剤。
[4]有機溶媒が、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒及びエーテル系溶媒から選ばれる溶媒である[1]又は[2]記載のチオ化剤。
[5]酸素含有化合物に[1]~[4]のいずれかに記載のチオ化剤を反応させることを特徴とする、当該酸素含有化合物中の酸素原子がイオウ原子に置換されたイオウ含有化合物の製造法。
[6]酸素含有化合物が、ヒドロキシ基、ケトン基及びアミド基から選ばれる1種又は2種以上の酸素含有基を有する化合物であり、イオウ含有化合物が、チオール基、チオケトン基及びチオアミド基から選ばれる一種又は2種以上のイオウ含有基を有する化合物である[5]記載の製造法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のチオ化剤は、硫化リンとアルカリ金属塩から容易に得られる汎用性のある有機溶媒液であり、種々の酸素含有化合物のチオ化剤として有用である。また、本発明のチオ化剤を用いれば、容易な操作により、高収率でイオウ含有化合物が得られる。
本発明のチオ化剤は、特に、アミドからチオアミドに、アルコールからチオールに、ケトンからチオケトンに、などのチオ化剤として有用である。また有機溶媒に溶解することから液体化合物だけでなく溶解しにくい固体化合物でも反応できる。
また、反応後本発明のチオ化剤は水を加えることで水溶性の無機分解物になるため後処理も簡便で、合成試薬としてまた工業的にも利用できる。また本発明チオ化剤が有機溶剤に溶解することからマイクロリアクターにも利用できるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明チオ化剤のチオ化能力を、チオ化剤に含まれるイオウ原子数10原子のうち最大何原子がチオ化に使われるか実験した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のチオ化剤は、有機溶媒中での硫化リンとアルカリ金属塩との反応液である。
【0013】
用いる硫化リンとしては、三硫化リン(P4S3)、五硫化リン(P2S5)(五硫化二リン(P4S10)ともいう)、七硫化リン(P4S7)、五硫化四リン(P4S5)が挙げられ、このうち三硫化リン(P4S3)、五硫化リン(P2S5)が好ましく、五硫化リン(P2S5)がより好ましい。
【0014】
アルカリ金属塩としては、水酸化アルカリ金属、無機酸アルカリ金属塩、有機酸アリカリ金属塩が挙げられる。
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられる。
【0015】
無機酸としては、硫化水素、炭酸、リン酸などが挙げられる。このうち、無機酸アルカリ金属塩として塩基性となるものが好ましく、硫化水素、炭酸、リン酸がより好ましく、硫化水素、炭酸がより好ましい。従って、無機酸アルカリ金属塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、硫化ナトリウムなどが好ましく、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫化ナトリウムがより好ましい。
また、有機酸としては、有機カルボン酸が好ましく、具体的には、酢酸が挙げられる。従って、有機酸アルカリ金属塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸カリウムなどが挙げられる。
また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムも挙げられる。
【0016】
硫化リンとアルカリ金属塩との反応溶媒となる有機溶媒としては、硫化リンとアルカリ金属塩とが反応して溶解する観点から、極性有機溶媒が好ましく、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、エーテル系溶媒などがより好ましい。
このうち、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒が汎用性、硫化リンとアルカリ金属塩との反応性、後処理の容易性などの観点から好ましい。具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル、アセトニトリル、テトラヒドロフランなどが挙げられ、酢酸エステル、アセトニトリルが好ましく、酢酸エステルがより好ましい。
【0017】
硫化リンとアルカリ金属塩との反応は、有機溶媒中で行われる。反応温度は、20℃~30℃付近が好ましく、反応時間は3時間~24時間で十分である。
高い温度では、生成したチオ化剤が酢酸エステルをチオ化し、チオ酢酸エステルが副生する。しかし、このチオ酢酸エステルは、溶媒と一緒に除去できる。
また、水分は五硫化リンを分解させるため、有機溶媒及びアルカリ金属塩は無水のものを使用するのが好ましい。
【0018】
硫化リンとアルカリ金属塩との反応速度は結晶粒度と撹拌速度に大きく影響され、細かいほど、また撹拌速度が速いほどより早く反応する。炭酸ナトリウムの場合は粉末状でも顆粒状でも使用でき、五硫化リンは粒径約2mm前後のものでも反応するが、少量の製造では0.5mm以下の粉末がより好ましい。
【0019】
具体的な反応例としては、五硫化二リンと炭酸ナトリウムを酢酸エチル中室温下懸濁し撹拌すると炭酸ガスを発生し溶解する。五硫化二リン(分子式P4S10)1モルに対して炭酸ナトリウムは1~2モルの範囲で溶解する。原料の仕込み比率によって1:1と1:2の溶液を作り分けもできる(以下1:1のチオ化剤をタイプ1と、1:2をタイプ2と略す)。タイプ1とタイプ2では反応性が著しく異なり、目的に応じ利用できる。
アルカリ金属塩の違いによりタイプ1とタイプ2の2種類作るものとタイプ1しか得られないものがある。
【0020】
例えば五硫化二リンと硫化ナトリウムを1分子反応させた場合、開環し溶解する。これは次式のように反応していると考えられる。
【0021】
【0022】
また、五硫化二リンは、他のアルカリ金属塩でも同じように開環付加するが、炭酸ナトリウムとの反応では、二酸化炭素が等モル発生することから次式のように反応していると考えられる。
【0023】
【0024】
本発明のチオ化剤を用いれば、イオウ含有化合物が容易に製造できる。すなわち、酸素含有化合物に本発明のチオ化剤を反応させれば、当該酸素含有化合物中の酸素原子がイオウ原子に置換されたイオウ含有化合物が製造できる。
本発明の製造方法は、酸素含有化合物が、ヒドロキシ基、ケトン基及びアミド基から選ばれる1種又は2種以上の酸素含有基を有する化合物に適用するのが好ましく、この場合、得られるイオウ含有化合物は、チオール基、チオケトン基及びチオアミド基から選ばれる1種又は2種以上のイオウ含有基を有する化合物である。
【0025】
チオ化反応を行うには、本発明のチオ化剤が溶液であるから、チオ化したい酸素含有化合物をチオ化剤に加え、撹拌反応すればよい。
反応温度は通常20~60℃が適している。
チオ化剤の使用量は、酸素含有化合物の構造やチオ化剤の種類により大きく相違する。本発明チオ化剤のチオ化能力を、チオ化剤に含まれるイオウ原子数10原子のうち最大何原子がチオ化に使われるか実験した結果を、
図1に示す。
図1に示すように、塩基性アルカリ金属塩の違いに大きく影響している。実際、種々の化合物に反応させたところ、五硫化二リン(P
4S
10)1モルに対し酸素含有化合物は実用上1モル~5モルである。
【0026】
チオ化反応終了後は、チオ化剤は水を添加すれば水溶性の無機分解物になるため、後処理が極めて簡便である。本発明チオ化剤は、有機溶媒に溶解することからマイクロリアクターにも利用できるものと考えられる。
【実施例0027】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0028】
実施例1
N-フェニルアセトチオアミドの合成(炭酸ナトリウム タイプ1法)
【0029】
【0030】
五硫化二リン1.11g(2.5mmol)と炭酸ナトリウム0.28g(2.5mmol)に酢酸エチル4mLを加え、室温で一夜撹拌したところ、二酸化炭素が約30mL発生し溶解した。次にアセトアニリド1.69g(12.5mmol)と酢酸エチル2mLを加え、40℃で24時間撹拌した。このとき反応率は99.2%であった。水冷下10%炭酸ナトリウム水溶液10mLを加えて水層を分液し、水層は酢酸エチル2mLで2回抽出し、抽出した酢酸エチル層をまとめ水洗後濃縮乾固した。次にヘキサンを加えてスラリー洗浄し、減圧乾燥し褐色結晶を得た。
収量1.63g 収率86.2% HPLC単純面積純度99.0%
【0031】
実施例2
N-フェニルアセトチオアミドの合成(炭酸リチウム タイプ1法)
【0032】
【0033】
実施例1の炭酸ナトリウムを炭酸リチウム0.19g(2.5mmol)に換え、同様に合成した。24時間の反応率は96.5%であった。後処理後、褐色結晶を得た。
収量1.70g 収率89.9% HPLC単純面積純度98.1%
【0034】
実施例3
N-フェニルアセトチオアミドの合成(硫化ナトリウム タイプ1法)
【0035】
【0036】
実施例1の炭酸ナトリウムを硫化ナトリウム0.20g(2.5mmol)に換え、同様に合成した。24時間の反応率は98.8%であった。後処理後、褐色結晶を得た。
収量1.72g 収率91.0% HPLC単純面積純度98.3%
【0037】
実施例4
N-フェニルアセトチオアミドの合成(炭酸ナトリウム タイプ2法)
【0038】
【0039】
五硫化二リン1.67g(3.76mmol)と炭酸ナトリウム0.84g(7.54mmol)に酢酸エチル6mLを加え、室温で一夜撹拌したところ、二酸化炭素が約93mL発生し溶解した。次にアセトアニリド1.02g(7.55mmol)を加え、50℃で48時間撹拌した。水冷下10%炭酸ナトリウム水溶液8mLを加えて抽出洗浄し、水層は酢酸エチルで2回抽出し、抽出した酢酸エチル層をまとめ水洗後濃縮乾固した。次にヘキサンを加えスラリー洗浄し、減圧乾燥し白色結晶を得た。
収量1.03g 収率90.3% HPLC単純面積純度99.2%
【0040】
実施例5
ベンズチオアミドの合成(炭酸ナトリウム タイプ2法)
【0041】
【0042】
五硫化二リン2.22g(5.0mmol)と炭酸ナトリウム0.56g(5.0mmol)に酢酸エチル8mLを加え、室温で2時間撹拌したところ、二酸化炭素が約80mL発生した。さらに炭酸ナトリウム0.56g(5.0mmol)を追加投入し3時間反応したところ、二酸化炭素が約80mL発生した。次にベンズアミド1.21g(10mmol)と酢酸エチル2mLを加え、50℃で72時間撹拌した。このとき反応率は99.0%であった。水冷下10%炭酸ナトリウム水溶液10mLを加えて撹拌後、水10mLを加え、酢酸エチルを減圧濃縮した。結晶をろ過し、水で洗浄後減圧乾燥し淡黄色結晶を得た。
収量1.24g 収率90.4% HPLC単純面積純度99.7%
【0043】
実施例6
N,N-ジメチルベンズチオアミドの合成(リン酸ナトリウム法 タイプ1法)
【0044】
【0045】
五硫化二リン0.60g(1.35mmol)とリン酸ナトリウム0.33g(2.0mmol)に酢酸エチル3mLを加え、室温で3時間撹拌したところ、五硫化二リンは溶解し、過剰なリン酸ナトリウムが溶けずに残った。次にN,N-ジメチルベンズアミド1.01g(6.77mmol)と酢酸エチル2mLを加え、40℃で48時間撹拌した。このとき反応率は99.2%であった。水冷下10%炭酸ナトリウム水溶液5mL加えて抽出洗浄し、次に5%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄分液し、酢酸エチル層に水5mLを加え、酢酸エチルを減圧濃縮した。結晶をろ過、水洗浄し、減圧乾燥して淡褐色結晶を得た。
収量1.06g 収率94.7% HPLC単純面積純度99.7%
【0046】
実施例7
N,N-ジメチルベンズチオアミドの合成(炭酸ナトリウム タイプ1法)
【0047】
【0048】
五硫化二リン1.11g(2.5mmol)と炭酸ナトリウム0.28g(2.5mol)に酢酸エチル4mLを加え、室温で一夜撹拌したところ、炭酸ガスを発生し溶解した。次にN,N-ジメチルベンズアミド0.75g(5.0mmol)と酢酸エチル2mLを加え、50℃で2時間撹拌した。このとき反応率は98.8%であった。10%炭酸ナトリウム水溶液8mLを加え抽出洗浄し、水10mLを加え、酢酸エチルを減圧濃縮した。結晶をろ過、水洗しヘキサン洗浄後、減圧乾燥して淡黄緑色結晶を得た。
収量0.77g 収率92.6% HPLC単純面積純度99.5%
【0049】
実施例8
フェニルアセトチオアミドの合成(リン酸ナトリウム法 タイプ1法)
【0050】
【0051】
五硫化二リン0.60g(1.35mmol)とリン酸ナトリウム0.33g(2.0mmol)に酢酸エチル3mLを加え、室温で3時間撹拌したところ、五硫化二リンは溶解し、過剰なリン酸ナトリウム分は溶けずに残った。次にフェニルアセトアミド1.10g(8.14mmol)と酢酸エチル2mLを加え、40℃で21時間撹拌した。このとき反応率は98.2%であった。水冷下10%炭酸ナトリウム水溶液5mLを加え抽出洗浄し、次に5%炭酸ナトリウム水溶液5mLで洗浄した。次に酢酸エチル層に水5mLを加え、酢酸エチルを減圧濃縮して結晶をろ過し、水洗浄後、減圧乾燥し橙色結晶を得た。
収量1.12g 収率91.0% HPLC単純面積純度99.6%
【0052】
実施例9
トリフェニルメタンチオールの合成(炭酸ナトリウム タイプ2法)
【0053】
【0054】
五硫化二リン1.11g(2.5mmol)と炭酸ナトリウム0.56g(5.0mmol)に酢酸エチル4mlを加え、室温で一夜撹拌したところ、二酸化炭素が約68mL発生し溶解した。次にトリフェニルメタノール1.00g(0.384mmol)と酢酸エチル2mLを加え、50℃で一夜撹拌した。水冷下酢酸エチル5mLと10%炭酸ナトリウム水溶液5mLを加え抽出洗浄し、水層は酢酸エチル2mLで回収し、抽出した酢酸エチル層をまとめて0.5N塩酸3mLで洗浄した。飽和食塩水で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮乾固した。次にヘキサンを加えスラリー洗浄し、減圧乾燥し淡黄白色結晶を得た。
収量0.96g 収率90.4% HPLC単純面積純度99.9%
【0055】
実施例10
チオベンゾフェノンの合成(炭酸ナトリウム タイプ2法)
【0056】
【0057】
五硫化二リン1.11g(2.5mmol)と炭酸ナトリウム0.56g(5.0mmol)に酢酸エチル4mLを加え、室温で一夜撹拌したところ、二酸化炭素が約36mL発生し溶解した。ベンゾフェノン0.91g(5mmol)と内部標準として安息香酸イソブチル0.11g(0.62mmol)を加え、50℃で72時間撹拌した。反応が進むにつれチオベンゾフェノン(3量体)特有の濃い青色になった。内部標準を基にHPLCにて反応率を求めたところ8時間で62%、14時間で90%、24時間で94%、72時間で97%の反応率であった。
【0058】
実施例11
4-チオカルバモイルピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルの合成(炭酸ナトリウム タイプ2法)
【0059】
【0060】
五硫化二リン1.76g(4mmol)と炭酸ナトリウム0.84g(8.0mmol)に酢酸エチル8mLを加え、室温で一夜撹拌したところ、二酸化炭素が発生し溶解した。次に4-カルバモイルピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル1.00g(4.38mmol)と炭酸ナトリウム0.1g(1mmol)を加え、50℃で20時間撹拌した。水冷下10%炭酸ナトリウム水溶液を10mL加えてよく撹拌後、分液し、有機層に水10mLを加え、酢酸エチルを濃縮した。結晶をろ過し水洗して減圧乾燥し淡黄白色結晶を得た。
収量0.97g 収率90.6% HPLC単純面積純度99.7%
【0061】
実施例12
炭酸tert-ブチル=4-チオカルバモイルフェニル(リン酸ナトリウム法 タイプ1法)
【0062】
【0063】
五硫化二リン0.60g(1.35mmol)とリン酸ナトリウム0.33g(2.0mmol)に酢酸エチル3mLを加え、室温で3時間撹拌したところ、五硫化二リンは溶解し、過剰なリン酸ナトリウム分は溶けずに残った。次に炭酸tert-ブチル=4-カルバモイルフェニル1.07g(4.51mmol)と酢酸エチル5mLを加え、40℃で48時間撹拌した。このとき反応率は97.5%であった。水冷下10%炭酸ナトリウム水溶液5mL加え抽出し、酢酸エチル層は水5mLを加え、酢酸エチルを減圧濃縮した。結晶をろ過、水洗後、減圧乾燥し黄色結晶を得た。
収量0.872g 収率76.3% HPLC単純面積純度91.9%
【0064】
実施例13
2-(3-フルオロ-4-フェニルフェニル)プロピオン酸4-チオカルバモイルフェニルの合成(炭酸ナトリウム タイプ1法)
【0065】
【0066】
五硫化二リン1.11g(2.5mmol)と炭酸ナトリウム0.28g(2.5mmol)に酢酸エチル4mLを加え、室温で一夜撹拌したところ、二酸化炭素が約30mL発生し溶解した。次に2-(3-フルオロ-4-フェニルフェニル)プロピオン酸4-カルバモイルフェニル1.82g(5.0mmol)と酢酸エチル2mLを加え、40℃で5時間撹拌した。このとき反応率は99.8%であった。水冷下10%炭酸ナトリウム水溶液10mLを加え抽出分液し、水層は酢酸エチル2mLで2回抽出回収し、酢酸エチル層をまとめ水洗後濃縮乾固した。次にジイソプロピルエーテル5mLを加えスラリー洗浄し、減圧乾燥し淡黄色結晶を得た。
収量1.80g 収率94.8% HPLC単純面積純度98.7%
酢酸エチルで再結晶したものは、比較例3のカラム精製したものと熱分析(TG-DTA)が一致した。
【0067】
実施例14
2-(3-フルオロ-4-フェニルフェニル)プロピオン酸4-チオカルバモイルフェニルの合成(炭酸ナトリウム タイプ2法)
【0068】
【0069】
五硫化二リン1.11g(2.5mmol)と炭酸ナトリウム0.56g(5.0mmol)に酢酸エチル4mLを加え、室温で4時間撹拌したところ、二酸化炭素が約60mL発生し溶解した。次に2-(3-フルオロ-4-フェニルフェニル)プロピオン酸4-カルバモイルフェニル0.91g(2.5mmol)と酢酸エチル2mLを加え、50℃で72時間撹拌した。このとき反応率は98.8%であった。水冷下10%炭酸ナトリウム水溶液を9mL加えよく撹拌後、水10mLを加え、酢酸エチルを濃縮した。結晶をろ過し水洗し減圧乾燥し淡黄色結晶を得た。
収量0.91g 収率95.9% HPLC単純面積純度99.5%
酢酸エチルで再結晶したものは、比較例3のカラム精製したものと熱分析(TG-DTA)が一致した。
【0070】
実施例15
4-チオカルバモイルピリジンの合成(炭酸ナトリウム タイプ2法)
【0071】
【0072】
五硫化二リン2.22g(5.0mmol)と炭酸ナトリウム1.11g(10.0mmol)に酢酸エチル10mlを加え、室温で一夜撹拌したところ、二酸化炭素が発生し溶解した。次に4―ピリジンカルボキサミド0.611g(5.0mmol)と酢酸エチル4mLを加え、50℃で72時間撹拌した。このとき反応率は98.4%であった。水冷下5%炭酸ナトリウム水溶液を20mL加えよく撹拌後、酢酸エチルを濃縮した。結晶をろ過し水洗して減圧乾燥し黄色結晶を得た。
収量0.558g 収率80.8% HPLC単純面積純度98.6%
【0073】
比較例1
N-フェニルアセトチオアミドの合成(五硫化二リンとの反応)
【0074】
【0075】
五硫化二リン1.11g(2.5mmol)とアセトアニリド1.69g(7.5mmol)に酢酸エチル6mLを加え、40℃で24時間反応した。このときの反応率は91.8%であった。しかし、反応1時間後に発生したオイルで未反応の五硫化二リンは固化沈殿し、撹拌不能で、反応が遅くなり停止した。また、固化した沈殿物の水での分解は簡単ではなかった。
【0076】
比較例2
4-チオカルバモイルピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルの合成(チオ化剤を作らずに反応)
【0077】
【0078】
五硫化二リン0.88g(2.0mmol)と炭酸ナトリウム0.42g(4.0mmol)と4-カルバモイルピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル0.50g(2.2mmol)に酢酸エチル4mLを加え、50℃で撹拌したところ、すぐに炭酸ガスが発生し30分で24mL発生した。3時間反応し、HPLC測定したところ、原料のアミド化合物および目的物のチオアミド化合物は0%であった。生成したものは脱BOC化した4-カルバモイルピペリジンと未知化合物であった。
【0079】
比較例3
2-(3-フルオロ-4-フェニルフェニル)プロピオン酸4-チオカルバモイルフェニルの合成(ローソン試薬使用)
【0080】
【0081】
2-(3-フルオロ-4-フェニルフェニル)プロピオン酸4-カルバモイルフェニル0.36g(0.99mmol)とローソン試薬0.41g(1.0mmol)に酢酸エチル2mLを加え、50℃で2時間撹拌した。このとき反応率は99.3%であった。水冷下10%炭酸ナトリウム水溶液を3mL加え、酢酸エチルを減圧濃縮し、結晶をろ過し水洗し減圧乾燥し淡黄色結晶を得た。
収量0.37g 収率98.5% HPLC単純面積純度80%
このものは再結晶しても純度が上がらないため、シリカゲルカラムで精製し比較のための標準品とした。