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特開2022-91508感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いた衛生及び生活用品
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  • 特開-感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いた衛生及び生活用品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091508
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いた衛生及び生活用品
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/20 20060101AFI20220614BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20220614BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20220614BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20220614BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20220614BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20220614BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20220614BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C11D7/20
A41D13/11 M
A61F13/15 141
A61F13/15 142
C11D7/26
C11D7/22
C11D7/32
A61K8/29
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204382
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】520006735
【氏名又は名称】株式会社三鷹ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】羽澤 学
【テーマコード(参考)】
3B200
4C083
4H003
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200AA15
3B200BB03
3B200BB05
3B200BB17
3B200BB22
3B200BB24
3B200CA08
3B200CA11
3B200CA17
3B200DB02
3B200DC02
4C083AB241
4C083AB242
4C083AB281
4C083AB282
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC301
4C083AC691
4C083AD131
4C083AD132
4C083AD211
4C083AD241
4C083AD261
4C083AD301
4C083AD351
4C083AD371
4C083BB06
4C083BB23
4C083BB34
4C083BB48
4C083CC17
4C083CC22
4C083CC24
4C083DD12
4C083DD27
4C083DD39
4C083EE18
4H003BA12
4H003DA02
4H003EA30
4H003EB04
4H003EB08
4H003EB19
4H003EB28
4H003EB41
4H003EB42
4H003ED02
4H003FA34
(57)【要約】
【課題】医療機関を利用することがないように、日常生活の中において、自分で身体を清潔にし、健康を維持するための、感染症を引き起こす病原体である真菌、細菌、及び、ウィルス等の人体への侵入を予防する感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いた衛生用品を提供することを目的とする。
【解決手段】リン酸チタニウム系化合物を有効成分とする感染防止及び消臭洗浄剤であって、粉末又は粒状であるリン酸チタニウム系化合物が、多糖類、多糖類のアルカリ金属塩、第4級アンモニウム塩基を有する高分子、及び、第4級アンモニウム塩基を有する界面活性剤の中から選択される一つ以上を溶解した純水溶液、電解水溶液、純水/アルコール混合溶液、又は、電解水/アルコール混合溶液に分散されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸チタニウム系化合物粒子が純水又は電解水に分散されていることを特徴とする感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項2】
前記純水が、イオン交換水、蒸留水、逆浸透水、及び、Elix純水のいずれかであり、前記電解水が、弱酸性電解水、微酸性電解水、及び、電解次亜水のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項3】
水に溶解するアルコールが含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項4】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、及び、1-ペンタノールの中から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項5】
多糖類及び/又は多糖類のアルカリ金属塩が含有されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項6】
前記多糖類が、セルロース誘導体、微結晶セルロース、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸誘導体、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、カラギナン、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、スクシノグリカン、タマリンドシードガム、ペクチン、寒天、グルコマンナン、デンプン、加工デンプンの中から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項5に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項7】
第4級アンモニウム塩基を有する高分子及び/又は界面活性剤が含有されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項8】
前記第4級アンモニウム塩基を有する高分子が、第4級アンモニウム塩を有するアクリル系高分子、第4級アンモニウム塩を有するビニル系高分子、及び、第4級アンモニウム塩を有する多糖類誘導体の中から選択されるいずれか一つ以上であり、前記第4級アンモニウム塩を有する界面活性剤が、第4級アンモニウム塩を有する飽和炭化水素化合物及び/又は第4級アンモニウム塩を有するポリアルキレングリコールであることを特徴とする請求項7に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項9】
多糖類が含有されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項10】
前記多糖類が、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、微結晶セルロース、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、ペクチン、グルコマンナン、及び、デンプンの中から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項9に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項11】
乳酸を含有することを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項12】
前記リン酸チタニウム系化合物粒子が、化学式が、Ti(OH)(PO(HPO(HPO(OR)(Rは炭素数1~4のアルキル基、x,y,z,m,nはそれぞれ0以上の数であり、x+3y+2z+m+n=4を満たす)で表されるリン酸チタニウム系化合物から成ることを特徴とする請求項1~11に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項13】
前記リン酸チタニウム系化合物粒子が、四塩化チタンを水と炭素数1~4のアルコールとの混合溶媒と反応させた後、リン酸と反応させて得られる化合物から成ることを特徴とする請求項1~12に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項14】
前記リン酸チタニウム系化合物粒子と共に、ケイ酸チタニウム系化合物粒子及びホウ酸チタニウム系化合物粒子の少なくともいずれか一方が混在することを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項15】
前記ケイ酸チタニウム系化合物粒子は、四塩化ケイ素を、水若しくはアルコール、又は、水とアルコールの混合溶液と反応させ、得られた反応溶液に四塩化チタンを添加して反応させることによって調製されたケイ酸チタニウム系化合物から成り、前記ホウ酸チタニウム系化合物粒子は、ホウ酸を水若しくはアルコール、又は、水とアルコールの混合溶液に溶解させ、得られたホウ酸溶液に四塩化チタンを添加して反応させることによって調製されたホウ酸チタニウム系化合物から成ることを特徴とする請求項14に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項16】
前記ケイ酸チタニウム系化合物粒子の化学組成がTiO・SiOであり、前記ホウ酸チタニウム系化合物粒子の化学組成がTiO・Bであることを特徴とする請求項14又は15に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項17】
前記リン酸チタニウム系化合物粒子、前記ケイ酸チタニウム系化合物粒子、及び、前記ホウ酸チタニウム系化合物粒子の平均粒子径が、5~100nmであることを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載の感染防止及び消臭洗浄剤。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の感染防止及び消臭洗浄剤を、織布、不織布、ガーゼ、綿、スポンジ、及び、高吸水性樹脂、並びに、前記織布、前記不織布、前記ガーゼ、前記綿、前記スポンジ、及び、前記高吸水性樹脂から選択される二つ以上の複合体に含浸させた衛生用品。
【請求項19】
前記衛生用品の前記織布、前記不織布、前記ガーゼ、前記綿、前記スポンジ、及び、前記高吸水性樹脂が、生分解性高分子を原料として製造されていることを特徴とする請求項18に記載の衛生用品。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか一項に記載の感染防止及び消臭洗浄剤を付着させた生活用品、並びに、衣服及び身の回り品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「セルフメディケーション」又は「パーソナルケア」を目的とする感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いた生活用品、並びに、衣服及び身の回り品に関する。より具体的には、医療機関を利用することがないように、日常生活の中において、自分で身体を清潔にし、健康を維持するための、感染症を引き起こす病原体である真菌、細菌、及び、ウィルス等の人体への侵入を予防する感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いた生活用品、並びに、衣服及び身の回り品に関する。特に、本発明は、真菌、細菌、及び、ウィルスによってもたらされる食中毒及び汚染等を予防することを目的とした、キッチン用品及びトイレ用品等を洗浄する感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いたタオルや雑巾等のサニタリー用品、細菌及びウィルスによってもたらされる肺炎及びインフルエンザ等を予防することを目的とした、手、顔、鼻、口、喉、及び、目等を保護する感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いたマスクや眼帯等の衛生用品、真菌及び細菌によってもたらされる白癬症及びカンジダ症等を予防することを目的とした、手足及び陰部を清潔に保つ感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いたガーゼや脱脂綿等の衛生用品、細菌及び真菌によってもたらされる膣感染症を予防することを目的とした、健康な成人女性生殖器の内性器の膣及び外性器を清潔に保つ感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いた生理用品等、幅広い分野に亘って利用することが可能な感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いた生活用品に関する。また、本発明は、感染症を予防し、臭気を防止することが可能な、上記感染防止及び消臭洗浄剤をインナー、靴下、帽子、Tシャツ、及び、スポーツユニフォーム等に付着させた衣服及び身の回り品にまで及ぶものである。なお、本発明における用品名は、原則的には日本意匠分類(令和元年5月1日施行版)に基づくものであるが、厳密に分類されるものではない。
【背景技術】
【0002】
先進国においては、人々の物質的欲求が満足されると、清潔で健康的な生活環境、すなわち、目に見えない真菌、細菌、及び、ウィルス等から保護された生活環境が要求されるようになり、現在では、家庭・台所用品、食品容器・包材、衣料品、文具・おもちゃ、電気・電子製品、住宅・建材、車両・航空機等、抗菌加工処理を謳った抗菌加工製品を目にしないことはない。特に、コロナウィルス感染拡大の影響もあり、抗真菌活性、抗細菌活性、及び、抗ウィルス活性を有する電解水及びアルコール等の消毒液が、病院及び学校等の公共施設のみならず、一般店舗及び事業所等の出入り口において、必ず設置されるようになった(例えば、非特許文献1及び2)。なお、本明細書において、「抗菌」とは、真菌及び細菌の増殖を抑制又は阻止すること、若しくは、これらを殺滅又は損傷することを意味し、「抗ウィルス」とは、ウィルスの不活性化を意味するものとする。
【0003】
そして、食においては、人間の毎日の暮らしには欠くことができないものであり、食の安全性確保も極めて重要な問題であるが、現在も、ノロウィルス、サルモネラ菌、O157等の腸管出血性大腸菌等の集団食中毒が、夏(細菌)及び冬(ウィルス)に集中して発生するため、それを予防する衛生用品に対する期待が今なお続いている(例えば、非特許文献2)。
【0004】
更に、先進国における食には、物質的に豊かな食品が過剰に流通し、余剰しているという問題、すなわち、賞味期限及び消費期限を有する食品の場合は、家電・家具、自動車等の耐久消費財や、衣類、鞄等の半耐久消費財のように再利用することはできず、世界の生産量の三分の一にあたる約13億トンの食糧、日本でも年間約1700万トンもの食品廃棄物が、手を付けることなく廃棄されるという問題も存在する。特に、弁当、サラダ等の賞味期限が短い食品は、売れ残るとそのまま廃棄され、食べることが可能な大量の食品ロスを毎日のように排出するので、賞味期限を一日延ばすだけでも、食品ロスを大幅に低減することが可能となる。このような観点からも、真菌や細菌から食品を守ることも求められている(例えば、非特許文献3)。
【0005】
一方、現代の働く女性においては、過労及びストレス等による体力及び免疫力の低下、並びに、女性ホルモンのバランスの乱れ(例えば、エストロゲンの分泌低下)が、従来よりも激しく、膣内に存在する細菌叢均衡の破壊によって起こる内因性感染症又は医療行為の結果として生起する医原性感染症である膣感染症が問題になっており、医療機関を利用することなく、この感染症を予防すると共にことが可能な内性器の膣内及び外性器を清潔に保つと共に、清潔感を訴える感染防止及び消臭洗浄剤が求められている。
【0006】
これまで、抗菌製品と言えば、家庭・台所用品、食品容器・包材、衣料品、文具・おもちゃ、電気・電子製品、住宅・建材、車両・航空機等の至るところで使用されている、有機系又は無機系抗菌剤が固定された繊維及びプラスチックを用いた織布や各種成形品等であった(例えば、非特許文献1及び2)。
【0007】
しかし、最近では、コロナウィルス感染拡大の影響もあり、二酸化塩素の抗菌活性及び抗ウィルス活性を利用した首掛け式又は据え置き式の衛生用品、並びに、次亜塩素酸水、微酸性電解水、アルコール、及び、これらに無機系又は有機系の抗菌剤を分散又は溶解させた液体等をそのまま散布する衛生用品、並びに、次亜塩素酸水、微酸性電解水、アルコール、及び、これらに無機系又は有機系の抗菌剤を分散又は溶解させた液体等を織布、不織布、脱脂綿、ガーゼ等に含ませたマスク、オムツ、ティッシュ、ナプキン、及び、パンティライナー等の衛生用品等が数多く市場を席巻するように出回るようになってきた(例えば、特許文献1~3、並びに、非特許文献4)。
【0008】
一方、真菌及び細菌によってもたらされる白癬症及び膣感染症の予防については、日常生活の中において、身体、家庭環境、及び、陰部等を清潔に保つ習慣を身につけておくことに変わりはないが、予防よりも、感染後に抗真菌剤又は抗生物質による局所療法及び内服療法で治療されることが多かった(例えば、非特許文献5及び6)。
【0009】
しかし、膣感染症の局所療法で挿膣される、抗生物質製剤のクロラムフェニコール膣錠、又は、抗微生物剤のメトロニタゾール膣錠若しくはクリダマイシンクリームは、デーデルライン桿菌の活性を低下させと共に、副作用として、発疹、痒み、発赤、刺激、及び、糜爛等の皮膚症状、並びに、ショック及びアナフィラキシー(呼吸困難、全身潮紅、血管浮腫、及び、蕁麻疹等)の症状が生じる場合がある。また、治療効果を高めるための、滅菌蒸留水、生理食塩水、塩化ベンザルコニウム液、又は、ポビドンヨード液を用いた膣内洗浄は、デーデルライン桿菌を排泄するため、膣の自浄作用を大きく妨げる結果になる場合もある。
【0010】
そして、膣感染症の内服療法で使用される、抗微生物剤のメタロニダゾール錠剤、又は、ペニシリン系抗生物質であるアンピシリンカプセル若しくはアモキシシリンカプセルは確立されたものではなく、特に、メタロニダゾール錠剤は、下痢、発疹、舌苔、食欲不振、胃不快感、味覚異常、末梢神経障害、中枢神経障害、無菌性髄膜炎等の副作用があり、妊婦にはその投与が禁止されている。ペニシリン系抗生物質は、発疹、かゆみ、発熱、下痢、軟便、吐き気、嘔吐、食欲不振、腹痛、味覚異常、肝障害、及び、腎障害等の副作用があると共に、デーデルライン桿菌の活性を低下させる原因ともなる。
【0011】
そこで、特に、膣感染症については、乳酸菌の経口剤、乳酸オリゴマーを含む経腟剤、及び、乳酸を含む膣洗浄剤、並びに、女性生殖器の内性器の膣内及び外性器を洗浄するための生理用品等の予防手段が提供されるようになってきた(例えば、特許文献4~6、並びに、非特許文献7)。
【0012】
これは、第一に、膣感染症が、次のように危険な疾患であり、現代の少子化社会においては放置することができない問題であり、その問題を回避することを目的としているものと考えられる。膣感染症は、繁殖した雑菌が子宮頸部を通過すると子宮内膜炎、更に、卵管炎、骨盤腹膜炎等を発症する場合があり、これら骨盤内炎症性疾患は、炎症、下腹部痛、発熱、嘔吐、及び、臓器の癒着等が伴うばかりか、不妊、子宮外妊娠、及び、慢性骨盤痛等の後遺症に至る場合がある危険な感染症であり、妊婦が細菌性膣症に罹ると、絨毛膜用膜炎、それに伴う産褥子宮内膜炎を引き起こし、流産、早産、及び、低出生体重児等の原因と考えられている上、胎児に感染すると、新生児の肺炎、髄膜炎、菌血症、及び、敗血症等を起こすことがあるだけでなく、脳室周囲白質軟化症及び慢性肺疾患等を起こす場合もある。このように、膣感染症は、自覚症状がないとはいえ、出生率を更に低下させ、子孫にまで悪影響を及ぼす危険な疾患であるため、日頃から細心の注意を払う必要があるという認識が高まってきたのであろう(例えば、非特許文献5及び6)。
【0013】
第二に、上記予防手段は、膣内環境を整えることを目的としている(例えば、特許文献4~6、並びに、非特許文献5~7)。健康な女性の膣内は、膣内細菌叢の75~95%を占める(ドイツの産科医であるA.デーデルラインが発見した)デーデルライン桿菌の存在によって、膣上皮細胞表層から剥離、脱落するグリコーゲンが分解されて乳酸を産生し、pH=3.5~4.5の強酸性に保持する自浄作用のため、真菌及び細菌等の繁殖が防止され、正常な膣内細菌叢均衡が維持されている場合には、膣感染症に罹ることはない。この正常な膣内細菌叢均衡を破壊する原因となるのは、過労やストレス等による体力や免疫力の低下及び女性ホルモンのバランスの乱れ(例えば、エストロゲンの分泌低下)による、デーデルライン桿菌の菌量、活性、及び、膣上皮細胞表層からのグリコーゲンの脱落量の減少、並びに、抗生物質の乱用、月経の調節、膣内洗浄、及び、子宮内避妊具(IUD、Intra Uterine Device)の使用等による自浄作用への悪影響である。すなわち、上記予防手段は、これらの原因による膣内細菌叢機構の破壊から守り、膣内環境を整えることを目的としている。
【0014】
一方、近年、衣服やカーテン等の消臭剤が日常生活の必需品となっているが、ウィルス感染に脅かされる現在においては、消臭効果に加え、人体に安全な感染防止効果を有する洗浄剤は、カーテン、敷物、及び、寝具等の生活用品、インナー、靴下、帽子、Tシャツ、及び、スポーツユニフォーム等の衣服及び身の回り品に対しても、強く求められている。
【0015】
以上のように、「セルフメディケーション」又は「パーソナルケア」を目的とする感染防止及び消臭洗浄剤及びそれを用いた衛生用品、より広義には、医療機関を利用することがないように、日常生活の中において、自分で身体を清潔にし、健康を維持するための、感染症を引き起こす病原体である真菌、細菌、及び、ウィルス等の人体への侵入を予防する感染防止及び消臭洗浄剤及びそれを用いた生活用品、並びに、衣服及び身の回り品に脚光が浴びるようになってきた。しかし、真菌、細菌、及び、ウィルス等の各種微生物に対する活性を有すると共に消臭機能も有し、十分な効果を奏し、安心して使用でき、幅広い生活用品、並びに、衣服及び身の回り品に適用可能な感染防止及び消臭洗浄剤は見出されていない。
【0016】
例えば、特許文献1及び2に記載されているような二酸化塩素の除菌及び殺菌作用、並びに消臭機能を利用して、空間に浮遊するウィルス及び細菌の除菌及び殺菌、並びに、消臭を謳った、首掛け式及び据え置き式空気清浄用品が多数市場に出回っている。しかし、首掛け式を着用した場合には、皮膚の化学熱症が報告されているという問題がある。また、据え置き式では、塩素の臭気が強く、設置された室内に停留することができないという問題、二酸化塩素が金属類を腐食する可能性があり、電気製品及び金属製品等の近辺に置けないという問題、そして、二酸化塩素の人体との接触が有害である可能性が否定できないという問題がある。従って、二酸化塩素水を、織布、不織布、脱脂綿、ガーゼ等に含ませたマスク、オムツ、ティッシュ、ナプキン、及び、パンティライナー等の衛生用品に適用することはできない。
【0017】
非特許文献4に記載されているカチオン系界面活性剤であるポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩と考えられる有機系抗菌剤を溶解した液体を含ませたお絞りの報告がある。これは、従来のトリクロサン及びオキサシリンを含ませたお絞りの毒性及び薬剤耐性菌産生の問題を改良したものであるが、細菌に対する活性を有する記載が認められるものの、ウィルスに対する活性に関する記載が認められない。また、有機系抗菌剤に周知の熱的安定性、並びに、光、水、及び、空気等に対する化学的安定性の問題、更には、人体に対する安全性の問題がある。安全性の問題は、有機系抗菌剤とお絞りの織布及び不織布等との化学的な結合がないため、人体へ流出していくことが考えられるので、特に留意する必要がある。
【0018】
このような有機系抗菌剤の流出の問題を改良した有機系抗菌剤には、特許文献3に記載されている、抗菌性及び抗ウィルス活性を有する第四級アンモニウム塩とアルコキシシランとを有するケイ素化合物が開発されており、これを用いたウェットティッシュの報告がある。しかし、上述した有機系抗菌剤のその他の問題を解決している訳ではない。
【0019】
また、無機系抗菌剤の代表例である銀粒子及びアルコール等含ませる衛生用品も存在するが、ウィルスに対する活性がなく、インフルエンザやノロウィルス等を含めた幅広い生活用品に適用することはできない。
【0020】
一方、膣感染症に関しては、膣内環境を整える経口剤、経腟剤、及び、膣内洗浄剤が報告されている。
【0021】
膣内環境を整える経口剤としては、非特許文献7に記載されているように、腸内環境を整えるビフィズス菌と同様の働きをする、デーデルライン桿菌の増加を助け、膣内環境を整える乳酸菌、ラクトバチルス・ラムノーサス及びラクトバチルス・ヘルベティカスを含む錠剤が市販されている。しかし、乳酸菌の生育至適pHは5.0~8.0の範囲とされているのに対し、デーテルライン桿菌の産生する乳酸のpHは3.5~4.5の強酸性であり、このような強酸性環境下でも生存する乳酸菌は、ラクトバチルス・アシドフィルス以外は不可能であると報告されている(例えば、非特許文献8)。従って、このことは、乳酸菌投与の本質的な課題を示していると考えられる。
【0022】
膣内環境を整える経腟剤として、乳酸オリゴマーと粘膜付着剤からなる医薬組成物が提案されている(特許文献4)。これは、乳酸オリゴマーから乳酸を経時的に放出することによって効果を奏すると記載されており、おそらく、乳酸オリゴマーが酸性環境下で加水分解することによって乳酸を放出するものと考えられる。しかし、加水分解は、乳酸オリゴマーを構成する乳酸モノマー単位で加水分解されることはなく、最終生成物が乳酸であるとは限らない。最終生成物が乳酸になるとしても、長期間を有するものと考えられる。そして、生理用品の形態としては、クリーム、リキッド、ソープ、及び、錠剤等の他、タンポンに浸み込ませて膣内に挿入させる方法、及び、シリンジで膣内に注入する方法等が記載されている。
【0023】
一方、膣内環境を整える膣内洗浄剤として、活性炭を分散させた膣洗浄剤が提案されており、その洗浄剤をガーゼ、綿球、及び、タンポン等に浸み込ませて膣内に挿入させる方法が記載されている(特許文献5)。しかし、活性炭は、低分子物質である臭いを吸着する機能に優れているが、真菌及び細菌を吸着する活性炭は限定的であり、吸着される真菌及び細菌も限定的である(非特許文献9)。また、ウィルスの吸着に関する検討は認められない。
【0024】
更に、膣内に洗浄剤を注入するためと推測される体内孔注入具が開示されており、円筒パイプ状の挿入体の内部空間に液剤を充填する充填空間部を有する器具本体と、液剤を注入孔から送出する送出杆とを備え、注入孔に取り付けられた離脱操作片を一体接続した密閉栓が充填空間部を真空密閉し、その離脱操作片の操作により真空密閉状態を解除した時に、液剤が注入孔方向へのみ移動可能とする仕切片を充填空間部と送出杆との間に介在させたことを特徴としている(特許文献6)。そして、その液剤は、pH調整剤として乳酸が配合され、デーデルライン桿菌が産生する乳酸によってpH=3.5~4.5の強酸性に保持されている膣内に合わせた、膣内環境に優しい洗浄ジェルであると考えられる(非特許文献10)。液剤の使用量は少ないが、滅菌蒸留水や生理食塩水等の洗浄と同様、汚れ、生理の残滓、及び、臭い等を膣口から排出して取り除くことに変わりなく、膣内洗浄による自浄作用への悪影響が懸念される。
【0025】
以上のように、日常生活の中において、自分で身体を清潔にして管理し健康を維持する「セルフメディケーション」又は「パーソナルケア」に適用可能で、感染症を引き起こす病原体である真菌、細菌、及び、ウィルス等の人体への侵入を予防するための感染防止剤及び消臭洗浄剤は、サニタリー用品、ベビー用品、介護用品、及び、生理用品等の分野で異なり、幅広い分野に亘って共通して適用可能な感染防止及び消臭洗浄剤は認められず、それらの性状も異なる。それに伴い、それぞれに応じた形態の無数の感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いた衛生用品が濫出され続けている。また、抗真菌活性、抗細菌活性、抗ウィルス活性、及び、消臭活性を全て備えた感染防止及び消臭洗浄剤があれば、これ一つで、カーテン、敷物、及び、寝具等の生活用品、インナー、靴下、帽子、Tシャツ、及び、スポーツユニフォーム等の衣服及び身の回り品に対しても、スプレーをするだけで感染防止効果及び消臭効果を付与することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特許第6586652号公報
【特許文献2】特許第5593423号公報
【特許文献3】国際公開第2010/073825号
【特許文献4】特表第2015-526413号公報
【特許文献5】特開第2009-96755号公報
【特許文献6】特開第2018-57574号公報
【特許文献7】特許第3829640号公報
【特許文献8】特許第4430877号公報
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】菊地靖志,「抗菌性金属材料の現状と課題」,まてりあ,第39巻(2000),第2号,pp.146-150
【非特許文献2】檜山圭一郎,「プラスチック製品の抗菌加工」,繊維製品消費科学会誌、Vol.40,No.9,pp.576-584(1999)
【非特許文献3】農林水産省(食糧産業局・バイオマス環境資源課・食品産業環境対策室),「食品ロス削減に向けて~「もったいない」を取り戻そう!~」,平成25年9月,[online],[2020年11月21日検索],インターネット,<https://www.maff.go.jp/Kinki/syouhi/mn/iken/attach/pdf/30nendo-8.pdf>
【非特許文献4】梶浦工,「第3回 東京医療保健大学大学院 海外カンファレンス」、医療関連感染,Vоl.4,No.2,December 2011,pp.116~118
【非特許文献5】堤寛,「I.細菌感染症,10婦人科,泌尿器科および眼科領域の細胞診で遭遇する細菌類」,感染症病理アトラス,pp.38-41,[online],[2020年11月22日検索],インターネット,<https://pathos223.com/atlas/pdf10.pdf>
【非特許文献6】日本性感染症学会,「第2部 疾患別診断と治療,8.細菌性膣症」,性感染症 診断・治療 ガイドライン-2008年度版,日本性感染症学会誌,Vol.19,No.1,Suppl.,2008,pp.77-80,[online],[2020年11月22日検索],インターネット,<http://jssti.umin.jp/pdf/guideline2008/02-8.pdf>
【非特許文献7】大鵬薬品工業株式会社,「膣内の善玉菌(デーデルライン桿菌)の増加をサポートする成分」,[online],[2020年11月22日検索],インターネット,<https://rosell1152.jp/02/>
【非特許文献8】山田文夫,植田勝間,永田治義,梶博,黒住晃司,浜田徹,「各種腟炎に対する生菌デーデルライン腟カプセルの使用経験」,産婦進歩,第21巻2号,pp.141(61)-145(65),1969年,[online],[2020年11月22日検索],インターネット,<https://www.jstage.jst.go.jp/article/sanpunosinpo1949/21/2/21_2_141/_pdf>
【非特許文献9】金周永,杉浦則夫,伏見聡,稲森悠平,西村修,須藤隆一,「生物活性炭における細菌の付着能と高濃度基質分解特性」,日本水処理生物学会誌,第30巻,第1号,pp.49-56(1994)
【非特許文献10】株式会社ハナミスイ,「インクリア」,[online],[2020年11月23日検索],インターネット,<https://hanamisui.jp/inclear/>
【非特許文献11】加藤信行,「アルコール類の抗菌作用」,甲南女子大学研究紀要(15),pp.189-198,1978,[online],[2020年11月23日検索],インターネット,<https://konan-wu.repo.nii.ac.jp/>
【非特許文献12】飯田武揚,山岡一彦,野尻成治,野崎弘,「四塩化チタンの加水分解による酸化チタンの結晶生成過程とその物性」,工業化学雑誌,1966年,69巻,11号,pp.2087-2095
【非特許文献13】古南博,大谷文章,「はじめての電気化学計測-基礎とノウハウ光触媒の調整法」,電気化学および工業物理化学(DENKI KAGAKU),1998年,66巻,10号,pp.996-1003
【非特許文献14】佐治孝,「縮合リン酸の生成と物性および応用」,工業化学雑誌,1963年,66巻,5号,pp.528-537
【非特許文献15】田中豊助,「有機ホウ素化合物の化学」,有機合成化学,1964年,第22巻,第10号,pp.806-815
【非特許文献16】福田徳生,「ポリ乳酸ゲル」,[online],[2020年11月30日検索],インターネット,<http://www.aichi-inst.jp/other/up_docs/z_no06_04.pdf>
【非特許文献17】藤田彩華,「生分解性を示す新規高吸水性高分子の開発とその性能評価」,[online],[2020年11月30日検索],インターネット,<http://www.fbi-award.jp/sentan/jusyou/2011/4.pdf>
【非特許文献18】大矢裕一,長濱宏治,「生分解性高分子材料」,Drug Delivery System,2008年,23巻,6号,pp.618-626
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
背景技術において説明したように、従来、真菌、細菌、及び、ウィルスによってもたらされる食中毒及び汚染等を予防することを目的とした、キッチン用品及びトイレ用品等を洗浄する感染防止及び消臭洗浄剤、細菌及びウィルスによってもたらされる肺炎及びインフルエンザ等を予防することを目的とした、手、顔、鼻、口、及び、喉等を保護する感染防止及び消臭洗浄剤、真菌及び細菌によってもたらされる白癬症及びカンジダ症等を予防することを目的とした、手足及び陰部を清潔に保つ感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、細菌及び真菌によってもたらされる膣感染症を予防することを目的とした、健康な成人女性生殖器の内性器の膣及び外性器を清潔に保つ感染防止及び消臭洗浄剤は、それぞれの用途に応じて異なる感染防止剤及び消臭洗浄剤が必要とされている。そのため、日常生活の中において、自分で身体を清潔にして管理し健康を維持する「セルフメディケーション」又は「パーソナルケア」に適用可能で、感染症を引き起こす病原体である真菌、細菌、及び、ウィルス等の人体への侵入を予防するための感染防止剤及び消臭洗浄剤は、物質だけでなく性状も、サニタリー用品、ベビー用品、介護用品、及び、生理用品等の分野で異なり、それぞれに応じた形態の無数の衛生用品が濫出され続けている。
【0029】
このような無数の衛生用品の濫出は無駄が多く、製品コストを高め、消費者が、日常生活の中において、「セルフメディケーション」又は「パーソナルケア」を長期間に亘り継続的に使用するための弊害となる。しかし、上記各分野で共通した物質かつ性状の感染防止剤及び消臭洗浄剤があり、家庭に保管しておくことができれば、スプレー等で手足に散布したり、マスク、オムツ、ティッシュ、靴下、包帯、ナプキン、パンティライナー、及び、タンポン等に適量浸み込ませたりして、そのまま様々な真菌、細菌、及び、ウィルスの感染防止に利用することができる上、利用方法に適した素材及び形態の織布、不織布、脱脂綿、及び、ガーゼ等に染み込ませ、マスク、オムツ、靴下、包帯、ナプキン、及び、パンティライナー等と共に張り合わせて適宜利用することもできる。また、膣感染症対策として、タンポンに十分吸収させて膣洗浄用品に利用することもできる。更には、カーテン、敷物、及び、寝具等の生活用品、インナー、靴下、帽子、Tシャツ、及び、スポーツユニフォーム等の衣服及び身の回り品に対しても、スプレーをするだけで感染防止効果及び消臭効果を付与することができ、日常生活に密着した「セルフメディケーション」又は「パーソナルケア」を長期間に亘り継続することが可能となる。
【0030】
すなわち、本発明は、真菌、細菌、及び、ウィルスによってもたらされる食中毒及び汚染等を予防することを目的とした、キッチン用品及びトイレ用品等を洗浄する感染防止及び消臭洗浄剤、細菌及びウィルスによってもたらされる肺炎及びインフルエンザ等を予防することを目的とした、手、顔、鼻、口、及び、喉等を保護する感染防止及び消臭洗浄剤、真菌及び細菌によってもたらされる白癬症及びカンジダ症等を予防することを目的とした、手足及び陰部を清潔に保つ感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、細菌及び真菌によってもたらされる膣感染症を予防することを目的とした、健康な成人女性生殖器の内性器の膣及び外性器を清潔に保つ感染防止及び消臭洗浄剤等として、いずれの目的に対しても予防効果を奏し、共通して利用することができる感染防止及び消臭洗浄剤を提供することを目的としている。また、その感染防止及び消臭洗浄剤を用いたサニタリー用品、ベビー用品、介護用品、及び、生理用品等の清掃用品や衛生用品だけでなく、カーテン、敷物、及び、寝具等を含む生活用品、並びに、インナー、靴下、帽子、Tシャツ、及び、スポーツユニフォーム等の衣服及び身の回り品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0031】
発明者は、リン酸チタニウム系化合物は、真菌及び細菌に対する抗真菌活性及び抗細菌活性を有しており、臭いを抑制する消臭活性も備えていることを認識していた(例えば、特許文献7及び8)。更に、リン酸チタニウム系化合物を膜として使用するのではなく、粒子として純水に強制的に分散した分散液の方が、更に抗菌活性を高め、各種ウィルスをも殺菌するという抗ウィルス活性を有していることを見出し、本発明に至った。このような抗菌活性及び抗ウィルス活性が高まる原因は定かではないが、微粒子化効果、すなわち、リン酸チタニウム系化合物粒子の比表面積が、リン酸チタニウム系化合物膜の比表面積よりも顕著に増加することに起因しているものと考えられる。
【0032】
すなわち、本発明は、リン酸チタニウム系化合物粒子が純水又は電解水に分散されていることを特徴とする感染防止及び消臭洗浄剤である。
【0033】
純水は、周知のイオン交換水、蒸留水、逆浸透水、及び、Elix純水のいずれかであればよいが、有機物質を含んでいない蒸留水、逆浸透水、及び、Elix純水であることが好ましいく、経済性の観点から、蒸留水であることがより好ましい。
【0034】
電解水は、強酸性及び強アルカリ性ではなく、安全性に優れており、食品添加物として認可されている、弱酸性電解水、微酸性電解水、及び、電解次亜水のいずれかであることが好ましく、最も幅広い真菌、細菌、及び、ウィルスに対して活性を有している次亜塩素酸水である微酸性電解水がより好ましい。従って、リン酸チタニウム系化合物粒子の電解水分散液は、電解水が純水にはないには真菌、細菌、及び、ウィルスに対する活性を有しているためと考えられるが、リン酸チタニウム系化合物粒子と電解水との相乗効果を発現するので、リン酸チタニウム系化合物粒子の純水分散液よりも優れた抗菌性及び抗ウィルス活性を有する。
【0035】
本発明の洗浄剤には、更に、水に溶解するアルコールが含有されていることが、電解水同様、リン酸チタニウム系化合物粒子との相乗効果を発現し、抗菌性を高める効果があるのでより好ましい。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、及び、1-ペンタノールを挙げることができる。
【0036】
特に、メタノール、エタノール、及び、1-プロパノールの水溶性アルコールは、抗菌性を短時間で発揮するアルコール水溶液濃度が約70重量%(エタノールの場合)で、抗菌性を発揮するアルコールクラスターを多量に形成する濃度であると考えられており、一般的に使用されている。しかし、アルコール濃度が、約8~20重量%、約20~40重量%、約40~80重量%、及び、約80~100重量%の場合、それぞれ、細菌が死滅するまでの時間は、約30分~48時間、約10分~30分、約5分以内、及び、約10分~30分であると報告されているが、長時間の接触処理により効果を奏し、リン酸チタニウム系化合物粒子も含んでいるので、用途に応じて適宜決定することが好ましい。
【0037】
一方、アルコールの抗菌性は、炭素数の増加に伴い、その効果が大きくなることが報告されている(非特許文献11)が、本発明においても、水に対する溶解性が低いアルコールを少量添加するだけであっても、上記水溶性アルコール同等以上の効果を奏することを見出した。水に対する溶解度が約6gである1-ブタノール、及び、水に対する溶解度が約2gである1-ペンタノールが好ましく、それぞれ、溶媒の約6重量%及び約2重量%添加することが特に好ましい。
【0038】
このような純水若しくは電解水、又は、これらにアルコールを含む純水若しくは電解水に、リン酸チタニウム系化合物粒子を分散した感染防止及び消臭洗浄剤は、抗真菌活性、抗細菌活性、及び、抗ウィルス活性を有するため、スプレー等で手足に散布したり、マスク、オムツ、ティッシュ、靴下、包帯、ナプキン、パンティライナー、及び、タンポン等に適量浸み込ませたりして、そのまま様々な真菌、細菌、及び、ウィルスの感染防止に利用することができる。また、この洗浄剤を利用方法に適した素材及び形態の織布、不織布、脱脂綿、及び、ガーゼ等に染み込ませ、マスク、オムツ、靴下、包帯、ナプキン、及び、パンティライナー等と共に張り合わせて適宜利用することもできる。更に、膣感染症対策として、タンポンに十分吸収させて膣洗浄用品に利用することもできる。
【0039】
このように、本発明の感染防止及び消臭洗浄剤が利用されるが、リン酸チタニウム系化合物粒子が洗浄剤中で長期間に亘り分散安定性を保持するためには、多糖類及び/又は多糖類のアルカリ金属塩が分散剤として含有されていることが好ましい。また、多糖類及び/又は多糖類のアルカリ金属塩は、リン酸チタニウム系化合物粒子の分散剤として機能するだけでなく、洗浄剤の用途に応じた適度な粘性に調整することができる上、リン酸チタニウム系化合物粒子を、手足、織布、不織布、脱脂綿、及び、ガーゼ等に強固に付着し、長期間に亘り感染防止及び消臭機能が保持される。また、このような衛生用品だけでなく、カーテン、敷物、寝具等を含めた生活用品、並びに、インナー、靴下、帽子、Tシャツ、及び、スポーツユニフォーム等の衣服及び身の回り品にも展着し、長時間に亘る感染防止及び消臭機能が発揮される。
【0040】
特に、セルロース誘導体、微結晶セルロース、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸誘導体、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、カラギナン、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、スクシノグリカン、タマリンドシードガム、ペクチン、寒天、グルコマンナン、デンプン、及び、加工デンプンの多糖類、並びに、セルロース誘導体、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸誘導体、カラギナン、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、スクシノグリカン、寒天、及び、加工デンプンのアルカリ金属塩の中から選択される一つ以上が含有されていることが好ましい。分散安定性及び粘性は、使用する多糖類及び/又は多糖類のアルカリ金属塩の種類、分子量、及び、変性量等によってそれぞれ異なるため、用途に応じて適宜決定されることが望ましいが、感染防止及び消臭剤のリン酸チタニウム系化合物粒子の分散安定性及び上記各種吸収体への含浸性の観点から、溶媒の約0.1~30重量%含有することが、好ましい。
【0041】
このような多糖類及び/又は多糖類のアルカリ金属塩と同様の機能を有すると共に、更に、抗真菌活性、抗細菌活性、及び、抗ウィルス活性を有する第4級アンモニウム塩基を有する高分子及び/又は界面活性剤が含有されていることがより更に好ましい。
【0042】
特に、第4級アンモニウム塩基を有する高分子が、第4級アンモニウム塩を有するアクリル系高分子、第4級アンモニウム塩を有するビニル系高分子、及び、第4級アンモニウム塩を有する多糖類誘導体の中から選択されるいずれか一つ以上であり、第4級アンモニウム塩を有する界面活性剤が、第4級アンモニウム塩を有する飽和炭化水素化合物及び/又は第4級アンモニウム塩を有するポリアルキレングリコールであることが、分散安定性という観点から好ましい。このような第4級アンモニウム塩を有する高分子も界面活性剤の場合も、同様の観点から、溶媒の約0.1~30重量%含有することが好ましい。
【0043】
中でも、分散安定性に加え、粘性を調整すると共に、リン酸チタニウム系化合物粒子が手足、織布、不織布、脱脂綿、及び、ガーゼ等に強固に付着する上、肌に優しい保水状態を長期間に亘り維持し、感染防止機能を保持するためには、第4級アンモニウム塩を有する化合物が、第4級アンモニウム塩を有するポリビニルアルコール、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、及び、ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウムであることが最も好ましい。
【0044】
上記第4級アンモニウム塩化合物、特に、第4級アンモニウム塩を有する界面活性剤を用いる場合には、粘性を幅広く設定するため、更に、多糖類が含有されていることが好ましく、第4級アンモニウム塩とイオン架橋しない、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、微結晶セルロース、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、ペクチン、グルコマンナン、及び、デンプンの中から選択される一つ以上である陰イオン性官能基を有していない多糖類が適している。陰イオン性官能基を有している多糖類の場合、第4級アンモニウム化合物と混合すると、ゲル化して使用することが困難な場合も生じるからである。この場合の多糖類の添加量は、上記各種吸収体への含浸性の観点から、溶媒の約0.1~30重量%含有することが好ましい。
【0045】
特に、ナプキン、パンティライナー、及び、タンポンに吸収させて、膣外洗浄及び膣内洗浄用品として使用する場合には、デーデルライン桿菌が産生する乳酸によって保持されている膣内酸性濃度であるpH=3.5~4.5に調整するために、乳酸を感染防止及び消臭洗浄剤の約0.1~9.0重量%含有することが好ましい。このことによって、女性生殖器に適した感染防止及び消臭洗浄剤となる。本発明の感染防止及び消臭剤は、感染者に適用するものではないので、過度の膣内洗浄による膣内細菌叢均衡を破壊しない程度に行うことが好ましいので、本発明の洗浄剤を十分に吸収させたタンポンを一週間に一度、一昼夜挿入する程度で好ましいと考えられるが、個人差があるので、状況に応じて洗浄することが望ましい。
【0046】
一方、リン酸チタニウム系化合物粒子は、化学式が、Ti(OH)(PO(HPO(HPO(OR)(Rは炭素数1~4のアルキル基、x,y,z,m,nはそれぞれ0以上の数であり、x+3y+2z+m+n=4を満たす)で表されるリン酸チタニウム系化合物から成ることを特徴としている。そして、このようなリン酸チタニウム系化合物粒子は、用途及び使用方法等種々の要因により、その必要量が異なるが、抗菌活性及び抗ウィルス活性を発現するためには、上述したような各種添加剤を含む分散媒に対して、少なくとも0.001~30重量%必要である。より効果的であるためには、0.01~30重量%であることがより好ましく、0.1~30重量%であることがより更に好ましい。
【0047】
また、上記リン酸チタニウム系化合物粒子が、Ti(OH)(PO(HPO(HPO(OR)(Rは炭素数1~4のアルキル基、x,y,z,m,nはそれぞれ0以上の数であり、x+3y+2z+m+n=4を満たす)で表されるリン酸チタニウム系化合物から成る粒子として生成されるためには、四塩化チタンを水と炭素数1~4のアルコールとの混合溶媒と反応させた後、リン酸と反応させる方法が好ましいが、この方法に限定されるものではない。
【0048】
リン酸チタニウム系化合物粒子には、元来、抗菌活性、抗ウィルス活性、及び、消臭活性を有しているが、更に消臭活性を高めるためには、ケイ酸チタニウム系化合物粒子及びホウ酸チタニウム系化合物粒子の少なくともいずれか一方を混在させることが好ましい。
【0049】
特に、消臭活性という観点から、ケイ酸チタニウム系化合物粒子は、四塩化ケイ素を、水若しくはアルコール、又は、水とアルコールの混合溶液と反応させ、得られた反応溶液に四塩化チタンを添加して反応させることによって調製されたケイ酸チタニウム系化合物から成ることが好ましく、その化学組成がTiO・SiOであることがより好ましい。同様に、ホウ酸チタニウム系化合物粒子は、ホウ酸を水若しくはアルコール、又は、水とアルコールの混合溶液に溶解させ、得られたホウ酸溶液に四塩化チタンを添加して反応させることによって調製されたホウ酸チタニウム系化合物から成ることが好ましく、その化学組成がTiO・Bであることがより好ましい。
【0050】
リン酸チタニウム系化合物粒子と、ケイ酸チタニウム系化合物粒子及び/又はホウ酸チタニウム系化合物粒子との混合比は、ケイ酸チタニウム系化合物粒子及び/又はホウ酸チタニウム系化合物粒子の消臭効果が顕著に発現するためには、重量比で、100:50~100:10の範囲で混在していること好ましいが、感染防止及び消臭洗浄剤の用途に応じて適宜混合するものであり、必ずしも、ケイ酸チタニウム系化合物粒子及び/又はホウ酸チタニウム系化合物粒子を混合させる必要はない。また、ケイ酸チタニウム系化合物粒子及びホウ酸チタニウム系化合物粒子の両者を混合する場合、これらの配合比は、重量比で、100:10~100:50とすることが、消臭効果を高める点で好ましい。
【0051】
既に説明したように、本発明の感染防止及び消臭洗浄剤に用いるリン酸チタニウム系化合物粒子、ケイ酸チタニウム系化合物粒子、及び、ホウ酸チタニウム系化合物粒子は、いずれも粒子として、水系分散媒に分散されて使用されることに特徴があり、抗菌活性及び抗ウィルス活性、並びに、消臭活性が格段に向上する。これは、ナノ粒子の特異性がその粒子径の微小化に伴う比表面積の大きさに一因があるとする考え方と同様で、これらの化合物の形態が、膜状であるよりも粒子状である方が、比表面積が大きくなることに起因している。従って、これらの化合物粒子の平均粒子径が小さい程好ましいが、平均粒子径が小さい程一次粒子に分散することが困難であり、一旦一次粒子に分散した後における凝集体の生成が激しく、分散安定性に乏しい。そのため、上記多糖類及び/又は多糖類のアルカリ金属塩、若しくは、第4級アンモニウム塩基を有する高分子及び/又は界面活性剤を含有させるのであるが、リン酸チタニウム系化合物粒子、ケイ酸チタニウム系化合物粒子、及び、ホウ酸チタニウム系化合物粒子の平均粒子径は、5~100nmであることが好ましく、10~90nmであることがより好ましく、20~80nmであることがより更に好ましい。
【0052】
次いで、このような抗真菌活性、抗細菌活性、及び、抗ウィルス活性、並びに、消臭活性を有するリン酸チタニウム系化合物粒子、特に、消臭活性に優れたケイ酸チタニウム系化合物粒子、及び、ホウ酸チタニウム系化合物粒子の製造方法を説明する。
【0053】
第一に、リン酸チタニウム系化合物は、四塩化チタンとリン酸を主原料として製造される。四塩化チタンを、水と炭素数1~4の脂肪族アルコールの混合溶液に混合して反応させる第一工程、第一工程で製造された反応溶液にリン酸を添加してリン酸チタニウム系化合物粒子の水/アルコール分散溶液を製造する第二工程、そして、リン酸チタニウム系化合物粒子を単離して洗浄する第三工程を経て製造される。
【0054】
第一工程において、水/アルコール混合溶液は、水を30~70体積%とし、四塩化チタンの添加量は、体積比で水/アルコール混合溶液100部に対して、0.01~30部の範囲とする。また、四塩化チタンと水/アルコールとを混合して反応させる際の反応温度及び環境の相対湿度は、それぞれ、0~35℃及び10~80%とする。この工程において、四塩化チタンの加水分解、脱水縮合反応が進み、ナノスケールの粒子状凝集体が生成されるが、反応温度が高すぎると、凝集体が大きくなり、最終生成物の平均粒子径を5~100nmとするためには、0~20℃の反応温度であることがより好ましい(非特許文献12及び13)。
【0055】
第二工程において、第一工程で製造された反応溶液を水/アルコール混合溶液等の溶剤で10~500倍に希釈した後、リン酸を添加して反応させる。ここで、リン酸の添加量は、体積比で、反応溶液100部に対して8~500部の範囲とする。この反応溶液に、0~35℃の温度でリン酸を添加すると、直ちに反応が生じ、リン酸チタニウム系化合物粒子が生成し、リン酸チタニウム系化合物粒子の水/アルコール分散溶液を得ることができる。ここで、リン酸の脱水縮合反応が生起し、四塩化チタンの加水分解、脱水縮合物と融合される(非特許文献14)が、粒子径に及ぼす影響は大きくない。
【0056】
第三工程において、第二工程で製造されたリン酸チタニウム系化合物の水/アルコール溶液が、遠心分離、常圧乾燥、減圧乾燥等の方法で単離され、固体として取り出される。第二工程で製造されたリン酸チタニウム系化合物の水/アルコール分散液は透明で、外観上、リン酸チタニウム系化合物が溶解しているように見えるが、四塩化チタンの加水分解、脱水縮合物にリン酸の脱水縮合反応によって融合したリン酸チタニウム系化合物は、四塩化チタンの加水分解、脱水縮合によって形成されたナノ粒子を維持しており、溶媒を除去すると、リン酸チタニウム系化合物粒子が得られる。そして、得られたリン酸チタニウム系化合物粒子は、純水及び/又は溶剤によって洗浄されることによって、副生成物等が除去され、感染防止及び消臭洗浄剤として好ましい生成物となる。
【0057】
第二に、ケイ酸チタニウム系化合物粒子は、四塩化ケイ素と四塩化チタンを主原料として製造される。四塩化ケイ素を、水と炭素数1~4の脂肪族アルコールの混合溶液に混合して反応させる第一工程、第一工程で製造された反応溶液に四塩化チタンを添加してケイ酸チタニウム系化合物粒子の水/アルコール分散溶液を製造する第二工程、そして、ケイ酸チタニウム系化合物粒子を単離して洗浄する第三工程を経て製造される。
【0058】
第一工程において、水/アルコール混合溶液は、水を30~70体積%とし、四塩化ケイ素の添加量は、水/アルコール混合溶液100部に対して、体積比で0.01~30部の範囲とする。また、四塩化ケイ素と水/アルコールとを混合して反応させる際の反応温度及び環境の相対湿度は、それぞれ、0~35℃及び10~80%とする。この工程において、四塩化ケイ素の加水分解、脱水縮合反応が進み、ナノスケールの粒子凝集体が生成されるが、四塩化チタン同様、反応温度が高すぎると、粒子径が大きくなり、最終生成物の平均粒子径を5~100nmとするためには、0~20℃の反応温度であることがより好ましい。
【0059】
第二工程において、第一工程で製造された反応溶液100部に四塩化チタンを体積比で8~100部添加し、反応温度及び環境の相対湿度を、それぞれ、0~35℃及び10~80%として反応させると、ケイ酸チタニウム系化合物粒子の水/アルコール分散溶液を得ることができる。この工程において、四塩化チタンの加水分解、脱水縮合反応が進み、四塩化ケイ素の加水分解、脱水縮合反応物と融合して、ケイ酸チタニウム系化合物が生成するが、反応温度が高すぎると、凝集体が大きくなるため、最終生成物の平均粒子径を5~100nmとするためには、0~20℃の反応温度であることがより好ましい(非特許文献12及び13)。
【0060】
第三工程において、第二工程で製造されたケイ酸チタニウム系化合物粒子の水/アルコール分散溶液が、遠心分離、常圧乾燥、減圧乾燥等の方法で単離され、固体として取り出される。生成されたケイ酸チタニウム系化合物は、TiO・SiOの化学組成を有する化合物である。第二工程で製造されたケイ酸チタニウム系化合物粒子の水/アルコール分散溶液は透明で、外観上、ケイ酸チタニウム系化合物が溶解しているように見えるが、四塩化ケイ素の加水分解、脱水縮合物に四塩化チタニウムの加水分解、脱水縮合反応によって融合したケイ酸チタニウム系化合物はナノ粒子を形成しており、溶媒を除去すると、ケイ酸チタニウム系化合物粒子が得られる。そして、得られたケイ酸チタニウム系化合物粒子は、純水及び/又は溶剤によって洗浄されることによって、副生成物等が除去され、感染防止及び消臭洗浄剤として好ましい生成物となる。
【0061】
第三に、ホウ酸チタニウム系化合物は、ホウ酸と四塩化チタンを主原料として製造される。ホウ酸を、水と炭素数1~4の脂肪族アルコールの混合溶液に混合して反応させる第一工程、第一工程で製造された反応溶液に四塩化チタンを添加してホウ酸チタニウム系化合物粒子の水/アルコール分散溶液を製造する第二工程、そして、ホウ酸チタニウム系化合物粒子を単離して洗浄する第三工程を経て製造される。
【0062】
第一工程において、水/アルコール混合溶液は、水を30~70体積%とし、ホウ酸の添加量は、水/アルコール混合溶液100部に対して、体積比で0.01~30部の範囲とする。また、ホウ酸と水/アルコールとを混合して反応させる際の反応温度及び環境の相対湿度は、それぞれ、20~50℃及び10~80%とする。ホウ酸とアルコールから生成したホウ酸アルキルが加水分解、脱水縮合反応を生起して、加水分解、脱水縮合物のナノスケールの粒子凝集体が生成する(非特許文献15)。
【0063】
第二工程において、第一工程で製造された反応溶液100部に四塩化チタンを体積比で8~100部添加し、反応温度及び環境の相対湿度を、それぞれ、0~35℃及び10~80%として反応させると、ホウ酸チタニウム系化合物粒子が生成し、ホウ酸チタニウム系化合物粒子の水/アルコール分散溶液を得ることができる。この工程において、四塩化チタンの加水分解、脱水縮合反応が進み、ホウ酸アルキルの加水分解、脱水縮合反応物と融合して、ケイ酸チタニウム系化合物が生成するが、反応温度が高すぎると、粒子径が大きくなるため、最終生成物の平均粒子径を5~100nmとするためには、0~20℃の反応温度であることがより好ましい(非特許文献12及び13)。
【0064】
第三工程において、第二工程で製造されたホウ酸チタニウム系化合物粒子の水/アルコール分散溶液が、遠心分離、常圧乾燥、減圧乾燥等の方法で単離され、固体として取り出される。生成されたホウ酸チタニウム系化合物は、TiO・Bの化学組成を有する化合物である。第二工程で製造されたホウ酸チタニウム系化合物粒子の水/アルコール分散溶液は透明で、外観上、ホウ酸チタニウム系化合物が溶解しているように見えるが、ホウ酸アルキルの加水分解、脱水縮合化合物に四塩化チタニウムの加水分解、脱水縮合反応によって融合したホウ酸チタニウム系化合物はナノ粒子を形成しており、溶媒を除去すると、ホウ酸チタニウム系化合物粒子が得られる。そして、得られたホウ酸チタニウム系化合物粒子は、純水及び/又は溶剤によって洗浄されることによって、副生成物等が除去され、感染防止及び消臭洗浄剤として好ましい生成物となる。
【0065】
このようにして製造されたリン酸チタニウム系化合物粒子、ケイ酸チタニウム系化合物粒子、及び、ホウ酸チタニウム系化合物粒子の混合物を、純水、純水とアルコールの混合溶媒、及び、電解水とアルコールの混合溶媒、並びに、多糖類、多糖類のアルカリ金属塩、第4級アンモニウム塩を有する高分子、及び、第4級アンモニウム塩を有する界面活性剤を溶解した純水、純水とアルコールの混合溶媒、及び、電解水とアルコールの混合溶媒に分散して感染防止及び消臭洗浄剤を製造方法は、特に限定されず、一般的な気中分散機及び液中分散機を用いることができるが、液中分散機が好ましい。例えば、ディスパー等の高速回転剪断型撹拌機、並びに、ボールミル、サンドミル、及び、アトライター等の媒体撹拌ミル、並びに、ホモジナイザー及びロールミルに代表されるコロイドミル、並びに、超音波分散機等が、媒体の粘度により選択して用いられる。
【0066】
なお、リン酸チタニウム系化合物粒子、ケイ酸チタニウム系化合物粒子、及び、ホウ酸チタニウム系化合物粒子の混合物を、純水、純水とアルコールの混合溶媒、及び、電解水とアルコールの混合溶媒、並びに、多糖類、多糖類のアルカリ金属塩、第4級アンモニウム塩を有する高分子、及び、第4級アンモニウム塩を有する界面活性剤を溶解した純水、純水とアルコールの混合溶媒、及び、電解水とアルコールの混合溶媒に分散した感染防止及び消臭洗浄剤は、微生物の繁殖を防止する成分を含んでいるが、水溶性保存料として、例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カルシウム、p-オキシ安息香酸アルキルエステル、プロピオン酸ナトリウム、及び、プロピオン酸カルシウム等、水溶性抗酸化剤として、例えば、L-アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、及び、クエン酸等を添加しておくことが好ましい。
【0067】
以上、本発明の感染防止及び消臭洗浄剤を説明してきたが、多種多様な洗浄剤の組合せがあると共に、使用方法及び使用目的に応じて様々な形態で利用することができる。
【0068】
例えば、上記分散液である感染防止及び消臭洗浄剤を保管し利用することができる。この場合には、そのまま、織布、不織布、ガーゼ、綿、スポンジ、及び、高吸水性樹脂、並びに、織布、不織布、ガーゼ、綿、スポンジ、及び、高吸水性樹脂から選択される二つ以上の複合体に含浸して、マスク、オムツ、靴下、包帯、ナプキン、及び、パンティライナー等と張り合わせて使用できるし、そのままウェットティッシュ及びお絞り等として、手足の洗浄、トイレや台所用品等の洗浄用シート等としても使用できる。また、マスク、オムツ、靴下、包帯、ナプキン、及び、パンティライナー等に吸収させて使用することもでき、タンポンに十分吸収させて、膣内洗浄剤としても使用できる。
【0069】
特に、様々な真菌、細菌、及び、ウィルスの感染防止に利用するためには、第4級アンモニウム塩を有する高分子を溶解させた、電解水又は電解水とアルコールとの混合溶媒に、リン酸チタニウム系化合物粒子、ケイ酸チタニウム系化合物粒子、及び、ホウ酸チタニウム系化合物粒子の混合物を分散させた感染防止及び消臭洗浄剤が効果的である。
【0070】
更に、ナプキン、パンティライナー、及び、タンポン等の生理用品として利用する場合には、第4級アンモニウム塩を有する高分子を溶解させた、電解水又は電解水とアルコールとの混合溶媒に乳酸を適量混合した混合溶媒に、リン酸チタニウム系化合物粒子、ケイ酸チタニウム系化合物粒子、及び、ホウ酸チタニウム系化合物粒子の混合物を分散させた感染防止及び消臭洗浄剤が一層効果的である。
【0071】
このような本発明の感染防止及び消臭洗浄剤の利用方法は、家庭として利用するには非常に便利である。この感染防止及び消臭洗浄剤をスプレーボトルに保管しておくだけで、手足に直接噴霧することもできるし、カーテン、敷物、寝具等を含めた生活用品、並びに、インナー、靴下、帽子、Tシャツ、及び、スポーツユニフォーム等の衣服及び身の回り品に噴霧するだけで、真菌、細菌、及び、ウィルスの感染防止機能及び消臭機能を付与することが可能である。
【0072】
しかし、感染防止及び消臭洗浄剤として保管するのではなく、リン酸チタニウム系化合物粒子、ケイ酸チタニウム系化合物粒子、及び、ホウ酸チタニウム系化合物粒子の混合物として保管して利用することも可能である。この場合、リン酸チタニウム系化合物粒子、ケイ酸チタニウム系化合物粒子、及び、ホウ酸チタニウム系化合物粒子の混合物を、純水、電解水、純水とアルコールとの混合溶媒、電解水とアルコールの混合溶媒に投入し、簡単な撹拌機で分散した後直ちに、織布、不織布、ガーゼ、綿、スポンジ、及び、高吸水性樹脂、並びに、織布、不織布、ガーゼ、綿、スポンジ、及び、高吸水性樹脂から選択される二つ以上の複合体に含浸して、マスク、オムツ、靴下、包帯、ナプキン、及び、パンティライナー等と張り合わせて使用できるし、そのままウェットティッシュ及びお絞り等として、手足の洗浄、トイレや台所用品等の洗浄用シート等としても使用できる。また、マスク、オムツ、靴下、包帯、ナプキン、及び、パンティライナー等に吸収させて使用することもでき、タンポンに十分吸収させて、膣内洗浄剤としても使用できる。
【0073】
また、本発明の感染防止及び消臭洗浄剤を、織布、不織布、ガーゼ、綿、スポンジ、及び、高吸水性樹脂、並びに、織布、不織布、ガーゼ、綿、スポンジ、及び、高吸水性樹脂から選択される二つ以上の複合体に含浸させたものを、外気と遮断可能な包装材料、例えば、ポリオレフィンフィルム、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、及び、ポリエチレンテレフタレートフィルム等、並びに、これらのフィルムとアルミニウム等の金属箔又は金属蒸着膜及びポリビニルアルコール等との積層体等、で包装したもので保管し、適宜利用することもできるし、製品として供給することもできる。
【0074】
特に、ウェットティッシュ、お絞り、オムツ、ナプキン、パンティライナー、及び、タンポン等は、このように、本発明の感染防止及び消臭洗浄剤を含浸させた織布、不織布、ガーゼ、綿、スポンジ、及び、高吸水性樹脂等、並びに、織布、不織布、ガーゼ、綿、スポンジ、及び、高吸水性樹脂等から選択される二つ以上の複合体を包装しておくことが安全衛生上好ましい。
【0075】
一方、本発明の感染防止及び消臭洗浄剤を含浸させる織布、不織布、ガーゼ、綿、スポンジ、及び、高吸水性樹脂等は使い捨てする消耗品であるため、近年の、環境保全及び持続可能な循環型社会を実現するためには、生分解性材料を使用することが好ましい。ガーゼや綿は、生分解性の天然のセルロース繊維等が使用されることが多いが、マスク、オムツ、及び、生理用品等に使用される、織布、不織布、スポンジ、及び、高吸水性樹脂等は、合成高分子を原材料とするものが多い。
【0076】
そこで、本発明の感染防止及び消臭洗浄剤を含浸させた衛生用品は、それを構成する織布、不織布、ガーゼ、綿、スポンジ、及び、高吸水性樹脂等が、次に示すような生分解性高分子を原料としていることを特徴としている。
【0077】
生分解性高分子としては、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)、ポリグリコライド(PGA)、及び、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、並びに、アセチルセルロース等のセルロース誘導体及びデンプン誘導体が好ましい。
【0078】
そして、織布、不織布、ガーゼ、及び、綿は、これらの高分子の成形加工された繊維を用いて製造され、スポンジは、これらの高分子が二酸化炭素等の発泡体と共に成形加工されて製造される。
【0079】
ただし、高吸水性樹脂は、上記生分解性高分子をそのまま適用するだけでは水分の吸収が不十分であるため、本発明の衛生用品は、次のような生分解性高吸水性樹脂を用いることを特徴としている。
【0080】
第一に、PLA、PHB、PHBH、PBS、PBSA、PBAT、PETS、PGA、及び、PCL、並びに、セルロース誘導体及びデンプン誘導体等の微粒子を、水溶性高分子であるポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリアクリルアミド、及び、ポリアルキレングリコール、並びに、セルロース誘導体のアルカリ金属塩及び多糖類等の水溶性高分子でゲル化した凝集体である高吸水性樹脂である。これらは、水溶性高分子が1~10重量%程度でよく、多孔体となっているため、吸水性に優れている。特に、生分解性高分子の微粒子をゲル化する際に、セルロース誘導体と共に、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物を用いて架橋した後、アルカリ金属塩として製造した生分解性を有する高吸水性樹脂であることが、水溶性高分子自体が吸水性であるが溶解することがなく、生分解性であるため、最も好ましい(非特許文献16及び17)。
【0081】
第二に、PLA、PHB、PHBH、PBS、PBSA、PBAT、PETS、PGA、及び、PCLのモノマーとアルキレングリコール及びグリセリンとの架橋共重合体粒子である高吸水性樹脂である(非特許文献18)。
【0082】
第三に、従来のポリアクリル酸塩系、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、及び、ポリエチレンオキシド系の高吸水性架橋粒子を製造する水溶液重合又は逆相懸濁重合法においてPLA、PHB、PHBH、PBS、PBSA、PBAT、PETS、PGA、及び、PCLの各粒子を分散して製造された、生分解性を有する高吸水性樹脂である。
【0083】
以上の生分解性を有する高吸水性樹脂は、組成及び製造方法によって吸水量を制御できるので、用途に応じた高吸水性樹脂を適宜用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0084】
本発明の感染防止及び消臭洗浄剤は、抗真菌活性、抗細菌活性、抗ウィルス活性、及び、消臭活性を有し、真菌、細菌、及び、ウィルスによってもたらされる食中毒及び汚染等を予防することを目的とした、キッチン用品及びトイレ用品等を洗浄する感染防止及び消臭洗浄剤、細菌及びウィルスによってもたらされる肺炎及びインフルエンザ等を予防することを目的とした、手、顔、鼻、口、及び、喉等を保護する感染防止及び消臭洗浄剤、真菌及び細菌によってもたらされる白癬症及びカンジダ症等を予防することを目的とした、手足及び陰部を清潔に保つ感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、細菌及び真菌によってもたらされる膣感染症を予防することを目的とした、健康な成人女性生殖器の内性器の膣及び外性器を清潔に保つ感染防止及び消臭洗浄剤として、それぞれ、優れた感染防止及び消臭効果を奏する。そのため、日常生活の中において、自分で身体を清潔にして管理し健康を維持する「セルフメディケーション」又は「パーソナルケア」に適しており、サニタリー用品、ベビー用品、介護用品、及び、生理用品等の分野の衛生用品として広く利用できる。そればかりか、手足に直接噴霧して、感染防止を図ることも、カーテン、敷物、寝具等を含めた生活用品、並びに、インナー、靴下、帽子、Tシャツ、及び、スポーツユニフォーム等の衣服及び身の回り品に噴霧するだけで、真菌、細菌、及び、ウィルスの感染防止機能及び消臭機能を付与することも可能である。
【0085】
特に、本発明の衛生用品は、本発明の感染防止及び消臭洗浄剤を含浸された織布、不織布、ガーゼ、綿、スポンジ、及び、高吸水性樹脂等で構成されており、これらの素材が生分解性高分子を原料として製造されているため、環境保全及び持続可能な循環型社会の実現の現代社会の要求に沿った衛生用品を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1】本発明の一実施形態にかかる、感染防止及び消臭洗浄剤が含浸され、生分解性の不織布製袋に内包されている生分解性を有する高吸水性樹脂を、生分解性のマスクのポケットに装着して、細菌及びウィルスによる肺炎及びインフルエンザ等の感染を防止する衛生用品の外観の概略模式図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる、一般的なベビー用紙オムツの綿状パルプに感染防止及び消臭洗浄剤を含浸して使用する方法を示すベビー用オムツ断面の概略模式図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる、一般的なアプリケーター式タンポンのタンポンに感染防止及び防臭洗浄剤を含浸した膣洗浄用品として利用する生理用品の断面の概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下、本発明の感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いた生活用品、並びに、衣服及び身の回り品をより分かり易く具体的に説明するため、感染防止及び消臭洗浄剤の一実施例を用いて説明すると共に、その洗浄剤をマスク、オムツ、及び、タンポンの衛生用品に適用した実施例を代表例として説明する。しかし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想によってのみ限定されるものである。
<リン酸チタニウム系化合物粒子の調製>
【0088】
リン酸チタニウム系化合物は、四塩化チタンを、水とプロピルアルコールの混合溶液に混合して反応させる第一工程、第一工程で製造された反応溶液にリン酸を添加してリン酸チタニウム系化合物粒子の水/アルコール分散溶液を製造する第二工程、そして、リン酸チタニウム系化合物粒子を単離する第三工程を経て製造された。
【0089】
第一工程において、水/アルコール混合溶液は、水を50体積%とし、四塩化チタンの添加量は、水/アルコール混合溶液100部に対して、体積比で10部の範囲とし、四塩化チタンと水/アルコールとを混合して反応させる際の反応温度及び環境の相対湿度は、それぞれ、0℃及び50%とした。第二工程において、第一工程で製造された反応溶液を水/アルコール混合溶液等の溶剤で250倍に希釈した後、この反応溶液100部に、体積比で250部のリン酸を添加して反応させてリン酸チタニウム系化合物粒子を生成した。そして、第三工程において、第二工程で製造されたリン酸チタニウム系化合物粒子の水/アルコール分散溶液の遠心分離により、リン酸チタニウム系化合物粒子が分離され、減圧乾燥を行ってリン酸チタニウム系化合物粒子が単離された。更に、水/プロピルアルコール混合溶媒で3回洗浄した後、減圧乾燥させてリン酸チタニウム系化合物粒子が作製された。このリン酸チタニウム系化合物の平均粒子径は、電子顕微鏡観察により、約50nmであった。
<感染防止及び消臭洗浄剤の調整>
【0090】
蒸留水485gに1-ブタノールを15g溶解した水/アルコール混合溶媒を作製した後、その混合溶媒96gに、カチオン性ポリビニルアルコールであるゴーセネックス(登録商標)K-434(三菱ケミカル(株)製)4gを溶解してリン酸チタニウム系化合物粒子の分散媒を作製した。
【0091】
この分散媒95gに、作製したリン酸チタニウム系化合物粒子5mgを投入し、ホモジナイザーで分散して、本発明の感染防止及び消臭洗浄剤を得た。リン酸チタニウム系化合物粒子の分散安定性は良好で、1か月以上沈降することはなかった。
【0092】
上記感染防止及び消臭洗浄剤は、一例であり、消臭効果をより必要とする場合、リン酸チタニウム系化合物粒子に、ケイ酸チタニウム系化合物粒子及び/又はホウ酸チタニウム系化合物粒子を所定量の重量比で、100:50~100:10の範囲で混在させることができる。また、ケイ酸チタニウム系化合物粒子及びホウ酸チタニウム系化合物粒子の両者を混在させる場合は、これらの配合は重量比で、100:10~100:50であることが好ましい。
【0093】
また、抗菌活性及び抗ウィルス活性という観点から蒸留水の代わりに、電解水、特に、微酸性電解水を用いることが好ましく、アルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、及び、1-ペンタノールを選択することができるが、1-ペンタノールを少量加えることがより好ましい。
【0094】
更に、リン酸チタニウム系化合物微粒子、ケイ酸チタニウム系化合物粒子、及び、ホウ酸チタニウム系化合物粒子の分散安定性、並びに、抗菌活性及び抗ウィルス活性を高めるために、第4級アンモニウム塩を有するポリビニルアルコールの代わりに、第4級アンモニウム塩を有する多糖類誘導体及び界面活性剤を使用することもできるが、特に、第4級アンモニウム塩を有する多糖類誘導体である、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、及び、ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウムを用いることがより好ましい。
【0095】
上記実施例では配合していないが、膣洗浄用品として使用する場合、膣内環境に等しいpH=3.5~4.5に調整するため、乳酸を感染防止及び消臭洗浄剤の約0.1~9.0重量%加えることがより好ましい。
【0096】
そして、水溶性保存料及び/又は水溶性抗酸化剤を、感染防止及び消臭洗浄剤の0.01重量%~1.0重量%添加してもよい。
<衛生用品の作製>
【0097】
図1に、本発明の一実施形態にかかる、感染防止及び消臭洗浄剤が含浸され、生分解性の不織布製袋に内包されている生分解性を有する高吸水性樹脂13を、生分解性のマスク1のポケット12に装着して、細菌及びウィルスによる肺炎及びインフルエンザ等の感染を防止する衛生用品の外観の概略模式図を示す。なお、当然のことながら、マスク1及び高吸水性樹脂13は、必ずしも生分解性であるものに限定されるものではなく、生分解性がない繊維を用いたマスク及び高吸水性樹脂であってもよい。
【0098】
作製した感染防止及び消臭洗浄剤を、生分解性の不織布製袋に内包されている生分解性を有する高吸水性樹脂13に含浸させ、マスク1に備えたポケット12に装着することによって、鼻口腔に細菌及びウィルスが侵入して、肺炎及びインフルエンザ等の感染を防止することができる。
【0099】
図2には、本発明の一実施形態にかかる、一般的なベビー用紙オムツ2のお尻と接触する、不織布等の表面材23に感染防止及び消臭洗浄剤を含浸して使用し、ベビー用紙オムツ2を装着した赤児や幼児の柔いお尻に繁殖する微生物から守る方法を示している。感染防止及び消臭洗浄剤を含浸するのは、表面材23だけでなく、吸水紙211、綿状パルプ212、及び、高吸水性樹脂213に、尿の吸収を阻害しない程度に含浸させてもよい。
【0100】
図3は、本発明の一実施形態にかかる、一般的なアプリケーター式タンポン3のタンポン31に感染防止及び防臭洗浄剤を含浸して膣洗浄用品として利用する生理用品の断面の概略模式図である。
【0101】
このように、タンポン3に感染防止及び防臭洗浄剤を含浸した膣洗浄用品を用いて、定期的に膣内を洗浄することによって、各種真菌や細菌の侵入による膣内感染症を予防することができると共に、膣内細菌叢均衡を保ち、膣感染症を予防することができる。この場合、特に、乳酸を感染防止及び消臭洗浄剤の約0.1~9.0重量%含有させて使用することが好ましい。
<評価>
【0102】
既に、リン酸チタニウム系化合物単独の抗真菌活性、抗細菌活性、及び、抗ウィルス活性のエビデンスは取れている。上記実施例のように、感染防止及び消臭剤を用いた予防衛生用品としてのマスク、オムツ、及び、タンポンの各種評価は継続中であり、時間を要するという特許出願における非実際的事情が存在するため、出願を優先して行った。ただし、消臭活性の有効性は、既に被験者の官能評価で確認されている。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の感染防止及び消臭膣洗浄剤、並びに、それを用いた衛生用品は、抗真菌活性、抗細菌活性、抗ウィルス活性、及び、消臭活性を有し、「セルフメディケーション」又は「パーソナルケア」を目的とする感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いた生活用品、並びに、衣服及び身の回り品に適用することができる。より具体的には、医療機関を利用することがないように、日常生活の中において、自分で身体を清潔にし、健康を維持するための、感染症を引き起こす病原体である真菌、細菌、及び、ウィルス等の人体への侵入を予防する感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いた衛生用品に利用可能である。特に、本発明は、真菌、細菌、及び、ウィルスによってもたらされる食中毒及び汚染等を予防することを目的とした、キッチン用品及びトイレ用品等を洗浄する感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いたタオルや雑巾等のサニタリー用品、細菌及びウィルスによってもたらされる肺炎及びインフルエンザ等を予防することを目的とした、手、顔、鼻、口、及び、喉等を保護する感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いたマスクや眼帯等の衛生用品、真菌及び細菌によってもたらされる白癬症及びカンジダ症等を予防することを目的とした、手足及び陰部を清潔に保つ感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いたガーゼや脱脂綿等の衛生用品、細菌及び真菌によってもたらされる膣感染症を予防することを目的とした、健康な成人女性生殖器の内性器の膣及び外性器を清潔に保つ感染防止及び消臭洗浄剤、並びに、それを用いたナプキンやタンポン等の生理用品等、幅広い分野に亘って利用することが可能である。
【0104】
しかし、これらに限定されるものではなく、カーテン、敷物、及び、寝具等の生活用品、インナー、靴下、帽子、Tシャツ、及び、スポーツユニフォーム、並びに、靴、鞄、及び、服飾品等の衣服及び身の回り品にも利用できることは言うまでもなく、ペット用のマット、トイレ、及び、衣服等の趣味娯楽用品、並びに、各種スポーツ用のグラブ及びマスク等の運動競技用品等にも利用できる。更には、化粧料、建築物、電子機器、プール、及び、汚水処理場等の抗菌剤及び抗ウィルス剤として応用できることが考えられ、本発明の産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0105】
1 生分解性マスク
11 耳掛け部
12 ポケット
13 生分解性を有する高吸水性樹脂が内包されている生分解性不織布製袋
2 ベビー用紙オムツ
21 吸水材
211 吸水紙
212 綿状パルプ
213 高吸水性樹脂
22 防水材
23 表面材
24 漏れ防止立体ギャザー
25 テープ
A おしり
3 アプリケーター式タンポン
31 タンポン
32 取出し紐
33 挿入用外筒
34 押出し用内筒
35 把持部
図1
図2
図3