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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091521
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】落下物防止壁
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/06 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
E01F15/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204400
(22)【出願日】2020-12-09
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108604
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 義人
(72)【発明者】
【氏名】蔵治 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】染谷 厚徳
(72)【発明者】
【氏名】引地 宏陽
(72)【発明者】
【氏名】宮野 学
(72)【発明者】
【氏名】北田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中原 圭仁
(72)【発明者】
【氏名】村上 祐一
【テーマコード(参考)】
2D101
【Fターム(参考)】
2D101CA07
2D101DA05
2D101EA01
2D101FA31
(57)【要約】
【課題】陰を作りにくく、美観に優れた落下物防止壁を提供する。
【解決手段】落下物防止壁100は、フレーム110を備えている。フレーム110は、棒状体を矩形に組んだものであり、両面が開口している。開口には、膜材120がテンションを入れた状態で張り渡されている。膜材120は日射透過性があり、日射透過率は80%以上であり、厚さは1.5mm以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高架の道路に沿って配される落下物防止壁であって、
両側面が開放された、棒状体を側面視矩形に組んだ形状に構成されたものを含むフレームと、
前記フレームの中に張り渡されている膜材と、
を有する落下物防止壁。
【請求項2】
前記膜材の引張破断時の伸度が、200~500%である、
請求項1記載の落下物防止壁。
【請求項3】
前記膜材には、張力が与えられている、
請求項1又は2記載の落下物防止壁。
【請求項4】
前記膜材は、透光性を有している、
請求項1から3のいずれかに記載の落下物防止壁。
【請求項5】
前記膜材の日射透過率が、80%以上である、
請求項4記載の落下物防止壁。
【請求項6】
前記膜材の厚さが、1.5mm以下である、
請求項1から3のいずれかに記載の落下物防止壁。
【請求項7】
前記フレームの前記道路に臨む、最も道路側の面が滑らかな連続面であり、前記膜材の前記道路に臨む面と、前記フレームの前記道路に臨む面とが滑らかな連続面を形成している、
請求項1から3のいずれかに記載の落下物防止壁。
【請求項8】
前記膜材の縁には、前記膜材の厚さよりも大きな厚さを有する肉厚部が設けられているとともに、
前記フレームには、前記膜材の厚さよりも大きく、且つ前記肉厚部の厚さよりも小さな幅とされ、その一端が開放されたスリットを有するとともに、前記スリットの他端と連通し、その内部に前記肉厚部を位置させることが可能な空間を持つ肉厚部収納部が設けられており、
前記フレームは、前記棒状体を側面視矩形に組んだ形状に構成されるフレーム本体と、4本の前記棒状体のそれぞれに取付けられる長尺材であり、前記肉厚収納部が設けられた前記フレーム本体に対して着脱自在な固定をなすことのできる肉厚部収納部材とを備えており、
且つ、4本の前記肉厚部収納部材のそれぞれにおける前記肉厚部収納部が持つ前記空間に、前記膜材の4辺の前記肉厚部を収納させるとともに、その肉厚部収納部が持つ前記スリットを前記膜材に通過させた状態で、前記肉厚収納部材のそれぞれを前記フレーム本体の棒状体にそれぞれ固定することにより、前記フレームに対する前記膜材の固定が行われるようになっている、
請求項1記載の落下物防止壁。
【請求項9】
前記スリットの前記一端は、前記道路に臨む側の面に開放されている、
請求項8記載の落下物防止壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高速道路でよく見られる高速道路に沿って設けられる、高速道路からの物の落下を防止する目的で用いられる落下物防止壁に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路は、その大半が高架とされている。また、一般道でも、立体交差部分等では、高架の構造が採用される。
高架の道路からは、様々なものが落下する可能性がある。例えば、道路の上に落ちているゴミが走行する車両と接触して跳ね飛ばされて、高架の道路から下に落下することがある。また、高架の道路上で車両を運転する者が窓からゴミを投げ捨てることも考えられ、その場合にもゴミが高架の道路から下に落下する。また、道路には水溜りができることがあり、その上を車両が通過した場合には、跳水が高架の道路から下に落下する。或いは、例えば、事故が起きた場合に、自動二輪車やその運転手が高架の道路から下に落下することがある。
これら落下物は、高架の道路の下にいる者にとって危険であるから、それら落下物の高架の道路からの落下を防ぐべきである。特に、自動二輪車の運転手の落下は、高架の道路の下にいる者のみならず、その運転手自身の身体、生命に重大な影響を与えかねないので、その防止がより強く望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の如き高架の道路からの物の落下を防ぐ目的で、高架の道路に沿って壁である落下物防止壁が設けられることがある。一般的に落下物防止壁は板によって構成される。板は通常透光性を有さない。したがって、かかる落下物防止壁を高架の道路の脇に設けると、太陽の角度にもよるが道路がその陰で暗くなる場合があり、また美観にも優れない。
また、板でできた落下物防止壁は、落下物の防止の機能を果たすけれども、例えば、事故が生じた場合における自動二輪車の運転手が落下物防止壁に当たった場合には、高架の道路から下方への落下は防げたとしても、落下物防止壁との接触それ自体が運転手の身体、生命に重大な影響を与えるおそれがある。
【0004】
本願発明は、陰を作りにくく、美観に優れ、且つ事故時の自動二輪車の運転手の身体、生命を守れる可能性を高めるような落下物防止壁を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために本願発明者は以下の発明を提案する。
本願発明は、高架の道路に沿って配される落下物防止壁である。そしてこの落下物防止壁は、両側面が開放された、棒状体を側面視矩形に組んだ形状に構成されているものを含むフレームと、前記フレームの中に張り渡されている膜材と、を有する。
この落下物防止壁は、板で作られた従来の落下物防止壁とは異なり、フレームを除けば基本的に膜材によって構成されることになる。膜材は透光性を与えやすい材料である。したがって、本願発明の落下物防止壁は、陰を作りにくく、また美観に優れる。加えて、膜材には一般に、少なくとも板と比較すれば伸びる性質があるため、事故が生じた場合において自動二輪車の運転手が落下物防止壁に当たった場合に生じる衝撃を、膜材の伸びによって吸収することができる。したがってこの落下物防止壁によれば、事故時の自動二輪車の運転手の身体、生命を守れる可能性が高くなる。
【0006】
本願発明の落下物防止壁に用いられる膜材は、織布、編布のいずれでも良く、また、それらの少なくとも一方の面を樹脂で被覆したものであっても良い。樹脂は例えば、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)その他のテフロン樹脂である。また、膜材は、織布、編布を含まないものであっても良い。その場合、膜材は、樹脂、例えば、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)その他のテフロン樹脂のみで構成されたフィルムとなる。
膜材は、これには限られないが、日射透過性を有していてもよい。それにより、高架の道路に落下物防止壁由来の陰ができることを防止し易くなるとともに、落下物防止壁の美観を向上させることが可能となる。膜材の日射透過性は、例えば、80%以上とすることができる。それにより、ガラスのような透明性があり、高速道路近隣への日照が得られ、運転者への圧迫感がなくなるという効果を得られる。
膜材は、必ずしもこの限りではないが、それらの厚さを1.5mm以下とすることができる。それにより、軽量であるため現場取付時に扱いやすくなるという効果を得られる。
これには限られないが、本願発明の落下物防止壁における前記膜材の引張破断時の伸度が、200~500%とすることができる。これによれば、事故時に膜材と接触した自動二輪車の運転手に対して、落下物防止壁が適度にクッション性を発揮することができ、事故時の自動二輪車の運転手の身体、生命を守れる可能性が高くなる。
これには限られないが、本願発明の落下物防止壁における前記膜材には、張力が与えられていてもよい。それにより、落下物防止壁のフレームと膜が構造的に一体化し安定するという効果を得られる。
フレームには、膜材にテンションを与えるための機構が含まれていても良いし、そうでなくても良い。
【0007】
本願の落下防止壁において、フレームに対してどのような手法で膜材を固定するかは不問である。また、フレームの中空の部分を塞ぐように膜材が張り渡される限りにおいて、両者の位置関係等の相互の関係性は自由に決定することができる。
例えば、前記膜材の縁には、前記膜材の厚さよりも大きな厚さを有する肉厚部が設けられているとともに、前記フレームには、前記膜材の厚さよりも大きく、且つ前記肉厚部の厚さよりも小さな幅とされ、その一端が開放されたスリットを有するとともに、前記スリットの他端と連通し、その内部に前記肉厚部を位置させることが可能な空間を持つ肉厚部収納部が設けられており、前記フレームは、前記棒状体を側面視矩形に組んだ形状に構成されるフレーム本体と、4本の前記棒状体のそれぞれに取付けられる長尺材であり、前記肉厚収納部が設けられた前記フレーム本体に対して着脱自在な固定をなすことのできる肉厚部収納部材とを備えており、且つ、4本の前記肉厚部収納部材のそれぞれにおける前記肉厚部収納部が持つ前記空間に、前記膜材の4辺の前記肉厚部を収納させるとともに、その肉厚部収納部が持つ前記スリットを前記膜材に通過させた状態で、前記肉厚収納部材のそれぞれを前記フレーム本体の棒状体にそれぞれ固定することにより、前記フレームに対する前記膜材の固定が行われるようになっていてもよい。
この場合における、長尺材である肉厚部収納部材は4本であり、それぞれが膜材の各辺に対応する。各肉厚部収納部材は、肉厚部収納部を備えている。フレームを、フレーム本体と、上述の肉厚部収納部を有する4本の肉厚部収納部材とから構成することとすると、各肉厚部収納部材における肉厚部収納部の空間に対して膜材の縁に沿って設けられた肉厚部を挿入した状態で、各肉厚部収納部材をフレーム本体に対して固定するだけで、膜材をフレームに対して固定することができるようになるので、膜材のフレームに対する着脱を簡単に行えることになる。また、フレーム本体と肉厚部収納部材との位置関係を適切に位置決めしてやることにより、フレーム本体に対して肉厚部収納部材を固定することによってフレームに固定された膜材に対して、自動的に適切なテンションを入れることが可能となる。
これには限られないが、肉厚部は、膜材の各辺のうち、例えば、四隅を除く膜材の全周にわたって設けられてもよい。これには限られないが、肉厚部収納部は、フレーム本体を構成する各棒状体と略同じ長さとすることができる。肉厚部、スリット、及び肉厚部収納部が持つ空間について既に述べた相互の関係は、フレームの肉厚部収納部の空間に膜材の肉厚部を収納させることが可能であり、且つ肉厚部収納部が持つ空間に収納された肉厚部を、肉厚部収納部の空間から取出せるけれども、その空間から簡単には脱落しないようにするという目的を達成するためのものである。その目的が達成される限り、肉厚部、スリット、及び肉厚部収納部が持つ空間の構成は、適宜決定することが可能である。例えば、肉厚部は、膜材の縁付近を折り返して膜材の縁を膜材の若干中央よりに縫製、溶着、接着等の適宜の手法で接続することによって形成された膜材の縁に沿う長い孔の中に、長尺のロープや、ゴム等でできた棒状体を通すなどして形成することができる。肉厚部の断面形状も自由であるし、肉厚部収納部が持つ空間は肉厚部の形状等に対応したものである必要もない。
本願の落下防止壁は、前記フレームの前記道路に臨む、最も道路側の面が滑らかな連続面であり、前記膜材の前記道路に臨む面と、前記フレームの前記道路に臨む面とが滑らかな連続面を形成していてもよい。フレームと膜材の道路に臨む面が滑らかな連続面となっていれば、落下防止壁の道路に臨む面に、道路に向かって突出する部分が存在しないことになるから、例えば、曲線道路で自動二輪車又は運転手が落下防止壁に衝突した場合において落下防止壁にせん断応力がはたらく事態が生じることを抑制することができるという効果が生じる。加えて、このような構造を採用すれば、道路側からの作業を行うだけでフレームに対する膜材の着脱を行うことが可能となるから、膜材の設置や交換を行う場合における作業性の向上という効果を得ることも可能となる。
フレーム及び膜材の道路に臨む面により構成される滑らかな連続面は、平面でも良いし、道路に沿って曲がる曲面であってもよい。
フレームと膜材の道路に臨む面を滑らかな連続面とするには公知、周知技術からも選択可能である。例えば、肉厚部を膜材の縁に設ける上述の構成を採用する場合には、以下のようにすることにより、フレームと膜材の道路に臨む面を滑らかな連続面とすることができる。
膜材の縁に肉厚部を、また、フレームを上述したようなフレーム本体及び肉厚部収納部材とから構成する場合においては、前記スリットの前記一端が、前記道路に臨む側の面に開放されている、という構成を採用することができる。こうすると、肉厚部収納部材がフレーム本体に固定されたときにおいて以下のような状態が生じる。つまり、例えば、膜材の側断面を考えればフレームの上側の棒状体に取付けられた肉厚部収納部材において道路に臨む面に開放されたスリットから出た膜材は、スリットから出た途端に下方に向けて曲折することになる。これにて、フレームの上側の棒状体において、同棒状体の道路に臨む面と膜材の道路に臨む面とが、滑らかな連続面になる。同様のことが、フレームの下側、右側、左側の部材でも生じるので、かかる手法を採用すると、フレーム及び膜材の道路に臨む面を簡単に滑らかな連続面とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本願の一実施形態における落下物防止壁の設置状態を示す平面図。
図2図1に示した落下物防止壁の平面視して直線的な部分の一部透視図を含む斜視図。
図3】変形例による落下物防止壁をその長手方向の中程で垂直に切断した場合における断面図。
図4】変形例による落下物防止壁におけるフレームの上側の部材及びその付近の膜材を、フレームの上側の部材の長さ方向の中程で切断した場合における断面図。
図5】変形例による落下物防止壁に取付けられる前の状態における膜材の四隅の1つを拡大して示す正面図。
図6】変形例における膜材に対する肉厚部収納部材の取付け方を説明するための正面図。
図7】他の変形例による落下物防止壁におけるフレームの上側の部材及びその付近の膜材を、フレームの上側の部材の長さ方向の中程で切断した場合における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0010】
図1は、この実施形態における落下物防止壁100の設置状態を示す平面図である。これには限られないがこの実施形態における落下物防止壁100は、高架とされた高速道路H沿いに建てられている。高速道路H沿いに限られず、落下物防止壁100は、高架とされた一般道に沿って設けることができる。落下物防止壁100は、ある程度長尺である。また、落下物防止壁100は高速道路Hに沿って平面視で直線状であっても良いし、平面視で曲折していてもよく、またそれらの組合せであってもよい。
これには限られないが、この実施形態における落下物防止壁100は、高速道路Hの両側に沿って建てられている。
【0011】
図2に高速道路Hの両側にある2つの落下物防止壁100のうちの片方の拡大図を示す。図1における落下物防止壁100は、高速道路Hに沿って平面視で湾曲していたが、図2では、落下物防止壁100のうちの平面視で直線状の部分を示している。
落下物防止壁100の長さをより長くしたいのであれば、図2に示した落下物防止壁100の長さをより長尺にしてもよいし、図2に示した落下物防止壁100を複数接続してもよい。
【0012】
落下物防止壁100は、フレーム110と膜材120とを備えている。フレーム110は、矩形に組まれた4本の棒状体を含んでいる。フレーム110の図2における前後は、開口している。フレーム110の高さは、従来の落下物防止壁の高さに倣えばよい。フレーム110は、4本の棒状体を組んで構成されていても良いし、他の構成、例えば一体物であっても良い。後述するフレーム本体も同様である。
膜材120は、横長で長尺の矩形形状をしている。フレーム110の開口と、膜材120とは、その大きさ、形状が略対応させられている。膜材120は、フレーム110の開口に嵌め込まれている。その状態で、フレーム110は、膜材120の4辺の縁を、例えばそれらの全長にわたって支持乃至固定する機能を有している。その機能が担保される限り、フレーム110はどのように構成されていてもよい。
フレーム110に対する膜材120の固定は、例えば、以下のようにして行うことができる。一例となるフレーム110の開口の内面には、膜材120の縁を挿入するための所定の深さの溝が開口の一周にわたって設けられている。そして、フレーム110の開口に嵌め込まれた膜材120は、その4辺の縁を図示を省略の上述の溝に挿入されている。その状態で、膜材120のうち溝に挿入された部分を、フレーム110を貫くボルトで貫き、そのボルトにナットを螺合させることで、膜材120をフレーム110に固定することができる。
どのような構成によりフレーム110に膜材120が固定されているにせよ、これには限られないが、膜材120にはテンションがかけられている。テンションの大きさは、例えば0.5~0.7kN/mとすることができる。フレーム110に固定した膜材120にテンションを入れるための方法は、公知或いは周知技術を用いることができる。膜材120にテンションが入れられる場合、フレーム110には、膜材120にテンションを入れることを目的とした構造が備えられていてもよいし、そうでなくても良い。
膜材120をフレーム110に固定する方法は公知、周知技術によることが可能であるが、例えば、ロール状に巻かれた膜材を巻き解きつつ展張しながら、フレーム110に対して連続して固定することができる。
【0013】
膜材120は、織布、編布のいずれでも良く、また、それらの少なくとも一方の面を樹脂で被覆したものであっても良い。樹脂は例えば、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)その他のテフロン樹脂である。また、膜材120は、織布、編布を含まないものであっても良い。その場合、膜材120は、樹脂、例えば、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)その他のテフロン樹脂のみで構成されたフィルムとなる。
膜材120は、これには限られないが、この実施形態では日射透過性を有している。それにより、高架の道路に落下物防止壁由来の陰ができることを防止し易くなるとともに、落下物防止壁の美観を向上させることが可能となる。膜材120の日射透過性は、例えば、80%以上とすることができる。
膜材120は、必ずしもこの限りではないが、それらの厚さを1.5mm以下とすることができる。
また、これには限られないが、この実施形態における膜材120の引張破断時の伸度は、200~500%とすることができる。
【0014】
以上のような落下物防止壁100は、高架の高速道路Hから落下物が下方に落ちるのを防ぐ。落下物が落ちるのを防ぐ機能は、膜材120が担う。落下物は、例えば、ゴミ、水溜りからの跳水、事故が生じた場合における自動二輪車やその運転手である。事故の際に運転手が落下物防止壁100に接触する場合、運転手は落下物防止壁100を構成する膜材120に接触する。そうすると、引張破断時の伸度が200~500%である膜材120が伸び、運転手が膜材120に当たったときの衝撃を吸収する。それにより、運転手の身体、生命が守られる。
【0015】
<変形例>
変形例に係る落下防止壁100は、上述の実施形態のものと殆ど変わらない。
変形例に係る落下防止壁100も落下防止壁100はフレーム110と膜材120とを備えている。図3に示すように、フレーム110の道路に臨む、最も道路側の面は平面である。図3において左側が道路側である。フレーム110の道路に臨む側の面の全体が平面であってもよいし、フレーム110の最も道路側の面が平面であるのであれば、その平面に、例えば、穴が穿たれていたり、溝が作られている等、道路側から退くような凹みがあったとしても構わない。そして、膜材120の道路に臨む面と、フレーム120の道路に臨む面とが面一となっていてもよい。フレーム110と膜材120の道路に臨む面が面一の平面となっていれば、落下防止壁100の道路に臨む面に、道路に向かって突出する部分が存在しないことになる。例えば、曲線道路で自動二輪車又は運転手が落下防止壁に衝突した場合において落下防止壁にせん断応力がはたらくような事態が生じることを抑制できるので、かかる落下防止壁100は安全性が高い。
【0016】
この場合において、フレーム110に対する膜材120の固定の仕方として以下のような手法を採用することができる。
まず、膜材120の縁には、膜材120の厚さよりも大きな厚さを有する肉厚部125が設けられている(図4)。肉厚部125は、膜材120の全周にわたって設けられてもよく、これには限られないがこの実施形態では、膜材120の四隅の部分を除いてそうされている。例えば、肉厚部125は、膜材120の縁付近を折り返して膜材120の縁を膜材120の若干中央よりに縫製、溶着、接着等の適宜の手法で接続することによって形成された膜材120の縁に沿う長い孔の中に、長尺のロープや、ゴム等でできた棒状体を通すなどして形成することができる。この実施形態では、肉厚部125を作るために用いられるのは、長尺のゴム製の棒状体126である。膜材120の縁部にロープを縫い付ける等しても肉厚部125を形成することが可能である。これには限られないがこの実施形態では、膜材120の四隅は、図5に示したように例えば円弧状に切り欠かれている。膜材120の各辺に沿って例えば膜材120を折り返して作られた長い孔の両端からは、これには限られないがこの実施形態では、棒状体126が僅かに覗いている。
他方、フレーム110の上下左右の棒状の部材のそれぞれの、例えば、内面(図4における下側)付近であって、道路に臨む側(図4における左側)に、フレーム110に沿う肉厚部収納部材114が取付けられる。肉厚部収納部材114は、これには限られないが、この実施形態では、フレーム110の4隅の部分を除いて、フレーム110の全周にわたって設けられる。また、これには限られないが、この実施形態では、その断面形状は、すべての部分で同一である。
肉厚部収納部材114は、フレーム110の一部をなす。正確にいうと、フレーム110のうちの肉厚部収納部材114を除いた部分がフレーム本体111であり、肉厚部収納部材114はそれとの組合せでフレーム110を成す。肉厚部収納部材114は、フレーム110の各辺に沿う長尺の部材、つまり長尺材であり、その長さ方向に沿って、後述する肉厚部収納部を備えている。これには限られないが、この実施形態における肉厚部収納部材114の長さ方向に垂直な断面は、その長さ方向のすべての部分で同一である。この実施形態における肉厚部収納部材114は、これには限られないが、全体として見れば角柱形状とされている。また、肉厚部収納部材114は、1本の長尺材である必要は無く、複数に分割されて構成されていてよい。
肉厚部収納部材114は、図4に示したような肉厚部収納部115を備えている。肉厚部収納部115は、スリット115Aと、空間115Bを備えている。スリット115Aは、フレーム本体111に取付けられたとき、フレーム110の道路に臨む側の面で開放されるように構成されている。スリット115Aの幅は、膜材120の厚さよりも大きく、且つ肉厚部125の厚さよりも小さな幅とされる。肉厚部収納部115における空間115Bはその内部に膜材120の肉厚部125を収納できるようにされており、この実施形態では、肉厚部125の断面よりも一回り大きい断面略円形の細長い穴とされている。
ここで、膜材120の各辺沿いに存在する肉厚部125は、その辺の長さに対応した長さを持つ肉厚部収納部材114の肉厚部収納部115における空間Bに押し込まれ収納される。つまり、膜材120の各辺における肉厚部125は、膜材120の一辺に相当する部分ずつ、肉厚部収納部材114が持つ肉厚部収納部115における空間Bに順に押し込まれていく(図6(A))。この作業は、例えば、膜材120の一辺の任意の一端側から他端側へと移動しつつある肉厚部収納部材114の肉厚部収納部115における空間115Bに、膜材120の肉厚部125を押し込んでいくことにより行うことができる。肉厚部収納部材114おける肉厚部収納部115の空間115Bに肉厚部125を押し込むとき、肉厚部収納部115のスリット115Bから膜材120が食み出た状態となるようにする。
最終的に膜材120のすべての辺に、肉厚部収納部材114が取付けられた状態となる(図6(B))。このとき、膜材120がスリット115Aを通った状態となっている。
肉厚部125を介して膜材120が肉厚部収納部材114に取付けられると、膜材120の肉厚部125は、フレーム110の肉厚部収納部115における空間125から簡単には脱落しない状態になる。
そして、この状態で、肉厚部収納部材114をフレーム本体111に固定して、フレーム110を完成させる。両者を固定する方法は、公知或いは周知の技術を用いれば十分である。例えば、ボルトとナットを用いて両者を着脱自在に固定することができる。フレーム本体111と肉厚部収納部材114との道路に臨む面は、滑らかな連続面、この実施形態ではこれには限られないが、一連の平面を成すように構成されている。
フレーム本体111に肉厚部収納部材114を固定することにより、膜材120はフレーム110に固定される。このとき、例えば、図4に示したように、フレーム110の上側の部材において道路に臨む面に開放されたスリットから出た膜材120は、スリットから出た途端に下方に向けて曲折することになる。これにて、フレーム110の上側の部材において、同部材の道路に臨む面と膜材120の道路に臨む面とが、滑らかな連続面になる。同様のことが、フレーム110の下側、右側、左側の部材でも生じるので、かかる手法を採用すると、フレーム110及び膜材120の道路に臨む面を簡単に滑らかな連続面とすることができる。しかも、膜材120のフレーム110に対する着脱は容易であるし、道路側からの作業にも向いている。
また膜材120の大きさと、フレーム110(より正確には、フレーム本体111及び肉厚部収納部材114の大きさとを適切な関係にしておけば、肉厚部収納部材114をフレーム本体111に取付けた時点で、フレーム110に取付けられた膜材120に対して、所望のテンションを与えることも可能となる。
肉厚部125、スリット115A、及び肉厚部収納部115が持つ空間115B相互の関係は、フレーム110の肉厚部収納部115が持つ空間115Bに膜材120の肉厚部125を収納させることが可能であり、且つ肉厚部収納部115の空間115Bに収納された肉厚部125を、肉厚部収納部115の空間から取出せるけれども、簡単には脱落しないようにするという目的を達成するためのものである。その目的が達成される限り、肉厚部125、スリット115A、及び肉厚部収納部115が持つ空間115Bの構成は、適宜決定することが可能である。
【0017】
上述した変形例において、肉厚部収納部材114が備える肉厚部収納部115のスリット115Aは、肉厚部収納部材114がフレーム本体111に固定されたときにおいて、肉厚部収納部材114の道路に臨む側の面で開放されていた。もっとも、スリット115Aは他の方向に開放されてもよい。例えば、フレーム本体111のある辺に相当する棒状体に固定される肉厚部収納部材114におけるスリット115Aは、フレーム本体におけるその辺に対向する辺に向けて開放されていても良い(図7)。
このような構成を採用した場合には、スリット115Aを開口させる位置によってはフレーム110及び膜材120の道路に臨む面を滑らかな連続面とすることができるという効果は失われる場合があるものの、道路側からの作業により簡単にフレーム110に対して膜材120の着脱を行えるとう効果と、肉厚部収納部材114をフレーム本体111に取付けた時点で、フレーム110に取付けられた膜材120に対して、所望のテンションを与えることが可能となるという効果は維持される。
【符号の説明】
【0018】
100 落下物防止壁
110 フレーム
120 膜材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7