(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091599
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ボトルネック可視化装置及びボトルネック可視化方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20120101AFI20220614BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20220614BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G06Q10/08
B65G61/00 542
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204518
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】富山 伸司
(72)【発明者】
【氏名】吉成 有介
(72)【発明者】
【氏名】小原 敏之
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA47
3C100BB04
3C100BB12
3C100BB21
3C100BB31
5L049AA16
5L049CC51
(57)【要約】
【課題】多種・多数の設備によって実行される作業に対して、複雑なシミュレーションを実行することなく、物流停滞状態を可視化するための、ボトルネック可視化装置及びボトルネック可視化方法を提供する。
【解決手段】ボトルネック可視化装置は、荷物搬送を行う運搬車両、荷物を保管する置場及び荷物の移載を行う荷役設備に関する情報である設備情報及び搬送される荷物に関する情報である出荷予定製品情報に基づいて、荷物移動の作業の情報である作業情報を生成する作業生成部と、荷物移動の作業をグループに分けて、使用される荷役設備を割り当てることによって作業スケジュールを生成する作業計画部と、作業スケジュールをシミュレートするシミュレーション部と、荷役設備が使用される作業の先行後続関係を考慮して判定されるボトルネックの情報を含む設備シミュレーション情報を表示するシミュレーション情報出力部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の搬送元から複数の搬送先への荷物移動の作業のボトルネックを可視化するボトルネック可視化装置であって、
荷物搬送を行う運搬車両、荷物を保管する置場及び荷物の移載を行う荷役設備に関する情報である設備情報及び搬送される荷物に関する情報である出荷予定製品情報に基づいて、前記荷物移動の作業の情報である作業情報を生成する作業生成部と、
前記設備情報、前記出荷予定製品情報及び前記作業情報を取得して、前記荷物移動の作業をグループに分けて、使用される前記荷役設備を割り当てることによって作業スケジュールを生成する作業計画部と、
前記作業計画部によって生成された作業スケジュール又は入力として与えられた作業スケジュールをシミュレートするシミュレーション部と、
シミュレーション結果に基づいて、前記荷役設備が使用される作業の先行後続関係を考慮して判定されるボトルネックの情報を含む設備シミュレーション情報を表示するシミュレーション情報出力部と、を備える、ボトルネック可視化装置。
【請求項2】
前記運搬車両は、荷物積載部と牽引部に分離可能な構造であって、
前記作業計画部は、使用可能な前記牽引部と前記荷物積載部を1つの設備群にまとめて、グループに分けられた作業に割り付ける、請求項1に記載のボトルネック可視化装置。
【請求項3】
前記シミュレーション部は、前記荷役設備のサイクルタイムを、前記置場の在庫量に基づいて決定する、請求項1又は2に記載のボトルネック可視化装置。
【請求項4】
前記設備シミュレーション情報は、作業待ちが発生している設備、作業待ちの時間及び作業待ちの原因の少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のボトルネック可視化装置。
【請求項5】
前記シミュレーション情報出力部は、先行後続作業との稼働率の差異が設定値以上であることを選択基準として、ボトルネックとして表示する対象を選択する、請求項4に記載のボトルネック可視化装置。
【請求項6】
前記シミュレーション情報出力部は、累積作業実行数の差についての今後時間帯での最大値を指標として、その指標の減少量が設定値以上になる時間帯の作業を表示する対象として選択する、請求項4に記載のボトルネック可視化装置。
【請求項7】
前記シミュレーション情報出力部は、先行作業で同種の設備を使用している作業の数を選択基準として、表示する対象を選択する、請求項4に記載のボトルネック可視化装置。
【請求項8】
前記設備情報を保存する設備情報データベースと、
前記出荷予定製品情報を保存する荷物情報データベースと、
前記作業情報を保存する作業情報データベースと、をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のボトルネック可視化装置。
【請求項9】
複数の搬送元から複数の搬送先への荷物移動の作業のボトルネックを可視化するボトルネック可視化方法であって、
荷物搬送を行う運搬車両、荷物を保管する置場及び荷物の移載を行う荷役設備に関する情報である設備情報及び搬送される荷物に関する情報である出荷予定製品情報に基づいて、前記荷物移動の作業の情報である作業情報を生成するステップと、
前記設備情報、前記出荷予定製品情報及び前記作業情報を取得して、前記荷物移動の作業をグループに分けて、使用される前記荷役設備を割り当てることによって作業スケジュールを生成するステップと、
前記作業スケジュールを生成するステップにおいて生成された作業スケジュール又は入力として与えられた作業スケジュールをシミュレートするステップと、
シミュレーション結果に基づいて、前記荷役設備が使用される作業の先行後続関係を考慮して判定されるボトルネックの情報を含む設備シミュレーション情報を表示するステップと、を含む、ボトルネック可視化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボトルネック可視化装置及びボトルネック可視化方法に関する。本開示は、特に、複数の搬送元から複数の搬送先に荷物を移動する際に作業の流れが滞るボトルネックを可視化するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に製造業において工場で製造された製品は梱包後、運搬車両及びAGV等の台車を用いて製品置場(製品ヤード及び倉庫)まで移動され、出荷日まで製品置場で保管される。出荷日になると、製品は置場から取り出された後、運搬車両及び運搬船に荷役設備によって積み込まれて顧客及び物流センター等に搬送される。一般に出荷日までの工場内の製品移動は、出荷後の製品移動に比べると移動距離及び移動時間が短いという特徴がある。出荷後の製品移動に関しては、客先及び物流センターへの移動時間が他の作業(例えば、運搬車両及び運搬船への積み込み荷役作業)に比べて非常に長いため、移動時にどのような経路を選択するかということが物流効率化及び物流能力増強のための大きな要因となり、その移動経路選択方法に焦点を当てて物流計画を立てることが多い。しかしながら工場内の移動においては、各設備の荷役作業及び運搬作業の処理時間に大きな差がないため、どの作業が物流全体の遅延を引き起こしているのか判別しにくい状況が発生しやすい。大規模な工場になると、多数・多種の設備が同時並行で運搬作業と荷役作業を行っており、各設備が作業を連携して製品が動かされていく。このため、例えば各作業の終了タイミングがずれることなどによって設備の待機状態が発生し、それが他作業の遅延を連鎖的に引き起こし全体設備での大きな遅延へとつながっていくことがある。このような遅延を防ぐためには、事前に生産計画が遅延を起こしにくいものか確認したり、操業途中で遅延が発生した際に原因究明を行ったりすることが重要である。しかし、多数の設備が工場内で動いている場合には人手でそのようなことを実行するのは困難である。
【0003】
このような課題について、設備全体での作業進行を計算機によってシミュレートし、その結果を操業に反映させる技術が過去に提案されてきた。
【0004】
特許文献1は、処理装置間でのワークを搬送する搬送車に関するシミュレーションシステムに関する技術である。搬送車のスケジュールを作成後、シミュレーションを実行して搬送車間の干渉を事前に確認し、その後で干渉を回避するようにスケジュールを修正する手法が提案されている。
【0005】
また特許文献2は、半導体工場の処理工程ラインのレイアウトを決定するためのシミュレーションに関する技術である。複雑な製造工程を再現したシミュレーションでは計算時間がかかるため、対象を単純化してシミュレーション時間の短縮を実現している。特許文献2の技術は、処理装置を頂点、搬送路を辺とするグラフで対象を表現して、線形計画法によって搬送区間毎の単位時間あたりの搬送量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-049500号公報
【特許文献2】特開2017-117397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1は、搬送車をターゲットとしてその運行経路上での干渉を回避することを目的とした技術である。特許文献1の技術において、ワークの荷役はすなわち搬送車への乗せ下ろし作業である。荷役作業中に搬送車は停止しており、荷役作業が搬送車のスケジュールに組み込まれる。
【0008】
それに対して、荷物積載部と牽引部が分離可能な運搬車両を用いた操業では、運搬車両による運搬作業と荷役作業を独立して行うことができる。すなわち荷物を荷物積載部に乗せ下ろししている最中にも、運搬車両は別の荷物を載せた荷物積載部を運ぶことが可能である。この様に異なる設備の作業が連携して操業を行う(同じ荷物を連続して異なる設備が扱う)場合、各作業が終了する時刻によっては設備に待ちが生じて作業遅延が発生し、それが設備間で影響を与え合い、待ちが連鎖的に伝わっていく状況が発生しやすい。このような構造の運搬車両設備を含む物流システムのシミュレーションを行う場合、各設備の作業が影響し合うために下記の難しい点がある。
・各設備の作業スケジュールの作成、修正処理が複雑になる。
・設備の待ちが発生した原因が特定しづらい。
【0009】
特に設備の待ちが発生した場合、原因となるものとしては下記が考えられ、それを判定すること自体も困難である。
[原因1]生産、船積作業が悪天候等のため計画通りに実行できなかった(先行、後続するプロセスの外乱影響)
[原因2]設備の作業計画が負荷分散をできていない(計画不備による局所的、一時的な作業負荷集中)
[原因3]作業量自体が設備能力を超えていた(設備能力)
【0010】
また物流システムに荷物保管のための置場があり、この置場において荷物を段積みしていて荷役作業に制約がある場合には、現実の操業においてはどの置場に荷物を置くか、段積みの制約を考慮して荷物を別の荷物の上に重ねておくか等を決めるための荷役ルールが必要となる。荷役ルールは複雑な操業制約を考慮する必要があり、操業制約が変更になるたびに修正を行わなければならないため、シミュレーションプログラムの実装を複雑なものにしてしまう問題がある。
【0011】
特許文献2は、対象設備をグラフモデルの形式に単純化することによって、複雑な対象のシミュレーションを可能にする技術である。しかし、特許文献2は、各経路での運搬負荷についてのみ着目しているものであるため、前述のような別設備が影響を与え合って待ち時間が発生するような状況をシミュレーションで再現することができない。
【0012】
また複数種の設備が互いに影響を与え合っている場合、シミュレーションを実行するだけでは作業間の因果関係が複雑でありボトルネックの原因を見つけることが難しい。この課題に対処するためには、ボトルネックを発生させている主原因を発見しやすくするような仕組みが必要であるが、特許文献1及び特許文献2はそのような仕組みについて開示するものでない。
【0013】
また一般に多くの設備が関連する生産・物流操業で計算機シミュレーションを行う場合、一時的に発生した各種の操業状態変更によってシミュレーション結果と実際の操業の結果が異なる状況が発生しやすい。
【0014】
これらの操業状態変更には、設備の小さなトラブル、シミュレーション対象設備範囲外での操業変更、天候要因、人手作業の不安定さによる遅れ又は進みがある。これら操業状態変更は事前に予測することが難しい。また、シミュレーションプログラムの中に組み込もうとするとプログラムが複雑化し、組み込んでも精度は高くならないという問題があった。
【0015】
以上の問題を解決すべくなされた本開示の目的は、多種・多数の設備によって実行される作業に対して、複雑なシミュレーションを実行することなく、物流停滞状態を可視化するための、ボトルネック可視化装置及びボトルネック可視化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の一実施形態に係るボトルネック可視化装置は、
複数の搬送元から複数の搬送先への荷物移動の作業のボトルネックを可視化するボトルネック可視化装置であって、
荷物搬送を行う運搬車両、荷物を保管する置場及び荷物の移載を行う荷役設備に関する情報である設備情報及び搬送される荷物に関する情報である出荷予定製品情報に基づいて、前記荷物移動の作業の情報である作業情報を生成する作業生成部と、
前記設備情報、前記出荷予定製品情報及び前記作業情報を取得して、前記荷物移動の作業をグループに分けて、使用される前記荷役設備を割り当てることによって作業スケジュールを生成する作業計画部と、
前記作業計画部によって生成された作業スケジュール又は入力として与えられた作業スケジュールをシミュレートするシミュレーション部と、
シミュレーション結果に基づいて、前記荷役設備が使用される作業の先行後続関係を考慮して判定されるボトルネックの情報を含む設備シミュレーション情報を表示するシミュレーション情報出力部と、を備える。
【0017】
また、本開示の一実施形態に係るボトルネック可視化装置は、
前記運搬車両は、荷物積載部と牽引部に分離可能な構造であって、
前記作業計画部は、使用可能な前記牽引部と前記荷物積載部を1つの設備群にまとめて、グループに分けられた作業に割り付ける。
【0018】
また、本開示の一実施形態に係るボトルネック可視化装置は、
前記シミュレーション部は、前記荷役設備のサイクルタイムを、前記置場の在庫量に基づいて決定する。
【0019】
また、本開示の一実施形態に係るボトルネック可視化装置は、
前記設備シミュレーション情報は、作業待ちが発生している設備、作業待ちの時間及び作業待ちの原因の少なくとも1つを含む。
【0020】
また、本開示の一実施形態に係るボトルネック可視化装置は、
前記シミュレーション情報出力部は、先行後続作業との稼働率の差異が設定値以上であることを選択基準として、ボトルネックとして表示する対象を選択する。
【0021】
また、本開示の一実施形態に係るボトルネック可視化装置は、
前記シミュレーション情報出力部は、累積作業実行数の差についての今後時間帯での最大値を指標として、その指標の減少量が設定値以上になる時間帯の作業を表示する対象として選択する。
【0022】
また、本開示の一実施形態に係るボトルネック可視化装置は、
前記シミュレーション情報出力部は、先行作業で同種の設備を使用している作業の数を選択基準として、表示する対象を選択する。
【0023】
また、本開示の一実施形態に係るボトルネック可視化装置は、
前記設備情報を保存する設備情報データベースと、
前記出荷予定製品情報を保存する荷物情報データベースと、
前記作業情報を保存する作業情報データベースと、をさらに備える。
【0024】
本開示の一実施形態に係るボトルネック可視化方法は、
複数の搬送元から複数の搬送先への荷物移動の作業のボトルネックを可視化するボトルネック可視化方法であって、
荷物搬送を行う運搬車両、荷物を保管する置場及び荷物の移載を行う荷役設備に関する情報である設備情報及び搬送される荷物に関する情報である出荷予定製品情報に基づいて、前記荷物移動の作業の情報である作業情報を生成するステップと、
前記設備情報、前記出荷予定製品情報及び前記作業情報を取得して、前記荷物移動の作業をグループに分けて、使用される前記荷役設備を割り当てることによって作業スケジュールを生成するステップと、
前記作業スケジュールを生成するステップにおいて生成された作業スケジュール又は入力として与えられた作業スケジュールをシミュレートするステップと、
シミュレーション結果に基づいて、前記荷役設備が使用される作業の先行後続関係を考慮して判定されるボトルネックの情報を含む設備シミュレーション情報を表示するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、多種・多数の設備によって実行される作業に対して、複雑なシミュレーションを実行することなく、物流停滞状態を可視化するための、ボトルネック可視化装置及びボトルネック可視化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るボトルネック可視化装置で対象とする出荷設備の構成例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係るボトルネック可視化装置の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るボトルネック可視化方法の処理ステップを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、搬出可能荷物の抽出結果を例示する図である。
【
図6】
図6は、出荷製品情報の抽出結果を例示する図である。
【
図7】
図7は、運搬ロット情報を例示する図である。
【
図8】
図8は、運搬ロット情報から生成された作業を例示する図である。
【
図9】
図9は、天井クレーンによる岸壁への製品搬出での作業を例示する図である。
【
図10】
図10は、岸壁搬出のための運搬ロット生成例を示す図である。
【
図11】
図11は、運搬車両による岸壁搬出のための積み込み作業例を例示する図である。
【
図15】
図15は、ガントチャートと対応する累積作業実行数を例示する図である。
【
図16】
図16は、今後累積作業実行数最大値のグラフを示す図である。
【
図17】
図17は、ボトルネックの別の表示例を示す図である。
【
図18】
図18は、ボトルネックのさらに別の表示例を示す図である。
【
図19】
図19は、シミュレーション結果と実績の比較表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係るボトルネック可視化装置及びボトルネック可視化方法が説明される。
【0028】
図1は、本実施形態に係るボトルネック可視化装置で対象とする出荷設備の構成例を示す模式図である。この設備で扱われる荷物は鉄鋼製品であるコイルである。荷物移動設備は大きく分けて荷役設備及び運搬設備に分類される。荷役設備は天井クレーン及び船積クレーンである。運搬設備は運搬車両である。
【0029】
工場内で製造された製品は、後述する運搬車両によって製品倉庫内に搬入される。倉庫は出荷まで製品を一時的に保管しておくためのバッファの役割を担っており、運搬船が停泊する出荷バースに沿って並べられている。倉庫は複数の棟(建屋)が隣接する形で構成されており、各棟には1基ずつ天井クレーン及び運搬車両が進入するためのエリア(以下、車両搬入出間口)が設置されている。天井クレーンは運搬車両で運ばれてきた製品を棟内に移動したり、出荷が近づいた製品を出荷バースに搬出したりするために用いられる。また、ある製品を積み込む運搬船が、その製品を保管する倉庫棟から遠くにある場合には、その製品を運搬車両に乗せ、その運搬車両によって、運搬船が停泊している出荷バースまで製品を移動させる。
【0030】
図2は運搬車両の構造を示す。運搬車両は荷物積載部と牽引部が分離可能な構造となっている。牽引部は工場で製品が載せられた荷物積載部を積み込んで、指示された倉庫まで荷物積載部を運搬する。牽引部は倉庫に到着すると、車両搬入出間口に進入して間口内に荷物積載部を下ろす。荷物積載部を下ろすと牽引部は、同じ間口に置かれている別の荷物積載部を積み込むか、若しくは間口から退出し、他の荷物積載部を運搬するため荷物積載部が置かれている別の間口まで移動する。倉庫に置かれた荷物積載部の上に乗せられた製品は、天井クレーンによって倉庫の中に移動させられる(これを入庫と呼ぶ)。荷物積載部の全ての製品が倉庫内に移動されると、牽引部が空の荷物積載部を間口から搬出する。この牽引部は、間口まで荷物積載部を運んできた牽引部と別のものであってよい。
【0031】
牽引部と荷物積載部が分離可能な構造であるため、牽引部の運搬作業(走行)と、荷物積載部への荷役作業を並行して実行することが可能になっている。一般のトラック等のように牽引部と荷物積載部が分離できない構造の車両では、荷役作業中に車両は停止している必要があるが、そのような車両に比べて分離可能な車両では効率的な運搬が可能になる。
【0032】
一方で分離可能な車両の運搬作業は、他の運搬車両作業の影響を受けやすいという特徴もある。これは、同じ荷物積載部を複数の牽引部が使用するためであり、例えばある製品を載せた荷物積載部P1を牽引部V1が工場から倉庫へ運搬し、その後に倉庫で製品を下ろし終わった荷物積載部P1を牽引部V2が、別の製品を乗せてもらうため工場へ運搬するような操業を行うためである。この場合には、牽引部V1の作業が遅れていて荷物積載部P1の運搬が遅れた場合、その遅れが倉庫での荷役(下ろし)作業及びその後の牽引部V2の作業遅れを連鎖的に発生させることになる。また同じ工場及び倉庫の車両搬入出間口に、複数の牽引部及び荷物積載部が入ってくるため、
図1で示した出荷設備は、各設備の作業遅れが互いに影響しやすい操業となっている。
【0033】
遅れが連鎖的に影響し合う場合、従来、操業中にその根本原因を知ることは難しかった。本実施形態に係るボトルネック可視化装置は、作業遅延原因を、操業担当者及び計画作成者などの使用者に見せることによって、その原因解決に寄与する。
【0034】
図3はボトルネック可視化装置の構成例を示す。ボトルネック可視化装置は、後述する作業情報を生成する作業生成部と、作業スケジュールを生成する作業計画部と、作業スケジュールをシミュレートするシミュレーション部と、ボトルネックの情報を含む設備シミュレーション情報を表示するシミュレーション情報出力部と、を備える。ボトルネック可視化装置は、運搬車両、天井クレーン及び船積クレーンの通信装置と通信して、これらの設備の稼働情報を含む情報を取得することができる。また、ボトルネック可視化装置は、計画修正入力部から計画の修正に関する情報を取得する。ボトルネック可視化装置は、計画修正入力部を備える構成であってよい。本実施形態において、ボトルネック可視化装置は、さらに情報保存装置を備える。情報保存装置は、計画作成及びシミュレーション実行の際に必要な情報を保存する機器であり、3つのデータベースシステムを含んで構成されている。各データベースが保存する情報を以下に示す。
[1]設備情報データベース:荷物搬送を行う運搬車両、荷物を保管する置場及び荷物の移載を行う荷役設備に関する情報である設備情報を保存
・稼働情報:設備(運搬車両、クレーン)の台数、現在位置、休止・メンテナンスに関する情報
・設備仕様:クレーンサイクルタイム、走行速度、最大搬送重量、容量(倉庫及び置場)
[2]荷物情報データベース:搬送される荷物に関する情報である出荷予定製品情報などを保存
・製品仕様情報:幅、外径、重量、納品先、鋼種、品質グレード
・製品進捗情報:現在位置、移動履歴(搬送元、搬送先、到着時刻、使用設備)
・工場梱包予定情報:工場で完成した製品が梱包完了、倉庫への搬出される予定
・出荷予定製品情報:使用する運搬船、船倉、バース、船積クレーン、船積順、船積予定時刻
[3]作業情報データベース:必要な荷物移動の作業である作業情報を保存
・完了作業リスト:対象製品、使用設備、搬送元、搬送先、開始時刻、終了時刻
・実行作業計画:実際に各設備が行う作業計画
・シミュレーション計画:シミュレーションで実施する作業計画
・シミュレーション実行ルール(実行作業選択ルール等)
【0035】
情報保存装置の各データベースの内容は、各設備の作業が進捗するのに従って更新される。運搬車両は、担当した運搬作業が開始・終了、若しくは設定されたポイントを通過するなどした際に、運搬車両上に設置された通信装置からその情報を、情報保存装置に送信してよい。情報保存装置は送られてきた情報に従って各データベースの更新を行ってよい。天井クレーン、船積クレーンについても通信装置が設置されており、クレーンの移動開始・終了、荷物の積載、下ろしの時点でその情報を情報保存装置に通信してよい。
【0036】
本実施形態に係るボトルネック可視化装置は、実行開始信号を装置に送信することによって処理を開始する。実行開始信号は、例えば下記のタイミングで送信される。
(タイミング1)装置の作業計画が完成したタイミング(作業開始前)
(タイミング2)作業中に大きな待ちが発生したタイミング(装置の使用者が手動で信号を送る場合を含む)
【0037】
タイミング1における実行は、例えば計画実行時に発生する待ちの状況、設備能力の不足の確認等に用いられ、タイミング2における実行では、実行中に発生している待ちの原因分析に用いられる。
【0038】
図4は処理ステップのフローチャートを示す。各ステップの処理概要は以下のとおりである。
・STEP1(S1):作業生成部が情報保存装置内の3種類のデータベースから必要なデータを抽出(収集)
・STEP2(S2):作業生成部が、抽出したデータに基づいて可視化対象になる時間帯における各設備の作業及び制約条件を生成
・STEP3(S3):シミュレーション計画作成部が、STEP2で生成した作業の計画を作成
・STEP4(S4):シミュレーション部が、生成した作業計画に従って計算機シミュレーションを実施
・STEP5(S5):シミュレーション情報出力部が、計算されたシミュレーション結果に基づいて、ボトルネックに関する情報を表示
・STEP6(S6):ボトルネック情報を参考にして、本装置の使用者が作業計画を修正
【0039】
STEP1では、各設備の作業を生成するために必要なデータを各データベースから収集する。
【0040】
まず、工場から倉庫への荷物移動の作業情報の生成のため、荷物情報データベースの工場梱包予定情報と製品仕様情報から、運搬する製品の情報について必要な項目が抽出される。
図5は抽出結果の例を示す。各製品について、製品サイズ(幅、外径、重量)、納品先(顧客)、搬出工場間口、搬出可能日時の項目が取り出される。搬出工場間口は製品梱包後にその製品ヤードに近接する車両搬入出間口であり、ここに置かれた荷物積載部に製品が載せられ、牽引部によって倉庫に運搬される。また運搬車両の目的地(倉庫棟)は、乗せられている製品の納品先によって決められる。例えば、納品先によって搬送先に選ばれる倉庫棟の優先順位が決まっていて、その優先順位が高く空いている倉庫棟を搬送先に選択されることがある。搬出可能日時は、生産計画及び梱包計画に基づいて、各製品が製品ヤードに入ってくる日時を推定して決められる。
【0041】
次に、倉庫に入っている製品で出荷が近い製品(以下、出荷製品)について、倉庫から岸壁に搬出する作業を生成するため、荷物情報データベースに格納される出荷予定製品情報及び製品進捗情報から必要情報を抽出する。
図6は抽出結果の例を示す。各出荷製品の現在位置及び使用するバースによって、製品の搬出に運搬車両が必要になるかどうかが決まる。もし出荷製品の現在位置(保管されている倉庫棟)が、使用するバースに近い場合には、倉庫クレーン作業のみで搬出可能であり、運搬車両は不要である。逆に現在位置とバースが遠い場合には、倉庫クレーンが荷物積載部に積み込む作業と、運搬車両牽引部がその荷物積載部を対象バースに運搬する作業が必要になる。
【0042】
続いてSTEP2では、STEP1で抽出された情報に基づいて、作業生成部が計画対象となる作業を生成する。ここで、本実施例の可視化対象時間帯は、ある特定の日であるN日の7:00~N+1日の7:00の24時間とする。シミュレーション実行時刻はN日でよいし、N日より前でも構わない。
【0043】
[運搬作業の生成]
まず搬出工場間口毎の各製品の搬出可能日時から、搬出工場間口前の製品置場の在庫推移が計算される。置場が満杯になると新しく完成した製品を置くためのスペースがなくなり生産ラインの停止を引き起こす可能性があるため、置場が満杯にならないように製品を適宜倉庫に運搬する必要がある。本ステップでは上記の在庫推移に基づいて、運搬作業を生成する。
【0044】
運搬作業を生成するにあたり、まずは抽出された製品を複数のグループにまとめて1回運搬作業で運ばれるロット(以降、運搬ロット)が生成される。運搬ロット生成の方法については例えば参考文献1(特開2007-69997号公報)の中で説明が行われている。
【0045】
運搬ロットにまとめられた製品では、搬送元(搬出工場間口)、搬送先(倉庫棟)が全て同じになる。搬送元は各製品で1つに確定しているが、搬送先がいくつかの候補から選択可能であることが多い。搬送元の選択方法としては、例えば極力納品先が同じ製品を運搬ロットにまとめて、その納品先の運搬船への船積が行われやすいバース近くの倉庫棟を搬送先に選択する方法がある。この方法を用いると、運搬車両による出荷製品の岸壁出し作業が少なくなる傾向がある。また運搬ロットの搬送ルートを担当する運搬車両種の積載重量上限の制約があるので、運搬ロットの製品重量合計値が積載重量上限値を超えない範囲でロットまとめを行うようにする。
【0046】
図7は生成された運搬ロット情報の例を示す。1行(レコード)は1製品毎に作成されており、運搬ロットIDが同じレコードが同じ運搬ロットで搬送される。搬出予定時刻は、各製品の搬出可能日時(
図5参照)が最も遅い製品の情報に基づいて設定される。また荷物積載部種類は、運搬ロットを担当する荷物積載部の種類を示しており、荷物積載部種類によって載せられる上限重量が決められている。ロット合計重量は運搬ロットにまとめられた製品の合計重量を示している。重量が設定された荷物積載部種類の上限重量を超えないように運搬ロットが生成される。まとめた運搬ロット情報に基づいて、計画対象の運搬作業が生成される。生成される運搬作業は下記の3種類である。
・(作業D-1)搬送元での天井クレーンによる荷物積載
・(作業D-2)搬送元と搬送先間の運搬車両の移動
・(作業D-3)搬送先での天井クレーンによる荷物入庫
【0047】
同じ運搬ロットについては、作業D-1、D-2、D-3の順番で処理され、この順番が制約条件となる。また各作業には処理最短時間があり、例えば下記の式で計算される。
・「作業D-1の処理最短時間」=「搬送元での荷役準備作業時間」+「天井クレーンでの1荷役のサイクルタイム」×「運搬ロットの製品個数」
・「作業D-2の処理最短時間」=「搬送元から搬送先までにかかる移動時間」
・「作業D-3の処理最短時間」=「搬送先での荷役準備作業時間」+「天井クレーンでの1荷役のサイクルタイム」×「運搬ロットの製品個数」
【0048】
ここで、天井クレーンのサイクルタイム及び搬送元から搬送先までの移動時間は、実績に基づいて計算した標準値をもちいることがある。作業D-1、D-2、D-3の実際の処理時間は、処理最短時間より長くなる可能性がある。以下、作業D-1、D-2、D-3を単にD-1、D-2、D-3と表記することがある。例えばD-2では、搬送元に到着した時点で荷物積載作業が完了しておらず待機することになる場合に処理時間が長くなる。またD-3では、搬送先で天井クレーンが荷下ろし作業中に、優先度の高い別の荷役作業(例えば出荷製品の岸壁出し作業)が割り込んできた場合には、荷下ろし作業がいったん中断するので処理時間が長くなる。D-1については運搬ロットにまとめられた製品が全て搬出可能である最早時刻を、D-1の最早開始可能時刻として事前に設定して作業計画作成の際に用いる。搬出可能時刻は
図5の搬出可能日時情報に基づいて決定することができる。またD-1の最遅開始可能時刻についても設定しておくと実行可能な計画が立てやすくなる。最遅開始時刻の決め方としては例えば下記の方法がある。
・[1]搬出工場間口が同じD-1を搬出可能日時が早い順に並べる。
・[2]並べられたD-1の中から1つ作業が選択される。
・[3]選択されたD-1が遅れた場合(選択された作業より後の順番の作業も全て選択された作業の後で実行すると仮定)に、工場間口の製品置場に置かれている製品在庫量が規定値を超える時刻を取得(在庫推移情報を利用)し、この時刻を最遅開始時刻とする。
【0049】
図8はD-1、D-2、D-3の例を示す。運搬ロット毎にD-1、D-2、D-3の3種類の作業が生成される。作業前、作業後の場所は、天井クレーンの荷役作業であるD-1、D-3の場合に同じ場所になっている。車両による運搬作業であるD-2の場合には、作業前後の場所が異なり搬送元と搬送先の場所が保存される。
【0050】
[岸壁搬出作業の生成]
出荷製品の岸壁搬出作業は、現在の製品保管場所と船積に用いるバースの位置関係によって、下記の2つのケースのいずれかの生成処理を実行して生成される。
・(ケース1:製品保管場所とバースが近い場合)製品が保管されている倉庫の天井クレーンによる岸壁への搬出作業を生成
・(ケース2:製品保管場所とバースが遠い場合)運搬車両の荷物積載部への製品積み込み作業、及び岸壁への運搬作業を生成
【0051】
図6の出荷製品を例とすると、製品JE2501、AE1035は、バースA-1が
図1に示すように倉庫1、2棟の前にあるので、倉庫1、2棟の天井クレーンによってこれらの製品を直接、バースA-1に搬出することができる。このような場合はケース1に該当しており、倉庫天井クレーンによる岸壁への製品搬出作業のみを生成すればよい。
図9はケース1に該当した製品の作業リストを示す。一方で製品AE1036、PQ1021、ZZ1023は倉庫2棟に保管されているが、バースB-1が倉庫2棟の前にはなく離れている。このような場合には製品を運搬車両で運んで岸壁に搬出する必要がある。運搬車両は複数の製品を同時に運ぶことができるので、この場合も運搬ロットを事前に生成しておく。ここで、運搬ロットにまとめられた出荷製品は、下記の条件を満たしている必要がある。
・現在位置が同じ
・バース、運搬船、船倉が同じ
・船積順、船積予定時刻が近い
・ロットの製品重量合計が運搬車両の積載重量上限値を超えない
【0052】
図10はまとめられた運搬ロットの例を示す。運搬ロットにまとめられれば、その製品を荷物積載部に積み込む作業が生成される。積み込み作業を行うのは対象製品が保管されている倉庫棟の天井クレーンである。積み込み作業の処理最短時間はD-1と同様に下式で計算できる。
・「積み込みの処理最短時間」=「搬送元での荷役準備作業時間」+「天井クレーンでの1荷役のサイクルタイム」×「運搬ロットの製品個数」
【0053】
本積み込み作業についても最遅開始時刻を設定しておくと作業計画が立てやすくなる。最遅開始時刻の決定は、例えば下の手順で行えばよい。
・[1]運搬ロットにまとめられた出荷製品の船積予定時刻で最も早い時刻を取得
・[2]次の式によって最遅開始時刻を計算:「最遅開始時刻」=「最も早い船積予定時刻」-「設定時間長(岸壁までの搬送時刻を想定)」-「積み込みの処理最短時間」
【0054】
図11は車両による岸壁搬出のための、倉庫での積み込み作業情報例を示す。
【0055】
STEP2での作業情報生成が完了すると、STEP3で作業計画(作業の処理優先順)が生成される。STEP3では処理モードの選択が可能になっており、「作業処理優先順を生成するモード」と「与えられた作業処理優先順を読み込むモード」を選択することができ、この両方の処理を選択することもできる。操業中に遅れが発生した場合に、その原因が作成した計画が原因によるものか、あるいは設備能力(台数)が不足していたために発生したものか、の判定が難しい。その場合に、まず「作業処理優先順を生成するモード」と「与えられた作業処理優先順を読み込むモード」の両方でシミュレーションが行われる。結果を比較し、その待ち時間の発生状態から作成した計画自体の問題点が把握可能になる。また計画が作成されたタイミング(作業を実行する前)でも、「作業処理優先順を生成するモード」と「与えられた作業処理優先順を読み込むモード」の両方でシミュレーションを行って、計画自体の問題を確認することができる。一般に「作業処理優先順を生成するモード」では、複雑な操業制約及び操業変化を考慮することが難しく、一方「与えられた作業処理優先順を読み込むモード」では逆に複雑な操業制約及び操業変化を考慮して作成されているため、2つのモードのシミュレーション結果は異なることが多い。「与えられた作業処理優先順を読み込むモード」のシミュレーションで、「作業処理優先順を生成するモード」では発生しない設備及び作業の待ちが発生している場合、それが操業制約及び操業変化の考慮を加えていることが原因ならば実操業上は問題がない。しかしながら操業制約及び操業変化の考慮が必要ない作業及び設備に対して待ちが発生している場合、計画自体に問題があることが原因と考えられるため、「作業処理優先順を生成するモード」のシミュレーション結果と比較することにより、その原因を探ることが可能になる。
【0056】
ここで、「与えられた作業処理優先順を読み込むモード」では、作業情報データベースから作業計画データを読み込んでその計画と同じ優先順を作業に対して設定する。また「作業処理優先順を生成するモード」では、以下で説明する処理を行って作業処理優先順を生成することになる。
【0057】
図9に示した倉庫天井クレーンの岸壁製品搬出作業に対しては、下記が同一である作業群について船積順に従って優先順位が決定される(船積順が早い製品を先に岸壁に搬出する)。下記のいずれかが異なる作業間については優先順位を設定せず、シミュレーション実施時に状況に応じて順番を決定する。
・倉庫棟
・船積クレーン
・バース
・運搬船
・船倉
【0058】
図11に示した車両による岸壁搬出のための積み込み作業に対して、下記が同一である作業群については最遅開始時刻が早い作業ほど優先されるように優先順位を設定する。下記のいずれかが異なる作業間については優先順位を設定せず、シミュレーション実施時に状況に応じて順番を決定する。
・倉庫棟
・船積クレーン
・バース
・運搬船
・船倉
【0059】
最後に、運搬ロット情報から生成された作業(
図8)の優先順位設定処理方法では、例えば下記のステップで優先順位が決定される。
・STEP3-α-1:D-1の作業場所が同じ運搬ロットを集め、最遅作業開始時刻が早い順に並べて仮実行時刻を計算する
・STEP3-α-2:STEP3-α-1の計算結果を用いてD-2、D-3の仮実行開始・終了時刻を計算する
・STEP3-α-3:D-2、D-3の負荷推移を計算する。負荷が設定(上限)値より高くなっている時間帯については作業時刻を遅らせたり、処理順を変更したりすることによって負荷がどの時間帯においても設定値以下になるようにする
・STEP3-α-4:D-2の処理最短時間と場所間距離情報に基づいて、運搬ロットの実行ペアを選択し、D-2を担当する装置を仮決めする
・STEP3-α-5:上記までの計算結果に基づいて、簡易シミュレーションを行いD-1、D-2、D-3の実行時刻を計算する
・STEP3-α-6:大きな待ちが発生している作業装置があれば、待ち時間帯に入る別の運搬ロット作業を検索し、その運搬ロット作業を待ちが生じている装置に振り替える
【0060】
上記のSTEP3-α-3では、仮割り当てされた作業量が設定値を超えている場合に、設定値を越えないように作業の山崩し処理(設備に余裕がある時間帯に作業を移動する処理)を実行する。例えばD-3では荷役を行う搬送先(倉庫棟)にあるクレーンの荷役能力を超える作業が割り当てられている場合、D-2では使用可能な運搬車両の台数×係数(1以下)を越えた作業が割り当てられている場合に、作業開始時刻を遅らせるなどして設定(上限)値を越えないような割り当てを生成する(空の荷物積載部を移動する作業も運搬車両が実行するためD-2の台数に1以下の係数をかけた上限値を用いる)。
【0061】
STEP3-α-4ではセット運行と呼ばれる運搬作業形態を行う前提での、運搬車両への作業割り付け及び作業実行順決定を行う。セット運行の概要及びこの作業形態を適用するメリットが以下に説明される。
【0062】
1つの運搬ロットの移動に係るD-1、D-2、D-3は、いずれも同じ荷物積載部を使用する。D-1の前には、空(製品が載っていない)の荷物積載部を搬送元の間口まで運搬車両で搬送する作業(以下、この作業をD-0と呼ぶ)が必要であり、D-0の搬送元と搬送先には下記の関係がある。
・D-0の搬送元…D-0の運搬ロットを運ぶ牽引部が、直前に運んだ運搬ロットのD-3を行う間口(直前運搬ロットのD-2の搬送先間口)
・D-0の搬送先…同じ運搬ロットのD-1を行う間口
【0063】
すなわち、各運搬ロットにどの荷物積載部を割り当てるかによってD-0の搬送元が変わるため、D-0の経路及び作業時間も変わってくる。また、同じ運搬ロットに係るD-0とD-2で用いられる荷物積載部は同一であるが、この2つの作業に異なる牽引部を割り当てても構わない。一方で、1台の運搬車両及び荷物積載部には、多数の運搬ロットに係るD-0~D-3が割り付けられる。このため牽引部と荷物積載部が分離可能な構造をもつ運搬車両を使った操業では、外乱又は生産計画変更などによって牽引部及び荷物積載部が作業遅れを起こすとそれら設備が実行するD-0~D-3も処理遅れを発生しやすくなる。さらに使用する牽引部と荷物積載部によってD-0~D-3の前後関係等が絡み合っているため、現状の作業遅れがもともとどの原因で発生したのか(運搬計画か、設備の能力不足か、外乱影響か)判断が難しい。
【0064】
そこで本実施例では、操業の状況を見通しよくしボトルネックの可視化を行いやすくするため、セット運行と呼ばれる操業形態でシミュレーションを行う。セット運行には下記の特徴がある。
・運搬作業の割り当て方に制限がつくので最適スケジュール(例えば、全作業処理完了時刻最早スケジュール)は生成できない
・計画作成にはあまり複雑な処理が必要でなく、非効率なスケジュールも生成されにくい
・作業を担当する設備(牽引部、荷物積載部、天井クレーン)をグループに分けて作業を割り当てるため、作業間の影響が減り作業遅れの伝搬を低減することができる
【0065】
セット運行については、参考文献2(特開2004-292077号公報)の中で実施例が提示されている。セット運行によって、例えば使用可能な牽引部と荷物積載部は1つの設備群にまとめられて、グループとして分けられた作業に割り当てられる。
【0066】
図12は、1種類の運搬ロットを1台の牽引部及び3台の荷物積載部のみを使用して運搬するセット運行(以降、セット種1)であり、搬送元Aから搬送先Bへの運搬ロットが複数ある場合を想定している。運搬車両は<1>、<2>、<1>、<2>、…の順で作業を実行する。
図13は、2種類の運搬ロットを1台の牽引部及び5台の荷物積載部を用いて運搬するセット運行(以降、セット種2)であり、図中では搬送元A1から搬送先B1及び搬送元A2から搬送先B2への運搬ロットが複数ある場合を想定している。運搬車両は<1>、<2>、<3>、<4>、<1>、<2>、…の順で作業を実行する。運搬ロットの搬送元と搬送先が離れている場合にはセット種1の運用で、搬送元と搬送先が近い場合にはセット種2の運用で運搬作業を行うと待ち時間が短くなる傾向がある。また1つのセット運行においては、同じ牽引部と同じ荷物積載部を用いているので作業遅れ等の影響が他の設備に伝搬しにくく、これによって大きな遅れが発生しにくい。さらに設備毎の担当が分かれているので、作業遅れが発生した原因を調査しやすくなる。
【0067】
STEP3-α-5で計算された作業実行時刻は実行可能な計画であるが、ある設備に大きな待ち時間が発生してスケジュールの作業効率が低くなってしまう場合がある。待ち時間中に別の作業が実行できる場合には、STEP3-α-6でその待ち時間中に別の作業を実行することによって作業効率を向上させることができる。特に、待ち時間中に挿入される作業がスケジュール終盤に割り当てられていたものだと、STEP3-α-6のスケジュール修正により、メイクスパン(スケジュール開始から全作業が完了するまでの時間)を大きく短縮させることができる。
【0068】
STEP3で作業優先順を設定した後、STEP4でシミュレーションが行われる。シミュレーションは、作業情報データベースに保存されるシミュレーション実行ルールに従って実行される。
【0069】
[倉庫天井クレーンの作業シミュレーション]
例えば、倉庫2棟に複数個の出荷製品があり、その移動の作業が下記の3種類のグループに分けられる場合についての実行作業選択方法について説明する。
・[グループ1]倉庫2棟の天井クレーンによりバースA-1へ搬出されるグループ(
図9)
・[グループ2]倉庫2棟の天井クレーンで荷物積載部に乗せられ、運搬ロットとしてバースB-1に搬出されるグループ
・[グループ3]倉庫3棟の天井クレーンで荷物積載部に乗せられ、運搬ロットとしてバースC-1に搬出されるグループ
【0070】
各グループ内の出荷製品については、STEP3で搬出の優先順位が設定済である。しかしながら、グループが異なると、優先順が決まっていないため、どちらのグループを先に出せばよいかはシミュレーション実行ルールに従って決定される。例えば下記のルールでシミュレーションが実行される。
・ルールS1-1:搬出先バースに置場が確保されていない場合、その出荷製品は荷役対象外とする。
・ルールS1-2:搬出先バースに既に出されている(おかれている)出荷製品が設定値以下の場合、そのバースへ出す出荷製品の作業を優先させる(複数のバースが上記条件を満たす場合は製品が置かれている個数が少ないバースを優先する)。
・ルールS1-3:ルールS1-2が適用されるバースへ払い出す出荷製品がない場合、天井クレーンによるバースへの搬出作業を優先させる(
図9)。
【0071】
このルールに従うと、バースに製品がなくなって船積作業が中断することが発生しにくくなり、また倉庫から近いバースへの払出作業が優先して行われることになる。
【0072】
また、倉庫棟クレーンの(実行可能な)作業が出荷製品払出以外にも複数種ある場合には、その種別毎に優先順を付けるルールを設定しておいてよい。倉庫天井クレーンの場合には例えば、下記のような優先順を付けることが考えられる。
・(優先順1)出荷製品の払出作業
・(優先順2)他棟へ移動させる製品の運搬車両(荷物積載部)への積み込み作業
・(優先順3)工場から運搬車両で入庫された製品の搬入作業
【0073】
工場から倉庫に運ばれてきた製品はしばらくの期間倉庫内で保管されることになる。そのため、搬入作業の緊急性は出荷製品の払出作業の緊急性に比較すると低い。そこで上記のような優先順ルールが考えられる。
【0074】
ところで倉庫棟内では、製品を段積みする場合がある。出荷製品の上に他の製品が乗っている場合には、出荷製品を荷役するために、上に載っている邪魔な製品をよける作業が余分に必要になってくる。このような作業を現実に忠実にシミュレートしようとすると、「各製品が保管されている倉庫内の位置(何段目かも含めて)」を設定することが必要になる。しかしながら、各製品の位置を設定する場合には、下記のルール及び条件を詳細に決めておくことが必要になる。
・製品が倉庫に入ってきた場合に、どこに製品を置くか決めるルール
・邪魔な製品をどの場所によけるかを決めるルール
・段積みする際の制約条件(上に載せられる製品のサイズ等の条件)
【0075】
上記仕様を作成すること及びこれらをシミュレーションプログラムに実装することは非常に煩雑であり、シミュレーションの計算時間も長くなるという欠点もある。そこで、本実施例では製品が置かれている倉庫棟内の位置を設定しない簡略化を行う。ただし簡略化によって現実操業と大きな差が生じないように、以下に説明する方法で天井クレーンの作業時間を設定する。
【0076】
製品の入庫作業及び出庫作業を行う際、移動前の製品の位置と移動後の製品の位置によって天井クレーンの走行時間が変化し、作業時間も変わる。簡略化によって製品の倉庫棟内位置を設定しないため、天井クレーン作業時間は実績に基づいた固定値(例えば平均値)に設定される。
【0077】
また前述の通り段積みが行われている場合には、それによって発生する「邪魔な製品をよける作業」の作業負荷も考慮する必要がある。段積みが行われている倉庫棟の作業については下記の特徴がある。
・倉庫棟の在庫量が増えると、段積みされる製品数が増えて邪魔な製品をよける作業も増える。
・邪魔な製品をよける作業にかかる時間は(入庫、出庫作業に比較して)短い。
【0078】
上記の特徴を反映して、1つの出荷製品を出庫するためにかかる作業時間が下式を用いて計算される。ここで、邪魔な製品をよける荷役作業はシミュレーションの対象にしない。
【数1】
【0079】
式(1)において、ταは倉庫α棟において出荷製品の出庫作業にかかる天井クレーンのハンドリング時間であり、τ0
αは前述した実績に基づいた天井クレーンハンドリング時間の固定値であり、関数fαは倉庫α棟の在庫量xαに関する増加関数で設定される。この関数は、在庫が増えることによって邪魔な製品をよける作業も増えるため、その作業分の負荷を出庫作業時間に加えることによって作業負荷を現実操業に合わせることをねらったものである。またp1,p2,…,pnは調整パラメータであり操業実績のクレーンハンドリング時間に合うようにパラメータが調整される。調整パラメータは、例えば製品サイズ毎の平均段積み数、製品サイズ毎の置場数等がクレーンハンドリング時間に与える影響量に掛けられる係数として定義される。
【0080】
このような簡略化によってシミュレーションプログラムの複雑化を回避することができ、実装も容易になる。
【0081】
[運搬車両の作業シミュレーション]
運搬車両の搬送作業は、STEP3で設定された(あるいは読み込んだ)「シミュレーション計画」に従って実行される。工場及び倉庫で荷物積載部への積み下ろし作業が完了していない場合には、牽引部が車両搬入出間口前で待機することになる。またセット運行において、空の荷物積載部が追加で必要になった場合には、空の荷物積載部をどこから調達するかについて「シミュレーション実行ルール」で決めておくことができる。
【0082】
[船積クレーンの作業シミュレーション]
船積クレーンは、出荷製品情報(
図6)を参照して、バースに到着した出荷製品を船積順に従って船に積み込む。次に積み込む出荷製品がバースに到着していない場合には、出荷製品がバースに到着するまで船積作業を中断して待機する。
【0083】
STEP5ではシミュレーション実行結果に対して、ボトルネックに関する情報を画面出力し、使用者に対して可視化する。シミュレーション実行は前述した通り、下記のタイミングで実行される。
・(タイミング1)装置の作業計画が完成したタイミング(作業開始前)
・(タイミング2)作業中に大きな待ちが発生したタイミング(装置の使用者が手動で信号を送る場合含む)
【0084】
まずタイミング1の時点でのボトルネック表示方法が以下に説明される。
[計画作成時のボトルネック情報(第1の表示方法)]
・(a)クレーン、運搬車両(牽引部、荷物積載部)の稼働率が設定値以上になっている時間帯を抽出する。
・(b)ある時間帯に高稼働率になっている設備の作業について、その先行及び後続作業を実行している設備の同じ時間帯での稼働率が抽出される。
・(c)(b)で計算した稼働率が、(a)で計算した高稼働率よりも大幅に(設定値以上で)低い場合には、その作業及び高負荷作業を変色させる。
【0085】
図14は、倉庫α棟の天井クレーンで稼働率が85%で設定値(80%)を超えていた時間帯の作業について、上記の処理を行ったものである。天井クレーンの作業に対して直後の後続作業である運搬車両牽引部Pの稼働率が計算された。図中の点線の矢印は作業の先行後続関係を意味している。時間帯の運搬車両牽引部Pの稼働率は32%となり、天井クレーンより稼働率の差異が設定値(40%)以上であって選択基準を満たすため、対象となる先行後続作業を変色(例えば赤色表示)させている。
【0086】
上記で変色した作業では、作業負荷が設備毎にうまく分散できていない運用になっている。例えば距離が近い間口間での運搬で、セット種1のパターンで運搬した場合は、運搬車両(牽引部)の負荷に対してクレーンの負荷が非常に高くなる。本装置の使用者は、この状況を確認して、負荷が分散するように計画を修正する。ここで、
図14において、シミュレーション情報出力部は、設備シミュレーション情報として、変色させたボトルネックの作業と、作業待ちが発生している設備と、を表示する。ここで、シミュレーション情報出力部は、設備シミュレーション情報として、作業待ちの時間及び作業待ちの原因を表示してよい。つまり、設備シミュレーション情報は、作業待ちが発生している設備、作業待ちの時間及び作業待ちの原因の少なくとも1つを含んでよい。
【0087】
[計画作成時のボトルネック情報(第2の表示方法)]
・(a)読み込まれた優先度で作成した計画と、セット運行に基づいて作成した計画の、設備毎(クレーン、運搬車両牽引部、荷物積載部)の全作業完了時刻が取得される。
・(b)(a)で得られた最も遅い作業完了時刻(以降、最遅作業完了時刻)について、読み込まれた優先度で作成した計画の最遅作業完了時刻が、セット運行に基づいて作成した計画の最遅作業完了時刻より設定値以上遅い場合、その最遅作業を担当する設備に対してシミュレーション結果(読み込まれた優先度で作成した計画とセット運行に基づいて作成した計画での実行結果)の時間帯毎の累積作業実行数推移を計算する。
・(c)累積作業実行数推移について、各時刻で下式に基づいて計算される今後累積作業実行数差最大値が表示される。今後累積作業実行数差最大値は、累積作業実行数の差についての今後時間帯での最大値を示す指標である。ここで、
図15は、倉庫α棟天井クレーンの荷役作業計画例とそれに対して計算した累積作業を示す。
図16は今後累積作業実行数最大値のグラフを示す。
・時刻tにおける今後累積作業実行数差最大値:y(t)
・時刻tにおける累積作業実行数(読み込まれた優先度):x
1(t)
・時刻tにおける累積作業実行数(セット運行):x
2(t)
【数2】
ここで、式(2)でt
bはx
1(t)-x
2(t)が最小になる時の時刻t(複数ある場合は最大のもの)を意味する。この関数y(t)が設定値以下になっている時間帯で、関数の減少量が設定値以上になる時間帯を検出して表示する。
・(d)(c)で得られた時間帯において設備が実施していた作業、及び(c)で得られた時間帯の直前の時間帯の設備最終作業、及び(c)で得られた時間帯の直後の時間帯の設備最初の作業、及び作業の先行作業(他設備作業を含む)の色をガントチャート上で変更して表示する。
【0088】
上式で計算されたy(t)は単調減少な関数であり、2つの累積作業実行数の大小関係が入れ替わったりしている間は小さな値を取らない。しかし読み込まれた優先度でのシミュレーションで作業が遅れ始めると、関数値は小さくなる傾向がある。上記の処理では関数値が大きく減少した時間帯を検出して、その時間帯で減少は発生させた原因を明確にするものである。本設備の使用者は、変色した作業を確認して遅れが発生する原因(計画の問題)について理解し、計画修正及び設備配置変更等を行う。
【0089】
[計画作成時のボトルネック情報(第3の表示方法)]
・(a)セット運行に基づいて作成した計画の、設備毎(クレーン、運搬車両牽引部、荷物積載部)の全作業完了時刻が取得される。
・(b)全作業完了時刻が、計画対象時間帯の範囲を超えて遅くなっている場合、はみ出している作業を担当している設備、及びはみ出している作業の先行作業を担当している設備の稼働時間帯の稼働率を計算する。
・(c)稼働率が設定値を越えている場合、設備の作業をガントチャート上で点滅させ、メッセージを画面に表示する。
【0090】
図17は上記の処理について説明した図である。運搬車両牽引部Pの最終作業が計画対象時間からはみ出しており、その先行作業が倉庫α棟の天井クレーンになっているケースである。ここで運搬車両牽引部Pの稼働率は50%に満たなかったが、倉庫α棟の天井クレーンの稼働率が設定値(90%)を超過していたのでその天井クレーンのガントチャートを点滅させている。
【0091】
上記の処理は、与えられた作業が設備能力を超過していることを判定するために用いられる。本設備の使用者は、割り当てる設備を増やしたり、逆に優先度の低い製品を対象から外したり、計画変更をしたりして対応する。
【0092】
[計画作成時のボトルネック情報(第4の表示方法)]
・(a)各作業の先行後続関係のリンクが生成される。
・(b)各作業に対して下記条件を全て満たす作業の数が計算される。
- 完了時刻が「対象作業の開始時刻」-「設定時間」~「対象時刻の開始時刻」に入っている作業
- 対象作業に先行する作業
- 対象作業と同じ種類(工場クレーン、運搬車両、倉庫クレーン)の設備で実行される作業
- 対象作業と異なる設備で実行される作業
・(c)上記作業の数が設定値以上の対象作業、若しくは読み込まれた優先度のシミュレーションとセット運行シミュレーションで上記作業の数の差が設定値以上の対象作業を点滅させ、作業の数でカウントされた作業の色を変更する。
【0093】
上記の処理で計算される「作業の数」は、対象作業に先行する同種の設備の他作業の数であり、これらの他作業に遅れが生じれば、対象作業が遅れる可能性がある。すなわちこの作業の数が多ければ多いほど、他作業の影響を受けて遅れやすいということを意味する。セット運行で立てた計画ではこの条件を満たす「作業の数」が多くならないため、他作業の影響を受けにくい。(c)の処理では、セット運行シミュレーションの結果との比較を行う処理を行って、セット運行を基準として読み込まれた優先度のシミュレーションがどの程度他作業の影響を受けやすいかを視覚化している。
図18は本処理の画面表示を示す。牽引部p1の運搬作業に対して、先行する牽引部p2、p3の作業が設定時間内にあったため、牽引部p1の運搬作業についての「作業の数」が2となり条件を満たして、
図18にあるように点滅表示されたものである。
【0094】
次にタイミング2の時点でのボトルネック表示方法が以下に説明される。
【0095】
[作業実行時のボトルネック情報]
作業実行時では、下記の分析を行って結果を表示する。
・(A)計算機シミュレーションで得られた各作業終了時刻と実操業での作業終了時刻を比較
・(B)実操業での作業終了時刻がシミュレーション結果より設定値以上遅れた作業を抽出
・(C)遅れた作業をガントチャート上で変色させ、遅れ時刻を表示させる
・(D)各設備で、最も早い時刻で変色した作業を点滅させる
・(E)(D)で点滅させた作業の先行作業をガントチャート上で変色させ、点滅させる
【0096】
図19は上記の処理を示す図である。シミュレーションと実績時間が、運搬車両牽引部Pの作業で発生し、その最初に遅れが生じた作業を点滅させている。さらに、その遅れた作業の先行作業である倉庫α棟天井クレーン荷役作業についても作業を点滅させている。本装置の使用者は、各設備で最初に遅れが大きくなった作業及び、それに先行する作業の実行時間をチェックする。作業遅れが徐々に長くなっているようなら設備能力不足、急激に長くなっているようなら一時的なトラブルが原因の可能性がある。使用者は、原因に応じて計画を修正する。使用者は、計画修正入力部によって計画を修正し、作業情報などに修正が反映される。このように入力として与えられた作業スケジュールも、同様にシミュレーションが実行されて、ボトルネックが可視化される。
【0097】
上記の手順により、STEP5で得られたボトルネック情報に基づいてSTEP6で計画修正が行われる。この実施例では、物流上のボトルネックを解消、緩和することにより、効率を向上させることが可能になる。ここで、上記において計算機処理を行って生成したデータの一部を外部から与えることによっても、同様の効果を得ることができる。
【0098】
以上のように、本実施形態に係るボトルネック可視化装置及びボトルネック可視化方法は、上記の構成によって、多種・多数の設備によって実行される作業に対して、複雑なシミュレーションを実行することなく、物流停滞状態を可視化することができる。複雑なシミュレーションを必要としないため、低コストでボトルネックを可視化することが可能になる。また可視化した情報に基づいて、作業スケジュール変更及び設備投資を行うことによって、効果的な物流効率向上が可能になる。
【0099】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。