IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デントロケミカルの特許一覧

特開2022-91604画像処理システム、撮影器具及びプログラム
<>
  • 特開-画像処理システム、撮影器具及びプログラム 図1
  • 特開-画像処理システム、撮影器具及びプログラム 図2
  • 特開-画像処理システム、撮影器具及びプログラム 図3
  • 特開-画像処理システム、撮影器具及びプログラム 図4
  • 特開-画像処理システム、撮影器具及びプログラム 図5
  • 特開-画像処理システム、撮影器具及びプログラム 図6
  • 特開-画像処理システム、撮影器具及びプログラム 図7
  • 特開-画像処理システム、撮影器具及びプログラム 図8
  • 特開-画像処理システム、撮影器具及びプログラム 図9
  • 特開-画像処理システム、撮影器具及びプログラム 図10
  • 特開-画像処理システム、撮影器具及びプログラム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091604
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】画像処理システム、撮影器具及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61C 11/00 20060101AFI20220614BHJP
   A61C 19/05 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
A61C11/00 A
A61C11/00 Z
A61C19/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204523
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】591038325
【氏名又は名称】株式会社デントロケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 篤
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 勇介
【テーマコード(参考)】
4C052
4C159
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052NN02
4C052NN03
4C052NN15
4C159CC20
(57)【要約】
【課題】咬合器に取り付けられた被写体を同じ位置条件で撮影可能な画像処理システム及び撮影器具、撮影した画像を表示させるプログラムを提供する。
【解決手段】咬合器に取り付けられた被写体の画像を撮影し、撮影した画像の表示を制御する画像処理システムであって、カメラと、咬合器を取り付け可能なテーブルと、テーブルに取り付けられた咬合器に対して予め定められた位置関係となるようにカメラを配置可能なフレームとを有する撮影器具と、表示装置と、カメラを制御することにより咬合器に取り付けられた被写体の画像を取得して記憶し、取得した画像を表示装置に表示させるコンピュータとを備える、画像処理システム。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
咬合器に取り付けられた被写体の画像を撮影し、撮影した画像の表示を制御する画像処理システムであって、
カメラと、
前記咬合器を取り付け可能なテーブルと、前記テーブルに取り付けられた前記咬合器に対して予め定められた位置関係となるように前記カメラを配置可能なフレームとを有する撮影器具と、
表示装置と、
前記カメラを制御することにより前記咬合器に取り付けられた被写体の画像を取得して記憶し、取得した画像を前記表示装置に表示させるコンピュータとを備える、画像処理システム。
【請求項2】
前記咬合器には、前記被写体として、顎模型、咬合床が装着された顎模型、人工歯が配列された咬合床が装着された顎模型、本義歯が装着された顎模型等が取り付けられ、
前記フレームは、前記テーブルに取り付けられた前記咬合器を閉じた状態で、前記咬合器に取り付けられた前記被写体に正対する第1の位置に前記カメラを配置可能であり、
前記テーブルは、鉛直方向に延びる所定の回転軸を中心に回転可能に支持されており、前記被写体の正面部が前記第1の位置に配置された前記カメラに正対する正対位置と、前記被写体の左側面部が前記第1の位置に配置された前記カメラに正対する第1の回転位置と、前記被写体の右側面部が前記第1の位置に配置された前記カメラに正対する第2の回転位置とに前記咬合器に取り付けられた前記被写体を配置可能であり、
前記コンピュータは、前記テーブルに取り付けられた前記咬合器を閉じた状態で、前記第1の位置に配置された前記カメラを用いて、前記正対位置に配置された前記被写体の画像と、前記第1の回転位置に配置された前記被写体の画像と、前記第2の回転位置に配置された前記被写体との画像を取得し、取得した画像を前記表示装置に表示させる、請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記コンピュータは、前記第1の回転位置に配置された前記被写体の画像と、前記正対位置に配置された前記被写体の画像と、前記第2の回転位置に配置された前記被写体の画像とを左から右へとこの順に並べて前記表示装置に表示させる、請求項2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記咬合器の上顎弓及び下顎弓には、前記被写体として、歯槽頂線が描かれた上顎及び歯槽頂線が描かれた下顎の顎模型がそれぞれ取り付けられており、
前記フレームは、前記テーブルに取り付けられた前記咬合器を略90度開いた状態で、前記咬合器の上顎弓に取り付けられた前記上顎の顎模型に正対する第2の位置と、前記咬合器の下顎弓に取り付けられた前記下顎の顎模型に正対する第3の位置とに前記カメラを配置可能であり、
前記コンピュータは、前記テーブルに取り付けられた前記咬合器を略90度開いた状態で、前記第2の位置に配置された前記カメラを用いて、前記上顎の顎模型の撮影画像を取得し、前記第3の位置に配置された前記カメラを用いて前記下顎1の顎模型の撮影画像を取得し、取得した撮影画像を前記表示装置に表示させる、請求項1または2に記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記コンピュータは、前記上顎の顎模型の撮影画像を二値化処理した画像と、前記下顎の顎模型の撮影画像を二値化処理した画像とを生成し、前記上顎の顎模型の撮影画像及び前記下顎の顎模型の撮影画像と、それぞれを二値化処理した画像とを並べて前記表示装置に表示させる、請求項4に記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記コンピュータは、前記上顎の顎模型の撮影画像及び前記下顎の顎模型の撮影画像から、前記上顎の歯槽頂線の画像及び前記下顎の歯槽頂線の画像をそれぞれ抽出し、前記上顎の顎模型の撮影画像に、前記下顎の歯槽頂線の画像を重畳した画像と、前記下顎の顎模型の撮影画像に、前記上顎の歯槽頂線の画像を重畳した画像とを前記表示装置に表示させる、請求項4に記載の画像処理システム。
【請求項7】
咬合器に取り付けられた被写体の画像を撮影するために用いる撮影器具であって、
前記咬合器を取り付け可能であり、鉛直方向に延びる所定の回転軸を中心に回転可能に支持されるテーブルと、
前記テーブルに取り付けられた前記咬合器に対して予め定められた位置関係となるように前記カメラを配置可能なフレームとを備え、
前記フレームは、
前記テーブルに取り付けられた前記咬合器を閉じた状態で、前記咬合器に取り付けられた前記被写体に正対する第1の位置と、
前記テーブルに取り付けられた前記咬合器を略90度開いた状態で、前記咬合器の上顎弓に取り付けられた前記被写体に正対する第2の位置と、
前記テーブルに取り付けられた前記咬合器を略90度開いた状態で、前記咬合器の下顎弓に取り付けられた前記被写体に正対する第3の位置と
に前記カメラを配置可能であり、
前記テーブルは、
前記被写体の正面部が前記第1の位置に配置された前記カメラに正対する正対位置と、
前記被写体の左側面部が前記第1の位置に配置された前記カメラに正対する第1の回転位置と、
前記被写体の右側面部が前記第1の位置に配置された前記カメラに正対する第2の回転位置と
に前記咬合器に取り付けられた前記被写体を配置可能である、撮影器具。
【請求項8】
プロセッサと、メモリと、記憶装置とを備えるコンピュータが、被写体の画像を表示装置に表示させるために実行するプログラムであって、
歯槽頂線が描かれた上顎の顎模型の咬合面の撮影画像と、歯槽頂線が描かれた下顎の顎模型の咬合面の撮影画像とを取得するステップと、
前記上顎の撮影画像及び前記下顎の撮影画像から、上顎の歯槽頂線の画像及び下顎の歯槽頂線の画像をそれぞれ抽出するステップと、
前記上顎の撮影画像に、前記下顎の歯槽頂線の画像を重畳した画像と、前記下顎の撮影画像に、前記上顎の歯槽頂線の画像を重畳した画像とを前記表示装置に表示させるステップとを含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咬合器に取り付けられた顎模型や義歯等の画像を撮影し、撮影した画像を表示装置に表示させる画像処理システム及び撮影器具、撮影した画像を表示させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科医院においては、患者の歯科治療を行うための各種情報を記録及び表示するシステムが種々用いられている。例えば、特許文献1には、歯科補綴物を装着する前の歯の画像と、歯科補綴物が装着された歯の画像とを表示装置に並べて表示させ、患者が治療前と治療後の歯の状態を容易に比較できるシステムが記載されている。また、特許文献2には、患者の顔の画像から輪郭を識別し、識別した輪郭に基づいて義歯に使用される人工歯の長さ、幅及び形状を判定し、判定した情報を含むデジタル処方箋を出力するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-117423号公報
【特許文献2】特表2011-521767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
義歯の製作過程において、上下の歯の噛み合わせを確認したり、人工歯の配列を決める際の参考にしたりする目的で、咬合器に取り付けられた顎模型をカメラで撮影した撮影画像が使用される場合がある。しかしながら、被写体である顎模型とカメラとの距離や顎模型に対するカメラの角度を撮影毎に同じにすることは困難であった。
【0005】
それ故に、本発明は、咬合器に取り付けられた被写体を同じ位置条件で撮影可能な画像処理システム及び撮影器具、撮影した画像を表示させるプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像処理システムは、カメラと、咬合器を取り付け可能なテーブルと、テーブルに取り付けられた咬合器に対して予め定められた位置関係となるようにカメラを配置可能なフレームとを有する撮影器具と、表示装置と、カメラを制御することにより咬合器に取り付けられた被写体の画像を取得して記憶し、取得した画像を表示装置に表示させるコンピュータとを備える。
【0007】
本発明に係る撮影器具は、咬合器を取り付け可能であり、鉛直方向に延びる所定の回転軸を中心に回転可能に支持されるテーブルと、テーブルに取り付けられた咬合器に対して予め定められた位置関係となるようにカメラを配置可能なフレームとを備える。フレームは、テーブルに取り付けられた咬合器を閉じた状態で、咬合器に取り付けられた被写体に正対する第1の位置と、テーブルに取り付けられた咬合器を略90度開いた状態で、咬合器の上顎弓に取り付けられた被写体に正対する第2の位置と、テーブルに取り付けられた咬合器を略90度開いた状態で、咬合器の下顎弓に取り付けられた被写体に正対する第3の位置とにカメラを配置可能である。テーブルは、被写体の正面部が第1の位置に配置されたカメラに正対する正対位置と、被写体の左側面部が第1の位置に配置されたカメラに正対する第1の回転位置と、被写体の右側面部が第1の位置に配置されたカメラに正対する第2の回転位置とに咬合器に取り付けられた被写体を配置可能である。
【0008】
本発明に係るプログラムは、歯槽頂線が描かれた上顎の顎模型の咬合面の撮影画像と、歯槽頂線が描かれた下顎の顎模型の咬合面の撮影画像とを取得するステップと、上顎の撮影画像及び下顎の撮影画像から、上顎の歯槽頂線の画像及び下顎の歯槽頂線の画像をそれぞれ抽出するステップと、上顎の撮影画像に、下顎の歯槽頂線の画像を重畳した画像と、下顎の撮影画像に、上顎の歯槽頂線の画像を重畳した画像とを表示装置に表示させるステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、咬合器に取り付けられた被写体を同じ条件で撮影可能な画像処理システム及び撮影器具、撮影した画像を表示させるプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る画像処理システムの概略構成を示す機能ブロック図
図2図1に示したコンピュータの機能ブロック図
図3図1に示した撮影器具の構成例を示す斜視図
図4図3に示したカメラユニットの構成例を示す斜視図
図5】撮影器具のフレームにおけるカメラユニットの取り付け位置を説明するための模式図
図6】第1の位置に配置されたカメラと被写体との位置関係を説明するための模式図
図7】表示装置における画像の表示例を示す図
図8】コンピュータが行う制御処理の一例を示すフローチャート
図9】コンピュータが行う制御処理の他の一例を示すフローチャート
図10】撮影器具の構成の変形例を示す模式図
図11】撮影器具の構成の他の変形例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係る画像処理システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【0012】
画像処理システム100は、咬合器に取り付けられた被写体の画像を撮影し、撮影した画像の表示を制御するシステムであり、カメラ1と、撮影器具2と、表示装置3と、コンピュータ4とを備える。
【0013】
カメラ1は、CCDやCMOS等の固体撮像装置とレンズとを備え、有線または無線によりコンピュータ4に通信可能に接続される。カメラ1は、コンピュータ4からの制御信号に従って画像を撮影し、撮影した画像をコンピュータ4に送信する。
【0014】
撮影器具2は、咬合器とカメラ1とを予め定められた一定の位置関係に配置可能な器具である。撮影器具2の具体例については後述する。
【0015】
表示装置3は、液晶パネルや有機ELパネル等の表示パネルを有し、コンピュータ4からの制御信号に従って画像を表示する。
【0016】
コンピュータ4は、CPUと、RAMと、記憶装置とを備える。記憶装置は、ハードディスクやSSD、不揮発性メモリ等の読み書き可能な記憶媒体を備え、OS、後述する制御処理を実行するためのプログラム、カメラ1を用いて撮影した撮影画像や、撮影画像を加工した画像等を記憶する。CPUは、記憶装置から読み出したプログラムを、RAMを作業領域として用いて実行することにより、後述する制御処理を実行する。コンピュータ4は、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォン等により構成することができる。
【0017】
図2は、図1に示したコンピュータの機能ブロック図である。
【0018】
コンピュータ4は、機能ブロックとして、カメラ制御部11と、記憶部12と、画像処理部13と、表示制御部14とを備える。
【0019】
カメラ制御部11は、カメラ1に撮影を指示する制御信号を送信し、カメラ1が撮影した画像を取得する。カメラ制御部11は、カメラ1を用いて取得した撮影画像を記憶部12に記憶させる。
【0020】
記憶部12は、上述した記憶装置によって構成され、カメラ制御部11によって取得された撮影画像と、後述する画像処理部13によって処理された画像を記憶する。記憶部12は、例えばカルテ番号や患者の識別番号等の一意な識別子に関連付けて複数の画像を記憶する。
【0021】
画像処理部13は、記憶部12に記憶された撮影画像を読み出し、読み出した撮影画像に対して所定の画像処理を行う。具体的には、画像処理部13は、カメラ1を用いて撮影された上顎の顎模型及び下顎の顎模型の咬合面の画像を二値化処理し、二値化処理された画像を記憶部12に記憶させる。また、画像処理部13は、二値化処理された下顎の顎模型の咬合面の画像から歯槽頂線の画像を抽出し、抽出した下顎の歯槽頂線の画像を、上顎の顎模型の咬合面の画像に重畳した画像を生成する。同様に、画像処理部13は、二値化処理された上顎の顎模型の咬合面の画像から歯槽頂線の画像を抽出し、抽出した上顎の歯槽頂線の画像を、下顎の顎模型の咬合面の画像に重畳した画像を生成する。画像処理部13は、生成した重畳画像を記憶部12に記憶させる。尚、画像処理部13によって生成された画像の詳細は後述する。画像処理部13は、必要に応じて、コントラスト補正、明るさ補正、色補正、ノイズ除去、エッジ強調、拡大縮小、トリミング等の画像処理を行っても良い。
【0022】
表示制御部14は、記憶部12から撮影画像及び/または画像処理部13によって生成された画像を読み出し、読み出した画像を表示装置3に並べて表示させる。表示制御部14による画像の表示方法についても後述する。
【0023】
図3は、図1に示した撮影器具の構成例を示す斜視図であり、図4は、図3に示したカメラユニットの構成例を示す斜視図である。
【0024】
撮影器具2は、咬合器5を取り付け可能なテーブル20と、テーブル20に取り付けられた咬合器5から一定距離離れた位置にカメラ1を配置可能なフレーム21とを有する。テーブル20は、所定の回転軸を中心に回転可能となるようにベース24上に取り付けられ、フレーム21は、ベース24に固定されている。フレーム21は、ベース24から鉛直上方に延び、平行に配置される一対の縦フレーム22a及び22bと、水平方向に延びて縦フレーム22a及び22bを掛け渡す横フレーム23とを有する。縦フレーム22aは、テーブル20に取り付けられた咬合器5の前方に配置され、縦フレーム22bは、テーブル20に取り付けられた咬合器5の後方に配置される。本実施形態においては、縦フレーム22bに撮影時の背景となるスクリーン25が取り付けられている。横フレーム23は、テーブル20の回転軸と交差する位置に配置されている。
【0025】
フレーム21には、カメラ1を含むカメラユニット28を規定の位置に取り付けるための位置決め部26a~26cが設けられている。図4に示すように、本実施形態においては、カメラユニット28は、カメラ1と、カメラ1の左右前方に延びるアーム29と、アーム29の両端に設けられた照明装置30a及び30bと、取付部材27a及び27bを備える。取付部材27a及び27bは、互いに対向する平板状の部材であり、縦フレーム22aまたは横フレーム23を挟み込んだ状態で位置決め部26a~26cと係合可能である。照明装置30a及び30bは、LED等の発光素子を備え、撮影時に被写体を照明する。
【0026】
ここで、フレーム21におけるカメラ1の取り付け位置と、テーブル20上の咬合器5に取り付けられた被写体との位置関係を説明する。
【0027】
図5は、撮影器具のフレームにおけるカメラユニットの取り付け位置を説明するための模式図である。
【0028】
図5(a)は、カメラユニット28の取付部材27a及び27bを位置決め部26a(図3参照)に係合させて、カメラ1を第1の位置に配置した状態を示す。図5(a)においては、咬合器5の上顎弓6及び下顎弓7に、上顎の顎模型38a及び下顎の顎模型38bがそれぞれ取り付けられ、顎模型38a及び38bに、義歯39a及び39bがそれぞれ装着されている。縦フレーム22aの位置決め部26aにカメラユニット28を取り付け、テーブル20上の咬合器5を閉じた状態において、カメラ1は、咬合器5に取り付けられた被写体(前歯部分)に正対する位置に配置される。図5(a)に示す第1の位置は、咬合器5を閉じた状態で、咬合器5に取り付けられた顎模型、義歯等が装着された顎模型のいずれかの撮影を行う際のカメラ1の取り付け位置である。顎模型は、歯茎部のみの模型であっても良いし、歯茎部と歯を含む模型であっても良い。また、義歯に限らず、どのような補綴物であっても良い。義歯は、総義歯及び部分義歯のいずれであっても良い。
【0029】
図5(b)は、カメラユニット28の取付部材27a及び27bを位置決め部26b(図3参照)に係合させて、カメラ1を第2の位置に配置した状態を示す。図5(b)においては、咬合器5の上顎弓6及び下顎弓7に、上顎の顎模型38a及び下顎の顎模型38bがそれぞれ取り付けられている。縦フレーム22aの位置決め部26bにカメラユニット28を取り付け、テーブル20上の咬合器5を略90度開いた状態において、カメラ1は、咬合器5の上顎弓6に取り付けられた顎模型38aの咬合面に正対する位置に配置される。ここで、咬合器5を略90度開いた状態とは、上顎弓6を回転軸AX2を中心として回転させ、上顎の顎模型38aの咬合面がカメラ1の撮像素子の受光面と略平行となる状態をいう。図5(b)に示す第2の位置は、咬合器5を開いた状態で、咬合器5の上顎弓6に取り付けられた上顎の顎模型の咬合面の撮影を行う際のカメラ1の取り付け位置である。
【0030】
図5(c)は、カメラユニット28の取付部材27a及び27bを位置決め部26c(図3参照)に係合させて、カメラ1を第3の位置に配置した状態を示す。図5(c)においては、咬合器5の上顎弓6及び下顎弓7に、上顎の顎模型38a及び下顎の顎模型38bがそれぞれ取り付けられている。横フレーム23の位置決め部26cにカメラユニット28を取り付け、テーブル20上の咬合器5を略90度開いた状態において、カメラ1は、咬合器5の下顎弓7に取り付けられた顎模型38bの咬合面に正対する位置に配置される。図5(c)に示す第3の位置は、咬合器5を開いた状態で、咬合器5の下顎弓7に取り付けられた下顎の顎模型の咬合面の撮影を行う際のカメラ1の取り付け位置である。
【0031】
図6は、第1の位置に配置されたカメラと被写体との位置関係を説明するための模式図である。
【0032】
図6(a)は、図5(a)の咬合器5及びカメラ1を上方から見た図に相当し、咬合器5に取り付けられた被写体の正面部(前歯部分)が、第1の位置に配置されたカメラ1に正対する位置に配置された状態を示す。以下の説明において、図6(a)に示す被写体の位置を「正対位置」という。
【0033】
上述の通り、テーブル20は、回転軸AX1(図5(a)参照)を中心として回転可能であり、図6(a)に示す正対位置を基準として、図6における時計回り方向及び反時計回り方向にそれぞれ所定角度だけ回転可能である。尚、テーブル20及び/またはベース24には、テーブル20の所定角度以上の回転を規制するための図示しないストッパー等が設けられている。
【0034】
図6(b)は、テーブル20を正対位置から時計回り方向に所定角度だけ回転させた状態を示す。図6(b)に示す状態では、被写体(顎模型38a)の左側面部が第1の位置に配置されたカメラ1に正対する。以下の説明において、図6(b)に示す被写体の位置を「第1の回転位置」という。
【0035】
図6(c)は、テーブル20を正対位置から反時計回り方向に所定角度(例えば、90度)だけ回転させた状態を示す。図6(c)に示す状態では、被写体(顎模型38a)の右側面部が第1の位置に配置されたカメラ1に正対する。以下の説明において、図6(c)に示す被写体の位置を「第2の回転位置」という。
【0036】
カメラ1を第1の位置に配置し、咬合器5に取り付けられた被写体を正対位置、第1の回転位置及び第2の回転位置にそれぞれ配置することにより、カメラ1と被写体との位置関係を撮影毎に一定として、被写体の正面部、左側面部及び右側面部の画像を撮影することができる。
【0037】
図7は、表示装置における画像の表示例を示す図である。
【0038】
コンピュータ4の表示制御部14は、カルテ番号や患者の識別番号等の識別情報毎に記憶部12に記憶される画像を読み出し、表示装置3に表示させる。図7の表示例では、カルテ番号に関連付けられた9枚の画像が並べて表示されている。
【0039】
画像31a、31b及び31cは、第1の位置に配置されたカメラ1を用いて、被写体を正対位置、第1の回転位置及び第2の回転位置に配置して撮影した画像である。画像31a~31cの被写体は、義歯39a及び39bが装着された顎模型38a及び38bであるが、上述の通り、被写体は、顎模型のみ、義歯等が装着された顎模型のいずれであっても良い。
【0040】
本実施形態では、表示制御部14は、第1の回転位置で撮影した被写体の左側面部の画像31bと、正対位置で撮影した被写体の正面部の画像31aと、第2の回転位置で撮影した被写体の右側面部の画像31cとを、左から右へとこの順に並べて表示している。この並び順で表示した場合、画面上の左右と、被写体の左右(被写体から見た場合の左右)とを一致させることができる。この表示方法の場合、患者が表示画面を見た際に、自身の顎部の左右と画面上の左右とが同じであるため、患者が自身の義歯の各部の位置を容易に把握することができる。また、図7の例と左右を逆にして、表示制御部14は、第2の回転位置で撮影した被写体の右側面部の画像31cと、正対位置で撮影した被写体の正面部の画像31aと、第1の回転位置で撮影した被写体の左側面部の画像31aとを、左から右へとこの順に並べて表示しても良い。この場合、画像31b及び31cの並び順が、患者に対面したときの左右(観察者から見た左右)と一致するため、義歯製作者や歯科医師にとって見やすい表示となる。また、これらの2種類の表示方法は切り替え可能であっても良い。表示制御部14による画像31a~31cの表示方法はこの例に限定されず、並べ方は任意で良い。
【0041】
画像32a及び32bは、それぞれ、第2の位置及び第3の位置に配置されたカメラ1を用いて撮影した画像(撮影画像)である。画像32aは、上顎の顎模型38aの咬合面の画像であり、画像32bは、下顎の顎模型38bの咬合面の画像である。被写体である顎模型38a及び38bには、鉛筆等を用いて歯槽頂線が描かれており、画像32a及び32bは描かれた歯槽頂線35a及び35bが含まれている。
【0042】
画像33a及び33bは、それぞれ、画像32a及び32bを二値化処理した画像である。画像33a及び33bは、画像処理部13が画像32a及び32bに二値化処理を行うことによって生成した画像である。二値化処理は、画像32a及び32bから歯槽頂線の画像を抽出するために行われ、画像33a及び33bには、二値化処理された歯槽頂線36a及び36bの画像が含まれる。
【0043】
本実施形態では、表示制御部14は、顎模型38aの画像32aとこれを二値化した画像33aを左右に並べて表示すると共に、顎模型38bの画像32bとこれを二値化した画像33bを左右に並べて表示する。撮影画像と二値化画像とを左右に並べて表示することにより両者の対応関係を容易に把握することができる。また、表示制御部14は、上顎に関する画像32a及び33aを、画像31a~31cの上側に表示し、下顎に関する画像32b及び33bを画像31a~31cの上側に表示する。このように表示することにより、各画像に写った被写体の位置関係を容易に把握することができる。
【0044】
表示画面の右側に表示される画像34aは、上顎の顎模型38aの画像32aに、二値化処理した画像33bから抽出した下顎の歯槽頂線36bの画像を重畳した画像である。また、画像34aの下側に表示される画像34bは、下顎の顎模型38bの画像32bに、二値化処理した画像33aから抽出した上顎の歯槽頂線36aの画像を重畳した画像である。
【0045】
義歯作製は、患者の噛み合わせを確認しながら行われる。特に、ろう堤に人工歯を配列する工程では、上顎及び下顎の歯槽頂線同士の前後及び左右の位置関係を考慮して人工歯の位置決めが行われる。従来、上顎の顎模型38aの嵌合面や下顎の顎模型38bの嵌合面には、鉛筆等で歯槽頂線が描かれているが、上顎の歯槽頂線が描かれた顎模型38aの画像と、下顎の歯槽頂線が描かれた顎模型38bの画像とを参照しても、上下の歯槽頂線の位置関係を正確に確認することは困難であった。本実施形態に係る画像処理システム100を用いた場合、咬合器5に取り付けられた顎模型38a及び38bとカメラ1とを予め決まった位置関係に固定して撮影を行うため、上下一方の顎模型の咬合面の画像に、他方の顎模型の二値化画像から抽出した歯槽頂線の画像を重畳する処理により、上下の歯槽頂線の位置関係を正確に反映した画像34a及び34bを得ることができる。したがって、義歯作成者は、画像34a及び34bを、患者の噛み合わせ状況の把握や人工歯の配置位置の決定を行う際の有用な情報として利用することができる。
【0046】
尚、図7の表示例では、表示制御部14は、画像31a~31c、32a、32b、33a、33b、34a及び34bを並べて表示しているが、表示する画像の組み合わせは任意であり、図7の例に限定されない。例えば、表示制御部14は、左側の画像31a~31c、32a、32b、33a及び33bと、右側の34a及び34bとをそれぞれ別の画面で表示しても良い。また、画像31a~31cと、画像32a、32b、33a及び33bと、画像34a及び34bとを、それぞれ別の画面で表示しても良い。また、二値化処理した画像33a及び33bの表示を省略しても良い。
【0047】
また、図7の表示例では、操作ボタンが表示されているが、操作ボタンの表示は必須ではなく、また、図7に例示する以外の操作ボタンを表示しても良い。また、図7に示す各画像と合わせて、患者に関する情報や、義歯作製時に利用する情報等を合わせて表示しても良い。
【0048】
以下、図7で説明した各画像の撮影及び表示方法の例を説明する。
【0049】
撮影を行う前の準備として、咬合器5への顎模型38a及び38bの取り付けと、顎模型38a及び38bを取り付けた咬合器5のテーブル20への取り付けとを行う。尚、咬合器5の種類は特に限定されないが、例えば、平均値咬合器を使用することができる
【0050】
まず、咬合器5に咬合平面板をセットし、上顎の顎模型38aを咬合平面板に沿わせて上顎弓6に取り付ける。上顎弓6への顎模型38aの取り付けは、例えば、付着用の石膏を用いて行うことができる。次に、咬合器5から咬合平面板を取り外し、上顎の顎模型38aに対して下顎の顎模型38bを噛み合わせ位置に配置し、付着用の石膏等を用いて、咬合器5の下顎弓7に顎模型38bを取り付ける。
【0051】
次に、横フレーム23に設けたレーザーマーカーを用いてテーブル20にレーザを照射し、テーブル20の回転中心を特定する。レーザーマーカーは、照射するレーザの光軸が第3の位置に配置されるカメラ1の光軸と一致する位置に固定的に、または、着脱自在に設けられる。レーザーマーカーを着脱自在に横フレーム23に設ける場合、図3に示した位置決め部26cを利用して位置決めを行うことができる。次に、レーザーマーカーで特定されるテーブル20の回転中心を基準として、顎模型38a及び38bを取り付けた咬合器5を位置決めする。具体的には、咬合器5における咬合平面板の前歯先端から後方略25mmの点をレーザが通過するようにテーブル20に対する咬合器5の位置を調整し、咬合器5をテーブルに固定する。
【0052】
次に、縦フレーム22aに設けたレーザーマーカーを用いて顎模型38a及び38bにレーザを照射する。レーザーマーカーは、照射するレーザの光軸が第1の位置に配置されるカメラ1の光軸と一致する位置に固定的に、または、着脱自在に設けられる。レーザーマーカーを着脱自在に縦フレーム22aに設ける場合、図3に示した位置決め部26aを利用して位置決めを行うことができる。次に、レーザーマーカーから照射されるレーザの光軸が顎模型38a及び38bの咬合器の中心と一致するようにテーブル20の回転位置を調整することにより、顎模型38a及び38bが上述した正対位置(図5(a)参照)に位置決めされる。
【0053】
図8は、コンピュータが行う制御処理の一例を示すフローチャートである。図8の制御処理は、図7に示した画像31a~31cを取得し、表示画面に表示するために行う処理である。
【0054】
ステップS1において、カメラ制御部11は、第1の位置に配置されたカメラ1を用いて被写体の正面部の画像を取得する。ステップS1の処理を行う前に、撮影準備として、ユーザがカメラ1及び被写体を図6(a)に示した位置関係となるよう配置する。撮影準備完了後、ユーザは、図示しない撮影画面等において被写体のプレビュー画像を確認した上で、ボタンを押下する等により撮像指示を入力する。カメラ制御部11は、ユーザからの撮像指示の入力に応答して撮影画像を取得する。カメラ制御部11は、取得した正面部の画像を記憶部12に記憶させる。その後、処理はステップS2に進む。
【0055】
ステップS2において、カメラ制御部11は、第1の位置に配置されたカメラ1を用いて被写体の左側面部の画像を取得する。ステップS2の処理を行う前に、撮影準備として、ユーザがカメラ1及び被写体を図6(b)に示した位置関係となるよう配置する。撮影準備完了後、ユーザは、図示しない撮影画面等において被写体のプレビュー画像を確認した上で、ボタンを押下する等により撮像指示を入力する。カメラ制御部11は、ユーザからの撮像指示の入力に応答して撮影画像を取得する。カメラ制御部11は、取得した左側面部の画像を記憶部12に記憶させる。その後、処理はステップS3に進む。
【0056】
ステップS3において、カメラ制御部11は、第1の位置に配置されたカメラ1を用いて被写体の右側面部の画像を取得する。ステップS3の処理を行う前に、撮影準備として、ユーザがカメラ1及び被写体を図6(c)に示した位置関係となるよう配置する。撮影準備完了後、ユーザは、図示しない撮影画面等において被写体のプレビュー画像を確認した上で、ボタンを押下する等により撮像指示を入力する。カメラ制御部11は、ユーザからの撮像指示の入力に応答して撮影画像を取得する。カメラ制御部11は、取得した右側面部の画像を記憶部12に記憶させる。その後、処理はステップS4に進む。
【0057】
ステップS4において、表示制御部14は、ステップS1~S3で取得した左側面部の画像、正面部の画像及び右側面部の画像を記憶部12から読み出し、読み出した画像を表示装置に並べて表示させる。このとき、表示制御部14は、予め定められた順序で各画像を表示することができる。その後、処理を終了する。
【0058】
尚、ステップS1~S3の実行順序は特に限定されず、任意の順序で行うことができる。
【0059】
図9は、コンピュータが行う制御処理の他の一例を示すフローチャートである。図9の制御処理は、図7に示した画像32a及び32bを取得し、画像34a及び34bを生成して表示するために行う処理である。
【0060】
ステップS11において、カメラ制御部11は、第2の位置に配置されたカメラ1を用いて、上顎の顎模型38aの咬合面の画像を取得する。被写体である顎模型38aには、予め歯槽頂線が描かれる。ステップS11の処理を行う前に、撮影準備として、ユーザがカメラ1及び被写体を図5(b)に示した位置関係となるよう配置する。撮影準備完了後、ユーザは、図示しない撮影画面等において被写体のプレビュー画像を確認した上で、ボタンを押下する等により撮像指示を入力する。カメラ制御部11は、ユーザからの撮像指示の入力に応答して撮影画像を取得する。カメラ制御部11は、取得した顎模型38aの画像を記憶部12に記憶させる。その後、処理はステップS12に進む。
【0061】
ステップS12において、カメラ制御部11は、第3の位置に配置されたカメラ1を用いて、下顎の顎模型38bの咬合面の画像を取得する。被写体である顎模型38bには、予め歯槽頂線が描かれる。ステップS12の処理を行う前に、撮影準備として、ユーザがカメラ1及び被写体を図5(c)に示した位置関係となるよう配置する。撮影準備完了後、ユーザは、図示しない撮影画面等において被写体のプレビュー画像を確認した上で、ボタンを押下する等により撮像指示を入力する。カメラ制御部11は、ユーザからの撮像指示の入力に応答して撮影画像を取得する。カメラ制御部11は、取得した顎模型38bの画像を記憶部12に記憶させる。その後、処理はステップS13に進む。
【0062】
ステップS13において、画像処理部13は、ステップS11及びS12で撮影された画像に対して二値化処理を行う。二値化処理を行う際の閾値は、常法に従って適宜設定することができる。その後、処理はステップS14に進む。
【0063】
ステップS14において、画像処理部13は、ステップS13で生成した二値化された画像から、上顎の歯槽頂線の画像及び下顎の歯槽頂線の画像をそれぞれ抽出する。画像処理部13は、抽出した歯槽頂線の画像を記憶部12に記憶させても良い。その後、処理はステップS15に進む。尚、ステップS13において、ステップS11及びS12で撮影された画像に対して二値化処理を行わず、ステップS14において、ステップS11及びS12で撮影された画像から歯槽頂線の画像を抽出しても良い。
【0064】
ステップS15において、表示制御部14は、ステップs11及びS12で取得した撮影画像と、ステップS13で生成した二値化された画像とを並べて表示装置に表示させる。その後、処理はステップS16に進む。
【0065】
ステップS16において、表示制御部14は、ステップS11で取得した上顎の顎模型38aの画像に、ステップS14で抽出した下顎の歯槽頂線の画像を重畳した画像を表示装置に表示させる。その後、処理はステップS17に進む。
【0066】
ステップS17において、表示制御部14は、ステップS12で取得した下顎の顎模型38bの画像に、ステップS14で抽出した上顎の歯槽頂線の画像を重畳した画像を表示装置に表示させる。その後、処理を終了する。
【0067】
尚、ステップS16及びS17で表示する重畳画像は、画像処理部13がステップS14の処理の後に生成しても良い。また、ステップS16及びS17で表示する重畳画像は、記憶部12に記憶させても良い。
【0068】
また、ステップS13において、画像処理部13は、抽出した歯槽頂線の画像を任意の色に変更しても良い。例えば、上顎の歯槽頂線の画像を青色とし、下顎の歯槽頂線の画像を赤色とすれば、上下の歯槽頂線の把握が容易となり、ステップS16及びS17で表示される重畳画像において、顎模型に描かれた歯槽頂線と、重畳された歯槽頂線との見分けが容易となる。
【0069】
図8及び図9においては、新規に画像を撮影して撮影画像及び処理した画像を表示装置3に表示させる例を説明したが、2回目以降の表示時には、図8のステップS4、図9のステップS15~S17を適宜選択して実行すれば良い。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る画像処理システム100においては、被写体を取り付けた咬合器5に対して予め決まった位置(第1~第3の位置)にカメラ1を配置可能な撮影器具2を用いて、被写体の画像の撮影を行う。したがって、本実施形態によれば、咬合器5に取り付けられた被写体を同じ位置条件で撮影可能な画像処理システムを実現できる。
【0071】
また、撮影器具2のテーブルを回転させることにより、第1の位置にあるカメラ1に対して、被写体を予め定められた正対位置、第1の回転位置及び第2の回転位置に配置可能であるため、咬合器5に取り付けられた顎模型や義歯等を一定の角度で撮影することができる。例えば、義歯作製の各段階(顎模型作製、咬合床作製、人工歯配置、本義歯作製)において、第1の位置に配置したカメラ1で、正対位置、第1の回転位置及び第2の回転位置のそれぞれの被写体の写真を撮影しておくことで、義歯の作製過程を同じ角度の画像で記録することができる。また、義歯作製にかかわらず、歯列矯正中の各段階や治療前後の顎模型を作製し、第1の位置に配置したカメラ1で、正対位置、第1の回転位置及び第2の回転位置のそれぞれの被写体の写真を撮影して保存することで、治療の進展状況等の把握を容易にすることも可能となる。
【0072】
また、第2の位置及び第3の位置に配置したカメラ1を用いて上顎の顎模型38aの画像及び下顎の顎模型38bの画像を取得し、それぞれの画像に、反対側の顎部の歯槽頂線を重畳して表示することにより、上下の歯槽頂線の前後及び左右のずれや、患者の噛み合わせを正確に把握でき、義歯作製時の作業性が向上する。
【0073】
上記の実施形態では、撮影器具2として、図3に記載された形状のフレーム21を備えたものを例示したが、カメラ1を予め定められた第1~第3の位置に配置可能であれば、撮影器具2の形態は限定されない。例えば、以下に示す形態の撮影器具を採用することもできる。
【0074】
図10及び図11は、撮影器具の構成の変形例を示す模式図である。
【0075】
図10に示す撮影器具は、図3に示した縦フレーム22a及び横フレーム23に代えて、1本のレール状のフレーム42を設けたものである。フレーム42は、テーブル20上に取り付けられた咬合器5の前方側に配置され、鉛直上方に延びる縦フレーム部41aと、咬合器5の上方かつテーブル20の回転軸に交差する位置に配置され、水平方向に延びる横フレーム部41bと、縦フレーム部41a及び横フレーム部41bを接続する円弧状のコーナー部41cとを有する。カメラ1は、フレーム42の溝に係合し、フレーム42に沿って摺動可能な部材を介してフレーム42に取り付けられており、実線で示す第1の位置と、破線で示す第2の位置と、二点鎖線で示す第3の位置に配置可能である。
【0076】
図11に示す撮影器具は、図3に示した縦フレーム22a及び横フレーム23に代えて、フレーム43a及びフレーム43bを設けたものである。フレーム43aは、テーブル20上に取り付けられた咬合器5の前方側に配置され、鉛直上方に延びる部材である。フレーム43bは、フレーム43aの上端近傍の回転軸AX3を中心に回転可能となるようにフレーム43aに取り付けられている。フレーム43bは、回転により、フレーム43aと重なる位置と二点鎖線で示す位置とに配置可能である。カメラ1は、フレーム43bに沿って移動可能かつフレーム43bの周りを回転可能となるようにフレーム43bに取り付けられている。カメラ1は、フレーム43bをフレーム43aと重なる位置に配置した状態で、実線に示す第1の位置と、破線で示す第2の位置とに配置可能であり、フレーム43bを二点鎖線で示す位置まで回転させた状態で、二点鎖線で示す第3の位置に配置可能である。
【0077】
図10または図11に示す撮影器具を用いた場合でも、上記の実施形態で説明したものと同様の作用効果を得ることができる。また、図10及び図11の撮影器具の構成も例示であり、その他の構成を採用しても良い。
【0078】
上記の実施形態において、図9で説明したコンピュータの機能は、プロセッサ(CPU)とメモリと記憶装置とを備えるコンピュータが実行するプログラム、当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な非一時的記憶媒体として実現することも可能である。具体的には、歯槽頂線が描かれた上顎の顎模型の咬合面の撮影画像と、歯槽頂線が描かれた下顎の顎模型の咬合面の撮影画像とを取得するステップと、上顎の撮影画像及び下顎の撮影画像から、上顎の歯槽頂線の画像及び下顎の歯槽頂線の画像をそれぞれ抽出するステップと、上顎の撮影画像に、下顎の歯槽頂線の画像を重畳した画像と、下顎の撮影画像に、上顎の歯槽頂線の画像を重畳した画像とを表示装置に表示させるステップとを含むプログラムとして実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、歯科分野において顎模型や義歯等の画像を撮影及び表示するために利用できる。
【符号の説明】
【0080】
1 カメラ
2 撮影器具
3 表示装置
4 コンピュータ
5 咬合器
6 上顎弓
7 下顎弓
11 カメラ制御部
12 記憶部
13 画像処理部
14 表示制御部
20 テーブル
21 フレーム
31a、31b、32a、32b、33a、33b、34a、34b 画像
35a、35b、36a、36b 歯槽頂線
38a、38b 顎模型
39a、39b 義歯
100 画像処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11