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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091610
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】印刷管理システム及び印刷管理方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/00 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
B41F33/00 290
B41F33/00 210
B41F33/00 258
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204535
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000151416
【氏名又は名称】株式会社東京機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 崇史
【テーマコード(参考)】
2C250
【Fターム(参考)】
2C250EA04
2C250EA13
2C250EA21
2C250EA34
2C250EB11
(57)【要約】
【課題】オペレーターのノンスキル化、更には省人化を図ることが可能な印刷管理システム及び印刷管理方法を提供する。
【解決手段】連続紙の走行方向に沿って配設され、該連続紙に重ね刷りを行う複数の印刷ユニットと、動作制御値に基づいて該連続紙の幅を調整する幅調整装置とを有するタワー型印刷装置を備える印刷管理システムであって、動作制御値のプリセット値を記憶する記憶部と、記憶部のプリセット値を幅調整装置の動作制御値としてプリセットするプリセット部と、幅調整装置の動作制御値の実績値に基づいて、記憶部のプリセット値を更新する更新部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続紙の走行方向に沿って配設され、該連続紙に重ね刷りを行う複数の印刷ユニットと、動作制御値に基づいて該連続紙の幅を調整する幅調整装置とを有するタワー型印刷装置を備える印刷管理システムであって、
前記動作制御値のプリセット値を記憶する記憶部と、
前記記憶部の前記プリセット値を前記幅調整装置の前記動作制御値としてプリセットするプリセット部と、
前記幅調整装置の前記動作制御値の実績値に基づいて、前記記憶部の前記プリセット値を更新する更新部と
を備えることを特徴とする印刷管理システム。
【請求項2】
前記タワー型印刷装置とデータ通信可能に接続された印刷管理サーバーを更に備え、
前記印刷管理サーバーは、前記記憶部及び前記更新部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷管理システム。
【請求項3】
前記タワー型印刷装置は、前記印刷管理サーバーの前記記憶部から取得した前記プリセット値と、前記幅調整装置の前記実績値とを格納可能な印刷機側記憶部を備え、該印刷機側記憶部に格納された前記実績値を前記印刷管理サーバーに送信可能に構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷管理システム。
【請求項4】
前記印刷機側記憶部は、前記プリセット値を格納するプリセット値格納エリアと、前記実績値を格納する実績値格納エリアとを備え、
前記タワー型印刷装置は、前記幅調整装置の前記動作制御値が手動又は自動で変更された際に、該変更された前記動作制御値を前記実績値として前記実績値格納エリアに格納するよう構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷管理システム。
【請求項5】
前記タワー型印刷装置は、前記印刷管理サーバーの前記記憶部から取得した前記プリセット値を前記プリセット値格納エリア及び前記実績値格納エリアにそれぞれ格納し、前記幅調整装置の前記動作制御値が手動又は自動で変更された際に、前記実績値格納エリアの前記プリセット値を前記実績値に変更するよう構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷管理システム。
【請求項6】
前記プリセット値は、所定の印刷速度帯毎に設定されており、
前記タワー型印刷装置は、前記変更された実績値に基づいて、前後の印刷速度帯の前記動作制御値を補正するよう構成されている
ことを特徴とする請求項5に記載の印刷管理システム。
【請求項7】
前記タワー型印刷装置において紙継ぎが行われた際に、前記印刷管理サーバーは、紙継ぎ前の巻取紙に対応する前記実績値を取り込むと共に、紙継ぎ後の巻取紙に対応する前記プリセット値を前記幅調整装置の前記動作制御値として再度プリセットするよう構成されている
ことを特徴とする請求項3~6のいずれか1項に記載の印刷管理システム。
【請求項8】
前記印刷管理サーバーは、印刷が実行される月に関する情報、巻取紙に関する情報、胴水カーブに関する情報及びカラー面有無に関する情報のうちの少なくとも1以上の情報を特定可能なパターン番号により、該特定される情報のパターン毎に前記プリセット値を管理する
ことを特徴とする請求項2~6のいずれか1項に記載の印刷管理システム。
【請求項9】
連続紙の走行方向に沿って配設され、該連続紙に重ね刷りを行う複数の印刷ユニットと、動作制御値に基づいて該連続紙の幅を調整する幅調整装置とを有するタワー型印刷装置の印刷管理方法であって、
予め記憶されたプリセット値を前記幅調整装置の前記動作制御値としてプリセットするプリセット工程と、
前記幅調整装置の前記動作制御値の実績値に基づいて、前記プリセット値を更新する更新工程と
を含むことを特徴とする印刷管理方法。
【請求項10】
前記プリセット値は、所定の印刷速度帯毎に設定されており、
前記幅調整装置の前記動作制御値が手動又は自動で変更された際に、該変更された印刷速度帯の実績値に基づいて、前後の印刷速度帯の前記動作制御値を補正する
ことを特徴とする請求項9に記載の印刷管理方法。
【請求項11】
印刷が実行される月に関する情報、巻取紙に関する情報、胴水カーブに関する情報及びカラー面有無に関する情報のうちの少なくとも1以上の情報を特定可能なパターン番号により、該特定される情報のパターン毎に前記プリセット値を管理する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の印刷管理方法。
【請求項12】
前記タワー型印刷装置において紙継ぎが行われた際に、紙継ぎ前の巻取紙に対応する前記実績値を取り込むと共に、紙継ぎ後の巻取紙に対応する前記プリセット値を前記幅調整装置の前記動作制御値として再度プリセットする
ことを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の印刷管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続紙の幅を調整するための幅調整装置を備える印刷管理システム及び印刷管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オフセット輪転印刷機として、例えば図20に示すように、それぞれ異なる色の印刷が可能な印刷ユニットP~Pが上下方向(縦方向)に並べて複数配置されたタワー型印刷装置TPを備えるものが知られている(特許文献1)。
【0003】
このタワー型印刷装置TPにおいて、各印刷ユニットP~Pは、多数のインキ供給ローラーを有するインキ供給装置102と、湿し水を供給する湿し水供給装置104と、刷版が装着される版胴106と、ブランケットが装着されるブランケット胴108とを備えている。これら各印刷ユニットP~Pに用いられる刷版には、親油性の印刷画線部と、親水性の非画線部とが設けられており、親水性の非画線部に湿し水供給装置104から湿し水が供給された状態でインキ供給装置102からインキが供給されることにより、親油性の印刷画線部のみにインキが塗布されるよう構成されている。
【0004】
そして、これら印刷ユニットP~Pは、インキ供給装置102から供給されたインキが版胴106を介してブランケット胴108に供給され、ブランケット胴108が走行する連続紙(被印刷体)Wと所定の圧力で接触することにより、連続紙Wに刷版の内容(文字や画像等)が転写されるよう、すなわち、連続紙Wにオフセット印刷(平版印刷)が施されるよう構成されている。
【0005】
従来の印刷ユニットP~Pは、上述のように、湿し水を用いて印刷を行うものであるため、連続紙Wのパルプ繊維が湿し水を吸収して膨張することで、連続紙Wが幅方向に拡大(伸長)する現象(ファンアウト)が生じるという問題がある。そして、このようなファンアウトは、下方側(上流側)の印刷ユニットで刷った印刷画線と上方側(下流側)の印刷ユニットで刷った印刷画線との間に位置ズレ等の印刷不良を引き起こすおそれがある。
【0006】
そこで、従来のタワー型印刷装置TPでは、図20に示すように、各印刷ユニットP~Pの間、すなわち、最下段の印刷ユニットPと2段目の印刷ユニットPとの間、2段目の印刷ユニットPと3段目の印刷ユニットPとの間、及び、3段目の印刷ユニットPと最上段の印刷ユニットPとの間に、それぞれ、連続紙Wの幅方向の長さを調整するための幅調整装置100が配置されている。
【0007】
幅調整装置100は、それぞれ、連続紙Wを挟んで千鳥状に対向配置された複数の押付け部材を連続紙Wの幅方向全域に亘って押付けることによって、連続紙Wに波打ちを発生させることで、次段の印刷ユニットに前段で刷られた連続紙Wの印刷画線が到達する前に、ファンアウトによって幅方向に伸長した連続紙Wの幅方向の長さを元の幅方向の長さに修正するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5-178511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の従来の幅調整装置100は、タワー型印刷装置TPの始動前に、連続紙Wの銘柄毎に予め設定された初期位置となるよう各押付け部材の押し込み量が制御されると共に、タワー型印刷装置TPの始動後に、連続紙Wの走行速度(すなわち、印刷速度)に応じて各押付け部材の押し込み量が適宜変更調整されるよう構成されている。
【0010】
このような特許文献1に記載の従来の幅調整装置100によれば、連続紙Wの幅調整を自動で行うことが可能となるが、自動制御を高精度で実行するためには、初期位置の設定や印刷速度に応じた押し込み調整量等の設定をオペレーターが事前に正確に行う必要があり、事前設定に高度なスキル及び知見を要すると共に、事前設定の作業負担が大きいという問題がある。
【0011】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、オペレーターのノンスキル化、更には省人化を図ることが可能な印刷管理システム及び印刷管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る印刷管理システムは、連続紙の走行方向に沿って配設され、該連続紙に重ね刷りを行う複数の印刷ユニットと、動作制御値に基づいて該連続紙の幅を調整する幅調整装置とを有するタワー型印刷装置を備える印刷管理システムであって、前記動作制御値のプリセット値を記憶する記憶部と、前記記憶部の前記プリセット値を前記幅調整装置の前記動作制御値としてプリセットするプリセット部と、前記幅調整装置の前記動作制御値の実績値に基づいて、前記記憶部の前記プリセット値を更新する更新部とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る印刷管理システムは、前記タワー型印刷装置とデータ通信可能に接続された印刷管理サーバーを更に備え、前記印刷管理サーバーは、前記記憶部及び前記更新部を備える構成としても良い。
【0014】
本発明に係る印刷管理システムにおいて、前記タワー型印刷装置は、前記印刷管理サーバーの前記記憶部から取得した前記プリセット値と、前記幅調整装置の前記実績値とを格納可能な印刷機側記憶部を備え、該印刷機側記憶部に格納された前記実績値を前記印刷管理サーバーに送信可能に構成されても良い。
【0015】
本発明に係る印刷管理システムにおいて、前記印刷機側記憶部は、前記プリセット値を格納するプリセット値格納エリアと、前記実績値を格納する実績値格納エリアとを備え、前記タワー型印刷装置は、前記幅調整装置の前記動作制御値が手動又は自動で変更された際に、該変更された前記動作制御値を前記実績値として前記実績値格納エリアに格納するよう構成されても良い。
【0016】
本発明に係る印刷管理システムにおいて、前記タワー型印刷装置は、前記印刷管理サーバーの前記記憶部から取得した前記プリセット値を前記プリセット値格納エリア及び前記実績値格納エリアにそれぞれ格納し、前記幅調整装置の前記動作制御値が手動又は自動で変更された際に、前記実績値格納エリアの前記プリセット値を前記実績値に変更するよう構成されても良い。
【0017】
本発明に係る印刷管理システムにおいて、前記プリセット値は、所定の印刷速度帯毎に設定されており、前記タワー型印刷装置は、前記変更された実績値に基づいて、前後の印刷速度帯の前記動作制御値を補正するよう構成されることが好ましい。
【0018】
本発明に係る印刷管理システムにおいて、前記タワー型印刷装置において紙継ぎが行われた際に、前記印刷管理サーバーは、紙継ぎ前の巻取紙に対応する前記実績値を取り込むと共に、紙継ぎ後の巻取紙に対応する前記プリセット値を前記幅調整装置の前記動作制御値として再度プリセットするよう構成されることが好ましい。
【0019】
本発明に係る印刷管理システムにおいて、前記印刷管理サーバーは、印刷が実行される月に関する情報、巻取紙に関する情報、胴水カーブに関する情報及びカラー面有無に関する情報のうちの少なくとも1以上の情報を特定可能なパターン番号により、該特定される情報のパターン毎に前記プリセット値を管理することが好ましい。
【0020】
また、本発明に係る印刷管理方法は、連続紙の走行方向に沿って配設され、該連続紙に重ね刷りを行う複数の印刷ユニットと、動作制御値に基づいて該連続紙の幅を調整する幅調整装置とを有するタワー型印刷装置の印刷管理方法であって、予め記憶されたプリセット値を前記幅調整装置の前記動作制御値としてプリセットするプリセット工程と、前記幅調整装置の前記動作制御値の実績値に基づいて、前記プリセット値を更新する更新工程とを含むことを特徴とする。
【0021】
本発明に係る印刷管理方法において、前記プリセット値は、所定の印刷速度帯毎に設定されており、前記幅調整装置の前記動作制御値が手動又は自動で変更された際に、該変更された印刷速度帯の実績値に基づいて、前後の印刷速度帯の前記動作制御値を補正することが好ましい。
【0022】
本発明に係る印刷管理方法において、印刷が実行される月に関する情報、巻取紙に関する情報、胴水カーブに関する情報及びカラー面有無に関する情報のうちの少なくとも1以上の情報を特定可能なパターン番号により、該特定される情報のパターン毎に前記プリセット値を管理することが好ましい。
【0023】
本発明に係る印刷管理方法において、前記タワー型印刷装置において紙継ぎが行われた際に、紙継ぎ前の巻取紙に対応する前記実績値を取り込むと共に、紙継ぎ後の巻取紙に対応する前記プリセット値を前記幅調整装置の前記動作制御値として再度プリセットすることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、オペレーターのノンスキル化、更には省人化を図ることが可能な印刷管理システム及び印刷管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る印刷管理システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係るオフセット輪転印刷機を示す図である。
図3】幅調整装置の配置関係を示す図(図2のA矢視図)である。
図4】幅調整装置の構成を示す図(図3のB-B´断面図)である。
図5図5(a)は、アンチファンアウトローラーのOS側端部及びDS側端部の双方が連続紙の紙面に対して接近された状態を示す図であり、図5(b)は、アンチファンアウトローラーのDS側端部が連続紙の紙面に対して接近された状態を示す図であり、図5(c)は、アンチファンアウトローラーのOS側端部が連続紙の紙面に対して接近された状態を示す図である。
図6】幅調整装置の駆動系の構成を示す図である。
図7】印刷管理サーバー、折制御盤及び印刷制御盤等の構成を示すブロック図である。
図8】パターン番号を一意に特定する手法の一例を示す図である。
図9】動作制御値のプリセット値の一例を示す図である。
図10】本実施形態に係る印刷管理方法の1日のスケジュールの例を示す図である。
図11】オフセット輪転印刷機の稼働状況の例を示す図である。
図12】本実施形態に係る印刷管理方法の一連の流れを示す図である。
図13】本実施形態に係る印刷管理方法の一連の流れを示す図である。
図14】本実施形態に係る印刷管理方法の一連の流れを示す図である。
図15】本実施形態に係る印刷管理方法の一連の流れを示す図である。
図16】速度単位調整実行ルーチンの流れを示す図である。
図17】動作制御値の補正処理のイメージを示す図である。
図18】紙継ぎ判定実行ルーチンの流れを示す図である。
図19】印刷管理サーバーにおける更新処理の流れを示す図である。
図20】従来のタワー型印刷装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0027】
[印刷管理システムの全体構成]
本実施形態に係る印刷管理システム1は、図1に示すように、1又は複数のオフセット輪転印刷機10(オフセット輪転印刷機10a~10n)と、各オフセット輪転印刷機10と工場内通信ネットワークNW1を介してデータ通信可能に接続された工場サーバー50及び印刷管理サーバー60とを備えている。
【0028】
[オフセット輪転印刷機]
まず、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機10の全体構成について説明する。なお、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機10は、後述する幅調整装置20a~20cのプリセット処理に関連する構成を除き、既存のオフセット輪転印刷機を適宜流用することが可能であるため、各構成の詳細な説明は省略する。
【0029】
本実施形態に係るオフセット輪転印刷機10は、新聞を印刷するために用いられる所謂新聞用オフセット輪転印刷機であり、図2に示すように、複数の巻取紙Rを保持する複数(図示の例では2台)の給紙部12a,12bと、給紙部12a,12bから供給される連続紙Wに印刷を施す複数(図示の例では2台)のタワー型印刷装置TPa,TPbと、印刷後の単数又は複数の連続紙Wを所定のカットオフ(断裁長)で断裁して個々の枚葉状シート群を作成し、該枚葉状シート群を折り畳んで所望の折丁を作成する折機16と、各タワー型印刷装置TPa,TPbから折機16に至る連続紙Wの走行経路を形成する複数(図示の例では2台)のレールフレーム部14a,14bとを備えている。なお、図示の例では、給紙部、印刷部及びレールフレーム部からなるタワーが2列設けられる構成を図示したが、これに限定されず、作成する折丁の構成に応じて、給紙部、印刷部及びレールフレーム部の構成及びその設置数は任意に設定することができる。
【0030】
給紙部12a,12bは、図2に示すように、工場(建屋)内の地下階(給紙フロアRFL)に設置されており、それぞれ、連続紙Wがロール状に巻き取りされた複数の巻取紙Rを保持する保持アームと、巻取紙Rから引き出された連続紙Wを対応するタワー型印刷装置TPa,TPbへ向けて送り出すインフィードローラー(図示せず)と、インフィードローラーの下流に配されたダンサーローラー(図示せず)と、連続紙と待機状態の巻取紙Rとを自動的に紙継ぎする紙継ぎ装置(図示せず)とを備えている。
【0031】
また、給紙部12a,12bは、図1に示すように、それぞれ、各給紙部12a,12bを動作させるための各種制御を実行する給紙制御盤13a,13bを備えている。なお、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機10において、給紙部12a,12bは、上述の構成に限定されず、オフセット輪転印刷機に採用可能な構成であれば、種々の構成を採用可能である。
【0032】
タワー型印刷装置TPa,TPbは、図2に示すように、工場(建屋)内の地上階(印刷フロアPFL)に設置されており、それぞれ、上下方向(連続紙Wの走行方向)に沿って並べて配設された複数(本実施形態では4つ)の印刷ユニットP~Pと、各印刷ユニットP~Pの間に配置された複数(本実施形態では3つ)の幅調整装置20a~20cとを備えている。各タワー型印刷装置TPa,TPbは、下方から上方に向かって走行する連続紙Wに対し、それぞれ異なる色(本実施形態ではシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の印刷が可能な印刷ユニットP~Pによって重ね刷りを行うことで、連続紙Wに両面カラー印刷(本実施形態では両面4色印刷)を施すよう構成されている。
【0033】
印刷ユニットP~Pは、図20に示す従来の印刷ユニットP~Pと同様に、多数のインキ供給ローラーを有するインキ供給装置102と、湿し水を供給する湿し水供給装置104と、刷版が装着される版胴106と、ブランケットが装着されるブランケット胴108とを備えている。
【0034】
これら各印刷ユニットP~Pに用いられる刷版には、親油性の印刷画線部と、親水性の非画線部とが設けられており、親水性の非画線部に湿し水供給装置104から湿し水が供給された状態でインキ供給装置102からインキが供給されることにより、親油性の印刷画線部のみにインキが塗布されるよう構成されている。
【0035】
そして、これら印刷ユニットP~Pは、インキ供給装置102から供給されたインキが版胴106を介してブランケット胴108に供給され、ブランケット胴108が走行する連続紙(被印刷体)Wと所定の圧力で接触することにより、連続紙Wに刷版の内容(文字や画像等)が転写されるよう、すなわち、連続紙Wにオフセット印刷(平版印刷)が施されるよう構成されている。なお、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機10において、本実施形態に係るタワー型印刷装置TPa,TPbにおいて、これらインキ供給装置102、湿し水供給装置104、版胴106及びブランケット胴108は、種々の公知のものを任意に用いることができるため、その説明を省略する。
【0036】
幅調整装置20a~20cは、図2及び図3に示すように、最下段の印刷ユニットPと2段目の印刷ユニットPとの間、2段目の印刷ユニットPと3段目の印刷ユニットPとの間、及び、3段目の印刷ユニットPと最上段の印刷ユニットPとの間に配置されている。各幅調整装置20a~20cは、それぞれ、連続紙Wの幅方向全域に亘って波打ちを発生させ、連続紙Wの幅方向の長さを縮めるよう構成されている。なお、幅調整装置20a~20cの構成については、後述する。
【0037】
また、タワー型印刷装置TPa,TPbは、図1及び図2に示すように、それぞれ、各タワー型印刷装置TPa,TPbを動作させるための各種制御を実行する印刷制御盤11a,11bと、各タワー型印刷装置TPa,TPbの運転に関する各種情報を設定入力可能な印刷部グラフィックパネルGPTa,GPTbとを備えている。
【0038】
印刷制御盤11a,11bは、図7に示すように、それぞれ、幅調整装置20a~20cの制御を含む各種制御を実行する印刷部PLC70を備えており、該印刷部PLC70は、幅調整装置20a~20cの制御に関連する情報を含む各種情報(例えば動作制御値のプリセット値や、幅調整装置20a~20cの実績値等)を格納する印刷機側記憶部72を備えている。なお、これら印刷制御盤11a,11b及び印刷部グラフィックパネルGPTa,GPTbの構成については、後述する。
【0039】
レールフレーム部14a,14bは、図2に示すように、それぞれ、各タワー型印刷装置TPa,TPbの上部に位置し、各タワー型印刷装置TPa,TPbから送り出された倍幅の連続紙Wを2分の1幅に断裁し、ページ順に重ねて折機16まで導くよう構成されている。具体的には、各レールフレーム部14a,14bは、各タワー型印刷装置TPa,TPbから排出された倍幅の連続紙を牽引することでレールフレーム部14a,14bの内部へ送り込むアウトフィードローラー(図示せず)と、レールフレーム部14a,14bの内部において、スリッターナイフ機構(図示せず)と協働して連続紙を2分の1幅に裁断する第1ドラッグローラー(図示せず)及び2分の1幅にされた連続紙を牽引する複数のドラッグローラー(図示せず)とを備えている。
【0040】
また、レールフレーム部14a,14bは、図1に示すように、各レールフレーム部14a,14bを動作させるための各種制御を実行するレール制御盤15を備えている。なお、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機10において、各レールフレーム部14a,14bは、上述の構成に限定されず、オフセット輪転印刷機に採用可能な構成であれば、種々の構成を採用可能である。
【0041】
折機16は、図2に示すように、各レールフレーム部14a,14bから送り出された複数の連続紙Wを重ね合わせて下流側のフォーマー部に送り出す折上ドラッグローラー(図示せず)と、折上ドラッグローラー(図示せず)によって重ね合わされた連続紙Wを縦折りするフォーマー(図示せず)と、フォーマー(図示せず)により縦折りされた連続紙Wを牽引するニッピングローラー(図示せず)と、連続紙Wを幅方向に断裁して個々の枚葉状シート群を作成する鋸胴(図示せず)と、断裁された枚葉状シート群を幅方向に沿って横折りして折丁を作成する操作側及び駆動側の折胴(図示せず)と、操作側及び駆動側の折胴においてそれぞれ形成された折丁を下流側に搬送する搬送機構(図示せず)とを備えている。
【0042】
また、折機16は、図1及び図2に示すように、折機16を含む輪転機全体を動作させるための各種制御を実行する折制御盤17と、輪転機全体の運転に関する各種情報を設定入力可能な折部グラフィックパネルGPFとを備えている。
【0043】
折制御盤17は、図1及び図7に示すように、工場内通信ネットワークNW1を介して印刷管理サーバー60とデータ通信可能に接続されると共に、印刷機内ネットワークNW2を介して、給紙制御盤13a,13b、印刷制御盤11a,11b及びレール制御盤15とデータ通信可能に接続されている。また、折制御盤17は、図7に示すように、各種制御を実行するための折部PLC18を備えており、該折部PLC18により、印刷管理サーバー60から出力された後述するプリセット値等の情報を印刷制御盤11a,11bに対して伝送すると共に、印刷制御盤11a,11bから出力された後述する実績値等の情報を印刷管理サーバー60に対して伝送することが可能に構成されている。なお、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機10において、折機16は、上述の構成に限定されず、オフセット輪転印刷機に採用可能な構成であれば、種々の構成を採用可能である。
【0044】
[幅調整装置]
本実施形態において、幅調整装置20a~20cは、千鳥状に配置されたコロ状の部材によって連続紙Wに波打ちを発生させる所謂アンチファンアウトローラーである。具体的には、幅調整装置20a~20cは、図4及び図5に示すように、連続紙Wの一方の面(表面)側に配置された表面側波打ち形成手段22と、連続紙Wの他方の面(裏面)側に配置された裏面側波打ち形成手段24と、表面側波打ち形成手段22及び裏面側波打ち形成手段24を連続紙Wの紙面に対して接近又は離間させることが可能なOS側(操作側)駆動手段26及びDS側(駆動側)駆動手段28とを備えている。
【0045】
表面側波打ち形成手段22は、図5(a)に示すように、連続紙Wの走行方向と直交かつ連続紙Wの紙面と平行に設けられた支持軸22aと、支持軸22a上に所定の間隔をおいて取り付けられた複数(本実施形態では5つ)の押付け部材22bとを備えている。また、裏面側波打ち形成手段24は、表面側波打ち形成手段22と同様に、連続紙Wの走行方向と直交かつ連続紙Wの紙面と平行に設けられた支持軸24aと、支持軸24a上に所定の間隔をおいて取り付けられた複数(本実施形態では5つ)の押付け部材24bとを備えている。
【0046】
支持軸22a,24aは、図5(a)~図5(c)に示すように、それぞれ、一対のフレーム間に架け渡された長尺な円柱部材であり、OS側駆動手段26によりOS側(操作側)の端部が連続紙Wの紙面に対して接近又は離間可能に構成されると共に、DS側駆動手段28によりDS側(駆動側)の端部が連続紙Wの紙面に対して接近又は離間可能に構成されている。なお、図5(a)は、OS側駆動手段26及びDS側駆動手段28によって、表面側波打ち形成手段22及び裏面側波打ち形成手段24が互いに略平行を保ったまま連続紙Wの紙面に対して接近された状態を示しており、図5(b)は、DS側駆動手段28によって、表面側波打ち形成手段22及び裏面側波打ち形成手段24のDS側の端部が連続紙Wの紙面に対して接近された状態を示しており、図5(c)は、OS側駆動手段26によって、表面側波打ち形成手段22及び裏面側波打ち形成手段24のOS側の端部が連続紙Wの紙面に対して接近された状態を示している。
【0047】
押付け部材22b,24bは、それぞれ、支持軸22a,24aにベアリング(図示せず)を介して回転可能に取り付けられたコロ状の部材であり、支持軸22a,24aの軸方向に沿って、その取付け位置を調整可能に構成されている。これら表面側波打ち形成手段22の押付け部材22bと裏面側波打ち形成手段24の押付け部材24bは、図5(a)に示すように、それぞれ、連続紙Wの幅方向全域に亘って、連続紙Wを挟んで千鳥状の配置となるよう、軸方向(連続紙Wの幅方向)の位置をずらして設けられている。
【0048】
OS側駆動手段26は、図6に示すように、支持軸22a,24aのOS側の端部に設けられた偏心カム(図示せず)と、該偏心カムを回転させることで支持軸22a,24aのOS側の端部を連続紙Wの紙面に対して接近又は離間させる駆動モーター26aと、駆動モーター26aの動作量(すなわち、幅調整装置20a~20cのOS側の動作量)を検出するポテンショメーター26bとを備えている。また、DS側駆動手段28は、OS側駆動手段26と同様に、支持軸22a,24aのDS側の端部に設けられた偏心カム(図示せず)と、該偏心カムを回転させることで支持軸22a,24aのDS側の端部を連続紙Wの紙面に対して接近又は離間させる駆動モーター28aと、駆動モーター28aの動作量(すなわち、幅調整装置20a~20cのDS側の動作量)を検出するポテンショメーター28bとを備えている。
【0049】
各駆動モーター26a,28aは、図6に示すように、モーター駆動線29aを介して印刷制御盤11a(11b)と電気的に接続されており、印刷制御盤11a(11b)から入力された動作制御値に基づき、幅調整装置20a~20cの動作量(本実施形態では押付け部材22b,24bの追込み量)を調整するよう構成されている。また、ポテンショメーター26b,28bは、現在値信号線29bを介して印刷制御盤11a(11b)と電気的に接続されており、検出した各駆動モーター26a,28aのリアルタイムな動作量(すなわち、押付け部材22b,24bのリアルタイムな追込み量)を印刷制御盤11a(11b)に対して出力することが可能に構成されている。
【0050】
以上のような幅調整装置20a~20cによれば、図5(a)~図5(c)に示すように、連続紙Wを挟んで千鳥状に対向配置された複数の押付け部材22b,24bを連続紙Wに押付けることによって、連続紙Wの幅方向全域に亘って又は局所的に波打ちを発生させ、これにより、連続紙Wの幅方向の長さを縮めることが可能である。また、幅調整装置20a~20cは、OS側駆動手段26及びDS側駆動手段28によって支持軸22a,24aを連続紙Wの紙面に対して接近又は離間させ、押付け部材22b,24bによる追込み量を調整することにより、連続紙Wの幅方向の長さの縮小量を任意に調整することが可能である。そして、幅調整装置20a~20cによれば、このように連続紙Wの幅方向の長さを任意に縮めることにより、次段の印刷ユニット(P~P)に前段で刷られた連続紙Wの印刷画線が到達する前に、ファンアウトによって幅方向に伸長した連続紙Wの幅方向の長さを元の幅方向の長さに修正することが可能である。
【0051】
また、本実施形態に係る幅調整装置20a~20cによれば、図5(b)及び図5(c)に示すように、押付け部材22b,24bによるOS側の追込み量とDS側の追込み量とを異ならせることが可能であるため、例えば、連続紙WのOS側の頁にDS側の頁よりも画線面積が大きい全面広告等の大きな絵柄が印刷され、OS側とDS側のファンアウト量が異なる場合であっても、当該ファンアウト量との差を考慮してOS側の追込み量とDS側の追込み量とをそれぞれ調整することが可能となり、これにより、全ての頁において先刷りの絵柄と後刷りの絵柄とを精度よく重ね合わせることが可能となる。
【0052】
[工場サーバー]
工場サーバー50は、工場(建屋)内の設備全体を管理するサーバーであり、図1に示すように、新聞社通信ネットワークNPNWを介して図示しない上位システム(新聞社本社)とデータ通信可能に接続されると共に、工場内通信ネットワークNW1を介して印刷管理サーバー60及び各オフセット輪転印刷機10とデータ通信可能に接続されている。上位システム(新聞社本社)は、記事入力、頁建の決定、紙面作成、各工場の媒体毎の印刷部数等の振り分け等を行った上で、これらの情報を、新聞社通信ネットワークNPNWを介して各工場の工場サーバー50にそれぞれ送信する。各工場サーバー50は、上位システム(本社システム等)から受信した生産管理、印刷の頁建及び紙面等の情報を、自工場の印刷管理サーバー60や紙庫管理システム(図示せず)等に配信するゲートウェイとして機能するよう構成されている。
【0053】
[印刷管理サーバー]
印刷管理サーバー60は、工場(建屋)内に設置された全てのオフセット輪転印刷機10を管理するサーバーであり、工場内通信ネットワークNW1を介して各オフセット輪転印刷機10とデータ通信可能に接続されている。
【0054】
印刷管理サーバー60は、概略的には、事前に、幅調整装置20a~20cを動作させるための動作制御値のプリセット値を印刷する料紙に関する条件等の諸条件毎に分類して用意しておき、印刷開始時及び紙継ぎ時にそれぞれ、その際の諸条件に沿ったプリセット値を各オフセット輪転印刷機10に対してプリセットするよう構成されている。また、印刷管理サーバー60は、工場内の各オフセット輪転印刷機10の印刷終了時及び紙継ぎ時にそれぞれ、各オフセット輪転印刷機10から前印刷の実績値群データを取り込み、予め定めた設定処理時間(例えば朝刊印刷後の深夜等)が到来した際に、収集した過去の実績値群データを用いて演算処理を実行し、該演算処理によって最適化された値にプリセット値を更新するよう構成されている。
【0055】
具体的には、印刷管理サーバー60は、図7に示すように、幅調整装置20a~20cを動作させるための動作制御値のプリセット値を記憶する記憶部62と、記憶部62のプリセット値を幅調整装置20a~20cの動作制御値としてプリセットするプリセット部66と、幅調整装置20a~20cの動作制御値の実績値に基づいて、記憶部62のプリセット値を更新する更新部68とを備えている。以下、動作制御値のプリセットに関連する構成として、オフセット輪転印刷機10側の印刷制御盤11a,11b及び印刷部グラフィックパネルGPTa,GPTbの構成と共に、これら記憶部62、プリセット部66及び更新部68の構成について説明する。
【0056】
[動作制御値のプリセットに関連する構成]
印刷管理サーバー60の記憶部62は、図7に示すように、動作制御値のプリセット値を格納するプリセットパラメーターテーブルエリア63と、動作制御値の過去の実績値を格納する時系列保存パラメーターテーブルエリア64とを備えている。これらプリセットパラメーターテーブルエリア63及び時系列保存パラメーターテーブルエリア64は、オフセット輪転印刷機10毎の個別のタワー型印刷装置TP毎に割り当てられている。すなわち、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機10では、タワー型印刷装置TPaに対し、該タワー型印刷装置TPaに関するプリセット値及び実績値を格納するためのプリセットパラメーターテーブルエリア63及び時系列保存パラメーターテーブルエリア64が割り当てられると共に、タワー型印刷装置TPbに対し、該タワー型印刷装置TPbに関するプリセット値及び実績値を格納するためのプリセットパラメーターテーブルエリア63及び時系列保存パラメーターテーブルエリア64が割り当てられるよう構成されている。
【0057】
各プリセットパラメーターテーブルエリア63(図7では1つのみ図示)は、印刷の諸条件毎に割り当てられたパターン番号毎に、動作制御値のプリセット値を格納するよう構成されている。ここで、「パターン番号」とは、幅調整装置20a~20cの動作制御に関連する諸条件を一意に特定するためのIDである。パターン番号は、例えば21桁の16進数により定められたID情報とすることが可能であるが、これに限定されるものではなく、必要に応じて桁数を増減させることが可能であり、また、16進数以外の構成であっても良い。
【0058】
また、パターン番号を特定するための「諸条件」としては、例えば、印刷時期に関する条件(例えば印刷が実行される月に関する情報等)、印刷する料紙に関する条件(例えば巻取紙の紙種、ロット番号、紙幅及び巻取装着位置に関する情報等)、オフセット輪転印刷機10における湿し水の供給量に関する条件(例えば胴水カーブに関する情報等)、並びに、印刷内容に関する条件(例えばカラー面の有無等)等から選ばれる1以上の条件が例示される。
【0059】
図8は、上記例示した諸条件に基づきパターン番号を一意に特定する例を示す表を示している。本実施形態において、21桁のパターン番号のうち、21桁目は、「印刷時期に関する条件」を意味しており、図8に示す例においては、3~0ビットの領域を用いて「印刷が実行される月に関する情報」を一意に特定可能となっている。なお、図8に示す例では、3~0ビットの領域が「0110」となっているため、パターン番号の21桁目は「6」となる。
【0060】
また、21桁のパターン番号のうち、20桁目~17桁目は、「印刷する料紙に関する条件」を意味しており、図8に示す例においては、15~11ビットの領域を用いて「巻取紙の紙種に関する情報」を、10~8ビットの領域を用いて「ロット番号に関する情報」を、7~4ビットの領域を用いて「紙幅に関する情報」を、3~0ビットの領域を用いて「巻取装着位置に関する情報」を、それぞれ一意に特定可能となっている。なお、図8に示す例では、15~0ビットの領域が「1010101100010010」となっているため、パターン番号の20桁目~17桁目は「AB12」となる。
【0061】
ここで、「巻取装着位置に関する情報」とは、巻取紙Rの紙幅方向に沿う巻き掛け位置、例えば、ОS側に寄った巻き掛け位置(所謂OS掛け)であるか、DS側に寄った巻き掛け位置(所謂DS掛け)であるか、いずれのサイドにもよっていない中央位置の巻き掛け位置(所謂センター掛け)であるか等を示す情報である。また、「紙幅に関する情報」とは、巻取紙Rの紙幅(例えば、A巻、C巻、D巻、F巻であるか)を示す情報である。さらに、「ロット番号に関する情報」とは、巻取紙Rのロット番号を示す情報であり、「巻取紙の紙種に関する情報」とは、巻取紙Rの品種、製造メーカー工場及び抄造号機等を示す情報である。
【0062】
また、21桁のパターン番号のうち、16桁目~9桁目は、「湿し水の供給量に関する条件」を意味しており、具体的には、16桁目~13桁目が、最下段の印刷ユニットP及び2段目の印刷ユニットPにおける「湿し水の供給量に関する条件」を意味し、12桁目~9桁目が、3段目の印刷ユニットP及び最上段の印刷ユニットPにおける「湿し水の供給量に関する条件」を意味している。
【0063】
図8に示す例においては、まずは16桁目~13桁目に関し、15~12ビットの領域を用いて最下段の印刷ユニットPの左側の版胴(1DL)における「胴水カーブに関する情報」を、11~8ビットの領域を用いて最下段の印刷ユニットPの右側の版胴(1DR)における「胴水カーブに関する情報」を、7~4ビットの領域を用いて2段目の印刷ユニットPの左側の版胴(2DL)における「胴水カーブに関する情報」を、3~0ビットの領域を用いて2段目の印刷ユニットPの右側の版胴(2DR)における「胴水カーブに関する情報」を、それぞれ一意に特定可能となっている。
【0064】
また、12桁目~9桁目に関し、15~12ビットの領域を用いて3段目の印刷ユニットPの左側の版胴(3DL)における「胴水カーブに関する情報」を、11~8ビットの領域を用いて3段目の印刷ユニットPの右側の版胴(3DR)における「胴水カーブに関する情報」を、7~4ビットの領域を用いて最上段の印刷ユニットPの左側の版胴(4DL)における「胴水カーブに関する情報」を、3~0ビットの領域を用いて最上段の印刷ユニットPの右側の版胴(4DR)における「胴水カーブに関する情報」を、それぞれ一意に特定可能となっている。
【0065】
なお、図8に示す例では、16桁目~13桁目に関する15~0ビットの領域が「0001000100010001」となっており、12桁目~9桁目に関する15~0ビットの領域が「0001000100010001」となっているため、パターン番号の16桁目~9桁目は「11111111」となる。
【0066】
ここで、「胴水カーブに関する情報」とは、印刷速度に対する湿し水の供給量の特性(水供給カーブ特性)を示す情報であり、具体的には、オフセット輪転印刷機10の印刷速度を横軸、湿し水の供給量を縦軸にして表す特性を示す情報である。この胴水カーブは、一般的に、印刷速度が上昇するにつれて湿し水の供給量が増加する特性となっている。
【0067】
また、21桁のパターン番号のうち、8桁目~1桁目は、「印刷内容に関する条件」を意味しており、具体的には、8桁目~5桁目が、最下段の印刷ユニットP及び2段目の印刷ユニットPにおける「印刷内容に関する条件」を意味し、4桁目~1桁目が、3段目の印刷ユニットP及び最上段の印刷ユニットPにおける「印刷内容に関する条件」を意味している。
【0068】
図8に示す例においては、まずは8桁目~5桁目に関し、15~12ビットの領域を用いて最下段の印刷ユニットPの左側の版胴(1DL)のA面~D面における「カラー面の有無」を、11~8ビットの領域を用いて最下段の印刷ユニットPの右側の版胴(1DR)のA面~D面における「カラー面の有無」を、7~4ビットの領域を用いて2段目の印刷ユニットPの左側の版胴(2DL)のA面~D面における「カラー面の有無」を、3~0ビットの領域を用いて2段目の印刷ユニットPの右側の版胴(2DR)のA面~D面における「カラー面の有無」を、それぞれ一意に特定可能となっている。
【0069】
また、4桁目~1桁目に関し、15~12ビットの領域を用いて3段目の印刷ユニットPの左側の版胴(3DL)のA面~D面における「カラー面の有無」を、11~8ビットの領域を用いて3段目の印刷ユニットPの右側の版胴(3DR)のA面~D面における「カラー面の有無」を、7~4ビットの領域を用いて最上段の印刷ユニットPの左側の版胴(4DL)のA面~D面における「カラー面の有無」を、3~0ビットの領域を用いて最上段の印刷ユニットPの右側の版胴(4DR)のA面~D面における「カラー面の有無」を、それぞれ一意に特定可能となっている。
【0070】
なお、図8に示す例では、8桁目~5桁目に関する15~0ビットの領域が全て「1」となっており、4桁目~1桁目に関する15~0ビットの領域も全て「1」となっているため、パターン番号の8桁目~1桁目は「FFFFFFFF」となる。
【0071】
以上から、図8に例示した諸条件を一意に特定する21桁のパターン番号は、「6AB1211111111FFFFFFFF」となる。本実施形態に係る印刷管理システム1では、このように諸条件毎に割り当てられたパターン番号毎に動作制御値のプリセット値を管理するよう構成されているため、印刷の諸条件に沿った最適なプリセット値を正確に抽出及びプリセットすることが可能になると共に、後述するように、同条件の実績値を用いて最適なプリセット値に更新することが可能となる。なお、パターン番号により一意に特定される諸条件は、上述したものに限定されるものではなく、また、桁数や使用されるビット領域等についても、上述したものに限定されるものではない。
【0072】
プリセットパラメーターテーブルエリア63に格納されたパターン番号毎のプリセット値は、図9に示すように、「増速時」における動作制御値のプリセット値と、「減速時」における動作制御値のプリセット値とを含むデータ群である。
【0073】
「増速時」のプリセット値は、図9に示すように、調整箇所毎にそれぞれ異なるプリセット値を設定可能となっており、かつ、所定の「印刷速度帯」毎にそれぞれ異なるプリセット値を設定可能となっている。具体的には、本実施形態では、幅調整装置20aのOS側及びDS側、幅調整装置20bのOS側及びDS側、並びに、幅調整装置20cのOS側及びDS側のそれぞれについて、異なるプリセット値を設定可能となっている。また、本実施形態では、検紙速度である6万部/時から後述する印刷運転速度(最高速度)である16万部/時までの間において、1万部/時毎にそれぞれ異なるプリセット値を設定可能となっている。
【0074】
また、「減速時」のプリセット値についても、「増速時」のプリセット値と同様に、調整箇所毎にそれぞれ異なるプリセット値を設定可能となっており、かつ、所定の「印刷速度帯」毎にそれぞれ異なるプリセット値を設定可能となっている。なお、図9に示す例においては、便宜的に全てのプリセット値が「1.44mm」となっているが、実際にはそれぞれ任意の値が設定されることとなる。
【0075】
なお、各時系列保存パラメーターテーブルエリア64(図7では1つのみ図示)に格納される実績値についても、プリセットパラメーターテーブルエリア63に格納されるプリセット値と同様のデータ群で構成されているが、プリセットパラメーターテーブルエリア63に格納されるプリセット値と異なり、実績値群データの取り込み日時情報(取り込み年月日及び時間)が紐づけて格納されている。時系列保存パラメーターテーブルエリア64は、既述のとおり、タワー型印刷装置TP毎(本実施形態ではタワー型印刷装置TPa及びタワー型印刷装置TPbのそれぞれ)に割り当てられており、該割り当てられたタワー型印刷装置TPに関する上記実績値及び上記取り込み日時情報を取り込むよう構成されている。
【0076】
印刷管理サーバー60のプリセット部66は、各オフセット輪転印刷機10の印刷開始時に、次印刷の諸条件に対応するパターン番号が付与されたプリセット値を記憶部62のプリセットパラメーターテーブルエリア63から取り出し、該取り出したプリセット値を、折制御盤17を介して各印刷制御盤11a,11bに対してプリセット(送信)するよう構成されている。
【0077】
また、印刷管理サーバー60のプリセット部66は、各オフセット輪転印刷機10の各タワー型印刷装置TPa,TPbにおいて紙継ぎが行われた際に、紙継ぎ後の巻取紙Rに対応するパターン番号(すなわち、紙継ぎ後の諸条件に対応するパターン番号)が付与されたプリセット値を記憶部62のプリセットパラメーターテーブルエリア63から取り出し、該取り出したプリセット値を、折制御盤17を介して各印刷制御盤11a,11bに対して再度プリセット(再送信)するよう構成されている。
【0078】
オフセット輪転印刷機10の各印刷制御盤11a,11bの印刷機側記憶部72は、図7に示すように、印刷管理サーバー60のプリセット部66を介して記憶部62から取得したプリセット値を格納するプリセット値格納エリア74と、各幅調整装置20a~20cの動作制御値の実績値を格納する実績値格納エリア76とを備えている。各印刷制御盤11a,11bの印刷部PLC70は、印刷管理サーバー60のプリセット部66を介して記憶部62からプリセット値を取得すると、該取得したプリセット値をプリセット値格納エリア74に格納すると共に、該取得したプリセット値を各幅調整装置20a~20cの動作制御値として、実績値格納エリア76に格納するよう構成されている。
【0079】
印刷部PLC70は、印刷機側記憶部72の実績値格納エリア76に格納された動作制御値に基づいて、各幅調整装置20a~20cの動作を自動で制御(自動多点制御)するよう構成されている。なお、本明細書において「自動多点制御」とは、所定の印刷速度帯毎に各幅調整装置20a~20cの動作制御値が設定され、該設定された動作制御値に基づき、所定の印刷速度帯毎に各幅調整装置20a~20cの動作量(押付け部材22b,24bの追込み量)を調整する制御のことをいう。自動多点制御の具体的な制御方法については、後述する。
【0080】
オフセット輪転印刷機10の印刷部グラフィックパネルGPTa,GPTbは、プリセット値格納エリア74に格納されたプリセット値と、実績値格納エリア76に格納された動作制御値(実績値)とをそれぞれ表示可能に構成されている。
【0081】
また、印刷部グラフィックパネルGPTa,GPTbは、自動多点制御のON/OFFを切り替え可能に構成されると共に、自動多点制御をOFFに切り替えた状態において、各幅調整装置20a~20cの動作制御値(押付け部材22b,24bの追込み量)の設定を手動で変更することが可能に構成されている。この動作制御値の手動設定変更は、幅調整装置20a~20c毎に行うことが可能であり、また、各幅調整装置20a~20cにおけるOS側駆動手段26の動作制御値の設定と、DS側駆動手段28の動作制御値の設定とを各々独立して変更することが可能に構成されている。
【0082】
なお、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機10は、各幅調整装置20a~20cの動作制御値の手動設定変更に代えて、又はこれに加えて、各幅調整装置20a~20cの動作制御値の設定を自動で変更可能な構成とすることも可能である。このような動作制御値の自動設定変更としては、例えば、連続紙Wに対して印刷されたマーク等の特徴点をカメラ等で撮像及び解析することでファンアウト量を算出し、該算出したファンアウト量に基づいて各幅調整装置20a~20cの動作制御値の設定を自動で変更する構成等を採用することが可能である。ただし、これに限定されず、動作制御値の自動設定変更が不能な構成であっても良い。
【0083】
そして、印刷部PLC70は、各幅調整装置20a~20cの動作制御値が手動又は自動で変更された際に、該変更された動作制御値を実績値として実績値格納エリア76に格納する(すなわち、実績値格納エリア76に格納されたプリセット値を該実績値に変更する)よう構成されている。また、印刷部PLC70は、変更された該実績値に基づいて、実績値格納エリア76に格納された前後の印刷速度帯の動作制御値を補正するよう構成されている。なお、当該補正処理の具体的な内容については、後述する。
【0084】
また、印刷部PLC70は、オフセット輪転印刷機10の運転停止後に、タワー型印刷装置TPa,TPbの各印刷機側記憶部72の実績値格納エリア76に格納されている動作制御値の実績値群データを各印刷制御盤11a,11bから折制御盤17を介して印刷管理サーバー60に送信するよう構成されている。
【0085】
さらに、印刷部PLC70は、各タワー型印刷装置TPa,TPbにおいて紙継ぎが行われた際においても同様に、紙継ぎがなされたタワー型印刷装置TPa,TPbの印刷機側記憶部72の実績値格納エリア76に格納されている動作制御値の実績値群データ(紙継ぎ前の巻取紙Rに対応する実績値)を印刷制御盤11a,11bから折制御盤17を介して印刷管理サーバー60に送信するよう構成されている。
【0086】
印刷管理サーバー60は、オフセット輪転印刷機10の運転停止後及び紙継ぎ後にオフセット輪転印刷機10から受信した動作制御値の実績値群データを、それぞれ、諸条件毎に割り当てられるパターン番号及び該実績値群データの取り込み日時情報(取り込み年月日及び時間)と紐づけて、オフセット輪転印刷機10毎の個別のタワー型印刷装置TP毎に割り当てられた、時系列保存パラメーターテーブルエリア64に格納する(取り込む)よう構成されている。
【0087】
印刷管理サーバー60の更新部68は、予め定めた設定処理時間(例えば朝刊印刷後の深夜等)が到来した際に、時系列保存パラメーターテーブルエリア64に格納された過去の実績値群データを用いて、実績に即した最適な数値となるよう実績値群データの最適化処理(演算処理)を実行するよう構成されている。この最適化処理(演算処理)は、例えば、平均化処理、統計的解析処理及び多変量解析処理等が例示され、また、所定の機械学習により行われても良い。また、更新部68は、記憶部62のプリセットパラメーターテーブルエリア63に格納されているプリセット値を、該最適化処理(演算処理)によって得られた実績値群データに更新する処理を実行可能に構成されている。なお、当該更新処理の具体的な内容については、後述する。
【0088】
なお、オフセット輪転印刷機10の印刷部グラフィックパネルGPTa,GPTbは、各駆動モーター26a,28aの制動誤差を是正するための制動補正値を設定可能に構成されても良い。すなわち、各駆動モーター26a,28aは、動作出力が停止されてもすぐに停止しないため、所望の動作制御値通りに各駆動モーター26a,28aを停止させるためには、動作出力の停止から実際に駆動モーター26a,28aが停止するまでの制動誤差分だけ、駆動モーター26a,28aを早めに停止させることが好ましい。本実施形態に係るオフセット輪転印刷機10は、この制動誤差を考慮した制動補正値を印刷部グラフィックパネルGPTa,GPTbを介して入力することにより、該制動補正値分だけ駆動モーター26a,28aを早めに停止させることが可能に構成されている。ただし、これに限定されず、補正値の設定が不能な構成であっても良い。
【0089】
[印刷管理方法]
次に、本実施形態に係る印刷管理システム1を用いてオフセット輪転印刷機10の印刷を管理する方法(印刷管理方法)について説明する。図10は、本実施形態に係る印刷管理方法の1日のスケジュールの例を示す図であり、図11は、オフセット輪転印刷機10の稼働状況の例を示す図である。また、図12図15は、本実施形態に係る印刷管理方法の一連の流れを示す図であり、図16は、速度単位調整実行ルーチンの流れを示す図であり、図17は、動作制御値の補正処理のイメージを示す図である。さらに、図18は、紙継ぎ判定実行ルーチンの流れを示す図であり、図19は、印刷管理サーバー60における更新処理の流れを示す図である。
【0090】
本実施形態に係る印刷管理方法において、オフセット輪転印刷機10は、図10に示すように、1日(24時間)の間において、夕刊を印刷する時間帯(概ね12時~14時)と、挟み込み特集等を別刷する時間帯(概ね16時~19時)と、朝刊を印刷する時間帯(概ね22時~3時)との3回、稼働される。また、このオフセット輪転印刷機10の稼働前には、それぞれオフセット輪転印刷機10の印刷準備が行われ、稼働後には、それぞれオフセット輪転印刷機10の清掃や片付けが行われる。なお、オフセット輪転印刷機10におけるこれらの作業等は、従来通りであるため、説明を省略する。また、オフセット輪転印刷機10は、朝刊の印刷時、別刷時及び夕刊の印刷時の3回の稼働に限定されず、稼働回数は任意に変更可能である。
【0091】
本実施形態に係る印刷管理方法において、印刷管理サーバー60は、図10に示すように、オフセット輪転印刷機10の印刷開始時及び紙継ぎ時にそれぞれ、オフセット輪転印刷機10に対する次印刷のデータプリセット処理を実行すると共に、オフセット輪転印刷機10の印刷終了時及び紙継ぎ時にそれぞれ、前印刷の実績値データ取り込み処理を実行する。また、印刷管理サーバー60は、朝刊印刷後の深夜(例えば4時~5時)に、収集した過去の実績値データを用いて演算処理を実行することで、記憶部62のプリセット値を更新する。以下、印刷管理サーバー60のこれらの処理について、詳述する。
【0092】
まず、オフセット輪転印刷機10の稼働を開始させると、図12に示すように、オフセット輪転印刷機10がクローリング速度で運転を開始し(図12のS1)、その後、オペレーターによって印刷開始釦が押下されると(図11のt1、図12のS2)、印刷管理サーバー60からオフセット輪転印刷機10の印刷制御盤11a,11bに対して、幅調整装置20a~20cを動作させるための動作制御値のプリセットが実行される(プリセット工程、図12のS3)。具体的には、オフセット輪転印刷機10は、印刷管理サーバー60に予め記憶されたプリセット値を該印刷管理サーバー60から受信し、該プリセット値をそれぞれ対応する印刷機側記憶部72のプリセット値格納エリア74及び実績値格納エリア76に格納する。また、この動作制御値のプリセットと並行して、オフセット輪転印刷機10は、検紙速度(本実施形態では6万部/時)に向けて増速する(図12のS4)。なお、このオフセット輪転印刷機10の増速過程において、適宜、紙継ぎ判定実行ルーチンが行われる(図12のS5)。紙継ぎ判定実行ルーチンについては、後述する。
【0093】
その後、オフセット輪転印刷機10が検紙速度に到達すると(図11のt2、図12のS6にてYES)、オフセット輪転印刷機10は、該検紙速度で良紙判定までの一定時間印刷を継続すると共に(図12のS7)、各幅調整装置20a~20cに対する自動多点制御を開始する(図12のS8)。以下、各印刷速度帯で各幅調整装置20a~20cの動作量を調整する処理を「速度単位調整実行ルーチン」という。この速度単位調整実行ルーチンについては、後述する。なお、本実施形態では、「所定の印刷速度単位」は1万部/時単位であるが、これに限定されるものではない。
【0094】
自動多点制御が開始されると、オフセット輪転印刷機10は、検紙速度(本実施形態では6万部/時以上、7万部/時未満)での印刷が継続されている間(図11のt2とt3の間)に、紙継ぎ判定実行ルーチンを実行し(図13のS9)、これと並行して、オペレーターにより良紙判定が実施される(図13のS10)。そして、オペレーターによって良紙であると判定された場合(図13のS10にてYES)には、オペレーターにより良紙判定釦が押下されると共に(図13のS11)、再増速開始釦が押下される(図13のS12)なお、当該良紙判定(S10~S12)は、オペレーターにより実施される態様に限定されず、良紙判定プログラム等に基づき自動で実行される態様であっても良い。
【0095】
再増速開始釦が押下されると、オフセット輪転印刷機10は、所定の印刷運転速度(本実施形態では16万部/時)に向けて増速する(図13のS13)。このオフセット輪転印刷機10の増速過程(図11のt3とt4の間)において、所定の印刷速度単位(本実施形態では1万部/時単位)で、すなわち、所定の印刷速度帯毎に速度単位調整実行ルーチンが実行されると共に(図13のS14)、継続して紙継ぎ判定実行ルーチンが実行される(図13のS15)。
【0096】
その後、オフセット輪転印刷機10が印刷運転速度に到達すると(図11のt4、図13のS16にてYES)、オフセット輪転印刷機10は、該印刷運転速度で印刷を継続する(図11のt4とt5の間、図13のS17)。この期間においても、オフセット輪転印刷機10に対して減速運転信号が出力されるまで(図14のS19にてYESになるまで)、継続して紙継ぎ判定実行ルーチンが実行される(図14のS18)。なお、減速運転信号は、オフセット輪転印刷機10を減速させるために出力される信号であり、オペレーターによる手動操作により出力されるか、又は、予め計画された印刷部数に近づくと自動で出力されるものである。
【0097】
そして、オフセット輪転印刷機10に対して減速運転信号が出力されると(図14のS19にてYES)、オフセット輪転印刷機10は、所定の印刷終了速度(本実施形態では6万部/時)に向けて減速する(図14のS20)。このオフセット輪転印刷機10の減速過程(図11のt5とt6の間)においても、所定の印刷速度単位(本実施形態では1万部/時単位)で速度単位調整実行ルーチンが実行されると共に(図14のS21)、継続して紙継ぎ判定実行ルーチンが実行される(図14のS22)。なお、当該所定の印刷終了速度は、本実施形態では検紙速度(6万部/時)と同じ速度であるが、これに限定されず、異なる速度であっても良い。
【0098】
その後、オフセット輪転印刷機10が印刷終了速度に到達すると(図11のt6、図14のS23にてYES)、オフセット輪転印刷機10は、該印刷終了速度で印刷を継続する(図14のS24)。この期間においても、オフセット輪転印刷機10に対して印刷終了信号が出力されるまで(図15のS26にてYESになるまで)、継続して紙継ぎ判定実行ルーチンが実行される(図15のS25)。なお、印刷終了信号は、オフセット輪転印刷機10による印刷を停止させるために出力される信号であり、オペレーターによる手動操作により出力されるか、又は、予め計画された印刷部数に到達すると自動で出力されるものである。
【0099】
そして、オフセット輪転印刷機10に対して印刷終了信号が出力されると(図15のS26にてYES)、オフセット輪転印刷機10は、各幅調整装置20a~20cに対する自動多点制御を終了すると共に(図15のS27)、クローリング速度に向けて再度減速する(図11のt6とt7の間、図15のS28)。その後、オフセット輪転印刷機10がクローリング速度に到達すると(図15のS29にてYES)、オフセット輪転印刷機10は、該クローリング速度で一定時間運転を継続した後(図15のS30)、運転を停止する(図15のS31)。
【0100】
オフセット輪転印刷機10は、運転停止後に、タワー型印刷装置TPa,TPbの各印刷機側記憶部72の実績値格納エリア76に格納されている動作制御値の実績値群データを各印刷制御盤11a,11bから折制御盤17を介して印刷管理サーバー60に送信する(図15のS32)。印刷管理サーバー60は、オフセット輪転印刷機10から受信した動作制御値の実績値群データを、諸条件毎に割り当てられるパターン番号及び該実績値群データの取り込み日時情報(取り込み年月日及び時間)と紐づけて、オフセット輪転印刷機10毎の個別のタワー型印刷装置TP毎に割り当てられた、時系列保存パラメーターテーブルエリア64に格納する。これにより、一連の印刷処理が終了する。
【0101】
[速度単位調整実行ルーチン]
ここで、上述した速度単位調整実行ルーチンについて、図16を用いて説明する。速度単位調整実行ルーチンにおいて、オフセット輪転印刷機10は、まず、図16に示すように、各幅調整装置20a~20cの動作量(押付け部材22b,24bの追込み量)が手動又は自動で変更されたか否かを判定する(図16のS100)。そして、当該判定において「変更されていない」(図16のS100においてNO)と判定した場合には、図12のS3にてプリセットされた該当する印刷速度帯のプリセット値が、該印刷速度帯における各幅調整装置20a~20cの動作制御値としてそのまま使用され(図16のS101)、該動作制御値(プリセット値)に基づいて各幅調整装置20a~20cの動作量の制御が実行される。
【0102】
一方、当該判定において「変更されている」(図16のS100においてYES)と判定した場合には、オフセット輪転印刷機10は、当該変更された箇所(幅調整装置20a~20cのうちのどの幅調整装置が変更されたか、及び、該幅調整装置のOS側とDS側のどちらが変更されたか)を特定する(図16のS102)。また、オフセット輪転印刷機10は、該変更された箇所の変更後の動作制御値を、該当する印刷速度帯の実績値として、該変更された箇所に対応する実績値格納エリア76に格納する(図16のS103)。なお、本実施形態においては、実績値格納エリア76には予め印刷管理サーバー60から受信したプリセット値が格納されているため、当該格納する処理は、実質的には、該当する箇所の該当する印刷速度帯のプリセット値を上記実績値に書き換える(変更する)処理である。
【0103】
また、オフセット輪転印刷機10は、実績値格納エリア76に実績値を格納すると、該実績値が格納された印刷速度帯の前後の印刷速度帯における動作制御値を補正する(図16のS104)。具体的には、当該動作制御値の補正は、図17に示すように、実績値が格納された印刷速度帯よりも前の印刷速度帯(印刷速度が遅い印刷速度帯)における補正処理(前速度帯補正処理)と、該実績値が格納された印刷速度帯よりも後の印刷速度帯(印刷速度が速い印刷速度帯)における補正処理(後速度帯補正処理)とからなる。
【0104】
以下、「11万部/時」の印刷速度帯における動作制御値が手動又は自動で変更された場合を例に挙げて、図17を用いて、前速度帯補正処理と、後速度帯補正処理とを説明する。なお、図17は、実績値格納エリア76に格納された印刷速度帯毎の動作制御値のイメージを示すグラフである。図17において、実線で示された折れ線グラフは、補正処理がなされる前の動作制御値であり、一度も変更乃至補正がなされていない場合には、印刷管理サーバー60から受信したプリセット値を意味しており、既に変更乃至補正されている場合には、実績値格納エリア76に格納された実績値(補正値)を意味している。一方、図17において、破線で示された折れ線グラフは、補正処理がなされた後の動作制御値を示している。
【0105】
前速度帯補正処理は、図17に示すように、動作制御値が変更された印刷速度帯(11万部/時)と、最も遅い印刷速度帯(本実施形態では「6万部/時」)との間の中間印刷速度帯(7万部/時~10万部/時)に対し、実績値格納エリア76に格納された動作制御値を補正する処理である。具体的には、最も遅い印刷速度帯の動作制御値から動作制御値が変更された印刷速度帯の動作制御値に亘って中間印刷速度帯の動作制御値が印刷速度に比例して増減するよう、これら中間印刷速度帯の動作制御値を平均値化演算処理し、該平均値化された動作制御値を中間印刷速度帯の各補正値とする。
【0106】
また、後速度帯補正処理は、同じく図17に示すように、動作制御値が変更された印刷速度帯(11万部/時)と、最も速い印刷速度帯(本実施形態では「16万部/時」)との間の中間印刷速度帯(12万部/時~15万部/時)に対し、実績値格納エリア76に格納された動作制御値を補正する処理である。具体的には、動作制御値が変更された印刷速度帯の動作制御値から最も速い印刷速度帯の動作制御値に亘って中間印刷速度帯の動作制御値が印刷速度に比例して増減するよう、これら中間印刷速度帯の動作制御値を平均値化演算処理し、該平均値化された動作制御値を中間印刷速度帯の各補正値とする。
【0107】
そして、オフセット輪転印刷機10は、これらの補正処理によって得られた中間印刷速度帯の各補正値を、各実績値として、実績値格納エリア76の各印刷速度帯に格納する(図16のS105)。その後、オフセット輪転印刷機10は、実績値格納エリア76に格納された実績値(補正値)に基づき、上述した自動多点制御を実行する。
【0108】
[紙継ぎ判定実行ルーチン]
次に、上述した紙継ぎ判定実行ルーチンについて、図18を用いて説明する。紙継ぎ判定実行ルーチンにおいて、オフセット輪転印刷機10は、まず、図18に示すように、各給紙部12a,12bにおいて紙継ぎがなされたか否か、具体的にはぺースター信号が出力されたか否かを判定する(図18のS200)。そして、当該判定において「紙継ぎがなされていない」(図18のS200においてNO)と判定した場合には、紙継ぎ判定実行ルーチンを終了する。
【0109】
一方、当該判定において「紙継ぎがなされた」(図18のS200においてYES)と判定した場合には、オフセット輪転印刷機10は、紙継ぎがなされたタワー型印刷装置TPa,TPbの印刷機側記憶部72の実績値格納エリア76に格納されている動作制御値の実績値群データ(紙継ぎ前の巻取紙Rに対応する実績値)を印刷制御盤11a,11bから折制御盤17を介して印刷管理サーバー60に送信する(図18のS201)。そして、印刷管理サーバー60は、オフセット輪転印刷機10から受信した動作制御値の実績値群データを、諸条件毎に割り当てられるパターン番号及び該実績値群データの取り込み日時情報(取り込み年月日及び時間)と紐づけて、オフセット輪転印刷機10毎の個別のタワー型印刷装置TP毎に割り当てられた、時系列保存パラメーターテーブルエリア64に格納する。
【0110】
また、印刷管理サーバー60からオフセット輪転印刷機10の紙継ぎがなされたタワー型印刷装置TPa,TPbの印刷制御盤11a,11bに対して、紙継ぎ後の巻取紙Rに関する動作制御値が再度プリセットされる(図18のS202)。具体的には、オフセット輪転印刷機10は、紙継ぎ後の巻取紙Rに対応する動作制御値のプリセット値を印刷管理サーバー60から取得し、該プリセット値を紙継ぎがなされたタワー型印刷装置TPa,TPbの印刷機側記憶部72のプリセット値格納エリア74及び実績値格納エリア76に上書きする。
【0111】
なお、紙継ぎ前と紙継ぎ後とでプリセット値のパターン番号が同じ場合(印刷の諸条件が紙継ぎ前と紙継ぎ後とで変更されない場合)には、紙継ぎ前の実績値群データ(紙継ぎ前の巻取紙Rに対応する実績値)を、紙継ぎ後の巻取紙Rに対応する動作制御値のプリセット値としてプリセットしても良い。また、紙継ぎ後の巻取紙Rに対応する動作制御値のプリセット値が登録されていない場合(印刷管理サーバー60の記憶部62に格納されていない場合)においても同様に、紙継ぎ前の実績値群データを紙継ぎ後の巻取紙Rに対応する動作制御値のプリセット値としてプリセットしても良い。
【0112】
そして、これら印刷管理サーバー60に対する前印刷の実績値データ取り込み処理と、オフセット輪転印刷機10に対する次印刷のデータプリセット処理とを実行した後、紙継ぎ判定実行ルーチンを終了する。
【0113】
[プリセット値の更新処理]
以上の一連の印刷処理が繰り返し実行されることにより、印刷管理サーバー60の各時系列保存パラメーターテーブルエリア64には、割り当てられたタワー型印刷装置TPに関する多数の実績値群データが蓄積される。本実施形態に係る印刷管理サーバー60は、このように蓄積された実績値群データを用いて、記憶部62の各プリセットパラメーターテーブルエリア63に格納されているプリセット値を、実績に即した最適な数値となるよう更新する処理を実行する。
【0114】
なお、このようなプリセット値の更新処理は、任意の頻度(例えば1日に1回の頻度)で、任意の方法(例えばバッチ処理)により実行することができる。当該更新処理は、任意の時間帯に行うことが可能であるが、処理負担の分散の観点から、オフセット輪転印刷機10の稼働が停止している深夜の時間帯(例えば4時~5時)に実行されることが好ましい。以下、当該プリセット値の更新処理について、図19を用いて説明する。
【0115】
まず、印刷管理サーバー60は、設定処理時間が到来したか否かを判定し(図19のS300)、設定処理時間が到来した(図19のS300にてYES)と判定した場合には、所定期間内、例えば前回の更新処理から今回の更新処理までの間(本実施形態では24時間以内)にオフセット輪転印刷機10が稼働したか否かを判定する(図19のS301)。具体的には、各時系列保存パラメーターテーブルエリア64に、所定期間内の取り込み日時を有する実績値群データが格納されているか否かを検索し、該実績値群データが存在する場合には、そのパターン番号を特定する処理を実行する。
【0116】
そして、所定期間内にオフセット輪転印刷機10が稼働していない(図19のS301にてNO)と判定した場合には、該オフセット輪転印刷機10に関するプリセット値の更新処理は実行せずに、処理を終了する。一方、所定期間内にオフセット輪転印刷機10が稼働した(図19のS301にてYES)と判定した場合には、同じパターン番号が付された他の実績値群データが、各時系列保存パラメーターテーブルエリア64内に登録されているか否かを判定する(図19のS302)。なお、ここでいう他の実績値群データには、該所定期間よりも前に取り込まれた実績値群データも含まれる。
【0117】
そして、同じパターン番号の他の実績値群データが各時系列保存パラメーターテーブルエリア64内に登録されていない(図19のS302にてNO)と判定した場合には、該オフセット輪転印刷機10に関するプリセット値の更新処理は実行せずに、処理を終了する。この場合には、所定期間内に登録された該実績値群データを、該パターン番号のプリセット値として、対応するプリセットパラメーターテーブルエリア63に登録しても良い。
【0118】
一方、同じパターン番号の他の実績値群データが各時系列保存パラメーターテーブルエリア64内に登録されている(図19のS302にてYES)と判定した場合には、直近の取り込み日時を有するものから時系列順に過去n回分(nは1以上の任意の整数)の他の実績値群データを抽出し(図19のS303)、該抽出した過去n回分の他の実績値群データと、上記所定期間内に取り込まれた実績値群データとを用いて、実績に即した最適な数値となるよう実績値群データの最適化処理(演算処理)を実行する(図19のS304)。
【0119】
なお、本実施形態に係るプリセット値の更新処理において、上記最適化処理は、実績に即した最適な数値となるよう実績値群データを最適化させるものであれば良く、その具体的な処理は限定されるものではないが、例えば、平均化処理、統計的解析処理及び多変量解析処理等が例示され、また、機械学習を採用することも可能である。
【0120】
そして、実績値群データの最適化処理が実行されると、該最適化された実績値群データを、該パターン番号の新たなプリセット値として、対応するプリセットパラメーターテーブルエリア63に登録(上書き)する(図19のS305)。これにより、該パターン番号に関する更新処理が終了する。
【0121】
以上の一連の更新処理の後、各時系列保存パラメーターテーブルエリア64に、所定期間内の取り込み日時を有する他のパターン番号の実績値群データが格納されているか否かを判定し(図19のS306)、該他のパターン番号の実績値群データが格納されている(図19のS306にてYES)と判定した場合には、該他のパターン番号の実績値群データについて上述したS302~S306の処理を繰り返し実行する。一方、該他のパターン番号の実績値群データが格納されていない(図19のS306にてNO)と判定した場合には、該オフセット輪転印刷機10に関するプリセット値の一連の更新処理が終了する。
【0122】
[本実施形態に係る印刷管理システムの利点]
以上説明したとおり、本実施形態に係る印刷管理システム1は、幅調整装置20a~20cを動作させるための動作制御値のプリセット値を記憶する記憶部62と、記憶部62のプリセット値を幅調整装置20a~20cの動作制御値としてプリセットするプリセット部66と、幅調整装置20a~20cの動作制御値の実績値に基づいて、記憶部62のプリセット値を更新する更新部68とを備えている。
【0123】
そして、本実施形態に係る印刷管理システム1は、このような構成を備えることにより、動作制御値のプリセット値を、実績に即した最適な動作制御値となるよう自動で更新することが可能となるため、オペレーターのノンスキル化、更には省人化を図ることが可能であるという利点を有する。
【0124】
特に、本実施形態に係る印刷管理システム1は、幅調整装置20a~20cの動作制御値が手動又は自動で変更された際に、変更された実績値に基づいて、前後の印刷速度帯の動作制御値を補正するよう構成されている。このような構成を備える印刷管理システム1によれば、手動又は自動で動作制御値が変更された印刷速度帯の前後の印刷速度帯の動作制御値を手動で変更する必要がないため、より一層、オペレーターのノンスキル化、更には省人化を図ることが可能であるという利点を有する。
【0125】
また、本実施形態に係る印刷管理システム1は、タワー型印刷装置TPa,TPbにおいて紙継ぎが行われた際に、印刷管理サーバー60が、紙継ぎ前の巻取紙Rに対応する実績値を取り込むと共に、紙継ぎ後の巻取紙Rに対応するプリセット値を幅調整装置20a~20cの動作制御値として再度プリセットするよう構成されている。このような構成を備える印刷管理システム1によれば、紙継ぎにより印刷の諸条件が変更された場合であっても、該諸条件に応じた最適な動作制御値を再度プリセットすることが可能となるため、より一層、オペレーターのノンスキル化、更には省人化を図ることが可能であるという利点を有する。また、紙継ぎ前の実績値についても収集し、更新部68における更新処理に用いることが可能となるため、より一層、プリセット値の精度を高めることが可能になるという利点を有する。
【0126】
さらに、本実施形態に係る印刷管理システム1は、印刷が実行される月に関する情報、巻取紙に関する情報、胴水カーブに関する情報及びカラー面有無に関する情報のうちの少なくとも1以上の情報を特定可能なパターン番号により、該特定される情報のパターン毎にプリセット値を管理するよう構成されている。このような構成を備える印刷管理システム1によれば、諸条件毎に割り当てられたパターン毎にプリセット値が管理されることにより、印刷の諸条件に基づき自動でプリセット値を選定乃至プリセットすることが可能となると共に、異なる条件の実績値を用いてプリセット値の更新を行う等の問題が生じなくなるため、より一層、オペレーターのノンスキル化、更には省人化を図ることが可能であると共に、プリセット値の精度を高めることが可能になるという利点を有する。
【0127】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0128】
例えば、上述した実施形態では、タワー型印刷装置TPa,TPbが、4つの印刷ユニットP~Pを備えた両面4色印刷可能な印刷装置であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、2以上の印刷ユニットによって重ね刷りを行う印刷装置であれば、例えば2段の印刷ユニットを備えるタワー型印刷装置等の種々の印刷装置としても良い。また、タワー型印刷装置TPa,TPbが複数設置される場合には、4段の印刷ユニットを備えるタワー型印刷装置と、2段の印刷ユニットを備えるタワー型印刷装置とが混在しても良い。
【0129】
上述した本実施形態における説明では、幅調整装置20a~20cが、表面側波打ち形成手段22及び裏面側波打ち形成手段24を備えるものとして説明したが、これに限定されず、表面側波打ち形成手段22及び裏面側波打ち形成手段24の一方のみを備える構成としても良い。また、上述した実施形態では、幅調整装置20a~20cがアンチファンアウトローラーであるものとして説明したが、これに限定されず、動作制御値に基づいて連続紙Wの幅を調整することが可能であれば良く、例えばエアーの吹き付けによって連続紙Wに波打ちを発生させる構成等の種々の公知の構成を採用することが可能である。
【0130】
上述した実施形態では、印刷管理サーバー60がプリセット部66を備えるものとして説明したが、これに限定されず、各オフセット輪転印刷機10がプリセット部66を備える構成としても良い。また、上述した実施形態では、印刷管理サーバー60が記憶部62及び更新部68を備えるものとして説明したが、これに限定されず、各オフセット輪転印刷機10が記憶部62及び更新部68を備える構成としても良い。この場合において、記憶部62は、上述した記憶部62の機能を阻害しない範囲において任意の構成を採用することが可能であり、例えば印刷機内ネットワークNW2を介して接続されたネットワーク接続ハードディスク(NAS)等の種々の公知の構成を採用することが可能である。
【0131】
上述した実施形態では、幅調整装置20a~20cに対する制御が印刷制御盤11a,11bにおいて実行されるものとして説明したが、これに限定されず、折制御盤17において実行される構成等の種々の任意の構成を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0132】
1 :印刷管理システム
10,10a~10n :オフセット輪転印刷機
11a,11b :印刷制御盤
12a,12b :給紙部
13a,13b :給紙制御盤
14a,14b :レールフレーム部
15 :レール制御盤
16 :折機
17 :折制御盤
18 :折部PLC
20a~20c :幅調整装置
22 :表面側波打ち形成手段
24 :裏面側波打ち形成手段
26 :OS側駆動手段
28 :DS側駆動手段
26a,28a :駆動モーター
26b,28b :ポテンショメーター
29a :モーター駆動線
29b :現在値信号線
50 :工場サーバー
60 :印刷管理サーバー
62 :記憶部
63 :プリセットパラメーターテーブルエリア
64 :時系列保存パラメーターテーブルエリア
66 :プリセット部
68 :更新部
70 :印刷部PLC
72 :印刷機側記憶部
74 :プリセット値格納エリア
76 :実績値格納エリア
GPF :折部グラフィックパネル
GPTa :印刷部グラフィックパネル
GPTb :印刷部グラフィックパネル
NPNW :新聞社通信ネットワーク
NW1 :工場内通信ネットワーク
NW2 :印刷機内ネットワーク
~P :印刷ユニット
PFL :印刷フロア
R :巻取紙
RFL :給紙フロア
TP,TPa,TPb :タワー型印刷装置
W :連続紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20