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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091615
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】駐車ブレーキの同期構造
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/10 20060101AFI20220614BHJP
   B60T 7/10 20060101ALI20220614BHJP
   B60T 11/06 20060101ALI20220614BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20220614BHJP
   F16D 121/14 20120101ALN20220614BHJP
   F16D 125/68 20120101ALN20220614BHJP
   F16D 125/64 20120101ALN20220614BHJP
   F16D 127/06 20120101ALN20220614BHJP
   F16D 127/04 20120101ALN20220614BHJP
   F16D 125/60 20120101ALN20220614BHJP
【FI】
A61G5/10 718
B60T7/10 P
B60T11/06
F16D65/16
F16D121:14
F16D125:68
F16D125:64
F16D127:06
F16D127:04
F16D125:60
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204541
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】502327953
【氏名又は名称】三貴ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸明
【テーマコード(参考)】
3D047
3D124
3J058
【Fターム(参考)】
3D047BB24
3D047CC03
3D047CC05
3D047FF07
3D124AA03
3D124AA12
3D124BB02
3D124BB19
3D124CC58
3D124DD29
3J058AB21
3J058BA46
3J058CC08
3J058CC66
3J058CC67
3J058FA19
(57)【要約】
【課題】部材の長寿命化を図ることのできる駐車ブレーキの同期構造を提供する。
【解決手段】駐車ブレーキの同期構造は、操作部70の下側固定軸部52には、操作部70に回動自在に軸支された軸部を有する下側自在ピン部材48が備えられており、下側自在ピン部材48は、軸部よりも他方の操作部70側に第2インナーワイヤ34の端部を遊嵌する遊嵌部Xを備えており、操作部70の回動に応じて、下側自在ピン部材48が連動して回動してなる。
【選択図】図7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車いすの車いす本体に取り付けられた左右一対の車輪に用いられる駐車ブレーキの同期構造であって、
前記車いす本体における、前記車輪に各々隣接した位置に設けられており、かつ操作部回動軸が各々定められている左右一対のベース部と、
前記操作部回動軸を中心にして回動自在に前記ベース部に取り付けられており、かつ前記操作部回動軸を基準として一側に一側固定部を有し、他側に他側固定部を有している左右一対の操作部と、
前記操作部に接続されており、操作された前記操作部の回動方向に対応して前記車輪の方向に移動することで前記車輪に圧接して車輪を停止させる、又は前記車輪から離間する方向に移動することで前記車輪を回転自在とする左右一対のブレーキ部と、
を具備し、
さらに、前記左右一対の操作部のうち一方の操作部の一側固定部と他方の操作部の他側固定部とを連結する第1の連結部材と、
前記他方の操作部の一側固定部と前記一方の操作部の他側固定部とを連結する第2の連結部材と、を有し、
前記一方の操作部が操作されて当該操作部に対応する一方のブレーキ部が、対応する車輪に対して移動すると、これと共に前記第1の連結部材及び前記第2の連結部材のうちいずれか一方が前記一方の操作部側に引張されて前記他方の操作部が連動して回動し、かつ当該操作部に対応する他方のブレーキ部も、対応する車輪に対して、前記一方のブレーキ部と同じ方向に移動し、
前記他方の操作部が操作されて当該操作部に対応する他方のブレーキ部が、対応する車輪に対して移動すると、これと共に前記第1の連結部材及び前記第2の連結部材のうちいずれか一方が前記他方の操作部側に引張されて前記一方の操作部が連動して回動し、かつ当該操作部に対応する一方のブレーキ部も、対応する車輪に対して、前記他方のブレーキ部と同じ方向に移動してなるものであり、
少なくとも前記一方の操作部の他側固定部には、前記一方の操作部に回動自在に軸支された軸部を有する中継部材が備えられており、
前記中継部材は、前記軸部よりも前記他方の操作部側に前記第2の連結部材の端部を遊嵌する遊嵌部を備えており、
前記一方の操作部の回動に応じて、前記中継部材が連動して回動してなる
ことを特徴とする駐車ブレーキの同期構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車いすに用いられる駐車ブレーキの同期構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車いすには主車輪の回転を停止させる駐車ブレーキが備えられている。この駐車ブレーキは一般的に、左右一対の主車輪の各前側に取り付けられると共に、各々個別に操作レバーを操作して対応する主車輪の回転を制御する。
【0003】
発明者らは、一方の操作レバーの操作によって他方のブレーキも確実に同期して作動する安全な駐車ブレーキの同期構造を発明した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-126352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、前記駐車ブレーキの同期構造にあっては、連結部材であるインナーワイヤを止めている軸部がブレーキの操作で回動することによって、インナーワイヤが斜め方向に引っ張られてしまい、当該インナーワイヤが屈曲して破損しやすくなってしまう問題があることを見出した。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、部材の長寿命化を図ることのできる駐車ブレーキの同期構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車いすの車いす本体に取り付けられた左右一対の車輪に用いられる駐車ブレーキの同期構造であって、前記車いす本体における、前記車輪に各々隣接した位置に設けられており、かつ操作部回動軸が各々定められている左右一対のベース部と、前記操作部回動軸を中心にして回動自在に前記ベース部に取り付けられており、かつ前記操作部回動軸を基準として一側に一側固定部を有し、他側に他側固定部を有している左右一対の操作部と、前記操作部に接続されており、操作された前記操作部の回動方向に対応して前記車輪の方向に移動することで前記車輪に圧接して車輪を停止させる、又は前記車輪から離間する方向に移動することで前記車輪を回転自在とする左右一対のブレーキ部と、を具備し、さらに、前記左右一対の操作部のうち一方の操作部の一側固定部と他方の操作部の他側固定部とを連結する第1の連結部材と、前記他方の操作部の一側固定部と前記一方の操作部の他側固定部とを連結する第2の連結部材と、を有し、前記一方の操作部が操作されて当該操作部に対応する一方のブレーキ部が、対応する車輪に対して移動すると、これと共に前記第1の連結部材及び前記第2の連結部材のうちいずれか一方が前記一方の操作部側に引張されて前記他方の操作部が連動して回動し、かつ当該操作部に対応する他方のブレーキ部も、対応する車輪に対して、前記一方のブレーキ部と同じ方向に移動し、前記他方の操作部が操作されて当該操作部に対応する他方のブレーキ部が、対応する車輪に対して移動すると、これと共に前記第1の連結部材及び前記第2の連結部材のうちいずれか一方が前記他方の操作部側に引張されて前記一方の操作部が連動して回動し、かつ当該操作部に対応する一方のブレーキ部も、対応する車輪に対して、前記他方のブレーキ部と同じ方向に移動してなるものであり、少なくとも前記一方の操作部の他側固定部には、前記一方の操作部に回動自在に軸支された軸部を有する中継部材が備えられており、前記中継部材は、前記軸部よりも前記他方の操作部側に前記第2の連結部材の端部を遊嵌する遊嵌部を備えており、前記一方の操作部の回動に応じて、前記中継部材が連動して回動してなることを特徴とする駐車ブレーキの同期構造である。
【0008】
かかる構成にあっては、前記左右一対の操作部のうちいずれかの操作によって前記第1の連結部材又は前記第2の連結部材のうちいずれかが引張されてもう片方の操作部も連動して回動する。これによって駐車ブレーキを操作する際には、左右いずれかの操作部を操作するだけで両方のブレーキ部を、対応する車輪に対して同様に移動させることができる。しかも、前記連結部材の端部は、引張力を発生させるために前記ベースに固定されなければ機能を果たさないところ、当該ベース部に対して回動自在な中継部材に前記連結部材の端部が遊嵌されており、前記中継部材が各連結部材の動作に応じて適宜回動するため、連結部材の固定箇所において当該連結部材に負荷が繰り返し付与されて、過度に湾曲したり屈曲したりすることが適正に防止される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の駐車ブレーキの同期構造は、部材の長寿命化を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例にかかる車いすを示し、(a)は右側面図、(b)は左側面図である。
図2】ブレーキ部が離間状態となっている左車輪用駐車ブレーキの一部切欠側面図である。
図3】ブレーキ部が圧接状態となっている左車輪用駐車ブレーキの一部切欠側面図である。
図4】左車輪側に配された下側自在ピン部材を示し、(a)は側面図であり、(b)は背面図であり、(c)は(a)のA-A線断面図である。
図5】ブレーキ部が離間状態となっている駐車ブレーキの同期構造の説明図である。
図6】ブレーキ部が圧接状態となっている駐車ブレーキの同期構造の説明図である。
図7】(a)はブレーキ部が離間状態であるときの下側自在ピン部材の姿勢を示す説明図であり、(b)はブレーキ部が圧接状態であるときの下側自在ピン部材の姿勢を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の車いす用駐車ブレーキの同期構造を具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0012】
図1に示すように、車いす1は、金属製パイプで構成された車いす本体10を備えている。車いす本体10は、左側枠10A及び右側枠10Bを備えており、両側枠10A,10Bは各々、前後方向に形成されたベースフレーム部11と、ベースフレーム部11から立ち上がる後脚フレーム部12と、後脚フレーム部12からさらに上方に延出された背フレーム部13と、後脚フレーム部12の上端部から前方へかつ水平に差し出された座フレーム部15とを有している。
【0013】
また、後脚フレーム部12には、主車輪2の回動軸部3が配設されている。
【0014】
また、座フレーム部15における主車輪2より前側の位置には、平板状のブレーキ取付板29が主車輪2に隣接して取り付けられている。
【0015】
次に、主車輪2に用いられる駐車ブレーキ31,32の同期構造30(以下単に同期構造30と記載する)について詳述する。
【0016】
同期構造30は、図2等に示す左車輪用駐車ブレーキ31と、図5に示す右車輪用駐車ブレーキ32とを備えている。
【0017】
以下、左車輪用駐車ブレーキ31について詳細に説明する。なお、右車輪用駐車ブレーキ32は、左車輪用駐車ブレーキ31と左右対称形状であるため、説明を省略する。
【0018】
図2図3等に示すように、左車輪用駐車ブレーキ31は、ブレーキ取付板29に固定される板状のベース部40を備えている。具体的には、ベース部40の板厚方向に貫通する軸部材で構成された、操作部回動軸41とブレーキ部回動軸42とが備えられており、操作部回動軸41とブレーキ部回動軸42を介してベース部40がブレーキ取付板29に固定されている。
【0019】
また、ベース部40における主車輪2側の端部には、アウター固定部45が主車輪2の軸方向に沿って外向きに立設されている。そして、アウター固定部45には、中空の中継ボルト46が上下一対で取り付けられている。
【0020】
また、操作部回動軸41には、図2に示すように板材からなるレバー部50が取り付けられている。かかる構成により、レバー部50が、操作部回動軸41を中心にして回動自在となっている。
【0021】
また、レバー部50の上端部は、車いすの使用者や介護者が手で握ってレバー部50を操作可能とする操作レバー56となっている。また、レバー部50の略中央部において操作部回動軸41より上側の位置には、一側固定部である上側固定軸部51が設けられている。これに対し、レバー部50の略下端部において、操作部回動軸41より下側の位置には、他側固定部である下側固定軸部52が設けられている。なお、操作部回動軸41から上側固定軸部51までの距離と、操作部回動軸41から下側固定軸部52までの距離は等しくなるように定められている。
【0022】
また、レバー部50の操作部回動軸41より主車輪2側(後側)の位置には、レバー部側リンク軸55が設けられている。
【0023】
レバー部側リンク軸55には、リンク部60が当該レバー部側リンク軸55を中心に回動自在に取り付けられている。そして、リンク部60において後方に向かって開口した開口部にレバー部50が介挿されており、リンク部60がレバー部50を板厚方向に挟むような構造となっている。なお、リンク部60の一端側に、レバー部側リンク軸55が設けられている。
【0024】
なお、レバー部50及びリンク部60によって操作部70が構成されている。
【0025】
また、ベース部40のブレーキ部回動軸42には、板形状のブレーキ部80の一端部が回動自在に取り付けられている。一方、ブレーキ部80の他端部には、リンク部60の他端部に位置したブレーキ部側リンク軸65が設けられている。
【0026】
さらに、ブレーキ部80の他端からは、ブレーキシュー81が主車輪2の車軸方向に沿って外向きに立設されており、主車輪2の前方にブレーキシュー81が横切るように配置されている。
【0027】
なお、図2に示した主車輪2とブレーキシュー81とが互いに離間した離間状態αにあっては、レバー部50の外周縁に形成されたレバー部側離間時規制面57と、ブレーキ部80の外周縁に形成されたブレーキ部側離間時規制面87とが互いに当接している。したがって、左車輪用駐車ブレーキ31にあっては、離間状態αでレバー部50がさらに主車輪2側に回動することがないように回動角度の範囲が規制されている。
【0028】
次に、同期構造30が備えた、連結部材としてのインナーワイヤ33,34と、インナーワイヤ33,34を被覆する被覆部材としてのアウターワイヤ35,36の接続構造について詳述する。
【0029】
左車輪用駐車ブレーキ31のレバー部50に設けられた上側固定軸部51には、第1インナーワイヤ(第1の連結部材)33の一端が取り付けられている。具体的には、上側固定軸部51に、操作部回動軸41の軸方向と平行な軸を中心として回動自在な上側自在ピン部材47が配置されており、上側自在ピン部材47に第1インナーワイヤ33の一端が固定手段(止めネジ)によって固定されて接続されている。
【0030】
一方、第1インナーワイヤ33の他端は、図5に示すように、中継部材としての下側自在ピン部材48を介して右車輪用駐車ブレーキ32のレバー部50に設けられた下側固定軸部52に接続されている。
【0031】
なお、第1インナーワイヤ33は、可撓性を有し、かつ略弾縮することのない金属製の線材が好適に採用できる。
【0032】
同様にして、右車輪用駐車ブレーキ32のレバー部50に設けられた上側固定軸部51には、第2インナーワイヤ(第2の連結部材)34の一端が取り付けられている。なお、第2インナーワイヤ34の一端も、左車輪用駐車ブレーキ31における上側固定軸部51と同様に、操作部回動軸41の軸方向と平行な軸を中心として回動自在に上側固定軸部51に取り付けられている。
【0033】
また、第2インナーワイヤ34の他端は、下側自在ピン部材48を介して左車輪用駐車ブレーキ31のレバー部50に設けられた下側固定軸部52に接続されている。
【0034】
なお、第2インナーワイヤ34も、第1インナーワイヤ33と同様に、可撓性を有し、かつ略弾縮することのない金属製の線材が好適に採用できる。
【0035】
また、図3図5等に示すように、左車輪用駐車ブレーキ31におけるベース部40に設けられたアウター固定部45の上側部分には、第1インナーワイヤ33が挿通された中継ボルト46を介して第1アウターワイヤ(第1の被覆部材)35の一端が固定されている。これに対し、第1アウターワイヤ35の他端は、右車輪用駐車ブレーキ32におけるベース部40に設けられたアウター固定部45の下側部分に、第1インナーワイヤ33が挿通された中継ボルト46を介して固定されている。なお、第1アウターワイヤ35は、可撓性を有する合成樹脂製からなる中空部材で構成されている。
【0036】
また、左車輪用駐車ブレーキ31におけるベース部40に設けられたアウター固定部45の下側部分には、第2インナーワイヤ34が挿通された中継ボルト46を介して第2アウターワイヤ(第2の被覆部材)36の一端が固定されている。これに対し、第2アウターワイヤ36の他端は、右車輪用駐車ブレーキ32におけるベース部40に設けられたアウター固定部45の上側部分に、第2インナーワイヤ34が挿通された中継ボルト46を介して固定されている。なお、第2アウターワイヤ36も、第1アウターワイヤ35と同様に、可撓性を有する合成樹脂製からなる中空部材で構成されている。
【0037】
なお、第1アウターワイヤ35及び第2アウターワイヤ36の両端には、過度な屈曲を防止するための保護コイルスプリング38が各々外嵌されている。
【0038】
ここで、各下側固定軸部52におけるインナーワイヤ33,34の固定構造を詳述する。
【0039】
下側固定軸部52には、図4に示すように、中継部材である下側自在ピン部材48が下側固定軸部52に回動自在に取り付けられている。下側自在ピン部材48は、貫通孔状の軸部91が形成されており、軸部91に下側固定軸部52が挿通可能となっている。
【0040】
また、下側自在ピン部材48には、丸孔形状のワイヤ留め孔部92が形成されている。このワイヤ留め孔部92には、横穴としてワイヤ挿通孔部93が形成されており、このワイヤ挿通孔部93によってワイヤ留め孔部92と当該下側自在ピン部材48の外周面とが連通している。なお、ワイヤ挿通孔部93は、図4(a)、図4(c)に示すように、軸部91に直交する方向を開口方向として形成されている。なお、ワイヤ留め孔部92及びワイヤ挿通孔部93によって、本発明にかかる遊嵌部Xが構成されている。
【0041】
さらに、第1インナーワイヤ33及び第2インナーワイヤ34の他端には、球部95が設けられている。この球部95は、ワイヤ留め孔部92内に収容可能な寸法となっており、かつ、ワイヤ挿通孔部93を挿通不能な寸法となっている。
【0042】
そして、球部95がワイヤ留め孔部92内に収容された状態で、ワイヤ挿通孔部93に第1インナーワイヤ33あるいは第2インナーワイヤ34が挿通されている。なお、ワイヤ挿通孔部93は第1インナーワイヤ33及び第2インナーワイヤ34の太さよりも若干大きな孔径としているため、第1インナーワイヤ33及び第2インナーワイヤ34を固定するような機能はなく、ワイヤ挿通孔部93内でワイヤ33,34が軸方向に移動自在となっている。
【0043】
これにより、第1インナーワイヤ33及び第2インナーワイヤ34の端部に設けられた球部95がワイヤ留め孔部92の内周面に引っ掛けられており、第1インナーワイヤ33及び第2インナーワイヤ34は、下側自在ピン部材48に遊嵌された状態となる。
【0044】
次に、左車輪用駐車ブレーキ31と右車輪用駐車ブレーキ32とが連動して作動する態様を説明する。
【0045】
図2図5に示すような、ブレーキ部80のブレーキシュー81が主車輪2から離間している離間状態αで、例えば左車輪用駐車ブレーキ31側の操作レバー56を主車輪2側(後側)に向かって回動操作する(図2図5中において時計回りに回動操作する)と、まずレバー部50の回動に伴って下側固定軸部52に接続された第2インナーワイヤ34の他端が、左車輪用駐車ブレーキ31の操作部70側に引張される。これにより第2インナーワイヤ34の一端が固定された右車輪用駐車ブレーキ32側の上側固定軸部51も引張され、右車輪用駐車ブレーキ32側のレバー部50も連動して操作部回動軸41を中心に、対応する主車輪2側(後側)に向かって回動操作する(図5中において反時計回りに回動する)。
【0046】
左右両方のレバー部50が回動すると、レバー部50の回動に伴いリンク部60を介してブレーキ部80のブレーキシュー81が主車輪2に近づく方向へ移動する。すなわち、左車輪用駐車ブレーキ31側の操作レバー56の操作によって左車輪用駐車ブレーキ31側のブレーキ部80及び右車輪用駐車ブレーキ32側のブレーキ部80が各主車輪2に対して同じ方向に移動する。
【0047】
上述のように、左右両方のレバー部50の回動によってブレーキシュー81が主車輪2側に移動することで、図3図6に示すように、ブレーキシュー81が主車輪2に圧接する圧接状態βが得られる。これにより主車輪2の回転が停止されて、駐車ブレーキがかかった状態となる。
【0048】
一方、駐車ブレーキがかかった圧接状態βを解除して離間状態αとする場合は、例えば左車輪用駐車ブレーキ31側の操作レバー56を前方に回動操作する(図3図6中において反時計回りに回動する)。これにより、レバー部50の回動に伴って上側固定軸部51に固定された第1インナーワイヤ33の一端が左車輪用駐車ブレーキ31の操作部70側に引張される。そして、これに伴って第1インナーワイヤ33の他端が接続された右車輪用駐車ブレーキ32側の下側固定軸部52が引張され、右車輪用駐車ブレーキ32側のレバー部50も連動して操作部回動軸41を中心に前方へ回動する。
【0049】
上述のような回動態様によって、ブレーキ部80のブレーキシュー81が主車輪2側から離間する方向へ移動する。すなわち、左車輪用駐車ブレーキ31側の操作レバー56の操作によって、左車輪用駐車ブレーキ31側のブレーキ部80及び右車輪用駐車ブレーキ32側のブレーキ部80が主車輪2に対して同じ方向に移動する。そして、図2図5に示すように、ブレーキ部80のブレーキシュー81が主車輪2から離間した離間状態αが得られる。これにより主車輪2が回転自在となり、駐車ブレーキが解除される。
【0050】
上述した同期構造30は、右車輪用駐車ブレーキ32側の操作レバー56を操作することによっても同様に有効である。仮に右車輪用駐車ブレーキ32側の操作レバー56を操作する場合において、圧接状態βとする際には第1インナーワイヤ33の他端が引張されて左車輪用駐車ブレーキ31側のレバー部50が連動して回動することとなる。また圧接状態βから離間状態αとする際には、第2インナーワイヤ34の一端が引張されて左車輪用駐車ブレーキ31側のレバー部50が連動して回動することとなる。
【0051】
さらに、第2インナーワイヤ34を基準とすると、左車輪用駐車ブレーキ31側の下側自在ピン部材48の遊嵌部Xは右車輪用駐車ブレーキ32側に位置し、第1インナーワイヤ33を基準とすると、右車輪用駐車ブレーキ32側の下側自在ピン部材48の遊嵌部Xは左車輪用駐車ブレーキ31側に位置する。
【0052】
そして、上述のように、下側自在ピン部材48は、下側固定軸部52に回動自在に取り付けられているため、レバー部50の操作によってワイヤ33,34の引張方向が変化しても、第1インナーワイヤ33及び第2インナーワイヤ34を直線状の形態に保持し続けることができる。すなわち、図7(a)に示すようにブレーキ部80が離間状態αにあっても、図7(b)に示すように圧接状態βにあっても、下側自在ピン部材48がワイヤ33,34の動きに応じて適宜回動し、第1インナーワイヤ33及び第2インナーワイヤ34の他端部はアウターワイヤ35,36から突き出された部位から端部に至るまで直線状の形態を保つことができる。
【0053】
これにより、第1インナーワイヤ33及び第2インナーワイヤ34が各端部において繰り返し屈曲されるなどして劣化してしまうことを防止することができ、部品の長寿命化を図ることができる。
【0054】
なお、インナーワイヤ33,34は、ベース部40間においてアウターワイヤ35,36で被覆されているため、左車輪用駐車ブレーキ31から右車輪用駐車ブレーキ32までの区間で操作レバー56の操作に伴い動作するインナーワイヤ33,34に対して他の部材が干渉してしまうことを抑制することができる。
【0055】
また、同期構造30は、ベース部40が車いす1のブレーキ取付板29に着脱自在に取り付けられる板部材(ベース部品)で構成されることから、駐車ブレーキユニット体として既存の車いすに新規に組み付けたり、あるいは交換したりすることもできる。
【0056】
なお、例えば一側固定部と他側固定部とは操作部回動軸41を基準にして上下方向に設けられる必要はなく、レバー部50の回動に伴っていずれかのインナーワイヤ33,34が引張される構成であれば例えば操作部回動軸41を基準にして前後方向に設けられていても構わない。
【0057】
また同期構造30は上記の実施例の車いす1に適用される場合に限定されず、例えば歩行補助車や乳母車等の車輪を有する構造体に適用しても構わない。
【符号の説明】
【0058】
1 車いす
2 主車輪
3 回動軸部
10 車いす本体
10A 左側枠
10B 右側枠
11 ベースフレーム部
12 後脚フレーム部
13 背フレーム部
15 座フレーム部
29 ブレーキ取付板
30 駐車ブレーキの同期構造
31 左車輪駐車用ブレーキ
32 右車輪用駐車ブレーキ
33 第1インナーワイヤ(第1の連結部材)
34 第2インナーワイヤ(第2の連結部材)
35 第1アウターワイヤ(第1の被覆部材)
36 第2アウターワイヤ(第2の被覆部材)
38 保護コイルスプリング
40 ベース部(ベース部品)
41 操作部回動軸
42 ブレーキ部回動軸
45 アウター固定部
47 上側自在ピン部材
48 下側自在ピン部材(中継部材)
50 レバー部
51 上側固定軸部(一側固定部)
52 下側固定軸部(他側固定部)
55 レバー部側リンク軸
56 操作レバー
57 レバー部側離間時規制面
58 レバー部側圧接時規制面
60 リンク部
65 ブレーキ部側リンク軸
70 操作部
80 ブレーキ部
81 ブレーキシュー
87 ブレーキ部側離間時規制面
88 ブレーキ部側圧接時規制面
91 軸部
92 ワイヤ留め孔部
93 ワイヤ挿通孔部
α 離間状態
β 圧接状態
X 遊嵌部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7