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特開2022-91621ズームレンズ及びそれを有する撮像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091621
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ズームレンズ及びそれを有する撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/20 20060101AFI20220614BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204563
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】木村 公平
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA02
2H087KA03
2H087MA15
2H087MA17
2H087MA19
2H087NA02
2H087PA09
2H087PA10
2H087PA19
2H087PB11
2H087PB12
2H087QA03
2H087QA07
2H087QA19
2H087QA21
2H087QA25
2H087QA34
2H087QA37
2H087QA42
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA36
2H087RA44
2H087SA44
2H087SA46
2H087SA49
2H087SA53
2H087SA56
2H087SA57
2H087SA62
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SB02
2H087SB13
2H087SB23
2H087SB26
2H087SB27
2H087SB32
2H087SB42
2H087SB43
2H087SB44
2H087UA01
(57)【要約】
【課題】全長が短く小型でありながら高い光学性能を有するズームレンズ及びそれを有する撮像装置を提供すること。
【解決手段】ズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群を有し、ズーミングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化するズームレンズであって、第1レンズ群は、一つの負レンズからなり、広角端から望遠端へのズーミングに際しての第1レンズ群の移動量、広角端におけるバックフォーカス、第1レンズ群の焦点距離、第1レンズ群の光軸上の厚さ、最も物体側に配置されたレンズのアッベ数を各々適切に設定すること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群を有し、ズーミングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化するズームレンズであって、
前記第1レンズ群は、一つの負レンズからなり、
広角端から望遠端へのズーミングに際しての前記第1レンズ群の移動量をm1、広角端におけるバックフォーカスをskw、前記第1レンズ群の焦点距離をf1、前記第1レンズ群の光軸上の厚さをTD1、最も物体側に配置されたレンズのアッベ数をνd1とするとき、
-20.00<m1/skw<-1.70
-100.0<f1/TD1<-28.0
50<νd1<100
なる条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
広角端から望遠端へのズーミングに際しての前記第2レンズ群の移動量をm2とするとき、
0.5<m2/skw<3.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
広角端における前記ズームレンズの全長をTTDwとするとき、
5.0<TTDw/skw<20.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
最も物体側に配置されたレンズの、物体側面の曲率半径をR1、像側面の曲率半径をR2とするとき、
-2.0<(R2+R1)/(R2-R1)<-0.3
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
望遠端における前記第2レンズ群の横倍率をβ2t、広角端における前記第2レンズ群の横倍率をβ2wとするとき、
1.5<β2t/β2w<10
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
広角端における像面から射出瞳位置までの距離をPOwとするとき、
0.5<POw/fw<8.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記第2レンズ群の焦点距離をf2とするとき、
0.5<f2/fw<4.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
最も像側のレンズ群の焦点距離をfrとするとき、
0.5<|fr|/fw<10
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載のズームレンズ。
【請求項9】
望遠端におけるズームレンズの焦点距離をftとするとき、
-5<ft/f1<-0.5
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載のズームレンズ。
【請求項10】
前記第1レンズ群が像側に正の屈折力の樹脂層が接着された前記負レンズからなる場合に、前記樹脂層の焦点距離をfpとするとき、
10<fp/fw<1000
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載のズームレンズ。
【請求項11】
前記第1レンズ群は、負の屈折力のレンズからなることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載のズームレンズ。
【請求項12】
前記第2レンズ群より像側に配置された3つ以上のレンズ群を有することを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載のズームレンズ。
【請求項13】
前記第2レンズ群より像側に配置された負の屈折力の第3レンズ群を有することを特徴とした請求項1乃至12の何れか一項に記載のズームレンズ。
【請求項14】
前記ズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、前記第1レンズ群、前記第2レンズ群、負の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群、正の屈折力の第5レンズ群、負の屈折力の第6レンズ群、正の屈折力の第7レンズ群からなることを特徴とする請求項13に記載のズームレンズ。
【請求項15】
前記第2レンズ群より像側に配置された正の屈折力の第3レンズ群を有することを特徴とした請求項1乃至12の何れか一項に記載のズームレンズ。
【請求項16】
前記ズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、前記第1レンズ群、前記第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、負の屈折力の第4レンズ群、負の屈折力の第5レンズ群からなることを特徴とする請求項15に記載のズームレンズ。
【請求項17】
広角端から望遠端へのズーミングに際して、前記第1レンズ群は単調に像側に移動することを特徴とする請求項1乃至16の何れか一項に記載のズームレンズ。
【請求項18】
ズーミングに際して、前記第1レンズ群より像側に配置されたレンズ群のうち少なくとも2つ以上のレンズ群が同一軌跡で移動することを特徴とした請求項1乃至17の何れか一項に記載のズームレンズ。
【請求項19】
前記第2レンズ群より像側に開口絞りが配置されていることを特徴とする請求項1乃至18の何れか一項に記載のズームレンズ。
【請求項20】
フォーカシングに際して、前記第1レンズ群より像側に配置されたレンズ群のうち2つ以上のレンズ群が移動することを特徴とする請求項1乃至19の何れか一項に記載のズームレンズ。
【請求項21】
請求項1乃至20の何れか一項に記載のズームレンズと、
該ズームレンズを介して物体を撮像する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズに関し、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、放送用カメラ、銀塩フィルム用カメラ、監視用カメラ等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置の高機能化に伴い、大口径比でありなが小型軽量なズームレンズが要求されている。この要求を満足するズームレンズとして、最も物体側に負の屈折力のレンズ群を配置したネガティブリード型のズームレンズが知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1には、物体側から像側へ順に配置された、負、正、負、正、正の屈折力の第1レンズ群乃至第5レンズ群からなり、ズーミングに際して第1レンズ群は像側に移動した後、物体側に移動するズームレンズが開示されている。特許文献1のズームレンズは、第1レンズ群の屈折力を強くすることで、広角端での全長を短くしている。また、第2レンズ群に後続する群を3つ以上とすることで、大口径化に伴う諸収差と収差のズーム変動を抑制している。
【0004】
特許文献2には、物体側から像側へ順に配置された、負、正、正の屈折力の第1レンズ群乃至第3レンズ群を有するズームレンズが開示されている。特許文献2のズームレンズは、撮像素子とレンズが一体化された所謂コンパクトデジタルカメラ用に好適なズームレンズであり、広角端及び望遠端での全長は比較的短い。また、特許文献2には、全長の短縮化とレンズ鏡筒径の小型化を図るために、バックフォーカスを短く設定し、第1レンズ群を負の屈折力の単レンズ1枚の構成としたズームレンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4984231号公報
【特許文献2】特開2007-327991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のズームレンズでは、第1レンズ群の屈折力を強くし、ズーミングに際しての第1レンズ群の移動軌跡が略往復軌跡となることで、望遠端でのズームレンズの全長が長くなる。また、バックフォーカスが長く、ズームレンズの全長を短縮化することが難しい。また、第1レンズ群内での収差補正のために第1レンズ群の厚さが大きくなり、小型軽量化の観点から好ましくない。
【0007】
特許文献2のズームレンズでは、ズーム倍率を稼ぐために第1レンズ群の屈折力が強く、後続する群の構成が第4レンズ群までの4群構成である。これ以上の大口径比化を狙うと、望遠領域における諸収差や収差のズーム変動を抑制できず、ズーム全域にわたって良好な光学性能を満足することが困難となる。
【0008】
本発明は、全長が短く小型でありながら高い光学性能を有するズームレンズ及びそれを有する撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としてのズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群を有し、ズーミングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化するズームレンズであって、第1レンズ群は、一つの負レンズからなり、広角端から望遠端へのズーミングに際しての第1レンズ群の移動量をm1、広角端におけるバックフォーカスをskw、第1レンズ群の焦点距離をf1、第1レンズ群の光軸上の厚さをTD1、最も物体側に配置されたレンズのアッベ数をνd1とするとき、
-20.00<m1/skw<-1.70
-100.0<f1/TD1<-28.0
50<νd1<100
なる条件式を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、全長が短く小型でありながら高い光学性能を有するズームレンズ及びそれを有する撮像装置、撮像システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1のズームレンズの広角端における断面図である。
図2】(A),(B),(C)実施例1のズームレンズの広角端、中間のズーム位置、望遠端における諸収差図である。
図3】実施例2のズームレンズの広角端における断面図である。
図4】(A),(B),(C)実施例2のズームレンズの広角端、中間のズーム位置、望遠端における諸収差図である。
図5】実施例3のズームレンズの広角端における断面図である。
図6】(A),(B),(C)実施例3のズームレンズの広角端、中間のズーム位置、望遠端における諸収差図である。
図7】実施例4のズームレンズの広角端における断面図である。
図8】(A),(B),(C)実施例4のズームレンズの広角端、中間のズーム位置、望遠端における諸収差図である。
図9】実施例5のズームレンズの広角端における断面図である。
図10】(A),(B),(C)実施例5のズームレンズの広角端、中間のズーム位置、望遠端における諸収差図である。
図11】撮像装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1,3,5,7,9はそれぞれ、実施例1乃至5のズームレンズの広角端における断面図である。各実施例のズームレンズは、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、放送用カメラ、銀塩フィルム用カメラ、監視用カメラ等の撮像装置に用いられる。また、各実施例のズームレンズは、投写装置(プロジェクタ)用の投写光学系として用いることもできる。
【0014】
各断面図において左方が物体側(前方)で、右方が像側(後方)である。各実施例のズームレンズは、複数のレンズ群を有して構成されている。本願明細書においてレンズ群とは、ズーミングに際して一体的に移動又は静止するレンズのまとまりである。すなわち、各実施例のズームレンズでは、ズーミングに際して隣接するレンズ群同士の間隔が変化する。各断面図に示した矢印は、広角端から望遠端へのズーミング及び無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングに際してのレンズ群の移動方向を表している。なお、レンズ群は1枚のレンズから構成されていてもよいし、複数のレンズから成っていてもよい。また、レンズ群は開口絞りを含んでいてもよい。
【0015】
各断面図において、Liはズームレンズに含まれるレンズ群のうち物体側から数えてi番目(iは自然数)のレンズ群を表している。
【0016】
また、SPは開口絞りである。IPは像面であり、各実施例のズームレンズをデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラの撮影光学系として使用する際にはCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面が配置される。各実施例のズームレンズを銀塩フィルム用カメラの撮影光学系として使用する際には像面IPにはフィルム面に相当する感光面が置かれる。
【0017】
図2(A),4(A),6(A),8(A),10(A)はそれぞれ、実施例1乃至5のズームレンズの広角端における縦収差図である。図2(B),4(B),6(B),8(B),10(B)はそれぞれ、実施例1乃至5のズームレンズの中間のズーム位置における縦収差図である。図2(C),4(C),6(C),8(C),10(C)はそれぞれ、実施例1乃至5のズームレンズの望遠端における縦収差図である。
【0018】
球面収差図においてFnoはFナンバーであり、d線(波長587.6nm)、g線(波長435.8nm)に対する球面収差量を示している。非点収差図においてΔSはサジタル像面における非点収差量、ΔMはメリディオナル像面における非点収差量を示している。歪曲収差図においてd線に対する歪曲収差量を示している。色収差図ではd線に対するg線における色収差量を示している。ωは撮像半画角(°)である。
【0019】
次に、各実施例のズームレンズにおける特徴的な構成について述べる。
【0020】
撮像装置に用いるズームレンズには、大口径比でズーム全域にわたり高い光学性能を有すること、全長が短く小型軽量であることが強く要望されている。また、バックフォーカスが適切な長さであること、レンズ鏡筒に組み込んだとき、レンズ鏡筒径が小さくなるレンズ構成であること等が要望されている。
【0021】
ネガティブリード型のズームレンズにおいて、これらの要求を満足させるには、ズームレンズを構成する各要素を適切に設定することが重要である。例えばズームタイプ(レンズ群の数や各レンズ群の屈折力の符号)や、ズームレンズの全長に強く影響する1群移動量や屈折力、レンズ構成を適切に設定することが重要である。
【0022】
各実施例のズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群L1、正の屈折力の第2レンズ群L2を有し、ズーミングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する。
【0023】
各実施例のズームレンズにおいて、望遠端においてズームレンズの全長が最も短くなるようなズーム軌跡にしている。また、ズーミングに際して第1レンズ群L1と第2レンズ群L2との間隔を大きく縮めることにより、主な変倍を行っている。特に第2レンズ群L2に強い屈折力を持たせ、かつ、ズーミングに際して物体側に大きく移動させることで大きな変倍作用を持たせている。また、広角端におけるズームレンズの全長短縮化のために、バックフォーカスを極力像面まで近づけた構成としている。また、前玉径の小型化と広角端における良好な光学性能の両立のために第1レンズ群L1の焦点距離を適切に設定している。また、第1レンズ群L1は、一つの負レンズからなる。これにより、ズームレンズの軽量化と望遠端におけるズームレンズの全長短縮化を実現することができる。なお、第1レンズ群L1を構成する負レンズは、樹脂層が設けられていてもよい。このような負レンズは、樹脂層を負レンズに接着して製造してもよいし、レプリカ成形により製造してもよい。
【0024】
各実施例のズームレンズは、以下の条件式(1)乃至(3)を満足する。
【0025】
-20.00<m1/skw<-1.70 (1)
-100.0<f1/TD1<-28.0 (2)
50<νd1<100 (3)
ここで、m1は、広角端から望遠端へのズーミングに際しての第1レンズ群L1の移動量である。skwは、広角端におけるバックフォーカスである。f1は、第1レンズ群L1の焦点距離である。TD1は、第1レンズ群L1の光軸上の厚さ(第1レンズ群L1の最も物体側のレンズ面から第1レンズ群L1の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離)である。νd1は、最も物体側に配置されたレンズのアッベ数である。なお、バックフォーカスとは、レンズ最終面(最も像側のレンズ面)から近軸像面までの光軸上の距離を空気換算長により表記したものである。
【0026】
なお、レンズ群の移動量とは、広角端における光軸上の位置と望遠端における光軸上の位置の差に相当する。移動量の符号は、広角端に比べて望遠端においてレンズ群が像側に位置するときを負、広角端に比べて望遠端においてレンズ群が物体側に位置するときを正とする。
【0027】
条件式(1)は、望遠端におけるズームレンズの全長の短縮化とズーム全域における収差補正を図るために、ズーミングに際しての第1レンズ群L1の移動量と広角端におけるバックフォーカスの関係を規定している。条件式(1)の下限値を下回ってズーミングに際しての第1レンズ群L1の移動量が大きくなると、広角端におけるズームレンズの全長が長くなると共に、前玉径も大型化してしまい好ましくない。また、条件式(1)の下限値を下回ってバックフォーカスが小さくなると、レンズとカメラとの接続部のメカ的なレイアウトが困難となる。条件式(1)の上限値を上回ってズーミングに際しての第1レンズ群L1の移動量が小さくなると、所望のズーム倍率を得ることが難しくなる。また、条件式(1)の上限値を上回ってバックフォーカスが大きくなると、ズームレンズの全長の短縮化に不利になり好ましくない。
【0028】
条件式(2)は、ズームレンズの軽量化とズーム全域における収差補正を図るために、第1レンズ群L1の焦点距離と第1レンズ群L1の厚さの関係を規定している。条件式(2)の下限値を下回って第1レンズ群L1の焦点距離が長くなると、第1レンズ群L1の屈折力が弱くなり、広角端におけるレトロフォーカスの負の屈折力配置が弱まり、広角端における全長短縮化の観点から好ましくない。また、条件式(2)の下限値を下回って第1レンズ群のL1の厚さが小さくなると、第1レンズ群L1が薄くなりすぎ、製造困難となる。条件式(2)の上限値を上回って第1レンズ群L1の焦点距離が短くなると、第1レンズ群L1の屈折力が強くなり、第1レンズ群L1で発生する収差、特に広角端における倍率色収差や歪曲収差を後続群で補正することが困難となる。また、条件式(2)の上限値を上回って第1レンズ群の厚さが大きくなると、第1レンズ群L1の体積が増え、小型軽量化の観点から好ましくない。
【0029】
条件式(3)は、広角端における良好な収差補正を行うために、最も物体側に配置されたレンズのアッベ数を規定している。条件式(3)の下限値を下回って最も物体側に配置されたレンズのアッベ数が小さくなると、広角端における色収差補正が困難となる。条件式(3)の上限値を上回ってアッベ数が大きくなると、最も物体側に配置されたレンズの屈折率も下がるため、第1レンズ群L1が大型化し好ましくない。また、最も物体側に配置されたレンズで発生する歪曲収差や像面湾曲収差が後続群で補正することが困難となり好ましくない。
【0030】
上記構成により、大口径比でズーム全域にわたり高い光学性能を有し、全長が短く小型軽量なズームレンズを実現することができる。
【0031】
なお、条件式(1)乃至(3)の数値範囲を以下の条件式(1a)乃至(3a)の数値範囲とすることが好ましい。
【0032】
-10.00<m1/skw<-1.75 (1a)
-80.0<f1/TD1<-28.5 (2a)
50<νd<82 (3a)
また、条件式(1)乃至(3)の数値範囲を以下の条件式(1b)乃至(3b)の数値範囲とすることが更に好ましい。
【0033】
-5.00<m1/skw<-1.80 (1b)
-65.0<f1/TD1<-29.0 (2b)
53<νd<75 (3b)
次に、各実施例のズームレンズにおいて、満足することが好ましい構成について述べる。
【0034】
各実施例のズームレンズにおいて、広角端から望遠端へのズーミングに際し、第1レンズ群L1は単調に像側に移動することが好ましい。このような構成により、望遠端におけるズームレンズの全長を短縮化することができる。
【0035】
各実施例のズームレンズにおいて、第2レンズ群L2の像側に配置された3つ以上のレンズ群を有することが好ましい。大口径ズームレンズにおいて球面収差やコマ収差等のズーム変動を抑制するには、光束幅が太くなる第2レンズ群L2より像側に配置されたレンズ群の構成を多群構成とし、それぞれ独立した軌跡でズーミングすることで、良好な収差補正を行うことができる。
【0036】
各実施例のズームレンズにおいて、第1レンズ群L1より像側に配置されたレンズ群のうち少なくとも2つ以上のレンズ群がズーミングに際して一体となり同一軌跡で移動することが好ましい。このような構成により、メカ的により簡素な構成とすることができ、小型軽量化の観点から好ましい。
【0037】
各実施例のズームレンズにおいて、第2レンズ群L2より像側に配置された開口数を決定する絞り(開口絞り)を有することが好ましい。第2レンズ群L2より像側に絞りを配置することで、第1レンズ群L1及び第2レンズ群L2による倍率色収差の補正を良好に行うことができる。
【0038】
各実施例のズームレンズにおいて、至近物体距離においても良好な光学性能を確保するために、第1レンズ群L1より像側に配置されたレンズ群のうち2つ以上のレンズ群がフォーカシングに際して移動する、所謂フローティング構成とすることが好ましい。
【0039】
次に、各実施例のズームレンズが満足することが好ましい条件について述べる。各実施例のズームレンズは、以下の条件式(4)乃至(12)のうち1つ以上を満足することが好ましい。
【0040】
0.5<m2/skw<3.0 (4)
5.0<TTDw/skw<20.0 (5)
-2.0<(R2+R1)/(R2-R1)<-0.3 (6)
1.50<β2t/β2w<10.00 (7)
0.5<POw/fw<8.0 (8)
0.5<f2/fw<4.0 (9)
0.50<|fr|/fw<10.00 (10)
-5.00<ft/f1<-0.50 (11)
10<fp/fw<1000 (12)
ここで、m2は、広角端から望遠端へのズーミングに際しての第2レンズ群L2の移動量である。TTDwは、広角端におけるズームレンズの全長(広角端における最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離)である。R1は、最も物体側に配置されたレンズの物体側面の曲率半径である。R2は、最も物体側に配置されたレンズの像側面の曲率半径である。β2tは、望遠端における第2レンズ群L2の横倍率である。β2wは、広角端における第2レンズ群L2の横倍率である。POwは、広角端における像面IPから射出瞳位置までの距離である。射出瞳位置までの距離の符号は、像面IPよりも物体側を負、像面よりも像側を正とする。f2は、第2レンズ群L2の焦点距離である。frは、最も像側のレンズ群の焦点距離である。ftは、望遠端におけるズームレンズの焦点距離である。fpは、第1レンズ群L1が像側に正の屈折力の樹脂層が接着された負レンズからなる場合の樹脂層の焦点距離である。
【0041】
条件式(4)は、ズーミングに際しての第2レンズ群L2の移動量と広角端におけるバックフォーカスの関係を規定している。条件式(4)の上限値を上回ってズーミングに際しての第2レンズ群L2の移動量が大きくなると、望遠端におけるズームレンズの全長の短縮化が困難となる。また、広角端と望遠端における光束の上下幅の比率変化が大きくなる。その結果、絞りで光束を絞ったときに発生する周辺光量の減少が顕著になり好ましくない。また、条件式(4)の上限値を上回って広角端におけるバックフォーカスが小さくなると、レンズとカメラとの接続部のメカ的なレイアウトが困難となる。条件式(4)の下限値を下回って第2レンズ群L2の移動量が小さくなると、主変倍群である第2レンズ群L2の変倍分担が小さくなり、変倍率を稼ぐために結果として広角端全長が長くなる傾向にあり、全長小型化の観点から好ましくない。また、条件式(4)の下限値を下回って広角端におけるバックフォーカスが大きくなると、バックフォーカスを不要に長くすることになり、広角端における全長短縮の観点から好ましくない。
【0042】
条件式(5)は、全長が短縮化されたズームレンズを得るために広角端におけるズームレンズの全長と広角端におけるバックフォーカスの関係を規定している。条件式(5)の上限値を上回って広角端におけるズームレンズの全長が長くなると、ズームレンズの全長の短縮化を満足しないため好ましくない。また、条件式(5)の上限値を上回ってバックフォーカスが小さくなると、レンズとカメラとの接続部のメカ的なレイアウトが困難となる。条件式(5)の下限値を下回ってズームレンズの全長が短くなると、ズームレンズ全体の正の屈折力が高くなりすぎ、ペッツバール和のコントロールが困難となり、所望の光学性能を得る事が困難となる。また、条件式(5)の下限値を下回ってバックフォーカスが大きくなると、全長短縮の観点から好ましくない。
【0043】
条件式(6)は、前玉のレンズ径小型化と歪曲収差抑制を両立させるために、最も物体側に配置されたレンズの形状、所謂レンズのシェイプファクターを規定している。条件式(6)の上限値を上回って最も物体側に配置されたレンズの両凹形状が強くなると、物体側面の曲率半径が強くなりすぎ、歪曲収差が強くなりすぎ好ましくない。また、両凹形状が強まるということは、第1レンズ群L1の屈折力も強まることになるので、広角端における倍率色収差や像面歪曲収差の発生が抑制できず、好ましくない。条件式(6)の下限値を下回って最も物体側に配置されたレンズのシェイプファクターが負に大きくなると、レンズ形状が物体側に凸の負メニス形状が強くなりすぎる。負メニス形状が強くなりすぎると、歪曲収差の抑制には有利であるが、第1レンズ群L1が厚くなることに加え、レンズ先端のメカ部材の径が大きくなり、小型化の観点から好ましくない。
【0044】
条件式(7)はズームレンズの全長短縮化とレンズ鏡筒径の小型化を図るために、望遠端における第2レンズ群L2の横倍率と広角端における第2レンズ群L2の関係、所謂変倍比を規定している。条件式(7)の上限値を上回って第2レンズ群L2の変倍比が大きくなると、高倍率化及び第2レンズ群L2以降のレンズ径の小型化には有利になるものの、第2レンズ群L2で発生する球面収差やコマ収差、軸上色収差を抑制することが困難となり好ましくない。条件式(7)の下限値を下回って第2レンズ群L2の変倍比が小さくなると、所望のズーム倍率を得るために、第1レンズ群L1や後属群の屈折力を強くしたりズーミングに際しての移動量を大きくしたりする必要がある。これは、全長短縮化と光学性能確保の観点から好ましくない。
【0045】
条件式(8)は、高テレセントリック性を確保するために、広角端における像面IPから射出瞳位置までの距離と広角端におけるズームレンズの焦点距離の関係を規定している。条件式(8)の下限値を下回って像面IPから射出瞳位置までの距離が長くなると、最終レンズ群の屈折力が強まる傾向にあり、像面湾曲を十分に抑制することが難しくなり、好ましくない。条件式(8)の上限値を上回って像面IPから射出瞳位置までの距離が短くなると、周辺像高の光線の像面入射角度が大きくなりすぎ、所謂シェーディングの観点から好ましくない。また、条件式(8)の上限値を上回ってズームレンズの焦点距離が長くなると、所望のズーム倍率を実現することが困難となり好ましくない。
【0046】
条件式(9)は、レンズ径の小型化とズーム全域における高い光学性能を両立するために、第2レンズ群L2の焦点距離と広角端におけるズームレンズの焦点距離の関係を規定している。条件式(9)の上限値を上回って第2レンズ群L2の焦点距離が長くなると、第2レンズ群L2に後続するレンズ群のレンズ径を十分に小さくすることが困難となり、レンズ径小型化の観点から好ましくない。また、条件式(9)の上限値を上回ってズームレンズの焦点距離が短くなると、広角化による前玉径大型化を招き好ましくない。条件式(9)の下限値を下回って第2レンズ群L2の焦点距離が短くなると、レンズ径小型化には有利になるものの、第2レンズ群L2で発生する球面収差の十分な補正が困難となり、好ましくない。また、条件式(9)の下限値を下回ってズームレンズの焦点距離が長くなると、所望の広角端画角を得ることができない。
【0047】
条件式(10)は、像面湾曲補正と像面に入射する光線の角度を適切に設定するために、
frは、最も像側のレンズ群の焦点距離と広角端におけるズームレンズの焦点距離の関係を規定している。条件式(10)の上限値を上回って最も像側のレンズ群の焦点距離が長くなると、最も像側のレンズ群の屈折力が弱くなりすぎ、十分な像面湾曲収差効果をもたせることが困難となる。また、屈折力を持たないレンズ群を配置するためのスペースを確保する必要があり、小型化の観点から好ましくない。また、条件式(10)の上限値を上回ってズームレンズの焦点距離が短くなると、広角化による前玉径大型化を招き好ましくない。条件式(10)の下限値を下回って最も像側のレンズ群の焦点距離が短くなると、ズームレンズの全長を短縮化する効果は強くなるが、像面に入射する角度の絶対値が強くなりすぎ、撮像素子で発生するシェーディングが大きくなる傾向が強くなり、好ましくない。また、最終レンズ群での像面湾曲補正効果が過剰になり、好ましくない。
【0048】
条件式(11)は、所望のズーム倍率を得るために、望遠端におけるズームレンズの焦点距離と第1レンズ群L1の焦点距離の関係を規定している。条件式(11)の下限値を下回ってズームレンズの焦点距離が長くなると、望遠端における収差、特に倍率色収差を補正することが困難となる。また、条件式(11)の下限値を下回って第1レンズ群L1の焦点距離が短くなると、第1レンズ群L1の屈折力が強くなりすぎ、広角端におけるバックフォーカスが長くなり、全長短縮化の観点から好ましくない。また、広角端で発生する倍率色収差を後続群でキャンセルすることが困難となる。条件式(11)の上限値を上回ってズームレンズの焦点距離が短くなると、所望のズーム倍率を得ることできない。また、条件式(11)の上限を上回って第1レンズ群L1の焦点距離が長くなると、ズームレンズ全体の正の屈折力が強くなりすぎ、ペッツバール和のコントロールが困難となり、所望の光学性能を得ることが困難となる。
【0049】
条件式(12)は、第1レンズ群L1が像側に正の屈折力の樹脂層が接着された負レンズからなる場合に、良好な色収差補正を行うために樹脂層の焦点距離と広角端におけるズームレンズの焦点距離の関係を規定している。条件式(12)の上限値を上回って樹脂層の焦点距離が長くなると、色収差補正を行うことが困難となる。また、条件式(12)の上限値を上回ってズームレンズの焦点距離が長くなると、第1レンズ群L1が大型化してしまう。条件式(12)の下限値を下回って樹脂層の焦点距離が短くなると、樹脂層の厚みを厚くする必要があり、小型軽量化の観点から好ましくない。また、条件式(12)の下限値を下回ってズームレンズの焦点距離が短くなると、所望の広角域における画角を得ることができなくなるため好ましくない。
【0050】
なお、条件式(4)乃至(12)の数値範囲を以下の条件式(4a)乃至(12a)の数値範囲とすることが好ましい。
【0051】
0.75<m2/skw<2.5 (4a)
7.5<TTDw/skw<18.0 (5a)
-1.5<(R2+R1)/(R2-R1)<-0.5 (6a)
1.75<β2t/β2w<7.00 (7a)
1.0<POw/fw<5.0 (8a)
0.75<f2/fw<3.0 (9a)
0.75<|fr|/fw<8.00 (10a)
-2.50<ft/f1<-0.75 (11a)
15<fp/fw<100 (12a)
また、条件式(4)乃至(12)の数値範囲を以下の条件式(4b)乃至(12b)の数値範囲とすることが更に好ましい。
【0052】
1.0<m2/skw<2.0 (4b)
11.0<TTDw/skw<16.0 (5b)
-1.0<(R2+R1)/(R2-R1)<-0.6 (6b)
2.00<β2t/β2w<3.50 (7b)
1.25<POw/fw<4.0 (8b)
1.0<f2/fw<2.0 (9b)
1.00<|fr|/fw<6.00 (10b)
-1.50<ft/f1<-1.00 (11b)
19<fp/fw<50 (12b)
次に、各実施例のズームレンズについて詳細に述べる。
【0053】
実施例1及び実施例4のズームレンズは、ズーム比2.4、Fナンバー2.9のズームレンズである。
【0054】
実施例2及び実施例5のズームレンズは、ズーム比2.1、Fナンバー2.9のズームレンズである。
【0055】
実施例3のズームレンズは、ズーム比2.2、Fナンバー2.9のズームレンズである。
【0056】
実施例1、実施例2及び実施例5のズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、負、正、負、正、正、負、正の屈折力の第1レンズ群L1乃至第7レンズ群L7からなる7群のズームレンズである。広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群L1は像側に単調に移動し、第2レンズ群L2乃至第7レンズ群L7は物体側に移動する。ズーミングに際して、第5レンズ群L5及び第7レンズ群L7は一体的に(同じ軌跡で)移動する。フォーカシングに際して第4レンズ群L4及び第6レンズ群L6が移動する。実施例1、実施例2及び実施例5のズームレンズでは、負の屈折力の第3レンズ群を有する。これにより、像面湾曲収差や球面収差などのズーム変動を抑制することができる。
【0057】
実施例3のズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、負、正、正、負、負の屈折力の第1レンズ群L1乃至第5レンズ群L5からなる5群のズームレンズである。広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群L1は像側に単調に移動し、第2レンズ群L2乃至第4レンズ群L4は物体側に移動し、第5レンズ群L5は像側へ移動する。フォーカシングに際して第4レンズ群L4が移動する。
【0058】
実施例4のズームレンズは、物体側から像側へ順に、負、正、正、負、負の屈折力の第1レンズ群L1乃至第5レンズ群L5からなる構成されている5群のズームレンズである。広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群L1は像側に単調に移動し、第2レンズ群L2乃至第5レンズ群L5は物体側に移動する。フォーカシングに際して第4レンズ群L4が移動する。
【0059】
実施例3及び実施例4のズームレンズでは、正の屈折力の第3レンズ群を有する。これにより、ズーム倍率を稼ぐことができ、望遠端におけるズームレンズの全長を短縮化することができる。
【0060】
実施例1、実施例2及び実施例4のズームレンズでは、第1レンズ群L1は負の屈折力のレンズのみからなる。これにより、第1レンズ群L1の軽量化を実現することができる。
【0061】
以下に、実施例1乃至5にそれぞれ対応する数値実施例1乃至5を示す。
【0062】
各数値実施例の面データにおいて、rは各光学面の曲率半径、d(mm)は第m面と第(m+1)面との間の軸上間隔(光軸上の距離)を表している。ただし、mは光入射側から数えた面の番号である。また、ndは各光学部材のd線に対する屈折率、νdは光学部材のd線を基準としたアッベ数を表わしている。なお、ある材料のd線を基準としたアッベ数νdは、フラウンホーファ線のd線(587.6nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率をNd,NF,NCとするとき、
νd=(Nd-1)/(NF-NC)
で表される。
【0063】
なお、各数値実施例において、d、焦点距離(mm)、Fナンバー、半画角(°)は全て各実施例のズームレンズが無限遠物体に焦点を合わせたときの値である。「レンズ全長」は、ズームレンズの最前面(最も物体側のレンズ面)から最終面までの光軸上の距離にバックフォーカスを加えた長さである。「レンズ群」は、複数のレンズから構成される場合に限らず、1枚のレンズから構成される場合も含むものとする。
【0064】
また、光学面が非球面の場合は、面番号の右側に、*の符号を付している。非球面形状は、xを光軸方向の面頂点からの変位量、hを光軸と垂直な方向の光軸からの高さ、Rを近軸曲率半径、kを円錐定数、A4,A6,A8,A10,A12を各次数の非球面係数とするとき、
x=(h2/R)/[1+{1-(1+k)(h/R)21/2 +A4×h4+A6×h6
+A8×h8+A10×h10+A12×h12
で表している。なお、各非球面係数における「e±XX」は「×10±XX」を意味している。
【0065】

[数値実施例1]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 -192.816 1.35 1.59522 67.7
2 42.202 (可変)
3 70.059 3.00 1.60311 60.6
4 -231.103 0.15
5 41.904 4.02 1.59522 67.7
6 -321.689 (可変)
7(絞り) ∞ 1.55
8 -108.984 1.00 1.72000 43.7
9 16.753 4.24 1.95375 32.3
10 55.232 (可変)
11 44.085 2.98 1.72916 54.7
12 -89.992 (可変)
13 -25.690 0.85 1.85478 24.8
14 24.639 5.99 1.49700 81.5
15 -33.348 0.15
16 52.219 4.45 2.00100 29.1
17 -48.241 (可変)
18 -51.497 0.80 1.77830 23.9
19 46.498 (可変)
20* -36.795 2.00 1.53110 55.9
21* -10000.000 0.15
22 236.787 4.80 2.10420 17.0
23 -63.112 (可変)
像面 ∞

非球面データ
第20面
K = 0.00000e+000 A 4=-8.97136e-005 A 6= 3.29225e-007 A 8= 7.32666e-011 A10=-5.25818e-012 A12= 1.31285e-014

第21面
K = 0.00000e+000 A 4=-7.37201e-005 A 6= 3.95591e-007 A 8=-1.04347e-009 A10= 1.19815e-012 A12=-9.89840e-017

各種データ
ズーム比 2.35
広角 中間 望遠
焦点距離 28.84 45.38 67.90
Fナンバー 2.91 2.91 2.91
半画角(度) 32.68 25.49 17.67
像高 18.50 21.64 21.64
レンズ全長 138.42 114.99 105.42
BF 10.97 16.53 21.12

d 2 59.67 26.57 6.53
d 6 1.71 8.01 16.47
d10 8.65 6.36 1.72
d12 4.33 4.43 6.49
d17 1.27 1.54 1.80
d19 14.33 14.07 13.80
d23 10.97 16.53 21.12

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 -58.05
2 3 37.27
3 7 -103.56
4 11 40.96
5 13 53.58
6 18 -31.28
7 20 115.89

[数値実施例2]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 -252.878 1.50 1.75500 52.3
2 40.435 (可変)
3 62.036 4.76 1.85150 40.8
4 -183.577 0.15
5 38.418 3.82 1.59522 67.7
6 -2696.227 (可変)
7(絞り) ∞ 1.62
8 -86.083 1.00 1.72000 43.7
9 17.418 2.78 1.95375 32.3
10 34.879 (可変)
11 44.416 3.10 1.72916 54.7
12 -52.309 (可変)
13 -28.898 0.85 1.85478 24.8
14 23.368 5.97 1.49700 81.5
15 -35.419 2.06
16 53.242 4.47 2.00100 29.1
17 -53.173 (可変)
18 -50.319 0.80 1.77830 23.9
19 44.151 (可変)
20* -60.857 2.00 1.53110 55.9
21* -10000.000 0.15
22 256.334 4.48 2.10420 17.0
23 -68.907 (可変)
像面 ∞

非球面データ
第20面
K = 0.00000e+000 A 4=-6.78074e-005 A 6= 1.55773e-007 A 8= 4.14571e-010 A10=-4.06466e-012 A12= 8.51258e-015

第21面
K = 0.00000e+000 A 4=-6.03503e-005 A 6= 2.06395e-007 A 8=-2.73120e-010 A10=-4.32395e-013 A12= 1.38961e-015

各種データ
ズーム比 2.08
広角 中間 望遠
焦点距離 28.84 47.78 60.00
Fナンバー 2.91 2.91 2.91
半画角(度) 32.68 24.36 19.83
像高 18.50 21.64 21.64
レンズ全長 132.38 112.42 106.85
BF 13.47 21.29 23.82

d 2 49.73 19.74 10.02
d 6 3.48 9.43 12.73
d10 8.48 5.11 2.23
d12 3.67 3.30 4.51
d17 1.35 2.15 2.95
d19 12.67 11.87 11.07
d23 13.47 21.29 23.82

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 -46.07
2 3 30.03
3 7 -45.13
4 11 33.39
5 13 52.75
6 18 -30.10
7 20 82.89

[数値実施例3]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 -313.798 1.00 1.59522 67.7
2 34.961 0.50 1.53110 55.9
3* 36.597 (可変)
4 140.384 2.82 1.53775 74.7
5 -89.250 0.15
6 29.665 4.86 1.56384 60.7
7 -726.452 (可変)
8(絞り) ∞ 1.97
9 -53.142 1.00 1.48749 70.2
10 24.740 1.19 1.95375 32.3
11 28.329 6.66
12 62.659 4.13 1.59522 67.7
13 -26.325 1.90
14 -21.560 0.85 1.85478 24.8
15 42.232 5.45 1.49700 81.5
16 -35.127 5.68
17 99.329 5.24 2.00069 25.5
18 -52.591 (可変)
19 1016.298 0.80 1.59522 67.7
20 76.785 (可変)
21* -48.633 1.80 1.92286 18.9
22 -81.137 (可変)
像面 ∞

非球面データ
第3面
K = 0.00000e+000 A 4=-3.48487e-007 A 6=-1.08089e-009 A 8= 1.81503e-012 A10=-2.18793e-015

第21面
K = 0.00000e+000 A 4=-4.88680e-006 A 6= 2.45496e-009 A 8=-2.99163e-011 A10= 1.08130e-013 A12=-1.61212e-016

各種データ
ズーム比 2.15
広角 中間 望遠
焦点距離 27.90 35.16 60.00
Fナンバー 2.91 2.91 2.91
半画角(度) 33.55 31.60 19.83
像高 18.50 21.64 21.64
レンズ全長 151.88 136.27 116.88
BF 16.01 17.75 8.73

d 3 67.82 47.19 11.25
d 7 7.68 8.44 15.13
d18 1.21 1.82 3.62
d20 13.16 15.08 32.16
d22 16.01 17.75 8.73

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 -54.70
2 4 34.06
3 8 50.42
4 19 -139.59
5 21 -135.14

[数値実施例4]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 -205.478 1.00 1.53775 74.7
2 40.180 (可変)
3 66.342 3.48 1.80518 25.4
4 -363.154 13.77
5 3791.967 2.56 1.71300 53.9
6 -59.900 (可変)
7 42.628 6.38 1.49700 81.5
8 -24.784 1.15 1.85478 24.8
9 87.928 1.00
10(絞り) ∞ 13.14
11 -137.674 1.15 1.95375 32.3
12 32.118 6.85 1.49700 81.5
13 -37.308 0.15
14 62.443 4.61 2.00100 29.1
15 -44.423 (可変)
16 50.653 0.75 1.43875 94.7
17 25.870 (可変)
18* -16.267 2.00 1.53110 55.9
19* 61.174 0.15
20 32.478 5.82 1.48749 70.2
21 -200.000 (可変)
像面 ∞

非球面データ
第18面
K = 0.00000e+000 A 4= 7.93487e-005 A 6= 2.04277e-007 A 8=-7.80464e-009 A10= 6.57497e-011 A12=-1.77922e-013

第19面
K = 0.00000e+000 A 4= 6.92929e-005 A 6=-3.15009e-007 A 8= 1.43060e-010 A10= 5.89118e-012 A12=-1.77982e-014

各種データ
ズーム比 2.35
広角 中間 望遠
焦点距離 28.84 44.32 67.90
Fナンバー 2.91 2.91 2.91
半画角(度) 32.68 24.93 17.67
像高 18.50 20.60 21.64
レンズ全長 160.31 133.71 115.64
BF 13.48 20.99 24.27

d 2 70.95 34.38 3.30
d 6 0.95 2.20 6.59
d15 0.83 0.96 2.30
d17 10.13 11.23 15.22
d21 13.48 20.99 24.27

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 -62.41
2 3 42.60
3 7 31.70
4 16 -121.63
5 18 -43.19

[数値実施例5]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 -493.674 1.00 1.72916 54.7
2 43.089 1.00 1.59022 30.1
3* 49.021 (可変)
4 159.843 4.21 1.53775 74.7
5 -90.809 0.15
6 36.320 3.51 1.88300 40.8
7 251.730 (可変)
8(絞り) ∞ 1.49
9 -113.335 1.00 1.76200 40.1
10 16.069 3.36 1.95375 32.3
11 37.315 (可変)
12 45.922 3.01 1.72916 54.7
13 -57.044 (可変)
14 -27.513 0.85 1.85478 24.8
15 22.756 6.14 1.49700 81.5
16 -37.025 2.30
17 57.468 4.81 2.00100 29.1
18 -48.235 (可変)
19 -59.830 0.80 1.77830 23.9
20 58.455 (可変)
21* -38.144 2.00 1.53110 55.9
22* -10000.000 0.15
23 479.745 4.81 1.98612 16.5
24 -56.602 (可変)
像面 ∞

非球面データ
第3面
K = 0.00000e+000 A 4= 9.32674e-008 A 6=-4.44467e-010 A 8= 9.68284e-013 A10=-5.12657e-016

第21面
K = 0.00000e+000 A 4=-7.89379e-005 A 6= 3.34486e-007 A 8=-4.59890e-010 A10=-1.01258e-012 A12= 3.80463e-015

第22面
K = 0.00000e+000 A 4=-6.52812e-005 A 6= 3.51219e-007 A 8=-9.13252e-010 A10= 1.23737e-012 A12=-5.50534e-016

各種データ
ズーム比 2.14
広角 中間 望遠
焦点距離 28.00 38.44 60.00
Fナンバー 2.91 2.91 2.91
半画角(度) 33.45 29.37 19.83
像高 18.50 21.64 21.64
レンズ全長 151.51 126.31 106.51
BF 9.99 14.11 20.24

d 3 68.96 38.76 11.24
d 7 3.70 5.97 11.86
d11 7.63 6.61 2.21
d13 4.73 4.35 4.47
d18 1.28 2.29 3.31
d20 14.64 13.63 12.62
d24 9.99 14.11 20.24

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 -59.56
2 4 33.30
3 8 -49.58
4 12 35.33
5 14 54.36
6 19 -37.88
7 21 153.86

各数値実施例における種々の値を、以下の表1にまとめて示す。
【0066】
【表1】
【0067】
[撮像装置]
次に、本発明の光学系を撮像光学系として用いたデジタルスチルカメラ(撮像装置)10の実施例について、図11を用いて説明する。図11において、11は実施例1乃至5で説明した何れかのズームレンズによって構成された撮影光学系である。12はカメラ本体13に内蔵され、撮影光学系11によって形成された光学像を受光して光電変換するCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)である。カメラ本体13はクイックターンミラーを有する所謂一眼レフカメラでもよいし、クイックターンミラーを有さない所謂ミラーレスカメラでもよい。
【0068】
このように本発明のズームレンズをデジタルスチルカメラ等の撮像装置に適用することにより、レンズが小型である撮像装置を得ることができる。なお、デジタルスチルカメラ10は、歪曲収差及び倍率色収差の少なくとも一方を電気的に補正する回路を有していてもよい。倍率色収差を電気的に補正することにより、画像の色にじみを軽減し、解像力の向上を図ることが容易になる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11