(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091625
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】柑橘様の香気を有するアルコール飲料
(51)【国際特許分類】
C12G 3/06 20060101AFI20220614BHJP
C12H 6/02 20190101ALI20220614BHJP
【FI】
C12G3/06
C12H6/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204573
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼瀬 功志
(72)【発明者】
【氏名】安田 庸子
(72)【発明者】
【氏名】藤居 知宏
(72)【発明者】
【氏名】出口 弘樹
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115MA03
4B115NG17
4B115NP02
(57)【要約】
【課題】柑橘の樹脂様のオフフレーバーおよびアルコールの蒸留により生じる焦げ様のオフフレーバーが抑制され低減、柑橘様の香気が増大した、柑橘様の香気を有するアルコール飲料、およびその製造方法の提供。
【解決手段】アルコール飲料において、アルコール20%換算のアロマデンドレンの含有量を0~60ppbに調整する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アロマデンドレンを、アルコール20%換算で0~60ppbの濃度で含む、柑橘様の香気を有するアルコール飲料。
【請求項2】
ネロールを、アルコール20%換算で100~800ppbの濃度で含む、請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
アルコール20%換算のアロマデンドレンの含有量に対するアルコール20%換算のネロールの含有量の比の値が2~20である、請求項1または2に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
柑橘類を原料とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項5】
蒸留酒である、請求項1~4のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項6】
柑橘様の香気を有する蒸留酒の製造方法であって、
アルコール原料を容器に仕込む工程、
前記アルコール原料を発酵させて発酵物を得る工程、
前記容器に水蒸気を吹き込むことにより前記発酵物を蒸留して蒸留物を得る工程、および
前記アルコール原料、発酵物および蒸留物の少なくとも一つと柑橘様の香気を有する原料とを接触させる工程
を含み、
前記蒸留酒におけるアロマデンドレンの含有量が、アルコール20%換算で0~60ppbに調整される、前記製造方法。
【請求項7】
柑橘様の香気を有する蒸留酒の製造方法であって、
原料アルコールと柑橘様の香気を有する原料とを接触させる工程
を含み、
前記蒸留酒におけるアロマデンドレンの含有量が、アルコール20%換算で0~60ppbに調整される、前記製造方法。
【請求項8】
蒸留酒におけるオフフレーバーを低減する方法であって、
アルコール原料を容器に仕込む工程、
前記アルコール原料を発酵させて発酵物を得る工程、および
前記容器に水蒸気を吹き込むことにより前記発酵物を蒸留して蒸留物を得る工程
を含み、
前記蒸留酒におけるアロマデンドレンの含有量が、アルコール20%換算で0~60ppbに調整される、前記方法。
【請求項9】
蒸留酒におけるオフフレーバーを低減する方法であって、
蒸留酒におけるアロマデンドレンの含有量を、アルコール20%換算で0~60ppbに調整する工程、
を含む、前記方法。
【請求項10】
蒸留酒における柑橘様の香気を増大する方法であって、
アルコール原料を容器に仕込む工程、
前記アルコール原料を発酵させて発酵物を得る工程、および
前記容器に水蒸気を吹き込むことにより前記発酵物を蒸留して蒸留物を得る工程
を含み、
前記蒸留酒におけるアロマデンドレンの含有量が、アルコール20%換算で0~60ppbに調整され、
前記蒸留酒におけるネロールの含有量が、アルコール20%換算で100~800ppbに調整される、前記方法。
【請求項11】
蒸留酒における柑橘様の香気を増大する方法であって、
前記蒸留酒におけるアロマデンドレンの含有量を、アルコール20%換算で0~60ppbに調整する工程、および
前記蒸留酒におけるネロールの含有量を、アルコール20%換算で100~800ppbに調整する工程
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘様の香気を有するアルコール飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者のニーズの多様化に伴い、これまで多種多様な飲料が開発され、市場に流通している。飲料の香り(香気)は、飲料の売れ行きに大きく影響する重要な特性の一つであるだけでなく、他の飲料と差別化し、独自性を出すための重要な特性でもあるため、飲料の開発において検討される事項の一つである。
【0003】
アルコール飲料、とりわけ蒸留酒においては、その原料に由来する味や香気が感じられることが多いが、消費者のニーズの多様化に応じて、そのような原料由来の味や香気に加えてさらなる味や香気を付与すること、またはそれらをマスキングすることを目的として様々な味や香気を付与する工夫がなされている。また、アルコール度数が高い蒸留酒においては、その飲み口を向上させることを目的としてそのような工夫がなされることもある。そして、アルコール飲料に味や香気を付与するために、香草や果実等の素材およびそれらの成分を用いることが知られている。
【0004】
一方で、このような目的のために用いられる香草や果実等の素材により、所望する以外の味や香気が生じる場合があることも知られている。例えば、アルコール飲料に柑橘様の香気を付与する場合には、同時に柑橘の樹脂様の香気が感じられる場合があり、これがオフフレーバーとして感じられることがある。また、柑橘様の香気を付与した発酵飲料を蒸留して得られるアルコール飲料では、柑橘の樹脂様のオフフレーバーに加え、蒸留により生じる独特な焦げ様のオフフレーバーが感じられる場合がある。これらのオフフレーバーは、所望する柑橘様の香気が感じられるのを妨げる場合があるため、これらのオフフレーバーが生じることにより、場合によっては所望の柑橘様の香気が十分に感じられないという問題がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、柑橘様の香気を有するアルコール飲料、特に蒸留酒において、アロマデンドレンの含有量を特定の範囲に調整することにより、柑橘の樹脂様のオフフレーバーおよび蒸留により生じる焦げ様のオフフレーバーを低減し、柑橘様の香気を増大し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
【0006】
したがって、本発明は、柑橘の樹脂様のオフフレーバーおよび蒸留により生じる焦げ様のオフフレーバーが低減され、柑橘様の香気が増大されたアルコール飲料およびその製造方法を提供する。
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]アロマデンドレンを、アルコール20%換算で0~60ppbの濃度で含む、柑橘様の香気を有するアルコール飲料。
[2]ネロールを、アルコール20%換算で100~800ppbの濃度で含む、請求項1に記載のアルコール飲料。
[3]アルコール20%換算のアロマデンドレンの含有量に対するアルコール20%換算のネロールの含有量の比の値が2~20である、[1]または[2]に記載のアルコール飲料。
[4]柑橘類を原料とする、[1]~[3]のいずれかに記載のアルコール飲料。
[5]蒸留酒である、[1]~[4]のいずれかに記載のアルコール飲料。
[6]柑橘様の香気を有する蒸留酒の製造方法であって、
アルコール原料を容器に仕込む工程、
前記アルコール原料を発酵させて発酵物を得る工程、
前記容器に水蒸気を吹き込むことにより前記発酵物を蒸留して蒸留物を得る工程、および
前記アルコール原料、発酵物および蒸留物の少なくとも一つと柑橘様の香気を有する原料とを接触させる工程
を含み、
前記蒸留酒におけるアロマデンドレンの含有量が、アルコール20%換算で0~60ppbに調整される、前記製造方法。
[7]柑橘様の香気を有する蒸留酒の製造方法であって、
原料アルコールと柑橘様の香気を有する原料とを接触させる工程
を含み、
前記蒸留酒におけるアロマデンドレンの含有量が、アルコール20%換算で0~60ppbに調整される、前記製造方法。
[8]蒸留酒におけるオフフレーバーを低減する方法であって、
アルコール原料を容器に仕込む工程、
前記アルコール原料を発酵させて発酵物を得る工程、および
前記容器に水蒸気を吹き込むことにより前記発酵物を蒸留して蒸留物を得る工程
を含み、
前記蒸留酒におけるアロマデンドレンの含有量が、アルコール20%換算で0~60ppbに調整される、前記方法。
[9]蒸留酒におけるオフフレーバーを低減する方法であって、
蒸留酒におけるアロマデンドレンの含有量を、アルコール20%換算で0~60ppbに調整する工程、
を含む、前記方法。
[10]蒸留酒における柑橘様の香気を増大する方法であって、
アルコール原料を容器に仕込む工程、
前記アルコール原料を発酵させて発酵物を得る工程、および
前記容器に水蒸気を吹き込むことにより前記発酵物を蒸留して蒸留物を得る工程
を含み、
前記蒸留酒におけるアロマデンドレンの含有量が、アルコール20%換算で0~60ppbに調整され、
前記蒸留酒におけるネロールの含有量が、アルコール20%換算で100~800ppbに調整される、前記方法。
[11]蒸留酒における柑橘様の香気を増大する方法であって、
前記蒸留酒におけるアロマデンドレンの含有量を、アルコール20%換算で0~60ppbに調整する工程、および
前記蒸留酒におけるネロールの含有量を、アルコール20%換算で100~800ppbに調整する工程
を含む、前記方法。
【0008】
本発明によれば、柑橘様の香気を有するアルコール飲料、特に蒸留酒において、柑橘の樹脂様のオフフレーバーおよびアルコールの蒸留により生じる焦げ様のオフフレーバーを低減し、柑橘様の香気を増大することができる。
【0009】
本明細書において、アルコール飲料に関して単に「オフフレーバー」という場合、柑橘の樹脂様のオフフレーバーおよびアルコールの蒸留により生じる焦げ様のオフフレーバーの両方またはこれらのいずれかを意味する。
【0010】
本明細書において、「ppb」は「μg/L」と同義である。
【0011】
本明細書において、「20%アルコール換算」とは、アルコール飲料(1L)に含まれる特定の成分(μg)の濃度(μg/L=ppb)を、アルコール飲料のアルコール度数割合(v/v)で割って、アルコール度数20(v/v%)当たりの数値に換算したものをいう。例えば、特定のアルコール飲料(アルコール度数(v/v%)が50度(%))に、アロマデンドレンが50ppbの濃度で含まれていた場合、アロマデンドレンの含有量は、20%アルコール換算で[50ppb÷(50度÷20)]=20ppbとなる。
【0012】
[アルコール飲料]
本発明によれば、アロマデンドレン(Aromadendrene)の含有量が特定の範囲に調整された、柑橘様の香気を有するアルコール飲料(以下、「本発明のアルコール飲料」ともいう)が提供される。以下、本発明のアルコール飲料について説明する。
【0013】
本発明のアルコール飲料は、アルコール(エタノール)を含む飲料を指し、穀物や果実等の原料(アルコール原料)に含まれる糖類をアルコール発酵させて得られる発酵物であってもよく、またはそのような発酵物を主な成分として含む飲料であってもよい。具体的には、本発明のアルコール飲料は、酒税法により「アルコール分一度以上の飲料」と定義されており、食品衛生法でも食品として扱われ、当該法律の適用を受けるものである。本発明のアルコール飲料としては、例えば、醸造酒、蒸留酒、混成酒等が挙げられる。なお、酒税法に定義されている通り、「アルコール分」とは、温度15℃における原容量百分中に含有されるエチルアルコールの容量をいう。また、「アルコール度数」とは、アルコール飲料に対するエタノールの体積濃度を百分率(%)で表した割合である。
【0014】
醸造酒とは、蒸留等の工程を経ることなく、酵母による原料のアルコール発酵のみで製造される酒類の総称である。酒税法においては、醸造酒は、清酒、果実酒およびその他の醸造酒に分類されている。また、酒税法上は発泡性酒類として分類されているが、ビールおよび発泡酒等も醸造によって製造される醸造酒である。
【0015】
醸造酒の具体例としては、原料中の糖類をそのまま発酵させて得られる単発酵酒(例えば、ワイン(ブドウ酒)、シードル(リンゴ酒)、馬乳酒等)、および原料中のデンプン等の糖類をブドウ糖に分解(糖化)し、そのブドウ糖を発酵させて得られる複発酵酒(例えば、ビール(単行複発酵酒)、日本酒(並行複発酵酒)等)とが挙げられる。
【0016】
蒸留酒とは、醸造酒を蒸留することにより製造される酒類の総称である。酒税法においては、蒸留酒は、連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツに分類されている。また、蒸留酒には、蒸留したアルコールに加水したもの、または蒸留したアルコールを木製の樽等で熟成したもの等も含まれる。
【0017】
蒸留酒の具体例としては、例えば、スピリッツ、ジン、ウォッカ、スピリタス、泡盛、焼酎、ソジュ(韓国焼酎)、白酒(例えば、パイチュウ、高粱酒等)、メスカル(例えば、テキーラ等)、ウイスキー、ブランデー(例えば、コニャック、アルマニャック、カルヴァドス、グラッパ、シンガニ、ピスコ等)、カシャッサ(ピンガ)、ラム酒、アラック(例えば、アクアビット、アルヒ、ラク等)、コルン、キルシュヴァッサー等が挙げられる。好ましい実施形態において、本発明のアルコール飲料は蒸留酒であり、特に好ましくはスピリッツである。
【0018】
蒸留酒を得るための蒸留法としては、直接加熱方式および間接加熱方式のいずれの蒸留法であってもよいが、好ましくは水蒸気による直接加熱方式(スチームインジェクション方式)の蒸留法である。また、蒸留の際に柑橘様の香気を付与する場合には、アルコール原料を発酵して得られる発酵物に後述する柑橘様の香気を有する原料を接触(浸漬)させて蒸留することにより蒸留酒に香気を付与するスティーピング方式の蒸留法、発酵物を蒸留する際に発生する発酵物の蒸気と柑橘様の香気を有する原料とを接触させて蒸留酒に香気を付与するヴェイパー方式の蒸留法、およびこれらの両方を行うハイブリッド方式のいずれを用いてもよい。
【0019】
本発明のアルコール飲料が上記発酵物を主な成分として含む飲料である場合、アルコール飲料における発酵物の含有量は、後述するアロマデンドレンの含有量を満たす限り特に限定されず、適宜設定することができる。本発明のアルコール飲料における上記発酵物の含有量の下限値としては、例えば、1v/v%、5v/v%、10v/v%、30v/v%、50v/v%、70v/v%、80v/v%、90v/v%等である。また、本発明のアルコール飲料における上記発酵物の含有量の上限値としては、例えば、100v/v%、99.5v/v%、99v/v%、95v/v%、90v/v%、80v/v%等である。
【0020】
本発明のアルコール飲料は、柑橘様の香気を有するものである。本発明のアルコール飲料が有する柑橘様の香気は、アルコール飲料のアルコール原料に由来するものであってもよく、その他の原料に由来するものであってもよい。好ましい実施形態において、本発明のアルコール飲料が有する柑橘様の香気は、アルコール原料以外の原料、例えば、柑橘様の香気を有する原料により付与されるものである。
【0021】
柑橘様の香気を有する原料としては、特に限定されないが、柑橘類の植物、柑橘類の植物を加工して得られる混濁果汁、コミュニティッドおよびエッセンシャルオイル、ならびに柑橘類の香気を有する香料等が挙げられる。好ましい実施形態において、本発明のアルコール飲料への柑橘様の香気の付与のために、その原料として柑橘類の植物の全部もしくは部分(例えば、果実(果肉)、果皮、果汁、新芽、茎、葉、棘、エキス等)またはそれらの成分が用いられる。柑橘類の植物としては、例えば、温州ミカン、晩白柚、不知火(例えば、デコポン(登録商標)等)、柚子、伊予柑、夏ミカン、八朔、カボス、シークワーサー、スダチ、ダイダイ、日向夏、ポンカン、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ等が挙げられる。これらの原料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましい実施形態において、アルコール飲料への柑橘様の香気の付与のために和柑橘が用いられ、より好ましくは晩白柚、不知火および/または柚子、特に好ましくは晩白柚、不知火および/または柚子の果皮および/または果実が用いられる。
【0022】
アルコール飲料に柑橘様の香気を付与する方法としては、特に限定されないが、例えば、柑橘様の香気を有するアルコール原料を発酵させる方法、アルコール飲料の原料、アルコール飲料、またはアルコール飲料を製造する過程の中間物と柑橘様の香気を有する原料とを接触させる方法等が挙げられる。アルコール飲料の原料、アルコール飲料、またはアルコール飲料を製造する過程の中間物と柑橘様の香気を有する原料とを接触させる方法の具体例としては、アルコール飲料の原料、アルコール飲料、またはアルコール飲料を製造する過程の中間物に、柑橘様の香気を有する原料の果実、果肉、果皮等を浸漬する方法、アルコール飲料の原料、アルコール飲料、またはアルコール飲料を製造する過程の中間物に、柑橘様の香気を有する原料の果汁、エキス等を添加する方法、柑橘様の香気を有する原料に、アルコール飲料の原料、アルコール飲料、またはアルコール飲料を製造する過程の中間物を通過(循環)させる方法等が挙げられる。具体的には、上述した蒸留法に関して説明したスティーピング方式、ヴェイパー方式およびハイブリッド方式により、アルコール飲料に柑橘様の香気を付与することができる。
【0023】
本発明のアルコール飲料は、アロマデンドレンの含有量が特定の範囲に調整されていることを特徴とするものである。本発明のアルコール飲料におけるアロマデンドレンの含有量は、アルコール飲料中のアルコール20%換算で0~60ppbであり、好ましくは0~50ppb、より好ましくは0~45ppb、より一層好ましくは0~40ppbである。アロマデンドレンはスパイシーな香りやウッディーな香りを呈する物質であり、本発明者らは、アロマデンドレンがアルコール飲料において焦げ様の香り(オフフレーバー)を呈することを見出した。したがって、柑橘様の香気を有するアルコール飲料においてアロマデンドレンの含有量を上記の範囲に調整することにより、アルコール飲料の焦げ様のオフフレーバーを抑制することができる。特に、蒸留酒の場合には、その製造過程において加熱・蒸留の工程を含むことから、焦げ様のオフフレーバーが顕在化しやすい。したがって、蒸留酒においてアロマデンドレンの含有量を上記の範囲に調整することは、その焦げ様のオフフレーバーを抑制するのに特に効果的である。
【0024】
アロマデンドレンはアルコール飲料において焦げ様のオフフレーバーを呈することから、本発明のアルコール飲料におけるアロマデンドレンの含有量は少ないほど好ましい。
【0025】
アルコール飲料におけるアロマデンドレンの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS)によって測定することができる。具体的には、以下の手順に従って測定することができる。まず、アルコール飲料中のアロマデンドレンをC18固相カラムで抽出し、ジクロロメタン溶出画分を分析用試料として調製する。得られた分析用試料をGC/MSに供し、内部標準法を用いて定量を行う。内部標準物質として4-ノナノールを用い、分析試料中1ppmとなるように添加する。具体的には、以下に示す分析条件に従って、GC/MSによるアロマデンドレンの分析を行う。
【0026】
GC/MS分析条件
装置:Agilent 5977 GC/MSD System
カラム:Agilent DB-5MS
(長さ60m、内径0.320mm、膜厚0.25μm)
キャリアガス:He(G1グレード)
カラムフロー:2ml/分
注入量:シリンジ打ち 1μl
注入口温度:300℃
スプリット比:10:1
オーブン温度:80℃(3分)→10℃/分上昇→300℃(10分)
イオン化法:EI
MSDトランスファライン温度:280℃
イオン源温度:280℃
測定タイプ:スキャン
抽出イオンクロマトグラム質量範囲:50.00-550.00m/z
【0027】
上記の条件の下、下記リテンションタイムのピークを定量する。
4-ノナノール :8.465分
アロマデンドレン :13.969分
【0028】
好ましい実施形態において、本発明のアルコール飲料は、ネロールの含有量が特定の範囲に調整される。本発明のアルコール飲料におけるネロールの含有量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、アルコール飲料中のアルコール20%換算で100~800ppbであり、好ましくは120~700ppb、より好ましくは150~600ppb、より一層好ましくは160~500ppbである。アルコール飲料におけるネロールの含有量は、上述したアルコール飲料におけるアロマデンドレンの含有量の測定と同様の方法により測定することができる。ネロールはシトラスオレンジのような柑橘様の香りを呈する物質であり、本発明者らは、ネロールがアルコール飲料において柑橘様の香りを呈すると同時に、柑橘が有する樹脂様の香り(オフフレーバー)を呈する物質であることを見出した。したがって、柑橘様の香気を有するアルコール飲料においてネロールの含有量を上記の範囲に調整することにより、アルコール飲料が呈する柑橘様の香気を増大させ、一方で柑橘の樹脂様のオフフレーバーを抑制することができる。
【0029】
アルコール飲料におけるネロールの含有量は、GC/MSによって測定することができる。具体的には、上述したアロマデンドレンの含有量の測定について説明したのと同様の条件および方法により、リテンションタイム10.695分のピークを定量することにより測定することができる。
【0030】
本発明のアルコール飲料におけるネロールの含有量は、ネロールそのものをアルコール飲料に添加することによって調整してもよく、また、ネロールを含有する原料等を用いて、その含有量を増減させることにより調整してもよい。ネロールを含有する原料としては、特に限定されないが、例えば、上述した柑橘類の植物、柑橘類の植物を加工して得られる混濁果汁、コミュニティッドおよびエッセンシャルオイル、ならびに柑橘類の香気を有する香料等が挙げられる。
【0031】
本発明のアルコール飲料におけるアロマデンドレンの含有量に対するネロールの含有量の比(ネロールの含有量/アロマデンドレンの含有量)の下限値は、アルコール飲料中のアルコール20%換算時の値として、好ましくは2、より好ましくは3、より一層好ましくは4である。また、上限値は、アルコール飲料中のアルコール20%換算時の値として、好ましくは20、より好ましくは15、より一層好ましくは12.5である。アルコール飲料におけるアロマデンドレンの含有量に対するネロールの含有量の比の値を上記の範囲に調整することにより、アルコール飲料の焦げ様のオフフレーバーおよび/または柑橘の樹脂様のオフフレーバーの抑制と、柑橘様の香気の増大とをより効果的に行うことができる。
【0032】
[アルコール飲料の製造方法]
本発明の別の態様によれば、アロマデンドレンの含有量が特定の範囲に調整された、柑橘様の香気を有する本発明のアルコール飲料の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)が提供される。以下、本発明の製造方法について説明する。
【0033】
一つの実施形態において、本発明の製造方法は、アルコール原料を容器に仕込む工程、前記アルコール原料を発酵させて発酵物を得る工程、前記容器に水蒸気を吹き込むことにより前記発酵物を蒸留して蒸留物を得る工程、および前記アルコール原料、発酵物および蒸留物の少なくとも一つと柑橘様の香気を有する原料とを接触させる工程を含む。本発明の製造方法において、アルコール原料、発酵物および蒸留物の少なくとも一つと柑橘様の香気を有する原料とを接触させる方法は、上述した本発明のアルコール飲料について説明したのと同様の方法を用いることができる。また、本発明の製造方法に用いられる容器としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、蒸留酒の製造に用いられる蒸留器(例えば、蒸留釜、蒸留タンク等)を用いることができる。
【0034】
別の実施形態において、本発明の製造方法は、原料となるアルコール(原料アルコール)と柑橘類の香気を有する原料とを接触させる工程を含む。原料アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、上述した本発明のアルコール飲料について説明した醸造酒、蒸留酒、混成酒等が挙げられる。これらのうち、原料アルコールとしては、好ましくは蒸留酒、特に好ましくは酒税法に定義される原料用アルコールが用いられる。酒税法上、原料用アルコールはアルコール度数が45%を超えるものとして定義されており、本発明においては原料用アルコールをそのままの濃度(例えば、アルコール度数95%)で使用してもよく、水等により適宜希釈して使用してもよい。原料用アルコールの希釈濃度は、製造されるアルコール飲料のアルコール度数に応じて適宜設定することができ、例えば40~80%、50~70%、55~65%、60%等とすることができる。また、前記原料アルコールと柑橘様の香気を有する原料とを接触させる方法は、上述した本発明のアルコール飲料について説明したのと同様の方法を用いることができる。
【0035】
本発明の製造方法により製造されるアルコール飲料におけるアロマデンドレンの含有量は、アルコール飲料中のアルコール20%換算で0~60ppbであり、好ましくは0~50ppb、より好ましくは0~45ppb、より一層好ましくは0~40ppbに調整される。
【0036】
好ましい実施形態において、本発明の製造方法においては、アルコール飲料におけるネロールの含有量が特定の範囲に調整される。本発明の製造方法により製造されるアルコール飲料におけるネロールの含有量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、アルコール飲料中のアルコール20%換算で100~800ppbであり、好ましくは120~700ppb、より好ましくは150~600ppb、より一層好ましくは160~500ppbに調整される。
【0037】
好ましい実施形態において、本発明の製造方法においては、アルコール飲料におけるアロマデンドレンの含有量に対するネロールの含有量の比(ネロールの含有量/アロマデンドレンの含有量)の値の範囲が特定の範囲に調整される。上記比の値の下限値は、アルコール飲料中のアルコール20%換算時の値として、好ましくは2、より好ましくは3、より一層好ましくは4に調整される。また、上記比の上限値は、アルコール飲料中のアルコール20%換算時の値として、好ましくは20、より好ましくは15、より一層好ましくは12.5に調整される。
【0038】
本発明の製造方法において用いられるアルコール原料、柑橘様の香気を有する原料、柑橘様の香気の付与方法、アロマデンドレンおよびネロールの含有量の調整方法等としては、上述した本発明のアルコール飲料について説明したものと同様のものを用いることができる。
【0039】
本発明の製造方法において製造されるアルコール飲料は蒸留酒であり、特に好ましくはスピリッツである。
【0040】
[アルコール飲料のオフフレーバーの低減方法]
本発明の別の態様によれば、アロマデンドレンの含有量が特定の範囲に調整されることを含む、柑橘様の香気を有するアルコール飲料におけるオフフレーバーを低減する方法(以下、「本発明のオフフレーバー低減方法」ともいう)が提供される。以下、本発明のオフフレーバー低減方法について説明する。
【0041】
一つの実施形態において、本発明のオフフレーバー低減方法は、アルコール原料を容器に仕込む工程、前記アルコール原料を発酵させて発酵物を得る工程、および前記容器に水蒸気を吹き込むことにより前記発酵物を蒸留して蒸留物を得る工程を含む。本発明のオフフレーバー低減方法では、アルコール飲料におけるアロマデンドレンの含有量が、アルコール20%換算で0~60ppbに調整され、好ましくは0~50ppb、より好ましくは0~45ppb、より一層好ましくは0~40ppbに調整される。
【0042】
別の実施形態において、本発明のオフフレーバー低減方法は、アルコール飲料におけるアロマデンドレンの含有量を、アルコール20%換算で0~60ppb、好ましくは0~50ppb、より好ましくは0~45ppb、より一層好ましくは0~40ppbに調整する工程を含む。
【0043】
好ましい実施形態において、本発明のオフフレーバー低減方法においては、アルコール飲料におけるネロールの含有量が特定の範囲に調整される。本発明のオフフレーバー低減方法において、アルコール飲料におけるネロールの含有量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、アルコール飲料中のアルコール20%換算で100~800ppbであり、好ましくは120~700ppb、より好ましくは150~600ppb、より一層好ましくは160~500ppbに調整される。
【0044】
好ましい実施形態において、本発明のオフフレーバー低減方法においては、アルコール飲料におけるアロマデンドレンの含有量に対するネロールの含有量の比(ネロールの含有量/アロマデンドレンの含有量)の値の範囲が特定の範囲に調整される。上記比の値の下限値は、アルコール飲料中のアルコール20%換算時の値として、好ましくは2、より好ましくは3、より一層好ましくは4に調整される。また、上記比の上限値は、アルコール飲料中のアルコール20%換算時の値として、好ましくは20、より好ましくは15、より一層好ましくは12.5に調整される。
【0045】
本発明のオフフレーバー低減方法の対象となるアルコール飲料としては、例えば、酒税法の分類上の醸造酒、蒸留酒、混成酒等が挙げられる。これらのうち、好ましくは蒸留酒であり、より好ましくはスピリッツであり、特に好ましくは水蒸気による直接加熱方式の蒸留法により製造されるスピリッツである。
【0046】
本発明のオフフレーバー低減方法において用いられるアルコール原料、アロマデンドレンおよびネロールの含有量の調整方法等としては、上述した本発明のアルコール飲料について説明したものと同様のものを用いることができる。
【0047】
[アルコール飲料の柑橘様の香気の増大方法]
本発明の別の態様によれば、アロマデンドレンおよびネロールの含有量が特定の範囲に調整されることを含む、柑橘様の香気を有するアルコール飲料における柑橘様の香気を増大する方法(以下、「本発明の香気増大方法」ともいう)が提供される。以下、本発明の香気増大方法について説明する。
【0048】
本発明の香気増大方法は、アルコール原料を容器に仕込む工程、前記アルコール原料を発酵させて発酵物を得る工程、および前記容器に水蒸気を吹き込むことにより前記発酵物を蒸留して蒸留物を得る工程を含む。本発明の香気増大方法では、アルコール飲料におけるアロマデンドレンの含有量が、アルコール20%換算で0~60ppbに調整され、好ましくは0~50ppb、より好ましくは0~45ppb、より一層好ましくは0~40ppbに調整される。
【0049】
また、本発明の香気増大方法では、アルコール飲料におけるネロールの含有量が、アルコール20%換算で100~800ppbに調整され、好ましくは120~700ppb、より好ましくは150~600ppb、より一層好ましくは160~500ppbに調整される。
【0050】
別の実施形態において、本発明の香気増大方法は、アルコール飲料におけるアロマデンドレンの含有量を、アルコール20%換算で0~60ppb、好ましくは0~50ppb、より好ましくは0~45ppb、より一層好ましくは0~40ppbに調整する工程、およびアルコール飲料におけるネロールの含有量を、アルコール20%換算で100~800ppb、好ましくは120~700ppb、より好ましくは150~600ppb、より一層好ましくは160~500ppbに調整する工程を含む。アロマデンドレンはアルコール飲料において焦げ様のオフフレーバーを呈し、柑橘様の香気の近くを妨げるものであることから、アルコール飲料におけるアロマデンドレンの含有量は少ないほど好ましい
【0051】
好ましい実施形態において、本発明の香気増大方法においては、アルコール飲料におけるアロマデンドレンの含有量に対するネロールの含有量の比(ネロールの含有量/アロマデンドレンの含有量)の値の範囲が特定の範囲に調整される。上記比の値の下限値は、アルコール飲料中のアルコール20%換算時の値として、好ましくは2、より好ましくは3、より一層好ましくは4に調整される。また、上記比の上限値は、アルコール飲料中のアルコール20%換算時の値として、好ましくは20、より好ましくは15、より一層好ましくは12.5に調整される。
【0052】
本発明の香気増大方法の対象となるアルコール飲料としては、例えば、酒税法の分類上の醸造酒、蒸留酒、混成酒が挙げられる。これらのうち、好ましくは蒸留酒であり、より好ましくはスピリッツであり、特に好ましくは水蒸気による直接加熱方式の蒸留法により製造されるスピリッツである。
【0053】
本発明の香気増大方法において用いられるアルコール原料、ネロールの含有量の調整方法等としては、上述した本発明のアルコール飲料について説明したものと同様のものを用いることができる。
【実施例0054】
以下の実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例1:原料アルコールへのアロマデンドレンの添加試験
ベースとなる原料アルコール(アルコール度数20%に希釈した原料用アルコール)にアロマデンドレンを各濃度で添加して、アロマデンドレンを0~120ppbの濃度で含む各アロマデンドレン添加サンプルを調製した。各アロマデンドレン添加サンプルを官能評価試験に供した。官能評価試験では、各サンプルについて、下記の2つの評価項目を、よく訓練され、アルコール飲料の評価に熟練したパネル5名によりそれぞれ5段階で評価した。以下、各評価項目およびそのスコアについて説明する。
【0056】
評価項目1:焦げ様オフフレーバー、柑橘の樹脂様のオフフレーバー
スコア5:非常に強く感じられる
スコア4:強く感じられる
スコア3:感じられる
スコア2:あまり感じられない
スコア1:感じられない
【0057】
評価項目2:樹脂様のオフフレーバーを伴わない柑橘様の香気
スコア5:非常に強く感じられる
スコア4:強く感じられる
スコア3:感じられる
スコア2:少し感じられる
スコア1:感じられない
【0058】
各サンプルのアロマデンドレン濃度、および官能試験評価の結果をそれぞれ表1に示す。
【0059】
【0060】
表1の結果から、アルコール20%換算のアロマデンドレン含有量が0~80ppbの範囲にある場合には、焦げ様のオフフレーバーおよび柑橘の樹脂様のオフフレーバーが十分に抑制されることが示された。
【0061】
実施例2:原料アルコールへのネロールの添加試験
実施例1で用いたのと同じ原料アルコールにネロールを各濃度で添加して、ネロールを0~500ppbの濃度で含む各ネロール添加サンプルを調製した。各ネロール添加サンプルを官能評価試験に供した。官能評価試験は、実施例1と同様の方法により行った。各サンプルのネロール濃度、および官能試験評価の結果をそれぞれ表2に示す。
【0062】
【0063】
表2の結果から、アルコール20%換算のネロール含有量が160ppb以上である場合には、焦げ様のオフフレーバーおよび柑橘の樹脂様のオフフレーバーを伴わない柑橘様の香気が感じられることが示された。
【0064】
実施例3:アルコール飲料へのアロマデンドレンの添加試験
本実施例においては、柑橘様の香気を有する原料である不知火、晩白柚および柚子(青柚子)をそれぞれ1~10g/Lとなるように原料アルコール(アルコール度数95%の原料用アルコールに水を添加してアルコール度数60%に希釈したもの)に浸漬させた後、焼酎蒸留器を使用し水蒸気による直接加熱方式(スチームインジェクション方式)の蒸留法により蒸留して得られたアルコール飲料(ベースアルコール飲料)をベース(アルコール度数20%)として用いた。なお、柑橘様の香気を有する原料の浸漬および蒸留は、原料アルコールに上記柑橘類を浸漬して蒸留するスティーピング方式により行った。ベースアルコール飲料をアルコール度数20%となるように希釈して、アロマデンドレンおよびネロールの含有量を測定したところ、アロマデンドレンは160ppb、ネロールは40ppbであった。
【0065】
ベースアルコール飲料にアロマデンドレンを各濃度で添加して、アロマデンドレンを40~280ppbの濃度で含む各アルコール飲料サンプルを調製した。各アルコール飲料サンプルを官能評価試験に供した。官能評価試験は、実施例1と同様の方法により行った。各サンプルのネロールおよびアロマデンドレン濃度、ならびに官能試験評価の結果をそれぞれ表3に示す。
【0066】
【0067】
表3の結果から、アルコール20%換算のアロマデンドレンの含有量が0~80ppbの範囲にある場合には、樹脂様のオフフレーバーを伴わない柑橘様の香気が十分に感じられ、かつ、焦げ様のオフフレーバーおよび柑橘の樹脂様のオフフレーバーが十分に抑制されることが示された。
【0068】
実施例4:アルコール飲料へのネロールの添加試験
【0069】
実施例3で用いたのと同じベースアルコール飲料にネロールを各濃度で添加して、ネロールを160~4000ppbの濃度で含む各アルコール飲料サンプルを調製した。各アルコール飲料サンプルを官能評価試験に供した。官能評価試験は、実施例1と同様の方法により行った。各サンプルのネロールおよびアロマデンドレン濃度、ならびに官能試験評価の結果をそれぞれ表4に示す。
【0070】
【0071】
表4の結果から、アルコール20%換算のネロールの含有量が1000ppb未満の範囲にある場合には、樹脂様のオフフレーバーを伴わない柑橘様の香気が十分に感じられ、かつ、焦げ様のオフフレーバーおよび柑橘の樹脂様のオフフレーバーが十分に抑制されることが示された。
本発明によれば、柑橘様の香気を有するアルコール飲料、特に蒸留酒において、柑橘の樹脂様のオフフレーバーおよびアルコールの蒸留により生じる焦げ様のオフフレーバーを低減し、柑橘様の香気を増大することができる。