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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091639
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20220614BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20220614BHJP
   G03B 27/62 20060101ALI20220614BHJP
   G03B 27/54 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
H04N1/12 Z
H04N1/00 519
G03B27/62
G03B27/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204621
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】500046759
【氏名又は名称】株式会社ネオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】石田 貴朗
【テーマコード(参考)】
2H012
2H109
5C062
5C072
【Fターム(参考)】
2H012CB21
2H012CC04
2H012CC12
2H109AA03
2H109AA26
2H109DA17
5C062AA01
5C062AB10
5C062AB30
5C062AB32
5C062AB33
5C062AB35
5C062AD02
5C062AD06
5C062AE15
5C072AA01
5C072CA05
5C072DA04
5C072EA04
5C072NA01
5C072RA01
5C072VA10
(57)【要約】
【課題】名刺などに印刷された情報を読み取ってデジタルデータ化する作業を簡単に行うことのできる画像読取装置を提供する
【解決手段】装置本体と、前記装置本体内に読取原稿を搬送する導入搬送部と、前記導入搬送部の下方且つ該搬送部とは前後方向に異なる位置に設けられ、前記装置本体内に搬送された読取原稿を前記装置本体外に排出する排出搬送部と、上端が前記導入搬送部に隣接すると共に、下端が前記排出搬送部に隣接し、前記導入搬送部から排出された読取原稿を滑らせて前記排出搬送部へ到達させる傾斜板と、前記傾斜板上に位置する読取原稿を撮像し撮像画像を取得する撮像装置を前記装置本体に保持する保持部とを備えた。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
前記装置本体内に読取原稿を搬送する導入搬送部と、
前記導入搬送部の下方且つ該搬送部とは前後方向に異なる位置に設けられ、前記装置本体内に搬送された読取原稿を前記装置本体外に排出する排出搬送部と、
上端が前記導入搬送部に隣接すると共に、下端が前記排出搬送部に隣接し、前記導入搬送部から排出された読取原稿を滑らせて前記排出搬送部へ到達させる傾斜板と、
前記傾斜板上に位置する読取原稿を撮像し撮像画像を取得する撮像装置を前記装置本体に保持する保持部と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記導入搬送部の上流または下流に位置し、読取原稿を検知するセンサをさらに備え、
読取原稿は前記スイッチの検知結果に基づく所定の時間後に前記撮像装置により撮像される
ことを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記排出搬送部は、上方ローラと該ローラの下方に位置する下方ローラとを有し、
前記傾斜板の下端上面が前記下方ローラに近接し、
前記上方ローラと前記下方ローラとに間隔は読取原稿の厚さより大きい
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記傾斜板上において読取原稿の滑走を停止させる開閉可能なゲートをさらに備え、
前記ゲートは、読取原稿の滑走を停止させる閉鎖状態から、該停止を解除する開放状態にかけて読取原稿の滑走方向に沿って回動する
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記ゲートは、前記傾斜板に先端が直角に当接する当接部と、先端が該当接部に直交するように該当接部の他端に連結された直交部とを有して断面L字状に形成されており、
前記直交部の他端に連結された進退動可能な進退駆動装置により、該他端部が一方向に前進した場合、前記ゲートは前記当接部と前記直交部との連結部を軸に回動して前記閉鎖状態となり、該他端部が逆方向に後退した場合、前記ゲートは前記連結部を軸に逆方向に回動して前記開放状態となる
ことを特徴とする請求項4記載の画像読取装置。
【請求項6】
装置本体と、
前記装置本体内に読取原稿を搬送する導入搬送部と、
前記導入搬送部の下方に位置すると共に該搬送部の前方または後方に位置し、前記装置本体内に搬送された読取原稿を前記装置本体外に排出する排出搬送部と、
上端が前記導入搬送部に隣接すると共に、下端が前記排出搬送部に隣接し、前記導入搬送部から排出された読取原稿を滑らせて前記排出搬送部へ到達させる傾斜板と、
前記傾斜板上に位置する読取原稿を撮像し撮像画像を取得する撮像装置と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主にビジネスシーンにおいて、名刺交換は広く行われている。受け取った名刺は、名刺用ファイル等に保管されるが、スキャナーやカメラ機能付き携帯端末でデジタルデータ化して、電子的に保管及び管理することも行われている。さらに近年においては、個人管理に代えて、例えば会社内で名刺の共有化を図る取り組みが行われている。
【0003】
しかしながら、多数枚の名刺をデジタルデータ化する作業には時間と労力がかかる。そのため、名刺に印刷された情報を読み取ってデジタルデータ化する作業を、簡単に行うことのできる名刺読取装置が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-30305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、名刺などに印刷された情報を読み取ってデジタルデータ化する作業を簡単に行うことのできる画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る画像読取装置は、装置本体と、前記装置本体内に読取原稿を搬送する導入搬送部と、前記導入搬送部の下方且つ該搬送部とは前後方向に異なる位置に設けられ、前記装置本体内に搬送された読取原稿を前記装置本体外に排出する排出搬送部と、上端が前記導入搬送部に隣接すると共に、下端が前記排出搬送部に隣接し、前記導入搬送部から排出された読取原稿を滑らせて前記排出搬送部へ到達させる傾斜板と、前記傾斜板上に位置する読取原稿を撮像し撮像画像を取得する撮像装置を前記装置本体に保持する保持部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る名刺読取装置の正面図である。
図2】第1実施形態に係る名刺読取装置の側面図である。
図3】第1実施形態に係る非使用状態における名刺読取装置の側面図である。
図4】第1実施形態に係る名刺読取装置の内部構成図である。
図5】第1実施形態に係る名刺読取装置の内部構成図である。
図6】第1実施形態に係るVミラー及び傾斜板の部分断面図である。
図7】第1実施形態に係る名刺読取装置により得られる撮像画像を示す図である。
図8】第1実施形態に係る搬送ローラと傾斜板との関係を説明するための部分拡大図である。
図9】第1実施形態に係る画像読取処理を示すフローチャートである。
図10】第2実施形態に係る名刺読取装置の開放状態にあるゲートを示す部分拡大図である。
図11】第2実施形態に係る名刺読取装置の閉鎖状態にあるゲートを示す部分拡大図である。
図12】第3実施形態に係る名刺読取装置の内部構成である。
図13】第3実施形態に係るピックアップローラの部分拡大図である。
図14】第3実施形態に係るピックアップローラの平面図である。
図15】第3実施形態に係るピックアップローラと補助ギアとの関係を説明するための図である。
図16】第3実施形態に係るピックアップローラと補助ギアの動作を説明するための図である。
図17】第3実施形態に係るピックアップローラと補助ギアの動作を説明するための図である。
図18】第3実施形態に係るピックアップローラと補助ギアの動作を説明するための図である。
図19】第3実施形態に係るピックアップローラ、分離ローラ、及び第4搬送ローラの位置関係を模式的に示す図である。
図20】第3実施形態に係る名刺の搬送方法を説明するための図である。
図21】第3実施形態に係る画像読取処理を示すフローチャートである。
図22】第4実施形態に係る名刺読取装置の内部構成図である。
図23】第4実施形態に係る名刺読取装置の変形例を示す内部構成図である。
図24】第5実施形態に係る名刺読取装置の側面図である。
図25】第5実施形態に係る名刺読取装置の正面図である。
図26】第5実施形態に係る名刺読取装置の第1変形例を示す側面図である。
図27】第5実施形態に係る名刺読取装置の第2変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る画像読取装置について、添付図面を参照しながら詳述する。なお、各図において、同一構成は同一の符号を付している。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の画像読取装置として、名刺に印刷された画像を読み取る名刺読取装置を一例に挙げて説明する。名刺に印刷された画像とは、会社名,氏名,電話番号,メールアドレスなどの情報を含む。読取原稿とする名刺は、両面に情報が印刷されていてもよく、片面にのみ情報が印刷されていてもよい。
【0010】
(装置構成)
図1は本実施形態に係る名刺読取装置の正面図、図2は名刺読取装置を左側面から見た側面図である。名刺読取装置1は、名刺を内部に導入可能な箱型の本体部2と、当該本体部2を左右から挟持する支持台3と、携帯端末4とを備える。
【0011】
本体部2は、その正面側に、上下及び左右の2軸方向に移動可能な端末ホルダ21が3つ一組となって設けられており、当該端末ホルダ21により携帯端末4がそのディスプレイ42が正面に向くようにされて着脱可能に保持されている。携帯端末4は、例えばスマートフォン,タブレット型コンピュータなどであり、本体部2内の画像読み取り位置(撮像位置)に案内された名刺に印刷されている情報を読み取る。具体的には、携帯端末4の背面側に設けられたカメラ41で撮像して画像データにする。そのため、本体部2正面には撮像用の不図示の開口が設けられており、当該開口にカメラ41が位置付けられることにより本体部2内の名刺の撮影が可能となっている。このような携帯端末4の位置付けは、端末ホルダ21の調節によりなすことができる。
【0012】
(本体部2)
本体部2の構成について詳細に説明する。本体部2には、その上部の撮像対象の名刺を保持する名刺トレイ22が設けられている。名刺トレイ22に保持された名刺は順次撮像され、撮像された名刺は本体部2下部に形成された不図示の排出口から排出されて、支持台3の正面下部に形成した開口部32から取り出される。即ち開口部32は排紙トレイの役割を果たす。また、本体部2は、支持台3に設けられ、その軸方向が左右方向を向く支軸31により回動可能に軸支されており、図2に示されるような本体部2正面が傾斜した使用状態から図3に示されるような本体部2が略垂直となった非使用状態へと移行することができる。したがって非使用状態においては前後の幅をコンパクトにでき、小さい設置スペースで名刺読取装置1を保管することができる。
【0013】
使用状態における本体部2正面、換言すれば携帯端末4の傾斜角は適宜設定すればよいが、使用状態において使用者がディスプレイ42を視認可能な角度であることが好ましい。そのような傾斜角としては、水平面と本体部2正面とがなす角が例えば30~45度とすればよい。
【0014】
図4及び図5は本実施形態に係る名刺読取装置の内部構成図であり、図4は左側面、図5は名刺の搬送方向における下方側からそれぞれ見た図となっている。図6は本実施形態に係るVミラー及び傾斜板の部分断面図であり、名刺の搬送方向における下方側から見た断面図となっている。
【0015】
図4及び図5に示されるように、本体部2は、名刺トレイ22から撮像位置を経て開口部32まで名刺Mを滑走、即ち自由落下させて搬送するための平板状の傾斜板23が設けられている。傾斜板23は、本体部2が使用状態において、その平面と水平面とのなす角が略30度となるように傾斜しており、したがって上端部が後述する第2の搬送ローラ262に隣接し、下端が後述する第3の搬送ローラ263に隣接している。名刺Mは、この傾斜板23上を滑走することで携帯端末4の傾斜方向に平行に搬送されることとなる。携帯端末4は、この傾斜板23を滑走し、撮像位置に位置した際の名刺Mを撮像することにより名刺Mの撮像画像を得る。なお、傾斜板の傾斜角は30度に限定するものではなく、名刺Mが滑走可能であり且つ名刺Mの表裏前面が撮像可能であればどのような角度であってもよい。
【0016】
傾斜板23は光透過性を有するものであり、例えば透明ガラスが用いられる。そのため、傾斜板23が静電気を帯び、名刺Mが吸着されて滑らなくなる事態を回避するよう、傾斜板23上面には静電防止の処理(例えば静電防止剤の塗布)が施されているとよい。なお、携帯端末4撮像時においては名刺Mの表裏側にそれぞれ配置されたLED等の照明部25により名刺Mに光が照射される。なお、照明部25は、名刺Mの表面が反射した光がカメラ41に直接入射することを防止するため、名刺Mの側方から光を照射する位置にあることが好ましい。また、光の照射時に、傾斜板23表裏面で光が反射し、撮像画像にノイズが映らないようにするため、傾斜板23の表裏面に反射防止の処理(例えばコーティング)を行うことが好ましい。また、図6に示されるように、第1のミラー241の鏡面と第2のミラー242の鏡面との交点位置Aの名刺長手方向の中央の位置に、カメラ41のピント及び光軸調整のためのマーカMKが設置されている。
【0017】
本体部2は、撮像位置にある名刺Mの両面を同時に映すVミラー24を配置している。Vミラー24は、例えば2枚のミラー241,242を直角(90度)に配置して成る構成である。傾斜板23は、図5に示されるように、2枚のミラー241,242が対称となる、ミラー241,242からそれぞれ45度の位置に位置付けられる。したがって傾斜板23上の撮像位置にある名刺Mも略同様の位置となる。2枚のミラー241,242のうちの第1のミラー241は、名刺Mの一方の面(例えば表面)を映す。第2のミラー242は、名刺Mの他方の面(例えば裏面)を映す。
【0018】
さらに、Vミラー24の右側方、即ち携帯端末4のカメラ41の下方には折り返しミラー243が第1、第2のミラー241,242と同様水平面から略45に傾斜して配置されている。折り返しミラー243は、Vミラー24に映った名刺Mの表と裏の鏡像を携帯端末4のカメラ41に向けて映す。なお、照明部25は、これらミラーに映らないよう、名刺Mに対して斜め方向から光を照射する位置に設けることが好ましい。
【0019】
図7は、本実施形態に係る名刺読取装置により得られる撮像画像を示す図である。図7(a)に示されるように本実施形態に係る名刺読取装置1において取得された撮像画像には、名刺Mの表側MFと裏側MBとが並列して写されることとなる。なお、本体部2に対して携帯端末4を本実施形態のように長手方向を横にして取り付けず、縦に取り付けた場合は、図7(b)に示されるような撮像画像を得ることができる。
【0020】
滑走中の名刺Mの全体を撮像可能とするため、傾斜板23、Vミラー24、折り返しミラー243は少なくとも名刺Mの搬送方向長さより長く、これらの幅も同様に名刺Mより長い。各幅の一例としては、例えば傾斜板23および第1、第2のミラー241,242をそれぞれ66mm、折り返しミラー243を96mm、カメラ41と折り返しミラー243との鉛直距離を52mmとすることにより、一般的な名刺Mの最大幅サイズ(短手方向長さ)である56.5mmのものでも外方に余裕をもって全体を撮像することが可能となる。なお、図6に示されるように、第1、第2のミラー241,242の交点位置Aと、名刺Mの幅方向端部との距離L1は、名刺M下方の傾斜板23の厚さが厚くなるほど大きくとる必要がある。そのため、装置の小型化を考慮すると傾斜板23の厚さは薄い方が好ましく、例えば名刺Mの厚さを0.2~0.4mmとすると、これの4倍以内の厚さとすることが好ましい。図6に示される名刺Mと傾斜板23との間隔L2については後に詳述する。
【0021】
本体部2には、名刺Mを検知するセンサとしてのスイッチSW1及びSW2を配置している(図4参照)。スイッチSW1は、名刺トレイ22に名刺Mがセットさせていることを検知する。スイッチSW2は、名刺Mが搬送されていることを検知する。スイッチSW2による名刺M搬送の検知は、カメラ41が撮像を開始するトリガとして使用される。
【0022】
本体部2には、図4に示されるように、名刺Mを傾斜板23上に案内し、さらに撮像を終えた名刺Mを装置外に排出する第1~第3の搬送ローラ261,262,263を配置している。第1~第3の搬送ローラ261,262,263は、夫々、下側に配置した駆動ローラと上側に配置した従動ローラによって上下一対になっている。各搬送ローラ261,262,263の駆動ローラは、駆動装置の一例である駆動モータ26を駆動することにより、ギアおよび回転ベルト等の伝達機構を介して回転する。駆動モータ26は、例えばパルスモーターである。
【0023】
読取原稿となる名刺Mをセットする名刺トレイ22は、図4に示されるように、底部22aと側壁22bを有する断面コ字状に形成されており、複数枚の名刺Mを縦置き、即ちその長尺方向を搬送方向に向けて載置可能である。底部22aには、名刺Mを本体部2内に1枚ずつ搬送する不図示のピックアップローラが設けられている。名刺トレイ22に載置された名刺Mは、ピックアップローラによって本体部2内に搬送され、第1の搬送ローラ261の下側ローラ(駆動ローラ)で1枚ずつに分離搬送され、第2の搬送ローラ262によって、傾斜板23上に案内される。撮像された名刺Mは、第3の搬送ローラ263によって本体部2の排出口から排出される。
【0024】
図8は本実施形態に係る搬送ローラと傾斜板との関係を説明するための部分拡大図である。第2の搬送ローラ262はその駆動ローラと従動ローラとが名刺Mを挟持可能な程度の間隙を有して近接しており、一方で第3の搬送ローラ263はその駆動ローラと従動ローラとが第2の搬送ローラ262と比較して間隙が広くされている。これは第2の搬送ローラ262から押し出された名刺Mが傾斜板23により滑走し、第3の搬送ローラ263に接近した際、第3の搬送ローラ263に突き当たり滑走が過度に阻害、停止される、延いては本体部2内に落下することを防止するためである。そのため第3の搬送ローラ263の各ローラ間の間隙は名刺Mの厚さ以上であることが好ましく、例えば0.5mmである。なお、第3の搬送ローラ263の上下ローラともに回転させることにより、当該ローラに多少接触した程度では名刺Mの滑走は阻害されない。
【0025】
図示の符号Bは第2の搬送ローラの各ローラ中心(間隙中心)から第3の搬送ローラ263における下方側の従動ローラ上部を結ぶ仮想線であり、傾斜板23は上端が仮想線Bから離間し、下端が仮想線Bに接するよう配置されている。このように配置することにより、第2の搬送ローラ262から排出される名刺Mの先端が傾斜板23に引っ掛かることを防止している。上端の離間間隔は図6に示されるL2であり、例えば2mmである。なお、第2の搬送ローラ262と第3の搬送ローラ263との距離は、名刺Mの長手方向全長より長く、カメラ41により名刺Mの全面が撮影可能となっていればよい。例えば傾斜板23の名刺Mの搬送方向長さを100~110mm程度とすれば名刺Mの全面が容易に撮影可能となる。
【0026】
(携帯端末4)
次に、携帯端末4の構成について説明する。携帯端末4は、例えば充電可能なUSBポート又はメーカー独自ポート(例えばライトニング(登録商標))及び音響出力ポートを有している。USBポートと音響出力ポートが共通のコネクタになっている場合は、図1に示すように、本体部2の制御部(例えば不図示の制御基板)と通信可能に接続されているケーブル43をコネクタに接続する。ケーブル43の途中には分配器(不図示)を介在させて音響用信号を抽出する。USBポートと音響出力ポートが各々独立したコネクタになっている場合は、別々のケーブル等(不図示)で本体部2に接続する。本実施形態では、携帯端末4と本体部2の間で伝送する制御信号として、音響用信号を用いる。
【0027】
具体的には、携帯端末4から本体部2の制御部へは、照明部25を点灯する制御信号を出力する。一例として、例えばヘッドフォンのLチャンネルに、ある高さの音を最大音量で出力する。本体部2の制御部は、信号を受信すると照明部25を点灯する。照明部25を消灯する場合も同様に制御信号を出力する。また、駆動モータ26を起動する制御信号を出力する。一例として、例えばヘッドフォンのRチャンネルに、ある高さの音を最大音量で出力する。本体部2の制御部は、信号を受信すると駆動モータ26を起動する。駆動モータ26を停止する場合も同様に制御信号を出力する。
【0028】
一方、本体部2の制御部から携帯端末4へは、名刺Mが名刺トレイ22にセットされたことでスイッチSW1がONになっていることを知らせる信号を出力する。一例として、例えばヘッドフォンのリモコンで音量を上げることを指示する制御信号を制御部が出力する。また、名刺Mが搬送開始されたことでスイッチSW2がONになったことを知らせる信号を出力する。一例として、例えばヘッドフォンのリモコンで再生又は一時停止を指示する制御信号を制御部が出力する。携帯端末4は、スイッチSW2がOFF、即ちスイッチSW2を名刺Mが通過した後、所定時間後に撮像を開始する。
【0029】
携帯端末4は、名刺読み取り機能を、ソフトウエアにより構築されたアプリとして備えている。すなわち、名刺読み取り機能は、携帯端末4の制御部のCPUとROMに格納されたプログラムとの協働作用によって構成される「画像取得部」と「画像処理部」とによって実現される。
【0030】
(装置動作)
名刺読取装置1により実行される画像読取処理について説明する。図9は、本実施形態に係る画像読取処理を示すフローチャートである。図9に示されるように、先ず、読取原稿としての名刺Mを名刺トレイ22にセットすると共に、携帯端末4を端末ホルダ21にセットし、名刺読取装置1のメイン電源をONにする(S101)。次に、携帯端末4のアプリを起動する(S102)。携帯端末4のCPUは、ROMに格納されたプログラムを読み出して画像取得部として機能する。まず、画像取得部は、カメラ41を起動させると同時に照明部25を点灯(例えば動作時の20~30%の明るさ)させてディスプレイ42に表示する。交点位置AにマーカMKが付されている場合、使用者は、ディスプレイ42を見ながらカメラ41による撮像位置がマーカMKに合うように端末ホルダ21を移動させるとよい。次に使用者がディスプレイ42をタッチまたはディスプレイ42に表示された画像読み取り開始ボタンをタッチする等すると、ピントの調整等を設定し撮像処理開始が本体部2に認識される(S103)。
【0031】
撮像処理として画像取得部は、スイッチSW1がONの間、本体部2へ制御信号を出力して、照明部25を点灯させると共に駆動モータ26を起動させ、各ローラを回転駆動させる(S104)。スイッチSW2が名刺Mの先端を検知してONになると、画像取得部はカメラアプリを起動する(S105)。続けて名刺Mの後端がスイッチSW2から外れてOFFとなると、画像取得部は所定の時間(例えば数ミリ秒)後にシャッターを切って撮像を行う(S106)。当該所定の時間後においては、名刺Mは第2の搬送ローラ262から排出され傾斜板23上を滑走し、撮像位置に位置した状態となっている。したがって図7に示されるような名刺Mの表裏が写った撮像画像が得られることとなる。
【0032】
こうして撮像画像が取得されると、携帯端末4の制御部のCPUは、ROMに格納されたプログラムを読み出して画像処理部として機能する。画像処理部は、携帯端末4が備える不揮発性の記憶装置に保存して管理する(S107)。なお、画像処理部は、取得した撮像画像を例えば会社内のサーバに送信して共有化するようにしてもよく、クラウドで共有化してもよい。さらに、例えば光学式文字認識(OCR)などで文字をテキスト化して、記憶装置またはサーバ等のデータベースに登録するようにしてもよい。また、携帯端末4のディスプレイ42に表示するようにしてもよい。
【0033】
次に画像取得部は、名刺トレイ22に名刺MがセットされていてスイッチSW1がOFFになっているか否かを判定する(S108)。スイッチSW1がOFFである場合(S108,YES)、名刺トレイ22にある名刺Mを全て撮像し終えたと判断され、画像取得部は、カメラアプリを終了し、本体部2へ制御信号を出力して、照明部25を消灯させると共に駆動モータ26を停止させ(S107)、本フローは終了となる。一方、スイッチSW1がONである場合(S108,NO)、再度ステップS106の撮像が実行される。
【0034】
以上に説明した本実施形態によれば、名刺Mに印刷された情報を読み取ってデジタルデータ化する作業を簡単に行うことが可能である。また、傾斜板上を滑走する名刺Mを順次撮像するため、名刺Mが多数ある場合であっても迅速に撮像画像を得ることができると共に、従来の名刺読取装置と比較して構造を簡素化でき、低コスト化を実現できる。
【0035】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の名刺読取装置について説明する。本実施形態に係る名刺読取装置は、傾斜板23の下端部にゲートが設けられている点で第1の実施形態に係る名刺読取装置1と異なる。従って、第1実施形態に係る名刺読取装置1と同様の構成については、同じ符号を付すことによって詳しい説明を省略する。
【0036】
図10図11は本実施形態に係る開放状態、閉鎖状態にあるゲートを示す部分拡大図である。図10及び図11に示されるように、本実施形態に係る名刺読取装置1Aは、傾斜板23の下端部近傍にゲート5が設けられている点で第1の実施形態に係る名刺読取装置1と異なる。ゲート5は、名刺Mの搬送経路を開閉するものであり、閉鎖状態においてその一端部が傾斜板23に当接して名刺Mの滑走を停止する役割を果たす。本実施形態に係る名刺読取装置1Aは、この停止した状態にある名刺Mを撮像する。
【0037】
ゲート5について詳細に説明する。ゲート5は、傾斜板23に先端が直角に当接する当接部51と、該当接部51に直交するように先端が該当接部51の他端に連結された直交部52とを有して断面L字状に形成されている。また、ゲート5は、当接部51と直交部52との連結部53を軸に回動することができ、図10に示される開放状態から図11に示される閉鎖状態への移行及びその逆も可能となっている。直交部52の他端は、ソレノイド等の進退駆動装置54により進退動が可能となったシャフト541に連結されており、これによりシャフト541の進退動に応じてゲート5が回動することとなる。具体的にはシャフト541が後退するとゲート5は図10に示される開放状態となり、シャフト541が前進すると、ゲート5は図11に示される閉鎖状態となる。
【0038】
閉鎖状態において当接部51が傾斜板23の上面と直角に当接し、閉鎖状態において滑走が停止された名刺Mが傾かないようにされている。ゲート5は、少なくとも当接部51が板状に形成されて傾斜板23に線接触することが好ましいが、名刺Mを停止させるに十分な強度を有して2点以上の点接触を行うように構成してもよい。
【0039】
ゲート5は、閉鎖状態から開放状態へ移行の際には、名刺Mの滑走を阻害しないよう、図10に示されるように滑走方向(搬送方向)に沿って回転する。ゲート5は連結部53が名刺Mの撮影時に写らない位置に設けられることが好ましく、そのために第3の搬送ローラ263の上流側に近接して設けられる。したがってゲート5は、開放状態においては第3の搬送ローラ263における上方側の駆動ローラに、当接部51の一部が挿入されることとなる。つまり駆動ローラを構成するゴム材等の円周部の一部を切り取り、当接部51の一部が挿入可能となっている。したがって開放状態における当接部51は、図10に示されるように当該駆動ローラの回転軸264に接触または近接するまで挿入されて名刺Mが確実に滑走するように、傾斜板23から十分離間する。
【0040】
ここでの名刺Mの撮影時に写らない位置としては、第1のミラー241外の位置であればよいが、連結部53がカメラ41の撮像の射線CRより外側にあれば、名刺Mの撮像を妨げることはない。なお、当該カメラ41の射線CRは鉛直より10度以上第2の搬送ローラ262側に傾斜している。また、閉鎖状態において名刺Mが当接した際に、跳ね返る量を抑えるため、ゲート5の少なくとも名刺Mと当接する面にはクッション性を有する緩衝素材が用いられていることが好ましい。
【0041】
ゲート5の開閉タイミングについて説明する。ゲート5は画像取得部により進退駆動装置54に制御信号が送信されて駆動タイミングが制御される。タイミングの一例としては、Nを2以上の整数とした場合、N-1枚目の名刺Mの撮像後にはゲート5は開放状態となっており、当該名刺Mが第3の搬送ローラ263から排出された後、N枚目の名刺Mの先端がゲート5を通過する前に閉鎖状態となる。当該N枚目の名刺Mがゲート5により停止された後、カメラ41により撮像がなされる。撮像後、ゲート5が開放状態となりN枚目の名刺Mが排出されることとなる。N枚目の名刺Mが排出された後は同様にN+1枚目の名刺Mがゲート5を通過する前に閉鎖状態となる。
【0042】
タイミングの一例をより具体的に説明する。ゲート5が閉鎖状態となり名刺Mを停止してから、0.03秒の間でカメラ41によりシャッター速度1/1000で撮像がなされる。名刺M停止後0.09秒以下、即ち撮像後0.06秒以下でゲート5は開放状態となる。開放状態の時間は余裕をもって前後0.02秒とり0.07秒程度とするとよい。ここでのソレノイド反応時間は0.004秒程度としている。
【0043】
以上に説明した本実施形態によれば、名刺Mを停止させて撮像することができるため、確実に名刺Mを撮像することができる。
【0044】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の名刺読取装置について説明する。本実施形態の名刺読取装置は、名刺トレイ22に配置された状態で名刺Mを撮像する点で第1の実施形態に係る名刺読取装置1と異なる。従って、第1実施形態に係る名刺読取装置1と同様の構成については、同じ符号を付すことによって詳しい説明を省略する。
【0045】
(装置構成)
図12は、本実施形態に係る名刺読取装置の内部構成図であり、左方側から見た図である。ここでは、説明上、端末ホルダ21やケーブル43については図示していない。図12に示されるように、本実施形態に係る名刺読取装置1Bは、名刺Mを内部に導入可能な箱型の本体部2Bと、当該本体部2Bと、本体部2Bに設けられた端末ホルダ21(不図示)により着脱自在に保持される携帯端末4とを備える。第1の実施形態に係る本体部2と同様に、本体部2Bは、その正面に撮像用の不図示の開口が設けられており、当該開口に携帯端末4のカメラ41が位置付けられることにより名刺トレイ22B上にある名刺Mの撮影が可能となっている。本体部2Bの正面は傾斜しており、したがって取り付けられた携帯端末4も同様に傾斜した状態となっている。これら傾斜角は第1の実施形態に係る使用状態における本体部2の傾斜角と同様とすることが好ましい。なお、本実施形態においては携帯端末4は縦状態で本体部2Bに設置されている。
【0046】
本体部2Bの背面には複数の名刺Mを縦状態(その長尺方向を搬送方向に向けた状態)で保持する名刺トレイ22Bが設けられている。名刺トレイ22Bは下端部において回動可能に構成されており、使用状態においては図12に示されるように後方に傾斜することができる。この傾斜角は本体部2Bにおける携帯端末4の設置面、すなわち携帯端末4の傾斜角と同様となっており、したがって互いに平行な状態となっている。一方、名刺読取装置1Bを使用しない場合は名刺トレイ22Bを回動させて本体部2Bの背面に垂直に位置付けることができる。これにより、装置をコンパクトにすることができ、小さい設置スペースで名刺読取装置1Bを保管することができる。
【0047】
名刺トレイ22Bは、上面に名刺Mが載置される載置板221を有しており、載置板221は下方からその上面側に向かって板バネ等の付勢部222により付勢されている。これにより載置板221上の最上段に位置する名刺Mの位置を略固定できて本体部2B内に適切に取り込むことができる。当該取り込みは本体部2B内に設けられたピックアップローラ6によりなされる。なお、載置板221には、載置板221に設けられ名刺Mが載置板221に載置されていることを検知するSW1がその下方に設けられている。
【0048】
携帯端末4は、名刺トレイ22Bに保持された複数の名刺Mに対して平行となっており、複数の名刺Mのうち、最上段に位置する名刺Mの全面を撮像し、撮像画像を得ることができる位置に位置付けられている。なお、名刺の撮像時には、照明部25が名刺トレイ22Bに保持された名刺Mに向けて光を照射することとなる。照明部25は名刺Mの表面が反射した光がカメラ41に直接入射することを防止するために、名刺Mの下方から斜めに光を照射することが好ましい。名刺Mの撮像後、当該名刺Mを名刺トレイ22Bから排出し、次の名刺Mを撮像するためにピックアップローラ6により撮像を終えた名刺Mが本体部2B内に取り込まれる。
【0049】
図13は本実施形態に係るピックアップローラの部分拡大図である。図12及び図13に示されるように、ピックアップローラ6は、駆動ローラ61と、リンクプレートP1を介して回動可能に連結された従動ローラ62とを備える。従動ローラ62は駆動ローラ61の回転に応じて同方向に回転する。ピックアップローラ6は、駆動ローラ61の後述するシャフトS1(図14,15参照)を軸として回動することができ、具体的には図12に示される退避位置から、図13に示される取込位置まで回動する。取込位置まで回動したピックアップローラ6は、従動ローラ62が名刺トレイ22Bの最上段に位置する名刺Mと当接することとなる。この状態において従動ローラ62が回転することにより、当接する名刺Mを本体部2B内に取り込むことができる。
【0050】
駆動ローラ61の下方には、搬送される名刺Mを分離する分離ローラ63が設けられている。分離ローラ63は回動不能に固定あるいは一定トルクで従動する構造になっており、したがって例えば2枚の名刺Mが従動ローラ62により搬送された場合は駆動ローラ61の回転により上方の1枚のみを搬送することができる。分離ローラ63の代わりにブレーキパッドを用いても同様の機能を奏することができる。これらローラの下流側には、第4搬送ローラ64が設けられている。第4搬送ローラ64は、下側に配置した駆動ローラと上側に配置した従動ローラによって上下一対になっており、第4搬送ローラ64から排出された名刺Mは開口部32へ排出され取り出される。駆動ローラ61及び第4搬送ローラ64は、駆動装置の一例である駆動モータ26を駆動することにより、ギアおよび回転ベルト等の伝達機構を介して回転する。なお本実施形態においては、第4搬送ローラ64の回転速度が駆動ローラ61及び従動ローラ62より高速となっており、これは後述する名刺Mの搬送タイミングを適切なものとするためである。そのような速度としては例えば3倍の速度が好ましい。
【0051】
第4搬送ローラ64による名刺Mの排出後、ピックアップローラ6は退避位置にまで回動する。図12には退避位置にあるピックアップローラ6が示されている。退避位置においてピックアップローラ6は上死点を超えて本体部2B前方側へ傾斜しており、したがって自重により不要に本体部2B後方へ回転し取込位置に位置付けられることがなく、安定した静止状態となる。この退避位置はカメラ41の撮像範囲外となっており、この状態においてカメラ41による名刺Mの撮像がなされ、撮像後には撮像済みの名刺Mを排出するために再度ピックアップローラ6が取込位置まで回動することとなる。
【0052】
駆動ローラ61と名刺トレイ22Bとの間には、棒状部材が所定の角度でくの字に折れ曲がった形状のレバースイッチSW3が設けられてる。レバースイッチSW3は、初期状態において一端部が上方を向き、他端部が下方を向くようにされており、回転軸651を軸に回動することができる(図13参照)。なお、レバースイッチSW3は、名刺Mの搬送路における本体部2Bの幅方向中央に位置することが好ましい。
【0053】
レバースイッチSW3は、その自重、またはバネ等の不図示の付勢部材により、上述した一方向とは逆方向、即ち名刺トレイ22Bの方向に回転するように付勢されている。自重での付勢を実現するには、例えば他端部に錘を設けるとよい。これによりレバースイッチSW3は、名刺Mが通過した後には図12に示される元の初期状態へ戻ることができる。この時、レバースイッチSW3の一端部は名刺Mの搬送方向とは逆方向に回動するため、1枚目(撮像済みの名刺)と共に分離ローラ63近傍まで接近した次の名刺M(未撮像の名刺)がある場合、それを押し返して名刺トレイ22Bの載置面または他の名刺M上に戻すことができる。これにより押し戻された名刺Mが次の最上段の名刺Mとなってカメラ41の撮像範囲内に入るようになっている。なお、レバースイッチSW3は、初期状態において撮像範囲外に侵入しない位置に設けることが好ましい。
【0054】
また、レバースイッチSW3は、分離ローラ63前に名刺Mがあるか否かを判定するためのスイッチとして機能する。即ちレバースイッチSW3が初期状態になく回動している場合には分離ローラ63前に名刺Mがあることを検知できる。例えば、図13に示されるようにピックアップローラ6が回動し、ピックアップローラ6の従動ローラ62により名刺Mが第4搬送ローラ64へ向けて取り込まれた際、レバースイッチSW3は名刺Mにより当該ローラ方向に付勢されることで一方向に回転しONとなる。この時、レバースイッチSW3からは信号が名刺読取装置1Bの制御部へ送出され、画像取得部がこれを取得することとなる。
【0055】
図12及び図13に示されるように退避位置にあるピックアップローラ6の従動ローラ62の下方にはスイッチSW4が設けられており、スイッチSW4は、棒状のレバーSW41を有している。ピックアップローラ6が退避位置にある場合、レバーSW41は、後述するシャフトS2に当接し付勢されることでスイッチSW4がONとなる。具体的には、レバーSW41は、取込位置から退避位置にピックアップローラ6が回動した場合、スイッチSW4の可動する突起部分(スイッチ部分)に直接シャフトS2が接触することを防止することができ、延いてはスイッチSW4が破損することを防止している。また、シャフトS2はレバーSW41を介してスイッチSW4に接触するため、接触時に加わるスイッチSW4への衝撃や力を緩和することができる。当該緩和のために、レバーSW41は弾性部材により構成されることが好ましい。スイッチSW4がONとなると、スイッチSW4から信号が名刺読取装置1Bの制御部へ送出され、これを取得した画像取得部が駆動モータ26の駆動を停止することとなる。また、退避位置にあるピックアップローラ6の従動ローラ62の右方側には、補助ギアG8が設けられている。なお、図12では補助ギアG8が図示されていないが、図13では従動ローラ62が取込位置に位置付けられているため、図示されている。補助ギアG8についての詳細は後述する。
【0056】
ピックアップローラ6の構造について詳細に説明する。図14は本実施形態に係るピックアップローラ6の平面図である。なお、ピックアップローラ6が退避位置から取込位置まで回動させるためのシャフトS1の回転方向(時計回りの回転方向)をCW、その逆の回転方向をCCWと称して以後説明を行う。また、図14等において示される各ギアはピッチ円で表されている。
【0057】
図14に示されるように、ピックアップローラ6は、駆動ローラ61を軸支するシャフトS1を備える。シャフトS1は、一端部が本体部2B内で固定された平板状のフレームF1に相対回転可能に軸支されると共に、他端部近傍が本体部2B内で固定された平板状のフレームF2に相対回転可能に軸支され、それらの間において矩形平板状の一対のリンクプレートP1,P2に相対回転可能に挿通されている。シャフトS1に隣接してシャフトS2が設けられており、シャフトS2は一端部がリンクプレートP1に固定され、他端部近傍がリンクプレートP2に固定されると共に貫通してさらにフレームF2に形成された貫通孔F21(図15参照)に挿通されている。貫通孔F21は弧状に延在するスリット孔であり、これによりピックアップローラ6の回動範囲を制限することができる。一対のリンクプレートP1,P2には、シャフトS2に隣接して従動ローラ62を軸支するシャフトS3の両端部が相対回転可能に軸支されている。なお、一対のリンクプレートP1,P2は、その上部または下部において互いに連結されていることが好ましい。
【0058】
シャフトS1は、駆動ローラ61とリンクプレートP2との間にギアG1を相対回転不能に軸支している。ギアG1はシャフトS2に相対回転可能に軸支されるギアG2と噛み合っており、ギアG2は従動ローラ62とリンクプレートP2との間に位置してシャフトS3に相対回転不能に軸支されるギアG3と噛み合っている。したがって、シャフトS1のCW,CCW方向への回転はギアG1、ギアG2、ギアG3を介してシャフトS3に伝達することとなる。
【0059】
駆動ローラ61及び従動ローラ62には、一方向への回転のみ許容されるカム等よりなるワンウェイクラッチ機構が内蔵されており、ここではCW方向への回転のみ伝達される。即ち、シャフトS1がCW方向に回転する場合は駆動ローラ61及び従動ローラ62はシャフトS1,S3とそれぞれ一体となってCW方向に回転する。一方、シャフトS1がCCW方向に回転する場合は、駆動ローラ61がシャフトS1に対して空転すると共に、従動ローラ62がシャフトS3に対して空転することとなる。
【0060】
シャフトS1は、リンクプレートP2とフレームF2との間においてギアG4を軸支している。ギアG4は、リンクプレートP2とフレームF2との間においてシャフトS2に相対回転不能に軸支されるギアG5と噛み合っている。ギア4には、一方向への回転のみ許容されるカム等よりなるワンウェイクラッチ機構が内蔵されており、ここではCCW方向への回転のみ伝達される。即ち、ギアG4はシャフトS1がCW方向に回転する場合は空転するが、シャフトS1がCCW方向に回転する場合はシャフトS1と一体となってCCW方向へ回転することとなる。ギアG4はギアG5と噛み合っているため、シャフトS1がCCW方向に回転するとギアG5、シャフトS2を介して一対のリンクプレートP1,P2をCCW方向に回転させることができ、延いてはピックアップローラ6を取込位置から退避位置へ回動させることができる。
【0061】
シャフトS1は、その他端部においてギアG6を相対回転不能に軸支しており、シャフトS2は、その他端部においてギアG6と噛み合うギア7を相対回転可能に軸支している。ギアG6は、不図示の減速装置を介して駆動モータ26に連結されており、駆動モータ26からの駆動力が伝達される。ギアG6は駆動モータ26が駆動されることにより、CW,CCW方向への回転をシャフトS1と一体となって行う。ギアG7はこのとき、ギアG6の回転に従動して回転(シャフトS2に対して空転)することとなる。
【0062】
次に、上述した補助ギアG8について詳細に説明する。図15は本実施形態に係るピックアップローラと補助ギアとの関係を説明するための図である。図15ではピックアップローラ6が退避位置に位置付けられており、ピックアップローラ6及び補助ギアG8等の左方側が模式的に示されている。なお、説明上、ピックアップローラ6についてはシャフトS1,S2及びギアG6,G7のみが示されている。
【0063】
補助ギアG8は、所定の角度範囲内にのみ回動可能となったピニオンギアであり、ピックアップローラ6の退避位置から取込位置への回転時、およびその逆においてギアG7と噛み合うことで退避位置-取込位置間のピックアップローラ6の移動を補助する。補助ギアG8は、ギアG7と噛み合った際にはバックラッシュが形成されるように設計されることが好ましい。図15に示されるように、補助ギアG8は、径外方向に突出するアームG81が一体となって固定されている。図中に示される水平方向に対して傾斜した位置がアームG81及び補助ギアG8の基準位置となる。アームG81は、フレームF2に設けられた不図示の切れ込みに係合することにより、補助ギアG8の回転範囲を制限する。回転範囲は、ピックアップローラ6が退避位置に到達した際のギアG7の回転停止位置を僅かに超えるまでとすることが好ましい。アームG81の先端にはバネ等の付勢部材G82が設けられている。アームG81に付勢部材G82が設けられることにより、補助ギアG8は、CW方向に回転した場合、付勢部材G82の復元力に抗してアームG81が上方に揺動(図16参照)するが、アームG81の重量や付勢部材G82の復元力により符号Cに示される方向に付勢され、したがってCCW方向へ回転し基準位置へ戻ろうとする。
【0064】
次に、退避位置-取込位置間のピックアップローラ6の回動時における、ピックアップローラ6と補助ギアG8との動作を説明する。図16~18は本実施形態に係るピックアップローラと補助ギアの動作を説明するための図である。図16図18はピックアップローラ6及び補助ギアG8等の左方側が模式的に示されており、説明上従動ローラ62は図示していない。なお、説明上、ピックアップローラ6についてはシャフトS1,S2及びギアG6,G7のみが示されている。
【0065】
ピックアップローラ6の退避位置から取込位置に回転する場合を説明する。スイッチSW1がON、即ち名刺Mが名刺トレイ22Bに載置されており、レバースイッチSW3がOFF(分離ローラ63前に名刺Mが無い)、及びスイッチSW4がONである状態において、携帯端末4から動作開始の信号が本体部2Bの制御部に入力されると、以降は画像取得部が駆動モータ26等の制御を行うこととなる。信号入力後、図16に示されるように、駆動モータ26によりギアG6を介してシャフトS1がCW方向へ回転し始め、CW方向へ回転するギアG6がギアG7をCCW方向へ回転させることとなる。なお、図中の符号FG7は、ピックアップローラ6をCW方向に回転させるために要する左方向のベクトルを示し、符号FG8は、付勢部材82の復元力や補助ギアG8及びアームG81の重量により生じる右方向のベクトルを示している。ギアG7は、CCW方向へ回転することにより補助ギアG8をCW方向に回転させようとする。ベクトルFG7は、ピックアップローラ6のリンク(リンクプレートP1,P2、駆動ローラ61、従動ローラ62からなる部分:図15図18には不図示)の重量の角度θLの分力である。なお、このベクトルFG8は後述するベクトルFG71と比較して小さな力となる。
【0066】
引き続きギアG6を介してシャフトS1がCW方向に回転すると、補助ギアG8はアームG81の重量や付勢部材82によりCCW方向に付勢される力と、ギアG7のCCW方向への回転力の反力と合わさったベクトルFG8の力でギアG7を押し出すように、換言すればギアG7が補助ギアG8の歯に押されながら移動し、ピックアップローラ6のリンクがCW方向へ回転することとなる。すなわち、ベクトルFG8>ベクトルFG7の関係にある。なお、何らかの要因でベクトルFG8<FG7になった場合でも、補助ギアG8はCW方向に回転するが、アームG81により回転が止まり、ギアG7のCCW方向への回転力の反力が増加し、FG8>FG7となり上記と同様にピックアップローラ6のリンクをCW方向に回転させることになるため、ピックアップローラ6が取込位置に到達しないことはない。
【0067】
さらにシャフトS1がCW方向に回転すると、図17に示されるように、ピックアップローラ6のリンクは、上死点を過ぎてギアG7と補助ギアG8との噛み合いが外れ、自重により取込位置にまで移動することとなる。ギアG7との噛み合いが外れた補助ギアG8は、アームG81アームの重量や付勢部材G82によりCCW方向への回転限度まで回転し、アームG81は図中の下限位置である基準位置となる。
【0068】
次に、ピックアップローラ6の取込位置から退避位置に回転する場合を説明する。図18に示されるように、シャフトS1がCCW方向へ回転すると、ギアG4がCCW方向へ回転し、ギアG5を介してシャフトS2、延いてはピックアップローラ6のリンクがCCW方向へ回転し、ギアG7は補助ギアG8に接触する。この時、ピックアップローラ6のリンクは上死点には到達していない。なお、図中の符号FG71は、ピックアップローラ6の回転による左方向へのベクトルを示し、ベクトルFG71はFG8より大きな力を有している。そのため、補助ギアG8はCCW方向には回転せずにCW方向に回転し、CW方向に回転しているギアG7と噛み合い、ギアG7が補助ギアG8の歯と噛み合いながら移動することとなる。ピックアップローラ6の回転は、シャフトS2がレバーSW41を介してスイッチSW4をONとするまで継続され、ONとなった時点でシャフトS1のCCW方向への回転が停止される。この状態においてピックアップローラ6は退避位置に到達している。
【0069】
駆動モータ16が静止している間、ピックアップローラ6のリンクをCW方向に回転させようとすると、ギアG5はギアG4をCW方向に回転させる必要があるが、ギアG4のワンウェイクラッチの作用によりシャフトS1とギアG1とをCW方向へ回転させる必要がある。シャフトS1は、駆動モータ26と不図示の減速装置を介し連結されているため、駆動モータ26を回転させるには減速比の逆数倍の大きな力でギアを回す必要がある。以上のことから、ピックアップローラ6は退避位置において固定された状態となる。なお、減速機(減速機構)として、駆動モータ26のモータ軸にウォームギアを使い、ホイールギアを組み合わせている場合は、ギアに加わった力でモータ軸は回転できない。
【0070】
次に、名刺Mの撮像後におけるピックアップローラ6及び第4搬送ローラ64の動作を説明する。図19は、本実施形態に係るピックアップローラ、分離ローラ、及び第4搬送ローラの位置関係を模式的に示す図である。図20は、本実施形態に係る名刺の搬送方法を説明するための図である。図19に示される符号L3は、駆動ローラ61軸心と従動ローラ62軸心との距離を示し、符号L4は駆動ローラ61軸心と第4搬送ローラ64軸心との距離を示す。本実施形態において距離L3を2L、距離L4を1Lとし、第4搬送ローラ64の回転速度(駆動周速)は、駆動ローラ61の回転速度の3倍とする。
【0071】
ピックアップローラ6が取込位置に位置付けられた後、図20(a)に示されるように、従動ローラ62により名刺M1が搬送される。この時、従動ローラ62は駆動ローラ61の回転速度V1、換言すればシャフトS1の回転数VR1と同一の回転数VR1で回転しており、名刺M1は当該回転速度V1と同一の搬送速度V1で搬送されることとなる。なお、レバースイッチSW3はOFFとなっている。名刺M1先端がレバースイッチSW3通過しONとなった後、名刺M1先端が第4搬送ローラ64に達すると、名刺M1は第4搬送ローラ64により搬送速度V1の3倍である搬送速度V2で搬送されることとなる。この時、駆動ローラ61及び従動ローラ62は名刺M1に引っ張られる形で回転速度V2で従動する。
【0072】
図20(b)に示されるように、名刺M1の後端が従動ローラ62を通過すると、名刺M2が搬送され始める。この時、従動ローラ62はシャフトS1から伝達される回転数VR1で回転するため、名刺M2の搬送速度はV1となる。これは駆動ローラ61がワンウェイクラッチを介してシャフトS1に軸支されているため、名刺M1により回転速度V2となっていても、シャフトS1に回転力は伝達せず、シャフトS1の回転数VR1がギアG1~G3を介して従動ローラ62に引き続き伝達されるためである。ここで名刺M1の搬送速度V2は、名刺M2の搬送速度V1の3倍であることから、名刺M1後端と名刺M2の先端とは次第に間隔が広がる。
【0073】
図20(c)に示されるように、名刺M1後端がレバースイッチSW3から外れると、レバースイッチSW3はONからOFFに切り替わる。なお、ここまでに要した時間をT1として以後説明を行う。本実施形態においては、レバースイッチSW3が名刺M1後端から外れOFFになる位置として、距離L3(図19参照)の中央で外れるように調整されている。
【0074】
時間T1から2L4/V2秒後に名刺M1後端が第4搬送ローラ64から外れる。この時、図20(d)に示されるように、名刺M2の先端はL3(図19参照)の中央に位置することとなる。名刺M1の搬送速度V2は名刺M2の搬送速度V1の3倍の速度であるため、従動ローラ62-第4搬送ローラ64の軸間距離3Lを名刺M1後端が進むと名刺M2先端は1/3である1L進む計算となる。
【0075】
図20(d)に示される状態となった直後(例えば名刺M1が第4搬送ローラ64から完全に離れ、開口部32へ落下を開始したタイミング)において、ピックアップローラ6を退避位置に退避させるためにシャフトS1をCCW方向へ回転させる。すると図20(e)に示されるように、従動ローラ62は、退避位置の方向へ浮き上がるように移動し始める。従動ローラ62の拘束から解放された名刺M2は、その先端をレバースイッチSW3により図20(a)に示されるような開始位置に押し戻される。この時、駆動ローラ61及び従動ローラ62は、共にワンウェイクラッチを介して各シャフトに軸支されているため、シャフトS1,S3がCCW方向に回転されたとしても、回転することはない。
【0076】
以上に説明した各ローラの配置、速度設定を行うことにより、名刺M1と名刺M2との間隔を空けて撮像、排出を行うことができると共に、上述した一連の動作で名刺Mが排出された後、ピックアップローラ6が退避位置に退避され、次の名刺Mを撮像位置に置かれた状態とすることができる。なお、各ローラの速度や距離は一例であり、異なる設定でも同様の関係、即ち名刺M1が第4搬送ローラ64から排出された後に名刺M2がレバースイッチSW3により、撮像位置に戻る関係)を満たせば同様の効果を奏することができる。
【0077】
(装置動作)
図21は、本実施形態に係る画像読取処理を示すフローチャートである。ここでは第1の実施形態に係る図9に示されるフローチャートと異なるS201~S203の処理について説明する。ステップS103の撮像処理認識後、画像取得部はスイッチSW1がONの間、本体部2Bへ制御信号を出力して、照明部25を点灯させる(S201)。点灯後、画像取得部はカメラアプリを起動する(S202)。起動後、画像取得部は所定の時間(例えば数ミリ秒)後にシャッターを切って撮像を行う(S203)。撮像後、ピックアップローラ6の取込位置への回転及び図21に示される上述した1枚の名刺Mの搬送、排出を行った後、ピックアップローラ6を退避位置に位置付ける名刺排出処理を画像処理部が行う(S204)。その後、ステップS108においてスイッチSW1がOFFであると判定された場合(S108,YES)、名刺トレイ22にある名刺Mを全て撮像し終えたと判断され、画像取得部は、カメラアプリを終了し、本体部2へ制御信号を出力して、照明部25を消灯させ(S205)、本フローは終了となる。
【0078】
本実施形態においては、名刺読取装置1は名刺Mの片面のみを撮像するものである。一方、名刺Mの両面を撮像するようにしてもよい。これは携帯端末4が有するアプリの設定を両面読取モードに設定することで実現できる。具体的には、連続して1~N枚の名刺Mの撮像を終えた後、開口部32に積載される1~N枚の名刺Mを反転して名刺トレイ22Bに載置することにより、最上段に位置する名刺Mを1枚目とすることができると共に、その上面は裏面となっている。この状態で再度連続して撮像を行うことにより、名刺Mの裏面の撮像画像を得ることができるため、スマホで表面の撮像画像と裏面の撮像画像とを紐付けて管理するようにすればよい。なお、携帯端末4にはこの操作をディスプレイ42に表示するなどし、顧客の操作を容易なものとすることが好ましい。
【0079】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の名刺読取装置について説明する。本実施形態の名刺読取装置は、名刺Mの撮像と共に、使用者の顔も撮像する点で第1の実施形態に係る名刺読取装置1と異なる。従って、第1実施形態に係る名刺読取装置1と同様の構成については、同じ符号を付すことによって詳しい説明を省略する。
【0080】
図22は、本実施形態に係る名刺読取装置の内部構成図であり、図23は、別形態に係る名刺読取装置の内部構成図である。なお、図22及び図23においては、左方側からみた図が示されている。図23に示されるように、本実施形態に係る名刺読取装置1Cは、断面三角形状の本体部2Cにおける傾斜する正面に携帯端末4が縦置き状態で取り付けられており、背面に名刺Mを載置する名刺トレイ22Cが設けられている。名刺トレイ22Cは携帯端末4の傾斜角と同様の角度を有して傾斜しており、したがって互いに平行となっている。本体部2Cの正面と背面とには、携帯端末4のカメラ41により名刺Mを撮像するための開口が形成されており、名刺トレイ22C上の名刺Mを携帯端末4により撮像することができる。この時、名刺Mの撮像時、携帯端末4のディスプレイ42側に設けられた不図示のサブカメラにより使用者の顔HFも撮像することができる。なお、携帯端末4と名刺トレイ22Cとの距離は、名刺トレイ22Cに載置された名刺Mの上面全面を撮像可能な距離に設定されている。
【0081】
また、名刺トレイ22Cと本体部2Cにおける携帯端末4の設置部分である正面壁部224とが平行リンク機構となっている。具体的には、名刺トレイ22Cは左右方向に互いに離間する一対のリンク部材223と相対回転可能に連結されており、該一対のリンク部材223は上下に2つ設けられている。これらリンク部材223は名刺トレイ22Cと平行に傾斜する正面壁部224と相対回転可能に連結されている。名刺トレイ22Cの下端部と正面壁部224の下端部とはそれぞれ本体部2Cに相対回転可能に連結されており、したがってリンク部材223を介して名刺トレイ22Cと正面壁部224とは本体部2C前方に一体となって段階的に押し上げる等の、位置の調節が可能となっており、位置が変更になった場合も平行性が維持されるため、名刺M上面の撮像が可能となっている。
【0082】
携帯端末4は、ディスプレイ42側、即ちフロント側においてフロントカメラ44が内蔵されている。携帯端末4は、名刺Mの撮像時に略同時にフロントカメラ44での撮像を行い、例えば使用者の顔HFを撮像することができる。フロントカメラ44での撮像は1度行わればよいが、動画撮影が行われるようにしてもよい。
【0083】
名刺読取装置1Cには第1の実施形態に係る名刺読取装置1や第2の実施形態に係る名刺読取装置1Bの機能を組み合わせてもよい。例えば図24に示されるような、ピックアップローラ6等を設けて片面多数枚の名刺Mを連続して撮像する名刺読取装置1C‘とすることも可能である。
【0084】
スマートフォンやタブレットを使ってWEB(リモート)会議をする場合、フロントカメラで自分の顔を撮像する場合がある。この名刺読取装置1Cによれば、自分の顔と同時に自分の所属や名前を見せる場合はカメラ41と適正距離離れ、携帯端末4と平行に設置された名刺トレイ22Cに名刺Mを置くことで名刺Mの撮像と使用者の顔HFの撮像とを行うことができる。そのため、例えば得られる2つの撮像画像を会議相手に送ることができる。また、撮像した名刺画像にOCR処理を行い、テキストデータを送付するようにしてもよい。
【0085】
また、トレイ22Cを大きなサイズにすることが可能に構成されており、書類を見せたい場合はトレイ22Cを大きなサイズにすることで、会議相手に送信、共有する画面に表示することもできる。名刺Mや書類のトレイは、名刺トレイ22Cのような平行リンク機構を応用することで、携帯端末4の角度を変えても平行を維持できる。なお、上部のリンク部材223を外せば、名刺トレイ22Cを折りたたむことが可能となる。さらに、携帯端末4に装備された照明用のLEDを利用して名刺Mや使用者の顔HF等の対象物を照らすこともできる。
【0086】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の名刺読取装置について説明する。本実施形態の名刺読取装置は、名刺Mの撮像と共に、他の書類等の静止撮像物を撮像する点で第1の実施形態に係る名刺読取装置1と異なる。従って、第1実施形態に係る名刺読取装置1と同様の構成については、同じ符号を付すことによって詳しい説明を省略する。
【0087】
図24は、本実施形態に係る名刺読取装置の側面図であり、図25は、本実施形態に係る名刺読取装置の正面図である。図24及び図25に示されるように、本実施形態に係る名刺読取装置1Dは、支持台3に代わり、前方に静止撮像物Dを水平面に対して傾斜させて載置可能なフロントトレイ33が設けられた支持台3Dを備える。なお、図25に示されるように、フロントトレイ33は、排紙トレイである開口部32から右方側にオフセットされた位置に配置されている。このように配置することにより開口部32に排出された名刺Mの取り出しは阻害されない。
【0088】
静止撮像物Dは、名刺Mや書類等のシート状物だけでなく、社員証、IDカード、クレジットカード、免許証などの多数枚の連続送りに適さない厚みを有するカード状物や、通常ケースに入れるなどしているものが挙げられる。
【0089】
本体部2に取り付けられた携帯端末4は、フロント側においてフロントカメラ44が内蔵されている。本体部2には、このフロントカメラ44上方においてフロントトレイ33に載置された静止撮像物Dの鏡像をフロントカメラ44へ折り返す折り返しミラー244が設けられている。換言すれば、フロントトレイ33は、折り返されたフロントカメラ44の入射の中央線に直行する位置に静止撮像物Dを載置可能に構成されている。
【0090】
また、本実施形態においては、暗所での撮像を想定し、本体部2の不図示の排出口が形成されている下部に、静止撮像物Dの撮像時に該静止撮像物Dに対して光を照射可能な照明部25が設けられている。なお、折り返しミラー244は、例えば連結部材245を介して本体部2側壁と連結されて支持されるようにしてよい。
【0091】
名刺読取装置1Dの使用方法について図9に示されるフローチャートを用いて説明する。図9に示されるステップS103において、ディスプレイ42に画像読み取り開始ボタンとして、カメラ41及びフロントカメラ44の2つのカメラによる撮像を実行するボタンと、カメラ41による撮像を実行するボタン、フロントカメラ44による撮像を実行するボタンがそれぞれ表示される。複数枚の名刺Mの撮像と共に静止撮像物Dを撮像する場合は、2つのカメラによる撮像を実行するボタンを選択する。すると、ステップS106において名刺Mの撮像時に略同時にフロントカメラ44での撮像が1回行われ、名刺Mの撮像画像と共に、静止撮像物Dの撮像画像を得ることができる。以降は名刺Mの撮像が連続して行われる。なお、フロントカメラ44により得られる撮像画像は当然ながら鏡像であるため、含まれる情報の抽出や、ディスプレイ42への表示には反転処理を行うこととなる。
【0092】
一方、名刺Mが1枚または少数である場合は、名刺トレイ22には名刺Mを載置せず、フロントトレイ33にのみ名刺Mを載置し、ステップS103において、フロントカメラ44による撮像を実行するボタンを選択する。すると、ステップS106においてフロントカメラ44での撮像が1回行われ、静止撮像物Dの撮像画像のみを得ることができる。以降は名刺Mの撮像が連続して行われる。
【0093】
名刺読取装置1Dの他の使用方法について説明する。名刺読取装置1Dを複数人で共有する場合、撮像により得られる撮像画像や当該撮像画像から抽出された名刺情報を個人の指定するフォルダに選択的に保存することが望まれる。このような場合にはログインなど個人の認証が必要になる。その場合は個人を特定できる名刺やIDカードをフロントカメラ44で撮像し、撮像画像から得られる個人情報が予め保存された個人情報に含まれているか否かを名刺読取装置1Dが判断し(または認証サーバ等を用いて判断)、個人を認識しておく。これにより予め定められた個人の指定するフォルダに、画像読取処理により得られる名刺Mの撮像画像を保存することができる。すなわち、名刺読取装置1Dのログインのための情報入力としてフロントカメラ44による撮像を使用することができる。
【0094】
同様の手順で個人が指定するフォルダでなく、フォルダやデータファイルの名前付けをフロントカメラ44により得られる撮像画像に基づく情報で行うこともできる。これらの機能の選択は携帯端末4のアプリの画面で選択することが好ましい。
【0095】
(変形例)
図26は、第5実施形態に係る名刺読取装置の第1変形例を示す側面図であり、図26に示される名刺読取装置1Eは、断面略V字状の支持台3Eに空洞の本体部2Eが支持され、当該本体部2Eに端末ホルダ21、折り返しミラー244、照明部25、及びフロントトレイ33が設けられている。したがって名刺トレイ22や各搬送ローラ、傾斜板23等が設けられていない。そのため、名刺読取装置1Eは、携帯端末4のフロントカメラ44のみにより静止撮像物Dを撮像する。以上の構成により名刺読取装置1Eは、第5の実施形態に係る名刺読取装置1Dと比較して低コスト化を実現でき、また、フロントカメラ44のみを使うことで、名刺M等の静止撮像物Dの載置や、載置位置を微調整する際に静止撮像物Dと操作表示するディスプレイ42とを使用者が同時に視認することができ、操作が容易である。
【0096】
また、図27に示されるように、携帯端末4が備える照明部45により照射される光を静止撮像物Dに折り返す、折り返しミラー246を本体部2E内に設けるようにしてもよい。これによれば照明部25は必要ない。
【0097】
上述の第1~第6実施形態では名刺Mを読取原稿にしているが、読取原稿は、名刺Mに限られず、例えば免許証などの他の情報媒体、さらには樹脂製カードなどであってもよい。また葉書などであってもよい。すなわち、カード状であればいずれも読取原稿とすることができる。また、短冊状物も読取原稿とすることができ、その場合は縦長な画像を取得することとなる。
【0098】
さらに、読取原稿は、カード状に限られず、コピー用紙などのシート状であってもよい。シート状の用紙は、例えばA4,A5など種々の用紙であってよい。この場合、撮影して得た画像データから用紙の規定寸法に従ってシートの部分を抜き出すようにする。すなわち、読取原稿は、シート状であればよく、サイズや材質などが限定されることはない。
【0099】
また、必ずしも携帯端末4を構成要素にする必要はなく、本体部にカメラを設置し、本体部の制御部(例えば制御基板)或いはさらに別のコンピュータが画像取得部と画像処理部の機能を実行する構成であってもよい。
【0100】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1,1A,1B 名刺読取装置(画像読取装置)
2,2A 本体部(装置本体)
21 端末ホルダ(保持部)
23 傾斜板
262 第2の搬送ローラ(導入搬送部)
263 第3の搬送ローラ(排出搬送部)
5 ゲート
51 当接部
52 直交部
53 連結部
SW2 スイッチ(センサ)
図1
図2
図3
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