(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091692
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】炭酸ジメチルを製造するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
C07C 68/04 20060101AFI20220614BHJP
C07C 69/96 20060101ALI20220614BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220614BHJP
【FI】
C07C68/04 A
C07C69/96 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021188058
(22)【出願日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】P202031224
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(71)【出願人】
【識別番号】517133998
【氏名又は名称】ブループラズマ パワー,エス.エル.
【氏名又は名称原語表記】Blueplasma Power, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリオ アラヤ ブレネス
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC48
4H006BA08
4H006BA10
4H006BA30
4H006BC10
4H006BC11
4H006BE20
4H006BE40
4H006BE41
4H006KA54
4H039CA66
(57)【要約】
【課題】本出願は、炭酸ジメチルを製造するための装置および方法、特に脱水剤の使用を必要としない、DMC合成のためのシステム(装置または方法)に関する。
【解決手段】より具体的には、方法のための供給混合物は、以下の選択肢から選択することができる:a)一酸化炭素、メタノール、およびプロセスからの煙道ガス、b)CO
2を含まない合成ガス、およびプロセスからの煙道ガス、c)CO
2を含む合成ガスおよびプロセスからの精製煙道ガスからの追加合成ガス。方法は、不均一触媒の異なる群の特定の組合せを含む触媒集合体を使用し、各群は異なる機能を有する。本発明はまた、異なるルートを適用して各供給混合物選択肢から炭酸ジメチルを連続的に製造するための、不均一触媒の特定の組合せを含む装置に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ジメチル(DMC)を製造するための装置であって、
少なくともMeOH、CO2、およびCOを含む供給混合物からDMCを合成するためのDMC反応器を備え、
前記DMC反応器が、触媒C2および触媒C3を含む少なくとも2つの不均一触媒群の混合物を含み、
触媒C2が、MeOHとCO2との反応を促進して、DMCおよび副生成物としてのH2Oを生成し、
触媒C3が、COおよびH2OのH2およびCO2への変換を促進する、
装置。
【請求項2】
少なくともCO、CO2、およびH2からなる供給混合物からMeOHを合成するためのMeOH反応器をさらに備え、
前記MeOH反応器が、前記DMC反応器内で一体的に組み合わされるか、または前記DMC反応器の上流に連続して配置され、
前記MeOH反応器が、CO、H2、およびCO2のMeOHへの反応を促進する不均一触媒の第3の群、すなわち触媒C1を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
触媒C1、触媒C2および触媒C3が、前記MeOH反応器を一体的に含む前記DMC反応器に配置されるか、または
前記MeOH反応器を一体的に含む前記DMC反応器、または2つの別個の反応器、すなわち前記MeOH反応器およびDMC反応器において、第1のゾーンAに触媒C1が配置され、第2のゾーンBに混合形態の触媒C2および触媒C3が配置されるか、または
前記MeOH反応器を一体的に含む前記DMC反応器、または2つの反応器もしくは3つの反応器、すなわち1つのMeOH反応器および2つのDMC反応器において、触媒C1を第1のゾーンAに配置し、触媒C2を、場合により触媒C3との混合形態で第2のゾーンBに配置し、触媒C3を第3のゾーンCに配置する、
請求項1~2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも前記DMC反応器が、低圧かつ低温で動作し、前記排出口に少なくとも1つの熱交換器システムを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記DMC反応器の排出口における前記熱交換器の次に、生成されたDMCを冷却し、それを前記ガス状供給生成物およびガス状副生成物から分離するための、少なくとも1つのDMC凝縮器およびDMCタンクが続く、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記副生成物MeOHを冷却し、それを前記ガス状供給生成物および副生成物から分離するために、MeOH凝縮器およびMeOHタンクを前記DMC凝縮器の下流にさらに備え、
場合により前記MeOHタンクと前記DMC反応器の供給管との間の管接続を備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記MeOH凝縮器またはタンクが、管接続によって前記MeOH反応器の供給管に接続され、それにより、前記未処理のガス状供給物またはガス状副生成物がリサイクル供給混合物、場合により主にCOおよび/またはCO2、およびH2を含む混合物からなる新鮮な供給ガスと混合されたリサイクル供給混合物として供給される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
CO2水蒸気改質反応器SRRと、前記MeOH凝縮器と前記MeOH反応器の前記供給管との間の管接続とを含む追加のバイパスラインをさらに備える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記MeOH反応器および/または前記DMC反応器が、シェルにより覆われた1つ以上のチューブを有するシェルチューブ反応器であり、
前記触媒が、前記1つ以上のチューブの内側に配置され、
これらのチューブが、前記反応器またはゾーンの温度を調節するために循環熱伝達媒体によって囲まれている、
請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
触媒C1が、アルミナ(Al2O3)上に担持されたCuO/ZnO系であり、
触媒C2が、CeO2、ZrO2、ZnO-CeO2、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択され、
触媒C3が、Pt/γ-Fe2O3、Au/γ-Fe2O3、MがLa、Ni、Cu、Fe、CrおよびYの群の少なくとも1つであるAu/CeO2-MOx/Al2O3、Au-Y/CeO2、Pt-Y/CeO2、Au/CeO2-ZrO4、Au/ハイドロタルサイトおよびCu-Zn-Al2O3、Pt/ハイドロタルサイトおよびCu-Zn-Al2O3、Pt/CeO2からなる群から選択される、
請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記触媒の好ましい組成が、重量パーセントで、C1が20~35%、C2が15~35%、およびC3が15~60%である、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
炭酸ジメチル(DMC)を製造するための方法であって、
少なくともMeOH、CO2、およびCOからなる供給混合物から、触媒C2および触媒C3を含む少なくとも2つの不均一触媒群の混合物を含むDMC反応器中の不均一触媒によってDMCを合成する工程を含み、
触媒C2が、MeOHとCO2との反応を促進して、DMCおよび副生成物としてのH2Oを生成し、
触媒C3が、COおよびH2OのH2およびCO2への変換を促進する、
方法。
【請求項13】
少なくともCO、CO2、およびH2からなる供給混合物から、前記DMC反応器内で一体的に組み合わされるか、または前記DMC反応器の上流に連続して配置される前記MeOH反応器中でMeOHを合成して、前記DMC反応器での前記DMC合成プロセスのためのMeOHを生成する工程をさらに含み、
MeOHを合成する前記工程が、CO、H2、およびCO2のMeOHへの反応を促進する不均一触媒の第3の群、すなわち触媒C1によって触媒される不均一触媒作用プロセスである、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記MeOH反応器に、3~10 wt.%のH2、40~69 wt.%のCO、および15~42 wt.%のCO2の混合物を、触媒C1について15~60バールの圧力条件および175~270°Cの温度条件で供給し、
後続のDMC反応器に、前記MeOH反応器の前記排出口を、15~60バールの圧力条件、および触媒C2について110~175°C、触媒C3について110~175°Cの温度条件で供給し、
MeOH反応器が、一緒に混合された内部触媒C1、C2およびC3を有する前記DMC反応器内で一体的に組み合わされる場合、前記MeOH反応器に、3~10 wt.%のH2、40~69 wt.%のCO、および15~42 wt.%のCO2の混合物を供給し、この間の圧力条件が15~60バールであり、温度条件が130~165°Cである、
請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記供給ガスの前記重量空間速度が1,200~125,000 h-1である、請求項14に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ジメチルを製造するための装置および方法、特に脱水剤の使用を必要としない、DMC合成のためのシステム(装置または方法)に関する。より具体的には、方法のための供給混合物は、以下の選択肢から選択することができる:a)一酸化炭素、メタノール、およびプロセスからの煙道ガス、b)CO2を含まない合成ガス、およびプロセスからの煙道ガス、c)CO2を含む合成ガスおよびプロセスからの精製煙道ガスからの追加合成ガス。方法は、不均一触媒の異なる群の特定の組合せを含む触媒集合体を使用し、各群は異なる機能を有する。本発明はまた、異なるルートを適用して各供給混合物選択肢から炭酸ジメチルを連続的に製造するための、不均一触媒の特定の組合せを含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸ジメチル(DMC)は、式OC(OCH3)2を有する有機化合物であり、無色の可燃性液体である。それは炭酸エステルとして分類される。この化合物は、メチル化剤としての使用、およびより最近では、メチルエチルケトン(MEK)およびパラ-クロロベンゾトリフルオリド、ならびに酢酸tert-ブチルを置き換えることができる非プロトン性極性溶媒としての使用が見出された。DMCはまた、ほとんどの揮発性有機化合物(VOC)に課される制約を免除される代替燃料添加剤として使用される特性を有する。DMCは、その中の多量の酸素によって、ガソリン酸素化物であるMTBEの適切な代替品となる。米国では、炭酸ジメチルは多くの場合、グリーンな、環境的にニュートラルな試薬であると考えられている。ポリカーボネート合成における中間体としてのDMCは、溶融重縮合プロセスにおけるビスフェノール-A-ポリカーボネートの合成に広く使用される原料であるフェノールとのエステル交換反応による、ジフェニルカーボネートの製造において非常に魅力的な使用が見出されている。また、DMCは、リチウムイオン電池の電解質として使用されてきた。
【0003】
DMCは、メタノール(MeOH)を、従来はホスゲンと、より最近では酸化的カルボニル化によって一酸化炭素(CO)と反応させることによって製造されている。方法の前者の主な欠点は、ホスゲンの高い毒性および共生成された塩化水素の処分であり、一方、後者の主な欠点は、毒性COの使用および酸素の高いコストに加え、高い転化率での触媒失活である。
【0004】
メタノールおよび酸化炭素からDMCを製造する最も重要な一般的な方法は以下の通りである。
【0005】
【0006】
メタノールのホスゲン化は、1980年代前はDMC合成の最も一般的な方法であったが、塩素化合物の毒性のために、1980年代以降、主に化学業界内の研究者は、DMC合成までの非ホスゲンルートを集中的に開発してきた。
【0007】
(2)DPC(ジフェニルカーボネート)製造方法のためにENIChem(イタリア)によって開発され、GEに許可された銅触媒によって触媒されるメタノールの酸化カルボニル化。このルートは、以下の化学式に従う。
【化2】
【0008】
反応は液相中で生じる。活性炭に担持されたCuCl2などの固体触媒を使用した、気相反応方法も開発された。MeOH、CO、およびO2は、外部から供給する必要がある。COおよびO2は、圧力下でタンク内に貯蔵される。
【0009】
(3)硝酸メチルのカルボニル化およびシュウ酸ジメチル(DMO)の脱カルボニル化。宇部興産(日本)によって開発された硝酸メチル法は、直接メタノール酸化カルボニル化法の変形である。メタノールは最初に、触媒の非存在下、穏やかな条件下(2~3 atm、40°C)で、NOおよびO2を用いて硝酸メチルへと酸化される。硝酸メチルを共生成された水から分離し、O2の存在下でパラジウム(Pd2+)触媒によって炭化してDMCを形成する。反応は、不均一触媒床上の気相中で起こる。パラジウム金属(Pd0)触媒を使用して、硝酸メチルをシュウ酸メチル(DMO)へと炭化し、それをDMCに変換することもできる。
【0010】
【0011】
MeOH、CO、およびO2は、外部から供給する必要がある。COおよびO2は、圧力下でタンク内に貯蔵される。
【0012】
(4)DMCはまた、炭酸エチレンまたは炭酸プロピレンとメタノールとのエステル交換によって工業的に製造することもでき、それはまた、それぞれエチレングリコールまたはプロピレングリコールをもたらす。
【0013】
(5)尿素のメタノリシスによってDMCを製造することも可能である。DMCを得るためのメタノールと尿素とのスズ触媒反応は、周知の合成方法である。プロセスの反応は、以下のように説明することができる。
(NH2)2 CO+CH3OH→H2NCOOCH3+NH3
H2NCOOCH3+CH30H →CH3OCOOCH3+NH3
【0014】
全体的な反応は、以下のように表すことができる。
(NH2)2CO+2CH3OH → CH3OCOOCH3+2NH3
【0015】
DMCを製造するための代替ルートは、メタノールおよびCO2からのDMCの直接合成である。均一触媒および不均一触媒は、この直接合成反応において有効である。いくつかの報告では、反応は、様々なタイプの不均一触媒を含む固定床反応器で実施される。これらの中でも、金属酸化物、特にCeO2およびZrO2触媒は、この反応中、一貫して活性であることが分かった。他のいくつかは、高収率でDMCを生成することを実証しており、その中には炭素担持Cu/Cu-Ni、Cu-NiまたはH3PO4修飾V2O5、金属酸化物担持Rh、およびヘテロポリ酸がある。これらの研究で報告されたMeOH変換は、軽度から高度のDMC選択性(60-90%)で5-10%の範囲であったが、熱力学によれば、はるかに低いメタノール変換値が予想されるはずである。熱力学的制約により、一般的な方法でのMeOHおよびCO2間の反応がもたらすDMCの収率は低い。
【0016】
さらに、CO2は動力学的に不活性であり、熱力学的に安定である。したがって、CO2活性化は、DMCへの変換における重要な問題である。CH3OHおよびCO2間の反応はわずかに発熱性であり、反応熱は23 kJ/molである。したがって、より高い量のDMC収率を達成するためには、より低い反応温度が好ましい。DMCの低収率は、副生成物としてH2Oの生成に起因する。しかしながら、高圧、および生成されたH2Oの適切な脱水剤の使用による即時の除去によって、平衡が生成物側にシフトする可能性がある。現在、最も革新的な触媒は、CeO2、ZrO2、CeO2-ZrO2、K2CO3、Cu-Ni/SBA-15、Nb2O5/CeO2、Cu-Ni/グラファイト、金属テトラアルコキシド、H3PW12O40/ZrO2である。これらは、DMC合成のための主要な一般的触媒組成物の一部である。これらの触媒系の全てにおいて、DMCの副生成物としてのH2Oは、全体的な収率を低下させる重要な因子である。したがって、これらのプロセスはすべて、特定の脱水剤を使用することによって副生成物H2Oを回避するように設計されている。
【0017】
DMC製造におけるH2O副生成物がプロセス効率の主な敵であるという事実のために、DMCを製造するための最も重要な既存の不均一触媒合成は、全てのプロセスを通して移動する均一な脱水剤などの脱水剤を必要とする。DMCを製造した後、続いて脱水剤を交換(脱水)するか、または特別なプロセスで脱水剤を復活させる必要がある。これにより、一般的プロセスのコストが増加する。
【0018】
以下の特許および調査研究は、過去10年間に公開されており、主にCO2およびメタノールを使用してDMCを製造する方法を提示している。それらのほとんどは脱水剤を含み、これらの特許の1つは、水を少なくとも部分的に抽出するための循環チューブを含む。
2016年2月2日にKhalid A.Almusaiteerによって提出された米国特許第9,249,082号(B2)は、二酸化炭素およびメタノールから炭酸ジメチルを合成する方法を記載している。この特許では、発明者は、反応混合物を脱水チューブに通して循環させることによって水の少なくとも一部を除去している。
【0019】
Darbha SrinivasおよびUnnikrishnan Pulikkeelは、リン酸ジルコニウムから誘導されたピロリン酸ジルコニウムからなる焼成触媒を使用し、モレキュラーシーブおよび2,2-ジメトキシプロパンの群から選択されるものを水捕捉剤として使用してDMCを製造できたことを、米国特許第9,073,849号(B2)において開示した。
【0020】
Catalysis and Fine Chemicals Department,CSIR-Indian Institute of Chemical Technology(Hyderabad,Telangana 500 007,India)からの2019年3月2日のRamaraos記事は、メタノールおよびCO2からDMCを製造する方法を記載している。それらは、共沈殿法によって調製されたZnO-CeO2触媒、および原料と共に流れる脱水剤として2-シアノピリジンを使用した。上記の脱水剤2-シアノピリジンを、反応物を脱水してDMCを生成した後に復活させる。
メタノールおよびCO2からDMCを生成するためのいくつかの非還元的CO2変換経路が提示されてきたが、これらのプロセスの高コスト、および脱水剤を復活させるための追加的プロセス工程が依然として必要とされる。したがって、新規技術および改良されたDMC合成方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第9,249,082号
【特許文献2】米国特許第9,073,849号
【発明の概要】
【0022】
上記の目標課題は、独立請求項に定義されているような装置および方法によって解決されている。さらなる実施形態および代替形態は、従属請求項および以下の説明に記載されている。
【0023】
より詳細には、本発明による炭酸ジメチル(DMC)を製造するための装置は、少なくともMeOH、CO2、およびCOを含む供給混合物からDMCを合成するためのDMC反応器を備える。装置はさらに、DMC反応器が、触媒C2およびC3を含む少なくとも2つの不均一触媒群の混合物を含み、触媒C2が、MeOHとCO2との反応を促進して、DMCおよび副生成物としての H2Oを生成し、触媒C3が、COおよび H2OのH2およびCO2への変換を促進することを特徴とする。
【0024】
本発明による方法は、少なくともMeOH、CO2、およびCOからなる供給混合物から、触媒C2およびC3を含む少なくとも2つの不均一触媒群の混合物を含むDMC反応器内の不均一触媒によって、DMCを合成する工程を含む。触媒C2は、MeOHとCO2との反応を促進して、DMCおよび副生成物としてのH2Oを生成する。触媒C3は、COおよび H2OのH2およびCO2への変換を促進する。
【0025】
本発明の装置および方法は、少なくとも2つの不均一触媒C2およびC3の特定の組合せによって、脱水剤を必要とせずに、競争力のある収率および選択性でのDMCの製造を可能にする。また、少なくとも上記で特定された2つの異なる機能性を有する不均一触媒系によって、このプロセス工程における別個の脱水反応は必要なく、DMC生成物はDMC反応器内で実質的に水を含まずに生成される。これに関して、実質的に水を含まないとは、DMCを凝縮し、DMCタンクで液体DMCを分離することによってDMC反応器の最後で得られるDMCが90%超、好ましくは95%超であることを意味する。さらなる分離工程をせずに含水量は通常5%未満であり、場合によっては、最終生成物中に微量の水のみが見られ得る。さらに、抽出蒸留など、DMCをMeOHおよび他の液体副生成物から分離するためのさらなる精製プロセスを使用して、必要に応じて純度を向上させることができる。
【0026】
さらに、本発明の装置および方法は、少なくともMeOH、CO2およびCOを含む混合物から、先行技術の方法のいずれかで必要とされる脱水剤を復活させる追加の工程なしで、DMCを連続的に合成する機会を提供する。脱水反応は、不均一触媒C3によって促進された触媒反応によってDMC反応器内で起こる。この反応は、COおよびH2OのH2およびCO2への変換であり、DMC反応器内での水の生成の後に、またはMeOHのカルボニル化反応からの副生成物としての水の生成と同時に起こる。MeOH、COおよびCO2で構成される原料と共に流れる脱水剤を使用しない、DMC形成中のこの即時かつ効果的な脱水作用は、DMC反応器での2つの上述の不均一触媒群の使用に基づく。したがって、上記の2つの触媒群の特定の組合せで達成される驚くべき効果は、DMC製造のコストを削減するために重要である。
【0027】
さらに、二酸化炭素の利用は、多くの工業関連化学反応において多くの注目を集めている。これは、主として、CO2が気候変動の原因として最も疑われている温室効果ガスの1つであるという事実、およびCO2回収施設からの、増々膨大になりつつあるその利用可能性によっても推進される。大量のCO2を変換するための1つの有望な戦略は、燃料、例えばメタノールおよびDMCなどの基本的かつ需要の高い化学物質を製造することである。したがって、本発明の装置および方法を使用して、大気中または化学プロセスで生成されるCO2量を減らすことができる。本発明において、CO2は、不均一触媒作用によるDMCの合成における反応物として重要な役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明によるDMCを製造するための装置を含むDMC合成システム。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、いくつかの好ましい実施形態および代替形態が記載され、これらはすべて単独でまたは任意の組合せで使用することができる。以下の実施形態の説明は、本発明の用途における上記で定義された一般的な発明概念の装置または方法を補足するための、実現性の説明として見られるべきである。上記の本発明の最も一般的な概念で定義される装置は、通常、プロセス全体を制御するための追加の手段を備えた複合反応器システムで使用される。これらの任意選択の手段のいくつかは、好ましい実施形態として以下で説明される。
【0030】
本発明による装置のこのような実施形態では、MeOH反応器がこのシステムに含まれる。メタノール反応器は、DMC反応器の上流に適切に配置され、少なくともCO、CO2、およびH2からなる供給混合物からMeOHを合成するために使用される。好ましくは、供給混合物は、本出願においてH2およびCOを任意の割合で含有するものとして定義される合成ガスを一成分として含む。他の成分は、少なくともCO2を含み、それは続いて、DMC反応器におけるDMC合成の反応物として使用される。DMC反応器からの排出物からの煙道ガスなど、未精製または精製形態のさらなるガス成分は、必要に応じてMeOH反応器の供給混合物中に存在することができる。この煙道ガスのリサイクルを使用して、本発明の方法の全体的な収率を上げることができる。
【0031】
あるいは、MeOH反応器は、DMC反応器内に一体的に配置することができる。この場合、DMC反応器は、好ましくは、それぞれの反応のための分離された区画を含む。MeOHはDMC合成における反応物の1つとして使用されるので、MeOH合成区画は、DMC合成区画の上流にあることが好ましい。
【0032】
MeOH反応器は、CO、H2、およびCO2のMeOHへの反応を促進する第3の不均一触媒群、すなわち触媒C1を含む。残留CO2は、続いてDMCの合成に使用される。MeOH反応器がDMC反応器内に一体的に設けられる場合、触媒C1、C2およびC3は、DMC反応器内に混合されて配置される。以下でより詳細に説明するように、それらを特定の組合せで配置することが好ましい。
【0033】
あるいは、MeOH反応器を一体的に含むDMC反応器または2つの別個の反応器、すなわちMeOHおよびDMC反応器のいずれかにおいて、触媒C1を第1のゾーンAに配置し、混合形態の触媒C2およびC3を第2ゾーンBに配置する。
【0034】
第3の代替実施形態では、MeOH反応器を一体的に含むDMC反応器、または2つもしくは3つの反応器、すなわち1つのMeOH反応器および2つのDMC反応器のいずれかにおいて、触媒C1を第1ゾーンAに配置し、触媒C2を、場合により触媒C3と混合した形態で第2のゾーンBに配置し、触媒C3を第3ゾーンCに配置する。
【0035】
最後の2つの代替形態のいずれにおいても、触媒C1が同じ反応器の上流または少なくとも内部に配置されるのは、この触媒が、その後のDMC合成プロセスの反応物の1つであるMeOHの合成を促進するからである。
【0036】
上に示したように、本発明は、相乗的に作用する不均一触媒(HECATS)の組織化された集合体を含む。言及された代替形態において、HECATSは、供給混合物から無水DMCを製造するために、脱水剤を消費しない連続的プロセスで、少なくとも1つの固定床反応器からなる反応器または反応器システム内に戦略的に組み合わせて配置される。
【0037】
少なくともDMC反応器は、低圧(約60バール)かつ低温(200°C未満)で作動する反応器として適切に構成することができる。DMC反応器は、排出口に少なくとも1つの熱交換器システムを有する。これは、液体部分を凝縮し、それを排出ガス成分から分離するために、生成物流の温度を低下させるために使用することができる。
【0038】
DMC反応器の排出口の熱交換器の次に、生成されたDMCを冷却し、それをガス状供給生成物およびガス状副生成物から分離するための、少なくとも1つのDMC凝縮器およびDMCタンクが適切に続く。DMCは、凝縮されると十分に無水であり、DMCタンクに貯蔵することができる。必要に応じて、さらなる精製工程を適用することができる。
【0039】
DMCを凝縮した後、ガス状供給生成物およびガス状副生成物を、副生成物MeOHを冷却し、ガス状供給生成物および副生成物からそれを分離するためにMeOH凝縮器にさらに供給することができる。凝縮したMeOHは、好ましくは、DMC凝縮器の下流のMeOHタンクに貯蔵される。装置は、場合により、MeOHタンクとDMC反応器の供給管との間の管接続を備える。この管接続を使用して、MeOHタンクに液体形態で貯蔵されたMeOH副生成物をDMC反応器内でリサイクルすることができ、したがってDMC反応器でのDMC合成の収率を高めることができる。
【0040】
MeOHリサイクル接続に加えて、さらなるリサイクル接続を使用してDMC合成の収率を高めることができる。この目的のために、MeOH凝縮器は、未処理のガス状供給物またはガス状副生成物がリサイクル供給混合物として供給されるように、管接続によってMeOH反応器の供給管に接続される。このリサイクル供給混合物は、未精製煙道ガス(R-FLG)とも呼ばれる。場合により未精製煙道ガスは、主にCOおよび/またはCO2、およびH2を含む混合物からなる新鮮な供給ガスと混合される。有機廃棄物から生成された合成ガスは、CO2の混合の有無にかかわらず、環境的側面から供給ガスとして好ましく使用される。
【0041】
CO2および炭化水素をより多くの合成ガス(CO+H 2)に変換するためのリフォームユニット、およびMeOH凝縮器またはタンクとMeOH反応器の供給管との間の管接続を含む追加のバイパスラインを使用して、DMC反応器で生成された未精製煙道ガスをリサイクルし、それを精製煙道ガス(P-FLG)に変換することができる。P-FLGは、外部合成ガスと同様に、MeOH反応器への供給ガスとして再び使用することができる。これにより、本出願で後述するように、多種多様な供給ガスの選択肢が可能になる。
【0042】
本発明による装置の一実施形態によれば、MeOH反応器および/またはDMC反応器は、シェルによって覆われた1つまたは複数のチューブを有するシェルチューブ反応器である。一般に、触媒は、1つまたは複数のチューブの内側に配置され、これらのチューブを、場合により循環熱伝達媒体で取り囲んで、反応器内の発熱反応によって発生した過剰な熱を吸収する。
【0043】
触媒C1用の好ましい不均一触媒材料は、Al2O3上に担持されたCuOとZnOとの混合物である。
【0044】
触媒C2の例示的な材料は、CeO2、ZrO2、ZnO-CeO2、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0045】
触媒C3は、例えば、Pt/γ-Fe2O3、Au/γ-Fe2O3、Au/CeO2-MOx/Al2O3(Mは、以下の群、La、Ni、Cu、Fe、CrおよびYの少なくとも1つである)、Au-Y/CeO2、Pt-Y/CeO2、Au/CeO2-ZrO4、Au/Cu-Zn-Al2O3を含むハイドロタルサイト、Pt/Cu-Zn-Al2O3を含むハイドロタルサイト、およびPt/CeO2.からなる群から選択される。
【0046】
触媒の全体構成における触媒C1、C2およびC3の好ましい含有量は、重量パーセントで、C1が20~35%、C2が15~35%、およびC3が15~60%である。
【0047】
本発明による炭酸ジメチル(DMC)の製造方法は、少なくともMeOH、CO 2、およびCOからなる供給混合物から、DMC反応器内の不均一触媒作用によってDMCを合成する工程を含む。方法は、上で定義した反応器システムにおける特定の不均一触媒混合物の使用を特徴とする。少なくとも2つの不均一触媒群の混合物は、上で定義した触媒C2およびC3を含む。
【0048】
より詳細には、触媒C2は、MeOHとCO2との反応を促進して、DMCおよび副生成物としての H2Oを生成する。より詳細には、C2の機能は、FEEGに由来するMeOHと二酸化炭素(CO 2)との反応によるDMCの生成を促進することである。
2(CH3OH)+CO2 →(OCH3)2CO+H2O
【0049】
この反応では、H2Oが主な副生成物として生成される。一般に、反応は平衡反応であり、高温では収率が低い。DMCの収率は、反応器内の温度を下げるか、または H2Oを捕捉するかのいずれかで増加させることができる。H2Oは触媒を失活させ、DMC生成反応の速度を減ずるので、平衡状態から除去する必要がある。
【0050】
本発明の方法によれば、供給ガス混合物に由来する生成された H2OおよびCOは両方とも、DMC反応器内で追加的に生じる反応における反応物である。この追加反応は、触媒C3によって不均一に触媒される。触媒C3は、COおよび H2OのH2およびCO2への変換を促進する。この反応は、水性ガスシフト反応(WGSR)としても知られている。より詳細には、C3の機能は、WGSR、好ましくは超低温ULT-WGSRを促進して、主に上述のDMCの生成によって形成された H2O分子、および供給ガスに入るその他のあらゆる水分子、およびMeOHの生成で残されたその他を除去することである。このULT-WGSRは、以下の化学式に記載されるように生じる。
CO+H2O → CO2+H2.
【0051】
本発明では、ULT-WGSRは、DMCを生成する際にFEEGと共に流れる脱水剤に取って代わる。したがって、本発明では、H2Oが副生成物として生成されるDMCの生成をC2が促進しているときに、H2OはULT-WGSRによって除去されている。
【0052】
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、プロセスは、少なくともCO、CO2、およびH2からなる供給混合物から、MeOH反応器においてMeOHを合成する工程を含む。MeOH反応器は、DMC反応器内で一体的に組み合わされるか、またはDMC反応器の上流に続いて配置されて、DMC反応器内のDMC合成プロセスのためのMeOHを生成する。MeOHを合成する工程は、不均一触媒の第3群、すなわち触媒C1によって触媒される不均一触媒プロセスである。したがって、C1の機能は、以下の化学反応に則したFEEGからの一酸化炭素(CO)および水素(H2)の反応による、FEEGからのMeOHの生成を促進することである。
CO+2H2 → CH3OH
【0053】
同時に、同じ触媒C1は、以下の反応による、やはりFEEGからのCO2とH2との間の反応を促進する。
CO2+3H2 → CH3OH+H2O
【0054】
生成された水(H2O)およびFEEG由来のCOは両方とも、低温での反応が所望される場合、主にC1、またはC1とC3との混合物によってさらに促進される低温WGSRにおける反応物である。
CO+H2O → CO2+H2
【0055】
本発明によれば、C3によって促進されたULT-WGSRは、DMCを生成する際にFEEGと共に流れる任意の脱水剤に取って代わる。したがって、本発明では、H2Oが副生成物として生成されるDMCの生成をC2が促進しているときに、H2OはULT-WGSRによって除去されている。
【0056】
80~160°Cの温度でC3によって促進されたULT-WGSRにおいて良好な結果を達成することができ、より高い温度がDMC分子を分解する傾向があり、DMCを生成する反応にも悪影響を及ぼすので、これは望ましい。したがって、上記の反応で形成された水分子およびFEEG中の混入物質として入るものを除去するために、ULT-WGSRは、DMCを生成するのに必要な温度と同様の温度で作用するべきである。
【0057】
3つの触媒C1、C2、およびC3を用いた反応を含む、本発明の方法のこの実施形態で生じる上記化学反応を要約すると、以下の反応スキームが、MeOHおよびDMC反応器内の、または3つすべての触媒が1つの反応器に組み込まれている場合は単独のDMC反応器内の主な反応を説明する。
【0058】
触媒C1からの反応は、本明細書ではR1-aおよびR1-bと命名される。
R1-a:CO+2H2--→ CH3OH
R1-b:CO2+3H2 → CH3OH+H2O
これら2つの反応は、いずれも反応器システムにおいて熱を発生させる発熱反応である。
【0059】
触媒C2群からの以下の反応は、本明細書ではR2と命名される。
R2:2(CH3OH)+CO2 →(OCH3)2CO+H2O
この反応も発熱性である。
【0060】
触媒C3群からの以下の反応は、本明細書ではR3と命名される。
R3:CO+H2O → CO2+H2
この反応も発熱性である。
【0061】
さらなる好ましい実施形態によれば、MeOH反応器は、3~10 wt.%のH2、40~69 wt.%のCO、および18~42 wt.%のCO2の混合物が供給される。上記のように供給ガスからMeOHを生成するために、触媒C1の好ましい圧力条件は15~60バールであり、温度条件は175~270°Cである。後続のDMC反応器には、15~60バールの圧力条件で、触媒C2およびC3が別々の条件で置かれる場合は触媒C2について130~165°C、触媒C3について110~175°Cの温度条件でMeOH反応器の排出口が供給される。
【0062】
MeOH反応器がDMC反応器内で一体的に組み合わされる場合、反応器には、3~10 wt.%のH2、40~69 wt.%のCO、および15~42 wt.%のCO2の混合物が供給される。より好ましい範囲は、H2が5~10 wt.%、COが40~69 wt.%、CO2が18~42 wt.%である。この反応器では、触媒C1、C2およびC3が一緒に混合される。それにより、反応ゾーンにおいて適切な脱水機能を達成するために好ましい圧力条件は15~60バールであり、好ましい温度条件は130~175°Cである。
【0063】
本発明の方法は、さらにより好ましくは、約1,200~125,000 h-1の重量空間速度の供給ガスが実施され、実質的に水を含まない、生産性の高いDMC合成の連続的なプロセスをもたらす。
【0064】
上記で説明したように、プロセスは、原料と共に流れるいかなる脱水剤も必要としない。したがって、本明細書に提示される装置および方法は、DMCを製造するための一般的な合成方法とは異なる脱水反応に基づく。それらは、上記で概説した一般的な需要を満たすだけでなく、さらなる利点を提供する。例えば、前述の方法により、合成ガス(COおよびH2)およびCO2から、さらにはMeOH、COおよびCO2からFEEG中のO2を使用せずにDMCを製造することが可能になる。
【0065】
別の利点は、上記および特許請求の範囲に記載の装置により、以下の異なるFEEG組成からDMCを製造するための順応性のあるプロセスの開発が可能になることである:
a)主にCO、H2およびCO2を含有するSG、例えばガス化に由来するもの、
b)CO2、ならびに主にCOおよびH2を含むSG、例えば炭化水素蒸気改質に由来するもの、および
c)FEEG中にO2を組み込んでいないMeOH、CO2およびCO。
【0066】
したがって、反応物(供給成分)の高い順応性によって、本発明の装置および方法は、一般的な方法よりも有利となる。装置はまた、原料としてリサイクル煙道ガス(FLG)を使用するための可能なルートを使用したDMC合成のために調整される。本発明の装置および方法に適用可能な供給ガス源には、少なくとも以下の3つのグループがある。
【0067】
グループ1、主に以下を含む:i)主にH2およびCOを任意の割合で含むものとして本明細書で定義されるSG;ii)CO2;iii)DMCの合成プロセスからの、主にCO、H2、微量の窒素(N2)および少量のメタン(CH4)を含むものとして本明細書で定義される精製煙道ガスP-FLG;およびiiii)メタノール(MeOH)副生成物。
【0068】
グループ2、主に以下を含む:i)上記グループ1で定義されたSG;ii)主にCO2、CO、H2、微量のN2および少量のCH4を含むものとして本明細書で定義されるリサイクル可能な煙道ガス(R-FLG);iii)MeOH副生成物:最初に、R-FLGがDMC反応器から流れていない間、このFEEGに外部供給源からCO2を供給する必要があり、その後、R-FLGがDMC反応器から流れ始めると、外部供給源から供給されるこのCO2は、少なくとも部分的に、R-FLGの一部として生じるCO2副生成物によって置き換えられる。
【0069】
グループ3、主に以下を含む:i)外部供給源からのMeOHおよびMeOH副生成物;ii)外部供給源からのCO;およびiii)上記グループ2で定義されたR-FLG。最初に、R-FLGがDMC反応器から流れていない間、このFEEGに、外部供給源からCO2を供給する必要があり、その後、R-FLGがDMC反応器から流れ始めると、外部供給源から供給されるこのCO2は、少なくとも部分的に、R-FLGの一部として生じるCO2副生成物によって置き換えられる。
【0070】
特に好ましい実施形態では、HECATSを特別な方式で組み合わせて、上記で定義された有利な効果を提供する。HECATSは、1つ以上の反応器の内部に混合して、または順番に配置することができる。HECATSを順番に配置する場合、C1を列の最初に配置して、反応R1-aおよびR1-bによるMeOHの生成を促進する。C3と混合されたC2を第2の触媒として列に配置して、R2によるDMCの生成を促進し、ここでH2Oは、C3によるWGSRでCOと反応してDMCが生成されているゾーンを脱水する副生成物であり、したがってR2における妥当なDMC収率を可能にする。
【0071】
このプロセスは、順次、または並行して、または両方の組合せで配置された1つ以上の反応器で実施することができる。
【0072】
実施条件は、DMC収率がFEEG組成、FEEGのガス時間空間速度、3つのHECATS触媒が反応器内にどのように配置されるか、反応に関与する各タイプの触媒の量、ならびに3つのタイプの触媒のそれぞれが反応する温度および圧力に依存する限り影響を有し得る。さらなる影響を与えることができる。
【0073】
好ましい実施条件は以下の通りである。
・FEEGの重量の組成範囲は、水素(H2)が3~10%、一酸化炭素(CO)が40~69%、および二酸化炭素(CO2)が15~42%である。
・ガス時間空間速度(GHSV)範囲は、1,200~125,000 h-1である。
・HECATSは、1つ以上の反応器の内部に、順番に、または並行して、または両方の配置の組合せで配置される。少なくとも1つ以上の反応器の後には、少なくとも1つ以上の冷却システムまたはユニットが続く。
・HECATSに関与する触媒の各タイプの重量範囲は、C1が25~35%、C2が20~30%、およびC3が30~60%である。
・温度範囲は、C1については175~270°C、C2については130~175°CおよびC3については110~175°Cである。
・圧力範囲は15~60バールである。
【0074】
[実施例]
平均1キログラムのプラスチック廃棄物(ポリエチレン)を水蒸気と反応させてガス化することで、主にH2、COおよびCO2を上記の範囲内で含有する2.35 NM 3の合成ガスを生成し、これが、38バール、110~240°C、および4,200 h-1 GHSVの条件下にて、約1.16 kgのDMCおよび0.115 kgのMeOHを生成することができる。DMC製造から残ったFLGは、主にCO2と、DMCに変換されなかったいくらかのガス:H2、CO、N2、CH4およびいくらかのMeOHで構成される。
【0075】
上記の例に対して変更を行うことができ、例えば、ガス化からのSGに代わるガスを購入、または炭化水素の水蒸気改質などの他のプロセスから取得することができる。また、CO2を伴うMeOH蒸気、およびCOは、ガス化プロセスからのSGに代わることができる。これらの変更は、煙道ガス(FLG)中にN2およびCH4を有さないという利点を有する。しかしながら、DMC反応器への供給に煙道ガスを使用する場合、原料のコストを下げることができる。
【0076】
さらに好ましい実施形態では、分離手順が特に採用される。いくらかのMeOHを含むDMCは、まず少なくとも1つのタンクで凝縮し、次いでMeOHは少なくとも第2のタンクで凝縮し、そこからポンプによってDMC反応器に液体形態で流れる。純粋なDMCを得るために、DMCと共沸混合物を形成するMeOHは、通常、抽出蒸留によって分離される。
【0077】
煙道ガス(FLG)の残りを本発明のDMC合成プロセス用のリサイクル可能な煙道ガス(R-FLG)にするために、N2は、市販の膜または圧力スイング吸着ユニット(PSA)によって分離される。
【0078】
[図面]
本明細書の図面で使用される略語は、黄色の囲みで表示されている。
以下では、本発明の装置およびプロセスを、本発明の装置の例示的な実施形態を説明することによって説明する。この例示的な実施形態の図面およびそれぞれの説明は、例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。各ループがどのように機能するかの説明は、本明細書中の以下、図面の一般的な説明の後にある。
【0079】
図は、本発明によるDMCを製造するための装置を含むDMC合成システムを説明する。この装置は、供給ガスFEEG用の圧縮器COMと、熱交換器HE-2と、ゾーンAを画定するMeOH反応器R-1と、熱交換器HE-3と、ゾーンBを画定するDMC反応器R-2と、熱交換器HE-4と、リリーフ弁REVを有する液体DMC用の炭酸ジメチル(DMC)タンクと、熱交換器HE-5と、パージ弁PUV 1を有する液体MeOH用のMeOHタンクとを備える。ゾーンAでは、触媒C1をMeOH反応器R-1に配置する。ゾーンBでは、触媒C2およびC3をDMC反応器R-2内に配置する。
【0080】
ガス状副生成物を圧縮器COMにリサイクルしてMeOH反応器R-1にガスを供給するために、MeOHタンクと圧縮器COMとの間に追加の接続ラインが提供される。この接続ラインは、いくつかの圧力弁PV-2、PV-3、弁V 1、V 2、V 7、一方向弁OV 1、OV 3、N 2分離器S-N 2、ならびにCO2を含む合成ガス(SYN-1)およびCO2を含まない合成ガス(SYN-2)のための供給ラインを備える。追加のバイパスは、圧力弁PV-3の後に弁V 4を開き、V 7を閉じることによって提供される。したがって、リサイクルされた精製煙道ガスP-FLGは、バイパス接続ラインを通って圧縮器COMに導入され得る。
【0081】
バイパス接続ラインは、リサイクル可能な煙道ガスR-FLG由来のCO2およびCH4を、O2がいくらか混入した合成ガス(CO+H2)へと変換するための水蒸気改質反応器SRR(クラッキングユニット)と、熱交換器HE-1と、O2分離器S-O2と、一方向弁OV4とを備える。一方向弁は、MeOH反応器R-1に供給するために圧縮器COMの注入口に接続される。
【0082】
MeOH凝縮器またはタンクの底部排出口と、液体MeOHをDMC反応器に再循環させるための熱交換器HE-3への注入口との間の別の接続ラインには、ポンプP、減圧器RP-2、および一方向弁OV 2が設けられている。このラインを使用して、DMC合成のために生成され分離されたMeOHをリサイクルすることができる。
【0083】
液体DMC生成物は、減圧装置RP-1、およびDMCタンクに取り付けられた弁V 8によってDMC用の排出口から回収することができる。
【0084】
以下では、供給物組成の3つの変形を使用しながら、装置の説明と共にプロセスを説明する。
【0085】
ルートのプロセス説明/ループ1(CO2を含むSGを使用する)
1.このループでは、CO2含有SGはV2を通ってシステムに入り、圧縮器に向かって流れる。
2.煙道ガス(FLG)は、MeOHタンクから流れ、N2分離器S-N2を通過してリサイクル可能な煙道ガス(R-FLG)になり、さらに市販のCO2プラズマクラッキングトーチ水蒸気改質反応器(SRR)、続いて冷却目的のための熱交換器HE-1、および膜または圧力スイング吸着ユニットを拠点にして作動する市販のO2分離器S-O2を通過する。この時点で、R-FLGは、本明細書では精製煙道ガス(P-FLG)と命名される合成ガスになり、FEEGの一部として圧縮器に流れる。
3.したがって、圧縮器は2つの流れを受け入れており、1つはP-FLGを含むもの、もう1つはCO2を含む合成ガスSG(SYN-1)を含むものである。両方の流れの合計が、DMCが生成されるFEEGを構成する。
4.FEEGは、圧縮機COM内で圧縮され、熱交換器HE-2で予熱された後、C1触媒または一緒に混合されたC1およびC3を使用してMeOH中でFEEGの一部を変換するために、270°C未満の温度および約60バールの圧力で作動する反応器R-1内のゾーンAを通過する。次いで、未変換FEEGおよびMeOHを熱交換器HE-3内で約160°Cに冷却して、反応器R-2内のゾーンBに渡し、そこでC2およびC3触媒を使用してDMCの合成が起こる。圧力条件も約60バールである。MeOHは、このプロセスにおける副生成物である。
5.FEEGは、DMCおよび副生成物としてしてのメタノールに変換されると、冷却してまずDMCを凝縮するために熱交換器HE-4を通過する。凝縮後のDMCは最終生成物DMCタンクに落下し、そこから未変換SG、CO2副生成物およびメタノールを含む煙道ガス(FLG)がDMCから分離され、流れをさらに冷却してMeOHをFLGから分離し、それをMeOHタンク内で凝縮するために熱交換器HE-5を通過する。したがって、液体形態のMeOHは、この第2のタンクに落下し、そこからV 10が閉じた状態でV9を通ってHE-3に戻り、ポンプPによってDMC反応器R 2に入る。FLGは、市販の膜または圧力スイングユニットによるN2分離プロセスを通過することによってR-FLGになり、次いで圧縮機に流れる。
6.このループ1では、弁V2およびV4は開位置で動作し、V1およびV5は閉位置で動作する(図を参照)。パージ弁(PUV 1、PUV 2)は、CH4および/またはN2などの副生成物が所望のレベルを超えた場合にのみ、閉位置から開位置に変化する。
【0086】
ルートのプロセス説明/ループ2(CO2を含まないSGを使用する)
1.このループ2では、CO2を含まないSGはV2を通ってシステムに入り、圧縮器COMに向かって流れる。
2.FLGは、MeOHタンクから流れ、N2分離器S-N2を通過してR-FLGになり、弁V7を通過してCO2を含まないSG(SYN-2)の流れの進入に合流する。
3.したがって、圧縮器は2つの流れを受け入れており、1つはP-FLGを含むもの、もう1つは(SYN-2)から来るCO2を含まないSGを含むものである。両方の流れの合計が、DMCが生成されるFEEGを構成する。
4.FEEGは、圧縮され、熱交換器HE-2で予熱された後、C1触媒、またはC3触媒と混合されたC1触媒を使用してMeOH中でFEEGの一部を変換するために、250°C未満の温度および約60バールの圧力で作動する反応器R-1内のゾーンAを通過する。その後、未変換FEEGおよびMeOHを熱交換器HE-3内で約160°Cに冷却して、反応器R-2内のゾーンBに渡し、そこでC2およびC3触媒を使用してDMCの合成が起こる。圧力条件も約60バールである。MeOHは、このプロセスにおける少量の副生成物である。
5.FEEGは、DMCおよび副生成物としてしてのメタノールに変換されると、冷却してまずDMCを凝縮するために熱交換器HE-4を通過する。凝縮後のDMCは最終生成物タンク、つまりDMCタンクに落下し、そこからFLGがDMCから分離され、さらに流れを冷却してMeOHをFLGの残りから分離し、それをMeOHタンク内で凝縮するために熱交換器HE-5を通過する。したがって、液体形態のMeOHはこの第2のタンクに落下し、そこからV10が閉じた状態でV9を通ってHE-3に戻り、ポンプPによってDMC反応器R-2に入る。FLGは圧縮機COMに直接渡る。
6.このループ2では、弁V2、V5およびV4は閉位置で動作し、V1は開位置で動作する。パージ弁PUV 1、PUV 2は、CH4および/またはN2などの副生成物が所望のレベルを超えた場合にのみ、閉位置から開位置に変化する。
【0087】
ルートのプロセス説明/ループ3(MeOHおよびCOを使用、さらにプロセスの始動でのみCO2を使用)
1.外部供給源から来るMeOHおよびCOは、両方とも弁V5を通って圧縮機COMに入る。
2.N2分離器S-N2ユニット後のFLGは、リサイクル可能な煙道ガスR-FLGになり、V7を通過してさらに圧縮機COMに入る。
3.したがって、圧縮機は2つの流れを受け入れ、1つはR-FLGを含み、もう1つはCOと共にMeOHを含む。両方の流れの合計が、DMCが生成されるFEEGを構成する。
4.FEEGは、圧縮されて熱交換器HE-2で約160°Cに予熱された後、ゾーンAおよびBを通過し、ここでゾーンAはゾーンBの延長として動作し、熱交換器HE-3は熱交換器としてではなく、ゾーンAとBとの間の単なる連通として動作する。この構成は、C2およびC3触媒を使用してDMC内のFEEGの最初の通過部分で変換するために、約60バールの圧力で動作する。MeOHおよびCO2は、このプロセスにおける少量の副生成物である。
5.FEEGは、副生成物としてMeOHおよびCO2を含むDMCに変換されると、冷却してまずDMCを凝縮するために熱交換器HE-4を通過する。凝縮後のDMCは最終生成物タンク、すなわちDMCタンクに落下し、そこからFLGがDMCから分離され、流れをさらに冷却してMeOHを凝縮し、それをMeOH用の第2タンク内でFLGの残りから分離するために熱交換器を通過する。したがって、液体形態のMeOHはこのMeOHタンクに落下し、そこからV9が閉じた状態でV10を通ってHE-2に戻り、ポンプPによってMeOH反応器R-2に入る。FLGは圧縮機COMに直接渡る。
6.このループ3では、弁V1、V2およびV4は閉位置で動作し、V7およびV5は開位置で動作する。パージ弁PUV 1、PUV 2は、CH4および/またはN2などの副生成物が所望のレベルを超えた場合にのみ、閉位置から開位置に変化する。
【0088】
本明細書に提示されるDMC合成を実施するためのより好ましい実施形態は、独立してまたはこれらのルートのいずれかの組合せで動作し得る、上記の3つのルートを含む。好ましく使用されるルートは、システムに供給するために外部から来るガスの種類および量によって決まる。
【0089】
FEEGがCO2を含むSGおよびP-FLGを含む第1のルート(ループ1)では、CO2を含むSGは、弁4を通って外部供給源から来る。この煙道ガスFLGに含まれる少量のN2は、市販の膜または圧力スイングユニットによって分離され、リサイクル可能な煙道ガスR-FLGとなる。リサイクル可能な煙道ガスR-FLGからのCO2およびCH4を、副生成物としていくらかのO2を含む合成ガス(CO+H2)に変換するために水蒸気改質反応器SRR(クラッキングユニット)にR-FLGを通過させることによって、少量のCH4含有量が低いレベルに維持される。さらに、このクラッキングユニットを通過した後、流れは熱交換器内で冷却され、次いで、市販の膜または圧力スイングユニットを通過して、クラッキングプロセスから残った生成されたO2を分離し、次いで、R-FLGは、合成ガスから構成されるP-FLGになり、CO2を含むSGを含む供給ガス流に合流する。MeOH副生成物は、MeOHタンクからDMC反応器に、好ましくはゾーンAの後およびゾーンBの前にポンプで圧送される。
【0090】
ループ1では、N2分離後にN2量のレベルが依然として所望よりも多い場合、パージ/ベントが必要であり、リサイクル可能な煙道ガスR-FLGの一部はパージ弁2 PV2(図を参照)を通過し、V7が閉じている間に弁V4を通過することによってそのループを継続する。
【0091】
CO2を含まないSGがシステムに供給される第2のルート(ループ2)では、N2および/またはCH4などのFLGのあらゆる混入物は、パージ弁1 PV1によってシステムをパージ/ベントすることによって低レベルに維持される。次に、リサイクル可能な煙道ガスR-FLGは、V4が閉じられている間に弁V7を通過し(図を参照)、CO2およびCH4を含まないSGに合流してから圧縮機COMに入り、DMC反応器を通過する。MeOH副生成物は、MeOHタンクから、V10が閉じた状態でV9を通ってHE-3にポンプ圧送され、DMC反応器に入る。
【0092】
FEEG成分がリサイクル可能な煙道ガスR-FLG、MeOHおよびCOである第3のルート(ループ3)では、R-FLGはN2およびCH4を含まず、FLGでのあらゆる分離を必要とせずにシステム(装置)に供給し、DMCを生成することができる。始動のために、このループでは、プロセスを始動するために外部からのCO2が必要とされる。MeOH副生成物はこのMeOHタンクから、V9が閉じた状態でV10を通ってHE-2にポンプ圧送され、ポンプPによってMeOH反応器1 R-1に入る。FLGは圧縮機COMに直接渡る。
【0093】
ループ3では、システム(装置)内に任意のレベルの量でN2が浸透し、このN2のレベルが所望を超えた場合、FLGの一部をパージ弁1 V1(図を参照)に通過させることによってパージすることが必要であり、その後FLGは、V4が閉じた状態で弁V7を通過することによってループ3を継続する。あるいは、N2レベルが高い場合、N2分離器S-N2を作動させることによってN2レベルを下げることができる。
【0094】
本発明の装置および方法のさらなる実施形態では、3つのHECATSを使用してDMCを製造するための、唯一ではないが好ましいタイプの反応器は、シェルによって覆われた1つ以上のチューブの内側に触媒が配置されるシェルチューブ反応器であり、これらのチューブは、反応器の温度を調節するために循環熱伝達媒体によって囲まれている。1つ以上の反応器を並列にまたは順番に配置することができ、各々が、HECATSを収容する、循環熱伝達媒体によって囲まれたチューブのための少なくとも1つの熱交換器システムを有することが好ましい。各反応器は、3つのHECATSのうちの1つ以上を収容するための少なくとも1つのゾーンを有する。HECATSを順番に配置する場合、ゾーンAに1つ、ゾーンBにもう1つ、およびゾーン間に3つ目の少なくとも3つの熱交換器が、必要とされる温度とは異なる温度への反応性能の曝露を回避するために好ましい。各反応器は、少なくとも1つの熱交換器を、HECATSを収容する循環熱伝達媒体によって囲まれたチューブのために、および少なくとも1つを排出口に有し、3つのHECATSのうちの1つ以上を収容するための少なくとも1つのゾーンを有することが好ましい。HECATSを順番に配置する場合、各ゾーンに対して少なくとも2つの熱交換器が好ましく、1つはHECATSを収容する、循環熱伝達媒体によって囲まれたチューブ用に、少なくとももう1つは排出口に配置する。また、場合により、ゾーン間に少なくとも1つの熱交換器が必要である。
【0095】
反応器内にHECATSを配置する様式は、混合方法または順番である。各反応器は、3つのHECATS触媒のうちの1つ以上を配置するための少なくとも1つのゾーンを有する。すべてのゾーンおよび反応器間は、自由に連通している。各ゾーンは、最適な温度で動作するために独立した熱交換器を有し、MeOHを供給するための少なくとも1つの第2の注入口を有することが好ましい。
【0096】
したがって、プロセスを実施してDMCを製造するための少なくとも1つ以上の反応器は、すべてのゾーンにおいて15~60バールのほぼ同一の低圧を維持すべきであり、すべての反応器は、そのゾーンのそれぞれについて特定の温度を調整する方法を有する。HECATSが順番に配置される場合:a)ゾーンAではC1が配置され、反応器が175~270°Cの好ましい温度範囲で作動して、MeOHを主に生成するように設計され、b)ゾーンBではC2がC3と混合されて配置され、反応器が110~175°Cの好ましい温度範囲で作動して、H2Oを含まないDMCを生成するための超低WGSRを引き起こすように設計されている。
【0097】
ほとんどの反応器でのWGSRは、通常230°C超で発生する。160°C未満の超低温でWGSRを促進する触媒の開発は、ほとんど行われていない。その理由は、この反応タイプを必要とするのは、主にMeOHおよびH2の製造に関心がある産業であり、プロセスに超低WGSR温度を必要としないためである。C3について定義される本明細書の好ましい触媒は、約110~175°Cの範囲で超低WGSRを促進するために良好かつ迅速に作用することが示されており、これは、C2がR2反応を促進するために必要とするのと同じ温度範囲である。産業的に、DMCを製造するために脱水剤に代えてそれが使用されたことはない。DMCの製造における合成ガスの使用も検討されていない。
【0098】
したがって、上記の本発明は、有機合成、特に廃棄物中に閉じ込められたCO2を取り出し、それを再利用して有用な化学物質を構築するための使用に適用することができる。有機金属化学および触媒作用における最近の進歩は、CO2の化学的変換および穏やかな条件下での合成有機分子へのその組み込みに有効な手段を提供する。有機合成における再生可能な一炭素ビルディングブロックとしてのCO2は、資源のより持続可能な使用に寄与し得る。本発明の方法は、これらのビルディングブロックに適した方法を提供する。
【0099】
本発明は、DMCを製造するためのHECATSの特定の組み合わせを用いてDMC合成を実施するための装置、言及したHECATSを装置内に配置する手順、その合成のための装置、および誘導されたFLGを装置において原料として使用するための可能なルート、および本明細書で前述した本発明の方法を含む。
【外国語明細書】