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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091827
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】CVDコーティングされた切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/14 20060101AFI20220614BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B23B27/14 A
C23C16/40
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022041029
(22)【出願日】2022-03-16
(62)【分割の表示】P 2018568820の分割
【原出願日】2017-06-20
(31)【優先権主張番号】16176939.3
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】エングクビスト, ヤーン
(72)【発明者】
【氏名】リンダール, エリック
(57)【要約】      (修正有)
【課題】切削刃の塑性変形時の剥離に対する向上した耐性と組み合わせた、向上したクレータ磨耗耐性を、切削工具に与える。
【解決手段】本発明は、基材と、1つまたは複数の層を含むコーティングとを含むコーティングされた切削工具に関する。該コーティングは、化学蒸着(CVD)により堆積された、1~20μmの厚さのα-Al層を含み、前記α-Al層はX線回折パターンを示し、テクスチャ係数TC(hkl)はハリスの式により定められ、1<TC(0 2 4)<4および3<TC(0 0 12)<6である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とコーティングとを含むコーティングされた切削工具であって、コーティングが、化学蒸着(CVD)により堆積された、1~20μmの厚さを有する少なくとも1つのα-Al層を含み、前記α-Al層がX線回折パターンを示し、テクスチャ係数TC(h k l)がハリスの式
[式中、用いられる(h k l)反射が、(1 0 4)、(1 1 0)、(1 1 3)、(0 2 4)、(1 1 6)、(2 1 4)、(3 0 0)および(0 0 12)であり、
I(h k l)=前記(h k l)反射の測定された強度であり、
I0(h k l)=ICDDのPDFカードNo.00-10-0173による標準強度であり、
n=8である]
により定められる、コーティングされた切削工具において、
1<TC(0 2 4)<4および3<TC(0 0 12)<6であることを特徴とする、コーティングされた切削工具。
【請求項2】
前記α-Al層が1<TC(0 2 4)<3及び3.5<TC(0 0 12)<5.5を示す、請求項1に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項3】
前記α-Al層が1.5<TC(0 2 4)<2.5及び4<TC(0 0 12)<5を示す、請求項1に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項4】
前記α-Al層の3番目に強いTC(h k l)がTC(1 1 0)である、請求項1から3のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項5】
前記α-Al層が、コーティングの外面に平行なα-Al層の部分においてEBSDにより測定される{0 0 1}極点図を示し、コーティングの外面の法線から0°≦β≦90°の傾斜角範囲に亘る0.25°のビンサイズを有する、極点図のデータに基づくポールプロットが、≧40%の、0°≦β≦90°の範囲内の強度に対するβ≦15°の傾斜角の範囲内の強度の比率を示し、
前記α-Al層が、コーティングの外面に平行なα-Al層の部分においてEBSDにより測定される{0 1 2}極点図を示し、コーティングの外面の法線から0°≦β≦90°の傾斜角範囲に亘る0.25°のビンサイズを有する、極点図のデータに基づくポールプロットが、≧40%の、0°≦β≦90°の範囲内の強度に対するβ≦15°の傾斜角の範囲内の強度の比率を示す、請求項1から4のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項6】
{0 0 1}極点図及び{0 1 2}極点図がα-Al層の同一部分からのものである、請求項5に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項7】
前記α-Al層が柱状粒子を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項8】
α-Al層が柱状α-Al層粒子を含み、前記柱状粒子の平均幅が、前記α-Al層の中央で基材の表面に平行な線に沿って測定される0.5~2μmである、請求項1から7のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項9】
α-Al層の平均厚さが2~10μmである、請求項1から8のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項10】
コーティングが、TiN、TiCN、TiC、TiCO、TiCNOのうちの1つ又は複数の層をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項11】
コーティングが、基材の表面からTiN、TiCN、TiCNO、およびα-Alの順序で層を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項12】
コーティングが最外磨耗表示カラー層をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項13】
基材が、基材表面からかつ本体内へ約15~35μmの深さまでの表面区域を有する、超硬合金からなり、前記表面区域は、バインダー相が富化されており、立方晶炭化物を実質的に含まない、請求項1から12のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項14】
基材が、6~12wt%、好ましくは8~11wt%のCo含有量を有する超硬合金からなる、請求項1から13のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項15】
切削工具が切削インサートであり、前記切削インサートの内接円が≧15mmの直径を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材とコーティングとを含むCVDコーティングされた切削工具に関し、該コーティングは少なくとも1つのα-Al層を含む。
【背景技術】
【0002】
金属機械加工用の切削工具の技術領域では、CVDコーティングの使用は、工具の耐摩耗性を高める周知の方法である。一般的に用いられているCVDコーティングは、TiN、TiC、TiCNおよびAlなどのセラミックコーティングである。
【0003】
Alコーティングの耐磨耗性の知識は何年間もの間に増大しており、様々なAlコーティングの特性がいくつかの開示において詳細に研究されてきた。
【0004】
米国特許出願公開第2007/0104945(A1)号が、〈0 0 1〉に沿った強いテクスチャを示すα-Alコーティングを含む切削工具を開示している。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、旋削、フライス加工、および/またはドリル穿孔において向上した切削特性を示すα-Al層を有するコーティングされた切削工具を提供することである。さらなる目的が、切削刃の塑性変形時の剥離に対する向上した耐性と組み合わせた、向上したクレータ磨耗耐性を、切削工具に与えることである。
【0006】
前述の目的の少なくとも1つが、請求項1に記載のコーティングされた切削工具により達成される。好適な実施形態が従属請求項に開示されている。
【0007】
本発明は、基材とコーティングとを含むコーティングされた切削工具に関し、前記コーティングは1つまたは複数の層を含み、前記コーティングは、化学蒸着(CVD:chemical vapour deposition)により堆積された、1~20μmの厚さの少なくとも1つのα-Al層を含み、前記α-Al層は、CuKα放射ならびにθ-2θスキャンを使用して測定されるX線回折(XRD:X-ray diffraction)パターンを示し、テクスチャ係数TC(texture coefficient)(h k l)はハリスの式(Harris formula)
により定められており、用いられている(h k l)反射は、(1 0 4)、(1 1 0)、(1 1 3)、(0 2 4)、(1 1 6)、(2 1 4)、(3 0 0)および(0 0 12)であり、I(h k l)=(h k l)反射の測定された強度(積分ピーク面積)、I0(h k l)=ICDDのPDFカードNo.00-10-0173による標準強度、n=計算に使用される反射数(この場合8つの反射)、1<TC(0 2 4)<4および3<TC(0 0 12)<6である。
【0008】
基材は、超硬合金、陶性合金、セラミック、またはcBNなどの超硬質材料で作成されている。
【0009】
α-Al層は、通常、熱化学蒸着(thermal CVD)により堆積される。あるいは、他のCVD蒸着過程が使用され得る。以下に開示されている、コーティングの任意のさらなる層もまたその例に漏れない。
【0010】
α-Al層は結晶粒を含み、以下、基材表面と平行な(0 0 1)面を含むα-Al層の粒子は(0 0 1)配向粒子(oriented grain)と呼ばれる。対応する方法では、基材表面と平行な(0 1 2)面を含むα-Al層の粒子が、(0 1 2)配向粒子と呼ばれる。
【0011】
本発明のコーティングされた切削工具は、新規の改良されたα-Al層を含み、該層は、(0 0 1)配向粒子と(0 1 2)配向粒子との混合物を含む。層は、意外にも、高いクレータ磨耗耐性および切削刃の塑性変形に因る剥離に対する耐性の両方の組合せにより、切削性能の向上をもたらすことを示している。耐磨耗性特性のこの組合せは、例えば鉄鋼のきつい旋削などの過酷な旋削作業において使用される切削工具に非常に有用であることを示している。切削中に発生する熱が超硬合金のバインダー相を弱化するのに十分に高い場合、切削刃が切削中の切削刃にかかる荷重により変形するように、切削刃の塑性変形が起こり得る。コーティングはセラミックでありかつそれ程延性がある訳ではないので、切削刃の変形がコーティングを非常に必要としている。コーティングは、次いで、通常、割れを生じ、その後、基材から剥離する。本発明のα-Al層は、クレータ磨耗に対する、保持されている高い耐性と相まって、この磨耗メカニズムに対してより高い耐性をもたらす。
【0012】
本発明のα-Al層は、(0 0 1)配向粒子と(0 1 2)配向粒子との特定の組合せを含む。(0 0 1)配向粒子は高いクレータ磨耗耐性の一因となり、(0 1 2)配向粒子は切削刃の塑性変形時のコーティングの割れおよび剥離に対する高い耐性の一因となると解釈される。
【0013】
好適なテクスチャを表現する手段が、各試料において測定されるXRD反射の定められたセットに基づいて、ハリスの式(上記の式(1))を用いて計算されるテクスチャ係数TC(h k l)を計算することである。XRD反射の強度は、材料の粉末状態などの、ランダム配向を有するが同一の材料、すなわちα-Al、のXRD反射の強度を示すJCPDFカードを使用して標準化される。結晶性物質の層のテクスチャ係数TC(h k l)>1が、結晶性物質の粒子がランダム分布の場合より高頻度で、基材表面に平行なこれらの(h k l)結晶面に関して配向されることを示す。テクスチャ係数TC(0 0 12)は、本明細書において、基材表面に平行な(0 0 1)面に関する好適な結晶成長を示すために使用されている。(0 0 1)結晶面は、α-Al結晶系において、(0 0 6)結晶面および(0 0 l2)結晶面に平行である。対応する方法では、(0 1 2)結晶面は、α-Al結晶系において、(0 2 4)結晶面に平行である。
【0014】
本発明の一実施形態では、前記α-Al層は1<TC(0 2 4)<3および3.5<TC(0 0 12)<5.5を示す。一実施形態では、前記α-Al層は1.5<TC(0 2 4)<2.5および4<TC(0 0 12)<5を示す。
【0015】
本発明の一実施形態では、前記α-Al層の第3の最強TC(h k l)はTC(1 1 0)である。本発明の一実施形態では、前記α-Al層のTC(0 0 12)およびTC(0 2 4)の合計は≧6.5である。
【0016】
本発明の一実施形態では、α-Al層は、コーティングの外面に平行なα-Al層の部分においてEBSDにより測定される{0 0 1}極点図を示し、コーティングの外面の法線から0°≦β≦90°の傾斜角範囲に亘る0.25°のビンサイズを有する、極点図のデータに基づくポールプロットが≧40%、好ましくは≧50%、より好ましくは≧60%および≦80%の、0°≦β≦90°の範囲内の強度に対するβ≦15°の傾斜角の範囲内の強度比率を示し、前記α-Al層は、コーティングの外面に平行なα-Al層の部分においてEBSDにより測定される{0 1 2}極点図を示し、コーティングの外面の法線から0°≦β≦90°の傾斜角範囲に亘る0.25°のビンサイズを有する、極点図のデータに基づくポールプロットが、≧40%、好ましくは≧50%、または≧40%および≦60%の、0°≦β≦90°の範囲内の強度に対するβ≦15°の傾斜角の範囲内の強度の比率を示す。{0 0 1}極点図および{0 1 2}極点図はα-Al層の同一部分からのものであることが好ましい。α-Al層の該部分はα-Al層の最内部分から≧1μmに配置されていることが好ましい。α-Al層の該最内部分は、通常、ボンディング層(bonding layer)とα-Al層との間の界面である。
【0017】
本発明の一実施形態では、α-Al層は柱状粒子を含み、α-Al層は柱状層であることが好ましい。α-Al層は、α-Al層の全厚の至る所に存在する、{0 0 1}配向および{0 1 2}配向の柱状粒子それぞれを含むことが好ましい。
【0018】
本発明の一実施形態では、α-Al層は柱状α-Al層粒子を含み、前記柱状粒子の平均幅は、基材の表面に平行な線に沿って前記α-Al層の中央で測定される、0.5~2μmである。
【0019】
本発明の一実施形態では、α-Al層の平均厚さは2~10μmまたは3~7μmである。
【0020】
本発明の一実施形態では、コーティングはTiN、TiCN、TiC、TiCO、TiCNOの内の1つまたは複数の層をさらに含む。
【0021】
本発明の一実施形態では、コーティングは基材の表面から次の順序でTiN、TiCN、TiCNO、およびα-Alの層を含む。
【0022】
本発明の一実施形態では、コーティングは最外磨耗表示カラー層(outermost wear indication clor layer)、例えばTiN、を含む。
【0023】
本発明の一実施形態では、基材は、基材表面から本体内へ約15~35μmの深さまでの表面区域を有して、超硬合金からなり、前記表面区域はバインダー相が富化されており、立方晶炭化物を実質的に含まない。この表面区域、またはいわゆる勾配区域(gradient zone)は、これが切削刃に、切削刃が破損しないようにする靱性をもたらすという点において有利である。本発明の層のこの勾配区域との組合せは、勾配区域が切削刃の塑性変形に因る剥離のリスクを高めるので有利であり、該層の利点が、これが切削刃の塑性変形時に剥離に耐え得ることである。
【0024】
本発明の一実施形態では、基材は、6~12wt%、好ましくは8~11wt%のCo含有量を有する超硬合金からなる。これらのCo含有量は比較的高いと考えられ、これらのより高いレベルは、切削刃の塑性変形に因る剥離のリスクの増大を暗示する。本発明の層は剥離することなくいくらかの塑性変形に耐え得るので、より高いCo含有量と組み合わせることが可能である。
【0025】
本発明の一実施形態では、切削工具は切削インサートであり、前記切削インサートの内接円が≧15mmの直径を有する。内接円が、平面図形の内側に描かれ得る可能な限り最大の円であり、この場合、例えば、該形は、この傾斜面から見ると、インサートであり得る。これらの比較的大きいインサートでは、切削刃の塑性変形に因る剥離に対する耐性はさらにより重要であり、本発明の層は、高いクレータ磨耗耐性と組み合わさって、必要な耐性を実現し得る。
【0026】
本発明のさらに他の目的および特徴が、添付図面と組み合わせて考えられている以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0027】
方法
XRD検査
層のテクスチャを調査するために、X線回折を、PIXcel検出器が備え付けられているパナリティカル(PANalytical)のCubiX3回折計を使用して、逃げ面上で行った。コーティングされた切削工具を試料ホルダ内に取り付けて、試料の逃げ面が試料ホルダの基準面に平行であること、およびまた、逃げ面が適切な高さにあることを確実にした。Cu-Kα放射を、45kVの電圧および40mAの電流で測定に使用した。1/2度の散乱除去スリットおよび1/4度の発散スリットを使用した。コーティングされた切削工具からの回折強度を、20°から140°までの2θの範囲内で、すなわち10°から70°までの入射角θ範囲に亘って、測定した。
【0028】
データのバックグラウンド除去、Cu-Kα2ストリッピング、およびプロファイルフィッティングを含むデータ分析を、パナリティカルのX’Pert HighScore Plusソフトウェアを用いて行った。このプログラムからの出力(プロファイルフィッティングされた曲線に関する積分ピーク面積)を、次いで、測定された強度データの比率を、(α-Al層などの)特定の層のPDFカードによる標準強度データと比較することにより、前段で開示されているハリスの式(1)を用いて、層のテクスチャ係数を計算するのに使用した。該層は有限厚膜だったので、異なる2θ角度での一対のピークの相対強度は、層を通る経路長の差異に因り、それらが塊状試料に関する場合と異なる。したがって、TC値の計算時、層の線吸収係数もまた考慮して、薄膜修正(thin film correction)を、プロファイルフィッティングされた曲線のための抽出された積分ピーク面積強度に適用した。例えばα-Al層の上側の可能性のあるさらなる層が、α-Al層に進入しかつコーティング全体を出るX線強度に影響を及ぼすので、層内の各合成物の線吸収係数を考慮して、同様に、これらに関して修正を行う必要がある。あるいは、アルミナ層の上側の、TiNなどのさらなる層が、XRD測定結果に実質的に影響を及ぼさない方法、例えば化学エッチングにより除去され得る。
【0029】
α-Al層のテクスチャを調査するために、CuKα放射を使用してX線回折を行い、α-Al層の柱状粒子の様々な成長方向に関するテクスチャ係数TC(hkl)を、前段で開示されているハリスの式(1)により計算した。ここで、I(hkl)=(hkl)反射の測定された(積分面積)強度、I0(hkl)=ICDDのPDFカードNo.00-10-0173による標準強度、n=計算に使用される反射数。この場合、使用される(hkl)反射は、(1 0 4)、(1 1 0)、(1 1 3)、(0 2 4)、(1 1 6)、(2 1 4)、(3 0 0)、および(0 0 12)である。測定された積分ピーク面積は薄膜修正され、また、前記比率が計算される前に、α-Al層の上側の(すなわち上部の)任意のさらなる層に関して修正される。
【0030】
ピーク重複が、例えばいくつかの結晶層を含むコーティングのX線回折分析においておこり得る、かつ/または結晶相を含む基材上に堆積される現象であり、このことは当業者により考慮され、補償されなければならないことに留意すべきである。α-Al層からのピークのTiCN層からのピークとのピーク重複が測定に影響を及ぼす可能性があると考えられ、考慮される必要がある。また、例えば基材内のWCが、本発明の関連するピークに近接した回折ピークを有し得ることに留意すべきである。
【0031】
EBSD検査
電子後方散乱回折(EBSD:electron backscatter diffraction)によりもたらされるポールプロットを、本明細書に記載されているように研究した。該EBSD技術は、後方散乱された電子により生成される菊池(Kikuchi-type)回折パターンの自動分析に基づいている。
【0032】
コーティングされたインサートの表面を、20mmのフェルト車を備えたGatan Inc.のディンプルグラインダー656型(Dimple Grinder model 656)を使用してコーティング表面を磨き、20gの重量を付与し、「Master Polish 2」と名付けられたビューラー(Buehler)の研磨懸濁液を使用することにより、電子後方散乱回折(EBSD)特性解析のために準備した。ちょうどα-Al層の十分に大きく滑らかな表面を獲得するまで、研磨を実施した。表面を即座に清浄化して残留研磨懸濁液を除去し、きれいな空気の噴霧で乾燥した。
【0033】
準備された試料を試料ホルダ上に取り付け、走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)内へ挿入した。試料を水平面に対してかつEBSD検出器に向かって70°傾けた。特性解析に使用されるSEMは、60μmの対物口径を使用して、「高(High)電流」モードを適用して、15kvで動作し、かつ可変圧力(VP:variable pressure)モードで0.128TorrのSEM室圧で動作する、Zeiss Supra55VPであった。使用されるEBSD検出器は、オックスフォード・インストゥルメンツ(Oxford Instruments)の「AZtec」ソフトウェア バージョン3.1を使用して動作するオックスフォード・インストゥルメンツのNordlysMax Detectorであった。EBSDのデータ収集を、研磨された表面上へ焦点電子ビームを当て、500×300(X×Y)の測定点に関して0.05μmのステップサイズを用いて、EBSDデータを連続的に獲得することにより行った。データ収集のために「AZtec」ソフトウェアにより使用される基準位相は、「Electrochem. Soc. [JESOAN]、(1950年)、vol.97、299~304頁」であり、「AZtec」ソフトウェアにおいて「Ti2 C N」と呼ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】試料1のXRD回折グラフであり、生データに基づいており、修正が施されておらず、α-Al層の(0 0 6)ピークおよび(0 0 12)ピークは約41.7°および90.7°それぞれで可視であり、(0 1 2)ピークおよび(0 2 4)ピークは約25.6°および52.6°それぞれで可視である、グラフである。
図2】試料1のα-Al層の横断面のSEM画像の図である。
図3図2にブラックボックスで示されている、試料1のα-Al層の領域のEBSD画像の図である。
図4】試料1のα-Al層の横断面のSEM画像の図である。
図5図4にブラックボックスで示されている、試料1のα-Al層の領域のEBSD画像の図である。
図6】0°≦β≦90°の傾斜角範囲に亘る0.25のビンサイズを有する、試料1のEBSD極点図データからの{0 0 1}のポールプロットの図であり、xラベルが角度βおよび0°から90°までの範囲を示し、yラベルが強度を示し、M.U.Dで示されている、図である。
図7】0°≦β≦90°の傾斜角範囲に亘る0.25のビンサイズを有する、試料1のEBSD極点図データからの{0 1 2}のポールプロットの図であり、xラベルが角度βおよび0°から90°までの範囲を示し、yラベルが強度を示し、M.U.Dで示されている、図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0035】
本発明の実施形態が、以下の実施例と関連してより詳細に開示される。該実施例は例示的なものと見なされるべきであり、限定的実施形態と見なされるべきではない。以下の実施例では、コーティングされた切削工具(インサート)を製造し、切削試験において分析し、評価した。
【0036】
実施例1-試料調製
試料1(発明)
立方晶炭化物を実質的に含まず、基材表面からかつ本体内への深さまで約25μmのCoを多く含む表面区域を含む、旋削用のISO型CNMG120408の超硬合金基材を、7.2wt%のCo、2.7wt%のTa、1.8wt%のTi、0.4wt%のNb、0.1wt%のN、および残部WCから製造した。したがって、超硬合金の組成は、約7.2wt%のCo、2.9wt%のTaC、1.9wt%のTiC、0.4wt%のTiN、0.4wt%のNbC、および86.9wt%のWCである。
【0037】
基材を、885℃でTiCl、CHCN、N、HCl、およびHを使用して、周知のMTCVD技術を利用することにより、約0.4μmの薄いTiN層で最初にコーティングし、次に、約7μmのTiCN層でコーティングした。TiCN層のMTCVD堆積の初期部分におけるTiCl/CHCNの体積比は6.6であり、その後、3.7のTiCl/CHCN比を用いる期間が続いた。
【0038】
MTCVDのTiCN層上に、1~2μm厚さのボンディング層を、4つの分離反応ステップからなる過程により、1000℃で堆積させた。最初に、400mbarでTiCl、CH、N、HCl、およびHを使用するHTCVDのTiCNステップ、次に、70mbarでTiCl、CHCN、CO、N、HCl、およびHを使用する第2のステップ(TiCNO-1)、次に、70mbarでTiCl、CHCN、CO、N、およびHを使用する第3のステップ(TiCNO-2)、最後に、70mbarでTiCl、CO、N、およびHを使用する第4のステップ(TiCNO-3)。次のAl核生成の開始前に、ボンディング層を、CO、CO、N、およびHの混合物中で4分間酸化させた。
【0039】
ボンディング層上に、2つのステップにおいて1000℃および55mbarで、α-Al層を堆積させた。1.2vol%のAlCl、4.7vol%のCO、1.8vol%のHCl、および残部Hを使用する第1のステップが、約0.1μmのα-Alをもたらし、2.2vol%のAlCl、4.4vol%のCO、5.5vol%のHCl、0.33vol%のHS、および残部Hを使用する第2のステップが、約4μmの完全なAl層厚さをもたらす。
【0040】
試料2(基準)
旋削用のISO型CNMG120408の超硬合金基材を、7.5wt%のCo、2.7wt%のTa、1.8wt%のTi、0.4wt%のNb、0.1wt%のN、および残部WCから製造した。該基材は、立方晶炭化物を実質的に含まない、基材表面からかつ本体内への深さまで約25μmのCoを多く含む表面区域を含む。
【0041】
基材を、885℃でTiCl、CHCN、N、HCl、およびHを使用して、周知のMTCVD技術を利用することにより、約0.4μmの薄いTiN層で最初にコーティングし、次に、約7μmのTiCN層でコーティングした。TiCN層のMTCVD堆積のTiCl/CHCNの体積比は2.2であった。
【0042】
MTCVDのTiCN層上に、1~2μm厚さのボンディング層を、2つの分離反応ステップからなる過程により、1000℃で堆積させた。最初に、55mbarでTiCl、CH、N、およびHを使用するHTCVDのTiCNステップ、次に、55mbarでTiCl、CO、およびHを使用する第2のステップ、それによりボンディング層を作り出す。α-Al核生成の開始前に、ボンディング層を、CO、HCl、およびHの混合物中で2分間酸化させた。
【0043】
その後、3つのステップにおいて1000℃および55mbarで、α-Al層を堆積させた。2.3vol%のAlCl、4.6vol%のCO、1.7vol%のHCl、および残部Hを使用する第1のステップが、約0.1μmのα-Alをもたらし、2.2vol%のAlCl、4.4vol%のCO、5.5vol%のHCl、0.33vol%のHS、および残部Hを使用する第2のステップ、ならびその後の2.2vol%のAlCl、8.8vol%のCO、5.5vol%のHCl、0.55vol%のHS、および残部Hを使用する第3のステップが、約5μmの完全なα-Al層厚さをもたらす。
【0044】
また、コーティングは約1μm厚さのTiNの最外層を含む。
【0045】
試料3(基準)
旋削用のISO型CNMG120408の超硬合金基材を、7.2wt%のCo、2.7wt%のTa、1.8wt%のTi、0.4wt%のNb、0.1wt%のN、および残部WCの組成で製造した。該基材は、立方晶炭化物を実質的に含まない、基材表面から本体内への深さまで約25μmのCoを多く含む表面区域を含む。
【0046】
基材を、885℃でTiCl、CHCN、N、HCl、およびHを使用して、周知のMTCVD技術を利用することにより、約0.4μmの薄いTiN層で最初にコーティングし、次に、約7μmのTiCN層でコーティングした。TiCN層のMTCVD堆積の初期部分におけるTiCl/CHCNの体積比は3.7であり、その後、2.2のTiCl/CHCN比を用いる期間が続いた。
【0047】
MTCVDのTiCN層上に、1~2μm厚さのボンディング層を、4つの分離反応ステップからなる過程により、1000℃で堆積させた。最初に、400mbarでTiCl、CH、N、HCl、およびHを使用するHTCVDのTiCNステップ、次に、70mbarでTiCl、CHCN、CO、N、HCl、およびHを使用する第2のステップ(TiCNO-1)、次に、70mbarでTiCl、CHCN、CO、N、およびHを使用する第3のステップ(TiCNO-2)、最後に、70mbarでTiCl、CO、N、およびHを使用する第4のステップ(TiCNO-3)。次のAl核生成の開始前に、ボンディング層を、CO、CO、N、およびHの混合物中で4分間酸化させた。
【0048】
その後、2つのステップにおいて1000℃および55mbarで、α-Al層を堆積させた。1.2vol%のAlCl、4.7vol%のCO、1.8vol%のHCl、および残部Hを使用する第1のステップが、約0.1μmのα-Alをもたらし、1.2vol%のAlCl、4.7vol%のCO、2.9vol%のHCl、0.58vol%のHS、および残部Hを使用する第2のステップが、約5μmの完全なα-Al層厚さをもたらす。
【0049】
また、コーティングは約1μm厚さのTiNの最外層を含む。
【0050】
1000xの倍率で各コーティングの横断面を研究することにより、光光学顕微鏡(light optical microscope)内で層厚さを分析し、ボンディング層および初期TiN層はどちらも、表1に与えられているTiCN層厚さ内に含まれる。
【0051】
前段で開示されているXRD法で、テクスチャ係数を研究した。結果は表2に示されている。
【0052】
柱状α-Al粒子の幅を研究し、試料1の平均幅は約1μmであった。
【0053】
コーティングの外面に平行なα-Al層の部分において、EBSDにより、極点図を測定した。
【0054】
オックスフォード・インストゥルメンツの「HKL Tango」ソフトウェア バージョン5.12.60.0(64ビット)およびオックスフォード・インストゥルメンツの「HKL Mambo」ソフトウェア バージョン5.12.60.0(64ビット)を使用して、獲得されるEBSDデータの結晶方位データ抽出を行った。正積図法および上半球図法を用いる極点図を、「HKL Mambo」ソフトウェアを使用して、獲得されたEBSDデータから読み出した。読み出された極点図は、{0 0 1}極点および{0 1 2}極点の両方に関するものであり、Z方向がコーティングの外面に対して垂直である。{0 0 1}極点および{0 1 2}極点の両方に関する極点図を、同じEBSDデータから、これによりα-Al層の同一部分由来のデータから、生成する。{0 0 1}極点図および{0 1 2}極点図の両方のポールプロットを、ポールプロットにおけるビンサイズに関してかつβ=0°からβ≦90°までの角度測定範囲βに関して0.25°のクラス幅を使用して、抽出した。β=0°からβ≦15°までに及ぶポールプロットにおける強度を、β=0°からβ≦90°までに及ぶポールプロットにおける全強度に関連付けた。試料1の{0 0 1}および{0 1 2}のポールプロットは図6および図7それぞれに示されている。ポールプロット{0 0 1}の場合の測定0°~90°における0°~15°の関連強度は約66%であり、ポールプロット{0 1 2}の場合の測定0°~90°における0°~15°の関連強度は約52%であった。
【0055】
切削磨耗試験の前に、水中にあるアルミナスラリを使用するウェットブラスト機器内で、インサートを傾斜面上でブラストし、切削インサートの傾斜面とブラスタ(blaster)のスラリの方向との間の角度は約90°であった。アルミナ粒度はF220であり、銃に対するスラリ圧は1.8barであり、銃に対する空気圧は2.2barであり、面積単位当たりのブラストの平均時間は4.4秒であり、銃ノズルからインサートの表面までの距離は約145mmであった。ブラストの目標は、コーティング内の残留応力および表面粗さに影響を及ぼすことであり、それにより次の旋削試験におけるインサートの特性を向上させる。
【0056】
実施例2-クレータ磨耗試験
コーティングされた切削工具、すなわち試料1、2および3を、以下の切削データを使用して、軸受鋼(Ovako 825B)内での長手方向旋削において試験した;
切削速度v:220m/分
切削送りf:0.3mm/回転
切削深さa:2mm
インサート型:CNMG120408-PM
水混和性金属加工流体を使用した。
切削工具当たり1つの切削刃を評価した。
【0057】
クレータ磨耗の分析において、光光学顕微鏡を使用して、露出した基材の面積を測定した。露出した基材の表面積が0.2mmを超過した場合、工具の寿命に至ったと見なした。各切削工具の磨耗を、光光学顕微鏡内で、2分の切削後に評価した。次いで、工具寿命基準に達するまで、各2分の作動後に測定しながら、切削過程を継続した。クレータ面積のサイズが0.2mmを超過した場合、2つの最後の測定間の想定される一定の磨耗速度に基づいて、工具寿命基準が満たされるまでの時間を評価した。クレータ磨耗に加えて、側面磨耗もまた観察したが、この試験では、工具寿命に影響を及ぼさなかった。2つの平行試験の結果平均は表3に示されている。
【0058】
実施例3-塑性変形押下げ試験
コーティングされた切削工具、すなわち試料1、2および3を、切削刃の塑性変形時の剥離に対する耐性を評価することを目的とした試験において試験した。
【0059】
低合金鋼(SS2541-03)からなる被加工物材料。この被加工物の長手方向旋削を実施し、2つの異なる切削速度で評価した。
【0060】
以下の切削データを使用した;
切削速度v:105または115m/分
切削深さa:2mm
送りf:0.7mm/回転
切削時間:0.5分
金属加工流体を使用しなかった。
【0061】
2つの切削刃を、各切削速度に関する平行試験において試験した。切削を0.5分間実施し、次いで、切削刃を光光学顕微鏡内で評価した。切削刃の塑性変形に因る剥離を次の通り分類した:0=剥離なし;1=少しの剥離;2=多くの剥離。また、AC=アルミナ層の剥離、GAC=基材に至るまでの剥離、のように、剥離の深さに関して剥離を分類した。表4には、各試験された切削刃に関してAC/GAC値が与えられている。
【0062】
実施例4-熱断続(thermal intermittence)試験
コーティングされた切削工具、すなわち試料1、2および3を、熱割れおよび刃線の欠けに対する耐性を評価することを目的とした試験において、試験した。
【0063】
鉄鋼(SS1672)からなる被加工物材料(四角形の横断面を有する「角材」)。この被加工物の長手方向旋削を実施し、評価した。所定の数の10サイクルを作動させ、その後、各切削刃を光光学顕微鏡内で評価した。3つの平行試験を実施し、この平均を表5に示した。
【0064】
以下の切削データを使用した;
切削速度v:220m/分
切削深さa:3mm
送りf:0.3mm/回転
切削長さ:19mm
金属加工流体を使用しなかった。
【0065】
切削試験から、試料1は、切削刃の塑性変形時の剥離に対する高い耐性と、傾斜面でのクレータ磨耗に対する高い耐性ならびに熱割れおよび刃線欠けに対する高い耐性の両方との組合せにおいて、向上した磨耗性能を示すと結論付けることができる。実施例2および4の切削試験では、試料1(発明)および試料3(基準)は試料2(基準)より性能が優れており、一方、実施例3の切削試験では、試料1および試料2は試料3より性能が優れている。
【0066】
上記の例示的実施形態と関連して本発明を記載したが、本発明は開示されている例示的実施形態に限定されないことを理解すべきであり、それどころか、本発明は添付の特許請求の範囲の範囲内の様々な修正形態および等価の装置を包含することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-04-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とコーティングとを含むコーティングされた切削工具であって、コーティングが、化学蒸着(CVD)により堆積された、1~20μmの厚さを有する少なくとも1つのα-Al層を含み、前記α-Al層がX線回折パターンを示し、テクスチャ係数TC(h k l)がハリスの式
[式中、用いられる(h k l)反射が、(1 0 4)、(1 1 0)、(1 1 3)、(0 2 4)、(1 1 6)、(2 1 4)、(3 0 0)および(0 0 12)であり、
I(h k l)=前記(h k l)反射の測定された強度であり、
I0(h k l)=ICDDのPDFカードNo.00-10-0173による標準強度であり、
n=8である]
により定められる、コーティングされた切削工具において、
1<TC(0 2 4)<4および3<TC(0 0 12)<6であり、
前記α-Al 層の3番目に強いTC(h k l)がTC(1 1 0)であることを特徴とする、コーティングされた切削工具。
【請求項2】
前記α-Al層が1<TC(0 2 4)<3及び3.5<TC(0 0 12)<5.5を示す、請求項1に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項3】
前記α-Al層が1.5<TC(0 2 4)<2.5及び4<TC(0 0 12)<5を示す、請求項1に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項4】
前記α-Al層が、コーティングの外面に平行なα-Al層の部分においてEBSDにより測定される{0 0 1}極点図を示し、コーティングの外面の法線から0°≦β≦90°の傾斜角範囲に亘る0.25°のビンサイズを有する、極点図のデータに基づくポールプロットが、≧40%の、0°≦β≦90°の範囲内の強度に対するβ≦15°の傾斜角の範囲内の強度の比率を示し、
前記α-Al層が、コーティングの外面に平行なα-Al層の部分においてEBSDにより測定される{0 1 2}極点図を示し、コーティングの外面の法線から0°≦β≦90°の傾斜角範囲に亘る0.25°のビンサイズを有する、極点図のデータに基づくポールプロットが、≧40%の、0°≦β≦90°の範囲内の強度に対するβ≦15°の傾斜角の範囲内の強度の比率を示す、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項5】
{0 0 1}極点図及び{0 1 2}極点図がα-Al層の同一部分からのものである、請求項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項6】
前記α-Al層が柱状粒子を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項7】
α-Al層が柱状α-Al層粒子を含み、前記柱状粒子の平均幅が、前記α-Al層の中央で基材の表面に平行な線に沿って測定される0.5~2μmである、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項8】
α-Al層の平均厚さが2~10μmである、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項9】
コーティングが、TiN、TiCN、TiC、TiCO、TiCNOのうちの1つ又は複数の層をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項10】
コーティングが、基材の表面からTiN、TiCN、TiCNO、およびα-Alの順序で層を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項11】
コーティングが最外磨耗表示カラー層をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項12】
基材が、基材表面からかつ本体内へ約15~35μmの深さまでの表面区域を有する、超硬合金からなり、前記表面区域は、バインダー相が富化されており、立方晶炭化物を実質的に含まない、請求項1から11のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項13】
基材が、6~12wt%、好ましくは8~11wt%のCo含有量を有する超硬合金からなる、請求項1から12のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項14】
切削工具が切削インサートであり、前記切削インサートの内接円が≧15mmの直径を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【外国語明細書】