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特開2022-91945ユニバーサル反転原子炉および設計方法並びにユニバーサル反転原子炉の製造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091945
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ユニバーサル反転原子炉および設計方法並びにユニバーサル反転原子炉の製造
(51)【国際特許分類】
   G21C 1/06 20060101AFI20220614BHJP
   G21C 5/00 20060101ALI20220614BHJP
   G21C 5/06 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G21C1/06
G21C5/00 A
G21C5/06
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022062416
(22)【出願日】2022-04-04
(62)【分割の表示】P 2020571664の分割
【原出願日】2019-06-20
(31)【優先権主張番号】62/688,255
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/446,663
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VISUAL BASIC
2.ANSYS
3.SolidWorks
(71)【出願人】
【識別番号】520498642
【氏名又は名称】ビーダブリューエックスティ・ニュークリア・エナジー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BWXT Nuclear Energy, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100210701
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 義則
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・イー・ラッセル・ザ・セカンド
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア・ジェイ・バーグマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ダブリュー・サーティン
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・ディ・グラムリック
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・ビー・インマン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ピー・レバッサー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ケイ・ミラー
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・ゼット・ジーグラー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造並びに品質保証のいずれかを改善する核分裂炉を提供する。
【解決手段】中央の長手方向チャネルがその中にある原子炉空間を包含するシェルを有し、隣接するリングを有する複数の軸方向に延びるリングは、第1の複数の一次軸管が円周方向に配置される環状円筒形空間を規定する。円周方向に隣接する一次軸管は、複数の二次チャネルのうちの1つによって分離され、複数のウェビングは、複数の一次軸管の少なくとも一部を隣接する構造に接続する。核分裂性核燃料組成物は、複数の二次チャネルの少なくともいくつかに配置され、一次冷却材は、一次軸管の少なくともいくつかを通過する。積層造形およびサブトラクティブ製造技術は、燃料を充填した原子炉空間の一体構造および単一構造を生成する。製造中および完成時の原子炉設計は、製造中のその場監視からのデータを統合および解析する計算プラットフォームを使用して解析できる。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核分裂炉であって、
長手方向軸を有する原子炉空間を包含するシェルと、
前記原子炉空間の長手方向軸と同じ位置にある軸を有する中央長手方向チャネルを規定する内径表面を含む軸方向円筒と、
前記原子炉空間内に配置され、前記軸方向円筒に対して同心円状に配置された複数の軸方向に延びるリングであって、前記複数の軸方向に延びるリングは、半径方向に分離されており、任意の2つの隣接する軸方向に延びるリングについて、半径方向内側に隣接するリングと半径方向外側に隣接するリングの両方を形成し、前記半径方向内側に隣接するリングの外径表面および前記半径方向外側に隣接するリングの内径表面は、環状円筒形空間を規定する、複数の軸方向に延びるリングと、
環状円筒形空間内に円周方向に配置された第1の複数の一次軸管であって、各一次軸管は、一次チャネルを形成する内径表面と外径表面とを含む、第1の複数の一次軸管と、
複数のウェビングであって、前記複数の一次軸管のそれぞれの外径表面は、第1のウェビングによって半径方向内側に隣接するリングに接続され、第2のウェビングによって半径方向外側に隣接するリングに接続される、複数のウェビングと、
円筒形空間内の複数の二次チャネルであって、円周方向に隣接する一次軸管は、複数の二次チャネルのうちの1つによって分離される、複数の二次チャネルと、
前記複数の二次チャネルの少なくともいくつかに位置する核分裂性核燃料組成物と、
を備える、核分裂炉。
【請求項2】
前記複数の二次チャネルの少なくともいくつかに位置する核分裂性核燃料組成物は、核分裂炉全体で体積的に同一である核分裂性核燃料要素のセットを形成する、請求項1に記載の核分裂炉。
【請求項3】
前記一次チャネルの半径方向断面の面積と前記二次チャネルの半径方向断面の面積との比は、核分裂炉全体で一定である、請求項1または2に記載の核分裂炉。
【請求項4】
前記二次チャネルの内表面は、円周方向に隣接する一次軸管の外径表面の一部、円周方向に隣接する一次軸管のそれぞれに関連する第1のウェビングおよび第2のウェビングの表面、並びに半径方向内側に隣接するリングの外径表面の一部および半径方向外側に隣接するリングの内径表面の一部を含む、請求項1、2および3のうちいずれか1項に記載の核分裂炉。
【請求項5】
前記核分裂性核燃料組成物は、前記二次チャネルの内表面と熱伝達接触している、請求項4に記載の核分裂炉。
【請求項6】
一次冷却材は、核分裂性核燃料組成物を含む複数の二次チャネルのうちの1つによって分離された円周方向に隣接する一次軸管のそれぞれの一次チャネルを通って流れることができる、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の核分裂炉。
【請求項7】
前記円周方向に隣接する一次軸管は、環状円筒形空間内に非接触的に分布している、請求項1に記載の核分裂炉。
【請求項8】
前記核分裂炉は、最も半径方向内側の軸方向に延びるリングの内径表面と軸方向円筒の外径表面との間に円周方向に配置された第2の複数の一次軸管を含み、前記第2の複数の一次軸管のそれぞれの外径表面は、第1のウェビングによって軸方向円筒の外径表面に接続され、第2のウェビングによって最も半径方向内側の軸方向に延びるリングに接続される、請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載の核分裂炉。
【請求項9】
前記核分裂炉は、シェルの内径表面と最も半径方向外側の軸方向に延びるリングの外径表面との間に円周方向に配置された第3の複数の一次軸管を含み、前記第3の複数の一次軸管のそれぞれの外径表面は、第1のウェビングによって最も半径方向外側に軸方向に延びるリングの外径表面に接続され、第2のウェビングによってシェルの内径表面に接続される、請求項1ないし8のうちいずれか1項に記載の核分裂炉。
【請求項10】
前記シェル、前記軸方向円筒、前記複数の軸方向に延びるリング、前記複数の一次軸管、および前記複数のウェビングが一体の単一構造である、請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の核分裂炉。
【請求項11】
前記シェル、前記軸方向円筒、前記複数の軸方向に延びるリング、前記複数の一次軸管、および前記複数のウェビングは、金属合金から形成されている、請求項1ないし10のうちいずれか1項に記載の核分裂炉。
【請求項12】
前記核分裂炉は、前記シェルの外径表面の周りの反射器を含む、請求項1ないし11のうちいずれか1項に記載の核分裂炉。
【請求項13】
減速材、制御棒、および科学機器のうちの少なくとも1つを含むものは、1つまたは複数の一次チャネルに配置される、請求項1ないし12のうちいずれか1項に記載の核分裂炉。
【請求項14】
前記円筒形空間のそれぞれにおける前記第1の複数の一次軸管は、前記原子炉空間の長手方向軸に対して6回回転対称性を有する、請求項1ないし13のうちいずれか1項に記載の核分裂炉。
【請求項15】
前記軸方向円筒の1つまたは複数の中央長手方向チャネルおよび1つまたは複数の一次軸管の一次チャネルは、前記核分裂炉の外表面からアクセス可能である、請求項1ないし14のうちいずれか1項に記載の核分裂炉。
【請求項16】
前記一次軸管は、原子炉の軸と平行な長手方向軸を有する、請求項1ないし15のうちいずれか1項に記載の核分裂炉。
【請求項17】
前記一次チャネルを形成する一次軸管の内径表面は、前記一次軸管の長手方向軸に対する軸方向位置の関数として変化する、請求項16に記載の核分裂炉。
【請求項18】
前記一次軸管は、チャンバ化されている、請求項1ないし15のうちいずれか1項に記載の核分裂炉。
【請求項19】
前記長手方向軸に垂直な二次チャネルの断面は、1枚の双曲面の断面の形状を有する、請求項1ないし18のうちいずれか1項に記載の核分裂炉。
【請求項20】
核分裂炉を製造する方法であって、
核分裂炉のモデルを準備するために予測解析と因果解析を適用するステップと、
積層造形技術を使用して、層ごとに核分裂炉を製造するステップと、
製造中、マシンビジョンと加速処理を備えた核分裂炉の製造をその場で監視するステップと、
その場監視からのデータを解析するステップと、
解析されたデータに基づいて核分裂炉の製造を調整するステップと、
を含む方法。
【請求項21】
核分裂炉を製造する方法であって、
核分裂炉のモデルを準備するために予測解析と因果解析を適用するステップと、
サブトラクティブ製造技術を使用して、層ごとに核分裂炉を製造するステップと、
製造中、マシンビジョンと加速処理を備えた核分裂炉の製造をその場で監視するステップと、
その場監視からのデータを解析するステップと、
解析されたデータに基づいて核分裂炉の製造を調整するステップと、
を含む方法。
【請求項22】
前記方法は、
製造された核分裂炉のデジタル版を準備するステップと、
前記製造された核分裂炉のデジタル版の解析に基づいて、前記製造された核分裂炉の特性を相関させるステップと、
を含む請求項20または21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2018年6月21日に出願された米国仮特許出願第62/688,255号に対する35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、核分裂炉および核分裂炉内の活性原子炉空間に関連する構造に関する。特に、開示された核分裂炉および原子炉空間は、冷却材の流れのためにチャネル間の空間に装填された核分裂性核燃料を含み、サイズが拡張可能である一方で、原子炉のサイズに関係なく、核分裂性核燃料を有する各場所は、断面積および/または体積が同一のままである。制御棒、制御棒ドライバ、減速材などの支持および補助機器で、サイズも拡張可能である。本開示はまた、特に、燃料負荷原子炉空間のための一体構造および単一構造を生成する積層造形技術によって、そのような原子炉および構造を製造する方法に関連し、そのような原子炉および構造の製造のための予測品質保証を提供する。
【背景技術】
【0003】
以下の説明では、特定の構造および/または方法について言及する。しかしながら、以下の参考文献は、これらの構造および/または方法が先行技術を構成することを認めるものとして解釈されるべきではない。出願人は、そのような構造および/または方法が本発明に対する先行技術として適格ではないことを実証する権利を明示的に留保する。
【0004】
従来の核分裂炉は、ウランベースの燃料などの核分裂可能な核燃料を、丸い管、プレート、または六角形の燃料要素の内部に配置して利用する。これらの燃料要素は、原子炉の炉心の基本要素である燃料集合体に集められ、配置される。従来の燃料集合体10(図1を参照)は、例えば、燃料要素12(燃料14および可燃性毒物を含む)、燃料集合体構造の機械的支持、スペーサグリッド16(構成要素の間隔と燃料要素のガイドを確保する)、および、例えば、制御棒18または炉内計装20などのための非燃料管の複雑な配置である。設計に応じて、原子炉容器は、数十の燃料集合体10(燃料バンドルとしても知られる)を有し得、各集合体10は、200以上の燃料要素12を含み得る。
【0005】
炉心内では、一次冷却材(水など)が燃料集合体10を通っておよび/またはその周りを流れ、核分裂反応の減速材(水型冷却原子炉の場合)および燃料要素内の核分裂反応によって生成される熱のための熱抽出媒体の両方を提供する。加熱された一次冷却材は一次サイクル内を循環し(一次冷却材に曝される、接触する、または曝されるシステムを意味する)、伝統的に熱エネルギを二次システムに伝達し、そこで熱励起流体が生成されてタービンに流れ、タービンは、発電機を回転させるために使用することができる。
【0006】
構造の複雑さは、設計に応じて、チューブ、ポンプ、計装、熱交換器、蒸気発生器など、一次サイクルの様々な構成要素を含む、原子炉内の他のシステムにまで及ぶ。したがって、燃料要素、燃料集合体、炉心、および原子炉システムの建設は全て、厳格な設計および製造基準に加えて、調達、取り扱い、設置、検査および試験に関連するものなど、製造前、製造中、および製造後の広範な管理の対象となる。
【0007】
したがって、これらの複雑な構造、特に、燃料要素および燃料集合体の設計を行うことは、そのような複雑な構造の設計および製造並びに品質保証のいずれかを改善するのに有利であろう。
【発明の概要】
【0008】
一般に、本開示は、一次冷却材、減速材、制御棒、スクラム棒および/または補助装置用の非燃料管の間およびその周囲の炉心内の場所に核分裂性核燃料を配置する核分裂炉に関する。核分裂性核燃料と非燃料管のこの配置は、管内に配置された核分裂性燃料と燃料管の間および周囲を流れる一次冷却材の従来の配置と反対(または逆)である。
【0009】
本明細書に開示される実施形態は、長手方向軸を有する原子炉空間を包含するシェルと、原子炉空間の長手方向軸と同じ位置にある軸を有する中央長手方向チャネルを規定する内径表面を含む軸方向円筒とを備える核分裂炉を含む。複数の軸方向に延びるリングが原子炉空間内に配置され、軸方向円筒に対して同心円状に配置されている。複数の軸方向に延びるリングは、半径方向に分離されて、任意の2つの隣接する軸方向に延びるリングについて、半径方向内側に隣接するリングと半径方向外側に隣接するリングの両方を形成する。半径方向内側に隣接するリングの外径表面および半径方向外側に隣接するリングの内径表面は、環状の円筒形空間を規定する。核分裂炉は、各環状円筒形空間内に円周方向に配置された第1の複数の一次軸管を含む。各一次軸管は、一次チャネルを形成する内径表面と外径表面とを含む。複数のウェビングは、複数の一次軸管の少なくとも一部、あるいは全てを、第1のウェビングによって半径方向内側に隣接するリングに接続され、第2のウェビングによって半径方向外側に隣接するリングに接続される複数の一次軸管のそれぞれの外径表面などの隣接構造に接続する。核分裂炉は、各環状円筒形空間内に複数の二次チャネルを含み、円周方向に隣接する一次軸管は、複数の二次チャネルのうちの1つによって分離されている。核分裂性核燃料組成物は、複数の二次チャネルの少なくともいくつかに位置している。
【0010】
本明細書に開示される実施形態はまた、核分裂炉を製造する方法を含む。この方法の実施形態は、予測解析および因果解析を適用して、核分裂炉のモデルを準備し、機械ビジョンおよび加速データ処理を備えた核分裂炉のその場監視製造の製造中に、積層造形技術を使用して層ごとに核分裂炉を製造し、その場監視からのデータを解析し、リアルタイムで解析されたデータに基づいて核分裂炉の製造を調整する。場合によっては、製造装置、特に、積層造形装置の製造量は限られており、モノリシックに製造された単一の部品の最大サイズに影響を与える(しかしながら、再配置技術は、そのようなモノリシック製造部品のサイズの増加に対応する可能性がある)。したがって、例えば、核分裂炉(または他の構造)のために本明細書に開示される製造方法は、その後の組み立てのためにモノリシックベースまたはセグメントベースで構造を製造するように適合させることができる。
【0011】
この方法の実施形態はまた、製造された核分裂炉のデジタル版を準備することができる。そして、製造された核分裂炉のデジタル版の解析に基づいて、製造された核分裂炉の特性を相関させる。
【0012】
さらに、本明細書に開示される実施形態は、核分裂炉の設計を認定し、許容可能な製造、並びに核分裂炉の個々の構成要素を検証するために使用することができる。例えば、本明細書に開示される核分裂炉を製造する方法はまた、完成時の構造の性能および完全性を決定および確認するために使用され得る。したがって、これらの方法は、例えば、政府規制機関、政府機関および部門、電力会社などの営利団体などの第三者による原子炉の認定または受け入れ基準に関する情報を提供するための新しい手段として役立つことができる。
【0013】
開示された原子炉および炉心は複雑な機械的形状を有するが、元素金属または金属合金またはセラミック(例えば、粒子、ワイヤーまたは粉末形態でのそのような材料の使用を含む)の3D印刷などの一体型および反復製造は、反転原子炉をより簡単に製造することができる。他の利点には、例えば、リングまたはリング間隔の形で追加の寸法単位を追加することによる、改善された重量出力比、内部応力の低減、および拡張性が含まれる。
【0014】
前述の要約、並びに実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、よりよく理解することができる。図示された実施形態は、示された正確な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】核分裂性核燃料および非燃料管のロッドを備え、一次冷却材がその中および/またはその周りを流れる燃料要素を備えた従来の燃料集合体を示している。
図2A】例示的な核分裂炉の斜視軸方向断面図を示している。
図2B】原子炉空間を取り囲む例示的なシェルの拡大された斜視半径方向断面図を示している。
図3A】核分裂炉の一部の斜視半径方向断面図を示している。
図3B図3Aの一部の拡大された斜視半径方向断面図を示している。
図4】核分裂炉の一部および燃料要素の例の斜視半径方向断面図および軸方向断面図を示している。
図5A】複数の一次チャネルに配置された支持および補助装置を示す概略斜視図である。
図5B】ロッドの形態の中性子減速材料の例を示している。
図5C】ロッドの形態の中性子減速材料の例を示している。
図5D】核分裂炉の部分的な切り取られた図に対する制御棒システムおよびその位置を示す概略斜視図である。
図6】核分裂炉の例示的な実施形態における制御棒および減速材の例示的な数および分布を斜視断面図で示している。
図7】核分裂性核燃料の核分裂による要素の核変換から生じる応力を低減するために空間またはギャップを組み込んだ核分裂炉の例示的な実施形態の半径方向断面の一部を示す概略図である。
図8】開示された核分裂炉の例示的な実施形態の6回回転対称性を示している。
図9】本明細書に開示される核分裂炉および燃料負荷原子炉空間のための一体構造および単一構造を製造するための積層造形法の実施形態を要約している。
図10A】核分裂炉の実施形態の態様を調査するために使用されるユニバーサル反転原子炉計算プラットフォーム(「UIRCP」)の態様に関連するスクリーンショットを示している。
図10B】核分裂炉の実施形態の態様を調査するために使用されるユニバーサル反転原子炉計算プラットフォーム(「UIRCP」)の態様に関連するスクリーンショットを示している。
図11A】実施例2で使用された幾何学的関連変数の幾何学的構造および寸法の詳細を示している。
図11B】実施例2で使用された幾何学的関連変数の幾何学的構造および寸法の詳細を示している。
図12】実施例2のユニバーサル反転原子炉計算プラットフォームプロセスから得られた固体CADモデルの例を示している。
図13】実施例2のユニバーサル反転原子炉計算プラットフォームプロセスから得られた温度等高線図の例である。
図14A】核分裂炉の例示的な実施形態に関連する温度および中性子工学のプロファイルを示している。
図14B】核分裂炉の例示的な実施形態に関連する温度および中性子工学のプロファイルを示している。
図14C】核分裂炉の例示的な実施形態に関連する温度および中性子工学のプロファイルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図2Aは、例示的な核分裂炉の斜視軸方向断面図を示している。核分裂炉100は、核分裂性核燃料組成物(その例は、図2Bに核分裂性核燃料組成物104として示されている)を含むシェル102、シェル102および原子炉空間を移動可能に貫通する制御棒および補助装置106、シェル102の外径表面の周りの反射器110、シェル102に出入りする一次冷却材の流れ112のための管、および格納容器114を備える。図2Bは、図2Aのいくつかの特徴の拡大された斜視図、半径方向断面および軸方向断面図を示す。説明と明確化のために、一次システムおよび二次システムの他の特徴など核分裂炉および核分裂発電所の他の特徴は、図2A図2Bには示されていないが、当業者には知られている。
【0017】
図3Aは、核分裂炉100の一部の斜視半径方向断面図を示している。図示のシェル102は、原子炉空間108の第1の端部から第2の端部まで延びる長手方向軸120を有する。シェル102は、この実施形態では、半径方向および軸方向の両方で、ハニカム構造と同様の内部特徴を有する原子炉空間108を包含する。例えば、シェル102内には、原子炉空間108の長手方向軸120と同じ位置にある軸134を有する中央長手方向チャネルを規定する内径表面132を含む軸方向円筒130が存在する。
【0018】
また、原子炉空間108内には、軸方向円筒130に対して同心円状に配置された複数の軸方向に延びるリング140が配置されている。図3Bを参照すると、図3Aの一部の拡大された斜視半径方向断面図が示されている。複数の軸方向に延びるリング140の少なくともいくつかは、半径方向に分離され、任意の2つの軸方向に延びるリング140が考慮される場合、半径方向内側に隣接するリング140aおよび半径方向外側に隣接するリング140bを形成する。半径方向内側に隣接するリング140aの外径表面142および半径方向外側に隣接するリング140bの内径表面144は、円筒形空間150を規定する。
【0019】
環状円筒形空間150内の円周方向に配置され、複数の一次軸管160が存在する。各一次軸管160は、一次チャネル164(主に流れに使用される)および外径表面166を形成する内径表面162を含む。複数のウェビング170は、複数の一次軸管160のそれぞれの外径表面166を、第1の例では、半径方向内側に隣接するリング140aに、第2の例では、半径方向外側に隣接するリング140bに接続する。いくつかの実施形態では、軸管160は、ウェビング170によって、半径方向内側に隣接するリング140aおよび半径方向外側に隣接するリング140bのうちの少なくとも一方、あるいは両方に接続されている。他の実施形態では、軸管160の一部のみが、ウェビング170によって、半径方向内側に隣接するリング140aおよび半径方向外側に隣接するリング140bの少なくとも一方、あるいは両方に接続されている。ウェビング170の使用の数、場所、および頻度は、ウェビング170を使用して接続を行うことによって全体的な設計に提供される寸法の完全性に基づいて変化することができる。
【0020】
一次軸管(すなわち、一次流チャネル)の内径表面は、軸位置の関数として均一であり得るか、または変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、一次チャネルを形成する一次軸管の内径表面は、例えば、一次冷却材の流動特性に影響を与えるために、一次軸管の長手方向軸に対する軸位置の関数として変化し得る。また、例えば、他の実施形態では、一次チャネルは、軸方向の長さに沿って異なる領域またはゾーンを形成するようにチャンバ化されている。これらのゾーンは、原子炉の性能を監視または影響を与えるための機器および/または他の機器または材料を収容するために使用できる。
【0021】
いくつかの実施形態では、軸方向円筒130の中央長手方向チャネルおよび一次チャネル164のうちの1つまたは複数は、核分裂炉の外面からアクセス可能である。アクセス可能な場合、中央長手方向チャネルおよび/または一次チャネルを使用して、照射された医療機器、医療用同位体、科学的同位体などの照射されたサンプルを調製することができる。
【0022】
また、原子炉空間108内には、複数の二次チャネル180が配置されている。図3Bを参照すると、複数の二次チャネル180は、環状円筒形空間150内に配置され、円周方向に隣接する一次軸管160a、160bを分離する。例えば、二次チャネル180の内表面は、円周方向に隣接する一次軸管160a、160bの外径表面166の部分、円周方向に隣接する一次軸管160a、160bのそれぞれに関連する第1のウェビング170および第2のウェビング170の表面、および半径方向内側に隣接するリング140aの外径表面142の部分、および半径方向外側に隣接するリング140bの内径表面144の部分を含む。典型的には、円周方向に隣接する一次軸管160a、160bは、円筒形空間150内に非接触的に分布し、二次チャネル180を形成する。
【0023】
また、原子炉空間108内には、核分裂性核燃料組成物190が配置されている。例えば、図4に概略的に見られるように、核分裂性核燃料組成物190は、複数の二次チャネル180の少なくともいくつかに配置することができる。核分裂性核燃料組成物190は、二次チャネル180の内面の全てではないにしても少なくともいくつかと熱伝達接触している。運転中、一次冷却材は、熱伝達をもたらすために核分裂性核燃料組成物190を含む複数の二次チャネル180のうちの1つによって分離された円周方向に隣接する一次軸管160のそれぞれの一次チャネル164を通って流れることができる。図示の実施形態では、長手方向軸に垂直な二次チャネルの断面は、1枚の双曲面の断面の形状を有するが、他の断面形状を使用することができる。適切な核分裂性核燃料組成物には、酸化ウランを含み、濃縮が20%未満であり、モリブデンが10重量%のウラン(U-10Mo)、窒化ウラン(UN)、および金属ベースの核分裂性燃料およびセラミックベースの核分裂性燃料を含む他の安定な核分裂性燃料化合物を含む。
【0024】
当技術分野で知られているように、核分裂性核燃料の核分裂反応中に、ウランの分解は、異なる相(気体、液体、または固体)で多くの代替元素を生成する。本明細書に開示される核分裂性核燃料組成物190を含む二次チャネル180の設計により、要素のこの核変換による二次チャネル180内の内圧の増加は、二次チャネル180、すなわち、燃料チャンバを圧縮力に置き、故障に対する耐性を向上させる。この現象は、熱膨張が発生したときにも見られる。対照的に、通常はジルコニウムから作られる管内にウランが配置されている従来の原子炉燃料では、要素の核変換により管内圧が上昇し、管にフープ応力(引張フープ応力の一種)が発生し、亀裂などの構造的破損につながる可能性がある。また、引張応力を受ける材料は、圧縮応力を受ける材料と比較して、応力腐食割れなどの様々なタイプの腐食メカニズムの影響を受けやすくなる。さらに、水素化物形成金属(ジルコニウムなど)は、水素脆化の影響を受けやすく、脆化して破壊する可能性がある。これは、関連する部品が圧縮応力と比較して引張応力下にある場合に悪化する。
【0025】
図3Aの図示の実施形態では、最も内側の複数の一次軸管は、軸方向に延びるリング140によって軸方向円筒130から分離されていないことに留意されたい。したがって、原子炉100は、最も半径方向内側の軸方向に延びるリング140の内径表面と軸方向円筒130の外径表面との間に円周方向に配置された複数の一次軸管160を含む。図3Bに関連して説明したものと同様に、これらの複数の一次軸管のそれぞれの外径表面は、第1のウェビング170によって軸方向円筒130の外径表面に接続され、第2のウェビング170によって最も半径方向内側の軸方向に延びるリング140に接続される。
【0026】
また、図3Aの図示の実施形態では、最も外側の複数の一次軸管は、軸方向に延びるリング140によってシェル102から分離されていないことにも留意されたい。したがって、原子炉100は、シェル102の内径表面と最も半径方向外側の軸方向に延びるリング140の外径表面との間に円周方向に配置された複数の一次軸管160を含む。図3Bに関連して説明したものと同様に、これらの複数の一次軸管のそれぞれの外径表面は、第1のウェビングによって最も半径方向外側に軸方向に延びるリング140の外径表面に接続され、第2のウェビングによってシェル102の内径表面に接続される。
【0027】
様々な支持および補助装置を1つまたは複数の一次チャネル164に配置することができる。例えば、減速材、制御棒、および温度センサまたは放射線検出器などの科学機器のうちの少なくとも1つを、1つまたは複数の一次チャネルに配置することができる。図5Aは、イリジウム制御棒などの制御棒200の形態の支持および補助装置、並びに水酸化ジルコニウム中性子減速材などの減速材210が配置されている複数の一次チャネル164の概略図である。制御棒200はまた、中性子を吸収し、原子炉の臨界度を調整するために使用することができる中性子毒を組み込むことができる。さらに、毒物は、核分裂炉100を停止するのに十分な中性子を吸収することができるか(例えば、制御棒200が原子炉空間108に完全に挿入されるとき)、または核分裂炉100の臨界を維持するように軸方向に配置することができる(例えば、制御棒200が炉心109からある距離だけ引き出されて、連続的な核分裂連鎖反応を可能にするとき)。いくつかの実施形態では、減速材210は、Heを流すことによって冷却され、トライフィン設計で安定化される。任意の適切な数の制御棒200および減速材210を使用して、所望の磁束プロファイル、出力分布、および動作プロファイルのうちの1つまたは複数を得るために、原子炉空間108全体に適切に分配することができる。例示的な実施形態では、制御棒200は、ねじ切りされており、これは、軸方向のスペースの節約に貢献し、制御棒の直径を最大化し、信頼性の高いSCRAM動作のためにローラナットに直接接触することを可能にする。制御棒200の全てまたはサブセットは、個別の反応度制御を提供するために、および/または動力成形のために、独立したモータによって個別に制御することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の軸方向突起を有するロッドの形態の中性子減速材料のインサートを、一次チャネル164に配置することができる。図5Aおよび図5Bは、一次チャネル164内のロッド210の形態のそのような中性子減速材料の例を示している。ロッド210は、一次チャネル164の内側直径表面と減速材ロッド210の外面(または外面の少なくとも大部分)との間の一貫したギャップ214を維持することに寄与する1つまたは複数のフィン212または他の突起を含む。フィン/突起212は、ロッド210の長さに沿って軸方向に延びることができる。この設計は、ギャップ214が、例えば、宇宙原子炉の推力を生成するか、または閉ループ発電システムを駆動し、減速材料を冷却するためにガスが十分な流れを可能にするガス冷却原子炉に特に関連する。減速材料はまた、中性子を熱化するように作用し、より中性的に効率的な炉心を作成する。
【0029】
個々の減速材ロッドは、炉心内の任意の数の所望の位置に有利に挿入することができ、必要に応じて独立して交換または整備することができ、炉心の製造中に大径の冷却材穴を可能にする。
【0030】
減速材ロッド210はまた、追加の冷却を可能にするため、または制御棒200または他の材料の挿入に対応するために、図5Cに示される減速材ロッド210の代替実施形態に示されるような環の形態をとることができる。金属からの中性子減速の重要な構成要素である水素の移動を制限または防止するために、水素化物に被覆材を使用することもできる。被覆加工は、減速材料と冷却ガスの間のバリアとしても使用できる。
【0031】
図2Aの議論で述べたように、核分裂炉100は、シェル102および原子炉空間108を移動可能に貫通する制御棒を含む。制御棒200などの制御棒の位置決めおよび操作は、制御棒システム220によって制御される(図5Dを参照)。制御棒システム220の実施形態は、3つの主要な項目を含む。制御棒200を原子炉空間108に出し入れするために使用される制御棒駆動モータ230。制御棒200を原子炉空間108に出し入れする制御棒200に接続されたねじ付き駆動シャフト240。通常、一次チャネル164に出入りする円筒形の中性子吸収毒である制御棒200。制御棒200を原子炉空間108に出し入れすることは、通常、制御棒駆動モータの内部に位置し、ねじ付き駆動シャフトに結合されたねじ付きナットを回転させて、ねじ付きナットの回転が並進運動、すなわち、制御棒200の長手方向の動きを引き起こすようにすることによって行われる。
【0032】
宇宙用原子炉などのいくつかの用途では、核分裂炉とそのコンポーネントのサイズと重量は、そのようなシステムが宇宙に打ち上げられたときに発生する重量/コストの不利益に制限される。したがって、制御棒システムの他の実施形態は、原子炉コンポーネントの保守または交換は、一度起動されるか、またはそれらが作動すると実行できないので、それらの設計を単純化しようとする。したがって、制御棒システム内のアイテムのサイズ、重量、および複雑さを軽減することは有益である。必ずしもサイズと重量が制限されているわけではないが、地上の原子炉は、保守の削減と部品交換の削減により、同様の設計改善の恩恵を受けることができる。そのような設計上の懸念に対処するために、制御棒システムの実施形態は、中性子吸収材料からねじ付き駆動シャフト自体を製造することによって、ねじ付き駆動シャフトと制御棒毒を組み合わせることができる。ねじ付き駆動シャフトが中性子吸収材料を使用して製造されている場合、個別の制御棒毒を核分裂炉から低減または排除することができる。
【0033】
図5Aの制御棒200は、中性子吸収材料から製造されるか、そうでなければその構造に組み込まれる、そのようなねじ付き制御棒の例示的な実施形態を示している。制御棒の製造に使用できる(またはその構造に組み込まれている)適切な材料には、イリジウム、ハフニウム、ステンレス鋼、タングステン、酸化アルミニウムマトリックス中の炭化ホウ素(Al-BC)、モリブデン、およびタンタルが含まれる。様々な高温金属中性子吸収材料のいずれか1つまたは複数を使用することができるが、現在、イリジウムが中性子吸収材料として使用されることが企図されている。
【0034】
図6は、核分裂炉の例示的な実施形態における制御棒200および減速材210の例示的な数および分布を斜視断面図で示している。
【0035】
上で論じたように、元素の核変換は、核分裂性核燃料が占める空間に関連する内圧を増加させる。そのような内圧を低減するために、核分裂炉の実施形態は、発生する応力を低減するために核分裂炉のコンポーネントに柔軟性を設計することができる。例えば、燃料の連続体積の代わりに、開示された核分裂炉の実施形態は、二次チャネル180内または核分裂性核燃料組成物190自体内の核分裂性核燃料組成物のセクション間に空間、ギャップ、穴または他の開口部を組み込むことができる。そのような空間またはギャップの一例が図7に示されており、1つまたは複数のギャップ250が核分裂性核燃料組成物190に組み込まれている。ギャップ250の位置の例には、核分裂性核燃料組成物190とウェビング170との間(領域252を参照)、および核分裂性核燃料組成物190の本体内(領域254を参照)が含まれる。ギャップを組み込んだ設計における応力のモデル化は、ギャップがない領域と比較して、ギャップがある領域の活性原子炉空間108においてより低い応力を示した。さらに、シェル102の全体的なフープ応力が減少した。さらに、核分裂性核燃料組成物190は、二次チャネル180を形成する表面および構造とのより良好なインターフェースを示し、より良好な熱伝達性能をもたらした。例えば、ギャップ250を設計に組み込むことは、(そのようなギャップ250のない設計と比較して)複数の一次軸管160のそれぞれの外径表面166との接触を改善することが示されており、これは、核分裂性核燃料組成物190と一次軸管160の内径表面162によって形成される一次チャネル164を通って流れる一次冷却材との間の熱伝達の改善に寄与する。
【0036】
いくつかの実施形態では、核分裂炉100は、ガス冷却原子炉の炉心であり、熱伝達は、固体炉心からの効率的な熱伝達を可能にするようにサイズ設定された、図3A図3B図4および図5Aに示される一次チャネル164などの原子炉空間108の穴を通って流れるガスを介して起こる。ガス冷却原子炉の実施形態では、一次冷却材が炉心から熱を除去し、それが次にガスを加熱する。加熱されたガスは、核熱ロケットのように推力に使用したり、閉ループ発電システムを駆動したりするために使用できる。一次冷却材に移送される核分裂性核燃料で熱を発生させるために、原子炉は、核分裂過程で放出される中性子を熱化または減速するために中性子減速材に依存している。炉心での核連鎖反応、ひいては熱の発生を維持するには、中性子の減速が必要である。水冷原子炉は、中性子集団を冷却および減速するために水に依存している。しかしながら、ガス冷却原子炉では、減速のために追加の材料が必要である。中性子を熱化するために追加の減速材を使用すると、熱化された中性子が核分裂性原子をより効率的に分割するため、燃料の量、したがって核分裂炉の重量を減らすことができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、少なくともシェル、軸方向円筒、複数の軸方向に延びるリング、複数の一次軸管、および複数のウェビングを含む核分裂炉の特徴は、一体の単一構造である。換言すれば、核分裂炉のこれらの特徴は、例えば、積層造形プロセスによって一体的に形成される。適切な積層造形プロセスの例では、モリブデン含有金属合金、ジルカロイ-4またはハステロイXなどの金属合金の3D印刷を利用して、注目の構造的特徴を形成する。他の実施形態では、核分裂性核燃料組成物は、原料内に複数の金属を使用する適切な多材料の積層造形プロセスが使用される場合、一体型の単一構造内に含めることができる。原料内に複数の金属を使用する適切な多材料の積層造形プロセスを採用する場合に使用できるその他の合金は、鋼合金、ジルコニウム合金、およびモリブデン-タングステン合金(シェル用)、ベリリウム合金(反射器用)、およびステンレス鋼(格納容器用)を含む。粉末原料も利用できる。
【0038】
本明細書に示され、説明される原子炉は、原子炉空間の長手方向軸に対して6回回転対称性を有する。例えば、図8を参照すると、原子炉空間108内の同様の特徴が、原子炉空間の長手方向軸120に対して6回回転対称性に配置されていることが分かる。この6回回転対称性の例は、核分裂炉の例示的な実施形態の半径方向断面図に重ね合わされた図8に示されている。例えば、第1の6回回転対称性300は、制御棒200の間で示されている。第2の6回回転対称性310は、減速材210の間に示され、第3の6回回転対称性320は、そのような特徴のための対応する円筒形空間150内の複数の一次軸管160の間に示されている。
【0039】
原子炉空間108(および、拡張により、原子炉100)は、原子炉空間の長手方向軸に対して基礎となる6回回転対称性が維持される限り、1つまたは複数の軸方向に延びるリング140および本明細書に開示される一次軸管160などの関連する特徴の追加または減算によって拡張可能であることに留意されたい。例えば、放射状の構成は、例えば、1、6、12、18、24、30、36ロッドなど、幾何学的に6倍に進む必要がある。これにより、核分裂性核燃料を含む各二次チャネルは、原子炉空間108内の位置に関係なく同じ体積を有することができ、核分裂性核燃料、原子炉空間の材料、および一次冷却材の間の均一かつ最適な熱伝達を促進する。したがって、例えば、複数の二次チャネルの少なくともいくつかに位置する核分裂性核燃料組成物は、核分裂炉全体で体積的に同一である核分裂性核燃料要素のセットを形成する。また、例えば、一次チャネルの半径方向断面の面積と二次チャネルの半径方向断面の面積との比は、核分裂炉全体で一定である(1つまたは複数の一次チャネルと1つまたは複数の二次チャネルとの間で考慮される)。
【0040】
複数の原料を利用する3D印刷技術などの積層造形技術を使用して、本明細書に開示される核分裂炉および燃料負荷原子炉空間のための一体構造および単一構造を製造することができる。例えば、積層造形技術は、複雑な形状を作成し、その場のセンサ、マシンビジョン画像、人工知能と組み合わせると、コンポーネントが層ごとの積層造形に基づいて構築されるため、製造品質の調整が可能になり(多くの場合、これらの層は、50ミクロンのスケールである)、そのような原子炉および構造の製造に予測的な品質保証が提供される。
【0041】
本明細書に開示される核分裂炉および燃料負荷原子炉空間の一体構造および単一構造を製造するための積層造形技術は、(a)予測および因果解析、(b)構造の層ごとの製造中、マシンビジョンおよび加速処理と組み合わせたその場監視、(c)機械学習コンポーネントと組み合わせた自動解析、および(d)完成時の構造のデジタル表現の仮想検査(本明細書では「デジタルツイン」とも呼ばれる)のステップを含む。図9は、本明細書に開示される核分裂炉および燃料負荷原子炉空間のための一体構造および単一構造を製造するための積層造形法400を要約している。
【0042】
方法400は、既存の実験データを使用して初期の重要品質(CTQ)要因を決定し、初期の機械学習アルゴリズムのトレーニングを提供する予測および因果解析410を含む。機械学習アルゴリズムの初期入力データは、有機的に開発されたもの、サードパーティによって提供されたもの、または履歴データセット(オープンソースなど、および/または現在の積層造形プロセスに関連する潜在的な機能と観察結果として記録された積層造形技術の以前の経験を捕捉した操作と実験に基づく)に基づいたもののいずれかである。いずれの場合も、初期の機械学習アルゴリズムは、製造プロセスの各ステップのアルゴリズム表現であると同時に、理想的な最終構造のアルゴリズム表現でもある。例えば、入力、出力、環境条件などの製造条件、供給の品質などの追加の変数を含めることにより、初期の機械学習アルゴリズムにさらに複雑さを加えることができる。記載されている初期入力データに適用されたアルゴリズムだけで、原子炉製品の最終的な重要品質(CTQ)の要因を説明するのに役立つが、製造されたままの製品の認定には十分ではないと予想される。
【0043】
予測および因果解析410のステップに適用可能なデータサイエンス方法論は、(1)欠陥を定義する。(2)測定された出力(層の融合、形状、位置など)に変換する。(3)「整頓されたデータ(tidy data)」の原則(列の変数、行の観測値、リンクされたテーブル、テストの再現性)を使用したクリーンなデータセット。(4)データをトレーニング、テスト、および検証のセットに分割する。(5)データセットの特徴付け、探索的解析、物理理論に対する調査。(6)候補の特徴を抽出する。(7)既存のデータからテストする関係の仮説を述べる。(8)ランダム化のためのリサンプリング手法を使用して多変量回帰アルゴリズムを構築する。(9)サンプルエラーの出入りを評価する。(10)仮説を評価し、物理的テストの基本的なパラメータを確立する。(11)既知の積層造形ジオメトリを作成し、予測モデルを検証し、因果関係と出力パラメータを生成する。(12)仮説を再評価し、機械学習ベースの基本的な欠陥定義を更新する。を含む。成功した初期機械学習アルゴリズムは、物理テストの前に既存のデータを使用して加法ビルドに考えられる重要な要因に関する基本的な仮説を決定し、機械学習の基礎を形成する。次に、最終的な予測モデルを使用して、物理的な生産と初期の機械学習条件のその場測定計画を通知する。
【0044】
予測および因果解析410のステップは、通常、製造されたオブジェクトの構造を製造するための材料の層ごとの堆積の前に行われる。
【0045】
方法400は、構造420の層ごとの製造中のマシンビジョンおよび加速処理と組み合わされたその場監視を含む。このステップでは、適切なその場監視により、構造の層ごとの製造に関連するデータがキャプチャされ、加速処理がされて、解析のために機械学習に入力するデータがデジタル化される。その場監視は、任意の適切な手段によって行うことができる。例えば、産業用マシンビジョンカメラは、位置情報を含む視覚情報を提供でき、熱電対は、供給された材料と堆積されたままの材料の両方の温度情報を提供でき、電流および電圧センサは、堆積条件に関する情報を提供でき、堆積の速度と割合を監視でき、環境状態を監視でき、X線技術は、材料の特性を監視できるだけでなく、材料の特性評価、温度分布の赤外線サーモグラフィ、構造や応力状態などの溶接プールの特性を提供できる。これは、実施可能なその場監視のほんの一例であり、その結果を積層造形法で利用できる。その場監視に含めることができる他のパラメータには、クールダウンプロファイル、ボイドの検出、気孔率測定、亀裂、積層、寸法の不規則性などの欠陥検出が含まれる。積層造形法は、センサの課題を提起することに注意する必要がある。例えば、カメラやその他のセンサを配置して、フィルム層と堆積ヘッドとの間のデータを収集し、構造の配置と位置合わせを検出する必要があるためである。GPUアクセラレーションなどの並列処理は、必要ではない場合でも、その場監視からの大量のデータを処理し、リアルタイムの修正を返すために必要な数十の機能を処理するのに有利な場合がある。加速処理の出力は、自己修正または完成時のモデルを使用したオフライン解析のための識別のために、ループ内のマシン制御にフィードバックされる。
【0046】
本明細書に開示される核分裂炉および燃料負荷原子炉空間の一体構造および単一構造が製造されるときに、その場監視および自動解析ステップを層ごとに繰り返すことにより、製造プロセスへの継続的なフィードバックが可能になる。そのフィードバックは、(i)積層造形プロセスにおける層ごとの調整、(ii)デジタルツインでの監視および解析された情報のアーカイブ、その後の解析と評価の可能、および(iii)本明細書に開示される核分裂炉および燃料負荷原子炉空間のための一体構造および単一構造の将来の積層造形で使用するための製造プロトコルおよび層ごとの指示の更新と調整の基礎となる。
【0047】
製造されたオブジェクトの構造を層ごとに製造する間、方法400は、機械学習コンポーネント430と組み合わされた自動解析を含む。機械学習は、マシンビジョンとその場監視の入力からインテリジェンスを作成し、その入力を既存のデータに適用し、機械トレーニングを介して処理を更新し、積層造形プロセス中に自己調整して予測適格性解析を実行する。
【0048】
機械学習には、プロセス機能を監視するための異常検出アルゴリズムを含めることができる。例えば、異常検出アルゴリズムは、堆積速度の変動、予期しない遅延またはボリューム消費、温度、アライメント、または化学的性質をチェックできる。このプロセスデータの自動解析では、異常を示す1つまたは複数の特徴Xを選択し、パラメータUを適合させて、選択した各特徴の分布を特徴付け、観測されたXが各特徴Uの許容可能なガウス誤差内に適合する確率を計算できる。
【0049】
機械学習には、進行中の異常検出のための画像の分類器を含めることもできる。例えば、ピクセル化された画像を入力データとして使用できる。この場合、各サンプルは、画像の小さなピクセル領域である。画像に収まる領域の数は、異常や形状を区別および分類するために使用できる次元の数を表す。数百の次元(画像の一部)のベクトル化された画像により、マシンは、各特徴の最適化機能を介して、適切な形状または異常がどのように見えるかを学習できる。分類器が異常を検出するようにトレーニングされると、(特定の統計的信頼水準内で)異常につながる以前に検出された堆積条件を識別し、その情報を異常が実際に発生する前にその場の条件に適用し、異常を回避するために積層造形プロセスに積極的に介入するようにさらにトレーニングできる。この反復的な修正機能は、欠陥のある多数の層を堆積する前に、インプロセス調整を行うために重要である。
【0050】
ニューラルネットワークは、機械学習に関連する非線形仮説に利用できる。例えば、ニューラルネットワークは、入力条件を取得してモデルを適合させる特徴のアレイを使用して、隠れ層を使用して出力条件を正しく予測し、重み付けパラメータを作成する。順伝播アルゴリズムは、予測機能を提供し、逆伝播は、システムによって学習された重み付けスキームを明らかにするために使用される。隠れ層は、特徴の数が多い場合(画像データなど)、相互作用が複雑な場合、またはその両方の場合に、実行可能な解決策に到達することを可能にする。
【0051】
方法400はまた、完成時の構造(本明細書では「デジタルツイン」とも呼ばれる)440のデジタル表現の仮想検査を含む。典型的には、デジタルツイン440の仮想検査のステップは、製造された物体の構造を製造するための材料の層ごとの堆積の完了後に行われる。デジタルツインは、有限要素解析などの様々なコンピュータ支援構造解析およびモデリング手法を使用して解析し、構造解析、熱伝達、流体の流れ、および質量輸送特性を調査できる。さらに、完成時の構造の内部特徴やアクセスが困難な特徴は、デジタルツインで簡単にアクセス、表示、解析できる。これにより、完全な360度の検査と、「裏返し」の検証機能が提供される。デジタルツインは、実際の完成時の構造を複製するため、デジタルツインに関するこのような解析の結果は、実際の完成時の構造と高い相関関係がある。そのため、デジタルツインのテスト結果に基づいて、(強度などの目的のパラメータについて)完成品の信頼性を統計的に評価できる。
【0052】
従来の製造の無数の製造前、製造中、および製造後の品質保証方法とは対照的に、これは、多くの場合、破壊ベースの技術および/または検査制限であり、本明細書に開示される核分裂炉および燃料負荷原子炉空間の一体構造および単一構造の製造中に品質評価を確立することは、複雑な製品の製造後の検証の難しさを相殺するだけでなく、追加的に製造された各層に沿ったプロセス監視データの継続的な入力に対して回帰した、高解像度の層ごとの(最小)解像度で検査する裏返しの評価によって提供されるより直接的な保証によって不要になる。
【0053】
さらに、仮想検査は、製造中に収集されるときに解析的に処理された完成時のデータから構築されたモデルを使用して実行できる(例えば、物理的な完成品の「デジタルツイン」)。品質への影響の異常を学習するマシンの予測力(保存されたデータと処理中のデータを使用)と、最終的な完成品のステータス(継続的に更新されるベースラインと比較して)を監視、解釈、および報告する機能と組み合わせることで、本明細書に開示される積層造形法は、発生前の欠陥を回避するだけでなく、製造プロセス中に監視および記録された製造時の状態に基づいて、完成品全体に亘るグローバルベースでの完成品の実行可能性に対する信頼性を統計的に評価する。
【0054】
例1:直径16インチ、高さ24インチの寸法の核分裂炉をモデル化した。原子炉は、6つの円筒形の空間があり、その軸方向の高さは20の等間隔の軸方向レベルに分割され、潜在的な燃料負荷のために2520の個別の一次チャネルと2520の個別の二次チャネルが得られた。図3Aは、上面斜視図からの軸方向レベルでの特徴の配置を示している。構造上の考慮事項の寸法例には、(a)シェル102の外周0.75インチ、(b)一次チャネルの壁の厚さ3mm、(c)軸方向に延びるリングとウェビングの厚さ2mmが含まれる。しかしながら、より小さな寸法を使用して追加の燃料負荷の可能性を提供したり、より大きな寸法を使用して強度を提供したりすることができる。以下は、シェルメタル、一次チャネル、および二次チャネル(ウランメタル)の体積である。

【0055】
例1のウラン体量を計算した。1364.3inの合計二次チャネル体積(燃料体積)を備えた上記の16”x24”構成では、全ての二次チャネルが20%濃縮のU235で満たされている場合、187ポンドの最大U235重量が可能である。しかしながら、各チャンバには10%のオフガス量を可能にするプレナムが組み込まれている。これにより、20%の濃縮で最大U235重量が149.6ポンドになった。これは、臨界に必要な量をはるかに超えているが、この過剰な容量により、燃料サイクルの効率とサイクルの長さを最適化するために、濃縮を半径方向および軸方向に調整できる。
【0056】
一次チャネルのサイズは、強度と流れ面積のバランスをとるために、直径18mm、壁3mmになるように任意に選択された。その結果、合計流量面積が50inを超える127個の穴が作成された。穴の数と流れ面積のサイズにより、膨大な数の可能なフローチャネル、減速材ロッド、制御棒の位置、スクラムロッドの位置、および計装のニーズに対応できる。必要な出力レベル、液体の選択、減速材料、制御棒の材料、および濃縮は、各穴の特定の目的を推進する。
【0057】
図面に見られるように、核分裂性核燃料、例えば、ウランを含む全ての二次チャネルは、2つの異なる一次チャネルの2つの半分に接続されている。したがって、他の全ての一次チャネルが流体の流れ専用である限り、燃料を含む各二次チャネルは、熱伝達の目的で隣接する一次チャネルに熱を伝達する。さらに、60の一次チャネル位置を非フローニーズ(減速材、制御、スクラム、および計装)専用にすることができる。プラグの設計を考慮すると、18mmの一次チャネルサイズ全体を使用しないことで、流れのない位置での熱伝達も可能になる。例えば、フィン形状の制御棒設計は、反応度制御と適切な流れを一次チャネルで同時に提供することができる。
【0058】
例の原子炉は、半径方向および軸方向の濃縮の利点を有する。核分裂性核燃料を使用する各二次チャネルは、核分裂性核燃料を使用する他の全ての二次チャネルから独立しているため、半径方向と軸方向の両方でカスタム濃縮を選択できる。経験によれば、これにより燃料サイクル効率が最大20%向上し、シェル温度のバランスが取れる。積層造形を介して、無限の数のウラン濃縮物を提供することも考えられる。例えば、劣化ウラン線と20%濃縮ウラン線のみを組み合わせて使用することにより、これら2つの極値間の濃縮が可能になる(対照的に、従来の慣行では、原子力製造会社は、通常、非積層造形の複雑さなどのために、10未満の異なる濃縮に制限している)。
【0059】
例の原子炉は、拡張可能でスケーラブルである。16”x24”原子炉の寸法でモデル化されているが、12”x18”を超える任意の原子炉サイズが可能である。さらに、チャンバの半径方向の幅がこの設計内の詳細に保たれ、上記の6回半径方向対称性の概念に従って、任意の数の追加の軸方向に延びるリング140を追加することができる。その結果、原子炉のサイズに関係なく、サイズが同じ核分裂性核燃料を備えた全ての二次チャネルを備えた、継続的な高度に対称的な構成になる。
【0060】
例2:ANSYSエンジニアリングシミュレーションおよび3D設計ソフトウェア、SolidWorksソリッドモデリングコンピュータ支援設計およびコンピュータ支援エンジニアリングコンピュータプログラム、およびモンテカルロN粒子輸送コード(「MCNP」)核プロセスシミュレーションプログラムで構成される計算プラットフォーム(本明細書ではユニバーサル反転原子炉計算プラットフォームまたは「UIRCP」と呼ばれる)を利用し、適用して、ユニバーサル反転原子炉設計の理想的な熱構成を解決した。本明細書に開示されるユニバーサル反転原子炉設計では燃料と被覆管が互いに隣接しているため(例えば、図4および本明細書の関連する説明を参照)、上記の界面を共有する2つの材料の熱膨張率が変化するため、熱応力が増加する可能性が高い。この問題に対処するためにUIRCPが適用され、燃料の濃縮と原子炉の形状が繰り返されて、半径方向の温度勾配が均一化された。線形熱交換の性質上、軸方向の温度勾配と全体的なピーク温度は避けられず、UIRCPプロセスの一部ではなかったことに注意されたい。
【0061】
MCNPは、UIRCPプロセスでモデル化されたユニバーサル反転原子炉設計に適用され、隣接する各燃料要素のMeV/グラムを計算し、臨界をチェックした。まず、入力デッキは、ユーザの幾何学的および材料の入力に基づいて作成する必要がある。他のユーザ入力には、冷却材、燃料、被覆管、および反射器の材料を含めることができる。これは、ユーザ入力を読み取り、MCNP形式(バイナリジオメトリ)でジオメトリを出力し、各セルに目的の材料でラベルを付け、中性子物理学を設定することによって行われる。次に、入力デッキが実行され、MCNPの視覚化ソフトウェア機能を利用して、この時点でジオメトリを確認するオプションがユーザに与えられる。MCNP出力を検索して、各燃料要素に関連付けられたMeV/グラムを見つけ、W/mに変換して、別のファイルに保存する。これらの全てのステップは、必要なコマンドとサブプログラムを呼び出す管理バッチファイルによって制御される。図10Aは、初期ユーザインターフェースのスクリーンショット500を示し、図10Bは、MCNPXジオメトリレビューのスクリーンショット510を示している。
【0062】
SolidWorksはUIRCPプロセスに適用され、ユーザ入力に基づいて参照原子炉ジオメトリのコンピュータ支援設計(CAD)ソリッドモデルを更新した。ユーザ入力は、基本ジオメトリの選択であった。ユーザによって更新された変数は、ジオメトリ変数:リング間隔、リングの数、クラッドの厚さ、通路のIDとOD、軸方向のセグメントの数、および全体の高さ、であった。図11Aおよび図11Bは、この例で使用される幾何学的関連変数の幾何学的構造および寸法を有するダイアグラム600、610を示している。図11A図11Bの幾何学的構造と図3A図3Bの原子炉空間108の設計との間の類似性に留意されたい。
【0063】
基本設計としてユニバーサル反転原子炉設計(図11A図11Bに関して示され説明された設計など)を使用すると、燃料、被覆管、および通路のソリッドモデルが事前に存在する。UIRCPプロセスは、SolidWorksを開き、ジオメトリグローバル変数を更新するサブプログラムを実行し、不要なジオメトリを抑制するためにVBA(Visual Basic for Applications)プログラムを実行し、新しいジオメトリパラメータを使用して設計を再構築し、6分の1のコアパラソリッドを保存するバッチファイルを呼び出す。パラソリッド700(図12を参照)は、プロセスから生じるコアパラソリッドの例である。図12のこのコアパラソリッド700と、シェル、軸方向円筒、複数の軸方向に延びるリング、複数の一次軸管、一次チャネル、複数のウェビング、および複数の二次チャネルを含む図3A図3Bの原子炉空間108の設計との間の類似性に留意されたい。UIRCPプロセスとSolidWorksモデリングは、リングの数、通路のサイズ、燃料のサイズ、原子炉全体のサイズ、およびインタースティシャルクラッドを変更および更新して、ユニバーサル反転原子炉の設計を最適化できる。
【0064】
ANSYSは、通路を流れる冷却液を暖める熱を燃料が生成する熱水力問題を解決するためにUIRCPプロセスに適用された。ANSYS FLUENTなどの計算流体力学(CFD)ツール、およびANSYS Mechanicalに基づく有限要素解析(FEA)などの構造解析ツールを使用できる。ANSYS FLUENTとANSYS Mechanicalを使用して、j_scriptジャーナルが呼び出され、SolidWorksを適用したUIRCPプロセスの結果として、コアパラソリッド700などのコアパラソリッドが挿入された。次に、ANSYS mechanicalを開いてパラソリッドをメッシュ化し、固体と流体を区別した。FLUENTを制御するためのスクリプトが生成された。そのスクリプトの呼び出しは、FLUENTを開くことから始まった。スクリプトには、燃料、被覆管、冷却液の材料に関するユーザ入力の参照が含まれ、これらの入力に基づいて更新された。燃料と被覆管との間のメッシュインターフェースは、分割された(これにより、ソリッドメッシュがインターフェースを均一なピースと見なすため、誤った結果が生じるのを防ぐ)。冷却液の入口と出口は、ユーザ入力速度と周囲温度に設定された。燃料要素には、MCNP出力に基づいて適切な内部発熱量が与えられた。次に、FLUENTは、熱水力シミュレーションを実行し、温度等高線図を作成した。図13は、上記のステップによって概説されたように、FLUENTを実行することから得られる温度等高線図800の例である。
【0065】
UIRCPプロセスは、ANSYS、SolidWorks、MCNPプログラムを単一のソフトウェア自動化にインターフェースし、個々のソフトウェアがユーザの特定された最適化手法に基づいて最終結果に向けて反復する。インターフェース操作は、他のソフトウェアが自動化されている間、呼び出されるまで待機する1つのソフトウェアの出力から必要な情報を保存することによって実行された。例えば、SolidWorksおよびANSYSプログラムは、ソリッドモデリングを介して通信する。SolidWorksがジオメトリの更新を実行してパラソリッドを保存した後、ANSYSは、そのパラソリッドをベースジオメトリとして呼び出し、熱水力解析を実行する。他の例では、MCNPプログラムとANSYSプログラムは、燃料濃縮と半径方向の温度勾配との間の関係を介して通信する。最初の反復中に、MCNPは、全ての燃料要素の初期燃料濃縮レベルを使用して初期中性子シミュレーションを実行する。これは、燃料要素ごとの内部発熱量(W/m)に相当する。内部発熱量の値が保存され、ANSYSがそれらを呼び出すのを待つ。ANSYSが熱水力シミュレーションを実行すると、半径方向の熱プロファイルが保存される。熱プロファイルは、放射状の温度勾配の勾配がゼロに向かう傾向を示す次の反復濃縮が何であるかをMCNPに通知する(それが特定された最適化手法である場合)。このプロセスは、許容可能なレベルの温度勾配に達するまで繰り返される。これは、UIRCPプロセスのメインの反復ループとして機能する。
【0066】
例3:核分裂炉100の例示的な実施形態の中性子工学を調査した。調査した核分裂炉100は、19.75重量%U-235の低濃縮ウラン(LEU)を利用した。核分裂炉には、シェル内の原子炉空間内に配置された10個の燃料リングがあった。炉心径は、434.7mm、炉心高さは、800mmであった。厚さ15cmのベリリウム反射器が炉心を囲んだ。中性子工学は、モンテカルロN粒子輸送コード6(「MCNP6」)核プロセスシミュレーションプログラムを使用してモデル化された。定常状態の操作(k-eff=1.0)には、炉心の操作寿命全体にわたって一連の制御棒操作が必要であると判断された。図14Aおよび図14Bは、制御棒が炉心から取り外されたときのMCNP6核プロセスシミュレーションプログラムからの炉心電力ピークプロファイルを示している。図14Aのプロファイル900は、炉心の高さ(メートル、上から下)の関数としての電力(平均に正規化)を示し、1.49のピーキング係数(全ての制御棒が完全に引き出された)、0.39mでの軸方向のピーキング位置、および1.06375±0.00036のk-effective(制御棒は完全に引き抜かれている)を有する。図14Bのプロファイル910は、半径距離(メートル)の関数としての電力(平均に正規化)を示し、1.12のピーキング係数(全ての制御棒が完全に引き出された)、0.0186mでの軸方向のピーキング位置、および1.06375±0.00036のk-effective(制御棒は完全に引き抜かれている)を有する。図14Cは、中性子エネルギ(MeV)の関数としての中性子フラックス(全フラックスに正規化された)のプロファイル920を示し、1.06375±0.00036のk-effective(全ての制御棒が完全に引き抜かれた)を有する。シャットダウンの目的で、制御棒が完全に挿入されたモデル化された原子炉のk-effectiveは、0.94211±0.00034であった。
【0067】
UIRCPと上記のプロセスにより、エンジニアは、原子炉のタイプ、材料、およびベースの形状を柔軟に変更できる。最終結果は、積層造形技術を使用して製造できる原子炉設計であり、エンジニアに様々な電力用途向けのツールを提供する。さらに、開示された核分裂炉の特定の機能は、UIRCPプロセスの専用ルーチンを通じて最適化することができる。例えば、上記の濃縮最適化に加えて、UIRCPプロセスを使用して、(a)冷却物質の熱伝達効率、半径方向の温度勾配、および軸方向の温度勾配の1つまたは複数に基づく通路サイズ、(b)例えば、半径方向の温度勾配に基づくリング幅、(c)例えば、半径方向の熱応力に基づく被覆管の厚さ、を最適化できる。
【0068】
さらに、UIRCPと本明細書で説明するプロセスは、新しい原子炉の設計に効果的に適用できる。エンジニアは、臨界、熱水力学、および材料仕様を精査する任務を負っている。この最初のプロジェクトの設計と評価には、新しい原子炉設計の実行可能性に関する最初の回答を得るのに数か月(最大1年)かかり、数百万の費用がかかる可能性がある。しかしながら、UIRCPと本明細書で説明するプロセスは、数日で新しい原子炉の熱水力、中性子、および幾何学的知識を提供する。その結果、原子炉設計の有用性を事前に決定し、現在の慣行に比べて時間とコストを削減してその設計を最適化することができる。
【0069】
図2Aの核分裂炉100は、1MWth(+250kWe)の出力、ZrH減速、ヘリウム冷却、ブレイトン熱力学サイクル、回転対称のモノリシックなどのベースライン特性を備えている。しかしながら、核分裂炉100は、より大きくまたはより小さくすることができ、すなわち、拡張可能であり、本明細書に開示および記載されるような代替の特性を有することができる。
【0070】
本明細書に開示される核分裂炉100は、地上電源、遠隔電源またはオフグリッド用途、宇宙動力、宇宙推進、同位体生成、指向性エネルギ用途、商用電力用途、および脱塩を含むがこれらに限定されない適切な用途で使用することができる。
【0071】
加圧水原子炉(PWR原子炉)および一次冷却材としての水に関連して本明細書に一般的に記載されているが、本明細書に開示される構造および方法は、沸騰水原子炉(BWR原子炉)、CANDU原子炉などの酸化重水素(重水)減速原子炉、軽水原子炉(LWR原子炉)、ぺブルベッド型原子炉(PBR原子炉)、核熱推進原子炉(NTP原子炉)、商業用および研究用原子炉の両方を含む他の原子炉システムにも適用可能であり、ヘリウム、水素、メタン、溶融塩、および液体金属などの他の一次冷却材を利用する。
【0072】
本明細書では、積層造形技術を使用して説明しているが、サブトラクティブ製造技術、ならびに積層造形技術とサブトラクティブ製造技術の組み合わせを使用して、核分裂炉および関連する構造を製造することができる。そのため、その場での技術と予測品質保証方法は、そのようなサブトラクティブ製造/組み合わせ製造環境での使用に適合させることができる。サブトラクティブ製造技術の例には、フライス加工やボーリングなどの機械加工、ボディを粗い半完成形状にした後、放電加工(EDM)などの仕上げ機械加工が含まれる。電子ビーム加工(EBM)など、他のサブトラクティブ製造方法を使用できる。
【0073】
本明細書に示され、説明されるユニバーサル反転原子炉の製造に関連して説明されるが、本明細書に開示される積層造形法および予測品質保証方法は、航空宇宙産業における石油化学産業(例えば、化学反応容器)を含む他の技術の製造に適用することができる(例えば、タービンブレードやハウジングを含むタービンの部品、および燃焼室、ノズル、バルブ、冷却材配管を含むミサイルやロケットの部品)。
【0074】
特定の実施形態を参照したが、他の実施形態および変形は、それらの精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の請求の範囲は、そのような全ての実施形態および同等の変形を含むと解釈されることを意図している。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図14C
【手続補正書】
【提出日】2022-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核分裂炉を製造する方法であって、
核分裂炉のモデルを準備するために予測解析と因果解析を適用するステップと、
積層造形技術を使用して、層ごとに核分裂炉を製造するステップと、
製造中、マシンビジョンと加速処理を備えた核分裂炉の製造をその場で監視するステップと、
その場監視からのデータを解析するステップと、
解析されたデータに基づいて核分裂炉の製造を調整するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
核分裂炉を製造する方法であって、
核分裂炉のモデルを準備するために予測解析と因果解析を適用するステップと、
サブトラクティブ製造技術を使用して、層ごとに核分裂炉を製造するステップと、
製造中、マシンビジョンと加速処理を備えた核分裂炉の製造をその場で監視するステップと、
その場監視からのデータを解析するステップと、
解析されたデータに基づいて核分裂炉の製造を調整するステップと、
を含む方法。
【請求項3】
前記方法は、
製造された核分裂炉のデジタル版を準備するステップと、
前記製造された核分裂炉のデジタル版の解析に基づいて、前記製造された核分裂炉の特性を相関させるステップと、
を含む請求項1または2に記載の方法。
【外国語明細書】