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特開2022-91946細胞表面チオールとの反応のためのチオール反応性基を含有する細胞内在化コンジュゲート
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  • 特開-細胞表面チオールとの反応のためのチオール反応性基を含有する細胞内在化コンジュゲート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091946
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】細胞表面チオールとの反応のためのチオール反応性基を含有する細胞内在化コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/59 20170101AFI20220614BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220614BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220614BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220614BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20220614BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220614BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220614BHJP
   C08G 69/10 20060101ALI20220614BHJP
   C08G 79/04 20060101ALI20220614BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20220614BHJP
   C07K 2/00 20060101ALN20220614BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20220614BHJP
【FI】
A61K47/59
A61K38/02 ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K47/60
A61P43/00 105
A61K31/7088
C08G69/10
C08G79/04
C07K16/18
C07K2/00
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022062436
(22)【出願日】2022-04-04
(62)【分割の表示】P 2019536087の分割
【原出願日】2018-01-04
(31)【優先権主張番号】62/442,391
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/556,813
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514291864
【氏名又は名称】ソレント・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sorrento Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヤンウェン フー
(72)【発明者】
【氏名】ガナー エフ. カウフマン
(72)【発明者】
【氏名】ヒヒョン リ
(72)【発明者】
【氏名】トン ジュー
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー ジ
(57)【要約】
【課題】細胞内在化化合物を提供すること。
【解決手段】目下のところ、本明細書中に記載する新規細胞内在化化合物およびその薬学的に許容される組成物が、効果的に生物学的剤を細胞内に送達することを見出した。本明細書中に、式Iを有する細胞貫通化合物を提供し:

式中、一般に、各Tはチオール反応性基(例えばホスホロチオエート)であり、各Lはリンカー(例えば直鎖アルキル)であり、Yは生物製剤(例えば抗体)である。細胞貫通化合物を含む医薬組成物、およびその化合物を細胞内へと送達する方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、通し番号第62/442,391号である米国仮特許出願(2017年1月4日に出願)および通し番号第62/556,813号である米国仮特許出願第(2017年9月11日に出願)の優先権を主張し、これらの仮特許出願はいずれも、その全体について本明細書に参照により援用される。
【0002】
分野
本発明は全体として、新規細胞内在化化合物に関連する。
【背景技術】
【0003】
背景
膜タンパク質(膜貫通タンパク質、表面結合性タンパク質、および非共有結合により細胞表面に結合されたタンパク質など)は、還元された形態(-SH)または酸化された形態(S-S)の露出されたチオール基を提供する。そして、生分子のチオール化は、細胞との会合および内在化を増強するということが提唱されてきた。Torres, Adrian G and Gait, Michael J., Exploiting cell surface thiols to enhance cellular uptake. Trends in Biotechnology 30:185-190 (April 2012)。
本出願は、細胞膜を横切って生物学的剤を移動させるビヒクルとしての新規細胞内在化化合物を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Torres, Adrian G and Gait, Michael J., Exploiting cell surface thiols to enhance cellular uptake. Trends in Biotechnology 30:185-190 (April 2012)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
目下のところ、本明細書中に記載する新規細胞内在化化合物およびその薬学的に許容される組成物が、効果的に生物学的剤を細胞内に送達することを見出した。そのような化合物として、式I:
【化1】
を有するものが挙げられ、式中、一般に、各Tはチオール反応性部分(例えば、ホスホロチオエート)であり、各Lはリンカーであり、nおよびmは本明細書中で定義される通りであり、Yは生分子(例えば、抗体、タンパク質、または核酸)である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、細胞表面チオールを介する細胞取り込みについての提案される機序について示す。
【0007】
図2図2は、細胞内在化フルオレセイン化合物の構造を示す。
【0008】
図3図3は、図2に示す細胞内在化フルオレセイン化合物の細胞取り込みを示す。
【0009】
図4図4は、抗STAT3抗体を含む細胞内在化化合物の細胞取り込みを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
1.化合物の概説
特定の実施形態において、本開示は、式I:
【化2】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供し、式中:
各Tは独立して、チオール反応性基、ホスホロチオエート、チオホスホアミノ酸、およびマレイミドから選択され;
各Lはリンカー基であり;
Yはタンパク質、抗体、ペプチド、または核酸であり;
nは1から50までの整数であり;
mは0、1、または2である。
【0011】
2.定義
本開示をより容易に理解し得るように、まず特定の用語を定義する。これらの定義は、本開示の残りを考慮して、当業者によって理解される通りに、読まれるべきである。他で定義されない限り、本明細書中で用いられるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。詳細な説明のいたる所で、さらなる定義が述べられる。
【0012】
「抗原結合タンパク質」は抗原に結合する部分と、必要に応じて、足場部分またはフレームワーク部分(これらは、抗原結合部分が、抗原への抗原結合タンパク質の結合を促進する構造を取ることを可能にする)とを含むタンパク質である。抗原結合タンパク質の例として、抗体、抗体フラグメント(すなわち、抗体の抗原結合部分)、抗体誘導体、および抗体アナログが挙げられる。抗原結合タンパク質は例えば、移植されたCDRもしくはCDR誘導体を伴う、代替のタンパク質足場または人工的な足場を含み得る。そのような足場として、例えば抗原結合タンパク質の三次元構造を安定化するために導入された変異を含む、抗体由来の足場と、例えば生体適合性ポリマーを含む、完全に合成された足場とが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Korndorfer et al., 2003, Proteins: Structure, Function, and Bioinformatics, Volume 53, Issue 1:121-129; Roque et al., 2004, Biotechnol. Prog. 20:639-654を参照。さらに、足場としてフィブロネクチン(fibronection)構成要素を利用している抗体模倣物ベースの足場と同様に、ペプチド抗体模倣物(「PAM」)が用いられ得る。
【0013】
用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖(2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖)から構成される免疫グロブリン(Ig)分子、またはIg分子の本質的なエピトープ結合特性を保持している、任意の機能的なフラグメント、変異体、バリアント、もしくはこれらの誘導体を指す。
【0014】
「抗体フラグメント」、「抗体部分」、「抗体の抗原結合フラグメント」、または「抗体の抗原結合部分」は、完全なままの抗体以外の分子であって、完全なままの抗体が結合する抗原に結合する、完全なままの抗体の一部を含む分子を指す。抗体フラグメントの例として、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;Fd;およびFvフラグメント、ならびにdAb;ダイアボディ;リニア抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFv);ポリペプチド(そのポリペプチドに抗原との特異的な結合を与えるのに十分である、抗体の少なくとも一部を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。抗体の抗原結合部分は、組み換えDNA技術によるか、または完全なままの抗体の酵素切断もしくは化学的切断により産生され得る。抗原結合部分として、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体(dAb)、および相補性決定領域(CDR)フラグメント、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディなどが挙げられる。
【0015】
本明細書中で用いられる場合、用語「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1つまたはそれより多くの可変領域および定常領域を有する、組み換え抗体を指す。1つの実施形態において、可変ドメインおよび定常ドメインのすべては、ヒト免疫グロブリン配列に由来する(まったくのヒト抗体)。これらの抗体は、下で例を記載する様々な方法で調製され得、その方法の例として、ヒトの重鎖および/または軽鎖をコードする遺伝子に由来する抗体を発現するように遺伝子操作されたマウスの、対象抗原を用いた免疫化によるものが挙げられる。
【0016】
単独で、または大きな部分の一部として用いられる用語「アルキル」は、飽和の、直鎖または分枝鎖状一価炭化水素ラジカルを意味する。用語「(C-C)アルキル」は、1~6個の炭素原子を直線または分枝状配置で有するラジカルを意味する。一般に、用語「(C#-C#)」は、指示される範囲の炭素原子を有するラジカルを意味する。
【0017】
本明細書中で用いられる場合、用語「カルボシクリル」は、完全に飽和しているか、または1つもしくはそれより多くの部分的不飽和単位を含むがその中に芳香環が存在しない、単環式、二環式(例えば、架橋二環式環もしくはスピロ二環式環)、多環式(例えば、三環式もしくはそれを超える多環式)、または縮合炭化水素環系を意味する。「シクロアルキル」は、完全に飽和した炭素環である。単環式カルボシクリル基として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、およびシクロオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書中で用いられる場合、「細胞内在化化合物」は、生物製剤(例えば、抗体または抗体フラグメント)に(共有結合的に、または非共有結合的に)コンジュゲートされた細胞内在化部分を含む化合物を指し、この化合物は細胞内へと内在化できる。細胞内送達化合物(抗体にコンジュゲートされたもの)の例を、本明細書のいたる所で提供する。
【0019】
用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、および「核酸」は、あらゆる点で互換的に用いられ、これらの例として、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えばmRNA)、ヌクレオチドアナログを用いて生成される、DNAまたはRNAのアナログ(例えば、ペプチド核酸、および天然に存在しないヌクレオチドアナログ)、およびこれらのハイブリッドが挙げられる。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であり得る。1つの実施形態において、本発明の核酸分子は、抗体、もしくはフラグメント、誘導体、変異タンパク質、またはこれらのバリアントをコードする連続したオープンリーディングフレームを含む。
【0020】
本明細書中の化合物の薬学的に許容される塩を企図する。医薬における使用のために、本明細書中に記載の化合物の塩は、非毒性の「薬学的に許容される塩」を指す。薬学的に許容される塩の形態として、薬学的に許容される酸性/陰イオン性の、または塩基性/陽イオン性の塩が挙げられる。
【0021】
用語「薬学的に許容されるキャリア」は、それが配合される化合物の薬理学的活性を破壊しない、非毒性のキャリア、補助剤、またはビヒクルを指す。本開示の組成物において用いられ得る薬学的に許容されるキャリア、補助剤、またはビヒクルとして、薬学的用途に適した、有機または無機キャリア、賦形剤、または希釈剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書中で用いられる場合、用語「被験体」および「患者」は、互換的に用いられ得、処置の必要のある哺乳動物、例えば、コンパニオン動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、雌ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギなど)、および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)を意味する。典型的には、被験体は処置の必要のあるヒトである。
【0023】
本明細書中で用いられる場合、用語「処置(treatment)」、「処置する(treat)」、および「処置すること(treating)」は、本明細書の記載の通りに、疾患もしくは障害またはこれらの1種もしくはそれより多種の症状を後退させるか、緩和するか、疾患もしくは障害またはこれらの1種もしくはそれより多種の症状の開始を遅らせるか、あるいは、疾患もしくは障害またはこれらの1種もしくはそれより多種の症状の進行を阻害することを指す。ある実施形態においては、1種またはそれより多種の症状が開始した後に、処置、すなわち、治療的処置を施してもよい。別の実施形態では、症状がない場合に処置を施してもよい。例えば、症状の開始に先立って、疑わしい個人に処置、すなわち、予防的処置を施してもよい(例えば、症状歴に照らして、そして/または、遺伝的もしくは他の疑わしい因子に照らして)。症状が解消した後に、例えばその再発の防止または遅延のために、処置を続けてもよい。
【0024】
本明細書中で用いられる場合、用語「有効量」は、本明細書中で開示される化合物の量であって、被験体に投与されたときに疾患の処置を達成するのに十分な量を指す。治療上の有効量は、化合物の相対活量によって、そして処置される被験体および疾患の状態、被験体の体重および年齢、疾患状態の重症度、投与の方法などによって変わり、当業者はその量を容易に決定できる。
【0025】
3.例示的化合物の説明
第1の実施形態において、本開示は、式I:
【化3】
の化合物
【0026】
またはその薬学的に許容される塩を提供し、式中、各Tはチオール反応性基、ホスホロチオエート、チオホスホアミノ酸、およびマレイミドから選択され;各Lはリンカー基であり;Yはタンパク質、抗体、ペプチド、または核酸であり;nは1から50までの整数で
あり;mは0、1、または2である。mが0である場合、YはLに直接結合する。
【0027】
第2の実施形態において、式I中の各Lは独立して、ポリエチレングリコール(PEG)、アルキル、または環状アルキルから選択され、ここで、残りの変数は、式Iについての上の記載の通りである。
【0028】
第3の実施形態において、式I中のnは5から25までの整数であり、ここで、残りの変数は式Iについての上の記載の通りである。別の実施形態において、nは15、16、または17であり、ここで、残りの変数は、式Iについての上の記載の通りである。
【0029】
別の実施形態において、式I中の各Tは独立して:
【化4】
から選択され、ここで、残りの変数は、式Iについての上の記載の通りである。
【0030】
さらなる実施形態において、式I中の各Lは独立して、ポリエチレングリコール(PEG)、直鎖アルキル、および環状アルキルから選択されるか;または、各Lは直鎖(C-C)アルキルもしくは環状アルキルであるか;または、各Lは直鎖(C-C)アルキルもしくは(C-C10)環状アルキルであるか;または、各Lは直鎖プロピルアルキルであり、ここで、残りの変数は、式Iについての上の記載の通りである。
【0031】
本開示は、式II:
【化5】
の化合物またはその薬学的に許容される塩も提供し、式中:各RはCHまたはHであり;各Lはリンカーであり;Yはタンパク質、抗体、ペプチド、または核酸であり;nは5から25までの整数である。
【0032】
他の実施形態において、式II中のnは12から20までの整数であるか、またはnは15、16、もしくは17であり、ここで、残りの変数は、式IIについての上の記載の通りである。
【0033】
他の実施形態において、式II中の各Lは独立して、ポリエチレングリコール(PEG)、直鎖アルキル、および環状アルキルから選択されるか;または、各Lは直鎖アルキルであるか;または、各Lは独立して、直鎖(C-C)アルキルもしくは環状(C-C)アルキル、および-(O-CH-CH-(ここで、pは1から5までの整数である)から選択されるか;または、各Lは-CH-であるか;または、各Lは-(O-CH-CH-(ここで、pは1から5までの整数である)であり、ここで、残りの変数は、式IIについての上の記載の通りである。
【0034】
別の実施形態において、式II中の各RはHであり、各Lは-CH-であり、nは15、16、または17であり、Yは抗体である。さらに別の実施形態において、式II中でnは16である。
【0035】
本開示は、式III:
【化6】
の化合物またはその薬学的に許容される塩も提供し、式中:Lはリンカーであり;nは1から3までの整数であり;mは5から25までの整数であり;Yはタンパク質、抗体、ペプチド、または核酸である。
【0036】
他の実施形態において、式III中の変数mは、15から20までの整数であるか、またはmは16、17、もしくは18であり、ここで、残りの変数は、式IIIについての上の記載の通りである。
【0037】
他の実施形態において、式III中のLは、PEG、直鎖アルキル、もしくは環状アルキルであるか;または、Lは、直鎖(C-C10)アルキルおよび-(O-CH-CH-(ここで、pは1から5までの整数である)であり、ここで、残りの変数は、式IIIについての上の記載の通りである。
【0038】
本開示は、式IV:
【化7】
の化合物またはその薬学的に許容される塩も提供し、式中:Lはリンカー基であり;Yはタンパク質、抗体、ペプチド、または核酸であり;nは5から25までの整数である。
【0039】
さらなる実施形態において、式IV中の変数nは、15から20までの整数であるか、またはnは16、17、もしくは18であり、ここで、残りの変数は、式IVについての上の記載の通りである。
【0040】
さらなる実施形態において、式IV中のLは、PEG、直鎖アルキル、もしくは環状アルキルであるか;または、Lは、直鎖(C-C10)アルキル、(C-C)環状アルキル、もしくは-(O-CH-CH-(ここで、pは1から5までの整数である)であるか;または、Lは直鎖(C-C)アルキルであり、ここで、残りの変数は、式IVについての上の記載の通りである。
【0041】
本開示は、式V:
【化8】
の化合物またはその薬学的に許容される塩も提供し、式中:Lはリンカーであり;Yはタンパク質、抗体、ペプチド、または核酸であり;nは5から25までの整数であり;各Rは独立して:
【化9】
からなる群から選択される。
【0042】
さらなる実施形態において、式V中の変数nは、15から20までの整数であるか、またはnは16、17、もしくは18であり、ここで、残りの変数は、式Vについての上の記載の通りである。
【0043】
さらなる実施形態において、式V中のLは、PEG、直鎖アルキル、もしくは環状アルキルであるか;または、Lは、直鎖(C-C10)アルキル、環状(C-C)アル
キル、もしくは-(O-CH-CH-(ここで、pは1から5まで整数である)であるか;または、Lは直鎖(C-C)アルキルであり、ここで、残りの変数は、式Vについての上の記載の通りである。
【0044】
さらなる実施形態において、式I~Vのいずれかの中のYは、抗体または抗体フラグメントであり、ここで、残りの変数は、上の記載の通りである。
【0045】
さらなる実施形態において、式I~Vのいずれかの中のYは、ヒト抗体またはヒト抗体フラグメントであり、ここで、残りの変数は、上の記載の通りである。
【0046】
さらなる実施形態において、式I~Vのいずれかの中のYは、抗原結合タンパク質であり、ここで、残りの変数は、上の記載の通りである。
【0047】
さらなる実施形態において、式I~Vのいずれかの中のYは、ペプチドであり、ここで、残りの変数は、上の記載の通りである。
【0048】
さらなる実施形態において、式I~Vのいずれかの中のYは、タンパク質であり、ここで、残りの変数は、上の記載の通りである。
【0049】
さらなる実施形態において、式I~Vのいずれかの中のYは、核酸であり、ここで、残りの変数は、上の記載の通りである。
【0050】
化合物の具体例を、本開示のいたる所で提供する。薬学的に許容される塩、ならびにこれらの化合物の中性の形態も、本明細書中に含める。
【0051】
4.使用、製剤、および投与
本明細書中に記載の化合物は、いままで「新薬の開発につながらないような」標的を標的とするために、生分子(例えば、タンパク質、ペプチド、核酸)を細胞内へと運ぶためのビヒクルとして用いられ得る。本明細書中に記載のキャリア化合物は、チオール特異性部分、またはチオール反応性部分(例えば、ホスホロチオエート、マレイミド、またはチオールなど)を含有する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、開示される新規化合物は、生理的な条件下で細胞表面チオールと反応して、一過的な共有結合を形成し、細胞取り込みプロセスを誘導するか、または容易にすると考えられる(図1)。化学的な方法または生物学的なアプローチにより、このチオール特異性基を対象の生物製剤(例えば、治療剤または診断剤など)とコンジュゲートさせることができる。この、生物製剤含有化合物が、細胞膜を横切って移動して細胞内の標的に到達することを見出した。
【0052】
特定の実施形態において、本開示は、疾患または障害を有する、本明細書中で定義される被験体(例えばヒト)の処置であって、有効量の、式Iの化合物もしくはその薬学的に許容される塩、またはこれらの組成物を患者に投与するステップを包含する処置に役立つ化合物を提供する。
【0053】
単一の剤形の組成物を生成するためにキャリア材料と組み合わされ得る、提供される化合物の量は、処置される患者と投与の特定の様式とによって変わる。
【0054】
本明細書中に記載される疾患および状態の1つまたはそれより多くを処置するか、または前記疾患および状態の1つまたはそれより多くの重症度を低減するのに有効な、任意の量、および任意の投与ルートを用いて、本明細書中に記載の化合物または組成物を投与してもよい。任意の特定の患者についての具体的な投薬量および処置レジメンは、年齢、体
重、全体的な健康状態、性別、食事、投与の時間、排泄率、薬物の組み合わせ、主治医の判断、および処置される具体的な疾患の重症度を含む様々な因子に依存する。
【0055】
本明細書中に記載の化合物および組成物は、1種またはそれより多種の生物製剤の細胞内送達に役立つか、またはその細胞内送達を増強し、この生物製剤としては、抗原結合タンパク質(例えば、抗体および抗体フラグメント)、タンパク質、ペプチド、および核酸が挙げられる。したがって、本開示は、例えば抗STAT3抗体により処置され得る疾患または障害の処置の方法を提供するものと理解される。
【0056】
特定の実施形態において、本明細書中に記載の化合物および組成物は、がんまたは他の新生物性の状態の処置を必要とする被験体における、がんまたは他の新生物性の状態の処置に役立つ。特定の実施形態において、本明細書中に記載の化合物および組成物は、感染の処置を必要とする被験体における、感染の処置に役立つ。特定の実施形態において、本明細書中に記載の化合物および組成物は、神経性の状態または障害の処置を必要とする被験体における、神経性の状態または障害の処置に役立つ。
【0057】
別の側面において、診断用化合物またはイメージング化合物を提供する。その化合物は、上記式により定義された任意の化合物(Yが診断剤またはイメージング剤である件を除く)である。診断剤またはイメージング剤を細胞標的へと送達する方法も提供する。この方法は、上記式により定義された(Yが診断剤またはイメージング剤である件を除く)診断用化合物またはイメージング化合物を細胞標的へと、例えば、in vitroで細胞へと送達することか、または被験体に有効量の化合物を投与することにより投与するステップを包含する。
【実施例0058】
実施例
以下の実施例において示すように、特定の例示的な実施形態において、化合物を、次の一般的な手順にしたがって調製する。この一般的な方法は、本明細書中の特定の化合物の合成について示すが、次の一般的な方法および当業者に公知の他の方法は、本明細書中に記載のすべての化合物に適用され得ると理解される。
【0059】
フルオレセイン-ホスホロチオエート20マー化合物の細胞内在化
細胞内在化について確認するために、次のホスホロチオエート20マー:
【化10】
を合成した。
【0060】
この化合物の細胞内在化を、HUVECにおいて、10uMで試験した。細胞(HUVECおよびHELA)を、これらの培養液中で一晩プレートした(5K/ウェル,96wp)。実験の日に、液をフルオロブライト(血清を含まない)と交換する。
【0061】
その後、化合物をフルオロブライト中に調製して、2連で、終濃度10uMで細胞に分配した。Incucyte上での視覚化を可能にするために、60分間のインキュベーション後にSNを吸引して新鮮な液と交換する。結果を図3に示す。
【0062】
PE-抗ヒトIgGを有するコンジュゲートの内在化(2Hインキュベーション)の検出
抗体の内在化について確認するために、ホスホロチオエート20マー:
【化11】
にSTAT3抗体をコンジュゲートさせた。細胞内在化を試験し、その結果を図4に示す。
【0063】
本出願のいたる所で引用されるすべての参考文献(文献参照、発行された特許、公開された特許出願、および同時係属特許出願を含む)の内容が、ここに、その全体について参照により、本明細書中に明示的に援用される。他で定義されない限り、本明細書中で用いられるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって通常知られる意味と一致する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
式I:
【化12】

を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であって、式中:
各Tはチオール反応性基、ホスホロチオエート、チオホスホアミノ酸、およびマレイミドから選択され;
各Lはリンカー基であり;
Yはタンパク質、抗体、ペプチド、または核酸であり;
nは1から50までの整数であり;
mは0、1、または2である、化合物またはその薬学的に許容される塩。
(項目2)
各Lが独立して、ポリエチレングリコール(PEG)、アルキル、または環状アルキルから選択される、項目1に記載の化合物。
(項目3)
nが5から25までの整数である、項目1または2に記載の化合物。
(項目4)
nが15、16、または17である、項目3に記載の化合物。
(項目5)
各Tが独立して:
【化13】
から選択される、項目1から4のいずれかに記載の化合物。
(項目6)
各Lが独立して、ポリエチレングリコール(PEG)、直鎖アルキル、および環状アルキルから選択される、項目1から5のいずれかに記載の化合物。
(項目7)
各Lが、直鎖(C-C)アルキルまたは環状アルキルである、項目1から6のいずれかに記載の化合物。
(項目8)
各Lが、直鎖(C-C)アルキルまたは(C-C10)環状アルキルである、項目7に記載の化合物。
(項目9)
各Lが、直鎖プロピルアルキルである、項目8に記載の化合物。
(項目10)
mが0である、項目1に記載の化合物。
(項目11)
mが1である、項目1に記載の化合物。
(項目12)
mが2である、項目1に記載の化合物。
(項目13)
式II:
【化14】
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であって、式中:
各RはCHまたはHであり;
各Lはリンカーであり;
Yはタンパク質、抗体、ペプチド、または核酸であり;
nは5から25までの整数である、化合物またはその薬学的に許容される塩。
(項目14)
nが12から20までの整数である、項目13に記載の化合物。
(項目15)
nが15、16、または17である、項目13に記載の化合物。
(項目16)
各Lが独立して、ポリエチレングリコール(PEG)、直鎖アルキル、および環状アルキルから選択される、項目13~15のいずれかに記載の化合物。
(項目17)
各Lが直鎖アルキルである、項目16に記載の化合物。
(項目18)
各Lが独立して、直鎖(C-C)アルキルもしくは環状(C-C)アルキル、または-(O-CH-CH-であり、ここで、pは1から5までの整数である、項目16に記載の化合物。
(項目19)
各Lが-CH-である、項目13から15のいずれかに記載の化合物。
(項目20)
各Lが-(O-CH-CH-であり、ここで、pは1から5までの整数である、項目13から15のいずれかに記載の化合物。
(項目21)
各RがHであり、各Lが-CH-であり、nが15、16、または17であり、Yが抗体である、項目13に記載の化合物。
(項目22)
nが16である、項目21に記載の化合物。
(項目23)
式III:
【化15】
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であって、式中:
Lはリンカーであり;
nは1から3までの整数であり;
mは5から25までの整数であり;
Yはタンパク質、抗体、ペプチド、または核酸である、化合物またはその薬学的に許容される塩。
(項目24)
mが15~20である、項目23に記載の化合物。
(項目25)
mが16、17、または18である、項目24に記載の化合物。
(項目26)
Lが、PEG、直鎖アルキル、または環状アルキルである、項目23から25のいずれかに記載の化合物。
(項目27)
Lが、直鎖(C-C10)アルキルまたは-(O-CH-CH-であり、ここで、pは1から5までの整数である、項目26に記載の化合物。
(項目28)
式IV:
【化16】
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であって、式中:
Lはリンカー基であり;
Yはタンパク質、抗体、ペプチド、または核酸であり;
nは5から25までの整数である、化合物またはその薬学的に許容される塩。
(項目29)
nが15~20までの整数である、項目28に記載の化合物。
(項目30)
nが16、17、または18である、項目29に記載の化合物。
(項目31)
Lが、PEG、直鎖アルキル、または環状アルキルである、項目28から30のいずれかに記載の化合物。
(項目32)
Lが、直鎖(C-C10)アルキル、(C-C)環状アルキル、または-(O-CH-CH-であり、ここで、pは1から5までの整数である、項目31に記載の化合物。
(項目33)
Lが直鎖(C-C)アルキルである、項目31に記載の化合物。
(項目34)
式V:
【化17】
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であって、式中:
Lはリンカーであり;
Yはタンパク質、抗体、ペプチド、または核酸であり;
nは5から25までの整数であり;
各Rは独立して:
【化18】
から選択される、化合物またはその薬学的に許容される塩。
(項目35)
nが15から20までの整数である、項目34に記載の化合物。
(項目36)
nが16、17、または18である、項目35に記載の化合物。
(項目37)
Lが、PEG、直鎖アルキル、または環状アルキルである、項目34から36のいずれかに記載の化合物。
(項目38)
Lが、直鎖(C-C10)アルキル、環状(C-C)アルキル、または-(O-CH-CH-であり、ここで、pは1から5まで整数である、項目37に記載の化合物。
(項目39)
Lが直鎖(C-C)アルキルである、項目38に記載の化合物。
(項目40)
Yが、抗体または抗体フラグメントである、項目1から39のいずれかに記載の化合物。
(項目41)
Yがペプチドである、項目1から39のいずれかに記載の化合物。
(項目42)
Yがタンパク質である、項目1から39のいずれかに記載の化合物。
(項目43)
Yが核酸である、項目1から39のいずれかに記載の化合物。
(項目44)
項目1から43のいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩と;薬学的に許容されるキャリアとを含有する、医薬組成物。
(項目45)
治療剤を細胞内へと送達する方法であって、該方法は、項目1から43のいずれか1項に記載の化合物または項目44に記載の組成物と細胞を接触させる工程を包含し、ここで、該化合物が該細胞内へと内在化される、方法。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】