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特開2022-91965発電装置、制御装置及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091965
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】発電装置、制御装置及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04228 20160101AFI20220614BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20220614BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20220614BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20220614BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20220614BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20220614BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20220614BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20220614BHJP
【FI】
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/04746
H01M8/0432
H01M8/04701
H01M8/04694
H01M8/04014
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/12 102B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063159
(22)【出願日】2022-04-05
(62)【分割の表示】P 2017248307の分割
【原出願日】2017-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】山内 亨祐
(57)【要約】
【課題】 発電運転を停止する際の燃料電池の耐久性が低下することを抑制することが可能な発電装置などを提供する。
【解決手段】 本開示に係る発電装置は、燃料電池と、燃料電池に供給される空気の単位時間当たりの供給量を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、燃料電池の発電運転を停止するための停止工程において、空気の単位時間当たりの供給量を増加させるように制御し、停止工程の開始時における空気の単位時間当たりの供給量を基準として、空気の単位時間当たりの供給量を基準から増加させるように制御し、空気の単位時間当たりの供給量を、所定量増加させた後、所定時間維持する制御を複数回行うように制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池に供給される空気の単位時間当たりの供給量を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記燃料電池の発電運転を停止するための停止工程において、前記空気の単位時間当たりの供給量を増加させるように制御し、
前記停止工程の開始時における前記空気の単位時間当たりの供給量を基準として、前記空気の単位時間当たりの供給量を前記基準から増加させるように制御し、
前記空気の単位時間当たりの供給量を、所定量増加させた後、所定時間維持する制御を複数回行うように制御する、発電装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記燃料電池の温度が予め決められた第一温度以下となった場合に前記燃料電池への燃料ガスの供給を停止させた後であって、前記燃料電池の温度が予め決められた前記第一温度より低温の第二温度以下となった場合、かつ前記燃料電池の温度変化に依存せずに予め決められた時間が経過した場合に、前記燃料電池への前記空気の供給を停止させる請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記燃料電池から排出される排ガスと熱媒体とで熱交換するための熱交換器と、
前記熱媒体を循環させる循環流路と、
該循環流路における、前記熱媒体を循環させるポンプ及び前記熱媒体を冷却する放熱器のうち少なくとも一方、をさらに備え、
前記制御装置は、前記停止工程の開始時に、前記放熱器及び前記ポンプのうち少なくとも一方の出力を増大させるように制御する請求項1または2に記載の発電装置。
【請求項4】
燃料電池を備える一乃至複数の発電装置を制御する制御装置であって、
前記燃料電池の発電運転を停止するための停止工程において、前記燃料電池に供給される空気の単位時間当たりの供給量を増加させるように制御し、
前記停止工程の開始時における前記空気の単位時間当たりの供給量を基準として、前記空気の単位時間当たりの供給量を前記基準から増加させるように制御し、
前記空気の単位時間当たりの供給量を、所定量増加させた後、所定時間維持する制御を複数回行うように制御する、制御装置。
【請求項5】
燃料電池を備える一乃至複数の発電装置を制御する制御装置に、
前記燃料電池の発電運転を停止するための停止工程において、前記燃料電池に供給される空気の単位時間当たりの供給量を増加させるように制御し、
前記停止工程の開始時における前記空気の単位時間当たりの供給量を基準として、前記空気の単位時間当たりの供給量を前記基準から増加させるように制御し、
前記空気の単位時間当たりの供給量を、所定量増加させた後、所定時間維持する制御を複数回行うように制御する、制御ステップを実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置、制御装置及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、水素含有ガス(燃料ガス)と酸素含有ガス(通常は空気)とを用いて電力を得ることができる燃料電池を用いた発電装置の開発が進められている。この発電装置においては、発電に伴って発生した排熱を熱交換器で回収し、この熱交換器で得られた温水を蓄熱タンクに蓄積し、温水需要に対する供給を行っている。
【0003】
ところで、上記発電装置の運転を停止する際は、燃料電池を室温まで冷却する必要がある。燃料電池を冷却する方法としては、空気を燃料電池に供給して冷却する燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-340075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1においては、空気供給に関する具体的な流量等が開示されておらず、運転停止時に、燃料電池の耐久性が低下するおそれがあった。
【0006】
本開示の目的は、発電運転を停止する際の燃料電池の耐久性の低下を抑制することが可能な発電装置、制御装置及び制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の発電装置は、燃料電池と、前記燃料電池に供給される空気の単位時間当たりの供給量を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記燃料電池の発電運転を停止するための停止工程において、前記空気の単位時間当たりの供給量を増加させるように制御し、前記停止工程の開始時における前記空気の単位時間当たりの供給量を基準として、前記空気の単位時間当たりの供給量を前記基準から増加させるように制御し、前記空気の単位時間当たりの供給量を、所定量増加させた後、所定時間維持する制御を複数回行うように制御する、発電装置である。
【0008】
また本開示の制御装置は、燃料電池を備える上記発電装置を制御する制御装置であって、前記燃料電池の発電運転を停止するための停止工程において、前記燃料電池に供給される空気の単位時間当たりの供給量を増加させるように制御し、前記停止工程の開始時における前記空気の単位時間当たりの供給量を基準として、前記空気の単位時間当たりの供給量を前記基準から増加させるように制御し、前記空気の単位時間当たりの供給量を、所定量増加させた後、所定時間維持する制御を複数回行うように制御する、制御装置である。
【0009】
また本開示の制御プログラムは、燃料電池を備える上記発電装置を制御する制御装置に、前記燃料電池の発電運転を停止するための停止工程において、前記燃料電池に供給される空気の単位時間当たりの供給量を増加させるように制御し、前記停止工程の開始時における前記空気の単位時間当たりの供給量を基準として、前記空気の単位時間当たりの供給量を前記基準から増加させるように制御し、前記空気の単位時間当たりの供給量を、所定量増加させた後、所定時間維持する制御を複数回行うように制御する、制御ステップを実行させる、制御プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る発電装置、制御装置又は制御プログラムによれば、発電運転を停止する際の燃料電池の耐久性の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態に係る燃料電池装置の一例の構成を示す概略図である。
図2】本開示の実施形態に係る燃料電池装置におけるセルスタック装置の外観を示す斜視図である。
図3】本開示の実施形態に係る燃料電池装置のシステム遷移図の一例である。
図4】第1実施形態に係る燃料電池装置の停止工程における主制御を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る燃料電池装置の停止工程における空気流量制御を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態に係る燃料電池装置の停止工程における主制御を示すフローチャートである。
図7】第2実施形態に係る燃料電池装置の停止工程における空気流量制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係る燃料電池装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下で参照する各図には、本開示に係る燃料電池装置の構成部材のうち、本燃料電池装置の特徴を説明するための主な構成部材を示している。したがって、本燃料電池装置は、各図に示されていない周知の構成部材を備えていてもよい。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、本開示の実施形態に係る燃料電池装置の構成例の概略を示すブロック図である。燃料電池装置100は、燃料電池の耐久性が低下することを抑制し得る装置であり、主にセルスタック装置1を具備する燃料電池モジュール20、原燃料供給用ポンプ(以下、単に「ガスポンプ」という。)2a、改質水供給用ポンプ(以下、単に「改質水ポンプ」という。)3a、空気ブロア11a、熱交換器30、循環ポンプ31a、蓄熱タンク40、ラジエータ50、ラジエータファン60、内部温度センサ71、熱媒低温度センサ72、熱媒高温度センサ73、制御装置80及び記憶装置90を備える。なお、燃料電池装置100は、発電装置の一例である。
【0014】
ここで、熱交換器30、蓄熱タンク40、ラジエータ50及び循環ポンプ31aは、循環配管31によって接続されており、循環配管31の内部には熱媒体(例えば、水)が流過される。
【0015】
燃料電池装置100は、以下にさらに詳細に述べられるように、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、少なくとも1つのプロセッサを含む制御装置80を備える。種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路として、又は複数の通信可能に接続された集積回路及び/若しくはディスクリート回路として実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術に従って実行されることが可能である。1つの実施形態において、プロセッサは、例えば、関連するメモリに記憶された指示を実行することによって1以上のデータ計算手続又は処理を実行するように構成された1以上の回路又はユニットを含む。他の実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続き又は処理を実行するように構成されたファームウェア(例えば、ディスクリートロジックコンポーネント)であってもよい。種々の実施形態によれば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路、デジタル信号処理装置、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、又はこれらのデバイス若しくは構成の任意の組み合わせ、又は他の既知のデバイス及び構成の組み合わせを含み、以下に説明される機能を実行してもよい。
【0016】
制御装置80は、記憶装置90と、燃料電池モジュール20と、ガスポンプ2aと、改質水ポンプ3aと、空気ブロア11aと、内部温度センサ71と、循環ポンプ31aと、ラジエータファン60と、熱媒低温度センサ72と、熱媒高温度センサ73とに接続され、これらの各機能部をはじめとして燃料電池装置100の全体を制御及び管理する。制御装置80は、記憶装置90に記憶されているプログラムを取得して、このプログラムを実行することにより、燃料電池装置100の各部に係る種々の機能を実現する。制御装置80から他の機能部に制御信号又は各種の情報などを送信する場合、制御装置80と他の機能部とは、有線又は無線により接続されていればよい。制御装置80が行う本実施形態に特徴的な制御については、さらに後述する。また、本実施形態において、制御装置80は、特に後述する空気ブロア11a、ガスポンプ2a及び改質水ポンプ3aの動作を制御する。なお、本実施形態において、制御装置80は、所定の時間を計測することができるため、空気の単位時間当たりの供給量(以下、「空気流量」ともいう。)等を算出することもできる。
【0017】
記憶装置90は、プログラム及びデータを記憶できる。記憶装置90は、処理結果を一時的に記憶する作業領域としても利用してもよい。記憶装置90は、記録媒体を含む。記録媒体は、半導体記憶媒体、及び磁気記憶媒体等の任意の非一過的(non-transitory)な記憶媒体を含んでよい。記憶装置90は、複数の種類の記憶媒体を含んでよい。記憶装置90は、メモリカード、光ディスク、又は光磁気ディスク等の可搬の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置との組合せを含んでよい。記憶装置90は、RAM(Random Access Memory)等の一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでよい。
【0018】
セルスタック装置1は、改質器4を備えていてもよく、改質器4等から供給される改質された燃料ガスと、空気ブロア11aによって供給される酸素含有ガス(通常は、空気)とを用いて発電を行う燃料電池(セルスタック8を構成する各燃料電池セル7)を備える。改質器4は、ガスポンプ2aから供給される原燃料ガスと、改質水ポンプ3aから供給される改質水とを用いた改質反応によって、水素を含む燃料ガスを生成する。
【0019】
内部温度センサ71はセルスタック8の中央付近の温度(以下、「スタック温度」ともいう。)を検出するための温度センサであり、熱媒低温度センサ72は、熱交換器30に流入する熱媒体の温度を検出するための温度センサであり、熱媒高温度センサ73は、熱交換器30から流出する熱媒体の温度を検出するための温度センサである。なお、各温度センサによる温度の検出は、予め決められたタイミングで(例えば、1秒間隔毎に)実施し、後述する「降温」の判定は、複数回検出された温度に基づいて判定する。
【0020】
熱交換器30は、上記の発電時に生じる排熱を利用して熱媒体を加熱する。加熱された熱媒体は蓄熱タンク40に供給される。
【0021】
より詳細には、熱交換器30は、燃料電池モジュール20において生じた排ガスと、この排ガスよりも低温の熱媒体との間で熱交換を行い、この熱交換によって加熱された熱媒体は、循環配管31を介して蓄熱タンク40の上部に供給される。さらに、熱交換器30には、ラジエータ50及び循環ポンプ31aを介して、蓄熱タンク40の下部付近の低温の熱媒体が供給される。ここで、熱交換器30に流入する熱媒体の温度(以下、「熱媒低温度」ともいう。)を検出するための熱媒低温度センサ72と、熱交換器30から流出する熱媒体の温度(以下、「熱媒高温度」ともいう。)を検出するための熱媒高温度センサ73が、それぞれ配設されている。なお、循環配管31は、循環流路の一例である。
【0022】
蓄熱タンク40は、熱交換器30において加熱された熱媒体の供給を受け、これを蓄積するタンクであり、その内部に温度成層を形成することができる。
【0023】
ラジエータ50は、ラジエータファン60によって生じた送風によって熱媒体を空冷するための冷却ユニットである。循環ポンプ31aは、ラジエータ50を経由して供給された熱媒体を熱交換器30に送出するポンプであり、例えばうず巻きポンプである。
【0024】
ここで、ラジエータファン60の回転数、及び循環ポンプ31aにおける単位時間当たりの熱媒体の送出量(以下、「熱媒流量」ともいう。)は、制御装置80によって制御される。ラジエータファン60の回転数及び循環ポンプ31aにおける熱媒流量の制御は、それぞれの制御信号のデューティ比を変えることによって行ってもよい。なお、ラジエータ50及びラジエータファン60は放熱器の一例であり、循環ポンプ31aはポンプの一例である。
【0025】
そして、熱交換器30内で温度が低下した排ガスに含まれる水分は、配管34を介して改質水タンク35に蓄積され、制御装置80が制御する改質水ポンプ3aによって改質器4に供給される。
【0026】
ところで、運転停止直後の高温状態にある燃料電池に大流量で空気が供給された場合は、燃料電池セルの電極等に生じる酸化により、又は燃料電池セルが冷却されることにより、燃料電池セルが体積膨張又は収縮することとなる。これにより、燃料電池セルにクラックが発生し、燃料電池の耐久性が低下するおそれがあった。
【0027】
そこで、制御装置80は、燃料電池装置100の発電運転を停止するための停止工程において、空気ブロア11aを制御することにより、燃料電池モジュール20内へ供給する空気の流量を徐々に増加させるように制御する。
【0028】
より具体的には、停止工程における初期設定として、空気ブロア11a、ガスポンプ2a及び改質水ポンプ3aについて、予め決めた流量をそれぞれ設定し、設定した各流量でそれぞれの装置を作動させる。特に、空気ブロア11aについては、燃料電池モジュール20内に供給する空気の流量を徐々に増加させるように制御する。この制御により、停止工程の開始時(すなわち、発電工程から停止工程に遷移した直後)の高温状態にある燃料電池モジュール20に、空気を徐々に増加するように供給することができる。これにより、燃料電池セル7の急激な体積膨張又は収縮を抑制できるため、燃料電池セル7にクラックが発生し、燃料電池の耐久性が低下することを抑制できる。
【0029】
制御装置80は、停止工程の開始時、言い換えれば発電工程の終了時における単位時間当たりの空気流量を基準として、燃料電池モジュール20内への単位時間当たりの空気流量を、上記の基準から徐々に増加させるように制御してもよい。この制御により、停止工程の開始時における燃料電池モジュール20内への空気流量の急増に伴って生ずる、燃料電池セル7の急激な体積膨張又は収縮を抑制できるため、燃料電池セル7にクラックが発生し、燃料電池の耐久性が低下することを抑制できる。
【0030】
制御装置80は、燃料電池セル7に供給する空気流量を所定量増加させた後、所定時間維持する制御を複数回行うように制御してもよい。この制御により、所定時間維持する間に空気流量を安定させて、停止工程における空気ブロア11aの空気流量の制御の確実性を高めることが可能になる。
【0031】
制御装置80は、スタック温度が予め決めた第一温度以下になった場合は、空気ブロア11aより先に、ガスポンプ2a及び改質水ポンプ3aを停止させるように制御してもよい。この場合、制御装置80は、スタック温度が予め決められた第一温度以下に降温したことによって原燃料ガスの供給を停止させた後であって、スタック温度が第一温度より低温の第二温度以下となり、かつ、燃料電池の温度変化に依存せずに予め決められた時間が経過した場合に、燃料電池モジュール20内への空気の供給を停止させるように制御してもよい。この制御により、原燃料ガスの供給が停止した後であって、スタック温度が比較的早期に降温して第二温度以下となった場合であっても、燃料電池の温度変化に依存せずに予め決められた時間が経過するまでは、空気の供給を停止しないため、燃料ガスのパージが不完全な状態で空気の供給が停止してしまうことを抑制することができる。
【0032】
ところで、燃料電池装置100の停止工程の開始後に燃料電池モジュール20内への空気の流入量を増大させることに起因して、燃料電池モジュール20内の比較的高温の排ガスの流出量が増大する。これにより、燃料電池モジュール20の下流に位置する熱交換器30の温度が瞬時に上昇する場合があり、熱交換器30内で排ガスと熱交換された熱媒体が突沸する場合がある。
【0033】
そこで、制御装置80は、前記停止工程の開始時に、循環ポンプ31a又はラジエータファン60のうち少なくとも一方の出力を増大させるように制御してもよい。この制御により、循環ポンプ31aの出力を増大させて循環配管31内を流過する熱媒体の流量を増加させることによって熱媒体の温度上昇を抑制し、又はラジエータファン60の回転数を増大させることによって熱媒体を冷却し、その温度上昇を抑制するので、結果として、熱媒体の突沸を抑制することが可能となる。
【0034】
図2は、本開示の実施形態に係る燃料電池装置におけるセルスタック装置の外観を示す斜視図である。セルスタック装置1は、原燃料ガスを改質して燃料ガスを生成する改質器4と、燃料電池セル7を複数個配列して電気的に接続してなるセルスタック8と、燃料電池セル7に燃料ガスを供給するためのマニホールド6とを備える。
【0035】
改質器4は、例えば、炭化水素ガスである天然ガス、メタノール、灯油などの原燃料ガスと水蒸気とにより改質反応させて水素ガスを含む燃料ガスを生成する。改質反応では、一酸化炭素、二酸化炭素、及び水素と、残存成分であるメタン及び水蒸気とを含んだ燃料ガスが得られる。なお、改質器4における改質法は、上述する水蒸気改質法に限られず、部分酸化法や、自己熱改質法であってもよい。
【0036】
改質反応には改質触媒が用いられ、改質効率や耐久性に優れた改質触媒を用いることが好ましく、例えば、γ-アルミナ、α-アルミナ及びコージェライトなどの多孔質担体のいずれか一種に、Ru、Ptなどの貴金属やNi、Feなどの卑金属を担持させた改質触媒を用いることができる。
【0037】
改質器4には、原燃料ガスを内部に供給するための原燃料ガス供給管2と、改質水を内部に供給するための改質水供給管3とが設けられ、燃料電池セル7(セルスタック8)の上方に所定の間隔をあけて配置される。改質反応によって発生した燃料ガスは、改質器4から燃料ガス供給管5を通ってマニホールド6へと供給される。
【0038】
セルスタック8は、内部にガス流路を有する燃料電池セル7を複数個立設させた状態で、燃料電池セル7間に集電部材9を介して電気的に直列に接続して構成される。
【0039】
マニホールド6は、セルスタック8を構成する燃料電池セル7の下端を固定するとともに、各燃料電池セル7に、改質器4で生成された燃料ガスを供給する。
【0040】
セルスタック8の両端部側には、燃料電池セル7の発電により生じた電流を収集して外部に引き出すための、電流引き出し部を有する集電部材9が配置されている。
【0041】
また、燃料電池セル7の上方で、燃料電池セル7と改質器4との間の燃焼領域10では、燃料電池セル7で使用されなかった燃料ガス及び酸素含有ガスを含む排ガスが燃焼される。燃焼領域10には、着火装置11が設けられていてもよい。
【0042】
燃料電池セル7としては、内部を燃料ガスが長手方向に流通するガス流路を有する中空平板型で、支持体の表面に、燃料側電極層、固体電解質層及び酸素側電極層を順に設けてなる固体酸化物形燃料電池セルであってもよい。
【0043】
なお、燃料電池セル7は、上記以外に例えば円筒状、平板状の燃料電池セルを用いることもでき、また支持体の表面に酸素側電極層、固体電解質層及び燃料側電極層を順に設けてなる固体酸化物形燃料電池セルとすることもできる。
【0044】
図3は、本実施形態に係る燃料電池装置のシステム遷移図の一例であり、燃料電池装置100によって発電を行う場合の制御装置80の制御手順を示している。
【0045】
制御装置80は、オペレータからシステム起動の指示を受け付けると、システムチェッ
クを実行する(S1)。システムチェックとしては、漏電の有無、各種センサ、各種ポンプ及びバッテリ等について異常の有無などを確認し、この確認結果を、表示装置等を介してオペレータに通知する。その後、制御装置80は、発電開始の指示を受け付けるまで、燃料電池装置100を停止(待機)状態で保持する(S2)。
【0046】
その後、発電開始の指示を受け付けると、制御装置80は、起動工程に移行する(S3)。起動工程では、空気ブロア11aを起動して燃焼領域10付近に空気を供給した後、改質水ポンプ3aを作動させることにより、改質水が供給される改質水供給管3に改質水を充填する。その後、着火装置(図示せず)を起動し、原燃料ガスを供給する。
【0047】
着火が成功すると、昇温工程(S4)に移行する。昇温工程では、一定の温度になるまで改質器4を暖機する。
【0048】
さらに、発電工程(S5)では、燃料電池装置100を用いた発電が実施される。その後、オペレータから「停止」の指示を受け付けると、制御装置80は、停止工程(S6)に移行する。停止工程では、燃料電池モジュール20内の温度が所定温度以下となった場合に、燃料電池モジュール20への原燃料ガスの供給を停止して、燃料電池モジュール20内の温度を徐々に下げるように制御装置80が制御する。
【0049】
次に、燃料電池装置の停止工程における制御について具体的に説明する。
【0050】
図4は、本実施形態に係る燃料電池装置の停止工程における主制御を示すフローチャートである。図4に示す主制御では、主に、スタック温度に基づいてガスポンプ2a、改質水ポンプ3a及び空気ブロア11aの稼働と停止とを制御する。なお、停止工程では、図4の主制御と並行して、後述の図5に示す空気ブロア11aについての空気流量制御も実行される。ここで、上記の主制御と空気流量制御を別々のプロセッサ等で制御してもよいし、1個のプロセッサ等によって時分割で制御してもよい。
【0051】
制御装置80は、発電工程から停止工程への移行時に、初期設定として、ガスポンプ2a、改質水ポンプ3a及び空気ブロア11aの各流量について設定を行い、設定した各流量でそれぞれを作動させる(S10)。例えば、ガスポンプ2aについては、0.3[NL/min]を、改質水ポンプ3aについては、S/C=2.5を、それぞれ停止工程の開始時の流量として設定する。また、空気ブロア11aについては、例えば、発電工程の終了時における空気流量を、停止工程の開始時の基準流量として設定する。ここで、「S/C」とは、スチームカーボン比であり、原燃料ガスに含まれる炭素と改質反応の際に添加する水蒸気とのモル比を表わす数値である。
【0052】
ガスポンプ2a、改質水ポンプ3a及び空気ブロア11aの各流量が設定されると、空気流量制御を起動する(S11)。空気流量制御では、供給する空気の流量を徐々に増加させるよう空気ブロア11aの動作が制御される。この制御については、後で詳細に説明する。
【0053】
発電が停止すると、空気ブロア11aから供給される空気によって燃料電池セル7は冷却される。このとき、空気の流量は徐々に増加するように制御されているため、燃料電池セル7の酸化や、燃料電池セル7の急激な温度低下が抑制される。これにより、燃料電池セル7の急激な体積膨張又は収縮を抑制できるため、燃料電池セル7にクラックが発生し、燃料電池の耐久性が低下することを抑制できる。
【0054】
そして、制御装置80は、内部温度センサ71で検出されたスタック温度が、予め決められた第一温度(T1:例えば300℃)以下に降温したかを判断する(S12)。第一温度以下に降温した場合に(S12でYes)、ガスポンプ2aを停止させると共に、この停止以降の時間の計時を開始する(S13)。この後、制御装置80は、改質水ポンプ3aを停止させるように制御する。(S14)。なお、ここではガスポンプ2aを停止させた後で改質水ポンプ3aを停止させているが、ガスポンプ2aと改質水ポンプ3aは同時に停止させてもよい。
【0055】
燃料電池セル7は、高温条件の下では酸化されやすい。そのため、スタック温度が高い場合には空気とともに燃料ガスと水を供給することで、燃料電池セル7の酸化が抑制される。そして、スタック温度が降温し、燃料電池セル7が酸化されにくい温度より低くなった場合、つまり第一温度以下に降温した場合に、燃料ガスと水の供給を停止して空気のみを供給する。これにより、燃料電池セル7の冷却が継続して行われる。
【0056】
さらに、制御装置80は、スタック温度が予め決められた、上記第一温度より低温の第二温度(T2:例えば100℃)以下に降温し、かつ、スタック温度の変化に依存せずに予め決められた所定時間(例えば、60秒)が経過した場合に(S15でYes)、空気ブロア11aを制御して空気の供給を停止させる(S16)。ここでの所定時間とは、燃料ガスの供給を停止してから、燃料ガスを完全にパージするのに必要とされる時間である。これにより、スタック温度が比較的早期に降温して第二温度以下となった場合であっても、燃料ガスのパージが不完全な状態で空気の供給が停止してしまうことを抑制することができる。この際、例えば、主制御から後述の空気流量制御に、空気ブロア11aについて「停止指示」を通知することとしてもよい。
【0057】
図5は、本実施形態に係る燃料電池装置の停止工程における空気流量制御を示すフローチャートである。図5に示す空気流量制御では、所定の時間経過に基づいて空気ブロア11aの空気流量を制御する。
【0058】
空気流量制御の開始時、空気ブロア11aの基準空気流量には、発電工程の終了時における空気量が設定されている。
【0059】
そして、制御装置80は、予め決められた所定時間(例えば30秒)が経過したかを判断する(S20)。所定時間が経過した場合に(S20でYes)、空気流量を予め決められた所定量(例えば、4[NL/min])増加させるように制御する(S21)。この後、制御装置80は、空気流量が上限値であるかを判断し(S22)、空気流量が上限でない場合は、上記の制御を繰り返す(S20~S22)。
【0060】
さらに、制御装置80は、空気流量が上限値になった場合は(S22でYes)、空気ブロア11aの空気流量を上限値に保持するように制御する(S23)。なお、制御装置80は、主制御から「停止指示」の通知等を受信した場合は、空気ブロア11aを停止させるように制御する。
【0061】
(第2実施形態)
本実施形態では、制御装置80の他の制御形態について説明する。図6は、本実施形態に係る燃料電池装置の停止工程における主制御を示すフローチャートであり、図7は、空気流量制御を示すフローチャートである。本実施形態は、主制御が、空気ブロア11aの動作を間接的に制御している点で第1実施形態と異なる。また本実施形態では、1個のプロセッサを用いた時分割の制御によって、「主制御のタスク」と「空気流量制御のタスク」を実行することとする。なお、上述の第1実施形態の図4におけるステップS12~S15と図6におけるステップS31~S34とは同一の制御内容である。また、上述の図5におけるステップS20~S23と図7におけるステップS42~S45は、同じ目的のための制御内容である。
【0062】
図6において、制御装置80は、発電工程から停止工程への移行時に、初期設定として、ガスポンプ2a及び改質水ポンプ3aの各流量についての初期設定を行うとともに、空気流量制御を起動する(S30)。
【0063】
さらに、制御装置80は、スタック温度がT1以下に降温して(S31でYes)燃料ガス等の供給を停止させた後(S32、S33)、スタック温度がT2以下に降温し、かつ、上記所定時間が経過した場合に(S34でYes)、空気流量制御のタスクに空気ブロア11aを「停止」するように指示する(S35)。
【0064】
図7において、制御装置80は、空気ブロア11aの基準空気流量についての初期設定(S40)の後、主制御のタスクから空気ブロア11aについて「停止」する旨の指示があるかを判断する(S41)。「停止」の指示がない場合は(S41でNo)、空気流量が上限値になるまで(S42でNo)、空気ブロア11aの空気流量を所定時間毎に所定量ずつ増加するように制御する(S43、S44)。
【0065】
そして、主制御のタスクから「停止」の指示があった場合は(S41でYes)、空気ブロア11aを停止するように制御する(S46)。
【0066】
なお、本開示に係る燃料電池装置は、上記のように燃料電池の耐久性が低下することを抑制し得るという効果を有するが、さらに、発電運転停止後の安全性を高めることができるという効果も有している。というのは、ガスポンプ2a及び改質水ポンプ3aを停止後に、スタック温度が第二温度以下に降温し、かつ、予め決められた所定時間が経過するまで空気ブロア11aを作動させるので、確実な掃気が可能となるからである。
【0067】
また、上記実施形態に係る図1に示す燃料電池装置100の制御装置80及び記憶装置90を燃料電池装置100の外部に有する構成として実現することもできる。
【0068】
さらにまた、本開示に係る制御装置における特徴的な制御工程を含む制御方法として実現したり、上記工程をコンピュータに実行させるための制御プログラムとして実現したりすることも可能である。
【0069】
なお、セルスタック装置1は、SOFCに限定されず、例えば固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell(PEFC))、リン酸形燃料電池(Phosphoric Acid Fuel Cell(PAFC))、及び溶融炭酸塩形燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cell(MCFC))などのような燃料電池で構成してもよい。また、セルスタック装置1は、改質器4と同じ筺体内に含まれなくてもよい。
【0070】
以上、実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、組合せ及び改良等が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 セルスタック装置
2 原燃料ガス供給管
2a 原燃料供給用ポンプ(ガスポンプ)
3 改質水供給管
3a 改質水供給用ポンプ(改質水ポンプ)
7 燃料電池セル
8 セルスタック
11a 空気ブロア
20 燃料電池モジュール
30 熱交換器
31a 循環ポンプ
50 ラジエータ
60 ラジエータファン
71 内部温度センサ
72 熱媒低温度センサ
73 熱媒高温度センサ
80 制御装置
100 燃料電池装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7