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特開2022-91967脊髄損傷及び疼痛を処置するための抗RGMa(Repulsive Guidance Molecule A)アンタゴニスト抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091967
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】脊髄損傷及び疼痛を処置するための抗RGMa(Repulsive Guidance Molecule A)アンタゴニスト抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220614BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220614BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220614BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220614BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220614BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220614BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P25/00 ZNA
A61P25/04
A61P43/00 107
C07K16/18
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063284
(22)【出願日】2022-04-06
(62)【分割の表示】P 2018562154の分割
【原出願日】2017-05-31
(31)【優先権主張番号】62/344,233
(32)【優先日】2016-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】512212195
【氏名又は名称】アッヴィ・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】513144626
【氏名又は名称】アッヴィ・ドイチュラント・ゲー・エム・ベー・ハー・ウント・コー・カー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・クラウス・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ペーアー・ベー・ヤーコブソン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】脊髄損傷及び/又は脊髄損傷又は他の原因から生じる神経障害性疼痛を含む疼痛を処置する方法を提供する。
【解決手段】抗RGMa抗体及びこれらの抗体を使用して、脊髄損傷を処置する方法であって、軸索再生、機能回復、又はこれらの両方を促進するステップを含む方法、及び脊髄損傷から生じる神経障害性疼痛を含む疼痛を処置する方法が開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象における脊髄損傷を処置する方法であって、治療有効量の抗RGMa(Repulsive Guidance Molecule A)モノクローナル抗体を投与するステップを含み、抗体が、
a.配列番号1のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(VH CDR)1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む可変重鎖;並びに
b.配列番号4のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(VL CDR)1、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号6及び配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む可変軽鎖
を含む方法。
【請求項2】
脊髄損傷後の、軸索再生、機能回復、又はこれらの両方を促進するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脊髄損傷から生じる疼痛を処置するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
疼痛が、神経障害性疼痛である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
脊髄損傷が、圧迫損傷、挫傷、又は衝撃損傷である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
抗体が、脊髄損傷後8時間未満に投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
抗RGMaモノクローナル抗体が、全身投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
抗RGMaモノクローナル抗体が、静脈内(IV)投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
VL CDR3が、配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
VL CDR3が、配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
可変重鎖が、配列番号8のアミノ酸配列を含み、可変軽鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
可変重鎖が、配列番号8のアミノ酸配列を含み、可変軽鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
抗RGMaモノクローナル抗体が、ヒト抗体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
抗体が、配列番号11、配列番号12、配列番号13、及び配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む定常領域を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
抗RGMaモノクローナル抗体が、配列番号14からなるアミノ酸配列を含む定常領域を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
抗体が、配列番号16の重鎖配列及び配列番号15の軽鎖配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
抗RGMaモノクローナル抗体が、RGMaのN末端領域に位置するRGMaエピトープ、好ましくは、配列番号18のアミノ酸内のRGMaエピトープ、より好ましくは、配列番号19のアミノ酸内のRGMaエピトープに結合する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる、2016年6月1日に出願された、米国特許出願第62/344,233号の利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Webを介して、ASCIIフォーマットにおいて、電子的に提出され、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる配列表を含有する。2017年5月25日に作成された前記ASCIIコピーは、「ABV12303WOO1_SEQ-LIST.txt」と名付けられ、28,672バイトのサイズである。
【0003】
本発明は、抗RGMa抗体及びこれらの抗体を使用して、脊髄損傷及び/又は脊髄損傷又は他の原因から生じる神経障害性疼痛を含む疼痛を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
脊髄損傷(SCI)とは、個人及び社会に多大な負担となる、深刻な状態である。臨床ケアの進歩にもかかわらず、現在のところ、主要なSCIに有効な処置は存在しない。初期の外傷後、アポトーシス、虚血症、興奮毒性、及び阻害性分子の上方調節を含む、分子的イベント及び変性イベントのカスケードが生じる。ニューロンの死及び軸索再生の阻害は、損傷後における神経学的回復を制限する。損傷したCNSの軸索は、再生能が制限されており、損傷脊髄の内因性機構及び阻害性環境に起因して、損傷部位から退行する、又は続発性の軸索変成を経ることが多い。
【0005】
SCIは、医学的必要の大きさを特徴とする医学的徴候を表し、世界中における、100万人当たりの症例発生数は、毎年15~40例である。SCIの最も一般的な原因は、自動車事故、労働事故、運動競技/反動事故、転倒、及び暴力を含む。米国において、毎年推定12,000例の新たなSCI症例が生じている。
【0006】
大半の脊髄損傷は、挫傷又は圧迫損傷であり、通例、一次損傷に、二次損傷機構(例えば、サイトカイン及びケモカインのような炎症性メディエーター)が後続し、これは、初期の損傷を悪化させ、場合によって、10倍を超える、病変面積の著明な拡大を結果としてもたらす。
【0007】
多くのSCIは、脊髄が、切断されるのではなく、圧迫された結果である。脊髄への傷害は、椎骨、神経及び血管の損傷を結果としてもたらすことが多い。出血、脳脊髄液の蓄積、及び腫脹が、脊髄の内部において、又は脊髄の外部であるが、脊柱管の内部において発生する。周囲の骨及び髄膜構造からの圧力は、脊髄をさらに損ないうる。さらに、加えて、脊髄の浮腫自体も、続発性の組織喪失を加速化させうる。機械的な一次損傷が、過剰な興奮性神経伝達物質の蓄積;浮腫の形成;細胞内カルシウムの増大を含む、電解質のシフト;遊離基、とりわけ、酸化剤遊離基の産生;の産生;エイコサノイドの産生を含む二次損傷機構のカスケードを誘発するという、重要な証拠が存在する。したがって、ある特定のSCIは、2ステップの過程として考えられうる。一次損傷は、脊柱への衝撃、圧迫又は他の何らかの傷害から生じる機械的損傷である。二次損傷は、細胞/分子反応が、組織の破壊を引き起こす、細胞的損傷及び生化学的損傷である。
【0008】
SCIの後において発生する炎症反応は、二次損傷への主要な寄与因子のうちの1つである。神経膠細胞(小膠細胞及び星状膠細胞)及びマクロファージは、SCIの後における炎症反応の経過において、鍵となる役割を果たす。二次損傷を別として、反応性の神経膠細胞及びマクロファージは、CNSにおける軸索再生の不全に寄与する。反応性の星状膠細胞は、例えば、CNS内の軸索の成長の阻害において強力な影響を及ぼす、プロテオグリカンを合成する。小膠細胞及びマクロファージはまた、軸索の成長の阻害にも寄与する。
【0009】
SCIは、神経障害性疼痛を発症する危険性が最高度である疾患の中にあり、罹患率は50%に上る。神経障害性疼痛は、SCIの最も消耗性の帰結のうちの1つである。炎症は、二次損傷及び軸索反発を誘導することにより、SCIの後における機能的な喪失に寄与するだけでなく、また、神経障害性疼痛の発生にも寄与する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ある特定の動物モデル(例えば、脊髄の片側切断)は、臨床的脊髄損傷の大部分と典型的に関連する、著明な外傷を誘導しない場合がある。さらに、これらのモデルにおいて、脊髄浮腫は、最小限である可能性が高い。それ自体として、これらのモデルは、臨床的脊髄損傷の大部分を表さない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(要旨)
一態様において、本開示は、それを必要とする対象における脊髄損傷を処置する方法を提示する。ある特定の実施形態において、脊髄損傷は、圧迫損傷、挫傷、又は衝撃損傷である。
【0012】
別の態様において、本開示は、脊髄損傷を有する対象における、軸索再生、機能回復、又はこれらの両方を促進する方法を提示する。ある特定の実施形態において、機能回復は、神経行動学的試験により評価される。ある特定の実施形態において、脊髄損傷は、圧迫損傷、挫傷、又は衝撃損傷である。
【0013】
さらに別の態様において、本開示は、それを必要とする対象における疼痛を処置する方法を提示する。ある特定の実施形態において、疼痛は、脊髄損傷から生じる神経障害性疼痛のような神経障害性疼痛である。ある特定の実施形態において、脊髄損傷は、圧迫損傷、挫傷、又は衝撃損傷である。
【0014】
本明細書で開示された方法は、治療有効量の、RGMa(Repulsive Guidance Molecule A)に特異的に結合する抗体又はこの抗原結合性断片を投与するステップを含み、抗体又は抗原結合性断片は、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(VH CDR)1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む可変重鎖;並びに
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(VL CDR)1、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号6及び配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む可変軽鎖
を含む。ある特定の実施形態において、VL CDR3は、配列番号6のアミノ酸配列を含む。他のある特定の実施形態において、VL CDR3は、配列番号7のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、可変重鎖は、配列番号8のアミノ酸配列を含み、可変軽鎖は、配列番号9のアミノ酸配列を含む。他のある特定の実施形態において、可変重鎖は、配列番号8のアミノ酸配列を含み、可変軽鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、抗体は、配列番号11、配列番号12、配列番号13、及び配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。ある特定の実施形態において、抗体は、配列番号16の重鎖配列及び配列番号15の軽鎖配列を含む。
【0015】
ある特定の実施形態において、抗体は、ヒト抗体、免疫グロブリン分子、ジスルフィド連結Fv、モノクローナル抗体、アフィニティー成熟抗体、scFv、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディー、ヒト化抗体、多特異性抗体、Fab、二重特異性抗体、DVD、Fab’、二特異性抗体、F(ab’)2、及びFvからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、抗体は、ヒト抗体である。
【0016】
ある特定の実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0017】
ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性断片は、全身投与される。ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性断片は、静脈内投与される。
【0018】
ある特定の実施形態において、抗体は、脊髄損傷から24時間以内に投与される。
【0019】
本開示は、RGMaが、臨床的に関与性の衝撃-圧迫SCIの後のラットの、複数の細胞型において、上方調節されることを裏付ける。重要なことであるが、本開示はまた、RGMaが、脊髄損傷の後のヒトにおいても同様に上方調節されることも裏付ける。阻害性RGMaを中和するため、臨床的に関与性である、急性胸部SCIについてのラットモデルにおいて、ヒト抗RGMaモノクローナル抗体が、毎週全身投与され、血清中、CSF中、及び病変部位近傍の組織内において検出された。抗RGMa抗体により処置されたラットは、オープンフィールド運動における神経行動的回復の改善、ラダーウォークにおけるフットフォールエラーの減少、及び歩行パラメータの改善を示した。RGMaの中和は、アポトーシスの緩和を介して、ニューロンの生存を促進した。さらに、この戦略は、順行性トレーシングにより裏付けられた通り、下降する皮質脊髄路における軸索再生の可塑性を増強した。興味深いことに、RGMaの中和はまた、神経障害性疼痛応答も緩和し、活性化小膠細胞の減少及び病変に対して尾側である後角における、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の発現の低減と関連した。
【0020】
本開示は、抗RGMa抗体の全身投与が、極めて重度の、非ヒト霊長動物(NHP)胸部SCI半圧迫モデルにおいて、神経運動機能を改善したことを裏付ける。抗RGMa抗体の全身投与後において、全体的な神経運動機能の有意な改善が観察された。
【0021】
これらの知見は、SCIの後であり、特に、挫傷又は圧迫損傷の後に、阻害性RGMaを中和することの治療的可能性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】ラット脊髄におけるRGMa発現を描示する図である。ニューロン内のRGMaを示す図である。RGMaは、損傷の後、脊髄において上方調節される。損傷の後、病変周囲ニューロンは、RGMaを発現させる。
図1B】ラット脊髄におけるRGMa発現を描示する図である。希突起膠細胞内のRGMaを示す図である。正常ラット脊髄及び損傷ラット脊髄において、希突起膠細胞は、RGMaを発現させる。
図1C】ラット脊髄におけるRGMa発現を描示する図である。星状膠細胞内のRGMa及び小膠細胞内のRGMaを示す図である。SCIの後、RGMaは、星状膠細胞により、病変部位内及び病変部位の周囲の、CSPGに富む瘢痕領域内において発現する。
図1D】活性化した小膠細胞及びマクロファージもまた、RGMaを発現させることを示す図である。
図2A】成人ヒト脊髄内のRGMa発現を描示する図である。非損傷ヒト脊髄内のRGMa(低拡大率)を示す図である。非損傷ヒト脊髄内において、RGMaは、低レベルにおいて発現する。
図2B】成人ヒト脊髄内のRGMa発現を描示する図である。図2Aにおいて、「B」と表示された、高拡大率の枠囲い領域を示す図である。非損傷ヒト脊髄内において、RGMaは、低レベルにおいて発現する。
図2C】成人ヒト脊髄内のRGMa発現を描示する図である。図2Aにおいて、「C」と表示された、高拡大率の枠囲い領域を示す図である。非損傷ヒト脊髄内において、RGMaは、低レベルにおいて発現する。
図2D】成人ヒト脊髄内のRGMa発現を描示する図である。損傷の3日後における、損傷ヒト脊髄内のRGMa(低拡大率)を示す図である。損傷ヒト脊髄内(損傷の3日後)において、RGMa発現は、上方調節されている。
図2E】成人ヒト脊髄内のRGMa発現を描示する図である。図2Dにおいて、「E」と表示された、高拡大率の枠囲い領域を示す図である。損傷ヒト脊髄内(損傷の3日後)において、RGMa発現は、上方調節されている。
図2F】成人ヒト脊髄内のRGMa発現を描示する図である。図2Dにおいて、「F」と表示された、高拡大率の枠囲い領域を示す図である。損傷ヒト脊髄内(損傷の3日後)において、RGMa発現は、上方調節されている。
図3A】マウス皮質ニューロン内のRGMa発現を描示する図である。マウス皮質ニューロン溶解物中のRGMaを示すウェスタンブロットを描示する図である。
図3B】マウス皮質ニューロン内のRGMa発現を描示する図である。培養マウス初代皮質ニューロン内の、RGMaの免疫染色を描示する図である。
図3C】マウス皮質ニューロン内のRGMa発現を描示する図である。RGMa及びhIgG、AE12-1、又はAE12-1-Yを伴うインキュベーション後におけるマウス皮質ニューロンを示す図である。
図4A】研究デザインを示す概略図である。
図4B】SCIの6週間後に採取されたCSF中の抗体濃度を示すグラフである。
図4C】SCIの9週間後に得られた血清中の抗体濃度を示すグラフである。
図4D】抗ヒトIgGによる、ラット脊髄の免疫染色を描示する図である。ヒトIgG(赤)は、血管近傍(RECA-1、緑)及び瘢痕組織内(CSPG、緑)において検出された。
図5A】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける、SCI後の機能回復を描示する図である。オープンフィールドBBB(Basso、Beattie and Bresnahan)運動試験におけるスコアを示す折れ線グラフである。モノクローナル抗体であるAE12-1により処置されたラットは、BBBにおいて、hIgG対照及びPBS対照と比べて有意な改善を示した。
図5B】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける、SCI後の機能回復を描示する図である。運動サブスコアを示す折れ線グラフである。AE12-1及びAE12-1Yにより処置されたラットは、対照と比べて、高運動サブスコアを示したが、これは、統計学的に有意ではなかった。
図5C】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける、SCI後の機能回復を描示する図である。ラダーウォークにおける、後肢フットフォールエラーを示す折れ線グラフである。AE12-1により処置されたラットは、SCIの3週間後のラダーウォークにおいて、PBS対照と比較して、有意に少数の後肢フットフォールエラーを示し、6週間後において、エラーの低減への傾向を示した。
図5D】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける、SCI後の機能回復を描示する図である。後肢による歩進の成功百分率を示す棒グラフである。SCIの6週間後、AE12-1により処置されたラットは、対照と比較して有意に大きな、後肢による歩進の成功百分率を示した。
図6A】SCI前のラット及びSCIの6週間後の各群に由来するCatWalkから得られた、代表的なフットプリントを示す図である。
図6B】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける、規則性指数、後肢の歩幅長、後肢の振出し速度、及び後肢の強度値を示す、一連の棒グラフである。いずれのモノクローナル抗体により処置されたラットも、対照群と比べて、規則性指数の有意な改善を示した。モノクローナル抗体により処置されたラットは、後肢の歩幅長及び振出し速度の改善への傾向を示した。AE12-1を注射されたラットは、対照と比べた、有意に高度な後肢の強度値を示した。
図7A】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおけるニューロンの生存を描示する図である。SCIの9週間後における損傷脊髄の矢状断面についての、低拡大率の画像である。
図7B】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおけるニューロンの生存を描示する図である。SCIの9週間後における、温存された病変周囲ニューロンの数を示す棒グラフである。モノクローナル抗体であるAE12-1又はAE12-1Yを投与されたラットは、hIgG及びPBSを施されたラットと比較して、有意に高度な、病変周囲ニューロンの温存を示す。
図7C】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおけるニューロンの生存を描示する図である。SCIの7時間後におけるニューロンの免疫染色を描示する図である。NeuN(緑)及びTUNEL(赤)による二重標識化は、アポトーシス性ニューロン(矢印)を同定した。
図7D】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおけるニューロンの生存を描示する図である。SCIの7時間後において、切片1つ当たりにおいてカウントされた、NeuN+/TUNEL+細胞の平均数を示す棒グラフである。切片1つ当たりにおいてカウントされた、NeuN+/TUNEL+細胞の平均数は、PBS媒体を投与されたラットより、AE12-1により処置されたラットにおいて、有意に小さかった。
図8A】SCI後に、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける軸索再生を描示する図である。BDAによる順行性軸索トレーシング後における脊髄についての、低拡大率の画像を描示する図である。
図8B】SCI後に、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける軸索再生を描示する図である。BDA標識化CST線維の平均最大長を示す棒グラフである。BDA標識化CST線維の平均最大長は、AE12-1及びAE12-1Yによる処置の後で増大した。
図8C】SCI後に、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける軸索再生を描示する図である。切片1つ当たりの軸索の平均数を示す棒グラフである。定量化された、切片1つ当たりの軸索の平均数は、モノクローナル抗体により処置された損傷ラットより大きな軸索数を示す。
図8D】SCI後に、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける軸索再生を描示する図である。SCIの4又は6週間後における、BDA標識化CST線維の平均最大長を示す棒グラフである。AE12-1Yにより処置された損傷ラットにおける平均軸索長は、6週間後において、4週間後と比較して有意に大きかった。
図8E】SCI後に、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける軸索再生を描示する図である。SCIの4又は6週間後における、切片1つ当たりの軸索の平均数を示す棒グラフである。AE12-1Yにより処置された損傷ラットにおける平均軸索長は、6週間後において、4週間後と比較して有意に大きかった。
図9A】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。2gのvon Frey式モノフィラメントに対する、有害反応の百分率を描示する棒グラフである。
図9B】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。4gのvon Frey式モノフィラメントに対する、有害反応の百分率を描示する棒グラフである。SCIの6週間後、AE12-1により処置されたラットは、4g刺激に対する、対照と比べた、有意に少数の有害反応を示した。
図9C】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。侵害皮膚に応答するテールフリック待ち時間を描示する棒グラフである。SCIの2及び6週間後、モノクローナル抗体により処置されたラットは、侵害皮膚加熱に応答した尾の引込みの、対照と比べた低減を示した。
図9D】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。T10の病変に対して尾側における、Iba-1+小膠細胞を描示する図である。T10水準の、対照の後角において、正常脊髄と比較して、有意により多くのIba-1+細胞がカウントされた。
図9E】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。T10水準におけるIba-1+小膠細胞を描示する図である。T10水準の、対照の後角において、正常脊髄と比較して、有意により多くのIba-1+細胞がカウントされた。
図9F】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。T10の病変に対して吻側における、Iba-1+小膠細胞を描示する図である。
図9G】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。T10水準におけるCGRP+細胞を描示する図である。CGRP+面積パーセントは、AE12-1及びAE12-1Yにより処置されたラットにおいて、対照と比べて有意に低減された。
図10A】脊髄損傷後の成体ラットにおける、RGMaの発現を描示する図である。正常な無傷の脊髄内及びSCIの1週間後における、前角灰白質内のRGMaの免疫染色を描示する図である。RGMa+面積%の定量化は、SCI後の成体ラット脊髄における、RGMaの発現の有意な上方調節を示す。
図10B】脊髄損傷後の成体ラットにおける、RGMaの発現を描示する図である。SCI後のED-1+領域における、RGMaの発現を描示する図である。RGMaの発現は、SCI後のED-1+領域において明らかである。
図10C】脊髄損傷後の成体ラットにおける、RGMaの発現を描示する図である。正常な無傷の脊髄の脊髄白質における希突起膠細胞(CC1)内の、RGMaの発現を示す、高拡大率の画像を描示する図である。
図11A】成人ヒト脊髄のニューロンにおける、RGMa及びネオゲニンの発現を描示する図である。正常な成人ヒト脊髄における前角ニューロン内の、RGMaの発現を描示する図である。
図11B】成人ヒト脊髄のニューロンにおける、RGMa及びネオゲニンの発現を描示する図である。RGMaペプチドにより前吸着させたRGMa抗体であって、染色の特異性を示すRGMa抗体により染色された隣接切片を描示する図である。
図11C】成人ヒト脊髄のニューロンにおける、RGMa及びネオゲニンの発現を描示する図である。正常な成人ヒト脊髄における前角ニューロン内の、ネオゲニンの発現を描示する図である。
図11D】成人ヒト脊髄のニューロンにおける、RGMa及びネオゲニンの発現を描示する図である。隣接する陰性対照切片を描示する図である。
図12A】RGMa受容体であるネオゲニンの発現を描示する図である。ネオゲニンの発現を示す、成体ラットの脳溶解物についてのウェスタンブロットを描示する図である。
図12B】RGMa受容体であるネオゲニンの発現を描示する図である。ネオゲニン(赤)を発現させる、培養マウス皮質ニューロン(インビトロにおいて3日後;F-アクチン、緑)を描示する図である。
図13】SCI前並びにSCIの4及び6週間後における、ラットの体重を描示する図である。ラットの体重は、群間において、有意に変動しなかった。処置は、ラットの体重を変更しなかった。
図14A】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける空洞症を描示する図である。モノクローナル抗体によるRGMaの中和は、空洞症において、有意差を結果としてもたらさない。
図14B】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける空洞症を描示する図である。モノクローナル抗体によるRGMaの中和は、空洞症において、有意差を結果としてもたらさない。
図15A】アストログリオーシス及び瘢痕化に対する、抗RGMa抗体の効果を描示する図である。SCIの9週間後における、病変と隣接する、GFAPの免疫反応性を描示する図である。
図15B】アストログリオーシス及び瘢痕化に対する、抗RGMa抗体の効果を描示する図である。病変に対して吻側における、GFAP+面積%の定量化を描示する図である。GFAP+面積%の定量化は、SCIの9週間後の、AE12-1Y処置されたラットの、病変に対して吻側における、アストログリオーシスの有意な軽減を示す。
図15C】アストログリオーシス及び瘢痕化に対する、抗RGMa抗体の効果を描示する図である。病変部位における、CSPG+面積%を描示する図である。AE12-1及びAE12-1Yにより処置されたラットは、病変部位における、CSPG+面積%の低減への傾向を示す。
図16A】BDAによるCSTの標識化を描示する図である。横断方向において示された、C4レベルにおける背側CSTについてのBDA染色を描示する図である。
図16B】BDAによるCSTの標識化を描示する図である。病変に対して、矢状方向に3mm吻側において、BDA標識化CST軸索が、背側CST線維路内に束ねられていることを描示する図である。
図17A】5HT線維を描示する図である。病変に対して尾側の、5HT免疫反応性線維(矢印)を描示する図である。
図17B】5HT線維を描示する図である。尾側の累進的な距離へと区間分けされた、病変に対して尾側の、5HT+軸索の平均値数の定量化を描示する図である。病変に対して尾側の5HT+軸索は、尾側の累進的な距離へと区間分けされた。AE12-1により処置されたラットにおいて、有意に多数の5HT+線維が現れ、AE12-1Yを注射されたラットは、多数の5HT標識化軸索への傾向を示した。
図18A】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける小膠細胞及びマクロファージを描示する図である。病変に対して尾側における、Iba-1免疫反応性を描示する図である。
図18B】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける小膠細胞及びマクロファージを描示する図である。病変部位に対して吻側又は尾側における、Iba-1+面積%を描示する図である。T8における病変に隣接して、病変部位に対して吻側又は尾側における、Iba-1+面積%の、群間の有意差は見られなかった。
図19A】SCI後における、個別の対照動物についての、神経運動スコアのグラフ表示(及び推定中央値曲線)である。
図19B】SCI後における、IV AE-12-1-Y-QL処置を施された個別の動物についての、神経運動スコアのグラフ表示(及び推定中央値曲線)である。
図20A】SCI後の、対照群及びIV AE12-1-Y-QL処置群におけるFA(fractional anisotropy)により評価された、病変外領域内の組織完全性を描示する棒グラフである。静脈内AE12-1-Y-QLは、損傷外領域内の、IgG対照群と比較して大きな組織完全性の保存を裏付けた。
図20B】SCI後の、対照群及びIV AE12-1-Y-QL処置群における磁化移動率(MTR)により評価された、病変外領域内の組織完全性を描示する棒グラフである。静脈内AE12-1-Y-QLは、損傷外領域内の、IgG対照群と比較して大きな組織完全性の保存を裏付けた。
図21A】個別の神経運動スコア(NMS)及び個別のFA値の間の相関を描示する図である。FA値は一般に、神経運動機能の改善と共に増大する。
図21B】個別の神経運動スコア(NMS)及び個別のMTR値の間の相関を描示する図である。MTR値は一般に、神経運動機能の改善と共に増大する。
図22A】脊髄切片についての組織病理学的解析を描示する棒グラフである。吻側レベルにおける、RGMaの発現を描示する図である。
図22B】脊髄切片についての組織病理学的解析を描示する棒グラフである。吻側レベルにおけるイオン化カルシウム結合アダプター分子1(IBA)発現を描示する図である。
図22C】脊髄切片についての組織病理学的解析を描示する棒グラフである。吻側レベルにおける、ミエリンのワイル染色を描示する図である。
図22D】脊髄切片についての組織病理学的解析を描示する棒グラフである。尾側レベルにおける、RGMaの発現を描示する図である。
図22E】脊髄切片についての組織病理学的解析を描示する棒グラフである。尾側レベルにおけるイオン化カルシウム結合アダプター分子1(IBA)発現を描示する図である。
図22F】脊髄切片についての組織病理学的解析を描示する棒グラフである。尾側レベルにおける、ミエリンのワイル染色を描示する図である。
図23A】AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける、SCI後の機能回復を描示する図である。オープンフィールドBBB(Basso、Beattie and Bresnahan)運動試験におけるスコアを示す折れ線グラフである。
図23B】AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける、SCI後の機能回復を描示する図である。運動サブスコアを示す折れ線グラフである。
図24A】SCI後の、AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける、規則性指数を示す、一連の棒グラフである。
図24B】SCI後の、AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける、後肢の歩幅長を示す、一連の棒グラフである。
図24C】SCI後の、AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける、後肢の振出し速度を示す、一連の棒グラフである。
図24D】SCI後の、AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける、後肢の強度値を示す、一連の棒グラフである。
図25A】SCI後の、AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。2gのvon Frey式モノフィラメントに対する、有害反応の百分率を描示する棒グラフである。
図25B】SCI後の、AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。4gのvon Frey式モノフィラメントに対する、有害反応の百分率を描示する棒グラフである。
図25C】SCI後の、AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。侵害皮膚に応答するテールフリック待ち時間を描示する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書では、それを必要とする患者へと、治療有効量の1つ以上の抗RGMa抗体を投与することにより、脊髄損傷を処置する方法、脊髄損傷後の軸索再生を促進する方法、脊髄損傷後の機能回復を促進する方法、及び脊髄損傷から生じる神経障害性疼痛を含む疼痛を処置する方法が提示される。
【0024】
1.定義
そうでないことが規定されない限りにおいて、本明細書で使用された、全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。齟齬が生じる場合は、定義を含む本文献に従う。本発明の実施又は試験においては、本明細書において記載される方法及び材料と同様又は同等な方法及び材料も使用しうるが、下記においては、好ましい方法及び材料について記載される。本明細書において言及される、全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりそれらの全体において組み込まれる。本明細書において開示される材料、方法、及び例は、例示的なものであるに過ぎず、限定を意図するものではない。
【0025】
本明細書において使用される「~を含む(comprise(s))」、「~を含む(include(s))」「~を有すること(having)」、「~を有する(has)」、「~でありうる(can)」、「~を含有する(contain(s))」という用語は、さらなる行為又は構造の可能性を除外しない、オープンエンドな移行句、移行用語、又は移行語である。単数形の「ある(a)」、「ある(an)」、及び「その」は、文脈により、そうでないことが明らかに指示されない限りにおいて、複数の指示対象を含む。本開示はまた、特に明示されているのであれ、そうでないのであれ、本明細書において提示された実施形態又は要素「を含み」、これら「からなり」、これら「から本質的になる」、他の実施形態も想定する。
【0026】
本明細書において使用された「約」は、標準値からの約±10%の変動を指す場合がある。このような変動は、それに対して、特に言及されるのであれ、そうでないのであれ、本明細書において提示された、所与の任意の値に常に含まれることを理解されたい。
【0027】
本明細書において、「アフィニティー成熟抗体」とは、抗体の、標的抗原に対するアフィニティー(すなわち、K、k又はk)の、変更を有さない親抗体と比較した改善を結果としてもたらす、1つ以上のCDRにおける、1つ以上の変更を伴う抗体を指すように使用される。例示的なアフィニティー成熟抗体は、標的抗原に対する、ナノモル又はピコモル単位のアフィニティーを有する。当技術分野において、アフィニティー成熟抗体を作製する様々な手順であって、バイオディスプレイを使用して調製された、組換え抗体ライブラリーのスクリーニングを含む手順が公知である。例えば、Marksら、BioTechnology、10:779~783(1992)は、VHドメイン及びVLドメインのシャッフリングによるアフィニティー成熟について記載している。CDR残基及び/又はフレームワーク残基に対するランダム突然変異誘発は、Barbasら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、91:3809~3813(1994);Schierら、Gene、169:147~155(1995);Yeltonら、J.Immunol.、155:1994~2004(1995);Jacksonら、J.Immunol.、154(7):3310~3319(1995);及びHawkinsら、J.Mol.Biol.、226:889~896(1992)により記載されている。選択的突然変異誘発位置及び接触位置又は超変異位置における、活性を増強するアミノ酸残基による選択的突然変異は、米国特許第6,914,128B1号において記載されている。
【0028】
本明細書において使用された「抗体(antibody)」及び「抗体(antibodies)」とは、モノクローナル抗体、多特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体(完全ヒト化抗体又は部分的ヒト化抗体)、鳥類(例えば、アヒル又はガチョウ)抗体、サメ抗体、クジラ抗体、及び非霊長動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、リャマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウスなど)抗体又は非ヒト霊長動物(例えば、サル、チンパンジーなど)抗体を含む哺乳動物抗体のようであるがこれらに限定されない動物抗体、組換え抗体、キメラ抗体、単鎖Fv(「scFv」)、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab’)断片、ジスルフィド連結型Fv(「sdFv」)、及び抗イディオタイプ(「抗Id」)抗体、二重ドメイン抗体、二重可変ドメイン(DVD)又は三重可変ドメイン(TVD)抗体(二重可変ドメイン免疫グロブリン及びそれらを作り出すための方法について、それらの各々の内容が参照により本明細書に組み込まれる、Wu,C.ら、Nature Biotechnology、25(11):1290~1297(2007)及びPCT国際出願第WO2001/058956号において記載されている)、並びに上記のうちのいずれかの、機能的に活性なエピトープ結合性断片を指す。特に、抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫活性断片、すなわち、解析物結合性部位を含有する分子を含む。免疫グロブリン分子は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスの分子でありうる。簡潔さのために、本明細書において、解析物に対する抗体は、「抗解析物抗体」、又は、単に、「解析物抗体」(例えば、抗RGMa抗体又はRGMa抗体)と称されることが多い。
【0029】
本明細書において使用された「抗体断片」とは、抗原結合性部位又は可変領域を含む、無傷抗体の部分を指す。部分は、無傷抗体のFc領域の重鎖定常ドメイン(すなわち、抗体のアイソタイプに応じて、CH2、CH3又はCH4)を含まない。抗体断片の例は、Fab断片、Fab’断片、Fab’-SH断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、ダイアボディー、単鎖Fv(scFv)分子、1つの軽鎖可変ドメインだけを含有する単鎖ポリペプチド、軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有する単鎖ポリペプチド、1つの重鎖可変領域だけを含有する単鎖ポリペプチド、及び重鎖可変領域の3つのCDRを含有する単鎖ポリペプチドを含むがこれらに限定されない。
【0030】
本明細書において、「二特異性抗体」とは、クァドローマ技術(Milsteinら、Nature、305(5934):537~540(1983)を参照されたい)、2つの異なるモノクローナル抗体の化学的コンジュゲーション(Staerzら、Nature、314(6012):628~631(1985)を参照されたい)、又はFc領域内の突然変異であって、複数の異なる免疫グロブリン分子種であり、それらのうちの1つだけが機能的な二特異性抗体である、免疫グロブリン分子種を結果としてもたらす突然変異を導入する、KIH(knob-into-hole)法若しくは同様の手法(Holligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90(14):6444~6448(1993)を参照されたい)により作出された全長抗体を指すように使用される。二特異性抗体は、その2つの結合性アーム(HC/LCの1つの対)のうちの1つにおける、1つの抗原(又はエピトープ)に結合し、その第2のアーム(HC/LCの異なる対)における、異なる抗原(又はエピトープ)に結合する。この定義により、二特異性抗体は、2つの顕著に異なる抗原結合性アーム(特異性及びCDR配列の両方)を有し、それが結合する各抗原について一価である。
【0031】
本明細書において、「CDR」とは、抗体の可変配列内の「相補性決定領域」を指すように使用される。重鎖及び軽鎖の可変領域の各々において、3つずつのCDRが存在し、これらは、可変領域の各々について、「CDR1」、「CDR2」、及び「CDR3」と名指されている。本明細書において使用された「CDRセット」という用語は、単一の可変領域において生じる、3つのCDRの群であって、抗原に結合するCDRの群を指す。これらのCDRの正確な境界は、異なるシステムに従い、異なる形で規定されている。Kabat(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1987)及び(1991))により記載されているシステムは、抗体の任意の可変領域へと適用可能である、明確な残基番号付けシステムを提示するだけではなく、また、3つのCDRを規定する、正確な残基の境界も提示している。これらのCDRは、「KabatによるCDR」と称されうる。Chothiaら(Chothia及びLesk、J.Mol.Biol.、196:901~917(1987);並びにChothiaら、Nature、342:877~883(1989))は、KabatによるCDR内の、ある特定の部分が、アミノ酸配列のレベルにおいて、大きな多様性を有するにもかかわらず、ほぼ同一なペプチド骨格のコンフォメーションを取ることを見出した。これらの部分は、「L」及び「H」が、それぞれ、軽鎖領域及び重鎖領域を名指す、「L1」、「L2」、及び「L3」、又は「H1」、「H2」、及び「H3」と名指された。これらの領域は、「Chothia CDR」と称される場合があり、これらは、Kabat CDRと重複する境界を有する。Kabat CDRと重複するCDRを規定する他の境界について、Padlan、FASEB J.、9:133~139(1995);並びにMacCallum、J.Mol.Biol.、262(5):732~745(1996)により記載されている。さらに他のCDRの境界の定義は、本明細書のシステムの定義に厳密に従わない場合もあり、特定の残基若しくは残基群なお又は全CDRが、抗原への結合に、著明な影響を及ぼさないという予測又は実験による知見に照らして、短くなる場合もあり、長くなる場合もあるが、それでも、Kabat CDRと重複する。本明細書において使用された方法は、これらのシステムのうちのいずれに従い規定されたCDRも活用しうるが、ある特定の実施形態は、Kabatより規定されたCDR又はChothiaにより規定されたCDRを使用する。
【0032】
本明細書において使用された抗体の「誘導体」とは、純正抗体又は親抗体と比較した場合、そのアミノ酸配列に対する1つ以上の修飾を有する抗体を指す場合があり、修飾ドメイン構造を呈示しうる。誘導体は、天然抗体内で見出された、典型的なドメイン構成のほか、標的(抗原)に、特異的に結合することが可能なアミノ酸配列を採用することがなおも可能でありうる。抗体誘導体の典型的な例は、他のポリペプチドへとカップリングさせた抗体、再配列された抗体ドメイン又は抗体の断片である。誘導体はまた、少なくとも1つのさらなる化合物、例えば、タンパク質ドメインも含むことが可能であり、前記タンパク質ドメインは、共有結合又は非共有結合により連結されている。連結は、当技術分野で公知の方法に従う遺伝子融合に基づきうる。本発明に従い援用された抗体を含む融合タンパク質内に存在するさらなるドメインは、ペプチドリンカーであると有利な、可撓性のリンカーにより連結されることが好ましい場合があり、この場合、前記ペプチドリンカーは、さらなるタンパク質ドメインのC末端及び抗体のN末端又はこの逆の間の距離にわたるのに十分な長さである、複数の、親水性で、ペプチド結合されたアミノ酸を含む。抗体は、生物学的活性に適するコンフォメーションを有する、又は例えば、固体支持体、生物学的活性物質(例えば、サイトカイン又は成長ホルモン)、化学的薬剤、ペプチド、タンパク質若しくは薬物に選択的に結合するエフェクター分子へと連結されうる。
【0033】
本明細書において、「二重特異性抗体」とは、その2つの結合性アーム(HC/LCの対)の各々において、2つの異なる抗原(又はエピトープ)に結合しうる全長抗体(PCT公開第WO02/02773号を参照されたい)を指すように使用される。したがって、二重特異性結合タンパク質は、同一な特異性及び同一なCDR配列を伴う、2つの同一な抗原結合性アームを有し、それが結合する各抗原について二価である。
【0034】
本明細書において、「二重可変ドメイン」とは、二価結合性タンパク質(2つの抗原結合性部位)、四価結合性タンパク質(4つの抗原結合性部位)、又は多価結合性タンパク質でありうる結合性タンパク質上の、2つ以上の抗原結合性部位を指すように使用される。DVDは、単一特異性、すなわち、1つの抗原(又は1つの特異性エピトープ)に結合することが可能な場合もあり、多特異性、すなわち、2つ以上の抗原(すなわち、同じ標的抗原分子の2つ以上のエピトープ又は異なる標的抗原2つ以上のエピトープ)に結合することが可能な場合もある。好ましいDVD結合性タンパク質は、2つの重鎖DVDポリペプチド及び2つの軽鎖DVDポリペプチドを含み、「DVD免疫グロブリン」又は「DVD-Ig」と称される。したがって、このようなDVD-Ig結合性タンパク質は、テトラマーであり、IgG分子と類似するが、IgG分子より多くの抗原結合性部位をもたらす。したがって、テトラマーDVD-Ig分子の各半分は、IgG分子の半分と類似し、重鎖DVDポリペプチド及び軽鎖DVDポリペプチドを含むが、単一の抗原結合性ドメインをもたらす、IgG分子の重鎖及び軽鎖の対と異なり、DVD-Igの重鎖及び軽鎖の対は、2つ以上の抗原結合性部位をもたらす。
【0035】
DVD-Ig結合性タンパク質の各抗原結合性部位は、ドナー(「親」)モノクローナル抗体に由来しうるので、抗原結合性部位1つ当たり、合計6つのCDRであって、抗原への結合に関与するCDRを伴う、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含みうる。したがって、2つの異なるエピトープ(すなわち、2つの異なる抗原分子の、2つの異なるエピトープ又は同じ抗原分子の、2つの異なるエピトープ)に結合するDVD-Ig結合性タンパク質は、第1の親モノクローナル抗体に由来する抗原結合性部位及び第2の親モノクローナル抗体の抗原結合性部位を含む。
【0036】
DVD-Ig結合性分子のデザイン、発現、及び特徴付けについての記載は、PCT公開第WO2007/024715号、米国特許第7,612,181号、及びWuら、Nature Biotech.、25:1290~1297(2007)においてなされている。このようなDVD-Ig分子の好ましい例は、構造式:VD1-(X1)n-VD2-C-(X2)n[式中、VD1は、第1の重鎖可変ドメインであり、VD2は、第2の重鎖可変ドメインであり、Cは、重鎖定常ドメインであり、X1は、それがCH1ではないことを条件として、リンカーであり、X2は、Fc領域であり、nは、0又は1であるが、好ましくは1である]を含む重鎖;及び構造式:VD1-(X1)n-VD2-C-(X2)n[式中、VD1は、第1の軽鎖可変ドメインであり、VD2は、第2の軽鎖可変ドメインであり、Cは、軽鎖定常ドメインであり、X1は、それがCH1ではないことを条件として、リンカーであり、X2は、Fc領域を含まず、nは、0又は1であるが、好ましくは1である]を含む軽鎖を含む。このようなDVD-Igは、2つのこのような重鎖及び2つのこのような軽鎖を含むことが可能であり、この場合、各鎖は、可変領域の間に介在する定常領域を伴わずに、タンデムにより連結された可変ドメインを含み、重鎖及び軽鎖は、会合して、タンデムの機能的抗原結合性部位を形成し、重鎖及び軽鎖の対は、重鎖及び軽鎖の別の対と会合して、4つの機能的な抗原結合性部位を伴う、テトラマーの結合性タンパク質を形成しうる。別の例では、DVD-Ig分子は、各々が可変領域の間に介在する定常領域を伴わずに、タンデムにより連結された3つの可変ドメイン(VD1、VD2、VD3)を含む重鎖及び軽鎖を含むことが可能であり、この場合、重鎖及び軽鎖の対は、会合して、3つの抗原結合性部位を形成することが可能であり、重鎖及び軽鎖の対は、重鎖及び軽鎖の別の対と会合して、6つの抗原結合性部位を伴う、テトラマーの結合性タンパク質を形成しうる。
【0037】
ある実施形態において、本発明に従うDVD-Ig結合性タンパク質は、その親モノクローナル抗体が結合する、同じ標的分子に結合するだけでなく、また、その親モノクローナル抗体のうちの1つ以上の、1つ以上の所望の特性も保有する。例えば、このようなさらなる特性は、親モノクローナル抗体のうちの1つ以上の抗体パラメータである。その親モノクローナル抗体のうちの1つ以上に由来するDVD-Ig結合性タンパク質に寄与しうる抗体パラメータは、抗原特異性、抗原アフィニティー、効力、生物学的機能、エピトープの認識、タンパク質の安定性、タンパク質の可溶性、作製効率、免疫原性、薬物動態、バイオアベイラビリティー、組織との交差反応性、及びオーソログ抗原への結合を含むがこれらに限定されない。
【0038】
DVD-Ig結合性タンパク質は、RGMaの少なくとも1つのエピトープに結合する。DVD-Ig結合性タンパク質の非限定的な例は、RGMaの1つ以上のエピトープに結合するDVD-Ig結合性タンパク質、ヒトRGMaのエピトープ及び別の種(例えば、マウス)のRGMaのエピトープに結合するDVD-Ig結合性タンパク質、及びヒトRGMaのエピトープ及び別の標的分子(例えば、VEGFR2又はVEGFR1)のエピトープに結合するDVD-Ig結合性タンパク質を含む。
【0039】
「エピトープ」、又は「エピトープ」、又は「目的のエピトープ」とは、認識され、その特異的結合パートナー上の相補的な部位に結合しうる、任意の分子上の部位を指す。分子及び特異的結合パートナーは、特異的結合対の一部である。例えば、エピトープは、ポリペプチド、タンパク質、ハプテン、炭水化物抗原(糖脂質、糖タンパク質又はリポ多糖のようであるがこれらに限定されない)、又は多糖の上にありうる。その特異的結合パートナーは、抗体でありうるがこれに限定されない。
【0040】
本明細書において使用された「フレームワーク」(FR)又は「フレームワーク配列」とは、CDRを除いた、可変領域の残りの配列を意味しうる。CDR配列の正確な定義は、異なるシステム(例えば、上記を参照されたい)により決定されうるため、フレームワーク配列の意味は、これに応じて異なる解釈を受ける。6つのCDR(軽鎖のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3並びに重鎖のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3)はまた、軽鎖上及び重鎖上のフレームワーク領域を、各鎖上の4つの部分領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)へも分割するが、ここで、CDR1は、FR1及びFR2の間に位置し、CDR2は、FR2及びFR3の間に位置し、CDR3は、FR3及びFR4の間に位置する。特定の部分領域を、FR1、FR2、FR3、又はFR4と指定しない、他の場合に言及されたフレームワーク領域は、単一の、自然発生の免疫グロブリン鎖の可変領域内の、FRの組合せを表す。本明細書において使用されたFRは、4つの部分領域のうちの1つを表し、FRは、フレームワーク領域を構成する、4つの部分領域のうちの2つ以上を表す。
【0041】
当技術分野において公知の技法を使用して、非ヒト抗体をヒト化するのに、重鎖及び軽鎖の「アクセプター」フレームワーク配列(又は、単に、「アクセプター」配列)として使用されうる、ヒト重鎖及びヒト軽鎖のFR配列は、当技術分野において公知である。一実施形態において、ヒト重鎖及びヒト軽鎖のアクセプター配列は、V-base又は国際的なImMunoGeneTics(登録商標)(IMGT(登録商標))情報システムのような、一般に公開されているデータベースにおいて列挙されたフレームワーク配列から選択される。
【0042】
本明細書において使用された「機能的な抗原結合性部位」とは、標的抗原に結合することが可能な、結合性タンパク質(例えば、抗体)上の部位を意味しうる。抗原結合性部位の抗原結合アフィニティーは、抗原結合性部位が由来する、親の結合性タンパク質、例えば、親抗体ほど強くはない場合があるが、抗原に結合する能力は、タンパク質、例えば、抗原に結合する抗体を査定するための、公知の様々な方法のうちのいずれか1つを使用して測定可能でなければならない。さらに、多価タンパク質、例えば、本明細書の多価抗体の抗原結合性部位の各々の抗原結合アフィニティーは、定量的に同じである必要はない。
【0043】
本明細書において使用された「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含みうる。本明細書において記載されたヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロにおける、ランダム突然変異誘発若しくは部位特異的突然変異誘発、又はインビボにおける、体細胞突然変異により導入された突然変異)を含みうる。しかし、本明細書において使用された「ヒト抗体」という用語は、マウスのような、別の哺乳動物の種の生殖細胞系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列へとグラフトされた抗体を含むように意図されていない。
【0044】
本明細書において、「ヒト化抗体」は、非ヒト種(例えば、マウス)に由来する重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH配列及び/又はVL配列のうちの少なくとも一部が、より「ヒト様」となるように、すなわち、ヒト生殖細胞系列の可変配列とより類似するように変更された抗体について記載するように使用される。「ヒト化抗体」とは、目的の抗原に免疫特異的に結合し、ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク(FR)領域及び非ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有する相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はこの変異体、誘導体、類似体、若しくは断片である。CDRの文脈において、本明細書で使用された「実質的に」という用語は、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有するCDRを指す。ヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のCDR領域に対応し、フレームワーク領域の全て又は実質的に全てが、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域である、少なくとも1つであり、典型的に2つである、可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)、Fab、Fv)の実質的に全てを含む。ある実施形態において、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的に、ヒト免疫グロブリンのFcのうちの少なくとも一部も含む。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖のほか、重鎖のうちの、少なくとも可変ドメインを含有する。抗体はまた、重鎖のCH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、CH3領域、及びCH4領域も含みうる。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖だけを含有する。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖だけを含有する。具体的な実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖のヒト化可変ドメイン及び/又はヒト化重鎖だけを含有する。
【0045】
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む、免疫グロブリンの任意のクラス、並びに、限定なしに述べると、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む、任意のアイソタイプから選択されうる。ヒト化抗体は、1つを超えるクラス又はアイソタイプに由来する配列を含むことが可能であり、特定の定常ドメインは、当技術分野で周知の技法を使用して、所望のエフェクター機能を最適化するように選択されうる。
【0046】
ヒト化抗体のフレームワーク領域及びCDRは、親配列に正確に対応する必要がない、例えば、ドナー抗体CDR又はコンセンサスフレームワークは、この部位におけるCDR残基又はフレームワーク残基が、ドナー抗体又はコンセンサスフレームワークに対応しないように、少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入、及び/又は欠失により突然変異誘発されうる。しかし、好ましい実施形態において、このような突然変異は、広範にわたる突然変異ではない。通例、ヒト化抗体残基のうちの、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%であり、最も好ましくは、少なくとも95%は、親のFR配列及びCDR配列の残基に対応する。本明細書で使用された「コンセンサスフレームワーク」という用語は、コンセンサスの免疫グロブリン配列内のフレームワーク領域を指す。本明細書で使用された「コンセンサスの免疫グロブリン配列」という用語は、類縁の免疫グロブリン配列のファミリーにおいて、最も高頻度で発生するアミノ酸(又はヌクレオチド)から形成された配列(例えば、Winnaker、「From Genes to Clones」(Verlagsgesellschaft、Weinheim、1987)を参照されたい)を指す。したがって、「コンセンサスの免疫グロブリン配列」は、「コンセンサスフレームワーク領域」及び/又は「コンセンサスCDR」を含みうる。免疫グロブリンのファミリーにおいて、コンセンサス配列内の各位置は、ファミリー内のこの位置において、最も高頻度で発生するアミノ酸により占有されている。2つのアミノ酸が、同等に高頻度で発生する場合、いずれもが、コンセンサス配列内に含まれうる。
【0047】
「連結配列」又は「連結ペプチド配列」とは、1つ以上の、目的のポリペプチド配列(例えば、全長配列、配列断片など)へと接続された、天然又は人工のポリペプチド配列を指す。「接続された」という用語は、連結配列の、目的のポリペプチド配列への接合を指す。このようなポリペプチド配列は、1つ以上のペプチド結合により接合することが好ましい。連結配列は、約4~約50アミノ酸の長さを有しうる。好ましくは、連結配列の長さは、約6~約30アミノ酸である。天然の連結配列は、人工の連結配列を創出するように、アミノ酸の置換、付加、又は欠失により修飾されうる。例示的な連結配列は、以下を含むがこれらに限定されない:(i)HHHHHH(配列番号20)のアミノ酸配列を有する、6×Hisタグ(配列番号20)のようなヒスチジン(His)タグは、ポリペプチド及び目的の抗体の単離及び精製を容易とする連結配列として有用である;(ii)Hisタグなどのエンテロキナーゼ切断部位は、タンパク質及び目的の抗体の単離及び精製において使用される。エンテロキナーゼ切断部位は、Hisタグと併せて、タンパク質及び目的の抗体の単離及び精製において使用されることが多い。当技術分野において、多様なエンテロキナーゼ切断部位が公知である。エンテロキナーゼ切断部位の例は、DDDDK(配列番号21)のアミノ酸配列及びその誘導体(例えば、ADDDDK(配列番号22)など)を含むがこれらに限定されない;(iii)その他の配列も、単鎖可変領域断片の軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を連結又は接続するのに使用されうる。他の連結配列の例は、Birdら、Science、242:423~426(1988);Hustonら、PNAS USA85:5879~5883(1988);及びMcCaffertyら、Nature、348:552~554(1990)において見出されうる。連結配列また、薬物の接合又は固体支持体への接合のような、さらなる機能のためにも修飾することができる。本開示の文脈において、モノクローナル抗体は、例えば、Hisタグ、エンテロキナーゼ切断部位、又はこれらの両方のような連結配列を含有しうる。
【0048】
本明細書において、「多価結合性タンパク質」とは、2つ以上の抗原結合性部位(本明細書において、「抗原結合性ドメイン」ともまた称される)を含む結合性タンパク質を指すように使用される。多価結合性タンパク質は、3つ以上の抗原結合性部位を有するように操作されていることが好ましく、一般に、自然発生の抗体ではない。「多特異性結合性タンパク質」という用語は、2つ以上の、類縁又は非類縁の標的に結合しうる結合性タンパク質であって、同じ標的分子の、2つ以上の異なるエピトープへの結合が可能な結合性タンパク質を含む結合性タンパク質を指す。
【0049】
「組換え抗体(recombinant antibody)」及び「組換え抗体(recombinant antibodies)」とは、組換え法により、1つ以上のモノクローナル抗体の全部又は一部をコードする核酸配列を、適切な発現ベクターへとクローニングし、その後、抗体を、適切な宿主細胞において発現させるステップを含む、1つ以上のステップにより調製された抗体を指す。用語は、組換えにより作製されたモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体(完全ヒト化抗体又は部分的ヒト化抗体)、抗体断片から形成された多特異性構造又は多価構造、二官能性抗体、ヘテロコンジュゲートAb、DVD-Ig、及び本明細書の(i)において記載された他の抗体(二重可変ドメイン免疫グロブリン及びそれらを作り出すための方法について、Wu,C.ら、Nature Biotechnology、25:1290~1297(2007)において記載されている)を含むがこれらに限定されない。本明細書において使用された「二官能性抗体」という用語は、1つの抗原性部位に対する特異性を有する第1のアーム及び異なる抗原性部位に対する特異性を有する第2のアームを含む抗体を指す、すなわち、二官能性抗体は、二重特異性を有する。
【0050】
本明細書において使用された「特異的結合」又は「特異的に結合すること」とは、抗体、タンパク質、又はペプチドの、第2の化学的分子種との相互作用を指す場合があり、この場合、相互作用は、化学的分子種上の特定の構造(例えば、抗原性決定基又はエピトープ)の存在に依存する、例えば、抗体は、タンパク質一般ではなく、特異的なタンパク質構造を認識し、これに結合する。抗体が、エピトープ「A」に対して特異的である場合、エピトープAを含有する分子(又は遊離のA、非標識化A)の、標識化「A」及び抗体を含有する反応物中の存在は、抗体に結合した標識化Aの量を低減する。
【0051】
本明細書において、「~を処置する」、「~を処置すること」又は「処置」は各々、疾患、又はこのような用語が適用される、このような疾患の、1つ以上の症状を阻止、緩和すること、又はこれらの進行を阻害することについて記載するのに、互換的に使用される。処置は、急性的に実施することもでき、慢性的に実施することもできる。用語はまた、疾患への罹患の前に、疾患又はこのような疾患と関連する症状の重症度を軽減することも指す。罹患の前における、疾患の重症度のこのような低減は、本明細書において記載された抗体又は医薬組成物の、投与時において疾患に罹患していない対象への投与を指す。「処置」及び「治療的に」とは、「~を処置すること」が、上記において規定される通りである場合の、処置する行為を指す。
【0052】
本明細書において、「変異体」は、アミノ酸の挿入、欠失、又は保存的置換により、アミノ酸配列が異なるが、少なくとも1つの生物学的活性を保持するペプチド又はポリペプチドについて記載するのに使用される。「生物学的活性」の代表例は、特異的抗体が結合する能力又は免疫反応を促進する能力を含む。変異体はまた、少なくとも1つの生物学的活性を保持するアミノ酸配列を伴う基準タンパク質と実質的に同一なアミノ酸配列を伴うタンパク質について記載するのにも使用される。当技術分野において、アミノ酸の保存的置換、すなわち、アミノ酸を、類似の特性(例えば、親水性、帯電の程度及び帯電領域の分布)を有する、異なるアミノ酸により置き換えることは、典型的に、小さな変化を伴うこととして認識されている。当技術分野において理解された通り、これらの小さな変化は、部分的に、アミノ酸の疎水性指数を検討することにより同定されうる(Kyteら、J.Mol.Biol.157:105~132(1982))。アミノ酸の疎水性指数は、その疎水性及び電荷の検討に基づく。当技術分野において、同様の疎水性指数を有するアミノ酸は、置換される場合があるが、なおも、タンパク質の機能を保持することが公知である。一態様において、±2の疎水性指数を有するアミノ酸は、置換される。アミノ酸の親水性もまた、生物学的機能を保持するタンパク質を結果としてもたらす置換を明らかにするのに使用されうる。ペプチドの文脈における、アミノ酸の親水性についての検討は、このペプチドの局所平均親水性の最大値であって、抗原性及び免疫原性とよく相関することが報告されている、有用な尺度である、局所平均親水性の最大値の計算を可能とする(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,554,101号)。同様の親水性値を有するアミノ酸による置換は、生物学的活性、例えば、当技術分野において理解された免疫原性を保持するペプチドを結果としてもたらしうる。置換は、互いから±2以内の親水性値を有するアミノ酸により実施されうる。アミノ酸の疎水性指数及び親水性値のいずれも、このアミノ酸の特定の側鎖の影響を受ける。生物学的機能と適合性であるアミノ酸置換は、疎水性、親水性、電荷、サイズ、及び他の特性により明らかにされる通り、アミノ酸の相対的類似性に依存し、特に、これらのアミノ酸の側鎖に依存すると理解されることは、この観察と符合する。「変異体」はまた、抗原的に反応性の抗RGMa抗体の断片であって、アミノ酸配列内の、対応する抗RGMa抗体の断片と異なるが、なおも抗原的に反応性であり、RGMaとの結合について、対応する抗RGMa抗体の断片と競合しうる断片を指すようにも使用されうる。「変異体」はまた、タンパク質分解、リン酸化、又は他の翻訳後修飾によるような、異なる形でプロセシングされているが、その抗原反応性を保持する、ポリペプチド又はその断片について記載するようにも使用されうる。
【0053】
本明細書において、数値範囲を列挙するために、それらの間に介在する各数であって、同じ精度を伴う各数が特に想定される。例えば、6~9の範囲について、6及び9に加えて、7及び8の数も想定され、6.0~7.0の範囲について、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、及び7.0の数が、特に想定される。
【0054】
2.抗RGMa抗体
本明細書では、それを必要とする患者へと、1つ以上の抗RGMa抗体を投与することにより、脊髄損傷を処置する方法、脊髄損傷後の軸索再生を促進する方法、脊髄損傷後の機能回復を促進する方法、及び脊髄損傷から生じる神経障害性疼痛を含む疼痛を処置する方法が提示される。本明細書において記載された方法における使用のための抗RGMa抗体は、「RGMc」(Repulsive Guidance Molecule c)との反応性を最小化又は消失させながら、RGMaに結合する。RGMaに対する抗体は、RGMcと交差反応することが多く、静脈内の高用量は、肝細胞内の鉄蓄積を結果としてもたらしうるため、本明細書に記載された抗体の、RGMaへの特異的結合は、治療的利益をもたらす。さらに、これらの抗体の高選択性は、処置のために、大きな治療用量域又は治療用量範囲をもたらす。
【0055】
a.RGMa認識抗体
本明細書において記載された方法において使用されうる抗体は、RGMaに結合する抗体、この断片又は変異体である。このような抗体は、例えば、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、WO2013112922において記載されている。抗体は、抗RGMa抗体の断片又はこの変異体若しくは誘導体でありうる。抗体は、ポリクローナル抗体の場合もあり、モノクローナル抗体の場合もある。抗体は、キメラ抗体、単鎖抗体、アフィニティー成熟抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体若しくはFab断片のような抗体断片、又はこれらの混合物でありうる。抗体断片又は誘導体は、F(ab’)断片、Fv断片又はscFv断片を含みうる。抗体誘導体は、ペプチド模倣体により作製されうる。さらに、単鎖抗体の作製について記載された技法は、単鎖抗体を作製するようにも適合させうる。
【0056】
ヒト抗体は、ファージディスプレイ技術に由来する場合もあり、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現させるトランスジェニックマウスに由来する場合もある。ヒト抗体は、ヒトのインビボにおける免疫反応の結果として作出及び単離されうる。例えば、Funaroら、BMC Biotechnology、2008(8):85を参照されたい。したがって、抗体は、動物レパートリーの産物ではなく、ヒトレパートリーの産物でありうる。ヒト由来であるため、自己抗原に対する反応性の危険性は、最小化されうる。代替的に、ヒト抗RGMa抗体を選択及び単離するのに、標準的な酵母ディスプレイライブラリー及びディスプレイ技術も使用されうる。例えば、ナイーブヒト単鎖可変断片(scFv)のライブラリーは、ヒト抗RGMa抗体を選択するのに使用されうる。トランスジェニック動物は、ヒト抗体を発現させるのに使用されうる。
【0057】
ヒト化抗体は、所望の抗原に結合する非ヒト種抗体であって、非ヒト種に由来する、1つ以上の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域を有する非ヒト種抗体に由来する抗体分子でありうる。
【0058】
抗体は、RGMaに特異的に結合しうる。ある特定の実施形態において、抗RGMa抗体は、RGMaのN末端領域に位置するエピトープに結合する。
【0059】
抗体は、配列番号17、配列番号18、配列番号19、又はこの断片若しくは変異体に結合しうる。抗体は、上記において記載したRGMaポリペプチド又は変異体において存在するエピトープを認識し、これに特異的に結合しうる。エピトープは、配列番号17(全長ヒトRGMa)、配列番号18(配列番号17のアミノ酸47~168に対応する、ヒトRGMaの断片)、配列番号19(ヒトRGMaの断片)、又はこれらの変異体であることが可能であり、これらの配列は、下記:
【0060】
【化1】
【0061】
【化2】
【0062】
【化3】
に提示される。
【0063】
ある特定の実施形態において、RGMa特異的RGMa抗体は、配列番号1、2、3、4、5、及び6;配列番号1、2、3、4、5、及び7;配列番号1、2、3、及び9;配列番号1、2、3、及び10;配列番号4、5、6、及び8;配列番号4、5、7、及び8;配列番号8及び9;配列番号8及び10;配列番号1、2、3、及び15;配列番号4、5、6、及び16;配列番号4、5、7、及び16;又は配列番号15及び16を含みうる。
【0064】
既往のデータは、AE12-1のエピトープが、RGMaのN末端領域内に位置することを示唆した。ある特定の実施形態において、抗体は、ヒトRGMaのアミノ酸47~168内のRGMaエピトープに結合する。ある特定の実施形態において、抗体は、配列番号18に明示されたアミノ酸内のRGMaエピトープに結合する。ある特定の実施形態において、抗体は、ヒトRGMaのアミノ酸47~69内のRGMaエピトープに結合する。ある特定の実施形態において、抗体は、配列番号19に明示されたアミノ酸内のRGMaエピトープに結合する。
【0065】
(1)抗体の構造
(a)重鎖CDR及び軽鎖CDR
抗体は、RGMa(配列番号17)、配列番号18、配列番号19、これらの断片、又は変異体に免疫特異的に結合することが可能であり、表1に示された可変重鎖及び/又は可変軽鎖を含む。抗体は、RGMa、これらの断片、誘導体、又は変異体に免疫特異的に結合することが可能であり、これらもまた表1に示された、重鎖CDR配列又は軽鎖CDR配列のうちの1つ以上を含む。抗体の軽鎖は、カッパ鎖又はラムダ鎖でありうる。例えば、表1を参照されたい。表1に示された抗体を作り出すための方法は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、WO2013/112922において記載されている。
【0066】
【表1】
【0067】
抗体又はこの変異体若しくは誘導体は、配列番号1~10又は15~16のうちの1つ以上と95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、又は50%を超えて同一な、1つ以上のアミノ酸配列を含有しうる。抗体又はこの変異体若しくは誘導体は、配列番号1~10又は15~16のうちの1つ以上と95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、又は50%を超えて同一な、1つ以上の核酸配列によりコードされうる。ポリペプチドの同一性及び相同性は、例えば、報告:Wilbur,W.J.及びLipman,D.J.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、80、726~730(1983)において記載されているアルゴリズムにより決定されうる。
【0068】
抗体は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgYの分子クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又は分子サブクラスでありうる。例えば、抗体は、以下の定常領域配列:
【0069】
【化4】
を有するIgG1分子でありうる。
【0070】
配列番号11内の上記定常領域は、234及び235位において、野生型定常領域配列の、2つの突然変異を含有する。詳細には、これらの突然変異は、234及び235位の各々における、ロイシンからアラニンへの変化(これらは、「LLAA」突然変異と称される)である。これらの突然変異は、上記において、太字及び下線により示されている。これらの突然変異の目的は、エフェクター機能を消失させることである。
【0071】
代替的に、IgG1分子は、1つ以上の突然変異を含有する、上記の定常領域配列(配列番号11)を有しうる。例えば、配列番号11の定常領域配列は、下記の表2に示された、アミノ酸250における突然変異であって、トレオニンを、グルタミンにより置きかえた突然変異(配列番号12)、アミノ酸428における突然変異であって、メチオニンを、ロイシンにより置きかえた突然変異(配列番号13)又はアミノ酸250における突然変異であって、トレオニンを、グルタミンにより置きかえた突然変異及びアミノ酸428における突然変異であって、メチオニンを、ロイシンにより置きかえた突然変異(配列番号14)を含有しうる。
【0072】
【表2】
【0073】
代替的に、IgG1分子は、AE12-1-Y(VH)CDRH1(配列番号1)、AE12-1-Y(VH)CDRH2(配列番号2)、AE12-1-Y(VH)CDRH3(配列番号3)を含む重鎖並びにAE12-1-Y(VL)CDRL1(配列番号4)、AE12-1-Y(VL)CDRL2(配列番号5)及びAE12-1-Y(VL)CDRL3(配列番号7)を含む軽鎖並びに下記の表3に示された配列番号14の定常配列を含有しうる(この抗体は、AE12-1-Y-QLと称され、配列番号15の軽鎖配列及び配列番号16の重鎖配列を有する)。
【0074】
【表3】
【0075】
3.医薬組成物
抗体は、医薬組成物中の成分でありうる。医薬組成物はまた、薬学的に許容される担体も含有しうる。本明細書において記載された抗体を含む医薬組成物は、脊髄損傷の処置、特に、軸索再生、機能回復、又はこれらの両方の促進における使用のための医薬組成物である。本明細書において記載された抗体を含む医薬組成物はまた、脊髄損傷から生じる神経障害性疼痛を含むがこれらに限定されない疼痛の処置における使用のための医薬組成物でもある。具体的な実施形態において、組成物は、本明細書において記載された、1つ以上の抗体を含む。これらの実施形態に従い、組成物は、担体、希釈剤又は賦形剤もさらに含みうる。
【0076】
本明細書において記載された抗体は、対象への投与に適する医薬組成物へと組み込まれうる。医薬組成物は、本明細書において記載された抗体(例えば、AE-12-1、AE-12-1-Y、又はAE-12-1-Y-QLのような抗体)及び薬学的に許容される担体を含むことが典型的である。本明細書で使用された「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性である、任意で全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延薬剤などを含む。薬学的に許容される担体の例は、水、生理食塩液、リン酸緩衝生理食塩液、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1つ以上のほか、これらの組合せを含む。多くの場合に、組成物中に、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコール、又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。薬学的に許容される担体は、抗体の保管寿命又は有効性を増強する、保湿剤又は乳化剤、保存剤又は緩衝剤のような、少量の補助物質もさらに含みうる。
【0077】
さらなる実施形態において、医薬組成物は、脊髄損傷を処置する、又は脊髄損傷から生じる神経障害性疼痛を含むがこれらに限定されない疼痛を処置するための、少なくとも1つのさらなる治療剤を含む。
【0078】
多様な送達システム、例えば、リポソーム内、マイクロ粒子内、マイクロカプセル内、抗体又は抗体断片を発現させることが可能な組換え細胞内の封入、受容体媒介型エンドサイトーシス(例えば、Wu及びWu、J.Biol.Chem.、262:4429~4432(1987)を参照されたい)、レトロウイルス又は他のベクターの一部としての核酸の構築などが公知であり、本明細書において記載された、1つ以上の抗体又は本明細書において記載された、1つ以上の抗体の組合せを投与するのに使用されうる。予防剤又は治療剤を投与する方法は、非経口投与(例えば、皮内投与、筋内投与、腹腔内投与、静脈内投与、髄腔内投与及び皮下投与)、硬膜外投与、腫瘍内投与、及び経粘膜投与(例えば、鼻腔内経路及び経口経路)を含むがこれらに限定されない。加えて、例えば、吸入器又は噴霧器、及びエアゾール化剤を伴う製剤の使用による肺内投与も援用されうる。例えば、それらの各々が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第6,019,968号;同第5,985,320号;同第5,985,309号;同第5,934,272号;同第5,874,064号;同第5,855,913号;同第5,290,540号;及び同第4,880,078号;並びにPCT公開第WO92/19244号;同第WO97/32572号;同第WO97/44013号;同第WO98/31346号;及び同第WO99/66903号を参照されたい。一実施形態において、本明細書において記載された抗体、組合せ治療、又は本明細書において記載された組成物は、Alkermes AIR(登録商標)肺内薬物送達技術(Alkermes,Inc.、Cambridge、Mass.)を使用して投与される。具体的な実施形態において、本明細書において記載された抗体による予防剤又は治療剤は、筋内投与、静脈内投与、腫瘍内投与、経口投与、鼻腔内投与、肺内投与、又は皮下投与される。予防剤又は治療剤は、任意の簡便な経路、例えば、注入又はボーラス注射により投与される場合もあり、上皮層又は皮膚粘膜層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜及び腸粘膜など)を通した吸収により投与される場合もあり、他の生物学的に活性薬剤と併せて投与される場合もある。投与は、全身投与の場合もあり、局所投与の場合もある。
【0079】
具体的な実施形態において、本明細書において記載された抗体を、処置を必要とする領域へと、局所投与することが所望される場合があり、これは、限定を目的とせずに述べると、例えば、局所注入により達成される場合もあり、注射により達成される場合もあり、膜及びサイラスティック膜、ポリマー、線維性マトリックス(例えば、Tissuel(登録商標))、又はコラーゲンマトリックスのようなマトリックスを含む、多孔性材料又は非多孔性材料の植込みである植込みにより達成される場合もある。一実施形態において、有効量の、本明細書において記載された、1つ以上の抗体は、障害又はその症状を、防止、処置、管理、及び/又は改善するように、対象の罹患領域へと、局所投与される。別の実施形態において、有効量の、本明細書において記載された、1つ以上の抗体は、障害又はその1つ以上の症状を、防止、処置、管理、及び/又は改善するように、有効量の、本明細書において記載された抗体以外の、1つ以上の治療(例えば、1つ以上の予防剤又は治療剤)と組み合わせて、対象の罹患領域へと、局所投与される。
【0080】
ある特定の実施形態において、髄腔内投与は、処置選択肢として除外されうる(例えば、損傷の早期において、浮腫がCSF流を妨げる場合)。
【0081】
医薬組成物は、その意図された投与経路に適合性となるように製剤化される。投与経路の例は、非経口投与、例えば、静脈内投与、髄腔内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与、鼻腔内(例えば、吸入)投与、経皮(例えば、局所)投与、経粘膜投与、及び直腸内投与を含むがこれらに限定されない。具体的な実施形態において、組成物は、規定の手順に従い、ヒトへの静脈内投与、皮下投与、筋内投与、経口投与、鼻腔内投与、又は局所投与に適合させた医薬組成物として製剤化される。典型的に、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張性の水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤及び注射部位における疼痛を和らげるように、リグノカインのような局所麻酔剤も含みうる。
【0082】
本明細書において記載された方法は、注射(例えば、ボーラス注射又は持続的注入による)による非経口投与のために製剤化された組成物の投与を含みうる。注射用の製剤は、保存剤を添加した単位剤形(例えば、アンプル内又は複数回投与用容器内の)において提示されうる。組成物は、油性媒体中又は水性媒体中の懸濁液、溶液又はエマルジョンのような形態を取ることが可能であり、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤のような製剤化剤を含有しうる。代替的に、有効成分は、使用の前の、適切な媒体(例えば、滅菌の発熱物質非含有水)による再構成のための粉末形態でありうる。本明細書において記載された方法は加えて、デポ調製物として製剤化された組成物を投与する方法も含みうる。このような長時間作用型製剤は、植込み(例えば、皮下、髄腔内又は筋内の植込み)により投与される場合もあり、筋内注射により投与される場合もある。したがって、例えば、組成物は、適切なポリマー性材料又は疎水性材料(例えば、許容可能な油中のエマルジョンとして)として製剤化される場合もあり、イオン交換樹脂として製剤化される場合もあり、難溶性の誘導体として(例えば、難溶性の塩として)製剤化される場合もある。
【0083】
本明細書において記載された方法は、中性形態又は塩形態として製剤化された組成物の投与を包摂する。薬学的に許容される塩は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するアニオンのようなアニオンにより形成された塩、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するカチオンのようなカチオンにより形成された塩を含む。
【0084】
一般に、組成物の成分は、例えば、活性薬剤の数量を指し示すアンプル又は小袋のような、密封された容器内の、凍結乾燥された乾燥粉末又は水分非含有の濃縮物として、個別に供給される場合もあり、単位剤形内に併せて混合されて供給される場合もある。投与方式が、注入である場合、組成物は、医薬グレードの滅菌水又は滅菌生理食塩液を含有する注入ボトルにより分注されうる。投与方式が、注射である場合、投与前に、成分が混合されうるように、注射用の滅菌水又は生理食塩液のアンプルが用意されうる。
【0085】
特に、本明細書において記載された方法はまた、本明細書において記載された抗体又は医薬組成物のうちの1つ以上が、抗体の数量を指し示すアンプル又は小袋のような、密封された容器内にパッケージングされることも想定する。一実施形態において、本明細書において記載された抗体又は医薬組成物のうちの1つ以上は、密封された容器内の、凍結乾燥された乾燥粉末又は水分非含有の濃縮物として供給され、対象への投与に適切な濃度へと再構成されうる(例えば、水又は生理食塩液により)。一実施形態において、本明細書において記載された抗体又は医薬組成物のうちの1つ以上は、密封された容器内の、凍結乾燥された乾燥粉末として、少なくとも5mg、例えば、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも75mg、又は少なくとも100mgの単位投与量において供給される。凍結乾燥させた、本明細書において記載された抗体又は医薬組成物は、その元の容器内、2℃~8℃の間において保管されるものとし、本明細書において記載された抗体又は医薬組成物は、再構成の後1週間以内、例えば、5日間以内、72時間以内、48時間以内、24時間以内、12時間以内、6時間以内、5時間以内、3時間以内、又は1時間以内に投与されるものとする。代替的な実施形態において、本明細書において記載された抗体又は医薬組成物のうちの1つ以上は、抗体の数量及び濃度を指し示す、密封された容器内の液体形態において供給される。さらなる実施形態において、投与される組成物の液体形態は、密封された容器内、少なくとも0.25mg/ml、例えば、少なくとも0.5mg/ml、少なくとも1mg/ml、少なくとも2.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml又は少なくとも100mg/mlにおいて供給される。液体形態は、その元の容器内、2℃~8℃の間において保管されるものとする。
【0086】
本明細書において記載された抗体は、非経口投与に適する医薬組成物へと組み込まれうる。一態様において、抗体は、0.1~500mg/mlの抗体を含有する注射用溶液として調製される。注射用溶液は、フリントバイアル内若しくはアンバーバイアル内、アンプル内又はプレフィルドシリンジ内の液体又は凍結乾燥剤形から構成されうる。緩衝液は、pH5.0~7.0(最適には、pH6.0)において、最適には、5~10mMである、L-ヒスチジン(1~50mM)でありうる。他の適切な緩衝液は、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウムを含むがこれらに限定されない。塩化ナトリウムは、溶液の等張性を、0~300mMの濃度(液体剤形で、最適には、150mM)で修飾するのに使用されうる。凍結保護剤、主に、0~10%のスクロース(最適には、0.5~1.0%)は、凍結乾燥剤形用に組み入れられうる。他の適切な凍結保護剤は、トレハロース及びラクトースを含む。増量剤、主に、1~10%のマンニトール(最適には、2~4%)は、凍結乾燥剤形用に組み入れられうる。安定化剤、主に、1~50mMのL-メチオニン(最適には、5~10mM)は、液体剤形及び凍結乾燥剤形のいずれにおいても使用されうる。他の適切な増量剤は、グリシン、アルギニンを含み、0~0.05%のポリソルベート-80(最適には、0.005~0.01%)として組み入れられうる。さらなる界面活性剤は、ポリソルベート20界面活性剤及びBRIJ界面活性剤を含むがこれらに限定されない。本明細書において記載された抗体を含む医薬組成物であって、非経口投与のための注射用溶液として調製された医薬組成物は、抗体の吸収又は分散を増大させるのに使用されるアジュバントのようなアジュバントとして有用な薬剤をさらに含みうる。特に、有用なアジュバントは、Hylenex(登録商標)(組換えヒトヒアルロニダーゼ)のようなヒアルロニダーゼである。ヒアルロニダーゼの、注射用溶液中の添加は、非経口投与、特に、皮下投与の後におけるヒトバイオアベイラビリティーを改善する。ヒアルロニダーゼの、注射用溶液中の添加はまた、疼痛及び不快感を軽減し、注射部位反応の発生を最小としながら、注射部位容量の増大(すなわち、1mlを超える)も可能とする(参照により本明細書に組み込まれる、国際出願公開第WO04/078140号及び米国特許出願公開第US2006104968号を参照されたい)。
【0087】
本明細書において記載された組成物は、様々な形態でありうる。これらは、例えば、溶液(例えば、注射用溶液及び注入用溶液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸剤、粉末、リポソーム及び坐剤のような、液体剤形、半固体剤形及び固体剤形を含む。好ましい形態は、意図された投与方式及び治療適用に依存する。組成物は、他の抗体によるヒトの受動免疫化に使用された組成物と同様の組成物のような注射用溶液又は注入用溶液の形態でありうる。一実施形態において、抗体は、静脈内注入又は静脈内注射により投与される。別の実施形態において、抗体は、筋内注射又は皮下注射により投与される。
【0088】
治療用組成物は典型的に、製造条件及び保管条件下において、滅菌かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散、リポソーム、又は高薬物濃度に適する、他の秩序構造として製剤化されうる。滅菌注射用溶液は、活性化合物(すなわち、結合性タンパク質、例えば、本明細書において記載された抗体)を、要請された量において、適切な溶媒中に、要請に応じて、1つの、上記において列挙された成分又はこれらの組合せと共に組み込むことに続く、濾過滅菌により調製されうる。一般に、分散液は、活性化合物を、基礎分散媒及び上記において列挙された成分に由来する、要請された他の成分を含有する滅菌媒体へと組み込むことにより調製される。滅菌注射用溶液を調製するための、滅菌の凍結乾燥粉末の場合、調製法は、あらかじめ滅菌濾過されたその溶液に由来する、任意のさらなる所望の成分を加えた、有効成分の粉末をもたらす真空乾燥法及び噴霧乾燥法を含む。溶液の適正な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングを用いることにより維持される場合もあり、分散液の場合には、要請された粒子サイズを維持することにより維持される場合もあり、界面活性剤を用いることにより維持される場合もある。注射用組成物の持続吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる試薬、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組み入れることによりもたらされうる。
【0089】
本明細書において記載された抗体は、当技術分野で公知の様々な方法により投与されうる。例えば、経路/投与方式は、皮下注射、静脈内注射又は静脈内注入でありうる。当業者により察知される通り、経路及び/又は投与方式は、所望の結果に応じて変動する。ある特定の実施形態において、活性化合物は、急速な放出に対して、化合物を保護する担体であって、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロ封入送達系を含む制御放出製剤のような担体により調製されうる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸のような、生体分解性の生体適合性ポリマーは、使用されうる。このような製剤を調製するための多くの方法は特許化されている、又は当業者に一般に公知である。例えば、「Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems」、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、New York、1978を参照されたい。
【0090】
ある特定の実施形態において、本明細書において記載された抗体は、例えば、不活性の希釈剤又は同化可能な可食担体と共に経口投与されうる。抗体(及び、所望の場合、他の成分)はまた、ハードシェルゼラチンカプセル内又はソフトシェルゼラチンカプセル内に封入される場合もあり、錠剤へと圧縮される場合もあり、対象の食餌へと、直接組み込まれる場合もある。経口治療用投与のために、抗体は、賦形剤と共に組み込まれ、服用可能な錠剤、口腔用錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハーなどの形態において使用されうる。本明細書において記載された抗体を、非経口投与以外により投与するために、抗体を、その不活化を防止する材料によりコーティングする、又は抗体を、これと共に共投与することが必要でありうる。
【0091】
補充の活性化合物もまた、組成物へと組み込まれうる。ある特定の実施形態において、本明細書において記載された抗体は、本明細書において記載された障害又は疾患を処置するために有用な、1つ以上のさらなる治療剤と共に共製剤化及び/又は共投与される。例えば、本明細書において記載された抗RGMa抗体は、他の標的に結合する、1つ以上のさらなる抗体(例えば、他の可溶性抗原に結合する、又は細胞表面分子に結合する抗体)と共に共製剤化及び/又は共投与されうる。さらに、本明細書において記載された、1つ以上の抗体は、前出の治療剤のうちの2つ以上と組み合わせて使用されうる。このような組合せ療法は、低投与量の治療剤の投与を活用することが可能であり、これにより、多様な単剤療法と関連する、可能な毒性又は合併症を回避しうるので有利である。
【0092】
ある特定の実施形態において、本明細書において記載された抗体は、当技術分野で公知の半減期延長媒体へと連結される。このような媒体は、Fcドメイン、ポリエチレングリコール、及びデキストランを含むがこれらに限定されない。このような媒体は、例えば、参照により任意の目的で本明細書に組み込まれる、米国特許出願第09/428,082号及びPCT出願公開第WO99/25044号において記載されている。
【0093】
本明細書において記載された抗体は、単独で使用される場合もあり、1つ以上のさらなる薬剤、例えば、治療剤(例えば、低分子又は生物学的薬剤)と組み合わせて使用される場合もあり、前記さらなる薬剤は、その意図された目的のために、当業者に選択されることを理解されたい。
【0094】
組合せが、それらの意図された目的に有用な組合せであることもさらに理解されたい。上記において明示された薬剤は、例示的な目的のための薬剤であり、限定的であることは意図されない。組合せは、抗体及び下記のリストから選択される、少なくとも1つのさらなる薬剤を含みうる。組合せが、形成された組成物が、その意図された機能を実施しうるような組合せである場合、組合せはまた、1つを超えるさらなる薬剤、例えば、2つ又は3つのさらなる薬剤も含みうる。
【0095】
医薬組成物は、「治療有効量」又は「予防有効量」の抗体を含みうる。「治療有効量」とは、所望の治療結果を達成するのに必要な投与量において、必要な期間にわたり有効な量を指す。抗体の治療有効量は、当業者により決定され、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力のような因子に従い変動しうる。治療有効量はまた、存在する場合、抗体の毒性作用又は有害な作用が、治療的に有益な効果により凌駕される量でもある。「予防有効量」とは、所望の治療結果を達成するのに必要な投与量において、必要な期間にわたり有効な量を指す。典型的に、予防的用量は、疾患の前又は早期の対象において使用されるので、予防有効量は、治療有効量未満である。
【0096】
投与量レジメンは、最適の所望の応答(例えば、治療応答又は予防応答)をもたらすように調整されうる。例えば、単一のボーラスが、投与される場合もあり、複数の分割された用量が、時間経過にわたり投与される場合もあり、治療状況の要求により指し示されるのに応じて、用量が、低減される場合もあり、増大される場合もある。とりわけ、投与の容易さ及び投与量の均一性のために、非経口組成物を、単位剤形において製剤化することが有利である。本明細書において使用された単位剤形とは、哺乳動物の処置対象のための単位投与量として適する、物理的に個別の単位を指し、各単位は、要請された医薬担体と共に、所望の治療的効果をもたらすように計算された、所定数量の活性化合物を含有する。単位剤形のための仕様は、(a)活性化合物の固有の特徴及び達成される特定の治療的又は予防的効果並びに(b)個体における感受性を処置するために、このような活性化合物を配合させる技術分野において固有の限定により指定され、これらに直接依存する。
【0097】
抗体の治療有効量又は予防有効量のための、例示的な非限定的範囲は、0.1~200mg/kgの間、例えば、0.1~100mg/kgの間、5~50mg/kgの間、又は10~25mg/kgの間の用量である。抗体の治療有効量又は予防有効量は、1~200mg/kg、10~200mg/kg、20~200mg/kg、50~200mg/kg、75~200mg/kg、100~200mg/kg、150~200mg/kg、50~100mg/kg、5~10mg/kg、又は1~10mg/kgの間でありうる。投与量値は、緩和される状態の種類及び重症度と共に変動しうることに注目されたい。さらに、抗体用量は、当業者により決定され、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力のような因子にも従い変動しうる。用量はまた、存在する場合、抗体の毒性作用又は有害な作用が、治療的に有益な効果により凌駕される量でもある。任意の特定の対象について、時間経過にわたり、個別の必要及び組成物を投与する、又は組成物の投与を監督する担当者の職業的判断に従い、特定の投与量レジメンを調整すべきであり、本明細書において明示された投与量範囲は、例示的なものであるに過ぎず、特許請求された組成物の範囲又は実施を限定することを意図するものではないことをさらに理解されたい。
【0098】
4.処置法
a.脊髄損傷(SCI)
任意の対象において、対象が、脊髄損傷を有する、又は脊髄損傷を有する危険性があるのかどうかについて、評価を行うことができる。評価は、防止的治療、維持的治療、又はモジュレーティング治療のような、適切な治療コースを指し示しうる。したがって、本明細書では、治療有効量の、本明細書において記載された抗体(例えば、抗体であるAE12-1、AE12-1-Y、又はAE12-1-Y-QLのような)のうちの1つ以上を投与することにより、脊髄損傷を処置、防止、モジュレート、又は緩和する方法が提示される。抗体は、それを必要とする対象へと投与されうる。抗体は、治療有効量において投与されうる。
【0099】
一実施形態において、脊髄損傷の原因は、自動車事故、転倒、暴力、運動競技による損傷、血管障害、腫瘍、感染性疾患、脊椎症、医原性損傷(とりわけ、脊髄内注射及び硬膜外カテーテル留置の後における)、骨粗鬆症に続発する椎骨骨折、又は発達障害である。
【0100】
ある特定の実施形態において、脊髄損傷は、例えば、鈍力による外傷、圧迫、ヘルニアなどから生じうる。ある特定の実施形態において、脊髄は、完全に切断されている。他のある特定の実施形態において、脊髄は、損傷し、例えば、部分的に切断されているが、完全に切断されてはいない。他の実施形態において、脊髄は、例えば、脊柱の骨構造への損傷、1つ以上の椎骨の、他の椎骨と比べた変位、隣接する組織の炎症又は腫脹などを通して圧迫される。
【0101】
脊髄損傷は、四肢麻痺(tetraplegia)(旧称:四肢麻痺(quadriplegia))及び対麻痺として公知の状態を含む。したがって、本明細書において提示された脊髄損傷の処置法についての一部の実施形態は、四肢麻痺(tetraplegic)患者又は対麻痺患者の処置を含む。
【0102】
四肢麻痺(tetraplegia)とは、脊柱管内の神経要素の損傷に起因する、脊髄の頸部における、運動機能及び/又は感覚機能の障害又は喪失を特徴とする、頸部領域内の脊髄に対する損傷を指す。四肢麻痺(tetraplegia)は、腕のほか、体幹、脚部及び骨盤内臓器における機能障害を結果としてもたらす。四肢麻痺(tetraplegia)は、神経管の外部の末梢神経に対する、腕神経叢の病変又は損傷を含まない。
【0103】
対麻痺は、脊柱管内の神経要素の損傷に続発する、脊髄の胸部、腰部又は仙骨部(頸部ではない)における、運動機能及び/又は感覚機能の障害又は喪失を指す。対麻痺により、腕の機能は温存されるが、損傷のレベルに応じて、体幹、脚部及び骨盤内臓器は、罹患しうる。用語は、馬尾及び脊髄円錐の損傷を指すのに使用されるが、神経管の外部の末梢神経に対する、腰仙骨神経叢の病変又は損傷を指すのには使用されない。
【0104】
一実施形態において、脊髄損傷は、頸椎のうちの1つ以上における損傷である。別の実施形態において、脊髄損傷は、胸椎のうちの1つ以上における損傷である。別の実施形態において、脊髄損傷は、腰椎のうちの1つ以上における損傷である。別の実施形態において、脊髄損傷は、仙椎のうちの1つ以上における損傷である。ある特定の実施形態において、脊髄損傷は、椎骨であるC1、C2、C3、C4、C5、C6若しくはC7;又は椎骨であるT1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T8、T9、T10、T11若しくはT12;又は椎骨であるL1、L2、L3、L4若しくはL5である。他のある特定の実施形態において、脊髄損傷は、C1~C2の間;C2~C3の間;C3~C4の間;C4~C5の間;C5~C6の間;C6~C7の間;C7~T1の間;T1~T2の間;T2~T3の間;T3~T4の間;T4~T5の間;T5~T6の間;T6~T7の間;T7~T8の間;T8~T9の間;T9~T10の間;T10~T11の間;T11~T12の間;T12~L1の間;L1~L2の間;L2~L3の間;L3~L4の間;又はL4~L5の間の脊柱から出ている脊髄神経根への損傷である。ある特定の実施形態において、損傷は、頸髄に対する損傷である。他の実施形態において、損傷は、胸髄に対する損傷である。他の実施形態において、脊髄損傷は、腰仙髄に対する損傷である。他のある特定の実施形態において、脊髄損傷は、円錐に対する損傷である。他のある特定の実施形態において、CNS損傷は、馬尾内の1つ以上の神経に対する損傷である。別の実施形態において、脊髄損傷は、後頭部における損傷である。
【0105】
一般に、投与される抗体の投与量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全般的な治療状態及び治療の既往歴のような因子に応じて変動する。投与量レジメンは、最適の所望の応答(例えば、治療応答又は予防応答)をもたらすように調整されうる。例えば、単一のボーラスが、投与される場合もあり、複数の分割された用量が、時間経過にわたり投与される場合もあり、治療状況の要求により指し示されるのに応じて、用量が、比例的に低減される場合もあり、増大される場合もある。とりわけ、投与の容易さ及び投与量の均一性のために、非経口組成物を、単位剤形において製剤化することが有利である。本明細書において使用された単位剤形とは、哺乳動物の被験対象のための単位投与量として適する、物理的に個別の単位を指し、各単位は、要請された医薬担体と共に、所望の治療的効果をもたらすように計算された、所定数量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形のための仕様は、(a)活性化合物の固有の特徴及び達成される特定の治療的又は予防的効果並びに(b)個体における感受性を処置するために、このような活性化合物を配合させる技術分野において固有の限定により指定され、これらに直接依存する。
【0106】
投与量値は、緩和される状態の種類及び重症度と共に変動しうることに注目されたい。任意の特定の対象について、時間経過にわたり、個別の必要及び組成物を投与する、又は組成物の投与を監督する担当者の職業的判断に従い、特定の投与量レジメンを調整すべきであり、本明細書において明示された投与量範囲は、例示的なものであるに過ぎず、特許請求された組成物の範囲又は実施を限定することを意図するものではないことをさらに理解されたい。
【0107】
抗体の患者への投与は、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋内投与、皮下投与、胸膜内投与、髄腔内投与、眼内投与、ガラス体内投与、領域内カテーテルを通した灌流による投与、又は直接的な病変内注射による投与でありうる。治療的タンパク質を、注射により投与する場合、投与は、持続的注入による場合もあり、単回又は複数回のボーラスによる場合もある。静脈内注射は、抗体が急速に分布するときの循環の完全さのために、有用な投与方式をもたらす。抗体は、例えば、不活性の希釈剤又は同化可能な可食担体と共に経口投与されうる。抗体及び他の成分は、所望の場合、ハードシェルゼラチンカプセル内又はソフトシェルゼラチンカプセル内に封入される場合もあり、錠剤、口腔用錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハーなどへと圧縮される場合もある。
【0108】
抗RGMa抗体は、単回、又は反復的に、非経口により施される、投与1回当たりのタンパク質20ミリグラム~2グラムのような低タンパク質用量において投与されうる。代替的に、抗体は、投与1回当たりのタンパク質20~1000ミリグラム、又は投与1回当たりのタンパク質20~500ミリグラム、又は投与1回当たりのタンパク質20~100ミリグラムの用量において投与されうる。
【0109】
抗RGMa抗体は、脊髄損傷後の多様な時点であって、脊髄損傷後24時間未満を含むがこれらに限定されない時点において投与されうる。ある特定の実施形態において、抗RGMa抗体は、対象へと、脊髄損傷後、1時間未満、2時間未満、3時間未満、4時間未満、5時間未満、6時間未満、7時間未満、8時間未満、9時間未満、10時間未満、11時間未満、12時間未満、13時間未満、14時間未満、15時間未満、16時間未満、17時間未満、18時間未満、19時間未満、20時間未満、21時間未満、22時間未満、又は23時間未満に投与される。ある特定の実施形態において、抗RGMa抗体は、対象へと、脊髄損傷後約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、又は12時間後に投与される。
【0110】
抗RGMa抗体は、単独で投与される場合もあり、リポソームへとコンジュゲートさせ、抗体が、混合物中において、薬学的に許容される担体と組み合わされた、薬学的に有用な組成物を調製する公知の方法に従い製剤化される場合もある。「薬学的に許容される担体」は、レシピエントである患者により忍容されうる。滅菌リン酸緩衝生理食塩液は、薬学的に許容される担体の1つの例である。当業者に、他の適する担体が周知である。例えば、「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES」、19版(1995)を参照されたい。
【0111】
治療を目的として、抗体は、患者へと、薬学的に許容される担体中、治療有効量において投与される。「治療有効量」とは、生理学的に重要な量である。抗体は、その存在が、レシピエントである患者の生理学の、検出可能な変化を結果としてもたらす場合に、生理学的に重要である。この文脈において、抗体は、その存在が、例えば、CD4T細胞からの、インターフェロンγ(INF-γ)、インターロイキン2(IL-2)、IL-4及び/又はIL-17の分泌の減少を結果としてもたらす場合に、生理学的に重要でありうる。薬剤は、その存在が、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)内の増殖反応及び/又は炎症促進性サイトカインの発現の低減を結果としてもたらす場合に、生理学的に重要である。
【0112】
治療的適用における、抗体の作用の持続を制御するのに、さらなる処置法も援用される。制御放出調製物は、抗体を複合体化させる、又は抗体に吸着するポリマーの使用により調製されうる。例えば、生体適合性ポリマーは、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)のマトリックス及びステアリン酸二量体及びセバシン酸のポリ無水物コポリマーのマトリックスを含む(Sherwoodら、Bio/Technology、10:1446(1992))。このようなマトリックスからの抗体の放出速度は、タンパク質の分子量、マトリックス中の抗体量、及び分散させた粒子のサイズに依存する(Saltzmanら、Biophys.J.、55:163(1989);Sherwoodら、前出)。他の固体剤形は、「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES」、19版(1995)において記載されている。
【0113】
(1)神経学的回復
神経学的回復は、フランケル分類、運動スコア、及びAIS(ASIA(American Spinal Injury Association)Impairment Scale)を含むがこれらに限定されない、利用可能な尺度を使用して評価されうる。AISとは、運動神経及び感覚神経の完全性を評価する臨床ツールである。
【0114】
一部の実施形態において、SCIの1つ以上の症状の改善、又はSCIの1つ以上の症状の進行の軽減は、International Standards for Neurological and Functional Classification of Spinal Cord Injuryに従い評価される。ASIAにより公表されているInternational Standards for Neurological and Functional Classification of Spinal Cord Injuryは、神経機能についての、全身的な運動検査及び感覚検査に基づき、SCIのレベル及び広がりについて記載する、広く受容されたシステムである。その開示が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、「International Standards For Neurological Classification Of Spinal Cord Injury」、J Spinal Cord Med.34(6):535~46(2011)を参照されたい。
【0115】
(2)機能回復
機能回復は、神経学的回復と共に達成される場合もあり、これと独立に達成される場合もある。機能回復は、SCIM(Spinal Cord Independence Measure)、FIM(Functional Independence Measure)、WISCI(Walking Index for Spinal Cord Injury)、MBI(Modified Barthel Index)、QIF(Quadriplegia Index of Function)、London Handicap scale、及びShort Form 36を含むがこれらに限定されない、利用可能な尺度を使用して評価されうる。例えば、Anderson K.ら、「Functional Recovery Measures for Spinal Cord Injury:An Evidence-Based Review for Clinical Practice and Research」、J.Spinal Cord Med.、31、133~144(2008)を参照されたい。他の実施形態において、機能回復は、オープンフィールドBBB(Basso、Beattie and Bresnahan)運動試験、歩行解析、ラダーウォーク解析、及び/又は組合せ行動学的スコア(CBS)を形成する試験を使用して評価されうる。
【0116】
b.疼痛
任意の対象において、対象が、侵害性疼痛、神経障害性疼痛又はこれらの組合せを含む、任意の種類の、急性又は慢性の、疼痛状態又は疼痛障害を有する、又はこれらを経る危険性があるのかどうかについて評価を行うことができる。このような疼痛状態又は疼痛障害は、術後疼痛、骨関節炎疼痛、炎症に起因する疼痛、関節リウマチ疼痛、筋骨格系疼痛、火傷性疼痛(日焼けを含む)、眼痛、歯科状態と関連する疼痛(虫歯及び歯肉炎のような)、産後疼痛、骨折、ヘルペス、HIV、外傷性神経損傷、脳卒中、虚血症後疼痛、線維筋痛症、反射性交感神経性ジストロフィー、複合性局所疼痛症候群、脊髄損傷、座骨神経痛、幻肢疼痛、糖尿病性神経障害、痛覚過敏及びがんを含みうるがこれらに限定されない。評価は、防止的治療、維持的治療、又はモジュレーティング治療のような、適切な治療コースを指し示しうる。したがって、本明細書では、治療有効量の、本明細書において記載された抗体(例えば、抗体であるAE12-1、AE12-1-Y、又はAE12-1-Y-QLのような)のうちの1つ以上を投与することにより、脊髄損傷を処置、防止、モジュレート、又は緩和する方法が提示される。抗体は、それを必要とする対象へと投与されうる。抗体は、治療有効量において投与されうる。
【0117】
一般に、投与される抗体の投与量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全般的な治療状態及び治療の既往歴のような因子に応じて変動する。投与量レジメンは、最適の所望の応答(例えば、治療応答又は予防応答)をもたらすように調整されうる。例えば、単一のボーラスが、投与される場合もあり、複数の分割された用量が、時間経過にわたり投与される場合もあり、治療状況の要求により指し示されるのに応じて、用量が、比例的に低減される場合もあり、増大される場合もある。とりわけ、投与の容易さ及び投与量の均一性のために、非経口組成物を、単位剤形において製剤化することが有利である。本明細書において使用された単位剤形とは、哺乳動物の被験対象のための単位投与量として適する、物理的に個別の単位を指し、各単位は、要請された医薬担体と共に、所望の治療的効果をもたらすように計算された、所定数量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形のための仕様は、(a)活性化合物の固有の特徴及び達成される特定の治療的又は予防的効果並びに(b)個体における感受性を処置するために、このような活性化合物を配合させる技術分野において固有の限定により指定され、これらに直接依存する。
【0118】
投与量値は、緩和される状態の種類及び重症度と共に変動しうることに注目されたい。任意の特定の対象について、時間経過にわたり、個別の必要及び組成物を投与する、又は組成物の投与を監督する担当者の職業的判断に従い、特定の投与量レジメンを調整すべきであり、本明細書において明示された投与量範囲は、例示的なものであるに過ぎず、特許請求された組成物の範囲又は実施を限定することを意図するものではないことをさらに理解されたい。
【0119】
抗体の患者への投与は、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋内投与、皮下投与、胸膜内投与、髄腔内投与、眼内投与、ガラス体内投与、領域内カテーテルを通した灌流による投与、又は直接的な病変内注射による投与でありうる。治療的タンパク質を、注射により投与する場合、投与は、持続的注入による場合もあり、単回又は複数回のボーラスによる場合もある。静脈内注射は、抗体が急速に分布するときの循環の完全さのために、有用な投与方式をもたらす。抗体は、例えば、不活性の希釈剤又は同化可能な可食担体と共に経口投与されうる。抗体及び他の成分は、所望の場合、ハードシェルゼラチンカプセル内又はソフトシェルゼラチンカプセル内に封入される場合もあり、錠剤、口腔用錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハーなどへと圧縮される場合もある。
【0120】
抗RGMa抗体は、単回、又は反復的に、非経口により施される、投与1回当たりのタンパク質20ミリグラム~2グラムのような低タンパク質用量において投与されうる。代替的に、抗体は、投与1回当たりのタンパク質20~1000ミリグラム、又は投与1回当たりのタンパク質20~500ミリグラム、又は投与1回当たりのタンパク質20~100ミリグラムの用量において投与されうる。
【0121】
抗RGMa抗体は、神経障害性疼痛を発症する危険性が存在する、脊髄損傷後の多様な時点であって、脊髄損傷後24時間未満を含むがこれらに限定されない時点において投与されうる。ある特定の実施形態において、抗RGMa抗体は、対象へと、脊髄損傷後1時間未満、2時間未満、3時間未満、4時間未満、5時間未満、6時間未満、7時間未満、8時間未満、9時間未満、10時間未満、11時間未満、12時間未満、13時間未満、14時間未満、15時間未満、16時間未満、17時間未満、18時間未満、19時間未満、20時間未満、21時間未満、22時間未満、又は23時間未満に投与される。ある特定の実施形態において、抗RGMa抗体は、対象へと、脊髄損傷後約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、又は12時間後に投与される。
【0122】
抗体は、単独で投与される場合もあり、リポソームへとコンジュゲートさせ、抗体が、混合物中において、薬学的に許容される担体と組み合わされた、薬学的に有用な組成物を調製する公知の方法に従い製剤化される場合もある。「薬学的に許容される担体」は、レシピエントである患者により忍容されうる。滅菌リン酸緩衝生理食塩液は、薬学的に許容される担体の1つの例である。当業者に、他の適する担体が周知である。例えば、「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES」、19版(1995)を参照されたい。
【0123】
治療を目的として、抗体は、患者へと、薬学的に許容される担体中、治療有効量において投与される。「治療有効量」とは、生理学的に重要な量である。抗体は、その存在が、レシピエントである患者の生理学の、検出可能な変化を結果としてもたらす場合に、生理学的に重要である。この文脈において、抗体は、その存在が、例えば、CD4+T細胞からの、インターフェロンγ(INF-γ)、インターロイキン2(IL-2)、IL-4及び/又はIL-17の分泌の減少を結果としてもたらす場合に、生理学的に重要でありうる。薬剤は、その存在が、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)内の増殖反応及び/又は炎症促進性サイトカインの発現の低減を結果としてもたらす場合に、生理学的に重要である。
【0124】
治療的適用における、抗体の作用の持続を制御するのに、さらなる処置法も援用される。制御放出調製物は、抗体を複合体化させる、又は抗体に吸着するポリマーの使用により調製されうる。例えば、生体適合性ポリマーは、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)のマトリックス及びステアリン酸二量体及びセバシン酸のポリ無水物コポリマーのマトリックスを含む(Sherwoodら、Bio/Technology、10:1446(1992))。このようなマトリックスからの抗体の放出速度は、タンパク質の分子量、マトリックス中の抗体量、及び分散させた粒子のサイズに依存する(Saltzmanら、Biophys.J.、55:163(1989);Sherwoodら、前出)。他の固体剤形は、「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES」、19版(1995)において記載されている。
【0125】
(1)神経障害性疼痛
本明細書において使用された「神経障害性疼痛」という用語は、神経、脊髄、又は脳への損傷から生じ、神経過敏を伴うことが多い疼痛を指す。神経障害性疼痛の例は、慢性腰痛、関節炎と関連する疼痛、がん関連疼痛、帯状疱疹性神経痛、幻肢疼痛、中枢性疼痛、オピオイド抵抗性神経障害性疼痛、骨損傷疼痛、及び分娩時の疼痛を含む。他の
神経障害性疼痛の例は、術後疼痛(post-operative pain)、群発頭痛、歯痛、術後疼痛(surgical pain)、重度の火傷、例えば、III度の火傷から生じる疼痛、産後疼痛、狭心症性疼痛、膀胱炎を含む、尿生殖路関連疼痛を含む。
【0126】
神経障害性疼痛は、侵害性疼痛から識別されうる。侵害性機構を伴う疼痛は通例、持続期間が、組織修復期間に限定され、一般に、利用可能な鎮痛剤又はオピオイドにより緩和される(Myers(1995)、Regional Anesthesia、20:173)。神経障害性疼痛は、典型的に、長期持続性又は慢性であり、初期の急性組織損傷の数日後又は数ヶ月後に発症することが多い。神経障害性疼痛は、遷延性で自発性の疼痛のほか、刺激に対しては有痛であり、通常は無痛である異痛を伴いうる。神経障害性疼痛はまた、ピン刺激のような、通例、些少な有痛刺激に対して、応答が強められる痛覚過敏も特徴としうる。侵害性疼痛と異なり、神経障害性疼痛は一般に、オピオイド療法に対して抵抗性である(Myers、前出、1995)。したがって、本明細書で開示された抗体は、神経障害性疼痛を処置するのに使用されうる。
【0127】
本明細書において使用された「侵害性疼痛」という用語は、無傷のニューロン経路を介して伝達された疼痛、すなわち、身体への損傷により引き起こされた疼痛を指す。侵害性疼痛は、体性感覚及び正常な疼痛機能を含み、対象に、組織損傷の切迫を知らせる。侵害性経路は、対象を保護するために存在する(例えば、火傷に応答して経験された疼痛)。侵害性疼痛は、骨痛、内臓痛、及び軟部組織と関連する疼痛を含む。
【実施例0128】
5.実施例
本発明は、以下の非限定的な例により例示された、複数の態様を有する。
実施例1のための一般的方法
研究デザインの概要を、図4Aに描示する。成体雌ウイスターラットに、プレトレーニングし、次いで、公表されているプロトコールに従い、改変動脈瘤クリップにより、T8において、20gの力により、1分間にわたり、クリップによる衝撃-圧迫性SCIをもたらした。略述すると、クリップの下側ブレードを、硬膜外で腹側近傍の脊髄に通し、クリップアプリケーターにより、クリップを開放に保持した。次いで、クリップを、アプリケーターから放離して、双方向的な衝撃力をもたらすのに続き、持続的な背側-腹側圧迫をもたらした。これは、ヒト病態を反映する、臨床的に関与性のSCIモデルである。急性衝撃に続く、遷延性圧迫の組合せは、ヒトにおける最も一般的なSCI機構であり、急性クリップ圧迫モデルは、この衝撃-圧迫損傷を刺激しうる。
【0129】
クリップによる衝撃-圧迫の直後に、AE12-1、AE12-1-Y、hIgGアイソタイプ対照、又はPBS媒体の局所脊髄内注射及び全身静脈内注射(20mg/kg)を、SCIの6週間後まで、毎週1回施した。
【0130】
[実施例1.1]
SCIの後の、ラット脊髄及びヒト脊髄における、RGMaの発現
方法:ラット組織切片を、免疫組織化学染色のために調製し、一次抗体により、4℃において、一晩にわたりインキュベートした。以下の一次抗体:ニューロンに対するNeuN(1:500、Millipore Bioscience Research Reagents)、星状膠細胞に対するGFAP(1:200、Millipore)、Iba-1(1:1000、活性化マクロファージ/小膠細胞に対する;和光純薬株式会社)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンに対するCS56(1:500、Sigma)、感覚線維に対するカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)(1:1000、Millipore)、セロトニン作動性線維に対する5HT(1:3000、ImmunoStar)、及びヒトIgG抗体を検出するhIgG(1:500、Millipore)を使用した。切片を、ブロッキング溶液中において希釈された一次抗体と共に、一晩にわたりインキュベートし、洗浄し、蛍光コンジュゲート二次抗体と共にインキュベートした。
【0131】
ヒト組織切片を、染色のために調製し、ブロッキング溶液中において希釈された一次抗体(1:200のRGMa、Abcam;又は1:100のネオゲニン、Santa Cruz)と共に、一晩にわたりインキュベートした。切片を洗浄し、ビオチニル化抗マウス二次抗体(1:500、Vector Laboratories)と共にインキュベートし、洗浄し、アビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体と共にインキュベートした。ジアミノベンジジン(DAB)(Vectastain Elite ABC Kit Standard、Vector Laboratories)を、色原体として適用した。
【0132】
結果:RGMaは、ラット脊髄のクリップによる衝撃-圧迫損傷の後で上方調節された(図1図10)。二重標識免疫染色により示された通り、RGMaは、正常ラット脊髄内のニューロン(RGMa+/NeuN+)及び希突起膠細胞(RGMa+/CC1+)により主として発現した(図1A及び1B)。損傷の1週間後における定量化は、RGMaの発現の15倍の増大を示した(図10A)。SCIの後、RGMaは、ニューロン(図1A)、希突起膠細胞(図1B図10C)、GFAP標識化により示された通り、星状膠細胞(図1C)、Iba-1(図1C)及びED-1(図10B)より示された通り、活性化小膠細胞及び活性化マクロファージ、並びに病変部位内及び病変部位の周囲の、CSPGに富む瘢痕領域内(図1C)において発現した。
【0133】
非損傷ヒト脊髄において、RGMaは、灰白質中間帯内のニューロン(図2A及び2B)及び脊柱内の希突起膠細胞(図2C)の免疫染色により示された通り、ニューロン内、低レベルにおいて発現した。SCI3日後の損傷ヒト脊髄において、RGMaの発現は、ニューロン、軸索、希突起膠細胞、及びミエリンに富む白質領域において上方調節された(図2D~2F)。さらに、RGMa受容体ネオゲニンは、ラット脊髄(データは示さない)及びヒト脊髄のいずれにおいても、ニューロンを介して発現し、また、損傷の後に上方調節もされた(図11)。
【0134】
[実施例1.2]
インビトロにおける、抗RGMa抗体の、神経突起の伸長に対する効果
方法:神経突起の伸長アッセイのために、E18マウス皮質ニューロンを、ポリ-L-リシンによりコーティングされたカバーガラススリップ上に播種し、ラミニン(Invitrogen;10mg/ml)及びRGMaタンパク質(5mg/ml)により処理し、対照抗体(hIgG)又は抗RGMa(1mg/ml)と共に、37℃において、24時間にわたりインキュベートした。神経突起の伸長解析のために、皮質細胞を、βIII-チューブリン(Sigma;1:500)により免疫染色した。ウェスタンブロットのために、マウス皮質ニューロンを、RIPA緩衝液中に溶解させ、10%アクリルアミドゲル上にロードしてから、ニトロセルロース膜へと移した。ブロットを、抗RGMa抗体(AE12-1及びAE12-1-Y)及び抗ネオゲニン(E20;Santa Cruz;10mg/ml)によりプロービングした。
【0135】
結果:マウス皮質ニューロン溶解物についてのウェスタンブロットにおいて、AE12-1及びAE12-1-Yのいずれも、50kDaのバンドを特異的に検出した(図3A)。AE12-1-Yによる免疫染色が示した通り、培養マウス初代皮質ニューロンもまた、RGMaを発現させることを示した(図3B、AE12-1による免疫染色は示さない)。抗RGMa抗体は、インビトロにおいて、神経突起の伸長を促進する。ラミニン上及び阻害性RGMa上に播種された培養胚性マウス皮質ニューロンが、hIgGと共にインキュベートした場合、神経突起の最小限の伸長を示したのに対し、AE12-1 RGMa抗体及びAE12-1-Y RGMa抗体を伴うインキュベーションは、ラミニン単独上に播種された細胞と比較して、より大幅の神経突起の伸長を結果としてもたらした。ウェスタンブロットにおいて、ネオゲニン受容体は、200kDaのバンドとして検出され、ネオゲニンもまた、培養マウス皮質ニューロンを介して発現した(図12)。
【0136】
[実施例1.3]
血清、CSF、及び脊髄における抗RGMa抗体の検出
方法:SCIの6週間後、腰椎穿刺(LP)を介して、脳脊髄液(CSF)を採取した。SCIの9週間後、最終回の抗体投与の3週間後に、血清を回収し、ラットを灌流した。ELISAアッセイを使用して、抗体の、AE12-1、AE12-1-Y、及びhIgGにより処置されたラットに由来するCSF試料中濃度及び血清試料中濃度を決定した。
【0137】
結果:抗体の、AE12-1を注射されたラットのCSF中濃度は、0.25~8.20μg/mlの範囲であり、AE12-1-Yについて、抗体濃度の範囲は、0.33~6.77μg/mlであった(図4B)。抗体を、SCIの直後における、初回の脊髄内注射の後、静脈内注射したので、比較すると、抗体の血清中濃度は、大幅に大きく、CSF中濃度の約10倍であった(図4C)。さらに、最終回投与の3週間後、抗体の血清中濃度は、高濃度を維持した。ヒト抗体は、抗ヒトIgGを伴う、ラット脊髄組織の免疫染色により、損傷ラット脊髄内において検出された。ヒトIgGの免疫反応性は、AE12-1(又はAE12-1-Y、図に示さない)又はhIgG対照抗体を注射されたラットに由来する組織において検出されたが、PBS媒体対照の場合は検出されなかった(図4D)。ヒトIgGの染色は、血管の近傍及び病変部位の近傍のCSPG陽性瘢痕組織内において明らかであった(図4D)。AE12-1又はAE12-1-Y又はhIgGを注射された組織内の染色に、差異は見られなかった。
【0138】
[実施例1.4]
抗RGMa抗体は、機能回復を促進する。
方法:プレトレーニングのために、損傷の前に機能試験を実施して、ベースラインの評価スコアを得、SCIの1日後に再度実施し、次いで、6週間にわたり、毎週実施した。BBB運動評価スケール、運動サブスコア、及び水平方向ラダーウォーク試験を使用して、神経学的回復を、毎週モニタリングした。
【0139】
0(後肢の動きなし)~21(正常運動)の範囲にわたる、BBB(Basso、Beattie and Bresnahan)運動評価スケールを使用して、運動機能を査定した。運動サブスコアを使用して、トウクリアランス、主要な足の位置、及び不安定性の非存在のような、さらなる尺度を評価した。
【0140】
ラダーウォーク解析を使用して、微細な運動機能を評価した。SCI後において毎週、BBBスコアが>11であるラットを、水平方向ラダーウォーク装置に取り付け、3回の試行を記録した。記録を、スローモーションにおいて解析し、後肢1本当たりのフットフォールの総数を、各試行についてスコア付けし、平均した。後肢を引きずる損傷ラットは、フットフォールが最大であるとスコア付けされ、これは、後肢1本当たりのフットフォール6であった。非損傷ラットは、横断1回当たりのフットフォール0又は、場合によって、フットフォール1であった。
【0141】
運動機能をさらに解明するために、CatWalkシステム(Noldus Information Technology、Wageningen、Netherlands)を使用して、歩行解析を実施した。ベースラインの計算による歩行評価は、SCI操作の前に得、SCIの6週間後における評価と比較した。CatWalk解析システムについて、他の箇所において詳細に記載されている。Hamers FP、Lankhorst AJ、van Laar TJ、Veldhuis WB、及びGispen WH、「Automated quantitative gait analysis during overground locomotion in the rat:its application to spinal cord contusion and transection injuries」、J Neurotrauma、2001;18(2):187~201を参照されたい。
【0142】
結果:AE12-1による急性処置は、SCIの1週間後という早期におけるBBBの、PBS又はhIgG対照と比較して有意な回復を示し、これは、試験期間中、維持された(図5A)。これに対し、AE12-1-Yは、SCIの6週間後における、BBBにおける改善の、対照と比べて(PBSの9.9と対比した12.6)、統計学的有意差を伴う遅延を示した(図5A)。AE12-1及びAE12-1-Yの回復プロファイルの差異は、AE12-1の長い半減期に起因しうる。また、AE12-1及びAE12-1-Yのいずれも、対照と比較して、高運動サブスコアへの傾向を示した(図5B)。
【0143】
ラダーウォーク試験において、フットフォールエラーをスコア付けすると、高スコアは、協調運動の不良を反映する。ラダーウォーク試験は、AE12-1又はAE12-1-Yにより処置されたラットにおけるフットフォールエラーの低減への傾向を示し、SCIの3週間後における、AE12-1についての統計学的有意差を伴い(p<0.05)、4、5、及び6週目においても、有意性に近づいた(p=0.067、p=0.089、p=0.07)(図5C)。SCIの6週間後、AE12-1及びAE12-1-Yにより処置されたラットのいずれも、対照(hIgG:41%、PBS:29%)と比較して、後肢による歩進の高成功百分率(68.4%及び64.2%)を示した(図5D)。
【0144】
神経行動学的機能におけるRGMaの中和効果をさらに特徴付けるために、SCI及び処置の6週間後において、CatWalkシステムを使用して、歩行解析を実施した(図6)。AE12-1及びAE12-1-Yにより処置されたラットのいずれも、規則性指数の、対照群と比べて有意な改善を示し、良好な脚間協調運動を反映した(AE12-1:89.3%;AE12-1-Y:88.3%;hIgG:65.8%;PBS:63.4%)(図6)。AE12-1及びAE12-1-Yにより処置されたラットはまた、後肢の歩幅長及び振出し速度の改善であって、SCI前の値に近づく改善への傾向も示したが、これは、統計学的有意性には近づかなかった。興味深いことに、後足がガラス製の歩行路と接触する平均値強度は、AE12-1により処置されたラットにおいて、対照と比較して有意に増大した(図6)。加えて、AE12-1又はAE12-1-Yによる処置は、ラットの体重を変更しなかった(図13)。
【0145】
[実施例1.5]
抗RGMa抗体は、ニューロンの生存を促進する。
方法:SCIの9週間後(すなわち、AE12-1又はAE12-1-Yによる処置の6週間後)、病変周囲ニューロンを、ニューロンマーカーであるNeuNにより定量化した。
【0146】
2つ群のラットを損傷させ、AE12-1又はPBSを注射する(全く上記において記載した通りに、脊髄内注射及び静脈内注射の両方)、別個の実験を実施した。これらのラットは、SCI/注射の7時間後に屠殺した。NeuN染色及びTUNEL染色による二重標識化を実施した。
【0147】
結果:6週間にわたる、RGMa抗体による処置は、病変周囲ニューロンの数を、対照と比較して、約1.5倍に増大させた(図7A及び7B)。
【0148】
ニューロンの温存が、損傷の後にアポトーシスを経るニューロンが少数であることに起因するのかどうかを決定するために、ニューロンの細胞死を、SCI/注射後7時間の時点において評価した。AE12-1により処置されたラットにおいて、対照と比べて有意に少数のNeuN/TUNEL陽性ニューロン(2倍の差異)が見られた(図7C及び7D)。空洞症の百分率又は空洞の容積において、群間の有意差は見られなかった(図14A及び14B)。
【0149】
[実施例1.6]
RGMa抗体は、アストログリオーシスを軽減し、CSPGの発現を低減する。
方法:病変部位に対して、吻側及び尾側の領域内のGFAP陽性面積%を定量化した。GFAP免疫反応性を定量化するために、最大面積の空洞症を含有する、各脊髄内3つずつの、一連の切片系列(160μm間隔)を、定量化のために使用した。CSPGの免疫反応性も、同様に定量化した。
【0150】
結果:AE12-1-Yにより処置されたラットにおいて、病変の吻側におけるアストログリオーシスの有意な軽減が観察された(図15A及び15B)。AE12-1及びAE12-1-Yにより処置されたラットの病変部位の近傍において、CSPG発現の低減への傾向が見られた(図15C)。
【0151】
[実施例1.7]
抗RGMa抗体は、軸索再生を促進する。
方法:皮質脊髄路(CST)に由来する軸索を視覚化するため、ビオチニル化デキストランアミン(BDA)による順行性軸索トレーシングを、SCIの6週間後の、機能的評価の完了後に実施した。BDAを、感覚運動皮質(SMC)へと注射して、CSTを順行的に標識化した。脊髄の背側面及び腹側面の両方を同時に圧迫する衝撃-圧迫損傷についてのSCIモデルは、灰白質及び隣接する白質の中心性空洞症を結果としてもたらし、背側CST内の全てのCST軸索を重症化させ、軟膜下白質の縁辺部だけを温存して残す。各脊髄の吻側セグメント内の背側CSTのBDA染色の強度を定量化し、比を使用して、BDA標識化線維のカウントを標準化し、BDA標識化の、効率動物間のばらつきを補正した。尾側セグメントを、任意のBDA標識化線維の存在について検討した。
【0152】
別個の実験において、上記において記載した通りに、ラットを損傷させ、AE12-1-Yを注射し、次いで、SCIの4週間後又は6週間後に、BDAを注射した。注射の3週間後、上記において記載した通りに、ラットを屠殺し、BDA標識化軸索の数及びそれらの長さを定量化した。
【0153】
結果:AE12-1又はAE12-1-Yによる処置は、病変部位に対して尾側において、BDA標識化CST線維を示した(図8A)。これらの線維は、病変の吻側又は非損傷ラットにおいて、BDA標識化CST線維と異なり、高度に不規則な形状を示し、これらは、典型的に長く、直線状であった(図16)。AE12-1又はAE12-1-Yを注射されたラットにおいて、BDA標識化CST線維の数及び平均最大長のいずれも増大した(図8C及び8D)。これに対し、対照ラットの病変部位に対して尾側において、BDA線維は、観察されなかった。6週間後において、4週間後と比較して、より多くのBDA標識化再生CST線維が見られ、BDA標識化線維は、6週間後において、有意に長かった(図8E及び8F)ことから、AE12-1又はAE12-1-Yによる処置後における、CST軸索の再生が指し示される。下降性のセロトニン作動性経路の解析の、AE12-1により処置されたラットの、病変部位に対して尾側において、対照と比べて有意に多数の5HT+セロトニン作動性線維が観察された(図17)。AE12-1-Yを注射されたラットは、5HT標識化軸索数の増大への傾向を示したが、大きな標準誤差に反映されている通り、AE12-1-Y群において、5HT線維カウント数の有意なばらつきが見られた(図17)。
【0154】
[実施例1.8]
抗RGMa抗体は、神経障害性疼痛を緩和する。
方法:神経障害性疼痛について調べるために、機械的異痛を、von Frey式フィラメントにより評価し、テールフリック試験を、温熱性痛覚過敏のために使用した。全ての試験は、処置に対して盲検とされた、2名の独立の試験者により実施した。
【0155】
von Frey式フィラメント(Stoelting)を使用して、SCIの2及び6週間後において、機械的異痛を評価した。フィラメントを使用して、通常非侵害性である機械的刺激に対する皮膚感受性を評価し、Takahashi(2003)により記載されている通り、皮節へと適用して、機械的異痛を、SCIのレベルにおいて決定した。各時点において、2g及び4gのフィラメントを使用した。
【0156】
テールフリック試験により、侵害性皮膚加熱に応答した、尾の引込みまでの待ち時間を記録することにより、温熱性の痛覚過敏を査定した。自動式鎮痛効果測定装置(IITC Life Science、Woodland Hills、CA)を使用して、光のビームを、尾の先端から4cmの背側表面へと適用した。
【0157】
結果:興味深いことに、AE12-1又はAE12-1-Yによる処置は、機械的異痛及び温熱性痛覚過敏のレベルを軽減した。SCIの6週間後、AE12-1を投与されたラットは、4gのvonFrey式刺激に対して、対照と比較して、有意に少数の有害反応を示した(図9A及び9B)。AE12-1又はAE12-1-Yにより処置されたラットは、熱刺激に対する尾の引込みまでの待ち時間の、対照と比較した低減を示した(図9C)。病変部位に対して吻側又は尾側において、Iba-1+染色に百分率面積の有意差は見出されなかった(図18)。図18Aにおいて示される通り、定量化は、全てのIba-1免疫染色細胞である、活性化小膠細胞及び活性化マクロファージを含んだので、この定量化は、両方の細胞型を反映した。しかし、Iba-1+マクロファージは、病変部位に対して吻側又は尾側において、形状的に容易に識別しうるので、病変に対して尾側における活性化小膠細胞を、特異的に定量化することができた。この解析において、Iba-1+小膠細胞だけをカウントした(図9D)。統計学的に有意ではないが、AE12-1又はAE12-1-Y処置されたラットのT10の後角において、対照と比べて少数のIba-1+小膠細胞が見られた。逆に、損傷対照の後角において、正常脊髄と比較して、有意に多くのIba-1+細胞がカウントされた(図9E)。脊髄のC4の後角におけるIba-1+小膠細胞について、群間の有意差は見られなかった(図9F)、T10の病変に対して尾側において見られた差異が強調される(図9E)。さらに、対照ラットは、後角において、AE12-1又はAE12-1-Y処置されたラットと比較して、有意に多くのCGRP+免疫反応性線維を示した(図9G)ことから、RGMa中和の、損傷レベルに対して尾側の後角に入る、疼痛求心性神経の可塑性に対する、肯定的な効果が示唆される。
【0158】
[実施例2]
成体の雄アフリカグリーンモンキーを、3つの処置群(群1つ当たりのn=8)へと無作為化した。各動物に、血管アクセスポート(VAP)及びマイクロ注入ポンプ(Azlet)を植え込んだ。VAP/ポンプの植込み後、上記において一般に記載した通り、動物を、T9/10における、760gの力により、5又は30分間にわたる、クリップによる半圧迫性SCI下に置いた。
【0159】
静脈内群の動物を、クリップによる衝撃-圧迫の75分間後から、AE12-1-Y-QL(25mg/kg)により処置した。AE12-1-Y-QLによる処置を、2週間ごと1回ずつ、SCI後24週間にわたり継続した。加えて、静脈内群の動物に、持続的髄腔内注入により、対照IgG抗体も施した。
【0160】
髄腔内群の動物のために、SCIの4時間後における、植込み時の、初期の溶出時と共に、マイクロ注入ポンプを活性化させた。AE12-1-Y-QL(150μg/kg/日)は、4カ月間にわたり、持続的に注入した。加えて、髄腔内群の動物に、上記において記載した通り、静脈内において、対照IgG抗体も施した。
【0161】
対照群の動物に、対照IgG抗体を、静脈内において施したほか、持続的髄腔内注入によっても施した。
【0162】
機能的な評価は、手術の前並びにSCIの1、2、4、8、12、16、20、及び24週間後に実施した。神経運動スコアは、既に記載した通りに得た。略述すると、評価スケールは、表4において示される通り、0~20の範囲にわたる。
【0163】
【表4】
【0164】
神経運動スコアは、スコア付けされる各挙動を例示するビデオテープを使用して得た。スコアラーも、3カ月間ごとに、対照ビデオにより検定して、一貫性を確認した。
【0165】
maxは、サルに到達することが可能な、最大神経運動スコアとして規定される。ET50とは、サルが、Emax(すなわち、最大レベルの回復)の半分に到達する時間として規定される。データは、下記の表5及び表6に提示する。対照群に由来する6匹の動物及び各処置群に由来する7匹の動物を、解析に組み入れた。
【0166】
【表5】
【0167】
【表6】
【0168】
観察された神経運動スコアは、各個別の動物について、図19A及び19Bに、グラフにより表す。推定中央値曲線を作成した。
【0169】
この、非ヒト霊長動物における、SCIについての、重度の胸部半圧迫モデルにおいて、AE12-1-Y-QLによる慢性静脈内処置は、盲検による神経運動スコア付け解析に基づき、6カ月間にわたる、有益な回復効果を裏付けた。AE12-1-Y-QLによる静脈内処置に伴う、これらの明確に規定された改善は、ラットSCIモデルにおいて見られた改善と同等な大きさであった。
【0170】
AE12-1-Y-QLの持続的髄腔内注入も、神経運動スコアにおける、対照と比較した数値的改善を示したが、差異は小さく、統計学的に有意ではなかった。CSF中及び血清中の、AE12-1-Y-QLへの、24時間+と予測された曝露を裏付けた、非損傷非ヒト霊長動物における髄腔内パイロット研究と異なり、SCIを経た動物は、SCIの24時間後において、血清中又はCSF中の薬物曝露を、事実上有さなかったが、これは、SCI後における、重度の脊髄浮腫及びCSF流の閉塞に帰せられる可能性が高い。
【0171】
脊髄についてのMRI解析はさらに、AE12-1-Y-QLによる静脈内処置の有効性を裏書きする。T2における損傷閾値(T2injury)は、T2について重み付けされた画像強度であって、損傷分布の確率密度が、正常白質分布の確率密度より大きくなる画像強度として規定された。ヒストグラムベースの自動式セグメンテーション法を使用して、T2について重み付けされた胸部MRスキャンの各スライス内の損傷白質を規定した。正常(病変外)白質及び病変白質の領域を、代表的な、T2について重み付けされた走査の10のスライス内において規定した。ボクセル強度についてのヒストグラムを、各組織について構築し、ガウス関数により当てはめた。24週齢のSCI胸髄損傷の病変白質及び病変外白質についての、T2により規定された領域に基づき、静脈内AE12-1-Y-QLは、磁化移動率(MTR)及びFA(fractional anisotropy)により定量化される通り、IgG対照群及び髄腔内AE12-1-Y-QL群と比較して、より大きな、損傷外領域内の組織完全性の保存を裏付けた。データのグラフ表示は、図20A及び20Bにおいてなされている。これらの結果は、非ヒト霊長動物におけるSCIの、損傷の75分後における、AE12-1-Y-QLの静脈内投与による処置が、病変外脊髄組織の組織完全性を、IgG対照又はAE12-1-Y-QLの髄腔内投与により観察された程度より大きな程度において保存することを示唆する。
【0172】
さらに、神経運動スコア値は、病変外白質のMTR値及びFA値と正に相関したが、これは、微細構造における完全性を反映する。図21A及び21Bにおいて示される通り、MTR値及びFA値は一般に、神経運動機能の改善と共に増大する。
【0173】
まとめると、(i)AE12-1-Y-QLによる静脈内処置の24週間後に、対照群と比較して、病変外白質内のMTR及びFAの有意な増大が見られたことから、病変外白質内の、処置による構造的/機能的な改善(又はさらなる二次損傷の回避)が示唆される。これに対し、病変白質内の、いかなるイメージング評価項目においても、対照及びAE12-1-Y-QLにより処置された群の間において、有意な変化は検出されず;(ii)病変外白質のFA又はMTR及び神経運動スコアであるEmaxの間において、正の相関が見られたことから、AE12-1-Y-QLを伴う静脈内処置による、病変外白質内の改善を意味する高MTR値及び高FA値が、神経運動機能の改善と関連したことが示唆される。
【0174】
脊髄切片についての組織病理学的解析は、RGMaの発現の有意差を明らかにしたが、活性化小膠細胞についてのマーカー(イオン化カルシウム結合アダプター分子1;IBA)又はミエリンのワイル染色の有意差は明らかにしなかった。図22A及び22Dにおいて示される通り、吻側及び尾側におけるRGMA発現は、AE12-1-Y-QLによる静脈内処置の後において、有意に減少した。
【0175】
[実施例3]
実施例1と同様に、ラットにプレトレーニングし、次いで、公表されたプロトコールに従う改変動脈瘤クリップにより、脊髄レベルT8において、20gの力により、1分間にわたり、クリップによる衝撃-圧迫SCIをもたらした。AE12-1-Y-QL(25mg/kg)又はhIgGアイソタイプ対照(25mg/kg)を、尾静脈を介して、急性(損傷の5分以内に)又はSCIの3時間後若しくはSCIの24時間後において静脈内投与し、次いで、6週間にわたり毎週静脈内投与した。研究には、5つの群:i)急性AE12-1-Y-QL(損傷の5分以内に注射された)、ii)急性hIgG(損傷の5分以内に注射された)、iii)3時間後におけるAE12-1-Y-QL、iv)24時間後におけるAE12-1-Y-QL、及びv)24時間後におけるhIgGが存在した。全てのラットに、SCI後6週間にわたり、毎週尾静脈注射を施した。
【0176】
方法:SCIの1日後において、BBB(Basso、Beattie and Bresnahan)運動評価スケールを使用して、運動機能を査定し、次いで、SCI後9週間にわたり、毎週査定した。運動機能をさらに解明するために、CatWalkシステム(Noldus Information Technology、Wageningen、Netherlands)を使用して、歩行解析を実施した。以下の歩行パラメータ:a)脚間協調運動の尺度となる比率である、規則性指数。健常動物において、規則性指数は、100%である;b)同じ足の継起的な配置の間の距離である、歩幅長;c)振出しの間の平均値速度である、振出し速度;及びd)足により、ガラス製のプレートに対して及ぼされた平均値圧力についての尺度であり、足及びガラス製のプレートの間の接触の程度に依存する、足強度について検討した。機械的異痛及び温熱性痛覚過敏は、上記において記載した通りに評価した。
【0177】
結果:急性AE12-1-Y-QL群内のラットは、SCI後の時間経過を通して、対照群(急性hIgG)と比べて、有意な高BBBスコアを有した(図23A)。損傷3時間後の、AE12-1-Y-QLにより処置されたラットにおいて、回復の改善への傾向が見られた。AE12-1-Y-QL群における、急性及び3時間後のスコアはまた、他の群と比較して、未だプラトーに達してもいない。急性AE12-1-Y-QL群は、損傷の8及び9週間後において、対照群と比べて、有意な高運動サブスコアを示す(図23B)。
【0178】
SCIの8週間後、急性及び3時間後において、AE12-1-Y-QL群は、対照と比べて、有意な高規則性指数スコアを有していた(図24A)。規則性指数とは、脚間協調運動の尺度である。健常で協調性が完全な動物において、値は、100%である。
【0179】
SCIの8週間後において、AE12-1-Y-QLにより処置されたラットは、全ての時間窓間隔において、より大きな歩幅長を示し、差異は、急性及び24時間後のAE12-1-Y-QL群において、24時間後のIgG対照と比較して、統計学的に有意であった(図24B)。歩幅長とは、同じ足の継起的な配置の間の距離であり、これは、SCIの後に減少する。
【0180】
全ての処置群は、高振出し速度を示したが、これは、いずれの対照群に対しても、統計学的に有意であった(図24C)。振出し速度とは、振出し相の間の足の速度であり、これは、SCIの後に減少する。
【0181】
SCIの8週間後において、急性AE12-1-Y-QL群は、後肢強度について、SCI前の値への傾向を示したが、これは、対照に対して、統計学的に有意ではなかった(図24D)。後肢強度とは、後肢による体重支持の尺度である。
【0182】
急性及び3時間後のAE12-1-Y-QL群は、SCIの9週間後において、2gフィラメントにより、対照と比較して、少数の有害反応を示し、SCIの6及び9週間後において、4gフィラメントにより、対照と比較して、少数の有害反応を示したが、機械的異痛レベルにおいて、有意な群間差は見られなかった(図25A及び25B)。
【0183】
SCI及び注射の6週間後、急性AE12-1-Y-QL群は、熱刺激に対する引込みまでの待ち時間の、急性IgG対照と比較して有意な増大を示した(図25C)。この効果は、SCIの9週間後において維持された。
【0184】
6.例示的実施形態
以下の例示的実施形態が提示される。
【0185】
1.それを必要とする対象における脊髄損傷を処置する方法であって、治療有効量の、RGMa(Repulsive Guidance Molecule A)に特異的に結合する抗体又はこの抗原結合性断片を投与するステップを含み、抗体又は抗原結合性断片が、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(VH CDR)1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む可変重鎖;並びに(b)配列番号4のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(VL CDR)1、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号6及び配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む可変軽鎖を含む方法。
【0186】
2.脊髄損傷を有する対象における、軸索再生、機能回復、又はこれらの両方を促進する方法であって、治療有効量の、RGMa(Repulsive Guidance Molecule A)に特異的に結合する抗体又はこの抗原結合性断片を投与するステップを含み、抗体又は抗原結合性断片が、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(VH CDR)1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む可変重鎖;並びに(b)配列番号4のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(VL CDR)1、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号6及び配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む可変軽鎖を含む方法。
【0187】
3.機能回復が、神経行動学的試験により評価される、実施形態2の方法。
【0188】
4.脊髄損傷が、圧迫損傷又は衝撃損傷である、実施形態1~3のうちのいずれか1つの方法。
【0189】
5.抗体が、脊髄損傷から24時間以内に投与される、実施形態1~4のうちのいずれか1つの方法。
【0190】
6.それを必要とする対象における疼痛を処置する方法であって、治療有効量の、RGMa(Repulsive Guidance Molecule A)に特異的に結合する抗体又はこの抗原結合性断片を投与するステップを含み、抗体又は抗原結合性断片が、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(VH CDR)1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む可変重鎖;並びに(b)配列番号4のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(VL CDR)1、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号6及び配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む可変軽鎖を含む方法。
【0191】
7.疼痛が、神経障害性疼痛である、実施形態6の方法。
【0192】
8.神経障害性疼痛が、脊髄損傷から生じる、実施形態7の方法。
【0193】
9.抗体が、脊髄損傷から24時間以内に投与される、実施形態8の方法。
【0194】
10.神経障害性疼痛が、化学療法から生じる、実施形態7の方法。
【0195】
11.神経障害性疼痛が、ヘルペス後神経痛である、実施形態7の方法。
【0196】
12.抗体又はこの抗原結合性断片が、全身投与される、実施形態1~11のうちのいずれか1つの方法。
【0197】
13.抗体又はこの抗原結合性断片が、静脈内(IV)投与される、実施形態1~12のうちのいずれか1つの方法。
【0198】
14.VL CDR3が、配列番号6のアミノ酸配列を含む、実施形態1~13のうちのいずれか1つの方法。
【0199】
15.VL CDR3が、配列番号7のアミノ酸配列を含む、実施形態1~13のうちのいずれか1つの方法。
【0200】
16.可変重鎖が、配列番号8のアミノ酸配列を含み、可変軽鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含む、実施形態1~13のうちのいずれか1つの方法。
【0201】
17.可変重鎖が、配列番号8のアミノ酸配列を含み、可変軽鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、実施形態1~13のうちのいずれか1つの方法。
【0202】
18.抗体が、ヒト抗体、免疫グロブリン分子、ジスルフィド連結Fv、モノクローナル抗体、アフィニティー成熟抗体、scFv、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディー、ヒト化抗体、多特異性抗体、Fab、二重特異性抗体、DVD、Fab’、二特異性抗体、F(ab’)、及びFvからなる群から選択される、実施形態1~17のうちのいずれか1つの方法。
【0203】
19.抗体が、ヒト抗体である、実施形態18の方法。
【0204】
20.抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態18の方法。
【0205】
21.抗体が、配列番号11、配列番号12、配列番号13、及び配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む定常領域を含む、実施形態1~13のうちのいずれか1つの方法。
【0206】
22.抗体が、配列番号16の重鎖配列及び配列番号15の軽鎖配列を含む、実施形態1~13のうちのいずれか1つの方法。
【0207】
前出の詳細な記載並びに付属の実施例及び例示的実施形態は、例示的なものであるに過ぎず、付属の特許請求の範囲及びこれらの同等物だけにより規定された、本発明の範囲に対する限定として理解されないものとすることが理解される。
【0208】
当業者に、開示された実施形態に対する多様な変化及び改変は明らかである。限定なしに述べると、化学的構造、置換基、誘導体、中間体、合成、組成物、製剤、又は本発明の使用法に関する変化及び改変を含む、このような変化及び改変は、その精神及び範囲から逸脱しない限りにおいて、施されうる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図22F
図23A
図23B
図24A
図24B
図24C
図24D
図25A
図25B
図25C
【配列表】
2022091967000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
図1A】ラット脊髄におけるRGMa発現を描示する図である。ニューロン内のRGMaを示す図である。RGMaは、損傷の後、脊髄において上方調節される。損傷の後、病変周囲ニューロンは、RGMaを発現させる。
図1B】ラット脊髄におけるRGMa発現を描示する図である。希突起膠細胞内のRGMaを示す図である。正常ラット脊髄及び損傷ラット脊髄において、希突起膠細胞は、RGMaを発現させる。
図1C】ラット脊髄におけるRGMa発現を描示する図である。星状膠細胞内のRGMa及び小膠細胞内のRGMaを示す図である。SCIの後、RGMaは、星状膠細胞により、病変部位内及び病変部位の周囲の、CSPGに富む瘢痕領域内において発現する
図2A】成人ヒト脊髄内のRGMa発現を描示する図である。非損傷ヒト脊髄内のRGMa(低拡大率)を示す図である。非損傷ヒト脊髄内において、RGMaは、低レベルにおいて発現する。
図2B】成人ヒト脊髄内のRGMa発現を描示する図である。図2Aにおいて、「B」と表示された、高拡大率の枠囲い領域を示す図である。非損傷ヒト脊髄内において、RGMaは、低レベルにおいて発現する。
図2C】成人ヒト脊髄内のRGMa発現を描示する図である。図2Aにおいて、「C」と表示された、高拡大率の枠囲い領域を示す図である。非損傷ヒト脊髄内において、RGMaは、低レベルにおいて発現する。
図2D】成人ヒト脊髄内のRGMa発現を描示する図である。損傷の3日後における、損傷ヒト脊髄内のRGMa(低拡大率)を示す図である。損傷ヒト脊髄内(損傷の3日後)において、RGMa発現は、上方調節されている。
図2E】成人ヒト脊髄内のRGMa発現を描示する図である。図2Dにおいて、「E」と表示された、高拡大率の枠囲い領域を示す図である。損傷ヒト脊髄内(損傷の3日後)において、RGMa発現は、上方調節されている。
図2F】成人ヒト脊髄内のRGMa発現を描示する図である。図2Dにおいて、「F」と表示された、高拡大率の枠囲い領域を示す図である。損傷ヒト脊髄内(損傷の3日後)において、RGMa発現は、上方調節されている。
図3A】マウス皮質ニューロン内のRGMa発現を描示する図である。マウス皮質ニューロン溶解物中のRGMaを示すウェスタンブロットを描示する図である。
図3B】マウス皮質ニューロン内のRGMa発現を描示する図である。培養マウス初代皮質ニューロン内の、RGMaの免疫染色を描示する図である。
図3C】マウス皮質ニューロン内のRGMa発現を描示する図である。RGMa及びhIgG、AE12-1、又はAE12-1-Yを伴うインキュベーション後におけるマウス皮質ニューロンを示す図である。
図4A】研究デザインを示す概略図である。
図4B】SCIの6週間後に採取されたCSF中の抗体濃度を示すグラフである。
図4C】SCIの9週間後に得られた血清中の抗体濃度を示すグラフである。
図4D】抗ヒトIgGによる、ラット脊髄の免疫染色を描示する図である。ヒトIgG(赤)は、血管近傍(RECA-1、緑)及び瘢痕組織内(CSPG、緑)において検出された。
図5A】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける、SCI後の機能回復を描示する図である。オープンフィールドBBB(Basso、Beattie and Bresnahan)運動試験におけるスコアを示す折れ線グラフである。モノクローナル抗体であるAE12-1により処置されたラットは、BBBにおいて、hIgG対照及びPBS対照と比べて有意な改善を示した。
図5B】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける、SCI後の機能回復を描示する図である。運動サブスコアを示す折れ線グラフである。AE12-1及びAE12-1Yにより処置されたラットは、対照と比べて、高運動サブスコアを示したが、これは、統計学的に有意ではなかった。
図5C】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける、SCI後の機能回復を描示する図である。ラダーウォークにおける、後肢フットフォールエラーを示す折れ線グラフである。AE12-1により処置されたラットは、SCIの3週間後のラダーウォークにおいて、PBS対照と比較して、有意に少数の後肢フットフォールエラーを示し、6週間後において、エラーの低減への傾向を示した。
図5D】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける、SCI後の機能回復を描示する図である。後肢による歩進の成功百分率を示す棒グラフである。SCIの6週間後、AE12-1により処置されたラットは、対照と比較して有意に大きな、後肢による歩進の成功百分率を示した。
図6A】SCI前のラット及びSCIの6週間後の各群に由来するCatWalkから得られた、代表的なフットプリントを示す図である。
図6B】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける、規則性指数、後肢の歩幅長、後肢の振出し速度、及び後肢の強度値を示す、一連の棒グラフである。いずれのモノクローナル抗体により処置されたラットも、対照群と比べて、規則性指数の有意な改善を示した。モノクローナル抗体により処置されたラットは、後肢の歩幅長及び振出し速度の改善への傾向を示した。AE12-1を注射されたラットは、対照と比べた、有意に高度な後肢の強度値を示した。
図7A】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおけるニューロンの生存を描示する図である。SCIの9週間後における損傷脊髄の矢状断面についての、低拡大率の画像である。
図7B】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおけるニューロンの生存を描示する図である。SCIの9週間後における、温存された病変周囲ニューロンの数を示す棒グラフである。モノクローナル抗体であるAE12-1又はAE12-1Yを投与されたラットは、hIgG及びPBSを施されたラットと比較して、有意に高度な、病変周囲ニューロンの温存を示す。
図7C】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおけるニューロンの生存を描示する図である。SCIの7時間後におけるニューロンの免疫染色を描示する図である。NeuN(緑)及びTUNEL(赤)による二重標識化は、アポトーシス性ニューロン(矢印)を同定した。
図7D】AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおけるニューロンの生存を描示する図である。SCIの7時間後において、切片1つ当たりにおいてカウントされた、NeuN+/TUNEL+細胞の平均数を示す棒グラフである。切片1つ当たりにおいてカウントされた、NeuN+/TUNEL+細胞の平均数は、PBS媒体を投与されたラットより、AE12-1により処置されたラットにおいて、有意に小さかった。
図8A】SCI後に、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける軸索再生を描示する図である。BDAによる順行性軸索トレーシング後における脊髄についての、低拡大率の画像を描示する図である。
図8B】SCI後に、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける軸索再生を描示する図である。BDA標識化CST線維の平均最大長を示す棒グラフである。BDA標識化CST線維の平均最大長は、AE12-1及びAE12-1Yによる処置の後で増大した。
図8C】SCI後に、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける軸索再生を描示する図である。切片1つ当たりの軸索の平均数を示す棒グラフである。定量化された、切片1つ当たりの軸索の平均数は、モノクローナル抗体により処置された損傷ラットより大きな軸索数を示す。
図8D】SCI後に、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける軸索再生を描示する図である。SCIの4又は6週間後における、BDA標識化CST線維の平均最大長を示す棒グラフである。AE12-1Yにより処置された損傷ラットにおける平均軸索長は、6週間後において、4週間後と比較して有意に大きかった。
図8E】SCI後に、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける軸索再生を描示する図である。SCIの4又は6週間後における、切片1つ当たりの軸索の平均数を示す棒グラフである。AE12-1Yにより処置された損傷ラットにおける平均軸索長は、6週間後において、4週間後と比較して有意に大きかった。
図9A】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。2gのvon Frey式モノフィラメントに対する、有害反応の百分率を描示する棒グラフである。
図9B】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。4gのvon Frey式モノフィラメントに対する、有害反応の百分率を描示する棒グラフである。SCIの6週間後、AE12-1により処置されたラットは、4g刺激に対する、対照と比べた、有意に少数の有害反応を示した。
図9C】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。侵害皮膚に応答するテールフリック待ち時間を描示する棒グラフである。SCIの2及び6週間後、モノクローナル抗体により処置されたラットは、侵害皮膚加熱に応答した尾の引込みの、対照と比べた低減を示した。
図9D】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。T10の病変に対して尾側における、Iba-1+小膠細胞を描示する図である。T10水準の、対照の後角において、正常脊髄と比較して、有意により多くのIba-1+細胞がカウントされた。
図9E】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。T10水準におけるIba-1+小膠細胞を描示する図である。T10水準の、対照の後角において、正常脊髄と比較して、有意により多くのIba-1+細胞がカウントされた。
図9F】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。T10の病変に対して吻側における、Iba-1+小膠細胞を描示する図である。
図9G】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。T10水準におけるCGRP+細胞を描示する図である。CGRP+面積パーセントは、AE12-1及びAE12-1Yにより処置されたラットにおいて、対照と比べて有意に低減された。
図10A】脊髄損傷後の成体ラットにおける、RGMaの発現を描示する図である。正常な無傷の脊髄内及びSCIの1週間後における、前角灰白質内のRGMaの免疫染色を描示する図である。RGMa+面積%の定量化は、SCI後の成体ラット脊髄における、RGMaの発現の有意な上方調節を示す。
図10B】脊髄損傷後の成体ラットにおける、RGMaの発現を描示する図である。SCI後のED-1+領域における、RGMaの発現を描示する図である。RGMaの発現は、SCI後のED-1+領域において明らかである。
図10C】脊髄損傷後の成体ラットにおける、RGMaの発現を描示する図である。正常な無傷の脊髄の脊髄白質における希突起膠細胞(CC1)内の、RGMaの発現を示す、高拡大率の画像を描示する図である。
図11A】成人ヒト脊髄のニューロンにおける、RGMa及びネオゲニンの発現を描示する図である。正常な成人ヒト脊髄における前角ニューロン内の、RGMaの発現を描示する図である。
図11B】成人ヒト脊髄のニューロンにおける、RGMa及びネオゲニンの発現を描示する図である。RGMaペプチドにより前吸着させたRGMa抗体であって、染色の特異性を示すRGMa抗体により染色された隣接切片を描示する図である。
図11C】成人ヒト脊髄のニューロンにおける、RGMa及びネオゲニンの発現を描示する図である。正常な成人ヒト脊髄における前角ニューロン内の、ネオゲニンの発現を描示する図である。
図11D】成人ヒト脊髄のニューロンにおける、RGMa及びネオゲニンの発現を描示する図である。隣接する陰性対照切片を描示する図である。
図12A】RGMa受容体であるネオゲニンの発現を描示する図である。ネオゲニンの発現を示す、成体ラットの脳溶解物についてのウェスタンブロットを描示する図である。
図12B】RGMa受容体であるネオゲニンの発現を描示する図である。ネオゲニン(赤)を発現させる、培養マウス皮質ニューロン(インビトロにおいて3日後;F-アクチン、緑)を描示する図である。
図13】SCI前並びにSCIの4及び6週間後における、ラットの体重を描示する図である。ラットの体重は、群間において、有意に変動しなかった。処置は、ラットの体重を変更しなかった。
図14A】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける空洞症を描示する図である。モノクローナル抗体によるRGMaの中和は、空洞症において、有意差を結果としてもたらさない。
図14B】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける空洞症を描示する図である。モノクローナル抗体によるRGMaの中和は、空洞症において、有意差を結果としてもたらさない。
図15A】アストログリオーシス及び瘢痕化に対する、抗RGMa抗体の効果を描示する図である。SCIの9週間後における、病変と隣接する、GFAPの免疫反応性を描示する図である。
図15B】アストログリオーシス及び瘢痕化に対する、抗RGMa抗体の効果を描示する図である。病変に対して吻側における、GFAP+面積%の定量化を描示する図である。GFAP+面積%の定量化は、SCIの9週間後の、AE12-1Y処置されたラットの、病変に対して吻側における、アストログリオーシスの有意な軽減を示す。
図15C】アストログリオーシス及び瘢痕化に対する、抗RGMa抗体の効果を描示する図である。病変部位における、CSPG+面積%を描示する図である。AE12-1及びAE12-1Yにより処置されたラットは、病変部位における、CSPG+面積%の低減への傾向を示す。
図16A】BDAによるCSTの標識化を描示する図である。横断方向において示された、C4レベルにおける背側CSTについてのBDA染色を描示する図である。
図16B】BDAによるCSTの標識化を描示する図である。病変に対して、矢状方向に3mm吻側において、BDA標識化CST軸索が、背側CST線維路内に束ねられていることを描示する図である。
図17A】5HT線維を描示する図である。病変に対して尾側の、5HT免疫反応性線維(矢印)を描示する図である。
図17B】5HT線維を描示する図である。尾側の累進的な距離へと区間分けされた、病変に対して尾側の、5HT+軸索の平均値数の定量化を描示する図である。病変に対して尾側の5HT+軸索は、尾側の累進的な距離へと区間分けされた。AE12-1により処置されたラットにおいて、有意に多数の5HT+線維が現れ、AE12-1Yを注射されたラットは、多数の5HT標識化軸索への傾向を示した。
図18A】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける小膠細胞及びマクロファージを描示する図である。病変に対して尾側における、Iba-1免疫反応性を描示する図である。
図18B】SCI後の、AE12-1、AE12-1-Y、ヒトIgG、又はPBSにより処置されたラットにおける小膠細胞及びマクロファージを描示する図である。病変部位に対して吻側又は尾側における、Iba-1+面積%を描示する図である。T8における病変に隣接して、病変部位に対して吻側又は尾側における、Iba-1+面積%の、群間の有意差は見られなかった。
図19A】SCI後における、個別の対照動物についての、神経運動スコアのグラフ表示(及び推定中央値曲線)である。
図19B】SCI後における、IV AE-12-1-Y-QL処置を施された個別の動物についての、神経運動スコアのグラフ表示(及び推定中央値曲線)である。
図20A】SCI後の、対照群及びIV AE12-1-Y-QL処置群におけるFA(fractional anisotropy)により評価された、病変外領域内の組織完全性を描示する棒グラフである。静脈内AE12-1-Y-QLは、損傷外領域内の、IgG対照群と比較して大きな組織完全性の保存を裏付けた。
図20B】SCI後の、対照群及びIV AE12-1-Y-QL処置群における磁化移動率(MTR)により評価された、病変外領域内の組織完全性を描示する棒グラフである。静脈内AE12-1-Y-QLは、損傷外領域内の、IgG対照群と比較して大きな組織完全性の保存を裏付けた。
図21A】個別の神経運動スコア(NMS)及び個別のFA値の間の相関を描示する図である。FA値は一般に、神経運動機能の改善と共に増大する。
図21B】個別の神経運動スコア(NMS)及び個別のMTR値の間の相関を描示する図である。MTR値は一般に、神経運動機能の改善と共に増大する。
図22A】脊髄切片についての組織病理学的解析を描示する棒グラフである。吻側レベルにおける、RGMaの発現を描示する図である。
図22B】脊髄切片についての組織病理学的解析を描示する棒グラフである。吻側レベルにおけるイオン化カルシウム結合アダプター分子1(IBA)発現を描示する図である。
図22C】脊髄切片についての組織病理学的解析を描示する棒グラフである。吻側レベルにおける、ミエリンのワイル染色を描示する図である。
図22D】脊髄切片についての組織病理学的解析を描示する棒グラフである。尾側レベルにおける、RGMaの発現を描示する図である。
図22E】脊髄切片についての組織病理学的解析を描示する棒グラフである。尾側レベルにおけるイオン化カルシウム結合アダプター分子1(IBA)発現を描示する図である。
図22F】脊髄切片についての組織病理学的解析を描示する棒グラフである。尾側レベルにおける、ミエリンのワイル染色を描示する図である。
図23A】AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける、SCI後の機能回復を描示する図である。オープンフィールドBBB(Basso、Beattie and Bresnahan)運動試験におけるスコアを示す折れ線グラフである。
図23B】AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける、SCI後の機能回復を描示する図である。運動サブスコアを示す折れ線グラフである。
図24A】SCI後の、AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける、規則性指数を示す、一連の棒グラフである。
図24B】SCI後の、AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける、後肢の歩幅長を示す、一連の棒グラフである。
図24C】SCI後の、AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける、後肢の振出し速度を示す、一連の棒グラフである。
図24D】SCI後の、AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける、後肢の強度値を示す、一連の棒グラフである。
図25A】SCI後の、AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。2gのvon Frey式モノフィラメントに対する、有害反応の百分率を描示する棒グラフである。
図25B】SCI後の、AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。4gのvon Frey式モノフィラメントに対する、有害反応の百分率を描示する棒グラフである。
図25C】SCI後の、AE12-1-Y-QL又はIgGにより処置されたラットにおける神経障害性疼痛及び炎症反応を描示する図である。侵害皮膚に応答するテールフリック待ち時間を描示する棒グラフである。