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特開2022-920191,3-脂肪ジオール化合物およびそれらの誘導体
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  • 特開-1,3-脂肪ジオール化合物およびそれらの誘導体 図1A
  • 特開-1,3-脂肪ジオール化合物およびそれらの誘導体 図1B
  • 特開-1,3-脂肪ジオール化合物およびそれらの誘導体 図2A
  • 特開-1,3-脂肪ジオール化合物およびそれらの誘導体 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092019
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】1,3-脂肪ジオール化合物およびそれらの誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07C 33/035 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
C07C33/035 CSP
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065450
(22)【出願日】2022-04-12
(62)【分割の表示】P 2019535222の分割
【原出願日】2017-09-14
(31)【優先権主張番号】62/394,537
(32)【優先日】2016-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510199890
【氏名又は名称】ジェノマティカ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ワング ハイボ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】乳化剤等として有用である1,3-脂肪ジオール化合物を提供する。
【解決手段】単一のΔ5二重結合を有し、炭素番号1(C-1)と炭素番号3(C-3)とでヒドロキシ基を有する、炭素12個の非分枝状不飽和脂肪ジオールであって、キラル中心が、C-3に存在する式(II)の化合物、及び単一のΔ9二重結合を有し、炭素番号1(C-1)と炭素番号3(C-3)とでヒドロキシ基を有する、炭素16個の非分枝状不飽和脂肪ジオールであって、キラル中心が、C-3に存在する式(IV)の化合物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のΔ5二重結合を有し、炭素番号1(C-1)でヒドロキシ基を有し、炭素番号3(C-3)でヒドロキシ基を有する、炭素12個の非分枝状不飽和脂肪ジオールであって、キラル中心が、C-3に存在し、前記脂肪ジオールが、式(II):
の一般化学式を有する、前記脂肪ジオール。
【請求項2】
前記二重結合が、(Z)配置である、請求項1に記載の脂肪ジオール。
【請求項3】
前記二重結合が、(E)配置である、請求項1に記載の脂肪ジオール。
【請求項4】
C-3の前記キラル中心が、R配置を有する、請求項1に記載の脂肪ジオール。
【請求項5】
C-3の前記キラル中心が、S配置を有する、請求項1に記載の脂肪ジオール。
【請求項6】
前記二重結合が、(Z)配置であり、C-3の前記キラル中心が、R配置を有する、請求項1に記載の脂肪ジオール。
【請求項7】
単一のΔ9二重結合を有し、炭素番号1(C-1)でヒドロキシ基を有し、炭素番号3(C-3)でヒドロキシ基を有する、炭素16個の非分枝状不飽和脂肪ジオールであって、キラル中心が、C-3に存在し、前記脂肪ジオールが、式(IV):
の化学式を有する、前記脂肪ジオール。
【請求項8】
前記二重結合が、(Z)配置である、請求項7に記載の脂肪ジオール。
【請求項9】
前記二重結合が、(E)配置である、請求項7に記載の脂肪ジオール。
【請求項10】
C-3の前記キラル中心が、R配置を有する、請求項7に記載の脂肪ジオール。
【請求項11】
C-3の前記キラル中心が、S配置を有する、請求項7に記載の脂肪ジオール。
【請求項12】
前記二重結合が、(Z)配置であり、C-3の前記キラル中心が、R配置を有する、請求項7に記載の脂肪ジオール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は概して、例えば、洗剤および界面活性剤の生産における工業用物質およびプロセスの構成成分として、化粧品中および食品中の乳化剤、軟化剤、および増粘剤として、工業用溶媒および可塑剤などとしての使用に好適なスペシャリティケミカルの分野に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年9月14日出願の米国仮出願第62/394,537号の利益を主張し、この特許の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
背景
脂肪アルコール、特に脂肪ジオール(または脂肪族ジオール)は、商業的および工業的用途を有する両親媒性分子である。例えば、脂肪アルコールは、化粧品中および食品中の軟化剤および増粘剤として、ならびに工業用溶媒、可塑剤、潤滑剤、乳化剤、ポリマーの構成単位などとして用途を見出す(例えば、H.Maag(1984)Journal of the American Oil Chemists’ Society61(2):259-267(非特許文献1)を参照されたい)。特に有用なのは、1,3-脂肪ジオールである。
【0004】
1,3-脂肪ジオールは、潤滑剤として、他の分子との間の連結分子(例えば、ポリマーの生成における例)として、有用である。1,3-脂肪ジオールはまた、界面活性剤および界面活性剤の前駆体としても有用であり、例えば、1,3-脂肪ジオールを使用して、両方のアルコール部分が化学修飾(例えば、エトキシ化、グリコシル化、硫酸化など)されている「ジェミニ」界面活性剤を調製することができる。ジェミニ界面活性剤またはジェミニ様界面活性剤は、類似した従来の界面活性剤の特性と比較して優れた特性を呈する(例えば、Gemini Surfactants:Synthesis,Interfacial and Solution-Phase Behavior,and Applications,Vol.117,Zana,R.;Xia,J.,Eds.;Marcel Dekker:New York,2004(非特許文献2)を参照されたい)。
【0005】
1,3-脂肪ジオールの3-ヒドロキシ部分は、第3の炭素(C-3)でキラル中心を形成し、これにより、1,3-脂肪ジオールは、医薬品、栄養補助食品、殺虫剤、除草剤、香料、芳香剤、溶媒、生物活性化合物などのキラル的に重要な化合物の生成用のシントンとして有用となる。
【0006】
ヒドロキシル基の官能性に加えて、1,3-脂肪ジオールの炭素鎖の構造のバリエーションは、改善された方法で既存の問題に対処するために使用することができる、かつ/または全く新たな用途を見出すことができる、追加の化学的性質および/または潜在的に新たな特性を分子に提供する。例えば、不飽和脂肪ジオールは、化学反応に利用可能である二重結合の形態の追加の官能基を有する。
【0007】
二重結合の存在は、分子上の多くの有利に寄与するため、不飽和脂肪アルコールおよび脂肪ジオールは特に価値がある。例えば、それらの飽和対応物と比較して、不飽和脂肪ジオールは、より低い融点、より高い水溶性を有し、C=C二重結合に官能基を導入する可能性を提供する(Egan,R.,et al.,(1984)Journal of the American Oil Chemists’ Society,Vol.61(2):324-329(非特許文献3))。したがって、不飽和脂肪アルコールは、化学産業の多数の製品にとって重要な中間体である(例えば、U.Ploog et al.in Seifen-Ole-Fette-Wachse109,225(1983)(非特許文献4)を参照されたい)。
【0008】
例えば、プリンス反応(例えば、E.Arundale,L.A.MikeskaChem.Rev.;1952;51(3);505-555(非特許文献5)を参照されたい)を使用して、石油前駆体から容易に生成される飽和脂肪ジオールとは異なり、不飽和脂肪ジオールは、石油化学材料およびプロセスからの生成がより一層困難である。
【0009】
典型的には、不飽和脂肪アルコールは、例えば、サンフラワー油、パーム油、パーム核、およびココナッツなどの油由来の脂肪酸メチルエステル混合物を、クロムおよび/または亜鉛含有混合酸化物触媒の存在下で、高圧水素化に供することによって生成される(例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry7th Edition,Vol.14:117.John Wiley and Sons,Inc.2011(非特許文献6)を参照されたい)。亜鉛クロム鉄鉱型の触媒は、C=C二重結合の代わりにカルボニル基の選択的な水素化を促進する(例えば、Adkins and Sauer,(1937)Journal of the American Chemical Society,Vol.59(1):1-3(非特許文献7)を参照されたい)。
【0010】
残念ながら、不飽和脂肪アルコールおよび不飽和脂肪ジオールは限られた数の天然油からしか生成されないため、原材料の供給は不安定かつ可変性であり得る。加えて、脂肪ジオールの生成を天然油およびそれら本来の構造に依存することは、生成することができる化学構造の種類を制限する。
【0011】
したがって、1,3-脂肪ジオールおよび特に不飽和1,3-脂肪ジオールは、そのような有用な分子であるため、当該技術分野において必要とされているのは、新たな1,3-脂肪ジオールであることは明らかである。
【0012】
幸運にも、以下の発明を実施するための形態から明らかになるように、本発明は、この必要性および他の必要性に対処するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】H.Maag(1984)Journal of the American Oil Chemists’ Society61(2):259-267
【非特許文献2】Gemini Surfactants:Synthesis,Interfacial and Solution-Phase Behavior,and Applications,Vol.117,Zana,R.;Xia,J.,Eds.;Marcel Dekker:New York,2004
【非特許文献3】Egan,R.,et al.,(1984)Journal of the American Oil Chemists’ Society,Vol.61(2):324-329
【非特許文献4】U.Ploog et al.in Seifen-Ole-Fette-Wachse109,225(1983)
【非特許文献5】E.Arundale,L.A.MikeskaChem.Rev.;1952;51(3);505-555
【非特許文献6】Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry7th Edition,Vol.14:117.John Wiley and Sons,Inc.2011
【非特許文献7】Adkins and Sauer,(1937)Journal of the American Chemical Society,Vol.59(1):1-3
【発明の概要】
【0014】
概要
本開示の一態様は、単一のΔ5二重結合を有し、炭素番号1(C-1)でヒドロキシ基を有し、炭素番号3(C-3)でヒドロキシ基を有する、炭素12個の非分枝状不飽和脂肪ジオールであって、キラル中心が、C-3に存在し、脂肪ジオールが、式IIの一般化学式を有する、脂肪ジオールを提供する。
【0015】
一例示的な実施形態において、二重結合は、(Z)配置である。別の例示的な実施形態において、二重結合は、(E)配置である。一例示的な実施形態において、C-3でのキラル中心は、R配置を有する。一例示的な実施形態において、C-3でのキラル中心は、S配置を有する。別の例示的な実施形態において、二重結合は、(Z)配置であり、C-3のキラル中心は、R配置を有する。
【0016】
本開示の一態様は、単一のΔ7二重結合を有し、炭素番号1(C-1)でヒドロキシ基を有し、炭素番号3(C-3)でヒドロキシ基を有する、炭素14個の非分枝状不飽和脂肪ジオールであって、キラル中心が、C-3に存在し、脂肪ジオールが、式IIIの一般化学式を有する、脂肪ジオールを提供する。
【0017】
一例示的な実施形態において、二重結合は、(Z)配置である。別の例示的な実施形態において、二重結合は、(E)配置である。一例示的な実施形態において、C-3でのキラル中心は、R配置を有する。一例示的な実施形態において、キラル中心は、S配置を有する。別の例示的な実施形態において、二重結合は、(Z)配置であり、C-3のキラル中心は、R配置を有する。
【0018】
本開示の一態様は、単一のΔ9二重結合を有し、炭素番号1(C-1)でヒドロキシ基を有し、炭素番号3(C-3)でヒドロキシ基を有する、炭素16個の非分枝状不飽和脂肪ジオールであって、キラル中心が、C-3に存在し、脂肪ジオールが、式IVの一般化学式を有する、脂肪ジオールを提供する。
【0019】
一例示的な実施形態において、二重結合は、(Z)配置である。別の例示的な実施形態において、二重結合は、(E)配置である。一例示的な実施形態において、C-3でのキラル中心は、R配置を有する。一例示的な実施形態において、C-3でのキラル中心は、S配置を有する。別の例示的な実施形態において、二重結合は、(Z)配置であり、C-3のキラル中心は、R配置を有する。
【0020】
本開示の一態様は、式Vの化学式を有する1,3-脂肪ジオール誘導体を提供する。
式中、nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、および14から選択される整数であり、RおよびRは各々独立して、H、単糖類のアノマー炭素において結合した単糖類、二糖類のアノマー炭素において結合した二糖類、アノマー炭素において結合した三糖類、およびアノマー炭素において結合した多糖類からなる群から選択される。一例示的な実施形態において、RおよびRの両方がHというわけではない。別の例示的な実施形態において、RもRもHではない。別の例示的な実施形態において、単糖類は、ペントース糖およびヘキソース糖から選択される。別の例示的な実施形態において、ヘキソース糖は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、またはタロースから選択される。別の例示的な実施形態において、二糖類、三糖類、および多糖類は、ペントース糖、ヘキソース糖、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される糖を含む。別の例示的な実施形態において、ヘキソース糖は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、タロース、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される。別の例示的な実施形態において、RおよびRは、異なる単糖類である。別の例示的な実施形態において、RおよびRは、同じ単糖類である。別の例示的な実施形態において、単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、タロース、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択されるヘキソース糖を含む。別の例示的な実施形態において、単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類は、フラノース糖、ピラノース糖、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される糖を含む。
【0021】
本開示の一態様は、式VIの化学式を有する1,3-脂肪ジオール誘導体を提供する。
式中、mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、および18から選択される整数であり、RおよびRは各々独立して、H、単糖類のアノマー炭素において結合した単糖類、二糖類のアノマー炭素において結合した二糖類、アノマー炭素において結合した三糖類、およびアノマー炭素において結合した多糖類からなる群から選択される。一例示的な実施形態において、RおよびRの両方がHというわけではない。別の例示的な実施形態において、RもRもHではない。別の例示的な実施形態において、単糖類は、ペントース糖およびヘキソース糖から選択される。別の例示的な実施形態において、ヘキソース糖は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、またはタロースから選択される。別の例示的な実施形態において、二糖類、三糖類、および多糖類は、ペントース糖、ヘキソース糖、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される糖を含む。別の例示的な実施形態において、ヘキソース糖は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、タロース、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される。別の例示的な実施形態において、RおよびRは、異なる単糖類である。別の例示的な実施形態において、RおよびRは、同じ単糖類である。別の例示的な実施形態において、単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、タロース、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択されるヘキソース糖を含む。別の例示的な実施形態において、単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類は、フラノース糖、ピラノース糖、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される糖を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】1,3-ドデカンジオールトリメチルシリルエーテルの断片化から形成される断片イオンを模式的に例示する。
図1B】1,3-ドデカンジオールトリメチルシリルエーテルの実験的質量スペクトル断片化パターンを示す。飽和ジオール付加物について、331(MW-15)、229、および219の特徴的なイオンに留意されたい。
図2A】5-ドデセン-1,3-ジオールトリメチルシリルエーテルの断片化から形成される断片イオンを模式的に例示する。断片イオンの模式的例示において、二重結合は、(E)として示される。しかしながら、混合物は、(Z)および(E)両方のものである。実際に、発酵により、特有の脂肪酸代謝の結果として5-(Z)-ドデセン-1,3-ジオールが主に生成される。
図2B】5-ドデセン-1,3-ジオールトリメチルシリルエーテルの実験的質量スペクトル断片化パターンを示す。不飽和ジオール付加物について、329(MW-15)、227、219の特徴的なイオンに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
定義
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、要素を記載する文脈における「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」などの単数形冠詞ならびに類似の参照対照は、別段本明細書で示されない限り、または文脈が明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含するように解釈されるべきである。
【0024】
本明細書で使用される場合、「約」は、当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じてある程度変動し得る。当業者にとって明らかではないこの用語の使用が存在する場合、「約」という用語が使用される文脈を考慮して、「約」は、具体的な語の最大プラスマイナス10%までを意味するだろう。
【0025】
当業者によって理解されるように、全てのあらゆる目的のために、本明細書に開示される全ての範囲はまた、全てのあらゆる可能性のある下位範囲およびそれらの下位範囲の組み合わせも包含する。更に、当業者によって理解されるように、範囲は、個々の各構成員を含む。したがって、例えば、1~3個の原子を有する基は、1個、2個、または3個の原子を有する基を指す。同様に、1~5個の原子を有する基は、1個、2個、3個、4個、または5個の原子を有する基を指すなどである。
【0026】
別段定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。具体的には、この開示は、組み換え遺伝学、有機化学、発酵学、および生化学の分野における慣例的な技術を利用する。分子生物学および遺伝学における一般的な用語を開示する基本的なテキストとしては、例えば、Lackie,Dictionary of Cell and Molecular Biology,Elsevier(5th ed.2013)が挙げられる。生化学における一般的な方法および用語を開示する基本的なテキストとしては、例えば、Lehninger Principles of Biochemistry sixth edition,David L.Nelson and Michael M.Cox eds.W.H.Freeman(2012)が挙げられる。発酵学の一般的な方法および専門用語を開示する基本的なテキストとしては、例えば、Principles of Fermentation Technology,3rd Edition by Peter F Stanbury,Allan Whitaker and Stephen J Hall.Butterworth-Heinemann(2016)が挙げられる。有機化学の一般的な方法および用語を開示する基本的なテキストとしては、例えば、Favre,Henri A.and Powell,Warren H.Nomenclature of Organic Chemistry.IUPAC Recommendations and Preferred Name2013.Cambridge,UK:The Royal Society of Chemistry,2013、Practical Synthetic Organic Chemistry:Reactions,Principles,and Techniques,Stephane Caron ed.,John Wiley and Sons Inc.(2011)、Organic Chemistry,9th Edition-Francis Carey and Robert Giuliano,McGraw Hill(2013)が挙げられる。
【0027】
当業者であれば、本技術の化合物が互変異性、立体配座異性、幾何異性、および/または立体異性の現象を呈し得ることを理解するだろう。本明細書内および特許請求の範囲内の式の描写は、可能性のある互変異性、立体配座異性、立体異性、または幾何異性形態のうちの1つのみを表現し得るため、本技術が、本明細書に記載の有用性のうちの1つ以上を有する化合物の任意の互変異性、立体配座異性、立体異性、または幾何異性形態、およびそれらの様々な異なる形態の混合物を包含することを理解されたい。
【0028】
「互変異性体」は、互いに平衡状態にある化合物の異性体形態を指す。異性体形態の存在および濃度は、化合物が見出される環境に依存し、例えば、化合物が固体であるか、または有機溶液中もしくは水溶液中にあるかに応じて異なり得る。例えば、水溶液中で、キナゾリノンは、互いの互変異性体と称される以下の異性体形態を呈し得る。
【0029】
別の例として、プロトン性有機溶液中で、グアニジンは、これもまた互いの互変異性体と称される以下の異性体形態を呈し得る。
【0030】
構造式によって化合物を表現する制限のために、本明細書に記載の化合物の全ての化学式は、化合物の全ての互変異性形態を表現し、本技術の範囲内にあることが理解される。
【0031】
化合物の立体異性体(光学異性体としても知られる)は、特定の立体化学がはっきりと示されない限り、ある構造の全てのキラル、ジアステレオ異性、およびラセミ形態を含む。したがって、本技術において使用される化合物は、描写から明らかである任意または全ての不斉原子で富化光学異性体または分割光学異性体を含む。ラセミ混合物およびジアステレオ異性混合物の両方ならびに個々の光学異性体は、それらの鏡像異性またはジアステレオ異性パートナーを実質的に含まないように単離または合成することができ、これらの立体異性体は全て、本技術の範囲内にある。
【0032】
幾何異性体は、本明細書に記載の一重結合、二重結合、または三重結合であり得る結合を表す記号によって表現することができる。本明細書に提供されるのは、炭素-炭素二重結合の周囲の置換基の配置から生じる様々な幾何異性体およびそれらの混合物である。炭素-炭素二重結合の周囲の置換基は、「Z」配置または「E」配置であるものとして指定され、「Z」または「E」という用語は、IUPAC基準に従って使用される。別段明記されない限り、二重結合を描写する構造は、「Z」異性体および「E」異性体の両方を包含する。
【0033】
炭素-炭素二重結合の周囲の置換基は、代替的には、「シス」または「トランス」と称されてもよく、「シス」は、二重結合の同じ側の置換基を表現し、「トランス」は、二重結合の反対側の置換基を表現する。「シス」という用語は、環の平面の同じ側の置換基を表現し、「トランス」という用語は、環の平面の反対側の置換基を表現する。置換基が環の平面の同じ側および反対側の両方に配置されている化合物の混合物は、「シス/トランス」と指定される。
【0034】
特定の実施形態において、その薬学的に許容される形態は、異性体である。「異性体」は、同じ分子式を有する異なる化合物である。「立体異性体」は、空間内での原子の配置のされ方のみにおいて異なる異性体である。本明細書で使用される場合、「異性体」という用語は、全てのあらゆる幾何異性体および立体異性体を含む。例えば、「異性体」は、シス異性体およびトランス異性体、E異性体およびZ異性体、R鏡像異性体およびS鏡像異性体、ジアステレオ異性体、(d)異性体、(l)異性体、それらのラセミ混合物、ならびに本開示の範囲内にあるそれらの他の混合物を含む。
【0035】
「鏡像異性体」は、重ねることができない互いの鏡像である立体異性体の対である。任意の比率の鏡像異性体の対の混合物が、「ラセミ」混合物として知られ得る。必要に応じてラセミ混合物を指定するために、「(+-)」という用語が使用される。「ジアステレオ異性体」は、少なくとも2つの不斉原子を有するが、互いの鏡像ではない立体異性体である。絶対立体化学は、カーン・インゴルド・プレローグのR-Sシステムに従って明記される。化合物が純粋な鏡像異性体である場合、各々のキラル炭素の立体化学は、RまたはSのいずれかによって明記され得る。絶対配置が未知である分割化合物は、それらがナトリウムD線の波長で平面偏光を回転させる方向(右旋性または左旋性)に応じて(+)または(-)として明記され得る。本明細書に記載の化合物のいくつかは、1つ以上の不斉中心を含有し、故に鏡像異性体、ジアステレオ異性体、および絶対立体化学の観点で(R)または(S)として定義することができる他の立体異性形態をもたらし得る。本化学物質、薬学的組成物、および方法は、ラセミ混合物、光学的に純粋な形態、および中間体混合物を含む、全てのそのような可能性のある異性体を含むことが意図される。光学活性な(R)異性体および(S)異性体は、例えば、キラルシントンまたはキラル試薬を使用して調製することも、従来の技術を使用して分割することもできる。化合物の光学活性は、キラルクロマトグラフィーおよび旋光分析を含むが、これらに限定されない、任意の好適な方法を介して分析することができ、他の異性体に対する1つの立体異性体の優位性の程度を決定することができる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「脂肪ジオール」または「脂肪ジオール」という用語は、少なくとも炭素5個の炭素鎖長を有する脂肪族ジ-アルコールを指し、これは、炭素鎖に共有結合した2つのヒドロキシ(-OH)基を含む。例示的な実施形態において、「脂肪ジオール」は、「1,3-脂肪ジオール」である。本明細書で使用される場合、「1,3-脂肪ジオール」という表現は、少なくとも炭素8個の炭素鎖長を有する脂肪族ジ-アルコールを指し、アルコール部分は、第1の炭素(C-1)および第3の炭素(C-3)に位置する。「1,3-脂肪ジオール」は、飽和であっても、不飽和であってもよい。したがって、一般に本明細書で使用される場合、「1,3-脂肪ジオール」という用語は、式IAまたは式IBに示される構造式を有する分子を指す。
【0037】
式IA中、mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、および18から選択される整数であり、C-3炭素は、(R)鏡像異性体またはおよび(S)鏡像異性体のいずれかである。
【0038】
式IB中、nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、および14から選択される整数であり、二重結合は、(Z)配置または(E)配置のいずれにあってもよく、C-3炭素は、(R)鏡像異性体またはおよび(S)鏡像異性体のいずれであってもよい。例示的な実施形態において、1,3脂肪ジオールは、5-ドデセン-1,3-ジオールである。他の例示的な実施形態において、1,3脂肪ジオールは、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールである。
【0039】
本明細書で使用される場合、「5-ドデセン-1,3-ジオール」または同等に「1,3-ドデカ-5-エンジオール」または同等に「5-ドデセン-1,3-ジオール」または同等に「ドデカ-5-エン-1,3-ジオール」という用語は、5番目の炭素と6番目の炭素との間に二重結合(すなわち、(Z)配置または(E)配置のいずれにあってもよいΔ5二重結合)を有し、炭素番号1(C-1)でヒドロキシ基を有し、炭素番号3(C-3)でヒドロキシ基を有する、新規の炭素12個の非分枝状不飽和1,3-ジオールを指し、キラル中心は、C-3に存在し、C-3炭素は、(R)鏡像異性体またはおよび(S)鏡像異性体のいずれであってもよい。そのような分子は、式IIに示される一般構造を有する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「7-テトラデセン-1,3-ジオール」または同等に「1,3-テトラデカ-7-エンジオール」または同等に「7-テトラデセン-1,3-ジオール」または同等に「テトラデカ-7-エン-1,3-ジオール」という用語は、7番目の炭素と8番目の炭素との間に二重結合(すなわち、(Z)配置または(E)配置のいずれにあってもよいΔ7二重結合)を有し、炭素番号1(C-1)でヒドロキシ基を有し、炭素番号3(C-3)でヒドロキシ基を有する、新規の炭素14個の非分枝状不飽和1,3-ジオールを指し、キラル中心は、C-3に存在し、C-3炭素は、(R)鏡像異性体またはおよび(S)鏡像異性体のいずれであってもよい。そのような分子は、式IIIに示される一般構造を有する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「9-ヘキサデセン-1,3-ジオール」または同等に「1,3-ヘキサデカ-9-エンジオール」または同等に「9-ヘキサデセン-1,3-ジオール」または同等に「ヘキサ-9-エン-1,3-ジオール」という用語は、9番目の炭素と10番目の炭素との間に二重結合(すなわち、(Z)配置または(E)配置のいずれにあってもよいΔ9二重結合)を有し、炭素番号1(C-1)でヒドロキシ基を有し、炭素番号3(C-3)でヒドロキシ基を有する、新規の炭素16個の非分枝状不飽和1,3-ジオールを指し、キラル中心は、C-3に存在し、C-3炭素は、(R)鏡像異性体またはおよび(S)鏡像異性体のいずれであってもよい。そのような分子は、式IVに示される一般構造を有する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ポリオール」という用語は、2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物、典型的には脂肪アルコールを指す。したがって、本明細書で言及される場合、ポリオールは、2つのヒドロキシ基、3つのヒドロキシ基、4つのヒドロキシ基などを有し得る。一般に、2つのヒドロキシ基を有する「ポリオール」は本明細書で「ジオール」と称され、3つのヒドロキシ基を有する「ポリオール」は本明細書で「チオール」と称され、4つのヒドロキシ基を有する「ポリオール」は本明細書で「テトロール」と称されるなどである。
【0043】
「ヒドロキシ基」、「ヒドロキシル基」、「アルコール基」という表現は、本明細書で互換的に使用され、1つの水素原子(-OH)に共有結合した1つの酸素原子を含有する化学官能基を指す。
【0044】
「酵素分類(EC)番号」という用語は、特定のポリペプチド配列または酵素を表す番号を指す。EC番号は、それらが触媒する反応に従って酵素を分類する。EC番号は、国際生化学分子生物学連合(IUBMB)の命名法委員会によって確立されており、それらの説明は、ワールド・ワイド・ウェブ上のIUBMB酵素命名法ウェブサイトで入手可能である。
【0045】
本明細書で使用される場合、生成物(例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールなど)に関して「単離された」という用語は、細胞構成成分、細胞培養培地、または化学前駆体もしくは合成前駆体から分離されている生成物を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「精製する」、「精製された」、または「精製」という用語は、例えば、単離または分離による分子のその環境からの除去または単離を意味する。「実質的に精製された」分子は、それらが関連している他の構成成分を少なくとも約60%含まない(例えば、少なくとも約65%含まない、少なくとも約70%含まない、少なくとも約75%含まない、少なくとも約80%含まない、少なくとも約85%含まない、少なくとも約90%含まない、少なくとも約95%含まない、少なくとも約97%含まない、少なくとも少なくとも約98%含まない、少なくとも約99%含まない)。本明細書で使用される場合、これらの用語はまた、試料からの混入物の除去も指す。例えば、混入物の除去は、試料中の脂肪ジオールのパーセンテージの増加をもたらし得る。例えば、1,3-ジオールが組み換え宿主細胞内で産生される場合、1,3-ジオールは、宿主細胞タンパク質の除去によって精製することができる。精製後、試料中の1,3-ジオールのパーセンテージは、増加する。「精製する」、「精製された」、および「精製」という用語は、絶対的な純度を必要としない相対的な用語である。したがって、例えば、1,3-ジオールが組み換え宿主細胞内で産生される場合、精製された1,3-ジオールは、他の細胞構成成分(例えば、核酸、ポリペプチド、脂質、炭水化物、または他の炭化水素)から実質的に分離された1,3-ジオールである。
【0047】
I.1,3-脂肪ジオール化合物およびそれらの誘導体
A.一般的な方法
本開示は、組み換え遺伝学における慣例的な技術を利用する。分子生物学および遺伝学における一般的な方法および用語を開示する基本的なテキストとしては、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press4th edition(Cold Spring Harbor,N.Y.2012)、Current Protocols in Molecular Biology Volumes1-3,John Wiley&Sons,Inc.(1994-1998)が挙げられる。本開示また、生化学の分野における慣例的な技術も利用する。生化学における一般的な方法および用語を開示する基本的なテキストとしては、例えば、Lehninger Principles of Biochemistry sixth edition,David L.Nelson and Michael M.Cox eds.W.H.Freeman(2012)が挙げられる。本開示は、工業発酵における慣例的な技術も利用する。発酵における一般的な方法および用語を開示する基本的なテキストとしては、例えば、Principles of Fermentation Technology,3rd Edition by Peter F.Stanbury,Allan Whitaker and StephenJ.Hall.Butterworth-Heinemann(2016)、Fermentation Microbiology and Biotechnology,2nd Edition,E.M.T.El-Mansi,C.F.A.Bryce,Arnold L.Demain and A.R.Allman eds.CRC Press(2007)が挙げられる。本開示は、有機化学の分野における慣例的な技術も利用する。有機化学における一般的な方法および用語を開示する基本的なテキストとしては、例えば、Practical Synthetic Organic Chemistry:Reactions,Principles,and Techniques,Stephane Caron ed.,John Wiley and Sons Inc.(2011)、The Synthetic Organic Chemist’s Companion,Michael C.Pirrung,John Wiley and Sons Inc.(2007)、Organic Chemistry,9th Edition-Francis Carey and Robert Giuliano,McGraw Hill(2013)が挙げられる。
【0048】
B.1,3-脂肪ジオールおよびそれらの誘導体
上記に考察されるように、1,3-脂肪ジオールは、特に有用な分子である。誘導体を形成する反応のために2つのヒドロキシル官能基を提供することに加えて、1,3-脂肪ジオールの3-ヒドロキシ部分は、第3の炭素(C-3)でキラル中心を形成し、これにより、1,3-脂肪ジオールは、医薬品、栄養補助食品、殺虫剤、除草剤、香料、芳香剤、溶媒、生物活性化合物などのキラル的に重要な化合物の生成用のシントンとして有用となる。
【0049】
ヒドロキシル基の官能性に加えて、1,3-脂肪ジオールの炭素鎖の構造のバリエーションは、改善された方法で既存の問題に対処するために使用することができる、かつ/または全く新たな用途を見出すことができる、追加の化学的性質および/または潜在的に新たな特性を分子に提供する。例えば、不飽和脂肪アルコールは、化学反応に利用可能である二重結合の形態の追加の官能基を有する。
【0050】
二重結合の存在は、分子上の多数の有利な特性に寄与するため、不飽和脂肪アルコールは特に価値がある。例えば、それらの飽和対応物と比較して、不飽和脂肪アルコールは、より低い融点、より高い水溶性を有し、C=C二重結合に官能基を導入する可能性を提供する(Egan,R.,et al.,(1984)Journal of the American Oil Chemists’ Society,Vol.61(2):324-329)。したがって、不飽和脂肪アルコールは、化学産業の多数の製品にとって重要な中間体である(例えば、U.Ploog et al.in Seifen-Ole-Fette-Wachse109,225(1983)を参照されたい)。
【0051】
一例示的な実施形態において、本開示は、新規の不飽和非分枝状1,3-脂肪ジオールを提供する。一例示的な実施形態において、新規の不飽和非分枝状1,3-脂肪ジオールは、系統名:5-ドデセン-1,3-ジオールまたはドデカ-5-エン-1,3-ジオールを有する。いくつかの例示的な実施形態において、二重結合は、(Z)配置である。他の例示的な実施形態において、5-ドデセン-1,3-ジオールの二重結合は、(E)配置である。5-ドデセン-1,3-ジオールは、式IIの一般構造を有する。
【0052】
式II中、キラルC-3炭素は、(R)鏡像異性体または(S)鏡像異性体のいずれであってもよい。
【0053】
別の例示的な実施形態において、新規の不飽和非分枝状1,3-脂肪ジオールは、系統名:7-ヘキサデセン-1,3-ジオールまたはヘキサデカ-7-エン-1,3-ジオールを有する。いくつかの例示的な実施形態において、二重結合は、(Z)配置である。他の例示的な実施形態において、二重結合は、(E)配置である。7-ヘキサデセン-1,3-ジオールは、式(III)の一般構造を有する。
【0054】
式III中、キラルC-3炭素は、(R)鏡像異性体または(S)鏡像異性体のいずれであってもよい。
【0055】
別の例示的な実施形態において、新規の不飽和非分枝状1,3-脂肪ジオールは、系統名:9-ヘキサデセン-1,3-ジオールまたはヘキサデカ-9-エン-1,3-ジオールを有するを有する。いくつかの例示的な実施形態において、二重結合は、(Z)配置である。他の例示的な実施形態において、二重結合は、(E)配置である。9-ヘキサデセン-1,3-ジオールは、式(IV)の一般構造を有する。
【0056】
式IV中、キラルC-3炭素は、(R)鏡像異性体または(S)鏡像異性体のいずれであってもよい。
【0057】
1.1,3-脂肪ジオールの物理的特性
本明細書に開示される1,3-脂肪ジオールの全ては、2つのアルコール基を含み、かつC-3炭素にキラル中心を含む。加えて、本明細書に開示される不飽和1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールはまた、二重結合も含む。したがって、本明細書に開示される1,3-脂肪ジオールは、多様な化学反応を受けて、多種多様な分子を形成することができる。したがって、本明細書に開示される1,3-脂肪ジオールのいずれか自体の(例えば、界面活性剤としての)価値に加えて。例示的な実施形態において、本明細書に開示される1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールは、無限の数の特有かつ有用な分子の構成単位として機能する。
【0058】
a.二重結合
本明細書に開示される不飽和1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールは、二重結合を含む。1,3-脂肪ジオールが生成および/または加工される方法(本明細書の下記を参照されたい)に応じて、二重結合は、(Z)または(E)のいずれであってもよい。したがって、本明細書に開示される不飽和1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールは、例えば、重合、アルキル化、メタセシスなどを含む、二重結合に関連する化学反応に関与することができる。炭素-炭素二重結合を利用する化学反応は、当該技術分野において既知である(例えば、Practical Synthetic Organic Chemistry:Reactions,Principles,and Techniques,Stephane Caron ed.(上記)を参照されたい)。
【0059】
したがって、例示的な実施形態において、本明細書に開示される不飽和1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールなどの炭素-炭素二重結合は、付加反応に関与する。例示的な付加反応としては、例えば、ハロゲン化、水素化、水和、エポキシ化、ラジカル重合、ヒドロキシル化などが挙げられる。したがって、いくつかの例示的な実施形態において、本明細書に開示される不飽和1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールなどの炭素-炭素二重結合は、水素化反応に関与し、故に対応するアルカンを形成する。他の例示的な実施形態において、本明細書に開示される不飽和1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールなどの炭素-炭素二重結合は、水和反応に関与して、二重結合にわたり水を付加し、それによりポリオールをもたらす。
【0060】
他の例示的な実施形態において、本明細書に開示される不飽和1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールなどの炭素-炭素二重結合は、重合反応に関与して、産業的に価値が高いポリマー(例えば、特有のプラスチック)をもたらす。
【0061】
b.ヒドロキシル基
本明細書に開示される1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールなどの全ては、化学反応に利用可能である2つのヒドロキシル官能基を含む。
【0062】
当該技術分野において一般に既知であるように、ジオールの化学は、アルコールの化学とほとんど同じである(例えば、Organic Chemistry ninth edition Francis Carey and Robert Giuliano(2013)(上記)を参照されたい)。したがって、-OH結合の極性の性質のため、本明細書に開示される1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールなどは、他の1,3-脂肪ジオール分子または水素結合系(例えば、水)と容易に水素結合を形成する。したがって、1,3-脂肪ジオールは一般に、類似のアルカンと比較して比較的高い融点および沸点、ならびに水媒体中での高い溶解性を有する。
【0063】
ヒドロキシル官能基は、ヒドロキシル基に特徴的な多数の化学反応に関与し得る。したがって、一例示的な実施形態において、本明細書に開示される1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールなどのヒドロキシル官能基は、ヒドロキシルが脱離基として機能するか、または-OHもしくは-O-が求核剤として機能する(例えば、ハロゲン化物との置換)、求核置換反応に関与する。
【0064】
他の例示的な実施形態において、本明細書に開示される1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールなどのヒドロキシル官能基は、ヒドロキシル基が求核剤として機能し、それによりアセタールまたはケトンを形成する、求核付加反応に関与する。例示的な求核付加反応としては、例えば、本明細書の下記により詳細に考察されるグリコシル化反応が挙げられる。
【0065】
更に他の例示的な実施形態において、本明細書に開示される1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールなどのヒドロキシル官能基は、ヒドロキシル基が求核剤として機能して、カルボン酸およびカルボン酸誘導体とのエステルを形成する(例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールを脂肪酸で求核アシル置換して、例えば、脂肪エステルを形成する)、求核アシル置換反応に関与する。
【0066】
更に他の例示的な実施形態において、本明細書に開示される1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールなどのヒドロキシル官能基は、ヒドロキシル基が水として除去され、炭素二重結合(アルケン)が形成される、脱離反応に関与する。
【0067】
更に他の例示的な実施形態において、本明細書に開示される1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールなどのヒドロキシル官能基は、ヒドロキシル基がカルボニル基(C=O)に変換される酸化反応に関与し、故にカルボニル化合物を生成する。酸化反応において、結果として得られるカルボニル化合物は、使用される酸化剤に応じてアルデヒド、ケトン、またはカルボン酸であり得る(例えば、Organic Chemistry9th Edition,Francis Carey and Robert Giuliano(2013)(上記)を参照されたい)。
【0068】
したがって、本明細書に開示される1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールなどの複数のヒドロキシル官能基は、開示される1,3-脂肪ジオールにとって可能性のある幅広い反応をもたらす。転じて、これは、特有かつ有用な特性を有する多数の誘導体の可能性をもたらす。本明細書に開示される1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールなどのいくつかの例示的なヒドロキシル誘導体を、以下に考察する。
【0069】
c.キラリティー
C-3炭素にキラル中心を有する、例えば、1,3-脂肪ジオール(例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール)などのキラル分子は、立体化学によって影響を受ける化合物(例えば、医薬品、栄養補助食品など)の合成のための構成単位である。キラル薬物のほとんどの異性体は、例えば、薬理、毒性、薬物動態、生体認識、代謝などの生物学的活性の顕著な差を呈するため、キラリティーは、例えば、薬物設計において考慮すべき重要な特性である。実際に、適切な鏡像異性体の選択は、分子の生物学的特性に対して重大な影響を有し得る。
【0070】
2.非イオン性界面活性剤
いくつかの例示的な実施形態において、本明細書に開示される1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールなどのヒドロキシル官能基を使用して、非イオン性界面活性剤が調製される。
【0071】
i.グリコシル化誘導体
例示的な実施形態において、本明細書に開示される1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールのヒドロキシル部分は、アルキルポリグリコシドを提供する糖との反応に利用可能である。アルキルポリグリコシドは、糖および脂肪アルコール由来の非イオン性界面活性剤のクラスであり、当該技術分野において周知である(例えば、Alkyl Polyglycosides:Technology,Properties,Applications,Karlheinz Hill;Wolfgang von Rybinski;Gerhard Stoll,eds.Wiley(2008)、Novel Surfactants:Preparation Applications And Biodegradability,Surfactant Science Series.Volume114Second Edition,Krister Holmberg ed.Marcel Dekker:New York and Basel,Switzerland.2003を参照されたい)。したがって、例示的な実施形態において、本明細書に開示される1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールを、例えば、キシロース、ガラクトース、マンノース、グルコースなどと反応させて、新しく有用な特性を有するアルキルポリグリコシドを形成する。
【0072】
グルコースに由来する場合、アルキルポリグリコシドは、アルキルポリグルコシドと称される。したがって、例示的な実施形態において、本明細書に開示される1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオールなどを、グルコースと反応させて、アルキルポリグルコシドを形成する。アルキルポリグルコシドは、当該技術分野において既知である(例えば、Nonionic Surfactants:Alkyl Polyglucosides.Surfactant Science Series.Volume91Dieter Balzer and Harald Luders,eds.Marcel Dekker:New York and Basel,Switzerland.2000、Rather and Mishra:β-Glycosidases:An alternative enzyme based method for synthesis of alkyl-glycosides.Sustainable Chemical Processes2013 1:7を参照されたい)。
【0073】
アルキルポリグリコシドは、当該技術分野において既知である任意の方法によって調製することができる。本明細書に開示されるグリコシル化分子の調製に好適な例示的な方法としては、例えば、米国特許第5,449,763号、米国特許第3,547,828号、米国特許第3,839,318号、Boge,K.,Tietze,L.“Synthesis of alkyl polyglycosides:Effect of catalyst-type on reaction rate and product composition”Eur.J.Lipid Sci.Tech.(1998)100,38-41、Rybinski,W.,Hill,K.“Alkyl Polyglycosides-Properties and Applications of a new Class of Surfactants”Angew.Chem.Int.Ed.(1998)37(10),1328-1345、“Handbook of Chemical Glycosylation:Advances in Stereoselectivity and Therapeutic Relevance”Ed.A.V.Demchenko,John Wiley&Sons,Apr9,2008、Luley-Goedl,C.et al.Carbohydrate Research(2010)345,1736-1740、Rather,M.Y.,Mishra,S.(2013)(上記)、Ojha,S.et al.“Synthesis of hexyl α-glucoside and α-polyglucosdies by a novel Microbacterium isolate”Appl.Microbiol.Biotechnol.(2013)97,5293-5301、Wooten,J.“Glycosylation of Amino Acids and Efficient Synthesis of Glycosphingolipids”Thesis,Georgia State University,2015)が挙げられる。
【0074】
したがって、例示的な実施形態において、本開示は、式Vおよび/または式VIの一般式を有するアルキルポリグリコシドを提供する。
【0075】
式(V)中、nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、および14から選択される整数であり、二重結合は、(Z)配置または(E)配置のいずれにあってもよく、C-3炭素は、(R)鏡像異性体またはおよび(S)鏡像異性体のいずれであってもよい。
【0076】
更に、式(V)中、RおよびRは各々独立して、H、単糖類のアノマー炭素において結合した単糖類、二糖類のアノマー炭素において結合した二糖類、アノマー炭素において結合した三糖類、またはアノマー炭素において結合した多糖類である。例示的な実施形態において、RおよびRの両方がHであることはできない。他の例示的な実施形態において、RもRもHではない。
【0077】
例示的な実施形態において、単糖類は、ペントース糖およびヘキソース糖から選択される。いくつかの例示的な実施形態において、ヘキソース糖は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、またはタロースから選択される。他の例示的な実施形態において、二糖類、三糖類、および/または多糖類は、ペントース糖、ヘキソース糖、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される糖を含む。いくつかの例示的な実施形態において、ヘキソース糖は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、タロース、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される。いくつかの例示的な実施形態において、RおよびRは、異なる単糖類である。他の例示的な実施形態において、RおよびRは、同じ単糖類である。
【0078】
例示的な実施形態において、単糖類、二糖類、三糖類、および/または多糖類は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、タロース、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択されるヘキソース糖を含む。他の例示的な実施形態において、単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類は、フラノース糖、ピラノース糖、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される糖を含む。
【0079】
式(VI)中、mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、および18から選択される整数であり、C-3炭素は、(R)鏡像異性体またはおよび(S)鏡像異性体のいずれかである。
【0080】
更に、式(VI)中、RおよびRは各々独立して、H、単糖類のアノマー炭素において結合した単糖類、二糖類のアノマー炭素において結合した二糖類、アノマー炭素において結合した三糖類、またはアノマー炭素において結合した多糖類である。例示的な実施形態において、RおよびRの両方がHであることはできない。他の例示的な実施形態において、RもRもHではない。
【0081】
例示的な実施形態において、単糖類は、ペントース糖およびヘキソース糖から選択される。他の例示的な実施形態において、二糖類、三糖類、および/または多糖類は、ペントース糖、ヘキソース糖、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される糖を含む。いくつかの例示的な実施形態において、RおよびRは、異なる単糖類である。他の例示的な実施形態において、RおよびRは、同じ単糖類である。
【0082】
例示的な実施形態において、単糖類、二糖類、三糖類、および/または多糖類は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、タロース、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される糖を含む。更に他の例示的な実施形態において、単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類は、フラノース糖、ピラノース糖、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される糖を含む。
【0083】
本明細書において本技術の任意の化合物に適用される「アノマー炭素」という用語は、当業者に周知であり、糖類のアノマー炭素での結合の一例を、以下のグルコシル化変異形によって例示する。
【0084】
糖類(ここでは単糖類)のアノマー炭素を、白抜きの矢印によって示す。同様に、グルコース二糖類は、以下の2つのスキームに例示されるものを含む。
【0085】
スキーム1:非糖鎖に対するα-グリコシド結合を有するα(1→4)二糖類(α-マルトース)
【0086】
スキーム2:非糖鎖に対するα-グリコシド結合を有するα(1→6)二糖類(α-イソマルトース)
【0087】
スキーム1および2に例示されるように、例えば、Rが二糖類マルトースまたはイソマルトースの「アノマー炭素において結合している」ことを示す時、これは、破線の矢印に示されるような、二糖類、三糖類、および多糖類の糖類間の結合(本明細書の以下では「グリコシド結合」)に関与するアノマー炭素(複数可)ではなく、上記の白抜きの矢印に示されるような、例えば、式IA、IB、II、III、IVの化合物とのそのような結合形成を受けやすい遊離ヒドロキシル基を有する遊離二糖類のアノマー炭素を指しているものと理解されるべきである。これは、三糖類および多糖類に関連する「アノマー炭素での結合」の意味に適用される。したがって、本明細書の任意の実施形態において、R、R、R、および/またはRが、単糖類、二糖類、三糖類、および/または多糖類である場合、R、R、R、および/またはRは、α-グリコシド結合またはβ-グリコシド結合を介して結合し得る。更に、二糖類、三糖類、および/または多糖類は、α-グリコシド結合、β-グリコシド結合、または(三糖類および/もしくは多糖類の場合)それらの混合物を含む糖類であり得る。
【0088】
例示的な実施形態において、単糖類は、ペントース糖およびヘキソース糖から選択される。他の例示的な実施形態において、二糖類、三糖類、および/または多糖類は、ペントース糖、ヘキソース糖、またはそれらの混合物から選択される糖を含む。いくつかの例示的な実施形態において、RおよびRは、異なる単糖類である。他の例示的な実施形態において、RおよびRは、同じ単糖類である。
【0089】
例示的な実施形態において、単糖類、二糖類、三糖類、および/または多糖類は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、タロース、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される糖を含む。更に他の例示的な実施形態において、単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類は、フラノース糖、ピラノース糖、またはそれらの混合物から選択される糖を含む。
【0090】
したがって、本明細書の任意の実施形態において、単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類は、ペントース糖、ヘキソース糖、あるいは(RおよびRもしくはRおよびRが異なる単糖類である場合、ならびに/または任意の1つ以上の二糖類、三糖類、もしくは多糖類の場合)それらのいずれか2つ以上の混合物を含み得る。本明細書の任意の実施形態の単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、タロース、あるいは(RおよびRもしくはRおよびRが異なる単糖類である場合、ならびに/または任意の1つ以上の二糖類、三糖類、もしくは多糖類の場合)それらのいずれか2つ以上の混合物を含み得る。更に、本明細書の任意の実施形態において、単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類は、フラノース糖、ピラノース糖、あるいは(RおよびRもしくはRおよびRが異なる単糖類である場合、ならびに/または任意の1つ以上の二糖類、三糖類、もしくは多糖類の場合)それらのいずれか2つ以上の混合物を含み得る。本明細書の任意の実施形態において、R、R、R、およびRは各々独立して、Hまたは
であり得、Rは独立して出現毎に、Hまたは
であり、rは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の整数であり、sは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本明細書の任意の実施形態において、R、R、R、R、およびRは各々独立して、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、タロース、あるいは(R、R、R、R、およびRのいずれか2つ以上が異なる単糖類である場合、ならびに/または任意の1つ以上の二糖類、三糖類、もしくは多糖類の場合)それらのいずれか2つ以上の混合物を含み得る。本明細書の任意の実施形態において、上記に示されるように、R、R、R、R、および/またはRが単糖類、二糖類、三糖類、および/または多糖類である場合、R、R、R、R、および/またはRは、α-グリコシド結合またはβ-グリコシド結合を介して結合し得る。更に、上記の構造式に示される、R、R、R、R、および/またはRの二糖類、三糖類、および/または多糖類は、α-グリコシド結合、β-グリコシド結合、または(三糖類および/もしくは多糖類の場合)それらのいずれか2つ以上の混合物を含む糖類であり得る。
【0091】
a.アルキルポリグルコシドを含む組成物
アルキルポリグリコシドは、多数の工業用物質および目的に有利に組み込むことができる特に有用な分子である。実際に、アルキルポリグリコシドは、例えば、化粧品中および食品中の乳化剤、軟化剤、および増粘剤として、農業配合物中、例えば、標的(例えば、葉のワックス状表面)へ活性成分を送達するための殺虫剤配合物中で、工業用溶媒として、石油の回収を増強するために石油およびガス産業において、可塑剤として、界面活性剤および洗剤として、ならびに界面活性剤および洗剤の生産などにおいて用途を見出す。
【0092】
アルキルポリグリコシド界面活性剤は、それらが、他の界面活性剤と比較して、皮膚科学的特性、標準的な製品との適合性、および有利な環境プロファイルに関して利点を享受するという点で特に価値がある。したがって、それらは、多様な家庭用途および産業用途において、例えば、医薬品中で水媒体への疎水性薬物の可溶化のために、経口および経皮薬物送達用の乳剤または界面活性剤の自己組織化ビヒクルの構成成分として、半流動性送達系中の可塑剤として、薬物吸収および浸透を改善するための剤などとして広く使用されている。したがって、例示的な実施形態において、アルキルポリグリコシドは、例えば、低減した毒性プロファイルを有し、他の界面活性剤および可溶化剤よりも皮膚に対する刺激が少ない生体系成分として、パーソナルケア製品に組み込まれる。
【0093】
したがって、例示的な実施形態において、本明細書に開示される化合物と美容的に許容される担体とを含む、パーソナルケア組成物が提供される。
【0094】
パーソナルケア製品は当該技術分野において既知であり、例えば、Surfactants in Personal Care Products and Decorative Cosmetics,Third Edition,Linda D.Rhein,Mitchell Schlossman,Anthony O’Lenick,P.Somasundaran,eds.CRC Press(2006)を参照されたい。一例示的な実施形態において、パーソナルケア製品は、スキンケア組成物である。スキンケア組成物は当該技術分野において既知であり、例えば、Cosmetic Formulation of Skin Care Products,Zoe Diana Draelos,Lauren A.Thaman,eds.CRC Press(2005)を参照されたい。
【0095】
例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物中の美容的に許容される担体は、水、軟化剤、脂肪酸、脂肪アルコール、増粘剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0096】
一例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、約40重量パーセント(重量%)~約96重量%の濃度で水を含む。
【0097】
別の例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、シリコーン油、天然または合成エステル、炭化水素、アルコール、脂肪酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される軟化剤を含む。いくつかの例示的な実施形態において、軟化剤は、パーソナルケア組成物の約0.1重量%~約60重量%の濃度で存在する。他の例示的な実施形態において、軟化剤は、約30重量%~約50重量%の濃度で存在する。
【0098】
別の例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、シリコーン油を含む。シリコーン油は、揮発性および非揮発性の種類に分けることができる。本明細書で使用される場合、「揮発性」という用語は、周囲温度で測定可能な蒸気圧を有する材料を指す。揮発性シリコーン油は、好ましくは3、4、5、6、7、8、または9個のケイ素原子、好ましくは5~6個のケイ素原子を含有する、環状ポリジメチルシロキサン(シクロメチコン)または線状ポリジメチルシロキサンから選択される。非揮発性シリコーン油としては、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、およびポリエーテルシロキサンコポリマーが挙げられる。本明細書において有用な非揮発性ポリアルキルシロキサンとしては、例えば、25℃で5×10-6m/秒~約0.1m/秒、好ましくは25℃で約1×10-5m/秒~約4×10-4m/秒の粘度を有するポリジメチルシロキサンが挙げられる。非揮発性シリコーンの他のクラスは、ジメチコンニニル(DimethiconeNinyl)ジメチコンクロスポリマー(Dow Corning9040、General Electric SFE839、およびShin-Etsu KSG-18として入手可能)などの乳化および非乳化シリコーンエラストマーである。Silwax WS-L(ジメチコンコポリオールラウレート)などのシリコーンワックスもまた、本明細書に記載のパーソナルケア組成物の実施形態のいずれか1つに含めることができる。
【0099】
別の例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、エステル軟化剤を含む。別の例示的な実施形態において、エステル軟化剤は、10~24個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のアルキルエステルである。例示的な実施形態において、アルキルエステルは、ベヘニルネオペンタノエート、イソノニルイソノナノエート、イソプロピルミリステート、およびオクチルステアレートからなる群から選択される構成員である。
【0100】
別の例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、エトキシル化飽和脂肪アルコールのエーテル-エステル(脂肪酸エステル)を含む。
【0101】
別の例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、条件を満たす多価アルコールエステルであるエチレングリコールモノおよびジ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノおよびジ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(200~6000)モノおよびジ脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノおよびジ脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール2000モノステアレート、エトキシ化プロピレングリコールモノステアレート、グリセリルモノおよびジ脂肪酸エステル、ポリグリセリンポリ脂肪エステル、エトキシ化グリセリルモノステアレート、1,3-ブチレングリコールモノステアレート、1,3-ブチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレンポリオール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ならびにポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの多価アルコールエステルを含む。別の例示的な実施形態において、多価アルコールエステルは、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、およびC1~C30アルコールのネオペンチルグリコールエステルからなる群から選択される。
【0102】
別の例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、蜜蝋、鯨蝋、およびトリベヘニンワックスなどのワックスエステルを含む。
【0103】
別の例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、例えば、スクロースポリベヘネートおよびスクロースポリコットンシーデートなどの脂肪酸の糖エステルを含む。
【0104】
いくつかの例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、天然エステル軟化剤を含む。天然エステル軟化剤は主に、モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドに基づく。代表例としては、サンフラワー種子油、ココナッツ油、綿実油、ボリジ油、ボリジ種子油、サクラソウ油、ヒマシ油および水素化ヒマシ油、米糠油、大豆油、オリーブ油、サフラワー油、シアバター、ホホバ油、ならびにそれらのいずれか2つ以上の組み合わせが挙げられる。動物由来軟化剤としては、例えば、ラノリン油およびラノリン誘導体が挙げられる。例示的な実施形態において、天然エステルの量は、パーソナルケア組成物の約0.1重量%~約20重量%の範囲内の濃度で存在する。
【0105】
いくつかの例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、炭化水素を含む。好適な美容的に許容される担体である炭化水素としては、例えば、ワセリン、鉱物油、C8~C30n-アルカン、C8~C30n-アルカン、C11~C13イソパラフィン、ポリブテン、および特にイソヘキサデカン(Permethyl101AとしてPresperse Inc.から市販されている)が挙げられる。
【0106】
いくつかの例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、脂肪酸を含む。一般に、6~30個の炭素原子を有する脂肪酸が、美容的に許容される担体として提供される。いくつかの例示的な実施形態において、10~30個の炭素原子を有する脂肪酸が、美容的に許容される担体として提供される。他の例示的な実施形態において、8~24個の炭素原子を有する脂肪酸が、美容的に許容される担体として提供される。更に他の例示的な実施形態において、6~24個の炭素原子を有する脂肪酸が、美容的に許容される担体として提供される。
【0107】
いくつかの例示的な炭素1~30個の脂肪酸としては、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ヒドロキシステアリン酸、およびベヘン酸、ならびにそれらのいずれか2つ以上の混合物が挙げられる。10~30個の炭素原子を有する脂肪アルコールは、美容的に許容される担体の別の有用なカテゴリである。このカテゴリの実例は、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、およびそれらのいずれか2つ以上の混合物である。
【0108】
いくつかの例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、増粘剤を含む。例示的な増粘剤としては、架橋アクリレート(例えば、Carbopol982(登録商標))、疎水性修飾アクリレート(例えば、Carbopol1382(登録商標))、ポリアクリルアミド(例えば、Sepigel305(登録商標))、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸/塩ポリマーおよびコポリマー(例えば、Aristoflex HMB(登録商標)およびAVC(登録商標))、セルロース性誘導体、天然ゴム、ならびにそれらのいずれか2つ以上の組み合わせが挙げられる。有用なセルロース性誘導体には、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびそれらのいずれか2つ以上の組み合わせがある。天然ゴムとしては、グアー、キサンタン、菌核、カラゲニン、ペクチン、およびそれらのいずれか2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。無機物、特に粘土(ベントナイトおよびヘクトライトなど)、ヒュームドシリカ、タルク、炭酸カルシウム、およびケイ酸塩(ケイ酸マグネシウムアルミニウム(Veegum(登録商標))など)、ならびにこれらの有機物のいずれか2つ以上の組み合わせを増粘剤として利用してもよい。いずれか2つ以上の増粘剤の組み合わせもまた、本技術のパーソナルケア組成物中で有用である。増粘剤の量は、パーソナルケア組成物の約0.0001重量%~約10重量%、好ましくは約0.001重量%~約1重量%、最適には約0.01重量%~約0.5重量%の範囲であり得る。
【0109】
いくつかの例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、湿潤剤を含む。例示的な実施形態において、多価アルコール型の湿潤剤が、美容的に許容される担体として用いられる。例示的な多価アルコールとしては、例えば、グリセロール、ポリアルキレングリコール(より好ましくはプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびそれらの誘導体を含む、アルキレンポリオールおよびそれらの誘導体)、ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、ヘキシレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、エトキシ化グリセロール、プロポキシル化グリセロール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。例示的な実施形態において、湿潤剤の量は、パーソナルケア組成物の約0.5重量%~約50重量%の濃度で存在する。例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物中に存在する湿潤剤の量は、約0.5重量%~約50重量%である。いくつかの例示的な実施形態において、湿潤剤が含まれる場合、それは、パーソナルケア組成物の約1重量%~15重量%である量で含まれる。
【0110】
いくつかの例示的な実施形態において、皮膚保湿剤が、美容的に許容される担体として含まれる。したがって、例示的な実施形態において、ヒアルロン酸および/またはその前駆体N-アセチルグルコサミンが、美容的に許容される担体として含まれる。いくつかの例示的な実施形態において、N-アセチルグルコサミンは、サメ軟骨またはシイタケに由来し、Maypro Industries,Inc(New York)から市販されている。他の例示的な実施形態において、美容的に許容される担体として含まれる皮膚保湿剤は、ヒドロキシプロピルトリ(C1~C3アルキル)アンモニウム塩である。いくつかの例示的な実施形態において、ヒドロキシプロピルトリ(C1~C3アルキル)アンモニウム塩は、合成手順から、例えば、クロロヒドロキシプロピルトリ(C1~C3アルキル)アンモニウム塩の加水分解から得られる。更に他の例示的な実施形態において、特に上述のアンモニウム塩と組み合わせて使用される場合、保湿剤としては、例えば、ヒドロキシメチルウレア、ヒドロキシエチルウレア、ヒドロキシプロピルウレアなどの置換ウレア;ビス(ヒドロキシメチル)ウレア;ビス(ヒドロキシエチル)ウレア;ビス(ヒドロキシプロピル)ウレア;N,N’-ジヒドロキシメチルウレア;N,N’-ジ-ヒドロキシエチルウレア;N,N’-ジ-ヒドロキシプロピルウレア;N,N,N’-トリ-ヒドロキシエチルウレア;テトラ(ヒドロキシメチル)ウレア;テトラ(ヒドロキシエチル)ウレア;テトラ(ヒドロキシプロピルウレア;N-メチル-N’-ヒドロキシエチルウレア;N-エチル-N’-ヒドロキシエチルウレア;N-ヒドロキシプロピル-N’-ヒドロキシエチルウレア、N,N’-ジメチル-N-ヒドロキシエチルウレアが挙げられる。
【0111】
別の例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、約4~約8のpHを有する。いくつかの例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物のpHは、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、またはこれらの値のいずれか2つを含む任意の範囲およびこれらの値のいずれか2つの間の任意の範囲である。一例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物のpHは、約5~約7である。他の例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物のpHは、約5~約6である。
【0112】
別の例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、無機日焼け止めを含む。一例示的な実施形態において、無機日焼け止めの量は、パーソナルケア組成物の約0.1重量%~約10重量%の濃度で存在する。無機日焼け止めは、当該技術分野において周知であり、それらには、酸化亜鉛、酸化鉄、シリカ(例えば、ヒュームドシリカ)、および二酸化チタンが含まれるが、これらに限定されない。
【0113】
いくつかの例示的な実施形態において、パーソナルケア組成物は、美容的に有益な成分を含む。例示的な美容的に有益な成分としては、皮膚美白成分、レチノイド、ハーブ抽出物、抗真菌剤、レスベラトロール、アルファ-リポ酸、エラグ酸、キネチン、レチノキシトリメチルシラン(retinoxytrimethylsilane)、セラミド、擬似セラミド、着色剤、乳白剤、研磨剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
ii.エトキシ化誘導体
例示的な実施形態において、5-ドデセン-1,3-ジオールのヒドロキシル部分は、新規のアルコールエトキシレート、エトキシサルフェート、プロポキシレートおよびブトキシレート、脂肪アルコールポリグリコールエーテルなどを調製するためのエトキシ化に利用可能である。アルコールエトキシレートは、当該技術分野において既知である(例えば、米国特許第4,223,163号、Surfactants.In Elvers,Barbara, et al.Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry.Weinheim,GER:Wiley-VCHを参照されたい)。
【0115】
脂肪アルコールエトキシレートは、技術規模で製造された最初の非イオン性界面活性剤である。それらは、化粧品中および他の市販製品(例えば、洗剤、洗浄剤など)中で広く使用されている。
【0116】
3.ポリウレタン
いくつかの例示的な実施形態において、5-ドデセン-1,3-ジオールのヒドロキシル官能基を使用して、ポリウレタンが調製される。
【0117】
5-ドデセン-1,3-ジオールの二重結合は、例えば、式VIIに示されるように、エポキシ化のための部位として機能する。
【0118】
当該技術分野において既知であるように、標準的なエポキシ化の化学は、過酸化水素、およびJacobsen触媒クラスの触媒またはTS-1ゼオライト触媒を使用して、30℃~80℃の熱を伴う。
【0119】
例示的な実施形態において、当該技術分野において既知であり(例えば、Practical Synthetic Organic Chemistry,Stephane Caron ed.(2011)(上記)、Organic Chemistry,9th Edition,Carey and Giuliano(2013)(上記))、かつ例えば、式VIIIに示されるように、アセチル基などの保護基の化学によって、5-ドデセン-1,3-ジオールのアルコール基自体がエポキシ環において反応することを防止する。
【0120】
例示的な実施形態において、当該技術分野において既知である方法を使用して、例えば、式IXに示されるように、水を使用することで、誘導体化5-ドデセン-1,3-ジオール上のエポキシ環が開環され、それにより、テトラオールがもたらされる。
【0121】
他の例示的な実施形態において、当該技術分野において既知である方法を使用して、例えば、式Xに示されるように、水素反応体を使用して、エポキシ環が開環され、それによりトリオールがもたらされる。
【0122】
例示的な実施形態において、ドデカン-1,3,6-トリオールに対する水素による選択的開環の使用が好ましい。エポキシドの化学は、圧倒的に広く使用され、他のジオール、アルコール、および官能化部分は、この部位で反応される(Y.Li et al.,Bio-based Polyols and Polyurethanes,Springer Briefs in Green Chemistry for Sustainability,DOI10.1007/978-3-319-21539-6_2)。
【0123】
他の例示的な実施形態において、当該技術分野において既知である(例えば、Monteavaro LL,et al.J Am.OilChem.Soc.82:365-371,2005)1ステップ「単一ポット」反応を使用して、5-ドデセン-1,3-ジオール上のアルコール基を使用することで、エポキシで開環され、例えば、式XIに示されるものなどの構造がもたらされる。
【0124】
5-ドデセン-1,3-ジオール上のアルコール基を使用して、エポキシで開環させることで、元の5-ドデセン-1,3-ジオールよりも高い粘度を有する分枝状ポリオールが提供される。高粘度ポリオールは、例えば、石油探査および回収、塗料およびコーティング、ならびにパーソナルケアなどの用途において有用である。
【0125】
他の例示的な実施形態において、式Xのドデカン-1,3,6-トリオールを式VIIのエポキシドと反応させることで、式XIIの分枝状ポリオールが提供される。
【0126】
例示的な実施形態において、5-ドデセン-1,3-ジオールから生成されるポリオールは、例えば、エチレンオキシドとの共重合によって更に誘導体化され、それによりポリエーテルポリオールがもたらされる。結果として得られるポリエーテルポリオールは、様々な用途において、例えば、ポリウレタンの構成単位として、そのままの状態で使用することができる。
【0127】
例示的な実施形態において、5-ドデセン-1,3-ジオール、本明細書に開示される関連トリオールもしくはテトラオール、または本明細書に開示される5-ドデセン-1,3-ジオールを使用して生成される関連分枝状ポリオールもしくは他のポリオールは、イソシアネート化合物と共に標準的な化学作用で進行して、ポリウレタンを形成し得る。これらの反応は、紫外線によって、または例えば、ジブチル錫ジラウレートもしくはビスマスオクタノエートなどの触媒によって当該技術分野において既知である方法により促進することができる(例えば、Y.Li et al.,Bio-based Polyols and Polyurethanes,Springer Briefs in Green Chemistry for Sustainability,DOI10.1007/978-3-319-21539-6_2を参照されたい)。線状から芳香族までの範囲の多くの異なるイソシアネートを使用することができ、ポリオールを調製するための技術は、プレポリマー相を経由しても経由しなくてもよい(例えば、ジオール、トリオール、イソシアネート基を有するポリオールの調製)(例えば、米国特許第4,532,316号を参照されたい)。
【0128】
例示的な実施形態において、カルバメートは、イソシアネートを合成するため、およびジオールを直接変換して非イソシアネートポリウレタンを調製するための中間体として使用される(NIPU、例えば、Maisonneuve,L.et al.(2015)Chem.Rev.115:12407-12439を参照されたい)。非イソシアネートポリウレタンにより、発癌性イソシアネートを使用せずに、建築材料から医学デバイスまで多様な用途において使用されるポリウレタンの性能および特性を生成することが可能になるため、それらは特に世界的に有用である。これにより、コーティングおよび接着剤などのポリウレタン製品の使用時に曝露され得る、生産者、商用ユーザー、および日常の消費者にとってさえ、より安全な労働条件が可能となる。したがって、NIPUの調製における5-ドデセン-1,3-ジオールの使用は、二重結合によってもたらされる架橋または再配置の柔軟性と組み合わせて、1,2-ジオールと比較して改善された反応性を有する新たなカーボネート構造(6員環に対する1,3-ジオール対5員環に対する1,2-ジオール)への手段を可能にして、新たな非イソシアネートポリウレタン生成物を提供する。
【0129】
NIPUを調製するために、5-ドデセン-1,3-ジオールをジオールとして使用しても、上記に考察されるようにポリオールに変換し、幅広いカルバメートとの反応に使用してもよい(例えば、Rokocki,G,et al.Polym.Adv.Technol.26,707-761,2015を参照されたい)。5-ドデセン-1,3-ジオール中の1,3-ジオール配置は、アルコール反応中心による立体障害がより少ないという点で1,2-ジオールと比較して利点を有する。
【0130】
5-ドデセン-1,3-ジオールのヒドロキシル部分は、6員環の環状カーボネート環を調製するためのジメチルカーボネートまたは二酸化炭素との反応に利用可能であり、この6員環の環状カーボネート環をその後一級アミンと反応させて、新規の「非イソシアネート」ポリウレタン(NIPU)を提供する。カーボネートに両末端がある場合、つまり、それが最初に架橋反応またはメタセシス反応でそれ自体に反応して、ポリマー鎖が続くための2つの末端をもたらす場合(これは、カーボネート構造が形成される前または後に行われ得る)、カーボネートはNIPUに対する更なる反応に有用である。したがって、式XIIの分枝状ポリオールはまた、例えば、式XIIIの2-カーボネートポリマー構成単位に変換されてもよい。
【0131】
5-ドデセン-1,3-ジオールからカーボネート誘導体を作製するため、または5-ドデセン-1,3-ジオールから生成されるテトラオールを作製するために使用することができる例示的な触媒としては、例えば、ジメチルカーボネートを有する1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(Mutlu et al,Green Chem.,2012);大気圧で、炭酸セシウム、ジブロモメタン、およびCOの存在下での様々なイミダゾリウムまたはチアゾリウムカルベン触媒(Bobbink et al,Chem.Commun.,2016);ならびにCOの存在下での2-シアノピリジンを有するCeO(Honda et al,ACS Catal.,2014)が挙げられる。
【0132】
5-ドデセン-1,3-ジオールから生成されるものなどの1,3-ジオール部分に由来する6員環の環状カーボネートは、1,2-ジオール部分に由来する5員環の環状カーボネートと比較して30倍の反応性を有し、故に使用が好ましい(Maisonneuve et al,Chem.Rev.,2015(上記))。
【0133】
例示的な実施形態において、「両末端」構造を形成するための自己メタセシスは、当該技術分野において既知であるメタセシス触媒、例えば、第1世代または第2世代のグラブス触媒を用い、1つの具体例は、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム(II)ベンジリデン、[(PCy3)2Cl2]Ru=CHPhである(例えば、国際出願第PCT/US95/09655号を参照されたい)。
【0134】
メタセシス反応は、内部オレフィン副生成物を引き離す真空下で推進される。いくつかの例示的な実施形態において、メタセシス反応は、カーボネートが形成される前に実行され(つまり、ジオール対テトラオール)、式XIVを参照されたい。式XIVは、ポリオールとして、上記に考察される用途を有する。
【0135】
あるいは、カーボネートは、最初にジオールから生成され、その後両末端カーボネートに自己メタセシスされてもよい。つまり、5-ドデセン-1,3-ジオールから生成される6員環の環状カーボネート分子は、その後2つの6員環の環状カーボネートを有する分子に自己メタセシスされ、故に式XVを参照されたい分子を提供する。メタセシス反応は、シス二重結合およびトランス二重結合の混合物をもたらし得る。
【0136】
いくつかの例示的な実施形態において、5-ドデセン-1,3-ジオールまたは関連する6員環の環状カーボネートは、下記に示されるように、最初にエチレンメタセシスで反応して、末端アルケン対応物を形成する。
【0137】
その後、式XVIおよび式XVIIそれぞれの自己メタセシスは、それぞれ式XIVおよびXVの両末端化合物を提供する。
【0138】
式XVの更なる反応を二重結合にわたって実行して、剛性を付加すること、その後のポリマーのガラス転移温度(Tg)の増加を探索すること、またはペンダント基を付加することができる。一例示的な実施形態において、標準的なディールス・アルダー反応で、式XVをブタジエンおよびルイス酸と反応させると、式XVIIIが提供される。
【0139】
4.ポリエステル
上記に明記されるように、1,3-ジオール構造は、例えば、類似した鎖長の1,2-ジオールよりも立体障害が少なく、ポリマー形成を補助する。
【0140】
ポリエステルを形成するための化学作用は、100年以上にわたって研究されており、当該技術分野において周知である。例示的な化学作用としては、熱および酸によって触媒される反応、リパーゼ酵素触媒重縮合、スカンジウムトリフレートの触媒としての使用などが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Diaz,A.et al.,Macromolecules2005,38,1048-1050を参照されたい)。
【0141】
例示的な実施形態において、5-ドデセン-1,3-ジオールを、例えば、アジピン酸などの二酸と反応させて、例えば、式XIXとして以下に示される分子などの「ブッシュ状(bushy)」ポリエステルを形成する(式中、nは、1~1000の整数である)。
【0142】
ポリエステル構造の「ブッシュ状」特徴は、例えば、アルファ-オメガジオール(1,2-ジオール)で生成されたポリエステルと比較して、より低い結晶化度、および界面活性剤中でのミセル形成における改善された性能を有するだけでなく、他のポリマー用途において疎水性ももたらすだろう。
【0143】
5-ドデセン-1,3-ジオールの構造は、結晶化度(例えば、より低い結晶化度の促進)およびガラス転移温度(Tg)、ポリマー相の相互作用、押し出し特性、ならびに水、溶媒、および複合配合物との溶解性および表面相互作用に影響を与えるように機能する。したがって、例示的な実施形態において、5-ドデセン-1,3-ジオールは、疎水性を増加させ、可塑剤効果をもたらすための添加剤として使用される。したがって、例示的な実施形態において、5-ドデセン-1,3-ジオールを、ジオールまたはポリオール種の約0.001%~約45%の濃度で使用して、既知のポリエステルの構造に影響を与える。したがって、例示的な実施形態において、5-ドデセン-1,3-ジオールを、主要モノマーよりも低いパーセンテージで、アジピン酸、1,4-ブタンジオール、およびジメチルテレフタレートのコポリエステルであるポリブチレートに組み込んで、例えば、式XXとして以下に示されるものなどの分子を提供する(式中、mおよびnは各々独立して、1~1000の整数である)。
【0144】
II.(Z)-5-ドデセン-1,3-ジオールの調製
a.生物学的合成の一般経路
5-ドデセン-1,3-ジオールは、当該技術分野において既知である任意の方法によって作製することができる。上記に考察されるように、不飽和脂肪アルコールは、石油からの生成が困難である。むしろ、不飽和脂肪アルコールは、典型的には植物起源および動物起源の脂肪および油などの非石油供給源の加工から生成される(例えば、E.F.Hill,et al.(1954)Ind.Eng.Chem.,46(9):1917-1921を参照されたい)。そのようなプロセスは厄介であり、汚染を引き起こす可能性があり、典型的には限られた種類の不飽和脂肪アルコール生成物しか生成しない。
【0145】
しかしながら、幸運にも、5-ドデセン-1,3-ジオールの直接生成のために、生物学的方法が利用可能である。したがって、例示的な実施形態において、5-ドデセン-1,3-ジオールは、例えば、WO2016/011430A1に開示され、本明細書の下記の実施例1に詳細に開示される生物学的方法を使用して作製される。
【0146】
簡潔には、5-ドデセン-1,3-ジオールの調製は、核酸および酵素機能を持つそれらの対応するポリペプチドを利用して、所望の化合物(例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールなど)のインビボ生成のために酵素経路を修飾することによって、1,3-ジオールを生成するように操作された組み換え宿主細胞内(例えば、細菌細胞内)で実行され得る。酵素ポリペプチドは、酵素受入番号(EC番号)によって本明細書の下記に特定される。
【0147】
WO2016/011430A1は、1,3-ジオールを生成するように操作されている酵素経路を開示する。5-ドデセン-1,3-ジオールの生成のための一例示的な経路は、アシル中間体を担持する3’ヒドロキシアシル担体タンパク質(ACP)(例えば、アシル-ACPまたは3-ヒドロキシアシル-ACP)を利用し、これは、3’ヒドロキシ脂肪酸(3’-OH FA)および3’ヒドロキシ脂肪アルデヒド(3’-OH脂肪アルデヒド)を中間体として1,3-ジオールに変換される。理論によって拘束されるものではないが、グルコースなどの単純な炭素供給源は、最初に微生物(例えば、エシェリキア属(Escherichia)、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)など)によって3’ヒドロキシアシル-ACPに変換されると考えられる。したがって、一実施形態において、操作された酵素経路を開始するアシル-ACPまたは3’ヒドロキシアシル-ACPは、微生物の天然経路によって生成される。例示的な実施形態において、3’ヒドロキシアシル-ACPは、チオエステラーゼ(TE)活性を有する酵素(EC3.1.2.-またはEC3.1.2.14またはEC3.1.1.5)によって3’-OH FAなどの中間体に変換される。中間体3’-OH FAは、その後カルボン酸レダクターゼ(CAR)活性を有する酵素(E.C.1.2.99.6)によって3’OHアルデヒドなどの別の中間体に変換される。アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)またはアルデヒドレダクターゼ(AR)活性を有する酵素(E.C.1.1.1.1またはE.C.1.1.1.2)は、その後3’OHアルデヒドを1,3-ジオールに変換する。
【0148】
他の実施形態において、3’ヒドロキシアシル-ACPは、アシル-ACPレダクターゼ活性を有する酵素(AAR、E.C.1.2.1.42)によって3’-OH脂肪アルデヒドなどの中間体に変換される。AARによる脂肪アルコールおよび/または脂肪アルデヒドの生成は、アセチル-CoAカルボキシラーゼをコードするaccABCDと呼ばれる遺伝子の異種発現を通して増強することができる。アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)またはアルデヒドレダクターゼ(AR)活性を有する酵素(E.C.1.1.1.1またはE.C.1.1.1.2)は、その後3’-OHアルデヒドを1,3-ジオールなどの脂肪ジオールに変換することができる。したがって、本開示は、1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールをインビボで効率的かつ選択的に生成することができる組み換え微生物を提供する。ほとんどの細胞は細胞傷害性であり得るため、それらは元々アルデヒドを還元することができる酵素を生成することに留意されたい。したがって、ARおよびADHの異種発現は、脂肪アルコールおよびジオールの生成には必要とされない可能性があるが、それらは、脂肪ジオールの生成効率を改善することができる。
【0149】
したがって、本明細書に開示される方法を使用して、飽和および不飽和1,3-脂肪ジオールが生成される。例示的な1,3-脂肪ジオールとしては、例えば、C 1,3脂肪ジオール(例えば、1,3-ペンタンジオール)、C 1,3脂肪ジオール(例えば、1,3-ヘキサンジオール)、C 1,3脂肪ジオール(例えば、1,3-ヘプタンジオール)、C 1,3脂肪ジオール(例えば、1,3-オクタンジオール)、C 1,3脂肪ジオール(例えば、1,3-ノナンジオール)、C10 1,3脂肪ジオール(例えば、1,3-デカンジオール)、C11 1,3脂肪ジオール(例えば、1,3-ウンデカンジオール)、C12 1,3脂肪ジオール(例えば、1,3-ドデカンジオール, 5-ドデセン-1,3-ジオール)、C13 1,3脂肪ジオール(例えば、1,3-トリデカンジオール)、C14 1,3脂肪ジオール(例えば、1,3-テトラデカンジオール、7-テトラデセン-1,3-ジオール)、C15 1,3脂肪ジオール(例えば、1,3-ペンタデカンジオール)、C16 1,3脂肪ジオール(例えば、1,3-ヘキサデカンジオール、9-ヘキサデセン-1,3-ジオール)、C17 1,3脂肪ジオール(例えば、1,3-ヘプタデカンジオール)、C18 1,3脂肪ジオール(例えば、1,3-オクタデカンジオール、11-オクタデセン-1,3-ジオール)、C19 1,3脂肪ジオール(例えば、1,3-ノナデカンジオール)などが挙げられる。主として偶数鎖の1,3-脂肪ジオールが本明細書に開示されるが、奇数鎖の1,3-脂肪ジオール(7~21個の炭素、およびより好ましくは5~19個の炭素を有するものなど)もまた見出される。
【0150】
一般に、例示的な実施形態において、本明細書の上記に開示される微生物を利用して生成される不飽和1,3-脂肪ジオールは、(Z)配置に二重結合を担持する。しかしながら、本明細書の下記に考察されるように、二重結合が(E)配置に生成されるように、不飽和1,3-脂肪ジオールの(Z)二重結合、例えば、(Z)-5-ドデセン-1,3-ジオールの二重結合を再配置するための方法が利用可能である。
【0151】
1,3-脂肪ジオールの生物学的合成に関する更なる指針として、当業者は、例えば、本明細書の下記の実施例1~3および/または国際特許出願公開第WO2016/011430A1号を参照することができる。
【0152】
b.5-ドデセン-1,3-ジオールのキラリティー
本明細書に開示される1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールの3-ヒドロキシ官能性は、C-3で立体中心を形成し、分子のキラリティー点を提供する。上記に明記されるように、キラリティーは、例えば、ポリマー性能、生物活性、薬学的効力などを含む、分子用途を定義する上での有用な分子特質であり得る。
【0153】
微生物によって生成される1,3-脂肪ジオールの立体異性体は、それが生成される脂肪酸生合成経路(FAS)の選択性に依存する。どのFAS酵素が1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールの合成に関与するかを操作することによって、結果として得られた1,3-脂肪ジオールのキラリティーを制御することができる。
【0154】
例えば、一例示的な実施形態において、天然大腸菌(E.coli)FASを活用して、不飽和1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールの(R)鏡像異性体が生成される。この実施形態において、不飽和1,3-脂肪ジオールのキラル中心は、大腸菌内のFabG遺伝子によってコードされる酵素である3-ケトアシル-ACPレダクターゼの活性によって作製される。3-ケトアシル-ACPレダクターゼの活性は(R)-3-ヒドロキシルアシルACPを生成し、これはその後、節IIaで上記に考察される操作された酵素経路(複数可)に入ることができる。
【0155】
他の例示的な実施形態において、ベータ-酸化経路を活用して、不飽和1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールの(S)鏡像異性体が生成される。この実施形態において、不飽和1,3-脂肪ジオールの(S)鏡像異性体は、ベータ-酸化経路を通した脂肪酸の分解における中間体である(S)-3-ヒドロキシアシルCoAの蓄積を引き起こすことによって調製される。過剰な(S)-3-ヒドロキシ-アシルCoAは、その後脂肪アルコール形成ポリペプチドの作用を通して、不飽和1,3-脂肪ジオールの(S)鏡像異性体に変換される。
【0156】
したがって、一例示的な実施形態において、不飽和1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールの(S)鏡像異性体を調製するために、利用可能な遊離脂肪酸は、最初にアシル-CoAシンターゼによってアシル-CoAに変換され、これは、大腸菌内のFadD(および他の微生物内の相同体)によって触媒される反応である。結果として得られたアシル-CoAは、その後脂肪アシル-CoAデヒドロゲナーゼによってトランス-2-エノイル-CoAに酸化され、これは、大腸菌内のFadE(および他の微生物内の相同体)によって触媒される反応である。結果として得られたトランス-2-エノイル-CoAは、その後2-トランス-エノイル-CoAヒドラターゼ/(S)-3-ヒドロキシ-アシル-CoAデヒドラターゼによって(S)-3-ヒドロキシ-アシル-CoAへと水和され、これは、大腸菌内のFadB(および他の微生物内の相同体)によって触媒される反応である。
【0157】
野生型ベータ-酸化経路において、(S)-3-ヒドロキシ-アシル-CoAは、3-ケト-アシル-CoAデヒドロゲナーゼによって3-ケト-アシル-CoAに更に酸化され、これもまた、大腸菌内のFadB(および他の微生物内の相同体)によって触媒される反応である。結果として得られた3-ケト-アシル-CoAは、3-ケトアシル-CoAチオラーゼによってアシル-CoAおよびアセチル-CoAへとチオ化(thiolyze)され、これは、大腸菌内のFadA(および他の微生物内の相同体)によって触媒される反応である。
【0158】
一例示的な実施形態において、(S)-3-ヒドロキシ-アシル-CoAの蓄積は、3-ケト-アシル-CoAデヒドロゲナーゼ(FadB)のデヒドロゲナーゼ活性を選択的に遮断して、(S)-3-ヒドロキシ-アシル-CoAが3-ケト-アシル-CoAに酸化するのを防止することによって引き起こされる。例示的な実施形態において、FadBの(S)-3-ヒドロキシ-アシル-CoAデヒドロゲナーゼ活性の選択的な遮断は、大腸菌のFadB遺伝子内のヒスチジン450の変異によって達成される(例えば、He XY and Yang SY(1996)Biochemistry35(29):9625-9630を参照されたい)。細胞内に蓄積される(S)-3-ヒドロキシ-アシルCoAは、例えば、WO2016/011430A1に開示されるものなどの脂肪アルコール形成ポリペプチドの作用を通して、不飽和1,3-脂肪ジオール、例えば、(S)-5-ドデセン-1,3-ジオールの(S)鏡像異性体に変換される。
【0159】
結果として得られた鏡像異性体配置の決定/確認は、当該技術分野において既知である任意の方法によって、例えば、旋光分析などの非クロマトグラフィー技術によって、核磁気共鳴法、同位体希釈、熱量測定法、および酵素技術によって達成される。これらの技術は純粋な試料を必要とし、鏡像異性体の分離は伴わない。鏡像異性体の(純粋な試料を必要としない)定量化および分離は、キラルカラムを使用して、ガスクロマトグラフィー(GC)または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などのキラルクロマトグラフィーによって同時に行うことができる(例えば、Stereochemistry of Organic Compounds,Ernest L.Elil and Sanuel H.Wilen,1994,John Wiley&Sons,Inc.を参照されたい)。生成物のキラル純度は、キラルHPLCまたはLC/MSなどのキラルクロマトグラフィー方法を使用して特定することができる(例えば、米国特許出願公開第US2008/0248539A1号および同第US2013/0052699A1号を参照されたい)。
【0160】
c.1,3-脂肪ジオールの発酵および生成
本明細書で使用される場合、発酵は、組み換え宿主細胞により有機材料を標的物質に変換することを広く指す。例えば、これは、炭素供給源を含む培地中で組み換え宿主細胞の培養物を増殖させることによって、組み換え宿主細胞により炭素供給源を脂肪酸誘導体(1,3-脂肪ジオールなど)に変換することを含む。1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールなどの標的物質の生成を許容する条件は、宿主細胞が所望の生成物(1,3-脂肪ジオール組成物など)を生成することを可能にする任意の条件である。好適な条件には、例えば、典型的な発酵条件が含まれ、例えば、Principles of Fermentation Technology,3rd Edition(2016)(上記)、Fermentation Microbiology and Biotechnology,2nd Edition(2007)(上記)を参照されたい。
【0161】
発酵条件には、温度範囲、pHレベル、通気レベル、供給速度、および培地組成を含むが、これらに限定されない、多くのパラメータが含まれ得る。これらの条件の各々は、個々および組み合わせで、宿主細胞の増殖を可能にする。発酵は、好気的、嫌気的、またはそれらの変化形(微好気的など)であり得る。例示的な培養培地としては、ブロス(液体)またはゲル(固体)が挙げられる。一般に、培地は、宿主細胞によって直接代謝され得る炭素供給源(例えば、再生可能な供給原料由来の単純な炭素供給源)を含む。加えて、培地中で酵素を使用して、可動化(例えば、発酵性糖へのデンプンまたはセルロースの脱重合)およびその後の炭素供給源への代謝を促進してもよい。
【0162】
小規模の生成には、1,3-脂肪ジオールを生成するように操作された宿主細胞を、例えば、約100μL、200μL、300μL、400μL、500μL、1mL、5mL、10mL、15mL、25mL、50mL、75mL、100mL、500mL、1L、2L、5L、または10Lなどのバッチで増殖させ、発酵させ、特定の酵素活性(例えば、チオエステラーゼ(TE)、カルボン酸レダクターゼ(CAR)、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、脂肪アシルCoA/ACPレダクターゼ(FAR)、アシル-CoAレダクターゼ(ACR)、アシルCoAカルボキシラーゼ(ACC)、および/またはアシルACP/CoAレダクターゼ(AAR)酵素活性)を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドなどの所望のポリヌクレオチド配列を発現するように誘導してもよい。大規模の生成には、操作された宿主細胞を、約10L、100L、1000L、10,000L、100,000L、1,000,000L、またはそれ以上の体積バッチを有する培養物中で増殖させ、発酵させ、任意の所望のポリヌクレオチドを発現するように誘導してもよい。本明細書に記載の1,3-脂肪ジオール組成物は、組み換え宿主細胞培養物の細胞外環境に見出すことができ、培養培地から容易に単離することができる。1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールなどの脂肪酸誘導体、および/または脂肪アルコールは、組み換え宿主細胞によって分泌され、細胞外環境に輸送されても、組み換え宿主細胞培養物の細胞外環境に受動的に導入されてもよい。1,3-脂肪ジオール組成物は、当該技術分野において既知である慣例的な方法を使用して、組み換え宿主細胞培養物から単離することができる(例えば、本明細書の下記の実施例2を参照されたい)。
【0163】
生産宿主細胞としての使用に好適な例示的な微生物としては、例えば、細菌、ラン藻類、酵母菌、藻類、または糸状菌などが挙げられる。1,3-脂肪ジオールを生成するために、生産宿主細胞(または同等に宿主細胞)は、操作されていない宿主細胞または天然宿主細胞と比較して修飾されている、例えば、節II.aで上記に考察され、WO2016/011430A1に開示されるように操作されている、脂肪酸生合成経路を含むように操作される。修飾された脂肪酸生合成経路を含むように操作された生産宿主は、グルコースまたは他の再生可能な供給原料を、脂肪酸誘導体(脂肪アルコールおよび1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールを含む)に効率的に変換することができる。様々な化合物を生成するための高密度発酵のプロトコルおよび手順が、確立されている(例えば、米国特許第8,372,610号、同第8,323,924号、同第8,313,934号、同第8,283,143号、同第8,268,599号、同第8,183,028号、同第8,110,670号、同第8,110,093号、および同第8,097,439号を参照されたい)。
【0164】
いくつかの例示的な実施形態において、生産宿主細胞は、約20g/L~約900g/Lの炭素供給源(例えば、単純な炭素供給源)の初期濃度を含む培養培地(例えば、発酵培地)中で培養される。他の実施形態において、培養培地は、約2g/L~約10g/L、約10g/L~約20g/L、約20g/L~約30g/L、約30g/L~約40g/L、または約40g/L~約50g/Lの炭素供給源の初期濃度を含む。いくつかの実施形態において、培養培地中の利用可能な炭素供給源のレベルが、発酵進行中に監視されてもよい。いくつかの実施形態において、本方法は、培地中の初期炭素供給源のレベルが約0.5g/L未満である時に、追加の炭素供給源を培養培地に追加することを更に含む。
【0165】
いくつかの例示的な実施形態において、追加の炭素供給源は、培地中の初期炭素供給源のレベルが約0.4g/L未満、約0.3g/L未満、約0.2g/L未満、または約0.1g/L未満である時に、培養培地に追加される。いくつかの実施形態において、追加の炭素供給源は、約1g/L~約25g/Lの炭素供給源レベルを維持するために追加される。いくつかの実施形態において、追加の炭素供給源は、約2g/L以上(例えば、約2g/L以上、約3g/L以上、約4g/L以上)の炭素供給源レベルを維持するために追加される。特定の実施形態において、追加の炭素供給源は、約5g/L以下(例えば、約5g/L以下、約4g/L以下、約3g/L以下)の炭素供給源レベルを維持するために追加される。いくつかの実施形態において、追加の炭素供給源は、約2g/L~約5g/L、約5g/L~約10g/L、または約10g/L~約25g/Lの炭素供給源レベルを維持するために追加される。
【0166】
一例示的な実施形態において、発酵のための炭素供給源は、再生可能な供給原料に由来する。いくつかの実施形態において、炭素供給源は、グルコースである。他の実施形態において、炭素供給源は、グリセロールである。他の可能性のある炭素供給源としては、フルクトース、マンノース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、デンプン、セルロース、ペクチン、キシラン、スクロース、マルトース、セロビオース、およびツラノース;セルロース材料および変異形(ヘミセルロース、メチルセルロース、およびナトリウムカルボキシメチルセルロースなど);飽和もしくは不飽和脂肪酸、サクシネート、ラクテート、およびアセテート;アルコール(エタノール、メタノール、およびグリセロールなど)、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、炭素供給源は、トウモロコシ、サトウキビ、モロコシ、テンサイ、スイッチグラス、エンシレージ、麦わら、材木、パルプ、下水汚物、ゴミ、セルロース都市廃棄物、煙道ガス、合成ガス、または二酸化炭素に由来する。単純な炭素供給源はまた、グルコースまたはスクロースなどの光合成の生成物であってもよい。一実施形態において、炭素供給源は、グリセロール、煙道ガス、または合成ガスなどの廃棄生成物;バイオマスなどの有機材料の再形成物;天然ガスもしくはメタン、またはそれらの材料の合成ガスへの再形成物;光合成的に固定されている二酸化炭素(例えば、1,3ジオールは、COを炭素供給源として使用して光合成成長する組み換えラン藻類によって生成され得る)に由来する。特定の実施形態において、炭素供給源は、バイオマスに由来する。バイオマスの一例示的な供給源は、トウモロコシ、サトウキビ、またはスイッチグラスなどの植物性物質または植生である。バイオマスの別の例示的な供給源は、動物性物質(例えば、牛糞肥料)などの代謝廃棄生成物である。バイオマスの更なる例示的な供給源としては、藻類および他の海洋植物が挙げられる。バイオマスにはまた、発酵廃棄物、エンシレージ、麦わら、材木、下水汚物、ゴミ、セルロース都市廃棄物、一般廃棄物、および残飯を含むが、これらに限定されない、工業、農業、林業、および家庭に由来する廃棄生成物も含まれる。
【0167】
いくつかの例示的な実施形態において、1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールは、約0.5g/L~約40g/Lの濃度で生成される。いくつかの実施形態において、1,3-脂肪ジオールは、約1g/L以上(例えば、約1g/L以上、約10g/L以上、約20g/L以上、約50g/L以上、約100g/L以上)の濃度で生成される。いくつかの実施形態において、1,3-脂肪ジオールは、約1g/L~約170g/L、約1g/L~約10g/L、約40g/L~約170g/L、約100g/L~約170g/L、約10g/L~約100g/L、約1g/L~約40g/L、約40g/L~約100g/L、または約1g/L~約100g/Lの濃度で生成される。
【0168】
他の例示的な実施形態において、1,3-脂肪ジオールは、約25mg/L、約50mg/L、約75mg/L、約100mg/L、約125mg/L、約150mg/L、約175mg/L、約200mg/L、約225mg/L、約250mg/L、約275mg/L、約300mg/L、約325mg/L、約350mg/L、約375mg/L、約400mg/L、約425mg/L、約450mg/L、約475mg/L、約500mg/L、約525mg/L、約550mg/L、約575mg/L、約600mg/L、約625mg/L、約650mg/L、約675mg/L、約700mg/L、約725mg/L、約750mg/L、約775mg/L、約800mg/L、約825mg/L、約850mg/L、約875mg/L、約900mg/L、約925mg/L、約950mg/L、約975mg/L、約1000mg/L、約1050mg/L、約1075mg/L、約1100mg/L、約1125mg/L、約1150mg/L、約1175mg/L、約1200mg/L、約1225mg/L、約1250mg/L、約1275mg/L、約1300mg/L、約1325mg/L、約1350mg/L、約1375mg/L、約1400mg/L、約1425mg/L、約1450mg/L、約1475mg/L、約1500mg/L、約1525mg/L、約1550mg/L、約1575mg/L、約1600mg/L、約1625mg/L、約1650mg/L、約1675mg/L、約1700mg/L、約1725mg/L、約1750mg/L、約1775mg/L、約1800mg/L、約1825mg/L、約1850mg/L、約1875mg/L、約1900mg/L、約1925mg/L、約1950mg/L、約1975mg/L、約2000mg/L(2g/L)、3g/L、5g/L、10g/L、20g/L、30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、または上述の値のいずれか2つによって境界付けられる範囲の力価で生成される。他の実施形態において、1,3-脂肪ジオール(例えば、1,3-ジオール)は、100g/L超、200g/L超、300g/L超、またはそれ以上(500g/L、700g/L、1000g/L、1200g/L、1500g/L、もしくは2000g/Lなど)の力価で生成される。本開示の方法に従って組み換え宿主細胞によって生成される1,3-ジオールなどの1,3-脂肪ジオールの好ましい力価は、5g/L~200g/L、10g/L~150g/L、20g/L~120g/L、および30g/L~100g/L、100g/L~150g/L、および120g/L~180g/Lである。一実施形態において、本開示の方法に従って組み換え宿主細胞によって生成される1,3-ジオールなどの1,3-脂肪ジオールの好ましい力価は、約1g/L~約250g/L、およびより具体的には90g/L~約120g/Lである。力価は、特定の1,3-ジオールまたは異なる鎖長もしくは異なる官能性の1,3-ジオールの組み合わせ(例えば、所与の組み換え宿主細胞培養物によって生成される飽和1,3-脂肪ジオールと不飽和1,3-脂肪ジオールとの混合物など)を指すことができる。
【0169】
他の例示的な実施形態において、例えば、本開示の方法に従って5-ドデセン-1,3-ジオールなどの1,3-脂肪ジオールを生成するように操作された宿主細胞は、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、もしくは少なくとも30%、もしくは少なくとも40%、または上述の値のいずれか2つによって境界付けられる範囲の収率を有する。他の実施形態において、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールなどの1,3-脂肪ジオールは、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、またはそれ以上の収率で生成される。あるいは、または加えて、収率は、約30%以下、約27%以下、約25%以下、または約22%以下である。したがって、収率は、上記の終点のいずれか2つによって境界付けられ得る。例えば、本開示の方法に従って組み換え宿主細胞によって生成される1,3-ジオールなどの1,3-脂肪ジオールの収率は、5%~15%、10%~25%、10%~22%、15%~27%、18%~22%、20%~28%、または20%~30%であり得る。特定の一実施形態において、組み換え宿主細胞によって生成される1,3-ジオールなどの1,3-脂肪ジオールの収率は、約10%~約40%である。別の特定の実施形態において、組み換え宿主細胞によって生成される1,3-ジオールなどの1,3-脂肪ジオールの収率は、約25%~約30%である。収率は、5-ドデセン-1,3-ジオールなどの特定の1,3-脂肪ジオール、または所与の組み換え宿主細胞培養物によって生成される1,3-ジオールの組み合わせを指す。加えて、収率はまた、使用される供給原料にも依存するだろう。
【0170】
いくつかの例示的な実施形態において、例えば、本開示の方法に従って5-ドデセン-1,3-ジオールなどの1,3-脂肪ジオールを生成するように操作された宿主細胞の生産性は、少なくとも100mg/L/時、少なくとも200mg/L/時、少なくとも300mg/L/時、少なくとも400mg/L/時、少なくとも500mg/L/時、少なくとも600mg/L/時、少なくとも700mg/L/時、少なくとも800mg/L/時、少なくとも900mg/L/時、少なくとも1000mg/L/時、少なくとも1100mg/L/時、少なくとも1200mg/L/時、少なくとも1300mg/L/時、少なくとも1400mg/L/時、少なくとも1500mg/L/時、少なくとも1600mg/L/時、少なくとも1700mg/L/時、少なくとも1800mg/L/時、少なくとも1900mg/L/時、少なくとも2000mg/L/時、少なくとも2100mg/L/時、少なくとも2200mg/L/時、少なくとも2300mg/L/時、少なくとも2400mg/L/時、または少なくとも2500mg/L/時である。例えば、本開示の方法に従って組み換え宿主細胞によって生成される1,3-ジオールなどの1,3-脂肪ジオールを生成するように操作された宿主細胞の生産性は、500mg/L/時~2500mg/L/時または700mg/L/時~2000mg/L/時であり得る。一例示的な実施形態において、生産性は、約0.7mg/L/時~約3g/L/時である。本明細書で使用される場合、生産性は、例えば、所与の組み換え宿主細胞培養物によって生成される5-ドデセン-1,3-ジオールなどの特定の1,3-脂肪ジオールを指す。
【0171】
いくつかの例示的な実施形態において、本明細書に考察(上記)される発酵手順において使用される宿主細胞は、哺乳動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、酵母菌細胞、真菌細胞、糸状菌細胞、藻類細胞、ラン藻類細胞、および細菌細胞である。特定の実施形態において、宿主細胞は、エシェリキア、バチルス、シュードモナス(Pseudomonas)、ラクトバチルス、ロドコッカス(Rhodococcus)、シネココッカス(Synechococcus)、シネコシスティス(Synechoystis)、シュードモナス、アルペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、ニューロスポラ(Neurospora)、フザリウム(Fusarium)、フミコーラ(Humicola)、リゾムコール(Rhizomucor)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ピチア(Pichia)、ムコール(Mucor)、マイセリオフトラ(Myceliophtora)、ペニシリウム(Penicillium)、ファネロカエテ(Phanerochaete)、プレオロタス(Pleurotus)、トラメテス(Trametes)、クリロスポリウム(Chrysosporium)、サッカロミセス(Saccharomyces)、ステノトロフォモナス(Stenotrophamonas)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)、またはストレプトミセス(Streptomyces)の属から選択される。他の例示的な実施形態において、宿主細胞は、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)細胞、バチルス・ブレヴィス(Bacillus brevis)細胞、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)細胞、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)細胞、バチルス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)細胞、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)細胞、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)細胞、バチルス・プミリス(Bacillus pumilis)細胞、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)細胞、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)細胞、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)細胞、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞、またはバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)細胞である。他の例示的な実施形態において、宿主細胞は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)細胞である。特定の実施形態において、宿主細胞は、シネココッカス(菌種PCC7002、シネココッカス・エロンガツス(Synechococcus elongatus) PCC7942、シネコシスティス菌種PCC6803、シネココッカス・エロンガツス PCC6301、プロクロロコッカス・マリヌス(Prochlorococcus marinus)CCMP1986(MED4)、アナバエナ・ヴァリビリス(Anabaena variabilis)ATCC29413、ノストック・プンクチフォルメ(Nostoc punctiforme)ATCC29133(PCC73102)、グロエオバクター・ヴィオラセウス(Gloeobacter violaceus)ATCC29082(PCC7421)、ノストック(Nostoc)菌種ATCC27893(PCC7120)、シアノセイス(Cyanothece)菌種PCC7425(29141)、シアノセイス菌種ATCC51442、またはシネココッカス菌種ATCC27264(PCC7002)である。他の例示的な実施形態において、宿主細胞は、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)細胞、トリコデルマ・ヴィリデ(Trichoderma viride)細胞、トリコデルマ・レーゼイ(Trichoderma reesei)細胞、トリコデルマ・ロンギブラキアツム(Trichoderma longibrachiatum)細胞、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)細胞、アスペルギルス・フミガーテス(Aspergillus fumigates)細胞、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)細胞、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)細胞、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)細胞、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)細胞、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)細胞、フミコーラ・ラヌギノーゼ(Humicola lanuginose)細胞、ロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus)細胞、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)細胞、またはムコール・ミエヘイ(Mucor michei)細胞である。他の例示的な実施形態において、宿主細胞は、放線菌(Actinomycetes)細胞である。更に他の例示的な実施形態において、宿主細胞は、ストレプチミセス・リヴィダンス(Streptomyces lividans)細胞またはストレプチミセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)細胞である。他の実施形態において、宿主細胞は、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞である。
【0172】
更に他の例示的な実施形態において、宿主細胞は、真核植物、藻類、ラン藻類、緑色硫黄細菌、緑色非硫黄細菌、紫色硫黄細菌、紫色非硫黄細菌、極限環境微生物、酵母菌、真菌、それらの操作された生物、または合成生物に由来する細胞である。いくつかの例示的な実施形態において、宿主細胞は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、スイッチグラス(Panicum virgatums)、ジャイアントミスカンサス(Miscanthus giganteus)、トウモロコシ(Zea mays)、ボツリオコッカス・ブラウニー(botryococcuse braunii)、コナミドリムシ(Chalamydomonas reinhardtii)、ドナリエラ・サリナ(Dunaliela salina)、サーモシネココッカス・エロンガツス(Thermosynechococcus elongatus)、シネココッカス・エロンガツス、シネココッカス菌種、シネコシスティス菌種、クロロビウム・テピダム(Chlorobium tepidum)、クロロフレクサス・アウランティカス(Chloroflexus auranticus)、クロマチウム・ヴィノサム(Chromatiumm vinosum)、ロドスピリルム・ルブラム(Rhodospirillum rubrum)、ロドバクター・カプスラーツス(Rhodobacter capsulatus)、ロドプシュードモナス・パルスリス(Rhodopseudomonas palusris)、クロストリジウム・ジュンダーリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridiuthermocellum)、またはペニシリウム・クリソゲナム(Pencillium chrysogenum)に由来する細胞である。いくつかの他の例示的な実施形態において、宿主細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastories)、サッカロミセス・セレヴィシエ、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・プチダ、またはザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)に由来する細胞である。依然更なる例示的な実施形態において、宿主細胞は、シネココッカス菌種PCC7002、シネココッカス菌種PCC7942、またはシネコシスティス菌種PCC6803に由来する細胞である。いくつかの例示的な実施形態において、宿主細胞は、CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、Cv1細胞、MDCK細胞、293細胞、3T3細胞、またはPC12細胞である。いくつかの例示的な実施形態において、宿主細胞は、大腸菌細胞である。いくつかの例示的な実施形態において、大腸菌細胞は、B株、C株、K株、またはW株の大腸菌細胞である。
【0173】
d.メタセシス
上記に考察されるように、1,3-脂肪ジオールを生成するように操作された組み換え宿主細胞によって生成される不飽和1,3-脂肪ジオール、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールの二重結合は、主に(Z)配置である。
【0174】
米国特許第9,163,267号は、交差メタセシス形質転換を可能にする条件下で、少なくとも1つのオメガ-7-オレフィン脂肪酸またはその誘導体を含む組成物を交差メタセシス触媒と接触させることによって、オレフィンを生成するための方法を教示しており、少なくとも1つのオメガ-7-オレフィン脂肪酸またはその誘導体は、遺伝子操作された微生物内で生成される。したがって、例示的な実施形態において、本明細書の上記に開示される操作された微生物を使用して作製される、不飽和(Z)-1,3-脂肪ジオールの(E)異性体、例えば、5-ドデセン-1,3-ジオールの(E)異性体を調製するために、米国特許第9,163,267号に開示されるものなどの方法が使用される。当該技術分野において周知であるように、交差メタセシス反応において、(Z)-(E)選択性は、典型的には(E)異性体の形成に偏っている(例えば、Naeimeh Bahri-Laleh et al.,(2011)BeilsteinJ.Org.Chem.7:40-45を参照されたい)。
【0175】
III.1,3-脂肪ジオールの組成物および配合物
バイオ生成物、例えば、節IIa~IId.で上記に考察される操作された微生物を利用して生成される5-ドデセン-1,3-ジオールを含む組成物は、再生可能な供給原から(例えば、再生可能な供給原料由来の単純な炭素供給源から)生成され、したがって、新たな物質の組成物である。これらの新たなバイオ生成物は、二重炭素同位体フィンガープリント法または14C年代測定に基づいて、石油化学由来炭素の有機化合物から区別することができる。加えて、生物由来炭素の特定の供給源(例えば、グルコース対グリセロール)は、当該技術分野において既知である方法によって、二重炭素同位体フィンガープリント法により決定することができる(例えば、米国特許第7,169,588号、WO2016/011430A1などを参照されたい)。
【0176】
以下の実施例は、本発明を限定するためではなく、それを例示するために提供される。
【実施例0177】
実施例1:
以下の実施例は、発酵による5-ドデセン-1,3-ジオールの生成を例示する。脂肪アルコールおよび1,3ジオールの生成のために操作された大腸菌株を使用する発酵によって、5-ドデセン-1,3-ジオールを生成した。その後、結果として得られた発酵ブロスからこれらの1,3-脂肪ジオールを精製した。
【0178】
例えば、WO2016/011430A1に開示されるように、(脂肪酸分解に関与する)FadEの活性を減弱させるように修飾され、かつC12鎖長(FatB1など)に特異的なチオエステラーゼ、EntD(ホスホパンテチエニルトランスフェラーゼ)、CarB(カルボン酸レダクターゼ)、およびAlrA-ADP1(アルコールデヒドロゲナーゼ)を過剰発現するように操作されたMG1655株の派生物であるstNH1282株を、1mLのグリセロール冷凍庫貯蔵物からスペクチノマイシン(115mg/L)を含有するLB培地(100mL)へと植え付け、培養物のODが3~6に達するまで32℃で6~8時間振盪した。
【0179】
2つのシードバイオリアクターを4リットルのシード培地2(表I)を入れて用意し、その後1.0%(体積/体積)でこのLB培養物を植え付け、以下のバイオリアクターパラメータ:NHOH添加でpH=6.9、気流=0.5体積/体積/分、(溶存酸素)DO=飽和の30%、および温度=33℃を使用して培養した。これらのバイオリアクターをグルコースが消耗されるまで一晩(約16時間)運転し、培養物の光学密度(OD)は20~30吸光単位(AU)であった。
【0180】
(表I)バイオリアクターシード培地組成
【0181】
700リットルの(L)生産バイオリアクターに、まず250Lの生産培地(表II)をバッチで入れ、7.5Lのシードバイオリアクター(3体積%(v/v))を植え付けた。このバイオリアクターを、以下のバイオリアクターパラメータ:NHOH添加でpH=6.9、気流=0.5体積/体積/分(v/v/m)、DO=(1バールの背圧で)飽和の15%、および温度=33℃を使用して培養した。
【0182】
ODが10AU超となった時、培地を0.5mMのIPTGにもたらすことによって培養を誘導した。タンク内の初期グルコースの枯渇後、バイオリアクターにグルコース溶液(62重量%(w/w))を10g/L(初期体積)/時の速度で1時間にわたって供給した。タンク内の溶存酸素の上昇によって引き起こされるグルコース枯渇時に、その後の1時間にわたるグルコース供給を開始した。発酵全体を通してこれを続けた。いかなる起泡も、Xiameter1410(登録商標)(Dow Corning)の自動化添加によって制御した。この運転を72時間後に終了し、培養ブロスを遠心分離によって回収した。
【0183】
(表II)生産バイオリアクター培地組成
【0184】
(表III)微量のビタミン溶液
【0185】
(表IV)微量のビタミン溶液
【0186】
実施例2:
以下の実施例は、遠心分離した発酵ブロスからの1,3ジオールの精製を例示する。
【0187】
実施例1に記載の発酵の生成物は、3つの相、つまり、脂肪アルコールおよび1,3ジオールに富む有機相と、消費された発酵培地を含有する水相と、大腸菌バイオマスを含有する固相との混合物であった。遠心分離時、軽い有機相を回収した。その後、アルカリ精製および水分乾燥を使用して、この材料を脱酸性化した。その後、結果として得られた脱酸性化油を蒸留によって分画し、5-ドデカン-1,3-ジオールおよび5-ドデセン-1,3ジオールに富む画分を回収し、プールした。富化プール内の脂肪アルコールおよび1,3ジオールの組成を、本明細書の下記の実施例3に記載のように、かつ表Vに示されるように、ガスクロマトグラフィーおよび質量分析法によって決定した。主な構成成分であった5-ドデカン-1,3ジオールおよび5-ドデセン-1,3ジオールの質量スペクトルをそれぞれ、図1および図2に示す。
【0188】
(表V)1,3-ジオール富化蒸留画分の分析証明
【0189】
実施例3:
以下の実施例は、ガスクロマトグラフィー(GC)および質量分析法(MS)を使用して脂肪アルコールおよび1,3ジオールを分析評価するための一例示的な方法を例示する。
【0190】
試料、例えば、実施例2に記載の1,3ジオール富化蒸留画分を、(N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド(BSTFA)+(1%のトリメチルクロロシラン(TMCS)):トルエンの1:1混合物と反応させて、当該アルコールのシリルエーテルを形成する。炭化水素、メチルエステル、およびアルデヒドは、誘導体化されない。その後、小口径カラムを用いて、高速温度勾配法によって試料を分析する。GCプログラムは、トリデカン酸メチルエステルを内部標準物として使用して、試料の応答係数を標準物の応答係数と比較することによって、試料構成成分の重量パーセントを計算する。実施例2の1,3ジオール富化画分の油分析の結果を、表Vに示す。GCから溶出する各化合物の特定を、その保持時間および質量スペクトルによって特定する。1,3-ジオールの質量スペクトル、および可能性のあるシリルエーテル誘導体化イオンを示す図表スキームを、図1および図2に示す。
【0191】
実施例4:
以下の実施例は、本明細書の下記で実施例5に開示される化学合成経路を介した5-ドデセン-1,3-ジオールの調製に有用な(S)-2-[2-(ベンジルオキシ)エチル]オキシランの合成を例示する。これは、予測に基づく一実施例である。
【0192】
(S)-2-[2-(ベンジルオキシ)エチル]オキシランは、文献の手順を介して調製される(例えば、Cink,R.D.;Forsyth,C.J.J.Org.Chem1995,60,8122を参照されたい)。簡潔には、0℃のTHF(10.6mL)中S-4-(ベンジルオキシ)ブタン-1,2-ジオール(207mg、1.05mmol、CAS番号69985-32-6)の磁気撹拌溶液に、NaH(63mg、2.6mmol)を添加する。結果として得られた混合物を室温まで温め、1時間撹拌し、その後0℃まで冷却してから、N-トシルイミダゾール(237mg、1.07mmol)を三等分に分けて20分間にわたって添加する。この混合物を室温まで温め、45分間撹拌してから、0℃まで再冷却する。NHClおよびEtO(65mL)の飽和水溶液をその後添加し、分離した有機相をHO(25mL)およびブライン(25mL)で洗浄し、合わせた有機層をEtO(2×25mL)で抽出する。その後、合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、回転蒸発によって濃縮する。残渣のクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc5:1)により、所望の生成物が得られることが予想される。
【0193】
実施例5:
以下の実施例は、合成化学アプローチを使用して、(R,Z)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオール(すなわち、(R,Z)-5-ドデセン-1,3-ジオール)を生成するための方法を例示する。これは、予測に基づく一実施例である。
【0194】
THF(0.5M)中-78℃のオクタ-1-イン(1.8当量)の溶液を、ヘキサン中2.5Mのn-BuLi(1.81当量)に添加し、結果として得られた溶液を15分間撹拌してから、-78℃のTHF(0.2M)中(S)-2-[2-(ベンジルオキシ)エチル]オキシラン(1当量)の溶液に添加する。その後、BF・OEt(2当量)を滴加し、結果として得られた混合物を完了まで-78℃で撹拌する。必要に応じて、温度を-30℃まで緩徐に上昇させる。NHClおよびEtOの飽和水溶液をその後添加し、分離した有機相をHOおよびその後ブラインで連続して洗浄し、合わせた水層をEtOで抽出する。その後、合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、回転蒸発によって濃縮する。その後、残渣のクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc)を使用して、(R)-1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-イン-3-オールを得る。
【0195】
その後、(R)-1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-イン-3-オールをヘキサンに取り込んで、フラスコ内に0.2Mの混合物を生成し、これに、新たに調製したリンドラー触媒(Lindlar、H.;Dubuis,R.Org.Synth.1966,46,89を参照して、新たに沈殿させた炭酸カルシウムを使用する)を(R)-1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-イン-3-オールに関して20重量%で添加するか、または炭酸カルシウム上の5%のパラジウム((R)-1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-イン-3-オールに関して10重量%)および新たに蒸留したキノロン((R)-1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-イン-3-オールに関して10重量%)を添加する。フラスコを水素で3回フラッシュし、その後、混合物をH下で撹拌し、H消費によって、および/またはガスクロマトグラフィーによって監視する。反応完了の徴候があったら(例えば、1当量のHが消費された時)、シリカゲルのパッドを通して懸濁液を濾過し、それからパッドをジエチルエーテルで洗浄する。この有機相を濃縮し、クロマトグラフィーによって精製(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc)し、(R,Z)-1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-エン-3-オールが得られることが予想される。[注:ベンジル保護基が通常はリンドラー水素化後も残存することは周知である。しかしながら、これらの条件が(R,Z)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオールをもたらすある程度の脱ベンジル化をもたらす程度まで、これはクロマトグラフィーステップを介して得ることができる]。
【0196】
(R,Z)-1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-エン-3-オールをCHClに取り込んで、2Mの溶液を生成し、0℃で撹拌する。この溶液に、乾燥したシリンジを介して1.3当量の未希釈のヨウ化トリメチルシリルを添加する。反応進行をTLCによって監視する。完了時、4当量のMeOHを緩徐に添加することによって反応を停止させる。NHClおよびEtOの飽和水溶液をその後添加し、分離した有機相をHOおよびブラインで洗浄し、合わせた水層をEtO(2×25mL)で抽出する。その後、合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、回転蒸発によって濃縮する。その後、残渣のクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc)を使用して、(R,Z)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオールを得る。
【0197】
あるいは、ベンジル基の開裂前に、(R,Z)-1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-エン-3-オールの二級アルコールをtert-ブチルジメチルシリル(「TBS」)基によって保護し、その後脱ベンジル化後にTBS基を除去してもよい。したがって、CHCl中(R,Z)-1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-エン-3-オール(1当量)の0.1Mの溶液に、2,6-ルチジン(1.3当量)を添加し、その後混合物を0℃まで冷却し、それからtert-ブチルジメチルシリルトリフレート(1.1当量)を撹拌しながら滴加する。薄層クロマトグラフィーによって監視される完了まで、この溶液を0℃で撹拌する。NHClおよびEtOの飽和水溶液をその後添加し、分離した有機相をHOおよびその後ブラインで連続して洗浄し、合わせた水層をEtOで抽出する。その後、合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、回転蒸発によって濃縮する。その後、残渣のクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc)を使用して、(R,Z)-(1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-エン-3-イル)オキシ)(tert-ブチル)ジメチルシランを得る。
【0198】
(R,Z)-((1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-エン-3-イル)オキシ)(tert-ブチル)ジメチルシランをCHClに取り込んで、2.0Mの溶液を生成し、0℃で撹拌する。この溶液に、乾燥したシリンジを介して1.3当量の未希釈のヨウ化トリメチルシリルを添加する。反応進行を薄層クロマトグラフィーによって監視する。完了時、4当量のMeOHを緩徐に添加することによって反応を停止させる。NHClおよびEtOの飽和水溶液をその後添加し、分離した有機相をHOおよびブラインで洗浄し、合わせた水層をEtO(2×25mL)で抽出する。その後、合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、回転蒸発によって濃縮する。その後、残渣のクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc)を使用して、(R,Z)-3-(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ドデカ-5-エン-1-オールを得る。
【0199】
0℃のTHF中(R,Z)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ドデカ-5-エン-1-オールの2.0Mの撹拌溶液に、フッ化テトラブチルアンモニウム(THF中1.0M、1.2当量)を添加し、それから混合物を室温まで緩徐に温め、反応を完了まで進行させる(薄層クロマトグラフィーによって監視)。完了時、NHClおよびEtOの飽和水溶液を添加し、分離した有機相をHOおよびその後ブラインで連続して洗浄し、合わせた水層をEtOで抽出する。その後、合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、回転蒸発によって濃縮する。その後、残渣のクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc)を使用して、(R,Z)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオールを得る。
【0200】
実施例6:
以下の実施例は、(R,Z)-テトラデカ-7-エン-1,3-ジオールの調製のための一例示的な化学合成方法を例示する。これは、予測に基づく一実施例である。
【0201】
1-ブロモデカ-3-インは、市販の供給源から得ても、BF・OEtの存在下でオクタ-1-インとオキシランとを反応(上記の実施例5を参照されたい)させて、デカ-3-イン-1-オールを生成し、その後(例えば、米国特許第9,353,090号に記載の臭化チオニルとの反応を介して)デカ-3-イン-1-オールを1-ブロモデカ-3-インに変換することを介して得てもよい。具体的には、0℃のCHCl(0.2M)中デカ-3-イン-1-オール(1当量)の撹拌溶液に、新たに蒸留したジメチルホルムアミド(0.5当量)を添加し、その後、臭化チオニル(1.3当量)を添加する。この混合物の撹拌を続け、20℃まで緩徐に温める。(例えば、薄層クロマトグラフィーおよび/またはガスクロマトグラフィーによって示される)反応完了時、EtOおよびその後NHClの飽和水溶液を添加し、分離した有機相をHOおよびブラインで洗浄し、合わせた水層をEtOで抽出する。その後、合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、回転蒸発によって濃縮する。その後、残渣のクロマトグラフィー(シリカゲル;石油エーテル/EtO)を使用して、1-ブロモデカ-3-インを得る。
【0202】
(S)-2-[2-(ベンジルオキシ)エチル]オキシランの0.1Mの室温THF溶液に、CuCN(0.5当量)を添加し、それから混合物を5分間撹拌し、その後-40℃まで冷却する。この撹拌溶液に、THF中3.3当量の-20℃の新たに調製したデカ-3-イン-1-イル臭化マグネシウム(1.0M、1-ブロモデカ-3-インから調製)を添加する。結果として得られた混合物を-40℃で約1時間維持し、その後0℃まで75分間かけて温める。反応完了時、NHClおよびEtOの飽和水溶液をその後添加し、分離した有機相をHOおよびブラインで洗浄し、合わせた水層をEtOで抽出する。その後、合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、回転蒸発によって濃縮する。その後、残渣のクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc)を使用して、(R)-1-(ベンジルオキシ)テトラデカ-7-イン-3-オールを得る。
【0203】
その後、(R)-1-(ベンジルオキシ)テトラデカ-7-イン-3-オールをヘキサンに取り込んで、フラスコ内に0.2Mの混合物を生成し、これに、新たに調製したリンドラー触媒(Lindlar,H.;Dubuis,R.Org.Synth.1966,46,89を参照して、新たに沈殿させた炭酸カルシウムを使用する)を(R)-1-(ベンジルオキシ)テトラデカ-7-イン-3-オールに関して20重量%で添加するか、または炭酸カルシウム上の5%のパラジウム((R)-1-(ベンジルオキシ)テトラデカ-7-イン-3-オールに関して10重量%)および新たに蒸留したキノロン((R)-1-(ベンジルオキシ)テトラデカ-7-イン-3-オールに関して10重量%)を添加する。[注:共溶媒として、またはヘキサンの代わりにEtOAcを利用することによって、溶解性が増強され得る]。フラスコを水素で3回フラッシュし、その後、混合物をH下で撹拌し、H消費によって、および/またはガスクロマトグラフィーによって監視する。反応完了の徴候があったら(例えば、1当量のHが消費された時)、シリカゲルのパッドを通して懸濁液を濾過し、それからパッドをジエチルエーテルで洗浄する。この有機相を濃縮し、クロマトグラフィーによって精製(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc)し、(R,Z)-1-(ベンジルオキシ)テトラデカ-7-エン-3-オールが得られることが予想される。[注:ベンジル保護基が通常リンドラー水素化後も残存することは周知である。しかしながら、これらの条件が(R,Z)-テトラデカ-7-エン-1,3-ジオールをもたらすある程度の脱ベンジル化をもたらす程度まで、これはクロマトグラフィーステップを介して単離することができる]。
【0204】
(R,Z)-1-(ベンジルオキシ)テトラデカ-7-エン-3-オールをCHClに取り込んで、2Mの溶液を生成し、それを0℃で撹拌する。この溶液に、乾燥したシリンジを介して1.5当量のEtN、その後2.3当量の未希釈のヨウ化トリメチルシリルを添加する。反応進行をTLCによって監視する。完了時、4当量のMeOHを緩徐に添加することによって反応を停止させる。その後、NaHSOの水溶液(1.0M)を添加し、混合物を15分間撹拌し、その後、EtOを添加する。その後、分離した有機相をHOおよびブラインで洗浄し、合わせた水層をEtO(2×25mL)で抽出する。その後、合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、回転蒸発によって濃縮する。その後、残渣のクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc)を使用して、(R,Z)-テトラデカ-7-エン-1,3-ジオールを得る。
【0205】
あるいは、(R,Z)-1-(ベンジルオキシ)テトラデカ-7-エン-3-オールの二級アルコールをTBS保護し、その後ベンジル基を脱保護し、最後に本明細書の上記で実施例5に開示される代替手順を介してTBS脱保護してもよい。
【0206】
実施例7:
以下の実施例は、(R,Z)-トリデカ-6-エン-1,3-ジオールの調製のための一例示的な化学合成方法を例示する。これは、予測に基づく一実施例である。
【0207】
ノナ-2-イン-1-イル臭化マグネシウムの生成に使用される1-ブロモノナ-2-イン(CAS番号5921-74-4)は、市販の供給源から得ることができる。
【0208】
(S)-2-[2-(ベンジルオキシ)エチル]オキシランの0.1Mの室温THF溶液に、CuCN(0.5当量)を添加し、それから混合物を5分間撹拌し、その後-40℃まで冷却する。この撹拌溶液に、THF中3.3当量の-20℃の新たに調製したノナ-2-イン-1-イル臭化マグネシウム(1.0M、1-ブロモノナ-2-インから調製)を添加する。結果として得られた混合物を-40℃で約1時間維持し、その後0℃まで75分間かけて温める。反応完了時、NHClおよびEtOの飽和水溶液をその後添加し、分離した有機相をHOおよびブラインで洗浄し、合わせた水層をEtOで抽出する。その後、合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、回転蒸発によって濃縮する。その後、残渣のクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc)を使用して、(R)-1-(ベンジルオキシ)tridec-6-イン-3-オールを得る。
【0209】
(R)-1-(ベンジルオキシ)トリデカ-6-イン-3-オールをヘキサンに取り込んで、フラスコ内に0.2Mの混合物を生成し、これに、新たに調製したリンドラー触媒(Lindlar、H.;Dubuis,R.Org.Synth.1966,46,89を参照して、新たに沈殿させた炭酸カルシウムを使用する)を(R)-1-(ベンジルオキシ)トリデカ-6-イン-3-オールに関して20重量%で添加するか、または炭酸カルシウム上の5%のパラジウム((R)-1-(ベンジルオキシ)トリデカ-6-イン-3-オールに関して10重量%)および新たに蒸留したキノロン((R)-1-(ベンジルオキシ)トリデカ-6-イン-3-オールに関して10重量%)を添加する。[注:共溶媒として、またはヘキサンの代わりにEtOAcを利用することによって、溶解性が増強され得る]。フラスコを水素で3回フラッシュし、その後、混合物をH下で撹拌し、H消費によって、および/またはガスクロマトグラフィーによって監視する。反応完了の徴候があったら(例えば、1当量のHが消費された時)、シリカゲルのパッドを通して懸濁液を濾過し、それからパッドをジエチルエーテルで洗浄する。この有機相を濃縮し、クロマトグラフィーによって精製(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc)し、(R,Z)-1-(ベンジルオキシ)トリデカ-6-エン-3-オールが得られることが予想される。[注:ベンジル保護基が通常リンドラー水素化後も残存することは周知である。しかしながら、これらの条件が(R,Z)-トリデカ-6-エン-1,3-ジオールをもたらすある程度の脱ベンジル化をもたらす程度まで、これはクロマトグラフィーステップを介して単離することができる]。
【0210】
(R,Z)-1-(ベンジルオキシ)トリデカ-6-エン-3-オールをCHClに取り込んで、2Mの溶液を生成し、それを0℃で撹拌する。この溶液に、乾燥したシリンジを介して1.5当量のEtN、その後2.3当量の未希釈のヨウ化トリメチルシリルを添加する。反応進行をTLCによって監視する。完了時、4当量のMeOHを緩徐に添加することによって反応を停止させる。その後、NaHSOの水溶液(1.0M)を添加し、混合物を15分間撹拌し、その後、EtOを添加する。その後、分離した有機相をHOおよびブラインで洗浄し、合わせた水層をEtO(2×25mL)で抽出する。その後、合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、回転蒸発によって濃縮する。その後、残渣のクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc)を使用して、(R,Z)-トリデカ-6-エン-1,3-ジオールを得る。
【0211】
あるいは、(R,Z)-1-(ベンジルオキシ)トリデカ-6-エン-3-オールの二級アルコールをTBS保護し、その後ベンジル基を脱保護し、最後に本明細書の上記で実施例5に開示される代替手順を介してTBS脱保護してもよい。
【0212】
実施例8:
以下の実施例は、(R,E)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオールの化学系合成を例示する。これは、予測に基づく一実施例である。
【0213】
(S)-2-[2-(ベンジルオキシ)エチル]オキシランの0.1Mの室温THF溶液に、CuCN(0.5当量)を添加し、それから混合物を5分間撹拌し、その後-40℃まで冷却する。この撹拌溶液に、3.3当量の-20℃の新たに調製した(E)-オクタ-1-エン-1-イル臭化マグネシウムTHF溶液(1.0M)を添加する。結果として得られた混合物を-40℃で約1時間維持し、その後0℃まで75分間かけて温める。反応完了時、NHClおよびEtOの飽和水溶液をその後添加し、分離した有機相をHOおよびブラインで洗浄し、合わせた水層をEtOで抽出する。その後、合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、回転蒸発によって濃縮する。その後、残渣のクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc)を使用して、(R,E)-1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-エン-3-オールを得る。
【0214】
(R,E)-1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-エン-3-オールをCHClに取り込んで、2Mの溶液を生成し、0℃で撹拌する。この溶液に、乾燥したシリンジを介して1.5当量のEtN、その後2.3当量の未希釈のヨウ化トリメチルシリルを添加する。反応進行をTLCによって監視する。完了時、4当量のMeOHを緩徐に添加することによって反応を停止させる。その後、NaHSOの水溶液(1.0M)を添加し、混合物を15分間撹拌し、その後、EtOを添加する。その後、分離した有機相をHOおよびブラインで洗浄し、合わせた水層をEtO(2×25mL)で抽出する。その後、合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、回転蒸発によって濃縮する。その後、残渣のクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc)を使用して、(R,E)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオールを得る。
【0215】
あるいは、(R,E)-1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-エン-3-オールの二級アルコールをTBS保護し、その後ベンジル基を脱保護し、最後に実施例2に記載の代替手順を介してTBS脱保護してもよい。
【0216】
実施例9.
以下の実施例は、(R)-ドデカン-1,3-ジオールの化学合成を例示する。これは、予測に基づく一実施例である。
【0217】
フラスコに、(R)-1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-イン-3-オール(1当量)、Pd/C(Pd含有量に基づいて0.01当量)、および脱気したEtOAcを充填して、(R)-1-(ベンジルオキシ)ドデカ-5-イン-3-オールに基づく0.1Mの溶液を形成する。フラスコを水素で3回フラッシュし、その後、混合物をH下で撹拌し、ガスクロマトグラフィーおよび/またはNMRによって監視する。完了時、シリカゲルのパッドを通して懸濁液を濾過し、それからパッドをジエチルエーテルで洗浄する。この有機相を濃縮し、クロマトグラフィーによって精製(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc)し、(R)-ドデカン-1,3-ジオールが得られることが予想される。
【0218】
実施例10.グリコシル化(R,Z)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオールの例示的な2ステップ合成。
以下の実施例は、グリコシル化(R,Z)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオールの一例示的な2ステップ合成を例示する。これは、予測に基づく一実施例である。
【0219】
グリコシル化(R,Z)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオールの合成もまた、El-Sukkary et al.“Synthesis and Characterization of some Alkyl Polyglycosides Surfactants”J.Surfact Deterg,2008,11,129-137によって記載の方法に類似した2ステップ方法を介して達成する。簡潔には、El-Sukkaryの参考文献に開示されるプロセスを使用してグリコシル化(R,Z)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオールを調製するために、最初にp-トルエンスルホン酸の存在下でグルコースをブタノールと反応させて、ブチルポリグルコシドを形成する。その後、ここでより有機親和性となったブチルポリグルコシドを高温かつ真空下で長鎖アルコールと反応させて、ブタノールを除去し、故に所望のアルキルポリグルコシドを形成する。この手順の報告された収率は、35~45%であった。本適合において、糖類(例えば、グルコース)を、p-トルエンスルホン酸の存在下でブタノールと反応させて、ブチル糖類を形成し、それからブチル糖類を(R,Z)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオールと反応させて、グリコソル化(glycosolated)(R,Z)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオールを得る。グルコースを糖類として使用する場合、条件の選択に基づいて、モノグルコシル化および/またはビス-グルコシル化(R,Z)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオールが達成され得る。H-NMR、FTIR、およびLC-MSによって、生成物の収率を測定し、生成物を特性評価する。
【0220】
実施例11:
以下の実施例は、(R,Z)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオールの調製のための一例示的な1ステップ方法を例示する。これは、予測に基づく一実施例である。
【0221】
El-Sukkaryの参考文献に例示されるように、グリコシル化長鎖脂肪族ヒドロカルボノール(hydrocarbonol)の直接合成は、出発試薬(例えば、水溶性グルコースおよび有機可溶性1-オクタノール)の不混和性のために、限定されている。この溶解性の問題は、式IA、IB、II、III、および/またはIVの化合物の溶解性を増強し、故に式Vおよび/またはVIの化合物の1ステップ合成を可能にすることによって軽減することができる。
【0222】
一例示的な実施形態において、化合物の水溶性の比較は、それらそれぞれのlog P値の比較によって達成される。当業者であれば、log Pが、等式1によって例示されるn-オクタノールと水との間の化合物の濃度の比の対数であることを理解する。
logP=log([化合物]n-オクタノール/([化合物]) 等式1
【0223】
したがって、より高いlog Pを有する化合物は、親油性がより高くかつ水溶性がより低く、より低いlog P値を有する化合物は、親油性がより低くかつ水溶性がより高い。(R,Z)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオール、(Z)-ドデカ-5-エン-1-オール、およびドデカン-1-オールのlog Pの計算値によって例示されるように、(R,Z)-ドデカ-5-エン-1,3-ジオールは、(Z)-ドデカ-5-エン-1-オールよりも一桁以上水溶性が高く、かつドデカン-1-オールよりもほぼ2桁水溶性が高い。
【0224】
1ステップ反応を介した式Vおよび/またはVIのグリコシル化化合物の合成は、25gの初期グルコース規模(約240mLの合計反応体積)で実行する。脂肪族ジオール(例えば、式IA、IB、II、および/またはIIIの1つ以上の化合物)対グルコースのモル比は6:1に設定し、反応温度は約120℃に設定する。式Vおよび/またはVIの異なるグリコシル化生成物を生成するための反応条件の変更には、p-トルエンスルホン酸の触媒濃度および反応時間の変更が含まれる。H-NMR、FTIR、およびLC-MSによって、生成物の収率を測定し、生成物を特性評価する。
【0225】
当業者にとって明らかであるように、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、上記の態様および実施形態の様々な修正および変更を行うことができる。したがって、そのような修正および変更は、本開示の範囲内である。
図1A
図1B
図2A
図2B
【手続補正書】
【提出日】2022-05-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式V:
(式中、R およびR は、独立して、H、単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類からなる群から選択され、
該単糖類、二糖類、三糖類、または多糖類のそれぞれは、アノマー炭素において結合し、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14である)の構造を有する化合物。
【請求項2】
nが、1または5である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記二重結合が、(Z)配置である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
C-3の前記キラル中心が、R配置を有する、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記単糖類、二糖類、三糖類、または多糖類が、α-グリコシド結合を介してアノマー炭素において結合する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
およびR は、両方がHではない、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
およびR が、いずれもHではない、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
およびR が、異なる単糖類である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
およびR が、同じ単糖類である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
前記単糖類が、ペントース糖またはヘキソース糖である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
(a)前記単糖類が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、およびタロースからなる群より選択されるヘキソース糖であるか;または、(b)前記単糖類が、グルコースである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が、グルコースである、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
(a)前記二糖類、三糖類、または多糖類が、ペントース糖、ヘキソース糖、またはそれらの混合物を含むか;または(b) 前記二糖類、三糖類、または多糖類が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、タロース、およびそれらのいずれかの2つ以上の混合物からなる群より選択されるヘキソース糖を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
が、マルトースまたはイソマルトースである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の化合物を含む、パーソナルケア製品、医薬品、食品、および農業配合物からなる群から選択される用途のための組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本開示の一態様は、式VIの化学式を有する1,3-脂肪ジオール誘導体を提供する。
式中、mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、および18から選択される整数であり、RおよびRは各々独立して、H、単糖類のアノマー炭素において結合した単糖類、二糖類のアノマー炭素において結合した二糖類、アノマー炭素において結合した三糖類、およびアノマー炭素において結合した多糖類からなる群から選択される。一例示的な実施形態において、RおよびRの両方がHというわけではない。別の例示的な実施形態において、RもRもHではない。別の例示的な実施形態において、単糖類は、ペントース糖およびヘキソース糖から選択される。別の例示的な実施形態において、ヘキソース糖は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、またはタロースから選択される。別の例示的な実施形態において、二糖類、三糖類、および多糖類は、ペントース糖、ヘキソース糖、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される糖を含む。別の例示的な実施形態において、ヘキソース糖は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、タロース、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される。別の例示的な実施形態において、RおよびRは、異なる単糖類である。別の例示的な実施形態において、RおよびRは、同じ単糖類である。別の例示的な実施形態において、単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、タロース、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択されるヘキソース糖を含む。別の例示的な実施形態において、単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類は、フラノース糖、ピラノース糖、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物から選択される糖を含む。
[本発明1001]
単一のΔ5二重結合を有し、炭素番号1(C-1)でヒドロキシ基を有し、炭素番号3(C-3)でヒドロキシ基を有する、炭素12個の非分枝状不飽和脂肪ジオールであって、キラル中心が、C-3に存在し、前記脂肪ジオールが、式(II):
の一般化学式を有する、前記脂肪ジオール。
[本発明1002]
前記二重結合が、(Z)配置である、本発明1001の脂肪ジオール。
[本発明1003]
前記二重結合が、(E)配置である、本発明1001の脂肪ジオール。
[本発明1004]
C-3の前記キラル中心が、R配置を有する、本発明1001の脂肪ジオール。
[本発明1005]
C-3の前記キラル中心が、S配置を有する、本発明1001の脂肪ジオール。
[本発明1006]
前記二重結合が、(Z)配置であり、C-3の前記キラル中心が、R配置を有する、本発明1001の脂肪ジオール。
[本発明1007]
単一のΔ9二重結合を有し、炭素番号1(C-1)でヒドロキシ基を有し、炭素番号3(C-3)でヒドロキシ基を有する、炭素16個の非分枝状不飽和脂肪ジオールであって、キラル中心が、C-3に存在し、前記脂肪ジオールが、式(IV):
の化学式を有する、前記脂肪ジオール。
[本発明1008]
前記二重結合が、(Z)配置である、本発明1007の脂肪ジオール。
[本発明1009]
前記二重結合が、(E)配置である、本発明1007の脂肪ジオール。
[本発明1010]
C-3の前記キラル中心が、R配置を有する、本発明1007の脂肪ジオール。
[本発明1011]
C-3の前記キラル中心が、S配置を有する、本発明1007の脂肪ジオール。
[本発明1012]
前記二重結合が、(Z)配置であり、C-3の前記キラル中心が、R配置を有する、本発明1007の脂肪ジオール。