(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092040
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】アプレピタントのエマルジョン製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5377 20060101AFI20220614BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20220614BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220614BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220614BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220614BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220614BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220614BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20220614BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20220614BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220614BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61K9/107
A61K47/24
A61K47/44
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/12
A61K31/573
A61P1/08
A61P25/02 107
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022066236
(22)【出願日】2022-04-13
(62)【分割の表示】P 2019137539の分割
【原出願日】2015-09-18
(31)【優先権主張番号】62/052,948
(32)【優先日】2014-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】314005230
【氏名又は名称】ヘロン セラピューティクス, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Heron Therapeutics, Inc.
【住所又は居所原語表記】4242 Campus Point Court, Suite 200, San Diego, CA 92121, U.S.A
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ビー. オットボーニ
(72)【発明者】
【氏名】ハン ハン
(57)【要約】
【課題】非経口または静脈内投与に適した液体としてアプレピタントを製剤化すること。
【解決手段】本開示は、水相と共に、アプレピタント、界面活性剤または界面活性剤の混合物、コサーファクタント、油を含む安定な医薬組成物を対象とする。組成物は、長期間にわたって安定なままであり、かつ希釈および静脈内投与に適している、水中油エマルジョンの形態である。本開示の医薬アプレピタント組成物は、水相および油相を含む無菌の水中油エマルジョンである。また本開示によって包含されるのは、静脈内投与に適しており、かつ防腐技術を使用した通常の製造手順によって調製することができる、アプレピタントを含む安定なエマルジョンを調製するための方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2014年9月19日に出願された米国仮出願番号第62/052,948号の利益を主張しており、その開示はその全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は一般に、嘔吐(emesis)の処置のためのアプレピタントの静脈内または非経口投与のためのエマルジョン製剤および系に関する。エマルジョン製剤は、長期間安定である。また記載するのは、安定なアプレピタントエマルジョンおよび医薬製剤を調製する方法である。
【背景技術】
【0003】
(背景)
化学名5-[[(2R,3S)-2-[(1R)-1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ]-3-(4-フルオロフェニル)-4-モルホリニル]メチル]-1,2-ジヒドロ-3H-1,2,4-トリアゾール-3-オンを有するアプレピタントは、構造
【化1】
を有する。
【0004】
アプレピタントは、最初および繰返しの一連の高度に催吐性のがん化学療法と関連する急性および遅延性の悪心および嘔吐(vomiting)の予防に適応される。アプレピタントは、経口カプセル剤として米国において現在入手可能であるが、患者が経験する悪心および嘔吐(vomiting)によって、非経口または静脈内投与に適した液体としてアプレピタントを製剤化することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アプレピタントは、乏しい溶解性および乏しい透過性の特徴を有する分子であるため、アプレピタントを含有する液体製剤は、作製することが非常に挑戦的である。この挑戦に取り組む1つの手段は、注射用製剤の調製を可能にし得、かつ一旦投与されるとアプレピタントのバイオアベイラビリティーを増進し得ることの両方である、エマルジョンを調製することである。
【0006】
静脈内エマルジョンは、毛細管の閉塞および塞栓形成をもたらすことなく血流中を循環するのに非常に小さな液滴サイズを有するべきである。これらのサイズ制限は、注射可能な脂質エマルジョン中の小滴サイズ分布のためのUSP33-NF28総則<729>(以下USP<729>と称する)によって類型化され、USP<729>は、(1)500nmまたは0.5μmを超えない平均液滴サイズ、および(2)最終脂質濃度に関わりなく、0.05%を超えない5μm超の脂肪の体積加重百分率(PFAT5)として表される大きな直径の脂肪小滴の集団についての普遍的限度を定義する。
【0007】
エマルジョン製剤は、物理的に安定でなくてはならない。USP<729>において定義される液滴サイズ限度は、指定された保存寿命にわたって適用される。全ての真のエマルジョンは熱力学的に不安定であり、経時的に液滴サイズを増加させる傾向のある一連のプロセスを起こし得る。これらは、2個の液滴が衝突して、単一の新たな液滴を形成するときの直接の液滴癒着、および凝集を含み、ここでは液滴が一緒に接着し、より大きな塊を形成する。凝集は、場合によって、より大きな液滴へのさらなる癒着の前駆体であり得る。これらのプロセスは、「クリーミング」として公知の現象である、容器の表面に達する大きな凝集物をもたらし、最終的に「クラッキング」として公知である、遊離油がエマルジョン表面上に可視であることをもたらし得る。
【0008】
エマルジョン製剤はまた、化学的に安定でなくてはならない。薬物原料は、分解し得る。例えば、親油性薬物は、油相に分配され、これはある程度の保護を与えるが、加水分解による分解は、油-水の界面においてまだ起こり得る。非経口脂肪エマルジョン内の可能性がある化学分解は、トリグリセリドおよびレシチン中に存在する不飽和脂肪酸残基の酸化、ならびにリン脂質の加水分解を含み、遊離脂肪酸(FFA)およびリゾリン脂質の形成がもたらされる。このような分解物はpHを低下させ、次いでこれはさらなる分解を促進し得る。このように、製造の間にpHを制御すべきであり、非経口エマルジョン製剤は、さらなる制御を実現する緩衝剤を含み得る。指定された保存寿命にわたるpHのいかなる低下も、化学分解を示すものであり得る。
【0009】
本出願において、エマルジョン製剤を調製および特徴付けをして、アプレピタントが、静脈内注射のためにエマルジョン中に組み込まれ、かつ製剤の保存寿命の間に安定であり続けることを可能とする製剤およびプロセスを識別した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(簡単な要旨)
下記に記載および例示した下記の態様およびその実施形態は、範囲を限定するのではなく、例証的および例示的であることを意味する。
【0011】
一態様では、油相(油相は、アプレピタント、界面活性剤およびコサーファクタントを含む);ならびに水相(水相は、水、等張化剤およびpH調整剤を含む)を含む安定なエマルジョンを含む、静脈内投与に適した医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、pH調整剤は、緩衝液である。
【0012】
一実施形態では、組成物は、構造的に改変または加水分解されたヤシ油、オリーブ油、ダイズ油、サフラワー油、トリグリセリド、グリセリン酸オクチルおよびグリセリン酸デシル、オレイン酸エチル、リノール酸グリセリル、リノール酸エチル、オレイン酸グリセリル、オレイン酸/リノール酸コレステリルまたはこれらの混合物からなる群から選択される油を含む水中油エマルジョンである。
【0013】
一実施形態では、組成物は、約5重量/重量%(重量/重量%)~15重量/重量%、5重量/重量%~10重量/重量%、7重量/重量%~10重量/重量%または8重量/重量%~9重量/重量%の油を含む。別の実施形態では、油は、ダイズ油である。
【0014】
一実施形態では、組成物は、約10重量/重量%~20重量/重量%、12重量/重量%~17重量/重量%、13重量/重量%~16重量/重量%、13重量/重量%~15重量/重量%、または13重量/重量%~14重量/重量%の乳化剤を含む。別の実施形態では、組成物は、約13重量/重量%、13.5重量/重量%、14重量/重量%、14.5重量/重量%、15重量/重量%、16重量/重量%、17重量/重量%、18重量/重量%、19重量/重量%または20重量/重量%の乳化剤を含む。別の実施形態では、乳化剤は、レシチンである。別の実施形態では、レシチンは、卵黄レシチンである。
【0015】
一実施形態では、組成物は、組成物の一単位における油、乳化剤およびオレエートの重量の合計当たりの油の重量の百分率として表して、約20重量/重量%~50重量/重量%、30重量/重量%~50重量/重量%、35重量/重量%~45重量/重量%、30重量/重量%~45重量/重量%、37重量/重量%~42重量/重量%、38重量/重量%~40重量/重量%、30重量/重量%、31重量/重量%、32重量/重量%、33重量/重量%、34重量/重量%、35重量/重量%、36重量/重量%、37重量/重量%、38重量/重量%、39重量/重量%、40重量/重量%、41重量/重量%、42重量/重量%、43重量/重量%、44重量/重量%、45重量/重量%、46重量/重量%、47重量/重量%、48重量/重量%、49重量/重量%、50重量/重量%の油を含む。別の実施形態では、油は、ダイズ油である。
【0016】
一実施形態では、組成物は、組成物の一単位における油、乳化剤およびオレエートの重量の合計当たりの乳化剤の重量の百分率として表して、約40重量/重量%~80重量/重量%、50重量/重量%~70重量/重量%、55重量/重量%~65重量/重量%、57重量/重量%~63重量/重量%、58~60重量/重量%、35重量/重量%~40重量/重量%、30重量/重量%~40重量/重量%、50重量/重量%、51重量/重量%、52重量/重量%、53重量/重量%、54重量/重量%、55重量/重量%、56重量/重量%、57重量/重量%、58重量/重量%、59重量/重量%、60重量/重量%、61重量/重量%、62重量/重量%、63重量/重量%、64重量/重量%、65重量/重量%、66重量/重量%、67重量/重量%、68重量/重量%、69重量/重量%、70重量/重量%の乳化剤を含む。別の実施形態では、乳化剤は、レシチンである。別の実施形態では、レシチンは、卵黄レシチンである。
【0017】
一実施形態では、組成物中の油とアプレピタントの比(重量%:重量%)は、約11:1~20:1、11:1~15:1、12:1~16:1、12:1~14:1、11:1~15:1、12:1~14:1、12.5:1~13.5:1、13:1~14:1、または12:1~15:1の範囲である。別の実施形態では、組成物中の油とアプレピタントの比(重量%:重量%)は、約11:1~20:1、11:1~15:1、12:1~16:1、12:1~14:1、11:1、11.5:1、12:1、12.5:1、13:1、13.5:1、14:1、14.5:1または15:1、15.5:1、16:1である。
【0018】
一実施形態では、組成物中の乳化剤とアプレピタントの比(重量%:重量%)は、約15:1~30:1、20:1~25:1、18:1~22:1または10:1~30:1の範囲である。別の実施形態では、組成物中の乳化剤:アプレピタントの比(重量%:重量%)は、約15:1、18:1、19:1、20:1、21:1、22:1、23:1、24:1、または25:1である。
【0019】
一実施形態では、組成物中の(乳化剤プラス油)とアプレピタントの比(重量%:重量%)は、約20:1~40:1、25:1~35:1、30:1~35:1の範囲である。別の実施形態では、油:アプレピタントの比は、約25:1、26:1、27:1、28:1、29:1、30:1、31:1、32:1、33:1、34:1、35:1、36:1、37:1、38:1または40:1である。
【0020】
一実施形態では、組成物中の乳化剤と油の比(重量%:重量%)は、約0.5:1~4:1、1:1~2:1、または1.25:1~1.75:1の範囲である。別の実施形態では、組成物中の乳化剤と油の比(重量%:重量%)は、約0.5:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、1.05:1、1.15:1、1.25:1、1.35:1、1.45:1、1.55:1、1.65:1、1.75:1、1.85:1、または1.95:1である。
【0021】
一実施形態では、治療用量は、約1~4g、1.5~3g、1.8~2.8g、2.3~2.8g、1.8~2.3g、1g、1.1g、1.2g、1.3g、1.4g、1.5g、1.6g、1.7g、1.8g、1.9g、2g、2.1g、2.2g、2.3g、2.4g、2.5g、2.6g、2.7g、2.8g、2.9g、3g、3.1g、3.2g、3.3g、3.4g、3.5g、3.6g、3.7g、3.8g、3.9g、4gの乳化剤を含む。別の実施形態では、乳化剤は、レシチンである。別の実施形態では、乳化剤は、卵黄レシチンである。
【0022】
一実施形態では、治療用量は、約0.5~3g、1~2.5g、1~2g、1~1.5g、1.5g~2g、0.5g、0.6g、0.7g、0.8g、0.9g、1g、1.1g、1.2g、1.3g、1.4g、1.5g、1.6g、1.7g、1.8g、1.9g、2g、2.1g、2.2g、2.3g、2.4g、2.5gの油を含む。別の実施形態では、油は、ダイズ油である。
【0023】
一実施形態では、乳化剤は、リン脂質である。別の実施形態では、乳化剤は、卵リン脂質、ダイズリン脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、混合鎖リン脂質、リゾリン脂質、硬化リン脂質、半硬化リン脂質、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0024】
一実施形態では、組成物は、コサーファクタントを含む。別の実施形態では、コサーファクタントは、エタノールである。
【0025】
一実施形態では、組成物は、約0重量/重量%~10重量/重量%、1重量/重量%~9重量/重量%、または2重量/重量%~6重量/重量%のコサーファクタントを含む。別の実施形態では、組成物は、10重量/重量%未満、9重量/重量%未満、8重量/重量%未満、7未満、6重量/重量%未満、5重量/重量%未満、4重量/重量%未満、3重量/重量%未満、2重量/重量%未満または1重量/重量%未満のコサーファクタントを含む。
【0026】
一実施形態では、組成物は、約0重量/重量%~10重量/重量%、1重量/重量%~9重量/重量%、または2重量/重量%~6重量/重量%のエタノールを含む。別の実施形態では、組成物は、10重量/重量%未満、9重量/重量%未満、8重量/重量%未満、7未満、6重量/重量%未満、5重量/重量%未満、4重量/重量%未満、3重量/重量%未満、2重量/重量%未満または1重量/重量%未満のエタノールを含む。
【0027】
一実施形態では、エマルジョンは、等張化剤、pH調整剤、および水を含む水相を含む。
【0028】
一実施形態では、エマルジョンは、浸透圧性薬剤、pH調整剤、および水を含む水相を含む。
【0029】
一実施形態では、エマルジョンは、等張化剤、浸透圧性薬剤、pH調整剤、および水を含む水相を含む。
【0030】
一実施形態では、水相は、緩衝液をさらに含む。
【0031】
一実施形態では、水相は、緩衝液を含むが、緩衝液と異なるpH調整剤を含まない。別の実施形態では、緩衝液は、pH調整剤および緩衝液の両方として機能する。
【0032】
別の実施形態では、水相が緩衝液を含むとき、組成物は、等張化剤を含有しない。
【0033】
1つの別の実施形態では、緩衝液は、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、炭酸緩衝液、コハク酸緩衝液、マレイン酸緩衝液およびホウ酸緩衝液からなる群から選択される。別の実施形態では、緩衝液は、リン酸緩衝食塩水(PBS)、改変PBS(PBS-mod)およびクエン酸緩衝液の群から選択される。
【0034】
一実施形態では、水相は、油相と混合したときに実質的に等張の水中油エマルジョンを実現する緩衝液を含む。
【0035】
一実施形態では、浸透圧性薬剤は、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、グルコース、トレハロース、マルトース、スクロース、ラフィノース、ラクトース、デキストラン、ポリエチレングリコール、またはプロピレングリコールからなる群から選択される。別の実施形態では、浸透圧性薬剤は、無機塩、例えば、塩化ナトリウムおよびこれらの混合物である。
【0036】
一実施形態では、pH調整剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、トリス、リノール酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、炭酸カリウム、リノール酸カリウム、オレイン酸カリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0037】
一実施形態では、組成物は、約6~9、7~9、7.5~9、7.5~8.5、8~9、6~8、7~8、または6、7、8または9のpHを有する。
【0038】
一実施形態では、組成物は、約0重量/重量%~25重量/重量%、2重量/重量%~20重量/重量%、3重量/重量%~15重量/重量%、または3重量/重量%~8重量/重量%の等張化剤を含む。別の実施形態では、組成物は、約1重量/重量%、2重量/重量%、3重量/重量%、4重量/重量%、5重量/重量%、6重量/重量%、7重量/重量%、8重量/重量%、9重量/重量%、または10重量/重量%、11重量/重量%、12重量/重量%、13重量/重量%、14重量/重量%、15重量/重量%、16重量/重量%、17重量/重量%、18重量/重量%、19重量/重量%、または20重量/重量%、21重量/重量%、22重量/重量%、23重量/重量%、24重量/重量%、25重量/重量%の等張化剤を含む。さらに別の実施形態では、組成物は、等張化剤を含まない。
【0039】
一実施形態では、組成物は、約0重量/重量%~25重量/重量%、2重量/重量%~20重量/重量%、3重量/重量%~15重量/重量%、または3重量/重量%~8重量/重量%の浸透圧性薬剤を含む。別の実施形態では、組成物は、約1重量/重量%、2重量/重量%、3重量/重量%、4重量/重量%、5重量/重量%、6重量/重量%、7重量/重量%、8重量/重量%、9重量/重量%、または10重量/重量%、11重量/重量%、12重量/重量%、13重量/重量%、14重量/重量%、15重量/重量%、16重量/重量%、17重量/重量%、18重量/重量%、19重量/重量%、または20重量/重量%、21重量/重量%、22重量/重量%、23重量/重量%、24重量/重量%、25重量/重量%の浸透圧性薬剤を含む。さらに別の実施形態では、組成物は、浸透圧性薬剤を含まない。
【0040】
一実施形態では、水相は、組成物の用量中にリン酸デキサメタゾンナトリウムの用量を含む。別の実施形態では、リン酸デキサメタゾンナトリウムの用量は、約0.5mg~30mg、0.5mg~25mg、1mg~20mg、10mg~20mg、または3mg~16mgの範囲である。別の実施形態では、リン酸デキサメタゾンナトリウムの用量は、組成物の用量中に約9mgまたは16mgである。
【0041】
一実施形態では、油相は、組成物の用量中にデキサメタゾンの用量を含む。別の実施形態では、デキサメタゾンの用量は、約0.5mg~30mg、0.5mg~20mg、1mg~18mg、10mg~20mg、または3mg~16mgの範囲である。別の実施形態では、デキサメタゾンの用量は、組成物の用量中に約8mgまたは12mgである。
【0042】
一実施形態では、エマルジョンは、約0.002重量/重量%~0.2重量/重量%、0.003重量/重量%~0.16重量/重量%、0.02重量/重量%~0.1重量/重量%のリン酸デキサメタゾンナトリウムを含む。
【0043】
一実施形態では、組成物は、動的光散乱(DLS)によって決定するように、約50nm~1000nm、50~500nm、50nm~400nm、50nm~300nm、50nm~200nmまたは50nm~100nmの強度加重平均粒子サイズを維持する安定な系である。別の実施形態では、平均液滴サイズは、室温にて少なくとも1カ月、3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、2年または3年の期間、500nm超に維持される。別の実施形態では、平均液滴サイズは、5℃にて少なくとも1カ月、3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、2年または3年の期間、500nm超に維持される。
【0044】
別の態様では、アプレピタントを含み、かつ非経口投与に適したエマルジョンを調製する方法を提供する。
【0045】
一実施形態では、投与は、静脈内投与である。
【0046】
一実施形態では、方法は、a)アプレピタントおよび乳化剤をエタノールに溶解し、次いで、油中に加えることによって油相を調製し、油をベースとする混合物を生じさせることと;b)水を、任意選択で等張化剤と、任意選択で浸透圧性薬剤と、および任意選択でpH調節物質と、および任意選択で緩衝液と混合することによって水相を調製し、水性混合物を生じさせることと;c)油をベースとする混合物と水性混合物とを合わせ、これを高速均質化に供し、粗エマルジョンを生じさせることと;d)粗エマルジョンを高圧均質化に供し、微細エマルジョンを生じさせることとを含む。
【0047】
一実施形態では、油相を調製することは、アプレピタントおよび乳化剤と共にデキサメタゾンをエタノールに溶解することをさらに含む。
【0048】
一実施形態では、方法は、a)アプレピタントおよび乳化剤をエタノールおよび油に溶解することによって油相を調製し、油をベースとする混合物を生じさせることと;b)水を、任意選択で等張化剤と、任意選択で浸透圧性薬剤と、および任意選択でpH調節物質と、および任意選択で緩衝液と混合することによって水相を調製し、水性混合物を生じさせることと;c)油をベースとする混合物と水性混合物とを合わせ、これを高速均質化に供し、粗エマルジョンを生じさせることと;d)粗エマルジョンを高圧均質化に供し、微細エマルジョンを生じさせることとを含む。
【0049】
一実施形態では、油相を調製することは、アプレピタントおよび乳化剤と共にデキサメタゾンをエタノールおよび油に溶解することをさらに含む。
【0050】
一実施形態では、水相を調製することは、デキサメタゾンと水、等張化剤、pH調節物質、および緩衝液とを混合することをさらに含む。別の実施形態では、デキサメタゾンは、デキサメタゾンの塩である。さらに別の実施形態では、デキサメタゾンは、リン酸デキサメタゾンナトリウムである。
【0051】
一実施形態では、方法は、微細エマルジョンを滅菌し、最終エマルジョンを生じさせることをさらに含み、最終エマルジョンは、対象への注射に適している。
【0052】
一実施形態では、エタノールへの溶解を、約25℃~80℃、40℃~75℃、60℃~70℃、または約25℃、35℃、45℃、60℃、65℃、70℃または75℃の温度で行う。
【0053】
一実施形態では、高速均質化を、約2,000rpm(毎分回転数)~25,000rpmのスピードで行う。別の実施形態では、高速均質化を、約20,000rpmのスピードで行う。さらに別の実施形態では、高速均質化を、約3600rpmのスピードで行う。
【0054】
一実施形態では、高速均質化を、約0.5分~1時間、1分~45分、または1分~30分の期間行う。別の実施形態では、高速均質化を、約20~40分の期間または約30分間行う。
【0055】
一実施形態では、高速均質化を、約10℃~約60℃、20℃~約60℃、約30℃~約50℃、または約35℃~約45℃にて行う。別の実施形態では、高速均質化を、約25℃、30℃、35℃、40℃、45℃または50℃にて行う。
【0056】
一実施形態では、高圧均質化を、約10,000psi(ポンド/平方インチ)~30,000psiの圧力で行う。別の実施形態では、高圧均質化を、約20,000psiの圧力で行う。
【0057】
一実施形態では、高圧均質化を、冷却しながら行う。別の実施形態では、高圧均質化を、プロセスの出口におけるエマルジョンの温度を期間内で約0℃~約60℃、約10℃~約40℃、約20℃~約30℃に、または約20℃、25℃もしくは30℃にするのに十分に冷却しながら行う。
【0058】
一実施形態では、微細エマルジョンを滅菌することは、ナイロンフィルターを通して微細エマルジョンを濾過することを含む。別の実施形態では、ナイロンフィルターは、Posidyne(登録商標)フィルターである。さらに別の実施形態では、フィルターは、約0.2μm(マイクロメートル)の孔径を有する。
【0059】
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
アプレピタント;
11重量/重量%~15重量/重量%の乳化剤;
油;
アルコールである共乳化剤;
張性調節物質;
pH調節物質;および
水
を含む、注射可能なエマルジョンであって、
前記エマルジョンのpHは、約7.5~9.0の範囲である、エマルジョン。
(項目2)
前記エマルジョンの油相中の前記油と前記アプレピタントの比が、約10:1~15:1(重量/重量%)の範囲である、項目1に記載のエマルジョン。
(項目3)
前記エマルジョンの油相中の前記乳化剤と前記アプレピタントの比が、約15:1~30:1(重量/重量%)の範囲である、項目1に記載のエマルジョン。
(項目4)
乳化剤と油の比が、約1:1~3:1(重量/重量%)の範囲である、項目1に記載のエマルジョン。
(項目5)
前記乳化剤が、リン脂質である、項目4に記載のエマルジョン。
(項目6)
リン酸デキサメタゾンナトリウムをさらに含み、前記リン酸デキサメタゾンナトリウムが、水相中に存在する、先行する項目のいずれか一項に記載のエマルジョン。
(項目7)
前記乳化剤が、卵レシチンである、先行する項目のいずれか一項に記載のエマルジョン。
(項目8)
緩衝液をさらに含む、先行する項目のいずれか一項に記載のエマルジョン。
(項目9)
前記pH調節物質が、オレイン酸ナトリウムである、先行する項目のいずれか一項に記載のエマルジョン。
(項目10)
前記緩衝液が、トリス緩衝液である、先行する項目のいずれか一項に記載のエマルジョン。
(項目11)
前記油が、ダイズ油である、先行する項目のいずれか一項に記載のエマルジョン。
(項目12)
前記アルコールが、エタノールである、先行する項目のいずれか一項に記載のエマルジョン。
(項目13)
前記エタノールが、10重量/重量%未満で存在する、先行する項目のいずれか一項に記載のエマルジョン。
(項目14)
医薬エマルジョンを調製する方法であって、
アプレピタント、乳化剤、およびアルコールと油とを合わせ、油相を生じさせることと;水、等張化剤、pH調節物質、および任意選択で緩衝液を合わせ、水相を生じさせることと;
前記油相を前記水相とホモジナイズし、粗大エマルジョンプレミックスを生じさせることと;
マイクロフルイダイザーを使用して前記粗大エマルジョンプレミックスを10,000~30,000psiの間の圧力でホモジナイズし、前記医薬エマルジョンを生じさせることと;
前記医薬エマルジョンを滅菌することと
を含む、方法。
(項目15)
前記粗大エマルジョンプレミックスをホモジナイズすることが、前記マイクロフルイダイザーを通す4~15回の通過を含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記滅菌することが、約0.2ミクロンの孔径を有するフィルターを通して前記医薬エマルジョンを通過させることを含む、項目14または15に記載の方法。
(項目17)
除菌濾過の前に、リン酸デキサメタゾンナトリウムの溶液を微細エマルジョンに加えることをさらに含む、項目14、15、または16に記載の方法。
本組成物および方法などのさらなる実施形態は、以下の説明、図面、実施例、および特許請求の範囲から明らかである。上記および下記の記載から認識することができるように、本明細書に記載されているそれぞれおよび全ての特徴、ならびにこのような特徴の2つまたはそれ超のそれぞれおよび全ての組合せは、本開示の範囲内に含まれるが、ただし、このような組合せに含まれる特徴は、相互に相反するものでない。さらに、任意の特徴、または特徴の組合せは、本発明の任意の実施形態から特に除外し得る。本発明のさらなる態様および利点を、特に、添付の実施例および図面と併せて考慮したとき、以下の説明および特許請求の範囲において記載する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】
図1は、凍結融解サイクルの後の実施例1、2、3および6からの試料の顕微鏡像を提供する。A:実施例1、B:実施例2、C:実施例3、D:実施例6
【0061】
【
図2】
図2は、ホスアプレピタント溶液(黒丸)または本明細書に記載のように調製されたアプレピタントエマルジョン(黒三角)の注射の後の、アプレピタントの血漿レベルを示す。
【0062】
【
図3】
図3は、ホスアプレピタントの溶液(黒三角)の注射の後の、または本明細書に記載のように調製されたアプレピタントおよびデキサメタゾンを含有するエマルジョン(黒丸)の注射の後の、アプレピタントの血漿レベルを示す。
【0063】
【
図4】
図4は、リン酸デキサメタゾンナトリウムの溶液(黒丸)の注射の後の、または本明細書に記載のように調製されたアプレピタントおよびデキサメタゾンを含有するエマルジョン(黒三角)の注射の後の、デキサメタゾンの血漿レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
(詳細な説明)
様々な態様をこれから本明細書の下記でより十分に記載する。しかし、このような態様は多くの異なる形態で具体化してもよく、本明細書において記載する実施形態を限定するものとして解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が十分および完全であるように提供され、その範囲を当業者に十分に伝える。
【0065】
I.定義
本明細書において使用するように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈によって明らかにそれ以外のことの指示がない限り、複数の参照対象を含む。このように、例えば、「ポリマー」への言及は、単一のポリマー、および同じまたは異なるポリマーの2つまたはそれ超を含み、「賦形剤」への言及は、単一の賦形剤、および同じまたは異なる賦形剤の2つまたはそれ超などを含む。
【0066】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限および下限の間のそれぞれの介在する値、ならびにその記述した範囲中の任意の他の記述した値または介在する値は、本開示内に包含されることが意図される。例えば、1μm~8μmの範囲が記述される場合、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、および7μm、ならびに1μmと等しいかもしくはそれ超の値の範囲、および8μmと等しいかもしくはこれ未満の値の範囲をまた明示的に開示することが意図される。本明細書において使用する場合、用語「約」は、修飾される値の±5%、±10%、または±20%を意味する。
【0067】
用語「エマルジョン」または「エマルジョン製剤」は、液滴の形態の2種の不混和性液体のコロイド状分散物を意味し、その直径は、一般に、10ナノメートル~100ミクロンの間である。エマルジョンは、連続相が水溶液である場合、シンボルO/W(水中油)によって、および連続相が油である場合、W/O(油中水)によって示される。エマルジョンの他の例、例えば、O/W/O(油中水中油)は、連続油相中に分散した水性液滴内に含有される油滴を含む。
【0068】
「物理的に安定な」エマルジョンは、(1)500nmまたは0.5μmを超えない平均液滴サイズ、および(2)5℃または室温で指定された貯蔵期間の間、0.05%を超えない、5μm超の脂肪の体積加重百分率(PFAT5)として表される大きな直径の脂肪小滴の集団についての普遍的限度を定義する、USP<729>下の判断基準を満たす。さらに、物理的に安定なエマルジョンは、5℃または室温での指定された期間の間の貯蔵時に、可視のアプレピタント結晶を有さない。結晶は、4×~10×の拡大率で見たときに可視であると考えられる。エマルジョンは、USP<729>下の判断基準を満たす場合、物理的に安定であり、アプレピタント結晶は5℃または室温での、少なくとも1週間、2週間、4週間、1カ月、2カ月、6カ月、1年もしくは2年の間またはそれと等しい期間の貯蔵時に、可視ではない。
【0069】
本開示の「化学的に安定な」エマルジョンは、活性構成要素(すなわち、送達される薬物)の濃度が適当な貯蔵条件下で少なくとも1カ月間、約20%超変化しないものである。ある特定の実施形態では、本開示のエマルジョン中のアプレピタント濃度は、適当な貯蔵条件下で少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、9カ月、12カ月、15カ月、18カ月、または24カ月間、約5%超、10%超、15%超または20%超変化しない。
【0070】
一例では、本開示の安定なエマルジョン組成物は、広範囲の温度、例えば、-20℃~40℃にわたり安定である。本開示の組成物は、約5℃~約25℃で貯蔵し得る。
【0071】
油中水エマルジョン中の「油相」は、水相中でこれらの溶解限度を個々に超える製剤中の全ての構成要素を指す。これらは蒸留水中で1%未満の溶解度を一般に有する材料であるが、水相構成要素、例えば、塩は、特定の油の溶解度を減少させ、油相中へのこれらの分割をもたらし得る。油相は、油中水エマルジョンの非水性部分を指す。
【0072】
油中水エマルジョン中の「水相」(「Aqueous phase」または「water phase」)は、存在する水、および水溶性である、すなわち、水中でのこれらの溶解限度を超えていない任意の構成要素を指す。「水相」は、本明細書において使用する場合、薬学的に許容される添加剤、例えば、酸性化剤、アルカリ化剤、緩衝剤、キレート剤、錯化剤および可溶化剤、抗酸化剤および抗微生物保存剤、保湿剤、懸濁化剤および/または粘度調節剤、等張性および湿潤性または他の生体適合性材料を含有することができる水含有液体を含む。水相は、油中水エマルジョンの非油部分を指す。
【0073】
「乳化剤」は、個々の油相および水相への、注射可能なエマルジョンの分離を阻止する化合物を指す。本開示において有用な乳化剤は一般に、(1)本開示の安定なエマルジョンの他の成分と適合性であり、(2)エマルジョン中に含有される薬物の安定性または有効性を妨げず、(3)調製物中で安定であり、劣化せず、かつ(4)無毒性である。
【0074】
適切な乳化剤には、これらに限定されないが、プロピレングリコールモノ-およびジ-脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーおよびブロックコポリマー、脂肪アルコールスルフェートの塩、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレン-グリコールグリセロールエーテルのエステル(esters of polyethylene-glycol glycerol ethers)、油およびワックスをベースとする乳化剤、モノステアリン酸グリセロール、グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステルおよびリン脂質が含まれる。
【0075】
「リン脂質」は、2個の脂肪酸および1個のリン酸イオンを有する、グリセロールのトリエステルを指す。本発明において有用な例示的なリン脂質には、これらに限定されないが、ホスファチジルコリン(phosphatidyl chlorine)、レシチン(リン酸化ジアシルグリセリドのコリンエステルの混合物)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、約4~約22個の炭素原子、より一般に約10~約18個の炭素原子および様々な飽和度を有するホスファチジン酸が含まれる。リン脂質は、その脂肪酸アシル側鎖として脂肪酸の任意の組合せを有することができ、例えば、リン脂質は、飽和脂肪酸、例えば、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イコサン酸(C20飽和脂肪酸);ナトリウムベヘン酸(sodium behenic acid)、または不飽和脂肪酸、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、ナトリウムリノール酸(sodium linoleic acid)、アルファリノレン酸、ナトリウムアラキドン酸(sodium arachidonic acid)、エイコサペンタン酸などを有することができる。リン脂質上の2個の脂肪酸アシル残基は同じであり得るか、またはこれらは異なる脂肪酸であり得る。薬物送達組成物のリン脂質構成要素は、単一のリン脂質またはいくつかのリン脂質の混合物でよい。リン脂質は、選択した投与経路について許容されるべきである。
【0076】
一態様では、本発明において乳化剤として使用されるリン脂質は、天然起源からの天然に生じるリン脂質である。例えば、天然に生じるレシチンは、ホスファチジルコリンと一般に称されるリン酸のコリンエステルに連結したステアリン酸、パルミチン酸、およびオレイン酸のジグリセリドの混合物であり、種々の源、例えば、卵および大豆から得ることができる。ダイズレシチンおよび卵レシチン(これらの化合物の硬化バージョンを含む)は、様々な組成物において特徴付けられてきており、一般に安全であると認識され、組み合わせた乳化および可溶化特性を有し、大部分の合成界面活性剤より急速に無害の物質に崩壊する傾向がある。
【0077】
用語「レシチン」は、アセトン-不溶性ホスファチドの複合混合物を含み、これらのうちホスファチジルコリンは、重大な構成要素である。レシチンという用語はまた、ホスファチジルコリンと同義語として使用される。有用なレシチンには、これらに限定されないが、卵黄、卵、ダイズ、およびトウモロコシに由来するレシチンが含まれる。一実施形態では、乳化剤は、レシチン、例えば、卵黄に由来するレシチンである。卵レシチンおよび卵黄に由来するレシチンという用語は、全体にわたって互換的に使用される。本明細書に記載されている組成物は好ましくは、乳化剤としてレシチンを含む。
【0078】
本開示のエマルジョン中のリン脂質の重量による量は、約10重量/重量%~約20重量/重量%、11重量/重量%~19重量/重量%、11重量/重量%~15重量/重量%、12重量/重量%~13重量/重量%、13重量/重量%~14重量/重量%、13重量/重量%~20重量/重量%、または12重量/重量%~18重量/重量%の範囲内であり得る。ある特定の実施形態では、エマルジョン中のリン脂質は、重量による濃度で、約11重量/重量%、12重量/重量%、12.5重量/重量%、13重量/重量%、13.5重量/重量%、14重量/重量%、14.5重量/重量%、または15重量/重量%である。
【0079】
「油」は、例えば、脂肪族またはワックスベース炭化水素(wax-based hydrocarbons)、芳香族炭化水素または混合脂肪族および芳香族炭化水素を含む、鉱物、野菜、動物、エキスまたは合成起源の有機液体を指す。
【0080】
用語「緩衝液」または「緩衝化された」は、本明細書において使用する場合、そのpHが酸または塩基の添加によって僅かにのみ変化する、弱酸およびその共役塩基の両方を含有する溶液を意味する。本明細書において使用する場合、語句「緩衝剤」は、溶液中でそれが含まれることによって緩衝化された溶液が実現される種を意味する。
【0081】
用語「治療剤」は、生物活性を有する任意の天然または合成化合物を説明する。
【0082】
II.アプレピタントエマルジョンおよび作製方法
本開示は、水相と共に、アプレピタント、界面活性剤または界面活性剤の混合物、コサーファクタント、油を含む安定な医薬組成物を対象とする。組成物は、長期間にわたって安定なままであり、かつ希釈および静脈内投与に適している、水中油エマルジョンの形態である。
【0083】
活性剤、例えば、アプレピタントは、乳化剤、共乳化剤および油と共に油相中に存在する。次いで、油相を水および下記のような等張化剤を含む水相と合わせ、安定なエマルジョンを生じさせる。油相を水相と合わせる前に、油相は、約13:1の油:アプレピタントの比を有する。この比の使用は、驚くことに、水相と混合したときに、油相が約12:1未満もしくは11:1未満、および/または約15:1超、20:1超、もしくは30:1超の油:アプレピタントの比を含有するエマルジョンと比較すると、より安定であるエマルジョンを生成したことが見出された。
【0084】
さらに、本組成物はまた、油相中の乳化剤の量が油の量より多いとき、好ましい安定性特性を有する。例えば、油相は、約5:1~1:1、3:1~1:1の乳化剤:油の比または約1.5:1の比を含有する。乳化剤:油のこのような比は、驚くことに最終エマルジョンに対してより大きな安定性を与えることが見出されたが、これは患者への注射に適している。例えば、約1.5:1の油相中のリン脂質:油の比を有するアプレピタントエマルジョンは、同様のアプレピタントエマルジョンより大きな安定性を有することが見出されたが、油相は、約0.01:1、0.1:1、0.5:1または0.9:1のリン脂質:油の比を含む。
【0085】
1.油相
油(疎水性)相は、油を含む。トリグリセリドは、本明細書に記載されている組成物中の使用のための例示的な油である。特定の実施形態では、油は、植物性油であるか、またはこれを含む。「植物性油」は、植物の種または木の実に由来する油を指す。植物性油は典型的には、3個の脂肪酸(通常、油の源に応じて数および位置が様々な不飽和結合を伴う、長さが14~22個の炭素)がグリセロール上の3個のヒドロキシル基とエステル結合を形成するときに形成される「長鎖トリグリセリド」(LCT)である。ある特定の実施形態では、高度精製グレード(また「スーパーリファインド」と称される)の植物性油を使用して、水中油エマルジョンの安全性および安定性を確実にする。特定の実施形態では、植物性油の制御された水素付加によって生成された水素添加植物性油を使用し得る。例示的な植物性油には、これらに限定されないが、扁桃油、ババス油、クロフサスグリ種子油、ルリヂサ油、キャノーラ油、ヒマシ油、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、パーム油、パーム核油、ナタネ油、サフラワー油、ダイズ油、ヒマワリ油およびゴマ油が含まれる。これらの油の硬化および/または半硬化形態をまた使用し得る。特定の実施形態では、油は、サフラワー油、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油および/もしくはダイズ油であるか、またはこれらを含む。より特定の実施形態では、油は、サフラワー油、および/もしくはダイズ油であるか、またはこれらを含む。油は、エマルジョン中で約9重量/重量%で存在するが、これは約5重量/重量%~12重量/重量%の間または9重量/重量%~10重量/重量%の間で変化し得る。
【0086】
アプレピタントを、乳化剤、例えば、リン脂質乳化剤と最初に混合する。下記の実施例1、2、3および6は、卵レシチンを使用して作製したエマルジョンについて記載する。リン脂質(phophoplipid)乳化剤を、エマルジョンの10重量/重量%超、11重量/重量%超、12重量/重量%超または13重量/重量%超であるが、エマルジョンの15重量/重量%未満、17重量/重量%未満または20重量/重量%未満の濃度まで加える。
【0087】
アプレピタントおよび乳化剤の混合物を、共乳化剤、例えば、短鎖アルコール(1~6個の炭素)に溶解する。下記の実施例1、2、3および6において、共乳化剤は、エタノールである。アプレピタントおよび乳化剤が溶解するまで、混合物を、高温で、例えば、約60℃もしくは70℃で、または約50℃もしくは70℃の範囲内の温度を上げた状態で混合する。次いで、この混合物を、高温で、例えば、約60℃で再び混合することによって、油、例えば、ダイズ油と合わせ、アプレピタントを含有する油相を生成する。過剰な共乳化剤は、ロータリーエバポレーターにおいて用いられるものなどの加熱、または減圧、またはこれらの組合せを含む標準的な蒸発方法によって除去することができる。このプロセスにおいて、調製スケール、任意の減圧、および加熱時間に応じて、エタノールの約10%~100%、20%~95%、80%~100%、90%~100%、または95%~100%が蒸発する。
【0088】
一実施形態では、アプレピタントおよび乳化剤を、共乳化剤および油に溶解する。下記の実施例1、2、3および6において、共乳化剤は、エタノールであり、油は、ダイズ油であるが、方法は、本明細書に記載されている共乳化剤および油の任意の1つまたは複数と共に使用することができる。少なくともアプレピタントおよび乳化剤が溶解して、アプレピタントを含有する油相を生成するまで、混合物を、高温で、例えば、約60℃もしくは70℃で、または約50℃もしくは70℃の範囲内の高温で混合する。アプレピタント、乳化剤、共乳化剤および油の混合物を、約15分~120分、約15分~45分、約30分~90分、または約15分間、30分間もしくは50分間、高温で混合する。
【0089】
過剰な共乳化剤は、ロータリーエバポレーターにおいて加熱、または減圧、またはこれらの組合せを含む標準的な蒸発方法によって除去することができる。このプロセスの間、調製スケール、任意の減圧、および加熱時間に応じて、約10%~100%、20%~95%、80%~100%、90%~100%、または95%~100%のエタノールが蒸発する。
【0090】
一実施形態では、デキサメタゾンを、アプレピタント、乳化剤および油を含む油相に加え、水相との混合の前にアプレピタントおよびデキサメタゾンの両方を含む油相を生じさせ、注射のための医薬エマルジョンを生じさせる。デキサメタゾンを油相に加え、約12mgの用量のデキサメタゾンを提供する。
【0091】
2.水相
アプレピタントエマルジョンの水相は、水、およびこれらに限定されないがスクロース、マンニトール、グリセリンもしくはデキストロースまたはこれらの混合物などのものを含む等張化剤の混合物であり得る。水相中にまた含まれるのは、pH調節剤である。オレイン酸ナトリウムが、所望のエマルジョン製剤に応じてエマルジョンのpHを約6~9に調整するために、下記の実施例1、2および3において使用される。水と、等張化剤、およびpH調節剤としてのオレイン酸ナトリウムとを混合することによって、水相を生成する。使用し得る他のpH調節物質には、これらに限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、トリス、炭酸ナトリウムおよびリノール酸ナトリウムが含まれる。使用されるpH調節物質は、エマルジョンのpHを約6~9、7~8、または約6、7、8もしくは9の好ましいpHに調整するのに有効である。水相は、室温にて混合することによって容易に形成することができる。
【0092】
水相は、エマルジョン製剤の安定性を促進する緩衝剤をさらに含有し得る。薬物原料は、分解し得る。例えば、親油性薬物は、油相に分配され、これはある程度の保護を与えるが、加水分解による分解は、油-水の界面においてまだ起こり得る。非経口脂肪エマルジョン内の可能性がある化学分解は、トリグリセリドおよびレシチン中に存在する不飽和脂肪酸残基の酸化、ならびにリン脂質の加水分解を含み、遊離脂肪酸(FFA)およびリゾリン脂質の形成がもたらされる。このような分解物はpHを低下させ、次いでこれはさらなる分解を促進し得る。このように、製造の間にpHを制御すべきであり、エマルジョン製剤は、さらなる制御を実現する緩衝剤を含み得る。指定された保存寿命にわたるpHのいかなる低下も、化学分解を示すものであり得る。適切な緩衝液は当業者には周知であり、これらに限定されないが、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、炭酸緩衝液、コハク酸緩衝液、マレイン酸緩衝液またはホウ酸緩衝液が含まれる。トリス緩衝液を下記の実施例11において使用して、エマルジョンのpHを約8~9に調整する。特定の実施形態では、緩衝液は、リン酸緩衝食塩水(PBS)、改変PBS(PBS-mod)およびクエン酸緩衝液の群から選択される。特定の実施形態では、水相は、油相と混合したときに実質的に等張の水中油エマルジョンを実現する緩衝液を含む。
【0093】
現在記載されている組成物のために有用な緩衝剤には、これらに限定されないが、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、炭酸緩衝液、コハク酸緩衝液、マレイン酸緩衝液またはホウ酸緩衝液が含まれる。特定の実施形態では、緩衝液は、リン酸緩衝食塩水(PBS)、改変PBS(PBS-mod)およびクエン酸緩衝液の群から選択される。特定の実施形態では、水相は、油相と混合したときに実質的に等張の水中油エマルジョンを実現する緩衝液を含む。一部の実施形態では、水相が緩衝剤を含有するとき、水相は、等張化剤を含まない。また、緩衝液が水相に加えられるとき、pH調整剤を、水相に加えなくてもよい。緩衝液を水相に加えることができるか、または緩衝液をエマルジョンに加えることができることが理解される。
【0094】
一部の実施形態では、水相は、等張化剤、例えば、スクロースを含有する。等張化剤を、約0%~30%、0%~25%または約20%の等張化剤(重量/重量)を有する水相に加える。水相中に約20%重量/重量のスクロースを含有する組成物は、凍結融解試験によって決定して特に安定であったエマルジョンを生成したことが驚くことに見出された。したがって、好ましい実施形態は、水相が約10重量/重量%未満、約15重量/重量%未満もしくは約20重量/重量%未満の等張化剤、または約30重量/重量%超、約40重量/重量%超もしくは約50重量/重量%超の等張化剤を含有するエマルジョンと比較して、水相がより大きな化学的および/または物理的安定性を与える等張化剤を含むエマルジョンを含む。
【0095】
一実施形態では、水相は、リン酸デキサメタゾンナトリウム(また、「リン酸デキサメタゾン」と称される)をさらに含む。リン酸デキサメタゾンナトリウムは、水に溶けやすいコルチコステロイドである。リン酸デキサメタゾンナトリウムについての1日投与量は、疾患または障害の重症度に応じて、約0.5mg~20mg、より好ましくは、約14mg~18mgまたは16mgで変化する。したがって、デキサメタゾンをさらに含むアプレピタントエマルジョンは、水相中にリン酸デキサメタゾンナトリウムを含有し得る。したがって、静脈内投与に適したエマルジョンの水相は、約0.5mg~20mg、14mg~18mgまたは約16mgのリン酸デキサメタゾンナトリウムを含有し得る。
【0096】
別の実施形態では、リン酸デキサメタゾンナトリウムの溶液は、除菌濾過の前に、微細エマルジョン中に混合して、水相中にリン酸デキサメタゾンナトリウムを含有するエマルジョンを調製することができる。
【0097】
3.アプレピタントエマルジョン
本開示の医薬アプレピタント組成物は、上記の水相および油相を含む無菌の水中油エマルジョンである。また本開示によって包含されるのは、静脈内投与に適しており、かつ防腐技術を使用した通常の製造手順によって調製することができる、アプレピタントを含む安定なエマルジョンを調製するための方法である。
【0098】
水相を、高速均質化下で油相と合わせ、粗大エマルジョンを生成する。実施例1、2、3、4、5および6に記載するように、合わせた水相および油相を、IKA Ultra-Turrax T25分散機器を使用して20,000rpmのスピードで1分間ホモジナイズする。この最初の均質化ステップにおいて使用するスピードは、例えば、2000rpm~25,000rpm、または15,000rpm~22,000rpmで変化し得る。均質化ステップの時間はまた、例えば、0.5分~1時間、または1分~45分で変化することができる。次いで、この粗エマルジョンを、マイクロフルイダイザーである得る高圧ホモジナイザーによって微細エマルジョンにホモジナイズする。マイクロフルイダイザーの相互作用チャンバーおよび冷却コイル部分を、水によって、例えば、氷浴によって冷却する。氷浴の温度は、0~10℃の間、または2~6℃でよい。高圧均質化から出てくるエマルジョンの温度は、0~60℃の間、15℃~60℃、20℃~40℃、または約25℃であり得る。マイクロフルイダイザーに最初に呼び水を入れ、次いで、粗エマルジョンを導入する。ホモジナイザーからの排出物を、最初に廃棄し、呼び水、ならびに呼び水およびエマルジョンの混合物を取り出し、次いで、流れの外見のむらがなくなったときにクリーンなうつわに集める。高圧ホモジナイザーサイクルを繰り返して、油滴サイズを十分に低減し得る。均質化のために使用される圧力は変化し得る。圧力は、5000~30,000psiの間でよい。マイクロフルイダイザーを通る通過の数は、所望の液滴サイズを達成するために変化し得る。通過の数は、約2~20、2~15、4~15、4~12または7~8であり得る。
【0099】
次いで、医薬製剤を、室温にてフィルターシステムを通して通過させ、かつ/またはオートクレーブして、滅菌を達成し得る。滅菌を達成するために使用されるフィルターは、当業者が選択してもよく、0.2μmの公称孔径を有してもよい。使用するフィルター材料は、変化し得る。一実施形態では、フィルターは、ナイロンである。別の実施形態では、フィルターは、Posidyne(登録商標)フィルターである(水溶液中で正味の正電荷ゼータ電位を示す共有結合電荷改変ナイロン6,6膜)。大規模な生成のために、上記の方法は、修正される必要があり得る。当業者は、異なる順序でおよび異なる処理設備を使用してこれらの材料を合わせ、所望の最終結果を達成することができる。
【0100】
本開示の一実施形態では、均質化は、約25℃未満の温度へのホモジナイズした生成物の中間の冷却を伴う、油粒子/小滴サイズが2ミクロン(μm)未満であるエマルジョンを達成するための繰り返しのサイクルで行うことができる。
【0101】
最終エマルジョンは、水性部分(水相)に分散した油部分(油相)を含む。油相中の構成要素とアプレピタントの比は、注射のために調製した製剤の安定性に影響を与え得るエマルジョンの重要な特徴である。上記のように、油相は、アプレピタント、油および乳化剤を含み、これらの例は、本明細書において提供する。
【0102】
最終アプレピタントエマルジョンは、0.7重量/重量%のアプレピタントを含有するが、約0.2重量/重量%~1.5重量/重量%、0.4重量/重量%~1.0重量/重量%または0.6重量/重量%~0.7重量/重量%の範囲であり得る。約130mgのアプレピタントを含有するエマルジョンを調製するが、約100mg~1000mg、100mg~500mg、250mg~750mgまたは100mg~200mgのアプレピタントを含有する調製物をまた、本開示によって調製し得る。
【0103】
一実施形態では、油相中の油:アプレピタントの比(重量%:重量%)は、約11:1~15:1、12:1~14:1、13:1~13.5:1、13:1~14:1、または12:1~15:1の範囲である。別の実施形態では、油:アプレピタントの比は、約11:1、11.5:1、12:1、12.5:1、13:1、13.5:1、14:1、14.5:1または15:1である。
【0104】
乳化剤とアプレピタントの比は、また変化し得る。例えば、油部分中の乳化剤:アプレピタントの比(重量%:重量%)は、約15:1~30:1、20:1~25:1、18:1~22:1または10:1~30:1の範囲である。一実施形態では、乳化剤:アプレピタント(重量%:重量%)は、約15:1、18:1、19:1、20:1、21:1、22:1または23:1である。
【0105】
油相中の構成要素の比は、(乳化剤プラス油):アプレピタントの比(重量%:重量%)で代替的に表し得る。本開示において想定される比は、約20:1~40:1、25:1~35:1、30:1~35:1もしくは33:1~37:1の範囲であり得、または、例えば、約30:1、32:1、33:1、34:1、35:1、36:1、37:1、38:1もしくは40:1であり得る。
【0106】
本開示の組成物は、あまり望ましくない賦形剤、例えば、洗浄剤、例えば、Tween-20またはTween-80を含有し得る注射用製剤と比較して、低減した毒性に関して顕著な利点を有する。本製剤は、油相中の治療有効量のアプレピタントを可溶化する能力を利用し、これを次いで使用して、注射に適したエマルジョンを生じさせることができる。したがって、本明細書に記載されているのは、アプレピタントおよび任意選択でデキサメタゾンまたはリン酸デキサメタゾンナトリウムを含有する医薬エマルジョン組成物であり、エマルジョンは洗浄剤を含まない。
【0107】
本開示の組成物は、小さな粒子サイズのために非経口使用に適した生成物を生じさせる。生成物を薬剤、例えば、スクロースの水溶液、マルトースの水溶液、またはデキストロース5%注射剤または生理食塩水で希釈して、非経口投与のための必要とされる濃度を達成することができるため、本開示の組成物は、使用するのに容易である。本開示の組成物はまた、延長された保存寿命を有し、したがって容易に市場性のある製品に適している。
【0108】
本開示の組成物は、化学的および物理的の両方において安定である。本発明の物理的に安定なエマルジョンは、USP<729>において記述されているように許容されるものを超えた平均液滴サイズの増加を伴わずに、少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、9カ月、12カ月、15カ月、18カ月、24カ月または36カ月間適当な条件下で貯蔵することができるものである。その上、大きな直径の脂肪小滴の集団は、USP<729>において記述される限度内であるはずである。
【0109】
USP<729>において定義される液滴サイズ限度は、市販の医薬製剤について2~3年またはそれ超まで延長し得る指定された保存寿命にわたって適用される。全ての真のエマルジョンは熱力学的に不安定であり、経時的に液滴サイズを増加させる傾向のある一連のプロセスを起こし得る。これらは、2個の液滴が衝突して、単一の新たな液滴を形成するときの直接の液滴癒着、および凝集を含み、ここでは液滴が一緒に接着し、より大きな塊を形成する。凝集は、場合によって、より大きな液滴へのさらなる癒着の前駆体であり得る。これらのプロセスは、「クリーミング」として公知の現象である、容器の表面に達する大きな凝集物をもたらし、最終的に「クラッキング」として公知である、遊離油がエマルジョン表面上に可視であることをもたらし得る。
【0110】
液滴サイズ測定、例えば、USP<729>において定義するものは、サイズの最初の増加を測定することができ、したがって、製剤が肉眼で可視の変化を示すよりもずっと前の早期におけるエマルジョンの物理的安定性を予測する。したがって、本明細書に記載のようなエマルジョンは、約500nm未満、400nm未満、300nm未満、200nm未満または100nm未満の強度加重平均液滴直径を有する安定な組成物である。
【0111】
本開示による油滴サイズまたは粒子液滴サイズ、すなわち、直径は、動的光散乱(DLS)機器、例えば、Malvern Zetasizer 4000、Malvern Zetasize Nano S90または好ましくはMalvern Zetasizer Nano ZSを使用して測定される。強度加重粒子サイズを記録した。これは、強度加重粒子サイズが粒子の屈折率についての知識を必要としないためである。Malvern Zetasizer機器において、油滴サイズの強度加重直径を決定するための2つのフィットが存在する。第1のフィットは、Z-平均直径を決定するために使用されるキュムラントフィットである。このフィットは、多分散性指数(PDI)をさらに与えることができる。このキュムラントフィットは、0.2未満のPDIを有する単分散試料に推奨される。第2のフィットは、非負最小二乗法(NNLS)フィットである。これは、ピーク1直径、ピーク2直径およびピーク3直径を生じさせる。これは、0.2超のPDIを有する多分散試料により適している。
【0112】
本明細書に記載のようなエマルジョン調製物は、組成物を保存する量で保存剤をさらに含み得る。本開示の実施形態のいくつかにおいて使用される適切な保存剤には、これらに限定されないが、エデト酸二ナトリウム、トコフェロール、塩化ベンザルコニウム、メチル、エチル、プロピルもしくはブチルパラベン、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、ベンゼトニウム、クロロブタノール、ソルビン酸カリウムまたはこれらの組合せが含まれる。
【0113】
III.医学的使用
本開示の医薬組成物は、嘔吐(emesis)の予防または処置のために使用することができ、高度または中程度に催吐性の化学療法を受けている患者のための非経口オプションを提供する。このように、本開示は、高度または中程度に催吐性の化学療法を受けている対象に、本明細書に記載のようなアプレピタントエマルジョンを静脈内に投与することを含む、処置方法を包含する。
【0114】
別の実施形態は、それを必要とする対象において嘔吐(emesis)を予防または処置する使用のための、医薬の製造における本開示の医薬製剤の使用に関する。
【0115】
本開示の方法において使用するのに必要とされるアプレピタントおよび任意選択でデキサメタゾンの量は、投与方法および患者の状態、および必要とされる治療の程度によって変化してもよく、最終的には担当の医師または臨床医の裁量である。
【実施例0116】
IV.実施例
下記の実施例は本質的に例示的であり、決して限定的であることを意図しない。
静脈内注射のためのアプレピタントエマルジョンの調製
(実施例1)
アプレピタントエマルジョンを調製するために、750mgのアプレピタントおよび15.0gの卵レシチン(LIPOID E80)と、12.0mlのエタノールとを合わせることによって、油相を最初に調製した。この混合物を、60℃および200rpmで15分間、加熱および撹拌することによって溶解した。得られた溶液に、10.0gのダイズ油を加えた。60℃での加熱および200rpmでの撹拌をさらに15分間続けた。5.60gのスクロースおよび0.500gのオレイン酸ナトリウムを、70.0mlの注射用水に溶解することによって、水相を調製した。この混合物を、300rpmで室温にて30分間撹拌した。次いで、水相を油相に加え、それに続いて高速均質化(Ultra-Turrax(登録商標)IKA T25)に20,000rpmのスピードで1分間供し、粗エマルジョンを生成した。次いで、この粗エマルジョンを、氷で冷却した高圧マイクロフルイダイザー(Microfluidizer(登録商標)M-110L、F12Y相互作用チャンバー)を通して18,000psiの圧力で8回通過させた。得られた微細エマルジョンを、0.2μmのナイロンシリンジフィルター(Corning)を通して通過させることによって滅菌した。エマルジョン組成物の詳細を、下記の表1において提供する。動的光散乱(Malvern(登録商標)Zetasizer Nano ZS)によって、非負最小二乗法(NNLS)フィットを使用して分析した強度加重粒子サイズは、99nmのピーク1直径を与えた。キュムラントフィットを使用して決定した強度加重平均粒子サイズは、87nmのZ-平均直径を提供した。ゼータ電位を、レーザードップラー微小電気泳動(Malvern(登録商標)Zetasizer Nano ZS)によって-43mVであると測定した。注射可能なエマルジョンのpHは、8.74であった。このアプレピタント含有エマルジョンはそのまま注射することができるか、または5%デキストロースもしくは0.9%食塩水との注入のために希釈することができる。
【表1】
【0117】
(実施例2)
アプレピタントエマルジョンを調製するために、450mgのアプレピタントおよび9.00gの卵レシチン(LIPOID E80)と、4.0mlのエタノールとを合わせることによって、油相を最初に調製した。この混合物を、60℃および200rpmで15分間、加熱および撹拌することによって溶解した。得られた溶液に、6.00gのダイズ油を加えた。60℃での加熱および200rpmでの撹拌をさらに15分間続けた。3.36gのスクロースおよび0.300gのオレイン酸ナトリウムを、42.0mlの注射用水に溶解することによって、水相を調製した。この混合物を、300rpmで室温にて30分間撹拌した。次いで、水相を油相に加え、それに続いて高速均質化(Ultra-Turrax(登録商標)IKA T25)に20,000rpmのスピードで1分間供し、粗エマルジョンを生成した。次いで、この粗エマルジョンを、氷で冷却した高圧マイクロフルイダイザー(Microfluidizer(登録商標)M-110L、F12Y相互作用チャンバー)を通して18,000psiの圧力で8回通過させた。得られた微細エマルジョンを、0.2μmのナイロンシリンジフィルター(Corning)を通して通過させることによって滅菌した。エマルジョン組成物の詳細を、下記の表2において提供する。動的光散乱(Malvern(登録商標)Zetasizer Nano
ZS)によって、NNLSフィットを使用して分析した強度加重粒子サイズは、127nmのピーク1直径を与えた。キュムラントフィットを使用して決定した強度加重平均粒子サイズは、101nmのZ-平均直径を提供した。レーザードップラー微小電気泳動(Malvern(登録商標)Zetasizer Nano ZS)によって、ゼータ電位を-47mVであると測定した。注射可能なエマルジョンのpHは、8.77であった。このアプレピタント含有エマルジョンはそのまま注射することができるか、または5%デキストロースもしくは0.9%食塩水との注入のために希釈することができる。
【表2】
【0118】
(実施例3)
アプレピタントエマルジョンを調製するために、450mgのアプレピタントおよび9.00gの卵レシチン(LIPOID E80)と、6.0mlのエタノールとを合わせることによって、油相を最初に調製した。この混合物を、60℃および200rpmで15分間、加熱および撹拌することによって溶解した。得られた溶液に、6.00gのダイズ油を加えた。60℃での加熱および200rpmでの撹拌をさらに15分間続けた。15.62gのスクロースおよび0.300gのオレイン酸ナトリウムを、42.0mlの注射用水に溶解することによって、水相を調製した。この混合物を、300rpmで室温にて30分間撹拌した。次いで、水相を油相に加え、それに続いて高速均質化(Ultra-Turrax(登録商標)IKA T25)に20,000rpmのスピードで1分間供し、粗エマルジョンを生成した。次いで、この粗エマルジョンを、氷で冷却した高圧マイクロフルイダイザー(Microfluidizer(登録商標)M-110L、F12Y相互作用チャンバー)を通して18,000psiの圧力で8回通過させた。得られた微細エマルジョンを、0.2μmのナイロンシリンジフィルター(Corning)を通して通過させることによって滅菌した。エマルジョン組成物の詳細を、下記の表3において提供する。動的光散乱(Malvern(登録商標)Zetasizer Nano ZS)によって、NNLSフィットを使用して分析した強度加重粒子サイズは、88nmのピーク1直径を与えた。キュムラントフィットを使用して決定した強度加重平均粒子サイズは、68nmのZ-平均直径を提供した。ゼータ電位を、レーザードップラー微小電気泳動(Malvern(登録商標)Zetasizer Nano ZS)によって-42mVであると測定した。注射可能なエマルジョンのpHは、8.80であった。このアプレピタント含有エマルジョンは、注射の前に、注射用水で4倍に希釈される。
【表3】
【0119】
静脈内注射のための代替のアプレピタントエマルジョン製剤
(実施例4)
10%重量/重量未満のリン脂質乳化剤を有し、かつ8.0未満のpHに調整した、アプレピタントエマルジョンを調製した。アプレピタントエマルジョンを調製するために、450mgのアプレピタントおよび6.67gの卵レシチン(LIPOID E80)と、7.2mlのエタノールとを合わせることによって、油相を最初に調製した。この混合物を、60℃および200rpmで加熱および撹拌することによって溶解した。エタノールが蒸発し、濃い残渣が観察されるまで、加熱および撹拌を行った。得られた溶液に、6.00gのダイズ油および適当な量のエタノールを加え、60℃での加熱によって透明な油相を得た。3.36gのスクロースを、50.5mlの注射用水に60℃にて溶解することによって、水相を調製した。次いで、水相を油相に加え、それに続いて高速均質化(Ultra-Turrax(登録商標)IKA T25)に20,000rpmのスピードで1分間供し、粗エマルジョンを生成した。この粗エマルジョンのpHを7.0に調整し、次いで、氷で冷却した高圧マイクロフルイダイザー(Microfluidizer(登録商標)M-110L、F12Y相互作用チャンバー)を通して18,000psiの圧力で8回通過させた。得られた微細エマルジョンを、0.2μmのナイロンシリンジフィルター(Corning)を通して通過させることによって滅菌した。エマルジョン組成物の詳細を、下記の表4において提供する。室温にて調製後4日以内に、顕微鏡によって生成物中に結晶が観察された。
【表4】
【0120】
(実施例5)
オレイン酸を含有するアプレピタントエマルジョンを調製した。アプレピタントエマルジョンを調製するために、250mgのアプレピタント、2.50gの卵レシチン(LIPOID E80)と、15.0gのダイズ油および125mgのオレイン酸を合わせることによって、油相を最初に調製した。10mlのエタノールを加え、混合物を70℃で溶解した。エタノールを70℃の水浴中で減圧によって除去し、透明な油相を生じさせた。82.1mlの注射用水を70℃で含有する事前加熱した水相を油相に加え、それに続いて高速均質化(Ultra-Turrax(登録商標)IKA T25)に20,000rpmのスピードで1分間供し、粗エマルジョンを生成した。この粗エマルジョンを、氷で冷却した高圧マイクロフルイダイザー(Microfluidizer(登録商標)M-110L、F12Y相互作用チャンバー)を通して18,000psiの圧力で8回通過させた。得られた微細エマルジョンを、0.2μmのナイロンシリンジフィルター(Corning)を通して通過させることによって滅菌した。エマルジョン組成物の詳細を、下記の表5において提供する。室温にて調製後4日以内に、顕微鏡によって生成物中に結晶が観察された。
【表5】
【0121】
静脈内注射のためのアプレピタントおよびリン酸デキサメタゾンナトリウムを含有するエマルジョンの調製
(実施例6)
アプレピタントおよびリン酸デキサメタゾンナトリウムを含有する注射可能なエマルジョンを調製するために、773mgのアプレピタントおよび15.5gの卵レシチン(LIPOID E80)と、10.3mlのエタノールとを合わせることによって、油相を最初に調製した。この混合物を、60℃および200rpmで15分間、加熱および撹拌することによって溶解した。得られた溶液に、10.3gのダイズ油を加えた。60℃での加熱および200rpmでの撹拌をさらに15分間続けた。5.77gのスクロースおよび0.515gのオレイン酸ナトリウムを、71.1mlの注射用水に溶解することによって、水相を調製した。この混合物を、300rpmで室温にて30分間撹拌した。次いで、水相を油相に加え、それに続いて高速均質化(Ultra-Turrax(登録商標)IKA T25)に20,000rpmのスピードで1分間供し、粗エマルジョンを生成した。次いで、この粗エマルジョンを、氷で冷却した高圧マイクロフルイダイザー(Microfluidizer(登録商標)M-110L、F12Y相互作用チャンバー)を通して18,000psiの圧力で8回通過させた。1mlの注射用水に溶解したリン酸デキサメタゾンナトリウム(93.5mg)を、微細エマルジョン中に混合した。アプレピタントおよびリン酸デキサメタゾンナトリウムの両方を含有するこの得られた微細エマルジョンを、0.2μmのナイロンシリンジフィルター(Corning)を通して通過させることによって滅菌した。エマルジョン組成物の詳細を、下記の表6において提供する。動的光散乱(Malvern(登録商標)Zetasizer Nano ZS)によって、NNLSフィットを使用して分析した強度加重粒子サイズは、95nmのピーク1直径を与えた。キュムラントフィットを使用して決定した強度加重平均粒子サイズは、70nmのZ-平均直径を提供した。レーザードップラー微小電気泳動(Malvern(登録商標)Zetasizer Nano ZS)によって、ゼータ電位は-43mVであると測定した。注射可能なエマルジョンのpHは、8.92であった。このアプレピタントおよびリン酸デキサメタゾンナトリウム含有エマルジョンはそのまま注射することができるか、または5%デキストロースもしくは0.9%食塩水との注入のために希釈することができる。
【表6】
【0122】
(実施例7)
室温および5℃でのアプレピタントエマルジョンの安定性
実施例1、2、3および6において記載したように調製したアプレピタントエマルジョンの安定性を、室温(約25℃)にてまたは5℃にて各エマルジョン調製物をインキュベートすることによって測定した。5μm超の脂肪小滴の平均粒子サイズおよび百分率を、それぞれ、DLSおよび光遮蔽を使用して測定し、これらがUSP<729>を満たすかを決定した。エマルジョンをまた、アプレピタント結晶について顕微鏡によって検査した。実施例1は、室温にて2カ月安定であった。すなわち、5μm超の脂肪小滴の平均粒子サイズおよび百分率は、USP<729>を満たした。さらに、アプレピタント結晶は、顕微鏡によって可視ではなかった。室温にて2カ月の貯蔵後、クリーミングが実施例1および6において観察された。これは、アプレピタント結晶の観察と一致した。実施例2および3は、室温にて、それぞれ、3カ月間および2カ月間安定であった。これらの時点の後、アプレピタント結晶を、これらの製剤において観察した。5℃での貯蔵は、実施例1、2、3および6についてより長いエマルジョン安定性をもたらした。表7は、実施例1、2、3および6の特徴付け、ならびに室温および5℃でのこれらのそれぞれの安定性を示す。
【表7】
【0123】
(実施例8)
凍結融解サイクルに対するアプレピタントエマルジョンの安定性
実施例1、2、3および6によって調製したアプレピタントエマルジョンを、凍結融解サイクルへの曝露によって安定性について試験した。実施例1、2、3および6からの試料を-20℃にて一晩貯蔵した。翌日、これらを室温に解凍し、顕微鏡によって可視化した。凍結の前に、鏡検すると全ての試料は可視の粒子を提示しなかった。
図1は、凍結融解サイクル後のエマルジョンの10×での顕微鏡像を示す(実施例1、2、3および6は、それぞれ、
図1A、B、C、およびDとして示す)。実施例1、2および6において記載したように調製したエマルジョンは、凍結への曝露の後に、可視の粒子を示した。実施例3のみが、凍結後に安定であった。
図1Cが示すように、実施例3の製剤について可視の粒子は観察されなかった。この増進された安定性は、高い濃度のスクロースの存在によって与えられた(実施例1、2および6における5w/重量%と比較して、実施例3における20w/w%)。
【0124】
(実施例9)
実施例1によって調製したアプレピタントエマルジョンの薬物動態を決定した。それぞれ6匹の雄性Sprague-Dawleyラットの2つの群に、それぞれ、溶液中のホスアプレピタントまたは実施例1によって調製したアプレピタントエマルジョンを静脈内に注射した。全ての薬物を、14mg/kgのアプレピタントと等しい有効濃度で投与した。全てのラットからの血液を、適当な時間間隔で集め、遠心分離によって血漿へと処理した。血漿試料を、必要に応じて、アプレピタントおよびホスアプレピタントについてLC-MS/MSによって分析した。実施例1に記載したエマルジョンについて、およびホスアプレピタントについての、アプレピタントの血漿濃度対時間曲線を、
図2において提示する(溶液中のホスアプレピタント、黒丸;アプレピタントエマルジョン、黒三角)。アプレピタントエマルジョンの注射の直後に到達した最初のアプレピタントレベルは、ホスアプレピタント溶液の注射の直後に到達した最初のアプレピタントレベルより殆ど3倍高かったことを曲線は示した。しかし、それぞれの注射からもたらされるアプレピタントの血漿レベルは、3時間の時点まで本質的に同じであったが、これは、製剤がアプレピタントへのホスアプレピタントの変換における遅延を除いて生物学的に同等であったことを示す。
【0125】
(実施例10)
実施例6によって調製したアプレピタントおよびリン酸デキサメタゾンナトリウムの組合せエマルジョンの薬物動態を決定した。雄性Sprague-Dawleyラットのそれぞれに、静脈内にホスアプレピタント溶液(群1)、リン酸デキサメタゾンナトリウム溶液(群2)、または実施例6によって調製したアプレピタントおよびリン酸デキサメタゾンナトリウムを含有するエマルジョン(群3)を注射した。群1および2は、それぞれ6匹のラットからなった。群3について、12匹のラットに、アプレピタントおよびリン酸デキサメタゾンナトリウムの組合せエマルジョンを注射し、両方の活性成分の測定のための十分な試料の収集を可能とした。
【0126】
群1および3において、用量を2mg/kgのアプレピタントと等しい有効な薬物濃度で投与した。群2および3において、用量を0.24mg/kgのリン酸デキサメタゾンナトリウムと等しい有効な薬物濃度で投与した。全てのラットからの血液を、適当な時間間隔で集め、遠心分離によって血漿へと処理した。血漿試料を、必要に応じて、デキサメタゾン、アプレピタント、およびホスアプレピタントについてLC-MS/MSによって分析した。
【0127】
図3および4は、それぞれ、アプレピタントおよびデキサメタゾンの血漿濃度対時間曲線を提示する。
図3は、実施例6に記載されたエマルジョンの注射(
図3、黒丸)に対するホスアプレピタントの溶液の注射(
図3、黒三角)によってもたらされるアプレピタントの血漿濃度対時間曲線を比較する。
図4は、リン酸デキサメタゾンナトリウム溶液の注射(
図4、黒丸)に対する実施例6に記載したエマルジョンの注射によってもたらされるデキサメタゾンの血漿濃度対時間曲線を比較する。曲線は、エマルジョン中のアプレピタントが、リン酸デキサメタゾンナトリウムと概ね同時に放出されることを示す。エマルジョン中のリン酸デキサメタゾンナトリウムの存在は、アプレピタントの薬物動態に影響を与えない。
【0128】
(実施例11)
緩衝剤を含むアプレピタントエマルジョンを調製するために、750mgのアプレピタント、15.0gの卵レシチン(LIPOID E80)と、10.0gのダイズ油および3.75mlのエタノールとを合わせることによって、油相を最初に調製する。この混合物を、70℃および200rpmで30分間、加熱および撹拌することによって溶解する。2.17gのスクロースおよび0.500gのオレイン酸ナトリウムを、4.1mlの1Mトリス緩衝液(pH8.4)および65.9mlの注射用水の混合物に溶解することによって、水相を調製する。この混合物を、300rpmで室温にて30分間撹拌する。次いで、水相を油相に加え、それに続いて高速均質化(Ultra-Turrax(登録商標)IKA T25)に20,000rpmのスピードで1分間供し、粗エマルジョンを生成する。次いで、この粗エマルジョンを、氷で冷却した高圧マイクロフルイダイザー(Microfluidizer(登録商標)M-110L、F12Y相互作用チャンバー)を通して18,000psiの圧力で8回通過させる。得られた微細エマルジョンを、0.2μmのナイロンシリンジフィルター(Corning)を通して通過させることによって滅菌する。動的光散乱を使用して、NNLSフィットを使用して強度加重粒子サイズを決定し、ピーク1直径を生じさせ、キュムラントフィットを使用して強度加重平均粒子サイズを決定し、Z-平均直径を提供する。レーザードップラー微小電気泳動(Malvern(登録商標)Zetasizer Nano ZS)によって、ゼータ電位を測定する。このアプレピタント含有エマルジョンはそのまま注射することができるか、または5%デキストロースもしくは0.9%食塩水との注入のために希釈することができる。
【0129】
いくつかの例示的な態様および実施形態を上記で考察してきた一方、当業者は特定の修正、並べ替え、付加およびこれらのサブコンビネーションを認識する。したがって、以下に導入する下記の添付の特許請求の範囲は、これらの真の精神および範囲内であるように、全てのこのような修正、並べ替え、付加およびサブコンビネーションを含むと解釈されることが意図される。