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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092041
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】標的免疫療法のための化合物
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20220614BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220614BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220614BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220614BHJP
【FI】
C07K16/28
A61K39/395 C
A61K39/395 E
A61K39/395 L
A61K39/395 T
A61P35/00
A61K47/68
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066294
(22)【出願日】2022-04-13
(62)【分割の表示】P 2019165174の分割
【原出願日】2013-07-16
(31)【優先権主張番号】201210248481.9
(32)【優先日】2012-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】517071025
【氏名又は名称】バーディー バイオファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】リ、リシン
(57)【要約】
【課題】標的免疫療法のための化合物、ならびにそれらを含む組成物の提供。
【解決手段】式(I)、TM-Ln-AM(I)の構造を有し、式中、TMは、腫瘍細胞上に発現する抗原に特異的に結合し、且つ、直接的に又は間接的に、細胞増殖を抑制すること又はアポトーシスを誘導することができる免疫グロブリン又はその機能性フラグメントを含む標的部分であり、AMは、ヒトのTLR7およびTLR8に特異的に結合し、且つ、ヒトの、樹状細胞、NK細胞、又はこれらの両方を活性化する活性化部分であり、Lは、リンカーであり、nは、0および1から選択される整数である、ことを特徴とする化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)、TM-Ln-AM (I)の構造を有し、
式中、TMは、標的部分であり、AMは、ヒト樹状細胞、NK細胞、もしくは腫瘍細胞、またはこれらの組み合わせを活性化することができる活性化部分であり、Lnは、リンカーであり、nは、0および1から選択される整数である、化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年7月18日出願の中国特許出願第201210248481.9号の利益および同出願に対する優先権を主張し、この出願の全開示は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、標的免疫療法のための化合物、ならびにそれらを含む組成物に関する。更に、本発明は、癌のような疾患の治療における化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
治療抗体は、20年以上にわたって臨床用途に使用されてきた。現在、Rituxan(1997年)、Herceptin(1998年)、Mylotarg(2000年)、Campath(2001年)、Zevalin(2002年)、Bexxer(2003年)、Avastin(2004年)、Erbitux(2004年)、Vectibix(2006年)、Arzerra(2009年)、Benlysta(2011年)、Yervoy(2011年)、Adcetris(2011年)、Perjeta(2012年)、およびKadcyla(2013年)を含む15種の抗腫瘍抗体薬が臨床において存在する。これらの抗体は、主に、EGFR、Her2、CD20、およびVEGFの4つの分子を標的にする。
【0004】
一般に、治療抗体は、3つの機構を介して腫瘍細胞を死滅させる(非特許文献1)。(1)直接的な抗体作用、すなわち、リガンド/受容体シグナル伝達の遮断または作動薬活性、アポトーシスの誘発、および薬剤または細胞障害剤の送達。抗体受容体活性化の活性は、直接的な腫瘍細胞死滅効果を生じさせることができる。例えば、幾つかの抗体は、腫瘍細胞の表面の受容体に結合し、受容体を活性化させ、アポトーシスをもたらすことができる(例えば、ミトコンドリアにおいて)。抗体は、受容体拮抗活性により腫瘍細胞死滅を仲介することもできる。例えば、ある特定の抗体は、細胞表面受容体に結合し、二量体化、キナーゼ活性化、および下流シグナル伝達を遮断し、それによって増殖を阻害し、アポトーシスを促進することができる。抗体の酵素への結合は、中和、シグナル抑止、および細胞死をもたらすことができる。(2)補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞仲介細胞障害(ADCC)、T細胞機能調節などを含む免疫仲介細胞死滅機構による。腫瘍細胞の免疫仲介死滅は、以下の方法により達成されうる。貪食作用の誘発、補体活性化、抗体依存性細胞仲介細胞障害、一本鎖可変フラグメント(scFv)により腫瘍に対して標的化された遺伝子修飾T細胞、樹状細胞への抗体仲介抗原交差提示によるT細胞の活性化、細胞障害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)のようなT細胞阻害性受容体の阻害。これらのうち、抗体特徴のFc部分が、CDCおよびADCC仲介腫瘍細胞死滅効果のためにとりわけ重要である。(3)血管受容体拮抗剤またはリガンドを捕捉して、間質細胞阻害、間質細胞への毒素の送達、および血管系への毒素の送達を含む血管および間質細胞の切除(ablation)を誘発することを介した、腫瘍血管系およびマトリックスに対する抗体の特異的な効果。(非特許文献2)。
【0005】
治療モノクローナル抗体薬は、抗癌薬の研究および開発を前進させた。しかし、抗体免疫原性、腫瘍標的の長期使用における耐容性、およびシグナル伝達経路の単純な単一遮断による長期効果のような幾つかの問題を解決するために、以前として更なる研究が必要である。要約すると、過半数の抗体は、腫瘍細胞の長期の効率的な阻害および死滅を達成することが困難である。
【0006】
1964年に雑誌「Nature」は、新しい着想の抗体薬剤複合体(ADC)技術を公表し、これは、近年大きな進歩が見られている。ADCは、化学リンカー(リンカー)を介して、抗体を高い毒性の薬剤(毒素)と共有結合させる。抗体は癌細胞表面抗原分子を認識し、エンドサイトーシスADCは、それを細胞質の中に運び込み、特定の細胞内環境において、リンカーの加水分解後に放出された毒素は、細胞を死滅させる。
【0007】
Seattle Geneticsは、そのような薬剤であるブレンツキシマブベドチン(商標名アドセトリス(Adcetris))を開発し、これはFDAにより市販することが承認されている。これは、腫瘍細胞を死滅させる改善された効率を有する、リンパ腫細胞特異的CD30分子を標的にする抗体と結合した合成毒性抗癌薬である、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)である。
【0008】
現在、数十のそのようなADC薬が臨床試験の最中である。これらのうち、GenentechおよびImmunogenは、乳癌を治療するために、マイタンシンと結合したトラスツズマブを薬剤名称アド-トラスツズマブエムタンシン(カドシラ(Kadcyla))として共同で開発し、これはT-DM1としても知られている。2013年2月には、FDAはヒト上皮増殖因子受容体2(Her2)陽性転移乳癌に対するTーDM1を承認した。マイタンシンは、チューブリンに結合し、非還元性二重マレイミド-プロパンジオール錯体を形成することにより微小管の形成を防止することができる、小分子毒素である。トラスツズマブは、ヒトHer2を標的にすることによって、乳癌および胃癌に対して作用する。これは、Her2陽性癌に対して承認された。しかし、トラスツズマブは、全てのHer2陽性細胞のアポトーシスを促進することはできない。T-DM1は、Her2受容体を選択的に標的にするトラスツズマブを、強力な細胞障害剤のマイタンシンと組み合わせて、腫瘍細胞を死滅させる。T-DM1抗体は、Her2受容体に結合して、複合体から放出されたマイタンシンの細胞内部移行を引き起こし、それによって腫瘍細胞を死滅させる。T-DM1は、より良好な全体的な効能および薬物動態特性、ならびに低い毒性を有する。
【0009】
伝統的な小分子化学療法薬は、強力な毒性および薬物動態的な利点を有するが、腫瘍の治療経過において、重篤な副作用によって他の生理学的標的に影響を与え得る。抗体薬剤複合体は、標的化機能を、特定の薬物動態を有する小分子薬剤と組み合わせる。抗体薬剤複合体の構造は、標的化機能を有するモノクローナル抗体と、特定の薬理学的特性を有する化合物との結合である。この技術は、治療効果または細胞毒素のような他の機能を有する分子と結合される、標的に結合特異性を有する治療抗体を必要とする。結合抗体のエンドサイトーシス、結合の安定性、ならびに毒素の放出および死滅活性のような多くの要因が、この種類の抗体の効果に影響を与える。
【0010】
現在使用されている毒素分子には、チューブリン阻害剤である、オーリスタチン類縁体モノメチルオーリスタチンE、モノメチルオーリスタチンF、およびマイタンシンが含まれる。モノメチルオーリスタチンEは、微小管凝集を阻害し、腫瘍細胞の有糸分裂に干渉し、かつアポトーシスを誘発することができる合成微小管ポリマー阻害剤である(非特許文献3、非特許文献4)。モノメチルオーリスタチンFは、C末端に荷電フェニルアラニン残基を有する抗有糸分裂オーリスタチン誘導体である。非荷電MMAEと比較して、これは、細胞シグナル伝達経路への障害を最小限にし、細胞障害性を最小限にする。CD30細胞による多数の試験は、mAb-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル-MMAF(mAb-L1-MMAF)が、MMAFのみよりも2,200倍強力な毒性を有することを見出した(非特許文献5)。マイタンシンは、チューブリン重合の阻害剤として作用する抗有糸分裂剤であり、したがって細胞核における微小管の形成に干渉する。マイタンシンは、DNA、RNA、およびタンパク質の合成も阻害し、最大の効果はDNA合成において見られる。
【0011】
抗体薬剤複合体は、直接的および間接的な抗癌効果を有する。抗体は、リガンド/受容体シグナル伝達を遮断または活性化し、アポトーシスを誘発し、同時にペイロード薬剤(例えば、薬剤、毒素、小型干渉RNAまたは放射性同位体)を腫瘍細胞に対して直接的または間接的に提示または送達することができる。治療抗体薬剤複合体は、抗体と結合薬剤の二重特性を利用し、第1は、標的分子に特異的に結合する結合機能であり、第2は、抗体自体の腫瘍細胞死滅機能であり、第3は、複合薬の特定の効果である。現行の抗体薬剤複合体薬は、どのように腫瘍細胞を直接的に死滅させるかについては制限されている。しかし、抗体、リンカー分子、毒素分子、および複合体化の技術における厳しい要件、ならびに腫瘍微環境分子内に毒素を運び込むことに対する制限のため、実際の臨床研究において依然として幾つかの困難が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Scott AM,Wolchok JD,Old LJ.Antibody therapy of cancer.Nat Rev Cancer.(2012),12:278-87
【非特許文献2】Scott AM,Wolchok JD,Old LJ.Antibody therapy of cancer Nat Rev Cancer.2012,12(4):278-87
【非特許文献3】Naumovski L and Junutula JR.Glembatumumab vedotin,a conjugate of an anti-glycoprotein non-metastatic melanoma protein B mAb and monomethyl auristatin E for treatment of melanoma and breast cancer.Curr Opin Mol Ther 2003;12(2):248-57
【非特許文献4】Francisco JA,Cerveny CG et al.cAC10-vcMMAE,an anti-CD30-monomethyl auristatin E conjugate with potent and selective antitumor activity.Blood 102(4):1458-65
【非特許文献5】Doronina SO et al.,Enhanced activity of monomethylauristatin F through monoclonal antibody delivery:effects of linker technology on efficacy and toxicity.Bioconjug Chem,2006;17(1):p114-24
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様において、本発明は、式(I)、TM-Ln-AM (I)の構造を有する化合物であって、
式中、TMは、標的部分であり、AMは、樹状細胞、マクロファージ、単球、骨髄由来抑制細胞、NK細胞、B細胞、T細胞、もしくは腫瘍細胞、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されないヒト免疫細胞を活性化することができる活性化部分であり、Lnは、リンカーであり、nは、0および1から選択される整数である、化合物を提供する。
【0014】
幾つかの実施形態において、ヒト樹状細胞は形質細胞様樹状細胞である。幾つかの実施形態において、ヒト樹状細胞は骨髄樹状細胞である。
【0015】
幾つかの実施形態において、AMは、ヒトトール様受容体7(TLR7)および/もしくはTLR8に特異的に結合すること、またはTLR7および/もしくはTLR8を介してヒト免疫細胞を活性化することができる。
【0016】
別の態様において、本発明は、式(I)、TM-Ln-AM (I)の構造を有する化合物であって、
式中、TMは、標的部分であり、AMは、ヒトTLR7および/もしくはTLR8に特異的に結合すること、またはTLR7および/もしくはTLR8を介してヒト免疫細胞を活性化することができる活性化部分であり、Lnは、リンカーであり、nは、0および1から選択される整数である、化合物を提供する。
【0017】
幾つかの実施形態において、AMは、ヒトTLR7およびTLR8の両方に特異的に結合すること、またはTLR7および/もしくはTLR8を介してヒト免疫細胞を活性化することができる。
【0018】
幾つかの実施形態において、TMが抗体を含む場合、AMは、CpGオリゴヌクレオチを含まない。
【0019】
幾つかの実施形態において、標的部分は、非腫瘍細胞と比較して、腫瘍細胞に特異的または優先的に結合することができる。幾つかの実施形態において、腫瘍細胞は、癌腫(carcinoma)、肉腫、リンパ腫、骨髄腫、または中枢神経系癌のものである。
【0020】
幾つかの実施形態において、標的部分は、非腫瘍抗原と比較して、腫瘍抗原に特異的または優先的に結合することができる。幾つかの実施形態において、腫瘍抗原は、CD2、CD19、CD20、CD22、CD27、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD47、CD52、CD56、CD70、CD79、およびCD137からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、腫瘍抗原は、4-1BB、5T4、AGS-5、AGS-16、アンジオポエチン2、B7.1、B7.2、B7DC、B7H1、B7H2、B7H3、BT-062、BTLA、CAIX、癌胎児性抗原、CTLA4、クリプト(Cripto)、ED-B、ErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EGFL7、EpCAM、EphA2、EphA3、EphB2、FAP、フィブロネクチン、葉酸受容体、ガングリオシドGM3、GD2、グルココルチコイド誘発性腫瘍壊死因子受容体(GITR)、gp100、gpA33、GPNMB、ICOS、IGF1R、インテグリンαν、インテグリンανβ、KIR、LAG-3、ルイスY、メソテリン、c-MET、MN炭酸脱水酵素IX、MUC1、MUC16、ネクチン-4、NKGD2、NOTCH、OX40、OX40L、PD-1、PDL1、PSCA、PSMA、RANKL、ROR1、ROR2、SLC44A4、シンデカン-1、TACI、TAG-72、テネイシン、TIM3、TRAILR1、TRAILR2、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、およびこれらの変異体からなる群から選択される。
【0021】
幾つかの実施形態において、標的部分は、免疫グロブリン、タンパク質、ペプチド、小分子、ナノ粒子、または核酸を含む。
【0022】
幾つかの実施形態において、標的部分は、抗体またはその機能性フラグメントを含む。幾つかの実施形態において、抗体は、Rituxan(リツキシマブ)、Herceptin(トラスツズマブ)、Erbitux(セツキシマブ)、Vectibix(パニツムマブ)、Arzerra(オファツムマブ)、Benlysta(ベリムマブ)、Yervoy(イピリムマブ)、Perjeta(ペルツズマブ)、トレメリムマブ、ニボルマブ、ダセツズマブ、ウレルマブ(Urelumab)、MPDL3280A、ランブロリズマブ(Lambrolizumab)、およびブリナツモマブ(Blinatumomab)からなる群から選択される。
【0023】
幾つかの実施形態において、標的部分は、Fab、Fab′、F(ab′)2、単一ドメイン抗体、TおよびAbs二量体、Fv、scFv、dsFv、ds-scFv、Fd、線状抗体、ミニボディ、二特異性抗体(diabody)、二重特異的抗体フラグメント、バイボディ(bibody)、トリボディ(tribody)、sc-二特異性抗体、カッパ(ラムダ)体、BiTE、DVD-Ig、SIP、SMIP、DART、または1つ以上のCDRを含む抗体類縁体を含む。
【0024】
幾つかの実施形態において、標的部分は、VEGFRのATWLPPRポリペプチド、トロンボスポンジン-1模倣体、CDCRGDCFCG(環状)ポリペプチド、SCH221153フラグメント、NCNGRC(環状)ポリペプチド、CTTHWGFTLCポリペプチド、CGNKRTRGCポリペプチド(LyP-1)、オクトレオチド、バプレオチド、ランレオチド、C-3940ポリペプチド、デカペプチル、ルプロン、ゾラデックス、またはセトロレリクスを含む。
【0025】
幾つかの実施形態において、標的部分は、葉酸またはその誘導体を含む。
【0026】
幾つかの実施形態において、標的部分は、PD-1、CTLA4、BTLA、KIR、TIM3、4-1BB、LAG3、表面リガンドアンフィレギュリンの一部の完全長、ベータセルリン、EGF、エフリン、エピジェン(epigen)、エピレギュリン、IGF、ニューレグリン、TGF、TRAIL、またはVEGFの細胞外ドメイン(ECD)または可溶形態を含む。
【0027】
幾つかの実施形態において、標的部分はナノ粒子を含む。
【0028】
幾つかの実施形態において、標的部分はアプタマーを含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、活性化部分は、(a)一本鎖RNA(ssRNA)、好ましくはORN02、ORN06、ssポリ(U)、ssRNA40、ssRNA41、ssRNA-DR、もしくはポリ(dT)、または(b)トール様受容体リガンド(TLRL)類縁体、好ましくはCL075、CL097、CL264、CL307、ガーディキモド、ロキソリビン、イミキモド、もしくはレシキモド(Resiquimod)を含む。
【0030】
幾つかの実施形態において、リンカーは、ヒドラジン基、ポリペプチド、ジスルフィド基、およびチオエーテル基からなる群から選択される。
【0031】
幾つかの実施形態において、リンカーは酵素切断性である。幾つかの実施形態において、リンカーは酵素切断性ではない。
【0032】
幾つかの実施形態において、本発明は、本明細書において提供される化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物を提供する。
【0033】
幾つかの実施形態において、薬学的組成物は第2の化学療法剤を更に含む。幾つかの実施形態において、化学療法剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、イマタニブ(imatanib)、パクリタキセル、シクロホスファミド、ロバスタチン、ミノシン(minosine)、ゲムシタビン、シタラビン、5-フルオロウラシル、メトトレキセート、ドセタキセル、ゴセレリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、テニポシド、エトポシド、ゲムシタビン、エポチロン、ビノレルビン、カンプトテシン、ダウノルビシン、アクチノマイシンD、ミトキサントロン、アクリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、またはイダルビシンからなる群から選択される。
【0034】
なお別の態様において、本発明は、疾患状態の治療の必要な対象において疾患状態を治療する方法であって、治療有効量の本明細書において提供される化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を、対象に投与することを含む方法を提供する。
【0035】
幾つかの実施形態において、疾患状態は腫瘍である。幾つかの実施形態において、疾患状態は異常細胞増殖を含む。幾つかの実施形態において、異常細胞増殖は前癌性病変を含む。幾つかの実施形態において、異常増殖は癌細胞のものである。
【0036】
幾つかの実施形態において、癌は、乳癌、結腸直腸癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、子宮内膜癌、濾胞性リンパ腫、胃癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、肝細胞癌、肺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、および腎細胞癌からなる群から選択される。
【0037】
更なる態様において、本発明は、式(I)、TM-Ln-AM (I)の構造を有する化合物であって、
式中、TMは、標的部分であり、AMは、活性化部分であり、Lnは、リンカーであり、nは、0および1から選択される整数であり、
但し、TMが抗体を含む場合、AMは、CpGオリゴヌクレオチドまたは治療剤を含まない、化合物を提供する。
【0038】
幾つかの実施形態において、活性化部分は、TLRリガンド、Nod様受容体リガンド、RIG様受容体リガンド、CLRリガンド、CDSリガンド、またはインフラマソーム誘発剤を含む。
【0039】
幾つかの実施形態において、活性化部分は、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8、TLR7/TLR8、TLR9、およびTLR10からなる群から選択される1つ以上のTLRのリガンド(トール様受容体リガンド、TLRL)を含む。
【0040】
幾つかの実施形態において、活性化部分は、
(i)(a)加熱死菌生成物、好ましくはHKAL、HKEB、HKHP、HKLM、HKLP、HKLR、HKMF、HKPA、HKPG、またはHKSA、HKSP、および(b)細胞壁成分生成物、好ましくはLAM、LM、LPS、LTA、LTA、PGN、FSL、Pam2CSK4、Pam3CSK4、またはザイモサンからなる群から選択されるTLR2のリガンド、
(ii)ポリ(I:C)およびポリ(A:U)からなる群から選択されるTLR3のリガンド、
(iii)LPSおよびMPLAからなる群から選択されるTLR4のリガンド、
(iv)FLAおよびフラゲリンからなる群から選択されるTLR5のリガンド、
(v)ORN02、ORN06、ssポリ(U)、ssRNA40、ssRNA41、ssRNA-DR、ポリ(dT)、CL075、CL097、CL264、CL307、ガーディキモド、ロキソリビン、イミキモド、およびレシキモド(resiquimod)からなる群から選択されるTLR7/8のリガンド、
(vi)ODN1585、ODN1668、ODN1826、ODN2006、ODN2007、ODN2216、ODN2336、ODN2395、およびODN M362からなる群から選択されるTLR9のリガンド、
(vii)TLR10のリガンド、
(viii)NOD1作動薬(C12-iE-DAP、iE-DAP、Tri-DAP)、NOD2作動薬(L18-MDP、MDP、M-TriLYS、M-TriLYS-D-ASN、ムラブチド(Murabutide)、N-グリコリル-MDP)、およびNOD1/NOD2作動薬(M-TriDAP、PGN)からなる群から選択されるヌクレオチドオリゴマー化ドメイン(NOD)様のリガンド、
(ix)5′ppp-dsRNA、ポリ(dA:dT)、ポリ(dG:dC)、およびポリ(I:C)からなる群から選択される1つ以上のRIG-I-様受容体(RLR)のリガンド、
(x)カードランAL、HKCA、HKSC、WGP、ザイモサン、およびトレハロース-6,6-ジベヘン酸塩からなる群から選択される1つ以上のC型レクチン受容体(CLR)のリガンド、
(xi)c-GMP、c-G-AMP、c-G-GMP、c-A-AMP、c-di-AMP、c-di-IMP、c-di-GMP、c-di-UMP、HSV-60、ISD、pCpG、ポリ(dA:dT)、ポリ(dG:dC)、ポリ(dA)、およびVACV-70からなる群から選択される1つ以上の細胞質DNAセンサー(CDS)のリガンド、あるいは
(xii)(a)NLRP3インフラマソームタンパク質複合体、好ましくはミョウバン結晶、ATP、CPPD結晶、ヘルモゾイン(Hermozoin)、MSU結晶、ナノSiO2、ナイジェリシン、および(b)AIM2インフラマソームタンパク質複合体、好ましくはポリ(dA:dT)からなる群から選択されるインフラマソーム誘発剤、
を含む。
【0041】
幾つかの実施形態において、活性化部分は、IMO2134、IMO205、MGN-1703、MGN-1704、アガトリモド(Agatolimod)、SD-101、QAX-935、DIMS0150、ポリネクスクアットロ(Pollinex Quattro)、OM-174、エリトラン、TAK-242、NI-0101、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、IL-12、IL-23、IL-18、IL-7、またはIL-15を含む。
【0042】
参照による組み込み
本明細書に記述された全ての刊行物、特許、および特許出願は、まるでそれぞれ個別の刊行物、特許、および特許出願が特定的および個別に参照により組み込まれるように示されているかのように、同じ程度で、参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】複合化合物の特性を描写する。トラスツズマブMC-vc-レシキモド(resiquimod)およびトラスツズマブ-レシキモド(resiquimod)複合体の、Her2発現L細胞への結合を、FACS分析による決定によって、非複合トラスツズマブ(基準として)、対照ヒトIgG、および無関係のヒトIgG1抗体と比較する。
図2】トラスツズマブ、トラスツズマブMC-vc-TLRL、およびトラスツズマブMC-TLRL複合体のインビトロ抗体依存性細胞障害(ADCC)分析を描写する。PBMC(効果器細胞)をSKBR3細胞(標的細胞)と共に、対照ヒトIgG1、トラスツズマブ、またはトラスツズマブMC-vc-TLRLおよびトラスツズマブMC-TLRL複合体を異なる濃度で含有する96ウエルプレートに(標的/効果器比1/60)17時間加えた。全ての実験を二重に実施した。分析は、陰性SKBR3個体群の決定に基づいた。死細胞をLDHにより染色した。
図3A】濃縮前後のDCのパーセンテージを描写する。上側の2つのプロットにおける数字は、系統の枯渇前後の総細胞のDC(HLA-DR+Lin-)のパーセンテージを表す。下側のプロットにおける数字は、系統の枯渇前後の総DCのmDC(CD11C+CD123-)およびpDC(CD123+CD11C-)のパーセンテージを表す。
図3B】精製されたヒトDCのサイトカイン産生の分析を描写する。精製されたヒトDCを96ウエルプレートに播種し、同種未処理(培地)または処理済みの異なる濃度のTLRL、またはトラスツズマブMC-vc-TLRLおよびトラスツズマブMC-TLRLと共に、37℃のインキュベーターにおいて直接20~22時間培養した。別の実験において、増加濃度のセツキシマブMC-vc-TLRLおよびセツキシマブMC-TLRLを、ヒトDCによる処理のために提供した。上澄みを収集し、ヒトIFN-α、IL-6、IL-12(p70)、およびTNF-αをELISAにより分析した。データは三連培養物の平均±SDで提示され、3人の健康な提供者の2人からの独立した実験の代表値である。
図3C】精製されたヒトDCのサイトカイン産生の分析を描写する。精製されたヒトDCを96ウエルプレートに播種し、同種未処理(培地)または処理済みの異なる濃度のTLRL、またはトラスツズマブMC-vc-TLRLおよびトラスツズマブMC-TLRLと共に、37℃のインキュベーターにおいて直接20~22時間培養した。別の実験において、増加濃度のセツキシマブMC-vc-TLRLおよびセツキシマブMC-TLRLを、ヒトDCによる処理のために提供した。上澄みを収集し、ヒトIFN-α、IL-6、IL-12(p70)、およびTNF-αをELISAにより分析した。データは三連培養物の平均±SDで提示され、3人の健康な提供者の2人からの独立した実験の代表値である。
図3D】精製されたヒトDCのサイトカイン産生の分析を描写する。精製されたヒトDCを96ウエルプレートに播種し、同種未処理(培地)または処理済みの異なる濃度のTLRL、またはトラスツズマブMC-vc-TLRLおよびトラスツズマブMC-TLRLと共に、37℃のインキュベーターにおいて直接20~22時間培養した。別の実験において、増加濃度のセツキシマブMC-vc-TLRLおよびセツキシマブMC-TLRLを、ヒトDCによる処理のために提供した。上澄みを収集し、ヒトIFN-α、IL-6、IL-12(p70)、およびTNF-αをELISAにより分析した。データは三連培養物の平均±SDで提示され、3人の健康な提供者の2人からの独立した実験の代表値である。
図4A】PDX胃癌モデルにおけるトラスツズマブMC-vc-TLRLおよびトラスツズマブMC-TLRLの治療効能を描写する。皮下に患者由来胃腫瘍を担持する、BALB/c nu/nuヌードマウスの6~8週齢の雌マウスに、10mg/kgのトラスツズマブMC-vc-TLRL、トラスツズマブMC-TLRL、もしくは非複合トラスツズマブ、または生理食塩水を静脈内投与して処理した(1群あたり12匹のマウス)。処理は、45日間にわたって毎週実施した。治療は、腫瘍が平均して170mmのサイズに達したときに開始した。図4A:データは、平均腫瘍体積(平均±SD)を表す。腫瘍増殖曲線は、腫瘍が2000mmのサイズに達したときに停止した。
図4B】PDX胃癌モデルにおけるトラスツズマブMC-vc-TLRLおよびトラスツズマブMC-TLRLの治療効能を描写する。皮下に患者由来胃腫瘍を担持する、BALB/c nu/nuヌードマウスの6~8週齢の雌マウスに、10mg/kgのトラスツズマブMC-vc-TLRL、トラスツズマブMC-TLRL、もしくは非複合トラスツズマブ、または生理食塩水を静脈内投与して処理した(1群あたり12匹のマウス)。処理は、45日間にわたって毎週実施した。治療は、腫瘍が平均して170mmのサイズに達したときに開始した。図4B:治療の間および後でのマウスの体重の変動。検出可能な体重減少は観察されなかった。
図4C】PDX胃癌モデルにおけるトラスツズマブMC-vc-TLRLおよびトラスツズマブMC-TLRLの治療効能を描写する。皮下に患者由来胃腫瘍を担持する、BALB/c nu/nuヌードマウスの6~8週齢の雌マウスに、10mg/kgのトラスツズマブMC-vc-TLRL、トラスツズマブMC-TLRL、もしくは非複合トラスツズマブ、または生理食塩水を静脈内投与して処理した(1群あたり12匹のマウス)。処理は、45日間にわたって毎週実施した。治療は、腫瘍が平均して170mmのサイズに達したときに開始した。図4C:処理および対照群の生存曲線、トラスツズマブMC-vc-TLRLまたは非複合トラスツズマブを受けたマウスでは有意な延長。
図5A】ヌード/H1650ヒト肺癌モデルにおけるセツキシマブMC-vc-TLRLの治療効能を描写する。皮下にH1650肺癌細胞を担持する、BALB/c nu/nuヌードマウスの6~8週齢の雌マウスに、10mg/kgのセツキシマブMC-vc-TLRLもしくは非複合セツキシマブ、または生理食塩水を静脈内投与して処理した(1群あたり12匹のマウス)。処理は、45日間にわたって毎週実施した。治療は、腫瘍が平均して170mmのサイズに達したときに開始した。データは、平均腫瘍体積(平均±SD)を表す。腫瘍増殖曲線は、腫瘍が2000mmのサイズに達したときに停止した。図5A:ヒト肺癌モデルにおけるセツキシマブMC-vc-TLRLの治療効能。
図5B】ヌード/H1650ヒト肺癌モデルにおけるセツキシマブMC-vc-TLRLの治療効能を描写する。皮下にH1650肺癌細胞を担持する、BALB/c nu/nuヌードマウスの6~8週齢の雌マウスに、10mg/kgのセツキシマブMC-vc-TLRLもしくは非複合セツキシマブ、または生理食塩水を静脈内投与して処理した(1群あたり12匹のマウス)。処理は、45日間にわたって毎週実施した。治療は、腫瘍が平均して170mmのサイズに達したときに開始した。データは、平均腫瘍体積(平均±SD)を表す。腫瘍増殖曲線は、腫瘍が2000mmのサイズに達したときに停止した。図5B:治療の間および後でのマウスの体重の変動。検出可能な体重減少は観察されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の新規特徴は、添付の特許請求の範囲において特定的に記載される。本発明の特徴および利点のより良好な理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の発明を実施するための形態および添付図面を参照することによって得られる。
【0045】
本発明の幾つかの態様が、例示のために適用例を参照しながら下記に記載されている。多数の特定の詳細、関係性、および方法が、本発明の完全な理解を提供するために記載されていることを、理解するべきである。しかし当業者は、本発明が1つ以上の特定の詳細を用いることなく、または他の方法を用いて実施され得ることを、容易に認識する。本発明は、作用または事象の例示された順番に限定されず、幾つかの作用は、他の作用または事象と異なる順番で、および/または同時に生じ得る。
【0046】
更に、全ての例示された作用または事象が、本発明の方法論の実施を必要とするわけではない。
【0047】
本明細書において使用される用語法は、特定の実施形態を記載するだけの目的であり、本発明を限定することを意図しない。本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、特に文脈から別段に明白に示されない限り、複数形を含むことも意図される。更に、用語「含む(including)」、「挙げられる(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、またはこれらの変形が、発明を実施するための形態および/または特許請求の範囲のいずれかに使用される程度において、そのような用語は、用語「含む(comprising)」と同じ意味で包括的であることが意図される。
【0048】
用語「約」または「およそ」は、当業者により決定される特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味し、これは、部分的には、値がどのように測定または決定されたか、すなわち測定系の限界によって決まる。例えば「約」は、当該技術の実践にしたがって、1以内または1を越える標準偏差を意味することができる。あるいは、「約」は、所定の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、より好ましくは更に1%までの範囲を意味することができる。あるいは、特に生物系または過程に関して、用語は、値の桁数の範囲内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味することができる。特定の値が出願および特許請求の範囲に記載される場合、特に記述のない限り、特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味する用語「約」が、想定されるべきである。
【0049】
1.定義および略語
特に定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、一般に、本発明が属する当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書、ならびに細胞培養、分子遺伝子技術、有機化学、および核酸化学とハイブリッド形成における実験室手順に使用される命名法は、当該技術において周知であり、一般的に用いられているものである。標準的な技術が、核酸およびペプチド合成に使用される。技術および手順は、当該技術における従来の方法、およびこの文書の全体にわたって提供されている多様な一般的な参照に従って一般に実施される。本明細書、ならびに分析化学および下記に記載されている有機合成における実験室手順に使用される命名法は、当該技術において周知であり、一般的に用いられているものである。標準的な技術またはそれらの変更が、化学合成および化学分析に使用される。
【0050】
用語「アルキル」は、それ自体または別の置換基の一部として、特に記述のない限り、直鎖もしくは分岐鎖もしくは環状の炭化水素ラジカル、またはこれらの組み合わせを意味し、これらは、完全飽和、単または多不飽和であり得、指定された数の炭素原子を有する(すなわち、C~C10は1~10個の炭素を意味する)二価および多価ラジカルを含むことができる。飽和炭化水素ラジカルの例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチルのような基、例えばn-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルの相同体および異性体などが挙げられるが、これらに限定されない。不飽和アルキル基は1つ以上の二重結合または三重結合を有する基である。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、ならびにより高次のホモログおよび異性体が挙げられるが、これらに限定されない。用語「アルキル」は、特に示されない限り、「ヘテロアルキル」のように、下記により詳細に定義されるアルキルの誘導体を含むことも意図される。炭化水素基に限定されるアルキル基は、「ホモアルキル」と呼ばれる。
【0051】
用語「アルキレン」は、それ自体または別の置換基の一部として、-CHCHCHCH-により例示されるが、これに限定されないアルカンから誘導される二価ラジカルを意味し、下記に「ヘテロアルキレン」と記載される基を更に含む。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は、1~24個の炭素原子を有し、10個以下の炭素原子を有するこれらの基が本発明に好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、一般に8個以下の炭素原子を有する短鎖アルキルまたはアルキレン基である。
【0052】
用語「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)は、従来の意味で使用され、酸素原子、アミノ基、または硫黄原子を介して分子の残りの部分にそれぞれ結合しているアルキル基を意味する。
【0053】
用語「ヘテロアルキル」は、それ自体または別の用語と組み合わされて、特に記述のない限り、記述された数の炭素原子、ならびにO、N、Si、およびSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子から構成され、かつ窒素および硫黄原子が場合により酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子が、場合により四級化されていてもよい、安定した直鎖もしくは分岐鎖もしくは環状炭化水素ラジカル、またはこれらの組み合わせを意味する。ヘテロ原子(複数可)のO、N、およびS、およびSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置、またはアルキル基が分子の残りの部分に結合している位置に配置され得る。例には、-CH-CH-O-CH、-CH-CH-NH-CH、-CH-CH-N(CH)-CH、-CH-S-CH-CH、-CH-CH、-S(O)-CH、-CH-CH-S(O)-CH、-CH=CH-O-CH、-Si(CH、-CH-CH=N-OCH、および-CH=CH-N(CH)-CHが挙げられるが、これらに限定されない。2個までのヘテロ原子は、例えば-CH-NH-OCHおよび-CH-O-Si(CHのように連続的であり得る。同様に、用語「ヘテロアルキレン」は、それ自体または別の置換基の一部として、-CH-CH-S-CH-CH-および-CH-S-CH-CH-NH-CH-により例示されるが、これらに限定されないヘテロアルキルから誘導される二価ラジカルを意味する。ヘテロアルキレン基に対して、ヘテロ原子は、鎖末端のいずれか、または両方を占有することもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。またさらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基に対して、連結基の向きは、連結基の式が記載される方向により意味されない。例えば、式:-C(O)R′-は、-C(O)R′-および-R′C(O)-の両方を表す。
【0054】
一般に、「アシル置換基」も、上記に記載された基から選択される。本明細書で使用されるとき、用語「アシル置換基」は、結合して、本発明の化合物の多環式核に直接的または間接的に結合したカルボニル炭素の原子価を満たす基を意味する。
【0055】
用語「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」は、それら自体または他の用語と組み合わされて、特に記述のない限り、それぞれ「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状型を表す。加えて、ヘテロシクロアルキルに対して、ヘテロ原子は、そのヘテロ環が分子の残りの部分に付加される位置を占有することができる。シクロアルキルの例には、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロへキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキルの例には、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、これら自体または別の置換基の一部として、特に記述のない限り、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。加えて、「ハロアルキル」のような用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことが意図される。例えば、用語「ハロ(C~C)アルキル」は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むが、これらに限定されないことが意図される。
【0057】
用語「アリール」は、特に記述のない限り、多不飽和芳香族炭化水素置換基を意味し、これは単環または多環式の環(好ましくは、1~3つの環)であり得、これらは共に縮合している、または共有結合している。用語「ヘテロアリール」は、N、O、およびSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有するアリール基(または環)を意味し、ここで窒素および硫黄原子は、場合により酸化されており、窒素原子(複数可)は、場合により四級化されている。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して、分子の残りの部分に結合することができる。アリールおよびヘテロアリール基の例としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリルが挙げられるが、これらに限定されない。上記に示されたアリールおよびヘテロアリール環系のそれぞれにおける置換基は、下記に記載されている許容される置換基の群から選択される。
【0058】
簡潔さのため、用語「アリール」は、他の用語と組み合わせて使用されたとき(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)、上記に定義されたアリールおよびヘテロアリール環の両方を含む。このように、用語「アリールアルキル」は、炭素原子(例えば、メチレン基)が例えば酸素原子に代えられているアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピルなど)を含むアルキル基にアリール基が結合しているラジカル(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)を含むことが意図される。
【0059】
上記の用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」、および「ヘテロアリール」)のそれぞれは、示されたラジカルの置換および非置換形態の両方を含む。それぞれの種類のラジカルの好ましい置換基は、下記に提供されている。
【0060】
アルキルおよびヘテロアルキルラジカル(多くの場合にアルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルと呼ばれている基を含む)の置換基は、一般に、それぞれ「アルキル置換基」および「ヘテロアルキル置換基」と呼ばれており、これらは、-OR′、=O、=NR′、=N-OR′、-NR′R″、-SR′、-ハロゲン、-SiR′R″R'''、-OC(O)R′、-C(O)R′、-COR′、-CONR′R″、-OC(O)NR′R″、-NR″C(O)R′、-NR′-C(O)NR″R'''、-NR″C(O)R′、-NR-C(NR′R″R''')=NR''''、-NR-C(NR′R″)=NR'''、-S(O)R′、-S(O)R′、-S(O)NR′R″、-NRSOR′、-CN、および-NOから選択されるが、これらに限定されない1つ以上の様々な基であり得、ここで数はゼロから(2m′+1)の範囲であり、m′は、そのようなラジカルの炭素原子の総数である。R′、R″、R'''、およびR''''は、それぞれ好ましくは独立して、水素、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、例えば1~3つのハロゲンで置換されているアリール、置換もしくは非置換アルキル、アルコキシ、もしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を意味する。本発明の化合物が1つを越えるR基を含む場合、例えば、それぞれのR基は、1つを越えるこれらの基が存在する場合、それぞれR′、R″、R'''、およびR''''基として独立して選択される。R′およびR″が同じ窒素原子に結合している場合、これらは窒素原子と組み合わされて、5員、6員、または7員環を形成することができる。例えば、-NR′R″は1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを含むが、これらに限定されないことが意図される。置換基についての上記の考察から、当業者は、用語「アルキル」が、ハロアルキル(例えば、-CFおよび-CHCF)、ならびにアシル(例えば、-C(O)CH、-C(O)CF、-C(O)CHOCHなど)のように、水素基以外の基に結合している炭素原子を含む基を含むことが意図されることを理解する。
【0061】
アルキルラジカルに対して記載された置換基と同様に、アリール置換基およびヘテロアリール置換基は、一般に、それぞれ「アリール置換基」および「ヘテロアリール置換基」と呼ばれ、様々であり、例えばハロゲン、-OR′、=O、=NR′、=N-OR′、-NR′R″、-SR′、-ハロゲン、-SiR′R″R'''、-OC(O)R′、-C(O)R′、-COR′、-CONR′R″、-OC(O)NR′R″、-NR″C(O)R′、-NR′-C(O)NR″R'''、-NR″C(O)R′、-NR-C(NR′R″)=NR'''、-S(O)R′、-S(O)R′、-S(O)NR′R″、-NRSOR′、-CNおよび-NO、-R′、-N、-CH(Ph)、フルオロ(C~C)アルコキシおよびフルオロ(C~C)アルキルから選択され、ここで数はゼロから芳香族環系の空原子価(open valence)の総数の範囲であり、R′、R″、R'''、およびR''''は、好ましくは、水素、(C~C)アルキルおよびヘテロアルキル、非置換アリールおよびヘテロアリール、(非置換アリール)-(C~C)アルキルおよび(非置換アリール)オキシ-(C~C)アルキルから独立して選択される。本発明の化合物が1つを越えるR基を含む場合、例えば、それぞれのR基は、1つを越えるこれらの基が存在する場合、それぞれR′、R″、R'''、およびR''''基として独立して選択される。
【0062】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子におけるアリール置換基のうちの2つは、場合により、式:-T-C(O)-(CRR′)-U-の置換基に代えられていてもよく、式中、TおよびUは、独立して、-NR-、-O-、-CRR′-、または単結合であり、qは、0~3の整数である。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子における置換基のうちの2つは、場合により、式:-A-(CH-B-の置換基に代えられていてもよく、式中、AおよびBは、独立して、-CRR′-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)-、-S(O)NR′-、または単結合であり、rは、1から4の整数である。そのように形成された新規環の単結合のうちの1つは、任意に二重結合と置き換えられることがある。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子における置換基のうちの2つは、場合により、式:-(CRR′)-X-(CR″R''')-の置換基に代えられていてもよく、式中、sおよびdは、独立して0~3の整数であり、Xは、-O-、-NR′-、-S-、-S(O)-、-S(O)-、または-S(O)NR′-である。置換基R、R′、R″、およびR'''は、好ましくは、水素、または置換もしくは非置換(C~C)アルキルから独立して選択される。
【0063】
本明細書で使用されるとき、用語「ヘテロ原子」は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、リン(P)、およびケイ素(Si)を含む。
【0064】
II.組成物
一態様において、本発明は、式(I)、TM-Ln-AM (I)の構造を有する化合物であって、
式中、TMは、標的部分であり、AMは、ヒト樹状細胞、NK細胞、もしくは腫瘍細胞、またはこれらの組み合わせを活性化することができる活性化部分であり、Lnは、リンカーであり、nは、0および1から選択される整数である、化合物を提供する。
【0065】
別の態様において、本発明は、式(I)、TM-Ln-AM (I)の構造を有する化合物であって、
式中、TMは、標的部分であり、AMは、ヒトTLR7および/またはTLR8に特異的に結合することができる活性化部分であり、Lnは、リンカーであり、nは、0および1から選択される整数である、化合物を提供する。
【0066】
更なる態様において、本発明は、式(I)、TM-Ln-AM (I)の構造を有する化合物であって、
式中、TMは、標的部分であり、AMは、活性化部分であり、Lnは、リンカーであり、nは、0および1から選択される整数であり、但し、TMが抗体を含む場合、AMは、CpGオリゴヌクレオチドまたは治療剤を含まない、化合物を提供する。
【0067】
A. 標的部分
一般に、本発明の化合物は、標的部分を含む。
【0068】
本明細書において「標的部分(TM)」または「標的剤」とは、一般的に「標的」または「マーカー」と呼ばれる、標的分子、細胞、粒子、組織、または凝集体に特異的または選択的に結合する分子、複合体、または凝集体を意味し、これらは本明細書において更に詳細に考察される。
【0069】
幾つかの実施形態において、標的部分は、免疫グロブリン、タンパク質、ペプチド、小分子、ナノ粒子、または核酸を含む。
【0070】
抗体(例えば、キメラ、ヒト化、およびヒト)、受容体のリガンド、レクチン、および多糖類、ならびにある特定の酵素の基質のような例示的な標的剤が、当該技術において認識されており、本発明の実施において制限されることなく有用である。他の標的剤は、特定の分子認識モチーフを含まず、活性化部分に分子量を付加するナノ粒子、ポリ(エチレングリコール)のような巨大分子、多糖、およびポリアミノ酸を含む部類の化合物を含む。付加分子量は、活性化部分の薬物動態、例えば血清半減期に影響を与える。
【0071】
幾つかの実施形態において、標的部分は、抗体、抗体フラグメント、二重特異的抗体、または他の抗体に基づいた分子もしくは化合物である。しかし、標的部分の他の例は、当該技術において知られており、例えば、アプタマー、アビマー(avimer)、受容体結合リガンド、核酸、ビオチンアビジン結合対、結合ペプチド、またはタンパク質などを使用することができる。用語「標的部分」および「結合部分」は、本明細書において同義的に使用される。
【0072】
標的
本明細書において「標的」または「マーカー」とは、特定の標的部分に特異的に結合することができる任意の実体を意味する。幾つかの実施形態において、標的は、1つ以上の特定の細胞または組織型と特異的に関連する。幾つかの実施形態において、標的は、1つ以上の特定の疾患状態と特異的に関連する。幾つかの実施形態において、標的は、1つ以上の特定の発達段階と特異的に関連する。例えば、細胞型特異的マーカーは、典型的には、その細胞型において基準細胞個体群より少なくとも2倍大きなレベルで発現する。幾つかの実施形態において、細胞型特異的マーカーは、基準個体群における平均発現より少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、または少なくとも1,000倍大きなレベルで存在する。細胞型特異的マーカーの検出または測定は、多くの、大部分の、または全ての他の細胞型から、目的の細胞型(単数)または細胞型(複数)を識別することを可能にし得る。幾つかの実施形態において、標的は、本明細書に記載されているように、タンパク質、炭水化物、脂質、および/または核酸を含むことができる。
【0073】
物質は、核酸標的部分に特異的に結合する場合、本明細書に記載されている目的において「標的化される」と考慮される。幾つかの実施形態において、核酸標的部分は、厳密な条件下で標的に特異的に結合する。標的部分を含む本発明の複合体または化合物は、標的部分が標的に特異的に結合し、それによって複合体または化合物組成物の全体を、特定の臓器、組織、細胞、細胞外マトリックス成分、および/または細胞内区画に送達する場合、「標的化される」とみなされる。
【0074】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物は、臓器、組織、細胞、細胞外マトリックス成分、および/または細胞内区画と関連する1つ以上の標的(例えば、抗原)に特異的に結合する標的部分を含む。幾つかの実施形態において、化合物は、特定の臓器または臓器系と関連する標的に特異的に結合する標的部分を含む。幾つかの実施形態において、本発明の化合物は、1つ以上の細胞内標的(例えば、オルガネラ、細胞内タンパク質)に特異的に結合する核標的部分を含む。幾つかの実施形態において、化合物は、罹患した臓器、組織、細胞、細胞外マトリックス成分、および/または細胞内区画と関連する標的に特異的に結合する標的部分を含む。幾つかの実施形態において、化合物は、特定の細胞型(例えば、内皮細胞、癌細胞、悪性細胞、前立腺癌細胞など)と関連する標的に特異的に結合する標的部分を含む。
【0075】
幾つかの実施形態において、本発明の化合物は、1つ以上の特定の組織型(例えば、肝組織対前立腺組織)に特異的な標的に結合する標的部分を含む。幾つかの実施形態において、本発明の化合物は、1つ以上の特定の細胞型(例えば、T細胞対B細胞)に特異的な標的に結合する標的部分を含む。幾つかの実施形態において、本発明の化合物は、1つ以上の特定の疾患状態(例えば、腫瘍細胞対健康な細胞)に特異的な標的に結合する標的部分を含む。幾つかの実施形態において、本発明の化合物は、1つ以上の特定の発達段階(例えば、幹細胞対分化細胞)に特異的な標的に結合する標的部分を含む。
【0076】
幾つかの実施形態において、標的は、1つまたは幾つかの細胞型と、1つもしくは幾つかの疾患と、および/または1つもしくは幾つかの発達段階と独占的または一次的に関連するマーカーであり得る。細胞型特異的マーカーは、典型的には、例えばほぼ等しい量の複数(例えば、5~10またはそれ以上)の異なる組織もしくは臓器由来の細胞を含有する混合物からなり得る基準細胞個体群よりも、その細胞型において少なくとも2倍大きなレベルで発現する。幾つかの実施形態において、細胞型特異的マーカーは、基準個体群における平均発現より少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、または少なくとも1000倍大きなレベルで存在する。細胞型特異的マーカーの検出または測定は、多くの、大部分の、または全ての他の細胞型から、目的の細胞型(単数)または細胞型(複数)を識別することを可能にし得る。
【0077】
幾つかの実施形態において、標的は、タンパク質、炭水化物、脂質、および/または核酸を含む。幾つかの実施形態において、標的は、腫瘍マーカー、インテグリン、細胞表面受容体、膜貫通タンパク質、細胞間タンパク質、イオンチャンネル、膜輸送体タンパク質、酵素、抗体、キメラタンパク質、糖タンパク質などのような、タンパク質および/またはその特徴的な部分を含む。幾つかの実施形態において、標的は、糖タンパク質、糖(例えば、単糖、二糖、多糖)、糖衣(すなわち、大部分の真核細胞の外側表面の炭水化物豊富辺縁帯)などのような、炭水化物および/またはその特徴的な部分を含む。幾つかの実施形態において、標的は、油、脂肪酸、グリセリド、ホルモン、ステロイド(すなわち、コレステロール、胆汁酸)、ビタミン(例えば、ビタミンE)、リン脂質、スフィンゴ脂質、リポタンパク質などのような脂質および/またはその特徴的な部分を含む。幾つかの実施形態において、標的は、DNA核酸;RNA核酸;修飾DNA核酸;修飾RNA核酸;DNA、RNA、修飾DNA、および修飾RNAの任意の組み合わせを含む核酸のような、核酸および/またはその特徴的な部分を含む。
【0078】
多数のマーカーが当該技術において知られている。典型的なマーカーには、細胞表面タンパク質、例えば受容体が含まれる。例示的な受容体の例には、トランスフェリン受容体、LDL受容体、上皮増殖因子受容体ファミリーメンバー(例えば、EGFR、Her2、Her3、Her4)または血管内皮増殖因子受容体のような増殖因子受容体、サイトカイン受容体、細胞接着分子、インテグリン、セレクチン、およびCD分子が挙げられるが、これらに限定されない。マーカーは、悪性細胞に対して独占的または高量で存在する分子、例えば腫瘍抗原であり得る。
【0079】
腫瘍抗原
幾つかの実施形態において、標的部分は、非腫瘍細胞と比較して、腫瘍細胞に特異的または優先的に結合することができる。
【0080】
標的部分の腫瘍細胞への結合は、当該技術に既知のアッセイを使用して測定することができる。
【0081】
幾つかの実施形態において、腫瘍細胞は、癌腫、肉腫、リンパ腫、骨髄腫、または中枢神経系癌のものである。
【0082】
幾つかの実施形態において、標的部分は、非腫瘍抗原と比較して、腫瘍抗原に特異的または優先的に結合することができる。
【0083】
本明細書において「特異的に結合する」または「優先的に結合する」は、2つの結合パートナー間の結合(例えば、標的部分とその結合パートナーとの間)が、2つの結合パートナーにとって選択的であり、不要または非特異的な相互作用と区別され得ることを意味する。例えば、特定の抗原決定基に結合する抗原結合部分の能力は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または、当業者に周知の他の技術、例えば、表面プラスモン共鳴技術(BIAcore機器により分析)(Liljeblad et al.,Glyco J 17,323-329(2000))および伝統的な結合アッセイ(Heeley,Endocr Res 28,217-229(2002))のいずれかによって測定することができる。用語「抗[抗原]抗体」および「[抗原]に結合する抗体」は、抗体が抗原を標的にする診断および/または治療剤として有用であるように、十分な親和性を持って対応する抗原に結合することができる抗体を意味する。幾つかの実施形態において、無関係のタンパク質への抗[抗原]抗体の結合の程度が、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)により測定して、抗原への抗体の結合が約10%未満である。幾つかの実施形態において、[抗原]に結合する抗体は、<1μΜ、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、または<0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(KD)を有する。上記の定義は、抗原に結合する抗原結合部分にも適用可能であることが理解される。
【0084】
ある特定の実施形態において、標的は腫瘍マーカーである。幾つかの実施形態において、腫瘍マーカーは、正常な臓器、組織、および/または細胞に存在しない、腫瘍に存在する抗原である。幾つかの実施形態において、腫瘍マーカーは、正常な臓器、組織、および/または細胞よりも腫瘍において多く見られる抗原である。幾つかの実施形態において、腫瘍マーカーは、正常な細胞よりも悪性癌細胞において多く見られる抗原である。
【0085】
本明細書において「腫瘍抗原」とは、腫瘍細胞により産生される抗原性物質を意味し、すなわち、宿主において免疫応答を引き起こす。体内の正常なタンパク質は、自己反応性細胞障害性Tリンパ球(CTL)および自己抗体産生Bリンパ球が、一次リンパ組織(BM)において「中枢的に」、二次リンパ組織(主にT細胞では胸腺であり、B細胞では脾臓/リンパ節である)において「末梢的」選別されるプロセスである自己寛容のために、抗原性ではない。このように、免疫系に曝露されない任意のタンパク質が、免疫応答を引き起こす。これには、免疫系から十分に隔絶されている正常なタンパク質、通常は極めて少量で産生されるタンパク質、通常はある特定の発達段階においてのみ産生されるタンパク質、または構造が突然変異に起因して修飾されるタンパク質が含まれ得る。
【0086】
幾つかの実施形態において、標的は、正常な組織および/または細胞に対して腫瘍組織および/または細胞に優先的に発現する。
【0087】
本発明の幾つかの実施形態において、マーカーは腫瘍マーカーである。マーカーは、非分裂細胞よりも分裂細胞において高いレベルで発現するポリペプチドであり得る。例えば、Her2/neu(ErbB-2としても知られている)は、EGF受容体ファミリーのメンバーであり、乳癌に関連する腫瘍の細胞表面に発現する。別の例は、ナノ粒子をヌクレオリンに向かわせるのに適した標的剤であるF3として知られているペプチドである(Porkka et al.,2002,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,99:7444;and Christian et al.,2003,J.Cell Biol.,163:871)。ナノ粒子およびA10アプタマー(PSMAに特異的に結合する)を含む標的化粒子は、ドセタキセルを前立腺癌腫瘍に特異的および効果的に送達できたことが示されている。
【0088】
腫瘍細胞の生物学的挙動のシグナル伝達経路を特異的に干渉および調節する、これらの腫瘍標的を特異的に標的にする抗体または他の薬剤は、直接的に調節して、またはシグナル伝達経路を遮断して、腫瘍細胞の増殖を阻害する、またはアポトーシスを誘発する。現在まで、数十の標的薬剤が、固形腫瘍または血液学的悪性腫瘍の臨床研究および治療に対して承認されており、多数の標的化薬剤が血液学的悪性腫瘍のために存在する。
【0089】
幾つかの実施形態において、腫瘍抗原(または腫瘍標的)は、CD2、CD19、CD20、CD22、CD27、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD47、CD52、CD56、CD70、CD79、およびCD137からなる群から選択される。
【0090】
幾つかの実施形態において、腫瘍抗原(または腫瘍標的)は、4-1BB、5T4、AGS-5、AGS-16、アンジオポエチン2、B7.1、B7.2、B7DC、B7H1、B7H2、B7H3、BT-062、BTLA、CAIX、癌胎児性抗原、CTLA4、クリプト(Cripto)、ED-B、ErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EGFL7、EpCAM、EphA2、EphA3、EphB2、FAP、フィブロネクチン、葉酸受容体、ガングリオシドGM3、GD2、グルココルチコイド誘発性腫瘍壊死因子受容体(GITR)、gp100、gpA33、GPNMB、ICOS、IGF1R、インテグリンαν、インテグリンανβ、KIR、LAG-3、ルイスY抗原、メソテリン、c-MET、MN炭酸脱水酵素IX、MUC1、MUC16、ネクチン-4、NKGD2、NOTCH、X40、OX40L、PD-1、PDL1、PSCA、PSMA、RANKL、ROR1、ROR2、SLC44A4、シンデカン-1、TACI、TAG-72、テネイシン、TIM3、TRAILR1、TRAILR2、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、およびこれらの変異体からなる群から選択される。腫瘍抗原の変異体は、当該技術に既知の、および/または天然に生じる様々な突然変異体またはポリンポルミズム(polympormism)を包含する。
【0091】
抗体:
幾つかの実施形態において、標的部分は、抗体またはその機能性フラグメントを含む。
【0092】
本明細書において「免疫グロブリン」または「抗体」は、完全長(すなわち、天然に生じる、もしくは正常な免疫グロブリン遺伝子フラグメント組み換えプロセスにより形成される)免疫グロブリン分子(例えば、IgG抗体)、または抗体フラグメントのような、免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な(すなわち、特異的に結合する)部分を意味する。抗体または抗体フラグメントは、主張される主題の範囲内で複合され得る、そうでなければ誘導体化され得る。そのような抗体には、IgGl、lgG2a、IgG3、IgG4(およびIgG4サブフォーム)、ならびにIgAアイソフォームが含まれる。
【0093】
本明細書における用語「抗体」は、最も広い意味で使用されており、所望の抗原結合活性を示し、かつFc領域または免疫グロブリンのFc領域に等しい領域を含む限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、および抗体フラグメントが含まれるが、これらに限定されない様々な抗体構造を包含する。用語「完全長抗体」、「未処理抗体」、および「全抗体」は、本明細書において交換可能に使用され、未変性抗体構造と実質的に類似した構造を有する、または本明細書に定義されているFc領域を含有する重鎖を有する抗体を意味する。
【0094】
本明細書において「未変性抗体」とは、様々な構造を有する天然に生じる免疫グロブリン分子を意味する。例えば、未変性IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。NからC末端まで、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)がその後に続く。同様に、NからC末端まで、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、軽鎖定常領域とも呼ばれる定常軽鎖(CL)ドメインがその後に続く。抗体の軽鎖を、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの型のうちの1つに割り当てることができる。
【0095】
本明細書において「抗体フラグメント」とは、未処理抗体が結合する抗原に結合する未処理抗体の一部を含む未処理抗体以外の分子を意味する。抗体フラグメントの例には、Fv、Fab、Fab′、Fab′-SH、F(ab′)2、二特異性抗体、線状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、単一ドメイン抗体、および抗体フラグメントから形成される多特異的抗体が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の抗体フラグメントの概説には、例えば、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)を参照すること。scFvフラグメントの概説には、例えば、Pliickthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照すること。また国際公開第93/16185号、ならびに米国特許第5,571,894号および同第5,587,458号を参照すること。再利用受容体結合エピトープ残基を含み、かつ増加したインビボ半減期を有するFabおよびF(ab′)2フラグメントの考察には、米国特許第5,869,046号を参照すること。二特異性抗体は、二価または二重特異的であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントである。例えば、欧州特許第404,097号、国際公開第1993/01161号、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)、およびHollinger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90,6444-6448(1993)を参照すること。また三特異性抗体(triabodies)および四特性抗体(tetrabodies)も、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)に記載されている。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部、または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む抗体フラグメントである。ある特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis, Inc.,Waltham,MA、例えば米国特許第6,248,516B1号を参照すること)。抗体フラグメントは、本明細書に記載されているように、未処理抗体のタンパク質分解性消化、ならびに組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌またはファージ)による産生が含まれるが、これらに限定されない種々の技術により産生されることができる。
【0096】
本明細書において「抗原結合ドメイン」は、抗原の一部または全てに特異的に結合し、かつ相補的である領域を含む抗体の部分を意味する。抗原結合ドメインは、例えば、1つ以上の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)により提供され得る。特に、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含む。
【0097】
本明細書において「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを意味する。未変性抗体の重鎖および軽鎖(それぞれ、VHおよびVL)の可変ドメインは、一般に同様の構造を有し、各ドメインは、4つの保存フレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(HVR)を含む。例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照すること。単一のVHまたはVLドメインが、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。
【0098】
本明細書において「超可変領域」または「HVR」とは、配列において超可変である、および/または構造的に確定されたループ(「超可変ループ」)を形成する、抗体可変ドメインの各領域を意味する。一般に、未変性4鎖抗体は、6つのHVRを含み、それは、VH(H1、H2、H3)における3つのHVR、およびVL(L1、L2、L3)における3つのHVRである。HVRは、一般に、超可変ループ由来の、および/または相補性決定領域(CDR)由来のアミノ酸残基を含み、後者は、配列可変性が一番高いものである、および/または抗原認識に関与する。VHにおけるCDR1を除いて、CDRは、一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。超可変領域(HVR)は、「相補性決定領域」(CDR)とも呼ばれ、これらの用語は、抗原結合領域を形成する可変領域の部分の参照に際し、本明細書において交換可能に使用される。この特定の領域は、Kabat et al. U.S.Dept.of Health and Human Services,Sequences of Proteins of Immunological Interest(1983)およびChothia et al.,J Mol Biol 196:901-917(1987)により記載されており、定義には、互いに比較したとき、アミノ酸残基の重複またはサブセットが含まれる。いずれにしても、抗体またはその変異体のCDRを参照するいずれかの定義は、本明細書において定義および使用される用語の範囲内であることが意図される。特定のCDRを包含する正確な残基数は、配列およびCDRのサイズに応じて変わる。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列を考慮すると、どの残基が特定のCDRを含むかについて日常的に決定することができる。
【0099】
本発明の抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、または抗体融合タンパク質であり得る。
【0100】
本明細書ににおいて「キメラ抗体」とは、1つの種から誘導された抗体、好ましくは齧歯類抗体、より好ましくはネズミ抗体の相補性決定領域(CDR)を含む、重および軽抗体鎖の両方の可変領域を含有する組み換えタンパク質を意味し、一方、抗体分子の定常領域は、ヒト抗体のものから誘導される。獣医用途では、キメラ抗体の定常ドメインは、類人霊長類、ネコ、またはイヌのような他の種のものから誘導され得る。
【0101】
本明細書において「ヒト化抗体」とは、1つの種からの抗体、例えば齧歯類抗体由来のCDRが、齧歯類抗体の重および軽可変鎖からヒト重および軽可変ドメインに変換される、組み合えタンパク質を意味する。抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体のものから誘導される。幾つかの実施形態において、ヒト化抗体のフレームワーク領域の特定の残基、特に、CDR配列に接触するまたは近いものは、修飾され得、例えば元の齧歯類、類人霊長類、または他の抗体由来の対応する残基に代えられ得る。
【0102】
本明細書において「ヒト抗体」とは、例えば、抗原負荷に応答して特定のヒト抗体を産生するように「操作」された遺伝子導入マウスから得た抗体を意味する。この技術においてヒト重および軽鎖座のエレメントは、内在性の重および軽鎖座の標的化破損(targeted disruptions)を含有する胚幹細胞系から誘導されるマウスの株に導入される。遺伝子導入マウスは、ヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、該マウスを、ヒト抗原分泌ハイブリドーマの産生に使用することができる。遺伝子導入マウスからヒト抗体を得る方法は、Green et al,Nature Genet.7:13(1994),Lonberg et al,Nature 368:856(1994)およびTaylor et al,Int.Immun.6:579(1994)に記載されている。完全なヒト抗体も、遺伝子または染色体形質移入法、ならびにファージディスプレイ技術により構築することができ、これらは全て当該技術において知られている。未免疫化供給者由来の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからの、インビトロにおけるヒト抗体およびそのフラグメントの産生について、例えば、McCafferty et al,Nature 348:552-553(1990)を参照すること。この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子は、フレームにおいて、繊維状バクテリオファージの主要または微量コートタンパク質遺伝子のいずれかにクローンされ、ファージ粒子の表面に機能性抗体フラグメントとして表示される。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するので、抗体の機能性の特性に基づいた選択も、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択という結果になる。このような方法で、ファージはB細胞の幾つかの特性を模倣する。ファージディスプレイは様々なフォーマットで実施することができ、これらの概説には、例えばJohnson and Chiswell Current Opinion in Structural Biology 3:5564-571(1993)を参照すること。ヒト抗体も、インビトロ活性化B細胞により生成され得る。その全体が参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号を参照すること。
【0103】
本明細書において「抗体融合タンパク質」とは、2つ以上の同じまたは異なる天然の抗体、一本鎖抗体、または同じもしくは異なる特異性を有する抗体フラグメントのセグメントが結合している、組み換え的に産生された抗原結合分子を意味する。融合タンパク質は、少なくとも1つの特異的結合部位を含む。融合タンパク質の原子価は、抗原(複数可)またはエピトープ(複数可)に対して、融合タンパク質が有する結合アームまたは部位の総数を示し、すなわち、一価、二価、三価、または多価である。抗体融合タンパク質の多価性は、抗原への結合において複数の相互作用を利用することができ、したがって抗原または異なる抗原への結合の親和性を向上させることを意味する。特異性は、どれくらい異なる種類の抗原またはエピトープに、抗体融合タンパク質が結合できるか、すなわち、単一特異性、二重特異性、三重特異性、多重特異性を示す。これらの定義を使用して、天然抗体、例えばIgGは二価であり、それは、1種類の抗原またはエピトープに結合するので、2つの結合アームを有するが単一特異性であるからである。単一特異性の多価融合タンパク質は、同じ抗原またはエピトープに対して1つを越える結合部位を有する。例えば、単一特異性の二特異性抗体は、同じ抗原に反応性を持つ2つの結合部位を有する融合タンパク質である。融合タンパク質は、異なる抗体成分または同じ抗体成分の複数コピーの多価または多重特異性の組み合わせを含むことができる。融合タンパク質は、追加的に治療剤を含むことができる。
【0104】
幾つかの実施形態において、標的部分は、目的の標的細胞または標的部位において発現された抗原に対する特異性に基づいて選択される、抗体または抗体フラグメントである。多種多様な腫瘍特異性または他の疾患特異性抗原が同定されており、これらの抗原に対す抗体は、そのような腫瘍または他の疾患の治療に使用されてきた、または使用することが提案されてきた。当該技術に既知の抗体を、本発明の化合物に、特に、標的抗原が関連する疾患の治療に使用することができる。本発明の抗体リンカー薬剤複合体が標的にすることができる標的抗原(およびこれらの関連する疾患)の例には、CD2、CD19、CD20、CD22、CD27、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD47、CD52、CD56、CD70、CD79、CD137、4-1BB、5T4、AGS-5、AGS-16、アンジオポエチン2、B7.1、B7.2、B7DC、B7H1、B7H2、B7H3、BT-062、BTLA、CAIX、癌胎児性抗原、CTLA4、クリプト、ED-B、ErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EGFL7、EpCAM、EphA2、EphA3、EphB2、FAP、フィブロネクチン、葉酸受容体、ガングリオシドGM3、GD2、グルココルチコイド誘発性腫瘍壊死因子受容体(GITR)、gp100、gpA33、GPNMB、ICOS、IGF1R、インテグリンαν、インテグリンανβ、KIR、LAG-3、ルイスY、メソテリン、c-MET、MN炭酸脱水酵素IX、MUC1、MUC16、ネクチン-4、NKGD2、NOTCH、OX40、OX40L、PD-1、PDL1、PSCA、PSMA、RANKL、ROR1、ROR2、SLC44A4、シンデカン-1、TACI、TAG-72、テネイシン、TIM3、TRAILR1、TRAILR2、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3を挙げることができる。
【0105】
幾つかの実施形態において、抗体は、Rituxan(リツキシマブ)、Herceptin(トラスツズマブ)、Erbitux(セツキシマブ)、Vectibix(パニツムマブ)、Arzerra(オファツムマブ)、Benlysta(ベリムマブ)、Yervoy(イピリムマブ)、Perjeta(ペルツズマブ)、トレメリムマブ、ニボルマブ、ダセツズマブ、ウレルマブ、MPDL3280A、ランブロリズマブ、およびブリナツモマブからなる群から選択される。
【0106】
Rituxan(リツキシマブ)は、B細胞非ホジキンリンパ腫の治療に使用されるキメラ抗体である。これは、90%のB細胞非ホジキンリンパ腫において発現しているCD20抗原を発現する、B細胞の表面に対して作用する。RituxanはCD20に結合して、CDCおよびADCCを介してB細胞溶解を誘発する、ならびに幾つかの細胞障害性化学療法薬に対して薬剤耐性があるヒトリンパ球を感作する。
【0107】
Herceptin(トラスツズマブ)は、25%から30%の乳癌において発現しているHer2のヒト上皮増殖因子受容体細胞体ドメインに対して作用する、ヒト化モノクローナル抗体である。トラスツズマブは、(1)Her2受容体のダウンレギュレーション、Her2細胞内シグナル伝達経路の阻害、およびアポトーシスの誘発、(2)腫瘍細胞を死滅させる免疫機構関連抗体依存性ADCCおよびCDC、(3)化学療法の効果の増強を介して抗腫瘍効果を有すると考えられる。
【0108】
Erbitux(セツキシマブ)は、上皮増殖因子受容体(EGFR)に対して作用するキメラ抗体である。ErbituxはEGFRに結合して、そのシグナル伝達経路を阻害し、細胞増殖、浸潤、および転移、ならびに血管新生に影響を与える。EGFRシグナル伝達経路の阻害は、化学療法薬および放射線療法の効果を増強することができる。
【0109】
Avastin(ベバシズマブ)は、血管内皮増殖因子(VEGF)を標的にするヒト化モノクローナル抗体である。そのVEGFRへの結合は、VEGFおよびシグナル伝達経路を阻害し、腫瘍血管新生の阻害をもたらす。
【0110】
現在開発中の他の抗体も、標的部分として使用することができる。例えば、以下の標的に対する治療モノクローナル抗体が、腫瘍の治療のために開発中である。CD2、CD19、CD20、CD22、CD27、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD47、CD52、CD56、CD70、CD79、およびCD137、ならびに4-1BB、5T4、AGS-5、AGS-16、アンジオポエチン2、B7.1、B7.2、B7DC、B7H1、B7H2、B7H3、BT-062、BTLA、CAIX、癌胎児性抗原、CTLA4、クリプト、ED-B、ErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EGFL7、EpCAM、EphA2、EphA3、EphB2、FAP、フィブロネクチン、葉酸受容体、ガングリオシドGM3、GD2、グルココルチコイド誘発性腫瘍壊死因子受容体(GITR)、gp100、gpA33、GPNMB、ICOS、IGF1R、インテグリンαν、インテグリンανβ、KIR、LAG-3、ルイス、メソテリン、c-MET、MN炭酸脱水酵素IX、MUC1、MUC16、ネクチン-4、NKGD2、NOTCH、OX40、OX40L、PD-1、PDL1、PSCA、PSMA、RANKL、ROR1、ROR2、SLC44A4、シンデカン-1、TACI、TAG-72、テネイシン、TIM3、TRAILR1、TRAILR2、VEGFR-1、VEGFR-2、およびVEGFR-3、ならびにこれらの変異体。(Scott AM,Wolchok JD,Old LJ.Antibody Therapy of Cancer Nat Rev Cancer.2012,22:12(4):278-87)。
【0111】
幾つかの実施形態において、標的部分は、Fab、Fab′、F(ab′)2、単一ドメイン抗体、TおよびAbs二量体、Fv、scFv、dsFv、ds-scFv、Fd、線状抗体、ミニボディ、二特異性抗体、二重特異的抗体フラグメント、バイボディ、トリボディ、sc-二特異性抗体、カッパ(ラムダ)体、BiTE、DVD-Ig、SIP、SMIP、DART、または1つ以上のCDRを含む抗体類縁体を含む。
【0112】
以下の表は、様々な抗体構造および研究される標的を示す。
【表1】
【0113】
幾つかの実施形態において、標的部分は、VEGFRのATWLPPRポリペプチド、トロンボスポンジン-1模倣体、CDCRGDCFCG(環状)ポリペプチド、SCH221153フラグメント、NCNGRC(環状)ポリペプチド、CTTHWGFTLCポリペプチド、CGNKRTRGCポリペプチド(LyP-1)、オクトレオチド、バプレオチド、ランレオチド、C-3940ポリペプチド、デカペプチル、ルプロン、ゾラデックス、またはセトロレリクスを含む。
【0114】
葉酸
幾つかの実施形態において、標的部分は、葉酸またはその誘導体を含む。
【0115】
近年、葉酸の研究は大く前進している。葉酸は、細胞分裂に必要な小分子ビタミンである。腫瘍細胞は異常に分裂し、細胞分裂を支持するのに十分な葉酸を捕捉するために、腫瘍細胞表面に葉酸受容体(FR)を多く発現する。
【0116】
データは、腫瘍細胞におけるFR発現が正常細胞より20~200倍多いことを示す。様々な悪性腫瘍におけるFRの発現率は、卵巣癌では82%、非小細胞肺癌では66%、腎臓癌では64%、結腸癌では34%、乳癌では29%である(Xia W,Low PS.Late-targeted therapies for cancer.J Med Chem.2010;14;53(19):6811-24)。葉酸(FA)の発現率、ならびに上皮腫瘍浸潤および転移の悪性度は、正相関する。FAは、FR仲介エンドサイトーシスを介して細胞に侵入し、FAは、そのカルボキシル基を介して、細胞に侵入する薬剤とFA複合体を形成する。酸性条件下(pH5の値)では、FRはFAから分離し、FAは薬剤を細胞質に放出する。
【0117】
臨床的には、系を使用して、腫瘍細胞を選択的に攻撃する薬剤を送達することができる。葉酸は、小さい分子量を有し、非免疫原性および高い安定性を有し、合成するのに安価である。より重要なことは、薬剤と担体との化学結合が簡単であり、そのように、薬剤送達系を構築するために、FAを標的部分として使用することは、癌治療研究の活発な分野となっている。現在、臨床試験中のEC145(FA化学療法薬剤複合体化合物)は、癌細胞を有効に攻撃することができる(Pribble P and Edelman MJ.EC145:a novel targeted agent for adenocarcinoma of the lung.Expert Opin.Investig.Drugs(2012)21:755-761)。
【0118】
他の標的部分
幾つかの実施形態において、標的部分は、PD-1、CTLA4、CD47、BTLA、KIR、TIM3、4-1BB、LAG3、表面リガンドアンフィレギュリンの一部の完全長、ベータセルリン、EGF、エフリン、エピジェン、エピレギュリン、IGF、ニューレグリン、TGF、TRAIL、またはVEGFの細胞外ドメイン(ECD)または可溶形態を含む。
【0119】
ナノ粒子
幾つかの実施形態において、標的部分は、粒子(標的粒子)、好ましくはナノ粒子、場合により、標的に特異的または優先的に結合することができる標的分子に結合する標的化ナノ粒子を含む。幾つかの実施形態において、標的粒子は、それ自体本発明の化合物を(例えば、腫瘍細胞または組織中の濃縮によって)導き、その中には追加の標的化合物は何も結合していない。
【0120】
本明細書において「ナノ粒子」とは、1000nm未満の直径を有する任意の粒子を意味する。幾つかの実施形態において、治療剤および/または標的分子は、ポリマーマトリックスと関連することができる。幾つかの実施形態において、標的分子は、ポリマーマトリックスの表面と共有的に結合することができる。幾つかの実施形態において、共有的結合はリンカーにより仲介される。幾つかの実施形態において、治療剤は、ポリマーマトリックスの表面と結合得る、ポリマーマトリックス内に封入され得る、ポリマーマトリックスに囲まれ得る、および/またはポリマーマトリックスの全体にわたって分散され得る。その全体が組み込まれる、米国特許第8,246,968号。
【0121】
一般に、本発明のナノ粒子は、任意の種類の粒子を含む。任意の粒子を本発明により使用することができる。幾つかの実施形態において、粒子は生分解性および生体適合性である。一般に、生体適合性物質は、細胞に対して毒性ではない。幾つかの実施形態において、物質は、細胞へのその付加が、ある特定の閾値未満の細胞死をもたらす場合に生体適合性であるとみなされる。幾つかの実施形態において、物質は、細胞へのその付加が、有害な作用を誘発しない場合に生体適合性であるとみなされる。一般に、生分解性物質は、生理学的条件下で治療関連時間(例えば、数週間、数か月間、または数年間)にわたって分解を受けるものである。幾つかの実施形態において、生分解性物質は、細胞機構により分解され得る物質である。幾つかの実施形態において、生分解性物質は、化学プロセスにより分解され得る物質である。幾つかの実施形態において、粒子は、生体適合性および生分解性の両方である物質である。幾つかの実施形態において、粒子は、生体適合性であるが、生分解性ではない物質である。幾つかの実施形態において、粒子は、生分解性であるが、生体適合性ではない物質である。
【0122】
幾つかの実施形態において、粒子は、腎排泄限界より大きなサイズである(例えば、6nmを越える直径を有する粒子)。幾つかの実施形態において、粒子は、肝臓による血流からの粒子のクリアランスを避けるのに十分に小さい(例えば、1000nm未満の直径を有する粒子)。一般に、粒子の生理化学的特徴は、腎排泄および肝臓クリアランスの減少により、標的化粒子を血漿に長期間循環させることができるべきである。
【0123】
各粒子が同様の特性を有するように、サイズ、形状、および/または組成が比較的均一である粒子の個体群を使用することが、多くの場合に望ましい。例えば、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%の粒子が、5%、10%、または20%の平均直径または最大寸法の範囲内にある直径または最大寸法を有することができる。幾つかの実施形態において、粒子の個体群は、サイズ、形状、および/または組成に関して不均質であり得る。
【0124】
ゼータ電位は、粒子の表面電位の測度である。幾つかの実施形態において、粒子は-50mV~+50mVの範囲のゼータ電位を有する。幾つかの実施形態において、粒子は-25mV~+25mVの範囲のゼータ電位を有する。幾つかの実施形態において、粒子は-10mV~+10mVの範囲のゼータ電位を有する。幾つかの実施形態において、粒子は-5mV~+5mVの範囲のゼータ電位を有する。幾つかの実施形態において、粒子は0mV~+50mVの範囲のゼータ電位を有する。幾つかの実施形態において、粒子は0mV~+25mVの範囲のゼータ電位を有する。幾つかの実施形態において、粒子は0mV~+10mVの範囲のゼータ電位を有する。幾つかの実施形態において、粒子は0mV~+5mVの範囲のゼータ電位を有する。幾つかの実施形態において、粒子は-50mV~0mVの範囲のゼータ電位を有する。幾つかの実施形態において、粒子は-25mV~0mVの範囲のゼータ電位を有する。幾つかの実施形態において、粒子は-10mV~0mVの範囲のゼータ電位を有する。幾つかの実施形態において、粒子は-5mV~0mVの範囲のゼータ電位を有する。幾つかの実施形態において、粒子は、実質的に中性のゼータ電位(すなわち、およそ0mV)を有する。
【0125】
様々な異なる粒子を本発明により使用することができる。幾つかの実施形態において、粒子は球形または球状である。幾つかの実施形態において、粒子は球形または球状である。幾つかの実施形態において、粒子は平坦または平板形状である。幾つかの実施形態において、粒子は立方体または立方形である。幾つかの実施形態において、粒子は長円形または楕円形である。幾つかの実施形態において、粒子は円柱形、円錐形、または角錐形である。
【0126】
幾つかの実施形態において、粒子は微粒子(例えば、微小球)である。一般に、「微粒子」は、1000nm未満の直径を有する任意の粒子を意味する。幾つかの実施形態において、粒子はピコ粒子(例えば、ピコ流体(picospheres))である。一般に、「ピコ粒子」は、1nm未満の直径を有する任意の粒子を意味する。幾つかの実施形態において、粒子はリポソームである。幾つかの実施形態において、粒子はミセルである。
【0127】
粒子は、中実または中空であり得、1つ以上の層を含むことができる(例えば、ナノシェル、ナノリング)。幾つかの実施形態において、各層は、他の層(複数可)と比べて独自の組成および独自の特性を有する。例えば、粒子は、コア/シェル構造を有することができ、ここでコアは第1の層であり、シェルは第2の層である。粒子は、複数の異なる層を含むことができる。幾つかの実施形態において、第1の層は実質的に架橋され得、第2の層は実質的に架橋されていない、などである。幾つかの実施形態において、1つ、幾つか、または全ての異なる層が、送達される1つ以上の治療または診断剤を含むことができる。幾つかの実施形態において、第1の層は送達される薬剤を含み、第2の層は送達される薬剤を含まない、などである。幾つかの実施形態において、それぞれ個別の層は、送達される異なる薬剤または薬剤のセットを含む。
【0128】
幾つかの実施形態において、粒子は多孔質であり、これは粒子が、典型的には粒子のサイズと比較して小さい穴またはチャンネルを含有することを意味する。例えば、粒子は多孔質シリカ粒子、例えばメソ多孔質シリカナノ粒子であり得、または多孔質シリカの被覆を有することができる(Lin et al.,2005,J.Am.Chem.Soc.,17:4570)。粒子は、約1nm~約50nmの直径、例えば約1~20nmの直径の範囲の孔を有することができる。粒子の体積の約10%~95%が孔またはチャンネル内に空洞を構成することができる。
【0129】
粒子は、被覆層を有することができる。生体適合被覆層の使用は、例えば粒子が細胞に毒性を有する材料を含有する場合に有益であり得る。適切な被覆材料には、ウシ血清アルブミン(BSA)のような天然のタンパク質、ポリエチレングリコール(PEG)またはPEG誘導体、リン脂質-(PEG)、シリカ、脂質、ポリマーのような生体適合親水性ポリマー、デキストランのような炭水化物、本発明のナノ粒子と結合し得る他のナノ粒子などが含まれるが、これらに限定されない。被覆は、浸漬、層毎の技術、自己構築、複合などのような様々な方法により適用または構築され得る。自己構築は、高次構造(例えば、分子)の成分の互いの天然の誘引に依存した高次構造への自発的構築のプロセスを意味する。典型的には、分子の無作為移動、およびサイズ、形状、組成、または化学的特性に基づいた結合の形成を介して生じる。
【0130】
ポリマーの例には、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレン)、ポリカーボネート(例えば、ポリ(1,3-ジオキサン-2オン))、ポリ無水物(例えば、ポリ(セバシン酸無水物))、ポリヒドロキシ酸(例えば、ポリ(β-ヒドロキシアルカノエート))、ポリフマレート、ポリカプロラクトン、ポリアミド(例えば、ポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド)、ポリ(オルトエステル)、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリ尿素、ポリスチレン、およびポリアミンが挙げられる。幾つかの実施形態において、本発明のポリマーには、米国食品医薬品局(FDA)の21C.F.R.§177.2600によってヒトにおける使用が承認されているポリマーが含まれ、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(1,3-ジオキサン-2オン))、ポリ無水物(例えば、ポリ(セバシン酸無水物))、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、およびポリシアノアクリレートが含まれるが、これらに限定されない
【0131】
幾つかの実施形態において、粒子は、非ポリマー粒子(例えば、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、無機材料を含むポリマー、骨由来材料、骨代用物、ウイルス粒子など)であり得る。幾つかの実施形態において、送達される治療または診断剤は、そのような非ポリマー粒子の表面と結合することができる。幾つかの実施形態において、非ポリマー粒子は、金属原子(例えば、金原子)の凝集体のような非ポリマー成分の凝集体である。幾つかの実施形態において、治療または診断剤は、非ポリマー成分の凝集体の表面と結合し得る、ならびに/または非ポリマー成分の凝集体内に封入され得る、非ポリマー成分の凝集体に囲まれ得る、および/もしくは非ポリマー成分の凝集体の全体にわたって分散され得る。
【0132】
粒子(例えば、ナノ粒子、微粒子)は、当該技術に既知の任意の方法を使用して調製することができる。例えば、粒子状製剤は、ナノ沈殿、流動集束流体チャンネル(flow focusing fluidic channel)、噴霧乾燥、単および二重乳剤溶媒蒸発(single and double emulsion solvent evaporation))、溶媒抽出、相分離、微粉砕、マイクロエマルション処理、微細加工、ナノ加工、犠牲層、単純および複合コアセルベーションの方法、ならびに当業者に周知の他の方法により形成され得る。代替的または追加的に、単分散半導体、導電性、磁性、有機および他のナノ粒子の水性および有機溶媒合成が記載されている(Pellegrino et al.,2005,Small,1:48;Murray et al.,2000,Ann.Rev.Mat.Sci.,30:545、およびTrindade et al.,2001,Chem.Mat.,13:3843)。
【0133】
封入剤の送達のための微粒子を作製する方法は、文献に記載されている(例えば、Doubrow,Ed.,“Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy,”CRC Press,Boca Raton,1992;Mathiowitz et al.,1987,J.Control.Release,5:13;Mathiowitz et al.,1987,Reactive Polymers,δ:275、およびMathiowitz et al.,1988,J.Appl.Polymer Sci.,35:755を参照すること)。
【0134】
核酸標的部分
幾つかの実施形態において、標的部分は核酸標的部分を含む。
【0135】
一般に、核酸標的部分は、臓器、組織、細胞、細胞外マトリックス成分、および/または細胞内区画(標的)と関連する成分に結合する任意のポリヌクレオチドである。
【0136】
幾つかの実施形態において、核酸標的部分はアプタマーである。
【0137】
アプタマーは、典型的には、特定の臓器、組織、細胞、細胞外マトリックス成分、および/または細胞内区画と関連する特定の標的構造に結合するポリヌクレオチドである。一般に、アプタマーの標的機能は、アプタマーの三次元構造に基づいている。幾つかの実施形態において、アプタマーの標的への結合は、典型的には、アプタマーおよび標的の両方の二次元および/または三次元構造間の相互作用により仲介される。幾つかの実施形態において、アプタマーの標的への結合は、アプタマーの一次配列のみに基づいてはいないが、アプタマーおよび/または標的の三次元構造(複数可)によって決まる。幾つかの実施形態において、アプタマーは、塩基対形成を破損する構造(例えば、ヘアピンループ)により干渉される、相補的なワトソン-クリック塩基対形成を介して標的に結合する。
【0138】
幾つかの実施形態において、核酸標的部分は、スピーゲルマー(spiegelmer)である(PCT公報国際公開第98/08856号、同第02/100442号、および同第06/117217号)。一般に、スピーゲルマーは、標的に特異的に結合することができる合成鏡像核酸(すなわち、鏡像アプタマー)である。スピーゲルマーは、エキソおよびエンドヌクレアーゼに対する感受性をなくする構造的特徴により特徴付けられる。
【0139】
当業者は、標的に特異的に結合することができる任意の核酸標的部分(例えば、アプタマーまたはスピーゲルマー)を、本発明に従って使用できることを認識する。幾つかの実施形態において、本発明に従って使用される核酸標的部分は、疾患、障害、および/または状態と関連するマーカーを標的にすることができる。幾つかの実施形態において、本発明に従って使用される核酸標的部分は、癌関連標的を標的にすることができる。幾つかの実施形態において、本発明に従って使用される核酸標的部分は、腫瘍マーカーを標的にすることができる。任意の種類の癌および/または任意の腫瘍マーカーを、本発明の核酸標的部分の使用により標的にすることができる。幾つかの例を挙げると、核酸標的部分は、前立腺癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、膀胱癌、膵癌、子宮内膜癌、卵巣癌、骨癌、食道癌、肝癌、胃癌、脳腫瘍、皮膚黒色腫、および/または白血病と関連するマーカーを標的にすることができる。
【0140】
本発明の核酸(下記に更に詳細に記載される、核酸核酸標的部分、および/または送達される機能性RNA、例えば、RNAi誘発性実体、リボザイム、tRNAなどを含む)は、化学合成、酵素合成、長い前駆体の酵素的または化学的な切断などが含まれるが、これらに限定されない任意の利用可能な技術によって調製され得る。RNAを合成する方法は、当該技術において知られている(例えば、Gait,M.J.(ed.)Oligonucleotide synthesis:a practical approach,Oxford[Oxfordshire],Washington,D.C.:IRL Press,1984、およびHerdewijn,P.(ed.)Oligonucleotide synthesis:methods and applications Methods in molecular biology,v.288(Clifton,N.J.)Totowa,N.J.:Humana Press,2005を参照すること)。
【0141】
核酸核酸標的部分を形成する核酸は、天然に生じるヌクレオシド、修飾ヌクレオシド、1つ以上のヌクレオシドの間に挿入された炭化水素リンカー(例えば、アルキレン)もしくはポリエーテルリンカー(例えば、PEGリンカー)を有する天然に生じるヌクレオシド、1つ以上のヌクレオシドの間に挿入された炭化水素もしくはPEGリンカーを有する修飾ヌクレオシド、またはこれらの組み合わせを含むことができる。幾つかの実施形態において、核酸核酸標的部分のヌクレオシドまたは修飾ヌクレオシドは、炭化水素リンカーまたはポリエーテルリンカーにより代えられ得、但し、核酸核酸標的部分の親和性および選択性は、置換により実質的に低減されないことが条件である(例えば、標的に対する核酸核酸標的部分の解離定数は、約1×10-3Mを越えるべきではない)。
【0142】
本発明の核酸は、天然に生じる核酸において見出される種類のみのヌクレオチドを含み得る、または代わりに、1つ以上のヌクレオチド類縁体を含み得る、もしくは天然に生じる核酸と他の点で異なる構造を有し得る。米国特許第6,403,779号、同第6,399,754号、同第6,225,460号、同第6,127,533号、同第6,031,086号、同第6,005,087号、同第5,977,089号、およびこれらにおける参考文献は、使用することができる多種多様な特定のヌクレオチド類縁体および修飾を開示する。Crooke,S.(ed.)Antisense Drug Technology:Principles,Strategies,and Applications(1st ed) Marcel Dekker;ISBN:0824705661;1st edition(2001)およびこれにおける参考文献を参照すること。例えば、2′修飾には、ハロ、アルコキシ、およびアリルオキシ基が含まれる。幾つかの実施形態において、2′-OH基は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2、またはCNから選択される基により代えられており、ここでRは、C1~C6アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、ハロは、F、Cl、Br、またはIである。修飾結合の例には、ホスホロチオエートおよび5′-N-ホスホラミダイト結合が挙げられる。
【0143】
様々な異なるヌクレオチド類縁体、修飾主鎖、または非天然に生じるヌクレオシド間結合を含む核酸を、本発明に利用することができる。本発明の核酸は、天然ヌクレオシド(すなわち、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン)、または修飾ヌクレオシドを含むことができる。修飾ヌクレオチドの例には、塩基修飾ヌクレオシド(例えば、アラシチジン、イノシン、イソグアノシン、ネブラリン、プソイドウリジン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノプリン、2-チオチミジン、3-デアザ-5-アザシチジン、2′-デオキシウリジン、3-ニトルピロール、4-メチルインドール、4-チオウリジン、4-チオチミジン、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、2-チオウリジン、5-ブロモシチジン、5-ヨードウリジン、イノシン、6-アザウリジン、6-クロロプリン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-アザアデノシン、8-アジドアデノシン、ベンゾイミダゾール、M1-メチルアデノシン、ピロロ-ピリミジン、2-アミノ-6-クロロプリン、3-メチルアデノシン、5-プロピニルシチジン、5-プロピニルウリジン、5-ブロモウリジン、5-フルオロウリジン、5-メチルシチジン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、および2-チオシチジン)、化学的または生物学的に修飾された塩基(例えば、メチル化塩基)、修飾糖(例えば、2′-フルオロリボース、2′-アミノリボース、2′-アジドリボース、2′-O-メチルリボース、L-エナンチオメル酸ヌクレオシドアラビノース、およびヘキソース)、修飾ホスフェート基(ホスホロチオエートおよび5′-N-ホスホラミダイト結合)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。核酸の化学合成のための天然および修飾ヌクレオチドモノマーは、容易に入手可能である。幾つかの場合において、そのような修飾を含む核酸は、天然に生じるヌクレオチドのみからなる核酸と比べて改善された特性を示す。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されている核酸修飾を利用して、ヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼなど)による消化を低減および/または防止する。例えば、核酸の構造は、消化を低減するため、一方または両方の鎖の3′末端にヌクレオチド類縁体を含めることにより安定化され得る。
【0144】
修飾核酸は、分子の全長にわたって均一に修飾される必要はない。異なるヌクレオチド修飾および/または主鎖構造は、核酸の様々な位置に存在することができる。当業者は、ヌクレオチド類縁体または他の修飾(複数可)が、核酸の機能が実質的に影響を受けないように、核酸の任意の位置(複数可)に配置されうることを理解する。幾つかの例を挙げると、修飾は、標的に特異的に結合する核酸標的部分の能力が実質的に影響を受けないように、核酸標的部分の任意の位置に配置され得る。修飾領域は、一方または両方の鎖の5′末端および/または3′末端であり得る。例えば、両方の鎖のいずれかの5′末端および/または3′末端において、およそ1~5つの残基がヌクレオチド類縁体である、および/または主鎖修飾を有する修飾核酸標的部分が、用いられている。修飾は、5′または3′末端修飾であり得る。一方または両方の核酸鎖は、少なくとも50%の非修飾ヌクレオチド、少なくとも80%の非修飾ヌクレオチド、少なくとも90%の非修飾ヌクレオチド、または100%の非修飾ヌクレオチドを含むことができる。
【0145】
本発明の核酸は、例えば、米国特許出願公開第2003/0175950号、同第2004/0192626号、同第2004/0092470号、同第2005/0020525号、および同第2005/0032733号に記載されているように、糖、ヌクレオシド、またはヌクレオシド間結合への修飾を含むことができる。本発明は、これらに記載されている修飾のいずれかを1つ以上有する任意の核酸の使用を包含する。例えば、多数の末端複合体、例えばコレステロール、リトコール酸、アルル酸(aluric acid)、または長アルキル分岐鎖のような脂質が、細胞取り込みを改善すると報告されている。類縁体および修飾は、例えば、当該技術に既知の任意の適切なアッセイを使用して、例えば、治療または診断剤の改善された送達、標的への核酸標的部分の改善された特異的結合などをもたらすものを選択するために試験されることができる。幾つかの実施形態において、本発明の核酸は、1つ以上の非天然ヌクレオシド結合を含むことができる。幾つかの実施形態において、核酸標的部分の3′末端、5′末端、または3′末端と5′末端の両方における1つ以上の内部ヌクレオチドは、転化されて、3′-3′結合または5′-5′結合のような結合を生じる。
【0146】
幾つかの実施形態において、本発明の核酸は、合成ではないが、天然環境から単離された天然に生じる実体である。
【0147】
任意の方法を使用して、新規核酸標的部分を設計することができる(例えば、米国特許第6,716,583号、同第6,465,189号、同第6,482,594号、同第6,458,543号、同第6,458,539号、同第6,376,190号、同第6,344,318号、同第6,242,246号、同第6,184,364号、同第6,001,577号、同第5,958,691号、同第5,874,218号、同第5,853,984号、同第5,843,732号、同第5,843,653号、同第5,817,785号、同第5,789,163号、同第5,763,177号、同第5,696,249号、同第5,660,985号、同第5,595,877号、同第5,567,588号、および同第5,270,163号、ならびに米国特許出願公開第2005/0069910号、同第2004/0072234号、同第2004/0043923号、同第2003/0087301号、同第2003/0054360号、および同第2002/0064780号を参照すること)。本発明は、新規核酸標的部分を設計する方法を提供する。本発明は、候補核酸標的部分の混合物から新規核酸標的部分を単離または同定する方法を更に提供する。
【0148】
タンパク質、炭水化物、脂質、および/または核酸に結合する核酸標的部分を、設計および/または同定することができる。幾つかの実施形態において、核酸標的部分は、腫瘍マーカー、インテグリン、細胞表面受容体、膜貫通タンパク質、細胞間タンパク質、イオンチャンネル、膜輸送タンパク質、酵素、抗体、キメラタンパク質などのような、タンパク質および/またはその特徴的な部分に結合する本発明の複合体に使用されるように設計および/または同定され得る。幾つかの実施形態において、核酸標的部分は、糖タンパク質、糖(例えば、単糖、二糖、および多糖)、糖衣(すなわち、大部分の真核細胞の外側表面の炭水化物豊富辺縁帯)などのような、炭水化物および/またはその特徴的な部分に結合する本発明の複合体に使用されるように設計および/または同定され得る。幾つかの実施形態において、核酸標的部分は、油、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、グリセリド、ホルモン、ステロイド(例えば、コレステロール、胆汁酸)、ビタミン(例えば、ビタミンE)、リン脂質、スフィンゴ脂質、リポタンパク質などのような、脂質および/またはその特徴的な部分に結合する本発明の複合体に使用されるように設計および/または同定され得る。幾つかの実施形態において、核酸標的部分は、DNA核酸;RNA核酸;修飾DNA核酸;修飾RNA核酸;DNA、RNA、修飾DNA、および修飾RNAの任意の組み合わせを含む核酸のような、核酸および/またはその特徴的な部分に結合する本発明の複合体に使用されるように設計および/または同定され得る。
【0149】
核酸標的部分(例えば、アプタマーまたはスピーゲルマー)は、任意の利用可能な方法を使用して設計および/または同定され得る。幾つかの実施形態において、核酸標的部分は、核酸の候補混合物から核酸標的部分を同定することにより設計および/または同定される。試験管内進化法(SELEX)またはその変形は、核酸の候補混合物から、標的に結合する核酸標的部分を同定する一般に使用される方法である。
【0150】
標的に選択的に結合する核酸標的部分は、SELEXプロセスまたはその変形により単離され得るが、但し、標的をSELEXプロセスに標的として使用できることが条件である。
【0151】
B. 活性化部分
一般に、本発明の化合物は、活性化部分を含む。
【0152】
本明細書において「活性化部分」とは、身体の免疫系または腫瘍細胞を刺激または増強することができる分子または薬剤を意味する。一般に、活性化部分は、トール様受容体、ヌクレオチドオリゴマー化ドメイン様受容体、RIG-I様受容体、c型レクチン受容体、または細胞質DNAセンサー、またはこれらの組み合わせに対して直接的または間接的に作用する。
【0153】
幾つかの実施形態において、活性化部分は、樹状細胞、マクロファージ、単球、骨髄由来抑制細胞、NK細胞、B細胞、T細胞、もしくは腫瘍細胞、またはこれらに組み合わせが含まれるが、これらに限定されないヒト免疫細胞を活性化することができる。
【0154】
樹状細胞
樹状細胞は、最も強力な抗原提示細胞である。樹状細胞は、先天および適応免疫応答の両方の開始に必須の役割を果たす。樹状細胞は、免疫寛容性の誘発および維持において主要な役割も果たす。
【0155】
本明細書において「樹状細胞」(DC)は、2つの主なサブタイプ、すなわち骨髄DC(mDC)および形質細胞様DC(pDC)を含む異種細胞個体群を意味する(Steinman et al.,1979,J.Exp.Med.,149,1-16)。これらの2つの血液DCサブタイプは、これらのCD11c(インテグン相補体受容体)およびCD123(IL-3Rα)の発現により元々分化していた。pDCおよびmDC個体群は、それぞれヒトにおいて約0.2~約0.6%のPBMC個体群を構成する。
【0156】
本明細書において「pDC」とは、形質細胞様樹状細胞を意味し、血液および末梢リンパ器官において見出される樹状細胞のサブタイプを表す。これらの細胞は、表面マーカ-CD123、BDCA-2(CD303)、およびBDCA-4(CD304)、およびHLA-DRを発現するが、CD11c、CD14、CD3、CD20、またはCD56を発現せず、このことによって従来の樹状細胞、単球、T細胞、B細胞、およびNK細胞から区別される。先天免疫系の成分として、これらの細胞は、細胞内トール様受容体7および9を発現し、これらはssRNAまたはCpG DNAモチーフのようなウイルスおよび細菌の核酸の検出を可能にする。刺激およびそれに続く活性化によって、これらの細胞は大量のI型インターフェロン(主に、IFN-αおよびIFN-β)、ならびにIII型インターフェロン(例えば、IFN-λ)を産生し、これらは、広範囲の効果を仲介する重要な多面的抗ウイルス化合物である。多数のI型インターフェロンを生成することによって、サイトカインおよびケモカイン、形質細胞様樹状細胞は、身体の先天および適応免疫応答に広範囲に関与する。これらは、免疫応答強度、持続期間、および応答様式に関与するNK細胞、T細胞、B細胞、および他の細胞を調節することができ、したがって、腫瘍、感染、および自己免疫性疾患において非常に重要な機能を果たす。(Liu YJ.IPC:professional type 1 interferon-producing cells and plasmacytoid dendritic cell precursors.Annu Rev Immunol.2005;23:275-306.Gilliet M,Cao W,Liu YJ.Plasmacytoid dendritic cells:sensing nucleic acids in viral infection and autoimmune diseases.Nat Rev Immunol.2008 Aug;8(8):594-606)。
【0157】
本明細書において「mDC」とは、骨髄樹状細胞を意味し、血液および末梢リンパ器官において見出される循環樹状細胞のサブタイプを表す。これらの細胞は、表面マーカーCD11c、CD1a、HLA-DR、およびBDCA-1(CD1c)またはBDCA-3(CD141)のいずれかを発現する。これらはBDCA-2またはCD123を発現せず、このことによってpDCから区別される。mDCも、CD3、CD20、またはCD56を発現しない。先天免疫系の成分として、mDCは、TLR2、3、4、5、6、および8を含むトール様受容体(TLR)を発現し、これらは細菌およびウイルス成分の検出を可能にする。刺激およびそれに続く活性化によって、これらの細胞は、抗原特異的CD4、ならびにCD8T細胞を活性化する、最も強力な抗原提示細胞である。加えて、mDCは、大量のIL-12およびIL23を産生する能力を有し、このことは、Th1仲介またはTh17細胞仲介免疫の誘発にとって重要である。
【0158】
研究は、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌のような多くの固形腫瘍がpDC浸潤を有すること(Treilleux I,Blay JY,Bendriss-Vermare N et al.Dendritic cell infiltration and prognosis of early stage breast cancer.Clin Cancer Res 2004;10:7466-7474.Hartmann E,Wollenberg B,Rothenfusser S et al.Identification and functional analysis of tumor-infiltrating plasmacytoid dendritic cells in head and neck cancer.Cancer Res 2003;63:6478-6487.Zou WP,Machelon V,Coulomb-L’Hermin A,et al.Stromal-derived factor-1 in human tumors recruits and alters the function of plasmacytoid precursor dendritic cells.Nat Med 2001;7:1339-1346)、および腫瘍細胞により分泌された因子がDC成熟を阻害することを見出した。(Gabrilovich DI,Corak J,Ciernik IF et al.Decreased antigen presentation by dendritic cells in patients with breast cancer.Clin Cancer Res 1997;3:483-490.Bell D,Chomarat P,Broyles D et al.In breast carcinoma tissue,immature dendritic cells reside within the tumor,whereas mature dendritic cells are located in peritumoral areas.J Exp Med 1999;190:1417-1425.Menetrier-Caux C,Montmain G,Dieu MC et al.Inhibition of the differentiation of dendritic cells from CD34 (+) progenitors by tumor cells:role of interleukin-6 and macrophage colony-stimulating factor.Blood 1998;92:4778-4791)。これらの未成熟DC細胞は、抗腫瘍免疫の促進において役割を果たさなかった。対照的に、腫瘍微環境内のDCは、抗腫瘍免疫を阻害し、血管新生を促進することによって、腫瘍増殖を促進する。トール様受容体7作動薬イミキモドおよびトール様受容体9作動薬CpG薬剤は、腫瘍微環境内のpDCを刺激して、腫瘍発達を阻害することができる。(Dummer R,Urosevic M,Kempf W et al.Imiquimod in basal cell carcinoma:how does it work? Br J Dermatol 2003;149:57-58.Miller RL,Gerster JF,Owens ML et al Imiquimod applied topically:a novel immune response modifier and new class of drug.Int J Immunopharmacol 1999;21:1-14.Hofmann MA,Kors C, Audring H et al Phase 1 evaluation of intralesionally injected TLR9-agonist PF-3512676 in patients with basal cell carcinoma or metastatic melanoma.J Immunother 2008;31:520-527)。
【0159】
幾つかの実施形態において、ヒト樹状細胞は形質細胞様樹状細胞である。
【0160】
幾つかの実施形態において、ヒト樹状細胞は骨髄樹状細胞である。
【0161】
幾つかの実施形態において、活性化部分は、ヒトTLR7またはTLR8に特異的に結合することができ、したがってpDCまたはmDCのいずれかを活性化することができる。
【0162】
幾つかの実施形態において、活性化部分は、ヒトTLR7およびTLR8の両方に特異的に結合することができ、したがってpDCおよびmDCの両方を活性化することができる。pDCは、エンドソームトール様受容体(TLR)7及びTLR9を選択的に発現し、一方、mDCは、TLR8を選択的に発現する。Bao M,Liu YJ.Regulation of TLR7/9 signaling in plasmacytoid dendritic cells,Protein Cel.2013 Jan;4(1):40-52.Hemont C,Neel A,Heslan M,Braudeau C,Josien R.Human blood mDC subsets exhibit distinct TLR repertoire and responsiveness.J Leukoc Biol.2013 Apr;93(4):599-609。
【0163】
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)
幾つかの実施形態において、活性化部分は、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、好ましくはヒトNK細胞を活性化することができる。
【0164】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、免疫系の主な成分を構成する細胞障害性リンパ球の種類である。NK細胞は、CD56またはCD16の発現、およびT細胞受容体(CD3)の不在により定義される末梢血リンパ球のサブセットである。これらは、MHC非制限様式で初回刺激することなく、形質転換細胞系を認識し、死滅させる。NK細胞は、ウイルスに感染した腫瘍および細胞の拒絶に重要な役割を果たす。NK細胞が標的細胞を認識し、十分なシグナルを送達して、標的溶解の引き起こすプロセスは、細胞表面における一連の阻害性および活性化受容体によって決定される。変更された自己からの自己のNK識別は、MHC-I分子、ならびに非MHCリガンド様CD48およびClr-1bの阻害性受容体認識を伴う。感染または損傷細胞(変更された自己)のNK認識はNKG2D、Ly49H、およびNKp46/Ncr1を含む様々な活性化受容体により認識されるストレス誘発性リガンド(例えば、MICA、MICB、Rae1、H60、Mult1)、またはウイルスコードリガンド(例えば、m157、ヘマグルチニン)によって調整される。
【0165】
NK細胞は、同種または自家幹細胞移植後に、数か月にわたって末梢血において優性にリンパ球細胞を提示し、この期間における病原体に対する免疫において主な役割を有する(Reittie et al(1989 Blood 73:1351-1358;Lowdell et al (1998)Bone Marrow Transplant 21:679-686)。生着、移植片対宿主病、抗白血病活性、および移植後感染におけるNK細胞の役割は、Lowdell(2003)Transfusion Medicine 13:399-404において概説されている。
【0166】
ヒトNK細胞は、天然の細胞障害性および抗体依存性細胞障害性(ADCC)を介して腫瘍細胞およびウイルス感染細胞の溶解を仲介する。
【0167】
ヒトNK細胞は、正および負の細胞溶解性シグナルにより制御される。負(阻害性)のシグナルは、受容体のCD94/NKG2Aを含有するC-レクチンドメインにより、および幾つかのキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)により伝達される。阻害性シグナルによるNK溶解の調節は、標的細胞表面に発現した特定のHLAクラスI対立遺伝子がNK細胞の阻害性受容体を連結する、「自己喪失」の仮説として知られている。腫瘍細胞および幾つかのウイルス感染細胞(例えば、CMV)におけるHLA分子のダウンレギュレーションは、この阻害を標的閾値未満に下げ、標的細胞がNK初回刺激および活性化分子も担持する場合、標的細胞は、NK細胞仲介溶解に敏感になり得る。TLR7、TLR8、またはTLR9作動薬は、mDCおよびpDCの両方を活性化して、I型IFNを産生し、GITR-リガンドのような同時刺激分子を発現し、続いてNK細胞を活性化して、IFN-gを産生し、強力にNK細胞の死滅機能を促進することができる。
【0168】
阻害性受容体は、2つの群に分けられ、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)と呼ばれるIgスーパーファミリーのもの、および細胞表面でCD94と二量体を形成する、レクチンファミリーのNKG2である。KIRは2または3ドメイン細胞外構造を有し、HLA-A、-B、または-Cに結合する。NKG2/CD94複合体は、HLA-Eを連結する。
【0169】
阻害性KIRは、ITIMを含有する細胞内ドメインを4つまで有し、特徴づけられた最適なものは、KIR2DL1、KIR2DL2、およびKIR2DL3であり、これらはHLA-C分子に結合することが知られている。KIR2DL2およびKIR2DL3は、群1のHLA-C対立遺伝子に結合し、一方、KIR2DL1は、群2の対立遺伝子に結合する。ある特定の白血病/リンパ腫細胞は、群1および2の両方のHLA-C対立遺伝子を発現し、NK仲介細胞溶解に抵抗性であることが知られている。
【0170】
正の活性化シグナルに関して、ADCCは、CD16を介して仲介されると考えられ、CD2、CD38、CD69、NKRP-I、CD40、B7-2、NK-TR、NKp46、NKp30、およびNKp44を含む、天然の細胞障害性の原因となる多数の引き金受容体が同定されている。加えて、短い細胞質内尾部を有する幾つかのKIR分子も、刺激性である。これらのKIR(KIR2DS1、KIR2DS2、およびKIR2DS4)は、HLA-Cに結合することが知られており、これらの細胞外ドメインは関連する阻害性KIRと同一である。活性化KIRは、ITIMを欠いており、代わりに、DAP12と結合し、NK細胞活性化をもたらす。阻害性KIR対活性化KIRの発現制御の機構は、依然として不明である。
【0171】
腫瘍細胞
幾つかの実施形態において、活性化部分は、腫瘍細胞を活性化することができる。幾つかの報告が、マウスまたはヒトの癌または癌細胞系におけるTLRの発現を記載している。例えば、TLR1~TLR6は、結腸、肺、前立腺、および黒色腫のマウス腫瘍細胞系により発現され(Huang B,et al.Toll-like receptors on tumor cells facilitate evasion of immune surveillance.Cancer Res.2005;65(12):5009-5014)、TLR3は、ヒト乳癌細胞により発現され(Salaun B,Coste I,Rissoan MC,Lebecque SJ,Renno T.TLR3 can directly trigger apoptosis in human cancer cells.J Immunol.2006;176(8):4894-4901)、肝細胞癌および胃癌細胞は、TLR2およびTLR4(Huang B,et al.Listeria monocytogenes promotes tumor growth via tumor cell toll-like receptor 2 signaling.Cancer Res.2007;67(9):4346-4352)を発現し、TLR9(Droemann D,et al.Human lung cancer cells express functionally active Toll-like receptor 9.Respir Res.2005;6:1)およびTLR4(He W,Liu Q,Wang L,Chen W,Li N,Cao X.TLR4 signaling promotes immune escape of human lung cancer cells by inducing immunosuppressive cytokines and apoptosis resistance.Mol Immunol.2007;44(11):2850-2859)は、ヒト肺癌細胞により発現される。TLR7およびTLR8は、ヒト肺癌の腫瘍細胞において見出される(Cherfils-Vicini J,Platonova S,Gillard M,Laurans L,Validire P Caliandro R,Magdeleinat P,Mami-Chouaib F,Dieu-Nosjean MC,Fridman WH,Damotte D,Sautes-Fridman C,Cremer I.J.Clin Invest.2010;120(4):1285-1297)。
【0172】
腫瘍細胞への効果は様々であり得、例えば、ヒト乳癌および黒色腫細胞におけるポリI:CによるTLR3の刺激は、腫瘍細胞のアポトーシスを直接引き起こす(Salaun B,Coste I,Rissoan MC,Lebecque SJ,Renno T.TLR3 can directly trigger apoptosis in human cancer cells.J Immunol.2006;176(8):4894-4901.,Salaun B,Lebecque S,Matikainen S,Rimoldi D,Romero P.Toll-like receptor 3 expressed by melanoma cells as a target for therapy? Clin Cancer Res.2007;13(15 Pt 1):4565-4574)。一方、ヒト肺癌細胞は、機能的に活性なトール様受容体9を発現し、CpG-ODNによるTLR-9発現細胞系A549およびHeLaの刺激は、抗アポトーシス効果を示した。いずれにしても、蓄積されたデータは、TLRが癌細胞と十分に関連し、直接的または間接的に効果を与え得ることを示す。
【0173】
活性化部分の化学組成物
一般に、本発明の活性化部分は、タンパク質、抗体、核酸、小分子、またはリガンドを含む。
【0174】
幾つかの実施形態において、AMは、ヒトTLR7および/またはTLR8に特異的に結合することができる。
【0175】
幾つかの実施形態において、活性化部分は、(a)一本鎖RNA(ssRNA)、好ましくはORN02、ORN06、ssポリ(U)、ssRNA40、ssRNA41、ssRNA-DR、もしくはポリ(dT)、または(b)リガンド類縁体、好ましくはCL075、CL097、CL264、CL307、ガーディキモド、ロキソリビン、イミキモド、もしくはレシキモド(Resiquimod)を含む。
【0176】
幾つかの実施形態において、活性化部分は、TLRリガンド(TLRL)、Nod様受容体リガンド、RIG様受容体リガンド、CLRリガンド、CDSリガンド、またはインフラマソーム誘発剤を含む。
【0177】
幾つかの実施形態において、活性化部分は、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8、TLR7/TLR8、TLR9、およびTLR10からなる群から選択される1つ以上のTLRのリガンドを含む。
【0178】
TLRは、微生物産物を感知する、および/または適応免疫応答を開始する、タンパク質のファミリーである。TLRは樹状細胞(DC)を活性化する。TLRは、ロイシン豊富反復の外部ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内TIR(トール/インターロイキン受容体)ドメインを含有する、保存膜貫通分子である。TLRは、多くの場合に「PAMP」(病原体関連分子パターン)と呼ばれる、微生物内の特有の構造を認識する。TLRに結合するリガンドは、炎症および免疫に関与する因子の産生を誘発する細胞内シグナル伝達経路のカスケードを引き起こす。
【0179】
これらの受容体に使用できる例示的な作動薬には、限定されることなく、リポタンパク質、リポポリペプチド、ペプチドグリカン、ザイモサン、リポ多糖、ナイセリアタンパク質、フラゲイリン(flageilin)、プロフィイリン(profiilin)、ガラクトセラミド、ムラミルジペプチド、ギウコピラノシル(giucopyranosyl)脂質A(GLA)、およびレシキモド(resiquimod)(R848)が含まれる。ペプチドグリカン、リポタンパク質、およびリポタイコ酸は、グラム陽性の細胞壁成分である。リポ多糖は、大部分の細菌により発現される。フラゲイリンは、病原性および片利共生性の細菌により分泌される細菌鞭毛の構造成分である。ガラクトシルセラミド(α-GalCer)は、ナチュラルキラーT(NKT)細胞の活性化剤である。ムラミルジペプチドは、全ての細菌において共通な生体活性ペプチドグリカンモチーフである。そのような作動薬は、トール様受容体を介して先天免疫活性を仲介する。同族受容体に対する作動薬の特異的結合は、多くの場合、親和性で表される。本発明のリガンドは、約10-1~約10-1の親和性で結合することができる。親和性は、K=koff/konにより計算される(koffは、解離速度定数であり、konは、会合速度定数であり、Kは、平衡定数である)。単一または複数の作動薬を使用することができる。
【0180】
ヒトでは、少なくとも8つのTLRが同定されている。細胞の表面に発現するTLRには、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8、またはTLR7/TLR8が含まれ、TLR9およびTLR10は、ER区画により発現される。ヒト樹状細胞サブセットは、特有のTLR発現パターンに基づいて同定され得る。例としては、DCの骨髄または「従来」のサブセット(mDC)は、刺激されたとき、TLR2~8を発現し、一連の活性化マーカー(例えば、CD80、CD86、MHCクラスIおよびII、CCR7)、炎症促進性サイトカイン、ならびにケモクム(chemokme)が産生される。この刺激の結果、およびもたらされる発現は、抗原特異的CD4+およびCD8+T細胞初回刺激である。これらのDCは、増強された許容量を得て抗体を取り込み、これらを適切な形態でT細胞に提示する。対照的に、DCの形質細胞様サブセット(pDC)は、活性化によりTLR7およびTLR9のみを発現し、NK細胞、ならびにT細胞の活性化をもたらす。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、死亡腫瘍細胞がDC機能に有害な影響を与え得るので、TLR作動薬によるDCの活性化は、癌を治療する免疫療法の手法において、抗腫瘍免疫を初回刺激するのに有益であると仮定される。放射線および化学療法を使用する乳癌の治療の成功には、TLR4の活性化が必要であることも示唆されている。
【0181】
当該技術に既知であり、本発明に有用であるTLR作動薬には、以下が含まれるが、これらに限定されない。パム(Pam)3Cys、TLR-1/2作動薬;細胞壁成分生成物(LAM、LM、LPS、LTA、LTA)、TLR-2作動薬;MALP2、TLR-2作動薬;Pam2Cys、TLR-2作動薬;FSL、TLR-2作動薬;ザイモサン、TLR-2作動薬;PGN、TLR-2作動薬;ポリリボシン酸(polyribosinic);ポリシチジル酸(ポリI:C)、TLR-3作動薬;ポリアデノシン-ポリウリシジル酸(ポリAU)、TLR-3作動薬;ポリ-L-リシンおよびカルボキシメチルセリチロース(carboxymethylcelitilose)(Hiltonol(登録商標))により安定化されたポリイノシン-ポリシチジル酸、TLR-3作動薬;モノホスポリル(monophosp oryl)リピドA(MPL)、TLR-4作動薬;LPS、TLR-4作動薬;細菌フラゲリン、TLR-5作動薬;FLA、TLR-5作動薬;ORN02、TLR-7/8作動薬;ORN06、TLR-7/8作動薬;ssポリ(U)、TLR-7/8作動薬;ssRNA40、TLR-7/8作動薬;ssRNA41、TLR-7/8作動薬;ssRNA-DR、7/8作動薬;ポリ(dT)、TLR-7/8作動薬;CL075、TLR-7/8作動薬;CL097、TLR-7/8作動薬;CL264、TLR-7/8作動薬;CL307、TLR-7/8作動薬;ガーディキモド、TLR-7/8作動薬;ロキソリビン、TLR-7/8作動薬;イミキモド、TLR-7/8作動薬;レシキモド(resiquimod)、TLR-7/8作動薬;ならびにODN1585、TLR-9作動薬;ODN1668、TLR-9作動薬;ODN1826、TLR-9作動薬;ODN2006、TLR-9作動薬;ODN2007、TLR-9作動薬;ODN2216、TLR-9作動薬;ODN2336、TLR-9作動薬;ODN2395、TLR-9作動薬;ODN M362 TLR-9作動薬。
【0182】
幾つかの実施形態において、活性化部分は、
(i)(a)加熱死菌生成物、好ましくはHKAL、HKEB、HKHP、HKLM、HKLP、HKLR、HKMF、HKPA、HKPG、またはHKSA、HKSP、および(b)細胞壁成分生成物、好ましくはLAM、LM、LPS、LTA、LTA、PGN、FSL、Pam2CSK4、Pam3CSK4、またはザイモサンからなる群から選択されるTLR2のリガンド、
(ii)ポリ(I:C)およびポリ(A:U)からなる群から選択されるTLR3のリガンド、
(iii)LPSおよびMPLAからなる群から選択されるTLR4のリガンド、
(iv)FLAおよびフラゲリンからなる群から選択されるTLR5のリガンド、
(v)ORN02(TLR8)、ORN06(TLR8)、ssポリ(U)(TLR8)、ssRNA40(TLR8)、ssRNA41(TLR8)、ssRNA-DR(TLR8)ポリ(dT)(TLR7/8)、CL075(TLR7/8)、CL097(TLR7/8)、CL264(TLR7)、CL307(TLR7)、ガーディキモド(TLR7)、ロキソリビン(TLR7)、イミキモド(TLR7/8)、およびレシキモド(resiquimod)(TLR7/8)からなる群から選択されるるTLR7、TLR8またはTLR7およびTLRのリガンド、
(vi)ODN1585、ODN1668、ODN1826、ODN2006、ODN2007、ODN2216、ODN2336、ODN2395、およびODN M362からなる群から選択されるTLR9のリガンド、
(vii)TLR10のリガンド、
(viii)NOD1作動薬(C12-iE-DAP、iE-DAP、Tri-DAP)、NOD2作動薬(L18-MDP、MDP、M-TriLYS、M-TriLYS-D-ASN、ムラブチド(Murabutide)、N-グリコリル-MDP)、およびNOD1/NOD2作動薬(M-TriDAP、PGN)からなる群から選択されるヌクレオチドオリゴマー化ドメイン(NOD)様のリガンド、
(ix)5′ppp-dsRNA、ポリ(dA:dT)、ポリ(dG:dC)、およびポリ(I:C)からなる群から選択される1つ以上のRIG-I-様受容体(RLR)のリガンド、
(x)カードランAL、HKCA、HKSC、WGP、ザイモサン、およびトレハロース-6,6-ジベヘン酸塩からなる群から選択される1つ以上のC型レクチン受容体(CLR)のリガンド、
(xi)c-GMP、c-G-AMP、c-G-GMP、c-A-AMP、c-di-AMP、c-di-IMP、c-di-GMP、c-di-UMP、HSV-60、ISD、pCpG、ポリ(dA:dT)、ポリ(dG:dC)、ポリ(dA)、およびVACV-70からなる群から選択される1つ以上の細胞質DNAセンサー(CDS)のリガンド、ならびに
(xii)(a)NLRP3インフラマソームタンパク質複合体、好ましくはミョウバン結晶、ATP、CPPD結晶、ヘルモゾイン(Hermozoin)、MSU結晶、ナノSiO2、ナイジェリシン、および(b)AIM2インフラマソームタンパク質複合体、好ましくはポリ(dA:dT)からなる群から選択されるインフラマソーム誘発剤、
を含む。
【0183】
幾つかの実施形態において、活性化部分は、IMO2134、IMO205、MGN-1703、MGN-1704、アガトリモド(Agatolimod)、SD-101、QAX-935、DIMS0150、ポリネクスクアットロ、OM-174、エリトラン、TAK-242、NI-0101、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、IL-12、IL-23、IL-18、IL-7、またはIL-15を含む。
【0184】
幾つかの実施形態において、活性化部分は、ヒトTLR7および/またはTLR8に特異的に結合することができ、好ましくは、レシキモド(resiquimod)(R848)のように、TLR7およびTLR8の両方に特異的に結合し、したがってpDCおよびmDCの両方を活性化することができる。TLR7およびTLR8は、系統的および構造的に関連している。TLR7は、ヒトpDCおよびB細胞により選択的に発現される。TLR8は、mDC、単球、マクロファージ、および骨髄抑制細胞において優位に発現される。TLR7特異的作動薬は、形質細胞様DC(pDC)を活性化して、大量の1型IFNを産生し、T細胞、NK細胞、B細胞、およびmDCの活性化を促進する同時刺激分子を高いレベルで発現する。TLR8特異的作動薬は、骨髄DC、単球、マクロファージ、または骨髄由来抑制細胞を活性化して、大量の1型IFN、IL-12、およびIL-23を産生し、抗原特異的CD4およびCD8+T細胞の活性化を促進するMHCクラスI、MHCクラスII、および同時刺激分子を高いレベルで発現する。
【0185】
TLRを介してヒト免疫細胞を活性化する追加の部分または分子は、TLRレポーター細胞系、例えばInvivoGenからの293/TLRレポーター細胞により同定され得る。
【0186】
TLR7および/またはTLR8を活性化することができる追加の部分または分子は、InvivoGenからの293/TLRレポーター細胞、ならびにpDCを刺激して、1型IFNを産生する、およびmDCを刺激して、1型IFNおよびIL-12を産生する、また、CD80、CD86の発現をアップレギュレートする、これらの追加の部分の能力を使用して、同定され得る。
【0187】
1型IFN、ならびに活性化pDCおよび/またはmDCにより発現されたGITRリガンドのような同時刺激分子を介してNK細胞を活性化することができる活性化部分は、全末梢血単核細胞アッセイにおいて、NK細胞増殖および活性化マーカーCD69の発現により同定され得る。
【0188】
細胞死を被る、および1型IFN、IL-1a/b、TNF、またはIL-6のようなサイトカインを産生するように、腫瘍細胞を活性化することができる活性化部分は、当該技術に既知の方法を使用して同定され得る。
【0189】
DC細胞、単球、マクロファージ、骨髄抑制細胞、B細胞、NK細胞、または腫瘍細胞を活性化することができる追加の活性化部分または分子は、当該技術に既知の方法を使用して同定され得る。
【0190】
幾つかの実施形態において、標的部分が抗体(もしくは、そのフラグメント)、またはアプタマーを含む場合、活性化部分は、CpGオリゴヌクレオチドを含まない。
【0191】
幾つかの実施形態において、特に、標的部分が、抗体もしくはそのフラグメント、またはアプタマーを含む場合、活性化部分は、化学療法剤のような治療剤、または抗体薬剤複合体に一般に使用される毒素のような)毒素を含まない。したがって、一般に本発明の化合物は、抗体薬剤複合体(ADC)または抗体CpG複合体を包含しない。
【0192】
C. リンカー
一般に、本発明の化合物は、標的部分および活性化部分を結合するリンカーを含む。しかし、幾つかの化合物において、リンカーが存在せず、活性化部分および標的部分は直接結合している。
【0193】
本明細書において「リンカー」とは、第1の分子を、化学結合を介して第2の分子に接続する部分を意味する。本発明のリンカーでは、接続は、生物学的に活性な形態の第1および/または第2の分子を放出するように切断され得る。リンカーの好ましい例は、中性pHで安定しているが、低pHの条件下で容易に切断される結合を含む部分である。リンカーの特に好ましい例は、7~8のpH値で安定しているが、4~6のpH値で容易に切断される結合を含む部分である。リンカーの別の例は、酵素の存在により容易に切断される結合を含む部分である。そのような酵素感受性リンカーの好ましい例は、エンドソームペプチドの認識配列を含むペプチドである。リンカーの別の例は、低還元電位(例えば、低チオールまたはグルタチオン濃度)の条件下で安定しているが、高還元電位(例えば、高チオールまたはグルタチオン濃度)の条件下で切断される、酸化還元電位感受性リンカーである。そのような酸化還元電位感受性リンカーの好ましい例には、ジスルフィドおよびスルフェンアミドが挙げられる。特に好ましい例には、チオールとの反応に対してジスルフィド結合の感受性を制御するように、アリール基が、立体的に嵩高い電子吸引性または電子供与性置換基により置換されている、置換アリールアルキルジスルフィドが挙げられる。リンカーの別の例は、放射線への曝露により容易に切断される結合を含む部分である。そのような放射線感受性リンカーの好ましい例は、光への曝露により切断される2-ニトロベンジルエーテルである。リンカーの特に好ましい例は、結合が切断されるまで、2つの結合分子のうちの一方の生物学的活性を遮蔽する部分である。
【0194】
幾つかの実施形態において、本発明の化合物は、ヒドラジン基、ポリペプチド、ジスルフィド基、およびチオエーテル基からなる群から選択されるリンカーを含む。
【0195】
本明細書において「ヒドラジン基」または「ヒドラジンリンカー」または「自己環化ヒドラジンリンカー」は、pHのシフトのような条件の変化によって、環化反応を受けて、1つ以上の環を形成するリンカー部分を意味する。ヒドラジン部分は、結合すると、ヒドラゾンに変換される。この結合は、例えば、L4部分のケトン基との反応を介して生じ得る。したがって、ヒドラジンリンカーという用語は、結合によるヒドラゾンへのこの変換のため、本発明のリンカーを表すのに使用することもできる。
【0196】
本明細書において「五員ヒドラジンリンカー」または「5員ヒドラジンリンカー」は、pHのシフトのような条件の変化によって、環化反応を受けて、1つ以上の5員環を形成するヒドラジン含有分子部分を意味する。あるいは、この五員リンカーは、五員ヒドラジンリンカーまたは5員ヒドラジンリンカーとして同様に記載され得る。
【0197】
本明細書において「六員ヒドラジンリンカー」または「6員ヒドラジンリンカー」は、pHのシフトのような条件の変化によって、環化反応を受けて、1つ以上の6員環を形成するヒドラジン含有分子部分を意味する。この六員リンカーは、六員ヒドラジンリンカーまたは6員ヒドラジンリンカーとして同様に記載され得る。
【0198】
本明細書において「環化反応」は、ペプチド、ヒドラジン、またはジスルフィドリンカーの環化を意味し、そのリンカーの環への環化を示し、薬剤リガンド複合体の分離を開始する。この割合は、生体外で測定され、生成物の少なくとも90%、95%、または100%が形成されたときに完了する。
【0199】
幾つかの実施形態において、本発明の化合物は、標的部分と活性化部分の間にリンカー領域を含み、リンカーは、細胞内環境(例えば、リソソームもしくはエンドソーム、またはリポソーム、またはカベオラ内)に存在する切断剤より切断可能である。リンカーは、例えば、細胞内ペプチダーゼ、またはリソソームもしくはエンドソームプロテアーゼが含まれるが、これらに限定されないプロテアーゼ酵素により切断されるペプチジルリンカーであり得る。典型的には、ペプチジルリンカーは、少なくとも2個のアミノ酸長さ、または少なくとも3個のアミノ酸長さである。切断剤には、カテプシンBおよびD、ならびにプラスミンが含まれ得、これらは全てジペプチド薬剤誘導体を加水分解して、標的細胞内に活性薬剤の放出をもたらすことが知られている(例えば、Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67-123を参照すること)。最も典型的なものは、標的細胞または組織に存在する酵素により切断可能であるペプチジルリンカーである。例えば、チオール依存性プロテアーゼカテプシンBにより切断可能であり、かつ癌性組織において高度に発現しているペプチジルリンカーを、使用することができる(例えば、Phe-LeuまたはGly-Phe-Leu-Glyリンカー)。他のそのようなリンカーは、例えば米国特許第6,214,345号に記載されている。幾つかの実施形態において、細胞内プロテアーゼにより切断可能なペプチジルリンカーは、Val-CitリンカーまたはPhe-Lysリンカーである(例えば、val-citリンカーによるドキソルビシンの合成を記載する米国特許第6,214,345号を参照すること)。治療剤の細胞内タンパク質溶解性放出を使用する1つの利点は、薬剤が、複合されたときに典型的には弱毒化されること、および複合体の血清安定性が典型的に高いことである。
【0200】
幾つかの実施形態において、切断可能リンカーは、pH感受性であり、すなわち、ある特定のpH値での加水分解に感受性がある。典型的には、酸性条件下で加水分解可能なpH感受性リンカー。例えば、リソソーム内で加水分解可能な酸不安定リンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、シス-アコニット酸アミド、オルトエステル、アセタール、ケタールなど)を使用することできる。(例えば、米国特許第5,122,368号、同第5,824,805号、同第5,622,929号、Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67-123;Neville et al.,1989,Biol.Chem.264:14653-14661を参照すること)。そのようなリンカーは、血液中のような中性pH条件下で比較的安定しているが、ほぼリソソームのpHであるpH5.5または5.0未満では不安定である。ある特定の実施形態において、加水分解性リンカーは、チオエーテルリンカーである(例えば、アクリルヒドラゾン結合を介して治療剤に結合したチオエーテル(例えば、米国特許第5,622,929号を参照すること))。
【0201】
なお他の実施形態において、リンカーは、還元条件下で切断可能である(例えば、ジスルフィドリンカー)。例えば、SATA(N-スクシンイミジル-5-アセチルチオアセテート)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)およびSMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-アルファ-メチル-アルファ-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)、SPDBおよびSMPT(例えば、Thorpe et al.,1987,Cancer Res.47:5924-5931;Wawrzynczak et al.,In Immunoconjugates:Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer(C.W.Vogel ed.,Oxford U.Press,1987を参照すること。また、米国特許第4,880,935号を参照すること)を使用して形成され得るものを含む様々なジスルフィドリンカーが、当該技術において知られている。
【0202】
なお他の特定の実施形態において、リンカーは、マロン酸塩リンカー(Johnson et al.,1995,Anticancer Res.15:1387-93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lau et al.,1995,Bioorg-Med-Chem.3(10):1299-1304)、または3′-Nアミド類縁体(Lau et al.,1995,Bioorg-Med-Chem.3(10):1305-12)である。
【0203】
典型的には、リンカーは、細胞外環境に対して実質的に感受性がない。本明細書で使用されるとき、「細胞外環境に対して実質的に感受性がない」は、リンカーの文脈において、本発明の化合物の試料中の約20%以下、典型的には約15%以下、より典型的には約10%以下、さらにより典型的には約5%以下、約3%以下、または約1%以下のリンカーが、本発明の化合物が細胞外環境(例えば、血漿)に存在する場合に切断されることを意味する。リンカーが細胞外環境に対して実質的に感受性がないかは、例えば、血漿と共に、(a)本発明の化合物(「化合物試料」)および(b)等モル量の非複合抗体または治療剤(「対照試料」)の両方を所定の時間(例えば、2、4、8、16、または24時間)にわたって独立してインキュベートし、次に、例えば高速液体クロマトグラフィーにより測定して、化合物試料中の非複合抗体または治療剤の量を、対照試料に存在するものと比較することによって、決定され得る。
【0204】
他の非相互排他的実施形態において、リンカーは細胞内部移行を促進する。ある特定の実施形態において、リンカーは、活性化部分と複合したときに細胞内部移行を促進する。なお他の実施形態において、リンカーは、標的部分および活性化部分の両方と複合したときに細胞内部移行を促進する。
【0205】
本発明の組成物および方法で使用され得る様々なリンカーは、国際公開第2004010957号、表題「Drug Conjugates and Their Use for Treating Cancer,An Autoimmune Disease or an Infectious Disease」、 US20120141509A1、およびUS20120288512A1に記載されている(これらの開示は、参照として本明細書に組み込まれる)。
【0206】
ある特定の実施形態において、リンカー単位は、以下の一般式、-Ta-Ww-Yy-を有し、
式中、-T-は、ストレッチャー単位であり、aは、0または1であり、各-W-は、独立してアミノ酸単位であり、wは、独立して2~12の範囲の整数であり、-Y-は、スペーサー単位であり、yは、0、1、または2である。
【0207】
ストレッチャー単位
ストレッチャー単位(-T-)は、存在する場合、標的部分をアミノ酸単位(-W-)に結合させる。天然または化学操作された抗体のような標的部分に存在し得る有用な官能基には、スルフヒドリル、アミノ、ヒドロキシル、炭水化物のアノマーヒドロキシル基、およびカルボキシルが含まれるが、これらに限定されない。適切な官能基は、スルフヒドリルおよびアミノである。スルフヒドリル基は、抗体の分子内ジスルフィド結合の還元により生成され得る。あるいは、スルフヒドリル基は、抗体のリシン部分のアミノ基と、2-イミノチオラン(Traut試薬)または他のスルフヒドリル生成試薬との反応により、生成され得る。幾つかの実施形態において、抗体は、組み換え抗体であり、1つ以上のリシンを担持するために操作される。他の実施形態において、組み換え抗体は、追加のスルフヒドリル基、例えば追加のシステインを担持するために操作される。
【0208】
幾つかの実施形態において、ストレッチャー単位は、抗体の硫黄原子との結合を形成する。硫黄原子は、還元された抗体(A)のスルフヒドリル(-SH)基から誘導され得る。これらの実施形態の代表的なストレッチャー単位は、式(IIa)および(IIb)の角括弧内に表されており、式中、-A-、-W-、-Y-、-D、w、およびyは、上記に定義されたとおりであり、Rは、-C~C10アルキレン、-C~Cカルボシクロ-、-O-(C~Cアルキル)-、-アリーレン-、-C~C10アルキレン-アリーレン-、-アリーレン-C~C10アルキレン-、-C-C10アルキレン-(C~Cカルボシクロ)-、-(C~Cカルボシクロ)-C~C10アルキレン-、-C~Cヘテロシクロ-、-C~C10アルキレン-(C~Cヘテロシクロ)-、-(C~Cヘテロシクロ)-C~C10アルキレン-、-(CHCHO)r-、および-(CHCHO)r-CH-であり、rは、1~10の範囲の整数である。
【化1】
【0209】
例示的なストレッチャー単位は、式(IIa)のものであり、式中、Rは、-(CH-である。
【化2】
【0210】
別の例示的なストレッチャー単位は、式(IIa)のものであり、式中、Rは-(CHCHO)r-CH-であり、rは、2である。
【化3】
【0211】
更に別の例示的なストレッチャー単位は、式(IIb)のものであり、式中、Rは、-(CH-である。
【化4】
【0212】
他のある特定の実施形態において、ストレッチャー単位は、抗体単位の硫黄原子とストレッチャー単位の硫黄原子の間のジスルフィド結合を介して、別の単位(A)に結合している。この実施形態の代表的なストレッチャー単位は、式(III)の角括弧内に表されており、式中、R、-A-、-W-、-Y-、-D、w、およびyは、上記に定義されたとおりである。
【化5】
【0213】
別の特定の実施形態において、ストレッチャーの反応性基は、抗体のアミノ基と反応性であり得る反応部位を含有する。アミノ基は、アルギニンまたはリシンのものであり得る。適切なアミン反応部位には、スクシンイミドエステル、4-ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、無水物、酸塩化物、塩化スルホニル、イソシアネート、およびイソチオシアネートなどの活性化エステルが含まれるが、これらに限定されない。これらの実施形態の代表的なストレッチャー単位は、式(IVa)および(IVb)の角括弧内に表されており、式中、R、A-、-W-、-Y-、-D、w、およびyは、上記に定義されたとおりである。
【化6】
【0214】
なお別の態様において、ストレッチャーの反応性官能基は、抗体に存在し得る修飾炭水化物基と反応性である反応部位を含有する。幾つかの実施形態において、抗体は、酵素的にグリコシル化されて、炭水化物部分を提供する。炭水化物は、過ヨウ素酸ナトリウムのような試薬により中程度に酸化され、酸化された炭化水素のカルボニル単位は、Kaneko et al.,1991,Bioconjugate Chem 2:133-41に記載されているような、ヒドラジド、オキシム、反応性アミン、ヒドラジン、チオセミカルバジド、ヒドラジンカルボキシレート、およびアリールヒドラジドのような官能基を含有するストレッチャーと縮合され得る。この実施形態の代表的なストレッチャー単位は、式(Va)~(IVc)の角括弧内に表されており、式中、R、A-、-W-、-Y-、-D、w、およびyは、上記に定義されたとおりである。
【化7】
【0215】
アミノ酸単位
アミノ酸単位(-W-)は、ストレッチャー単位(-T-)を、スペーサー単位が存在する場合にはスペーサー単位(-Y-)に結合させ、ストレッチャー単位を、スペーサー単位が不在の場合には細胞障害剤または細胞増殖抑制剤(活性化部分、D)に結合させる。-Ww-は、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、オクタペプチド、ノナペプチド、デカペプチド、ウンデカペプチド、またはドデカペプチド単位である。各-W-単位は、独立して、下記に示されている角括弧内に式を有し、wは、2~12の範囲の整数であり、
【化8】
式中、Rは、水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、ベンジル、p-ヒドロキシベンジル、-CHOH、-CH(OH)CH、-CHCHSCH、-CHCONH、-CHCOOH、-CHCHCONH、-CHCHCOOH、-(CHNHC(=NH)NH、-(CHNH、-(CHNHCOCH、-(CHNHCHO、-(CHNHC(=NH)NH、-(CHNH、-(CHNHCOCH、-(CHNHCHO、-(CHNHCONH、-(CHNHCONH、-CHCHCH(OH)CHNH、2-ピリジルメチル-、3-ピリジルメチル-、4-ピリジルメチル-、フェニル、シクロヘキシル、
【化9】
である。
【0216】
リンカーのアミノ酸単位は、腫瘍関連プロテアーゼが含まれるが、これに限定されない酵素により酵素的に切断されて、活性化部分(-D)を遊離することができ、これは、放出されるとインビボでプロトン化されて、活性化分子(D)を提供する。
【0217】
例示的なW単位は、式(VI)~(VIII)により表される。
【化10】
式中、RおよびRは、以下のとおりである。
【表2】
【化11】
式中、R、R、およびRは、以下のとおりである。
【表3】
【化12】
式中、R、R、R5、およびRは、以下のとおりである。
【表4】
【0218】
適切なアミノ酸単位には、式(VI)の単位が含まれるが、これらに限定されず、式中、Rは、ベンジルであり、Rは、-(CHNHであり、Rは、イソプロピルであり、Rは、-(CHNHであり;またはRは、イソプロピルであり、Rは、-(CHNHCONHである。別の適切なアミノ酸単位は、式(VII)の単位であり、式中、Rは、ベンジルであり、Rは、ベンジルであり、Rは、-(CHNHである。-Ww-単位は、特定の腫瘍関連プロテアーゼによる酵素切断に対する選択性において設計および最適化され得る。適切な-Ww-単位は、プロテアーゼ、カテプシンB、C、およびD、ならびにプラスミンにより触媒される切断のものである。
【0219】
幾つかの実施形態において、-Ww-は、ジペプチド、トリペプチド、またはテトラペプチド単位である。
【0220】
、R、R、R、またはRが水素以外である場合、R、R、R、R、またはRが結合する炭素原子はキラルである。R、R、R、R、またはRが結合する各炭素原子は、(S)または(R)立体配置において独立している。
【0221】
幾つかの実施形態において、アミノ酸単位は、フェニルアラニン-リシンジペプチド(Phe-LysまたはFKリンカー)である。幾つかの実施形態において、アミノ酸単位は、バリン-シトルリンジペプチド(Val-CitまたはVCリンカー)である。幾つかの実施形態において、アミノ酸単位は、5-アミノ吉草酸、ホモフェニルアラニンリシン、テトライソキノリンカルボキシレートリシン、シクロヘキシルアラニンリシン、イソネペコチン酸(isonepecotic acid)リシン、ベータ-アラニンリシン、グリシンセリンバリングルタミン、またはイソネペコチン酸である。
【0222】
アミノ酸単位は、天然のアミノ酸を含むことができる。他の実施形態において、アミノ酸単位は、非天然のアミノ酸を含むことができる。
【0223】
スペーサー単位
スペーサー単位(-Y-)は、存在する場合、アミノ酸単位を薬剤単位に結合させる。スペーサー単位には、自己犠牲的および非自己犠牲的の2つの一般的な種類がある。非自己犠牲的スペーサー単位は、スペーサー単位の一部または全てが、TM-リンカー-AM複合体または薬剤-リンカー化合物からのアミノ酸単位の酵素切断の後、活性化部分単位に結合したままであるものである。非自己犠牲的スペーサー単位の例には、(グリシン-グリシン)スペーサー単位およびグリシンスペーサー単位が挙げられるが、これらに限定されない。グリシン-グリシンスペーサー単位またはグリシンスペーサー単位を含有するTM-リンカー-AM複合体が、腫瘍細胞関連プロテアーゼ、癌細胞関連プロテアーゼ、またはリンパ球関連プロテアーゼを介して酵素切断を受ける場合、グリシン-グリシン-薬剤部分またはグリシン-薬剤部分は、A-T-Ww-から切断される。AMを遊離するため、独立している加水分解反応が、標的細胞内で生じて、グリシン-薬剤単位結合を切断するべきである。
【0224】
典型的な実施形態において、-Yy-は、p-アミノベンジルエーテルであり、これはQmにより置換され得、ここでQは、-C~Cアルキル、-C1~Cアルコキシ、-ハロゲン、-ニトロ、または-シアノであり、mは、0~4の範囲の整数である。
【0225】
幾つかの実施形態において、非自己犠牲的スペーサー単位(-Y-)は、-Gly-Gly-である。
【0226】
幾つかの実施形態において、非自己犠牲的スペーサー単位(-Y-)は、-Gly-である。
【0227】
1つの実施形態において、AM-リンカー化合物またはTM-リンカー-AM複合体は、スペーサー単位を欠いている(y=0)。
【0228】
あるいは、自己犠牲的スペーサー単位を含有するTM-リンカー-AM複合体は、別個の加水分解ステップの必要がなく、AM(D)を放出することができる。これらの実施形態において、-Y-は、p-アミノベンジルアルコール(PAB)単位であり、それは、PAB基の窒素原子を介して-Ww-に結合し、かつカーボネート、カルバメート、またはエーテル基を介して-Dに直接接続している。
【0229】
自己犠牲的スペーサー単位の他の例には、2-アミノイミダゾール-5-メタノール誘導体(例えば、Hay et al.,1999,Bioorg.Med.Chem.Lett.9:2237を参照すること)、およびオルトまたはパラ-アミノベンジルアセタールのような、PAB基と電子的に等価の芳香族化合物が挙げられるが、これらに限定されない。置換および非置換4-アミノ酪酸アミド(Rodrigues et al.,1995,Chemistry Biology 2:223)、適切に置換されたビシクロ[2.2.1]およびビシクロ[2.2.2]環系(Storm et al.,1972,J.Amer.Chem.Soc.94:5815)、ならびに2-アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberry et al.,1990,J.Org.Chem.55:5867)のようなアミド結合加水分解によって簡易環化を受けるスペーサーを、使用することができる。α位置のグリシンが置換されているアミン含有薬剤の排除(Kingsbury, et al.,1984,J.Med.Chem.27:1447)も、TM-リンカー-AM複合体に適用することができる自己犠牲的スペーサー戦略の例である。
【0230】
代替的な実施形態において、スペーサー単位は、分岐ビス(ヒドロキシメチル)スチレン(BHMS)単位であり、これを部分の組み込みに使用することができる。
【0231】
典型的なスペーサー単位(-Yy-)は、式(IX)~(XI)により表され、
【化13】
式中Qは、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、またはシアノであり、mは、0~4の範囲の整数である。
【化14】
【0232】
幾つかの実施形態において、リンカーは酵素切断性である。幾つかの実施形態において、リンカーは酵素切断性ではない。
【0233】
III.薬学的製剤および投与
本発明は、更に、本明細書の化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の薬学的に許容される担体とを含む、薬学的製剤に関する。
【0234】
付加塩またはその水和物のような薬学的に許容される担体を含む本明細書に記載されている化合物は、多種多様な投与経路または様式を使用して患者に送達することができる。適切な投与経路には、吸入、経皮、経口、直腸内、経粘膜、腸内、ならびに筋肉内、皮下、および静脈内を含む非経口投与が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、標的部分として抗体または抗体フラグメントを含む本発明の化合物は、非経口、より好ましくは静脈内投与される。
【0235】
本明細書で使用されるとき、用語「投与する」または「投与」は、化合物を意図される作用部位へ直接的および間接的に送達する全ての方法を包含することが意図される。
【0236】
本明細書に記載されている化合物、またはその薬学的に許容される塩および/もしくは水和物は、単独で、本発明の他の化合物と組み合わされて、および/または他の治療剤との組み合わされたカクテルにより投与され得る。当然のことながら、本発明の化合物と同時投与することができる治療剤の選択は、部分的には、治療される状態によって決まる。
【0237】
例えば、自己誘発剤に依存する生物により引き起こされる疾患状態に罹患している患者に投与される場合、本発明の化合物は、疼痛、感染、および他の症状、ならびに疾患に一般的に関連する副作用を治療するために使用される薬剤を含有するカクテルにより投与され得る。そのような薬剤には、例えば、鎮痛薬、抗生物質などが含まれる。
【0238】
癌治療を受けている患者に投与される場合、化合物は、抗癌剤および/または補助増強剤を含有するカクテルにより投与され得る。化合物は、また、制吐薬、放射線保護剤などのような、放射線療法の副作用を治療する薬剤を含有するカクテルにより投与され得る。
【0239】
本発明の化合物と同時投与することができる補助増強剤には、例えば、三環系抗うつ剤(例えば、イミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、クロミプラミン、トリミプラミン、ドキセピン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、アモキサピン、およびマプロチリン)、非三環系抗うつ剤(例えば、セルトラリン、トラゾドン、およびシタロプラム)、Ca+2拮抗薬(例えば、ベラパミル、ニフェジピン、ニトレンジピン、およびカロベリン)、アンホテリシン、トリパラノール類縁体(例えば、タモキシフェン)、抗不整脈薬(例えば、キニジン)、降圧薬(例えば、レセルピン)、チオール枯渇薬(例えば、ブチオニン、およびスルホキシイミン)、ならびにカルシウムロイコポリンが含まれる。
【0240】
本発明の活性化合物(複数可)は、それ自体、または活性化合物(複数可)が1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、もしくは希釈剤と混合される薬学的組成物の形態で投与される。本発明に使用される薬学的組成物は、活性化合物を薬学的に使用できる調合剤に加工することを促進する賦形剤および佐剤を含む、1つ以上の生理学的に許容される担体を使用する従来の方法で典型的に処方される。適切な処方は、選択される投与経路によって決まる。
【0241】
経粘膜投与には、透過される関門に適する浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、当該技術において一般に知られている。
【0242】
経口投与では、化合物は、活性化合物(複数可)を当該技術に周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって、容易に処方され得る。そのような担体は、本発明の化合物が錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤として、治療される患者の経口摂取用に処方されることを可能にする。賦形剤を固め、得られた混合物を場合により粉砕し、所望であれば適切な佐剤を加えた後、顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣剤コアを得ることによって、経口使用のための薬学的調合剤を得ることができる。適切な賦形剤は、特に、乳糖、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類のような充填剤、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース調製物である。望ましい場合、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムのようなその塩のような崩壊剤を加えることができる。
【0243】
糖衣錠コアは適切な被覆で提供される。この目的のために、糖濃縮液が使用され得、これは場合によりアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適切な有機溶媒もしくは溶媒混合物を含有することができる。染料または顔料を、確認のため、または活性化合物の用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣剤被覆に加えることができる。
【0244】
経口用に使用できる薬学的調合剤には、ゼラチンから作られる押し込み式カプセル剤、ならびにゼラチンと、グリセロール、またはソルビトールのような可塑剤から作られる軟質密閉カプセル剤が含まれる。押込嵌めカプセルは、ラクトース等の充填剤、デンプン等の結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、および任意に、安定剤との混合物内に、活性成分を含んでもよい。軟質カプセル剤では、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールのような適切な液体中に溶解または懸濁されてもよい。加えて、安定剤が添加され得る。経口投与用のすべての製剤は、かかる投与に適した投与量でなければならない。
【0245】
口腔内投与では、組成物は従来の方法により処方された錠剤またはロゼンジ剤の形態をとることができる。
【0246】
吸入による投与では、本発明により使用される化合物は、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素、または他の適切なガスの使用により、加圧パックまたは噴霧器からのエアゾールスプレー状の形態で都合良く送達される。加圧エアゾールの場合、投与量単位は、計量を送出するための弁を備えることにより決定され得る。例えば吸入器または注入器で用いるゼラチンのカプセル剤およびカートリッジ剤は、化合物と、乳糖またはデンプンのような適切な粉末基剤との粉末ミックスを含有して、処方され得る。
【0247】
化合物は、注入による、例えばボーラス注入または持続点滴による非経口投与用に処方され得る。注射は、本発明の組成物の好ましい投与方法である。注射用製剤は、単位剤形、例えば、防腐剤が添加されているアンプル剤または多用量容器により存在し得る。組成物は、懸濁剤、液剤、または油性もしくは水性媒材中の乳剤のような形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤のような処方剤を含有することができ、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸、もしくはアルギン酸ナトリウムのようなその塩のようなものを含み得る。
【0248】
非経口投与用の薬学的製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。加えて、活性化合物の懸濁剤は、適切な油状注射用懸濁剤として調製され得る。適切な親油性溶媒または媒材には、ゴマ油のような脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。水性注射用懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランのような懸濁剤の粘度を増加させる物質を含有し得る。場合により、懸濁剤は、適切な安定化剤、または高濃度溶液の調製を可能にするための化合物の可溶性を増加させる薬剤を含有することもできる。注射用には、本発明の薬剤は、水溶液で、好ましくはハンクス溶液、リンゲル溶液または生理食塩水緩衝液のような生理学的に適合する緩衝液で処方され得る。
【0249】
あるいは、活性成分は、使用する前に適切な媒材、例えば、無パイロジェン滅菌水により構成される粉末の形態であり得る。
【0250】
化合物は、また、例えばカカオバターまたは他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を含有する、坐剤または停留浣腸のような直腸用組成物にも処方され得る。
【0251】
前記の製剤に加えて、化合物は、デポー製剤としても処方され得る。そのような長期作用製剤は、埋め込みもしくは経皮送達(例えば、皮下もしくは筋肉内)、筋肉内注射、または経皮パッチにより投与され得る。したがって、例えば化合物は、適切なポリマーもしくは疎水性材料により(例えば、許容される油中の乳剤として)、またはイオン交換樹脂により、またはやや難溶性の誘導体として、例えばやや難溶性の塩として処方することができる。
【0252】
薬学的組成物は、適切な固体またはゲル相の担体または賦形剤を含むこともできる。そのような担体または賦形剤の例には、炭酸カルシウム、カルシウムホセート(calcium phosate)、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールのようなポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0253】
好ましい薬学的組成物は、静脈内注射のような注射用に処方された組成物であり、総薬学的組成物の100重量%に基づいて、約0.01重量%~約100重量%の本発明の化合物を含む。薬剤-リガンド複合体は、抗体が特定の癌を標的にするように選択されている、抗体-細胞毒素複合体であってもよい。
【0254】
幾つかの実施形態において、本発明の薬学的組成物は第2の化学療法剤を更に含む。
【0255】
本明細書において「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物を意味する。例には、ゲムシタビン、イリノテカン、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン、TAXOL、メトトレキセート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、およびカルボプラチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0256】
幾つかの実施形態において、第2の化学療法剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、イマタニブ(imatanib)、パクリタキセル、シクロホスファミド、ロバスタチン、ミノシン(minosine)、ゲムシタビン、シタラビン、5-フルオロウラシル、メトトレキセート、ドセタキセル、ゴセレリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、テニポシド、エトポシド、ゲムシタビン、エポチロン、ビノレルビン、カンプトテシン、ダウノルビシン、アクチノマイシンD、ミトキサントロン、アクリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、またはイダルビシンからなる群から選択される。
【0257】
IV. キット
別の態様において、本発明は、1つ以上の本発明の化合物または組成物と、化合物または組成物の使用指示書とを含むキットを提供する。例示的な実施形態において、本発明は、本発明のリンカーアームを別の分子と複合させるキットを提供する。キットは、リンカーと、リンカーを特定の官能基に結合するための指示書とを含む。キットは、1つ以上の細胞障害薬、標的剤、検出可能標識、薬学的塩、または緩衝液も含むことができる。キットは、容器、および場合により1つ以上のバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、またはシリンジも含むことができる。キットの他のフォーマットは、当業者に理解され、本発明の範囲内である。
【0258】
V. 医療用途
別の態様において、本発明は、疾患状態の治療の必要な対象において疾患状態を治療する方法であって、治療有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を、対象に投与することを含む方法を提供する。
【0259】
上記に記載された組成物および構築物に加えて、本発明は、本発明の化合物の多数の用途も提供する。本発明の化合物の用途には、腫瘍細胞または癌細胞の死滅または増殖もしくは複製の阻害、癌の治療、前癌性状態の治療、腫瘍細胞または癌細胞の増殖の防止、癌の予防、自己免疫性抗体を発現する細胞の増殖の防止が含まれる。これらの用途は、有効量の本発明の化合物を、それを必要とする哺乳動物またはヒトのような動物に投与することを含む。
【0260】
本発明の化合物は、ヒトのような動物において癌のような疾患を治療するのに有用である。本発明の組成物の薬学的有効量を用いて薬学的に許容される方法により組成物を対象に提供することによる、腫瘍を治療するための組成物および用途が、提供される。
【0261】
本明細書において「癌」とは、無調節な細胞増殖により特徴付けられる、ヒトにおける病理状態を意味する。例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。癌のより詳細な例には、肺(小細胞および非小細胞)、乳房、前立腺、カルチノイド、膀胱、胃、膵臓、肝臓(肝細胞)、肝芽腫、直腸結腸、頭頸部扁平上皮癌、食道、卵巣、子宮頸部、子宮内膜、中皮腫、黒色腫、肉腫、骨肉腫、脂肪肉腫、甲状腺、デスモイド、慢性骨髄性白血病(AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0262】
本明細書において「抑制する」、または「治療する」もしくは「治療」は、低減、治療処置、および予防また防止処置が意図され、目的は目指す病理障害または状態を低減または防止することである。一例において、本発明の化合物を投与した後、癌患者は、腫瘍サイズの低減を経験し得る。「治療」または「治療する」には、(1)疾患の病理もしくは症状を経験もしくは表す対象において疾患を抑制すること、(2)疾患の病理もしくは症状を経験もしくは表す対象において疾患を改善すること、および/または(3)疾患の病理もしくは症状を経験もしくは表す対象において疾患のあらゆる測定可能な減少をもたらすこと、が含まれる。本発明の化合物が癌細胞の増殖を防止する、および/または死滅させ得る程度まで、細胞増殖抑制的および/または細胞障害的であり得る。
【0263】
本明細書において「治療有効量」とは、対象または哺乳動物において疾患を「治療する」のに有効な、本明細書に提供される化合物の量を意味する。癌の場合では、薬剤の治療有効量は、癌細胞の数を低減する、腫瘍サイズを低減する、末梢臓器への癌細胞の浸潤を阻害する、腫瘍転移を阻害する、腫瘍増殖をある程度まで抑制する、および/または癌に関連する1つ以上の症状をある程度まで軽減する、のいずれかをし得る。
【0264】
1つ以上の更なる治療剤と「組み合わせて」投与することには、任意の順番での同時(同時発生的)および連続的な投与が含まれる。本明細書で使用されるとき、用語「薬学的な組み合わせ」は、活性成分の混合または組み合わせにより得られる生成物を意味し、活性成分の固定された、および固定されない組み合わせの両方を含む。用語「固定された組み合わせ」は、活性成分、例えば式(1)の化合物および共薬剤が、両方とも、単一実体または投与の形態において同時に患者に投与されることを意味する。用語「固定されない組み合わせ」は、活性成分、例えば式(1)の化合物および共薬剤が、両方とも、別々の実体として、同時に、同時発生的に、または連続的に特定の時間制限なしで患者に投与されることを意味し、そのような投与は、患者の身体に活性成分の治療有効量を提供する。後者は、カクテル療法、例えば3つ以上の活性成分の投与にも適用される。
【0265】
幾つかの実施形態において、疾患状態は腫瘍である。
【0266】
幾つかの実施形態において、疾患状態は、前癌性病変のような異常細胞増殖を含む。
【0267】
本発明は、動物における癌の治療に対して、および腫瘍細胞または癌細胞の増殖の阻害に対して特に有用である。癌または前癌性状態は、非制御的細胞増殖により特徴付けられる腫瘍、転移、または任意の疾患もしくは障害を含み、本発明の薬剤-リガンド複合体の投与により治療または予防され得る。化合物は、活性化部分を腫瘍細胞または癌細胞に送達する。幾つかの実施形態において、標的部分は、癌細胞または腫瘍細胞関連抗原に特異的に結合または関連する。リガンドへの近接性のため、内部移行した後、活性化部分は、例えば受容体仲介エンドサイトーシスを介して腫瘍細胞または癌細胞内に取り込まれ得る。抗原は、腫瘍細胞もしくは癌細胞に結合することができる、または腫瘍細胞もしくは癌細胞と関連する細胞外マトリックスタンパク質であり得る。いったん細胞内に入ると、リンカーは、腫瘍細胞または癌細胞関連プロテアーゼにより加水分解的または酵素的に切断され、それによって活性化部分を放出する。次に、放出された活性化部分は、自由に拡散し、免疫細胞または腫瘍細胞の免疫活性を誘発または増強する。代替的な実施形態において、活性化部分は、化合物の腫瘍微環境から切断され、続いて薬剤は細胞に浸透する。
【0268】
本発明の化合物により標的にされ得る前癌性状態の代表例には、化生(metaplasia)、過形成(hyperplysia)、異形成、結腸直腸ポリープ、光線性角化症(actinic ketatosis)、光線性口唇炎、ヒトパピローマウイルス、白斑症、扁平苔癬(lychen planus)、およびボーエン病が含まれる。
【0269】
本発明の化合物により標的にされ得る癌または腫瘍の代表例には、肺癌、結腸癌、前立腺癌、リンパ腫、黒色腫、乳癌、卵巣癌、精巣癌、CNS癌、腎癌、腎臓癌、膵癌、胃癌、口腔癌、鼻腔癌、子宮頸癌、および白血病が挙げられる。化合物に使用される特定の標的部分は、活性化部分が、薬剤で治療される腫瘍組織を標的にするように選択され得る(すなわち、腫瘍特異的抗原に特異的な標的剤が、選択される)ことが、当業者には容易に理解される。そのような標的部分の例は、当該技術において良く知られており、その例には、乳癌の治療では抗Her2、リンパ腫の治療では抗CD20、前立腺癌の治療では抗PSMA、および非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫の治療では抗CD30が挙げられる。
【0270】
幾つかの実施形態において、異常増殖は癌細胞のものである。
【0271】
幾つかの実施形態において、癌は、乳癌、結腸直腸癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、子宮内膜癌、濾胞性リンパ腫、胃癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、肝細胞癌、肺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、および腎細胞癌からなる群から選択される。
【0272】
幾つかの実施形態において、本発明は、細胞の死滅に使用される化合物を提供する。化合物は、細胞を死滅させるのに十分な量で前記細胞に投与される。例示的な実施形態において、化合物は、細胞を担持する対象に投与される。更なる例示的な実施形態において、投与は、細胞(例えば、細胞は腫瘍細胞であり得る)を含む腫瘍の増殖を抑制または停止させるために役立つ。増殖を抑制させるための投与において、細胞の増殖の割合は、投与前の増殖の割合より少なくとも10%下回るべきである。好ましくは、増殖の割合は、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%抑制される、または完全に停止される。
【0273】
有効投与量
本発明における使用に適した薬学的組成物には、活性成分が治療有効量、すなわち、その意図される目的を達成する有効量で含有される組成物が含まれる。特定の用途のための実際の有効量は、とりわけ、治療される状態によって決まる。有効量の決定は、とりわけ本明細書の詳細な開示を考慮すると、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0274】
本明細書に記載されている任意の化合物にとって、治療有効量は、細胞培養アッセイによって最初に決定することができる。標的血漿濃度は、細胞増殖または分裂を阻害することができる活性化合物の濃度である。好ましい実施形態において、細胞活性は、少なくとも25%阻害される。細胞活性の阻害を少なくとも約30%、50%、75%、もしくは更に90%、またはそれ以上誘発することができる活性化合物(複数可)の標的血漿濃度が、本発明において好ましい。患者における細胞活性の阻害率をモニターして、達成される血漿薬剤濃度の適切さを評価することができ、投与量を、上方または下方調整して、所望の阻害率を達成することができる。
【0275】
当該技術において良く知られているように、ヒトにおける使用の治療有効量は、動物モデルによっても決定され得る。例えば、ヒトへの用量は、動物に有効であることが見出されている循環濃度を達成するように処方され得る。ヒトへの投与量は、細胞阻害をモニターし、上記に記載されているように、投与量を上方または下方調整することによって調整され得る。
【0276】
治療有効用量は、同様の薬理学的活性を示すことが知られている化合物に対するヒトデータからも決定され得る。適用される用量は、既知の化合物と比較した投与化合物の相対的な生物学的利用能および効力に基づいて調整され得る。
【0277】
上記に記載された方法および当該技術に周知の他の方法に基づいて、ヒトにおいて最大効能を達成する用量を調整することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0278】
局所投与の場合では、投与化合物の全身循環濃度は、特に重要ではない。そのような場合には、化合物は、意図される結果を達成するのに有効な局所濃度を達成するように投与される。
【0279】
異常細胞増殖に関連する疾患の予防および/または治療における使用には、約0.001μM~20μMの投与化合物の循環濃度が好ましく、約0.01μM~5μMが好ましい。
【0280】
本明細書に記載されている化合物の経口投与用の患者用量は、典型的には約1mg/日~約10,000mg/日、より典型的には約10mg/日~約1,000mg/日、最も典型的には約50mg/日~約500mg/日の範囲である。患者の体重の観点から記述すると、典型的な投与量範囲は、約0.01~約150mg/kg/日、より典型的には約0.1~約15mg/kg/日、最も典型的には約1~約10mg/kg/日、例えば5mg/kg/日または3mg/kg/日の範囲である。
【0281】
少なくとも幾つかの実施形態において、腫瘍増殖を遅延または阻害する患者用量は、1μmol/kg/日以下であり得る。例えば、患者用量は、0.9、0.6、0.5、0.45、0.3、0.2、0.15、または0.1μmol/kg/日以下(薬剤のモル参照)であり得る。好ましくは、抗体と薬剤の複合体は、少なくとも5日間にわたって1日投与量を投与したとき、腫瘍の増殖を遅延する。
【0282】
他の投与モデルでは、投与量および間隔を個別に調整して、治療される特定の臨床適応症に有効な投与化合物の血漿レベルを提供する。例えば、一実施形態において、本発明の化合物を比較的高濃度で1日あたり複数回投与することができる。あるいは、本発明の化合物を最小有効濃度で投与すること、および少ない頻度の投与レジメンで使用することが、より望ましいことがある。このことは、個別疾患の重篤度に相応する治療レジメンを提供する。
【0283】
本明細書において提供される技術を利用して、有意な毒性を生じないが、特定の患者が示す臨床症状を治療するのに完全に有効である、有効治療処置レジメンを計画することができる。この計画は、化合物の効力、相対的な生物学的利用能、患者の体重、副作用の存在および重篤度、好ましい投与様式、ならびに選択された薬剤の毒性プロファイルのような要因を考慮することによって、活性化合物を注意深く選択することを伴うべきである。
【0284】
本発明の好ましい実施形態が本明細書において示され、記載されてきたが、そのような実施形態は単なる例として提供されていることが、当業者には明白である。ここで、当業者は、多数の変化形、変更、および置換を本発明から逸脱することなく想定するであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する種々の代替手段が、本発明の実施において採用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲に含まれる方法および構造、ならびにそれらの等価物が、それにより包含されることが意図される。
【実施例0285】
本発明が更に例示されるが、本発明の化合物の調製を例示する以下および実施例に制限されない。
【0286】
実施例1
her2またはegfr形質移入L細胞系
試薬:L細胞は、ATCC(Manassas,VA;Cat No CRL2648)由来のものであり、Her2/pEZ-Lv105またはegfr/pCMV cDNAは、Sino Biological Inc.,(カタログ番号H10004)またはGeneCopoeia(カタログ番号Z2866)から購入し、グルコースDMEM、L-グルタミン、リポフェクタミン2000は(Invitrogen;Carlsbad,CA)のものである。
【0287】
スクリーニング用の細胞系を作製するため、標的Her2またはEGFRを発現するL細胞である複合トラスツズマブを生成した。Her2/pEZ-Lv105またはegfr/pCMV cDNA構築物を、標準的なリポフェクタミン2000プロトコールにより、L細胞(高グルコースDMEM+10%FBS+2mLのL-グルタミン細胞に増殖させた)に形質移入した。
【0288】
結合分析(FACS分析)
複合トラスツズマブの結合能を決定するため、ヒトher2を発現するL細胞のFACS分析を実施した。簡潔には、her2を一過的に導入した100μl中およそ10細胞のL細胞を、様々な量のトラスツズマブ複合抗体、PBS、もしくは二次抗体のみと共にインキュベートするか、または無関係のhuIgGを陰性対照として使用した。洗浄した後、細胞をFACS緩衝液に再懸濁し、100μLの反応量中の20μLの、フィコエリトリン(Mu抗ヒトPE)二次抗体に結合したマウス抗ヒトIgGと共に室温で30分間インキュベートした。洗浄した後、細胞を200μLの2%パラホルムアルデヒド/PBSで固定し、フローサイトメトリーを実施した。同じ手順をアイソタイプ対照として無関係のヒトIgG抗体に対して使用して、細胞系毎にベースラインPMTを設定した。フローサイトメトリーを、BD FACSCalibur(登録商標)により実施し、幾何平均蛍光強度をそれぞれの試料に対して記録した。記録したデータを、FlowJoソフトウエアを使用して分析した。結果を図1に示す。
【0289】
抗体とトール様受容体リガンドの複合体の生成
試薬:トラスツズマブ(Roche/Genentech Corporation,South San Francisco,CA)、セツキシマブ(Merck,)、レシキモド(resiquimod)と結合したMC-val-cit-PAB(MC-vc-PAB-TLRL)またはレシキモド(resiquimod)と結合したMC(MC-TLRL)(Contract Research Organization,Chinaにおいて合成)、ホウ酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ジチオスレイトール(DTT)、Sephadex G25、DTPA、DTNB、およびマレイミドカプロイル-モノメチル(Sigma-Aldrich,Milwaukee,Wisconsin)。
【0290】
抗体TLRリガンド複合体の生成に使用した薬剤は、トラスツズマブおよびレシキモド(resiquimod)(TLRL)を含み、幾つかの場合では、セツキシマブを複合体として使用した。TLACの生成に使用したリンカーは、切断可能リンカーMC-vc-PABまたは切断不能リンカーMCであった。
【0291】
トラスツズマブMC-TLRLまたはセツキシマブMC-TLRLの調製
トラスツズマブを、20mg/mLでの緩衝液交換によりHERCEPTIN(登録商標)から精製し、500mMのホウ酸ナトリウムおよび500mMの塩化ナトリウムにpH8.0で溶解した抗体を、100mMの過剰量ジチオスレイトール(DTT)で処理する。37℃で約30分間インキュベートした後、緩衝液をSephadex G25樹脂による溶出で交換し、1mMのDTPAを有するPBSで溶出する。チオール/Ab値は、DTNB(Sigma-Aldrich,Milwaukee,Wisconsin)との反応および412nmでの吸光度の決定により、溶液の280nmでの吸光度およびチオール濃度から還元抗体濃度を決定することによって調べる。PBSに溶解した還元抗体を氷上で冷やす。DMSOに溶解した、レシキモド(resiquimod)と結合したMcである薬剤リンカー試薬を、既知の濃度でアセトニトリルおよび水において希釈し、PBS中の冷却還元抗体に加える。約1時間後、過剰量のマレイミドを加えて、反応を停止させ、あらゆる未反応抗体のチオール基をキャップする。幾つかの場合において、標準的な手順により免疫グロブリンのリシンへの結合を実施した。反応混合物を遠心分離限外濾過により濃縮し、複合抗体を精製し、PBS中のG25樹脂を介する溶出により脱塩し、0.2μmフィルターにより滅菌条件下で濾過し、凍結保存した。セツキシマブMC-TLRLの調製は、同じ手順を使用した。
【0292】
トラスツズマブMC-vc-TLRLまたはセツキシマブMC-vc-TLRLの調製
抗体を、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン(vc)-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB)によりシステインを介してTLRLに結合した。MC-vc-PABリンカーは、カテプシンBのような細胞間プロテアーゼにより切断可能であり、切断されると、遊離薬剤を放出し(Doronina et al.,Nat.Biotechnol.,21:778-784(2003))、一方、MCリンカーは、細胞内プロテアーゼによる切断に対して抵抗性がある。精製されたトラスツズマブを、500mMのホウ酸ナトリウムおよび500mMの塩化ナトリウムにpH8.0で溶解し、100MMの過剰量ジチオスレイトール(DTT)で更に処理した。37℃で約30分間インキュベートした後、緩衝液をSephadex G25樹脂による溶出で交換し、1mMのDTPAを有するPBSで溶出する。チオール/Ab値は、DTNB(Sigma-Aldrich,Milwaukee,Wisconsin)との反応および412nm(吸光係数=13600cm-1-1)での吸光度の決定により、溶液の280nmでの吸光度およびチオール濃度から還元抗体濃度を決定することによって調べた。PBSに溶解した還元抗体を氷上で冷やした。DMSO中のレシキモド(resiquimod)と結合したMC-val-cit-PAB-PNPを、アセトニトリルおよび水に溶解し、PBS中の冷却還元抗体に加えた。1時間のインキュベーションの後、過剰量のマレイミドを加えて、反応を停止させ、あらゆる未反応抗体のチオール基をキャップした。幾つかの場合において、標準的な手順により免疫グロブリンのリシンへの結合を実施した。反応混合物を遠心分離限外濾過により濃縮し、抗体薬剤複合体を精製し、PBS中のG25樹脂を介する溶出により脱塩し、0.2μmフィルターにより滅菌条件下で濾過し、凍結保存した。セツキシマブMC-vc-TLRLの調製は、同じ手順を使用した。
【0293】
典型的には、抗体とMC-TLRLまたはMC-vc-TLRLとの複合反応は、異なる数の結合複合TLRL薬剤、すなわち薬剤が1から約8の分布である薬剤装填(drug loading)を持つ抗体を含む異種混合物をもたらす。したがって、抗体MC-TLRLまたは抗体MC-vc-TLRLは、単離精製された種分子、ならびに平均薬剤装填1~8の混合物を含む。対照プロセスでは、薬剤装填は、3~5の範囲であった。複合反応による化合物調製の抗体あたりのTLRL薬剤部分の平均数は、質量分析、ELISAアッセイ、電気泳動、およびHPLCのような従来の方法により特徴決定され得る。薬剤に関する抗体MC-TLRLまたは抗体MC-vc-TLRLの定量分布も決定することができる。ELISAにより、抗体とTLRLの複合の特定の調製における薬剤ペイロード数の平均値を決定することができる(Hamblett et al(2004)Clinical Cancer Res.10:7063-7070;Sanderson et al(2005)Clinical Cancer Res.11:843-852)。しかし、薬剤値の分布は、抗体抗原結合およびELISAの検出限界により、識別不能である。また、抗体薬剤複合体を検出するためのELISAアッセイは、薬剤部分が抗体に、例えば重鎖もしくは軽鎖フラグメント、または特定のアミノ酸残基に結合しているかを決定しない。幾つかの場合において、薬剤が、他の薬剤装填を有するトラスツズマブMC-TLRLまたはトラスツズマブMC-vc-TLRL由来のある特定の値である、均質トラスツズマブMC-TLRLまたはトラスツズマブMC-vc-TLRLの分離、精製、および特徴決定は、逆相HPLCまたは電気泳動のような方法により達成され得る。
【0294】
抗体依存性細胞仲介細胞障害性アッセイ(ADCC)
試薬:SKBR3細胞(ATCC、カタログ番号HTB-30)、McCoy’s 5A(Invitrogen、カタログ番号22400、ロット番号747809)、RPMI-1640(Invitrogen、カタログ番号11835、ロット番号764956)、FCS(Hyclone、カタログ番号SH30084.03、ロット番号GRH0054)、Ficoll-Hypaque(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ、カタログ番号17-1440-02)、96ウエルプレート(Costar、カタログ番号3599、カタログ番号3916)、トリパンブルー(Invitrogen、カタログ番号15250-061)、LDHキット(Promega、カタログ番号G7891)、ELISA読み取り機MD5(Molecule device)、ヒト化抗体Herceptin(登録商標)(Genentech Corporation,South San Francisco,CA;商標名トラスツズマブ(Trastuzumab))を、使用前に、水で再構成して10mg/mlの貯蔵液を作製した。
【0295】
高いペイロードのTLRLと結合したトラスツズマブが、依然として効果器(effector)機能を有するかどうかを決定するために、幾つかの異なる複合形体の抗体依存性細胞仲介細胞障害(ADCC)活性を試験し、有意に増強されたADCC活性を有することを示されているトラスツズマブ基準材料のADCC活性と比較した。ADCCアッセイは、効果器細胞として健康な提供者からの末梢血単核細胞(PBMC)および標的細胞としてヒトSKRB3細胞系を使用して実施した。1日目には、1×10/100μLのSKBR3細胞を96ウエルプレートに播種し、続いて5%COにより37℃で48時間インキュベートした。
【0296】
3日目には、ヒトPBMCを、健康な志願提供者から得たヒト血液から新たに調製した。ヒト静脈血試料をクエン酸アンモニウム(ACD-A)管に収集した。管を数回逆さまにし、全血を1本の50mL円錐管に移した。血液を、2%FBS中のPBSにより1:3に希釈した。Ficoll-Hypaqueを、血液/PBS混合物の下側にゆっくりと分配した。試料を、上側層(血漿/PBS)を吸引により除去する前に、2400rpmで室温で30分間遠心分離した。軟膜を、滅菌ピペットで収集し、50mLの円錐管に集めた。WBCの目に見える塊が軟膜の下に残存する場合、過剰量のFicoll-Hypaqueを除去しないように注意しながら、WBC材料の全てを収集した。滅菌PBS-2%FBSを加え、逆さまにすることによって混合した。希釈PBMC懸濁液を250×gで室温で20分間遠心分離し、細胞ペレットを収集した。PBMCペレットを、2%の熱不活性化FBSを含むRPMI-1640培地に懸濁し、洗浄し、生存細胞の数をトリパンブルー排除により調べた。1.2×10細胞/mLの密度で調製し、使用の準備を整えた。一方、12、4、1.2、0.4、0.12、0.04、0.012、0.004~0μg/mLの範囲の抗体最終濃度が、RPMI-1640において良好に調製された。
【0297】
次に試験および対照抗体の一連の希釈物を、標的細胞を含有するウエルに加え、50μLのRPMI-1640培地中のPBMC効果器細胞を、効果器:標的細胞比が60:1で各ウエルに加え、更に17時間インキュベートした。プレートをインキュベーションの終了時に遠心分離し、上澄みを、LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)測定キットを使用して、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性についてアッセイした。細胞溶解は、マイクロプレート読み取り機を使用して490nmの吸光度により定量化した。標的細胞のみを含有するウエルの吸光度をバックグラウンドの対照とし、一方、Triton-X100で溶解した標的細胞を含有するウエルは、利用可能な最大シグナルを提供した。抗体依存性細胞障害性は、抗体の添加なしで標的および効果器細胞を含有するウエルで測定された。細胞障害性は、以下の方程式:
細胞障害%=100%×[A490nm(試料)-A490(標的細胞)-A490(効果細胞]/[A490nm(溶解標的細胞)-A490nm(標的細胞)]に従って計算した。
【0298】
試料希釈物の複製物からの平均ADCC値を、抗体濃度に対してプロットし、EC50値およびADCC(%)の最大範囲をPrism 5(GraphPad)に当て嵌めることによって求めた。
【0299】
PBMCからのヒト樹状細部(DC)の濃縮
ヒトPBMCは、Ficoll遠心分離により、健康な志願提供者から得た軟膜から調製した。樹状細胞は、ヒトPBMCからの抗CD3、CD19、CD20、CD14、およびCD16抗体の混合物により、磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)を用いる負の枯渇(negative depletion with magnetic beads)を使用して濃縮した。DCの濃縮を、ヤギ抗マウスFITC(系列)、HLA-DR-APCCy7、CD123-BV421、およびCD11C-APCで染色した。染色された細胞をBD LSR Fortessaにより分析した。抗CD3、CD4、CD11C、CD19、CD14、CD16、CD123モノクローナル抗体は、BD BiosciencesまたはBiolgendから購入した。
【0300】
図3(a)は、濃縮前後のDCのパーセンテージを示す。上側の2つのプロットにおける数字は、系統の枯渇前後の総細胞のDC(HLA-DR+Lin-)のパーセンテージを表す。下側のプロットにおける数字は、系統の枯渇前後の総DCのmDC(CD11C+CD123-)およびpDC(CD123+CD11C-)のパーセンテージを表す。
【0301】
濃縮したヒトDCおよびサイトカイン発現の刺激
1~2×10濃縮DCを、96ウエルプレートにおいて100μLの培地にプレーティングし、100μLの希釈刺激薬をプレートに加え、37℃のインキュベーター中で20~22時間培養した。上澄みを収集し、ヒトIFN-α、IL-6、IL-12(p70)、およびTNA-αをELISA(Mattech AB)により分析した。
【0302】
統計分析
全ての比較の有意性は、偽(mock)と試料群との間の不等分散を推定し、スチューデント両側t検定を使用して計算され、結果は、p<0.05の場合に有意であるとした。パラメーター間の相関関係は、スピアマンの順位相関検定を使用して評価し、P値<0.05を統計的に有意であるとした。
【0303】
トラスツズマブTLRL複合体またはセツキシマブTLRL複合体を使用するインビボ腫瘍細胞死滅アッセイ
患者由来胃癌異種移植片(PDX)マウスモデルの作製のため、6~8週齢の雌Balb/cヌードマウス(SLAC,Shanghai,China)を、腫瘍フラグメント埋め込みに使用した。動物には、通常のヌードマウス食餌を与え、実験動物の飼育および使用のガイド(Guide for Care and Use of Laboratory Animals)、ならびに研究機関の動物管理および使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)の規制に従って、SPF動物施設に収容した。大きさが約15~30mmの特許STO番号69胃癌フラグメントをBalb/cヌードマウスの腹部右側(皮下)に埋め込んだ。
【0304】
肺癌異種移植片モデルの作製のため、6~8週齢の雌Balb/cヌードマウスを、腫瘍フラグメントの埋め込みに使用した。ヒト肺癌細胞系H1650(ATCC、カタログ番号CRL5883)を、10%血清を含有するRPMI-1640培地で培養し、Balb/cヌードマウスの腹部右側(皮下)に埋め込んだ。各マウスは、100μLのマトリゲルにおける接種ごとに2×10細胞を接種された。
【0305】
薬剤を、5~20mg/kgの抗体または20mg/kgのTarcevaもしくは基準薬剤をQWK(毎週投与)×3、静脈内経路で投与した。腫瘍を、1週間に1回、カリパスにより測定し、その皮下増殖を決定した。腫瘍を、1週間に2回、カリパスにより二次元で測定した。腫瘍体積は、以下の式:腫瘍の体積=(長さ×幅2)×0.5を使用して計算した。平均腫瘍体積または体重を、グラフプログラムPrism 5(GraphPat)を用いてプロットした。効果試験のエンドポイントを、最初の治療の30~45日後、または腫瘍サイズが約2000mmに達したとき、のいずれか早いほうに設定した。マウスが20%超の体重を失う場合、または非常に重症であり、適切に食餌または水を摂ることができなくなった場合には、そのマウスを試験から除外し、安楽死させた。腫瘍をエンドポイントでマウスから収集し、FFPE組織の調製のため、LNで半凍結し、ホルマリンで半固定した。
【0306】
(付記1)
式(I)、TM-Ln-AM (I)の構造を有し、
式中、TMは、標的部分であり、AMは、ヒト樹状細胞、NK細胞、もしくは腫瘍細胞、またはこれらの組み合わせを活性化することができる活性化部分であり、Lnは、リンカーであり、nは、0および1から選択される整数である、化合物。
【0307】
(付記2)
前記ヒト樹状細胞は、形質細胞様樹状細胞である、
ことを特徴とする付記1に記載の化合物。
【0308】
(付記3)
前記ヒト樹状細胞は、骨髄樹状細胞である、
ことを特徴とする付記1に記載の化合物。
【0309】
(付記4)
前記AMは、ヒトTLR7またはTLR8に特異的に結合することができる、
ことを特徴とする付記1に記載の化合物。
【0310】
(付記5)
前記AMは、ヒトTLR7およびTLR8に特異的に結合することができる、
ことを特徴とする付記1に記載の化合物。
【0311】
(付記6)
式(I)、TM-Ln-AM (I)の構造を有し、
式中、TMは、標的部分であり、AMは、ヒトTLR7および/またはTLR8に特異的に結合することができる活性化部分であり、Lnは、リンカーであり、nは、0および1から選択される整数である、化合物。
【0312】
(付記7)
前記AMは、ヒトTLR7およびTLR8の両方に特異的に結合することができる、
ことを特徴とする付記6に記載の化合物。
【0313】
(付記8)
TMが抗体を含む場合、AMはCpGオリゴヌクレオチドを含まない、
ことを特徴とする付記1乃至7のいずれか1つに記載の化合物。
【0314】
(付記9)
前記標的部分は、非腫瘍細胞と比較して、腫瘍細胞に特異的または優先的に結合することができる、
ことを特徴とする付記1乃至8のいずれか1つに記載の化合物。
【0315】
(付記10)
前記腫瘍細胞は、癌腫、肉腫、リンパ腫、骨髄腫、または中枢神経系癌のものである、
ことを特徴とする付記9に記載の化合物。
【0316】
(付記11)
前記標的部分は、非腫瘍抗原と比較して、腫瘍抗原に特異的または優先的に結合することができる、
ことを特徴とする付記1乃至8のいずれか1つに記載の化合物。
【0317】
(付記12)
前記腫瘍抗原は、CD2、CD19、CD20、CD22、CD27、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD47、CD52、CD56、CD70、CD79、およびCD137からなる群から選択される、
ことを特徴とする付記11に記載の化合物。
【0318】
(付記13)
前記腫瘍抗原は、4-1BB、5T4、AGS-5、AGS-16、アンジオポエチン2、B7.1、B7.2、B7DC、B7H1、B7H2、B7H3、BT-062、BTLA、CAIX、癌胎児性抗原、CTLA4、クリプト(Cripto)、ED-B、ErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EGFL7、EpCAM、EphA2、EphA3、EphB2、FAP、フィブロネクチン、葉酸受容体、ガングリオシドGM3、GD2、グルココルチコイド誘発性腫瘍壊死因子受容体(GITR)、gp100、gpA33、GPNMB、ICOS、IGF1R、インテグリンαν、インテグリンανβ、KIR、LAG-3、ルイスY、メソテリン、c-MET、MN炭酸脱水酵素IX、MUC1、MUC16、ネクチン-4、NKGD2、NOTCH、OX40、OX40L、PD-1、PDL1、PSCA、PSMA、RANKL、ROR1、ROR2、SLC44A4、シンデカン-1、TACI、TAG-72、テネイシン、TIM3、TRAILR1、TRAILR2、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、およびこれらの変異体からなる群から選択される、
ことを特徴とする付記11に記載の化合物。
【0319】
(付記14)
前記標的部分は、免疫グロブリン、タンパク質、ペプチド、小分子、ナノ粒子、または核酸を含む、
ことを特徴とする付記1乃至13のいずれか1つに記載の化合物。
【0320】
(付記15)
前記標的部分は、抗体またはその機能性フラグメントを含む、
ことを特徴とする付記14に記載の化合物。
【0321】
(付記16)
前記抗体は、Rituxan(リツキシマブ)、Herceptin(トラスツズマブ)、Erbitux(セツキシマブ)、Vectibix(パニツムマブ)、Arzerra(オファツムマブ)、Benlysta(ベリムマブ)、Yervoy(イピリムマブ)、Perjeta(ペルツズマブ)、トレメリムマブ、ニボルマブ、ダセツズマブ、ウレルマブ(Urelumab)、MPDL3280A、ランブロリズマブ(Lambrolizumab)、およびブリナツモマブ(Blinatumomab)からなる群から選択される、
ことを特徴とする付記15に記載の化合物。
【0322】
(付記17)
前記標的部分は、Fab、Fab′、F(ab′)2、単一ドメイン抗体、TおよびAbs二量体、Fv、scFv、dsFv、ds-scFv、Fd、線状抗体、ミニボディ、二特異性抗体(diabody)、二重特異的抗体フラグメント、バイボディ(bibody)、トリボディ(tribody)、sc-二特異性抗体、カッパ(ラムダ)体、BiTE、DVD-Ig、SIP、SMIP、DART、または1つ以上のCDRを含む抗体類縁体を含む、
ことを特徴とする付記15に記載の化合物。
【0323】
(付記18)
前記標的部分は、VEGFRのATWLPPRポリペプチド、トロンボスポンジン-1模倣体、CDCRGDCFCG(環状)ポリペプチド、SCH221153フラグメント、NCNGRC(環状)ポリペプチド、CTTHWGFTLCポリペプチド、CGNKRTRGCポリペプチド(LyP-1)、オクトレオチド、バプレオチド、ランレオチド、C-3940ポリペプチド、デカペプチル、ルプロン、ゾラデックス、またはセトロレリクスを含む、
ことを特徴とする付記14に記載の化合物。
【0324】
(付記19)
前記標的部分は、葉酸またはその誘導体を含む、
ことを特徴とする付記14に記載の化合物。
【0325】
(付記20)
前記標的部分は、PD-1、CTLA4、BTLA、KIR、TIM3、4-1BB、LAG3、表面リガンドアンフィレギュリンの一部の完全長、ベータセルリン、EGF、エフリン、エピジェン(epigen)、エピレギュリン、IGF、ニューレグリン、TGF、TRAIL、またはVEGFの細胞外ドメイン(ECD)または可溶形態を含む、
ことを特徴とする付記14に記載の化合物。
【0326】
(付記21)
前記標的部分は、ナノ粒子を含む、
ことを特徴とする付記14に記載の化合物。
【0327】
(付記22)
前記標的部分は、アプタマーを含む、
ことを特徴とする付記14に記載の化合物。
【0328】
(付記23)
前記活性化部は、(a)一本鎖RNA(ssRNA)、好ましくはORN02、ORN06、ssポリ(U)、ssRNA40、ssRNA41、ssRNA-DR、もしくはポリ(dT)、または(b)受容体リガンド類縁体、好ましくはCL075、CL097、CL264、CL307、ガーディキモド、ロキソリビン、イミキモド、もしくはレシキモド(Resiquimod)を含む、
ことを特徴とする付記1乃至22のいずれか1つに記載の化合物。
【0329】
(付記24)
前記AMは、レシキモド(Resiquimod)(R848)を含む、
ことを特徴とする付記23に記載の化合物。
【0330】
(付記25)
前記リンカーは、ヒドラジン基、ポリペプチド、ジスルフィド基、およびチオエーテル基からなる群から選択される、
ことを特徴とする付記1乃至24のいずれか1つに記載の化合物。
【0331】
(付記26)
前記リンカーは、酵素切断性である、
ことを特徴とする付記1乃至24のいずれか1つに記載の化合物。
【0332】
(付記27)
前記リンカーは、酵素切断性ではない、
ことを特徴とする付記1乃至24のいずれか1つに記載の化合物。
【0333】
(付記28)
付記1乃至27のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【0334】
(付記29)
第2の化学療法剤を更に含む、付記28に記載の薬学的組成物。
【0335】
(付記30)
前記化学療法剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、イマタニブ(imatanib)、パクリタキセル、シクロホスファミド、ロバスタチン、ミノシン(minosine)、ゲムシタビン、シタラビン、5-フルオロウラシル、メトトレキセート、ドセタキセル、ゴセレリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、テニポシド、エトポシド、ゲムシタビン、エポチロン、ビノレルビン、カンプトテシン、ダウノルビシン、アクチノマイシンD、ミトキサントロン、アクリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、またはイダルビシンからなる群から選択される、
ことを特徴とする付記29に記載の薬学的組成物。
【0336】
(付記31)
疾患状態の治療の必要な対象において疾患状態を治療する方法であって、治療有効量の付記1乃至27のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物を、前記対象に投与することを含む、方法。
【0337】
(付記32)
前記疾患状態は、腫瘍である、
ことを特徴とする付記31に記載の方法。
【0338】
(付記33)
前記疾患状態は、異常細胞増殖を含む、
ことを特徴とする付記31に記載の方法。
【0339】
(付記34)
前記異常細胞増殖は、前癌性病変を含む、
ことを特徴とする付記33に記載の方法。
【0340】
(付記35)
前記異常増殖は、癌細胞のものである、
ことを特徴とする付記33に記載の方法。
【0341】
(付記36)
前記癌は、乳癌、結腸直腸癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、子宮内膜癌、濾胞性リンパ腫、胃癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、肝細胞癌、肺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、および腎細胞癌からなる群から選択される、
ことを特徴とする付記35に記載の方法。
【0342】
(付記37)
式(I)、TM-Ln-AM (I)の構造を有し、
式中、TMは、標的部分であり、AMは、活性化部分であり、Lnは、リンカーであり、nは、0および1から選択される整数であり、
但し、TMが抗体を含む場合、AMは、CpGオリゴヌクレオチドまたは治療剤を含まない、化合物。
【0343】
(付記38)
前記活性化部分は、TLRリガンド(TLRL)、Nod様受容体リガンド、RIG様受容体リガンド、CLRリガンド、CDSリガンド、またはインフラマソーム誘発剤を含む、
ことを特徴とする付記37に記載の化合物。
【0344】
(付記39)
前記活性化部分は、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8、TLR7/TLR8、TLR9、およびTLR10からなる群から選択される1つ以上のTLRのリガンドを含む、
ことを特徴とする付記38に記載の化合物。
【0345】
(付記40)
前活性化部分は、
(i)(a)加熱死菌生成物、好ましくはHKAL、HKEB、HKHP、HKLM、HKLP、HKLR、HKMF、HKPA、HKPG、またはHKSA、HKSP、および(b)細胞壁成分生成物、好ましくはLAM、LM、LPS、LTA、LTA、PGN、FSL、Pam2CSK4、Pam3CSK4、またはザイモサンからなる群から選択されるTLR2のリガンド、
(ii)ポリ(I:C)およびポリ(A:U)からなる群から選択されるTLR3のリガンド、
(iii)LPSおよびMPLAからなる群から選択されるTLR4のリガンド、
(iv)FLAおよびフラゲリンからなる群から選択されるTLR5のリガンド、
(v)ORN02、ORN06、ssポリ(U)、ssRNA40、ssRNA41、ssRNA-DR、ポリ(dT)、CL075、CL097、CL264、CL307、ガーディキモド、ロキソリビン、イミキモド、およびレシキモド(Resiquimod)からなる群から選択されるTLR7/8のリガンド、
(vi)ODN1585、ODN1668、ODN1826、ODN2006、ODN2007、ODN2216、ODN2336、ODN2395、およびODN M362からなる群から選択されるTLR9のリガンド、
(vii)TLR10のリガンド、
(viii)NOD1作動薬(C12-iE-DAP、iE-DAP、Tri-DAP)、NOD2作動薬(L18-MDP、MDP、M-TriLYS、M-TriLYS-D-ASN、ムラブチド(Murabutide)、N-グリコリル-MDP)、およびNOD1/NOD2作動薬(M-TriDAP、PGN)からなる群から選択されるヌクレオチドオリゴマー化ドメイン(NOD)様のリガンド、
(ix)5′ppp-dsRNA、ポリ(dA:dT)、ポリ(dG:dC)、およびポリ(I:C)からなる群から選択される1つ以上のRIG-I-様受容体(RLR)のリガンド、
(x)カードランAL、HKCA、HKSC、WGP、ザイモサン、およびトレハロース-6,6-ジベヘン酸塩からなる群から選択される1つ以上のC型レクチン受容体(CLR)のリガンド、
(xi)c-GMP、c-G-AMP、c-G-GMP、c-A-AMP、c-di-AMP、c-di-IMP、c-di-GMP、c-di-UMP、HSV-60、ISD、pCpG、ポリ(dA:dT)、ポリ(dG:dC)、ポリ(dA)、およびVACV-70からなる群から選択される1つ以上の細胞質DNAセンサー(CDS)のリガンド、あるいは
(xii)(a)NLRP3インフラマソームタンパク質複合体、好ましくはミョウバン結晶、ATP、CPPD結晶、ヘルモゾイン(Hermozoin)、MSU結晶、ナノSiO、ナイジェリシン、および(b)AIM2インフラマソームタンパク質複合体、好ましくはポリ(dA:dT)からなる群から選択されるインフラマソーム誘発剤、
を含む、
ことを特徴とする付記39に記載の化合物。
【0346】
(付記41)
前記活性化部分は、IMO2134、IMO205、MGN-1703、MGN-1704、アガトリモド(Agatolimod)、SD-101、QAX-935、DIMS0150、ポリネクスクアットロ(Pollinex Quattro)、OM-174、エリトラン、TAK-242、NI-0101、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、IL-12、IL-23、IL-18、IL-7、またはIL-15を含む、
ことを特徴とする付記37に記載の化合物。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B