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  • 特開-回路複合構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092071
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】回路複合構造体
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220615BHJP
   B32B 15/14 20060101ALI20220615BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20220615BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20220615BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
H05K1/02 A
B32B15/14
H05K3/00 W
H05K3/28 B
H05K1/03 610U
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019081853
(22)【出願日】2019-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000219266
【氏名又は名称】東レ・デュポン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町田 英明
(72)【発明者】
【氏名】日高 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】木山 公志
【テーマコード(参考)】
4F100
5E314
5E338
【Fターム(参考)】
4F100AB01C
4F100AB01E
4F100AB17C
4F100AB17E
4F100AD11A
4F100AD11D
4F100AD11E
4F100AG00A
4F100AG00D
4F100AG00E
4F100AK01A
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100AK49B
4F100AK49E
4F100AK53A
4F100AK53D
4F100AK53E
4F100AT00B
4F100AT00E
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CA02A
4F100CA02D
4F100CA02E
4F100CB00G
4F100DG01A
4F100DG01D
4F100DG01E
4F100DH01A
4F100DH01D
4F100DH01E
4F100EJ15
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ82
4F100GB43
4F100JB13A
4F100JB13D
4F100JB13E
4F100JB13G
4F100JJ03G
5E314AA32
5E314AA34
5E314AA35
5E314AA36
5E314AA43
5E314BB01
5E314CC17
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5E314FF06
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5E338AA15
5E338BB63
5E338BB72
5E338EE26
5E338EE60
(57)【要約】
【課題】軽量化され、信頼性を高く保つことができる回路と複合材料の複合構造体を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の回路複合構造体は、第一の単数もしくは複数から構成される繊維強化複合材料の層と、前記第一の繊維強化樹脂層上にあり、かつ、前記第一の繊維強化樹脂層と接しているフレキシブルプリント配線板と、前記フレキシブルプリント配線板上にあり、かつ、前記フレキシブルプリント配線板と接している第二の単数もしくは複数から構成される繊維強化複合材料の層と、を備えたことを特徴とする回路と複合材料の複合構造体を特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の単数もしくは複数から構成される繊維強化樹脂層と、前記第一の単数もしくは複数から構成される繊維強化樹脂層の上にあり、かつ、前記第一の繊維強化樹脂層と接している第一のフレキシブルプリント配線板と、前記第一のフレキシブルプリント配線板上にあり、かつ、前記第一のフレキシブルプリント配線板と接している第二の単数もしくは複数から構成される繊維強化樹脂層と、を備えたことを特徴とする回路と繊維強化樹脂層を含む回路複合構造体。
【請求項2】
前記第一のフレキシブルプリント配線板が設置された第一の単数もしくは複数から構成される繊維強化樹脂層の反対面に、第二のフレキシブルプリント配線板が設置されており、前記第二のフレキシブルプリント配線板上にあり、かつ第二のフレキシブルプリント配線板と接している第三の単数もしくは複数から構成される繊維強化樹脂層を備えたことを特徴とする請求項1に記載の回路と繊維強化樹脂層を含む回路複合構造体。
【請求項3】
前記第一の繊維強化樹脂及び前記第二の繊維強化樹脂は、ガラス繊維又は炭素繊維を含む繊維及び熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回路と繊維強化樹脂層を含む回路複合構造体。
【請求項4】
前記フレキシブルプリント配線板が、両面の最外層にポリイミドを含むフィルムを備え、
端子部の導体が露出するように開口部を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか一項に記載の回路と繊維強化樹脂層を含む回路複合構造体。
【請求項5】
前記第一の繊維強化樹脂及び前記第二の繊維強化樹脂層及び前記第三の繊維強化樹脂層の厚みは、0.05mm以上3mm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか一項に記載の回路と繊維強化樹脂層を含む回路複合構造体。
【請求項6】
前記フレキシブルプリント配線板の膜厚は、0.01mm以上1mm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至請求項5いずれか一項に記載の回路と繊維強化樹脂層を含む回路複合構造体。
【請求項7】
前記第一のフレキシブルプリント配線板の導体以外の端面が、前記第一の繊維強化樹脂及び前記第二の繊維強化樹脂と接していることを特徴とする請求項1乃至請求項6いずれか一項に記載の回路と繊維強化樹脂層を含む回路複合構造体。
【請求項8】
前記第二のフレキシブルプリント配線板の導体以外の端面が、前記第一の繊維強化樹脂及び前記第三の繊維強化樹脂と接していることを特徴とする請求項2乃至請求項7いずれか一項に記載の回路と繊維強化樹脂層を含む回路複合構造体。
【請求項9】
前記第一のフレキシブルプリント配線板の端子部または前記第二のフレキシブルプリント配線板の端子部が前記第一の繊維強化樹脂上にあり、かつ露出していることを特徴とする請求項2乃至請求項8いずれか一項に記載の回路と繊維強化樹脂層を含む回路複合構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の輸送機器や産業機器を構成する構造体と電気信号配線を複合化する技術に関する。特に、複合化する技術においてフレキシブルプリント配線板を用いる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複合材料のひとつとしてマトリックス樹脂と強化繊維を組み合わせることで軽量かつ高強度、高剛性を実現する材料として繊維強化樹脂(FRP)が様々な分野で用いられている。このFRPが用いられる例のひとつとして、航空機や自動車等の人を運ぶ移動体やタブレット、ノートパソコンなどの可搬機器が挙げられる。これら輸送機器や電子情報機器は近年の情報技術の発達により、多くの電子機器や回路が搭載されるようになってきおり電気信号配線の技術分野においては、電子機器の軽量化、薄型化、小型化に貢献する技術としてフレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuit)の採用が拡大している。
【0003】
構造体においては経済性や人の快適性を高めるため、その構造体自身の体積や重量をより小さくすることが強く求められており、電気信号配線に関しては省スペース、小型化、軽量化重要度がますます高まっている。
【0004】
例えば自動車においては、軽量化が求められる一方で、電子制御技術の高度に伴い、ケーブル等の電気信号回路は増加する傾向にあり、電気信号配線の体積を小さくし、軽量化を図ることが重要な課題となっている。
【0005】
例えば特許文献1には、ノートパソコンなどの電気・電子回路に用いられる、電磁波ノイズ対策のための導電性および電磁波遮蔽特性に優れ、かつ、強度、剛性に優れたFRPからなる構造体が開示されている。このFRPからなる構造体は、図1(a)に示ように、連続炭素繊維を含むFRPからなる主層1を有し、該主層に電気・電子回路の一部を構成する導電部材(金属板、真鍮製のボス7)が電気的に接続されている。また、FRP構造体は、図1(a)の通り、副層2a、2b 、リブ部3、ヒンジ部5、及びステンレス板6をも有している。
【0006】
FRPの中でも、CFRPは、炭素繊維の持つ導電性を利用することで、電磁波シールド特性を有し、かつ強度、剛性に優れていることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09-323372
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1においては、炭素繊維強化樹脂からなる主層を電気・電子回路の一部を構成する導電部材を電気的に接続することで構造体と回路を兼ねた構造が提案されているが、構造体内に電気信号回路または配線を形成することは困難である。
【0009】
また、フレキシブルプリント配線板は、形状の自由度が高いことに加え、薄さ、軽量性、柔軟性に優れる特徴を有するが、剛性が低く構造物としての自立性に劣り、また耐振動性における信頼性にかけるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高い信頼性を持つ電気信号回路を形成し、かつ軽量で強度・剛性に優れた構造体を兼ね備えることで、構造体と電気回路の両方の機能を具備した回路複合構造体を提供することにある。
【0011】
このような目的を達成するため、本発明の回路複合構造体の一態様は、第一の単数もしくは複数から構成される繊維強化樹脂層と、前記第一の単数もしくは複数から構成される繊維強化樹脂層の上にあり、かつ、前記第一の繊維強化樹脂層と接している第一のフレキシブルプリント配線板と、前記第一のフレキシブルプリント配線板上にあり、かつ、前記第一のフレキシブルプリント配線板と接している第二の単数もしくは複数から構成される繊維強化樹脂層と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
用いられる繊維強化樹脂層の繊維はガラス繊維、アラミド繊維、PBO繊維、ボロン繊維等が挙げられるが、比強度と比剛性に優れた炭素繊維が最も好適である。
【0013】
また用いられる樹脂は熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂、いずれであっても良いが、フレキシブルプリント配線板との成形の容易さを考慮すると熱硬化性樹脂が好適で、その中でも未硬化の熱硬化性樹脂を予め繊維に含浸させたプリプレグが好適である。プリプレグに用いられる熱硬化性樹脂はビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シアネートエステル樹脂等が挙げられるが、エポキシ樹脂を用いるのが成形や構造体の強度、剛性を発現させるのに好適である。
【0014】
回路複合構造体を製作する方法は、別々に作って接着する方法もあるが、構造の重量、強度、剛性、信頼性を向上させるために、一体成形とすることが望ましい。一体成形に方法についても、複合材料の成形方法としては、ハンドレイアップ、スプレイアップ、各種材料を用いたプレス成形、射出成形等が挙げられるが、構造体内のボイドを低減し、かつ成形時の温度や圧力を適切に管理するため、オートクレーブを用いて成形することが最も好適である。
【0015】
回路複合構造体を構成するフレキシブルプリント配線板を構成する絶縁フィルムとしては、ポリエステルフィルム、LCPフィルム、PPSフィルム、ポリイミドフィルムなどの絶縁性と耐熱性に優れるエンジニアリングプラスチックフィルムであれば良いが、繊維強化樹脂層と一体成型する場合は、電気信号配線に対する絶縁性を確保し、また配線の変形、ひずみを防ぐために、成型温度以上のガラス転移温度を有することが好ましく、特には耐熱性、寸法安定性、絶縁性に優れるポリイミドフィルムが好適である。
【0016】
フレキシブルプリント配線板を構成する回路導体は、上記絶縁フィルム上に金属粉、または金属箔、または乾式及び湿式めっき、またはそれらを組み合わせたものからなるもので、公知の方法により配線パターンが形成される。また外部配線との接続端子部や部品実装部以外の回路導体上の絶縁保護は、上記絶縁フィルムの加熱融着、または耐熱接着剤を介した上記絶縁フィルムの貼り合せ、またはレジストインク、またはレジストフィルム、またはそれらを組み合わせた公知の方法により形成される。
【0017】
なお、フレキシブルプリント配線板を構成する回路導体は必要に応じて、厚み方向において、一部または全部を多層化できることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の回路複合構造体は、フレキシブルプリント配線板を用いることで電気配線の設計の自由度を高め、電気信号を伝える機能の信頼性を確保し、また回路の被覆保護層として繊維強化樹脂層を採用したことから、機械的強度の面や電磁波遮蔽の面から保護する機能を発現することができ、更に信号回路としての信頼性を向上させることができる。
【0019】
また構造体としては、高温と高圧のどちらかもしくは両方の条件下においてフレキシブルプリント配線板を一体成形することで繊維強化樹脂層とフレキシブルプリント配線板の密着性を確保することができ、フレキシブルプリント配線板の厚み分の曲げ剛性を向上させることができるから、構造体としての曲げ剛性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来のFRP構造体を示す図である。
図2】(a)本発明の実施形態1に係る回路複合構造体を示す断面図である。(b)本発明の実施形態1に係る回路複合構造体を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態1に係るFPCの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の回路複合構造体の形態について、図を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下に示す実施形態の記載内容に限定されず、本明細書等において開示する発明の趣旨から逸脱することなく形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者にとって自明である。
【0022】
(実施形態1)
以下に本発明の実施形態の一例を示す。図2(a)は、本実施形態1に係る回路複合構造体を示す断面図であり、図2(b)本発明の実施形態1に係る回路複合構造体を示す斜視図である。ここで、図2(a)の断面図は、図2(b)の一点鎖線部分に対応する。その構成は、繊維強化樹脂層(プリプレグ)301と、繊維強化樹脂層301上にあり、かつ、繊維強化樹脂層301と接しているフレキシブルプリント配線板302と、フレキシブルプリント配線板302上にあり、かつ、フレキシブルプリント配線板と接している繊維強化樹脂層303と、を備えている。
【0023】
図3は本実施形態に係るフレキシブルプリント回路は、基板用絶縁フィルム102、例えば、ポリイミドフィルムと熱硬化性耐熱接着剤を介して銅箔を貼り合わせた銅貼りポリイミド基板に対しフォトリソグラフィー技術を用いて回路導体(エッチング回路)103を形成する。
【0024】
ついで、保護用絶縁フィルム105、例えば、ポリイミドフィルムに熱硬化性耐熱接着剤を塗布し、半硬化状態としてあるカバーレイフィルムを加熱プレス工程によって、接着剤を硬化させながら導体回路を埋め込むように貼り合わせ、接着剤層104を形成する。その際、端子部106に相対する部分は、予め打ち抜き加工により開口部を形成しておく。なお、端子部106は導体の耐食性、電気接続信頼性を高めるためニッケル、金、銀、錫、半田、フラックスなどのめっき加工を施すことが好ましい。
【0025】
これにより、外部配線との接続や、部品実装のための端子部106を持つフレキシブルプリント配線板(フレキシブルプリント回路基板)302を得ることができる。
【0026】
次いで、フレキシブルプリント配線板302の表面に、繊維強化樹脂層301を形成する。
【0027】
繊維強化樹脂層301には、ガラスクロスや炭素繊維のような繊維状補強材に、硬化剤、着剤材などの添加物を混合したエポキシなどの熱硬化性樹脂を均等に含浸させ、加熱または乾燥して半硬化状態にした強化プラスチック成形材料を用いることができる。フレキシブルプリント配線板302の表面の繊維強化樹脂層301を加圧しながら加熱する。これにより、加熱温度を高くしても気泡の発生を抑制することができる。例えば、加圧脱泡機(オートクレーブなど)を用いて樹脂を硬化することができる。
【0028】
次いで、フレキシブルプリント配線板302の端子部106露出するように繊維強化樹脂層303を形成する。繊維強化樹脂層303の材料及び形成方法は、繊維強化樹脂層301と同様である。この工程後、出荷が可能となる。
【0029】
繊維強化樹脂層301及び繊維強化樹脂層303の膜厚は、0.05mm以上3mm以下の範囲にあることが望ましい。
【0030】
フレキシブルプリント配線板302の膜厚は、0.01mm以上1mm以下の範囲にあることが望ましい。
【0031】
本実施形態の回路複合構造体において、フレキシブルプリント配線板302の長手方向の側面は、繊維強化樹脂層301及び繊維強化樹脂層303と接している。
【0032】
繊維強化樹脂層303の上面上にさらに、フレキシブルプリント配線板を形成し、フレキシブルプリント配線板の上面上に繊維強化樹脂層を形成してもよい。
【0033】
FPC被覆層として繊維強化樹脂層を採用しているので、新たに接着剤を使用することが不要になる。
【0034】
繊維強化樹脂層材料として炭素繊維を採用した場合、電磁波シールド特性も確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、乗物等を構成する構造体と電気信号配線を複合する技術分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 FRPからなる主層
2a、2b 副層
3 リブ部
5 ヒンジ部
6 ステンレス板
7 真鍮製のボス
102 基板用絶縁フィルム
103 回路導体
104 接着剤層
105 保護用絶縁フィルム
106 端子部
301 繊維強化樹脂層
302 フレキシブルプリント配線板
303 繊維強化樹脂層
図1
図2
図3