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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092134
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20220615BHJP
   B23B 25/00 20060101ALI20220615BHJP
   B23B 29/24 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
B23Q11/00 P
B23B25/00 A
B23B29/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204726
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000107642
【氏名又は名称】スター精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100124958
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 建志
(74)【代理人】
【識別番号】100126077
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 亮平
(72)【発明者】
【氏名】石川 高之
【テーマコード(参考)】
3C011
3C045
3C046
【Fターム(参考)】
3C011BB04
3C045HA04
3C046NN27
(57)【要約】
【課題】パージ用エアの流路を有する工具ユニットがエア供給路の閉塞部材の外し忘れにより劣化することを防止可能な工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械1の機械本体2は、取り付けられたエア流路付き工具ユニットTU1の流路55に繋がって該流路55にエア100を供給する供給路25を有している。機械本体2には、供給路25の開口26を塞ぐ閉塞部材40が着脱可能である。工作機械1は、機械本体2に閉塞部材40が取り付けられていると該閉塞部材40に干渉することにより機械本体2に対するエア流路付き工具ユニットTU1の取り付けを阻害する干渉構造60を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パージ用のエアの流路を有する工具ユニットを機械本体に対して着脱可能な工作機械であって、
前記機械本体は、取り付けられた前記工具ユニットの前記流路に繋がって該流路に前記エアを供給する供給路を有し、
前記機械本体には、前記供給路の開口を塞ぐ閉塞部材が着脱可能であり、
前記工作機械は、前記機械本体に前記閉塞部材が取り付けられていると該閉塞部材に干渉することにより前記機械本体に対する前記工具ユニットの取り付けを阻害する干渉構造を備える、工作機械。
【請求項2】
前記工具ユニットは、前記干渉構造として、前記機械本体に向かって出た凸部であって前記機械本体に前記閉塞部材が取り付けられていると該閉塞部材に干渉する凸部を備える、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記凸部が前記流路を有する、請求項2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械本体に対して工具ユニットを着脱可能な工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械として、ワーク加工用の回転工具ユニットを着脱可能な刃物台を備える旋盤等が知られている。ワークの切粉を含む切削油が回転工具ユニットの軸受に入り込むことを防ぐため、回転部と非回転部との間にゴムシールを有するシール付き回転工具ユニットが使用されている。また、回転部と非回転部との間にエアパージ用のエアを供給する流路を有するエア流路付き回転工具ユニットも使用されている。
【0003】
参考として、特許文献1に開示された回転工具装置は、カートリッジ式工具ユニットが取り外し可能に装着される工具取付穴部を複数有している。カートリッジ式工具ユニットが装着されていない工具取付穴部には、工具取付穴部の開口部を塞ぐ蓋が装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-59094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エア流路付き回転工具ユニットにエア供給部のホースを直接、取り付ける作業は、時間がかかり、煩わしい。そこで、シール付き回転工具ユニットとエア流路付き回転工具ユニットとを交換可能に刃物台に取り付ける場合、エア流路付き回転工具ユニットのエア流路にエアを供給するエア供給路が刃物台にあると好適である。シール付き回転工具ユニットを刃物台に取り付ける場合、シール付き回転工具ユニットにエアを供給する必要がないため、エア供給路の開口部に閉塞部材としてのプラグが取り付けられる。ただ、エア供給路の開口部からプラグを外し忘れた状態でエア流路付き回転工具ユニットが刃物台に取り付けられると、エア流路付き回転工具ユニットにエアパージ用のエアが供給されないため、エア流路付き回転工具ユニットが劣化する。
尚、上述のような問題は、旋盤に限らず、マシニングセンター等、種々の工作機械に存在する。
【0006】
本発明は、パージ用エアの流路を有する工具ユニットがエア供給路の閉塞部材の外し忘れにより劣化することを防止可能な工作機械を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の工作機械は、パージ用のエアの流路を有する工具ユニットを機械本体に対して着脱可能な工作機械であって、
前記機械本体は、取り付けられた前記工具ユニットの前記流路に繋がって該流路に前記エアを供給する供給路を有し、
前記機械本体には、前記供給路の開口を塞ぐ閉塞部材が着脱可能であり、
前記工作機械は、前記機械本体に前記閉塞部材が取り付けられていると該閉塞部材に干渉することにより前記機械本体に対する前記工具ユニットの取り付けを阻害する干渉構造を備える、態様を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パージ用エアの流路を有する工具ユニットがエア供給路の閉塞部材の外し忘れにより劣化することを防止可能な工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】工作機械の構成例を模式的に示す平面図である。
図2】エア流路付き工具ユニット、及び、シール付き工具ユニットが取り付けられた刃物台の例を模式的に示す図である。
図3】刃物台にエア流路付き工具ユニットを取り付ける例を模式的に示す図である。
図4】エア流路付き工具ユニットを取り付けた刃物台の例を模式的に示す図である。
図5】干渉構造により刃物台に対するエア流路付き工具ユニットの取り付けが阻害される例を模式的に示す図である。
図6】閉塞部材が干渉構造としてエア流路付き工具ユニットに向かって出た凸部を備える例を模式的に示す図である。
図7】エア流路付き工具ユニットが干渉構造として流路の無い凸部を備える例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0011】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~7に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
【0012】
[態様1]
図3~5等に例示するように、本技術の一態様に係る工作機械1は、パージ用のエア100の流路55を有する工具ユニット(例えばエア流路付き工具ユニットTU1)を機械本体2に対して着脱可能な工作機械1である。前記機械本体2は、取り付けられた前記工具ユニット(TU1)の前記流路55に繋がって該流路55に前記エア100を供給する供給路25を有している。前記機械本体2には、前記供給路25の開口26を塞ぐ閉塞部材(例えばプラグ40)が着脱可能である。前記工作機械1は、前記機械本体2に前記閉塞部材(40)が取り付けられていると該閉塞部材(40)に干渉することにより前記機械本体2に対する前記工具ユニット(TU1)の取り付けを阻害する干渉構造60を備える。
【0013】
エア100の供給路25の開口26を塞ぐ閉塞部材(40)が機械本体2に取り付けられていると、干渉構造60が閉塞部材(40)に干渉することにより機械本体2に工具ユニット(TU1)を取り付けることができない。従って、上記態様は、パージ用エアの流路を有する工具ユニットがエア供給路の閉塞部材の外し忘れにより劣化することを防止可能な工作機械を提供することができる。
【0014】
ここで、工作機械には、旋盤、マシニングセンター、等が含まれる。
パージ用のエアには、オイルミストが混入されたエアも含まれる。
上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0015】
[態様2]
図3~5等に例示するように、前記工具ユニット(TU1)は、前記干渉構造60として、前記機械本体2に向かって出た凸部(例えば管状突起61)であって前記機械本体2に前記閉塞部材(40)が取り付けられていると該閉塞部材(40)に干渉する凸部(61)を備えていてもよい。この態様は、閉塞部材(40)や機械本体2に干渉構造60としての凸部を設ける必要がないので、パージ用エアの流路の無い様々な工具ユニットを機械本体に取り付けることができる。また、干渉構造としての凸部が閉塞部材や機械本体に無ければ、機械本体を清掃し易い。
尚、上記態様2とは異なるが、閉塞部材が干渉構造として工具ユニットに向かって出た凸部であって機械本体に閉塞部材が取り付けられていると工具ユニットが干渉する凸部を備える場合も、本技術に含まれる。
【0016】
[態様3]
また、前記凸部(61)は、前記流路55を有していてもよい。この態様は、工具ユニット(TU1)に凸部(61)とは別に流路55を設ける必要がないので、工具ユニットをコンパクトにすることができる。
尚、上記態様3とは異なるが、凸部に流路が無い場合も、本技術に含まれる。
【0017】
(2)工作機械の構成の具体例:
図1は、工作機械1の例として刃物台20を備える旋盤の構成を模式的に例示する平面図である。図1に示す工作機械1は、ワークW1の加工の数値制御を行うNC(数値制御)装置8を備えるNC旋盤である。図1に示す機械本体2の制御軸は、「X」で示されるX軸、「Y」で示されるY軸、及び、「Z」で示されるZ軸を含んでいる。Z軸方向は、ワークW1の回転中心となる主軸中心線AX1,AX2に沿った水平方向である。X軸方向は、Z軸と直交する水平方向である。Y軸方向は、Z軸と直交する鉛直方向である。尚、Z軸とX軸とは交差していれば直交していなくてもよく、Z軸とY軸とは交差していれば直交していなくてもよく、X軸とY軸とは交差していれば直交していなくてもよい。また、本明細書において参照される図面は、本技術を説明するための例を示しているに過ぎず、本技術を限定するものではない。また、各部の位置関係の説明は、例示に過ぎない。従って、左右を逆にしたり、回転方向を逆にしたり等することも、本技術に含まれる。また、方向や位置等の同一は、厳密な一致に限定されず、誤差により厳密な一致からずれることを含む。
【0018】
図1に示す刃物台20は、くし形刃物台31、背面加工用刃物台32、及び、タレット刃物台33を総称している。刃物台20には、ワークW1を加工するための工具T0を備える工具ユニットTU0が取り外し可能に取り付けられている。工具ユニットTU0を着脱可能な機械本体2は、工作機械1のうち工具ユニットTU0を除く部分を意味する。図1に示す工作機械1は、主軸台11,12、ガイドブッシュ18を設けた支持台17、刃物台20、エア供給部80、NC装置8、等を機械本体2に備えるNC工作機械である。
【0019】
主軸台11,12は、Z軸方向において互いに対向している。主軸台11には、正面主軸と呼ばれる主軸13が組み込まれている。主軸台12には、背面主軸や対向主軸と呼ばれる主軸14が組み込まれている。図1に示す工作機械1は、主軸移動型旋盤であり、主軸13を含めて主軸台11をZ軸方向へ移動させ、主軸14を含めて主軸台12をZ軸方向及びX軸方向へ移動させる。むろん、工作機械1は主軸台11が移動しない主軸固定型旋盤でもよいし、主軸台12が移動せずに主軸台11がZ軸方向へ移動してもよい。
【0020】
主軸13は、コレット等といった把持部によりワークW1を解放可能に把持する。加工前のワークW1が例えば円柱状(棒状)の長尺な材料である場合、主軸13の後端から把持部にワークW1が供給されてもよい。この場合、図1に示すように、ワークW1をZ軸方向へ摺動可能に支持するガイドブッシュ18が主軸13の前側に配置されてもよい。むろん、工作機械1にガイドブッシュ18が無くても、本技術を適用可能である。ワークW1を把持した主軸13は、ワークW1とともに主軸中心線AX1を中心として回転可能である。正面加工後のワークW1は、主軸13から主軸14に引き渡される。主軸14は、コレット等といった把持部により正面加工後のワークW1を解放可能に把持し、ワークW1とともに主軸中心線AX2を中心として回転可能である。正面加工後のワークW1は、背面加工により製品となる。
【0021】
図1において、くし形刃物台31はX軸方向及びY軸方向へ移動可能であり、背面加工用刃物台32はY軸方向へ移動可能であり、タレット刃物台33はX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向へ移動可能である。むろん、刃物台20や主軸台11,12の移動方向は、図1に示す方向に限定されない。刃物台20に対して着脱可能な工具ユニットTU0には、回転工具を備える回転工具ユニット、及び、回転しない工具を備える工具ユニットが含まれる。複数の工具T0には、突っ切りバイトを含むバイト、ドリルやエンドミルといった回転工具、等が含まれ、刃物台20に直接取り付けられた工具が含まれてもよい。くし形刃物台31とタレット刃物台33は、ガイドブッシュ18に支持されているワークW1に対して各種工具T0により正面加工を行うことが可能である。両主軸13,14に把持されたワークW1は、突っ切りバイトにより分離される。突っ切りバイトにより分離された正面加工後のワークW1に対して、背面加工用刃物台32とタレット刃物台33は背面加工を行うことが可能である。
【0022】
エア供給部80は、エアパージ用のエア100を刃物台20に供給する。パージ用のエア100は、大気圧よりも高い気圧の圧縮空気である。工具ユニットTU0がパージ用のエア100の流路を有する場合、エア供給部80から送り出されるエア100は、刃物台20を経て工具ユニットTU0に供給される。尚、くし形刃物台31、背面加工用刃物台32、及び、タレット刃物台33のうち一部の刃物台のみにエア100が供給されてもよい。
【0023】
図1には便宜上、主軸台11,12やガイドブッシュ18や刃物台20等の動作を数値制御するNC装置(数値制御装置)8も示しているが、NC装置8は図1に示す位置にあるとは限らない。NC装置8は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、時計回路、I/F(インターフェイス)、等を備えている。オペレーターは、図示しない外部コンピューターを用いてNC装置8のRAMにNCプログラムを書き換え可能に記憶させることが可能である。NC装置8は、図示しない操作パネルや外部コンピューターから各種情報の入力を受け付けてNCプログラムを実行し、主軸台11,12や刃物台20の移動、及び、主軸13,14やガイドブッシュ18の回転を制御する。
【0024】
図2は、エア流路付き工具ユニットTU1、及び、シール付き工具ユニットTU2が取り付けられた刃物台20(機械本体2の一部)を模式的に例示している。尚、工具ユニットTU0は、エア流路付き工具ユニットTU1とシール付き工具ユニットTU2を総称している。図2の下部には、シール付き工具ユニットTU2の拡大図が示されている。図3は、刃物台20にエア流路付き工具ユニットTU1を取り付ける様子を模式的に例示している。尚、図2~5において、分かり易く示すため、刃物台20と工具ユニットTU0の一部は断面視されている。
【0025】
図2,3において、刃物台20は、くし形刃物台31、背面加工用刃物台32、及び、タレット刃物台33のいずれでもよい。エア流路付き工具ユニットTU1は、エアパージ用のエア100の流路55を有する工具ユニットTU0であり、図2,3に示す例では工具T0として回転ドリル(回転工具の例)を備える回転ドリルユニット(回転工具ユニットの例)である。シール付き工具ユニットTU2は、パージ用のエアの流路が無くゴムシールSE1を有する工具ユニットTU0であり、図2,3に示す例では工具T0として回転ドリルを備える回転ドリルユニットである。便宜上、工具T0の突出方向を前方D1と呼び、前方D1とは反対の方向を後方D2と呼ぶことにする。
【0026】
刃物台20は、モーター22、該モーター22に直接回転駆動される駆動歯車23、及び、該駆動歯車23と噛み合った複数の伝達歯車24を備えている。また、刃物台20は、前方D1に向いた取付面20a、回転中心線AX3に沿った前後方向(D1,D2)へ貫通した取付穴21、エア100の供給路25、及び、ねじ穴29を有している。オペレーターは、工具ユニットTU0の後部を取付穴21に挿入することにより、工具ユニットTU0の被取付面50aを取付面20aに当て、且つ、工具ユニットTU0の従動歯車54を伝達歯車24と噛み合わせた状態にして、工具ユニットTU0を刃物台20に取り付けることができる。工具ユニットTU0は、該工具ユニットTU0のねじ挿通穴52に通されたおねじ部品であるねじSC1を供給路25のねじ穴29に螺合させることにより刃物台20に固定される。工具ユニットTU0がエア流路付き工具ユニットTU1である場合、エア100の供給路25は、エア流路付き工具ユニットTU1の流路55に繋がって該流路55にエア100を供給する。また、オペレーターは、刃物台20からねじSC1を外し、取付穴21から工具ユニットTU0を前方D1へ引き抜くことにより、刃物台20から工具ユニットTU0を取り外すことができる。従って、工具ユニットTU0は、刃物台20に対して着脱可能である。
尚、供給路25の開口26からエア100が若干漏れても支障は無いため、取付面20aと被取付面50aとの間にゴムシール等は無くてもよい。
【0027】
従動歯車54と噛み合った伝達歯車24は、駆動歯車23から伝えられた回転駆動力により従動歯車54を回転させる。伝達歯車24と噛み合った駆動歯車23は、モーター22から伝えられた回転駆動力により伝達歯車24を回転させる。従って、モーター22は、駆動歯車23、伝達歯車24、及び、従動歯車54を介して工具T0を回転させる。刃物台20に複数の工具ユニットTU0が取り付けられている場合、モーター22は複数の工具T0を同時に回転させることになる。
【0028】
エア100の供給路25は、エア供給部80に繋がっており、エア供給部80からパージ用のエア100の供給を受ける。刃物台20は、供給路25の開口26から挿入されるおねじ部品であるプラグ40(閉塞部材の例)と螺合するねじ穴27を供給路25に有している。従って、刃物台20には、供給路25の開口26を塞ぐプラグ40が着脱可能である。また、刃物台20は、供給路25の開口26に繋がっていてねじ穴27よりも広い座ぐり28も供給路25に有している。座ぐり28にプラグ40の頭部が入り込むことにより、プラグ40は取付面20aから前方D1に出ない状態で刃物台20に取り付けられる。
【0029】
図3に示すエア流路付き工具ユニットTU1は、工具T0及び従動歯車54を含む回転部53、回転中心線AX3を中心として回転部53の外側にある非回転部51、並びに、回転部53と非回転部51との間にある軸受B1を備えている。回転部53は、軸受B1を介して非回転部51に支持され、回転中心線AX3を中心として回転可能である。
従動歯車54は、回転中心線AX3を中心として回転可能である。図3に示す工具T0は、回転中心線AX3を中心として回転可能であり、従動歯車54の回転に合わせて回転する。尚、工具T0の回転中心線は、従動歯車54の回転中心線と異なっていてもよい。例えば、従動歯車54からの回転駆動力が傘歯車等により向きを変えて工具T0に伝えられる場合、工具T0の回転中心線の向きが従動歯車54の回転中心線の向きから変わる。
【0030】
非回転部51は、後方D2に向いた被取付面50a、ねじSC1を通すためのねじ挿通穴52、及び、パージ用のエア100の流路55を有している。流路55は、刃物台20からプラグ40が外されてエア流路付き工具ユニットTU1が刃物台20に取り付けられている状態で刃物台20の供給路25からエア100の供給を受ける。流路55に入ったエア100の大部分は、非回転部51と回転部53との間から前方D1へ流れ、エア流路付き工具ユニットTU1の外部に出る。これにより、ワークW1の切粉を含む切削油が非回転部51と回転部53との間から軸受B1に入り込むことが抑止される。尚、流路55に入ったエア100の一部は、非回転部51と回転部53との間から後方D2へ流れるものの、軸受B1には到らず、ドレン57からエア流路付き工具ユニットTU1の外部に出る。
【0031】
また、非回転部51は、被取付面50aから後方D2へ突出した管状突起61(凸部の例)を備えている。流路55は、管状突起61の開口56から管状突起61に沿って管状突起61を通り抜け、さらに、非回転部51と回転部53との間に繋がっている。すなわち、管状突起61は、流路55を有している。管状突起61の外径は、刃物台20の座ぐり28の内径よりも小さく、プラグ40の頭部の外径よりも小さい。
図3,5に例示するように、プラグ40が刃物台20の供給路25の開口26を塞いでいる場合、管状突起61がプラグ40に干渉することによりエア流路付き工具ユニットTU1を刃物台20に取り付けることができない。従って、管状突起61は、機械本体2に取り付けられたプラグ40に干渉することにより機械本体2に対するエア流路付き工具ユニットTU1の取り付けを阻害する干渉構造60の例である。干渉構造60としての管状突起61は、機械本体2に向かって出ているので、機械本体2にプラグ40が取り付けられているとプラグ40に干渉する凸部の例である。
【0032】
図4は、エア流路付き工具ユニットTU1を取り付けた刃物台20を模式的に例示している。刃物台20からは、図3に示すプラグ40が取り外されている。エア流路付き工具ユニットTU1は、刃物台20の取付面20aとエア流路付き工具ユニットTU1の被取付面50a(図3参照)とが接している状態でねじSC1により刃物台20に取り付けられている。管状突起61の前後方向(D1,D2)に沿った中心線AX4は、供給路25の前後方向(D1,D2)に沿った中心線AX5からずれている。管状突起61の外径が小さく、且つ、プラグ40の頭部に六角レンチ(六角棒スパナ)等の工具を挿入するための穴がある場合、中心線AX4が中心線AX5に合わせられていると管状突起61が前述の穴に入ることによりプラグ40に干渉しないことが想定される。中心線AX4が中心線AX5からずれていることにより、プラグ40に管状突起61が確実に干渉する。
尚、管状突起61の外径を大きくすることができれば、管状突起61の中心線AX4を供給路25の中心線AX5に合わせてもよい。
【0033】
図2に示すシール付き工具ユニットTU2は、工具T0及び従動歯車54を含む回転部53、回転中心線AX3を中心として回転部53の外側にある非回転部51、並びに、回転部53と非回転部51との間にある軸受B1及びゴムシールSE1を備えている。回転部53と非回転部51との間において軸受B1から前方D1にゴムシールSE1が配置されていることにより、ワークW1の切粉を含む切削油が非回転部51と回転部53との間から軸受B1に入り込むことが抑止される。ただ、ゴムシールSE1が回転部53に接していることから、ゴムシールSE1と回転する回転部53との摩擦による発熱がエア流路付き工具ユニットTU1の場合よりも多い。刃物台20に複数のシール付き工具ユニットTU2が取り付けられている場合、これらのシール付き工具ユニットTU2の工具T0が同時に回転することから、刃物台20に取り付けられたシール付き工具ユニットTU2の数に応じた摩擦熱が生じることになる。摩擦熱は、シール付き工具ユニットTU2の劣化、及び、シール付き工具ユニットTU2を含む構造物の熱膨張による加工精度低下の原因となり得る。エア流路付き工具ユニットTU1は、前述の摩擦熱が抑えられるので、シール付き工具ユニットTU2と比べて発熱が少なくて済み、良好な耐久性を有し、構造物の熱変形が減少することにより高い加工精度を維持することが可能となる。
【0034】
非回転部51は、後方D2に向いた被取付面50a、及び、ねじSC1を通すためのねじ挿通穴52を有している。パージ用のエアの流路が非回転部51に無いので、エア100の供給路25の開口26を塞ぐプラグ40が刃物台20に取り付けられた状態で刃物台20にシール付き工具ユニットTU2が取り付けられる。むろん、刃物台20にシール付き工具ユニットTU2を取り付ける際にプラグ40に干渉する凸部は、非回転部51に無い。
【0035】
図2に示す各取付穴21において、刃物台20に工具ユニット(TU1,TU2)を交換可能に取り付けることができる。
例えば、使用する工具ユニットTU0をシール付き工具ユニットTU2からエア流路付き工具ユニットTU1に切り替える場合を想定する。この場合、オペレーターは、刃物台20からねじSC1を外してシール付き工具ユニットTU2を取付穴21から引き抜き、プラグ40を刃物台20から外し、エア流路付き工具ユニットTU1の後部を取付穴21に挿入してねじSC1で固定すればよい。これにより、エア100が刃物台20の供給路25からエア流路付き工具ユニットTU1の流路55に供給される。
【0036】
また、使用する工具ユニットTU0をエア流路付き工具ユニットTU1からシール付き工具ユニットTU2に切り替える場合を想定する。この場合、オペレーターは、刃物台20からねじSC1を外してエア流路付き工具ユニットTU1を取付穴21から引き抜き、プラグ40を刃物台20に取り付け、シール付き工具ユニットTU2の後部を取付穴21に挿入してねじSC1で固定すればよい。刃物台20に取り付けられたプラグ40は、供給路25からエア100が漏れることを抑制する。
さらに、工具ユニットTU0が取り付けられない箇所の取付穴21には、図示しない蓋を刃物台20に対して取り外し可能に取り付けることが可能である。
【0037】
(3)具体例に係る工作機械の作用、及び、効果:
上述したように、刃物台20にシール付き工具ユニットTU2が取り付けられている場合、シール付き工具ユニットTU2にエア100を供給する必要がないため、エア100の供給路25の開口26を塞ぐプラグ40が刃物台20に取り付けられている。ただ、刃物台20からプラグ40を外し忘れた状態でエア流路付き工具ユニットTU1が刃物台20に取り付けられると、エア流路付き工具ユニットTU1にパージ用のエア100が供給されないため、エア流路付き工具ユニットTU1が劣化する。本具体例の工作機械1は、刃物台20からプラグ40を外し忘れた状態で刃物台20にエア流路付き工具ユニットTU1が取り付けられることを防ぐ干渉構造60を備えている。
【0038】
図5は、干渉構造60により刃物台20に対するエア流路付き工具ユニットTU1の取り付けが阻害される様子を模式的に例示している。
図5に示すように、エア100の供給路25の開口26を塞ぐプラグ40が刃物台20に取り付けられていると、オペレーターがエア流路付き工具ユニットTU1の後部を取付穴21に挿入しても、管状突起61がプラグ40に干渉する。これにより、刃物台20の取付面20aにエア流路付き工具ユニットTU1の被取付面50aが当たらず、刃物台20にエア流路付き工具ユニットTU1を取り付けることができない。従って、刃物台20からプラグ40を外し忘れた状態でエア流路付き工具ユニットTU1が刃物台20に取り付けられることによりパージ用のエア100が供給されない状態で使用されて劣化するということが生じない。
【0039】
以上より、本具体例の工作機械1は、エア流路付き工具ユニットTU1がエア供給路のプラグ40の外し忘れにより劣化することを防止可能である。
【0040】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、パージ用のエアの流路を有する工具ユニットは、回転ドリルユニットに限定されず、エンドミルを備えるエンドミルユニット、ポリゴンカッターを備えるポリゴンカッターユニット、等でもよい。
パージ用のエアを歯車や軸受等の構造物に通す場合には、パージ用のエアにオイルミストを混入させてもよい。
【0041】
図6に例示するように、エア供給路の開口を塞ぐ閉塞部材が干渉構造としてエア流路付き工具ユニットに向かって出た凸部を備えていてもよい。図6に示す刃物台20の供給路25には、図3で示したような座ぐりが無い。これにより、プラグ40が刃物台20に取り付けられたときにプラグ40の頭部が凸部41として取付面20aから前方D1に出た状態となる。オペレーターがエア流路付き工具ユニットTU1の後部を取付穴21に挿入しても、流路55の開口56の周辺においてエア流路付き工具ユニットTU1の被取付面50aがプラグ40の凸部41に干渉する。これにより、刃物台20の取付面20aにエア流路付き工具ユニットTU1の被取付面50aが当たらず、刃物台20にエア流路付き工具ユニットTU1を取り付けることができない。従って、図6に示すプラグ40は、干渉構造60としてエア流路付き工具ユニットTU1に向かって出た凸部41であって機械本体2にプラグ40が取り付けられているとエア流路付き工具ユニットTU1が干渉する凸部41を備えている。
尚、シール付き工具ユニットTU2は、プラグ40が取り付けられた刃物台20に取り付けることができるように、凸部41に干渉しない構造を有していることが好ましい。
【0042】
図7に例示するように、干渉構造としての凸部にパージ用エアの流路が無くてもよい。図7に示すエア流路付き工具ユニットTU1は、被取付面50aから後方D2へ突出した凸部としての突起62を備えている。突起62にはエア100の流路55が無く、流路55の開口56は被取付面50aにある。プラグ40が刃物台20の供給路25の開口26を塞いでいる場合、突起62がプラグ40に干渉することによりエア流路付き工具ユニットTU1を刃物台20に取り付けることができない。従って、突起62は、機械本体2に取り付けられたプラグ40に干渉することにより機械本体2に対するエア流路付き工具ユニットTU1の取り付けを阻害する干渉構造60の例である。オペレーターがエア流路付き工具ユニットTU1の後部を取付穴21に挿入しても、突起62がプラグ40に干渉する。これにより、刃物台20の取付面20aにエア流路付き工具ユニットTU1の被取付面50aが当たらず、刃物台20にエア流路付き工具ユニットTU1を取り付けることができない。
【0043】
図6,7に示す例も、刃物台20からプラグ40を外し忘れた状態でエア流路付き工具ユニットTU1が刃物台20に取り付けられることによりパージ用のエア100が供給されない状態で使用されて劣化するということが生じない。
【0044】
(5)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、パージ用エアの流路を有する工具ユニットがエア供給路の閉塞部材の外し忘れにより劣化することを防止可能な工作機械等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1…工作機械、2…機械本体、
20…刃物台、20a…取付面、21…取付穴、22…モーター、
25…供給路、26…開口、27…ねじ穴、28…座ぐり、
40…プラグ(閉塞部材の例)、41…凸部、
50a…被取付面、
51…非回転部、53…回転部、
55…流路、56…開口、57…ドレン、
60…干渉構造、61…管状突起(凸部の例)、62…突起(凸部の例)、
80…エア供給部、100…エア、
AX1,AX2…主軸中心線、AX3…回転中心線、
AX4…管状突起の中心線、AX5…供給路の中心線、
D1…前方、D2…後方、
T0…工具、
TU0…工具ユニット、
TU1…エア流路付き工具ユニット、TU2…シール付き工具ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7