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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092153
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】保冷剤ケース
(51)【国際特許分類】
   F25D 3/00 20060101AFI20220615BHJP
   F25D 21/14 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
F25D3/00 E
F25D21/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204773
(22)【出願日】2020-12-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】597165906
【氏名又は名称】岸田 光正
(74)【代理人】
【識別番号】100094617
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 正浩
(72)【発明者】
【氏名】岸田 光正
【テーマコード(参考)】
3L044
3L048
【Fターム(参考)】
3L044AA04
3L044BA03
3L044CA11
3L044DC04
3L044KA04
3L048AA06
3L048GA02
(57)【要約】
【課題】保冷対象の空間内を十分に冷却しつつ保冷時間を長くでき、飲食できる冷却手段も使用でき、外出先においても入手し易い氷などで冷却能力を再び得ることができるなど、多機能な保冷剤ケースを提供する。
【解決手段】保冷剤ケースは、冷却手段を収容するケース本体10Aと、熱伝導性を有し、当該ケース本体の上部と下部を貫通する複数の貫通パイプ部14,14,…とを備える。そして、冷却手段により、複数の貫通パイプ部を冷却し、貫通パイプ部内の冷気を保冷対象の空間内で、空間内の底部からは浮かせた状態で対流させて循環させることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却手段を収容するケース本体と、熱伝導性を有し、当該ケース本体の上部と下部を貫通する複数の貫通パイプ部とを具備し、前記冷却手段により、前記複数の貫通パイプ部を冷却し、貫通パイプ部内の冷気を保冷対象の空間内で、前記空間内の底部からは浮かせた状態で対流させて循環させる、ことを特徴とする保冷剤ケース。
【請求項2】
前記貫通パイプ部は二重構造であり、内側貫通パイプと外側貫通パイプの間に冷却手段が充填される、ことを特徴とする請求項1に記載の保冷剤ケース。
【請求項3】
前記貫通パイプ部の外側がフィルムで覆われ、前記貫通パイプ部と前記フィルムとの間に冷却手段が充填される、ことを特徴とする請求項1に記載の保冷剤ケース。
【請求項4】
前記ケース本体は、真空二重構造、中空二重構造、或いは断熱性材料で形成された断熱構造である、ことを特徴とする請求項1に記載の保冷剤ケース。
【請求項5】
前記ケース本体の外側または内側の少なくとも一部に設けられる断熱材を更に具備する、ことを特徴とする請求項1に記載の保冷剤ケース。
【請求項6】
前記ケース本体に設けられた脚部、もしくは保冷対象の空間内の上部から吊り下げるための器具を更に具備する、ことを特徴とする請求項1に記載の保冷剤ケース。
【請求項7】
前記冷却手段は、冷水、氷、ドライアイス、凍らせた飲料、及び凍らせた保冷剤のいずれかを含む、ことを特徴とする請求項1又は3に記載の保冷剤ケース。
【請求項8】
前記冷却手段は、保冷剤が充填された保冷剤パックであり、前記保冷剤パックは、前記複数の貫通パイプ部に対応する位置に配置された貫通孔を有し、当該貫通孔を前記複数の貫通パイプ部が貫通する、ことを特徴とする請求項1に記載の保冷剤ケース。
【請求項9】
前記ケース本体内における下部に設けられ、前記複数の貫通パイプ部の内壁に結露した水滴を受ける結露受け部を更に具備する、ことを特徴とする請求項1に記載の保冷剤ケース。
【請求項10】
前記ケース本体は二重構造であり、内側壁部と外側壁部との間に冷却手段が充填される、ことを特徴とする請求項1に記載の保冷剤ケース。
【請求項11】
前記ケース本体の内壁はフィルムで覆われ、前記ケース本体の内壁と前記フィルムとの間に冷却手段が充填される、ことを特徴とする請求項1に記載の保冷剤ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷や保冷剤(蓄冷剤)パックを収容し、クーラーボックス、保冷バッグ、或いは保冷コンテナなどの保冷容器の内容物を保冷する、保冷剤ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の保冷容器における飲料や食材を保冷するための保冷剤には、保冷効果を長時間維持することが望まれ、また、外出先などにおいて、保冷剤の再凍結が難しいため、容易に保冷効果を回復できる冷却手段を調達できることが好ましい。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、保冷剤の内容量を変えることなく、封入している外装ビニール素材の熱吸収部面を減少させることで熱吸収を抑え、保冷効果を長時間維持する保冷剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3198536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように熱吸収部面を減少させても、保冷容器内の食材や飲料を取り出すときには冷却源が直接外気にさらされてしまう。また、保冷効果を長時間維持できても限界があり、外出先などにおいて、再度保冷効果を得ることが困難であるという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、保冷時間を長くでき、また、保冷能力がなくなってきてしまった場合に、外出先でも入手しやすい氷や冷水などを調達してケース内に収容すれば、再び保冷容器を冷却することができる、保冷剤ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る保冷剤ケースは、冷却手段を収容するケース本体と、熱伝導性を有し、当該ケース本体の上部と下部を貫通する複数の貫通パイプ部とを具備し、前記冷却手段により、前記複数の貫通パイプ部を冷却し、貫通パイプ部内の冷気を保冷対象の空間内で、前記空間内の底部からは浮かせた状態で対流させて循環させることで、上述した課題を解決した。
【0008】
また、前記貫通パイプ部は二重構造であり、内側貫通パイプと外側貫通パイプの間に冷却手段が充填されることで、上述した課題を解決した。
【0009】
更に、前記貫通パイプ部の外側がフィルムで覆われ、前記貫通パイプ部と前記フィルムとの間に冷却手段が充填されることで、上述した課題を解決した。
【0010】
この他、前記ケース本体は、真空二重構造、中空二重構造、或いは断熱性材料で形成された断熱構造であることで、同じく上述した課題を解決した。
【0011】
また、前記ケース本体の外側または内側の少なくとも一部に設けられる断熱材を更に具備することで、同じく上述した課題を解決した。
【0012】
更に、ケース本体に設けられた脚部、もしくは保冷対象の空間内の上部から吊り下げるための器具を更に具備することで、同じく上述した課題を解決した。
【0013】
更にまた、前記冷却手段は、冷水、氷、ドライアイス、凍らせた飲料、及び凍らせた保冷剤のいずれかを含むことで、同じく上述した課題を解決した。
【0014】
また、前記冷却手段は、保冷剤が充填された保冷剤パックであり、前記保冷剤パックは、前記複数の貫通パイプ部に対応する位置に配置された貫通孔を有し、当該貫通孔を前記複数の貫通パイプ部が貫通することで、同じく上述した課題を解決した。
【0015】
加えて、前記ケース本体内における下部に設けられ、前記複数の貫通パイプ部の内壁に結露した水滴を受ける結露受け部を更に具備することで、同じく上述した課題を解決した。
【0016】
また、前記ケース本体は二重構造であり、内側壁部と外側壁部との間に冷却手段が充填されることで、同じく上述した課題を解決した。
【0017】
更に、前記ケース本体の内壁はフィルムで覆われ、前記ケース本体の内壁と前記フィルムとの間に冷却手段が充填されることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る保冷剤ケースによれば、冷却手段をケース本体内に密閉し、ケース上部と下部を貫通する複数の貫通パイプ部を冷やし、貫通パイプ部内の冷気を保冷対象の空間内で対流させて循環させることにより、長時間にわたり保冷容器内を効果的に冷やし、保冷能力が低下してしまった時に、外出先でも氷などを調達しケースに収容すれば、再び保冷効果を得られる。
【0019】
また、貫通パイプ部を二重構造にして、内側貫通パイプと外側貫通パイプの間に冷却手段を充填して、保冷容器内の冷却手段を接触させれば、空気より高い熱伝導率を持つ冷却手段を貫通パイプ部全体に行きわたらせることによって、貫通パイプ部内部を流通する空気を効率的に冷やすことができる。
【0020】
更に、貫通パイプ部の外側をフィルムで覆い、貫通パイプ部とフィルムとの間に冷却手段を充填しても二重構造と同様な作用効果が得られる。
【0021】
更にまた、ケース本体を、真空二重構造、中空二重構造、或いは断熱性材料で形成された断熱構造にすることにより、冷却手段が周囲の熱を吸収するのを抑制して保冷時間を長くできる。
【0022】
加えて、ケース本体の外側または内側の少なくとも一部に断熱材を設けることでも、冷却手段が周囲の熱を吸収するのを抑制して保冷時間を長くできる。
【0023】
また、ケース本体が保冷対象の空間内の効率的な位置に配備できるよう、脚部、もしくは吊り下げ器具を設けることで、保冷対象の空間内を効率的に冷却できる。
【0024】
更に、冷却手段には、冷水、氷、ドライアイス、凍らせた飲料、及び凍らせた保冷剤を用いることができる。冷却手段として、氷や凍らせた飲料を使用した場合、目的地においてそれらを食すこともでき、特にアウトドアなどにおいて、幅広い活用ができる。
【0025】
加えて、複数の貫通パイプに対応する位置に貫通孔を配置すれば、冷却手段として保冷剤パックを用い、パイプを効率的に冷却することができる。
【0026】
しかも、複数の貫通パイプ内に結露した水滴を受ける結露受け部を設けることで、結露した水滴により保冷対象が濡れるのを抑制できる。
【0027】
また、内側壁部と外側壁部との間に充填した冷却手段によって、ケース本体の外側の壁面全体を冷やし、保冷対象の空間内の空気を冷やすことができる。
【0028】
更に、ケース本体の内壁とフィルムとの間に充填した冷却手段によって、ケース本体の外側の壁面全体を冷やし、保冷対象の空間内の空気を冷やすことができる。
【0029】
従って、本発明によれば、保冷対象の空間内を十分に冷却しつつ保冷時間を長くし、外出先においても容易に冷却効果を回復できるなど、幅広い活用ができる保冷剤ケースを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1の実施形態に係る保冷剤ケースの構成を示す斜視図である。
図2図1の保冷剤ケースに、冷却手段として専用の保冷剤パックを用いる場合の分解斜視図である。
図3図1の保冷剤ケースを上方から見た斜視図、及び下方から見た斜視図である。
図4図3のX-X’線に沿った断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る保冷剤ケースの構成を示す斜視図である。
図6図5の保冷剤ケースに、冷却手段として専用の保冷剤パックを用いる場合の分解斜視図である。
図7図6のY-Y’線に沿った断面図である。
図8】保冷剤ケースを収容する保冷容器の外観斜視図である。
図9】保冷剤ケースの用途例を示しており、図8に示した保冷容器の蓋を開けた状態を示す斜視図である。
図10】保冷剤ケースの他の用途例を示しており、図8に示した保冷容器の蓋を開けた状態を示す斜視図である。
図11】保冷剤ケースを収容する他の構成の保冷容器の外観斜視図であり、保冷容器の蓋を開け、正面を切り欠いた状態を示す斜視図である。
図12】本発明の第3の実施形態に係る保冷剤ケースについて説明するための斜視図である。
図13図12のZ-Z’線に沿った断面図である。
図14】本発明の第1、第2の実施形態に係る保冷剤ケースの変形例について説明するための斜視図である。
図15】本発明の第4の実施形態に係る保冷剤ケースについて説明するための斜視図である。
図16】本発明の第1の応用例について説明するための斜視図である。
図17】本発明の第2の応用例について説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明を実施するための形態を、図面を参照して説明する。
【0032】
図1乃至図4はそれぞれ、本発明の第1の実施形態に係る保冷剤ケースを示している。図1は保冷剤ケースを開けた状態の斜視図、図2は冷却手段として保冷剤パックを用いる場合の分解斜視図、図3は保冷剤ケースを上方から見た斜視図及び下方から見た斜視図、図4図3のX-X’線に沿った断面図である。
【0033】
図1に示すように、板状の蓋部11Aと、冷却手段を収容する収容ボックス12Aでケース本体10Aが形成される。そして、ケース本体10Aに収容される冷却手段としての保冷剤パック13-1,13-2(図2参照)を外気から遮断するとともに、保冷容器に収容された食材や飲料と直接接触するのを防止している。なお、冷却手段として、冷水、氷、ドライアイス、凍らせた飲料、及び凍らせた保冷剤などを用いても良い。
【0034】
収容ボックス12Aには、ケース本体10Aを貫通する複数の貫通パイプ14,14,…が立設されている。これら貫通パイプ14,14,…に対応する位置の蓋部11Aには貫通孔14a,14a,…、保冷剤パック13-1,13-2には貫通孔14b,14b,…,14c,14c,…、及び収容ボックス12Aの底部には貫通孔14d,14d,…がそれぞれ形成され、貫通パイプ14,14,…が蓋部11A、保冷剤パック13-1,13-2及び収容ボックス12Aを貫通している。
【0035】
これら貫通パイプ14,14,…は、熱伝導率の高い材料、例えば銅やアルミニウムなどの金属(熱伝導率250~400W/m・K)はもちろん、アクリルやプロポリピレンなど、プラスチック系の材質(熱伝導率0.2W/m・K前後程度)でも良い。
【0036】
貫通パイプ14,14,…は、保冷剤パック13-1,13-2によって冷却された当該貫通パイプ14,14,…内の冷気を、保冷対象の空間内で対流させて循環させるものである。本例では、貫通パイプ14,14,…の長さが10cm程度、パイプ径は5mm~25mm、肉厚が0.5mm~1mm程度のものを用いている。
【0037】
図3(a),(b)に示すように、ケース本体10Aは直方体形状(または板状)であり、ケース本体10Aの対向する2面から貫通パイプ14,14,…の内壁が見える外観を有している。これによって、図4に示すように、貫通パイプ14,14,…内の冷気を保冷対象の空間内で対流させるための通路(矢印AAで示す)が形成されている。
【0038】
このような構成によれば、保冷剤パック13-1,13-2が、保冷容器20の内壁や食材、飲料などに直接触れることがないので、熱を吸収するのを抑制できる。これによって、保冷時間を長くでき、また、保冷能力がなくなってきてしまった場合に、外出先でも入手しやすい氷や冷水などを調達してケース本体10A内に収容すれば、再び保冷容器内を冷却することができる。更に、冷却手段に氷や飲料を凍らせたものを用いれば、目的地において、それらを食しても構わない。そうすれば、帰りの荷物の軽量化にもなる。
【0039】
本発明者による実験では、内径10mmのパイプ80本を設けた250mm×200mm×100mm、厚さ3mmほどの塩ビパネルによる直方体の保冷剤ケースで、冷却手段としてブロック氷を使用したところ、25℃の室温状態において保冷容器内で8時間経過しても氷はそれほど溶けておらず、目的地でその氷を利用して飲料を冷たくして飲むなど、幅広い活用ができた。
【0040】
図5乃至図7はそれぞれ、本発明の第2の実施形態に係る保冷剤ケースを示している。図5は保冷剤ケースを開けた状態の斜視図、図6は冷却手段として保冷剤パックを用いる場合の分解斜視図、図7図6のY-Y’線に沿った断面図である。
【0041】
図5に示すように、蓋部11Bと、冷却手段を収容する収容ボックス12Bでケース本体10Bが形成される。蓋部11Bの上部と側面には、発泡スチロールなどからなる断熱材11a,11b,11c,11d,11eが設けられ、収容ボックス12Bの底部にも同じく発泡スチロールなどからなる断熱材12aが設けられている。これらの断熱材11a,11b,11c,11d,11e,12aは、ケース本体10Bに収容された冷却手段としての保冷剤パック13-1,13-2(図6参照)を外気から断熱する。なお、冷却手段として、冷水、氷、ドライアイス、凍らせた飲料、及び凍らせた保冷剤などを用いても良い。
【0042】
収容ボックス12Bには、ケース本体10Bを貫通する複数の貫通パイプ14,14,…が立設されている。これら貫通パイプ14,14,…に対応する位置の蓋部11Bには貫通孔14a,14a,…、保冷剤パック13-1,13-2には貫通孔14b,14b,…,14c,14c,…、及び収容ボックス12Bには貫通孔14d,14d,…がそれぞれ形成され、貫通パイプ14,14,…は、蓋部11Bとその上面の断熱材11a、保冷剤パック13-1,13-2、及び収容ボックス12Bとその底面の断熱材12aを貫通している。
【0043】
これら貫通パイプ14,14,…は、上述した第1の実施形態と同様に、熱伝導率の高い材料、例えば銅やアルミニウムなどの金属(熱伝導率250~400W/m・K)などはもちろん、アクリルやプロポリピレンなど、プラスチック系の材質(熱伝導率0.2W/m・K前後程度)でも良い。
【0044】
貫通パイプ14,14,…は、保冷剤パック13-1,13-2によって冷却された貫通パイプ14,14,…内の冷気を、保冷対象の空間内で対流させて循環させるものである。本例では、貫通パイプ14,14,…の長さが10cm程度、パイプ径は5mm~25mm、肉厚が0.5mm~1mm程度のものを用いている。
【0045】
この第2の実施形態でも、ケース本体10Bは直方体形状(または板状)であり、ケース本体10Bの対向する2面から貫通パイプ14,14,…の内壁が見える外観を有している。これによって、図7に示すように、貫通パイプ14,14,…内の冷気を保冷対象の空間内で対流させるための通路(矢印ABで示す)が形成されている。
【0046】
本第2の実施形態では、ケース本体10Bを断熱材11a,11b,11c,11d,11e,12aで覆うことで、ケース本体10Bに収容された冷却手段としての保冷剤パック13-1,13-2をより効果的に外気から断熱でき、保冷時間をより長くできる。
【0047】
なお、本第2の実施形態では、ケース本体の全面を断熱材で覆ったが、一部を覆っても良い。
【0048】
また、ケース本体を、真空二重構造、中空二重構造、或いは断熱性材料で形成された断熱構造にしても良い。このような構成であっても、冷却手段が周囲の熱を吸収するのを抑制して保冷時間を長くできる。
【0049】
或いは、ケース本体を二重構造にし、内側壁部と外側壁部との間に冷却手段を充填しても良い。ケース本体の内壁をフィルムで覆い、ケース本体の内壁とフィルムとの間に冷却手段を充填しても構わない。これらの構成において、充填する冷却手段としては、水などの液体や保冷剤を用いることができる。
【0050】
充填した水や保冷剤を、ケース本体に収容した保冷剤パックや氷(冷却手段)の接触により内壁側から温度を下げ、それをケース本体の全体に行きわたらせて、ケース本体の外側の壁を冷やし、保冷対象の空間内の空気を冷却する。なお、ケース本体を構成するパネルによるしなりが期待でき、パネル間の水が凍ったとしても破損する可能性は低く、また、水とパネル間に空気が入ると熱伝達の効率が落ちるので、水などの液体や保冷剤は満充填すると良い。
【0051】
更に、貫通パイプ部を二重構造に構成し、内側貫通パイプと外側貫通パイプの間に冷却手段を充填すれば、空気より高い熱伝導率を持つ冷却手段をパイプ部全体に行きわたらせることによって、パイプ部内部を流通する空気を効率的に冷やすことができる。
【0052】
更にまた、貫通パイプ部の外側をフィルムで覆い、貫通パイプ部とフィルムとの間に冷却手段を充填しても二重構造と同様な作用効果が得られる。
【0053】
冷却手段がブロック氷である場合を例に挙げれば、貫通パイプ部を冷やすのは氷が直接接触、或いはその氷によって冷やされた空気、或いは時間が経過し氷が溶けてくると冷水になる。氷、冷水はパイプに接触すれば、パイプ内部を流通する空気に比べれば強い熱伝導率があるので、しっかり貫通パイプ部の内壁を冷やすが、それらが接触していない部分は冷却力が弱く、パイプ部内壁全体としては効率が落ちる。
【0054】
そこで、貫通パイプ部を二重構造にして、内側貫通パイプと外側貫通パイプの間に水を充填することで、熱伝導のみならず対流によっても内側貫通パイプの内部空間を冷やすことができる。
【0055】
本発明者は、次のような実験を行って冷却効果を確認した。外径が26mmで肉厚が1mmの銅パイプの中に、外径が12mmで肉厚が1mmのアルミニウムパイプやステンレスパイプを入れて(内側と外側のパイプの直径に大きな差をつける必要はないが、ある程度の水の量でも冷やせるかを観察するため直径に差をつけた。)何本か二重管を作成し、パイプ間に水を充填した。
【0056】
そして、パイプ部の外壁にブロック氷2、3個接触させると、接触部分はかなり少なく部分的なのにも拘わらず、パイプの間に充填した水の温度を1.5℃程度まで下げることができた。パイプ部の上側も下側も、ほぼ同程度の温度まで下げることができたので、流体である水は熱伝導のみならず、対流によっても全体的に冷えたと考えられる。
【0057】
風呂の沸かし直しなどを見ると、上部が熱くなり下部は冷たくなる。水は約4℃の密度が一番高いとされているので、それ以下の温度では、より冷たい水が上に行くことになるが、今回の実験ではそれらの温度差は見られなかった。
【0058】
また、氷の部分的な接触で、二重パイプ内の水温は2℃以下まで下げることができた。
【0059】
但し、冷却手段が、ドライアイスや氷点下タイプの保冷パックなどであった場合には、凍結する可能性があるので、内側貫通パイプと外側貫通パイプの間に充填する水や保冷剤などの液体は、凍結した際の体積の1割程度の増加分を考慮したものにして、貫通パイプ部の破損を防ぐようにすると良い。
【0060】
外側貫通パイプには、銅やアルミニウムなどの熱伝導率の良い材質はもちろん、プラスチック系など多少熱伝導率が低くとも薄めのパイプもしくはフィルムなどであれば、充填された液体の水温を下げることができる。
【0061】
このように、空気の数十倍の熱伝導率を持つ水(0.58W/m・K程度)や氷(2.2W/m・K)などを内側貫通パイプと外側貫通パイプの間の全体に行きわたらせることによって、貫通パイプ部の内部を流通する空気を効率的に冷やすことができる。
【0062】
図8は、保冷剤ケース11B(または保冷剤ケース11A、以降の説明では保冷剤ケース11Bを例に取るが、保冷剤ケース11Aでも同様である)を収容する保冷容器20の外観斜視図である。図9は第1及び第2の実施形態に示した保冷剤ケースの用途例を示しており、図8に示した保冷容器20の蓋21を開けた状態を示している。保冷剤ケース11A(保冷剤パック13-1,13-2を収容したケース本体)は、縦型の保冷容器20に収容されており、下部に保冷対象のペットボトル飲料22や缶飲料23が収容されている。
【0063】
この状態では、複数の貫通パイプ14,14,…内が冷却され、重くなった冷気が下方に移動することで、破線の矢印ACで示すように保冷容器20内に対流が発生し、ペットボトル飲料22や缶飲料23を効果的に保冷することができる。
【0064】
しかも、保冷剤パック13-1,13-2は、断熱材11a,11b,11c,11d,11e,12aで外気から断熱されているので、周囲の熱を吸収するのを抑制して保冷時間を長くできる。また、保冷剤パック13-1,13-2が、保冷容器20の内壁や食材、飲料などに直接触れることもないので、この点からも周囲の熱を吸収するのを抑制できる。
【0065】
図10は、保冷剤ケースの他の用途例を示しており、図8に示した保冷容器20の蓋21を開けた状態を示す斜視図である。本例においては、保冷剤ケース10Bに脚部24を設け、その下部に保冷対象の缶飲料23を収容している。この脚部24は、パイプ部内の冷気を保冷対象の空間内で、空間内の底部からは浮かせた状態で、対流させて循環させるためのものである。このような構成であっても、図9に示した場合と同様な作用効果が得られる。
【0066】
なお、脚部24に代えて、保冷対象の空間内の上部から吊り下げる器具を、保冷容器20や保冷剤ケース10Bに設けても良い。
【0067】
図11は、保冷剤ケースを収容する他の構成の保冷容器の外観斜視図であり、保冷容器の蓋を開け、正面を切り欠いた状態を示す斜視図である。本例においては、横型の保冷容器25の上方に蓋26が着脱自在に設けられている。保冷剤ケース10Bを脚部24に載せ、その下部に保冷対象の缶飲料23を収容している。このような構成であっても、図9及び図10に示した場合と同様な作用効果が得られる。
【0068】
また、脚部24に代えて、保冷対象の空間内の上部から吊り下げる器具を、蓋26に設けても良い。
【0069】
図12及び図13はそれぞれ、本発明の第3の実施形態に係る保冷剤ケースについて説明するためのもので、図12はその分解斜視図、図13図12のZ-Z’線に沿った断面図である。ここでは、内部構造を見やすくするために、蓋部11Bの上面と断熱材11a、及び収容ボックス12Bの底面と断熱材12aを除去した状態で示している。
【0070】
本第3の実施形態においては、ケース本体10B内における貫通パイプ部の外側に、貫通パイプ部の内壁に結露した水滴を受ける結露受け部27,27,…を設けている。貫通パイプ部が上部貫通パイプ14-1,14-1,…と下部貫通パイプ14-2,14-2,…に2分割されている。上部貫通パイプ14-1,14-1,…は、下部がラッパ状に広がっており、各上部貫通パイプ14-1,14-1,…の広がった最下部が結露受け部27,27,…上で接している。
【0071】
そして、上部貫通パイプ14-1,14-1,…の内壁に結露した水滴28,28,…を、上部貫通パイプ14-1,14-1,…の広がった部分を介して、下部貫通パイプ14-2,14-2,…間の結露受け部27,27,…に導いて滴下させて貯留する。
【0072】
このように、貫通パイプ部の内壁に、結露した水滴を受ける結露受け部27,27,…を設けることで、結露した水滴により保冷容器内の内容物が濡れるのを抑制できる。
【0073】
図14は、本発明の第1、第2の実施形態に係る保冷剤ケースの変形例について説明するための斜視図である。氷やドライアイス、もしくは水、飲料、保冷剤などを冷却手段として用いる場合には、貫通パイプ14,14,…を、図14に示すように収容ボックス12B(ケース本体10B)の周辺部に配置することで、氷、凍らせた飲料、又はドライアイスなどを収容しやすくなる。
【0074】
図15は、本発明の第4の実施形態に係る保冷剤ケースについて説明するための斜視図である。本例では、保冷剤ケースをペットボトル形状にしている。ペットボトル形状のケース本体10Cに、貫通パイプ14,14,…を設け、ケース本体10C内に水やお茶、ジュースなどを入れて冷凍し、冷却手段として用いる。
【0075】
このような構成によれば、ケース本体10Cを直接冷凍庫に入れて冷凍すれば良く、使い勝手がよくなる。また、収容物を冷却手段としてだけでなく、飲料として用いることもできる。
【0076】
なお、このケース本体10Cの外側の少なくとも一部に、収容物を外気から断熱する断熱材(図示せず)を設けても良い。また、ケース本体が、直方体形状(または板状)とペットボルトル形状の場合について説明したが、立方体、円柱、球状やその他形状でも構わない。
【0077】
更に、円筒状の貫通パイプを用いたが、多角形や楕円形、長方形でも構わない。
【0078】
本発明は、上述した第1乃至第4の実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【0079】
例えば、上述した各実施形態では、クーラーボックス、保冷バッグ、或いは保冷コンテナなどの保冷容器の内容物を保冷する場合を例に取って説明したが、図16及び図17に示すように、保冷対象の空間として、例えば自動車の車内30の冷却用に用いることも可能である。
【0080】
図16は平形の保冷剤ケース31、図17は縦型の保冷剤ケース32であり、車内30の天井付近に設置することで、冷気を下方に放出することができる。この際、天井から若干スペースを空けることで、暖かい空気を貫通パイプ内に補充することができ、冷却効果が高くなる。
【0081】
これによって、エンジンの停止時やアイドリングストップなどでエアコンディショナーが使えない場合に、車内30の温度上昇を抑制することができる。
【符号の説明】
【0082】
10A,10B,10C…ケース本体
11A,11B…蓋部
12A,12B 収容ボックス
11a,11b,11c,11d,11e,12a…断熱材
13-1,13-2…保冷剤パック
14…貫通パイプ
14a,14b,14c,14d…貫通孔
14-1…上部貫通パイプ
14-2…下部貫通パイプ
20…保冷容器
21…蓋
22…ペットボトル飲料
23…缶飲料
24…脚部
25…保冷容器
26…蓋
27…結露受け部
30…車内
31…平形保冷剤ケース
32…縦型保冷剤ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2022-04-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋部と冷却手段を収容する収容ボックスで形成され、前記冷却手段を外気から遮断するとともに、保冷容器の収容物と直接接触するのを防止するケース本体と、熱伝導性を有し、当該ケース本体の上部と下部を貫通する複数の貫通パイプ部とを具備し、前記冷却手段により、前記複数の貫通パイプ部を冷却し、貫通パイプ部内の冷気を保冷対象の空間内で、前記空間内の底部からとは浮かせた状態で対流させて循環させる、ことを特徴とする保冷剤ケース。
【請求項2】
冷却手段を収容するケース本体と、熱伝導性を有し、当該ケース本体の上部と下部を貫通する複数の貫通パイプ部とを具備し、前記貫通パイプ部は二重構造であり、内側貫通パイプと外側貫通パイプの間に前記冷却手段が充填され、前記冷却手段により、前記複数の貫通パイプ部を冷却し、貫通パイプ部内の冷気を保冷対象の空間内で、前記空間内の底部からは浮かせた状態で対流させて循環させる、ことを特徴とする保冷剤ケース。
【請求項3】
冷却手段を収容するケース本体と、熱伝導性を有し、当該ケース本体の上部と下部を貫通する複数の貫通パイプ部とを具備し、前記貫通パイプ部の外側がフィルムで覆われ、前記貫通パイプ部と前記フィルムとの間に前記冷却手段が充填され、前記冷却手段により、前記複数の貫通パイプ部を冷却し、貫通パイプ部内の冷気を保冷対象の空間内で、前記空間内の底部からは浮かせた状態で対流させて循環させる、ことを特徴とする保冷剤ケース。
【請求項4】
冷却手段を収容するケース本体と、熱伝導性を有し、当該ケース本体の上部と下部を貫通する複数の貫通パイプ部とを具備し、前記ケース本体は、真空二重構造、中空二重構造、或いは断熱性材料で形成された断熱構造であり、前記冷却手段により、前記複数の貫通パイプ部を冷却し、貫通パイプ部内の冷気を保冷対象の空間内で、前記空間内の底部からは浮かせた状態で対流させて循環させる、ことを特徴とする保冷剤ケース。
【請求項5】
冷却手段を収容するケース本体と、熱伝導性を有し、当該ケース本体の上部と下部を貫通する複数の貫通パイプ部と、前記ケース本体の外側または内側の少なくとも一部に設けられる断熱材とを具備し、前記冷却手段により、前記複数の貫通パイプ部を冷却し、貫通パイプ部内の冷気を保冷対象の空間内で、前記空間内の底部からは浮かせた状態で対流させて循環させる、ことを特徴とする保冷剤ケース。
【請求項6】
前記ケース本体に設けられた脚部、もしくは保冷対象の空間内の上部から吊り下げるための器具を更に具備する、ことを特徴とする請求項1乃至5いずれか1つの項に記載の保冷剤ケース。
【請求項7】
前記冷却手段は、冷水、氷、ドライアイス、凍らせた飲料、及び凍らせた保冷剤のいずれかを含む、ことを特徴とする請求項1乃至5いずれか1つの項に記載の保冷剤ケース。
【請求項8】
冷却手段を収容するケース本体と、熱伝導性を有し、当該ケース本体の上部と下部を貫通する複数の貫通パイプ部とを具備し、前記冷却手段は、保冷剤が充填された保冷剤パックであり、前記保冷剤パックは、前記複数の貫通パイプ部に対応する位置に配置された貫通孔を有し、当該貫通孔を前記複数の貫通パイプ部が貫通し、前記冷却手段により、前記複数の貫通パイプ部を冷却し、貫通パイプ部内の冷気を保冷対象の空間内で、前記空間内の底部からは浮かせた状態で対流させて循環させる、ことを特徴とする保冷剤ケース。
【請求項9】
冷却手段を収容するケース本体と、熱伝導性を有し、当該ケース本体の上部と下部を貫通する複数の貫通パイプ部と、前記ケース本体内における下部に設けられ、前記複数の貫通パイプ部の内壁に結露した水滴を受ける結露受け部とを具備し、前記冷却手段により、前記複数の貫通パイプ部を冷却し、貫通パイプ部内の冷気を保冷対象の空間内で、前記空間内の底部からは浮かせた状態で対流させて循環させる、ことを特徴とする保冷剤ケース。
【請求項10】
冷却手段を収容するケース本体と、熱伝導性を有し、当該ケース本体の上部と下部を貫通する複数の貫通パイプ部とを具備し、前記ケース本体は二重構造であり、内側壁部と外側壁部との間に前記冷却手段が充填され、前記冷却手段により、前記複数の貫通パイプ部を冷却し、貫通パイプ部内の冷気を保冷対象の空間内で、前記空間内の底部からは浮かせた状態で対流させて循環させる、ことを特徴とする保冷剤ケース。
【請求項11】
冷却手段を収容するケース本体と、熱伝導性を有し、当該ケース本体の上部と下部を貫通する複数の貫通パイプ部とを具備し、前記ケース本体の内壁はフィルムで覆われ、前記ケース本体の内壁と前記フィルムとの間に冷却手段が充填され、前記冷却手段により、前記複数の貫通パイプ部を冷却し、貫通パイプ部内の冷気を保冷対象の空間内で、前記空間内の底部からは浮かせた状態で対流させて循環させる、ことを特徴とする保冷剤ケース。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明に係る保冷剤ケースは、蓋部と冷却手段を収容する収容ボックスで形成され、前記冷却手段を外気から遮断するとともに、保冷容器の収容物と直接接触するのを防止するケース本体と、熱伝導性を有し、当該ケース本体の上部と下部を貫通する複数の貫通パイプ部とを具備し、前記冷却手段により、前記複数の貫通パイプ部を冷却し、貫通パイプ部内の冷気を保冷対象の空間内で、前記空間内の底部からとは浮かせた状態で対流させて循環させることで、上述した課題を解決した。