(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092180
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
H04N 5/64 20060101AFI20220615BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220615BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
H04N5/64 581P
G09F9/00 351
H04N5/74 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204821
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】317003143
【氏名又は名称】株式会社特殊金属エクセル
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】松村 雄太
(72)【発明者】
【氏名】菅 加奈子
【テーマコード(参考)】
5C058
5G435
【Fターム(参考)】
5C058AB06
5C058EA31
5G435EE14
5G435EE50
(57)【要約】 (修正有)
【課題】巻取り収納状態と、巻き出し自立支持状態とを安定して維持でき、二つの状態を容易に移行可能で、軽量な構造体を提供する。
【解決手段】構造体3は、第1の部材1と、第2の部材2とを組み合わせてなる。第1の部材1は、帯状または板状の薄板で、長手方向に垂直な断面で凸状を呈し、凸状を呈する側が内周側で、長手方向でコイル状に巻きつくように巻き癖をつけてなる。第2の部材2は、帯状または板状の薄板で、長手方向に垂直な断面で凸状を呈する。構造体3は、凸状を呈する側が外側を向き、互いに長手方向全長に亘り接するように組み合わせ、配設される。構造体3は、スクリーンや、フレキシブルディスプレイパネル等の表示装置を、安定して支持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材とを組み合わせてなる構造体であって、
前記第1の部材が帯状または板状の薄板で、長手方向に垂直な断面で凸状を呈し、かつ該凸状を呈する側が内周側で、長手方向でコイル状に巻きつくように予め巻き癖を付けた部材とし、
前記第2の部材が帯状または板状の薄板で、長手方向に垂直な断面で凸状を呈する部材とし、
前記第1の部材と前記第2の部材とを、前記凸状を呈する側が外側を向き、互いに長手方向全長に亘り接するように組み合わせ配設してなる構造を有することを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記第1の部材と前記第2の部材とを組み合わせ配設してなる構造の一部を固定、その他の部分を自由とすることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記第1の部材および前記第2の部材が、降伏強さ600MPa以上を有する材料製であることを特徴とする請求項1または2に記載の構造体。
【請求項4】
前記構造体が、該構造体の駆動手段を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種表示装置等の支持体として好適な、フレキシブル(可とう性)構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プロジェクター等を利用しスクリーン等に投影して、情報の開示や伝達を行うことが行われてきた。その際、スクリーン等の表示装置は設置されたままであったが、近年、デザイン性を損なうなどの観点から、巻き取る、折りたたみなど収納可能なものが利用されるようになってきた。収納されたスクリーン等は、使用時には収納場所から引き出され、固定する必要があり、そのための装置(引出し装置、固定(支持)装置)が付設されていた。例えば、特許文献1には、収納可能な立ち上げスクリーンを備えたプロジェクタ(装置)が提案されている。特許文献1に記載された装置では、スクリーンを立ち上げ固定(支持)し、使用後に収納するための手段として、リンク機構を備えている。
【0003】
また、最近では、大量の情報を処理表示することができるディスプレイが種々開発され、装置の薄型化、軽量化が図られている。とくに、樹脂のような柔軟性のある材料を基板材料として使用し、曲ったままでもディスプレイ性能を維持できる、フレキシブルディスプレイ装置、あるいは巻き取り、巻き出し可能な形状可変型ディスプレイ装置などが注目されている。例えば、特許文献2には、形状可変型ディスプレイ装置が提案されている。特許文献2に記載された形状可変型ディスプレイ装置では、フレキシブルなディスプレイパネルは、使用しないときにはローラに巻き取るようにし、使用するときにはローラから上方に引き上げ、繰り広げるようにする、上昇機構を備えている。上昇機構は、ディスプレイパネルに取り付けられたガイドレールと、ガイドレールを上昇させるように構成された2つのリンクとを有するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05-336479号公報
【特許文献2】特開2017-187778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載された発明では、スクリーンやパネル等の表示装置を巻き取り、上方に巻き出し、支持する手段が複雑となり、しかも、巻取り収納状態と巻き出し支持状態との移行が円滑にできない、中間位置での保持が困難などの問題があった。
【0006】
本発明は、上記したような従来技術の問題に鑑み、例えば、フレキシブルスクリーンや、形状可変型表示装置等の各種表示装置等で利用でき、とくに巻取り収納状態と、巻き出し支持状態と、をそれぞれ安定して維持可能で、かつ上記した、二つの状態の間を容易に移行可能で、軽量でフレキシブルな構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記した目的を達成するため、構造物の好ましい断面形状について、鋭意検討した。その結果、帯状または板状の薄板を素材とし、曲げ等の加工により、長手方向に垂直な断面で、断面が凸状に加工された2つの部材を、凸状を呈する側が外側を向くように、組み合わせた構造体とすると、薄い帯状または板状の部材同士の組合せでも自立する状態が安定して維持できることに思い至った。そしてさらに、一方の部材に、長手方向でコイル状に巻きつくように、巻き癖(形状記憶処理)を施すことにより、より安定に自立した状態を維持できるうえ、構造体としてもコイル状に巻き取ることが容易になり、巻き取り状態で板幅方向に平坦(あるいは平坦に近い)状態となるため小さな体積での収納が可能となり、しかも巻き取ったのちも巻取り状態を安定して維持でき、自立した状態から巻取り収納状態に容易に移行できることを見出した。しかも、巻取り収納状態から自立した状態への移行も容易にできることも知見している。
【0008】
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)第1の部材と第2の部材とを組み合わせてなる構造体であって、前記第1の部材が帯状または板状の薄板で、長手方向に垂直な断面で凸状を呈し、かつ該凸状を呈する側が内周側で、長手方向でコイル状に巻きつくように予め巻き癖を付けた部材とし、一方、前記第2の部材が帯状または板状の薄板で、長手方向に垂直な断面で凸状を呈する部材とし、前記第1の部材と前記第2の部材とを、前記凸状を呈する側が外側を向き、互いに長手方向全長に亘り接するように組み合わせ配設してなる構造を有することを特徴とする構造体。
(2)(1)において、前記第1の部材と前記第2の部材とを組み合わせ配設してなる構造の一部を固定、その他の部分を自由とすることを特徴とする構造体。
(3)(1)または(2)において、前記第1の部材および前記第2の部材が、降伏強さ600MPa以上を有する材料製であることを特徴とする構造体。
(4)(1)ないし(3)において、前記構造体が、該構造体の駆動手段を有することを特徴とする構造体。
(5)(1)において、前記第1の部材に代えて、前記第1の部材を、帯状または板状の薄板で、長手方向に垂直な断面で凸状を呈し、かつ該凸状を呈する側が外周側で、長手方向でコイル状に巻きつくように予め巻き癖をつけた部材とすることを特徴とする構造体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、構造体として、コイル状に巻き取る巻取り収納状態を、小さい体積で安定して維持でき、かつ巻取り収納状態から巻き出して自立した状態を安定して保持でき、しかも自立した状態から巻取り収納状態に容易に移行できるという、格段の効果を奏する。また、本発明によれば、巻取り可能な軟質のスクリーンや、フレキシブルディスプレイパネル、あるいは巻き取り、巻き出し可能な形状可変型ディスプレイパネル等の表示装置を、使用中に安定して支持できるとともに、支持用構造物として軽量で取り扱い容易であるため、携帯可能なスクリーンやパネルの巻取り、巻き出し時に必要な機構として適用可能であるなどの効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明構造体の形状を模式的に示す説明図である。
【
図2】本発明構造体における第1の部材の形状を模式的に示す説明図である。
【
図3】本発明構造体における第2の部材の形状を模式的に示す説明図である。
【
図4】本発明構造体における自立した状態(a)から巻取り収納状態(d)への移行過程を模式的に示す説明図である。
【
図5】本発明構造体における断面形状の好ましい例を模式的に示す説明図である。
【
図6】本発明で使用する素材の好ましい断面形状の例を、模式的に示す説明図である。
【
図7】第1の部材と第2の部材の断面形状が異なる組み合わせの例を模式的に示す説明図である。
【
図8】幅が異なる第1の部材と第2の部材との組み合わせの一例を模式的に示す説明図である。
【
図9】第1の部材の端面の形状を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明構造体は、第1の部材と第2の部材とを組み合わせてなる構造体である。
第1の部材および第2の部材はいずれも、帯状または板状の薄板を素材とし、曲げ等の加工で、長手方向全長あるいは一部を除く全長に亘り、好ましくは幅方向の中央位置を中心に、長手方向に垂直な断面で凸状を呈する部材とする。これにより、部材が自立した状態を維持しやすくすることができる。なお、凸状の程度は、支持する部材の重量、大きさ等の用途に応じて適宜決定すればよく、とくに限定されないが、
図5(a)、(c)のように平坦からの曲げ角αで、1~30°程度とすることが、製造性および形状安定性の観点から好ましい。
図5(b)には、幅方向で複数の曲率で加工された断面形状の一例を示す。凸状の断面形状は、1つの曲率で形成するよりは、全体として丸みをおびるように徐々に曲率を変えた複数の曲率で形成することが好ましい。さらに、形状安定性および巻き取り時の収納性の観点から、
図5(b)に示すように凸状の端部では、中心部形状とは逆の向きの形状としてもよい。
図5(c)には、一つの曲率で、凸状の断面形状を形成した例を示す。なお、凸状を呈する箇所は複数箇所としてもよい。
図5(d)に凸状を呈する箇所が2箇所の例を示す。
【0012】
なお、凸状の断面形状は、圧延材を用いた場合のような単純な矩形断面の素材を用いて形成することが好ましいが、
図6に示すように、断面が凸状に加工された素材を用いて、形成してもよい。この場合の素材の凸状は、例えば、
図6(a)に示すような、板幅方向の中央部が高くなる連続的な断面形状としても、
図6(b)に示すような、中央部のみが高くなる不連続な断面としてもよい。
【0013】
また、断面内の厚みの分布は、均一であることが収納性の観点からは好ましいが、必要な強度を得るために一部の板厚を厚く加工したり、あるいは加工により生じる板厚の不均一が残存していても、本発明構造体の機能が損なわれることはない。
【0014】
また、本発明構造体では、第1の部材と第2の部材とを、同一の断面形状とする必要もない。例えば、第1の部材の断面形状を
図5(b)とし、第2の部材の断面形状を
図5(a)として、
図7に示すように、第1の部材と第2の部材とを組み合わせて構造体としてもよい。また、第1の部材の幅B
1と第2の部材の幅B
2とを、同一の幅ではなく、例えば
図8に示すように、異なった幅の部材を用いて組み合わせた構造体としてもよい。また、第1の部材の板厚t
1と第2の部材の板厚t
2とを、同一の板厚ではなく、異なった板厚の部材を用いてもよい。また、さらに第1の部材と第2の部材とを、同種の材料ではなく、異なった材料を用いてもよい。
【0015】
そして、第1の部材にはさらに、凸状を呈する側が内周側で、長手方向でコイル状に巻きつくような、巻き癖をつけておく。第1の部材の形状を、自立した状態で模式的に
図2(a)に示す。
図2(b)は、巻き癖を発現させて、長手方向でコイル状に巻きつかせた状態を模式的に示す。なお、巻き癖は円形状に限定することはなく、楕円状としてもよい。
【0016】
第1の部材に、好ましくは幅方向の中央位置を中心に、長手方向に垂直な断面で凸状を呈するように加工し、さらに該凸状を呈する側が内周側となるように巻き癖をつけることにより、第1の部材の端部で、自立状態を容易に維持可能な形状を呈するようになる。その形状としては、第1の部材の端面が、幅方向中央部で巻き癖の内周側に凸状を呈し、かつ、幅方向の両端部側が、巻き癖の内周側に倒れ込む形状を呈するようになる。この状況を
図9に示す。このような端面形状となることにより、第1の部材の自立状態が保持されるものと考えられる。
【0017】
なお、第1の部材につける巻き癖は、
図2(c)に示すように、凸状を呈する側が外周側で、長手方向でコイル状に巻きつくような巻き癖としてもよい。このような巻き癖をつけても上記した効果と同じ効果が期待できる。
【0018】
もう一方の部材である第2の部材の形状を、
図3に模式的に示す。第2の部材では、長手方向全長あるいは一部を除く全長に亘り、好ましくは幅方向の中央位置を中心に、長手方向に垂直な断面で凸状を呈する部材とする。これにより、部材が自立した状態を維持しやすくすることができる。また、大きな負荷にも耐えられるようになる。
【0019】
本発明構造体3は、上記した形状の第1の部材1と第2の部材2とを組み合わせた構造とする。本発明構造体3は、第1の部材1と第2の部材2とを、凸状を呈する側が外側を向き、互いに長手方向全長に亘り接するように、配設してなる構造を有する。その構造の概略を、模式的に、
図1(a)に、自立した状態で示す。なお、本発明構造体3では、第1の部材1と第2の部材2を組み合せた一部または一端は、部材同士(端部同士)を拘束冶具10で拘束し固定(固定端)とすることが好ましい。一方、その他の部分または他端は、自由(自由端)とし、巻き取り巻き出し自在に部材同士(端部同士)が密着するように拘束冶具10’で拘束することが好ましい。拘束冶具10としては、かしめ、リベットあるいはスポット溶接とすることが好ましい。また、拘束冶具10’は、ガイドとすることが好ましい。また、
図1には図示していないが、構造物3の外周を覆うように、シリコンゴム、シリコン樹脂あるいは各種樹脂の軟質のカバーで覆っても何ら問題はない。
【0020】
本発明構造体3は、自立した状態では、長手方向に荷重を負荷しても、安定してその状態を保持できるうえ、板厚方向や板幅方向の荷重に対しても、本発明の構造を有しない構造体に比べ、十分高い荷重に耐えることができる。なお、保持可能な荷重は、部材の板厚、幅、凸部の程度等を変更して、断面形状を変更すれば、容易に、変更することができる。また、構造体としてさらに高い強度が必要な場合には、第1の部材と第2の部材を複数枚組み合わせたり、あるいはこれらの間に強度を補完するための補強材を配置してもよい。
【0021】
加工の容易性、取扱いの容易性という観点からは、使用する部材の板厚は0.5mm以下程度とすることが好ましい。なお、部材の板厚、幅、長さは、適用対象の大きさ等に応じて適宜、決定すればよい。
【0022】
また、部材は、高い強度と収納性を両立させるという観点から、降伏強さYS:600MPa以上、好ましくは1000MPa以上2500MPa以下、さらに好ましくは、降伏強さYS:1650MPa以上2500MPa以下を有する材料製とすることが好ましい。このような材料としては、例えば、JIS規格(JIS G 4305)に規定されるSUS301、SUS304、SUS630、SUS420J2等のばね用ステンレス鋼、マルエージング鋼等が例示できる。なお、上記した範囲の降伏強さを有するCo合金、Ti合金、Cu合金等も利用できる。また、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の各種強化樹脂を利用してもよい。
【0023】
本発明構造体3は、自立した状態で、図示しない手段で、長手方向に応力を作用させると、容易に(わずかな応力で)曲がり、コイル状に巻き取ることが可能となる。この状況を
図4(a)~(d)に示す。巻き取ったのちは、図示しない手段で、わずかな応力を作用させるだけで、巻取り収納状態を安定して維持することができる。さらに、巻き取り収納状態から、自立した状態への、逆方向の移行も容易である。少なくとも、巻取り収納状態を維持するための応力を開放するだけで、逆方向の移行が可能となる。なお、各状態間の移行のための駆動手段を別途付設してもよいことは言うまでもない。駆動手段としては、電気系、油圧系、空圧系など、とくに限定されない。
【0024】
つぎに、第1の部材、第2の部材の好ましい製造方法について説明する。
自立した状態で、所望の高さを有する構造体となるように、長手方向に対応した長さ以上の長さを有する薄板を素材として用意する。なお、コイル状の素材を用いてもよい。そして、特定の幅とR部を有するロールで、好ましくはロールの幅方向の中央位置を素材の長手方向に沿わせて全長に亘り押圧する加工を必要に応じて繰返し施す。なお、この加工に際しては、作業性の観点からは、幅の広いロールを用いて幅方向外側部の加工を先に行い、その後より幅の狭いロールを用いて幅方向内側の加工を順次行う繰り返し加工を行うことが好ましい。具体的には、幅およびR部の異なる形状のロールを用いた加工を繰り返すことが好ましい。これにより、第1および第2の部材は、長手方向に直交する断面で、凸状を呈するようになる。なお、極端な凸形状とすると、長手方向に反りを生じるという問題が生じる場合がある。凸状以外に、V状、C状、あるいは凸状と凹状を組み合せた形状としてもよい。
【0025】
そして、さらに、第1の部材では、Rの異なるロールを用いて繰返し加工するロール加工施すか、あるいは、形成した凸状を呈する箇所を押し戻す(曲げ戻す)しごき加工を施す。しごき加工は必要に応じて繰返し施してもよい。このロール加工またはしごき加工により、長手方向にコイル状に巻きつくように巻き癖をつけることができる。なお、巻き癖は、凸状を呈する側が内周側となるようにして、行うものとする。また、巻き癖の程度は、巻取り状態での内径が小さいほうが収納性の観点から好ましいが、極端に小さい内径となる巻き癖をつけると、自立時に逆方向への反りが発生するという問題が生じるため、自立した状態で構造体として必要な形状を維持できる範囲内に留める。なお、巻き癖をつけるロール加工と、断面が凸状となるロール加工とは、どちらを先に行っても、なんら問題はない。
【0026】
また、第1の部材に施す巻き癖は、予め巻いた状態にした部材を型に入れて、加熱し、急冷する熱処理により、付加してもよい。あるいは、温間プレス、熱間プレス等により巻き癖を残した状態にして、急冷処理を施す方法(加工熱処理)で付加してもよい。
【0027】
なお、本発明は、上記した例のみに限定されないことは言うまでもない。
【実施例0028】
(実施例1)
600~2300MPaの範囲の降伏強さを有する、SUS301製薄板を素材とした。なお、一部の素材は1000~1500MPaの範囲の降伏強さを有するSUS420J2製薄板を用いた。
【0029】
素材は、板厚:0.03mm、0.1mm、0.2mm、0.5mmの4種とした。第1の部材1用および第2の部材2用として、表1に示す板厚と幅の組み合わせとなるように、調整した素材を、それぞれ用意した(長さは2500mm)。そして、第1の部材1用および第2の部材2用の素材について、特定の幅とR部を有するロールで、ロールの幅方向の中央位置を素材の長手方向に沿わせて全長に亘り押圧するロール加工を繰返し実施した。これにより、長手方向に直交する断面で、
図5(a)に示す凸状を呈するようにした。なお、凸状の深さhは、幅Bの1/20~1/3程度となるように、1~25mmの範囲に適宜調整した。
【0030】
そしてさらに、第1の部材1について、凸状を呈する側が内周側となるようにして、しごき加工を施し、長手方向にコイル状に巻きつくように巻き癖をつけた。なお、巻き癖の程度は、巻き取り状態での内径が10~150mm程度となるように調整した。
【0031】
SUS420J2製薄板については、ロール加工やしごき加工の前又は後に、焼入れ及び焼戻しを施し、材料特性を調整した。
【0032】
得られた第1の部材1および第2の部材2を、
図1に示すように、凸状側が外側となるように組み合わせて配設し、構造体3を作製した。なお、構造体3の一端はリベットで固定した。
【0033】
得られた構造体3はいずれも、自立した状態を安定して維持でき、しかも自立した状態で、長手方向に応力を作用させると、わずかな応力で曲がり、コイル状に巻き取り、巻き取り収納状態とすることができた。また、さらに、巻き取り収納状態から、自立した状態への、逆方向の移行も容易であった。
【0034】
【0035】
(実施例2)
600~2300MPaの範囲の降伏強さを有する、SUS301製薄板、および、1000~1500MPaの範囲の降伏強さを有するSUS420J2製薄板、の2種を素材として用意した。また、素材は、板厚:0.03mm、0.1mm、0.2mm、0.3mmの4種とした。なお、表2に示す板厚と幅の組み合わせとなるように、幅を調整した素材を、それぞれ用意した(長さは2500mm)。この実施例では、第1の部材1および第2の部材とで材質が異なるように、一方がSUS301製薄板であれば、他方をSUS420J2製薄板とした。
【0036】
そして、第1の部材1用および第2の部材用の素材に、特定の幅とR部を有するロールで、ロールの幅方向の中央位置を素材の長手方向に沿わせて全長に亘り押圧するロール加工を繰返し実施した。これにより、長手方向に直交する断面で、
図5(a)に示す凸状を呈するようにした。なお、凸状の深さhは、幅Bの1/20~1/3程度となるように、1~25mmの範囲に適宜調整した。
【0037】
そしてさらに、第1の部材1について、凸状を呈する側が内周側となるようにして、しごき加工を施し、長手方向にコイル状に巻きつくように巻き癖をつけた。なお、巻き癖の程度は、巻き取り状態での内径が10~150mm程度となるように調整した。
【0038】
なお、SUS420J2製薄板については、ロール加工やしごき加工の前又は後に、焼入れ及び焼戻しを施し、材料特性を調整した。
【0039】
得られた第1の部材1および第2の部材2を、
図1に示すように、凸状側が外側となるように組み合わせて配設し、構造体3を作製した。なお、構造体3の一端はリベットで固定した。
【0040】
得られた構造体3はいずれも、自立した状態を安定して維持でき、しかも自立した状態で、長手方向に応力を作用させると、わずかな応力で曲がり、コイル状に巻き取り、巻き取り収納状態とすることができた。また、さらに、巻き取り収納状態から、自立した状態への、逆方向の移行も容易であった。本発明構造体の性能に対し、素材の性質、および板厚と幅の組み合わせの影響は少ないといえる。
【0041】
【0042】
(実施例3)
600~2300MPaの範囲の降伏強さを有する、SUS301製薄板を素材とした。素材は、板厚:0.03mm、0.05mm、0.25mm、0.50mmの4種とした。第1の部材1用および第2の部材2用とて、表3に示す板厚と幅の組み合わせとなるように、幅を調整した素材を、それぞれ用意した(長さは2500mm)。そして、第1の部材1用および第2の部材用の素材について、特定の幅とR部を有するロールで、ロールの幅方向の中央位置を素材の長手方向に沿わせて全長に亘り押圧するロール加工を繰返し実施した。これにより、長手方向に直交する断面で、
図5(a)に示す凸状を呈するようにした。なお、凸状の深さhは、幅Bの1/20~1/3程度となるように、1~25mmの範囲に適宜調整した。
【0043】
そしてさらに、第1の部材1について、凸状を呈する側が内周側となるようにして、しごき加工を施し、長手方向にコイル状に巻きつくように巻き癖をつけた。なお、巻き癖の程度は、巻き取り状態での内径が10~150mm程度となるように調整した。
【0044】
得られた第1の部材1および第2の部材2を、
図1に示すように、凸状側が外側となるように組み合わせて配設し、構造体3を作製した。なお、構造体3の一端はリベットで固定した。第1の部材1と第2の部材2で板厚または幅が異なった部材を組み合せた。
【0045】
得られた構造体3はいずれも、自立した状態を安定して維持でき、しかも自立した状態で、長手方向に応力を作用させると、わずかな応力で曲がり、コイル状に巻き取り、巻き取り収納状態とすることができた。また、さらに、巻き取り収納状態から、自立した状態への、逆方向の移行も容易であった。
【0046】
【0047】
(実施例4)
600~2300MPaの範囲の降伏強さを有する、SUS301製薄板、および、1000~1500MPaの範囲の降伏強さを有するSUS420J2製薄板、の2種を素材として用意した。また、素材は、板厚:0.03mm、0.05mm、0.25mm、0.50mmの4種とした。なお、表4に示す板厚と幅の組み合わせとなるように、幅を調整した素材を、それぞれ用意した(長さは2500mm)。この実施例では、第1の部材1および第2の部材2とで材質が異なるように、一方がSUS301製薄板であれば、他方をSUS420J2製薄板とした。
【0048】
そして、第1の部材1用および第2の部材2用の素材に、特定の幅とR部を有するロールで、ロールの幅方向の中央位置を素材の長手方向に沿わせて全長に亘り押圧するロール加工を繰返し実施した。これにより、長手方向に直交する断面で、
図5(a)に示す凸状を呈するようにした。なお、凸状の深さhは、幅Bの1/20~1/3程度となるように、1~25mmの範囲に適宜調整した。
【0049】
そしてさらに、第1の部材1について、凸状を呈する側が内周側となるようにして、しごき加工を施し、長手方向にコイル状に巻きつくように巻き癖をつけた。なお、巻き癖の程度は、巻き取り状態での内径が10~150mm程度となるように調整した。
【0050】
なお、SUS420J2製薄板については、ロール加工やしごき加工の前または後に、焼入れおよび焼戻しを施し、材料特性を調整した。
【0051】
得られた第1の部材1および第2の部材2を、
図1に示すように、凸状側が外側となるように組み合わせて配設し、構造体3を作製した。なお、構造体3の一端はリベットで固定した。
【0052】
得られた構造体3はいずれも、自立した状態を安定して維持でき、しかも自立した状態で、長手方向に応力を作用させると、わずかな応力で曲がり、コイル状に巻き取り、巻き取り収納状態とすることができた。また、さらに、巻き取り収納状態から、自立した状態への、逆方向の移行も容易であった。
【0053】