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特開2022-92192山留壁構築方法およびソイルセメント連続壁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092192
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】山留壁構築方法およびソイルセメント連続壁
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/20 20060101AFI20220615BHJP
   E02D 13/02 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
E02D5/20 101
E02D13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204845
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】青木 友和
(72)【発明者】
【氏名】上田 大裕
【テーマコード(参考)】
2D049
2D050
【Fターム(参考)】
2D049EA02
2D049GD03
2D049GE03
2D050DB05
2D050EE07
(57)【要約】
【課題】簡易かつ安価に、必要な位置のみに芯材が建て込まれたソイルセメント連続壁を形成することを可能とした山留壁構築方法およびソイルセメント連続壁を提案する。
【解決手段】地盤を削孔して掘削孔4を形成する削孔工程と、掘削孔4内に芯材3を建て込む芯材建込工程とを備える山留壁構築方法である。削孔工程では、掘削孔4内において原位置土とセメントスラリーとを混錬してソイルセメント6を生成する。芯材建込工程では、芯材3の上端部を保持するヤットコ7を利用して芯材3を所定の深さ以深に挿入する挿入作業と、地上に設置された架台で芯材3を吊持する受代え作業と、芯材3を吊持した状態でヤットコ7を引き抜く引抜作業とを行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を削孔して掘削孔を形成する削孔工程と、
前記掘削孔内に芯材を建て込む芯材建込工程と、を備える山留壁構築方法であって、
前記削孔工程では、前記掘削孔内において原位置土とセメントスラリーとを混錬してソイルセメントを生成し、
前記芯材建込工程では、前記芯材の上端部を保持するヤットコを利用して前記芯材を所定の深さ以深に挿入する挿入作業と、地上に設置された架台で前記芯材を吊持する受け替え作業と、前記芯材を吊持した状態で前記ヤットコを引き抜く引抜作業と、を行うことを特徴とする、山留壁構築方法。
【請求項2】
前記ソイルセメントを養生する養生工程をさらに備えており、
前記養生工程では、前記架台に保持された吊材により前記芯材を吊持した状態で養生した後、前記ソイルセメントに所定の強度が発現したら、前記吊材を撤去することを特徴とする、請求項1に記載の山留壁構築方法。
【請求項3】
前記芯材と前記ヤットコは、油圧ユニットに接続されたジョイントピンを介して連結されており、
前記引抜作業では、前記油圧ユニットを操作することにより、前記ジョイントピンによる連結を解除してから、前記ヤットコを引き抜くことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の山留壁構築方法。
【請求項4】
既存地下壁に沿って構築されたソイルセメント連続壁であって、
前記既存地下壁の下部から前記既存地下壁の下端よりも深い位置のみに芯材が配設されていることを特徴とするソイルセメント連続壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山留壁構築方法およびソイルセメント連続壁に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の基礎や地下部分を構築する際に、建物の周辺地盤に山留壁を構築する場合がある。このような山留壁としては、原位置土とセメント系固化材とを混錬してソイルセメントを生成するソイルセメント連続壁(SMW工法)が広く採用されている(例えば、特許文献1参照)。
ソイルセメント連続壁では、芯材が略全高にわたって配設されているのが一般的である。一方、構造物の施工に支障になる場合や、構造物の施工後の外構工事や配管工事等に支障になる場合には、山留壁の不要な部分を撤去する場合がある。
ソイルセメント連続壁を撤去する場合には、芯材に付着したソイルセメントを除去した後、芯材を切断する必要があり、その作業に手間がかかる。また、撤去したソイルセメントの破片や芯材は産業廃棄物として処理するため、費用が嵩むとともに環境負荷低減化の妨げとなる。
そのため、特許文献2には、残置する芯材の上部に芯材の外径よりも大きな内径を有した鋼筒を被せた状態で山留壁を構築し、山留壁の内側に構造物を施工した後、鋼筒を引き抜くことで、山留壁の上部分を撤去する施工方法が開示されている。
また、特許文献3には、芯材をヤットコとともに掘削孔内に建て込んで山留壁を形成し、この山留壁の内側を掘削した後、ヤットコを回収する施工方法が開示されている。
特許文献2および特許文献3の施工方法では、芯材とともに鋼筒またはヤットコを掘削孔内に建て込んで山留壁を形成するため、芯材と同数の鋼筒またはヤットコが必要になり、コスト削減の妨げとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-151450号公報
【特許文献2】特開2013-227737号公報
【特許文献3】実開平8-416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、簡易かつ安価に、必要な位置のみに芯材が建て込まれたソイルセメント連続壁を形成することを可能とした山留壁構築方法およびソイルセメント連続壁を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の山留壁構築方法は、地盤を削孔して掘削孔を形成する削孔工程と、前記掘削孔内に芯材を建て込む芯材建込工程とを備えており、前記削孔工程では前記掘削孔内において原位置土とセメントスラリーとを混錬してソイルセメントを生成し、前記芯材建込工程では前記芯材の上端部を保持するヤットコを利用して前記芯材を所定の深さ以深に挿入する挿入作業と、地上に設置された架台で前記芯材を吊持する受け替え作業と、前記芯材を吊持した状態で前記ヤットコのみを引き抜く引抜作業とを行う。
かかる山留壁構築方法では、ヤットコを利用することで、芯材を所定の位置に配置する。また、ヤットコを引き抜くことで、上部に芯材が存在しないソイルセメント連続壁を構築できる。そのため、芯材を撤去するために要する手間や費用を削減できる。また、地上に設置された架台で芯材を吊持した状態でヤットコを引き抜くため、セメントスラリーが硬化する前にヤットコを抜き出すことができる。つまり、ヤットコを他の芯材の建込み作業に速やかに転用できるため、費用の低減化を図ることができる。
前記架台に保持された吊材により前記芯材を吊持した状態で養生した後、前記ソイルセメントに所定の強度が発現したら、前記吊材を撤去する養生工程をさらに備えていてもよい。このようにすると、所定の深さ位置に芯材が配設されたソイルセメント連続壁を構築できる。また、吊材を撤去するので、吊材がその後の施工の妨げになることもない。
また、油圧ユニットに接続されたジョイントピンを介して前記芯材と前記ヤットコを連結すれば、前記引抜作業において、前記油圧ユニットを操作することにより、前記ジョイントピンによる連結を解除してから前記ヤットコを引き抜くことできる。このようにすると、簡易な機構でありながらも、ソイルセメント内において芯材とヤットコとの接続を解除することができる。
【0006】
また、本発明のソイルセメント連続壁は、土留壁や既存構造物の外壁などの既存地下壁に沿って構築されたものであり、前記既存地下壁の下部から前記既存地下壁の下端よりも深い位置のみに芯材が配設されている。
かかるソイルセメント連続壁によれば、既存地下壁の下部以深にソイルセメント連続壁の芯材が配置されるので、既存地下壁の内側に構造物を構築する場合や、構造物への配管接続作業を行う場合に、ソイルセメント連続壁の芯材が作業の妨げになり難い。また、ソイルセメント連続壁は、既存地下壁よりも深く形成されているため、新設する構造物を既存地下壁よりも深い地下まで構築できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の山留壁構築方法およびソイルセメント連続壁によれば、簡易かつ安価に、必要な位置のみに芯材が建て込まれたソイルセメント連続壁を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る山留壁の断面図である。
図2】本実施形態に係る山留壁構築方法のフローチャートである。
図3】山留壁構築方法の施工状況を示す断面図であって、(a)は削孔工程、(b)は芯材建込工程の挿入作業、(c)は芯材建込工程の引抜作業である。
図4】ヤットコを示す図であって、(a)は正面図、(b)は下端から望む平面図である。
図5】芯材とヤットコの接合部を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は断面図である。
図6】受代え作業の施工状況を示す正面図であって、(a)は受け替え前、(b)は受け替え後である。
図7】本施工サイクルの掘削孔と次施工サイクルの掘削孔を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、既存建物を撤去した跡地に、既存建物の地下壁(既存地下壁1)の一部を利用して、既存建物(既存地下壁1)よりも深い地下部分を有する新設建物Sを構築する場合について説明する。新設建物Sは、既存地下壁1の内側に沿って山留壁2を構築した後、山留壁2の内側部分を掘削した領域に形成する。山留壁2は、既存地下壁1に沿って構築されたソイルセメント連続壁である。図1に山留壁2を示す。図1に示すように、山留壁2は、地表面から既存地下壁1の下端よりも深い位置まで形成されており、既存地下壁1の下部から既存地下壁1の下端11よりも深く、かつ、新設建物Sの底面Sbよりも深い位置に到達する範囲のみにH形鋼からなる芯材3が配設されている。また、本実施形態の山留壁2は、下端部(例えば下端から3m程度の範囲)にも芯材3が配設されていない区間を有している。
【0010】
次に、本実施形態の山留壁構築方法を示す。図2に本実施形態の山留壁構築方法のフローチャートを示す。本実施形態の山留壁構築方法は、図2に示すように、削孔工程S1と、芯材建込工程S2と、養生工程S3とを備えている。
削孔工程S1では、地盤を削孔して掘削孔4を形成する。図3(a)に削孔工程S1の施工状況を示す。図3(a)に示すように、掘削孔4は、既存地下壁1の内面に沿って、孔底41が既存地下壁1の下端よりも深い位置に到達するように削孔する。本実施形態では、3本の攪拌軸51(図面では1本のみ表示)が並設された多軸混錬オーガー機5を利用して削孔を行う。削孔工程S1では、掘削孔4の掘削に伴い、攪拌軸51から排出されたセメントスラリーを掘削孔4内において原位置土と混錬してソイルセメント6を生成する。なお、セメントスラリーの注入(掘削孔4の削孔)に伴って掘削孔4から排出される残土は搬出する。
【0011】
芯材建込工程S2では、掘削孔4内に芯材3を建て込む。図2に示すように、芯材建込工程S2では、挿入作業S21、受け替え作業S22および引抜作業S23を行うことで、芯材3を所定の位置(深さ位置)に建て込む。図3(b)に芯材建込工程S2の概要を示す。
挿入作業S21では、図3(b)に示すように、芯材3の上端部を保持するヤットコ7を利用して芯材3を所定の深さ位置に挿入する。まず、芯材3を掘削孔4内に挿入する。芯材3の頭部のみが掘削孔4から突出する位置まで芯材3を挿入したら、芯材3の頭部にヤットコ7を連結する(図5参照)。その後、ヤットコ7を介して、芯材3を所定の深さまで下降させる。
ヤットコ7は、芯材3を保持した状態で掘削孔4内に挿入されて、芯材3を掘削孔内の所定の深さ位置に誘導する。
【0012】
図4にヤットコ7を示す。図4に示すように、ヤットコ7は、H形鋼からなる本体部71と、本体部71のウェブ下端部から下方に突設されて芯材3のウェブに添接される一対の鋼材(例えば溝形鋼)からなる挟持部72,72と、本体部71の両フランジ下端部から下方に突設されて芯材3のフランジ外面に添接されるガイド材73とを備えている。本実施形態の本体部71は、芯材3を構成するH形鋼と同じ断面のH形鋼により構成する。また、本実施形態の挟持部72は、本体部71にボルト接合されている。また、本実施形態のガイド材73は、本体部71のフランジに溶接されている。挟持部72には、本体部71からの突出部分に、芯材3との接合に使用するジョイントピンを挿通するためのピン挿通孔74が形成されている。挟持部72,72のうち、本体部71の下端から突出した部分は、芯材3のウェブを挿入可能な隙間をあけて対向している。また、本体部71の下端から突出した部分における挟持部72とガイド材73との間には、芯材3のフランジを挿入可能な隙間が形成されている。
【0013】
図5に芯材3とヤットコ7との接合部を示す。本実施形態では、芯材3として、H形鋼を使用する。図5(a)~(c)に示すように、芯材3は、ウェブをヤットコ7の挟持部72同士の間に挿入し、かつ、フランジを挟持部72とガイド材73との間に挿入した状態で、ヤットコ7に連結されている。すなわち、芯材3は、挟持部72同士の間およびガイド材73同士の間に挿入されることで、ヤットコ7との軸心が一致または略一致するように誘導される。芯材3のウェブには、挟持部72のピン挿通孔74に対応する位置にピン挿通孔31が形成されている。芯材3とヤットコ7は、ピン挿通孔31、74を挿通したジョイントピン75を介して連結されている。ジョイントピン75は、ジョイントピン75のピン挿通孔74への挿入または抜き出しを制御する油圧ユニット76に接続されている。
【0014】
図5(a)に示すように、芯材3には、予め吊材8が接続されている。吊材8は、先端にネジ加工が施された鉄筋またはネジ鉄筋からなり、芯材3の上部に固定された長ナット32に螺合することにより芯材3に接続されている。吊材8は、芯材3を所定の位置に配設した際に、上端部が掘削孔4から突出する長さを有している。芯材3を掘削孔4に挿入する際には、吊材8はヤットコ7のフランジとウェブとの角部に沿って延設されている。図5(b)に示すように、ヤットコ7の本体部71は、フランジの一部を切り欠くことにより形成された凹部77を備えている。凹部77は、吊材8を回転させて長ナット32に螺合する際に、工具や作業員の腕などがフランジに接触することを防止するための切欠き部分である。本実施形態では、ヤットコ7を側面視したときに、凹部77を通じて吊り材8を視認可能である。
【0015】
受け替え作業S22では、地上に設置された架台9で芯材3を吊持する。図6に受け替え作業S22の施工状況を示す。図6(a)に示すように、掘削孔4の上方の地上部には、予め架台9が形成されている。架台9は、鋼材(例えば、H形鋼)を組み合わせることにより形成されている。受け替え作業S22では、図6(b)に示すように、架台9に設けた受材91に吊材8を係止することにより芯材3の荷重をヤットコ7から架台9に受け替える。
芯材3を架台9に係止させたら、次工区(隣接する掘削孔4)の削孔(削孔工程S1)を開始する。なお、当該工区がその日の最終工区の場合には、次工区の削孔は行なわない。図7に本工区の掘削孔4と次工区(次サイクル)の掘削孔4を示す。図7に示すように、隣り合う工区の掘削孔4同士は、部分的に重なり合っている。なお、図7では、受材91を省略している。
【0016】
引抜作業S23では、図3(c)に示すように、芯材3を吊持した状態(芯材3を受材91に係止させた状態)でヤットコ7のみを引き抜く。ヤットコ7の引き抜きは、隣接する掘削孔4の削孔が完了した後に行う(図7参照)。なお、当該工区がその日の最終工区の場合には、吊材8を架台9に係止させた段階でヤットコ7を掘削孔4から引き抜く。
引抜作業S23では、油圧ユニット76を操作することにより、ジョイントピン75による連結を解除してから(芯材3とヤットコ7の接続を解除してから)、揚重機Mを利用してヤットコ7を引き上げる。
【0017】
養生工程S3では、ソイルセメント6を養生する。
養生工程S3では、図6(b)に示すように、受材91に吊材8に係止することで、芯材3を吊持した状態でソイルセメント6を養生する。養生によりソイルセメント6に所定の強度が発現したら、吊材8を撤去する(吊材8を回転させて長ナット32から外し、掘削孔4から引き抜く)。
【0018】
所定の範囲に山留壁2を構築したら、既存地下壁1および山留壁2の内側部分を掘削して、新設建物Sの施工を行う(図1参照)。このとき、芯材3よりも浅い部分においては、既存地下壁1に設けられたブラケット12に梁Saを取り付ける。また、芯材3が配設された深さ位置における新設建物Sの地下部分では、山留壁2に設けられた(芯材3に固定された)ブラケット21に梁Saを接続する。
【0019】
本実施形態の山留壁構築方法によれば、山留壁2(ソイルセメント連続壁)の芯材3が既存地下壁1の下部以深に配置されるので、既存地下壁1の内側に新設建物Sを構築する場合や、新設建物Sへの配管接続作業を行う場合に、山留壁2の芯材3が作業の妨げになり難い。また、山留壁2は、既存地下壁1よりも深く形成されているため、新設建物を既存地下壁1よりも深い地下まで構築できる。
また、ヤットコ7を利用して芯材3を所定の位置(深さおよび平面位置)に配置でき、ヤットコ7を引き抜くことで、上部に芯材3が存在しないソイルセメント連続壁(山留壁2)を構築できる。そのため、山留壁2を部分的に撤去するために要する手間や費用を削減できる。
【0020】
また、ヤットコ7は、油圧ユニット76に接続されたジョイントピン75を介して芯材3と連結されているため、芯材3とヤットコ7との連結を容易に解除できる。そのため、簡易な機構でありながらも、ソイルセメント6内において芯材3とヤットコ7との接続を解除することができ、したがって、ヤットコ7の引抜作業も容易である。
ヤットコ7には凹部77が形成されているため、芯材3に吊材8を設置する際に、ヤットコ7のフランジが邪魔になることがなく、作業性に優れている。
ヤットコ7と芯材3の連結部においては、芯材3のウェブがヤットコ7の挟持部72,72の間に挿入され、芯材3のフランジがヤットコ7の挟持部72とガイド材73に挿入されるため、ガタツキを極力抑えた状態で芯材3とヤットコ7とが連結される。したがって、掘削孔4に芯材3を挿入する際に、芯材3を精度よく配設することができる。
【0021】
また、地上に設置された架台9で吊材8を介して芯材3を吊持した状態でヤットコ7を引き抜くため、セメントスラリーが硬化する前にヤットコ7を抜き出すことができる。つまり、ヤットコ7を他の芯材3の建込み作業に速やかに転用できるため、費用の低減化を図ることができる。また、吊材8として鉄筋を使用して、芯材3を支持しているため、ヤットコ7を引き抜く際や引き抜いた後の振動等によって芯材3の位置がずれることを防止できる。
また、吊材8は、ソイルセメント6の養生後に撤去するため、新設建物施工時に山留壁2の不要な部分を撤去する際に吊材8が妨げになることがない。
【0022】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限らず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、芯材3とヤットコ7との連結をジョイントピン75により行う場合について説明したが、芯材3とヤットコ7との連結方法は限定されるものではなく、例えば、ジョイントピン75以外の治具を用いてもよいし、把持手段などを用いてもよい。
また、前記実施形態では、ジョイントピン75を油圧ユニット76により制御する場合について説明したが、ジョイントピン75の制御手段は限定されるものではなく、例えば、空気圧ユニット、磁力、電気的制御手段等を用いてもよい。
前記実施形態では、山留壁2の芯材3を既存地下壁の下部よりも深い位置に配設するものとしたが、芯材3を配設する深さ位置は限定されるものではなく、例えば、既存地下壁1の中間部よりも深い位置であってもよい。
前記実施形態では、既存地下壁1を利用して新設建物Sを施工する場合について説明したが、既存地下壁1は必ずしも新設建物Sの一部に使用する必要はない。
【符号の説明】
【0023】
1 既存地下壁
2 山留壁(ソイルセメント連続壁)
3 芯材
31 ピン挿通孔
32 長ナット
4 掘削孔
5 多軸混錬オーガー機
51 攪拌軸
6 ソイルセメント
7 ヤットコ
71 本体部
72 挟持部
73 ガイド材
74 ピン挿通孔
75 ジョイントピン
76 油圧ユニット
77 凹部
8 吊材
9 架台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7