(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092197
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】ゴム部材の製造装置および方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/06 20060101AFI20220615BHJP
B29C 48/34 20190101ALI20220615BHJP
B29C 48/395 20190101ALI20220615BHJP
【FI】
B29D30/06
B29C48/34
B29C48/395
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204856
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】飯田 英一
【テーマコード(参考)】
4F207
4F215
【Fターム(参考)】
4F207AA45
4F207AD24
4F207AG02
4F207AG05
4F207AJ08
4F207KA01
4F207KA17
4F207KL58
4F215AH20
4F215VA11
4F215VD20
4F215VK34
4F215VL11
4F215VL14
4F215VM06
4F215VP30
(57)【要約】
【課題】押出された未加硫のゴムストリップ材を用いて、より高い精度で所望形状の円環状のゴム部材を製造できるゴム部材の製造装置および方法を提供する。
【解決手段】押出機2の押出口5から未加硫のゴムストリップ材Sを押出し、搬送部9として、押出口5からドラム部18までの搬送経路Cの少なくとも経路始点から所定の長さ領域では、プーリ12、13間に張設された剛体のベルト体10を用いて、ストリップ材Sをベルト体10に当接させた状態でベルト体10を走行させることでストリップ材Sを前方に搬送して、ドラム部18に螺旋状に巻き付けることで円環状に形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫のゴムストリップ材を押し出す押出機と、この押出機の押出口から押出された前記ゴムストリップ材を搬送する搬送部と、この搬送部により搬送された前記ゴムストリップ材が巻き付けられるドラム部とを備えて、前記ゴムストリップ材が前記ドラム部に螺旋状に巻き付けられることで円環状に形成されるゴム部材の製造装置において、
前記搬送部が、プーリ間に張設されている剛体のベルト体を有し、前記ベルト体が前記押出口から前記ドラム部までの搬送経路の少なくとも経路始点から所定の長さ領域に延在して前記ゴムストリップ材が当接した状態で搬送されることを特徴とするゴム部材の製造装置。
【請求項2】
前記ベルト体が、前記経路始点から経路終点となる前記ドラム部の近傍まで連続して延在している請求項1に記載のゴム部材の製造装置。
【請求項3】
前記搬送経路に前記ベルト体が通過するキャリア側フェスツーン部を有し、前記搬送経路以外の領域に前記ベルト体が通過するリターン側フェスツーン部を有する請求項2に記載のゴム部材の製造装置。
【請求項4】
前記押出機がクロスヘッド型である請求項1~3のいずれかに記載のゴム部材の製造装置。
【請求項5】
前記ベルト体の前記ゴムストリップ材との当接面に、前記ゴムストリップ材の表面に凹部を形成する凸状部を有している請求項1~4のいずれかに記載のゴム部材の製造装置。
【請求項6】
前記ドラム部を2つ有し、前記ベルト体を2本有して、それぞれの前記ドラム部の1つに対して、対応するそれぞれの前記ベルト体の1本を用いてそれぞれの前記ゴムストリップ材を搬送し、少なくとも前記経路始点から所定の長さ領域では2本の前記ベルト体を積層して前記搬送経路に延在させて、それぞれの前記ベルト体の他方の前記ベルト体との対向面とは反対面に、搬送される前記ゴムストリップ材が当接した状態になる請求項1~5のいずれかに記載のゴム部材の製造装置。
【請求項7】
押出機の押出口から未加硫のゴムストリップ材を押出して、搬送部により前記ゴムストリップ材をドラム部に搬送し、前記ゴムストリップ材を前記ドラム部に螺旋状に巻き付けることで円環状に形成するゴム部材の製造方法において、
前記搬送部として、前記押出口から前記ドラム部までの搬送経路の少なくとも経路始点から所定の長さ領域では、プーリ間に張設された剛体のベルト体を用いて、前記ゴムストリップ材を前記ベルト体に当接させた状態で搬送することを特徴とするゴム部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム部材の製造装置および方法に関し、さらに詳しくは、押出された未加硫のゴムストリップ材を用いて、より高い精度で所望形状の円環状のゴム部材を製造できるゴム部材の製造装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造工程では、押出機によって押し出された未加硫のゴムストリップ材が使用されている。例えば、ゴムストリップ材を、成形ドラムにドラム幅方向にずらしながら螺旋状に巻き付けることで、筒状のゴム部材を成形することがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ゴムストリップ材は未加硫ゴムで形成されているので変形し易い。押出ヘッドの押出口から成形ドラムまでの搬送経路の長い区間で、ゴムストリップ材を多数のローラに架け渡して搬送すると、その搬送中のローラとローラの間で宙に浮いた状態の区間では自由に収縮して断面形状が変化する。特に、押出し直後のゴムストリップ材の収縮量は大きい。これに伴い、ゴムストリップ材を成形ドラムに螺旋状に巻付けて形成された筒状のゴム部材を、精度よく所望の形状にすることが困難になる。それ故、ゴムストリップ材を用いて、より高い精度で所望形状の円環状のゴム部材を製造するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、押出された未加硫のゴムストリップ材を用いて、より高い精度で所望形状の円環状のゴム部材を製造できるゴム部材の製造装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のゴム部材の製造装置は、未加硫のゴムストリップ材を押し出す押出機と、この押出機の押出口から押出された前記ゴムストリップ材を搬送する搬送部と、この搬送部により搬送された前記ゴムストリップ材が巻き付けられるドラム部とを備えて、前記ゴムストリップ材が前記ドラム部に螺旋状に巻き付けられることで円環状に形成されるゴム部材の製造装置において、前記搬送部が、プーリ間に張設されている剛体のベルト体を有し、前記ベルト体が前記押出口から前記ドラム部までの搬送経路の少なくとも経路始点から所定の長さ領域に延在して前記ゴムストリップ材が当接した状態で搬送されることを特徴とする。
【0007】
本発明のゴム部材の製造方法は、押出機の押出口から未加硫のゴムストリップ材を押出して、搬送部により前記ゴムストリップ材をドラム部に搬送し、前記ゴムストリップ材を前記ドラム部に螺旋状に巻き付けることで円環状に形成するゴム部材の製造方法において、前記搬送部として、前記押出口から前記ドラム部までの搬送経路の少なくとも経路始点から所定の長さ領域では、プーリ間に張設された剛体のベルト体を用いて、前記ゴムストリップ材を前記ベルト体に当接させた状態で搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記押出口から前記ドラム部までの搬送経路の少なくとも経路始点から所定の長さ領域では、プーリ間に張設されている剛体のベルト体を利用してゴムストリップ材を搬送する。この所定の長さ領域では、ゴムストリップ材は押出された直後なので最も収縮し易い状態になる。ところが、ゴムストリップ材は剛体のベルト体に付着した状態になっているので、収縮しようとしてもベルト体によって収縮が規制されて、搬送中には冷却される。その結果、ゴムストリップ材の収縮を抑制しつつドラム部に搬送することができるので、ゴムストリップ材を前記ドラム部に螺旋状に巻き付けることで、より高い精度で所望形状の筒状のゴム部材を製造するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のゴム部材の製造装置の第一実施形態を側面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の製造装置を平面視で例示する説明図である。
【
図3】ヘッドの押出口を正面視で例示する説明図である。
【
図4】
図1のゴムストリップ材をドラム部に巻き付ける工程を例示する説明図である。
【
図5】
図4の工程を平面視で例示する説明図である。
【
図6】ベルト体の変形例を側面視で例示する説明図である。
【
図7】
図6のベルト体を平面視で例示する説明図である。
【
図8】ゴム部材の製造装置の第二実施形態を側面視で押出機の内部を断面にして例示する説明図である。
【
図9】
図8の製造装置を平面視で例示する説明図である。
【
図10】ゴム部材の製造装置の第三実施形態を側面視で押出機の内部を断面にして例示する説明図である。
【
図11】ゴム部材の製造装置の第四実施形態を側面視で例示する説明図である。
【
図12】ゴム部材の製造装置の第五実施形態を側面視で例示する説明図である。
【
図13】ゴム部材の製造装置の第六実施形態を側面視で例示する説明図である。
【
図14】ゴム部材の製造装置の第七実施形態のドラム部の半分を平面視で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のゴム部材の製造装置および方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1~
図3に例示するゴム部材の製造装置1の第一実施形態では、未加硫のゴムストリップ材Sを用いて円環状のゴム部材Rが製造される。尚、この円環状のゴム部材Rとは、円筒状のゴム部材Rも含む概念である。ゴムストリップ材Sの断面形状は特に限定されず、円形状、楕円形状、三角形状、四角形状、その他の多角形状など、所望形状が採用される。ゴムストリップ材Sの幅寸法(直径寸法)は例えば、5mm~30mm程度である。
【0012】
この製造装置1は、ゴムストリップ材Sを押し出す押出機2と、押出機2の押出口5から押し出されたゴムストリップ材Sを搬送する搬送部9と、搬送部9により搬送されたゴムストリップ材Sが巻き付けられるドラム部18と、ドラム部18と搬送部9とを相対的にドラム幅方向にスライドさせるスライド機構19とを備えている。押出機2、搬送部9、ドラム部18およびスライド機構19の動作は制御部20によって制御される。
【0013】
押出機2は、筒状のシリンダ2aと、シリンダ2aの内部に配置されるスクリュー3と、シリンダ2aの先端に設置されるヘッド4とを備えている。ヘッド4の先端には所定形状の押出口5が形成されている。ヘッド4には、後述するベルト体10が挿入される挿入口6が形成されている。押出口5と挿入口6とはヘッド4の対向する面に形成されている。また、ヘッド4の内部には押出流路7が形成されていて、シリンダ2aの内部と押出口5とは押出流路7を通じて連通している。
【0014】
シリンダ2aの内部に投入された未加硫ゴムは、駆動モータによって回転駆動されるスクリュー3によってシリンダ2aの内部で前方に送られつつ粘度を低くされる(可塑化される)。この未加硫ゴムが型付けされて、押出口5から未加硫のゴムストリップ材Sとして押し出される。
【0015】
この製造装置1では、押出機2によるゴムストリップ材Sの押出方向が、シリンダ2aの長手方向と直交している。ヘッド4の内部では、未加硫ゴムの流動方向が交差する方向に変化していて、いわゆるクロスヘッド型の押出機2が用いられている。
【0016】
搬送部9は、プーリ12、12間に張設されている剛体のベルト体10を有している。この剛体とは、ゴムストリップ材Sよりも引張剛性が高くて伸びが小さい材質を意味する。ベルト体10は例えば、各種樹脂や金属等によって形成されていて、補強コードが埋設された加硫ゴムによって形成されることもある。
【0017】
この実施形態では、一方のプーリ12が転写ローラ13の機能を兼ねている。プーリ12、12間に張設されたベルト体10は複数の支持ローラ14bによって支持されている。ベルト体10は、一対の駆動ローラ14aによって挟持されている。転写ローラ13はドラム部18に対向して配置されている。一対の駆動ローラ14aが回転することでベルト体10が駆動されて走行する。プーリ12、駆動ローラ14a、支持ローラ14bの配置などは適宜アレンジできる。また、一方のプーリ12を回転駆動させて駆動ローラ14aとして用いることもできる。
【0018】
ベルト体10は、挿入口6からヘッド4の内部に入って押出口5から出てくる。即ち、ベルト体10は、挿入口6および押出口5を通じてヘッド4を貫通して走行する。ベルト体10のヘッド4での走行方向は、シリンダ2aの延在方向と交差している(直交している)。
図3に例示するように、押出口5にはベルト体10が通過する部分とゴムストリップ材Sが押し出される部分とを有していて、それぞれの部分が隣接している。
図3では、押出口5を通過するベルト体10およびゴムストリップ材Sが二点鎖線で記載されている。
【0019】
この実施形態では、ベルト体10が転写ローラ13を通過する前の位置に、ベルト体10の一方表面に対して近接離反移動するカッター8が備わっている。さらに、ベルト体10が転写ローラ13を通過した後の位置に、ベルト体10に隣接してゴム回収部17が備わっている。このゴム回収部17は回転するローラ構造になっている。カッター8およびゴム回収部17の動作も制御部20により制御される。
【0020】
円筒状に形成されているドラム部18の外周面の周速度は、実質的にベルト体10の走行速度と同速度に制御されている。回転するドラム部18の外周面にゴムストリップ材Sが巻き付けられる。ドラム部18の外周面に既に巻き付けられている別の部材の外周面にゴムストリップ材Sが巻き付けられることもある。したがって、ゴムストリップ材Sは、ドラム部18の外周面に直接または間接的に巻き付けられる。ドラム部18は、いわゆる成形ドラムに限らず、完成タイヤの内周面と同形状の外周面を有する剛性コアの場合もある。
【0021】
ドラム部18にはスライド機構19が接続されている。この実施形態では、油圧シリンダなどのアクチュエータがスライド機構19として用いられている。スライド機構19のシリンダロッドが進退することで、ドラム部18はドラム幅方向にスライドする。ドラム部18が回転中にスライド機構19はドラム部18をスライドさせる。
【0022】
スライド機構19は、搬送部9をドラム幅方向にスライドさせずにドラム部18をスライドさせても、ドラム部18をドラム幅方向にスライドさせずに搬送部9をスライドさせても、双方をスライドさせてもよい。即ち、スライド機構19は、ドラム部18と搬送部9のうち少なくとも一方をドラム幅方向にスライドさせることができる構成にする。尚、搬送部9をスライドさせる場合は、押出機2を搬送部9と同期してスライドさせる。
【0023】
ドラム部18は転写ローラ13に対して、対向している互いの外周面を近接離反させるように移動可能になっている。ドラム部18を近接離反移動させずに転写ローラ13を近接離反移動させても、ドラム部18と転写ローラ13の双方を近接離反移動させてもよい。即ち、ドラム部18と転写ローラ13のうち少なくとも一方を近接離反移動させる構成にする。
【0024】
押出口5から押し出されたゴムストリップSは、ドラム部18の外周面の近傍まで搬送部9によって搬送される。したがって、ゴムストリップ材Sの搬送経路Cは、押出口5からドラム部18の外周面に巻き付けられるまでの領域になる。本発明では、ベルト体10は搬送経路Cの少なくとも経路始点(即ち、押出口5)から所定の長さ領域Lに延在している。所定の長さ領域Lでは、ゴムストリップ材Sがベルト体10に付着した状態で前方のドラム部18に搬送される。
【0025】
この実施形態では、ベルト体10は搬送経路Cの経路始点から経路終点となるドラム部18の近傍まで連続して延在している。したがって、所定の長さ領域Lは、搬送経路Cの全長と同じである。尚、
図2および後述する
図5、
図9では、ベルト体10は主に搬送経路Cの周辺だけの部分が記載されている。
【0026】
次に、本発明によるゴム部材の製造方法の手順の一例を説明する。
【0027】
図4~
図5に例示するように、押出機2の押出口5からゴムストリップ材Sを押出す。また、ヘッド4を貫通させてベルト体10を走行させる。これにより、押出口5からはゴムストリップ材Sがベルト体10の一方表面に付着した状態で出てくる。ゴムストリップ材Sは、自身の粘着性によってベルト体10の一方表面に付着する。ゴムストリップ材Sの押出速度とベルト体10の走行速度は実質的に同速度になるように制御される。
【0028】
このようにして、搬送部9(ベルト体10)によってゴムストリップ材Sをドラム部18に搬送する。この実施形態では、ゴムストリップ材Sはベルト体10の下面に付着して吊り下げられた状態で搬送されるので、ゴムストリップ材Sに埃などの不要物が付着することを防止するには有利になる。
【0029】
ドラム部18は回転しつつ、スライド機構19によってドラム幅方向にスライドされる。ゴムストリップ材Sおよびベルト体10が、ドラム部18と転写ローラ13との間を通過する際に、ゴムストリップ材Sは転写ローラ13によってドラム部18の外周面に向かって押圧されてドラム部18の外周面に転写される。これにより、ゴムストリップ材Sがドラム部18に対してドラム幅方向位置をずらしながら螺旋状に巻き付けられる。
【0030】
ドラム幅方向に隣り合って巻き付けられたゴムストリップ材Sどうしは、自身の粘着性によって接合された状態になる。ドラム部18はドラム幅方向の一方向にスライドするだけでなく、必要に応じてドラム幅方向に往復してスライドしてゴムストリップ材Sが巻き付けられることもある。
【0031】
ドラム部18には所望形状の円環状(円筒状)のゴム部材Rを製造するため、押し出されたゴムストリップ材Sはカッター8によって必要長さに切断される。必要長さのゴムストリップ材Sが巻き付けられると、ドラム部18は転写ローラ13に対して離反移動する。ドラム部18の外周面には円筒状のゴム部材Rが製造される。このような円筒状のゴム部材Rは、例えばタイヤトレッド部を形成する部材となる。
【0032】
押出機2は、品質一定のゴムストリップ材Sを得るために、基本的に一定の押出速度でゴムストリップ材Sを押出し続ける。そのため、ドラム部18の外周面に転写されずに、ドラム部18と転写ローラ13の間をベルト体10とともに通過したゴムストリップ材Sは、ベルト体10の表面に当接して回転するゴム回収部17によって巻き取られて回収される。したがって、ゴム回収部17を通過したベルト体10にはゴムストリップ材Sが残存していない状態になる。
【0033】
本発明では、搬送経路Cの少なくとも経路始点(押出口5)から所定の長さ領域Lでは、ストリップ材Sを剛体のベルト体10に付着させた状態で搬送する。この所定の長さ領域Lでは、ゴムストリップ材Sは押出された直後なので最も収縮し易い状態になる。ところが、ゴムストリップ材Sは剛体のベルト体10に付着しているので、収縮しようとしてもベルト体10の剛性によって収縮が規制され、搬送されながら空冷される。その結果、ゴムストリップ材Sは、この所定の長さ領域Lを通過する間に形状が安定する。
【0034】
このようにゴムストリップ材Sを、収縮を抑制しつつドラム部18に搬送することができる。ゴムストリップ材Sは不要な収縮をしていないので、所望の断面形状が概ね維持される。それ故、ゴムストリップ材Sが螺旋状に巻き付けられて製造された円環状(円筒状)のゴム部材Rを、より高い精度で所望形状に形成するには有利になる。
【0035】
搬送経路Cの経路始点からベルト体10が延在する所定の長さ領域Lは、ゴムストリップ材Sの収縮を抑制して、形状を安定させることができる長さに設定される。例えば搬送経路Cの全長の50%以上、より好ましくは70%以上、或いは、1m以上、より好ましくは1.5m以上に設定される。この実施形態のように、所定の長さ領域Lを実質的に搬送経路Cの全長にすると、ゴムストリップ材Sの収縮を抑制するには最も効果的である。
【0036】
この実施形態では、ベルト体10のゴムストリップ材Sとの当接面は単純な平坦面であるが、
図6~
図7に例示するように、凸状部11を有する表面にすることもできる。この凸状部11はベルト体10の長手方向に等間隔で離間して配置されている。
図6~
図7では、ゴムストリップ材Sが二点鎖線で記載されている。
【0037】
未加硫のゴムストリップ材Sは変形し易いので、ベルト体10に当接したゴムストリップ材Sにはその表面に、凸状部11によって凹部が形成される。凹部が形成されたゴムストリップSがドラム部18に巻き付けられると、この凹部を、積層した別の部材との間でエア抜き溝などとして機能させることができる。凸状部11はベルト体10の幅方向に延在させることに限定されず、長手方向に延在させることもできる。この凸状部11は、四角錐形状であるがこれに限定されず、例えば三角錐形状、四角柱状、円柱状などを採用することもできる。
【0038】
図8~9に例示する製造装置1の第二実施形態は、押出機2のヘッド4のタイプが第一実施形態とは異なっている。その他の構成は第一実施形態と実質的に同じ構成である。このヘッド4には、対向する一対のヘッドローラ4aが備わっている。押出機2によるゴムストリップ材Sの押出方向が、シリンダ2aの長手方向と同じ方向である(平行している)。この押出機2は、シリンダ2aから押出流路7に送られた未加硫ゴムが、ヘッド4では一対のヘッドローラ4aの間を通過して押出口5から押し出されるローラヘッド型になっている。
【0039】
ベルト体10は、ヘッド4の上面に形成されている挿入口6からヘッド4の内部に入って一対のローラヘッド4aの間を通過して押出口5から出てくる。したがって、この実施形態では、ゴムストリップ材Sがベルト体10の一方表面に付着した状態で押出口5から押し出される。このように、本発明ではクロスヘッド型の押出機2とは異なるタイプの押出機2を用いることができる。円環状(円筒状)のゴム部材Rを製造する手順は第一実施形態と同様である。
【0040】
図10に例示する製造装置1の第三実施形態では、搬送部9の大部分が押出機2に対して下側に配置されている。
図8に例示する第二実施形態では、搬送部9の大部分が押出機2に対して上側に配置されているので、第三実施形態と第二実施形態とでは搬送部9の配置が異なっている。その他の構成は第二実施形態と実質的に同じ構成である。第一、第二実施形態では、ゴムストリップ材Sはベルト体10の下面に付着して吊り下げられた状態で搬送される。第三実施形態では、ゴムストリップ材Sはベルト体10の上面に付着して載置された状態で搬送されるので、搬送中のゴムストリップ材Sが自重によって変形することを抑制するには有利になる。円環状(円筒状)のゴム部材Rを製造する手順は第二実施形態と同様である。
【0041】
図11に例示する製造装置1の第四実施形態では、搬送経路Cにベルト体10が通過するキャリア側フェスツーン部15を有している。また、搬送部9の搬送経路C以外の領域にベルト体10が通過するリターン側フェスツーン部16を有している。これらのフェスツーン部15、16を有していることが、第一実施形態とは異なる。その他の構成は第一実施形態と実質的に同じ構成であり、円環状(円筒状)のゴム部材Rを製造する手順も第一実施形態と実質的に同様であるので、相違点を以下に説明する。
【0042】
それぞれのフェスツーン部15、16は、ベルト体10が掛け回される複数の支持ローラ14bを有していて、一部の支持ローラ14bの位置が変動して、ベルト体10の走行経路を可変にしている。いずれか一方のフェスツーン部15、16だけで、支持ローラ14bの位置が変動すると、ベルト体10の走行経路の全長が変化する。
【0043】
この実施形態では、それぞれのフェスツーン部15、16での支持ローラ14bの位置の変動を同期させて、それぞれの支持ローラ14bの位置が変動しても、ベルト体10の走行経路の全長が変化しないように制御される。例えば、キャリア側フェスツーン部15で支持ローラ14bが下方移動すると、リターン側フェスツーン部16での支持ローラ14bも同期して下方移動する。キャリア側フェスツーン部15で支持ローラ14bが上方移動すると、リターン側フェスツーン部16での支持ローラ14bも同期して上方移動する。それぞれのフェスツーン部15、16での支持ローラ14bの位置の変動は制御部20により制御される。
【0044】
押出機2は、品質一定のゴムストリップ材Sを得るために、基本的に一定の押出速度でゴムストリップ材Sを押出し続ける。ところが、製造したゴム部材Rをドラム部18から取り外すためにドラム部18の回転を一時停止させたり、ドラム部18を交換するなどのインターバル時では、そのままゴムストリップ材Sを供給し続けると、ゴム回収部17によって回収されるゴムストリップ材Sが増加する。
【0045】
そのため、このようなインターバル時などには、キャリア側フェスツーン部15を作動させて押出口5からドラム部18までのベルト体10の走行経路を長くすることで搬送経路Cを長くする。即ち、より長くした搬送経路Cにゴムストリップ材Sを一時的に滞留させる。一方、剛体のベルト体10はほとんど伸縮しないため、押出口5からドラム部18までにおいてベルト体10の走行経路を長くした分を、リターン側フェスツーン部16を作動させることで吸収する。即ち、それぞれのフェスツーン部15、16を用いてベルト体10の走行経路の全長を実質的に不変に維持する。これにより、インターバル時などにゴムストリップ材Sを押出し続けても、ドラム部18に巻き付けられることがないゴムストリップ材Sを不必要に供給することが回避されるので、ゴム部材Rを効率的に製造するには有利になる。
【0046】
図12に例示する製造装置1の第五実施形態では、搬送経路Cでの支持ローラ14bの配置が第一実施形態とは異なっている。その他の構成は第一実施形態と実質的に同じ構成であり、円環状(円筒状)のゴム部材Rを製造する手順も第一実施形態と実質的に同様であるので、相違点を以下に説明する。
【0047】
第五実施形態では、搬送経路Cにおいてゴムストリップ材Sがベルト体10から分離して、単独で支持ローラ14bに掛け回されている領域が存在している。ただし、ベルト体10は、搬送経路Cの少なくとも経路始点(押出口5)から所定の長さ領域Lに延在してゴムストリップ材Sが付着した状態で搬送される。ゴムストリップ材Sの押出直後の収縮を十分に抑制できれば、この実施形態のようにベルト体10が搬送経路Cの全長に渡ってゴムストリップ材Sと連続して付着した状態にならない構成にすることもできる。
【0048】
図13に例示する製造装置1の第六実施形態では、ドラム部18を2つ有し、ベルト体10を2本有していることが第一実施形態とは異なっている。その他の構成は第一実施形態と実質的に同じ構成であり、円環状(円筒状)のゴム部材Rを製造する手順も第一実施形態と実質的に同様であるので、相違点を以下に説明する。
【0049】
第六実施形態では、それぞれのドラム部18の1つに対して、対応するそれぞれのベルト体10a、10bの1本を用いてそれぞれのゴムストリップ材Sを搬送する。それぞれのベルト体10a、10bは上下に積層された状態で、挿入口6からヘッド4の内部に入り、押出口5から出てくる。一方のゴムストリップ材Sは、一方のベルト体10aの上面に付着した状態で押出口5から押し出される。他方のゴムストリップ材Sは、他方のベルト体10bの下面に付着した状態で押出口5から押し出される。
【0050】
即ち、それぞれのベルト体10a、10bでは、他方のベルト体10b、10aとの対向面(当接面)とは反対面にゴムストリップ材Sが当接した状態になる。それぞれのドラム部18までの搬送経路Cの少なくとも経路始点(押出口5)から所定の長さ領域
Lでは2本のベルト体10a、10bが積層して延在している。この実施形態では、それぞれの搬送経路Cの実質的に全長に渡って、対応するベルト体10a、10bが連続して延在している。
【0051】
第六実施形態では、1台の押出機2に対して、2台のドラム部18を同時に使用してゴム部材Rを製造できるので製造効率を向上させることが可能になる。また、積層された状態の2本のベルト体10a、10bを挟んでそれぞれのゴムストリップ材Sが押し出されて付着するので、ベルト体10a、10bを挟んだ両側の力のバランスが均衡し易い。そのため、1本のベルト体10の一方表面にだけゴムストリップ材Sが押し出されて付着する場合よりも、ヘッド4の内部では未加硫ゴムの流れが安定して、形状が安定したゴムストリップ材Sを押出すには有利になる。
【0052】
それぞれの実施形態のドラム18は、ドラム幅方向に平坦な単純な外周面を有する円筒形状であるが、ドラム部18はこのような円筒形状に限定されない。
図14~
図15に例示する第七実施形態のドラム部18の外周面は、幅方向中央部が幅方向両端部よりも外周側に突出していて、完成タイヤの内周面と同じプロファイルを有している。このような形状のドラム部18としては、上述した剛性コアを例示できる。
【0053】
このドラム部18では例えば、回転中のドラム部18の外周面の幅方向両端部に、ゴムストリップ材Sが螺旋状に巻付けられて円環状のゴム部材Rが製造される。この場合は、ドラム部18と搬送部9のうち少なくとも一方をドラム幅方向およびドラム半径方向にスライドさせることができる構成にする。ゴムストリップ材Sは、ドラム部18の外周面に直接巻き付けられることも、ドラム部18の外周面に既に巻き付けられている別の部材(インナーライナおよびカーカス層)の外周面に巻き付けられることもある。ゴムストリップ材Sは、ドラム部18の外周面に沿って渦巻き状に巻き付けられる。この実施形態では、製造された円環状のゴム部材Rは、タイヤサイド部を形成する部材となる。回転中のドラム部18の幅方向中央部にゴムストリップ材Sを螺旋状に巻付けて円筒状のゴム部材Rを製造することもできる。
【0054】
尚、上述したそれぞれの実施形態で説明した構成は、可能な範囲で他の実施形態にも適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ゴム部材の製造装置
2 押出機
2a シリンダ
3 スクリュー
4 ヘッド
4a ヘッドローラ
5 押出口
6 挿入口
7 押出流路
8 カッター
9 搬送部
10、10a、10b ベルト体
11 凸状部
12 プーリ
13 転写ローラ
14a 駆動ローラ
14b 支持ローラ
15 キャリア側フェスツーン部
16 リターン側フェスツーン部
17 ゴム回収部
18 ドラム部
19 スライド機構
20 制御部
C 搬送経路
R 円環状(円筒状)のゴム部材
S ゴムストリップ材