(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092218
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】硬質ポリウレタン発泡原料
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20220615BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20220615BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20220615BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20220615BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20220615BHJP
C23F 11/00 20060101ALI20220615BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20220615BHJP
【FI】
C08L75/04
C08K5/00
C08K5/521
C08G18/08 038
C08G18/00 J
C23F11/00 Z
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204899
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593002540
【氏名又は名称】株式会社大和化成研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】園部 真康
(72)【発明者】
【氏名】豊田 勝敏
(72)【発明者】
【氏名】田中 弘栄
(72)【発明者】
【氏名】浪川 一敏
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
4K062
【Fターム(参考)】
4J002CK021
4J002EF017
4J002EG037
4J002EG047
4J002EN027
4J002EU157
4J002EV257
4J002EW046
4J002FD136
4J002FD207
4J002GL00
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4J034DB03
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4J034DF01
4J034DF16
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4J034DF20
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4J034HA07
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4J034HC46
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4K062AA01
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4K062BB18
4K062BC15
4K062FA04
4K062FA12
4K062GA10
(57)【要約】
【課題】
鋼管内に注入して用いられる現場発泡用の硬質ポリウレタン発泡原料であって、鋼管の内表面に対し防錆性を示し、かつかかる防錆性を実質的に妨げずに難燃性をも発揮可能なポリウレタンフォームを形成可能な硬質ポリウレタン発泡原料を提供する。
【解決手段】
鋼管内に注入して用いられる現場発泡用の硬質ポリウレタン発泡原料であり、硬質ポリウレタン発泡原料は、ポリオールを含むポリオール組成物とポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物とを備え、ポリオール組成物は、非ハロゲン含有難燃剤と防錆剤とを含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管内に注入して用いられる現場発泡用の硬質ポリウレタン発泡原料であって、
前記硬質ポリウレタン発泡原料は、ポリオールを含むポリオール組成物とポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物とを備え、
前記ポリオール組成物は、非ハロゲン含有難燃剤と防錆剤とを含むことを特徴とする硬質ポリウレタン発泡原料。
【請求項2】
前記防錆剤として、
組成(a)である不飽和複素環式化合物、
組成(b)である飽和脂肪酸、前記飽和脂肪酸のアルカリ金属塩もしくはアミン塩、または不飽和脂肪酸、前記不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩もしくはアミン塩、及び
組成(c)である金属石鹸から選択される2以上を含む請求項1に記載の硬質ポリウレタン発泡原料。
【請求項3】
前記防錆剤として、前記組成(a)、前記組成(b)、および前記組成(c)を含み、
前記防錆剤100質量%において、前記組成(c)の含有量は0.01質量%以上2質量%以下である請求項2に記載の硬質ポリウレタン発泡原料。
【請求項4】
前記ポリオール組成物は、前記ポリオール100質量部に対し、前記非ハロゲン含有難燃剤を15質量部以上55質量部以下、および前記防錆剤を0.2質量部以上20質量部以下の範囲で含む請求項1~3のいずれか一項に記載の硬質ポリウレタン発泡原料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場発泡により硬質ポリウレタンフォームを形成するために用いられる硬質ポリウレタン発泡原料に関し、より詳しくは、鋼管内に注入され現場発泡により硬質ポリウレタンフォームを形成するために用いられる硬質ポリウレタン発泡原料に関する。
【背景技術】
【0002】
既設構造物の老朽化対策として、構造物を構成する鋼管に対する各種防錆処理が行われている。かかる防錆処理としては、例えば、鉄などの金属表面に対して、防錆塗料などを用いて被覆層を形成する方法が一般的である。上記被覆層としては、亜鉛メッキ層が一般的である。
またこれに加え、鋼管内に硬質ポリウレタン発泡体を充填して構造体の補強を行うとともに、鋼管内部への雨水や飛来した塩の侵入を防止する工法が知られている(たとえば特許文献1、2)。
【0003】
具体的に、特許文献1には、パイプ構造物の上部開口部よりポリウレタン発泡原料を注入して発泡させるパイプ構造物内部封止方法(以下、従来技術1ともいう)が提案されている。かかる特許文献1によれば、送電鉄塔などのパイプ構造物は、たとえば溶融亜鉛メッキ処理をした中空パイプが用いられるものの、設置環境上、当該中空パイプの内面に錆が発生し腐食が確認されるといった問題が指摘されている。
従来技術1には、上記問題に対し、用いるポリウレタン発泡原料に、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、発泡剤、触媒、および整泡剤に加え、防錆剤としてアルミニウム粉末や亜鉛粉末等の防錆顔料を含有させることによって、上記問題をより良好に解決可能であることが示されている。
【0004】
また下記特許文献2には、防錆剤含有ウレタン原料を中空鋼材内に注入し、所定範囲の独立気泡率を有するウレタンフォームを形成する防錆方法(以下、従来技術2ともいう)が提案されている。特許文献2には、上記防錆剤として気化性防錆剤が用いられ、中でもカルシウムスルフォネートまたはジイソプロピルアンモニウムナイトライトが好ましく、これらの防錆剤を含む各実施例において鉄板における錆の発生が防止されるということが示されている。
【0005】
ところで、鋼管自体は燃えにくい素材から構成されているため、従来、鋼管の難燃性に関する具体的な検討や提案は特段見当たらず、特許文献1、2にも難燃剤の添加について何ら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-107708号公報
【特許文献2】特開2011-246775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述するとおり、従来、鋼管の難燃性は具体的に指摘されていなかったところ、本発明者らは、従来技術1、2に例示されるように鋼管内にポリウレタンフォームを充填する技術においては、当該ポリウレタンフォームの難燃化を図ることが重要であるという着想に至った。
【0008】
用途にもよるが、ポリウレタンフォームに良好な難燃性を付与する場合には、ポリウレタン発泡原料に有機ハロゲン化合物を含む難燃剤を含有させることが一般的である。しかし、本発明者らの検討によれば、有機ハロゲン系化合物を含むポリウレタンフォームを鋼管内に形成した場合、良好な難燃性が発揮されるものの、当該有機ハロゲン系化合物から遊離したハロゲン化イオンが鋼管の内表面に触れることで錆が発生する虞があることがわかった。これでは、ポリウレタンフォームで充填することによって鋼管内の表面の防錆性を図るという本来の目的が損なわれてしまう。
【0009】
本発明は、上記問題を鑑みなされたものである。即ち、本発明は、鋼管内に注入して用いられる現場発泡用の硬質ポリウレタン発泡原料であって、鋼管の内表面に対し防錆性を示し、かつかかる防錆性を実質的に妨げずに難燃性をも発揮可能なポリウレタンフォームを形成可能な硬質ポリウレタン発泡原料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の硬質ポリウレタン発泡原料は、鋼管内に注入して用いられる現場発泡用の硬質ポリウレタン発泡原料であって、上記硬質ポリウレタン発泡原料は、ポリオールを含むポリオール組成物とポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物とを備え、上記ポリオール組成物は、非ハロゲン含有難燃剤と防錆剤とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硬質ポリウレタン発泡原料によれば、鋼管内に注入して用いられ現場発泡されることによって、当該鋼管内に防錆性と難燃性とを兼ね備えた硬質ポリウレタン発泡原料を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(1A)は、防錆性を試験するための試験セットの上面図であり、(1B)は、(1A)に示す試験セットのI-I断面図である。
【
図2】試験セットを密閉容器に入れて防錆性評価を行っている状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の硬質ポリウレタン発泡原料は、鋼管内に注入して用いられる現場発泡用の硬質ポリウレタン発泡原料であって、ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とを備える。上記ポリオール組成物およびポリイソシアネート組成物は、個別の組成物として調製され、鋼管が配置された現場において、互いに適当な比率で混合されるとともに鋼管内に注入される。本発明において現場発泡とは、予め形成されたポリウレタンフォームを鋼管に充填するのではなく、原料を鋼管に注入し当該鋼管内で発泡させてポリウレタンフォームを形成することをいう。現場発泡で製造されるポリウレタンフォームは、一般的に硬質ポリウレタンフォームと分類される。つまり、本発明において硬質ポリウレタンフォームとは、現場発泡で製造されたポリウレタンフォーム全般を指す。また本発明において鋼管とは、鉄成分を含む材料を用いて中空管状に形成された管状体を広く含み、たとえば鋼を圧延して作成された管状体、および鋼や銑鉄を鋳込んで作られた鋳鉄管を含む。
本発明におけるポリオール組成物は、ポリオールに加え、非ハロゲン含有難燃剤と防錆剤とを含み、またポリイソシアネート組成物は、少なくともポリイソシアネートを含む。かかる組成物を用いて現場発泡することにより、防錆性および難燃性を示す硬質ポリウレタンフォームで鋼管内を満たすことができる。
尚、本発明または本明細書に関し、金属の「錆び」または「腐食」とは、いずれも金属の表面が酸素や水分と反応して酸化還元を起こすこと、あるいは上記酸化還元反応が生じた状態となることを含む。
以下に本発明の詳細についてさらに説明する。
【0014】
[ポリオール組成物]
本発明におけるポリオール組成物は、ポリオール、非ハロゲン含有難燃剤、防錆剤を含む。また、ポリウレタンを発泡させるための発泡剤および整泡剤、ならびにウレタン反応や泡化反応を促進させるための触媒は、一般的にはポリオール組成物に添加されるとよい。以下では、発泡剤、整泡剤、触媒がポリオール組成物に含有される例を用いて本発明のポリオール組成物を説明する。
【0015】
(ポリオール)
本発明で用いられるポリオールとしては、硬質ポリウレタンフォームを形成するために用いられるポリオールとして公知のものから適宜選択することができる。より具体的には、上記ポリオールとして、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびポリマーポリオールから選択される1種単独のポリオール、あるいは2種以上のポリオールを使用することができる。
【0016】
ポリエーテルポリオールとしては、たとえば多価アルコール、脂肪族アミン、または芳香族アミン類に、アルキレンオキサイドを1種または2種以上付加重合して得られるポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
上記多価アルコールとしては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ、ビスフェノールAなどが挙げられる。
上記脂肪族アミンとしては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンなどが挙げられる。
上記芳香族アミン類としては、トリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン、マンニッヒ縮合物などが挙げられる。
上記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられる。
【0017】
ポリエステルポリオールとしては、たとえば多価カルボン酸と多価アルコールから通常のエステル化反応において得られるポリエステルポリオールや、ポリエステル樹脂等を多価アルコールでエステル交換して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
上記多価カルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族多塩基酸、及びこれらの無水物、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸などの芳香族多塩基酸、及びこれらの無水物が挙げられ、好ましくは、芳香族多塩基酸である。一方、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ、ビスフェノールA等が挙げられる。
【0018】
ポリマーポリオールとしては、たとえばポリエーテルポリオールと、アクリロニトリルやスチレンなどのエチレン性不飽和物とをラジカル重合触媒の存在下で反応させた共重合体を含むポリオールが挙げられる。
【0019】
(発泡剤)
本発明で用いられる発泡剤は、硬質ポリウレタンフォームを形成するために用いられる発泡剤として公知のものから適宜選択することができる。たとえば発泡剤として、水、HFC-365mfc、HFC-245fa、HFC-134a等のハイドロフルオロカーボン、または1-クロロ-3,3,3,-トリフルオロプロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2ブテン等のハイドロフルオロオレフィンが挙げられ、これらは1種単独であるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。特に、本発明における発泡剤としては水が好ましく、水単独または水と他の発泡剤とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0020】
ポリオール組成物における発泡剤の含有量は、特に限定されず一般的な硬質ポリウレタンフォームを形成する際に用いられる量と同等の範囲で決定することができる。たとえば、ポリオール組成物において、ポリオール100質量部に対し、発泡剤が1質量部以上5質量部の範囲となるように調整されるとよい。
【0021】
(触媒)
本発明で用いられる触媒としては、従来から一般に硬質ポリウレタンフォームを形成するために用いられる触媒から適宜選択することができる。具体的には、上記触媒として、たとえばアミン触媒または金属触媒等が使用できる。
アミン触媒としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,-ジメチルベンジルアミン、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン、トリエチレンジアミン、N,N’,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’,N’’-トリス(3-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-s-トリアジン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-アミノエトキシエタノール、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、テトラメチルヘキサンジアミン、1-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール等が使用できる。
金属触媒としては、例えば、スタナスオクトエート;ジブチルチンジラウリレート;オクチル酸鉛;酢酸カリウムやオクチル酸カリウム等のカリウム塩等が使用できる。
これらのアミン触媒や金属触媒の他に、蟻酸や酢酸等の脂肪酸の第4級アンモニウム塩等も触媒として使用できる。以上の触媒は、それぞれ1種単独、または2種以上を適宜組み合わせて使用される。たとえば金属触媒とアミン触媒とを混合して用いることは好ましい態様の1つである。
【0022】
ポリオール組成物における触媒の含有量は、特に限定されず一般的な硬質ポリウレタンフォームを形成する際に用いられる量と同等の範囲で決定することができる。たとえば、ポリオール組成物において、ポリオール100質量部に対し、触媒が1質量部以上10質量部の範囲となるように調整されるとよい。
【0023】
(整泡剤)
本発明で用いられる整泡剤としては、従来から一般に硬質ポリウレタンフォームを形成するために用いられる整泡剤から適宜選択することができる。具体的には、たとえば、整泡剤としてシリコーン系化合物およびフッ素系化合物などを例示することができる。
【0024】
ポリオール組成物における整泡剤の含有量は、特に限定されず一般的な硬質ポリウレタンフォームを形成する際に用いられる量と同等の範囲で決定することができる。たとえば、ポリオール組成物において、ポリオール100質量部に対し、整泡剤が0.5質量部以上5質量部の範囲となるように調整されるとよい。
【0025】
(非ハロゲン含有難燃剤)
本発明におけるポリオール組成物には、難燃剤として非ハロゲン含有難燃剤が含有される。これによって、ハロゲン化イオンの遊離により鋼管に対する防錆性が損われることを回避しつつ、硬質ポリウレタンフォームに難燃性を付与することができる。
【0026】
本発明で用いられ非ハロゲン含有難燃剤としては、ハロゲン原子を含まないリン系難燃剤が好ましく、例えば、リン酸エステルなどが挙げられる。
リン酸エステルとしては、トリクレジルフォスフェート、トリスキシレニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、ジエチルフェニルホスフェート、ジメチルフェニルホスフェート、レゾルシノールジフェニルホスフェート、或いはリン酸エステルの縮重合体等などが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を適宜組み合わせで使用される。
【0027】
本発明において、ポリオール組成物における非ハロゲン系難燃剤の含有量は、特に限定されない。ただし以下に述べる点を配慮することが好ましい。
即ち、一般的に、ハロゲンを含まない非ハロゲン含有難燃剤は、有機ハロゲン化合物を含む難燃剤より難燃性が低いと認識されている。そのため本発明において、非ハロゲン含有難燃剤を用い、有機ハロゲン化合物を含む難燃剤と同等の難燃性を得ようとする場合、ポリオール組成物における非ハロゲン含有難燃剤の添加量を多くすることが好ましい。しかし、非ハロゲン含有難燃剤の添加量が多くなりすぎると、ウレタンフォームの発泡性への悪影響が懸念される。
したがって上述の事項を配慮した場合、良好な難燃性を示す硬質ポリウレタンフォームが得られやすいという観点からは、ポリオール組成物において、ポリオール100質量部に対し、非ハロゲン系難燃剤の含有量は15質量部以上となるように調整されることが好ましく、17質量部以上であることがより好ましい。また、現場発泡において、発泡性に悪影響を与えずフォーム性状の良好な発泡体が得られやすいという観点からは、非ハロゲン系難燃剤の上記含有量を55質量部以下とすることが好ましく、50質量部以下とすることがより好ましく、40質量部以下とすることがさらに好ましい。
【0028】
(防錆剤)
本発明におけるポリオール組成物には、防錆剤が含有される。本発明に用いられる防錆剤は、鉄などの金属または亜鉛などを含むめっき層に対し、防錆性を示す化合物から適宜選択して用いることができる。防錆剤は、1種単独であるいは2種以上を適宜組み合わせで使用される。
【0029】
その中でも、上記防錆剤として、組成(a)である不飽和複素環式化合物、組成(b)である飽和脂肪酸、上記飽和脂肪酸のアルカリ金属塩もしくはアミン塩、または不飽和脂肪酸、上記不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩もしくはアミン塩、及び組成(c)である金属石鹸から選択される1種以上含むことが好ましい。尚、本発明において組成(b)は、組成(c)として使用可能な金属塩(脂肪酸塩)以外の化合物から選択される。つまり、組成(b)として用いられる化合物と、組成(c)として用いられる化合物とは異なる。また本発明に関しアルカリ金属とは、周期表1族に属する元素を指す。
【0030】
組成(a)である不飽和複素環式化合物としては、構造中に窒素原子を2個~5個含むものが挙げられる。具体的には、組成(a)として、1-エチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、4-ニトロイミダゾール、ベンズイミダゾール、3-メチル-5-ピラゾロン、3,5-ジメチルピラゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、4-カルボキシベンゾトリアゾール、5-カルボキシベンゾトリアゾール、4-ニトロベンゾトリアゾール、5-ニトロベンゾトリアゾール、4-アミノベンゾトリアゾール、5-アミノベンゾトリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルへキシル)アミノメチル]-4―メチルベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルへキシル)アミノメチル]-5-メチルベンゾトリアゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-フェニル-1,2,3,4-テトラゾール、5-ベンジル-1H-テトラゾールなどが挙げられる。
組成(a)として、上述する不飽和複素環式化合物を1種単独であるいは2種以上を適宜組み合わせで使用することができる。
【0031】
組成(b)である飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸としては、炭素数が8~22の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸が挙げられる。具体的には組成(b)として、カプリル酸、ぺラルゴン酸、カプリン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などが挙げられる。
また組成(b)として、上述する飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩を選択することもできる。当該アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、またはカリウムなどが挙げられる。
また組成(b)として、上述する飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のアミン塩を選択することもできる。当該アミン塩を構成するアミンとしては、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソプロパノールミン、トリイソプロパノールアミン、モルホリン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどが挙げられる。
組成(b)として、上述する飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸またはその塩を1種単独であるいは2種以上を適宜組み合わせで使用することができる。飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩またはアミン塩が防錆性を発揮する上でより好ましい。
【0032】
組成(c)である金属石鹸としては、炭素数が8~18の直鎖脂肪酸と、マグネシウム、カルシウム、バリウム、および亜鉛から選ばれる金属との塩が挙げられる。具体的にはオクチル酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、およびリシノール酸亜鉛などが挙げられる。
組成(c)として、上述する金属石鹸を1種単独であるいは2種以上を適宜組み合わせで使用することができる。
【0033】
ポリオール組成物における防錆剤の含有量は、特に限定されず本発明の所期の課題が達成される範囲で適宜調整することができる。たとえば、良好な防錆性が示されやすいという観点からは、ポリオール組成物において、ポリオール100質量部に対し、防錆剤が0.2質量部以上20質量部以下の範囲となるように調整されることが好ましい。
特に、ポリオール100質量部に対し、防錆剤が上記の範囲で含有されており、かつ非ハロゲン系難燃剤の含有量が15質量部以上55質量部以下の範囲で含有されるポリオール組成物を用いることによって、防錆性および難燃性をバランスよく良好に発揮する硬質ポリウレタンフォームが得られやすく好ましい。
【0034】
ところで一般的に、鋼管は素地が鉄を含んで構成されているため、かかる鋼管に注入され形成されるポリウレタンフォームは、上述する従来技術2のように鉄に対する防錆性を示す防錆剤を用いることが知られている。また予め、鋼管の内表面に溶融亜鉛めっきなどの防錆処理が施されている場合には、従来技術1におけるポリウレタンフォームのように亜鉛に対する防錆性が示される防錆剤を用いることが望ましい。
【0035】
しかしながら実際には、鋼管の内表面に溶融亜鉛めっきなどの防錆処理が施された既設構造物であって、錆が進行してめっき層から素地(鉄など)が露出したケースも多くみられる。このようなケースを勘案すると、鋼管の内表面の防錆のために当該鋼管内に注入され形成されるポリウレタンフォームは、素地に含まれる鉄はもちろんのこと、めっき層を構成する亜鉛に対しても防錆性を発揮することが好ましい。
上述する観点からは、本発明におけるポリオール組成物には、上記防錆剤として、組成(a)である不飽和複素環式化合物、組成(b)である飽和脂肪酸、上記飽和脂肪酸のアルカリ金属塩もしくはアミン塩、または不飽和脂肪酸、上記不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩もしくはアミン塩、及び組成(c)である金属石鹸から選択される2以上を含むことが好ましい。かかる組成によれば、鋼管の素地に含まれる鉄はもちろんのこと、亜鉛めっき層に対しても防錆性を発揮しうる。
【0036】
鉄および亜鉛めっき層に対し、より優れた防錆性を発揮させるという観点からは、ポリオール組成物に含有される防錆剤として、上記組成(a)、上記組成(b)、および上記組成(c)の3つの組成を全て含むことが好ましい。このように3つの組成を含む防錆剤100質量%において、上記組成(c)の含有量が0.01質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上1質量%以下であることがさらに好ましく、0.2質量%以上0.8質量%以下であることが特に好ましい。防錆剤中の組成(c)の含有量が、0.01質量%未満であると、亜鉛、鉄に対する防錆効果の向上が確認されにくく、一方、2質量%を超えると、組成(c)をポリオールに溶解させ難くなる。
また、上述のとおりポリオール組成物に含有される防錆剤として、上記組成(a)、上記組成(b)、および上記組成(c)を含み、かつ組成(c)の含有量が上述する数値範囲である態様において、さらに鉄に対する防錆性および亜鉛めっき層に対する防錆性がいずれもバランスよく良好にするという観点からは、防錆剤における組成(a)と組成(b)との含有比率は、質量比で組成(a):組成(b)=9:1~1:9であることが好ましく、8:2~2:8であることがより好ましく、7:3~3:7であることがさらに好ましい。組成(a)と組成(b)との含有比率が上記好ましい比率の範囲を外れると、亜鉛めっき層、あるいは鉄の一方の防錆効果が低くなる虞がある。
尚、防錆剤100質量%に含まれる組成(a)の配合量は、組成(a)として2以上の化合物が配合される場合には、それらの質量の総和を組成(a)の配合量とする。また同様に、防錆剤100質量%に含まれる組成(b)、組成(c)としてそれぞれ2以上の化合物が配合される場合には、それらの質量の総和から、互いの比率が算出される。
【0037】
[ポリイソシアネート組成物]
ポリイソシアネート組成物としては、少なくともポリイソシアネートを含み、実質的に組成がポリイソシアネートのみであってもよいし、ポリイソシアネートとともに任意の添加剤が含まれていてもよい。
【0038】
(ポリイソシアネート)
本発明で用いるポリイソシアネートは、硬質ポリウレタンフォームを形成するのに用いられるものであればよく、例えば2,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、TDI(2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート)、4,6-ジメチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、9,10’-アントラセンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルジイソシアネート、2,6’-ジメチル-4,4’-ジフェニルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、MDI(2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)、ポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加TDI、水素添加MDI等が挙げられる。
また、ポリイソシアネートとして、上記化合物におけるイソシアネート基の一部をウレタン及び/又はウレアに変性したものを用いてもよく、また上記化合物におけるイソシアネート基の一部をビュウレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサジリドン、アシド、イミド等に変性したものを用いてもよい。
これらポリイソシアネートは、1種単独、或いは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0039】
[ポリウレタンフォーム]
本発明の硬質ポリウレタン発泡原料であるポリオール組成物およびポリイソシアネート組成物を適当な比率で混合させ、これを鋼管の任意の箇所から内部に注入し現場発泡させることによって、当該鋼管内に難燃性と防錆性とを兼ね備えた硬質ポリウレタンフォーム(以下、本発明による硬質ポリウレタンフォーム、あるいは単に硬質ポリウレタンフォームと呼ぶ場合がある)が形成される。ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物との混合比率は、ポリオール組成物中に含まれる活性水素基に対するポリイソシアネート組成物中に含まれるイソシアネート基の当量比(イソシアネートインデックス)を勘案し、ウレタン反応に適した適宜の比率となるよう混合することができる。
本発明による硬質ポリウレタンフォームは、鋼管内において発泡成形されるため、鋼管内部を隙間なく充填することが可能である。そのため鋼管の内表面と硬質ポリウレタンフォームとの界面に水分などが侵入し難く防錆性に優れる上、水分が侵入した場合であっても、当該硬質ポリウレタンフォームが防錆剤を含むため、錆の発生を良好に防止することができる。
【0040】
本発明に関し硬質ポリウレタンフォームとは、とくにその物性を数値で限定されるものではないが、たとえば、JIS A 9511に準拠して測定される見掛け密度が25kg/m3以上であることが好ましく、35kg/m3以上であることがより好ましい。
【0041】
本発明による硬質ポリウレタンフォームは、本発明におけるポリオール組成物を用いて形成されるため、非ハロゲン含有難燃剤および防錆剤を含む。そのため、良好な防錆性を示すとともに、その防錆性を損なうことなく良好な難燃性が示されうる。
特に、硬質ポリウレタンフォーム100質量%において、非ハロゲン含有難燃剤の含有量が3質量%以上20質量%以下であり、防錆剤の含有量が0.1質量%以上5質量%以下である硬質ポリウレタンフォームは、優れた難燃性および防錆性を示すとともにフォーム性状にも優れるため好ましい。
なお、本明細書においてフォーム性状が良好であるとは、硬質ポリウレタンフォームの発泡性が良好であり、外表面を目視で観察した場合に顕著な収縮や凹凸などが見られないことを指す。
【0042】
(難燃性)
本発明による硬質ポリウレタンフォームの難燃性は、JIS A 9511に準拠して実施される燃焼性試験によって評価することができる。本発明に関し、難燃性に優れるとは、上記燃焼試験において、試験片に炎を当ててから試験片の炎が消えるまでの時間が120秒以内、かつ試験片の燃えた部分のうち燃焼長さが最も長い部分の長さが60mm以内のものを指す。
【0043】
(防錆性)
本発明による硬質ポリウレタンフォームの防錆性の評価方法は特に限定されない。たとえば現場において本発明の硬質ポリウレタン発泡原料を用いて鋼管内に硬質ポリウレタンフォームを形成し、当該鋼管を経時的に観察することによっても上記防錆性は確認されうる。しかし、実際には、使用中の鋼管の内表面の錆びの有無を観察することは難しい場合が多い。そのため、後述する実施例において実施された防錆性の評価方法により、硬質ポリウレタンフォームの防錆性を評価するとよい。
【0044】
尚、上述にて説明した本発明におけるポリオール組成物およびポリイソシアネート組成物に関する、各組成や組み合わせ等により発揮される効果は、本発明による硬質ポリウレタンフォームにおいても同様に発揮されうる。そのため、本発明の硬質ポリウレタン発泡原料に関する種々の記載は、適宜、本発明による硬質ポリウレタンフォームの説明として参照される。
【0045】
[鋼管]
上述する本発明による硬質ポリウレタンフォームが内部に充填された鋼管は、内表面が錆難いため、メンテナンスの頻度が少なくて済み、また錆による腐食を回避できるので耐久性にも優れる。かかる硬質ポリウレタンフォームは、本発明の硬質ポリウレタン発泡原料を鋼管内に注入し当該鋼管内で発泡させることで形成される。
また特に、上記鋼管において、内部に充填された硬質ポリウレタンフォームが、防錆剤として、上述する組成(a)、組成(b)、及び組成(c)から選択される2以上を含むポリオール組成物を備える硬質ポリウレタン発泡原料を用いて形成されたものである態様は、好ましい。かかる態様によれば、当該鋼管の素地に含まれる鉄はもちろんのこと、亜鉛めっき層に対しても防錆性が発揮されうる。
【0046】
上述する鋼管の内部に形成された硬質ポリウレタンフォームは、非ハロゲン系難燃剤を含む。そのため、当該硬質ポリウレタンフォームの防錆性を損なうことなく、良好な難燃性を発揮可能である。したがって、かかる鋼管は、電線ケーブルなどを繋ぐ鉄塔などに好適に用いられる。
【0047】
また特に、上記鋼管において、内部に充填された硬質ポリウレタンフォームが、非ハロゲン含有難燃剤および防錆剤を含み、硬質ポリウレタンフォーム100質量%において、非ハロゲン含有難燃剤の含有量が3質量%以上20質量%以下であり、防錆剤の含有量が0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。かかる配合量が実現された硬質ポリウレタンフォームは、優れた難燃性および防錆性を示すとともにフォーム性状にも優れる。鋼管内部に形成された硬質ポリウレタンフォームのフォーム性状が良好である場合、鋼管の内表面と当該硬質ポリウレタンフォームとの界面に隙間が発生し難く、そのため、雨水などの侵入が防止され錆が発生しにくい鋼管を提供することができる。
【実施例0048】
本発明について、実施例に基づき説明する。なお、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。
【0049】
[実施例1~15、比較例1~2]
表1に示す防錆剤1~11を予め調整し、表2、3に示す各組成および配合比でポリオール組成物およびポリイソシアネート組成物を混合して混合原料を得た。そして上記混合原料を250mm×150mm×300mmの大きさの木箱型に注入し、自由発泡(現場発泡)させて硬質ポリウレタンフォームを得た。尚、表2、表3において示すポリオール組成物およびポリイソシアネート組成物の配合に関する値の単位はいずれも質量部である。
組成物の調製に用いた各組成は、以下のとおりである。
【0050】
[ポリオール組成物]
ポリオール:芳香族ポリエステルポリオール(川崎化成株式会社製、商品名「マキシモールRDK-133」)
発泡剤:水
触媒:アミン触媒(エボニック社製、商品名「ポリキャット41」)
金属触媒(日本化学産業株式会社製、商品名「ニッカオクチックス亜鉛」)
整泡剤:シリコーン系化合物(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「SH-193」)
非ハロゲン系難燃剤:非ハロゲン縮合リン酸エステル(大八化学株式会社製、商品名「DAIGURD-880」)
ハロゲン系難燃剤:トリス(クロロプロピル)ホスフェート(大八化学株式会社製、商品名「TMCPP」)
防錆剤組成(a):1,2,3-ベンゾトリアゾール(大和化成研究所製、商品名「VERZONE Crystal#120」)
防錆剤組成(b1):カプリル酸モノエタノールアミン塩(キシダ化学株式会社製のカプリル酸およびモノエタノールアミンを用いて調製した)
防錆剤組成(b2):カプリル酸ナトリウム
防錆剤組成(c):ステアリン酸バリウム(東京化成工業株式会社製)
防錆剤組成(d):カルシウムスルフォネート
[ポリイソシアネート組成物]
ポリイソシアネート:ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名「ミリオネートMR-200」)
【0051】
得られた各硬質ポリウレタンフォームについて、見掛け密度を測定し、フォーム性状、難燃性、防錆性を評価した。結果を表1、2に示す。
【0052】
[見掛け密度]
JIS A 9511に準拠して測定した。具体的には、得られた各硬質ポリウレタン発泡体から50mm×50mm×50mmの寸法の試験片を切り出し、当該試験片をJIS A 9511に示される試験に供して見掛け密度(kg/m3)を測定した。
【0053】
[フォーム性状]
得られた各硬質ポリウレタンフォームの外表面を目視にて観察し、以下の通り評価した。
〇 全体的に平滑性に優れ良好な性状であった。
△ 若干の収縮が見られた。
× 収縮した箇所が散見されるか、または有意な凹凸が発見された。
【0054】
[難燃性]
JIS A 9511に示される試験方法Bに準拠して燃焼性試験を行った。具体的には、厚さ13mm、長さ15mm、幅50mmの試験片を、上述のとおり得た硬質ポリウレタンフォームから切り出した。上記試験片を金網台に載せ、魚尾灯で当該試験片の対向する短辺の任意の一方側に炎を当てた。そして試験片に炎を当ててから試験片の炎が消えるまでの時間(燃焼時間)及び試験片の燃えた部分のうち燃焼長さが最も長い部分の長さ(燃焼長さ)を測定し、下記のとおり評価した。尚、試験片に対する炎の当て方は、JIS A 9511に示される試験方法Bに示される方法に倣った。
〇 燃焼時間が120秒以内、かつ燃焼長さが60mm以内であった。
× 燃焼時間が120秒超、および/または燃焼長さが60mm超であった。
【0055】
[防錆性]
各実施例および各比較例を用いて形成された硬質ポリウレタンフォームの防錆性は、以下のとおり評価された。尚、防錆性の試験の説明には、
図1および
図2を用いる。
図1Aは、防錆性を試験するための試験セット100の上面図であり、
図1Bは、
図1Aの試験セット100のI-I断面図である。
図2は、試験セット100を密閉容器に入れて防錆性評価を行っている状態を示す縦断面図である。
【0056】
まず上述のとおり得られた硬質ポリウレタンフォームを、縦10cm、横9cm、高さ5cmの大きさに切り出し試験片10を得た。そして、
図1A、
図1Bに示すとおり、試験片10の上面(厚み方向を垂直方向として載置した際の上面)の中央を縦2.5cm、横2.5cm、深さ2.5cmの寸法で繰り抜いて、繰り抜き部12を形成した。繰り抜き部12に5mLの蒸留水30を入れ、その上に縦8cm、横6cm、厚み0.1cmの大きさの評価用金属板20を、上面視において評価用金属板20の中央付近に繰り抜き部12が重なるよう配置して試験セット100を準備した。
尚、評価用金属板20は、鋼板の表面に溶融亜鉛めっきを施され、アルカリ電解脱脂、酸洗、および水洗が順に行われためっき板と、所定寸法の冷間圧延鋼板SPCC-SBを脱脂、および研磨して得られた鋼板単体との2種類を準備した。亜鉛めっきの防錆評価では、上記めっき板である評価用金属板20を3枚重ねにして亜鉛めっきに対する防錆性の試験に用いた。鉄の防錆評価では、上記鋼板単体である評価用金属板20を1枚用い、鉄に対する防錆性の試験に用いた。
【0057】
図2に示すとおり、上記試験セット100および調湿用の蒸留水32が100ml入ったビーカー50を、容器本体42に設置し、蓋44をして密閉容器40とした。かかる密閉容器40を、図示省略する恒温恒湿試験器に入れ、20℃で16時間静置後、5℃まで10分間かけて降温させ、その後、(1)5℃の状態で2時間静置し、さらに(2)5℃から70℃まで2時間かけて昇温させ、(3)70℃で2時間静置し、(4)再び70℃から5℃まで2時間かけて降温させた。この(1)~(4)の8時間の工程を1サイクルとし、同様の試験を9サイクル実施した。
【0058】
(亜鉛めっきの防錆性評価)
亜鉛めっきが施された評価用金属板20の試験片10側の面を観察面とした。具体的には、評価用金属板20の、くり抜き部12に対向し試験片10とは非接触である非接触面領域、および試験片10と接触する接触面領域それぞれを観察面として、倍率100倍のマイクロスコープで観察して腐食部分を特定した。観察面の全面積に対する腐食部分として特定された部分の面積の比率を算出し、以下の通り評価した。
○ 腐食面積が10%未満であった。
△ 腐食面積が10%以上50%未満であった。
× 腐食面積が50%以上であった。
【0059】
(鉄の防錆性評価)
鋼板単体である評価用金属板20の試験片10側の面を観察面とし、上述する亜鉛めっきの防錆性評価と同様の方法で腐食部分の面積を算出し、以下のとおり評価した。
○ 腐食面積が10%未満であった。
△ 腐食面積が10%以上50%未満であった。
× 腐食面積が50%以上であった。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)鋼管内に注入して用いられる現場発泡用の硬質ポリウレタン発泡原料であって、
前記硬質ポリウレタン発泡原料は、ポリオールを含むポリオール組成物とポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物とを備え、
前記ポリオール組成物は、非ハロゲン含有難燃剤と防錆剤とを含むことを特徴とする硬質ポリウレタン発泡原料。
(2)前記防錆剤として、
組成(a)である不飽和複素環式化合物、
組成(b)である飽和脂肪酸、前記飽和脂肪酸のアルカリ金属塩もしくはアミン塩、または不飽和脂肪酸、前記不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩もしくはアミン塩、及び
組成(c)である金属石鹸から選択される2以上を含む上記(1)に記載の硬質ポリウレタン発泡原料。
(3)前記防錆剤として、前記組成(a)、前記組成(b)、および前記組成(c)を含み、
前記防錆剤100質量%において、前記組成(c)の含有量は0.01質量%以上2質量%以下である上記(2)に記載の硬質ポリウレタン発泡原料。
(4)前記ポリオール組成物は、前記ポリオール100質量部に対し、前記非ハロゲン含有難燃剤を15質量部以上55質量部以下、および前記防錆剤を0.2質量部以上20質量部以下の範囲で含む上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の硬質ポリウレタン発泡原料。
(5)上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の硬質ポリウレタン発泡原料を用い、
前記硬質ポリウレタン発泡原料を鋼管内に注入し現場発泡させることによって形成されたことを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。
(6)非ハロゲン含有難燃剤および防錆剤を含み、
前記硬質ポリウレタンフォーム100質量%において、前記非ハロゲン含有難燃剤の含有量が3質量%以上20質量%以下であり、前記防錆剤の含有量が0.1質量%以上5質量%以下である上記(5)に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
(7)内部に硬質ポリウレタンフォームが充填された鋼管であって、
前記硬質ポリウレタンフォームは、上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の硬質ポリウレタン発泡原料が鋼管内に注入され当該鋼管内で発泡してなることを特徴とする鋼管。
(8)前記硬質ポリウレタンフォームは、非ハロゲン含有難燃剤および防錆剤を含み、
前記硬質ポリウレタンフォーム100質量%において、前記非ハロゲン含有難燃剤の含有量が3質量%以上20質量%以下であり、前記防錆剤の含有量が0.1質量%以上5質量%以下である上記(7)に記載の鋼管。