(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092223
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】縦型ウエハボート
(51)【国際特許分類】
H01L 21/22 20060101AFI20220615BHJP
C30B 33/02 20060101ALI20220615BHJP
C30B 35/00 20060101ALI20220615BHJP
C30B 29/06 20060101ALI20220615BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20220615BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
H01L21/22 511G
C30B33/02
C30B35/00
C30B29/06 B
C23C16/44 B
H01L21/31 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204905
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】黒井 茂明
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AA03
4G077BA04
4G077FE20
4G077HA12
4K030CA04
4K030CA12
4K030GA02
4K030KA04
4K030KA46
4K030KA47
4K030LA15
5F045DP19
(57)【要約】
【課題】従来の縦型ウエハボートのウエハ支持部の底板の下にある、保温調節するための断熱部材に代えて、底板および断熱部材の両方を兼ねた部材として、特定の多孔質炭化ケイ素を底板として用いることにより、ウエハの処理領域を増大させ、効率良くウエハを熱処理することができる縦型ウエハボートを提供する。
【解決手段】本発明の縦型ウエハボートは、天板と、前記天板に一端が固定され、他端が底板に固定された複数本の支柱と、前記支柱の側面から水平方向に突出するウエハ支持部と、気孔率40~50%の多孔質炭化ケイ素からなり断熱性の前記底板と
を有することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、
前記天板に一端が固定され、他端が底板に固定された複数本の支柱と、
前記支柱の側面から水平方向に突出するウエハ支持部と、
気孔率40~50%の多孔質炭化ケイ素からなる前記底板と
を有することを特徴とする縦型ウエハボート。
【請求項2】
前記底板の厚みが20~50mmであることを特徴とする請求項1に記載の縦型ウエハボート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体ウエハの高温熱処理に用いられる縦型ウエハボートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造においては、被処理体であるウエハに酸化、拡散、膜形成またはアニールなどの熱処理を行うが、このとき複数枚のウエハを支持して熱処理装置への出し入れする支持具としてウエハボートが使用される。
【0003】
このウエハボートの一つに、熱処理装置の上方または下方から装入して、上下方向に積層する縦型ウエハボートがある。縦型ウエハボートは、均一な熱処理を施すため、各ウエハを所定間隔で支持する構造を有し、また、保温調節するための断熱板が設けられた断熱板ホルダを有している。
【0004】
そして、熱処理炉内を所定の温度に昇温および保持した後、ウエハを縦型のウエハボートに装入して熱処理を行う。
【0005】
縦型ウエハボートとして、例えば、特許文献1には、複数枚の半導体ウエハを平行に装入支持するための支持溝を有するウエハ支持部と、断熱板支持部とが一体に構成され、前記断熱板支持部に断熱板が一体となるように接合されたウエハボートが記載されている。
【0006】
特許文献2には、その一端側に炉口を有する炉本体と、炉本体内の他端側に配置され、ウエハを保持する縦型のボートと、ボートの少なくとも一端部を保持するとともに、熱処理時に炉本体を保温する保温体とを備え、前記保温体が、ボート側に配置された1枚の厚肉断熱版と、炉口側に配置された複数枚の薄肉断熱板と、厚肉断熱板および薄肉断熱板を水平に支持する支持体とを備える熱処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-12474号公報
【特許文献2】特開2004-47540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および2の縦型ウエハボートまたは熱処理装置のいずれも、ウエハボートの下に、複数枚のウエハを均一に保温するために断熱板または保温体が設けられている。
【0009】
しかしながら、特許文献1および2の断熱板または保温体は、所定の厚みを有する断熱板が1枚または複数枚配置されたものであるため、熱処理装置の中で一定の範囲を占めることとなり、ウエハボートの熱処理装置全体に占める割合がそれだけ小さくなり、被処理体であるウエハの枚数が制限される。
【0010】
本発明は、縦型ウエハボートの底板に設けられる、保温調節するための断熱部材として、従来の断熱材に代えて、特定の気孔率を有する多孔質炭化ケイ素からなる断熱部材を用いることにより、多数枚のシリコンウエハを一度に搭載することができる縦型ウエハボートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の縦型ウエハボートは、天板と、前記天板に一端が固定され、他端が底板に固定された複数本の支柱と、前記支柱の側面から水平方向に突出するウエハ支持部と、気孔率40~50%の多孔質炭化ケイ素からなる前記底板とを有する。
底板の材質に、気孔率が40~50%の多孔質炭化ケイ素を選択することで、断熱板を薄肉化でき、熱処理炉に収容可能なウエハの枚数を増加することができる。また、高い多孔性のため、熱処理後の冷却時に熱が冷めやすく、ウエハの冷却時間を短縮することができる。
前記底板の厚みは、20~50mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、縦型ウエハボートの底板に特定の多孔質炭化ケイ素からなる断熱部材を用いることにより、底板の熱伝導を小さくできるので、熱処理に際して、ダミーウエハを用いる必要がなく、結果的に製品ウエハの処理枚数を増加させることができる。つまり、前記縦型ウエハボートを用いることで、多数枚のシリコンウエハを一度に熱処理することができ、効率的である。また、縦型ウエハボートの底板を多孔質炭化ケイ素からなる部材で形成することにより、熱処理後の冷却時に熱が冷めやすく、ウエハの冷却時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る縦型ウエハボートを含む縦型熱処理炉の正面断面図である。
【
図2】
図2は、従来の縦型ウエハボートを含む縦型熱処理炉の正面断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る縦型ウエハボートの正面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の縦型ウエハボートについて説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る縦型ウエハボート10を示している。前記縦型ウエハボート10は、天板1と、前記天板1に一端が固定され、他端が底板4に固定された3本の支柱2と、前記支柱2の側面から水平方向に突出するウエハ支持部2aと、前記底板4とを有し、前記底板4が、断熱性を有する気孔率40~50%の多孔質炭化ケイ素からなる。
図3に示す縦型ウエハボート10は、円筒形状を有し、ウエハを側面から略平行に差し込み、ウエハ支持部2aの上に載置する構成を有する。3本の支柱2は、ウエハWの外周縁上に配置され、搭載後にウエハにかかる荷重が3点に分散されるように、ウエハ支持部2aから略水平に突出した爪部(図示せず)が設けられている。そして、各支柱2の下端は、円板形状の断熱性の底板4に固定され、さらに各支柱2の上端部は、円板状の天板1によって固定されている。
【0015】
各支柱2は、ウエハWを支持するためのウエハ支持部2aを有している。各支柱2におけるウエハ支持部2aは、長さ10~100mm、幅5~15mm、厚さ1~5mmであり、縦方向に例えば8mmピッチで50~150個形成されている。
【0016】
前記ウエハ支持部2aのウエハWと接する表面は研磨加工され、ウエハWにスリップが生じないよう平滑化されている。このように形成されたウエハ支持部2aによりウエハWを支持すると、ウエハWによる荷重が偏ることがなく、またウエハWが傷つくことなく、スリップ発生を抑制することができる。なお、本発明の縦型ウエハボート10は、3本に限られず、複数本、具体的には3~5本の支柱2を備える。
【0017】
また、この縦型ウエハボート10の底板4以外の部材は、反応焼結SiC、すなわちカーボン成分を含むSiC焼成体に金属ケイ素(Si)を含浸させ、前記カーボン成分とSiの一部が反応し、SiC化されたSi-SiC複合材料で形成される。或いは、SiC-CVDコートした材料や、SiCの成形体を高温で熱処理した再結晶質SiC、焼結助剤を添加して焼結した自焼結SiCなどで形成されてもよい。なお、SiC-CVDコートとは、Si-SiC複合材料に化学蒸着(CVD)によって、高純度で結晶質のSiC膜を形成することである。
【0018】
縦型ウエハボート10の下部で、前記支柱2の下端部は、円板形状の底板4に固定されている。
底板4は、多孔質炭化ケイ素からなる断熱部材で形成される。多孔質炭化ケイ素は、具体的には、前記Si-SiC複合材料、SiC-CVDコートした材料、SiCの成形体を高温で熱処理した再結晶質SiC、または、焼結助剤を添加して焼結した自焼結SiCなどである。本発明において、底板4は、縦型ウエハボート10の底部を形成するだけでなく、保温体または断熱部材としての役割も有する。
底板4の熱伝導率は10~150W/mKであることが好ましい。
【0019】
底板4を形成する断熱部材の気孔率は40~50%、好ましくは45~50%である。底板4を気孔率40~50%の断熱部材で形成することで、熱処理後の冷却時に熱が冷めやすく、ウエハの冷却時間を短縮することができる。気孔率が40%未満であると、底板4が充分な断熱性を備えられないことがある。一方、気孔率は50%を超えると、底板4が必要な強度を備えられないことがある。
【0020】
底板4を形成する断熱部材の気孔径は、通常5~50μm、好ましくは10~30μmである。底板4を気孔径5~50μmの断熱部材で形成することで、底板4の強度を維持することができる。なお、底板4は50~70MPa程度の強度を有することが好ましい。
【0021】
底板4の厚みは20~50mmが好ましく、30~40mmがより好ましい。底板4の厚みが20mm未満であると、底板4が充分な断熱効果を発揮できないことがある。底板4の厚みが50mmを超えると、底板4が大きく、縦型熱処理炉内に底板4が占める割合が増すため、収納可能なウエハの枚数が少なくなる。
【0022】
本発明の縦型ウエハボート10の製造方法について、一例を挙げて説明する。Si-SiC複合材料を支柱2、天板1および底板4を所定の形状に機械加工して作製する。その後、支柱2、天板1および底板4の各部材を接着して組み立て、表面にSiC膜をCVDにより形成する。
次いで、ウエハWが接する部分であるウエハ支持部2a上面と、このウエハ支持部2a上面の周端部、すなわち、ウエハ支持部2a上面の側面および先端とを加工治具により研磨加工し、面取り加工する。
【0023】
ウエハWの熱処理は、本発明の縦型ウエハボート10内にウエハWを搭載し、例えば、600℃に加熱した縦型熱処理炉に、ウエハWを搭載した縦型ウエハボート10を装入して、酸素などの処理ガスを導入することにより行う。
図1に示すように、縦型熱処理炉は、縦型ウエハボート10を装入する炉心管11と、処理ガスを導入するためのガス供給管15と、均熱領域を確保するために炉心管11の外周囲に適宜間隔を空けて設けられた均熱管12と、前記炉心管11内のウエハWを加熱するために均熱管12の外周囲に設けられた加熱部材13と、炉内ガスを排出するための排気管14とを備えている。
【0024】
ウエハを積載した縦型ウエハボート10が炉心管11に縦型熱処理炉内に収容された後、炉心管11内を加熱部材13により加熱するとともに、ガス供給管15によって処理ガスが上下から下方にかけて供給される。
これにより、炉心管11内では、高温の処理ガス雰囲気下に、ウエハに所定の熱処理が施される。
【実施例0025】
本発明の縦型ウエハボート10について、実施例および比較例に基づきさらに説明する。
[実施例1~6][比較例1~3]
使用した炉はφ300mmウエハW用の縦型熱処理炉で、炉心管11の内径390mm×高さ1650mmで、使用した縦型ウエハボート10の外形は、天板3および底板4の径330mm×高さ1200mmである。
本実施例1~6では、底板4を形成する多孔質SiC材料の気孔率と、底板4の厚みとを種々変更した縦型ウエハボート10を作製し、熱処理後のウエハWの歪みに起因するスリップ評価を行うことで、底板4の差異に起因するウエハボート内の温度ムラを評価した。比較例1~3では、底板4を形成する多孔質SiC材料として、気孔率が40~50%から外れたものを使用した。なお、多孔質SiC材料とは、Si-SiC複合材料にSiC-CVDコートした材料である。
熱処理条件は、600℃でウエハを100枚積載した縦型ウエハボート10を装入して、1200℃まで加熱後、1時間保持し、600℃まで降温した後、取り出すものとした。
スリップ評価は、12インチの鏡面仕上げシリコンウエハ100枚を積載して前述の使用条件で1回熱処理したものを、ボート上部から1枚目、50枚目、100枚目の3枚のウエハについて、X線トポグラフ(XRT)により面内を測定し、観測されたスリップの中で最も長い最大スリップ長で比較した。
【0026】
このスリップ評価の判定指標は、最大スリップ長が5mm以上のものがあった場合を×、最大スリップ長が1mm以上5mm未満であった場合を△、最大スリップ長が1mm未満もしくはスリップ自体が存在しなかった場合を○という指標によって3区分に分け、ランク付けした。
実施例1~6および比較例1~3の条件およびその結果を表1に示す。
【表1】