IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大起理化工業株式会社の特許一覧

特開2022-92256土壌改質状態測定方法、土壌改質状態測定装置
<>
  • 特開-土壌改質状態測定方法、土壌改質状態測定装置 図1
  • 特開-土壌改質状態測定方法、土壌改質状態測定装置 図2
  • 特開-土壌改質状態測定方法、土壌改質状態測定装置 図3
  • 特開-土壌改質状態測定方法、土壌改質状態測定装置 図4
  • 特開-土壌改質状態測定方法、土壌改質状態測定装置 図5
  • 特開-土壌改質状態測定方法、土壌改質状態測定装置 図6
  • 特開-土壌改質状態測定方法、土壌改質状態測定装置 図7
  • 特開-土壌改質状態測定方法、土壌改質状態測定装置 図8
  • 特開-土壌改質状態測定方法、土壌改質状態測定装置 図9
  • 特開-土壌改質状態測定方法、土壌改質状態測定装置 図10
  • 特開-土壌改質状態測定方法、土壌改質状態測定装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092256
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】土壌改質状態測定方法、土壌改質状態測定装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20220615BHJP
   E02D 1/08 20060101ALI20220615BHJP
   G01N 33/24 20060101ALI20220615BHJP
   C09K 17/02 20060101ALN20220615BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D1/08
G01N33/24 B
C09K17/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204953
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】394008846
【氏名又は名称】大起理化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】大石 正行
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040BB01
2D040BD05
2D040GA02
2D043AC03
2D043BA10
2D043BB02
4H026CC05
(57)【要約】
【課題】確実且つ高精度に地盤の改質状態を測定できる土壌改質状態測定手法を提供する。
【解決手段】地盤中に導入される土壌の改質材の拡散状態を測定する土壌改質状態測定方法であって、改質材が土壌と混在していると推測される場所に形成される縦穴の内部に溜まる改質剤の物性値、又はこの縦穴の内部に溜まる溶媒に改質材が溶けることで生成される改質材溶液の物性値を測定する溶液測定工程と、を備えるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に導入される土壌の改質材の拡散状態を測定する土壌改質状態測定方法であって、
前記改質材が土壌と混在していると推測される場所に形成される縦穴の内部に溜まる改質剤の物性値、又は前記縦穴の内部に溜まる溶媒に前記改質材が溶けることで生成される改質材溶液の物性値を測定する溶液測定工程を備えることを特徴とする、
土壌改質状態測定方法。
【請求項2】
前記溶媒が地下水であることを特徴とする、
請求項1に記載の土壌改質状態測定方法。
【請求項3】
前記縦穴に前記溶媒を供給する溶媒供給工程を備えることを特徴とする、
請求項1または2に記載の土壌改質状態測定方法。
【請求項4】
前記物性値として、前記改質剤又は前記改質材溶液の電気的特性を測定することを特徴とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載の土壌改質状態測定方法。
【請求項5】
前記物性値として、前記改質剤又は前記改質材溶液の温度を測定することを特徴とする、
請求項4に記載の土壌改質状態測定方法。
【請求項6】
前記物性値として、前記改質剤又は前記改質材溶液のpH値、導電率、酸化還元電位、イオン濃度の少なくともいずれかを測定することを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載の土壌改質状態測定方法。
【請求項7】
前記改質剤又は前記改質材溶液を移動させる溶液移動工程を備え、
前記溶液測定工程は、前記溶液移動工程によって移動される前記改質剤又は前記改質材溶液の前記物性値を測定することを特徴とする、
請求項1~6のいずれか一項に記載の土壌改質状態測定方法。
【請求項8】
前記物性値を測定するセンサと前記改質剤又は前記改質材溶液の接触部分において、前記改質剤又は前記改質材溶液と前記センサを相対移動させることを特徴とする、
請求項1~7のいずれか一項に記載の土壌改質状態測定方法。
【請求項9】
共通深度において、前記改質剤又は前記改質材溶液と前記センサとの相対移動を介在させて前記物性値を複数回測定することを特徴とする、
請求項8に記載の土壌改質状態測定方法。
【請求項10】
前記溶液移動工程では、移動される前記改質剤又は前記改質材溶液をフィルタに通過させるようにし、
前記溶液測定工程では、前記フィルタを通過した前記改質剤又は前記改質材溶液の前記物性値を測定することを特徴とする、
請求項7に記載の土壌改質状態測定方法
【請求項11】
前記溶液移動工程では、前記改質剤又は前記改質材溶液を地上まで移動させることを特徴とする、
請求項7または10のいずれか一項に記載の土壌改質状態測定方法。
【請求項12】
前記溶液測定工程では、地上に移動された前記改質剤又は前記改質材溶液の前記物性値を測定することを特徴とする、
請求項11に記載の土壌改質状態測定方法。
【請求項13】
前記縦穴の内壁を撮像する内壁撮像工程を備えることを特徴とする、
請求項1~12のいずれか一項に記載の土壌改質状態測定方法。
【請求項14】
前記改質材に、予め、検知用の電解質を含有させるようにし、
前記溶液測定工程では、前記電解質のイオン濃度を測定することを特徴とする、
請求項1~13のいずれか一項に記載の土壌改質状態測定方法。
【請求項15】
地盤中に含侵される土壌の改質材の拡散状態を測定する土壌改質状態測定装置であって、
前記改質材が土壌と混在していると推測される場所に形成される縦穴に挿入される挿入部材と、
前記挿入部材に配置され、前記縦穴の内部に溜まる前記改質剤の物性値又は前記縦穴の内部に溜まる溶媒に前記改質材が溶けることで生成される改質材溶液の物性値を検出するセンサと、を備えることを特徴とする、
土壌改質状態測定装置。
【請求項16】
前記縦穴に前記溶媒を供給する溶媒供給手段を備えることを特徴とする、
請求項15に記載の土壌改質状態測定装置。
【請求項17】
前記センサは、前記改質剤又は前記改質材溶液の電気的特性を検知することを特徴とする、
請求項15または16に記載の土壌改質状態測定装置。
【請求項18】
前記挿入部材に配置され、前記改質剤又は前記改質材溶液の温度を検出する温度検知部を備えることを特徴とする、
請求項15~17のいずれか一項に記載の土壌改質状態測定装置。
【請求項19】
前記センサは、前記改質剤又は前記改質材溶液のpH値、導電率、酸化還元電位、イオン濃度の少なくともいずれかを検知することを特徴とする、
請求項15~18のいずれか一項に記載の土壌改質状態測定装置。
【請求項20】
前記挿入部材に設けられて前記改質剤又は前記改質材溶液を案内する溶液移動路を備え、
前記センサは、前記溶液移動路に取り込まれる前記改質剤又は前記改質材溶液の物性値を検出することを特徴とする、
請求項15~19のいずれか一項に記載の土壌改質状態測定装置。
【請求項21】
前記溶液移動路の前記改質剤又は前記改質材溶液を移動させる溶液移動手段を備えることを特徴とする、
請求項20に記載の土壌改質状態測定装置。
【請求項22】
前記改質剤又は前記改質材溶液を濾過するフィルタを備え、
前記センサは、前記フィルタを通過した前記改質材溶液の前記物性値を検出することを特徴とする、
請求項15~21のいずれか一項に記載の土壌改質状態測定装置。
【請求項23】
前記溶液移動路は、前記改質剤又は前記改質材溶液を地上まで案内することを特徴とする、
請求項20及び21のいずれか一項に記載の土壌改質状態測定装置。
【請求項24】
前記挿入部材に配置され、前記縦穴の内壁を撮像する撮像装置を備えることを特徴とする、
請求項15~23のいずれか一項に記載の土壌改質状態測定装置。
【請求項25】
前記挿入部材は、前記センサが配置されるセンサ収容部、及び、前記撮像装置が配置される撮像装置収容部を有しており、
前記センサ収容部及び撮像装置収容部が、分離自在となっていることを特徴とする、
請求項24に記載の土壌改質状態測定装置。
【請求項26】
前記撮像装置収容部に対して、前記センサ収容部が上方に配置されることを特徴とする、
請求項25に記載の土壌改質状態測定装置。
【請求項27】
地盤中に含侵される土壌の改質材の混在状態を測定する土壌改質状態測定装置であって、
前記改質材が混在していると推測される場所に形成される縦穴に挿入され、前記縦穴の内部に溜まる前記改質剤又は前記縦穴の内部に溜まる溶媒に前記改質材が溶けることで生成される改質材溶液を地上に汲み上げる汲み上げ手段と、
前記地上に配置され、前記汲み上げ手段によって地上に汲み上げられる前記改質剤又は前記改質材溶液の物性値を検出するセンサと、を備えることを特徴とする、
土壌改質状態測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌に改質材を導入して地盤改質する際に、その改質状況を測定するための方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐震性の向上や、重金属の溶出抑制等を目的として地盤を改良する為に、地盤中に改質材を導入する手法が採用されている。この改質材には、セメントミルク(セメント系固化剤)、石灰系固化材、セメントと石灰を混合した複合系固化材、高分子系固化材、無機・有機の硬化剤と水ガラス等を用いるグラウト材等が存在する。
【0003】
地盤改良工法には様々存在し、例えば、地表面から深さ2m程度までの地盤改良を行う際は、バックホーやスタビライザーを用いて、粉黛状のセメント系あるいは石灰系の固化材(改質材)を散布して、軟弱土と撹拌して混合する。
【0004】
また、地表面から深さ1m~15m程度の中層の地盤改良を行う際は、例えば、トレンチャー式工法が採用される。トレンチャー式工法では、バケット状の撹拌体をチェーン等で繋いで鉛直方向に循環回転させる掘削機や、撹拌翼の回転させる掘削機等を利用して、地中の土と改質材と撹拌混合する。
【0005】
更に、地表面から深さ10m以上の深層の地盤改良を行う際は、例えば、撹拌翼の回転させる掘削機等を利用して地中の土と改質材と撹拌混合する手法の他に、高圧噴射撹拌工法が採用される場合が多い。高圧噴射撹拌工法にも様々あり、改質材と同時又は別々に、エアや水を高圧ジェット噴射して、改質材と土を撹拌混合したり、地中に対して高圧ジェットによって改質材を直接噴射して、土壌と改質材を撹拌混合したりする。いずれにしろ、この高圧噴射撹拌工法では、気体や液体のジェット噴射の勢いによって混合する構造であることから、改質材によって地盤が改良された範囲を早期に測定することが不可欠となる。
【0006】
例えば、特許文献1では、高圧ジェットを噴射する掘削孔から、土中の水平方向(径方向)に棒状部材を貫入して、pH又は温度を測定することで、地盤の改良範囲を測定する技術が提案されている。
【0007】
また例えば、特許文献2では、高圧ジェットを噴射する掘削孔から離れた地点において、カメラ付きロッドを地盤中に貫入し、カメラによって撮像された画像をモニターに表示して、改質材液の存在を確認することで、地盤の改良範囲を測定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4721268号
【特許文献2】特許第4886921号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、土中において水平方向に棒状部材を貫入すると、その貫入孔を利用して改質材が拡散する可能性があり、地盤の改良範囲を正しく測定することが難しい。これを解消するためには、改質材が硬化するまで待機してから貫入孔を形成する必要があり、測定効率が低下すると共に、硬化後では、改質不要を発見した後の補修が難しいという問題がある。
【0010】
また、特許文献2では、貫入孔の内周壁の画像によって、改質材液の存在を判別することが難しいという問題がある。それ故に、特許文献2では、改質材を着色する着色剤を散布してから、カメラで内壁を測定する必要があるが、土中で着色剤と改質剤を反応させることが難しいため、改質材が適切に着色されない場合もあり、測定精度が悪いという問題がある。
【0011】
本発明は、斯かる実情に鑑み、確実且つ高精度に地盤の改質状態を測定する技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明は、地盤中に導入される土壌の改質材の拡散状態を測定する土壌改質状態測定方法であって、前記改質材が土壌と混在していると推測される場所に形成される縦穴の内部に溜まる改質剤の物性値、又は前記縦穴の内部に溜まる溶媒に前記改質材が溶けることで生成される改質材溶液の物性値を測定する溶液測定工程を備えることを特徴とする、土壌改質状態測定方法である。
【0013】
上記土壌改質状態測定方法に関連して、前記溶媒が地下水であることを特徴としても良い。
【0014】
上記土壌改質状態測定方法に関連して、前記縦穴に前記溶媒を供給する溶媒供給工程を備えることを特徴としても良い。
【0015】
上記土壌改質状態測定方法に関連して、前記物性値として、前記改質剤又は前記改質材溶液の電気的特性を測定することを特徴としても良い。
【0016】
上記土壌改質状態測定方法に関連して、前記物性値として、前記改質剤又は前記改質材溶液の温度を測定することを特徴としても良い。
【0017】
上記土壌改質状態測定方法に関連して、前記物性値として、前記改質剤又は前記改質材溶液のpH値、導電率、酸化還元電位、イオン濃度の少なくともいずれかを測定することを特徴としても良い。
【0018】
上記土壌改質状態測定方法に関連して、前記改質剤又は前記改質材溶液を移動させる溶液移動工程を備え、前記溶液測定工程は、前記溶液移動工程によって移動される前記改質剤又は前記改質材溶液の前記物性値を測定することを特徴としても良い。
【0019】
上記土壌改質状態測定方法に関連して、前記物性値を測定するセンサと前記改質剤又は前記改質材溶液の接触部分において、前記改質剤又は前記改質材溶液と前記センサを相対移動させることを特徴としても良い。
【0020】
上記土壌改質状態測定方法に関連して、共通深度において、前記改質剤又は前記改質材溶液と前記センサとの相対移動を介在させて前記物性値を複数回測定することを特徴としても良い。
【0021】
上記土壌改質状態測定方法に関連して、前記溶液移動工程では、移動される前記改質剤又は前記改質材溶液をフィルタに通過させるようにし、前記溶液測定工程では、前記フィルタを通過した前記改質剤又は前記改質材溶液の前記物性値を測定することを特徴としても良い。
【0022】
上記土壌改質状態測定方法に関連して、前記溶液移動工程では、前記改質剤又は前記改質材溶液を地上まで移動させることを特徴としても良い。
【0023】
上記土壌改質状態測定方法に関連して、前記溶液測定工程では、地上に移動された前記改質剤又は前記改質材溶液の前記物性値を測定することを特徴としても良い。
【0024】
上記土壌改質状態測定方法に関連して、前記縦穴の内壁を撮像する内壁撮像工程を備えることを特徴としても良い。
【0025】
上記土壌改質状態測定方法に関連して、前記改質材に、予め、検知用の電解質を含有させるようにし、前記溶液測定工程では、前記電解質のイオン濃度を測定することを特徴としても良い。
【0026】
上記目的を達成する本発明は、地盤中に含侵される土壌の改質材の拡散状態を測定する土壌改質状態測定装置であって、前記改質材が土壌と混在していると推測される場所に形成される縦穴に挿入される挿入部材と、前記挿入部材に配置され、前記縦穴の内部に溜まる前記改質剤の物性値又は前記縦穴の内部に溜まる溶媒に前記改質材が溶けることで生成される改質材溶液の物性値を検出するセンサと、を備えることを特徴とする、土壌改質状態測定装置である。
【0027】
上記土壌改質状態測定装置に関連して、前記縦穴に前記溶媒を供給する溶媒供給手段を備えることを特徴としても良い。
【0028】
上記土壌改質状態測定装置に関連して、前記センサは、前記改質剤又は前記改質材溶液の電気的特性を検知することを特徴としても良い。
【0029】
上記土壌改質状態測定装置に関連して、前記挿入部材に配置され、前記改質剤又は前記改質材溶液の温度を検出する温度検知部を備えることを特徴としても良い。
【0030】
上記土壌改質状態測定装置に関連して、前記センサは、前記改質剤又は前記改質材溶液のpH値、導電率、酸化還元電位、イオン濃度の少なくともいずれかを検知することを特徴としても良い。
【0031】
上記土壌改質状態測定装置に関連して、前記挿入部材に設けられて前記改質剤又は前記改質材溶液を案内する溶液移動路を備え、前記センサは、前記溶液移動路に取り込まれる前記改質剤又は前記改質材溶液の物性値を検出することを特徴としても良い。
【0032】
上記土壌改質状態測定装置に関連して、前記溶液移動路の前記改質剤又は前記改質材溶液を移動させる溶液移動手段を備えることを特徴としても良い。
【0033】
上記土壌改質状態測定装置に関連して、前記改質剤又は前記改質材溶液を濾過するフィルタを備え、前記センサは、前記フィルタを通過した前記改質材溶液の前記物性値を検出することを特徴としても良い。
【0034】
上記土壌改質状態測定装置に関連して、前記溶液移動路は、前記改質剤又は前記改質材溶液を地上まで案内することを特徴としても良い。
【0035】
上記土壌改質状態測定装置に関連して、前記挿入部材に配置され、前記縦穴の内壁を撮像する撮像装置を備えることを特徴としても良い。
【0036】
上記土壌改質状態測定装置に関連して、前記挿入部材は、前記センサが配置されるセンサ収容部、及び、前記撮像装置が配置される撮像装置収容部を有しており、前記センサ収容部及び撮像装置収容部が、分離自在となっていることを特徴としても良い。
【0037】
上記土壌改質状態測定装置に関連して、前記撮像装置収容部に対して、前記センサ収容部が上方に配置されることを特徴としても良い。
【0038】
上記目的を達成する本発明は、地盤中に含侵される土壌の改質材の混在状態を測定する土壌改質状態測定装置であって、前記改質材が混在していると推測される場所に形成される縦穴に挿入され、前記縦穴の内部に溜まる前記改質剤又は前記縦穴の内部に溜まる溶媒に前記改質材が溶けることで生成される改質材溶液を地上に汲み上げる汲み上げ手段と、前記地上に配置され、前記汲み上げ手段によって地上に汲み上げられる前記改質剤又は前記改質材溶液の物性値を検出するセンサと、を備えることを特徴とする、土壌改質状態測定装置である。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、確実且つ高精度に地盤の改質状態を測定できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の実施形態に係る土壌改質状態測定装置の全体構成を示す正面図である。
図2】同土壌改質状態測定装置の挿入部材を拡大して示す(A)正面図、(B)正面断面図である。
図3】(A)~(D)は本発明の実施形態に係る土壌改質状態測定方法を示す工程図である。
図4】同土壌改質状態測定装置の制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図5】同土壌改質状態測定方法のフローチャートである。
図6】(A)は測定中の同挿入部材の動作を示す正面断面図であり、(B)は測定されたデータのサンプルを示すグラフである。
図7】同土壌改質状態測定方法によって測定されたデータのサンプルを示すグラフである。
図8】同土壌改質状態測定装置の挿入部材の変形例を拡大して示す正面断面図である。
図9】同土壌改質状態測定装置の挿入部材の変形例を拡大して示す(A)正面図、(B)正面断面図である。
図10】(A)は測定中の変形例に係る同挿入部材の動作を示す正面断面図であり、(B)は測定されたデータのサンプルを示すグラフである。
図11】変形例に係る土壌改質状態測定装置の全体構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0042】
<土壌改質状態測定装置の全体構造>
【0043】
図1に、本発明の実施形態に係る土壌改質状態測定装置1の全体構造を示す。この土壌改質状態測定装置1は、地盤に縦穴5を掘削する掘削装置(挿入装置)10と、縦穴5内に挿入される挿入部材20と、挿入部材20に設けられるセンサ50と、挿入部材20に設けられる温度検知部58と、挿入部材20に設けられる撮像装置65を備える。なお、挿入部材20は、互いに連結される複数の挿入ロッド12の下端に固定される。掘削装置10によって挿入ロッド12を上下動させることで、挿入部材20が縦穴5内の上下方向に沿って進退する。つまり、掘削装置10は、挿入部材20を上下動させる移動機構を兼ねる。
【0044】
土壌改質状態測定装置1は、更に、挿入部材20の吐出口30Aを経由させて縦穴5に溶媒となる水を供給する溶媒供給路30を有する。地上には、溶媒タンク32が設けられており、溶媒供給路30は、吐出口30Aと溶媒タンク32を繋ぐ。なお、溶媒供給路30の途中には、溶媒移送手段となる送液ポンプ33が配置されており、溶媒タンク32内の溶媒(水)を吸引して、吐出口30Aから吐出するようになっている。なお、溶媒移送手段は、送液ポンプ33に限定されず、溶媒タンク32の内部空間の圧力を制御する圧力制御装置(コンプレッサ)を設けるようにし、その内圧制御によって、溶媒を溶媒供給路30側に送液することもできる。溶媒供給路30の途中に制御弁を設けることで、溶媒の送液状態を制御しても良い。
【0045】
縦穴5内には、土壌の改質材が溶媒となる水に溶けることで生成される改質材溶液Yが貯留される。溶媒となる水は、地上から供給される場合の他、地中に予め存在する地下水であっても良い。
【0046】
挿入部材20には、溶液移動路40が設けられる(図2参照)。溶液移動路40の一端(下端)は、挿入部材20の吸入口40Aに繋がる。結果、この溶液移動路40の内部には、縦穴5内に存在する改質材溶液Yが流れ込む。地上には、溶液タンク42が設けられる。溶液移動路40は、挿入部材20から地上に向かって延長されて、その他端が溶液タンク42に繋がる。溶液タンク42には、溶液移動手段となる圧力制御装置43が接続され、溶液タンク42内の内圧を制御する。本実施形態では、圧力制御装置43は例えば真空ポンプであり、溶液タンク42内の気体を排気して内圧を下げると、縦穴5内の改質材溶液Yが溶液移動路40に吸引されて地上まで吸い上げられて溶液タンク42に流れ込む。一方、圧力制御装置43が、溶液タンク42内の排気を停止して内圧を高めると、縦穴5内の改質材溶液Yの吸い上げが停止される。圧力制御装置43は、溶液タンク42内を加圧して、吸引した改質材溶液Yを地下に向かって逆流させることもできる。なお、ここでは溶液移動手段が圧力制御装置43の場合を例示したが、送液ポンプであっても良い。溶液移動路40の途中に制御弁を設けることで、改質材溶液Yの送液状態(移動状態)を制御しても良い。
【0047】
更に土壌改質状態測定装置1は、地上に配置される制御装置70を有する。この制御装置70は、コントローラ71及びパーソナルコンピュータ80を有する。コントローラ71には、検知配線72を経由して、センサ50及び温度検知部58の検知信号(検知電流)が入力される。コントローラ71には、映像配線74を経由して撮像装置65からの映像信号が入力される。また、コントローラ71は、位置情報配線76を介して、掘削装置10による挿入部材20の地上からの挿入距離(挿入深度)に関する情報を受信する。コントローラ71は、圧力制御装置43や送液ポンプ33の他、特に図示しない各種制御弁を制御することができる。コントローラ71には、ディスプレイを有するパーソナルコンピュータ80が接続される。なお、ここではコントローラ71とパーソナルコンピュータ80を備える構成を例示しているが、単一の計算機が、コントローラ71とパーソナルコンピュータ80を兼ねることもできる。もちろん、複数の計算機に分散させることもできる。
【0048】
制御装置70の一部であるコントローラ71は、特に図示しないいわゆる計算機を内蔵しており、詳細にはCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース、バス等を備える。CPUは、いわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて制御装置70の各種機能を実現する。RAMは、ランダム・アクセス・メモリであり、CPUの作業領域として使用される。ROMはリード・オンリー・メモリであり、CPUで実行される基本OSや各種プログラム(例えば、土壌改質状態測定プログラム)を記憶する。入出力インターフェースには、入力キーや、パーソナルコンピュータ80のキーボードやマウスの操作情報が入力される。入出力インターフェースには、記憶装置を動作させる電源や、検知配線72、映像配線74、圧力制御装置43、送液ポンプ33、パーソナルコンピュータ80との間で制御信号が入出力される。バスは、CPU、RAM、ROM、入力装置、入出力インターフェースなどを一体的に接続して通信を行う配線となる。ROMに記憶された基本OSや土壌改質状態測定プログラムが、CPUによって実行されると、土壌改質状態測定装置1による土壌改質状態測定が実施される。
【0049】
<挿入部材の詳細構造>
【0050】
図2に、挿入部材20の詳細構造を示す。挿入部材20は、センサ50が収容されるセンサ収容部22、及び、撮像装置65が収容される撮像装置収容部60を有する。センサ収容部22と撮像装置収容部60は、ねじによる締結構造によって、着脱自在に連結されている。
【0051】
センサ収容部22は、円筒状のセンサ側筐体24を有する。センサ側筐体24の上端外周には雄ねじ部24Aが形成され、挿入ロッド12(図1参照)の下端に形成される雌ねじ部と螺合する。センサ側筐体24の下端内周には雌ねじ部24Bが形成され、撮像装置収容部60と螺合する。センサ側筐体24の周面には吐出口30Aが開口する。センサ側筐体24の内部には、溶媒供給路30が収容されており、その一端が吐出口30Aに連通する。溶媒供給路30の他端は、センサ側筐体24の上端側に延びてロッド12内まで延長される。なお、この溶媒供給路30の他端は、地上の溶媒タンク32内の溶媒(水)に達する。結果、溶媒タンク32内の溶媒(水)が、溶媒供給路30を経由して吐出口30Aから縦穴5内に吐出される。なお、ここではセンサ収容部22に、溶媒供給路30及び吐出口30Aを設ける場合を例示したが、センサ収容部22から分離した別部材(専用の溶媒供給路収容部)の筐体(専用の溶媒供給側筐体)に設けるようにしても良い。
【0052】
センサ側筐体24の周面には吸入口40Aが開口する。センサ側筐体24の内部には、溶液移動路40が収容されており、その一端が吸入口40Aに連通する。溶液移動路40の他端は、センサ側筐体24の上端側に延びて挿入ロッド12内まで延長される。なお、溶液移動路40の他端は、地上の溶液タンク42に到達する。結果、縦穴5内に溜まる改質材溶液Yは、吸入口40Aから吸引され、溶液移動路40を経由して溶液タンク42に排出される。
【0053】
溶液移動路40の途中(ここでは吸入口40A)には、フィルタ44が配置される。このフィルタ44は、改質材溶液Yに含まれる砂利や土等をろ過する。更に溶液移動路40の途中において、フィルタ44よりも下流側(ここでは吸入口40Aを上流側と定義する)には、他の流路よりも拡張されるバッファ空間40Bが形成される。このバッファ空間40Bを画定する周壁には、センサ50及び温度検知部58が配置され、バッファ空間40B内を通過する改質材溶液Yと接触して、その物性値及び温度を測定する。
【0054】
本実施形態のセンサ50はpH計となっており、感応電極51及び比較電極52を有する。感応電極51は、ここではガラス電極となっており、ガラス応答膜によって改質材溶液Yの水素イオンに選択的に応答して、改質材溶液YのpH値に相当する起電力(電位)を出力する。比較電極52は、改質材溶液YのpH値に依存しない安定的な電位を出力する。結果、センサ50は、感応電極51と比較電極52の電位差によってpH値を測定可能となる。なお、温度検知部58は、改質材溶液の温度を測定する。感応電極51に発生する起電力(電位)は、改質材溶液Yの温度によって変化することから、測定される温度を利用して起電力(電位)を補正(補償)する。センサ50及び温度検知部58の検知信号(検知電流・検知電位)は、検知配線72を経由して制御装置70に伝達される。
【0055】
なお、本実施形態ではセンサ50がpH計となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。センサ50は、改質材溶液Yの電気的特性を検知できるものであれば良い。また、センサ50は、改質材溶液の物性値を検知できれば良い。例えばセンサ50は、導電率計、酸化還元電位計、イオン濃度計などが好ましい。
【0056】
撮像装置収容部60は、円筒状の撮像装置側筐体64を有する。撮像装置側筐体64の上端外周には雄ねじ部64Aが形成され、センサ側筐体24の下端に形成される雌ねじ部24Bと螺合する。撮像装置側筐体64の下端内周には雌ねじ部64Bが形成され、円錐形の先端コーン69と螺合する。撮像装置側筐体64の周面には撮像口65Aが開口する。撮像装置側筐体64の内部には、撮像装置65が固定されており、その撮像レンズが撮像口65Aに臨む。結果、撮像装置65が、縦穴5の内壁を撮像できる。撮像装置65の映像信号は、映像配線74を経由して制御装置70に伝達される。
【0057】
この挿入部材20では、センサ収容部22が上方、撮像装置収容部60が下方に配置される。即ち、センサ50の縦穴5内の移動範囲よりも、撮像装置65の移動範囲の方が広い。例えば、センサ50で測定される改質材溶液の物性値に誤差が大きい場合や、物性値に異常値が含まれる場合は、それよりも広範囲の撮像装置65の内壁映像によって、その誤差等の要因を目視によって分析できる。
【0058】
また、先端コーン69を備えているので、掘削装置10によって挿入部材20を土壌に貫入することで、縦穴5自体を同時に掘削することができる。つまり、この挿入部材20は、縦穴5を掘削する掘削工程も同時に実施できる。
【0059】
なお、撮像装置収容部60を省略する場合は、先端コーン69を、センサ側筐体24の雌ねじ部24Bに螺合させることもできる。
【0060】
<土壌改質状態測定方法>
【0061】
次に、図3の外観模式図、図4の制御装置70における測定プログラムの機能構成ブロック、図5の測定フロー、図6及び図7の測定データ値等を参照して、土壌改質状態の測定手順を説明する。
【0062】
まず、図3(A)に示すように、土壌改質を行う前の状態において、将来、土壌改質が行われる予定範囲Pの内側、かつ、その改質有効範囲の確認が必要となる位置に、掘削装置10および挿入ロッド12等を利用して挿入部材20を挿入することで縦穴5を掘削する(測定用縦穴掘削工程S112)。この縦穴5は、地盤に改質材を導入する改質中心軸Cから離れた場所となる。なお、ここでは挿入部材20の挿入と同時に縦穴5を掘削する場合を例示するが、縦穴5の掘削方法は特に限定されず、他の掘削装置で別途掘削してもよい。
【0063】
次に、図3(B)に示すように、掘削装置10および挿入ロッド12等を利用して、挿入部材20を縦穴5内に挿入する(挿入部材挿入工程S114)。なお、既に述べたように、本実施形態では、測定用縦穴掘削工程S112と同時に、挿入部材挿入工程S114が完了している。なお、測定用縦穴掘削工程S112又は挿入部材挿入工程S114の事前準備として、図1に示すように、挿入部材20の最大深度に対応可能な複数の挿入ロッド12の内部に、予め、検知配線72、映像配線74、溶媒供給路30、溶液移動路40を挿入しておき、この挿入ロッド12を継ぎ足しながら、挿入部材20を地中に貫入させていく。
【0064】
その後、土壌改質状態測定装置1は、溶媒となる水を、挿入部材20の吐出口30Aから吐出して、縦穴5内を溶媒で満たす(溶媒注入工程S116)。制御装置70における溶液注入処理部710は、送液ポンプ33を制御して、溶媒タンク32内の溶媒(水)を吸引して、吐出口30Aから吐出させる。なお、地下水が豊富な地盤であって、掘削後の縦穴5内に地下水が自ずと満たされる場合は、この溶媒注入工程を省略しても良い。
【0065】
必要に応じて、この状態でしばらく待機し、土壌の成分が縦穴5内の溶媒(水)に十分に溶け出させることで、改質前溶液Zの物性値が安定した状態となるようにする。
【0066】
次に、最深位置に配置される挿入部材20を連続的又は段階的に上昇させながら、複数個所の測定深度において、センサ50及び温度検知部58を利用して、土壌の成分が溶け出した改質前溶液Zの物性値(ここではpH値)を測定する(溶液移動工程及び事前測定工程S118)。なお、この際に撮像装置65によって縦穴5の内壁の撮像も実行する。
【0067】
より詳細に、図6(A)に示すように、特定の深度(例えば深度-16.0m)においてpH値を測定する場合、制御装置70の深度情報保存部730は、掘削装置10からの信号に基づいて、挿入部材20が正しい深度(-16.0m)に位置するか否かを判定する。なお、必要に応じて、掘削装置10を制御して挿入部材20を正しい深度に再度位置決めしても良い。その後、制御装置70における溶液移動処理部720は、溶液移動手段となる圧力制御装置43を制御して、溶液タンク42内の気体を排気する。これにより、深度-16.0mmに相応する水圧を有する改質前溶液Zが、吸入口40Aを介してバッファ空間40Bに流れ込み、溶液移動路40に沿って上昇する(点線矢印参照/溶液移動工程)。結果、センサ50と改質前溶液Zの接触部分で、溶液とセンサ50が相対移動する。
【0068】
制御装置70の測定処理部740は、バッファ空間40B内で改質前溶液Zの移動を伴いつつ、複数回に亘って溶液のpHを測定することで、図6(B)のように、特定深度(-16.0m)における複数のpH値が検知される。測定処理部740は、この複数pH値に基づいて、その特定深度の最終的なpH値を決定する。なお、最終的なpH値の決定方法は、これらの複数の全てのpH値の平均値を採用しても良いが、他にも、複数のpH値からノイズ成分(例えば最大値側及び最小値側のデータ又はデータ群)を除去した残データを利用して、平均値等を算出しても良く、その他の手法を採用してもよい。いずれにしろ、深度-16.0mの改質前溶液Zを吸引して、センサ50と相対移動させながら、その改質前溶液ZのpH値を複数回測定することで、測定誤差を低減させることが好ましい。
【0069】
以上結果、例えば、図7の白丸に示されるように、複数の深度(ここでは2.0m毎の深度)において、改質前溶液Zの土壌のpH値が測定される。
【0070】
その後、図3(C)に示すように、改質中心軸Cを掘削して改質用縦穴200を掘削し、改質材を噴射するジェットノズルを挿入して、改質中心軸Cを起点として放射状に改質材を高圧噴射する(地盤改質工程S120)。結果、ジェット噴射の勢いによって改質材と土壌が撹拌混合されて、改質材によって地盤が改良された範囲Qが形成される。なお、本実施形態では、地盤の改良範囲Qが円柱状となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、扇状や放射状等、様々な形状にできる。
【0071】
次いで、図3(D)に示すように、土壌改質状態測定装置1は、掘削装置10や挿入ロッド12等を利用して、再度、挿入部材20を縦穴5内に挿入する(挿入部材挿入工程S122)。なお、地盤改質工程S120によって、縦穴5が消失している場合であっても、挿入部材20の先端コーン69によって、その挿入と同時に縦穴5を新たに掘削できる。なお、本発明はこれに限定されず、挿入部材挿入工程S122の前に、再度、別の装置によって測定用の縦穴5を掘削しても良い。
【0072】
その後、土壌改質状態測定装置1は、再度、溶媒となる水を、挿入部材20の吐出口30Aを吐出して、縦穴5内を溶媒で満たす(溶媒注入工程S124)。なお、この溶媒注入工程S124は、以下(1)又は(2)の場合に省略できる。
(1)液体状の改質剤自体が縦穴5内に十分に満たされている場合。
(2)溶媒となりうる地下水が豊富な地盤であって、掘削後の縦穴5内に地下水が自ずと満たされることで、ジェット噴射された改質材の少なくとも一部の成分がこの地下水(溶媒)に溶け出して改質材溶液が生成される場合。
【0073】
一方で、例えば改質剤の粘性が高い場合や、地下水に溶け出しにくい改質剤の場合は、改質剤が溶けやすい専用溶媒を挿入部材20の吐出口30Aを吐出して、改質材溶液で満たすことの好ましい。
【0074】
次に、最深位置に配置される挿入部材20を連続的又は段階的に上昇させながら、複数個所の測定深度において、センサ50及び温度検知部58を利用して、改質剤そのもの又は改質材が水に溶け出した改質材溶液(以下、これらを総称して改質材溶液等Yと称する)の物性値(ここではpH値)を測定する(溶液移動及び事後測定工程S126)。なお、この際に、撮像装置65によって、縦穴5の内壁の撮像も実行する。
【0075】
事後測定工程S126において、図6(A)に示すように、特定の深度(例えば深度-16.0m)においてpH値を測定する場合、制御装置70の深度情報保存部730は、掘削装置10からの信号に基づいて挿入部材20が正しい深度(-16.0m)に位置するか否かを判定する。なお、必要に応じて、掘削装置10を制御して挿入部材20を正しい深度に位置決めしても良い。その後、制御装置70における溶液移動処理部720は、溶液移動手段となる圧力制御装置43を制御して、溶液タンク42内の気体を排気する。これにより、深度-16.0mmに相応する水圧を有する改質材溶液等Yが、吸入口40Aを介してバッファ空間40Bに流れ込み、溶液移動路40に沿って上昇する(点線矢印参照/溶液移動工程)。結果、センサ50と改質材溶液等Yの接触部分で、改質材溶液等Yとセンサ50が相対移動する。制御装置70の測定処理部740が、バッファ空間40B内で改質材溶液等Yの移動を伴いつつ、複数回に亘って改質材溶液等YのpHを測定することで、図6(B)のように、特定深度(-16.0m)における複数のpH値が検知される。測定処理部740は、この複数pH値に基づいて、その特定深度の最終的なpH値を決定する。なお、最終的なpH値の決定方法は、これらの複数の全てのpH値の平均値を採用しても良いが、他にも、複数のpH値からノイズ成分(例えば最大値側及び最小値側のデータ又はデータ群)を除去した残データを利用して、平均値等を算出しても良く、その他の手法も採用できる。いずれにしろ、深度-16.0mの改質材溶液等Yを吸引して移動させながら、その改質材溶液等YのpH値を複数回測定することで、測定誤差を低減させる。
【0076】
以上の工程を経て、例えば、図7の黒丸に示されるように、複数の深度(ここでは2.0m毎の深度)において、改質材溶液等YのpH値が測定される。改質材がセメントミルクの場合、改質材溶液等Yはアルカリ傾向となり、改質前溶液Zと比較してpH値が上昇する。
【0077】
最後に、制御装置70における比較処理部750が、図7における改質前溶液ZのpH値(白丸)と、改質材溶液等YのpH値(黒丸)を比較して、その差分値が、所望の閾値を超えていれば、適切に改質されたと判定する(比較工程S128)。一方で、その差分値が、所望の閾値を下回れば、改質が不十分であると判定する。
【0078】
以上の通り、本実施形態の土壌改質状態測定装置1及び上記土壌改質状態測定方法によれば、測定専用に掘削される縦穴5を利用し、その縦穴5内に、改質剤そのもの、又は、改質材の少なくとも一部が溶けて生成される改質材溶液等Yを貯留し、その物性値を測定するので、土壌の改質状態を高い精度で測定することが可能となる。また、縦穴5内の改質剤そのもの、又は、改質剤が溶け出すための溶媒が不足する場合は、溶媒供給工程によって、地上から溶媒を供給するので、確実に、改質材溶液を生成することが可能となる。
【0079】
また、本実施形態では、改質材溶液等Yを測定する際に、改質材溶液等Yを溶液移動路40に沿って移動させる。このように、センサ50表面において移動を伴う改質材溶液等YのpH値を複数回に亘って測定することで、限定範囲の改質材溶液等Yではなく、広範囲の改質材溶液等Yを測定できるので、測定誤差を抑制できる。なお、本実施形態では、改質材溶液等Yを移動中にpH値を測定する場合を例示したが、測定タイミングでは改質材溶液等Yの移動(流れ)を停止し、その後、改質材溶液等Yの移動を再開し、次の測定タイミングで改質材溶液等Yの移動(流れ)を再停止させる手順を繰り返すようにしても良い。なお、この吸引した改質材溶液等Yは、地上に排出されるので、深度方向にセンサ50を移動させながら複数個所で測定する際に、深度方向における改質材溶液等Yの混合も抑制できるので、測定精度を高めることが出来る。
【0080】
更に本実施形態では、フィルタ44に改質材溶液等Yを通過させてから、センサ50で測定しているので、土粒がセンサ50の測定面(測定膜)に衝突して破損することを抑止できる。また、土粒によるpH値の測定誤差も抑制できる。また、溶液移動路40に進入する土粒量も抑制できるので、溶液移動路40の詰まりも抑制できる。
【0081】
また、本実施形態では、挿入部材20において、センサ収容部22と撮像装置収容部60が分離自在(着脱自在)となっているので、撮像装置65側を省略することもできる。一方で、両者を同時に使用する際は、撮像装置収容部60が下方側に配置されるので、センサ50による測定範囲よりも広い範囲に亘って、縦穴5の内壁を撮像できる。結果、センサ50の測定値の異常の原因を、映像の目視によって確実に分析できる。
【0082】
なお、上記実施形態では、溶液移動路40によって、改質材溶液等Yを地上に排出する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図8に示す変形例となる挿入部材20のように、筐体に溶液放出孔40Eを形成しておき、溶液移動路40の他端を溶液放出孔40Eに連通させることができる。なお、溶液移動路40の途中には、溶液移動手段となる軸流ポンプやダイヤフラムポンプ、ブラダーポンプ等の送液手段300を配置する。このようにすると、吸入口40Aを介してバッファ空間40Bに流れ込んだ改質材溶液等Yを、溶液放出孔40Eから縦穴5内に再放出できる。このような循環経路で改質材溶液等Yを移動させながら、センサ50によるpH値を複数回測定してもよい。
【0083】
更に本実施形態では、挿入部材20の内部に設けられる溶液移動路40にセンサ50及び温度検知部58を配置する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図9に示す変形例となる挿入部材20のように、筐体の外周面に検知面が露出される状態で、センサ50及び温度検知部58を配置しても良い。このようにすると、縦穴5内の改質材溶液等Yを直接測定できる。
【0084】
この際、図10(A)に示すように、測定ポイントとなる特定の深度において、掘削装置(挿入装置)10を利用して、挿入部材20を上下に往復移動させながら、複数回に亘って、改質材溶液等Yの物性値を測定することが好ましい。このようにすると、センサ50と改質材溶液等Yの接触部分で、改質材溶液等Yとセンサ50を相対移動させることができるので、測定誤差を低減できる。つまり、この手法の場合、掘削装置(挿入装置)10が、改質材溶液等Yとセンサ50を相対移動させる溶液移動手段を兼ねることになる。なお、挿入部材20の上下移動距離や移動速度は特に限定されない。
【0085】
また更に、本実施形態では、挿入部材20側にセンサ50及び温度検知部58を配置する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図11に示す変形例となる土壌改質状態測定装置1のように、溶液移動路40における地上側の途中にバッファタンク(測定タンク)40Tを設けるようにし、このバッファタンク40Tに一時的に貯留される改質材溶液等Yの物性値を、センサ50及び温度検知部58で測定しても良い。この際、測定ポイントとなる特定深度において、改質材溶液等Yを吸い上げてバッファタンク40Tに十分に満たしてから、物性値を測定することが好ましい。なバッファタンク40Tの貯留量は小さい方が好ましく、必要な改質材溶液等Yの吸い上げ量を抑制できる。なお、バッファタンク40Tからオーバーフローした改質材溶液等Yは、溶液タンク42に回収される。
【0086】
なお、本実施形態では、センサ50がpH値を測定する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、元来、高アルカリ性の土壌の場合、改質材が混ぜ合わされる前後でのpH値の差が小さく、測定精度が悪化しやすい。その場合は、元来の土壌に含まれていない(又は含まれている量が少ない)検知用電解質を改質材に含有させておき、センサ50は、この検知用電解質のみを検知できるイオン濃度計とすることが好ましい。このようにすると、土壌改質の前後において、測定されるイオン濃度の差異が大きくなるので、測定精度が向上する。
【0087】
また、本実施形態では、溶媒として水(地下水)を用いる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、検出対象となる電解質が溶けやすい水以外の溶媒を用いることもできる。改質剤が高粘度流体の場合は、その粘性を低下させる溶媒を選定してもよい。
【0088】
さらに、本実施形態では、深度を減少させながら(挿入部材を上昇させながら)、複数の深度で改質材溶液等Yの物性値を測定する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、深度を増大させながら(挿入部材を下降させながら)測定してもよい。この際は、挿入部材で縦穴の掘削を進めつつ、各々の測定深度に達した段階で、測定を進めていくことが可能となるので、改質材又は改質剤溶液の深度方向のコンタミネーションを抑制できるという利点がある。
【0089】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0090】
1 土壌改質状態測定装置
5 縦穴
10 掘削装置
12 挿入ロッド
20 挿入部材
22 センサ収容部
24 センサ側筐体
30 溶媒供給路
30A 吐出口
32 溶媒タンク
33 送液ポンプ
40 溶液移動路
40A 吸入口
40B バッファ空間
40E 溶液放出孔
40T バッファタンク
42 溶液タンク
43 圧力制御装置
44 フィルタ
50 センサ
51 感応電極
52 比較電極
58 温度検知部
60 撮像装置収容部
64 撮像装置側筐体
65 撮像装置
65A 撮像口
69 先端コーン
70 制御装置
71 コントローラ
72 検知配線
74 映像配線
76 位置情報配線
80 パーソナルコンピュータ
Y 改質材溶液等
Z 改質前溶液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11