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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092307
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】排水構造および排水構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/10 20060101AFI20220615BHJP
   E03F 1/00 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
E03F5/10 A
E03F1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205054
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】598113254
【氏名又は名称】株式会社フクユー緑地
(71)【出願人】
【識別番号】500305380
【氏名又は名称】株式会社シーマコンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】栗山 和道
(72)【発明者】
【氏名】中島 観司
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063AA14
2D063DA04
2D063DA30
(57)【要約】
【課題】大量の水が流れ込んでも、排水性を向上させることで、溢れ出すことを抑制することができる排水構造および排水構造の施工方法を提供する。
【解決手段】排水構造における集水枡10は、不透水性コンクリートにより形成された本体部20の底部に、透水性コンクリートにより形成された底盤部30が設けられている。集水枡10は、底盤部30からの排水を地中に浸透させる浸透部60が下方に延びた縦長穴H2に設けられている。浸透部60に流入した水は、浸透部60の多孔質化した団粒物61x内を流れることで、浸透部60の底層60Bまたは周壁層60Lから土中に流れ出る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透水性の本体部の底部に、透水性コンクリートにより形成された底盤部が設けられ、前記底盤部からの排水を地中に浸透させる浸透部が下方に延びた縦長穴に設けられた排水構造。
【請求項2】
前記浸透部は、骨材を団粒化した団粒物が立体的に結着して形成された請求項1記載の排水構造。
【請求項3】
前記浸透部は、団粒化剤により小径骨材が立体的に団粒化した団粒物に、前記小径骨材より大粒の大径骨材が混合され、結着したものである請求項2記載の排水構造。
【請求項4】
前記骨材が、砕石、土、再生コンクリート、再生クラッシャーランのうちの1以上である請求項2または3記載の排水構造。
【請求項5】
前記団粒化剤が、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含むものである請求項3記載の排水構造。
【請求項6】
前記浸透部の天面は、前記底盤部の範囲より小さい大きさに形成された請求項1から5のいずれかの項に記載の排水構造。
【請求項7】
前記底盤部には、前記本体部の内側壁面の位置から内側に向かって高さが高くなる凸部が形成された請求項1から6のいずれかの項に記載の排水構造。
【請求項8】
前記凸部は、前記本体部の内側壁面の位置から内側に向かう周縁部が徐々に高くなる傾斜面に形成されている請求項7記載の排水構造。
【請求項9】
前記底盤部は、前記本体部を支持する不透水性のコンクリートにより形成された周縁部と、前記周縁部の内側であり、透水性のコンクリートにより形成された透水部とを備えた請求項1から8のいずれかの項に記載の排水構造。
【請求項10】
前記底盤部は、前記周縁部と前記透水部の境界が前記本体部の内側壁面に沿って形成された請求項9記載の排水構造。
【請求項11】
前記底盤部の下に、少なくとも前記周縁部の範囲まで敷き詰められた透水性の基礎を備えた請求項9または10記載の排水構造。
【請求項12】
不透水性の本体部の底部に、透水性コンクリートにより形成された底盤部が設けられた排水構造物を設置するための設置用穴を掘削する工程と、
前記設置用穴の底面から縦長穴を掘削する工程と、
前記縦長穴に、前記底盤部からの排水を地中に浸透させる浸透部を形成する工程と、
前記設置用穴に前記排水構造物を設置する工程とを含む排水構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を雨水本管や下水本管へ流す際に一部を透水させる排水構造および排水構造物の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水構造物の一例である集水枡は、流入した雨水を一時的に溜めることで排水管への流量を調整するものである。また、側溝は雨水を雨水本管や下水本管に流し込むものである。この排水構造物に関し、流入した雨水の一部を透水させるものが、例えば、特許文献1-3により知られている。
【0003】
特許文献1に記載の透水型排水構造物は、排水を透水させるポーラスコンクリートで形成された底板部に、厚み方向に延びる複数の空洞部が設けられていることで、底板部の空洞部以外の部位により底板部の強度を保ちつつ、空洞部により排水を底板部の下方側に向けて通過させることができ、底板部の透水能力を確保することができる、というものである。
【0004】
特許文献2に記載の底部解放型透水性側溝は、底部を解放した本体の両側壁下端部を透水性ボードの上面に位置させることにより設置することで、側溝内部の流水相当量を地中に還元することができる、というものである。
【0005】
特許文献3に記載の集水桝は、底部に開口部を有すると共に、側壁部に排水管と連通する連通孔を有し、頂部を開放した桝本体と、開口部を桝本体の内側から閉塞する透水性を備えた透水板と、桝本体の底部に当接させて配設した透水性を有する透水シートとを有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-172506号公報
【特許文献2】特開2000-129771号公報
【特許文献3】実用新案登録第3128625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の透水型排水構造物は、排水の一部が、底板部のポーラスコンクリートの空隙内を通り、浸透層から敷砂へと流れ、地中に透水する。
また、特許文献2に記載の底部解放型透水性側溝は、排水がポーラスコンクリート、ヤシガラ繊維、樹脂コンクリート等により形成された透水性ボードから地中に浸透する。
更に、特許文献3に記載の集水桝は、雨水が、透水板を透過して、透水板と透水シートとの間に形成された空隙へ流れ込み、透水シートから基礎層を介して地中側へ序々に排水される。
【0008】
しかし、特許文献1-3に記載の従来の排水構造物では、大量の水が流れ込むと、敷砂や透水性ボード、基礎層などを介して地中へ浸透させる水量にも限界がある。
従って、集中豪雨による雨水や、堤防が決壊して町中に流入した水などは、排水や浸透が追いつかず、いつまで経っても家屋が水浸しの状態となってしまう。
【0009】
そこで本発明は、大量の水が流れ込んでも、排水性を向上させることで、溢れ出すことを抑制することができる排水構造および排水構造物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の排水構造は、不透水性の本体部の底部に、透水性コンクリートにより形成された底盤部が設けられ、前記底盤部からの排水を地中に浸透させる浸透部が下方に延びた縦長穴に設けられたことを特徴としたものである。
【0011】
本発明の排水構造によれば、大量に水が本体部に流れ込んでも、底盤部を介して、この大量の水を、縦長の浸透部に流れ込ませることができ、浸透部の底層または周壁層から土中に浸透させ、排出させることができる。
【0012】
前記浸透部は、骨材を団粒化した団粒物が立体的に結着して形成されたものとすることができる。浸透部を、骨材を立体的に団粒化した団粒物が結着したものとすると、透水性を確保しつつ、排水構造物の重量が掛かっても縦長穴の形状を維持することができ、周囲の土の流入を抑止することができる。
【0013】
前記浸透部は、団粒化剤により小径骨材が立体的に団粒化した団粒物に、粒径5mmを超える大径骨材が混合され、結着したものとすることができる。周壁層中に含まれる大径砕石が、周壁層を一定形状に保つ作用を発揮し、特に圧縮強度を高めることができる。
【0014】
ここで、前記骨材が、砕石、土、再生コンクリート、再生クラッシャーランのうちの1以上を使用することができる。
【0015】
また、前記団粒化剤が、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含むものを使用することができる。
【0016】
前記浸透部の天面は、前記底盤部の範囲より小さい大きさに形成されたものとすることができる。本体部および底盤部の重量が浸透部の周囲の地盤が受け止めるため、浸透部の周壁層が崩れることを防止することができる。
【0017】
前記底盤部には、前記本体部の内側壁面の位置から内側に向かって高さが高くなる凸部が形成されたものとすることができる。
底盤部に凸部が形成されていることで、底盤部に本体部を載せて連結用部材により連結するときに、本体部の下端を凸部の周縁に合わせて配置すればよいので、位置合わせが容易である。
【0018】
前記凸部は、前記本体部の内側壁面の位置から内側に向かう周縁部が徐々に高くなる傾斜面に形成されたものとすることができる。
凸部の周縁部が傾斜面に形成されているため、底盤部に本体部を載せるときに、本体部の位置が多少ずれても、本体部の下端が傾斜面を摺動しながら定位置に移動するため、位置合わせを更に容易とすることができる。
【0019】
前記底盤部は、前記本体部を支持する不透水性のコンクリートにより形成された周縁部と、前記周縁部の内側であり、透水性のコンクリートにより形成された透水部とを備えたものとすることができる。
本体部が載る底盤部の周縁部が、透水性のコンクリートより強度が高い不透水性のコンクリートにより形成されているため、本体部に重量が掛かっても、この周縁部により受けさせることができる。
【0020】
前記底盤部は、前記周縁部と前記透水部の境界が前記本体部の内側壁面に沿って形成されたものとすることができる。
本体部に貯留された雨水を透水部の天面全体から排水することができるので、雨水を透水部から効率よく排水することができる。
【0021】
前記底盤部の下に、少なくとも前記周縁部の範囲まで敷き詰められた透水性の基礎を備えたものとすることができる。
透水部よりしっかりとした構造の周縁部を基礎に支持させることができ、本体部と周縁部とから掛かる重量を基礎の周縁部全体で分散して支持させることができる。
【0022】
本発明の排水構造は、不透水性の本体部の底部に、透水性コンクリートにより形成された底盤部が設けられた排水構造物を設置するための設置用穴を掘削する工程と、前記設置用穴の底面から縦長穴を掘削する工程と、前記縦長穴に、前記底盤部からの排水を地中に浸透させる浸透部を形成する工程と、前記設置用穴に前記排水構造物を設置する工程とを含む排水構造の施工方法により施工することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の排水構造および排水構造物の施工方法によれば、浸透部の底層または周壁層から土中に排出させることができるので、大量の水が流れ込んでも、排水性を向上させることで、溢れ出すことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態1に係る集水枡を含む排水構造を示す斜視図である。
図2図1に示す集水枡の断面図である。
図3図2に示す集水枡における底盤部の斜視図である。
図4図2に示す集水枡の連結用部材を説明するための一部拡大断面図である。
図5】(A)から(C)は、図1に示す排水構造の施工方法を説明するための図である。
図6】浸透部を形成するための充填材の製造方法を説明するための図である。
図7】(A)および(B)は、図5に続く排水構造の施工方法を説明するための図である。
図8】(A)および(B)は、図7に続く排水構造の施工方法を説明するための図である。
図9】本発明の実施の形態2に係る集水枡を示す断面図である。
図10図9に示す集水枡における底盤部の斜視図である。
図11】(A)および(B)は、本発明の実施の形態3に係る集水枡を示す断面図である。
図12】(A)から(C)は、図11(A)に示す底盤部の製造方法を説明するための図である。
図13】(A)から(E)は、図11(B)に示す底盤部の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る排水構造を図面に基づいて説明する。本実施の形態1では、排水構造物の一例である集水枡を含む排水構造について説明する。
図1および図2に示す集水枡10は、地中Uに設置され、雨樋からの雨水を受けたり、側溝の途中に設けられ、側溝を流れる雨水を受けたりするものである。特に、集水枡10は、歩道や公園、広場に好適なものである。
【0026】
本実施の形態1に係る集水枡10は、本体部20と、底盤部30と、連結用部材40と、基礎50とを備えている。
【0027】
本体部20は、開口部21,22が上端20aと下端20bとに形成された角筒状に形成されている。本体部20は、不透水性のコンクリートにより形成されている。
本体部20は、上端20aの開口部21における内側の位置には、開口部21を閉鎖する蓋部23を支持するための段差部24が形成されている。
本体部20の胴部25には、流入管路となる第1配管P1と、流出管路となる第2配管P2とをそれぞれ接続するための貫通孔26a,26bが形成されている。
【0028】
底盤部30は、本体部20の開口部22を閉鎖するように、本体部20の下端20bに設置されている。図3に示すように、底盤部30は、図2に示す本体部20の下端20bの形状と同じ大きさの、矩形板状に形成されている。底盤部30は、透水性のコンクリートにより形成されている。透水性のコンクリートは、例えば、ポーラスコンクリートにより形成することができる。本実施の形態では、密度が3.16±0.02g/cmの7号ポーラスコンクリートを使用している。
【0029】
図1および図2に示すように、連結用部材40は、本体部20と、底盤部30とを連結するものである。図4に示すように、連結用部材40は、連結用板材41と、締結部材42とを備えている。連結用板材41は、2つの挿通孔が形成された、矩形状の金属板により形成されている。締結部材42は、本体部20の胴部25に埋め込まれ、胴部25からねじ穴を露出させたインサート42aと、連結用板材41の挿通孔に挿通して、インサート42aにねじ止めされるボルト42bとを備えている。
【0030】
図1に示す基礎50は、底盤部30を支持するものであり、透水性を有している。基礎50は、底盤部30の範囲に合わせて底盤部30の下に形成されている。基礎50は、透水性を有しており、本実施の形態1では、砕石により形成された基礎砕石である。砕石は、再生砕石、山砕石、再生粒度調整砕石、粒度調整砕石が使用できる。単粒度砕石であれば、例えば、5号・6号が使用できる。基礎50は、砕石の他、砂利とすることができる。
【0031】
この集水枡10の下方には、基礎50からの排水を土中に浸透させる浸透部60が形成されている。
浸透部60は、基礎50から下方に延びた縦長穴H2に設けられている。浸透部60は、骨材が団粒化剤により立体的に団粒化した多孔質の団粒物61xを固化させて結着したものである。浸透部60は、円柱状に形成され、天面が底盤部30の範囲より小さく形成されている。例えば、底盤部30の幅が約50cmであれば、浸透部60の天面の直径を40cm、底盤部30の幅が約1mであれば、浸透部60の天面の直径を50cmとすることができる。また、浸透部60の上下方向の長さは約2mとすることができる。
浸透部は、縦長穴H2の形状により決定されるため、円柱状の他、四角柱状など多角形状とすることも可能である。
なお、この浸透部60の深さは、地盤の不透水層との関係で決定することができる。従って、浸透部60の深さは、ボーリング調査により決定することが望ましい。
【0032】
本実施の形態に係る浸透部60は、粒径5mm以下の小径骨材(小径砕石)による団粒物61xと、粒径5mmを超える大径骨材(大径砕石)61aとが結着して形成されているが、団粒化剤により団粒化できれば小径骨材は、粒径が5mmより大きくてもよく、大径骨材は、小径骨材より大きいものであれば、団粒化剤の使用量を低減することができ、浸透部60の周壁層を一定形状に保つ作用を発揮することができるため、使用することができる。
【0033】
(集水枡10を含む排水構造の施工方法の説明)
次に、集水枡10を含む排水構造の施工方法を図面に基づいて説明する。
まず、図5(A)に示すように、地表Gから基礎50(図1参照)までの深さの直方体状の設置用穴H1であって、基礎50の範囲の広さの設置用穴H1を掘削する。
次に、図5(B)に示すように、設置用穴H1の底面から、底盤部30の範囲より狭い開口を有する縦長穴H2を掘削する。このとき、設置用穴H1と縦長穴H2との上下方向の中心線を合わせる。縦長穴H2は、クレーンにより吊り下げたり、バックホウに装着したりした掘削ドリルにより形成することができる。
次に、縦長穴H2に充填材を打設して固化させて浸透部60を形成する。
【0034】
ここで、縦長穴H2に打設される充填材の製造方法について、図面に基づいて説明する。図6に示すように、原材料である骨材としての砕石61から篩(図示せず)により粒径5mm以下の小径砕石61bと、粒径5mmを超える大径砕石61aとに分級する。
次に、混合容器70内に、小径砕石61b、固化材62、団粒化剤63及び水64を投入して十分に撹拌することによって混合物60mを形成する。小径砕石61bに対する固化材62、団粒化剤63及び水64の混合量は施工条件に応じて設定するので、一律に決められないが、本実施形態では以下のように設定した。
小径砕石61b:1立方メートル(若しくは2,500kg)
固化材62:40kg~100kg
団粒化剤63:1L~1.5L
水64:60L~90L
【0035】
団粒化剤63については特に限定しないが、本実施形態では、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含む薬剤である「有限会社グローバル研究所」の「SS-M1(商品名)」を使用した。
【0036】
混合容器70内の混合物60mにおいては、団粒化剤63に含まれるイオンの作用により、小径砕石61bと固化材62とが立体的に結着した団粒構造が形成され、やがて混合物60m中に連続した空隙を有する団粒物61x(図1参照)が形成される。また、砕石61から、団粒構造の形成に寄与しない大径砕石61aを取り除いた、小径砕石61bを用いて混合物60mを形成することにより、砕石61に対して団粒化剤63の使用していた場合に比べ、団粒化剤63の使用量を低減することができる。
【0037】
更に、大径砕石61aを含まない小径砕石61bに固化材62、団粒化剤63及び水64を添加して混合物60mを形成することにより、団粒化が促進され、多数の団粒物61xが形成されるので、透水性及の向上に有効である。
【0038】
次に、混合容器70内の混合物60mに対し、大径砕石61a(2.33立方メートル)を投入して十分に撹拌すると、浸透部60の充填材60fが形成される。充填材60fは大小様々な粒径の団粒物61xと大径砕石61aが混じり合った、湿気の少ない、そぼろ状の物質である。充填材60fは、放置しているだけでは、固化しないので、図6下方に示すように、所謂、野積み状態で保管することもできる。
【0039】
図6に示す工程で形成された充填材60fを、図5(C)に示す設置用穴H1の底部の位置であり、下方の縦長穴H2の開口部の位置まで打設し、敷き均して、転圧した後、静置すると、時間の経過に伴って、固化材62が固化することで、大径砕石61aと団粒物61xを含む混合物60mとが結着する。
そうすることで、図1に示すように、固化した周壁層60Lを有する円柱状の浸透部60が形成される。周壁層60L中に含まれる大径砕石61aは、周壁層60Lを一定形状に保つ作用を発揮し、特に圧縮強度を高めることができる。
【0040】
このようにして浸透部60が形成されると、図7(A)に示すように浸透部60上に、砕石を、基礎50として所定の厚みに敷き詰める。
【0041】
次に、図7(B)に示すように、底盤部30に本体部20を載せ、底盤部30と本体部20との側面(胴部25)から露出した、図4に示すインサート42aのねじ穴に、連結用板材41の挿通孔に通したボルト42bをねじ込み締結する。そうすることで、連結用部材40により底盤部30と本体部20とを連結することができる。
連結用板材41の挿通孔に通したボルト42bをインサート42aにねじ止めするだけなので、簡単に底盤部30と本体部20とを連結することができる。
次に、連結用部材40により連結された本体部20と底盤部30とを基礎50の上方に位置させる。
そして、図8(A)に示すように、基礎50の上に底盤部30を載せることで、本体部20を配置する。
【0042】
次に、作業者は、本体部20の周囲に土を、第1配管P1が接続される貫通孔26aと、第2配管P2が接続される貫通孔26bの下端位置までの高さまで入れる。
次に、図8(B)に示すように、第1配管P1と第2配管P2とを敷設するための溝を掘削して、第1配管P1と第2配管P2とを配置し、本体部20の胴部25に開設された貫通孔26a,26bに接続する。そして、第1配管P1と第2配管P2および本体部20の胴部25を埋めることで、施工は完了する。
【0043】
縦長穴H2の開口部は、底盤部30の範囲より狭く形成されているため、浸透部60の天面は、底盤部30の範囲より狭い大きさに形成される。従って、重い集水枡10の重量を浸透部60の周囲の地盤が支持する。そのため、浸透部60が圧縮されてしまうことを防止することができ、浸透部60の周壁層60Lが崩れることを防止することができる。
【0044】
このように図1に示す集水枡10が設置されることで、第1配管P1から流入した水は、本体部20に貯留され、第2配管P2から流れ出る。本体部20に貯留された水の一部は、底盤部30を形成する透水性のコンクリートから基礎50へ浸出して、基礎50から浸透部60に流入する。浸透部60に流入した水は、浸透部60の多孔質化した団粒物61x内を流れることで、浸透部60が保水し、浸透部60の底層60Bまたは周壁層60Lから土中に流出させることができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態に係る排水構造は、不透水性の本体部20の底部に、透水性コンクリートにより形成された底盤部30が設けられ、底盤部30からの排水を地中に浸透させる浸透部60が下方に延びた縦長穴H2に設けられている。従って、大量に水が本体部20に流れ込んでも、底盤部30を介して、この大量の水を、縦長の浸透部60に流れ込ませることができ、浸透部60の底層60Bまたは周壁層60Lから土中に排出させることができる。
よって、本実施の形態に係る排水構造は、大量の水が流れ込んでも、排水性を向上させることで、溢れ出すことを抑制することができる。
【0046】
例えば、浸透部60を縦長穴H2に設置せずに空洞とした場合には、縦長穴H2の周囲の土が、縦長穴H2に崩れるおそれがある。また、単に砕石を縦長穴H2に充填した場合には、当初は良好に排水できるが、月日が経過すると砕石同士の間の空隙に周囲の土が流れ込み、縦長穴H2の周囲の地盤が弱くなる可能性がある。
浸透部60を、砕石を立体的に団粒化した団粒物61xが結着したものであるため、透水性を確保しつつ、集水枡10の重量が掛かっても縦長穴H2の形状を維持することができ、周囲の土の流入を抑止することができる。
【0047】
また、本実施の形態1に係る集水枡10は、設置前の地上で事前に連結用部材40により本体部20と底盤部30とを連結しておけば、連結された本体部20と底盤部30とを基礎50の上方に位置させ、基礎50の上に底盤部30を載せるだけで、本体部20と底盤部30を一緒に掘削穴に配置することができる。従って、掘削穴の底部に置かれた底盤部に、上方から本体部を落とし込みながら位置合わせする必要がないため、本体部20の設置が容易である。
【0048】
また、図2に示すように、底盤部30が本体部20の下端20bに設置されて、本体部20の開口部22を閉鎖して、底盤部30により本体部20を支持させている。そのために、特許文献3に記載の集水桝と異なり、開口部の幅を狭くする必要がない。従って、本体部20内の水を、本体部20の開口部22全体から底盤部30に浸水させることができるため、良好な排水性を確保することができる。
よって、集水枡10は、本体部20の設置が容易であり、排水性に優れたものとすることができる。
【0049】
また、特許文献3に記載の底部解放型透水性側溝では、透水板を桝本体の底部に保持させるために、桝本体の底部が内側に曲がっている。そのため、桝本体の底部の厚み分ほど大型化する。
しかし、集水枡10では、底盤部30が本体部20の外側に配置されるため、底盤部を本体部の内側に位置させたものと比較して、底盤部30の厚み分ほど本体部20を小型化することができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、砕石61を、粒径5mmを境にして、大径砕石61aと小径砕石61bとに分級して使用しているが、これに限定するものではなく、団粒化剤により団粒化できれば小径砕石61b(小径骨材)は、粒径が5mmより大きくてもよく、大径砕石61a(大径骨材)は、小径骨材より大きい粒径であれば、団粒化剤の使用量を低減することができ、浸透部60の周壁層60Lを一定形状に保つ作用を発揮することができるため、使用することができる。
【0051】
例えば、2.5mm~10mmを境にして大径砕石61aと小径砕石61bとに分級して使用することもできる。また、本実施形態では、原材料である骨材として、砕石61を使用しているが、これに限定するものではないので、骨材を砕石とする以外に土とすることができる。砕石より小径の土(小粒な土)であれば、団粒化された土の隙間が砕石より細かいため、周囲の土の流れ込みを抑止することができる。また、再生コンクリートや再生クラッシャーランなどを使用することもできる。
【0052】
本実施の形態1では、集水枡10の設置性を向上させるために、本体部20と底盤部30とが連結用部材40により連結されているが、本体部20と底盤部30とを個々に設置するようにすれば、連結用部材40は省略することが可能である。
【0053】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る集水枡について、図面に基づいて説明する。なお、図9について、図2と同じ構成のものは、同符号を付して説明を省略する。また、図9においては、浸透部は省略している。
図9および図10に示すように、底盤部31は、本体部20の下端面が接して、本体部20を支持する周縁部31aと、周縁部31aの内側となる透水部31bとを備えている。
【0054】
周縁部31aは、本体部20の下端20bの形状に合わせて透水部31bを囲う枠状に形成されている。周縁部31aは、普通コンクリートとも称される不透水性のコンクリートにより形成されている。
透水部31bは、本体部20の下端の内側の範囲に合わせて矩形状に形成されている。従って、周縁部31aと透水部31bの境界は、本体部20の内側壁面27に沿って形成されている。
透水部31bは、実施の形態1での底盤部30(図3参照)と同様に、透水性のコンクリートにより形成されている。透水性のコンクリートは、例えば、ポーラスコンクリートにより形成することができる。
【0055】
特許文献1に記載の透水型排水構造物では、底板部の端縁部に切欠部が形成され、この切欠部に、ブロック体の側壁部の下端が設置されるので、側溝本体となるブロック体の重量や、ブロック体に載った物の重量を、この切欠部により受けることになり、粗骨材を主として成型したポーラスコンクリートにより形成された底板部に、クラックや欠けが生じるおそれがある。
また、特許文献2に記載の底部解放型透水性側溝では、本体の両側壁下端部を透水性ボードの上面に位置させているため、本体の重量や、本体に載った物の重量が透水性ボードに掛かるため、ポーラスコンクリート、ヤシガラ繊維、樹脂コンクリート等により形成された透水性ボードに、クラックや欠けが生じるおそれがある。
【0056】
しかし、図9に示す本実施の形態2に係る集水枡11は、本体部20が載る底盤部31の周縁部31aが、ポーラスコンクリートより強度が高い不透水性のコンクリートにより形成されているため、本体部20や蓋部23に重量が掛かっても、この周縁部31aにより受けさせることができる。従って、底盤部31のクラックや欠けの発生を抑止することができる。
【0057】
また、透水部31bが、本体部20の下端の内側の範囲に合わせて形成されているため、周縁部31aと透水部31bの境界が本体部20の内側壁面27に沿って形成されている。そのため、図9に示す集水枡11は、実施の形態1に係る集水枡10(図2参照)と同様に、本体部20に貯留された雨水を透水部31bの天面全体から排水することができるので、雨水を透水部31bから効率よく排水することができる。
【0058】
また、基礎50が底盤部30の透水部31bの範囲だけでなく、少なくとも周縁部31aの範囲まで敷き詰められているため、透水部31bよりしっかりとした構造の周縁部31aを基礎50に支持させることができ、本体部20と周縁部31aとから掛かる重量を基礎50の周縁部31a全体で分散して支持させることができる。
【0059】
更に、本体部20や蓋部23の重量を周縁部31aが支持するため、底盤部31の下方に位置する浸透部60への重量の負担を軽減することができる。
【0060】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る集水枡について、図面に基づいて説明する。なお、図11においては、図2および図9と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図11(A)に示す集水枡12は、図2に示す実施の形態1に係る集水枡10の変形例であり、図11(B)に示す集水枡13は、図9に示す実施の形態2に係る集水枡11の変形例である。
【0061】
図11(A)および同図(B)に示すように、集水枡12,13の底盤部32,33には、本体部20の下端20bに開設された開口部22の形状に合わせて、本体部20の内側壁面27の位置から内側に向かって高さが高くなる凸部35が形成されている。
【0062】
凸部35は、本体部20の内側壁面27の位置から内側に向かう周縁部を徐々に高くした傾斜面35aと、傾斜面35aに囲まれた平坦面35bとが形成されている。
【0063】
次に、底盤部32,33の製造方法について、図面に基づいて説明する。
まず、図11(A)に示す底盤部32の製造方法から図12(A)から同図(C)に基づいて説明する。
図12(A)に示すように、まず第1型枠F1を準備する。この第1型枠F1は、図11(A)に示す底盤部32や、図11(B)に示す底盤部33の透水部31bを、裏返した形状に対応するように形成されている。この第1型枠F1の所定の位置に、連結用部材40のインサート42aを保持させる。
図12(B)に示すように、第1型枠F1にポーラスコンクリートを打設する。
図12(C)に示すように、ポーラスコンクリートが固化すれば、図11(A)に示すような、インサート42aを含む凸部35が形成された底盤部32が成形される。
【0064】
次に、図11(B)に示す底盤部33の製造方法を、図13(A)から同図(E)に基づいて説明する。
なお、図13(A)から同図(C)に示す工程においては、図11(B)に示す底盤部31の透水部31bの外周を囲うサイズに形成された脱着可能な内壁部F2aを有する第2型枠F2を使用することと、インサート42aが無いこと以外は、図12(A)から同図(C)に示す工程と同じであるため、説明は省略する。
【0065】
図13(C)により底盤部33の透水性コンクリートにより成形された透水部31bが製造されると、図13(D)に示すように、第2型枠F2の内壁部F2aを取り除く。
そして、図13(E)に示すように、第2型枠F2内の透水部31bの周囲(透水部31bの側壁面と外壁部F2bとの間)に、不透水性のコンクリートを打設することで、透水部31bの周囲に周縁部31aが形成された、図11(B)に示す底盤部33が成形できる。
【0066】
このようにして、底盤部32,33に凸部35が形成されていることで、底盤部32,33に本体部20を載せて連結用部材40により連結するときに、本体部20の下端20bを凸部35の周縁に合わせて配置すればよいので、位置合わせが容易である。
また、凸部35には、傾斜面35aが形成されているため、底盤部32,33に本体部20を載せるときに、本体部20の位置が多少ずれても、本体部20の下端20bが傾斜面35aを摺動しながら定位置に移動するため、位置合わせを更に容易とすることができる。
【0067】
本実施の形態3では、凸部35には、傾斜面35aに囲まれた平坦面35bが形成されているが、ポーラスコンクリートの量を減らすために、傾斜面35aに囲まれた領域に凹部を形成してもよい。
【0068】
なお、本実施の形態1-3では、角筒状の本体部20を有する集水枡10-13を例に説明したが、円筒形状の本体部を有する集水枡でもよい。
また、更に、集水枡は、不透水性の本体部の底部に、透水性コンクリートにより形成された底盤部が設けられたものであれば、他の集水枡であってもよい。
更に、本発明は側溝でも応用することができる。例えば、本体部が互いに向き合う側壁であり、本体部の下端の開口部を底盤部により塞ぐ構成とすることにより、底盤部に掛かる重量をしっかりと、底盤部にて受けることができ、浸透部60へ流し込むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、排水溝や集水枡に好適であり、特に集水枡に最適である。
【符号の説明】
【0070】
10,11,12,13 集水枡
20 本体部
20a 上端
20b 下端
21,22 開口部
23 蓋部
24 段差部
25 胴部
26a,26b 貫通孔
27 内側壁面
30,31,32,33 底盤部
31a 周縁部
31b 透水部
35 凸部
35a 傾斜面
35b 平坦面
40 連結用部材
41 連結用板材
42 締結部材
42a インサート
42b ボルト
50 基礎
60 浸透部
60f 充填材
60m 混合物
60B 底層
60L 周壁層
61 砕石
61a 大径砕石
61b 小径砕石
61x 団粒物
62 固化材
63 団粒化剤
64 水
70 混合容器
F1 第1型枠
F2 第2型枠
F2a 内壁部
F2b 外壁部
P1 第1配管
P2 第2配管
H1 設置用穴
H2 縦長穴
G 地表
U 地中
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13